作業車両の原動機制御装置
【課題】作業車両の燃費を改善する。
【解決手段】原動機1により駆動される油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2からの圧油により駆動する油圧アクチュエータ5と、油圧ポンプ2からの圧油による油圧アクチュエータ5の駆動を禁止する駆動禁止手段3と、駆動禁止手段3の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段14と、少なくとも駆動禁止検出手段14により駆動禁止手段3の作動が検出されると、原動機1の回転数を、油圧アクチュエータ5を駆動可能な最小回転数(ローアイドル回転数NL)よりも低い低速回転数NSに制御する回転数制御手段12〜16とを備える。
【解決手段】原動機1により駆動される油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2からの圧油により駆動する油圧アクチュエータ5と、油圧ポンプ2からの圧油による油圧アクチュエータ5の駆動を禁止する駆動禁止手段3と、駆動禁止手段3の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段14と、少なくとも駆動禁止検出手段14により駆動禁止手段3の作動が検出されると、原動機1の回転数を、油圧アクチュエータ5を駆動可能な最小回転数(ローアイドル回転数NL)よりも低い低速回転数NSに制御する回転数制御手段12〜16とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール式油圧ショベル等の作業車両の原動機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作レバーが中立位置に操作されるとエンジン回転数を所定回転数まで低減するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。これによれば操作レバーを中立位置に固定するためのロック機構を設け、ロック機構が解除された状態で操作レバーが中立位置に操作されるとエンジン回転数を上記所定回転数に制御する。ロック機構が作動した状態ではエンジン回転数を上記所定回転数よりも低い回転数(以下、ローアイドル回転数と呼ぶ)に制御する。ここで、ローアイドル回転数はエンジンのアクセル位置をアイドリング位置よりも僅かに高速側に設定したときの回転数であり、油圧アクチュエータを駆動してもエンストしない最小の回転数である。
【0003】
【特許文献1】特許第3073896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記公報記載の装置では、ロック機構が作動した状態でエンジン回転数をローアイドル回転数に制御するため、エンジン回転数を十分に低減しているとは言えず、燃費のさらなる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による作業車両の原動機制御装置は、原動機により駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからの圧油により駆動する油圧アクチュエータと、油圧ポンプからの圧油による油圧アクチュエータの駆動を禁止する駆動禁止手段と、駆動禁止手段の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段と、少なくとも駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の作動が検出されると、原動機の回転数を、油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(以下、これをローアイドル回転数と呼ぶ)よりも低い低速回転数に制御する回転数制御手段と、オペレータの操作によりローアイドル回転数を下限とした範囲内で原動機の回転数を指令する回転数指令手段とを備え、回転数制御手段は、駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の非作動が検出された状態で、アクチュエータ駆動指令手段によってアクチュエータの駆動が所定時間出力されないとき、回転数指令手段による指令回転数がローアイドル回転数よりも高い設定回転数以上であれば、原動機の回転数を前記設定回転数に制御し、原動機の回転数を低速回転数に制御した状態では、駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の非作動が検出されると、原動機の回転数を設定回転数に制御し、原動機の回転数が設定回転数に制御されているとき、アクチュエータ駆動指令手段によってアクチュエータの駆動が出力されると、原動機の回転数を回転数指令手段による指令回転数に制御することを特徴とする。
また、本発明による作業車両の原動機制御装置は、原動機により駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからの圧油により駆動する油圧アクチュエータと、油圧ポンプからの圧油による油圧アクチュエータの駆動を禁止する駆動禁止手段と、駆動禁止手段の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段と、少なくとも駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の作動が検出されると、原動機の回転数を、油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(以下、これをローアイドル回転数と呼ぶ)よりも低い低速回転数に制御する回転数制御手段と、オペレータの操作によりローアイドル回転数を下限とした範囲内で原動機の回転数を指令する回転数指令手段とを備え、回転数制御手段は、原動機の回転数を低速回転数に制御した状態で駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の非作動が検出されると、回転数指令手段による指令回転数がローアイドル回転数よりも高い設定回転数以上のときに、原動機の回転数をその指令回転数まで徐々に増加させ、設定回転数未満のときに、原動機の回転数をその指令回転数まで即座に増加させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、少なくとも油圧ポンプからの圧油による油圧アクチュエータの駆動が禁止されると、原動機の回転数を、油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(ローアイドル回転数)よりも低い低速回転数に制御するようにした。これにより油圧ポンプに負荷がかからない状態で原動機回転数をローアイドル回転数よりも低くすることができ、エンストを防止しつつ燃費を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の参考例−
以下、図1,2を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第1の参考例について説明する。
図1は第1の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。この原動機制御装置は、油圧アクチュエータを有する作業車両(例えば油圧ショベルなど)に搭載される。
【0008】
図2は油圧アクチュエータ5の駆動用油圧回路図である。エンジン1によって駆動される油圧ポンプ2からの圧油はロックバルブ3、制御弁4を介して油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータ5に供給される。この油圧アクチュエータ5は、例えばクローラ式走行装置をもつ油圧ショベルでは、ブーム、アーム等の作業装置を駆動する油圧シリンダおよび旋回体、走行体を駆動する油圧モータである。ロックバルブ3は油圧ポンプ2からの圧油を制御弁4に導く連通位置と制御弁4への圧油の供給を阻止する遮断位置とに切り換え可能な2位置切換弁であり、ゲートロックレバー6の操作によって切り換えられる。ゲートロックレバー6は運転室の入口に設けられ、乗員の乗降を妨げる解除位置と乗員の乗降を許容するロック位置とに操作される。ゲートロックレバー6が解除位置に操作されるとロックバルブ3が連通位置に切り換えられ、ゲートロックレバー6がロック位置に操作されるとロックバルブ3が遮断位置に切り換えられる。
【0009】
制御弁4は操作レバー7の操作によって切り換えられ、ロックバルブ3から油圧アクチュエータ5への圧油の流れを制御する。なお、油圧回路の構成は図2のものに限らない。例えば制御弁4を油圧パイロット式切換弁として構成し、操作レバー7の操作量に応じたパイロット圧を発生するパイロット回路を設け、操作レバー7の操作量に応じたパイロット圧により制御弁4を切り換えるようにしてもよい。この場合、ロックバルブ3をパイロット回路に配置してもよい。
【0010】
図1に示すように運転室にはエンジン回転数を指令するための燃料レバー8が設けられる。燃料レバー8はアイドルとフルの間で操作可能であり、燃料レバー8の操作量(操作ストローク量または操作角度)は操作量検出器11によって検出される。操作量検出器11からの信号Sは関数発生回路12および信号発生回路13にそれぞれ入力される。関数発生回路12には予め図示のように操作量Sに対するエンジン1の目標回転数Nの関係(特性L1)が記憶され、関数発生回路12は操作量Sに応じた目標回転数Nを出力する。特性L1によれば、操作量Sの増加に伴い目標回転数Nがローアイドル回転数NLから定格回転数N1まで比例的に増加している。
【0011】
ローアイドル回転数NLとは、操作レバー7の操作によりいずれかの油圧アクチュエータ5を駆動してもエンストしないエンジン1の最小回転数であり、例えば1000rpmに設定される。なお、定格回転数N1は例えば2000rpmである。信号発生回路13は燃料レバー8によりローアイドル回転数NLが指令されるとハイ信号を出力し、ローアイドル回転数NLより高い回転数が指令されるとロー信号を出力する。
【0012】
ゲートロックレバー6にはリミットスイッチ14が設けられ、ゲートロックレバー6がロック位置に操作されるとリミットスイッチ14がオンし、解除位置に操作されるとリミットスイッチ14がオフする。アンド回路15にはリミットスイッチ14および信号発生回路13からの信号が入力され、これら入力信号に応じてアンド回路15は切換回路16を切り換える。すなわち信号発生回路13からハイ信号が入力され、かつ、リミットスイッチ14のオン信号が入力されるとアンド回路15は切換回路16を端子b側に切り換える。これにより切換回路16は予め設定回路17に設定された回転数NS(スーパーローアイドル回転数と呼ぶ)を目標回転数として出力する。一方、信号発生回路13からロー信号が入力され、あるいはリミットスイッチ14のオフ信号が入力されるとアンド回路15は切換回路16を端子a側に切り換える。これにより切換回路16は関数発生回路12からの目標回転数を出力する。
【0013】
スーパーローアイドル回転数NSとは、油圧アクチュエータ5を駆動しない油圧ポンプ2の無負荷状態のときに、エアコンや補機類を動作させてもエンストしないエンジン1の低速回転数である。この状態では油圧アクチュエータ5の駆動を考慮する必要がないので、スーパーローアイドル回転数NSは上述したローアイドル回転数NLよりも低く、例えば600rpmに設定される。この回転数は油圧アクチュエータ5の駆動による負荷がエンジン1に作用すればエンストを起こす回転数であり、油圧アクチュエータ5の駆動に要する出力分だけアイドル回転数をローアイドル回転数NLよりも低減することができる。
【0014】
エンジン1のガバナ21はリンク機構22を介してパルスモータ23に接続され、パルスモータ23の回転によりエンジン回転数が制御される。また、ガバナ21にはリンク機構22を介してポテンショメータ24が接続され、ポテンショメータ24によりエンジン回転数に応じたガバナレバー角度が検出され、サーボ制御回路25に出力される。サーボ制御回路25はポテンショメータ24で検出した回転数が切換回路16から出力された目標回転数となるようにパルスモータ23に制御信号を出力し、パルスモータ23の回転を制御する。
【0015】
次に、第1の参考例に係る原動機制御装置の主要な動作を説明する。
作業時にはオペレータはゲートロックレバー6を解除位置に操作する。これによりロックバルブ3が連通位置に切り換えられ(ロックバルブ非作動)、操作レバー7の操作による油圧アクチュエータ5の駆動が許容されるとともに、リミットスイッチ14がオフされ、切換回路16が端子a側に切り換えられる。その結果、切換回路16からは燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nが出力され、サーボ制御回路25でエンジン回転数が目標回転数Nに制御される。例えば燃料レバー8をアイドルに操作するとエンジン回転数はローアイドル回転数NLに制御され、フルに操作すると定格回転数N1に制御される。
【0016】
作業を中断する場合等、非作業時にはオペレータはゲートロックレバー6をロック位置に操作する。これによりロックバルブ3が遮断位置に切り換えられ(ロックバルブ作動)、操作レバー7の操作による油圧アクチュエータ5の駆動が禁止され、リミットスイッチ14がオンされる。このとき燃料レバー8がアイドルに操作されると、切換回路16が端子b側に切り換えられる。このため切換回路16からはスーパーローアイドル回転数NSが目標回転数として出力され、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。その結果、燃費およびエンジン騒音を低減することができる。この場合、誤って操作レバー7を操作しても油圧アクチュエータ5には油圧ポンプ2からの圧油が供給されず、エンジン出力が不足することによるエンストを防止することができる。
【0017】
作業の中断後、作業を再開する場合、オペレータは燃料レバー8をアイドルに操作したままゲートロックレバー6を解除位置に操作する。これによりリミットスイッチ14がオフされて、切換回路16が端子a側に切り換えられ、エンジン回転数はローアイドル回転数NLに制御される。次いで、オペレータは燃料レバー8をフル側に操作し、エンジン回転数をその操作量に応じた回転数まで上昇させた後、操作レバー7を操作して油圧アクチュエータ5を駆動する。これによりエンジン出力が不足することなく作業を行うことができ、エンストを防止できる。なお、ゲートロックレバー6を解除位置に操作した後、燃料レバー8をアイドルに操作した状態で操作レバー7を操作しても、エンストすることなく油圧アクチュエータ5を駆動することができる。
【0018】
一方、ゲートロックレバー6を解除位置に操作する前に燃料レバー8をフル側に操作すると切換回路16が端子a側に切り換わり、エンジン回転数はその燃料レバー8の操作量に応じた回転数に制御される。この状態でゲートロックレバー6を解除位置に操作して操作レバー7を操作すると、油圧アクチュエータ5に圧油が供給され、エンストすることなく油圧アクチュエータ5を駆動することができる。すなわちゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作順序に拘わらず、操作レバー7を操作する際はエンジン回転数は少なくともローアイドル回転数NL以上であり、スーパーローアイドル回転数NSの下で油圧アクチュエータ5に圧油が供給されることがないので、エンストすることなく作業を行うことができる。
【0019】
以上の第1の参考例によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)油圧アクチュエータ5への圧油の供給が不可能な非作業状態が検出されると、エアコン,補機類,無負荷状態のポンプ等を駆動する必要最低限の回転数(スーパーローアイドル回転数NS)にエンジン回転数を制御するようにした。これにより燃費が向上するとともに騒音を抑えることができる。
(2)ゲートロックレバー6の操作によりロックバルブ3が遮断位置に切り換えられると(ロックバルブ作動)、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしたので、スーパーローアイドル回転数NSの下で油圧アクチュエータ5に圧油が供給されることはなく、エンストを防止することができる。
(3)ゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ燃料レバー8がアイドルに操作されるとスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしたので、燃料レバー8の操作により最小回転数が要求された場合にのみスーパーローアイドル回転数NSに制御され、不所望なエンジン回転数の低下を防止することができる。
【0020】
−第2の参考例−
図3,4を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第2の参考例について説明する。
第2の参考例では油圧アクチュエータ5が作業用の油圧シリンダ、油圧モータと、走行用の油圧モータ(以下走行モータという)である。作業用の油圧シリンダ、油圧モータは上述したようにロックバルブ3,ゲートロックレバー6によって動作/非動作が切り換えられ、走行モータは後述するブレーキスイッチ18などによって走行/非走行が切り換えられるものであり、例えばホイール式の油圧ショベルなどに適用される。
【0021】
図3は、第2の参考例に係る原動機制御装置が適用される作業車両(例えばホイール式油圧ショベル)の走行用油圧回路図である。図3において、走行ペダル31は前踏み操作および後踏み操作が可能であり、走行ペダル31を前踏み操作すると切換弁32が前進側に切り換えられて油圧ポンプ2からの圧油が走行モータ33に供給され、車両が前進走行する。反対に走行ペダル31を後踏み操作すると切換弁32が後進側に切り換えられ、車両が後進走行する。このような車両にあっては、エンジン回転数を上述したスーパーローアイドル回転数NSに制御した状態で走行ペダル31を踏み込み操作すると、油圧ポンプ2に負荷が作用してエンストするおそれがある。そこで、第2の参考例では以下のようにエンストを防止する。
【0022】
図4は、第2の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図1と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の参考例との相違点を主に説明する。
【0023】
図4に示すように、アンド回路15にはリミットスイッチ14と信号発生回路13とブレーキスイッチ18が接続されている。ブレーキスイッチ18は走行,作業,および駐車位置に切換可能なスイッチであり、走行位置(T端子)に切り換えられると図示しない作業ブレーキおよび駐車ブレーキがともに解除する。駐車位置(P端子)に切り換えられると駐車ブレーキが作動し、作業位置(W端子)に切り換えられると作業ブレーキが作動する。アンド回路15にはブレーキスイッチ18のP端子とW端子からの信号、すなわちブレーキの作動状態に対応した信号が入力される。このブレーキスイッチ18は、走行モータ23の動作/非動作を制御するものである。
【0024】
信号発生回路13からハイ信号が入力され、かつ、リミットスイッチ14のオン信号が入力され、かつ、ブレーキスイッチ18のP端子またはW端子から信号が入力されると、アンド回路15は切換回路16を端子b側に切り換える。これにより切換回路16はスーパーローアイドル回転数NSを目標回転数として出力する。一方、信号発生回路13からロー信号が入力され、あるいはリミットスイッチ14のオフ信号が入力され、あるいはブレーキスイッチ18のP端子またはW端子からの信号が入力されない(T端子に切り換えられた状態)と、アンド回路15は切換回路16を端子a側に切り換える。これにより切換回路16は関数発生回路12からの目標回転数を出力する。
【0025】
第2の参考例では、作業および走行がともに禁止された状態、すなわちゲートロックレバー6がロック位置に操作され(ロックバルブ作動)、かつ、燃料レバー8がアイドルに操作され、かつ、ブレーキスイッチ18が駐車または作業位置に切り換えられると(ブレーキ作動)、切換回路16が端子b側に切り換えられ、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。これによりスーパーローアイドル回転数NSの下で走行ペダル31を操作しても走行モータ33は回転しないので、油圧ポンプ2に負荷はかからず、エンストを防止することができる。
【0026】
この状態から車両走行を開始するときは、ブレーキスイッチ18を走行位置に切り換える。これにより切換回路16は端子a側に切り換えられ、エンジン回転数は燃料レバー8の操作量に応じた回転数に制御される。その結果、エンジン回転数は少なくともローアイドル回転数NL以上となり、走行時のエンストを防止することができる。なお、走行ペダル31の操作量の増加に伴い目標回転数が増加するような関係を予め設定し、ブレーキスイッチ18が走行位置に切り換えられたときはこの関係にしたがってエンジン回転数を制御するようにしてもよい。
【0027】
−第3の参考例−
図5〜7を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第3の参考例について説明する。
図5は、第3の参考例に係る原動機制御装置が適用される作業車両の走行用油圧回路図である。第2の参考例は、走行ペダル31の前踏み操作および後踏み操作により走行モータ33に圧油を供給するような作業車両に適用したが、第3の参考例は、走行ペダル31の踏み込み操作と前後進切換バルブ34の切換操作により走行モータ33に圧油を供給するような作業車両に適用する。
【0028】
前後進切換バルブ34(電磁切換弁)は前後進切換スイッチ19(図6)の操作により前進,後進,および中立位置に切り換えられる。切換弁32は油圧パイロット式切換弁であり、前後進切換バルブ34が前進または後進位置に切り換えられた状態で走行ペダル31を操作するとその操作量に応じてパイロット弁35が駆動され、油圧源36からの圧油(パイロット圧)が切換弁32のパイロットポートに作用する。これにより切換弁32が前進側または後進側に切り換えられ、油圧ポンプ2からの圧油が走行モータ33に供給され、車両が前進または後進走行する。前後進切換バルブ34が中立位置に切り換えられた状態では走行ペダル31を操作しても切換弁32にパイロット圧は作用せず、走行モータ33は駆動されない。
【0029】
図6は、第3の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図3と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第2の参考例との相違点を主に説明する。
【0030】
図6に示すように、第3の参考例では、アンド回路15にブレーキスイッチ18の代わりに前後進切換スイッチ19が接続されている。前後進切換スイッチ19は前進,後進,および中立位置に切換可能なスイッチであり、前進位置(F端子)または後進位置(R端子)に切り換えられると前後進切換バルブ34は前進位置または後進位置に切り換えられ、走行ペダル31の操作による前進走行または後進走行が可能となる。中立位置(N端子)に切り換えられると前後進切換バルブ34は中立位置に切り換えられ、走行ペダル31の操作による走行が不可能となる。アンド回路15には前後進切換スイッチ19のN端子からの信号、すなわち走行不可能状態に対応した信号が入力される。
【0031】
信号発生回路13からハイ信号が入力され、かつ、リミットスイッチ14のオン信号が入力され、かつ、前後進切換スイッチ19のN端子から信号が入力されると、アンド回路15は切換回路16を端子b側に切り換える。これにより切換回路16はスーパーローアイドル回転数NSを目標回転数として出力する。一方、信号発生回路13からロー信号が入力され、あるいはリミットスイッチ14のオフ信号が入力され、あるいは前後進切換スイッチ19のN端子からの信号が入力されない(F端子またはR端子に切り換えた状態)と、アンド回路15は切換回路16を端子a側に切り換える。これにより切換回路16は関数発生回路12からの目標回転数を出力する。
【0032】
第3の参考例では、作業および走行がともに禁止された状態、すなわちゲートロックレバー6がロック位置に操作され(ロックバルブ作動)、かつ、燃料レバー8がアイドルに操作され、かつ、前後進切換スイッチ19が中立位置に操作されると(前後進切換バルブ中立)、切換回路16が端子b側に切り換えられ、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。これによりスーパーローアイドル回転数NSの下で走行ペダル31を操作しても走行モータ33は回転しないので、油圧ポンプ2に負荷はかからず、エンストを防止することができる。
【0033】
この状態から車両走行を開始するときは、前後進切換スイッチ19を前進または後進位置に切り換える。これにより切換回路16が端子a側に切り換えられ、エンジン回転数が燃料レバー8の操作量に応じた回転数に制御される。その結果、エンジン回転数は少なくともローアイドル回転数NL以上となり、走行時のエンストを防止することができる。なお、走行ペダル31の操作量の増加に伴い目標回転数が増加するような関係を予め設定し、前後進切換スイッチ19が前進または後進位置に切り換えられたときはこの関係にしたがってエンジン回転数を制御するようにしてもよい。
【0034】
図7に示すようにアンド回路15に前後進切換スイッチ19とブレーキスイッチ18をそれぞれ接続し、信号発生回路13からハイ信号が入力され、かつ、リミットスイッチ14のオン信号が入力され、かつ、ブレーキスイッチ18のP端子またはW端子から信号が入力され、かつ、前後進切換スイッチ19のN端子から信号が入力されると、切換回路16を端子b側に切り換えるようにしてもよい。これによりブレーキが作動しても前後進切換バルブ34が中立位置に切り換えられない限りはスーパーローアイドル回転数NSとはならず、エンストを確実に防止することができる。
【0035】
−第4の参考例−
図8を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第4の参考例について説明する。
第4の参考例では、エンジン冷却水温と作動油温に応じてスーパーローアイドル回転数NSを補正する。すなわちエンジン冷却水温が低いとエンジン1が暖まっていないためエンジン出力が十分とはいえず、また、作動油温が低いと油の粘性が高いためポンプ負荷が大きくなる。そこで、このような場合にはエンストが発生しやすくなるので、スーパーローアイドル回転数NSを高めの値に補正する。
【0036】
図8は、第4の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図1と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の参考例との相違点を主に説明する。
【0037】
図8に示すように、第4の参考例に係る原動機制御装置にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ41と作動油温を検出する作動油温センサ42が設けられ、これらセンサ41,42からの信号はそれぞれ関数発生回路43,44に入力される。関数発生回路43には予め図示のようにエンジン冷却水温に対するエンジン1の目標回転数の関係(特性L2)が記憶され、関数発生回路44には予め図示のように作動油温に対するエンジンの目標回転数の関係(特性L3)が記憶されている。特性L2によれば、エンジン冷却水温の増加に伴い目標回転数がローアイドル回転数NLから最小回転数Nminまで減少し、特性L3によれば、作動油温の増加に伴い目標回転数がローアイドル回転数NLから最小回転数Nminまで減少する。なお、最小回転数Nminは、第1の参考例におけるスーパーローアイドル回転数NS、すなわちエンジン冷却水温や作動油温を考慮しない場合のスーパーローアイドル回転数に相当する。
【0038】
最大値選択回路46は、設定回路45に設定された最小回転数Nminと関数発生器43,44からそれぞれ出力された目標回転数の最大値を、スーパーローアイドル回転数NSの補正値として選択する。アンド回路15はゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ、燃料レバー8がアイドルに操作されると切換回路16を端子b側に切り換える。これにより最大値選択回路46で選択された回転数にエンジン回転数が制御される。一方、ゲートロックレバー6が解除位置に操作され、あるいは、燃料レバー8がアイドル以外に操作されると切換回路16を端子a側に切り換える。これにより燃料レバー8の操作量に応じた回転数にエンジン回転数が制御される。
【0039】
第4の参考例では、気候や作業場所等の条件が異なることによりエンジン冷却水温または作動油温が通常よりも低い場合に、関数発生回路43,44はそれぞれ作動油温および冷却水温に応じた目標回転数を出力し、最大値選択回路46はその大きい方の値を選択する。これにより冷却水温または作動油温が低くエンジンにかかる負荷が大きい場合に、スーパーローアイドル回転数NSがその温度に応じた高めの値に補正されるので、エンストを確実に防止することができる。
【0040】
このように第4の参考例では、エンジン冷却水温と作動油温が低いほど、つまりエンジン1に負荷がかかりやすい条件のときほど、スーパーローアイドル回転数NSを高くした。これによりエンストを防止しつつ、燃費および騒音を効果的に低減することができる。
【0041】
なお、図8ではゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作に応じて切換回路16を切り換えるようにしたが、ゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作だけでなく、上述した図4,6,7と同様、ブレーキスイッチ18や前後進切換スイッチ19の操作に応じて切換回路16を切り換えるようにしてもよい。
【0042】
−第5の参考例−
図9を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第5の参考例について説明する。
第5の参考例では、エンジン始動時にエンジン冷却水温が低いとエンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSとなることを禁止する。すなわちエンジン冷却水温が低い状態でエンジンキースイッチをオンしてエンジン1を始動した際、エンジン回転数が安定していないにも拘わらずアイドル回転数を低くするとエンストするおそれがあるため、このような場合にはエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSとはしない。
【0043】
図9は、第5の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図1と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の参考例との相違点を主に説明する。
【0044】
アンド回路51にはエンジンキースイッチ52からの信号、すなわちエンジンキースイッチのオフ信号(0)またはオン信号(1)が入力されるとともに、フラグセット回路53でセットされたフラグ0またはフラグセット回路54でセットされたフラグ1が入力される。アンド回路51にエンジンキースイッチ52のオン信号(1)とフラグ0が入力されるとタイマ55がカウントを開始する。判定回路56はエンジンキースイッチ52のオン→オフ、すなわちフラグ1→フラグ0を判定し、これが判定されるとフラグセット回路53はフラグ0をセットし、リセット回路57はタイマ55をリセットする。
【0045】
切換回路58は、タイマ55が所定時間を計時するまでは信号発生回路59側に切り換えられ、所定時間を計時すると信号発生回路60側に切り換えられる。なお、所定時間は、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに下げてもエンストしない程度のエンジン回転数となるのに要する時間であり、例えば15分程度に設定される。信号発生回路59はロー信号(0)を出力し、信号発生回路60はハイ信号(1)を出力する。
【0046】
信号発生回路61は水温センサ41の温度が所定値以上のときにハイ信号(1)を出力し、所定値未満のときにロー信号(0)を出力する。なお、所定値は、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに下げてもエンストしない程度のエンジン冷却水温、換言すれば暖機運転がほぼ終了した時点のエンジン冷却水温である。オア回路62には信号発生回路61からの信号と切換回路58からの信号が入力される。オア回路62に信号発生回路61および切換回路58の少なくともいずれかのハイ信号が入力されると、切換スイッチ63がオンされるとともに、フラグセット回路54がフラグ1をセットする。これにより切換回路16が端子a側に切り換えられる。一方、オア回路62に信号発生回路61からのロー信号および切換回路58からのロー信号が入力されると切換スイッチ63がオフされる。これにより切換回路16が端子b側に切り換えられる。
【0047】
第5の参考例では、エンジン冷却水温が所定値より低い状態でエンジンを始動すると、オア回路62にロー信号のみが入力されて切換スイッチ63がオフされる。これによりゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ燃料レバー8がアイドルに操作された場合でも切換回路16は端子a側を維持するため、エンジン回転数はスーパーローアイドル回転数NSとはならず、ローアイドル回転数NLに制御される。その結果、エンジン始動時のエンストを防止することができる。
【0048】
エンジン1を始動してから所定時間が経過すると暖機運転が終了し、エンジン回転数が安定する。この状態ではオア回路62には切換回路58からハイ信号が入力され、切換スイッチ63がオンされる。このときゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ燃料レバー8がアイドルに操作されていれば、切換回路16は端子b側に切り換えられ、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。これにより始動時のエンストを防止しつつ燃費を低減することができる。この場合、所定時間を計時する前であってもエンジン冷却水温が所定値を越えると信号発生回路61からオア回路62にハイ信号が入力され、切換スイッチ63がオンされる。これにより所定時間を経過する前にスーパーローアイドル回転数NSに制御され、燃費を一段と向上することができる。
【0049】
なお、エンジンキースイッチ52をオフした後、それほど時間をおかずにエンジンキースイッチ52をオンする場合、エンジン1は完全に冷えておらず、エンジン冷却水温が所定値より高いことがある。この場合、エンジンキースイッチ52のオン時にエンジン回転数は即座にスーパーローアイドル回転数NSに制御される。
【0050】
このように第5の参考例では、エンジン1を始動してから所定時間が経過するまで、あるいは暖機運転が完了するまでエンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSとなることを禁止し、エンジン回転数を少なくともローアイドル回転数NL以上に制御するようにした。これによりエンジン始動時のエンストを防止することができる。また、所定時間が経過した後、あるいは所定時間が経過する前であってもエンジン冷却水温が所定値以上になるとスーパーローアイドル回転数NSとなることを許容するので、燃費を効果的に向上することができる。
【0051】
なお、図9ではゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作に応じて切換回路16を切り換えるようにしたが、ゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作だけでなく、上述した図4,6,7と同様、ブレーキスイッチ18や前後進切換スイッチ19の操作に応じて切換回路16を切り換えるようにしてもよい。
【0052】
上記参考例(図1,2)では、ロックバルブ3の作動により油圧ポンプ2からの圧油による油圧アクチュエータ5の駆動を禁止するようにしたが、他の駆動禁止手段を用いてもよい。また、リミットスイッチ14によりロックバルブ3の作動/非作動を検出したが、駆動禁止検出手段はこれに限らない。ゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ、燃料レバー8がアイドルに操作されたときにエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしたが、図10に示すようにゲートロックレバー6がロック位置に操作されたことのみを条件としてエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしてもよい。すなわち、少なくとも駆動禁止手段の作動が検出されるとエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NS(低速回転数)に制御するのであれば、回転数制御手段の構成は上述したものに限らない。
【0053】
上記参考例(図2)では、ゲートロックレバー6の操作に連動してロックバルブ3を作動/非作動するようにしたが、例えば、図11に示すようにスーパーロースイッチ9を設け、スーパーロースイッチ9の操作によりロックバルブ3を作動/非作動するようにしてもよい。この場合、スーパーロースイッチ9によりロックバルブ3の作動/非作動が検出される。
【0054】
−第1の実施の形態−
図12,13を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第1の実施の形態について説明する。
上述したようにゲートロックレバー6がロック位置に操作されたことのみを条件としてエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御する場合(図10)、燃料レバー8がアイドル以外に操作(例えばフル操作)されてもエンジン回転数はスーパーローアイドル回転数NSに制御される。この状態でゲートロックレバー6が解除位置に操作され、燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nを即座にエンジン回転数の指令値として出力すると、燃料供給量が一気に増加してエンジンに過大な負荷(ストレス)がかかり、エンジン強度上およびエンジン性能上、好ましくない。この点を考慮して第1の実施の形態では以下のようにエンジン回転数の復帰動作を制御する。
【0055】
図12は、第1の実施の形態に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図10と同一の箇所には同一の符号を付し、以下ではその特徴的な構成を主に説明する。
【0056】
図12に示すようにリミットスイッチ14からの信号は判定回路71に入力され、判定回路71はリミットスイッチ14のオン(ゲートロックレバーロック)→オフ(ゲートロックレバー解除)、すなわちフラグ1→フラグ0を判定する。関数発生回路12からの信号である操作量Sに応じた目標回転数Nは、信号発生回路72に入力されるとともにスローアップ処理回路73に入力される。信号発生回路72は目標回転数Nが予め設定された回転数N2以上のときにハイ信号(1)を出力し、設定回転数N2未満のときにロー信号(0)を出力する。ここで、設定回転数N2は、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSから一気に上昇させてもエンジンにとって問題とならない目標回転数Nの上限値であり、例えば1400回転に設定される。
【0057】
スローアップ処理回路73は後述する処理により切換回路75に目標回転数を出力するとともに、アンド回路74に処理の終了/非終了を示す終了フラグ(1)または非終了フラグ(0)を反転して出力する。アンド回路74は判定回路71,関数発生回路72,およびスローアップ処理回路73からの信号に応じて切換回路75を切り換える。すなわち判定回路71および関数発生回路72からフラグ1が入力され、スローアップ処理回路73からフラグ0(反転後のフラグ1)が入力されると、アンド回路74は切換回路75を端子b側に切り換える。これにより切換回路75はスローアップ処理回路73からの目標回転数をサーボ制御回路25に出力する。一方、これ以外の条件では、アンド回路74は切換回路75を端子a側に切り換える。これにより切換回路75は切換回路16からの目標回転数をサーボ制御回路25に出力する。なお、切換回路75はスローアップ処理回路73にも目標回転数を前回値として出力する。サーボ制御回路25は上述したのと同様、目標回転数に応じてパルスモータ23の回転を制御する。
【0058】
図13のフローチャートによりスローアップ処理回路73における処理を説明する。まず、ステップS1で燃料レバー8の操作量Sに応じた目標回転数Nを読み込み、ステップS2で切換回路75が出力した前回値を読み込む。次いで、ステップS3で目標回転数Nが前回値より大きいか否かを判定する。ステップS3が肯定されるとステップS4に進み、予め定めた所定値ΔNを前回値に加算し、これを目標回転数として出力する。なお、所定値ΔNは、燃料レバー8の手動操作による目標回転数Nの増加の割合(例えば100rpm/sec)に設定され、ΔNの割合で目標回転数は比例的に増加する。ステップS5では非終了フラグを出力する。一方、ステップS3が否定されるとステップS6に進み、目標回転数として操作量Sに応じた目標回転数Nを出力する。次いで、ステップS7で終了フラグを出力する。
【0059】
第1の実施の形態では、ゲートロックレバー6をロック位置に操作すると、燃料レバー8の操作位置に拘わらず切換回路16が端子b側に切り換えられ、かつ、切換回路75が端子a側に切り換えられて、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。ゲートロックレバー6を解除位置に操作すると切換回路16が端子a側に切り換えられ、切換回路75に燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nが入力される。
【0060】
このとき、目標回転数Nが設定回転数N2以上であれば、切換回路75が端子b側に切り換えられ、エンジン回転数のスローアップ処理が開始される。すなわち、スローアップ処理回路73から出力される目標回転数が徐々に大きくなり(ステップS4)、エンジン回転数が徐々に増加する。これによりエンジンに過大な負荷がかかることを防ぐことができる。スローアップ処理回路73からの目標回転数が燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nに達すると、終了フラグが出力され(ステップS7)、切換回路75が端子a側に切り換えられる。これによりエンジン回転数が目標回転数Nに制御される。
【0061】
一方、ゲートロックレバー6を解除操作した際に、燃料レバー8の操作による目標回転数Nが設定回転数N2より小さければ、切換回路75は端子a側に切り換えられ、切換回路75から目標回転数Nがそのまま出力される。これによりエンジン回転数が直ちに燃料レバー8の操作量に応じた回転数に制御され、迅速に作業を行うことができる。この場合、スーパーローアイドル回転数NSと目標回転数Nの差は小さいため、エンジン回転数を目標回転数Nまで一気に増加させても問題ない。
【0062】
このように第1の実施の形態によれば、ゲートロックレバー6の解除操作によりエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSから目標回転数Nまで徐々に増加させるようにしたので、エンジンに過大な負荷がかかることを防止できる。また、目標回転数Nが設定回転数N2より小さければ、スーパーローアイドル回転数NSから目標回転数Nまで一気に増加させるようにしたので、エンジンに対する負荷がそれほど大きくならない場合には、エンジン回転数を即座に目標回転数Nに制御することができ、迅速な作業が可能である。
【0063】
−第2の実施の形態−
図14を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、エンジン回転数の復帰動作の際に、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSから目標回転数Nまで徐々に増加させるようにしたが、第2の実施の形態では、エンジン回転数を目標回転数Nよりも低い設定回転数(オートアイドル回転数)まで増加させる。
【0064】
図14は、第2の実施の形態に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図10と同一の箇所には同一の符号を付し、以下ではその特徴的な構成を主に説明する。
【0065】
オア回路82には、オートアイドル制御を指令するオートアイドルスイッチ81からの信号とオア回路91からの信号が入力される。オートアイドル制御とは、エンジン回転数が高速回転しかつ操作レバー7が中立の状態が所定時間t継続したときに、エンジン回転数を予め定めた設定回転数(オートアイドル回転数N3)に制御し、その状態から操作レバー7が操作されるとエンジン回転数を高速回転数に復帰させる制御であり、以下のように構成される。
【0066】
操作量検出器83は操作レバー7の操作量を検出する。信号発生回路84は操作レバー7が非操作(中立)のときに切換回路86にハイ信号(1)を出力し、操作レバー7が操作されるとロー信号(0)を出力する。オア回路82は、オートアイドルスイッチ81がオンまたはオア回路91からハイ信号が出力されると切換回路86を端子b側に切り換え、他の条件では切換回路86を端子a側に切り換える。切換回路86が端子b側に切り換えられた状態で、信号発生回路84からハイ信号が出力されるとタイマ87がカウントを開始し、ロー信号が出力されるとタイマをリセットする。切換回路86が端子a側に切り換えられたときもタイマをリセットする。
【0067】
タイマ87は所定時間t(例えば3秒間)をカウントすると切換回路88にハイ信号(1)を出力し、切換回路88を端子b側に切り換える。所定時間tの経過前はロー信号(0)を出力し、切換回路88を端子a側に切り換える。切換回路88は端子b側に切り換わると信号発生回路90に設定されたオートアイドル回転数N3を出力し、端子a側に切り換わると信号発生回路89に設定された定格回転数N1を出力する。オートアイドル回転数N3は、例えば第1の実施の形態の設定回転数N2と同様、1400rpmに設定される。
【0068】
オア回路91にはタイマ87からの信号とリミットスイッチ14からの信号が入力され、タイマ87が所定時間tをカウントした後、あるいはリミットスイッチ14がオンされるとオア回路82にハイ信号を出力する。切換回路16はゲートロックレバー6の解除操作により端子a側に切り換えられ、予め信号発生回路92に設定された定格回転数N1を出力する。また、ゲートロックレバー6のロック操作により端子b側に切り換えられ、スーパーローアイドル回転数NSを出力する。最小値選択回路95は、切換回路88から出力された回転数と関数発生回路12から出力された回転数と切換回路16から出力された回転数の中から最小値を選択し、目標回転数としてサーボ制御回路25に出力する。
【0069】
第2の実施の形態では、ゲートロックレバー6をロック操作すると切換回路16が端子b側に切り換えられ、切換回路16からスーパーローアイドル回転数NSが出力される。また、ゲートロックレバー6をロック操作すると切換回路86が端子b側に切り換えられ、操作レバー7を中立位置に操作した状態が所定時間t継続すると、切換回路88からオートアイドル回転数N3が出力される。このとき、最小値選択回路95はスーパーローアイドル回転数NSを選択し、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。
【0070】
この状態でゲートロックレバー6を解除操作すると、燃料レバー8の操作による目標回転数Nが設定回転数N3より大きければ、最小値選択回路95はオートアイドル回転数N3を選択し、エンジン回転数がオートアイドル回転数N3に制御される。これによりエンジン回転数の増加量が制限され、エンジンにかかる負荷を低減することができる。この状態で操作レバー7を操作すると、切換回路88が端子a側に切り換えられ、エンジン回転数が燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nに制御される。
【0071】
一方、ゲートロックレバー6を解除操作した際に、燃料レバー8の操作による目標回転数Nが設定回転数N3より小さければ、最小値選択回路95は関数発生回路12から出力された目標回転数Nを選択し、エンジン回転数が燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nに制御される。この場合は操作レバー7を操作してもエンジン回転数は変化しない。なお、以上の動作はオートアイドルスイッチ81の操作とは無関係である。
【0072】
このように第2の実施の形態によれば、ゲートロックレバー6の解除操作によりエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSからオートアイドル回転数N3に制御するようにしたので、エンジンに過大な負荷がかかることを防止できる。また、操作レバー7が操作されるまでオートアイドル回転数N3に制御するので(オートアイドル制御)、燃費および騒音を低減することができる。目標回転数Nが設定回転数N3より小さければ、操作レバー7の操作に拘わらずエンジン回転数を目標回転数Nに制御するので、エンジンに対する負荷がそれほど大きくない場合には、エンジン回転数を即座に目標回転数Nに制御することができる。
【0073】
なお、上記参考例(図1)では、燃料レバー8の操作によりローアイドル回転数NLを下限とした範囲内で目標回転数を指令するようにしたが、回転数指令手段の構成はこれに限らない。目標回転数を設定する特性L1は一例であって、他の特性により燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数を設定してもよい。また、ロックバルブ3の非作動が検出されると少なくともローアイドル回転数NL以上の設定回転数にエンジン回転数を制御するのであれば、オペレータが指令した指令値以外の値にエンジン回転数を制御してもよい。
【0074】
上記参考例(図4)では、ブレーキスイッチ18の操作により駐車ブレーキと作業ブレーキの作動/非作動を検出したが、制動検出手段の構成はこれに限らない。走行モータ33以外の油圧アクチュエータ5にも制動装置を設け、この制動装置の作動が検出されるとエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしてもよい。
【0075】
上記参考例(図5,6)では、前後進切換スイッチ19により走行モータ33の回転が可能な走行可能状態と回転が不可能な中立状態とを選択し、この選択により前後進切換バルブ34および切換弁32を切り換え、油圧ポンプ2から走行モータ33への圧油の流れを許容または禁止するようにしたが、走行選択手段および走行制御手段の構成はこれに限らない。
【0076】
上記参考例(図8)では、エンジン冷却水温に応じて設定された目標回転数と作動油温に応じて設定された目標回転数の高い方の値をスーパーローアイドル回転数NSの補正値として設定したが、エンジン冷却水温に応じて設定された目標回転数、または作動油温に応じて設定された目標回転数をスーパーローアイドル回転数の補正値として設定してもよい。水温センサ41によりエンジン冷却水温を検出するようにしたが、水温検出手段の構成はこれに限らない。作動油温センサ42により作動油温を検出したが、油温検出手段の構成はこれに限らない。目標回転数を設定する特性L2,L3は一例であって、他の特性によりエンジン冷却水温および作動油温に応じた目標回転数を設定してもよい。
【0077】
上記参考例(図9)では、エンジン1の始動が検出されてから所定時間経過後または水温センサ41の検出値が所定値以上になるとスーパーローアイドル回転数NSへの切換を許容したが、エンジン1の始動が検出されてから所定時間を経過したときのみ、あるいは水温センサ41の検出値が所定値以上になったときのみスーパーローアイドル回転数NSへの切換を許容するようにしてもよい。エンジンキースイッチ52によりエンジン1の始動を検出したが、他の始動検出手段を用いてもよい。水温センサ41により暖機運転の完了を検出したが、他の暖機判定手段を用いてもよい。
【0078】
上記実施の形態(図12)では、スーパーローアイドル回転数NSからエンジン回転数を復帰させる際に、燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数N、すなわち指令回転数まで比例的に増加させるようにしたが、エンジン回転数を徐々に増加させるのであれば、回転数の増加パターンは上述したものに限らない。
【0079】
上記実施の形態(図14)では、スーパーローアイドル回転数NSからエンジン回転数を復帰させる際に、燃料レバー8の操作による目標回転数Nがオートアイドル回転数N3より高いときは、エンジン回転数をオートアイドル回転数N3に制御するようにしたが、ローアイドル回転数NLよりも高くかつ燃料レバー8の操作による目標回転数Nより低い回転数に制御するのであれば、オートアイドル回転数以外の回転数に制御してもよい。すなわち上記実施の形態では、オートアイドル制御を行う場合の設定回転数N3を流用したが、オートアイドル制御を行わずに別途設定回転数N3を定めてもよい。操作レバー7により油圧アクチュエータの駆動指令を出力するようにしたが、アクチュエータ駆動指令の構成はこれに限らない。
【0080】
本発明は、エンジン1により駆動される油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2からの圧油により駆動する油圧アクチュエータ5とを有する他の作業車両にも同様に適用可能である。
本出願は日本国特許出願2004−279087号を基礎とし、その内容は引用文としてここに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図2】第1の参考例に係る作業車両に搭載された油圧アクチュエータの駆動用油圧回路図。
【図3】第2の参考例に係る作業車両に搭載された油圧アクチュエータの駆動用油圧回路図。
【図4】本発明の第2の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図5】第3の参考例に係る作業車両に搭載された油圧アクチュエータの駆動用油圧回路図。
【図6】本発明の第3の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図7】図6の変形例を示す図。
【図8】本発明の第4の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第5の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図10】図1の変形例を示す図。
【図11】図1の他の変形例を示す図。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図13】図6のスローアップ処理回路における処理を示すフローチャート。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0082】
1 エンジン
2 油圧ポンプ
3 ロックバルブ
5 油圧アクチュエータ
6 ゲートロックレバー
7 操作レバー
8 燃料レバー
14 リミットスイッチ
81 オートアイドルスイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール式油圧ショベル等の作業車両の原動機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、操作レバーが中立位置に操作されるとエンジン回転数を所定回転数まで低減するようにした装置が知られている(例えば特許文献1参照)。これによれば操作レバーを中立位置に固定するためのロック機構を設け、ロック機構が解除された状態で操作レバーが中立位置に操作されるとエンジン回転数を上記所定回転数に制御する。ロック機構が作動した状態ではエンジン回転数を上記所定回転数よりも低い回転数(以下、ローアイドル回転数と呼ぶ)に制御する。ここで、ローアイドル回転数はエンジンのアクセル位置をアイドリング位置よりも僅かに高速側に設定したときの回転数であり、油圧アクチュエータを駆動してもエンストしない最小の回転数である。
【0003】
【特許文献1】特許第3073896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記公報記載の装置では、ロック機構が作動した状態でエンジン回転数をローアイドル回転数に制御するため、エンジン回転数を十分に低減しているとは言えず、燃費のさらなる改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による作業車両の原動機制御装置は、原動機により駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからの圧油により駆動する油圧アクチュエータと、油圧ポンプからの圧油による油圧アクチュエータの駆動を禁止する駆動禁止手段と、駆動禁止手段の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段と、少なくとも駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の作動が検出されると、原動機の回転数を、油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(以下、これをローアイドル回転数と呼ぶ)よりも低い低速回転数に制御する回転数制御手段と、オペレータの操作によりローアイドル回転数を下限とした範囲内で原動機の回転数を指令する回転数指令手段とを備え、回転数制御手段は、駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の非作動が検出された状態で、アクチュエータ駆動指令手段によってアクチュエータの駆動が所定時間出力されないとき、回転数指令手段による指令回転数がローアイドル回転数よりも高い設定回転数以上であれば、原動機の回転数を前記設定回転数に制御し、原動機の回転数を低速回転数に制御した状態では、駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の非作動が検出されると、原動機の回転数を設定回転数に制御し、原動機の回転数が設定回転数に制御されているとき、アクチュエータ駆動指令手段によってアクチュエータの駆動が出力されると、原動機の回転数を回転数指令手段による指令回転数に制御することを特徴とする。
また、本発明による作業車両の原動機制御装置は、原動機により駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからの圧油により駆動する油圧アクチュエータと、油圧ポンプからの圧油による油圧アクチュエータの駆動を禁止する駆動禁止手段と、駆動禁止手段の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段と、少なくとも駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の作動が検出されると、原動機の回転数を、油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(以下、これをローアイドル回転数と呼ぶ)よりも低い低速回転数に制御する回転数制御手段と、オペレータの操作によりローアイドル回転数を下限とした範囲内で原動機の回転数を指令する回転数指令手段とを備え、回転数制御手段は、原動機の回転数を低速回転数に制御した状態で駆動禁止検出手段により駆動禁止手段の非作動が検出されると、回転数指令手段による指令回転数がローアイドル回転数よりも高い設定回転数以上のときに、原動機の回転数をその指令回転数まで徐々に増加させ、設定回転数未満のときに、原動機の回転数をその指令回転数まで即座に増加させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、少なくとも油圧ポンプからの圧油による油圧アクチュエータの駆動が禁止されると、原動機の回転数を、油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(ローアイドル回転数)よりも低い低速回転数に制御するようにした。これにより油圧ポンプに負荷がかからない状態で原動機回転数をローアイドル回転数よりも低くすることができ、エンストを防止しつつ燃費を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
−第1の参考例−
以下、図1,2を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第1の参考例について説明する。
図1は第1の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。この原動機制御装置は、油圧アクチュエータを有する作業車両(例えば油圧ショベルなど)に搭載される。
【0008】
図2は油圧アクチュエータ5の駆動用油圧回路図である。エンジン1によって駆動される油圧ポンプ2からの圧油はロックバルブ3、制御弁4を介して油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータ5に供給される。この油圧アクチュエータ5は、例えばクローラ式走行装置をもつ油圧ショベルでは、ブーム、アーム等の作業装置を駆動する油圧シリンダおよび旋回体、走行体を駆動する油圧モータである。ロックバルブ3は油圧ポンプ2からの圧油を制御弁4に導く連通位置と制御弁4への圧油の供給を阻止する遮断位置とに切り換え可能な2位置切換弁であり、ゲートロックレバー6の操作によって切り換えられる。ゲートロックレバー6は運転室の入口に設けられ、乗員の乗降を妨げる解除位置と乗員の乗降を許容するロック位置とに操作される。ゲートロックレバー6が解除位置に操作されるとロックバルブ3が連通位置に切り換えられ、ゲートロックレバー6がロック位置に操作されるとロックバルブ3が遮断位置に切り換えられる。
【0009】
制御弁4は操作レバー7の操作によって切り換えられ、ロックバルブ3から油圧アクチュエータ5への圧油の流れを制御する。なお、油圧回路の構成は図2のものに限らない。例えば制御弁4を油圧パイロット式切換弁として構成し、操作レバー7の操作量に応じたパイロット圧を発生するパイロット回路を設け、操作レバー7の操作量に応じたパイロット圧により制御弁4を切り換えるようにしてもよい。この場合、ロックバルブ3をパイロット回路に配置してもよい。
【0010】
図1に示すように運転室にはエンジン回転数を指令するための燃料レバー8が設けられる。燃料レバー8はアイドルとフルの間で操作可能であり、燃料レバー8の操作量(操作ストローク量または操作角度)は操作量検出器11によって検出される。操作量検出器11からの信号Sは関数発生回路12および信号発生回路13にそれぞれ入力される。関数発生回路12には予め図示のように操作量Sに対するエンジン1の目標回転数Nの関係(特性L1)が記憶され、関数発生回路12は操作量Sに応じた目標回転数Nを出力する。特性L1によれば、操作量Sの増加に伴い目標回転数Nがローアイドル回転数NLから定格回転数N1まで比例的に増加している。
【0011】
ローアイドル回転数NLとは、操作レバー7の操作によりいずれかの油圧アクチュエータ5を駆動してもエンストしないエンジン1の最小回転数であり、例えば1000rpmに設定される。なお、定格回転数N1は例えば2000rpmである。信号発生回路13は燃料レバー8によりローアイドル回転数NLが指令されるとハイ信号を出力し、ローアイドル回転数NLより高い回転数が指令されるとロー信号を出力する。
【0012】
ゲートロックレバー6にはリミットスイッチ14が設けられ、ゲートロックレバー6がロック位置に操作されるとリミットスイッチ14がオンし、解除位置に操作されるとリミットスイッチ14がオフする。アンド回路15にはリミットスイッチ14および信号発生回路13からの信号が入力され、これら入力信号に応じてアンド回路15は切換回路16を切り換える。すなわち信号発生回路13からハイ信号が入力され、かつ、リミットスイッチ14のオン信号が入力されるとアンド回路15は切換回路16を端子b側に切り換える。これにより切換回路16は予め設定回路17に設定された回転数NS(スーパーローアイドル回転数と呼ぶ)を目標回転数として出力する。一方、信号発生回路13からロー信号が入力され、あるいはリミットスイッチ14のオフ信号が入力されるとアンド回路15は切換回路16を端子a側に切り換える。これにより切換回路16は関数発生回路12からの目標回転数を出力する。
【0013】
スーパーローアイドル回転数NSとは、油圧アクチュエータ5を駆動しない油圧ポンプ2の無負荷状態のときに、エアコンや補機類を動作させてもエンストしないエンジン1の低速回転数である。この状態では油圧アクチュエータ5の駆動を考慮する必要がないので、スーパーローアイドル回転数NSは上述したローアイドル回転数NLよりも低く、例えば600rpmに設定される。この回転数は油圧アクチュエータ5の駆動による負荷がエンジン1に作用すればエンストを起こす回転数であり、油圧アクチュエータ5の駆動に要する出力分だけアイドル回転数をローアイドル回転数NLよりも低減することができる。
【0014】
エンジン1のガバナ21はリンク機構22を介してパルスモータ23に接続され、パルスモータ23の回転によりエンジン回転数が制御される。また、ガバナ21にはリンク機構22を介してポテンショメータ24が接続され、ポテンショメータ24によりエンジン回転数に応じたガバナレバー角度が検出され、サーボ制御回路25に出力される。サーボ制御回路25はポテンショメータ24で検出した回転数が切換回路16から出力された目標回転数となるようにパルスモータ23に制御信号を出力し、パルスモータ23の回転を制御する。
【0015】
次に、第1の参考例に係る原動機制御装置の主要な動作を説明する。
作業時にはオペレータはゲートロックレバー6を解除位置に操作する。これによりロックバルブ3が連通位置に切り換えられ(ロックバルブ非作動)、操作レバー7の操作による油圧アクチュエータ5の駆動が許容されるとともに、リミットスイッチ14がオフされ、切換回路16が端子a側に切り換えられる。その結果、切換回路16からは燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nが出力され、サーボ制御回路25でエンジン回転数が目標回転数Nに制御される。例えば燃料レバー8をアイドルに操作するとエンジン回転数はローアイドル回転数NLに制御され、フルに操作すると定格回転数N1に制御される。
【0016】
作業を中断する場合等、非作業時にはオペレータはゲートロックレバー6をロック位置に操作する。これによりロックバルブ3が遮断位置に切り換えられ(ロックバルブ作動)、操作レバー7の操作による油圧アクチュエータ5の駆動が禁止され、リミットスイッチ14がオンされる。このとき燃料レバー8がアイドルに操作されると、切換回路16が端子b側に切り換えられる。このため切換回路16からはスーパーローアイドル回転数NSが目標回転数として出力され、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。その結果、燃費およびエンジン騒音を低減することができる。この場合、誤って操作レバー7を操作しても油圧アクチュエータ5には油圧ポンプ2からの圧油が供給されず、エンジン出力が不足することによるエンストを防止することができる。
【0017】
作業の中断後、作業を再開する場合、オペレータは燃料レバー8をアイドルに操作したままゲートロックレバー6を解除位置に操作する。これによりリミットスイッチ14がオフされて、切換回路16が端子a側に切り換えられ、エンジン回転数はローアイドル回転数NLに制御される。次いで、オペレータは燃料レバー8をフル側に操作し、エンジン回転数をその操作量に応じた回転数まで上昇させた後、操作レバー7を操作して油圧アクチュエータ5を駆動する。これによりエンジン出力が不足することなく作業を行うことができ、エンストを防止できる。なお、ゲートロックレバー6を解除位置に操作した後、燃料レバー8をアイドルに操作した状態で操作レバー7を操作しても、エンストすることなく油圧アクチュエータ5を駆動することができる。
【0018】
一方、ゲートロックレバー6を解除位置に操作する前に燃料レバー8をフル側に操作すると切換回路16が端子a側に切り換わり、エンジン回転数はその燃料レバー8の操作量に応じた回転数に制御される。この状態でゲートロックレバー6を解除位置に操作して操作レバー7を操作すると、油圧アクチュエータ5に圧油が供給され、エンストすることなく油圧アクチュエータ5を駆動することができる。すなわちゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作順序に拘わらず、操作レバー7を操作する際はエンジン回転数は少なくともローアイドル回転数NL以上であり、スーパーローアイドル回転数NSの下で油圧アクチュエータ5に圧油が供給されることがないので、エンストすることなく作業を行うことができる。
【0019】
以上の第1の参考例によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)油圧アクチュエータ5への圧油の供給が不可能な非作業状態が検出されると、エアコン,補機類,無負荷状態のポンプ等を駆動する必要最低限の回転数(スーパーローアイドル回転数NS)にエンジン回転数を制御するようにした。これにより燃費が向上するとともに騒音を抑えることができる。
(2)ゲートロックレバー6の操作によりロックバルブ3が遮断位置に切り換えられると(ロックバルブ作動)、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしたので、スーパーローアイドル回転数NSの下で油圧アクチュエータ5に圧油が供給されることはなく、エンストを防止することができる。
(3)ゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ燃料レバー8がアイドルに操作されるとスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしたので、燃料レバー8の操作により最小回転数が要求された場合にのみスーパーローアイドル回転数NSに制御され、不所望なエンジン回転数の低下を防止することができる。
【0020】
−第2の参考例−
図3,4を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第2の参考例について説明する。
第2の参考例では油圧アクチュエータ5が作業用の油圧シリンダ、油圧モータと、走行用の油圧モータ(以下走行モータという)である。作業用の油圧シリンダ、油圧モータは上述したようにロックバルブ3,ゲートロックレバー6によって動作/非動作が切り換えられ、走行モータは後述するブレーキスイッチ18などによって走行/非走行が切り換えられるものであり、例えばホイール式の油圧ショベルなどに適用される。
【0021】
図3は、第2の参考例に係る原動機制御装置が適用される作業車両(例えばホイール式油圧ショベル)の走行用油圧回路図である。図3において、走行ペダル31は前踏み操作および後踏み操作が可能であり、走行ペダル31を前踏み操作すると切換弁32が前進側に切り換えられて油圧ポンプ2からの圧油が走行モータ33に供給され、車両が前進走行する。反対に走行ペダル31を後踏み操作すると切換弁32が後進側に切り換えられ、車両が後進走行する。このような車両にあっては、エンジン回転数を上述したスーパーローアイドル回転数NSに制御した状態で走行ペダル31を踏み込み操作すると、油圧ポンプ2に負荷が作用してエンストするおそれがある。そこで、第2の参考例では以下のようにエンストを防止する。
【0022】
図4は、第2の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図1と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の参考例との相違点を主に説明する。
【0023】
図4に示すように、アンド回路15にはリミットスイッチ14と信号発生回路13とブレーキスイッチ18が接続されている。ブレーキスイッチ18は走行,作業,および駐車位置に切換可能なスイッチであり、走行位置(T端子)に切り換えられると図示しない作業ブレーキおよび駐車ブレーキがともに解除する。駐車位置(P端子)に切り換えられると駐車ブレーキが作動し、作業位置(W端子)に切り換えられると作業ブレーキが作動する。アンド回路15にはブレーキスイッチ18のP端子とW端子からの信号、すなわちブレーキの作動状態に対応した信号が入力される。このブレーキスイッチ18は、走行モータ23の動作/非動作を制御するものである。
【0024】
信号発生回路13からハイ信号が入力され、かつ、リミットスイッチ14のオン信号が入力され、かつ、ブレーキスイッチ18のP端子またはW端子から信号が入力されると、アンド回路15は切換回路16を端子b側に切り換える。これにより切換回路16はスーパーローアイドル回転数NSを目標回転数として出力する。一方、信号発生回路13からロー信号が入力され、あるいはリミットスイッチ14のオフ信号が入力され、あるいはブレーキスイッチ18のP端子またはW端子からの信号が入力されない(T端子に切り換えられた状態)と、アンド回路15は切換回路16を端子a側に切り換える。これにより切換回路16は関数発生回路12からの目標回転数を出力する。
【0025】
第2の参考例では、作業および走行がともに禁止された状態、すなわちゲートロックレバー6がロック位置に操作され(ロックバルブ作動)、かつ、燃料レバー8がアイドルに操作され、かつ、ブレーキスイッチ18が駐車または作業位置に切り換えられると(ブレーキ作動)、切換回路16が端子b側に切り換えられ、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。これによりスーパーローアイドル回転数NSの下で走行ペダル31を操作しても走行モータ33は回転しないので、油圧ポンプ2に負荷はかからず、エンストを防止することができる。
【0026】
この状態から車両走行を開始するときは、ブレーキスイッチ18を走行位置に切り換える。これにより切換回路16は端子a側に切り換えられ、エンジン回転数は燃料レバー8の操作量に応じた回転数に制御される。その結果、エンジン回転数は少なくともローアイドル回転数NL以上となり、走行時のエンストを防止することができる。なお、走行ペダル31の操作量の増加に伴い目標回転数が増加するような関係を予め設定し、ブレーキスイッチ18が走行位置に切り換えられたときはこの関係にしたがってエンジン回転数を制御するようにしてもよい。
【0027】
−第3の参考例−
図5〜7を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第3の参考例について説明する。
図5は、第3の参考例に係る原動機制御装置が適用される作業車両の走行用油圧回路図である。第2の参考例は、走行ペダル31の前踏み操作および後踏み操作により走行モータ33に圧油を供給するような作業車両に適用したが、第3の参考例は、走行ペダル31の踏み込み操作と前後進切換バルブ34の切換操作により走行モータ33に圧油を供給するような作業車両に適用する。
【0028】
前後進切換バルブ34(電磁切換弁)は前後進切換スイッチ19(図6)の操作により前進,後進,および中立位置に切り換えられる。切換弁32は油圧パイロット式切換弁であり、前後進切換バルブ34が前進または後進位置に切り換えられた状態で走行ペダル31を操作するとその操作量に応じてパイロット弁35が駆動され、油圧源36からの圧油(パイロット圧)が切換弁32のパイロットポートに作用する。これにより切換弁32が前進側または後進側に切り換えられ、油圧ポンプ2からの圧油が走行モータ33に供給され、車両が前進または後進走行する。前後進切換バルブ34が中立位置に切り換えられた状態では走行ペダル31を操作しても切換弁32にパイロット圧は作用せず、走行モータ33は駆動されない。
【0029】
図6は、第3の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図3と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第2の参考例との相違点を主に説明する。
【0030】
図6に示すように、第3の参考例では、アンド回路15にブレーキスイッチ18の代わりに前後進切換スイッチ19が接続されている。前後進切換スイッチ19は前進,後進,および中立位置に切換可能なスイッチであり、前進位置(F端子)または後進位置(R端子)に切り換えられると前後進切換バルブ34は前進位置または後進位置に切り換えられ、走行ペダル31の操作による前進走行または後進走行が可能となる。中立位置(N端子)に切り換えられると前後進切換バルブ34は中立位置に切り換えられ、走行ペダル31の操作による走行が不可能となる。アンド回路15には前後進切換スイッチ19のN端子からの信号、すなわち走行不可能状態に対応した信号が入力される。
【0031】
信号発生回路13からハイ信号が入力され、かつ、リミットスイッチ14のオン信号が入力され、かつ、前後進切換スイッチ19のN端子から信号が入力されると、アンド回路15は切換回路16を端子b側に切り換える。これにより切換回路16はスーパーローアイドル回転数NSを目標回転数として出力する。一方、信号発生回路13からロー信号が入力され、あるいはリミットスイッチ14のオフ信号が入力され、あるいは前後進切換スイッチ19のN端子からの信号が入力されない(F端子またはR端子に切り換えた状態)と、アンド回路15は切換回路16を端子a側に切り換える。これにより切換回路16は関数発生回路12からの目標回転数を出力する。
【0032】
第3の参考例では、作業および走行がともに禁止された状態、すなわちゲートロックレバー6がロック位置に操作され(ロックバルブ作動)、かつ、燃料レバー8がアイドルに操作され、かつ、前後進切換スイッチ19が中立位置に操作されると(前後進切換バルブ中立)、切換回路16が端子b側に切り換えられ、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。これによりスーパーローアイドル回転数NSの下で走行ペダル31を操作しても走行モータ33は回転しないので、油圧ポンプ2に負荷はかからず、エンストを防止することができる。
【0033】
この状態から車両走行を開始するときは、前後進切換スイッチ19を前進または後進位置に切り換える。これにより切換回路16が端子a側に切り換えられ、エンジン回転数が燃料レバー8の操作量に応じた回転数に制御される。その結果、エンジン回転数は少なくともローアイドル回転数NL以上となり、走行時のエンストを防止することができる。なお、走行ペダル31の操作量の増加に伴い目標回転数が増加するような関係を予め設定し、前後進切換スイッチ19が前進または後進位置に切り換えられたときはこの関係にしたがってエンジン回転数を制御するようにしてもよい。
【0034】
図7に示すようにアンド回路15に前後進切換スイッチ19とブレーキスイッチ18をそれぞれ接続し、信号発生回路13からハイ信号が入力され、かつ、リミットスイッチ14のオン信号が入力され、かつ、ブレーキスイッチ18のP端子またはW端子から信号が入力され、かつ、前後進切換スイッチ19のN端子から信号が入力されると、切換回路16を端子b側に切り換えるようにしてもよい。これによりブレーキが作動しても前後進切換バルブ34が中立位置に切り換えられない限りはスーパーローアイドル回転数NSとはならず、エンストを確実に防止することができる。
【0035】
−第4の参考例−
図8を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第4の参考例について説明する。
第4の参考例では、エンジン冷却水温と作動油温に応じてスーパーローアイドル回転数NSを補正する。すなわちエンジン冷却水温が低いとエンジン1が暖まっていないためエンジン出力が十分とはいえず、また、作動油温が低いと油の粘性が高いためポンプ負荷が大きくなる。そこで、このような場合にはエンストが発生しやすくなるので、スーパーローアイドル回転数NSを高めの値に補正する。
【0036】
図8は、第4の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図1と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の参考例との相違点を主に説明する。
【0037】
図8に示すように、第4の参考例に係る原動機制御装置にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ41と作動油温を検出する作動油温センサ42が設けられ、これらセンサ41,42からの信号はそれぞれ関数発生回路43,44に入力される。関数発生回路43には予め図示のようにエンジン冷却水温に対するエンジン1の目標回転数の関係(特性L2)が記憶され、関数発生回路44には予め図示のように作動油温に対するエンジンの目標回転数の関係(特性L3)が記憶されている。特性L2によれば、エンジン冷却水温の増加に伴い目標回転数がローアイドル回転数NLから最小回転数Nminまで減少し、特性L3によれば、作動油温の増加に伴い目標回転数がローアイドル回転数NLから最小回転数Nminまで減少する。なお、最小回転数Nminは、第1の参考例におけるスーパーローアイドル回転数NS、すなわちエンジン冷却水温や作動油温を考慮しない場合のスーパーローアイドル回転数に相当する。
【0038】
最大値選択回路46は、設定回路45に設定された最小回転数Nminと関数発生器43,44からそれぞれ出力された目標回転数の最大値を、スーパーローアイドル回転数NSの補正値として選択する。アンド回路15はゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ、燃料レバー8がアイドルに操作されると切換回路16を端子b側に切り換える。これにより最大値選択回路46で選択された回転数にエンジン回転数が制御される。一方、ゲートロックレバー6が解除位置に操作され、あるいは、燃料レバー8がアイドル以外に操作されると切換回路16を端子a側に切り換える。これにより燃料レバー8の操作量に応じた回転数にエンジン回転数が制御される。
【0039】
第4の参考例では、気候や作業場所等の条件が異なることによりエンジン冷却水温または作動油温が通常よりも低い場合に、関数発生回路43,44はそれぞれ作動油温および冷却水温に応じた目標回転数を出力し、最大値選択回路46はその大きい方の値を選択する。これにより冷却水温または作動油温が低くエンジンにかかる負荷が大きい場合に、スーパーローアイドル回転数NSがその温度に応じた高めの値に補正されるので、エンストを確実に防止することができる。
【0040】
このように第4の参考例では、エンジン冷却水温と作動油温が低いほど、つまりエンジン1に負荷がかかりやすい条件のときほど、スーパーローアイドル回転数NSを高くした。これによりエンストを防止しつつ、燃費および騒音を効果的に低減することができる。
【0041】
なお、図8ではゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作に応じて切換回路16を切り換えるようにしたが、ゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作だけでなく、上述した図4,6,7と同様、ブレーキスイッチ18や前後進切換スイッチ19の操作に応じて切換回路16を切り換えるようにしてもよい。
【0042】
−第5の参考例−
図9を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第5の参考例について説明する。
第5の参考例では、エンジン始動時にエンジン冷却水温が低いとエンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSとなることを禁止する。すなわちエンジン冷却水温が低い状態でエンジンキースイッチをオンしてエンジン1を始動した際、エンジン回転数が安定していないにも拘わらずアイドル回転数を低くするとエンストするおそれがあるため、このような場合にはエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSとはしない。
【0043】
図9は、第5の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図1と同一の箇所には同一の符号を付し、以下では第1の参考例との相違点を主に説明する。
【0044】
アンド回路51にはエンジンキースイッチ52からの信号、すなわちエンジンキースイッチのオフ信号(0)またはオン信号(1)が入力されるとともに、フラグセット回路53でセットされたフラグ0またはフラグセット回路54でセットされたフラグ1が入力される。アンド回路51にエンジンキースイッチ52のオン信号(1)とフラグ0が入力されるとタイマ55がカウントを開始する。判定回路56はエンジンキースイッチ52のオン→オフ、すなわちフラグ1→フラグ0を判定し、これが判定されるとフラグセット回路53はフラグ0をセットし、リセット回路57はタイマ55をリセットする。
【0045】
切換回路58は、タイマ55が所定時間を計時するまでは信号発生回路59側に切り換えられ、所定時間を計時すると信号発生回路60側に切り換えられる。なお、所定時間は、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに下げてもエンストしない程度のエンジン回転数となるのに要する時間であり、例えば15分程度に設定される。信号発生回路59はロー信号(0)を出力し、信号発生回路60はハイ信号(1)を出力する。
【0046】
信号発生回路61は水温センサ41の温度が所定値以上のときにハイ信号(1)を出力し、所定値未満のときにロー信号(0)を出力する。なお、所定値は、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに下げてもエンストしない程度のエンジン冷却水温、換言すれば暖機運転がほぼ終了した時点のエンジン冷却水温である。オア回路62には信号発生回路61からの信号と切換回路58からの信号が入力される。オア回路62に信号発生回路61および切換回路58の少なくともいずれかのハイ信号が入力されると、切換スイッチ63がオンされるとともに、フラグセット回路54がフラグ1をセットする。これにより切換回路16が端子a側に切り換えられる。一方、オア回路62に信号発生回路61からのロー信号および切換回路58からのロー信号が入力されると切換スイッチ63がオフされる。これにより切換回路16が端子b側に切り換えられる。
【0047】
第5の参考例では、エンジン冷却水温が所定値より低い状態でエンジンを始動すると、オア回路62にロー信号のみが入力されて切換スイッチ63がオフされる。これによりゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ燃料レバー8がアイドルに操作された場合でも切換回路16は端子a側を維持するため、エンジン回転数はスーパーローアイドル回転数NSとはならず、ローアイドル回転数NLに制御される。その結果、エンジン始動時のエンストを防止することができる。
【0048】
エンジン1を始動してから所定時間が経過すると暖機運転が終了し、エンジン回転数が安定する。この状態ではオア回路62には切換回路58からハイ信号が入力され、切換スイッチ63がオンされる。このときゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ燃料レバー8がアイドルに操作されていれば、切換回路16は端子b側に切り換えられ、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。これにより始動時のエンストを防止しつつ燃費を低減することができる。この場合、所定時間を計時する前であってもエンジン冷却水温が所定値を越えると信号発生回路61からオア回路62にハイ信号が入力され、切換スイッチ63がオンされる。これにより所定時間を経過する前にスーパーローアイドル回転数NSに制御され、燃費を一段と向上することができる。
【0049】
なお、エンジンキースイッチ52をオフした後、それほど時間をおかずにエンジンキースイッチ52をオンする場合、エンジン1は完全に冷えておらず、エンジン冷却水温が所定値より高いことがある。この場合、エンジンキースイッチ52のオン時にエンジン回転数は即座にスーパーローアイドル回転数NSに制御される。
【0050】
このように第5の参考例では、エンジン1を始動してから所定時間が経過するまで、あるいは暖機運転が完了するまでエンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSとなることを禁止し、エンジン回転数を少なくともローアイドル回転数NL以上に制御するようにした。これによりエンジン始動時のエンストを防止することができる。また、所定時間が経過した後、あるいは所定時間が経過する前であってもエンジン冷却水温が所定値以上になるとスーパーローアイドル回転数NSとなることを許容するので、燃費を効果的に向上することができる。
【0051】
なお、図9ではゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作に応じて切換回路16を切り換えるようにしたが、ゲートロックレバー6と燃料レバー8の操作だけでなく、上述した図4,6,7と同様、ブレーキスイッチ18や前後進切換スイッチ19の操作に応じて切換回路16を切り換えるようにしてもよい。
【0052】
上記参考例(図1,2)では、ロックバルブ3の作動により油圧ポンプ2からの圧油による油圧アクチュエータ5の駆動を禁止するようにしたが、他の駆動禁止手段を用いてもよい。また、リミットスイッチ14によりロックバルブ3の作動/非作動を検出したが、駆動禁止検出手段はこれに限らない。ゲートロックレバー6がロック位置に操作され、かつ、燃料レバー8がアイドルに操作されたときにエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしたが、図10に示すようにゲートロックレバー6がロック位置に操作されたことのみを条件としてエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしてもよい。すなわち、少なくとも駆動禁止手段の作動が検出されるとエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NS(低速回転数)に制御するのであれば、回転数制御手段の構成は上述したものに限らない。
【0053】
上記参考例(図2)では、ゲートロックレバー6の操作に連動してロックバルブ3を作動/非作動するようにしたが、例えば、図11に示すようにスーパーロースイッチ9を設け、スーパーロースイッチ9の操作によりロックバルブ3を作動/非作動するようにしてもよい。この場合、スーパーロースイッチ9によりロックバルブ3の作動/非作動が検出される。
【0054】
−第1の実施の形態−
図12,13を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第1の実施の形態について説明する。
上述したようにゲートロックレバー6がロック位置に操作されたことのみを条件としてエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御する場合(図10)、燃料レバー8がアイドル以外に操作(例えばフル操作)されてもエンジン回転数はスーパーローアイドル回転数NSに制御される。この状態でゲートロックレバー6が解除位置に操作され、燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nを即座にエンジン回転数の指令値として出力すると、燃料供給量が一気に増加してエンジンに過大な負荷(ストレス)がかかり、エンジン強度上およびエンジン性能上、好ましくない。この点を考慮して第1の実施の形態では以下のようにエンジン回転数の復帰動作を制御する。
【0055】
図12は、第1の実施の形態に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図10と同一の箇所には同一の符号を付し、以下ではその特徴的な構成を主に説明する。
【0056】
図12に示すようにリミットスイッチ14からの信号は判定回路71に入力され、判定回路71はリミットスイッチ14のオン(ゲートロックレバーロック)→オフ(ゲートロックレバー解除)、すなわちフラグ1→フラグ0を判定する。関数発生回路12からの信号である操作量Sに応じた目標回転数Nは、信号発生回路72に入力されるとともにスローアップ処理回路73に入力される。信号発生回路72は目標回転数Nが予め設定された回転数N2以上のときにハイ信号(1)を出力し、設定回転数N2未満のときにロー信号(0)を出力する。ここで、設定回転数N2は、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSから一気に上昇させてもエンジンにとって問題とならない目標回転数Nの上限値であり、例えば1400回転に設定される。
【0057】
スローアップ処理回路73は後述する処理により切換回路75に目標回転数を出力するとともに、アンド回路74に処理の終了/非終了を示す終了フラグ(1)または非終了フラグ(0)を反転して出力する。アンド回路74は判定回路71,関数発生回路72,およびスローアップ処理回路73からの信号に応じて切換回路75を切り換える。すなわち判定回路71および関数発生回路72からフラグ1が入力され、スローアップ処理回路73からフラグ0(反転後のフラグ1)が入力されると、アンド回路74は切換回路75を端子b側に切り換える。これにより切換回路75はスローアップ処理回路73からの目標回転数をサーボ制御回路25に出力する。一方、これ以外の条件では、アンド回路74は切換回路75を端子a側に切り換える。これにより切換回路75は切換回路16からの目標回転数をサーボ制御回路25に出力する。なお、切換回路75はスローアップ処理回路73にも目標回転数を前回値として出力する。サーボ制御回路25は上述したのと同様、目標回転数に応じてパルスモータ23の回転を制御する。
【0058】
図13のフローチャートによりスローアップ処理回路73における処理を説明する。まず、ステップS1で燃料レバー8の操作量Sに応じた目標回転数Nを読み込み、ステップS2で切換回路75が出力した前回値を読み込む。次いで、ステップS3で目標回転数Nが前回値より大きいか否かを判定する。ステップS3が肯定されるとステップS4に進み、予め定めた所定値ΔNを前回値に加算し、これを目標回転数として出力する。なお、所定値ΔNは、燃料レバー8の手動操作による目標回転数Nの増加の割合(例えば100rpm/sec)に設定され、ΔNの割合で目標回転数は比例的に増加する。ステップS5では非終了フラグを出力する。一方、ステップS3が否定されるとステップS6に進み、目標回転数として操作量Sに応じた目標回転数Nを出力する。次いで、ステップS7で終了フラグを出力する。
【0059】
第1の実施の形態では、ゲートロックレバー6をロック位置に操作すると、燃料レバー8の操作位置に拘わらず切換回路16が端子b側に切り換えられ、かつ、切換回路75が端子a側に切り換えられて、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。ゲートロックレバー6を解除位置に操作すると切換回路16が端子a側に切り換えられ、切換回路75に燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nが入力される。
【0060】
このとき、目標回転数Nが設定回転数N2以上であれば、切換回路75が端子b側に切り換えられ、エンジン回転数のスローアップ処理が開始される。すなわち、スローアップ処理回路73から出力される目標回転数が徐々に大きくなり(ステップS4)、エンジン回転数が徐々に増加する。これによりエンジンに過大な負荷がかかることを防ぐことができる。スローアップ処理回路73からの目標回転数が燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nに達すると、終了フラグが出力され(ステップS7)、切換回路75が端子a側に切り換えられる。これによりエンジン回転数が目標回転数Nに制御される。
【0061】
一方、ゲートロックレバー6を解除操作した際に、燃料レバー8の操作による目標回転数Nが設定回転数N2より小さければ、切換回路75は端子a側に切り換えられ、切換回路75から目標回転数Nがそのまま出力される。これによりエンジン回転数が直ちに燃料レバー8の操作量に応じた回転数に制御され、迅速に作業を行うことができる。この場合、スーパーローアイドル回転数NSと目標回転数Nの差は小さいため、エンジン回転数を目標回転数Nまで一気に増加させても問題ない。
【0062】
このように第1の実施の形態によれば、ゲートロックレバー6の解除操作によりエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSから目標回転数Nまで徐々に増加させるようにしたので、エンジンに過大な負荷がかかることを防止できる。また、目標回転数Nが設定回転数N2より小さければ、スーパーローアイドル回転数NSから目標回転数Nまで一気に増加させるようにしたので、エンジンに対する負荷がそれほど大きくならない場合には、エンジン回転数を即座に目標回転数Nに制御することができ、迅速な作業が可能である。
【0063】
−第2の実施の形態−
図14を参照して本発明による作業車両の原動機制御装置の第2の実施の形態について説明する。
第1の実施の形態では、エンジン回転数の復帰動作の際に、エンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSから目標回転数Nまで徐々に増加させるようにしたが、第2の実施の形態では、エンジン回転数を目標回転数Nよりも低い設定回転数(オートアイドル回転数)まで増加させる。
【0064】
図14は、第2の実施の形態に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図である。なお、図10と同一の箇所には同一の符号を付し、以下ではその特徴的な構成を主に説明する。
【0065】
オア回路82には、オートアイドル制御を指令するオートアイドルスイッチ81からの信号とオア回路91からの信号が入力される。オートアイドル制御とは、エンジン回転数が高速回転しかつ操作レバー7が中立の状態が所定時間t継続したときに、エンジン回転数を予め定めた設定回転数(オートアイドル回転数N3)に制御し、その状態から操作レバー7が操作されるとエンジン回転数を高速回転数に復帰させる制御であり、以下のように構成される。
【0066】
操作量検出器83は操作レバー7の操作量を検出する。信号発生回路84は操作レバー7が非操作(中立)のときに切換回路86にハイ信号(1)を出力し、操作レバー7が操作されるとロー信号(0)を出力する。オア回路82は、オートアイドルスイッチ81がオンまたはオア回路91からハイ信号が出力されると切換回路86を端子b側に切り換え、他の条件では切換回路86を端子a側に切り換える。切換回路86が端子b側に切り換えられた状態で、信号発生回路84からハイ信号が出力されるとタイマ87がカウントを開始し、ロー信号が出力されるとタイマをリセットする。切換回路86が端子a側に切り換えられたときもタイマをリセットする。
【0067】
タイマ87は所定時間t(例えば3秒間)をカウントすると切換回路88にハイ信号(1)を出力し、切換回路88を端子b側に切り換える。所定時間tの経過前はロー信号(0)を出力し、切換回路88を端子a側に切り換える。切換回路88は端子b側に切り換わると信号発生回路90に設定されたオートアイドル回転数N3を出力し、端子a側に切り換わると信号発生回路89に設定された定格回転数N1を出力する。オートアイドル回転数N3は、例えば第1の実施の形態の設定回転数N2と同様、1400rpmに設定される。
【0068】
オア回路91にはタイマ87からの信号とリミットスイッチ14からの信号が入力され、タイマ87が所定時間tをカウントした後、あるいはリミットスイッチ14がオンされるとオア回路82にハイ信号を出力する。切換回路16はゲートロックレバー6の解除操作により端子a側に切り換えられ、予め信号発生回路92に設定された定格回転数N1を出力する。また、ゲートロックレバー6のロック操作により端子b側に切り換えられ、スーパーローアイドル回転数NSを出力する。最小値選択回路95は、切換回路88から出力された回転数と関数発生回路12から出力された回転数と切換回路16から出力された回転数の中から最小値を選択し、目標回転数としてサーボ制御回路25に出力する。
【0069】
第2の実施の形態では、ゲートロックレバー6をロック操作すると切換回路16が端子b側に切り換えられ、切換回路16からスーパーローアイドル回転数NSが出力される。また、ゲートロックレバー6をロック操作すると切換回路86が端子b側に切り換えられ、操作レバー7を中立位置に操作した状態が所定時間t継続すると、切換回路88からオートアイドル回転数N3が出力される。このとき、最小値選択回路95はスーパーローアイドル回転数NSを選択し、エンジン回転数がスーパーローアイドル回転数NSに制御される。
【0070】
この状態でゲートロックレバー6を解除操作すると、燃料レバー8の操作による目標回転数Nが設定回転数N3より大きければ、最小値選択回路95はオートアイドル回転数N3を選択し、エンジン回転数がオートアイドル回転数N3に制御される。これによりエンジン回転数の増加量が制限され、エンジンにかかる負荷を低減することができる。この状態で操作レバー7を操作すると、切換回路88が端子a側に切り換えられ、エンジン回転数が燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nに制御される。
【0071】
一方、ゲートロックレバー6を解除操作した際に、燃料レバー8の操作による目標回転数Nが設定回転数N3より小さければ、最小値選択回路95は関数発生回路12から出力された目標回転数Nを選択し、エンジン回転数が燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数Nに制御される。この場合は操作レバー7を操作してもエンジン回転数は変化しない。なお、以上の動作はオートアイドルスイッチ81の操作とは無関係である。
【0072】
このように第2の実施の形態によれば、ゲートロックレバー6の解除操作によりエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSからオートアイドル回転数N3に制御するようにしたので、エンジンに過大な負荷がかかることを防止できる。また、操作レバー7が操作されるまでオートアイドル回転数N3に制御するので(オートアイドル制御)、燃費および騒音を低減することができる。目標回転数Nが設定回転数N3より小さければ、操作レバー7の操作に拘わらずエンジン回転数を目標回転数Nに制御するので、エンジンに対する負荷がそれほど大きくない場合には、エンジン回転数を即座に目標回転数Nに制御することができる。
【0073】
なお、上記参考例(図1)では、燃料レバー8の操作によりローアイドル回転数NLを下限とした範囲内で目標回転数を指令するようにしたが、回転数指令手段の構成はこれに限らない。目標回転数を設定する特性L1は一例であって、他の特性により燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数を設定してもよい。また、ロックバルブ3の非作動が検出されると少なくともローアイドル回転数NL以上の設定回転数にエンジン回転数を制御するのであれば、オペレータが指令した指令値以外の値にエンジン回転数を制御してもよい。
【0074】
上記参考例(図4)では、ブレーキスイッチ18の操作により駐車ブレーキと作業ブレーキの作動/非作動を検出したが、制動検出手段の構成はこれに限らない。走行モータ33以外の油圧アクチュエータ5にも制動装置を設け、この制動装置の作動が検出されるとエンジン回転数をスーパーローアイドル回転数NSに制御するようにしてもよい。
【0075】
上記参考例(図5,6)では、前後進切換スイッチ19により走行モータ33の回転が可能な走行可能状態と回転が不可能な中立状態とを選択し、この選択により前後進切換バルブ34および切換弁32を切り換え、油圧ポンプ2から走行モータ33への圧油の流れを許容または禁止するようにしたが、走行選択手段および走行制御手段の構成はこれに限らない。
【0076】
上記参考例(図8)では、エンジン冷却水温に応じて設定された目標回転数と作動油温に応じて設定された目標回転数の高い方の値をスーパーローアイドル回転数NSの補正値として設定したが、エンジン冷却水温に応じて設定された目標回転数、または作動油温に応じて設定された目標回転数をスーパーローアイドル回転数の補正値として設定してもよい。水温センサ41によりエンジン冷却水温を検出するようにしたが、水温検出手段の構成はこれに限らない。作動油温センサ42により作動油温を検出したが、油温検出手段の構成はこれに限らない。目標回転数を設定する特性L2,L3は一例であって、他の特性によりエンジン冷却水温および作動油温に応じた目標回転数を設定してもよい。
【0077】
上記参考例(図9)では、エンジン1の始動が検出されてから所定時間経過後または水温センサ41の検出値が所定値以上になるとスーパーローアイドル回転数NSへの切換を許容したが、エンジン1の始動が検出されてから所定時間を経過したときのみ、あるいは水温センサ41の検出値が所定値以上になったときのみスーパーローアイドル回転数NSへの切換を許容するようにしてもよい。エンジンキースイッチ52によりエンジン1の始動を検出したが、他の始動検出手段を用いてもよい。水温センサ41により暖機運転の完了を検出したが、他の暖機判定手段を用いてもよい。
【0078】
上記実施の形態(図12)では、スーパーローアイドル回転数NSからエンジン回転数を復帰させる際に、燃料レバー8の操作量に応じた目標回転数N、すなわち指令回転数まで比例的に増加させるようにしたが、エンジン回転数を徐々に増加させるのであれば、回転数の増加パターンは上述したものに限らない。
【0079】
上記実施の形態(図14)では、スーパーローアイドル回転数NSからエンジン回転数を復帰させる際に、燃料レバー8の操作による目標回転数Nがオートアイドル回転数N3より高いときは、エンジン回転数をオートアイドル回転数N3に制御するようにしたが、ローアイドル回転数NLよりも高くかつ燃料レバー8の操作による目標回転数Nより低い回転数に制御するのであれば、オートアイドル回転数以外の回転数に制御してもよい。すなわち上記実施の形態では、オートアイドル制御を行う場合の設定回転数N3を流用したが、オートアイドル制御を行わずに別途設定回転数N3を定めてもよい。操作レバー7により油圧アクチュエータの駆動指令を出力するようにしたが、アクチュエータ駆動指令の構成はこれに限らない。
【0080】
本発明は、エンジン1により駆動される油圧ポンプ2と、油圧ポンプ2からの圧油により駆動する油圧アクチュエータ5とを有する他の作業車両にも同様に適用可能である。
本出願は日本国特許出願2004−279087号を基礎とし、その内容は引用文としてここに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図2】第1の参考例に係る作業車両に搭載された油圧アクチュエータの駆動用油圧回路図。
【図3】第2の参考例に係る作業車両に搭載された油圧アクチュエータの駆動用油圧回路図。
【図4】本発明の第2の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図5】第3の参考例に係る作業車両に搭載された油圧アクチュエータの駆動用油圧回路図。
【図6】本発明の第3の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図7】図6の変形例を示す図。
【図8】本発明の第4の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第5の参考例に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図10】図1の変形例を示す図。
【図11】図1の他の変形例を示す図。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【図13】図6のスローアップ処理回路における処理を示すフローチャート。
【図14】本発明の第2の実施の形態に係る原動機制御装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0082】
1 エンジン
2 油圧ポンプ
3 ロックバルブ
5 油圧アクチュエータ
6 ゲートロックレバー
7 操作レバー
8 燃料レバー
14 リミットスイッチ
81 オートアイドルスイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機により駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの圧油により駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータの駆動指令を出力するアクチュエータ駆動指令手段と、
前記油圧ポンプからの圧油による前記油圧アクチュエータの駆動を禁止する駆動禁止手段と、
前記駆動禁止手段の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段と、
少なくとも前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の作動が検出されると、前記原動機の回転数を、前記油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(以下、これをローアイドル回転数と呼ぶ)よりも低い低速回転数に制御する回転数制御手段と、
オペレータの操作により前記ローアイドル回転数を下限とした範囲内で前記原動機の回転数を指令する回転数指令手段とを備え、
前記回転数制御手段は、
前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の非作動が検出された状態で、前記アクチュエータ駆動指令手段によって前記アクチュエータの駆動が所定時間出力されないとき、前記回転数指令手段による指令回転数が前記ローアイドル回転数よりも高い設定回転数以上であれば、前記原動機の回転数を前記設定回転数に制御し、
前記原動機の回転数を前記低速回転数に制御した状態では、前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の非作動が検出されると、前記原動機の回転数を前記設定回転数に制御し、
前記原動機の回転数が前記設定回転数に制御されているとき、前記アクチュエータ駆動指令手段によって前記アクチュエータの駆動が出力されると、前記原動機の回転数を前記回転数指令手段による指令回転数に制御することを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記回転数制御手段は、前記原動機の回転数を前記低速回転数に制御した状態で、前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の非作動が検出されると、前記回転数指令手段による指令回転数が前記設定回転数以上であれば、前記原動機の回転数を前記設定回転数に制御し、前記回転数指令手段による指令回転数が前記設定回転数より小さければ、前記原動機の回転数を前記指令回転数に制御することを特徴とする原動機制御装置。
【請求項3】
原動機により駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの圧油により駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプからの圧油による前記油圧アクチュエータの駆動を禁止する駆動禁止手段と、
前記駆動禁止手段の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段と、
少なくとも前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の作動が検出されると、前記原動機の回転数を、前記油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(以下、これをローアイドル回転数と呼ぶ)よりも低い低速回転数に制御する回転数制御手段と、
オペレータの操作により前記ローアイドル回転数を下限とした範囲内で前記原動機の回転数を指令する回転数指令手段とを備え、
前記回転数制御手段は、前記原動機の回転数を前記低速回転数に制御した状態で前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の非作動が検出されると、前記回転数指令手段による指令回転数が前記ローアイドル回転数よりも高い設定回転数以上のときに、前記原動機の回転数をその指令回転数まで徐々に増加させ、前記設定回転数未満のときに、前記原動機の回転数をその指令回転数まで即座に増加させることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項1】
原動機により駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの圧油により駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧アクチュエータの駆動指令を出力するアクチュエータ駆動指令手段と、
前記油圧ポンプからの圧油による前記油圧アクチュエータの駆動を禁止する駆動禁止手段と、
前記駆動禁止手段の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段と、
少なくとも前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の作動が検出されると、前記原動機の回転数を、前記油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(以下、これをローアイドル回転数と呼ぶ)よりも低い低速回転数に制御する回転数制御手段と、
オペレータの操作により前記ローアイドル回転数を下限とした範囲内で前記原動機の回転数を指令する回転数指令手段とを備え、
前記回転数制御手段は、
前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の非作動が検出された状態で、前記アクチュエータ駆動指令手段によって前記アクチュエータの駆動が所定時間出力されないとき、前記回転数指令手段による指令回転数が前記ローアイドル回転数よりも高い設定回転数以上であれば、前記原動機の回転数を前記設定回転数に制御し、
前記原動機の回転数を前記低速回転数に制御した状態では、前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の非作動が検出されると、前記原動機の回転数を前記設定回転数に制御し、
前記原動機の回転数が前記設定回転数に制御されているとき、前記アクチュエータ駆動指令手段によって前記アクチュエータの駆動が出力されると、前記原動機の回転数を前記回転数指令手段による指令回転数に制御することを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両の原動機制御装置において、
前記回転数制御手段は、前記原動機の回転数を前記低速回転数に制御した状態で、前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の非作動が検出されると、前記回転数指令手段による指令回転数が前記設定回転数以上であれば、前記原動機の回転数を前記設定回転数に制御し、前記回転数指令手段による指令回転数が前記設定回転数より小さければ、前記原動機の回転数を前記指令回転数に制御することを特徴とする原動機制御装置。
【請求項3】
原動機により駆動される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからの圧油により駆動する油圧アクチュエータと、
前記油圧ポンプからの圧油による前記油圧アクチュエータの駆動を禁止する駆動禁止手段と、
前記駆動禁止手段の作動/非作動を検出する駆動禁止検出手段と、
少なくとも前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の作動が検出されると、前記原動機の回転数を、前記油圧アクチュエータを駆動可能な最小回転数(以下、これをローアイドル回転数と呼ぶ)よりも低い低速回転数に制御する回転数制御手段と、
オペレータの操作により前記ローアイドル回転数を下限とした範囲内で前記原動機の回転数を指令する回転数指令手段とを備え、
前記回転数制御手段は、前記原動機の回転数を前記低速回転数に制御した状態で前記駆動禁止検出手段により前記駆動禁止手段の非作動が検出されると、前記回転数指令手段による指令回転数が前記ローアイドル回転数よりも高い設定回転数以上のときに、前記原動機の回転数をその指令回転数まで徐々に増加させ、前記設定回転数未満のときに、前記原動機の回転数をその指令回転数まで即座に増加させることを特徴とする作業車両の原動機制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−85225(P2009−85225A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287577(P2008−287577)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【分割の表示】特願2006−537665(P2006−537665)の分割
【原出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【分割の表示】特願2006−537665(P2006−537665)の分割
【原出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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