位相調整回路装置及びタイミング調整回路システム
【課題】 所定の入力信号または出力信号について製造バラツキや電源電圧や温度変化の影響を少なくし、適切なタイミングでの動作を実現する位相調整回路装置を提供する。
【解決手段】 2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の位相差検出信号を出力する位相比較回路2と位相差検出信号Sfの電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号C0を出力する電圧制御発振回路3を有する位相同期回路8、位相の異なる複数のクロック信号C6の1つを選択して位相調整用の参照クロック信号C3として出力する位相選択回路4、及び、第1入力クロック信号C1の信号レベルの変化タイミングを参照クロック信号C3の立ち上がりまたは立ち下がりタイミングに合わせる位相調整を行うフリップフロップ回路5を備え、位相調整後の第1入力クロック信号C4と基準クロック信号C0が外部回路を経由して得られる遅延クロック信号C2を位相比較回路2に入力する。
【解決手段】 2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の位相差検出信号を出力する位相比較回路2と位相差検出信号Sfの電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号C0を出力する電圧制御発振回路3を有する位相同期回路8、位相の異なる複数のクロック信号C6の1つを選択して位相調整用の参照クロック信号C3として出力する位相選択回路4、及び、第1入力クロック信号C1の信号レベルの変化タイミングを参照クロック信号C3の立ち上がりまたは立ち下がりタイミングに合わせる位相調整を行うフリップフロップ回路5を備え、位相調整後の第1入力クロック信号C4と基準クロック信号C0が外部回路を経由して得られる遅延クロック信号C2を位相比較回路2に入力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にクロック同期式の回路装置におけるタイミング調整回路に関し、より詳しくは、クロック同期式回路装置で利用するクロック信号とそれに対応した入力信号との位相ずれを補正する位相調整回路装置と、当該位相調整回路装置を用いたタイミング調整回路システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロック信号に同期して動作する信号処理回路において、入力クロック信号に同期して入力される入力信号との配線経路での遅延差で生じる位相差を打ち消す位相調整のために、図21に示すようなインバータ回路で構成された遅延回路が用いられている。
【0003】
当該遅延回路による位相調整では、インバータ回路10の遅延時間を縦列接続する段数等の調整により位相差が打ち消されるように設定し、基本の入力クロック信号IN1がインバータ回路10を伝播することにより所望の遅延クロック信号OUT1を出力する。この遅延回路においては、入力クロック信号IN1と同相の出力クロック信号OUT1を得るためには偶数個のインバータ回路を縦列接続し、入力クロック信号IN1と逆相の出力クロック信号OUT1を得るためには奇数個のインバータ回路を縦列接続する。
【0004】
また、PLL回路を用いたタイミング調整回路としては、例えば、下記の特許文献1に開示された位相調整回路を用いたものがある。特許文献1では、図22に示すとおり、PLL回路11から出力されたクロック信号CXを所定の第1クロックツリー12aと、フィードバック側の第2クロックツリー12bとへ伝播する構成をとり、夫々のクロックツリーの後段に異なる所定の遅延時間を持たせた第1タイミング補正回路13a及び第2タイミング補正回路13bを備え、例えば、第1タイミング補正回路13aに接続された入力信号CK0と出力信号CK1を入力信号または出力信号の制御信号とすることにより、タイミング調整を行う方法が示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−316879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クロック信号に同期して動作する信号処理回路において、動作周波数の高速化に伴い、それに同期して入力される入力信号との配線経路での遅延差で生じる位相差が無視できなくなってきている。
【0007】
しかしながら、上述のインバータ回路で構成した遅延回路や、特許文献1に示されるように別途のタイミング補正回路にてタイミングを調整する場合、遅延回路を構成する素子の比較的大きなプロセスバラツキによって遅延時間にバラツキが発生し、また、電源電圧や温度変化の影響を受け易くなり、高い精度での信号の位相差を制御することができない。
【0008】
また、特許文献1に示すようなタイミング調整方法の場合では、本来機能を実現するための回路に加えて、別途、タイミング補正回路を準備するために、回路規模を増大させることとなる。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の入力信号または出力信号について製造バラツキや電源電圧や温度変化の影響を少なくし、適切なタイミングでの動作を実現する位相調整回路装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る位相調整回路装置は、入力信号として受け付けた2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の位相差検出信号を出力する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力された前記位相差検出信号の電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号を出力する電圧制御発振回路を有してなる位相同期回路と、入力信号として受け付けた位相の異なる同一周波数の複数のクロック信号の1つを選択して位相調整用の参照クロック信号として出力する位相選択回路と、外部から入力される第1入力クロック信号の信号レベルの変化タイミングを前記位相選択回路から出力される前記参照クロック信号の立ち上がりまたは立ち下がりタイミングに合わせる位相調整を行うフリップフロップ回路と、を備えてなり、前記2つの入力クロック信号の一方側として、前記位相調整後の前記第1入力クロック信号を前記位相比較回路に入力可能に構成し、前記2つの入力クロック信号の他方側として、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号が所定の外部回路を経由して得られる遅延クロック信号を前記位相比較回路にフィードバック可能に構成されていることを第1の特徴とする。
【0011】
上記第1の特徴を備えた位相調整回路装置によれば、位相調整のためにインバータ回路等の遅延回路を用いず、位相の異なる複数のクロック信号の中から最適な位相調整用の参照クロック信号を選択して生成するため、製造バラツキや、電源電圧、温度変化による遅延変動への影響に対して調整可能で、安定した確実な信号入出力動作を実現することができる。
【0012】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1の特徴に加えて、前記位相選択回路に入力される前記複数のクロック信号が、前記電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号、または、前記複数の発振信号に基づいて生成された信号であることを第2の特徴とする。
【0013】
上記第2の特徴を備えた位相調整回路装置によれば、クロック信号に同期して動作する外部の信号処理回路に対して当該クロック信号の基準となる基準クロック信号を供給する電圧制御発振回路で生成された位相の異なる同一周波数の複数の発振信号を、位相選択回路に入力される位相の異なる複数のクロック信号とすることで、位相調整回路装置の内部または外部において当該位相の異なる複数のクロック信号を生成するための回路を別途設ける必要がない。
【0014】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1の特徴に加えて、入力信号として受け付けた2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の第2位相差検出信号を出力する第2位相比較回路と、前記第2位相比較回路から出力された前記第2位相差検出信号の電圧値に応じた周波数で発振する第2基準クロック信号を出力する第2電圧制御発振回路を有してなる第2位相同期回路を備え、前記位相選択回路に入力される前記複数のクロック信号が、前記第2電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号、または、前記複数の発振信号に基づいて生成された信号であることを第3の特徴とする。
【0015】
上記第3の特徴を備えた位相調整回路装置によれば、他の信号処理回路用の基準クロック信号を生成するための第2位相同期回路の第2電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号を、位相選択回路に入力される位相の異なる複数のクロック信号とすることで、位相調整回路装置の内部または外部において当該位相の異なる複数のクロック信号を生成するための回路を別途設ける必要がない。
【0016】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1乃至第3の何れかの特徴に加えて、前記位相調整前の前記第1入力クロック信号と、前記位相調整後の前記第1入力クロック信号の何れか一方を択一的に選択する入力クロック選択回路を備え、前記入力クロック選択回路で選択された前記位相調整前または前記位相調整後の前記第1入力クロック信号が前記2つの入力クロック信号の一方として前記位相差検出信号に入力可能に構成されていることを第4の特徴とする。
【0017】
上記第4の特徴の位相調整回路装置によれば、位相調整の必要がない場合は、位相調整前の第1入力クロック信号を選択して、位相比較回路の一方側の入力クロック信号とすることができる。また、位相調整を開始した場合に、位相調整後の第1入力クロック信号を選択して、位相比較回路の一方側の入力クロック信号とすることができる。従って、入力クロック選択回路の入力切り替えによって、位相調整前後の状態を自在に切り替えることができる。
【0018】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1乃至第4の何れかの特徴に加えて、前記位相選択回路に入力された前記複数のクロック信号の1つを選択するための選択信号を外部から入力可能に構成されていることを第5の特徴とする。
【0019】
上記第5の特徴の位相調整回路装置によれば、位相調整のための複数のクロック信号の選択制御を外部から行える。
【0020】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1乃至第4の何れかの特徴に加えて、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号を使用する同期式回路群における所定の同期式回路動作におけるタイミングエラー量を評価するエラー評価信号を入力信号として受け付け、前記エラー評価信号に基づいて、前記位相選択回路に入力された前記複数のクロック信号の1つを選択するための選択信号を生成する選択信号生成回路を備えることを第6の特徴とする。
【0021】
上記第6の特徴の位相調整回路装置によれば、基準クロック信号を使用する同期式回路群における所定の同期式回路動作におけるタイミングエラー量に応じた最適な位相調整が可能となる。
【0022】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1乃至第6の何れかの特徴に加えて、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け可能に構成され、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作が活性化されることを第7の特徴とする。
【0023】
上記第7の特徴の位相調整回路装置によれば、位相調整が必要な状況において外部から適時に位相調整動作を起動させることができる。
【0024】
更に、本発明に係るタイミング調整回路システムは、上記第6の特徴の位相調整回路装置と、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号を使用する同期式回路群を備えてなり、前記エラー評価信号が、前記同期式回路群において生成され前記選択信号生成回路に入力可能に構成されていることを第1の特徴とする。
【0025】
上記第1の特徴のタイミング調整回路システムによれば、同期式回路群におけるタイミングエラーを解消するように基準クロック信号が位相調整されるため、自動的にタイミングエラーを解消可能なタイミング調整回路システムが実現できる。
【0026】
更に、本発明に係るタイミング調整回路システムは、上記第1の特徴のタイミング調整回路システムにおいて、前記タイミング調整回路システム内に備えられた位相調整回路装置が、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作を起動可能に構成され、前記タイミング調整回路システムに供給される電源電圧の電圧変動を検知して、前記起動信号を生成する回路を備えることを第2の特徴とする。
【0027】
上記第2の特徴のタイミング調整回路システムによれば、電源電圧が変動したタイミングで、位相調整回路装置が位相調整を行うことが可能となる。
【0028】
更に、本発明に係るタイミング調整回路システムは、上記第1の特徴のタイミング調整回路システムにおいて、前記タイミング調整回路システム内に備えられた位相調整回路装置が、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作を起動可能に構成され、前記タイミング調整回路システムを構成する半導体基板の温度変動を検知して、前記起動信号を生成する回路を備えることを第3の特徴とする。
【0029】
上記第3の特徴のタイミング調整回路システムによれば、温度が変動したタイミングで、位相調整回路装置が位相調整を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る位相調整回路装置、及び、タイミング調整回路システム(以下、適宜「本発明装置」及び「本発明システム」と略称する)の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
〈第1実施形態〉
図1は、本発明装置1の基本動作を実現する基本的な回路構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本発明装置1の基本的な回路構成は、2つの入力クロック信号C2,C4の位相差に応じた電圧値の位相差検出信号Sfを出力する位相比較回路(以下、適宜「PFD回路」と称す)2と、PFD回路2から出力された位相差検出信号Sfの電圧値(信号レベル)に応じた周波数で発振する基準クロック信号C0を出力する電圧制御発振回路(以下、適宜「VCO回路」と称す)3を有してなる位相同期回路(以下、適宜「PLL回路」と称す)8と、入力信号として受け付けた位相の異なる同一周波数の複数のクロック信号C6の1つを選択して位相調整用の参照クロック信号C3として出力する位相選択回路4と、外部から入力される第1入力クロック信号C1の信号レベルの変化タイミングを位相選択回路4から出力される参照クロック信号C3の立ち上がりに合わせて第1入力クロック信号C1の位相調整を行うフリップフロップ回路5を備えて構成される。
【0032】
ここで、基準クロック信号C0は、クロック信号に同期して動作する外部の信号処理回路(図示せず)のシステムクロック信号の基準となる信号で、第1入力クロック信号C1は、その基準クロック信号C0をPLL回路8で生成するための基本となる外部クロック信号である。図1に示す基本的な回路構成では、PFD回路2の2つの入力クロック信号の一方側が、フリップフロップ回路5で位相調整された後の第1入力クロック信号C4で、他方側が、VCO回路3から出力される基準クロック信号C0が所定の外部回路(図示せず)を経由して得られる遅延クロック信号C2である。ここで、所定の外部回路としては、例えば、上記外部の信号処理回路のシステムクロック信号を生成するドライブ回路やその出力信号配線(配線の寄生抵抗と寄生容量等で表現される分布定数回路)等が想定される。
【0033】
図1に示す基本的な回路構成において、参照クロック信号C3は、位相選択回路4にて、複数のクロック信号C6を択一的に選択する選択信号S1が入力されることにより、入力された位相調整用の複数のクロック信号C6の中から選択された1つの位相調整用のクロック信号である。フリップフロップ回路5で位相調整動作は、外部から入力される第1入力クロック信号C1の信号レベルの変化タイミングを、フリップフロップ回路5のクロック入力に入力される参照クロック信号C3の立ち上がりタイミングで第1入力クロック信号C1の信号レベル(論理状態)を取り込んで出力することで実行される。
【0034】
PLL回路8は、位相調整後の第1入力クロック信号C4の位相と、上記外部の信号処理回路からフィードバックされた遅延クロック信号C2の位相について、PFD回路2で夫々の位相を比較してその位相差を電圧値に変換した位相差検出信号Sfを、次段のVCO回路3に出力する。VCO回路3は、出力された位相差検出信号Sfを受けて、その電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号C0を出力する。尚、図1に示す基本的な回路構成では、PLL回路8は、PFD回路2とVCO回路3と分周回路7を備えた構成を例示しているが、実際には、一般的なPLL回路と同様に、チャージポンプ回路や、ローパスフィルタ等を備えたものであるが、PLL回路2自体の回路構成は、本発明の趣旨と直接関係ないため、詳細な回路構成の図示及び説明は省略する。
【0035】
位相選択回路4に入力される選択信号S1に必要なビット数は、複数のクロック信号C6の本数により変更される。例えば、図2に示す位相選択回路4の一実施例においては、位相調整用の位相の異なるクロック信号C6a〜C6dの4本が位相選択回路4に入力しており、選択信号S1は選択信号S1a,S1bの2ビット構成となる。この場合、例えば、図3の真理値表に示すような選択動作が考えられる。また、この真理値表の選択動作を実現する一実施例として、図4に示す論理回路が考えられる。以下、図3の真理値表と図4の論理回路を用いて、当該選択動作を説明する。
【0036】
図4において、先ず、選択信号S1aと選択信号S1bが共に論理“0”のとき、インバータ回路14により、選択信号S1a、選択信号S1bが反転されて、XS1a、XS1bが共に論理1となり、論理積回路(以下、適宜「AND回路」と称す)15aによって、クロック信号C6aが通過可能となる。AND回路15b、15c、15dは、入力される選択信号S1a,S1bの少なくとも何れか一方が論理“0”の入力となるため、クロック信号C6b,C6c、C6dは通過することができず、AND回路15b、15c、15dの出力は、論理“0”となる。これらのAND回路15a〜15dの出力結果を受けて、論理和回路(以下、適宜「OR回路」と称す)16は、クロック信号C6aを選択して出力し、参照クロック信号C3に伝達されることとなる。
【0037】
以下同様に、選択信号S1aが論理“0”、選択信号S1bが論理“1”のときは、クロック信号C6bが選択され、選択信号S1aが論理“1”、選択信号S1bが論理“0”のときは、クロック信号C6cが選択され、選択信号S1aと選択信号S1bが共に論理“1”のときは、クロック信号C6dが選択され、図3の真理値表の選択動作を実現できる。
【0038】
次に、図2において、選択された位相調整用のクロック信号である参照クロック信号C3が、如何にして、第1入力クロック信号C1の位相を調整するかを、図5のクロック伝播のタイミング図を用いて説明する。図2において、フリップフロップ5は一般的なD型フリップフロップ回路である。
【0039】
図5において、クロック信号C6aが選択された場合を想定して説明すると、フリップフロップ5のデータ入力として入力された第1入力クロック信号C1を位相調整用クロック信号C6aの立ち上りエッヂPEcにて、この時点の第1入力クロック信号C1の論理状態PDcを取り込み、フリップフロップ5のデータ出力から出力C4aのOcエッヂとして出力される。ここでのクロック信号C6aと出力C4aは、図2における参照クロック信号C3と位相調整後の第1入力クロック信号C4に該当する。以下、位相選択回路4により、参照クロック信号C3としてクロック信号C6b〜C6dの何れか1つが選択された場合、フリップフロップ5のデータ出力から出力C3b〜C3dの対応する1つが出力される。この結果、クロック信号C6a〜C6d間に位相差があれば、位相調整後の第1入力クロック信号C4は、当該位相差に応じて位相調整されることとなる。
【0040】
以上、本発明装置1を、位相調整用の位相の異なるクロック信号C6a〜C6dが4本で、選択信号S1が2ビットで構成される場合を想定した実施例に基づいて説明したが、本発明装置1は、上述の実施例に限定されるものではなく、位相調整の必要性に応じ、特許請求の範囲で特定される本発明の技術的範囲内で様々な変形が可能である。
【0041】
〈第2実施形態〉
図6は、本発明装置1の第1実施形態に示す基本的な回路構成からの一変形例を示すブロック図である。図6において、図1と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0042】
図6に示すように、第2実施形態における本発明装置1aは、図1に示す第1実施形態の基本的な回路構成の本発明装置1に加えて、同一回路装置内に構成されるPLL回路8の構成ブロックであるVCO回路3の内部の信号を位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6として利用するための位相調整用クロック伝播配線3aを備える。
【0043】
図6において、位相調整用クロック伝播配線3aは、VCO回路3の構成により配線本数は異なる。以下、VCO回路3の一実施例を示す図7を参照して、VCO回路3の動作を説明する。
【0044】
図7は、VCO回路3の一実施例の回路構成を示す図である。図8は、図7で用いられる差動アンプ回路17のシンボル図の拡大図である。個々の差動アンプ17は、非反転入力端子IPと反転入力端子INから入力される1対の差動入力を有し、非反転出力端子OPと反転出力端子ONから出力される1対の差動出力を有する一般的な差動アンプであり、詳細な回路構成及び動作についての説明は省略する。但し、図8の差動アンプ回路シンボルを用いて簡単な動作を説明すると、差動入力対IP,INの電圧差(VIP−VIN)により出力電圧VOP,VONが制御され、差動入力(VIP−VIN)と同相の非反転出力信号が、差動アンプ17の非反転出力端子OPから出力され、差動入力(VIP−VIN)と逆相の出力信号が、差動アンプ17の反転出力端子ONから出力されることとなる。
【0045】
図7において、上述の動作の差動アンプ回路17を5段縦列に接続し、夫々の非反転出力端子OPを次段の非反転入力端子IPに接続し、反転出力端子ONを次段の反転入力端子INに接続する。これに加え、最終段の差動アンプ17の非反転出力端子OPから出力される信号VCOOUTである帰還信号VPを初段の差動アンプ17の反転入力端子INに入力し、最終段の差動アンプ17の反転出力端子ONから出力される信号VCOOUTの反転信号VNを初段の差動アンプ17の非反転入力端子IPに入力する構成となる。また、図7において、初段の差動アンプ17の非反転出力端子OPから信号VC1が、2段目の差動アンプ17の非反転出力端子OPから信号VC2が、3段目の差動アンプ17の非反転出力端子OPから信号VC3が、4段目の差動アンプ17の非反転出力端子OPから信号VC4が、夫々出力される。当該信号VC1〜VC4は、図6に示す位相調整用クロック伝播配線3aを介して位相選択回路4に、位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6として入力される。
【0046】
図9は、図7に示すVCO回路3の動作を示すタイミング図である。ここで、初段の差動アンプ17の非反転出力端子OPから出力される信号VC1を2段目の差動アンプ17の非反転入力端子IPに入力し、信号VC1の反転信号を2段目の差動アンプ17の反転入力端子INに入力し、非反転出力端子OPから信号VC2が出力される。同様に、信号VC2を3段目の差動アンプ17に入力して信号VC3が出力され、信号VC3を4段目の差動アンプ17に入力して信号VC4が出力され、信号VC4を5段目の差動アンプ17に入力して信号VCOOUTを出力が出力される。各段の差動アンプ17は夫々特定の遅延値を有するため、図9に示すように、信号VC1から信号VC2、信号VC2から信号VC3、信号VC3から信号VC4、信号VC4から信号VCOOUTは、夫々一定分位相がずれたものとなる。
【0047】
〈第3実施形態〉
図10は、図6に示す第2実施形態における本発明装置1aからの一変形例を示すブロック図である。図10において、図6と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0048】
図10に示すように、第3実施形態における本発明装置1bは、図6に示す第2実施形態における本発明装置1aに加えて、位相調整前の第1入力クロック信号C1と、位相調整後の第1入力クロック信号C4の何れか一方を択一的に選択する入力クロック選択回路6と、位相調整前と位相調整後の何れの第1入力クロック信号C1,C4を選択するか決定するための入力選択信号S2を備え、入力クロック選択回路6で選択された第1入力クロック信号C1,C4の何れか一方を選択入力クロック信号C5としてPFD回路2の2つの入力クロック信号の一方側に入力するように構成となっている。
【0049】
図10において、入力クロック選択回路6は位相調整前と位相調整後の2つの第1入力クロック信号C1,C4の二者択一を行うため、入力選択信号S2は1ビットの信号でよい。例えば、図11の真理値表に示すような動作が考えられる。
【0050】
また、図11の真理値表の動作を実現する一実施例として、図12に示す論理回路が考えられる。ここで図11の真理値表と、図12の論理回路を用いてこの一実施例の動作を説明する。
【0051】
図12において、入力選択信号S2が論理“0”の場合は、インバータ回路18により、入力選択信号S2が反転されて、反転入力選択信号XS2が論理“1”となる。AND回路19aには、位相調整前の第1入力クロック信号C1と入力選択信号S2とが入力される。ここで、入力選択信号S2が論理“0”であるため、第1入力クロック信号C1はAND回路19aを通過できないこととなる。AND回路19bには、位相調整後の第1入力クロック信号C4と反転入力選択信号XS2とが入力される。ここで、反転入力選択信号XS2が論理“1”であるため、位相調整後の第1入力クロック信号C4はAND回路19bを通過可能となる。OR回路20は、AND回路19a,19bの出力結果を受け、AND回路19aの出力が論理“0”であるため、選択入力クロック信号C5には位相調整後の第1入力クロック信号C4が出力される。逆に、入力選択信号S2が論理“1”の場合は、インバータ回路18により、入力選択信号S2が反転されて、反転入力選択信号XS2が論理“0”となる。AND回路19aには、位相調整前の第1入力クロック信号C1と入力選択信号S2とが入力される。ここで、入力選択信号S2が論理“1”であるため、第1入力クロック信号C1はAND回路19aを通過可能となる。AND回路19bには、位相調整後の第1入力クロック信号C4と反転入力選択信号XS2とが入力される。ここで、反転入力選択信号XS2が論理“0”であるため、位相調整後の第1入力クロック信号C4はAND回路19bを通過できないこととなる。OR回路20は、AND回路19a,19bの出力結果を受け、AND回路19bの出力が論理“0”であるため、選択入力クロック信号C5には位相調整前の第1入力クロック信号C1が出力される。
【0052】
〈第4実施形態〉
図13は、図10に示す第3実施形態における本発明装置1bからの一変形例を示すブロック図である。図13において、図10と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0053】
第4実施形態における本発明装置1cは、図10に示す第3実施形態における本発明装置1bに対して以下に示す変更を加えている。図13に示すように、VCO回路3の内部の信号を位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6として利用するための位相調整用クロック伝播配線3aを設けずに、その代わりに、主たるクロック信号生成用のPLL回路8とは別に、位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6を生成するために利用する第2のPLL回路9(第2位相同期回路に相当)を備え、その第2のPLL回路9に内蔵される第2のVCO回路3x(第2電圧制御発振回路に相当)の内部の信号を位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6として利用するための位相調整用クロック伝播配線3bを備える。尚、PLL回路9は、PLL回路8と同様に、第2のPFD回路2x(第2位相比較回路に相当)、第2のVCO回路3x、第2の分周回路7xを備えた構成となっている。ここで、第2のPFD回路2xの2つの入力クロック信号の一方側に第1入力クロック信号C1が入力し、その他方側に第2の分周回路7xの出力信号C2xが入力し、PFD回路2で夫々の位相を比較してその位相差を電圧値に変換した位相差検出信号Sfxを、次段のVCO回路3xに出力する。第2のVCO回路3xは、出力された位相差検出信号Sfxを受けて、その電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号C0x(第2基準クロック信号に相当)を出力する。尚、図13に示す第2のPLL回路9は、実際には、一般的なPLL回路と同様に、チャージポンプ回路や、ローパスフィルタ等を備えたものであるが、PLL回路9自体の回路構成は、本発明の趣旨と直接関係ないため、詳細な回路構成の図示及び説明は省略する。
【0054】
図13において、内蔵される位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6を生成するために利用する第2のPLL回路9は、PLL回路8と同様の動作をするPLL回路であり、第2のPLL回路9に内蔵される第2のVCO回路3xは、図7、図8、及び、図9を用いて説明したVCO回路3と同一の回路構成が可能であるため、第2のVCO回路3xに関する重複する説明は省略する。
【0055】
〈第5実施形態〉
図14は、本発明装置1の第1実施形態に示す基本的な回路構成からの他の変形例を示すブロック図である。図14において、図1及び図2と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0056】
図14に示すように、第5実施形態における本発明装置1dは、図2に示す第1実施形態の基本的な回路構成の本発明装置1に加えて、位相選択回路4の複数のクロック信号C6(C6a〜C6d)の何れか1つを選択するクロック選択動作を制御する選択信号S1(S1a,S1b)を生成する選択信号生成回路24を備える。更に、本発明装置1dは、本発明装置1dの位相調整動作を起動させる起動信号CHKを外部から受け付けて選択信号生成回路24に入力可能に構成されている。
【0057】
選択信号生成回路24は、VCO回路3から出力される基準クロック信号C0を使用して生成されるシステムクロック信号に同期して動作する外部の信号処理回路(同期式回路群)における所定の同期式回路動作におけるタイミングエラー量を評価するエラー評価信号Serrを入力信号として受け付け、当該エラー評価信号Serrに基づいて、選択信号S1(S1a,S1b)を生成する。
【0058】
本発明装置1dは、選択信号生成回路24が、起動信号CHKを受け付けて活性化されると、エラー評価信号Serrの入力に応じて、位相調整用の複数のクロック信号C6a〜C6dと位相調整前の第1入力クロック信号C1とを用いて、選択信号S1a,S1bを生成する。位相選択回路4は、選択信号生成回路24で生成された選択信号S1a、S1bが入力されると、選択信号S1a、S1bに応じた複数のクロック信号C6a〜C6dの1つを選択して、参照クロック信号C3を出力する。フリップフロップ回路5が参照クロック信号C3の立ち上がりに合わせて第1入力クロック信号C1の位相調整を行い、位相調整後の第1入力クロック信号C4がPFD回路2の2つの入力クロック信号の一方側として入力される点は、第1実施形態と同様である。この結果、第1実施形態で説明したのと同様の位相調整動作が実現される。
【0059】
図15は、第5実施形態における本発明装置1dで使用する選択信号生成回路24の一構成例を示すブロック図である。図15において、選択信号生成回路24は、クロックチェック回路25とエッヂカウント回路26と選択信号出力回路27を備えて構成される。図16は、選択信号生成回路24の動作を説明する各回路25〜27の入力信号と出力信号の電圧波形を示すタイミング図であり、図17は、選択信号出力回路27の動作を説明する真理値表である。
【0060】
クロックチェック回路25は、第1入力クロック信号C1と位相調整用の複数のクロック信号C6a〜C6dを入力信号として受け付け、第1入力クロック信号C1と各クロック信号C6a〜C6dの位相差に応じた位相差パルス出力信号X6a〜X6dを出力する。具体的には、図16に示すように、クロックチェック回路25が、基準となる第1入力クロック信号C1とクロック信号C6a〜C6dを入力信号として受け付けると、第1入力クロック信号C1の立ち上がりエッジとクロック信号C6a〜C6dの各立ち上がりエッジの差(位相差))に相当するパルス幅の位相差パルス出力信号X6a〜X6dを出力する。
【0061】
エッヂカウント回路26は、クロックチェック回路25から出力された位相差パルス出力信号X6a〜X6dと、エラー評価信号Serrとを受け取り、エラー評価信号Serrが論理“1”の期間中に出現する位相差パルス出力信号X6a〜X6dの立ち上がり及び立下りエッヂの回数をカウントして、その各エッヂの出現回数のカウント結果により、例えば、出現回数が偶数回数であれば論理“0”となり、出現回数が奇数回数であれば論理“1”となるカウント出力信号XA〜XDを出力する。
【0062】
エラー評価信号Serrは、基準クロック信号C0を使用して生成されるシステムクロック信号に同期させるべき信号処理回路内での所定の同期式回路動作におけるデータまたは制御信号との間に生じたタイミングエラー量を評価したもので、例えば、同期させるべき当該信号処理回路内でのクロック信号とセットアップ或いはホールドエラー対象の信号との間に生じたタイミングエラー量を評価した信号となる。
【0063】
選択信号出力回路27は、エッヂカウント回路26から出力されたカウント出力信号XA〜XDを受け付けて選択信号S1a、S1bを出力する。具体的には、エラー評価信号Serrが非アクティブ状態になった時点にて、エッヂカウント回路26からのカウント出力信号XA〜XDの各論理値をチェックして、図17の真理値表に示す通りに、カウント出力信号XA〜XDの全てが論理“1”であれば、選択信号S1a、S1bの結果の組み合わせを論理“00”とする。また、カウント出力信号XB〜XDの3つのカウント出力信号が論理“1”であれば、選択信号S1a、S1bの結果の組み合わせが論理“01”となり、カウント出力信号XC、XDの2つのカウント出力信号が論理“1” であれば、選択信号S1a、S1bの結果の組み合わせが論理“10”となり、カウント出力信号XDのみが論理“1” であれば、選択信号S1a、S1bの結果の組み合わせが論理“11”となる。
【0064】
上述の構成により、選択信号生成回路24では、エラー評価信号Serrの示すタイミングエラー量に応じて、位相選択回路4が制御され、適正な位相の参照クロック信号C3を、第1入力クロック信号C1に対して位相調整動作を行うフリップフロップ5に出力することが可能となる。
【0065】
尚、上記説明では、エラー評価信号Serrのアクティブ状態が論理“1”の場合を想定しているが、当該アクティブ状態が逆の論理“0”の場合等種々の別態様が考えられる。また同様に、その他の信号状態についても種々の別態様が可能である。
【0066】
また、本実施形態では、起動信号CHKを選択信号生成回路24に入力して、選択信号生成回路24を活性化させることで、本発明装置1dの位相調整動作を起動させる場合を想定して説明したが、この場合、起動信号CHKは、例えば、選択信号出力回路27に入力して、起動前の状態において、選択信号出力回路27の出力信号である選択信号S1a、S1bの組み合わせを所定のデフォルト値とすることで、位相調整動作の非活性化状態では、常時、選択信号S1a、S1bのデフォルト値で選択される位相のクロック信号C6と同位相の参照クロック信号C3によって位相調整された第1入力クロック信号C4が固定的にPFD回路2に入力することになる。
【0067】
〈第6実施形態〉
図18は、外部の信号処理回路(同期式回路群)における信号取り込みのタイミング調整をその都度可能な本発明に係るタイミング調整回路システム21(本発明システム)の一実施形態における回路構成を示すブロック図である。尚、図18において、図14と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0068】
図18に示すように、本発明システム21は、第5実施形態における本発明装置1dを利用したタイミング調整回路システムであり、本発明装置1dと、本発明装置1dのVCO回路3から出力される基準クロック信号C0を使用する信号処理回路22(同期式回路群に相当)と、クロックツリー回路23を備えてなる。また、本発明装置1dの選択信号生成回路24に入力すべきエラー評価信号Serrは、信号処理回路22において生成される。
【0069】
本発明装置1dは、第1入力クロック信号C1を受け付けて、信号処理回路22がクロック同期式の所定の信号処理を行うためのシステムクロック信号Csysの基となる基準クロック信号C0を生成するとともに、信号処理回路22内での所定の同期式回路動作(例えば、内部データや制御信号等のサンプリングホールド動作)におけるタイミングエラーを解消するための基準クロック信号C0の位相調整を行う。ここで、本発明装置1dの基準クロック信号C0の生成用に用いられるPLL回路8は、第1実施形態で説明したPLL回路8と同等の構成を有している。
【0070】
クロックツリー回路23は、基準クロック信号C0のスキューを低減させる目的で挿入されたクロックドライバ回路で、実際に信号処理回路22内で使用されるシステムクロック信号Csysを、基準クロック信号C0を基に生成する。
【0071】
ここで、システムクロック信号Csysが、信号処理回路22内でタイミングエラーを起しているか否かチェックしたいタイミングで、本発明システム21の外部または内部の別回路より、本発明装置1dによる位相調整動作の開始を指示する起動信号CHKをアクティブ状態にすることで、選択信号生成回路24が活性化され、エラー評価信号Serrのアクティブ状態の期間で表されるタイミングエラー量に応じた選択信号S1a、S1bを出力し、位相選択回路4が、その選択信号S1a、S1bに応じた複数のクロック信号C6a〜C6dの1つを選択して、参照クロック信号C3を出力する。これにより、フリップフロップ回路5が参照クロック信号C3の立ち上がりに合わせて第1入力クロック信号C1の位相調整を開始する。ここで、起動信号CHKは、論理“1”または“0”の状態が、或る一定期間同一状態で固定されている信号である。
【0072】
図19は、本発明システム21の信号処理回路22内における内部データや制御信号等のサンプリングホールド動作のタイミングをその都度合せ込むための本発明装置1dでの基準クロック信号C0の位相調整動作における動作タイミングを示すタイミング図である。
【0073】
図19のタイミング図において、例えば、内部データDAxを取得したい場合に位相調整前の第1入力クロック信号C1の位相で規定されるシステムクロック信号Csysの立ち上がりタイミングでは、内部データDAxが確定しておらず、正しいデータ値を取得することができない。ここで、本発明装置1dの位相選択回路4のクロック選択動作を示す図3の真理値表から、選択信号S1a,S1bを共に論理“1”に設定し、位相調整用のクロック信号C6dを選択すると、クロック信号C6dの立ち上がりタイミングでラッチされる位相調整後の第1入力クロック信号C4で規定されるシステムクロック信号Csysの立ち上がりタイミングによって、内部データDAxのデータが確定した時点DAOKにて、正しく内部データDAxを取得可能となる。尚、図19のタイミング図において、本発明装置1dでの位相調整前の状態では、位相調整前の第1入力クロック信号C1とシステムクロック信号CsysがPLL回路8で同位相に固定され、本発明装置1dでの位相調整後の状態では、位相調整後の第1入力クロック信号C4とシステムクロック信号CsysがPLL回路8で同位相に固定される場合を想定している。
【0074】
〈第7実施形態〉
図20は、外部の信号処理回路(同期式回路群)における信号取り込みのタイミング調整をその都度可能な本発明に係るタイミング調整回路システム30(本発明システム)の別の実施形態における回路構成を示すブロック図である。尚、図20において、図18に示す第6実施形態と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0075】
図20に示すように、第7実施形態の本発明システム30は、第5実施形態における本発明装置1dを同一システム上に複数個(本実施形態では2つ)配置して利用したタイミング調整回路システムであり、第6実施形態の本発明システム21と、本発明システム21と同じ構成のタイミング調整回路システム31を、同一システム内に備えた構成となっている。
【0076】
図20において、本発明システム30は、2つの本発明装置1dと、2つの本発明装置1dに各別に対応する2つのクロックツリー回路23,29と、2つの本発明装置1dの夫々のVCO回路3から出力される基準クロック信号C0,C0’を各別に使用する信号処理回路22,28を備えてなる。2つの本発明装置1dの夫々の位相調整動作は、第6実施形態の本発明システム21の場合と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0077】
2つの本発明装置1dには、夫々別々の第1入力クロック信号C1,C1’と起動信号CHK,CHK’とエラー評価信号Serr,Serr’が独立して入力し、基準クロック信号C0,C0’を各別に独立して出力する。従って、2つの信号処理回路22,28では、夫々個別のシステムクロック信号Csys,Csys’が独立して使用される。尚、位相調整用のクロック信号C6a〜C6dを2つの本発明装置1d間で共通に使用することで、回路規模の増大を抑制できる。以上の構成により、同一システム内の2つの信号処理回路22,28のタイミングエラーを個別に分割して調整可能となる。
【0078】
本実施形態では、2つの本発明装置1dを同一システム上に配置した構成であるが、本発明装置1dの配置数は、2つに限定されるものではなく、種々の配置構成が可能である。また同様に、複数の本発明装置1d間において、位相調整用のクロック信号C6a〜C6dは必ずしも共通に使用しなくても構わない。
【0079】
〈第8実施形態〉
図23は、第6実施形態における本発明に係るタイミング調整回路システム21の別実施形態を示すブロック図である。第8実施形態の本発明に係るタイミング調整回路システム50(本発明システム)は、第6実施形態のタイミング調整回路システム21に含まれる第5実施形態における本発明装置(位相調整回路装置)1dに対して位相調整を起動する起動信号を生成する回路である電圧検出回路40を含む構成となっている。本発明システム21は、第6実施形態で説明したものと同じであり、重複する説明は省略する。
【0080】
図23に示すように、第8実施形態の本発明システム50は、タイミング調整回路システム21と電圧検出回路40を備え、電圧検出回路40の出力と、本発明装置1dの起動信号CHKの入力端子を接続して構成される。電圧検出回路40は、タイミング調整回路システム21に供給される電源電圧VDDの状態を監視し、特定電圧レベルからの変化量がある一定量を超えたとき、タイミング調整回路システム21内の本発明装置1dに対して位相調整動作を起動させる起動信号CHKを出力する。
【0081】
図24は、図23に示す電圧検出回路40の一実施例を示す回路ブロック図である。図24に示すように、電圧検出回路40は、2つのコンパレータ42a,42bと、2つのバッファ43a,43bと、電圧検出信号制御回路44を備えて構成される。
【0082】
コンパレータ42aは、電源電圧VDDと第1の電圧検出用閾値電圧VTH1の電圧差に基づいて、電源電圧VDDの第1の電圧変動を検出する。コンパレータ42bは、電源電圧VDDと第2の電圧検出用閾値電圧VTH2の電圧差に基づいて、電源電圧VDDの第2の電圧変動を検出する。2つのバッファ43a,43bは、各コンパレータ42a,42bからの出力信号を夫々そのまま次段に伝播する。電圧検出信号制御回路44は、各コンパレータ42a,42bからバッファ43a,43bを介して伝播された電源電圧変動判定信号VO1,VO2を受けて、起動信号CHKを活性化し、本発明装置1dから出力される位相調整の終了を示す信号Cendを受けて、起動信号CHKを非活性化する。尚、本発明装置1dは、起動信号CHKを受け付けて位相調整動作を開始し、位相調整が終了すると、外部に位相調整終了信号Cendを出力可能な構成となっている。
【0083】
図25は、図24に示す電圧検出回路40の動作タイミングの一例を示すタイミング図である。以下、図24及び図25を参照して、電圧検出回路40の動作を具体的に説明する。
【0084】
一方のコンパレータ42a及びバッファ43は、図25のタイミング図で電源電圧VDDが第1の電圧変動を検出するための基準となる第1の電圧検出用閾値電圧VTH1より高電圧になったとき、コンパレータ42aからバッファ43aを経由し伝播される電源電圧変動判定信号VO1を電源電圧変動判定点VO1aで、論理1から論理0に変化させる。同様に、電源電圧VDDが、一度第1の電圧検出用閾値電圧VTH1より高電圧になった後に、再び第1の電圧検出用閾値電圧VTH1より低くなったとき、コンパレータ42aからバッファ43aを経由し伝播される電源電圧変動判定信号VO1を電源電圧変動判定点VO1bで論理0から論理1に変化させる。
【0085】
更に、他方のコンパレータ42b及びバッファ43bは、図25のタイミング図で電源電圧VDDが第2の電圧変動を検出するための基準となる第2の電圧検出用閾値電圧VTH2より低電圧になったとき、コンパレータ42bからバッファ43bを経由し伝播される電源電圧変動判定信号VO2を電源電圧変動判定点VO2aで、論理0から論理1に変化させる。同様に、電源電圧VDDが、一度第2の電圧検出用閾値電圧VTH2より低電圧になった後に、再び第2の電圧検出用閾値電圧VTH2より高くなったとき、コンパレータ42bからバッファ43を経由し伝播される電源電圧変動判定信号VO2を電源電圧変動判定点VO2bで論理1から論理0に変化させる。
【0086】
また、図25において、電源電圧変動判定信号VO1及びVO2が論理0と論理1の間で変化する点VO1a,VO1b,VO2a,VO2bのタイミングにおいて、電圧検出信号制御回路44は、起動信号CHKを論理1から論理0に変化させ活性化する。その後、電圧検出信号制御回路44は、位相調整が終了したことを示す信号Cendを本発明装置1dから受け取り、その信号Cendのパルスの各立下り点VCe1,VCe2,VCe3,VCe4にて、起動信号CHKを論理0から論理1に変化させ非活性化する。
【0087】
これにより、本発明システム50は、図25に示すように、起動信号CHKの論理0の期間、即ち、VTc1、VTc2、VTc3、VTc4で矢示する期間中に、本発明装置1dに対し位相調整を行う時間を提供し、本発明装置1dは、電源電圧VDDが変動したタイミングで、位相調整を行うことが可能となる。
【0088】
本実施形態では、起動信号CHKの有効レベル(活性化状態)を論理0としているが、この論理レベルは0に限定されるものではなく、論理1による実現も可能である。また同様に、起動信号CHKが活性化されるタイミングと電源電圧変動判定信号VO1,VO2の論理レベルとの間の関係、または、起動信号CHKが非活性化されるタイミングと信号Cendの論理レベルとの間の関係も、本実施形態の例に限定されるものではない。
【0089】
〈第9実施形態〉
図26は、第6実施形態における本発明に係るタイミング調整回路システム21の他の別実施形態を示すブロック図である。第9実施形態の本発明に係るタイミング調整回路システム51(本発明システム)は、第6実施形態のタイミング調整回路システム21に含まれる第5実施形態における本発明装置(位相調整回路装置)1dに対して位相調整を起動する起動信号を生成する回路である温度検出回路41を含む構成となっている。本発明システム21は、第6実施形態で説明したものと同じであり、重複する説明は省略する。
【0090】
図26に示すように、第9実施形態の本発明システム51は、タイミング調整回路システム21と温度検出回路41を備え、温度検出回路41の出力と、本発明装置1dの起動信号CHKの入力端子を接続して構成される。温度検出回路41は、タイミング調整回路システム21を含む半導体集積回路の温度の状態を監視し、特定温度レベルからの変化量がある一定量を超えたとき、タイミング調整回路システム21内の本発明装置1dに対して位相調整動作を起動させる起動信号CHKを出力する。
【0091】
図27は、図26に示す温度検出回路41の一実施例を示す回路ブロック図である。図26に示すように、温度検出回路41は、温度検出用の基準電圧を生成するための抵抗52,53の直列回路と、温度変動を検出するための抵抗54とダイオード55の直列回路と、コンパレータ42cと、温度検出信号制御回路45を備えて構成される。
【0092】
コンパレータ42cは、抵抗52,53の直列回路の中点から得られる基準電圧VREFと、抵抗54とダイオード55の直列回路の中点から得られる温度上昇判定電圧VTMPの各電圧を比較して、その比較結果を出力信号TO1として出力する。温度検出信号制御回路45は、コンパレータ42cの比較結果TO1を受けて、起動信号CHKを活性化し、本発明装置1dから出力される位相調整の終了を示す信号Cendを受けて、起動信号CHKを非活性化する。尚、本発明装置1dは、起動信号CHKを受け付けて位相調整動作を開始し、位相調整が終了すると、外部に位相調整終了信号Cendを出力可能な構成となっている。
【0093】
図28は、図27に示す温度検出回路41の動作タイミングの一例を示すタイミング図である。以下、図27及び図28を参照して、温度検出回路41の動作を具体的に説明する。
【0094】
図27において、温度検出のための基準となる温度検出用基準電圧VREFは、電源電圧VDDが抵抗52と抵抗53により分圧されて生成され、コンパレータ42cの正入力端子(+)に入力される。温度上昇判定電圧VTMPは、電源電圧VDDが抵抗54とダイオード55により分圧されて生成され、コンパレータ42cの負入力端子(−)に入力される。ダイオード55の立ち上がり電圧は温度上昇とともに低下するので、温度上昇判定電圧VTMPは温度上昇とともに低下する。一方、温度検出用基準電圧VREFは、抵抗52と抵抗53の温度特性が同じであるので温度上昇が起きても変わらないため、コンパレータ42cの出力TO1は、温度上昇判定電圧VTMPが温度検出用基準電圧VREFを下回るタイミングに合わせて電圧が高くなり、論理0から論理1に変化する。
【0095】
コンパレータ42cの出力TO1が論理0から論理1に変化すると、温度検出信号制御回路45は、コンパレータ42cの出力TO1を受けてTO1が論理0から論理1に変化する点TO1aのタイミングにおいて、起動信号CHKを論理1から論理0に変化させ活性化する。その後、温度検出信号制御回路45は、位相調整が終了したことを示す信号Cendを本発明装置1dから受け取り、その信号Cendのパルスの各立下り点TCe1にて、起動信号CHKを論理0から論理1に変化させ非活性化する。
【0096】
これにより、本発明システム51は、図28に示すように、起動信号CHKの論理0の期間、即ち、TTc1で矢示する期間中に、本発明装置1dに対し位相調整を行う時間を提供し、本発明装置1dは、温度が変動したタイミングで、位相調整を行うことが可能なる。
【0097】
本実施形態では、起動信号CHKの有効レベル(活性化状態)を論理0としているが、この論理レベルは0に限定されるものではなく、論理1による実現も可能である。また同様に、起動信号CHKが活性化されるタイミングと温度電圧変動判定信号TO1の論理レベルとの間の関係、または、起動信号CHKが非活性化されるタイミングと信号Cendの論理レベルとの間の関係も、本実施形態の例に限定されるものではない。
【0098】
〈別実施形態〉
以下に、本発明装置及び本発明システムの別実施形態について説明する。
【0099】
〈1〉本発明装置中のPLL回路8,9の構成は、上記各実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、VCO回路3の構成については、一般的に種々の形態のものが使用可能であり、図7に例示した構成に限定されず、例えば、インバータ回路を環状に接続したリングオシレータ等、発振経路途中から位相の異なる複数のクロック信号を取り出せる構成のものであれば利用可能である。
【0100】
〈2〉上記第5実施形態の選択信号生成回路24を備えた本発明装置の回路構成を、第2、第3或いは第4実施形態の本発明装置1a,1b,1cに適用するのも好ましい。従って、第6または第7実施形態における本発明システム21,30が、第5実施形態の本発明装置1dに代えて、選択信号生成回路24を備えた第2、第3或いは第4実施形態の本発明装置1a,1b,1cの変形構成の位相調整回路装置を備えた構成としてもよい。
【0101】
〈3〉上記第5乃至第7実施形態において、起動信号CHKは、選択信号生成回路24に入力する場合を想定して説明したが、選択信号生成回路24に入力せずに、位相選択回路4、フリップフロップ回路5、或いは、入力クロック選択回路6に入力して、位相調整動作の活性化及び非活性化を制御するようにしても構わない。同様に、上記第1または第2実施形態において、位相選択回路4またはフリップフロップ回路5に起動信号CHKを入力して位相調整動作の活性化及び非活性化を制御するようにしても構わない、或いは、上記第1または第2実施形態において、位相選択回路4、フリップフロップ回路5、または、入力クロック選択回路6の何れかに起動信号CHKを入力して位相調整動作の活性化及び非活性化を制御するようにしても構わない。
【0102】
〈4〉上記第8実施形態の本発明システム50に、第9実施形態の本発明システム51に用いた温度検出回路41を追加し、上記第8実施形態と第9実施形態を統合した本発明に係るタイミング調整回路システムを構成するようにしてもよい。この場合、例えば、電圧検出回路40の出力と温度検出回路41の出力を夫々論理積ゲートの入力に接続し、本発明装置1dの起動信号CHKの入力端子に当該論理積ゲートの出力を接続することで、電圧検出回路40の出力と温度検出回路41の出力が何れか一方が論理0となった場合に、当該論理積ゲートの出力信号である起動信号CHKが論理0となり、本発明装置1dは、電源電圧VDDまたは温度が変動したタイミングで、位相調整を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る位相調整回路装置及びタイミング調整回路システムは、クロック同期式の回路装置におけるタイミング調整回路に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における基本的な回路構成の一例を示すブロック図
【図2】図1に示す本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における回路構成の一実施例を示すブロック図
【図3】本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における位相選択回路のクロック信号の選択動作を説明する真理値表
【図4】本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における位相選択回路の一回路構成例を示す論理回路図
【図5】本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における位相調整動作を説明するタイミング図
【図6】本発明に係る位相調整回路装置の第2実施形態における回路構成の一例を示すブロック図
【図7】本発明に係る位相調整回路装置の第2実施形態における電圧制御発振回路の一回路構成例を示す回路図
【図8】図7に示す電圧制御発振回路で使用される差動アンプ回路を示す回路シンボル図
【図9】図7に示す電圧制御発振回路の回路動作を説明するタイミング図
【図10】本発明に係る位相調整回路装置の第3実施形態における回路構成の一例を示すブロック図
【図11】本発明に係る位相調整回路装置の第3実施形態における入力クロック選択回路の選択動作を説明する真理値表
【図12】図11に示す入力クロック選択回路の選択動作を実現する回路構成例を示す論理回路図
【図13】本発明に係る位相調整回路装置の第4実施形態における回路構成の一例を示すブロック図
【図14】本発明に係る位相調整回路装置の第5実施形態における回路構成の一例を示すブロック図
【図15】本発明に係る位相調整回路装置の第5実施形態における選択信号生成回路の一回路構成例を示すブロック図
【図16】図15に示す選択信号生成回路の回路動作を説明するタイミング図
【図17】図15に示す選択信号生成回路の回路動作を説明する真理値表
【図18】本発明に係るタイミング調整回路システムの一実施形態における回路構成例を示すブロック図
【図19】図18に示す本発明に係るタイミング調整回路システムの位相調整回路装置における位相調整動作の一例における動作タイミングを示すタイミング図
【図20】本発明に係るタイミング調整回路システムの別の実施形態における回路構成例を示すブロック図
【図21】従来のタイミング調整回路システムで使用されるインバータ回路で構成された遅延回路を示す回路図
【図22】従来のPLL回路を用いたタイミング調整回路の一回路構成例を示すブロック図
【図23】本発明に係るタイミング調整回路システムの別の実施形態における電源電圧レベルにより位相調整を起動する起動信号を生成する回路を含む回路構成例を示すブロック図
【図24】図23に示す電圧検出回路の回路構成の一例を示す回路ブロック図
【図25】図24に示す電圧検出回路の動作タイミングの一例を示すタイミング図
【図26】本発明に係るタイミング調整回路システムの別の実施形態における温度変化により位相調整を起動する起動信号を生成する回路を含む回路構成例を示すブロック図
【図27】図26に示す温度検出回路の回路構成の一例を示す回路ブロック図
【図28】図27に示す温度検出回路の動作タイミングの一例を示すタイミング図
【符号の説明】
【0105】
1,1a〜1d: 本発明に係る位相調整回路装置
2,2x: 位相比較回路
3,3x: 電圧制御発振回路
3a,3b: 位相調整用クロック伝播配線
4: 位相選択回路
5: フリップフロップ回路
6: 入力クロック選択回路
7,7x: 分周回路
8,9,11: 位相同期回路(PLL回路)
10: インバータ回路
12a: 第1クロックツリー
12b: 第2クロックツリー
13a: 第1タイミング補正回路
13b: 第1タイミング補正回路
14: インバータ回路
15a〜15d: 論理積回路
16: 論理和回路
17: 差動アンプ回路
18: インバータ回路
19a,19b: 論理積回路
20: 論理和回路
21,30,31: 本発明に係るタイミング調整回路システム
22,28: 信号処理回路(同期式回路群)
23,29: クロックツリー回路
24: 選択信号生成回路
25: クロックチェック回路
26: エッヂカウント回路
27: 選択信号出力回路
40: 電圧検出回路
41: 温度検出回路
42a,42b,42c: コンパレータ
43a,43b: バッファ
44: 電圧検出信号制御回路
45: 温度検出信号制御回路
50,51: 起動信号生成回路内蔵の本発明に係るタイミング調整回路システム
52,53,54: 抵抗素子
55: ダイオード
C0,C0’: 基準クロック信号
C0x: 第2基準クロック信号
C1,C1’: 位相調整前の第1入力クロック信号
C2x: 第2の分周回路の出力信号
C2,C2’: 遅延クロック信号
C3,C3’: 参照クロック信号
C4,C4’: 位相調整後の第1入力クロック信号
C4a〜C4d: クロック信号C6a〜C6dで調整したフリップフロップの出力
C5: 選択入力クロック信号
C6,C6a〜C6d: 位相調整用の複数のクロック信号
CHK,CHK’: 起動信号
CK0: 第1タイミング補正回路への入力信号
CK1: 第1タイミング補正回路からの出力信号
Cend: 位相調整終了信号
Csys,Csys’: システムクロック信号
CX: クロック信号
DAOK: 内部データのデータ確定時点
DAx: 内部データ
IP: 差動アンプ回路の非反転入力端子
IN: 差動アンプ回路の反転入力端子
IN1: インバータ遅延回路の入力信号
Oc: フリップフロップの出力C4aの立ち上りエッヂ
ON: 差動アンプ回路の反転出力端子
OP: 差動アンプ回路の非反転出力端子
OUT1: インバータ遅延回路の出力信号
PDc: 位相調整前の第1入力クロック信号の論理状態
PEc: クロック信号C6aの立ち上りエッヂ
S1,S1a,S1b,S1a’,S1b’: 選択信号
S2: 入力選択信号
Serr,Serr’: エラー評価信号
Sf,Sfx: 位相差検出信号
TCe1: 位相調整期間終了判定点
TO1: 温度変動判定信号
TO1a: 温度変動判定点
TTC: 温度変化を起動信号とした位相調整期間
VC1: 電圧制御発振回路の初段差動アンプ回路の出力信号
VC2: 電圧制御発振回路の2段目差動アンプ回路の出力信号
VC3: 電圧制御発振回路の3段目差動アンプ回路の出力信号
VC4: 電圧制御発振回路の最終段差動アンプ回路の出力信号
VCOOUT: 電圧制御発振回路の出力信号
VCe1〜VCe4: 位相調整期間終了判定点
VDD: 電源電圧
VN: 反転信号
VO1,VO2: 電源電圧変動判定信号
VO1a,VO1b: 電源電圧変動判定点
VO2a,VO2b: 電源電圧変動判定点
VP: 帰還信号
VREF 温度検出用基準電圧
VTc1〜VTc4: 電圧変化を起動信号とした位相調整期間
VTMP: 温度上昇判定電圧
VTH1,VTH2: 電圧検出用閾値電圧
X6a〜X6d: 位相差パルス出力信号
XA〜XD: カウント出力信号
XS1a,XS1b: 反転選択信号
XS2: 反転入力選択信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にクロック同期式の回路装置におけるタイミング調整回路に関し、より詳しくは、クロック同期式回路装置で利用するクロック信号とそれに対応した入力信号との位相ずれを補正する位相調整回路装置と、当該位相調整回路装置を用いたタイミング調整回路システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロック信号に同期して動作する信号処理回路において、入力クロック信号に同期して入力される入力信号との配線経路での遅延差で生じる位相差を打ち消す位相調整のために、図21に示すようなインバータ回路で構成された遅延回路が用いられている。
【0003】
当該遅延回路による位相調整では、インバータ回路10の遅延時間を縦列接続する段数等の調整により位相差が打ち消されるように設定し、基本の入力クロック信号IN1がインバータ回路10を伝播することにより所望の遅延クロック信号OUT1を出力する。この遅延回路においては、入力クロック信号IN1と同相の出力クロック信号OUT1を得るためには偶数個のインバータ回路を縦列接続し、入力クロック信号IN1と逆相の出力クロック信号OUT1を得るためには奇数個のインバータ回路を縦列接続する。
【0004】
また、PLL回路を用いたタイミング調整回路としては、例えば、下記の特許文献1に開示された位相調整回路を用いたものがある。特許文献1では、図22に示すとおり、PLL回路11から出力されたクロック信号CXを所定の第1クロックツリー12aと、フィードバック側の第2クロックツリー12bとへ伝播する構成をとり、夫々のクロックツリーの後段に異なる所定の遅延時間を持たせた第1タイミング補正回路13a及び第2タイミング補正回路13bを備え、例えば、第1タイミング補正回路13aに接続された入力信号CK0と出力信号CK1を入力信号または出力信号の制御信号とすることにより、タイミング調整を行う方法が示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−316879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クロック信号に同期して動作する信号処理回路において、動作周波数の高速化に伴い、それに同期して入力される入力信号との配線経路での遅延差で生じる位相差が無視できなくなってきている。
【0007】
しかしながら、上述のインバータ回路で構成した遅延回路や、特許文献1に示されるように別途のタイミング補正回路にてタイミングを調整する場合、遅延回路を構成する素子の比較的大きなプロセスバラツキによって遅延時間にバラツキが発生し、また、電源電圧や温度変化の影響を受け易くなり、高い精度での信号の位相差を制御することができない。
【0008】
また、特許文献1に示すようなタイミング調整方法の場合では、本来機能を実現するための回路に加えて、別途、タイミング補正回路を準備するために、回路規模を増大させることとなる。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の入力信号または出力信号について製造バラツキや電源電圧や温度変化の影響を少なくし、適切なタイミングでの動作を実現する位相調整回路装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る位相調整回路装置は、入力信号として受け付けた2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の位相差検出信号を出力する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力された前記位相差検出信号の電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号を出力する電圧制御発振回路を有してなる位相同期回路と、入力信号として受け付けた位相の異なる同一周波数の複数のクロック信号の1つを選択して位相調整用の参照クロック信号として出力する位相選択回路と、外部から入力される第1入力クロック信号の信号レベルの変化タイミングを前記位相選択回路から出力される前記参照クロック信号の立ち上がりまたは立ち下がりタイミングに合わせる位相調整を行うフリップフロップ回路と、を備えてなり、前記2つの入力クロック信号の一方側として、前記位相調整後の前記第1入力クロック信号を前記位相比較回路に入力可能に構成し、前記2つの入力クロック信号の他方側として、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号が所定の外部回路を経由して得られる遅延クロック信号を前記位相比較回路にフィードバック可能に構成されていることを第1の特徴とする。
【0011】
上記第1の特徴を備えた位相調整回路装置によれば、位相調整のためにインバータ回路等の遅延回路を用いず、位相の異なる複数のクロック信号の中から最適な位相調整用の参照クロック信号を選択して生成するため、製造バラツキや、電源電圧、温度変化による遅延変動への影響に対して調整可能で、安定した確実な信号入出力動作を実現することができる。
【0012】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1の特徴に加えて、前記位相選択回路に入力される前記複数のクロック信号が、前記電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号、または、前記複数の発振信号に基づいて生成された信号であることを第2の特徴とする。
【0013】
上記第2の特徴を備えた位相調整回路装置によれば、クロック信号に同期して動作する外部の信号処理回路に対して当該クロック信号の基準となる基準クロック信号を供給する電圧制御発振回路で生成された位相の異なる同一周波数の複数の発振信号を、位相選択回路に入力される位相の異なる複数のクロック信号とすることで、位相調整回路装置の内部または外部において当該位相の異なる複数のクロック信号を生成するための回路を別途設ける必要がない。
【0014】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1の特徴に加えて、入力信号として受け付けた2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の第2位相差検出信号を出力する第2位相比較回路と、前記第2位相比較回路から出力された前記第2位相差検出信号の電圧値に応じた周波数で発振する第2基準クロック信号を出力する第2電圧制御発振回路を有してなる第2位相同期回路を備え、前記位相選択回路に入力される前記複数のクロック信号が、前記第2電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号、または、前記複数の発振信号に基づいて生成された信号であることを第3の特徴とする。
【0015】
上記第3の特徴を備えた位相調整回路装置によれば、他の信号処理回路用の基準クロック信号を生成するための第2位相同期回路の第2電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号を、位相選択回路に入力される位相の異なる複数のクロック信号とすることで、位相調整回路装置の内部または外部において当該位相の異なる複数のクロック信号を生成するための回路を別途設ける必要がない。
【0016】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1乃至第3の何れかの特徴に加えて、前記位相調整前の前記第1入力クロック信号と、前記位相調整後の前記第1入力クロック信号の何れか一方を択一的に選択する入力クロック選択回路を備え、前記入力クロック選択回路で選択された前記位相調整前または前記位相調整後の前記第1入力クロック信号が前記2つの入力クロック信号の一方として前記位相差検出信号に入力可能に構成されていることを第4の特徴とする。
【0017】
上記第4の特徴の位相調整回路装置によれば、位相調整の必要がない場合は、位相調整前の第1入力クロック信号を選択して、位相比較回路の一方側の入力クロック信号とすることができる。また、位相調整を開始した場合に、位相調整後の第1入力クロック信号を選択して、位相比較回路の一方側の入力クロック信号とすることができる。従って、入力クロック選択回路の入力切り替えによって、位相調整前後の状態を自在に切り替えることができる。
【0018】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1乃至第4の何れかの特徴に加えて、前記位相選択回路に入力された前記複数のクロック信号の1つを選択するための選択信号を外部から入力可能に構成されていることを第5の特徴とする。
【0019】
上記第5の特徴の位相調整回路装置によれば、位相調整のための複数のクロック信号の選択制御を外部から行える。
【0020】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1乃至第4の何れかの特徴に加えて、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号を使用する同期式回路群における所定の同期式回路動作におけるタイミングエラー量を評価するエラー評価信号を入力信号として受け付け、前記エラー評価信号に基づいて、前記位相選択回路に入力された前記複数のクロック信号の1つを選択するための選択信号を生成する選択信号生成回路を備えることを第6の特徴とする。
【0021】
上記第6の特徴の位相調整回路装置によれば、基準クロック信号を使用する同期式回路群における所定の同期式回路動作におけるタイミングエラー量に応じた最適な位相調整が可能となる。
【0022】
更に、本発明に係る位相調整回路装置は、上記第1乃至第6の何れかの特徴に加えて、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け可能に構成され、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作が活性化されることを第7の特徴とする。
【0023】
上記第7の特徴の位相調整回路装置によれば、位相調整が必要な状況において外部から適時に位相調整動作を起動させることができる。
【0024】
更に、本発明に係るタイミング調整回路システムは、上記第6の特徴の位相調整回路装置と、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号を使用する同期式回路群を備えてなり、前記エラー評価信号が、前記同期式回路群において生成され前記選択信号生成回路に入力可能に構成されていることを第1の特徴とする。
【0025】
上記第1の特徴のタイミング調整回路システムによれば、同期式回路群におけるタイミングエラーを解消するように基準クロック信号が位相調整されるため、自動的にタイミングエラーを解消可能なタイミング調整回路システムが実現できる。
【0026】
更に、本発明に係るタイミング調整回路システムは、上記第1の特徴のタイミング調整回路システムにおいて、前記タイミング調整回路システム内に備えられた位相調整回路装置が、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作を起動可能に構成され、前記タイミング調整回路システムに供給される電源電圧の電圧変動を検知して、前記起動信号を生成する回路を備えることを第2の特徴とする。
【0027】
上記第2の特徴のタイミング調整回路システムによれば、電源電圧が変動したタイミングで、位相調整回路装置が位相調整を行うことが可能となる。
【0028】
更に、本発明に係るタイミング調整回路システムは、上記第1の特徴のタイミング調整回路システムにおいて、前記タイミング調整回路システム内に備えられた位相調整回路装置が、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作を起動可能に構成され、前記タイミング調整回路システムを構成する半導体基板の温度変動を検知して、前記起動信号を生成する回路を備えることを第3の特徴とする。
【0029】
上記第3の特徴のタイミング調整回路システムによれば、温度が変動したタイミングで、位相調整回路装置が位相調整を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明に係る位相調整回路装置、及び、タイミング調整回路システム(以下、適宜「本発明装置」及び「本発明システム」と略称する)の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0031】
〈第1実施形態〉
図1は、本発明装置1の基本動作を実現する基本的な回路構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、本発明装置1の基本的な回路構成は、2つの入力クロック信号C2,C4の位相差に応じた電圧値の位相差検出信号Sfを出力する位相比較回路(以下、適宜「PFD回路」と称す)2と、PFD回路2から出力された位相差検出信号Sfの電圧値(信号レベル)に応じた周波数で発振する基準クロック信号C0を出力する電圧制御発振回路(以下、適宜「VCO回路」と称す)3を有してなる位相同期回路(以下、適宜「PLL回路」と称す)8と、入力信号として受け付けた位相の異なる同一周波数の複数のクロック信号C6の1つを選択して位相調整用の参照クロック信号C3として出力する位相選択回路4と、外部から入力される第1入力クロック信号C1の信号レベルの変化タイミングを位相選択回路4から出力される参照クロック信号C3の立ち上がりに合わせて第1入力クロック信号C1の位相調整を行うフリップフロップ回路5を備えて構成される。
【0032】
ここで、基準クロック信号C0は、クロック信号に同期して動作する外部の信号処理回路(図示せず)のシステムクロック信号の基準となる信号で、第1入力クロック信号C1は、その基準クロック信号C0をPLL回路8で生成するための基本となる外部クロック信号である。図1に示す基本的な回路構成では、PFD回路2の2つの入力クロック信号の一方側が、フリップフロップ回路5で位相調整された後の第1入力クロック信号C4で、他方側が、VCO回路3から出力される基準クロック信号C0が所定の外部回路(図示せず)を経由して得られる遅延クロック信号C2である。ここで、所定の外部回路としては、例えば、上記外部の信号処理回路のシステムクロック信号を生成するドライブ回路やその出力信号配線(配線の寄生抵抗と寄生容量等で表現される分布定数回路)等が想定される。
【0033】
図1に示す基本的な回路構成において、参照クロック信号C3は、位相選択回路4にて、複数のクロック信号C6を択一的に選択する選択信号S1が入力されることにより、入力された位相調整用の複数のクロック信号C6の中から選択された1つの位相調整用のクロック信号である。フリップフロップ回路5で位相調整動作は、外部から入力される第1入力クロック信号C1の信号レベルの変化タイミングを、フリップフロップ回路5のクロック入力に入力される参照クロック信号C3の立ち上がりタイミングで第1入力クロック信号C1の信号レベル(論理状態)を取り込んで出力することで実行される。
【0034】
PLL回路8は、位相調整後の第1入力クロック信号C4の位相と、上記外部の信号処理回路からフィードバックされた遅延クロック信号C2の位相について、PFD回路2で夫々の位相を比較してその位相差を電圧値に変換した位相差検出信号Sfを、次段のVCO回路3に出力する。VCO回路3は、出力された位相差検出信号Sfを受けて、その電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号C0を出力する。尚、図1に示す基本的な回路構成では、PLL回路8は、PFD回路2とVCO回路3と分周回路7を備えた構成を例示しているが、実際には、一般的なPLL回路と同様に、チャージポンプ回路や、ローパスフィルタ等を備えたものであるが、PLL回路2自体の回路構成は、本発明の趣旨と直接関係ないため、詳細な回路構成の図示及び説明は省略する。
【0035】
位相選択回路4に入力される選択信号S1に必要なビット数は、複数のクロック信号C6の本数により変更される。例えば、図2に示す位相選択回路4の一実施例においては、位相調整用の位相の異なるクロック信号C6a〜C6dの4本が位相選択回路4に入力しており、選択信号S1は選択信号S1a,S1bの2ビット構成となる。この場合、例えば、図3の真理値表に示すような選択動作が考えられる。また、この真理値表の選択動作を実現する一実施例として、図4に示す論理回路が考えられる。以下、図3の真理値表と図4の論理回路を用いて、当該選択動作を説明する。
【0036】
図4において、先ず、選択信号S1aと選択信号S1bが共に論理“0”のとき、インバータ回路14により、選択信号S1a、選択信号S1bが反転されて、XS1a、XS1bが共に論理1となり、論理積回路(以下、適宜「AND回路」と称す)15aによって、クロック信号C6aが通過可能となる。AND回路15b、15c、15dは、入力される選択信号S1a,S1bの少なくとも何れか一方が論理“0”の入力となるため、クロック信号C6b,C6c、C6dは通過することができず、AND回路15b、15c、15dの出力は、論理“0”となる。これらのAND回路15a〜15dの出力結果を受けて、論理和回路(以下、適宜「OR回路」と称す)16は、クロック信号C6aを選択して出力し、参照クロック信号C3に伝達されることとなる。
【0037】
以下同様に、選択信号S1aが論理“0”、選択信号S1bが論理“1”のときは、クロック信号C6bが選択され、選択信号S1aが論理“1”、選択信号S1bが論理“0”のときは、クロック信号C6cが選択され、選択信号S1aと選択信号S1bが共に論理“1”のときは、クロック信号C6dが選択され、図3の真理値表の選択動作を実現できる。
【0038】
次に、図2において、選択された位相調整用のクロック信号である参照クロック信号C3が、如何にして、第1入力クロック信号C1の位相を調整するかを、図5のクロック伝播のタイミング図を用いて説明する。図2において、フリップフロップ5は一般的なD型フリップフロップ回路である。
【0039】
図5において、クロック信号C6aが選択された場合を想定して説明すると、フリップフロップ5のデータ入力として入力された第1入力クロック信号C1を位相調整用クロック信号C6aの立ち上りエッヂPEcにて、この時点の第1入力クロック信号C1の論理状態PDcを取り込み、フリップフロップ5のデータ出力から出力C4aのOcエッヂとして出力される。ここでのクロック信号C6aと出力C4aは、図2における参照クロック信号C3と位相調整後の第1入力クロック信号C4に該当する。以下、位相選択回路4により、参照クロック信号C3としてクロック信号C6b〜C6dの何れか1つが選択された場合、フリップフロップ5のデータ出力から出力C3b〜C3dの対応する1つが出力される。この結果、クロック信号C6a〜C6d間に位相差があれば、位相調整後の第1入力クロック信号C4は、当該位相差に応じて位相調整されることとなる。
【0040】
以上、本発明装置1を、位相調整用の位相の異なるクロック信号C6a〜C6dが4本で、選択信号S1が2ビットで構成される場合を想定した実施例に基づいて説明したが、本発明装置1は、上述の実施例に限定されるものではなく、位相調整の必要性に応じ、特許請求の範囲で特定される本発明の技術的範囲内で様々な変形が可能である。
【0041】
〈第2実施形態〉
図6は、本発明装置1の第1実施形態に示す基本的な回路構成からの一変形例を示すブロック図である。図6において、図1と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0042】
図6に示すように、第2実施形態における本発明装置1aは、図1に示す第1実施形態の基本的な回路構成の本発明装置1に加えて、同一回路装置内に構成されるPLL回路8の構成ブロックであるVCO回路3の内部の信号を位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6として利用するための位相調整用クロック伝播配線3aを備える。
【0043】
図6において、位相調整用クロック伝播配線3aは、VCO回路3の構成により配線本数は異なる。以下、VCO回路3の一実施例を示す図7を参照して、VCO回路3の動作を説明する。
【0044】
図7は、VCO回路3の一実施例の回路構成を示す図である。図8は、図7で用いられる差動アンプ回路17のシンボル図の拡大図である。個々の差動アンプ17は、非反転入力端子IPと反転入力端子INから入力される1対の差動入力を有し、非反転出力端子OPと反転出力端子ONから出力される1対の差動出力を有する一般的な差動アンプであり、詳細な回路構成及び動作についての説明は省略する。但し、図8の差動アンプ回路シンボルを用いて簡単な動作を説明すると、差動入力対IP,INの電圧差(VIP−VIN)により出力電圧VOP,VONが制御され、差動入力(VIP−VIN)と同相の非反転出力信号が、差動アンプ17の非反転出力端子OPから出力され、差動入力(VIP−VIN)と逆相の出力信号が、差動アンプ17の反転出力端子ONから出力されることとなる。
【0045】
図7において、上述の動作の差動アンプ回路17を5段縦列に接続し、夫々の非反転出力端子OPを次段の非反転入力端子IPに接続し、反転出力端子ONを次段の反転入力端子INに接続する。これに加え、最終段の差動アンプ17の非反転出力端子OPから出力される信号VCOOUTである帰還信号VPを初段の差動アンプ17の反転入力端子INに入力し、最終段の差動アンプ17の反転出力端子ONから出力される信号VCOOUTの反転信号VNを初段の差動アンプ17の非反転入力端子IPに入力する構成となる。また、図7において、初段の差動アンプ17の非反転出力端子OPから信号VC1が、2段目の差動アンプ17の非反転出力端子OPから信号VC2が、3段目の差動アンプ17の非反転出力端子OPから信号VC3が、4段目の差動アンプ17の非反転出力端子OPから信号VC4が、夫々出力される。当該信号VC1〜VC4は、図6に示す位相調整用クロック伝播配線3aを介して位相選択回路4に、位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6として入力される。
【0046】
図9は、図7に示すVCO回路3の動作を示すタイミング図である。ここで、初段の差動アンプ17の非反転出力端子OPから出力される信号VC1を2段目の差動アンプ17の非反転入力端子IPに入力し、信号VC1の反転信号を2段目の差動アンプ17の反転入力端子INに入力し、非反転出力端子OPから信号VC2が出力される。同様に、信号VC2を3段目の差動アンプ17に入力して信号VC3が出力され、信号VC3を4段目の差動アンプ17に入力して信号VC4が出力され、信号VC4を5段目の差動アンプ17に入力して信号VCOOUTを出力が出力される。各段の差動アンプ17は夫々特定の遅延値を有するため、図9に示すように、信号VC1から信号VC2、信号VC2から信号VC3、信号VC3から信号VC4、信号VC4から信号VCOOUTは、夫々一定分位相がずれたものとなる。
【0047】
〈第3実施形態〉
図10は、図6に示す第2実施形態における本発明装置1aからの一変形例を示すブロック図である。図10において、図6と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0048】
図10に示すように、第3実施形態における本発明装置1bは、図6に示す第2実施形態における本発明装置1aに加えて、位相調整前の第1入力クロック信号C1と、位相調整後の第1入力クロック信号C4の何れか一方を択一的に選択する入力クロック選択回路6と、位相調整前と位相調整後の何れの第1入力クロック信号C1,C4を選択するか決定するための入力選択信号S2を備え、入力クロック選択回路6で選択された第1入力クロック信号C1,C4の何れか一方を選択入力クロック信号C5としてPFD回路2の2つの入力クロック信号の一方側に入力するように構成となっている。
【0049】
図10において、入力クロック選択回路6は位相調整前と位相調整後の2つの第1入力クロック信号C1,C4の二者択一を行うため、入力選択信号S2は1ビットの信号でよい。例えば、図11の真理値表に示すような動作が考えられる。
【0050】
また、図11の真理値表の動作を実現する一実施例として、図12に示す論理回路が考えられる。ここで図11の真理値表と、図12の論理回路を用いてこの一実施例の動作を説明する。
【0051】
図12において、入力選択信号S2が論理“0”の場合は、インバータ回路18により、入力選択信号S2が反転されて、反転入力選択信号XS2が論理“1”となる。AND回路19aには、位相調整前の第1入力クロック信号C1と入力選択信号S2とが入力される。ここで、入力選択信号S2が論理“0”であるため、第1入力クロック信号C1はAND回路19aを通過できないこととなる。AND回路19bには、位相調整後の第1入力クロック信号C4と反転入力選択信号XS2とが入力される。ここで、反転入力選択信号XS2が論理“1”であるため、位相調整後の第1入力クロック信号C4はAND回路19bを通過可能となる。OR回路20は、AND回路19a,19bの出力結果を受け、AND回路19aの出力が論理“0”であるため、選択入力クロック信号C5には位相調整後の第1入力クロック信号C4が出力される。逆に、入力選択信号S2が論理“1”の場合は、インバータ回路18により、入力選択信号S2が反転されて、反転入力選択信号XS2が論理“0”となる。AND回路19aには、位相調整前の第1入力クロック信号C1と入力選択信号S2とが入力される。ここで、入力選択信号S2が論理“1”であるため、第1入力クロック信号C1はAND回路19aを通過可能となる。AND回路19bには、位相調整後の第1入力クロック信号C4と反転入力選択信号XS2とが入力される。ここで、反転入力選択信号XS2が論理“0”であるため、位相調整後の第1入力クロック信号C4はAND回路19bを通過できないこととなる。OR回路20は、AND回路19a,19bの出力結果を受け、AND回路19bの出力が論理“0”であるため、選択入力クロック信号C5には位相調整前の第1入力クロック信号C1が出力される。
【0052】
〈第4実施形態〉
図13は、図10に示す第3実施形態における本発明装置1bからの一変形例を示すブロック図である。図13において、図10と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0053】
第4実施形態における本発明装置1cは、図10に示す第3実施形態における本発明装置1bに対して以下に示す変更を加えている。図13に示すように、VCO回路3の内部の信号を位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6として利用するための位相調整用クロック伝播配線3aを設けずに、その代わりに、主たるクロック信号生成用のPLL回路8とは別に、位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6を生成するために利用する第2のPLL回路9(第2位相同期回路に相当)を備え、その第2のPLL回路9に内蔵される第2のVCO回路3x(第2電圧制御発振回路に相当)の内部の信号を位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6として利用するための位相調整用クロック伝播配線3bを備える。尚、PLL回路9は、PLL回路8と同様に、第2のPFD回路2x(第2位相比較回路に相当)、第2のVCO回路3x、第2の分周回路7xを備えた構成となっている。ここで、第2のPFD回路2xの2つの入力クロック信号の一方側に第1入力クロック信号C1が入力し、その他方側に第2の分周回路7xの出力信号C2xが入力し、PFD回路2で夫々の位相を比較してその位相差を電圧値に変換した位相差検出信号Sfxを、次段のVCO回路3xに出力する。第2のVCO回路3xは、出力された位相差検出信号Sfxを受けて、その電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号C0x(第2基準クロック信号に相当)を出力する。尚、図13に示す第2のPLL回路9は、実際には、一般的なPLL回路と同様に、チャージポンプ回路や、ローパスフィルタ等を備えたものであるが、PLL回路9自体の回路構成は、本発明の趣旨と直接関係ないため、詳細な回路構成の図示及び説明は省略する。
【0054】
図13において、内蔵される位相調整用の位相の異なる複数のクロック信号C6を生成するために利用する第2のPLL回路9は、PLL回路8と同様の動作をするPLL回路であり、第2のPLL回路9に内蔵される第2のVCO回路3xは、図7、図8、及び、図9を用いて説明したVCO回路3と同一の回路構成が可能であるため、第2のVCO回路3xに関する重複する説明は省略する。
【0055】
〈第5実施形態〉
図14は、本発明装置1の第1実施形態に示す基本的な回路構成からの他の変形例を示すブロック図である。図14において、図1及び図2と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0056】
図14に示すように、第5実施形態における本発明装置1dは、図2に示す第1実施形態の基本的な回路構成の本発明装置1に加えて、位相選択回路4の複数のクロック信号C6(C6a〜C6d)の何れか1つを選択するクロック選択動作を制御する選択信号S1(S1a,S1b)を生成する選択信号生成回路24を備える。更に、本発明装置1dは、本発明装置1dの位相調整動作を起動させる起動信号CHKを外部から受け付けて選択信号生成回路24に入力可能に構成されている。
【0057】
選択信号生成回路24は、VCO回路3から出力される基準クロック信号C0を使用して生成されるシステムクロック信号に同期して動作する外部の信号処理回路(同期式回路群)における所定の同期式回路動作におけるタイミングエラー量を評価するエラー評価信号Serrを入力信号として受け付け、当該エラー評価信号Serrに基づいて、選択信号S1(S1a,S1b)を生成する。
【0058】
本発明装置1dは、選択信号生成回路24が、起動信号CHKを受け付けて活性化されると、エラー評価信号Serrの入力に応じて、位相調整用の複数のクロック信号C6a〜C6dと位相調整前の第1入力クロック信号C1とを用いて、選択信号S1a,S1bを生成する。位相選択回路4は、選択信号生成回路24で生成された選択信号S1a、S1bが入力されると、選択信号S1a、S1bに応じた複数のクロック信号C6a〜C6dの1つを選択して、参照クロック信号C3を出力する。フリップフロップ回路5が参照クロック信号C3の立ち上がりに合わせて第1入力クロック信号C1の位相調整を行い、位相調整後の第1入力クロック信号C4がPFD回路2の2つの入力クロック信号の一方側として入力される点は、第1実施形態と同様である。この結果、第1実施形態で説明したのと同様の位相調整動作が実現される。
【0059】
図15は、第5実施形態における本発明装置1dで使用する選択信号生成回路24の一構成例を示すブロック図である。図15において、選択信号生成回路24は、クロックチェック回路25とエッヂカウント回路26と選択信号出力回路27を備えて構成される。図16は、選択信号生成回路24の動作を説明する各回路25〜27の入力信号と出力信号の電圧波形を示すタイミング図であり、図17は、選択信号出力回路27の動作を説明する真理値表である。
【0060】
クロックチェック回路25は、第1入力クロック信号C1と位相調整用の複数のクロック信号C6a〜C6dを入力信号として受け付け、第1入力クロック信号C1と各クロック信号C6a〜C6dの位相差に応じた位相差パルス出力信号X6a〜X6dを出力する。具体的には、図16に示すように、クロックチェック回路25が、基準となる第1入力クロック信号C1とクロック信号C6a〜C6dを入力信号として受け付けると、第1入力クロック信号C1の立ち上がりエッジとクロック信号C6a〜C6dの各立ち上がりエッジの差(位相差))に相当するパルス幅の位相差パルス出力信号X6a〜X6dを出力する。
【0061】
エッヂカウント回路26は、クロックチェック回路25から出力された位相差パルス出力信号X6a〜X6dと、エラー評価信号Serrとを受け取り、エラー評価信号Serrが論理“1”の期間中に出現する位相差パルス出力信号X6a〜X6dの立ち上がり及び立下りエッヂの回数をカウントして、その各エッヂの出現回数のカウント結果により、例えば、出現回数が偶数回数であれば論理“0”となり、出現回数が奇数回数であれば論理“1”となるカウント出力信号XA〜XDを出力する。
【0062】
エラー評価信号Serrは、基準クロック信号C0を使用して生成されるシステムクロック信号に同期させるべき信号処理回路内での所定の同期式回路動作におけるデータまたは制御信号との間に生じたタイミングエラー量を評価したもので、例えば、同期させるべき当該信号処理回路内でのクロック信号とセットアップ或いはホールドエラー対象の信号との間に生じたタイミングエラー量を評価した信号となる。
【0063】
選択信号出力回路27は、エッヂカウント回路26から出力されたカウント出力信号XA〜XDを受け付けて選択信号S1a、S1bを出力する。具体的には、エラー評価信号Serrが非アクティブ状態になった時点にて、エッヂカウント回路26からのカウント出力信号XA〜XDの各論理値をチェックして、図17の真理値表に示す通りに、カウント出力信号XA〜XDの全てが論理“1”であれば、選択信号S1a、S1bの結果の組み合わせを論理“00”とする。また、カウント出力信号XB〜XDの3つのカウント出力信号が論理“1”であれば、選択信号S1a、S1bの結果の組み合わせが論理“01”となり、カウント出力信号XC、XDの2つのカウント出力信号が論理“1” であれば、選択信号S1a、S1bの結果の組み合わせが論理“10”となり、カウント出力信号XDのみが論理“1” であれば、選択信号S1a、S1bの結果の組み合わせが論理“11”となる。
【0064】
上述の構成により、選択信号生成回路24では、エラー評価信号Serrの示すタイミングエラー量に応じて、位相選択回路4が制御され、適正な位相の参照クロック信号C3を、第1入力クロック信号C1に対して位相調整動作を行うフリップフロップ5に出力することが可能となる。
【0065】
尚、上記説明では、エラー評価信号Serrのアクティブ状態が論理“1”の場合を想定しているが、当該アクティブ状態が逆の論理“0”の場合等種々の別態様が考えられる。また同様に、その他の信号状態についても種々の別態様が可能である。
【0066】
また、本実施形態では、起動信号CHKを選択信号生成回路24に入力して、選択信号生成回路24を活性化させることで、本発明装置1dの位相調整動作を起動させる場合を想定して説明したが、この場合、起動信号CHKは、例えば、選択信号出力回路27に入力して、起動前の状態において、選択信号出力回路27の出力信号である選択信号S1a、S1bの組み合わせを所定のデフォルト値とすることで、位相調整動作の非活性化状態では、常時、選択信号S1a、S1bのデフォルト値で選択される位相のクロック信号C6と同位相の参照クロック信号C3によって位相調整された第1入力クロック信号C4が固定的にPFD回路2に入力することになる。
【0067】
〈第6実施形態〉
図18は、外部の信号処理回路(同期式回路群)における信号取り込みのタイミング調整をその都度可能な本発明に係るタイミング調整回路システム21(本発明システム)の一実施形態における回路構成を示すブロック図である。尚、図18において、図14と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0068】
図18に示すように、本発明システム21は、第5実施形態における本発明装置1dを利用したタイミング調整回路システムであり、本発明装置1dと、本発明装置1dのVCO回路3から出力される基準クロック信号C0を使用する信号処理回路22(同期式回路群に相当)と、クロックツリー回路23を備えてなる。また、本発明装置1dの選択信号生成回路24に入力すべきエラー評価信号Serrは、信号処理回路22において生成される。
【0069】
本発明装置1dは、第1入力クロック信号C1を受け付けて、信号処理回路22がクロック同期式の所定の信号処理を行うためのシステムクロック信号Csysの基となる基準クロック信号C0を生成するとともに、信号処理回路22内での所定の同期式回路動作(例えば、内部データや制御信号等のサンプリングホールド動作)におけるタイミングエラーを解消するための基準クロック信号C0の位相調整を行う。ここで、本発明装置1dの基準クロック信号C0の生成用に用いられるPLL回路8は、第1実施形態で説明したPLL回路8と同等の構成を有している。
【0070】
クロックツリー回路23は、基準クロック信号C0のスキューを低減させる目的で挿入されたクロックドライバ回路で、実際に信号処理回路22内で使用されるシステムクロック信号Csysを、基準クロック信号C0を基に生成する。
【0071】
ここで、システムクロック信号Csysが、信号処理回路22内でタイミングエラーを起しているか否かチェックしたいタイミングで、本発明システム21の外部または内部の別回路より、本発明装置1dによる位相調整動作の開始を指示する起動信号CHKをアクティブ状態にすることで、選択信号生成回路24が活性化され、エラー評価信号Serrのアクティブ状態の期間で表されるタイミングエラー量に応じた選択信号S1a、S1bを出力し、位相選択回路4が、その選択信号S1a、S1bに応じた複数のクロック信号C6a〜C6dの1つを選択して、参照クロック信号C3を出力する。これにより、フリップフロップ回路5が参照クロック信号C3の立ち上がりに合わせて第1入力クロック信号C1の位相調整を開始する。ここで、起動信号CHKは、論理“1”または“0”の状態が、或る一定期間同一状態で固定されている信号である。
【0072】
図19は、本発明システム21の信号処理回路22内における内部データや制御信号等のサンプリングホールド動作のタイミングをその都度合せ込むための本発明装置1dでの基準クロック信号C0の位相調整動作における動作タイミングを示すタイミング図である。
【0073】
図19のタイミング図において、例えば、内部データDAxを取得したい場合に位相調整前の第1入力クロック信号C1の位相で規定されるシステムクロック信号Csysの立ち上がりタイミングでは、内部データDAxが確定しておらず、正しいデータ値を取得することができない。ここで、本発明装置1dの位相選択回路4のクロック選択動作を示す図3の真理値表から、選択信号S1a,S1bを共に論理“1”に設定し、位相調整用のクロック信号C6dを選択すると、クロック信号C6dの立ち上がりタイミングでラッチされる位相調整後の第1入力クロック信号C4で規定されるシステムクロック信号Csysの立ち上がりタイミングによって、内部データDAxのデータが確定した時点DAOKにて、正しく内部データDAxを取得可能となる。尚、図19のタイミング図において、本発明装置1dでの位相調整前の状態では、位相調整前の第1入力クロック信号C1とシステムクロック信号CsysがPLL回路8で同位相に固定され、本発明装置1dでの位相調整後の状態では、位相調整後の第1入力クロック信号C4とシステムクロック信号CsysがPLL回路8で同位相に固定される場合を想定している。
【0074】
〈第7実施形態〉
図20は、外部の信号処理回路(同期式回路群)における信号取り込みのタイミング調整をその都度可能な本発明に係るタイミング調整回路システム30(本発明システム)の別の実施形態における回路構成を示すブロック図である。尚、図20において、図18に示す第6実施形態と同じ構成要素には同じ符号で付して説明し、重複する説明は省略する。
【0075】
図20に示すように、第7実施形態の本発明システム30は、第5実施形態における本発明装置1dを同一システム上に複数個(本実施形態では2つ)配置して利用したタイミング調整回路システムであり、第6実施形態の本発明システム21と、本発明システム21と同じ構成のタイミング調整回路システム31を、同一システム内に備えた構成となっている。
【0076】
図20において、本発明システム30は、2つの本発明装置1dと、2つの本発明装置1dに各別に対応する2つのクロックツリー回路23,29と、2つの本発明装置1dの夫々のVCO回路3から出力される基準クロック信号C0,C0’を各別に使用する信号処理回路22,28を備えてなる。2つの本発明装置1dの夫々の位相調整動作は、第6実施形態の本発明システム21の場合と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0077】
2つの本発明装置1dには、夫々別々の第1入力クロック信号C1,C1’と起動信号CHK,CHK’とエラー評価信号Serr,Serr’が独立して入力し、基準クロック信号C0,C0’を各別に独立して出力する。従って、2つの信号処理回路22,28では、夫々個別のシステムクロック信号Csys,Csys’が独立して使用される。尚、位相調整用のクロック信号C6a〜C6dを2つの本発明装置1d間で共通に使用することで、回路規模の増大を抑制できる。以上の構成により、同一システム内の2つの信号処理回路22,28のタイミングエラーを個別に分割して調整可能となる。
【0078】
本実施形態では、2つの本発明装置1dを同一システム上に配置した構成であるが、本発明装置1dの配置数は、2つに限定されるものではなく、種々の配置構成が可能である。また同様に、複数の本発明装置1d間において、位相調整用のクロック信号C6a〜C6dは必ずしも共通に使用しなくても構わない。
【0079】
〈第8実施形態〉
図23は、第6実施形態における本発明に係るタイミング調整回路システム21の別実施形態を示すブロック図である。第8実施形態の本発明に係るタイミング調整回路システム50(本発明システム)は、第6実施形態のタイミング調整回路システム21に含まれる第5実施形態における本発明装置(位相調整回路装置)1dに対して位相調整を起動する起動信号を生成する回路である電圧検出回路40を含む構成となっている。本発明システム21は、第6実施形態で説明したものと同じであり、重複する説明は省略する。
【0080】
図23に示すように、第8実施形態の本発明システム50は、タイミング調整回路システム21と電圧検出回路40を備え、電圧検出回路40の出力と、本発明装置1dの起動信号CHKの入力端子を接続して構成される。電圧検出回路40は、タイミング調整回路システム21に供給される電源電圧VDDの状態を監視し、特定電圧レベルからの変化量がある一定量を超えたとき、タイミング調整回路システム21内の本発明装置1dに対して位相調整動作を起動させる起動信号CHKを出力する。
【0081】
図24は、図23に示す電圧検出回路40の一実施例を示す回路ブロック図である。図24に示すように、電圧検出回路40は、2つのコンパレータ42a,42bと、2つのバッファ43a,43bと、電圧検出信号制御回路44を備えて構成される。
【0082】
コンパレータ42aは、電源電圧VDDと第1の電圧検出用閾値電圧VTH1の電圧差に基づいて、電源電圧VDDの第1の電圧変動を検出する。コンパレータ42bは、電源電圧VDDと第2の電圧検出用閾値電圧VTH2の電圧差に基づいて、電源電圧VDDの第2の電圧変動を検出する。2つのバッファ43a,43bは、各コンパレータ42a,42bからの出力信号を夫々そのまま次段に伝播する。電圧検出信号制御回路44は、各コンパレータ42a,42bからバッファ43a,43bを介して伝播された電源電圧変動判定信号VO1,VO2を受けて、起動信号CHKを活性化し、本発明装置1dから出力される位相調整の終了を示す信号Cendを受けて、起動信号CHKを非活性化する。尚、本発明装置1dは、起動信号CHKを受け付けて位相調整動作を開始し、位相調整が終了すると、外部に位相調整終了信号Cendを出力可能な構成となっている。
【0083】
図25は、図24に示す電圧検出回路40の動作タイミングの一例を示すタイミング図である。以下、図24及び図25を参照して、電圧検出回路40の動作を具体的に説明する。
【0084】
一方のコンパレータ42a及びバッファ43は、図25のタイミング図で電源電圧VDDが第1の電圧変動を検出するための基準となる第1の電圧検出用閾値電圧VTH1より高電圧になったとき、コンパレータ42aからバッファ43aを経由し伝播される電源電圧変動判定信号VO1を電源電圧変動判定点VO1aで、論理1から論理0に変化させる。同様に、電源電圧VDDが、一度第1の電圧検出用閾値電圧VTH1より高電圧になった後に、再び第1の電圧検出用閾値電圧VTH1より低くなったとき、コンパレータ42aからバッファ43aを経由し伝播される電源電圧変動判定信号VO1を電源電圧変動判定点VO1bで論理0から論理1に変化させる。
【0085】
更に、他方のコンパレータ42b及びバッファ43bは、図25のタイミング図で電源電圧VDDが第2の電圧変動を検出するための基準となる第2の電圧検出用閾値電圧VTH2より低電圧になったとき、コンパレータ42bからバッファ43bを経由し伝播される電源電圧変動判定信号VO2を電源電圧変動判定点VO2aで、論理0から論理1に変化させる。同様に、電源電圧VDDが、一度第2の電圧検出用閾値電圧VTH2より低電圧になった後に、再び第2の電圧検出用閾値電圧VTH2より高くなったとき、コンパレータ42bからバッファ43を経由し伝播される電源電圧変動判定信号VO2を電源電圧変動判定点VO2bで論理1から論理0に変化させる。
【0086】
また、図25において、電源電圧変動判定信号VO1及びVO2が論理0と論理1の間で変化する点VO1a,VO1b,VO2a,VO2bのタイミングにおいて、電圧検出信号制御回路44は、起動信号CHKを論理1から論理0に変化させ活性化する。その後、電圧検出信号制御回路44は、位相調整が終了したことを示す信号Cendを本発明装置1dから受け取り、その信号Cendのパルスの各立下り点VCe1,VCe2,VCe3,VCe4にて、起動信号CHKを論理0から論理1に変化させ非活性化する。
【0087】
これにより、本発明システム50は、図25に示すように、起動信号CHKの論理0の期間、即ち、VTc1、VTc2、VTc3、VTc4で矢示する期間中に、本発明装置1dに対し位相調整を行う時間を提供し、本発明装置1dは、電源電圧VDDが変動したタイミングで、位相調整を行うことが可能となる。
【0088】
本実施形態では、起動信号CHKの有効レベル(活性化状態)を論理0としているが、この論理レベルは0に限定されるものではなく、論理1による実現も可能である。また同様に、起動信号CHKが活性化されるタイミングと電源電圧変動判定信号VO1,VO2の論理レベルとの間の関係、または、起動信号CHKが非活性化されるタイミングと信号Cendの論理レベルとの間の関係も、本実施形態の例に限定されるものではない。
【0089】
〈第9実施形態〉
図26は、第6実施形態における本発明に係るタイミング調整回路システム21の他の別実施形態を示すブロック図である。第9実施形態の本発明に係るタイミング調整回路システム51(本発明システム)は、第6実施形態のタイミング調整回路システム21に含まれる第5実施形態における本発明装置(位相調整回路装置)1dに対して位相調整を起動する起動信号を生成する回路である温度検出回路41を含む構成となっている。本発明システム21は、第6実施形態で説明したものと同じであり、重複する説明は省略する。
【0090】
図26に示すように、第9実施形態の本発明システム51は、タイミング調整回路システム21と温度検出回路41を備え、温度検出回路41の出力と、本発明装置1dの起動信号CHKの入力端子を接続して構成される。温度検出回路41は、タイミング調整回路システム21を含む半導体集積回路の温度の状態を監視し、特定温度レベルからの変化量がある一定量を超えたとき、タイミング調整回路システム21内の本発明装置1dに対して位相調整動作を起動させる起動信号CHKを出力する。
【0091】
図27は、図26に示す温度検出回路41の一実施例を示す回路ブロック図である。図26に示すように、温度検出回路41は、温度検出用の基準電圧を生成するための抵抗52,53の直列回路と、温度変動を検出するための抵抗54とダイオード55の直列回路と、コンパレータ42cと、温度検出信号制御回路45を備えて構成される。
【0092】
コンパレータ42cは、抵抗52,53の直列回路の中点から得られる基準電圧VREFと、抵抗54とダイオード55の直列回路の中点から得られる温度上昇判定電圧VTMPの各電圧を比較して、その比較結果を出力信号TO1として出力する。温度検出信号制御回路45は、コンパレータ42cの比較結果TO1を受けて、起動信号CHKを活性化し、本発明装置1dから出力される位相調整の終了を示す信号Cendを受けて、起動信号CHKを非活性化する。尚、本発明装置1dは、起動信号CHKを受け付けて位相調整動作を開始し、位相調整が終了すると、外部に位相調整終了信号Cendを出力可能な構成となっている。
【0093】
図28は、図27に示す温度検出回路41の動作タイミングの一例を示すタイミング図である。以下、図27及び図28を参照して、温度検出回路41の動作を具体的に説明する。
【0094】
図27において、温度検出のための基準となる温度検出用基準電圧VREFは、電源電圧VDDが抵抗52と抵抗53により分圧されて生成され、コンパレータ42cの正入力端子(+)に入力される。温度上昇判定電圧VTMPは、電源電圧VDDが抵抗54とダイオード55により分圧されて生成され、コンパレータ42cの負入力端子(−)に入力される。ダイオード55の立ち上がり電圧は温度上昇とともに低下するので、温度上昇判定電圧VTMPは温度上昇とともに低下する。一方、温度検出用基準電圧VREFは、抵抗52と抵抗53の温度特性が同じであるので温度上昇が起きても変わらないため、コンパレータ42cの出力TO1は、温度上昇判定電圧VTMPが温度検出用基準電圧VREFを下回るタイミングに合わせて電圧が高くなり、論理0から論理1に変化する。
【0095】
コンパレータ42cの出力TO1が論理0から論理1に変化すると、温度検出信号制御回路45は、コンパレータ42cの出力TO1を受けてTO1が論理0から論理1に変化する点TO1aのタイミングにおいて、起動信号CHKを論理1から論理0に変化させ活性化する。その後、温度検出信号制御回路45は、位相調整が終了したことを示す信号Cendを本発明装置1dから受け取り、その信号Cendのパルスの各立下り点TCe1にて、起動信号CHKを論理0から論理1に変化させ非活性化する。
【0096】
これにより、本発明システム51は、図28に示すように、起動信号CHKの論理0の期間、即ち、TTc1で矢示する期間中に、本発明装置1dに対し位相調整を行う時間を提供し、本発明装置1dは、温度が変動したタイミングで、位相調整を行うことが可能なる。
【0097】
本実施形態では、起動信号CHKの有効レベル(活性化状態)を論理0としているが、この論理レベルは0に限定されるものではなく、論理1による実現も可能である。また同様に、起動信号CHKが活性化されるタイミングと温度電圧変動判定信号TO1の論理レベルとの間の関係、または、起動信号CHKが非活性化されるタイミングと信号Cendの論理レベルとの間の関係も、本実施形態の例に限定されるものではない。
【0098】
〈別実施形態〉
以下に、本発明装置及び本発明システムの別実施形態について説明する。
【0099】
〈1〉本発明装置中のPLL回路8,9の構成は、上記各実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、VCO回路3の構成については、一般的に種々の形態のものが使用可能であり、図7に例示した構成に限定されず、例えば、インバータ回路を環状に接続したリングオシレータ等、発振経路途中から位相の異なる複数のクロック信号を取り出せる構成のものであれば利用可能である。
【0100】
〈2〉上記第5実施形態の選択信号生成回路24を備えた本発明装置の回路構成を、第2、第3或いは第4実施形態の本発明装置1a,1b,1cに適用するのも好ましい。従って、第6または第7実施形態における本発明システム21,30が、第5実施形態の本発明装置1dに代えて、選択信号生成回路24を備えた第2、第3或いは第4実施形態の本発明装置1a,1b,1cの変形構成の位相調整回路装置を備えた構成としてもよい。
【0101】
〈3〉上記第5乃至第7実施形態において、起動信号CHKは、選択信号生成回路24に入力する場合を想定して説明したが、選択信号生成回路24に入力せずに、位相選択回路4、フリップフロップ回路5、或いは、入力クロック選択回路6に入力して、位相調整動作の活性化及び非活性化を制御するようにしても構わない。同様に、上記第1または第2実施形態において、位相選択回路4またはフリップフロップ回路5に起動信号CHKを入力して位相調整動作の活性化及び非活性化を制御するようにしても構わない、或いは、上記第1または第2実施形態において、位相選択回路4、フリップフロップ回路5、または、入力クロック選択回路6の何れかに起動信号CHKを入力して位相調整動作の活性化及び非活性化を制御するようにしても構わない。
【0102】
〈4〉上記第8実施形態の本発明システム50に、第9実施形態の本発明システム51に用いた温度検出回路41を追加し、上記第8実施形態と第9実施形態を統合した本発明に係るタイミング調整回路システムを構成するようにしてもよい。この場合、例えば、電圧検出回路40の出力と温度検出回路41の出力を夫々論理積ゲートの入力に接続し、本発明装置1dの起動信号CHKの入力端子に当該論理積ゲートの出力を接続することで、電圧検出回路40の出力と温度検出回路41の出力が何れか一方が論理0となった場合に、当該論理積ゲートの出力信号である起動信号CHKが論理0となり、本発明装置1dは、電源電圧VDDまたは温度が変動したタイミングで、位相調整を行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明に係る位相調整回路装置及びタイミング調整回路システムは、クロック同期式の回路装置におけるタイミング調整回路に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における基本的な回路構成の一例を示すブロック図
【図2】図1に示す本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における回路構成の一実施例を示すブロック図
【図3】本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における位相選択回路のクロック信号の選択動作を説明する真理値表
【図4】本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における位相選択回路の一回路構成例を示す論理回路図
【図5】本発明に係る位相調整回路装置の第1実施形態における位相調整動作を説明するタイミング図
【図6】本発明に係る位相調整回路装置の第2実施形態における回路構成の一例を示すブロック図
【図7】本発明に係る位相調整回路装置の第2実施形態における電圧制御発振回路の一回路構成例を示す回路図
【図8】図7に示す電圧制御発振回路で使用される差動アンプ回路を示す回路シンボル図
【図9】図7に示す電圧制御発振回路の回路動作を説明するタイミング図
【図10】本発明に係る位相調整回路装置の第3実施形態における回路構成の一例を示すブロック図
【図11】本発明に係る位相調整回路装置の第3実施形態における入力クロック選択回路の選択動作を説明する真理値表
【図12】図11に示す入力クロック選択回路の選択動作を実現する回路構成例を示す論理回路図
【図13】本発明に係る位相調整回路装置の第4実施形態における回路構成の一例を示すブロック図
【図14】本発明に係る位相調整回路装置の第5実施形態における回路構成の一例を示すブロック図
【図15】本発明に係る位相調整回路装置の第5実施形態における選択信号生成回路の一回路構成例を示すブロック図
【図16】図15に示す選択信号生成回路の回路動作を説明するタイミング図
【図17】図15に示す選択信号生成回路の回路動作を説明する真理値表
【図18】本発明に係るタイミング調整回路システムの一実施形態における回路構成例を示すブロック図
【図19】図18に示す本発明に係るタイミング調整回路システムの位相調整回路装置における位相調整動作の一例における動作タイミングを示すタイミング図
【図20】本発明に係るタイミング調整回路システムの別の実施形態における回路構成例を示すブロック図
【図21】従来のタイミング調整回路システムで使用されるインバータ回路で構成された遅延回路を示す回路図
【図22】従来のPLL回路を用いたタイミング調整回路の一回路構成例を示すブロック図
【図23】本発明に係るタイミング調整回路システムの別の実施形態における電源電圧レベルにより位相調整を起動する起動信号を生成する回路を含む回路構成例を示すブロック図
【図24】図23に示す電圧検出回路の回路構成の一例を示す回路ブロック図
【図25】図24に示す電圧検出回路の動作タイミングの一例を示すタイミング図
【図26】本発明に係るタイミング調整回路システムの別の実施形態における温度変化により位相調整を起動する起動信号を生成する回路を含む回路構成例を示すブロック図
【図27】図26に示す温度検出回路の回路構成の一例を示す回路ブロック図
【図28】図27に示す温度検出回路の動作タイミングの一例を示すタイミング図
【符号の説明】
【0105】
1,1a〜1d: 本発明に係る位相調整回路装置
2,2x: 位相比較回路
3,3x: 電圧制御発振回路
3a,3b: 位相調整用クロック伝播配線
4: 位相選択回路
5: フリップフロップ回路
6: 入力クロック選択回路
7,7x: 分周回路
8,9,11: 位相同期回路(PLL回路)
10: インバータ回路
12a: 第1クロックツリー
12b: 第2クロックツリー
13a: 第1タイミング補正回路
13b: 第1タイミング補正回路
14: インバータ回路
15a〜15d: 論理積回路
16: 論理和回路
17: 差動アンプ回路
18: インバータ回路
19a,19b: 論理積回路
20: 論理和回路
21,30,31: 本発明に係るタイミング調整回路システム
22,28: 信号処理回路(同期式回路群)
23,29: クロックツリー回路
24: 選択信号生成回路
25: クロックチェック回路
26: エッヂカウント回路
27: 選択信号出力回路
40: 電圧検出回路
41: 温度検出回路
42a,42b,42c: コンパレータ
43a,43b: バッファ
44: 電圧検出信号制御回路
45: 温度検出信号制御回路
50,51: 起動信号生成回路内蔵の本発明に係るタイミング調整回路システム
52,53,54: 抵抗素子
55: ダイオード
C0,C0’: 基準クロック信号
C0x: 第2基準クロック信号
C1,C1’: 位相調整前の第1入力クロック信号
C2x: 第2の分周回路の出力信号
C2,C2’: 遅延クロック信号
C3,C3’: 参照クロック信号
C4,C4’: 位相調整後の第1入力クロック信号
C4a〜C4d: クロック信号C6a〜C6dで調整したフリップフロップの出力
C5: 選択入力クロック信号
C6,C6a〜C6d: 位相調整用の複数のクロック信号
CHK,CHK’: 起動信号
CK0: 第1タイミング補正回路への入力信号
CK1: 第1タイミング補正回路からの出力信号
Cend: 位相調整終了信号
Csys,Csys’: システムクロック信号
CX: クロック信号
DAOK: 内部データのデータ確定時点
DAx: 内部データ
IP: 差動アンプ回路の非反転入力端子
IN: 差動アンプ回路の反転入力端子
IN1: インバータ遅延回路の入力信号
Oc: フリップフロップの出力C4aの立ち上りエッヂ
ON: 差動アンプ回路の反転出力端子
OP: 差動アンプ回路の非反転出力端子
OUT1: インバータ遅延回路の出力信号
PDc: 位相調整前の第1入力クロック信号の論理状態
PEc: クロック信号C6aの立ち上りエッヂ
S1,S1a,S1b,S1a’,S1b’: 選択信号
S2: 入力選択信号
Serr,Serr’: エラー評価信号
Sf,Sfx: 位相差検出信号
TCe1: 位相調整期間終了判定点
TO1: 温度変動判定信号
TO1a: 温度変動判定点
TTC: 温度変化を起動信号とした位相調整期間
VC1: 電圧制御発振回路の初段差動アンプ回路の出力信号
VC2: 電圧制御発振回路の2段目差動アンプ回路の出力信号
VC3: 電圧制御発振回路の3段目差動アンプ回路の出力信号
VC4: 電圧制御発振回路の最終段差動アンプ回路の出力信号
VCOOUT: 電圧制御発振回路の出力信号
VCe1〜VCe4: 位相調整期間終了判定点
VDD: 電源電圧
VN: 反転信号
VO1,VO2: 電源電圧変動判定信号
VO1a,VO1b: 電源電圧変動判定点
VO2a,VO2b: 電源電圧変動判定点
VP: 帰還信号
VREF 温度検出用基準電圧
VTc1〜VTc4: 電圧変化を起動信号とした位相調整期間
VTMP: 温度上昇判定電圧
VTH1,VTH2: 電圧検出用閾値電圧
X6a〜X6d: 位相差パルス出力信号
XA〜XD: カウント出力信号
XS1a,XS1b: 反転選択信号
XS2: 反転入力選択信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号として受け付けた2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の位相差検出信号を出力する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力された前記位相差検出信号の電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号を出力する電圧制御発振回路を有してなる位相同期回路と、
入力信号として受け付けた位相の異なる同一周波数の複数のクロック信号の1つを選択して位相調整用の参照クロック信号として出力する位相選択回路と、
外部から入力される第1入力クロック信号の信号レベルの変化タイミングを前記位相選択回路から出力される前記参照クロック信号の立ち上がりまたは立ち下がりタイミングに合わせる位相調整を行うフリップフロップ回路と、を備えてなり、
前記2つの入力クロック信号の一方側として、前記位相調整後の前記第1入力クロック信号を前記位相比較回路に入力可能に構成し、
前記2つの入力クロック信号の他方側として、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号が所定の外部回路を経由して得られる遅延クロック信号を前記位相比較回路にフィードバック可能に構成されていることを特徴とする位相調整回路装置。
【請求項2】
前記位相選択回路に入力される前記複数のクロック信号が、前記電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号、または、前記複数の発振信号に基づいて生成された信号であることを特徴とする請求項1に記載の位相調整回路装置。
【請求項3】
入力信号として受け付けた2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の第2位相差検出信号を出力する第2位相比較回路と、前記第2位相比較回路から出力された前記第2位相差検出信号の電圧値に応じた周波数で発振する第2基準クロック信号を出力する第2電圧制御発振回路を有してなる第2位相同期回路を備え、
前記位相選択回路に入力される前記複数のクロック信号が、前記第2電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号、または、前記複数の発振信号に基づいて生成された信号であることを特徴とする請求項1に記載の位相調整回路装置。
【請求項4】
前記位相調整前の前記第1入力クロック信号と、前記位相調整後の前記第1入力クロック信号の何れか一方を択一的に選択する入力クロック選択回路を備え、
前記入力クロック選択回路で選択された前記位相調整前または前記位相調整後の前記第1入力クロック信号が前記2つの入力クロック信号の一方として前記位相差検出信号に入力可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の位相調整回路装置。
【請求項5】
前記位相選択回路に入力された前記複数のクロック信号の1つを選択するための選択信号を外部から入力可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の位相調整回路装置。
【請求項6】
前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号を使用する同期式回路群における所定の同期式回路動作におけるタイミングエラー量を評価するエラー評価信号を入力信号として受け付け、前記エラー評価信号に基づいて、前記位相選択回路に入力された前記複数のクロック信号の1つを選択するための選択信号を生成する選択信号生成回路を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の位相調整回路装置。
【請求項7】
前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け可能に構成され、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作が活性化されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の位相調整回路装置。
【請求項8】
請求項6に記載の位相調整回路装置と、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号を使用する同期式回路群を備えてなり、
前記エラー評価信号が、前記同期式回路群において生成され前記選択信号生成回路に入力可能に構成されていることを特徴とするタイミング調整回路システム。
【請求項9】
請求項8に記載されたタイミング調整回路システムにおいて、
前記タイミング調整回路システム内に備えられた位相調整回路装置が、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作を起動可能に構成され、
前記タイミング調整回路システムに供給される電源電圧の電圧変動を検知して、前記起動信号を生成する回路を備えることを特徴とするタイミング調整回路システム。
【請求項10】
請求項8に記載されたタイミング調整回路システムにおいて、
前記タイミング調整回路システム内に備えられた位相調整回路装置が、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作を起動可能に構成され、
前記タイミング調整回路システムを構成する半導体基板の温度変動を検知して、前記起動信号を生成する回路を備えることを特徴とするタイミング調整回路システム。
【請求項1】
入力信号として受け付けた2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の位相差検出信号を出力する位相比較回路と、前記位相比較回路から出力された前記位相差検出信号の電圧値に応じた周波数で発振する基準クロック信号を出力する電圧制御発振回路を有してなる位相同期回路と、
入力信号として受け付けた位相の異なる同一周波数の複数のクロック信号の1つを選択して位相調整用の参照クロック信号として出力する位相選択回路と、
外部から入力される第1入力クロック信号の信号レベルの変化タイミングを前記位相選択回路から出力される前記参照クロック信号の立ち上がりまたは立ち下がりタイミングに合わせる位相調整を行うフリップフロップ回路と、を備えてなり、
前記2つの入力クロック信号の一方側として、前記位相調整後の前記第1入力クロック信号を前記位相比較回路に入力可能に構成し、
前記2つの入力クロック信号の他方側として、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号が所定の外部回路を経由して得られる遅延クロック信号を前記位相比較回路にフィードバック可能に構成されていることを特徴とする位相調整回路装置。
【請求項2】
前記位相選択回路に入力される前記複数のクロック信号が、前記電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号、または、前記複数の発振信号に基づいて生成された信号であることを特徴とする請求項1に記載の位相調整回路装置。
【請求項3】
入力信号として受け付けた2つの入力クロック信号の位相差に応じた電圧の第2位相差検出信号を出力する第2位相比較回路と、前記第2位相比較回路から出力された前記第2位相差検出信号の電圧値に応じた周波数で発振する第2基準クロック信号を出力する第2電圧制御発振回路を有してなる第2位相同期回路を備え、
前記位相選択回路に入力される前記複数のクロック信号が、前記第2電圧制御発振回路で生成される位相の異なる同一周波数の複数の発振信号、または、前記複数の発振信号に基づいて生成された信号であることを特徴とする請求項1に記載の位相調整回路装置。
【請求項4】
前記位相調整前の前記第1入力クロック信号と、前記位相調整後の前記第1入力クロック信号の何れか一方を択一的に選択する入力クロック選択回路を備え、
前記入力クロック選択回路で選択された前記位相調整前または前記位相調整後の前記第1入力クロック信号が前記2つの入力クロック信号の一方として前記位相差検出信号に入力可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の位相調整回路装置。
【請求項5】
前記位相選択回路に入力された前記複数のクロック信号の1つを選択するための選択信号を外部から入力可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の位相調整回路装置。
【請求項6】
前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号を使用する同期式回路群における所定の同期式回路動作におけるタイミングエラー量を評価するエラー評価信号を入力信号として受け付け、前記エラー評価信号に基づいて、前記位相選択回路に入力された前記複数のクロック信号の1つを選択するための選択信号を生成する選択信号生成回路を備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の位相調整回路装置。
【請求項7】
前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け可能に構成され、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作が活性化されることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の位相調整回路装置。
【請求項8】
請求項6に記載の位相調整回路装置と、前記電圧制御発振回路から出力される前記基準クロック信号を使用する同期式回路群を備えてなり、
前記エラー評価信号が、前記同期式回路群において生成され前記選択信号生成回路に入力可能に構成されていることを特徴とするタイミング調整回路システム。
【請求項9】
請求項8に記載されたタイミング調整回路システムにおいて、
前記タイミング調整回路システム内に備えられた位相調整回路装置が、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作を起動可能に構成され、
前記タイミング調整回路システムに供給される電源電圧の電圧変動を検知して、前記起動信号を生成する回路を備えることを特徴とするタイミング調整回路システム。
【請求項10】
請求項8に記載されたタイミング調整回路システムにおいて、
前記タイミング調整回路システム内に備えられた位相調整回路装置が、前記位相選択回路のクロック選択動作による位相調整動作を起動させる起動信号を外部から受け付け、前記起動信号の入力に応じて前記位相調整動作を起動可能に構成され、
前記タイミング調整回路システムを構成する半導体基板の温度変動を検知して、前記起動信号を生成する回路を備えることを特徴とするタイミング調整回路システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2007−300591(P2007−300591A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214292(P2006−214292)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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