説明

侵入警戒システム

【課題】フェンスや塀に沿った圧電センサの敷設や取り扱いが容易で美観上、防犯上も問題がなく、天候による感度低下や誤動作のおそれのない侵入警戒システムを提供する。
【解決手段】監視区域の境界に取り付けられた圧電センサに侵入者による外力が加わったことを前記圧電センサの出力電圧から検出して侵入者の侵入を検出する侵入警戒システムにおいて、圧電センサとして複数区間に渡りそれぞれ敷設されたピエゾケーブル10〜10と、各ピエゾケーブルの増幅後の出力電圧に基づいて侵入検出信号を出力可能であり、かつ、互いに縦続接続された複数の検出ユニット20〜20と、これらの検出ユニットに対しポーリング通信を行い、侵入検出信号が出力された検出ユニットを特定して侵入監視装置に通報する判定ユニット30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視区域内への侵入者をピエゾケーブルからなる圧電センサにより検出して警報等を発生させるための侵入警戒システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ピエゾケーブルは、いわゆる圧電センサとして広く知られており、心線と網線状の遮蔽層との間に圧電ポリマー(ピエゾポリマー)からなる絶縁層を配置し、遮蔽層の外側をポリエチレン等の外皮により保護して同軸ケーブル状に形成されている。このピエゾケーブルでは、外力に応じて心線と遮蔽層との間に電圧が発生するため、この電圧を検出すれば、ピエゾケーブルに何らかの力が加わったことを検出することができる。
【0003】
このようなピエゾケーブルの圧電センサとしての機能に着目し、例えば、車両のスライドドアや建物の自動ドアの端面に沿ってピエゾケーブルを配設し、これらのドア端面と開口部との間への物体の挟み込みを検出するようにした物体検知センサ及び開閉体挟み込み検知装置が、後述する特許文献1に記載されている。
また、この種のピエゾケーブルをジョイスティック等の入力装置に適用可能としたコード状感圧センサ入力装置が、後述する特許文献2に記載されている。
【0004】
一方、侵入者による赤外ビームの遮断を検出し、あるいは身体から発生する赤外ビームを検出して監視を行う赤外線センサ方式の監視システムや、監視区域の周囲に張り巡らしたワイヤに荷重が加わったことを検出して監視を行うテンションセンサ方式の監視システムが、従来から周知となっている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−257788号公報([0013],[0018]〜[0021],図1、図2等)
【特許文献2】特開2004−205432号公報([0003]〜[0010]、図1、図7等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載された従来技術では、ピエゾケーブルを圧電センサとして用いると同時に、ピエゾケーブルの遮蔽層を静電容量センサの検出電極としても用いており、この検出電極と対にして用いられるケーブル状電極をピエゾケーブルと並設する必要があることから、ケーブル状のセンサ本体の断面積が大きくなり、言い換えればセンサ本体が太くなる傾向にある。
すなわち、例えば監視区域への侵入者を監視するためにセンサ本体を長距離にわたって敷設すると、目立ち易いため察知されてしまうおそれがあり、また、美観上も好ましいものではない。
【0007】
更に、特許文献2に記載された従来技術は、主として入力装置に適用することを目的としているので、コード状感圧センサが直立に据付けられて感圧センサの信号線が引き出されるセンサ据付け器が必須の構成要素となっており、侵入者等を監視するためにフェンス等に沿って長距離にわたり敷設する用途には適さない。
【0008】
また、監視システムとして周知の赤外線センサ方式またはテンションセンサ方式の監視システムは、概してコスト高になりやすく、前者では霧や雨天時に検出感度が低下したり、後者ではワイヤへの積雪や氷結による荷重が誤動作の原因になるといった問題がある。
このため、フェンス等に沿ったセンサの敷設や取り扱いが容易で美観上、防犯上も問題がなく、天候による感度低下や誤動作のおそれのない侵入警戒システムの実現が望まれていた。
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載した発明は、監視区域の境界に取り付けられた圧電センサに侵入者に起因する外力が加わったことを前記圧電センサの出力電圧から検出して監視区域への侵入者の侵入を検出する侵入警戒システムにおいて、
前記圧電センサとして複数区間にわたりそれぞれ敷設された複数のピエゾケーブルと、
各ピエゾケーブルの出力電圧増幅値から侵入の有無を検出して侵入検出信号を出力可能であり、かつ、互いに縦続接続された複数の検出ユニットと、
これらの検出ユニットに対しポーリング通信を行い、前記侵入検出信号が出力された検出ユニットを特定する判定ユニットと、を備えたものである。
【0010】
請求項2に記載した発明は、請求項1において、
検出ユニットは、ピエゾケーブルの出力電圧増幅値が、所定の検出レベルを一定時間継続して超えた際に前記侵入検出信号を出力するものである。
【0011】
請求項3に記載した発明は、請求項2において、
検出ユニットは、更に、ピエゾケーブルの出力電圧増幅値の周波数を検出して前記侵入検出信号を出力するものである。
【0012】
請求項4に記載した発明は、請求項1〜3の何れか1項において、
検出ユニットは、前記侵入検出信号を判定ユニットに送信すると共に、少なくとも自局アドレス及び侵入検出データを含む通信データを判定ユニットからの指令に応答して返信するものである。
【0013】
請求項5に記載した発明は、請求項4において、
判定ユニットは、前記通信データに基づいて前記侵入検出信号を送信した検出ユニットを特定し、この検出ユニットに対して前記侵入検出信号を解除させる指令を含む通信データを送信するものである。
【0014】
請求項6に記載した発明は、請求項1〜5の何れか1項において、
検出ユニットは、少なくとも自局アドレス及び自己の装置異常データを含む通信データを判定ユニットからの指令に応答して返信するものである。
【0015】
請求項7に記載した発明は、請求項1〜6の何れか1項において、
ピエゾケーブルの出力電圧を増幅する増幅器として、交流増幅器を用いたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、圧電センサとしてピエゾケーブルを用いたため、フェンス等に沿った敷設や取り扱いが容易である。また、ピエゾケーブルには同軸状の簡易な構造のものを使用できるので、美観を損ねたり、外観上、目立つおそれもない。
更に、従来の赤外線センサ方式またはテンションセンサ方式の監視システムに比べて、天候による感度低下や誤動作のおそれのない侵入警戒システムを提供することができる。
特に、ピエゾケーブルの出力電圧に含まれるノイズやオフセット成分を低減させて高精度に侵入者を検出可能な侵入警戒システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は、この実施形態の全体的な構成図である。図1において、10,10,10,10は圧電センサとしてのピエゾケーブルであり、周知のように、心線と網線状の遮蔽層との間に圧電ポリマーからなる絶縁層を配置し、遮蔽層の外側をポリエチレン等の外皮により保護することによって同軸ケーブル状に形成されている。各ピエゾケーブルは所定の長さで監視区域の境界に配置されたフェンス等に沿って敷設されており、個々のピエゾケーブルの両端には検出ユニット20,20,20,20がそれぞれ接続されていると共に、これらの検出ユニット20,20,20,20はカスケード(縦続)接続されている。なお、図示例ではピエゾケーブル及び検出ユニットをそれぞれ4つ設けてあるが、監視区域の広さに合わせて更に多数(例えば最大で32個まで)接続することも可能である。
【0018】
各検出ユニット20,20,20,20と後に詳述する判定ユニット30との間では、各検出ユニットのアドレスを示すアドレスデータと、ピエゾケーブルの出力電圧レベル(ピーク値を含む)と、所定の検出レベル(しきい値)を超える電圧が一定時間継続した場合に侵入者ありと判断して出力される侵入検出データと、各検出ユニットの異常や断線を示す装置異常データとが、後述する電文フォーマットに従った通信データとして授受可能となっている。
【0019】
端部の検出ユニット20には、判定ユニット30が接続されている。この判定ユニット30は、検出ユニット20,20,20,20側から通信データを受信した際に、そのデータを解析し、侵入者を検出した(発報した)検出ユニットを特定して上位の侵入監視装置(図示せず)に当該検出ユニットのアドレスや電圧レベル等を伝送するように構成されている。
【0020】
図2は、 端部の検出ユニット20及び判定ユニット30の内部構成を示すブロック図である。なお、これらの両ユニット20,30は一枚の基板上に一体的に形成してもよい。
検出ユニット20は、ピエゾケーブル10からのアナログの電圧信号(ピエゾ信号)が入力されるアンプ201と、その出力信号の所定の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタ202と、その出力信号が入力されるDSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)203とを備えている。
上記DSP203には、バンドパスフィルタ202の出力信号をディジタル信号に変換するA/D変換手段204と、その出力信号のピーク値を保持するピークホールド手段205とが設けられている。
なお、これらのアンプ201からピークホールド手段205に至る部分は、破線で示すように、別チャンネル(2チャンネル)用の予備として同一構成のものを備えても良い。
【0021】
206は検出判定手段であり、前記アンプ201の出力電圧レベル、継続時間、周波数等を判定するものである。ここで、周波数の判定は必要に応じて行っても良い。
207は、検出判定手段206による判定結果が加えられるディジタル出力手段であり、当該検出ユニット20が侵入者を検出したことや検出ユニット20に異常が発生したことを表示するための状態表示LED208と、検出判定手段206が侵入者の侵入を検出したときにアクティブとなる侵入検出信号を判定ユニット30に伝送するためのフォトカプラ209とが接続されている。なお、上記侵入検出信号は、信号ケーブル42を介して判定ユニット30に伝送される。
【0022】
また、判定ユニット30と各検出ユニットとの間で、ポーリング方式により所定の通信プロトコル(RS−485)にてデータを通信するための通信処理手段210と、インターフェイス211及びRS−485ドライバ212が設けられており、このドライバ212はRS−485通信ケーブル43を介して判定ユニット30に接続されている。
更に、DSP203には、ピエゾケーブル10の断線検出を行うためにディジタル信号を生成するディジタル入出力手段213が設けられており、この入出力手段213には、パルス状の電流信号をピエゾケーブル10に通流させ、それによる電流信号を取り込んで断線を検出する電流検出手段(断線検出手段)214が接続されている。この電流検出手段214についても、破線で示すように別チャンネル(2チャンネル)用の予備として同一構成のものを備えても良い。
上記断線検出の結果は、通信データの一部である装置異常データとして、通信処理手段210、インターフェイス211、RS−485ドライバ212、通信ケーブル43を介し判定ユニット30に送られる。
【0023】
なお、215は検出ユニット20のアドレスを設定するためのスイッチ、216はDSPによる処理プログラムが格納されたフラッシュROM、217はワークエリアとしてのSD−RAM、218は電源ケーブル41に接続された電源スイッチ、219は検出ユニット20に電源を供給するためのDC/DCコンバータである。
【0024】
一方、判定ユニット30は、各検出ユニットからの侵入検出信号が入力されるフォトカプラ301と、通信ケーブル43に接続されたRS−485ドライバ304と、これらに接続されたCPU302とを備えている。なお、前記フォトカプラ301はCPU302内のディジタル入力手段303に接続され、前記RS−485ドライバ304はCPU302内のインターフェイス305に接続されている。
【0025】
CPU302は、通信ケーブル43、ドライバ304及びインターフェイス305を介して受信した通信データを解析し、侵入検出信号が出力された検出ユニットを特定して侵入監視装置へその情報を伝送したり、侵入監視装置との間で各種指令を送受信するものであり、ディジタル出力手段306及びインターフェイス307を備えている。上記ディジタル出力手段306には、侵入や装置異常が特定された検出ユニットに関する情報を接点出力として伝送するための接点出力手段308が接続されていると共に、インターフェイス307はRS-232Cドライバ309を介して侵入監視装置に接続されている。
【0026】
310は、各検出ユニットの状態を一括して表示する検出ユニット状態表示LED、311は外部の交流電源を所定の直流電圧に変換するAC/DCコンバータ、312は電源スイッチ、313はCPU302に電源を供給するためのDC/DCコンバータである。
【0027】
次に、図3はピエゾケーブルの出力電圧を増幅した波形の概念図である。
侵入検出のための電圧レベルとしては、前記検出判定手段206に、第1検出レベル及び第2検出レベルが設けられている。第1検出レベルは、検出判定手段206に入力された電圧レベルがこのレベルを超えた場合に検出判定処理を開始する電圧レベルであり、いわば、とりあえず侵入者による侵入かも知れないと判断できる最低電圧レベルである。また、第2検出レベルは、第1検出レベルよりも大きいレベルであり、侵入者ありと断定しても良いような電圧レベルである。
検出判定手段206の入力電圧レベルが例えば第1検出レベルを超えている継続時間は、その値が長いほど侵入者ありの疑いが強くなるパラメータである。
【0028】
すなわち、一般に、検出レベルを高く設定し、電圧レベルがこの検出レベルを超えている継続時間を長くすれば、犬や猫等の小動物による誤検出を防いで侵入者のみを確実に検出するシステムを構築することができる。
なお、検出判定手段206の入力電圧レベルが第2検出レベルを超えている期間の周波数を判定パラメータに加えれば、例えば侵入者がピエゾケーブルを比較的長い時間にわたって踏み付けているような事態を検出可能であり、検出精度を一層高めることができる。
これらの第1検出レベル、第2検出レベル、継続時間及び周波数等のパラメータは、プログラム上で適宜設定されるもので、好ましくは検証試験によって最適値が決定される。
【0029】
ピエゾケーブルの出力電圧増幅値のピーク値は前述した如くピークホールド手段205により保持され、8ビットの有効データからなるピークデータ(電圧レベルデータ)として判定ユニット30に送られるようになっている。このピークデータは、隣接するピエゾケーブル(検出ユニット)間でレベルの差を比較することにより、侵入箇所を判定するために使用される。
【0030】
次いで、図4は判定ユニット30と各検出ユニットとの間で送受信される通信データの電文フォーマットを示している。
まず、(1)の検出時一斉確認指令(そのコードを[O−00]とする)は、いずれかの検出ユニットにより侵入者が検出され、侵入検出信号がフォトカプラ209、通信ケーブル42、フォトカプラ301、ディジタル入力部303を介してCPU302に入力された場合に、その検出ユニットを特定するために判定ユニット30から一斉ポーリングによってすべての検出ユニットに送られる指令であり、電文フォーマットには一斉アドレスを含んでいる。
【0031】
次に、(2)の検出応答(コードを[A−00]とする)は、上記一斉確認指令を受信した検出ユニットが自局のアドレスを付して所定の遅延時間経過後に判定ユニット30に返信するものであり、自局アドレス、侵入検出データ(侵入の有無を示すデータ)、装置異常データ(センサ(ピエゾケーブル)の断線や検出ユニットの自己診断による異常の有無を示すデータ)、電圧レベルデータ(前述したピークデータ)等を含んでいる。
(3)の個別確認指令(コードを[O−01]とする)は、上記検出応答を解析することにより、侵入者を検出した検出ユニットを特定した後で、その検出ユニットに対して判定ユニット30から送信する指令であり、当該検出ユニットの指定アドレス、種別データ(装置動作確認、検出確認等)等を含んでいる。
【0032】
(4)の装置動作確認応答(コードを[A−01]とする)は、各検出ユニットの異常を検出するために(3)の個別確認指令を装置動作確認ポーリングによって各検出ユニットに順次送信した場合に、各検出ユニットから判定ユニット30に返信される応答であり、自局アドレス、侵入検出データ、装置異常データ等を含んでいる。
(5)の検出確認指令応答(コードを[A−02]とする)は、(3)の個別確認指令を受信した検出ユニットが、自局の侵入検出信号をリセットした後で判定ユニット30に返信する応答であり、自局アドレス等を含んでいる。
【0033】
次に、この実施形態の動作の一例として、ある検出ユニットが侵入者を検出して侵入検出信号を出力した場合の通信手順を図5に示す。
前述したように、ある検出ユニットから侵入者ありの侵入検出信号が出力されると、これを受信した判定ユニット30は、検出時一斉確認指令[O−00]をすべての検出ユニットに送信し、各検出ユニットは、それぞれの遅延時間経過後に検出応答[A−00]を返信する。この検出応答[A−00]には自局アドレス、侵入検出データ等が含まれており、仮に図5に示すごとく検出ユニット20が侵入検出信号を出力していたとすると、侵入検出データが「1」であり、電圧レベルデータはピーク値を示していることになる。
このため、判定ユニット30は検出ユニット20を特定でき、言い換えれば侵入者を検出した区間を特定することができるので、その結果を上位の侵入監視装置に通報する。
【0034】
判定ユニット30は、侵入監視装置への通知後、直ちに検出ユニット20に対して個別確認指令[O−01](種別を「2」:検出確認(侵入検出信号をオフにする要求)とする)を送信する。
この個別確認指令[O−01]を受信した検出ユニット20は、自局の侵入検出信号をリセットした後で、検出確認指令応答[A−02]を判定ユニット30に返信する。
なお、図5においてTは応答監視タイマ時間であり、例えば30ms以内に応答電文の「STX」を受信できなかった場合にタイムアウトと判定するためのものである。
【0035】
以上のシーケンスにより、侵入者を検出した区域を特定してその情報を侵入監視装置に通報することが可能であり、侵入監視装置では警報出力や現場への急行など、必要な対応策を迅速にとることができるものである。
なお、複数の区域で侵入が発生して複数の検出ユニットから検出信号が出力された場合、判定ユニット30は侵入監視装置に通報した後で、侵入検出信号が出力されたすべての検出ユニットに対して順次、個別確認指令[O−01](種別を「2」とする)を送信し、各検出ユニットが検出確認指令応答[A−02]を判定ユニット30に返信することにより、すべての侵入区域を特定することが可能である。
【0036】
図6は、検出ユニットの異常を確認するための通信手順であり、定周期で実行されるシーケンスである。
すなわち、判定ユニット30から個別確認指令[O−01](種別を「1」:装置動作確認とする)を各検出ユニットに順次送信し、各検出ユニットが装置動作確認応答[A−01]を返信することにより、ピエゾケーブルの断線や自己診断による検出ユニットの異常を自装置状態として通報する。これにより、判定ユニット30はすべての検出ユニットの状態を検出することができ、異常が検出された検出ユニットに対して点検等の対策を迅速にとることが可能になる。
【0037】
なお、本システムの開発に当たり、発明者は、ピエゾ信号を増幅する増幅器(図2におけるアンプ201に相当)の出力電圧が、フェンス等の揺れを検出した波形と比較して非常に長い周期のノイズを持ち、しかも、周囲温度の変化に伴ってオフセット電圧を持つという知見を得た。図7(a)〜(d)におけるチャンネル1の波形は、恒温槽内で低温から高温、または高温から低温に変化させた場合の上記増幅器の出力電圧を示しており(図7(d)は40℃→41℃→40℃→41℃→……と変化)、ノイズ及びオフセット電圧が顕著に表れている。
【0038】
その原因は、上記増幅器として使用した直流増幅器にあると考えられ、これを交流増幅器に変更したところ(カットオフ周波数は侵入者によるフェンスの揺れの周波数:約16Hzとした)、図8(a)〜(d)におけるチャンネル1に示す波形が得られた。
これらの波形から明らかなように、交流増幅器に変更することによって出力電圧のノイズ、オフセット電圧共に低減されることが確認された。これにより、侵入者等の検出精度を一層向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態の全体的な構成図である。
【図2】図1における端部の検出ユニット及び判定ユニットの内部構成を示すブロック図である。
【図3】ピエゾケーブルの出力電圧を増幅した波形の概念図である。
【図4】判定ユニットと各検出ユニットとの間で送受信される通信データの電文フォーマットを示す図である。
【図5】ある検出ユニットが侵入検出信号を出力した場合の通信手順を示すシーケンスである。
【図6】検出ユニットの異常を確認するための通信手順を示すシーケンスである。
【図7】ピエゾ信号を増幅する増幅器の出力電圧の波形図である。
【図8】ピエゾ信号を増幅する増幅器の出力電圧の波形図である。
【符号の説明】
【0040】
10,10,10,10:ピエゾケーブル
20,20,20,20:検出ユニット
201:アンプ
202:バンドパスフィルタ
203:DSP
204:A/D変換手段
205:ピークホールド手段
206:検出判定手段
207:ディジタル出力手段
208:状態表示LED
209:フォトカプラ
210:通信処理手段
211:インターフェイス
212:RS-485ドライバ
213:ディジタル入出力手段
215:スイッチ
216:フラッシュROM
217:SD−RAM
218:電源スイッチ
219:DC/DCコンバータ
30:判定ユニット
301:フォトカプラ
302:CPU
303:ディジタル入力手段
304:RS-485ドライバ
305:インターフェイス
306:ディジタル出力手段
307:インターフェイス
308:接点出力手段
309:RS-232Cドライバ
310:検出ユニット状態表示LED
311:AC/DCコンバータ
312:電源スイッチ
313:DC/DCコンバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視区域の境界に取り付けられた圧電センサに侵入者に起因する外力が加わったことを前記圧電センサの出力電圧から検出して監視区域への侵入者の侵入を検出する侵入警戒システムにおいて、
前記圧電センサとして複数区間にわたりそれぞれ敷設された複数のピエゾケーブルと、
各ピエゾケーブルの出力電圧増幅値から侵入の有無を検出して侵入検出信号を出力可能であり、かつ、互いに縦続接続された複数の検出ユニットと、
これらの検出ユニットに対しポーリング通信を行い、前記侵入検出信号が出力された検出ユニットを特定する判定ユニットと、
を備えたことを特徴とする侵入警戒システム。
【請求項2】
請求項1に記載した侵入警戒システムにおいて、
検出ユニットは、ピエゾケーブルの出力電圧増幅値が、所定の検出レベルを一定時間継続して超えた際に前記侵入検出信号を出力することを特徴とする侵入警戒システム。
【請求項3】
請求項2に記載した侵入警戒システムにおいて、
検出ユニットは、更に、ピエゾケーブルの出力電圧増幅値の周波数を検出して前記侵入検出信号を出力することを特徴とする侵入警戒システム。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載した侵入警戒システムにおいて、
検出ユニットは、前記侵入検出信号を判定ユニットに送信すると共に、少なくとも自局アドレス及び侵入検出データを含む通信データを判定ユニットからの指令に応答して返信することを特徴とする侵入警戒システム。
【請求項5】
請求項4に記載した侵入警戒システムにおいて、
判定ユニットは、前記通信データに基づいて前記侵入検出信号を送信した検出ユニットを特定し、この検出ユニットに対して前記侵入検出信号を解除させる指令を含む通信データを送信することを特徴とする侵入警戒システム。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載した侵入警戒システムにおいて、
検出ユニットは、少なくとも自局アドレス及び自己の装置異常データを含む通信データを判定ユニットからの指令に応答して返信することを特徴とする侵入警戒システム。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載した侵入警戒システムにおいて、
ピエゾケーブルの出力電圧を増幅する増幅器として、交流増幅器を用いたことを特徴とする侵入警戒システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−243876(P2006−243876A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−55515(P2005−55515)
【出願日】平成17年3月1日(2005.3.1)
【出願人】(000220907)東光電気株式会社 (73)
【Fターム(参考)】