説明

人が出入りできる区域への、特に扉によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法

【課題】人が出入りできる区域への出入りを規制する方法を、セキュリティを保証しつつ、アクセスコードの形をとるアクセス権をさらなる権限保持者へ授与できるよう、開発する。
【解決手段】人が出入りできる区域への、特に扉(1)によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法において、少なくとも一つのアクセスコードが記憶された第1の可搬式通信装置(20)が提供される。加えて、少なくとも一つの第2の可搬式通信装置(30)とアクセスコードを受信する受信装置(10)とが提供される。アクセスコードは第1の通信装置(20)によって第2の通信装置(30)へ送信される。アクセスコードはこの第2の通信装置(30)によって受信装置(10)へ送信される。受信装置(10)によるアクセスコードのチェックに成功した後、出入りが解放される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人が出入りできる区域への、特に扉によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法に関する。この方法を遂行するため、少なくとも一つのアクセスコードが記憶された第1の可搬式通信装置と、アクセスコードを受信するための受信装置とが提供される。受信装置はアクセスコードをチェックする働きをし、アクセスコードのチェックに成功した後に出入りを解放する。
【背景技術】
【0002】
現代の建物出入規制システムは多くの場合、電子キーが記憶された(filed)チップカードによって作動する。この電子キーとは別に、ユーザ固有データ、例えば個人訪問カードなどもまた、この種のチップカードに蓄積することができる。加えて、チップカード上のデータには有効期限を設けることができ、これにより一定の期間内に限りチップカードの使用が可能となる。ただしこの種のチップカードには、特にこれが唯一のドアロック制御権能に相当する場合に、チップカードが、権限を持たない第三者へ渡ったり紛失するかもしれないという不利点がある。
【0003】
この問題については従来技術からいくつかの解決策が知られている。例えば米国特許出願公開第2002/0180582号明細書は、ロックによって施錠された環境への出入りを規制する方法を説明しており、ここでは第1のアクセスコードが第1の記憶装置に蓄積され、第2のアクセスコードは電子キー装置の第2の記憶装置に蓄積される。好ましくは携帯電話によって形成される電子キー装置は、第2のアクセスコードをロックの制御装置へ伝達する。伝達された第2のアクセスコードはその後、第1の記憶装置に蓄積された第1のアクセスコードに比較され、第1のアクセスコードが第2のアクセスコードに一致する場合にはロックが解除される。携帯電話はこの場合に、多数の建物のための複数のアクセスコードを第2の記憶装置に蓄積できるよう装備される。このようにしてユーザはアクセスコードを選択し、これをロック設備の制御装置へ伝達することができる。
【0004】
携帯電話を所有し、且つ携帯電話を切り替え自由にするためのPINコードを知るユーザだけが、携帯電話に蓄積されたアクセスコードを使用できる点が、この公知の方法で不利と分かっている。その場合、これは通常ならば同一人物である。このため、第三者に携帯電話を手渡してPINコードを教える場合に限り、アクセスコードの形をとるアクセス権を第三者に渡すことができる。
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/0180582号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、人が出入りできる区域への出入りを規制する方法を、セキュリティを保証しつつ、アクセスコードの形をとるアクセス権をさらなる権限保持者へ授与できるよう、開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、この目的の達成のため、少なくとも一つのアクセスコードが記憶された第1の可搬式通信装置により、少なくとも一つの第2の可搬式通信装置により、そしてアクセスコードを受信する受信装置により、人が出入りできる区域、特に扉によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法の場合に、同方法が請求項1に従い以下のステップ、すなわち、
a)第1の通信装置から第2の通信装置へアクセスコードを送信することと、
b)第2の通信装置から受信装置へアクセスコードを送信することと、
c)受信装置によってアクセスコードをチェックすることと、
d)チェックに成功した場合に出入りを解放することと
を含むと定められる。
【0007】
本発明による方法は、少なくとも一つのアクセスコードを互いに、および受信装置へ伝達するよう装備された数個の可搬式通信装置の使用を通じて、ユーザによって携行される通信装置により、アクセス権の移譲を簡素でありながら安全な方法で行うことができる出入規制システムが作り出される、との認識に基づいている。
【0008】
しかも本発明による方法は、様々な通信装置に蓄積されたアクセスコードが、例えば選択された通信装置へ中央コンピュータ装置によって伝達されること、したがってまた所与の使用期間中に変更されること、またはロックされることを可能にする。
【0009】
好ましくはエレベータおよび建物、事業所、住居、および個々の部屋の出入規制のためにその種の装置において使用される方法が、本発明によって提供される。アクセスコードのほかにさらなるデータを含むことができる、コードシーケンスの形をとるデータの通信には、好ましくは装置間の無線通信が使われる。通信ネットワークとして、好ましくは近接場通信システムが提供される。これは、それぞれの装置間の通信が近接場内でのみ可能であることを意味する。このようにして、通信ネットワークへの不正アクセスが起こらないこと、そしてアクセスコードに対するスパイ行為の可能性があることを保証できる。用語「装置」は、本発明の場合に通信装置および受信装置の総称的表現を構成する。
【0010】
本発明による方法の有利な展開は請求項2から11にかけて記載されている。
【0011】
方法の有利な展開においては、相互に通信する装置が互いに所定の距離を隔てて位置するときに限り、アクセスコードが送信され且つ受信されると定める。有利なことに、この間隔は約十メートルに満たなく、好ましくは約一メートルに満たない。よって、第1の通信装置から第2の通信装置へは、二つの通信装置が互いに近くに、例えば数センチメートルの距離で保持される場合に限り、アクセスコードを送信できると定めることができる。その種の無線電波式データ伝送には従来のインターフェイス、特に赤外線インターフェイスを使用でき、特に伝送規格としてはNFC規格を使用できる。
【0012】
本発明による方法の一展開においては、アクセスコードに少なくとも一つの属性が設けられる、および/またはアクセスコードの少なくとも一つの属性が変更されることが提案される。有利なことに、この接続においては第1の通信装置によって、または第2の通信装置によって属性が作成される、または変更されると定められる。その場合には特に、特定の実行時間を、または複製防止を属性として割り当てることができる。これにより、電子キーの形で携帯電話に蓄積されるアクセスコードを複製に対し安全なものとし、且つ編集不能とすることが可能となる。他方、作成できる電子キー複製数を制限する、または電子キーのキャンセルのみが可能である属性を設けることもできる。
【0013】
さらなる防護壁として、所定の期間内に限り出入りが解放されると定めることができる。よって例えば、第1の人集団には日中に限り、そして第2の人集団には夜間に限り、出入りを許可することができる。これを可能にするため、受信装置および/または可搬式通信装置を相応に装備でき、および/またはアクセスコードそのものを相応に生成できる。
【0014】
時間とは無関係にセキュリティ措置を設けるため、本発明の方法の有利な展開においては、出入りを解放するための所定の使用回数を経た後アクセスコードがキャンセルされる。キャンセルは、一回または複数回の使用の後に、自動的に、または中央コンピュータ装置を操作する権限保持者によって、行うことができる。
【0015】
第1の通信装置でアクセスコードを記憶するため、コンピュータ装置はアクセスコードを生成し、これを第1の通信装置へ伝達する。この場合にコンピュータ装置による第1の通信装置に対する通信は、グローバル、ローカル、または近接場通信ネットワークによって行うことができる。代わりに、データ伝送用有線回線を使用することもできる。
【0016】
好ましくは、第1の通信装置および/または第2の通信装置として携帯電話が使用される。よって、ユーザが自身の携帯電話以外の、さらなる可搬式通信装置を携行する負担を回避することが可能となる。
【0017】
本発明による方法の一展開においては、アクセスコードが第1の通信装置によって、および/または第2の通信装置によって処理されることが提案される。このようにして例えば、ドアロックのアクセスコードは可搬式通信装置によってブロックでき、受信装置または中央コンピュータ装置をこの目的のため操作する必要はない。
【0018】
図面を参照しながら下記にて本発明をさらに詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、扉1によって閉ざされた空間のための、例えばエレベータのための、出入規制システムを概略的に示す。扉1は電子ドアロック2と受信装置10とを装備する。出入規制システムは加えて、第1の可搬式通信装置20と第2の可搬式通信装置30とを備える。ドアロック2の解除のためには、中央コンピュータ装置40によって生成され第1の通信装置20の記憶装置21へ伝達される、アクセスコードの形をとる電子キーが必要である。
【0020】
このアクセスコードはここで、第1の通信装置20からドアロック2の受信装置10へ直接的に伝達できる。ただし、他者へのアクセス権移譲のためには第2の通信装置30へアクセスコードが送信されると優先的に定める。第1の通信装置20のユーザはこのアクセスコード伝達の前に、アクセスコードを選択的に処理できる。この目的のためユーザは、第1の通信装置20のディスプレイ23とキーボード24とによりメニューにて所望の機能、例えば「複製」を選択し、その後機能「転送」の選択により第2の通信装置30へアクセスコードの複製を送信する。アクセスコード転送のため、第1の通信装置20は無線電波式データ伝送のためのインターフェイス22を有し、第2の通信装置30は同じくインターフェイス32を有する。この接続においては、第1の通信装置20が第2の通信装置30の近接場に配置されるとき、またはその逆のときに限り、データ転送が行われる。例えば、インターフェイス22、23間の距離はわずか数センチメートルになる。伝送規格としてはNFC規格が使用される。伝達されたアクセスコードは第2の通信装置30の記憶装置31に蓄積される。
【0021】
第1の通信装置20によるアクセスコード処理の範囲内で、アクセスコードには属性を設けることができ、あるいはコンピュータ装置40によってあらかじめ割り当てられた属性を変更できる。好ましくは特定の実行時間や複製防止を属性として割り当てる。アクセスコードに対する特定の変更に同じように取り組むことを第2の通信装置30に許可することが、同様に定められ得る。
【0022】
第1の通信装置20から第2の通信装置30へのアクセスコード転送に成功した後には、第2の通信装置30によってドアロック2の解除を成就できる。この目的のため、第2の通信装置30は、そのインターフェイス30を受信装置10のインターフェイス12に近づけて保持され、その結果近接場ネットワークとNFC規格とによるアクセスコードの無線通信が可能となる。第2の通信装置30は、メニューガイドによって第2の通信装置30を操作するためのディスプレイ33とキーボード34とを有する。こうして伝達されたアクセスコードを受信装置10が受信し、これを記憶装置11に記憶した後には、コンピュータ装置40によって受信装置10の記憶装置11に記憶された本来のアクセスコードにこれが比較される。アクセスコードが本来のアクセスコードに一致する場合に、受信装置10はドアロック2解除のための制御信号を発行する。
【0023】
また、最上の安全要求を十分に考慮するため、第2の通信装置30および/または受信装置10は、第2の通信装置30が受信装置10から一定の距離内に、例えば近接場内に位置する間に限り、ドアロック10の解除が行われるよう装備できる。代わりに、ドアロック2が所定の期間内に、または一定の時点に限り解除されるようアクセスコードをプログラムすることもできる。加えて、ドアロック2の解除はまた、第1の通信装置20のみならず、第2の通信装置30もまた受信装置10から所定の距離内に配置されるときに限り、有効にすることができる。権限を持たない人物による通信装置20、30の使用を排除するため、装置20、30の内一方による毎回のアクセスコード通信は、先進PINコード照会により安全が保障される。
【0024】
さらに、ドアロック2のためのアクセスコードは第1の通信装置20によってロックでき、この目的のため中央コンピュータ装置40を操作する必要はない。この目的のため、権限を有する当事者は受信装置10のところで第1の通信装置20を保持し、アクセスコードをロックするためのオプション「ロック」をメニューで選択する。よって他のユーザは、第2の通信装置30とそこに記憶されたアクセスコードによってドアロック2を開けることはできない。
【0025】
扉1によって閉ざされた空間への出入規制のための前述の方法は特に、無線データ伝送によって電子キーをアクセスコードの形で第1の通信装置20から第2の通信装置30へ簡単に転送でき、ここで、PINコード照会の後に限り通信装置20、30を使用できること、そして近接場においてのみデータ伝送が可能であることからセキュリティが保証されるという事実によって特徴づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】扉1によって閉ざされた空間のための出入規制システムを概略的に示す図である。
【符号の説明】
【0027】
1 扉
2 電子ドアロック
10 受信装置
20 第1の可搬式通信装置
21、31 記憶装置
22、32 インターフェイス
23、33 ディスプレイ
24、34 キーボード
30 第2の可搬式通信装置
40 中央コンピュータ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのアクセスコードが記憶された第1の可搬式通信装置(20)により、少なくとも一つの第2の可搬式通信装置(30)により、そしてアクセスコードを受信する受信装置(10)により、人が出入りできる区域、特に扉(1)によって閉ざされた空間への出入りを規制する方法であって、以下のステップ、すなわち、
a)第1の通信装置(20)から第2の通信装置(30)へアクセスコードを送信することと、
b)第2の通信装置(30)から受信装置(10)へアクセスコードを送信することと、
c)受信装置(10)によってアクセスコードをチェックすることと、
d)チェックに成功した場合に出入りを解放することと
を含む、方法。
【請求項2】
相互に通信する装置が互いに所定の距離を隔てて位置するときに限り、アクセスコードが送信され且つ受信されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
距離が約十メートルに満たないこと、好ましくは一メートルに満たないことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
アクセスコードに少なくとも一つの属性が設けられること、またはアクセスコードの少なくとも一つの属性が変更されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
属性が第1の通信装置(20)によって、または第2の通信装置(30)によって作成される、または変更されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
特定の実行時間、または複製防止が、属性として割り当てられることを特徴とする、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
所定の期間内に限り出入りが解放されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
出入りを解放するための所定の使用回数を経た後、アクセスコードがキャンセルされることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
コンピュータ装置(40)がアクセスコードを生成し、これを第1の通信装置(20)へ伝達することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の通信装置(20)または第2の通信装置(30)として携帯電話が使用されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1の通信装置(20)によって、または第2の通信装置(30)によってアクセスコードが処理されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−87370(P2007−87370A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−201445(P2006−201445)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(390040729)インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト (166)
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】