説明

位置推定システム及び無線通信端末並びに位置推定装置

【課題】近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって、高精度の位置推定を実現する。
【解決手段】所定エリア内に複数の基準局110や接続局120が設置される。所定エリア内を移動する移動無線機は近距離無線通信機能を有しており、別の移動無線機又は基準局とすれ違うたびに相手装置の機器IDを受信して交差履歴データとして蓄積する。また、位置推定装置150にアクセス可能な接続局と通信できる位置に移動すると、蓄積した交差履歴データを位置推定装置にアップロードする。移動無線機からアップロードされた交差履歴データは交差履歴データベース155に格納される。位置推定装置は全基準局の設置位置を把握しており、位置推定対象の移動無線機から直接アップロードされた交差履歴データや、別の移動無線機の交差履歴データに含まれている位置推定対象の移動無線機との交差履歴に基づいて、位置推定対象の移動無線機の移動経路を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信の機能を有する無線通信端末(移動無線機)の位置を推定するための位置推定システム及び無線通信端末並びに位置推定装置に関し、特に、近距離無線通信の機能を有する近距離無線機の位置を推定するための位置推定システム及び無線通信端末並びに位置推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、無線通信端末の位置特定方法として、例えば、無線通信端末がGPS(Global Positioning System)信号を受信することで、その位置を算出する方法が存在している。
【0003】
一方、例えば、下記の特許文献1には、PHS(Personal Handyphone System)端末が、複数のPHS基地局から受信する電波の強さ(電界強度)について、3点測量の手法を用いてその重心位置を算出し、算出された重心位置をPHS端末が現在存在している位置と推定する位置推定方法が開示されている。
【0004】
なお、特許文献1に開示されているような位置推定方法は、PHSだけではなく、無線LAN(Local Area Network)などの他の無線通信技術にも同様に適用可能である。この場合、PHS端末は無線LANの子機に対応し、PHS基地局は無線LANの親機(アクセスポイント)に対応する。
【0005】
以下、図11を参照しながら、従来の技術における3点測量の手法を用いた位置推定方法について説明する。図11には、従来の技術に係る位置推定方法で用いられている基本的な原理が模式的に示されている。
【0006】
従来の技術における3点測量の手法を用いた位置推定方法では、位置推定対象の無線通信端末が複数の基地局から電波を受信することができる場合、各基地局からの電波の電界強度と各基地局の位置から無線通信端末の位置を算出することが可能である。
【0007】
すなわち、図11において、例えば、複数の基地局(例えば、3つの基地局2001〜2003)から電波を受信することが可能な位置に存在する移動端末が、各基地局2001〜2003からの電波の受信強度に基づくパラメータk1〜k3と、各基地局2001〜2003の位置P1〜P3とを用いて、移動端末2000の位置P0を算出することが可能である。このとき例えば、下記の式を用いることによって、移動端末2000の位置P0が算出可能である。
【0008】
P0=Σkj×Pj/Σkj
ただし、jは各基地局を表し、Σは各基地局jの和を表す。
【0009】
また、下記の特許文献2には、IC(Integrated Circuit:集積回路)タグを用いて建設現場における各物品の位置を管理するための技術が開示されている。この技術では、建設現場の複数の固定位置のそれぞれにICタグ(固定タグ)が取り付けられるとともに、建設現場に搬入される各物品にICタグ(可動タグ)が取り付けられる。また作業者が、ICタグに接近した際にそのICタグの識別情報(タグID)を読み取る機能を有するICタグリーダ端末を携帯する。これにより、作業者が移動した場合、移動先でICタグリーダ端末が固定タグ及び可動タグのタグIDを読み取って、位置情報データベースに逐次アップロードすることで、ICタグリーダ端末が読み取った固定タグ及び可動タグのタグIDが蓄積され、固定タグのタグIDに基づいて可動タグの位置が計算される。
【特許文献1】特開平10−239416号公報
【特許文献2】特開2005−314886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述の3点測量の手法を用いた位置推定方法では、位置推定対象の無線通信端末が、複数の基地局(あるいは親機)の通信範囲(セル)内に位置している必要がある。さらに、位置推定対象の無線通信端末は、これらの複数の基地局の位置を把握している必要がある。すなわち、位置推定対象の無線通信端末にとって位置が既知の基地局が複数存在し、さらに、無線通信端末がこれらの複数の基地局からの電波を同時に受信できる場所に位置するという条件が満たされた場合のみ、位置推定が可能となり、その他の場合には、位置推定が不可能であるという問題がある。
【0011】
また、PHSのような広域で通信可能な無線通信技術を用いた場合、上述の3点測量の手法を用いた位置推定精度の誤差が大きくなるという問題がある。また、無線LANのような近距離で通信可能な無線通信技術を用いた場合、広域をカバーするためには、位置が既知の無線LANの親機を稠密に配置しなければならないという問題がある。
【0012】
また、従来の技術における位置推定方法は、ある無線通信端末の現在の状況に基づいて、その無線通信端末の現在位置を推定するものである。したがって、従来の技術における位置推定方法では、現在通信が不可能な状態の無線通信端末の現在位置を推定することは困難である。これは、無線通信端末がGPS機能を有する場合も同様である。
【0013】
また、GPSを用いた場合には、例えば、屋内などのGPS衛星からGPS信号を受信できない場所では位置特定が不可能であるという問題がある。さらに、GPSによって特定される位置は緯度及び経度の2次元座標であり、例えば、同一の緯度及び経度において無線通信端末がどのくらいの高さ(何階)にいるのかを特定することは困難であるという問題がある。
【0014】
また、特許文献2に開示されている技術を用いた場合、作業者が情報を収集するために、位置情報データベースにタグIDをアップロードするための広域無線機を備えたICタグリーダ端末を携帯して移動しなければならず、また、多数のICタグリーダ端末(すなわち、このICタグリーダ端末を携帯する多数の作業者)を用意しなければならない。すなわち、特許文献2に開示されている技術では、広域無線機を備えたICタグリーダ端末及びこのICタグリーダ端末を携帯する作業者が多数必要となり、規模が大きくなるについて構築するシステムが大規模になってしまい、システムに要するコストも増大してしまうという問題がある。
【0015】
上記の問題を解決するため、本発明は、近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって、高精度の位置推定を実現することが可能な位置推定システム及び無線通信端末並びに位置推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するため、本発明の位置推定システムは、所定エリア内を移動する複数の無線通信端末と、前記所定エリア内に固定設置された複数の基準局と、前記所定エリア内に存在するとともに所定ネットワークに接続されている接続局と、前記所定ネットワークに接続されている位置推定装置とを有する位置推定システムであって、
前記無線通信端末が、
近隣に存在する別の無線通信端末、前記基準局、前記接続局と通信を行う近距離無線通信手段と、
各無線通信端末に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末と通信可能な場合に、自端末の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末又は前記基準局と通信可能な場合に、前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末から受信する機器識別情報受信手段と、
現在の時刻情報を出力する計時手段と、
前記機器識別情報受信手段で受信した前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を、前記計時手段から出力される前記時刻情報と関連付けて、交差履歴データとして記憶する交差履歴データ記憶手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記接続局と通信可能な場合に、前記接続局及び前記所定ネットワークを通じて前記位置推定装置に前記交差履歴データを送信する交差履歴データ送信手段とを有し、
前記基準局が、
近隣に存在する前記無線通信端末と通信を行う近距離無線通信手段と、
各基準局に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記無線通信端末と通信可能な場合に、自局の前記機器識別情報を前記無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段とを有し、
前記接続局が、
近隣に存在する前記無線通信端末と通信を行う近距離無線通信手段と、
前記所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
前記無線通信端末から前記近距離無線通信手段を介して受信した前記交差履歴データを、前記ネットワークインタフェースを介して前記位置推定装置に転送する交差履歴データ転送手段とを有し、
前記位置推定装置が、
前記所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
すべての前記基準局の設置位置を示す基準局位置情報を格納する基準局位置情報格納手段と、
前記ネットワークインタフェースを介して前記無線通信端末から送信された前記交差履歴データを受信する交差履歴データ受信手段と、
複数の前記無線通信端末のそれぞれから受信した前記交差履歴データを格納する交差履歴データベースと、
前記交差履歴データベースに格納された前記交差履歴データを利用して、任意の前記無線通信端末の任意の時刻における位置を推定する位置推定処理手段とを有する。
この構成により、近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって、高精度の位置推定を実現することが可能となる。
【0017】
また、上記の目的を達成するため、本発明の位置推定システムは、所定エリア内を移動する複数の無線通信端末と、前記所定エリア内に固定設置された複数の基準局と、前記所定エリア内に存在するとともに所定ネットワークに接続されている接続局と、前記所定ネットワークに接続されている位置推定装置とを有する位置推定システムであって、
前記無線通信端末が、
近隣に存在する別の無線通信端末、前記基準局、前記接続局と通信を行う近距離無線通信手段と、
各無線通信端末に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末と通信可能な場合に、自端末の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末又は前記基準局と通信可能な場合に、前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末から受信する機器識別情報受信手段と、
現在の時刻情報を出力する計時手段と、
自端末が移動した距離を表す移動距離情報を出力する移動距離情報出力手段と、
前記機器識別情報受信手段で受信した前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を、前記移動距離情報出力手段から出力される前記移動距離情報及び前記計時手段から出力される前記時刻情報と関連付けて、交差履歴データとして記憶する交差履歴データ記憶手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記接続局と通信可能な場合に、前記接続局及び前記所定ネットワークを通じて前記位置推定装置に前記交差履歴データを送信する交差履歴データ送信手段とを有し、
前記基準局が、
近隣に存在する前記無線通信端末と通信を行う近距離無線通信手段と、
各基準局に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記無線通信端末と通信可能な場合に、自局の前記機器識別情報を前記無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段とを有し、
前記接続局が、
近隣に存在する前記無線通信端末と通信を行う近距離無線通信手段と、
前記所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
前記無線通信端末から前記近距離無線通信手段を介して受信した前記交差履歴データを、前記ネットワークインタフェースを介して前記位置推定装置に転送する交差履歴データ転送手段とを有し、
前記位置推定装置が、
前記所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
すべての前記基準局の設置位置を示す基準局位置情報を格納する基準局位置情報格納手段と、
前記ネットワークインタフェースを介して前記無線通信端末から送信された前記交差履歴データを受信する交差履歴データ受信手段と、
複数の前記無線通信端末のそれぞれから受信した前記交差履歴データを格納する交差履歴データベースと、
前記交差履歴データベースに格納された前記交差履歴データを利用して、任意の前記無線通信端末の任意の時刻における位置を推定する位置推定処理手段とを有する。
この構成により、近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって、高精度の位置推定を実現することが可能となる。
【0018】
また、上記の目的を達成するため、本発明の無線通信端末は、所定エリア内を移動する無線通信端末であって、
近隣に存在する別の無線通信端末、前記所定エリア内に固定設置された基準局、前記所定エリア内に存在するとともに所定ネットワークに接続されている接続局と通信を行う近距離無線通信手段と、
各無線通信端末に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末と通信可能な場合に、自端末の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末又は前記基準局と通信可能な場合に、前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末から受信する機器識別情報受信手段と、
現在の時刻情報を出力する計時手段と、
前記機器識別情報受信手段で受信した前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を、前記計時手段から出力される前記時刻情報と関連付けて、交差履歴データとして記憶する交差履歴データ記憶手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記接続局と通信可能な場合に、前記接続局及び前記所定ネットワークを通じて前記位置推定装置に前記交差履歴データを送信する交差履歴データ送信手段とを、
有する。
この構成により、近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって、高精度の位置推定を実現することが可能となる。
【0019】
また、上記の目的を達成するため、本発明の無線通信端末は、所定エリア内を移動する無線通信端末であって、
近隣に存在する別の無線通信端末、前記所定エリア内に固定設置された基準局、前記所定エリア内に存在するとともに所定ネットワークに接続されている接続局と通信を行う近距離無線通信手段と、
各無線通信端末に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末と通信可能な場合に、自端末の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末又は前記基準局と通信可能な場合に、前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末から受信する機器識別情報受信手段と、
現在の時刻情報を出力する計時手段と、
自端末が移動した距離を表す移動距離情報を出力する移動距離情報出力手段と、
前記機器識別情報受信手段で受信した前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を、前記移動距離情報出力手段から出力される前記移動距離情報及び前記計時手段から出力される前記時刻情報と関連付けて、交差履歴データとして記憶する交差履歴データ記憶手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記接続局と通信可能な場合に、前記接続局及び前記所定ネットワークを通じて前記位置推定装置に前記交差履歴データを送信する交差履歴データ送信手段とを、
有する。
この構成により、近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって、高精度の位置推定を実現することが可能となる。
【0020】
また、上記の目的を達成するため、本発明の位置推定装置は、所定エリア内の無線通信端末の任意の時刻における位置を推定する位置推定装置であって、
所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
前記所定エリア内に固定設置されているすべての基準局の設置位置を示す基準局位置情報を格納する基準局位置情報格納手段と、
前記無線通信端末が別の無線通信端末又は前記基準局の近隣を通過する際に受信した機器識別情報を含む交差履歴データを、前記ネットワークインタフェースを介して前記無線通信端末から受信する交差履歴データ受信手段と、
複数の前記無線通信端末のそれぞれから受信した前記交差履歴データを格納する交差履歴データベースと、
前記交差履歴データベースに格納された前記交差履歴データを利用して、任意の前記無線通信端末の任意の時刻における位置を推定する位置推定処理手段とを、
有する。
この構成により、近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって、高精度の位置推定を実現することが可能となる。
【0021】
さらに、本発明の位置推定装置では、上記の構成に加えて、前記交差履歴データが、前記機器識別情報に対して、前記機器識別情報を受信した際の時刻情報又は受信した位置までの移動距離情報が関連付けられている情報である。
この構成により、近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって、高精度の位置推定を実現することが可能となる。
【0022】
さらに、本発明の位置推定装置では、上記の構成に加えて、前記位置推定処理手段が、位置推定対象の無線通信端末から受信した交差履歴データを前記交差履歴データベース内から取得し、取得した交差履歴データ及び前記基準局位置情報を参照して、前記位置推定対象の無線通信端末が前記機器識別情報を受信した前記基準局の位置を特定することで、前記位置推定対象の無線通信端末の移動経路を推定するように構成されている。
この構成により、位置推定対象の無線通信端末から直接アップロードされた交差履歴データを用いて、位置推定対象の無線通信端末に係る高精度の位置推定を実現することが可能となる。
【0023】
さらに、本発明の位置推定装置では、上記の構成に加えて、前記位置推定処理手段が、位置推定対象の無線通信端末から受信した交差履歴データを前記交差履歴データベース内から取得できなかった場合に、別の無線通信端末の交差履歴データを参照して前記位置推定対象の無線通信端末の機器識別情報を検索し、その検索結果から前記位置推定対象の無線通信端末が別の移動無線機とすれ違った位置を特定することで、前記位置推定対象の無線通信端末の移動経路を推定するように構成されている。
この構成により、位置推定対象の無線通信端末との交差事象が含まれている別の無線通信端末からアップロードされた交差履歴データを用いて、位置推定対象の無線通信端末に係る高精度の位置推定を実現することが可能となる。
【0024】
さらに、本発明の位置推定装置では、上記の構成に加えて、前記位置推定処理手段が、位置推定対象の無線通信端末から受信した交差履歴データを前記交差履歴データベース内から取得し、取得した交差履歴データ及び前記基準局位置情報を参照して、前記位置推定対象の無線通信端末が前記機器識別情報を受信した前記基準局の位置を特定することで、前記位置推定対象の無線通信端末の移動経路を推定するとともに、さらに、別の無線通信端末の交差履歴データを参照して前記位置推定対象の無線通信端末の機器識別情報を検索し、その検索結果から前記位置推定対象の無線通信端末が別の移動無線機とすれ違った位置を特定し、その特定された位置に基づいて、前記移動経路の補正を行うように構成されている。
この構成により、位置推定対象の無線通信端末から直接アップロードされた交差履歴データを、位置推定対象の無線通信端末との交差事象が含まれている別の無線通信端末からアップロードされた交差履歴データで補正することによって、位置推定対象の無線通信端末に係るより高精度の位置推定を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は上記の構成を有し、近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって、高精度の位置推定を実現することが可能である。また、本発明は、近距離無線機での通信の双方向性を活用してより高精度の位置推定を実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本発明の第1及び第2の実施の形態について説明する。
【0027】
まず、図1を参照しながら、本発明の第1及び第2の実施の形態に共通するシステム構成について説明する。図1は、本発明の第1及び第2の実施の形態に共通するシステム構成を模式的に示す図である。
【0028】
図1には、複数の移動無線機(携行型の移動無線機)100、複数の基準局110、複数の接続局120、データ収集ネットワーク130、位置推定装置150、交差履歴データベース155が図示されている。
【0029】
移動無線機100は、近距離無線通信を行って、相手装置(他の無線機)との間で機器ID(自機を識別するための識別情報)を交換する機能を有している。すなわち、移動無線機100は、自身の機器IDを相手装置に送信するとともに、相手装置の機器IDを受信して蓄積することが可能である。なお、移動無線機100は、例えば人間や移動体(車両など)と共に移動し、移動先ですれ違った別の移動無線機100、基準局110、接続局120と機器IDの交換を行うことが可能である。さらに、移動無線機100は、接続局120と通信可能となった場合には、この接続局120を通じてアクセス可能なデータ収集ネットワーク130上の位置推定装置150に、他の無線機とのすれ違いの履歴を含む交差履歴データをアップロードする機能を有している。
【0030】
また、基準局110は、所定の場所に固定設置された装置である。基準局110は、相手装置(周辺を通過する移動無線機100)に対して少なくとも自身の機器IDを送信する機能を有しており、さらに、移動無線機100と同様に、相手装置(周辺を通過する移動無線機100)の機器IDを受信して蓄積できるように構成されていてもよい。なお、このシステム全体を管理するオペレータは、すべての基準局110の設置場所を把握しておく必要がある。基準局110の設置場所は、2次元座標(例えば緯度及び経度)や3次元座標などの任意の形式の位置データとして、後述のように位置推定装置150の基準局位置情報格納部153に格納される。また、基準局110は、例えばその通信範囲がオーバラップするように稠密に配置される必要はなく、所定のエリア(移動無線機100の位置の推定を行う範囲)内においてその通信範囲が互いに離れた状態(疎の状態)で配置されればよい。
【0031】
また、接続局120は、所定の外部ネットワーク(図1では、データ収集ネットワーク130と表記)に接続されている装置であり、移動無線機100が、データ収集ネットワーク130上の位置推定装置150に対してデータをアップロードする際の中継装置としての機能を有している。なお、接続局120は、単にデータ収集ネットワーク130へのゲートウェイとしての機能を有するだけではなく、自身の機器IDを送信する(さらには、相手装置から機器IDを受信して蓄積する)基準局としての機能を有してもよい。
【0032】
また、位置推定装置150は、データ収集ネットワーク130を介して接続局120から転送されてくるデータ(移動無線機100がアップロードする交差履歴データ)を受信し、受信したデータを交差履歴データベース155に蓄積するとともに、必要に応じて、交差履歴データベース155に蓄積されたデータを利用して位置推定処理を行う機能を有している。なお、データ収集ネットワーク130は、専用ネットワークや公衆ネットワーク(例えばインターネット)など、任意のネットワークを利用することが可能である。
【0033】
上述のように、本発明では、所定のエリア内に、自身の機器IDを送信する基準局110(設置場所が固定及び既知)が所定のエリア内に配置されるとともに、位置推定装置150との通信が可能なデータ収集ネットワーク130に接続されている接続局120が配置される。一方、この所定のエリア内を移動する移動無線機100は、別の移動無線機100とすれ違うと相互に自身の機器IDを交換して記憶し、また、基準局110の近くを通過した場合には基準局110の機器IDを受信して記憶することで、すれ違った他の移動無線機100の機器IDや近くを通過した基準局110の機器IDを交差履歴データとして蓄積する。
【0034】
そして、移動無線機100が接続局120の近くを通過した場合、この接続局120を介して位置推定装置150に交差履歴データをアップロードすることで、位置推定装置150の交差履歴データベース155には、所定のエリア内を移動している複数の移動無線機100の交差履歴データが蓄積され、この交差履歴データを利用して、所定のエリア内を移動している移動無線機100の位置の推定が行われる。
【0035】
以下、本発明の第1及び第2の実施の形態について説明する。
【0036】
<第1の実施の形態>
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。本発明の第1の実施の形態では、記憶される機器IDが時刻情報と関連付けられる場合について説明する。
【0037】
図2には、本発明の第1の実施の形態における移動無線機100の構成の一例が図示されている。図2に図示されている移動無線機100は、送信部101、受信部102、機器ID記憶部103、交差履歴格納部104、計時機能部105、制御部106を有している。なお、図2では、これらの各機能ブロックが内部バスを介して接続されている状態が模式的に図示されている。
【0038】
送信部101及び受信部102は、他の無線機(別の無線移動機100、基準局110、接続局120)と無線通信を行うための機能を有している。本発明では、送信部101及び受信部102で利用される無線通信技術に近距離無線通信が適用される。なお、近距離無線通信とは、数十センチメートル〜数メートル程度の近距離の通信範囲を有する無線通信であり、例えばRFID(Radio Frequency Identification)の通信技術が利用可能である。
【0039】
また、機器ID記憶部103には、移動無線機100を識別するためのこの移動無線機100固有の機器ID(識別情報)があらかじめ記憶されている。
【0040】
また、交差履歴格納部104は、すれ違った別の移動無線機100から受信した機器IDや基準局110から受信した機器IDを記憶する機能を有している。なお、本発明の第1の実施の形態では、これらの機器IDは計時機能部105から得られる時刻情報と関連付けられて記憶される。
【0041】
また、計時機能部105は、現在の時刻を時刻情報として出力機能を有している。計時機能部105から出力される時刻情報は、すれ違った別の移動無線機100から受信した機器IDや基準局110から受信した機器IDに関連付けられる。
【0042】
また、制御部106は、移動無線機100の処理を制御する機能を有している。具体的には、制御部106は、送信部101から外部(他の無線機)へ機器IDを送信する処理、他の無線機から受信した機器IDを計時機能部105が出力する時刻情報と関連付けて交差履歴格納部104に記憶する処理、接続局120との通信が可能な場合には接続局120を通じて位置推定装置150へ交差履歴データを送信する処理などの各処理の制御を行う。
【0043】
また、本発明の第1の実施の形態における基準局110は、少なくとも、この基準局110に与えられている機器IDを、近隣を通過する移動無線機100に送信する機能を有している。なお、基準局110は、移動無線機100と同様に、近くを通過する移動無線機100から機器IDを受信し格納してもよい。これによって、基準局110には、その近くを通過した移動無線機100の通過履歴が残るようになる。
【0044】
また、本発明の第1の実施の形態における接続局120は、少なくとも、近くに存在する移動無線機100からデータ収集ネットワーク130上の位置推定装置150へ送信される交差履歴データを中継する機能を有している。なお、接続局120は、上記の基準局110と同様の機能を有していてもよい。すなわち、接続局120は、自身の機器IDを送信する機能を有していてもよく、さらに移動無線機100から機器IDを受信して格納する機能を有していてもよい。なお、接続局120が基準局と110と同様に自身の機器IDを送信する場合には、位置推定装置150において、この接続局120の設置場所も把握される必要がある。
【0045】
次に、図3を参照しながら、本発明の第1の実施の形態における移動無線機100の動作の一例について説明する。図3は、本発明の第1の実施の形態における移動無線機100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0046】
図3において、移動無線機100は、他の無線機(別の移動無線機100、基準局110、接続局120のいずれか)が発見されるか否かを監視している(ステップS301)。そして、移動無線機100が移動して他の無線機と通信可能な距離まで近づいた場合や、この移動無線機100は移動せずに止まっている状態で別の移動無線機100が通信可能な距離まで近づいてきた場合などに、移動無線機100は他の無線機を発見し、その無線機に対して機器IDを要求して、相手装置(発見した無線機)の機器IDを受信する(ステップS303)。
【0047】
また、移動無線機100は、通信可能な距離に近づいた無線機の種別を判別する。すなわち、移動無線機100は、相手装置が携行型の移動無線機100、基準局110、接続局120のいずれに該当するかを判別する(ステップS305、S307)。なお、相手装置の種別を判別する方法は任意である。例えば、移動無線機100、基準局110、接続局120のいずれかのそれぞれの種別を示すコードを機器IDに含ませておき、ステップS303で受信した機器IDから、その種別が分かるようにしてもよい。
【0048】
相手装置が携行型の場合には、移動無線機100は、自身の機器IDを相手装置に送信する(ステップS309)。そして、移動無線機100は、ステップS303で受信した機器IDと、受信時刻(すなわち、計時機能部105から出力される現在の時刻情報)とを関連付けて、交差履歴として交差履歴格納部104に格納する(ステップS311)。
【0049】
また、相手装置が基準局110の場合には、移動無線機100は、ステップS303で受信した機器IDと、受信時刻(すなわち、計時機能部105から出力される現在の時刻情報)とを関連付けて、交差履歴として交差履歴格納部104に格納する(ステップS313)。
【0050】
また、相手装置が接続局120の場合には、移動無線機100は、ステップS303で受信した機器IDと、受信時刻(すなわち、計時機能部105から出力される現在の時刻情報)とを関連付けて、交差履歴として交差履歴格納部104に格納する(ステップS315)。さらに、移動無線機100は、接続局120を通じてデータ収集ネットワーク130上の位置推定装置150に、交差履歴格納部104に蓄積されている交差履歴データをアップロードし(ステップS317)、アップロードした送信済みの交差履歴データを交差履歴格納部104から消去する(ステップS319)。
【0051】
そして、上述のステップS311、S313、S319のいずれかの処理を完了した移動無線機100は、再び、他の無線機を監視する状態(ステップS301における監視処理)に戻る。
【0052】
なお、ここでは、移動無線機100が基準局110や接続局120に対しては機器IDを送信しない場合を一例に挙げているが、移動無線機100が、ステップS309と同様の処理を行って自身の機器IDを基準局110や接続局120に送信してもよい。この場合、基準局110や接続局120は、受信した機器IDと受信時刻とを交差履歴として格納することで、基準局110や接続局120の近くを通過した移動無線機100の履歴が蓄積されるようになる。なお、接続局120は、蓄積された交差履歴データを任意のタイミングで位置推定装置150に送信してもよい。また、移動無線機100が自機器IDを送信する処理(ステップS309)は、相手機器IDを要求・受信する処理(ステップS303)の前後に行われてもよい。
【0053】
ステップS317において、移動無線機100から位置推定装置150にアップロードされる交差履歴データには、図4Aや図4Bに図示されているような情報要素が含まれている。図4A及び図4Bは、本発明の第1の実施の形態における位置推定装置が移動無線機から受信する交差履歴データの第1及び第2の例を示す図である。
【0054】
図4Aには、機器IDがID(M1)である移動無線機100の交差履歴データが図示されている。図4Aに図示されている移動履歴によれば、機器IDがID(M1)の移動無線機100は、時刻Taに機器IDがID(S1)である基準局110の近くを通過してその機器IDを受信し、時刻Tbに機器IDがID(Mx)である移動無線機(携行型)100とすれ違ってその機器IDを受信し、時刻Tcに機器IDがID(G1)である接続局120の近くを通過してその機器IDを受信するとともに、その接続局120を通じて交差履歴データのアップロードを行ったことが分かる。
【0055】
また、図4Bには、機器IDがID(M2)である移動無線機100の交差履歴データが図示されている。図4Bに図示されている移動履歴によれば、機器IDがID(M2)の移動無線機100は、時刻Tdに機器IDがID(S3)である基準局110の近くを通過してその機器IDを受信し、時刻Teに機器IDがID(Mx)である移動無線機(携行型)100とすれ違ってその機器IDを受信し、時刻Tfに機器IDがID(G2)である接続局120の近くを通過してその機器IDを受信するとともに、その接続局120を通じて交差履歴データのアップロードを行ったことが分かる。
【0056】
なお、図4A及び図4Bでは、説明のために種別の項目も表示されているが、本発明の第1の実施の形態では、交差履歴データには受信時刻及び相手装置の機器IDが含まれていればよい。また、上述のように機器IDの中に種別を表すコードを含ませることで、機器IDの一部によって種別が表されるようにしてもよい。
【0057】
次に、図5を参照しながら、本発明の第1の実施の形態における位置推定装置の構成について説明する。図5には、本発明の第1の実施の形態における位置推定装置150の構成の一例が図示されている。図5に図示されている位置推定装置150は、ネットワークインタフェース151、位置推定要求受付部152、基準局位置情報格納部153、位置推定処理部154、交差履歴データベース155、位置推定結果出力部156を有している。なお、図5では、これらの各機能ブロックが内部バスを介して接続されている状態が模式的に図示されている。
【0058】
ネットワークインタフェース151は、位置推定装置150をデータ収集ネットワーク130に接続させ、データ収集ネットワーク130を通じて移動無線機100から送信された交差履歴データを受信するための通信機能を有している。
【0059】
また、位置推定要求受付部152は、位置推定の要求を受け付ける機能を有している。なお、位置推定の要求は、例えば、位置推定装置150を操作することが可能なオペレータによってマウスやキーボードなどの操作インタフェースを使用して入力されてもよく、あるいは、任意の装置からネットワーク(例えばデータ収集ネットワーク130)を通じて行われてもよい。
【0060】
なお、位置推定の要求が行われる場合には位置推定対象の移動無線機100が指定される必要があり、また、その位置推定対象の移動無線機100に関する位置を推定したい時刻(現在、あるいは過去又は未来の任意の時刻)が指定されることが望ましい。
【0061】
また、基準局位置情報格納部153には、所定のエリア内に設置されたすべての基準局110の設置場所に関する情報(基準局位置情報)があらかじめ格納されている。なお、接続局120が、移動無線機100から位置推定装置150にアップロードされる交差履歴データを単に中継する機能だけではなく、基準局110としての機能も有する場合には、基準局位置情報格納部153に格納される基準局位置情報において、接続局120の位置情報の管理も行われる。
【0062】
また、位置推定処理部154は、ある移動無線機100に関する位置推定の要求を受けた場合に、基準局位置情報格納部153内の基準局位置情報や、交差履歴データベース155内の交差履歴データを参照して、位置推定対象の移動無線機100の特定の時刻における推定位置を算出する機能を有している。なお、位置推定処理部154は、位置推定対象の移動無線機100の現在の位置を推定することも可能であり、また、過去又は未来の任意の時刻における位置を推定することも可能である。
【0063】
また、交差履歴データベース155は、上述のように、各移動無線機100からアップロードされてくる交差履歴データを格納する機能を有している。
【0064】
また、位置推定結果出力部156は、位置推定処理部154で算出された位置推定結果を外部に出力する機能を有している。例えば、位置推定結果出力部156は、位置推定装置150のオペレータが閲覧可能な表示画面上に位置推定結果を出力してもよく、また、ネットワークを通じて位置推定の要求を受けている場合には、ネットワークインタフェース151を通じて、位置推定の要求を行った装置に位置推定結果を送信してもよい。
【0065】
また、図6には、基準局位置情報格納部153に格納されている基準局位置情報の一例が図示されている。図6に図示されている基準局位置情報によれば、機器IDがID(S1)である基準局110が位置P(S1)に配置されており、機器IDがID(S2)である基準局110が位置P(S2)に配置されていることが分かる。さらに、機器IDがID(G1)である接続局120が位置P(G1)に配置されており、機器IDがID(G2)である接続局120が位置P(G2)に配置されていることが分かる。
【0066】
なお、図6では、説明のために種別の項目も表示されているが、本発明では、基準局位置情報には基準局(及び接続局)の機器IDと、その装置が配置されている位置とを関連付ける情報が含まれていればよい。また、上述のように機器IDの中に種別を表すコードを含ませることで、機器IDの一部によって種別が表されるようにしてもよい。また、図6では図示省略されているが、基準局位置情報には、所定のエリア内に配置されているすべての基準局110(あるいは、さらに接続局120)の機器ID及び位置が含まれている。
【0067】
次に、本発明の第1の実施の形態における位置推定装置150で行われる位置推定処理について説明する。位置推定装置150は、例えば、交差履歴データベース155に格納されている特定の移動無線機100の交差履歴データから、その移動無線機100の任意の時刻におけるおおよその位置を算出することが可能である。
【0068】
例えば、位置推定対象の移動無線機100の時刻Tzにおける位置推定の要求を受けた場合、位置推定装置150は、その移動無線機100の交差履歴データを参照して少なくとも2つの基準局110を選択し、移動無線機100がこれらの基準局110から機器IDを受信した受信時刻(その基準局110の近くを通過した時刻)を抽出する。また、基準局位置情報格納部153を参照して、上記選択された基準局110の設置位置情報を取得する。そして、これら2つの基準局110のそれぞれに関する(時刻,位置)の情報から、これら2つの基準局110の間を通る移動無線機100の(時刻,位置)を推測する。例えば、これら2つの基準局110のそれぞれに関する(時刻,位置)の情報から、2つの基準局110を結ぶ直線上を移動無線機100が等速移動すると仮定することで、任意の時刻における位置推定対象の移動無線機100のおおよその位置を特定することが可能である。
【0069】
以下、位置推定装置100が、図4Aに示す交差履歴データ及び図6に示す基準局位置情報を用いて、機器IDがID(M1)である移動無線機100の任意の時刻における位置を推定する場合について具体的に説明する。
【0070】
機器IDがID(M1)である移動無線機100の時刻Tzにおける位置推定の要求を受けた場合、位置推定装置150は、その移動無線機100の交差履歴データ(図4Aに図示されている交差履歴データ)を参照する。なお、図4Aに図示されている交差履歴データから、ここでは、機器IDがID(G1)である接続局120も基準局110の機能を有していることが分かる。
【0071】
そして、位置推定装置150は、例えば、機器IDがID(S1)である基準局110(この基準局110の近くを通過した時刻Ta)と、機器IDがID(G1)である接続局120(この接続局120の近くを通過した時刻Tc)とを選択し、基準局位置情報格納部153内の基準局位置情報を参照して、機器IDがID(S1)である基準局110の位置P(S1)と、機器IDがID(G1)である接続局120の位置P(G1)とを把握する。
【0072】
そして、基準局110に関する座標(Ta,P(S1))、接続局120に関する座標(Tc,P(G1))を結ぶ直線を求めることで、図7に図示されているように、時刻tにおける移動無線機100の位置P(M1)[t]を表す下記の式(1)を求める。
【0073】
式(1): P(M1)[t]={P(G1)−P(S1)}×(t−Ta)/(Tc−Ta)+P(S1)
【0074】
そして、上記の式(1)の時刻tに位置推定の対象時刻Tzを代入することで、位置推定対象の移動無線機100の時刻Tzにおける推定位置が算出される。
【0075】
なお、上記の式(1)において、位置推定の対象時刻TzをTa≦Tz≦Tcの範囲に限定してもよいが、Tz<TaやTz>Tcの範囲における移動無線機100の位置推定に適用することも可能である。
【0076】
また、上記の式(1)では、機器IDがID(M1)である移動無線機100が、その移動無線機100の交差履歴データに含まれる2つの基準局110(及び接続局120)の位置を結ぶ直線上を等速移動すると仮定しているが、3つ以上の基準局110(及び接続局120)の位置に関して例えば多変量解析の手法を適用することによって、任意の時刻tにおける移動無線機100の位置を表す軌跡を求めてもよい。また、道路や施設などの情報を含む地図データを考慮し、移動無線機100の移動経路を単なる直線で表すのではなく、移動無線機100の移動経路が基準局110(及び接続局120)間を結ぶ道路や通路と一致するようにしてもよい。
【0077】
位置推定装置150が、位置推定対象の移動無線機100の交差履歴データを交差履歴データベース155に見つけることができた場合には、上述のように、この位置推定対象の移動無線機100の交差履歴データの基づいた位置の推定を行うことが可能である。
【0078】
しかしながら、位置推定対象の移動無線機100の交差履歴データが交差履歴データベース155に存在していない場合や、存在していたとしても古い情報(昔の情報)しか残っていない場合もあり得る。これは、例えば、位置推定対象の移動無線機100が、一度もあるいは長期にわたって接続局120を通じて位置推定装置150に交差履歴データのアップロードを行っていない場合に起こり得る。
【0079】
このように、交差履歴データベース155内に、位置推定対象の移動無線機100が直接アップロードした有効な交差履歴データが発見できない場合であっても、位置推定装置150は、この位置推定対象の移動無線機100の位置を推定できる場合がある。
【0080】
交差履歴データベース155内に、位置推定対象の移動無線機100が直接アップロードした有効な交差履歴データが発見できない場合には、位置推定装置150は、その他の移動無線機100の交差履歴データの中から、この位置推定対象の移動無線機100と機器IDを交換した情報が存在していないかを検索する。
【0081】
例えば、位置推定対象の移動無線機100を、機器IDがID(Mx)の移動無線機100とする。位置推定装置150は、この機器IDがID(Mx)の移動無線機100の有効な交差履歴データを発見できなかった場合、他の移動無線機100の交差履歴データ(図4Aに図示されている機器IDがID(M1)の移動無線機100の交差履歴データや、図4Bに図示されている機器IDがID(M2)の移動無線機100の交差履歴データ)の中に、機器IDの交換を行った相手装置として機器IDがID(Mx)の移動無線機100が含まれているか否かをチェックする。
【0082】
その結果、位置推定装置150は、機器IDがID(M1)の移動無線機100の交差履歴データから、この機器IDがID(M1)の移動無線機100が、機器IDがID(Mx)の移動無線機100と時刻Tbにすれ違ったという情報を取得することができる。このとき、上述の式(1)を利用するアルゴリズムを用いて、時刻Tbにおける位置P(M1)[t=Tb]を算出することが可能である。この位置P(M1)[t=Tb]は、機器IDがID(M1)の移動無線機100が時刻Tbに存在していた推定位置であるとともに、機器IDがID(Mx)の移動無線機100とすれ違った地点でもあり、すなわち、機器IDがID(Mx)の移動無線機100が時刻Tbに存在していた推定位置である。
【0083】
また、位置推定装置150は、機器IDがID(M2)の移動無線機100の交差履歴データから、この機器IDがID(M2)の移動無線機100が、機器IDがID(Mx)の移動無線機100と時刻Teにすれ違ったという情報を取得することができる。この場合も同様に、機器IDがID(Mx)の移動無線機100が時刻Teに存在していた推定位置P(M2)[t=Te]が算出される。これにより、位置推定装置150は、機器IDがID(Mx)の移動無線機100自体からは、有効な交差履歴データを受信していないにもかかわらず、この機器IDがID(Mx)の移動無線機100が存在していた位置を特定することが可能である。
【0084】
以上のように、機器IDがID(M1)やID(M2)の移動無線機100の交差履歴データから、機器IDがID(Mx)の移動無線機100の交差履歴データ(機器IDがID(M1)やID(M2)の移動無線機100とすれ違った時刻や位置)を推定することが可能となる。
【0085】
さらに、位置推定装置150は、位置推定対象の移動無線機100(機器IDがID(Mx)の移動無線機100)から直接アップロードされた交差履歴データを発見した場合であっても、機器IDがID(Mx)の移動無線機100とすれ違った他の移動無線機100の交差履歴データからすれ違った時刻及び位置の情報を取得し、他の移動無線機100の交差履歴データを2次的なデータ(補正用データ)として利用することも可能である。
【0086】
例えば、位置推定対象の移動無線機100を、機器IDがID(Mx)の移動無線機100とする。位置推定装置150は、この機器IDがID(Mx)の移動無線機100から直接アップロードされた有効な交差履歴データを交差履歴データベースから読み出し、この結果、図8Aに図示されているような基準局110や接続局120、機器IDがID(M1)やID(M2)の移動無線機100との交差履歴を取得する。なお、図8Aにはすれ違った位置も記載されているが、この位置は基準局位置情報(基準局110の場合)や多変量解析などによる計算結果(移動無線機100の場合)から得られる。図8Aの例によれば、機器IDがID(Mx)の移動無線機100が、機器IDがID(M1)の移動無線機100と時刻Tq、位置P(M1)[t=Tq]で交差し、機器IDがID(M2)の移動無線機100と時刻Tr、位置P(M2)[t=Tr]で交差したことが分かる。
【0087】
一方、位置推定装置150は、機器IDがID(M1)やID(M2)の移動無線機100の交差履歴データから、機器IDがID(Mx)の移動無線機100の交差履歴データ(機器IDがID(M1)やID(M2)の移動無線機100とすれ違った時刻や位置)を推定する。この動作によって、図8Bに図示されているように、機器IDがID(M1)の移動無線機100が、機器IDがID(Mx)の移動無線機100と時刻Tv、位置P(Mx)[t=Tv]で交差し、機器IDがID(M2)の移動無線機100が、機器IDがID(Mx)の移動無線機100と時刻Tw、位置P(Mx)[t=Tw]で交差したという情報が得られる。
【0088】
そして、位置推定装置150は、この機器IDがID(Mx)の移動無線機100から直接アップロードされた有効な交差履歴データに対して、機器IDがID(M1)やID(M2)の移動無線機100の交差履歴データから得られたデータに基づく補正を行うことで、より適切な位置推定を行うことが可能である。具体的には、位置P(M1)[t=Tq]及び位置P(Mx)[t=Tv]は本来同一となるが、誤差や推定方法に内在する揺らぎなどの影響でずれている可能性が高い。したがって、例えば、2つの位置の中間位置を交差位置に定めるなど、位置P(M1)[t=Tq]を位置P(Mx)[t=Tv]によって補正することが可能である。また、位置P(M2)[t=Tr]及び位置P(Mx)[t=Tw]に関しても同様に補正可能である。
【0089】
以上、説明したように、本発明の第1の実施の形態によれば、位置推定装置150が、各移動無線機100は、所定の通過地点及びその通過時刻や移動無線機100同士がすれ違った相手無線機の識別情報及びそのすれ違い時刻を各移動無線機100の交差履歴データとして、接続局120を通じて位置推定装置150にアップロードすることで、位置推定装置150において、各移動無線機100の任意の時刻における位置を推定することが可能となる。
【0090】
また、移動無線機100同士が自身の機器IDを相互に交換することで、移動無線機100同士がすれ違う事象が双方の交差履歴として残ることになる。すなわち、第1の移動無線機100が第2の移動無線機100とすれ違ったという交差履歴は、第1及び第2の移動無線機100の両方の交差履歴データに記録され、一方の交差履歴データを他方の交差履歴データで補正することによって、同一の交差事象(すれ違ったという事象)の時刻や位置を、2つの交差履歴データを利用して得ることが可能となる。
【0091】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本発明の第2の実施の形態では、記憶される機器IDが歩数情報(あるいは移動距離情報)と関連付けられる場合について説明する。
【0092】
図9には、本発明の第2の実施の形態における移動無線機100の構成の一例が図示されている。図9に図示されている移動無線機100は、送信部101、受信部102、機器ID記憶部103、交差履歴格納部104、計時機能部105、制御部106、歩数計測部905を有している。なお、図9では、これらの各機能ブロックが内部バスを介して接続されている状態が模式的に図示されている。
【0093】
図2に図示されている構成と比較して分かるように、本発明の第2の実施の形態における移動無線機100は、本発明の第1の実施の形態における移動無線機100に、さらに歩数計測部905が追加された構成を有している。歩数計測部905は、移動無線機100を持って移動する人間の歩数をカウントする機能を有しており、カウントされた歩数に人間の平均歩幅を積算することで大体の移動距離を計算することが可能である。歩数計測部905で計測された歩数(移動距離に相当)は、交差履歴の記録の際に用いられる。すなわち、本発明の第2の実施の形態では、他の移動無線機100から受信した機器IDと関連付けられて記録される情報として、時刻(受信時刻)と共に歩数(あるいは移動距離)が用いられる。
【0094】
なお、ここでは移動距離を求めるための機能として、簡素な構成で実装が楽な歩数計測部905を利用しているが、移動距離の計測を行うことが可能な任意の機能を実装させることが可能である。例えば、移動距離の計測に、車両などに設置されている走行距離の計測機能を利用することも可能である。
【0095】
また、図9に図示されているその他の機能(送信部101、受信部102、機器ID記憶部103、交差履歴格納部104、計時機能部105、制御部106)は、基本的に図2に図示されているものと同一の機能を有しており、ここでは説明を省略する。
【0096】
次に、図10を参照しながら、本発明の第2の実施の形態における移動無線機100の動作の一例について説明する。図10は、本発明の第2の実施の形態における移動無線機100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0097】
図10において、移動無線機100は、他の無線機(別の移動無線機100、基準局110、接続局120のいずれか)が発見されるか否かを監視している(ステップS1001)。そして、移動無線機100が移動して他の無線機と通信可能な距離まで近づいた場合や、この移動無線機100は移動せずに止まっている状態で別の移動無線機100が通信可能な距離まで近づいてきた場合などに、移動無線機100は他の無線機を発見し、その無線機に対して機器IDを要求して、相手装置(発見した無線機)の機器IDを受信する(ステップS1003)。また、移動無線機100は、移動時には常に歩数(移動距離)の計測処理を行っている(ステップS1002)。
【0098】
また、移動無線機100は、通信可能な距離に近づいた無線機の種別を判別する。すなわち、移動無線機100は、相手装置が携行型の移動無線機100、基準局110、接続局120のいずれに該当するかを判別する(ステップS1005、S1007)。なお、相手装置の種別を判別する方法は任意である。例えば、移動無線機100、基準局110、接続局120のいずれかのそれぞれの種別を示すコードを機器IDに含ませておき、ステップS1003で受信した機器IDから、その種別が分かるようにしてもよい。
【0099】
相手装置が携行型の場合には、移動無線機100は、自身の機器IDを相手装置に送信する(ステップS1009)。そして、移動無線機100は、ステップS1003で受信した機器IDと、歩数(すなわち、歩数計測部905から出力される現在の歩数情報)及び交差時刻(計時機能部105から出力される現在の時刻情報)とを関連付けて、交差履歴として交差履歴格納部104に格納する(ステップS1011)。
【0100】
また、相手装置が基準局110の場合には、移動無線機100は、ステップS1003で受信した機器IDと、歩数(すなわち、歩数計測部905から出力される現在の歩数情報)及び交差時刻(計時機能部105から出力される現在の時刻情報)とを関連付けて、交差履歴として交差履歴格納部104に格納する(ステップS1013)。また、歩数計測部905のカウント値(現在の歩数)をリセットする(ステップS1015)。
【0101】
また、相手装置が接続局120の場合には、移動無線機100は、ステップS1003で受信した機器IDと、歩数(すなわち、歩数計測部905から出力される現在の歩数情報)及び交差時刻(計時機能部105から出力される現在の時刻情報)とを関連付けて、交差履歴として交差履歴格納部104に格納する(ステップS1017)。また、歩数計測部905のカウント値(現在の歩数)をリセットする(ステップS1019)。さらに、移動無線機100は、接続局120を通じてデータ収集ネットワーク130上の位置推定装置150に、交差履歴格納部104に蓄積されている交差履歴データをアップロードし(ステップS1021)、アップロードした送信済みの交差履歴データを交差履歴格納部104から消去する(ステップS1023)。なお、位置推定装置150は、この交差履歴データを受信し交差履歴データベース155に記憶する際に、その受信時刻(又は情報記憶時刻)を同時に記憶することで、移動無線機100からのアップロード時刻を特定できるようにすることが望ましい。
【0102】
そして、上述のステップS1011、S1015、S1023のいずれかの処理を完了した移動無線機100は、再び、他の無線機を監視するとともに、歩数(移動距離)を計測する状態(ステップS1001における監視処理、ステップS1002の歩数計測処理)に戻る。
【0103】
なお、ここでは、移動無線機100が基準局110や接続局120に対しては機器IDを送信しない場合を一例に挙げているが、移動無線機100が、ステップS1009と同様の処理を行って自身の機器IDを基準局110や接続局120に送信してもよい。この場合、基準局110や接続局120は、受信した機器IDと受信時刻とを交差履歴として格納することで、基準局110や接続局120の近くを通過した移動無線機100の履歴が蓄積されるようになる。なお、接続局120は、蓄積された交差履歴データを任意のタイミングで位置推定装置150に送信してもよい。また、移動無線機100が自機器IDを送信する処理(ステップS1009)は、相手機器IDを要求・受信する処理(ステップS1003)の前後に行われてもよい。
【0104】
上述のステップS1015、S1019における歩数のリセットは、位置推定装置150において基準局位置情報でその位置が把握されている場所(上述の動作では、基準局110及び接続局120)で行われる。これにより、歩数は、直近の基準局110又は接続局120との交差から、どれくらい移動したのかを表す情報として利用可能となる。また、移動無線機100が等速で移動していると仮定することで、基準局110又は接続局120間を移動する間に別の移動無線機100とすれ違った交差地点を、基準局110又は接続局120間の移動距離と、移動無線機100と交差した際の移動距離との比率から推定することが可能である。
【0105】
本発明の第2の実施の形態における位置推定装置150は、時刻情報の代わりに歩数情報を利用する点では異なるものの、基本的に本発明の第1の実施の形態における位置推定装置150と同一のアルゴリズムを使用して位置推定を行う。すなわち、本発明の第2の実施の形態における位置推定処理は、本発明の第1の実施の形態において用いられているパラメータ“時刻”を“歩数(あるいは移動距離)”と適宜読み換えたものに等しい。
【0106】
以上、説明したように、本発明の第2の実施の形態によれば、位置推定装置150が、各移動無線機100は、所定の通過地点及びその地点に至るまでの歩数(あるいは移動距離)や、移動無線機100同士がすれ違った相手無線機の識別情報及びそのすれ違った地点に至るまでの歩数(あるいは移動距離)を各移動無線機100の交差履歴データとして、接続局120を通じて位置推定装置150にアップロードすることで、位置推定装置150において、各移動無線機100の任意の時刻における位置を推定することが可能となる。
【0107】
また、本発明の第2の実施の形態においても、移動無線機100同士が自身の機器IDを相互に交換することで、移動無線機100同士がすれ違う事象が双方の交差履歴として残ることになり、同一の交差事象(すれ違ったという事象)の時刻や位置を、2つの交差履歴データを利用して得ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明は、近距離通信機能を用いた簡単なシステム構成によって高精度の位置推定を実現するという効果や、近距離無線機での通信の双方向性を活用してより高精度の位置推定を実現するという効果を有し、無線通信端末の位置を推定するための位置推定技術に適用可能であり、特に、近距離無線通信の機能を有する近距離無線機の位置を推定するための位置推定技術に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明の第1及び第2の実施の形態に共通するシステム構成を模式的に示す図
【図2】本発明の第1の実施の形態における移動無線機の構成の一例を示す図
【図3】本発明の第1の実施の形態における移動無線機の動作の一例を示すフローチャート
【図4A】本発明の第1の実施の形態において得られる交差履歴データの一例を示す図
【図4B】本発明の第1の実施の形態において得られる交差履歴データの別の一例を示す図
【図5】本発明の第1の実施の形態における位置推定装置の構成の一例を示す図
【図6】本発明の第1の実施の形態において用いられる基準局位置情報の一例を示す図
【図7】本発明の第1の実施の形態における位置推定装置による位置推定方法の概略を示す図
【図8A】本発明の第1の実施の形態において得られる交差履歴データの更に別の一例を示す図
【図8B】本発明の第1の実施の形態において得られる交差履歴データであって、図8Aの交差履歴データの補正データとして用いられる交差データの一例を示す図
【図9】本発明の第2の実施の形態における移動無線機の構成の一例を示す図
【図10】本発明の第2の実施の形態における移動無線機の動作の一例を示すフローチャート
【図11】従来の技術における3点測量の手法の概略を示す図
【符号の説明】
【0110】
100 移動無線機
101 送信部
102 受信部
103 機器ID記憶部
104 交差履歴格納部
105 計時機能部
106 制御部
110 基準局
120 接続局
130 データ収集ネットワーク
150 位置推定装置
151 ネットワークインタフェース
152 位置推定要求受付部
153 基準局位置情報格納部
154 位置推定処理部
155 交差履歴データベース
156 位置推定結果出力部
905 歩数計測部
2000 移動端末
2001−2003 基地局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定エリア内を移動する複数の無線通信端末と、前記所定エリア内に固定設置された複数の基準局と、前記所定エリア内に存在するとともに所定ネットワークに接続されている接続局と、前記所定ネットワークに接続されている位置推定装置とを有する位置推定システムであって、
前記無線通信端末が、
近隣に存在する別の無線通信端末、前記基準局、前記接続局と通信を行う近距離無線通信手段と、
各無線通信端末に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末と通信可能な場合に、自端末の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末又は前記基準局と通信可能な場合に、前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末から受信する機器識別情報受信手段と、
現在の時刻情報を出力する計時手段と、
前記機器識別情報受信手段で受信した前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を、前記計時手段から出力される前記時刻情報と関連付けて、交差履歴データとして記憶する交差履歴データ記憶手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記接続局と通信可能な場合に、前記接続局及び前記所定ネットワークを通じて前記位置推定装置に前記交差履歴データを送信する交差履歴データ送信手段とを有し、
前記基準局が、
近隣に存在する前記無線通信端末と通信を行う近距離無線通信手段と、
各基準局に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記無線通信端末と通信可能な場合に、自局の前記機器識別情報を前記無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段とを有し、
前記接続局が、
近隣に存在する前記無線通信端末と通信を行う近距離無線通信手段と、
前記所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
前記無線通信端末から前記近距離無線通信手段を介して受信した前記交差履歴データを、前記ネットワークインタフェースを介して前記位置推定装置に転送する交差履歴データ転送手段とを有し、
前記位置推定装置が、
前記所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
すべての前記基準局の設置位置を示す基準局位置情報を格納する基準局位置情報格納手段と、
前記ネットワークインタフェースを介して前記無線通信端末から送信された前記交差履歴データを受信する交差履歴データ受信手段と、
複数の前記無線通信端末のそれぞれから受信した前記交差履歴データを格納する交差履歴データベースと、
前記交差履歴データベースに格納された前記交差履歴データを利用して、任意の前記無線通信端末の任意の時刻における位置を推定する位置推定処理手段とを有する位置推定システム。
【請求項2】
所定エリア内を移動する複数の無線通信端末と、前記所定エリア内に固定設置された複数の基準局と、前記所定エリア内に存在するとともに所定ネットワークに接続されている接続局と、前記所定ネットワークに接続されている位置推定装置とを有する位置推定システムであって、
前記無線通信端末が、
近隣に存在する別の無線通信端末、前記基準局、前記接続局と通信を行う近距離無線通信手段と、
各無線通信端末に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末と通信可能な場合に、自端末の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末又は前記基準局と通信可能な場合に、前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末から受信する機器識別情報受信手段と、
現在の時刻情報を出力する計時手段と、
自端末が移動した距離を表す移動距離情報を出力する移動距離情報出力手段と、
前記機器識別情報受信手段で受信した前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を、前記移動距離情報出力手段から出力される前記移動距離情報及び前記計時手段から出力される前記時刻情報と関連付けて、交差履歴データとして記憶する交差履歴データ記憶手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記接続局と通信可能な場合に、前記接続局及び前記所定ネットワークを通じて前記位置推定装置に前記交差履歴データを送信する交差履歴データ送信手段とを有し、
前記基準局が、
近隣に存在する前記無線通信端末と通信を行う近距離無線通信手段と、
各基準局に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記無線通信端末と通信可能な場合に、自局の前記機器識別情報を前記無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段とを有し、
前記接続局が、
近隣に存在する前記無線通信端末と通信を行う近距離無線通信手段と、
前記所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
前記無線通信端末から前記近距離無線通信手段を介して受信した前記交差履歴データを、前記ネットワークインタフェースを介して前記位置推定装置に転送する交差履歴データ転送手段とを有し、
前記位置推定装置が、
前記所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
すべての前記基準局の設置位置を示す基準局位置情報を格納する基準局位置情報格納手段と、
前記ネットワークインタフェースを介して前記無線通信端末から送信された前記交差履歴データを受信する交差履歴データ受信手段と、
複数の前記無線通信端末のそれぞれから受信した前記交差履歴データを格納する交差履歴データベースと、
前記交差履歴データベースに格納された前記交差履歴データを利用して、任意の前記無線通信端末の任意の時刻における位置を推定する位置推定処理手段とを有する位置推定システム。
【請求項3】
所定エリア内を移動する無線通信端末であって、
近隣に存在する別の無線通信端末、前記所定エリア内に固定設置された基準局、前記所定エリア内に存在するとともに所定ネットワークに接続されている接続局と通信を行う近距離無線通信手段と、
各無線通信端末に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末と通信可能な場合に、自端末の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末又は前記基準局と通信可能な場合に、前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末から受信する機器識別情報受信手段と、
現在の時刻情報を出力する計時手段と、
前記機器識別情報受信手段で受信した前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を、前記計時手段から出力される前記時刻情報と関連付けて、交差履歴データとして記憶する交差履歴データ記憶手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記接続局と通信可能な場合に、前記接続局及び前記所定ネットワークを通じて前記位置推定装置に前記交差履歴データを送信する交差履歴データ送信手段とを、
有する無線通信端末。
【請求項4】
所定エリア内を移動する無線通信端末であって、
近隣に存在する別の無線通信端末、前記所定エリア内に固定設置された基準局、前記所定エリア内に存在するとともに所定ネットワークに接続されている接続局と通信を行う近距離無線通信手段と、
各無線通信端末に固有の機器識別情報を格納する機器識別情報格納手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末と通信可能な場合に、自端末の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末に送信する機器識別情報送信手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記別の無線通信端末又は前記基準局と通信可能な場合に、前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を前記別の無線通信端末から受信する機器識別情報受信手段と、
現在の時刻情報を出力する計時手段と、
自端末が移動した距離を表す移動距離情報を出力する移動距離情報出力手段と、
前記機器識別情報受信手段で受信した前記別の無線通信端末又は前記基準局の前記機器識別情報を、前記移動距離情報出力手段から出力される前記移動距離情報及び前記計時手段から出力される前記時刻情報と関連付けて、交差履歴データとして記憶する交差履歴データ記憶手段と、
前記近距離無線通信手段を介して前記接続局と通信可能な場合に、前記接続局及び前記所定ネットワークを通じて前記位置推定装置に前記交差履歴データを送信する交差履歴データ送信手段とを、
有する無線通信端末。
【請求項5】
所定エリア内の無線通信端末の任意の時刻における位置を推定する位置推定装置であって、
所定ネットワークに接続されているネットワークインタフェースと、
前記所定エリア内に固定設置されているすべての基準局の設置位置を示す基準局位置情報を格納する基準局位置情報格納手段と、
前記無線通信端末が別の無線通信端末又は前記基準局の近隣を通過する際に受信した機器識別情報を含む交差履歴データを、前記ネットワークインタフェースを介して前記無線通信端末から受信する交差履歴データ受信手段と、
複数の前記無線通信端末のそれぞれから受信した前記交差履歴データを格納する交差履歴データベースと、
前記交差履歴データベースに格納された前記交差履歴データを利用して、任意の前記無線通信端末の任意の時刻における位置を推定する位置推定処理手段とを、
有する位置推定装置。
【請求項6】
前記交差履歴データが、前記機器識別情報に対して、前記機器識別情報を受信した際の時刻情報又は受信した位置までの移動距離情報が関連付けられている情報である請求項5に記載の位置推定装置。
【請求項7】
前記位置推定処理手段は、位置推定対象の無線通信端末から受信した交差履歴データを前記交差履歴データベース内から取得し、取得した交差履歴データ及び前記基準局位置情報を参照して、前記位置推定対象の無線通信端末が前記機器識別情報を受信した前記基準局の位置を特定することで、前記位置推定対象の無線通信端末の移動経路を推定するように構成されている請求項5に記載の位置推定装置。
【請求項8】
前記位置推定処理手段は、位置推定対象の無線通信端末から受信した交差履歴データを前記交差履歴データベース内から取得できなかった場合に、別の無線通信端末の交差履歴データを参照して前記位置推定対象の無線通信端末の機器識別情報を検索し、その検索結果から前記位置推定対象の無線通信端末が別の移動無線機とすれ違った位置を特定することで、前記位置推定対象の無線通信端末の移動経路を推定するように構成されている請求項5に記載の位置推定装置。
【請求項9】
前記位置推定処理手段は、位置推定対象の無線通信端末から受信した交差履歴データを前記交差履歴データベース内から取得し、取得した交差履歴データ及び前記基準局位置情報を参照して、前記位置推定対象の無線通信端末が前記機器識別情報を受信した前記基準局の位置を特定することで、前記位置推定対象の無線通信端末の移動経路を推定するとともに、さらに、別の無線通信端末の交差履歴データを参照して前記位置推定対象の無線通信端末の機器識別情報を検索し、その検索結果から前記位置推定対象の無線通信端末が別の移動無線機とすれ違った位置を特定し、その特定された位置に基づいて、前記移動経路の補正を行うように構成されている請求項5に記載の位置推定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−298689(P2008−298689A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147283(P2007−147283)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】