信号光子エネルギの検知
【課題】小規模且つ安価な装置で高精細なスペクトラム情報を取得可能にする。
【解決手段】光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイ42を集積回路内に設け、複数個の経路部分を含む走査経路(y方向)をその上に設定する。アレイ42による光子検知可能波長域即ちサブレンジはy方向位置Y1,Yn,YN毎に異なり、各y方向位置に存するセル群即ちサブレンジセル群は代表波長λ1,λn,λNのサブレンジ内の光子を検知できる。走査器によりアレイ42に対して信号光20を相対走査運動(y方向)させ信号光20によって走査経路沿いにアレイ42の表面を横断走査させると、各y方向位置に位置するサブレンジセル群により対応するサブレンジ内の光子が検知される。信号光20のx方向位置毎の成分即ち場所L1,Lm,LM毎に検知結果を組み合わせ、スペクトラム情報を取得する。
【解決手段】光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイ42を集積回路内に設け、複数個の経路部分を含む走査経路(y方向)をその上に設定する。アレイ42による光子検知可能波長域即ちサブレンジはy方向位置Y1,Yn,YN毎に異なり、各y方向位置に存するセル群即ちサブレンジセル群は代表波長λ1,λn,λNのサブレンジ内の光子を検知できる。走査器によりアレイ42に対して信号光20を相対走査運動(y方向)させ信号光20によって走査経路沿いにアレイ42の表面を横断走査させると、各y方向位置に位置するサブレンジセル群により対応するサブレンジ内の光子が検知される。信号光20のx方向位置毎の成分即ち場所L1,Lm,LM毎に検知結果を組み合わせ、スペクトラム情報を取得する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC(集積回路)上に形成されたフォトセンサアレイを用い信号光に含まれる光子又はそのエネルギ(photon energy)を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている分光装置は、複数個の感光素子から構成された光電薄膜アレイと、連続可変な光学フィルタと、を有するスペクトラム分解センサを備えている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5166755号明細書
【非特許文献1】Nicholas J. Goddard, Kirat Singh, Fatah Bounaira, Richard J. Holmes, Sara J. Baldock, Lynsay W. Pickering, Peter R. Fielden and Richard D. Snook, "ANTI-RESONANT REFLECTING OPTICAL WAVEGUIDES (ARROWS) AS OPTIMAL OPTICAL DETECTORS FOR MICROTAS APPLICATIONS", [Online] Internet URL: http://www.dias.umist.ac.uk/NJG/Abstracts/MicroTAS/MicroTas2.htm
【非特許文献2】K. Singh and N.J. Goddard, "Leaky ARROW Waveguides for Optical Chemical and Biosensors", Abstract Submitted to Biosensors 1998, [Online] Internet URL: http://www.dias.umist.ac.uk/NJG/Abstracts/Biosensors/ARROW-Biosensors.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来用いられていた光情報取得方法には幾つかの問題点があった。第1に、急峻に変化する信号光についてスペクトラム情報を得るには大規模で高価な装置が必要であり、そうした装置無しではスペクトラム情報取得が困難であった。第2に、書類等の薄板状物体(two-dimensional object)からのスペクトラム情報取得に使用しても、スペクトラムをさほど精細には分解できなかった。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みなされた発明であり、ICを用いた信号光検知技術の改良を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに、本発明の一実施形態に係る信号光検知方法は、(1)集積回路に内蔵され光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイと、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含む信号光との間に、相対走査運動を発生させることにより、それら複数個のセルのうち走査経路沿いにあるものが信号光内光子を検知できるよう、それぞれ1個又は複数個のセルを含む複数個の経路部分からなる走査経路に沿って信号光でフォトセンサアレイを横断走査させるステップと、(2)各経路部分がそれぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個の経路部分が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている走査経路にて、経路部分毎に且つその経路部分内のセルにより、信号光のうちその経路部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知するステップと、を有する。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る装置は、(1)それぞれ光子を受け取ってその量を検知するセルを複数個含むフォトセンサアレイを内蔵する集積回路と、(2)このフォトセンサアレイと、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含む信号光との間に、相対走査運動を発生させることにより、上記複数個のセルのうち走査経路沿いにあるものが信号光内光子を検知できるよう、それぞれ1個又は複数個のセルを含む複数個の経路部分からなる走査経路に沿って信号光でフォトセンサアレイを横断走査させる走査器と、を備え、(3)各経路部分がそれぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個の経路部分が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている走査経路にて、経路部分毎に且つその経路部分内のセルにより、信号光のうちその経路部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知する装置である。
【0008】
そして、本発明の一実施形態に係る方法は、(1)集積回路に内蔵され光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイに対して第1方向沿いに相対運動させつつ、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含み且つ複数個の場所に広がる信号光を、そのフォトセンサアレイにて受光するステップと、(2)第1方向に沿って配置され、それぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている複数の部分それぞれについて、且つその部分内のセルにより、信号光のうちその部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知するステップと、(3)上記場所又はその組合せ毎に、第1方向沿いの各部分内のセルによる光子量の検知結果を寄せ集めて組み合わせることにより、当該場所又はその組合せにおける信号光スペクトラムについての情報を取得するステップと、を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、まず本発明の特徴である相対走査運動について図1及び図2を参照しながら説明し、次いでその相対走査運動を実行するために使用されるIC及びセンシングアセンブリの特徴について図3〜図9を参照しながら説明する。また、本発明又はその実施形態の動作を記述するため、以下、信号光・フォトセンサアレイ間「相対運動」、信号光・他部材間「相対走査運動」等の用語を使用する。即ち、以下説明する実施形態においては、信号光が照明対象物体上の別々の場所(スポット)に由来する複数通りのスポット光(以下単にスポットともよぶ)を形成し、それらがフォトセンサアレイ上に入射する。信号光・フォトセンサアレイ間「相対運動」(relative movement/motion)とは、フォトセンサアレイ上へのスポット入射位置のうち少なくとも1個が変化することをいう。実施形態においては、こうした相対運動を、総じて信号光発生用部材のうち何個かの運動、信号光入射先たるフォトセンサアレイの運動、又はその双方の組合せによって発生させる。
【0010】
また、信号光・他部材間「相対走査運動」(relative scanning movement/motion)とは、信号光を形成するスポットのうちあるものが所定移動経路、例えばフォトセンサアレイを横断する(表面をなぞること;以下同様)経路、照明対象物体表面を横断する経路、信号光に作用する光学部品を横断する経路等を辿って移動するよう、信号光が当該他の部材に対して“走査的に”相対運動することである。
【0011】
図1に示すように、センシングアセンブリ22には信号光20のうち一部が入射している。同図中、光線32として表されているのは信号光20のうちセンシングアセンブリ22に入射するスポット光30であり、このスポット光30はスポットSに由来している。センシングアセンブリ22はこのスポット光30内の光が入射するIC40を備えており、IC40は更にセル群44から構成されたフォトセンサアレイ42を備えている。また、図中の矢印線50及び52は、信号光20・フォトセンサアレイ42間相対走査運動を表している。この相対走査運動は、スポット状の光線32の移動(矢印線50)、フォトセンサアレイ42を含むセンシングアセンブリ22の移動(矢印線52)又はその組合せによって実現される。
【0012】
また、スポットS内には、信号光20の生成、伝搬に関与する各種部材例えば光源、照明対象物体、(もしあるなら)照明対象物体・フォトセンサアレイ間所在光学部品等の作用によって、光子エネルギ分布が生じる。また、これら光源、照明対象物及び光学部品は様々な形態にて実現されうる。例えば、従来から知られている各種の結像レンズ(例えば屈折レンズ)、回折光学系(例えばフレネルレンズ)、マイクロレンズ、傾斜屈折率レンズ(例えばGRINやSelfocレンズ)等の光学部品若しくは光学部品群を、照明対象物体・フォトセンサアレイ間に配置することができる。なお、GRINは商標、Selfocは登録商標である。煩雑さを避けるため、以下の欄ではこれらについての商標表記・登録商標表記を省略する。
【0013】
スポットSにおけるこうした光子エネルギ分布をフォトセンサアレイ42によって情報として取得するため、ここでは、フォトセンサアレイ42を構成する各セル群44にて検知可能な光子の波長域即ち光子エネルギサブレンジを、セル群44毎に違えている。即ち、図中曲線60で示されているように、そのy方向(横方向)位置によって光子エネルギサブレンジが異なっている。本願ではこの種の変化乃至相違を「横変」と称している。また、ここで例示されている曲線60は、フォトセンサアレイ42内最左端セル群44にて検知可能な最短波長λminから同最右端セル群44にて検知可能な最長波長λmaxまで検知可能波長λが単調増加することを示す直線であり、従ってこの図のフォトセンサアレイ42を使用可能な光子エネルギレンジ即ち光子検知可能波長域全体は、最短波長λminから最長波長λmaxに及んでいる。但し、この曲線60は単なる例に過ぎず、光子エネルギサブレンジの横変具合を表す関数は、y方向位置を変数とする適当な関数とすることができる。
【0014】
図2に、フォトセンサアレイ42に対する信号光20の相対走査運動をより詳細に示す。同図中の信号光20は線状信号光であり、x方向に沿って延びている。x方向はy方向に対しほぼ直交している。y方向は信号光20がフォトセンサアレイ42を横切っていく方向、即ち走査方向である。信号光20は、y方向沿いに延びる走査経路に沿ってフォトセンサアレイ42の表面をなぞってゆき、フォトセンサアレイ42に対する射突位置をこの走査に伴い変化させてゆく。同図中、Y1〜YNはフォトセンサアレイ42に対する信号光20の射突位置のy座標値である。また、信号光20はx方向に沿ってM個の部分L1〜LMに分かれている。空間的に分離しているのでこれらの部分L1〜LMを「場所」(location)と呼ぶ。場所L1〜LMはそれぞれ画素に相当するものであり、その個数Mはx方向における信号光20の空間的広がり(線の長さ)を表している。例えばM=1という極端なケースなら、信号光20は点状信号光、即ち単一の場所L1のみからなる光である。また、信号光20は線状ではなく二次元にすることもできる。その場合、使用される二次元信号光は、ちょうど図2に示したものと同じく複数個の場所を含みx方向に延びる線状信号光を、y方向沿いに複数個横並びにして寄せ集めたものに相当する。二次元信号光を使用する場合も、フォトセンサアレイ42の表面をなぞるようy方向に沿って射突位置を動かしていく。即ち、y方向に沿った走査運動は線状信号光20でも二次元信号光でも同様に行う。
【0015】
場所Lmは信号光20の構成要素であり、先に示した定義によるスポット光30の一例に該当する。また、装置構成や実施環境、照明対象物等が決まると各場所Lmにおける光子エネルギ分布Dmが決まる。即ち、L1にはD1、LmにはDm、LMにはDM、というように一般に場所毎に異なる光子エネルギ分布が現れる。また、ここで「場所」という用語を用いていることから理解できるように、各スポット光30は照明対象物体上の互いに別々の場所に由来しフォトセンサアレイ42上の別々の場所に射突する。後に様々な手段を示して説明するように、信号光20及びその成分であるスポット光30を発生、形成させる際、フォトセンサアレイ42上にてこれら信号光20乃至スポット光30の射突位置をどのようにまたどの程度細分化できるかによって、信号光20の分解能を画定、確保することができる。また、以下の説明を参照することによってより全面的に理解できることとなろうが、相対走査運動方向即ちy方向における線状信号光20や二次元信号光の広がりを防ぎ、或いは抑えることが、望まれる。即ち、信号光成分がその集中状態を保ち、各スポット光30がそれに対応するセル群44の検知エリア内に収まり、対応する光子エネルギサブレンジでの光子検知が行われるようにすることが、有益である。
【0016】
場所L1〜LMに属する光子の検知は、フォトセンサアレイ42上にてまたN通りのy方向位置Y1〜YNそれぞれにて行われる。フォトセンサアレイ42上の各y方向位置Y1〜YNには、同一光子エネルギサブレンジで光子を検知する複数個のサブレンジセルが、いわば1個の「列」を形成するよう配置されており、同列に属するサブレンジセルによってそのy方向位置に係るセル群44が構成されている。また、そのx方向位置は同じだがそのy方向位置が異なる(従って担当する光子エネルギサブレンジが異なる)複数個のサブレンジセルの集合、即ち「行」を見ると、同一行内に属する複数個のサブレンジセルにより光子検知が行われる光子エネルギの中心波長は波長λ1から波長λNまで横変している。総じていうなら、個々のy方向位置Ynではその位置Ynに対応する中心波長λnを有する光子エネルギサブレンジでの信号光検知がその位置YnにあるM個のサブレンジセルによって行われるので、信号光20の射突位置をy方向位置Y1からy方向位置YNまで掃引的に変化させることによって全ての場所L1〜LMについてまたそれぞれ中心波長λ1〜λNを有する全ての光子エネルギサブレンジについて光子の量を検知することができ、それらの検知結果から各場所Lmにおける光子エネルギ分布Dmを導出することができる。
【0017】
図1及び図2に示す手法においては、場所Lmが重要な役割を演じている。第1に、実現可能な空間分解能が場所Lmのサイズ縮小限界によって決まる。これは、フォトセンサアレイ42を構成するセルの有効面積によって場所Lmの精細さ即ち空間分解能が制限されるためである。第2に、各場所Lmにて検知できるスペクトラムの精細さ即ちスペクトラム分解能もy方向セル有効寸法及びフォトセンサアレイ42横断方向検知波長λn変化勾配に依存している。例えば、被覆厚みに変化を加えることによって検知波長λnに勾配を付与する実施形態では被覆表面勾配乃至急峻さによってスペクトラム変化勾配が決まる。
【0018】
従って、図1及び図2に示す如く、各セル内で検知可能な光子エネルギサブレンジが横方向に沿って異なるフォトセンサアレイ42に対し、信号光20を相対走査運動させることによって、その光信号20についてのスペクトラム情報を得ることができる。各構成部品を形成する素材を適当な素材としさえすれば、深紫外域から遠赤外域更にはTHzオーダの周波数域に至るまでのスペクトラム情報を、得ることが可能である。
【0019】
図3に、IC40及びフォトセンサアレイ42の一例構成を模式的に示す。この図に示す構成は、後に示す図4〜図9の構成乃至手法にて使用乃至形成できる。図中のフォトセンサアレイ42は、それぞれ複数個のフォトセンサを含むセルを2行以上並べた構成を有する二次元アレイである。
【0020】
フォトセンサアレイ42の各部分例えば行は、その部分に属するセルが他の部分に属するセルとは異なる波長域即ち光子エネルギサブレンジにて光子を検知するよう、例えばその被覆を別様にする等して構造を違えておく。そうすることによって、単一のIC40から得られる情報だけで、広い光子エネルギ分布域全体に亘り、入射光子を仔細に解析することが可能になる。加えて、基準セルを設け、空間的に分解されたリアルタイム基準信号を当該基準セルにて発生させることにより、信号光位置を連続モニタすること等が可能になる。
【0021】
また、特徴的なことに、このフォトセンサアレイ42においてはサブレンジセル近傍に何個かの基準セルが設けられている。
【0022】
まず、行102内にある各セルは、適当に設定されたある共通の波長域(代表波長:λall)にて光子を検知し、別の行104内にある至近のサブレンジセルに対し基準信号を供給する。こうした構成を採る場合、一般には、行102内セルから得られる信号強度と、行104内にありこれと対をなすサブレンジセルから得られる信号強度とを、同じオーダにすることが有益である。そうするためには、例えばセル同士で検知面積を違えるなり、設けるグレイフィルタ被覆をセル同士で違えるなり、行102内セルと行104内サブレンジセルとを別様に形成するなり、相応の措置を執る必要がある。
【0023】
行102内セルとは異なり、行104内にあるサブレンジセルは、最短波長λminから最長波長λmaxに至る波長域に属し且つ互いに別々の光子エネルギサブレンジにて、光子を検知する。例えば、図中のサブレンジセル106は波長λpを中心とする光子エネルギサブレンジにて光子を検知する。こうして検知された情報は、IC40内に設けられている周辺回路110によって読み出される。なお、図示しないがIC40内にはセルのアレイ化によりフォトセンサアレイ42を形成する回路等も設けられている。また、周辺回路110は、上記以外の様々な機能的処理も実行する。
【0024】
図4にセンシングアセンブリ22の一例構造を示す。図示されていないが、センシングアセンブリ22は、例えば適当な支持部材(後に例示)に取り付ける等しておく。
【0025】
図4に示したのはフォトセンサアレイ42の一断片150の断面であり、この断面中には当該断片150を構成する何個かのセル152が模式的に示されている。同図中、一群のサブレンジセル152の上方に位置しているのは、入射光162受入部となる透過構造160である。
【0026】
透過構造160は、例えば、その光透過特性が各部の横方向位置により違う膜即ち光透過特性横変膜である。
【0027】
透過構造160は、フォトセンサアレイ42の上又は上方に適当な被覆を配することによって、形成することができる。透過構造160の構成要素である空胴(共振子)170、膜172及び174は、何れも、蒸着室内で堆積ビームにさらすことによって形成することができる。これらの構成部分のうち一定膜厚部分即ち膜172及び174は軸揃え堆積法(on-axis deposition)を使用することによって、また膜厚横変部分即ち共振子170は軸外し堆積法(off-axis deposition)を使用することによって、形成することができる。また、図4中の膜172及び174は共振子170に比べて厚みがあるが、こうした厚み設定は、SiO2、TiO2、Ta2O5等の非金属系素材の層の交互積層によってブラッグミラーを形成する場合等に適している。また、膜172及び174は反射素材によって形成することもでき、そうした場合は非金属系素材層により形成した場合に比べかなり薄くすることができる。
【0028】
共振子170、膜172及び174の膜厚の設計値は、透過させたい波長λ及び共振子170を形成する素材の屈折率nから決定することができる。共振子170の膜厚は、λ/(2n)又はその整数倍に設定するのが常道である。また、膜172及び174をブラッグミラーとして形成する際には、膜172及び174内の各ブラッグミラー層の膜厚を、λ/(4n)に設定するのが常道であり、また膜172及び174各々におけるブラッグミラー層のペア数を、例えば2〜5ペアといった少数から20〜30ペアといった多数に至る範囲内で設定するのが妥当であろう。各膜内ブラッグミラー層ペア数は、使用する2種類の素材間の屈折率差、透過させたい波長域の幅及び阻止したい波長域における反射率に応じて変える。そのため、ブラッグミラーを使用する実施形態では、膜172及び174が共振子170に比べかなり厚くなるのが普通である。
【0029】
図5に透過構造160の光透過横変特性を示す。共振子170の膜厚がy方向位置の関数に従い変化するため、共振子170を透過する光の波長もy方向位置の関数になる。図4に示した断片150内にある9組のセル152の反射率が極小になる波長、即ち光子が最もよく透過する波長は、図5中、番号1〜9が付された波長である。この図からも理解できるように、透過構造160においては、光子が高透過率で透過する光子エネルギレンジが、その構造上の横方向位置により異なっている(横変している)。
【0030】
図6に、センシングアセンブリ22の構成例をもう一つ示す。この図のセンシングアセンブリ22に設けられた透過構造180は、横グレーデッドブラッグミラー(laterally graded Bragg mirror)を有している。即ち、透過構造180を構成する層182、184、186及び188それぞれの厚みが、横方向勾配を有している。これらの層182、184、186及び188は、例えば軸外し堆積法を用いて共振子170上に成長させる。なお、同図では共振子170や他の反射層の図示を省略してある。
【0031】
図7に透過構造180の光透過横変特性を示す。透過構造180における反射波長はy方向位置の関数であり、各部分のy方向位置により異なっている。図示されている曲線200、202、204及び206は、透過構造180の構成部分のうち、断片150中の最左端から4個分のサブレンジセル152の上方に位置する部分における反射率を表している。即ち、曲線200は図6中の最左端サブレンジセル152の上方にある部分の反射率を表しており、曲線206はそれを含めて左から4番目(4個の中では一番右)のサブレンジセル152の上方にある部分の反射率を表している。このように、透過構造180が高反射率を呈する光子エネルギレンジは横変している。
【0032】
図8に、図5及び図7に示したものと同様の光透過横変特性が二方向に沿って現れる透過構造210を、形成する手法の例を示す。なお、ここでも他の層の図示を省略してある。
【0033】
図8に示した手法では、フォトセンサアレイ42の断片150を構成するサブレンジセル152の上又は上方に透過構造210を形成するため、透過構造210の表面上の各点から見て傾いた方向から、それも二通りの断面(同図の左右両半分)の何れにおいても傾いた方向から、堆積ビーム214が発せられる。透過構造210の表面各点から見た堆積ビーム214の方向は従って二種類の傾斜角により特定でき、またそれら傾斜角は各点毎に異なっている。それらの傾斜角のうち一つは断片150切断面におけるx方向堆積ビーム214方向角であり、もう一つはy方向堆積ビーム214方向角である。従って、透過構造210における厚みの勾配は、x方向についてもy方向についても、その大きさの差こそあれ同様の形態で変化する。即ち、y方向に沿って延びる個々の列内においては、図7に示したものと同様、同一の光子エネルギレンジにて各サブレンジセルが光子を検知するが、所属先の列が異なるセル同士は、図7に示したものとは違い、列単位で異なる光子エネルギレンジにて光子を検知する。
【0034】
図9に、光透過横変特性を有する透過構造220をその物理的な膜厚に変化を与えることなく形成する手法の例を示す。同図に示した手法の特徴は、厚みd及び屈折率nの積d×nとして与えられる光学的厚みを横変させることとし、実際の厚みdには変化を与えないで、光透過横変特性を実現している点にある。なお、ここでも他の層の図示を省略してある。
【0035】
光学的厚みを横変させるため、この手法では、まず図9の上半分に示すように、フォトセンサアレイ42の断片150の表面に向け堆積源224から均一に堆積ビーム226を送り、それによって均質な被覆222を成長させる。
【0036】
次いで、図9の下半分に示すように、フォトセンサアレイ42の断片150の表面をなぞるように、光源230が発する輻射光232によって被膜222上を走査し、これによってその屈折率に横変がある透過構造220を形成する。このとき使用する光源230は、例えば、x方向位置による発光強度Iの変化はないがy方向位置による変化がある紫外光源である(或いはそのような強度変化が生じるように紫外光源を用いる)。即ち、断片150の表面に対して平行な面上でx方向に延び且つy方向に並んだ多数の直線を考える。ここで用いる紫外光源は、例えば、それらの直線それぞれの上では発光強度Iが一定だが直線間ではその発光強度Iに違いがあり、例えば図中最左端の直線は最小強度Imin、最右端の直線は最大強度Imaxで発光する紫外光源である。このような光源230を用いて輻射光232を照射することによって、透過構造220の透過光の波長にはy方向位置による違い(横変)が生じる。即ち、形成される透過構造220を透過して断片150の各サブレンジセル152に到達する光の波長はそのy方向位置によって異なり、図示の如く最短波長λminから最長波長λmaxに至る範囲内の何れかの値になる。また、単一の光源230から同時に多数のフォトセンサアレイ42の断片150に向け且つ同一の強度パターンにて輻射光232を照射することもできる。そうする場合、複数個のアレイを適切に並べ光源230に対して適切に配置しさえすれば、単一の光源230を用いて透過構造220を複数アレイ分バッチ生産することができる。無論、アレイ上に二次元的な屈折率変化を形成することも可能である。
【0037】
図6〜図8に示す構成、即ちDBR(分布ブラッグ反射)ミラーのうち1個だけに僅かな透過特性勾配を付した構成においては、その下方にあるフォトダイオードアレイ等のフォトセンサアレイへの入射光スペクトラムが、そのフォトセンサアレイを構成するセル毎に異なり、従って各サブレンジセルに流れる光電流が、その隣のサブレンジセルに流れる光電流とは僅かに異なる大きさになる。従って、各セルの上方部分におけるDBRの透過特性が解っていれば、光電流の値から入射光の原スペクトラムを再現することができる。このとき、セルの個数によってスペクトラム再現点の個数が与えられ、従ってスペクトラム分解能も決まる。こうした原理によるスペクトラム再現は、セル間での透過率変化が急峻な波長にて最もうまくいく。
【0038】
図4に示した被覆を試作してみたところ、各光子エネルギサブレンジにおける光子透過率の典型値が約60%となった。これらの光子エネルギサブレンジの広さは、どのような構成の被覆を形成しその勾配をどの程度の勾配にするか、またフォトセンサアレイを構成する各サブレンジセルのサイズをどの程度にするか、等により決まり、波長でいうと例えば0.01〜数十nmの広さとなる。更に、高感度のフォトセンサを用いることによって、フォトセンサアレイ出力強度を顕著に高めることができる。
【0039】
図10〜図19に、薄板状物体を用い線状信号光や二次元信号光を発生させる手法の例、特にそれに使用する照明手法及び部品の例を幾つか示す。これらの例では照明によって信号光を得ているが、その必要がない場合もある。例えば、カメラで撮影された画像のように外部から与えられた信号光や、自発蛍光(self-fluorescence)等のように照明以外の励起形態によって得られた信号光をフォトセンサアレイに供給する場合、照明は必要ない。
【0040】
まず、図10〜図12に示す3個の例は、薄板状物体を照明して信号光を発生させる手法の例である。何れの手法においても単一の光源からの光によって物体を照らして信号光を発生させており、また何れの手法でも線状信号光や二次元信号光を発生させることができるが、その照明の仕方は例毎に異なっている。
【0041】
そのうち図10においては、光源252からの光によって物体250が照明され、物体250の表面における照明光の反射によって信号光254が生じている。この場合に照明対象にすることができる物体250は、その反射率が部位毎に異なる二次元的な表面を有する各種の物体である。例えば紙シート等のシート状媒体を照明対象にすることができ、更にはウェルプレートやバイオチップも照明対象になりうる。従って、この手法にて得られる信号光254は、物体表面の反射率を示す信号となる。
【0042】
次に、図11においては、光源272からの光によって物体270が背面から照明され、照明光がこの物体270を透過することによって、信号光274が生じている。従って、この構成においては、ウェルプレート、バイオチップ等のようにその吸収、内部反射等の特性が部位毎に異なり、その違いによって光の透過状況が変わる薄板状物体を、物体270とするのが適当である。従って、この手法にて得られる信号光274は、物体270の光吸収特性や内部反射特性を示す信号となる。
【0043】
そして、図12における物体290は光導波構造を呈している。この光導波構造内においては、光源292からの光による照明等、各種の励起に応じて光子が放射、散乱していく。物体290は、例えば、導波構造の内部又は近傍に流体を配し或いは導波構造の近傍に非流動性粒子を配したバイオチップとする。照明その他の形態による励起を受けると、物体290内にある粒子例えば検体が蛍光を発し、この蛍光が信号光294として出射される。この場合の信号光294は、従って、物体290の各部位間での蛍光スペクトラムの違いを表す信号となる。
【0044】
バイオチップを初めとする各種薄板状物体は、照明その他の励起手法を用いて蛍光を発生させる構成とすることもできる。そうした構成を用い、例えば孤立した又は単一の粒子の特徴を抽出し或いは低濃度の生物学的若しくは化学的物質の特性を調べる場合、それらの粒子又は物質が被着し又は含まれている物体とそれに対する励起手段との相互作用をできるだけ強めること、例えば光対標的相互作用強化法(enhanced light-target interaction)を励起手法として使用することが、とりわけ重要である。
【0045】
光対標的相互作用強化法は、例えば光導波構造を反共振導波構造(anti-resonant waveguide configuration)とすることによって実施できる。例えば、ガラスキャピラリ管内にエアロゾルを入れた構成或いはガラススライド間に液体膜を挟んだ構成を以て、反共振導波構造を実現することができる。これらを励起するには相応の電磁波を照射すればよい。
【0046】
図12においては、光源292からの光に応じて物体290内の物質例えば検体が蛍光を発する。その結果放射される光は特徴的な光子エネルギスペクトラムを有する光であり、そのうち一部がセンシングアセンブリ22方向に向かい信号光294の成分となる。この光は、(場合によっては何個かの光学部品を通過した上で)IC40上にあるフォトセンサアレイ42に達し、それを構成するサブレンジセルによって光子が検知されることとなる。
【0047】
このように、図10〜図12に示す何れの構成においても、発生した信号光254、274又は294がセンシングアセンブリ22へと送られる。その経路上には光学部品を設けることができるが、用途乃至構成によってはそうした光学部品の必要がない場合もある。
【0048】
次に、図13〜図19に示す例は、信号光とフォトセンサアレイとの間に相対走査運動を発生させる手法の例である。相対走査運動のうち第1のものは主相対走査運動と称しうるものであり、第2のものは副相対走査運動と称しうるものである。主相対走査運動は、フォトセンサアレイが全光子エネルギサブレンジで光子エネルギ情報を得るために必要な相対走査運動のことであり、副相対走査運動は物体のあらゆる部分即ちスポットから光子エネルギ情報を得たい場合に実行される相対走査運動のことである(従って副相対走査運動が不要な構成乃至用途もある)。主及び副相対走査運動は、例えば図16〜図19に示す構成では単一の走査器により実行可能である。但し、これらを実行するのに2個の走査器が必要な構成もありうる。
【0049】
また、図13及び図14に示す構成では、非常に細い線状の照明光で薄板状物体を照明し、例えば図示しないセンシングアセンブリ22を図示の構成に対して動かすことによって主相対走査運動を実行し、それによって各光子エネルギサブレンジにて情報を得ることができる。更に、照明光・薄板状物体間での副相対走査運動を実施することによって、その物体の各部から信号光を得てそれをセンシングアセンブリ22で検知することができる。こうした構成では、照明光の線の太さによりy方向空間分解能が決まり、使用する光学部品320の構成次第でx方向分解能が決まる。これに対し、図15〜図19に示す構成では、物体から得られる二次元信号光をある種の光学部品にて線状信号光(図15)又はまた別の二次元信号光(図16〜図19)に変換し、変換により得られた信号光によってセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42を走査するようにしている。
【0050】
図13〜図15に例示する手法即ち照明及び光学部品の併用により線状信号光を得る手法は、基本的に、直線を模した形状の光即ち線状照明光を用いる第1の手法と、直線を模した形状の開口即ち線状開口を用いる第2の手法とに、大別することができる。
【0051】
第1の手法を採る場合、照明野サイズ即ち照明光の断面サイズによって信号光のサイズが決まり、使用する光学部品によってその延長方向(x方向)沿い分解能が決まる。従って、y方向分解能を所望値まで高めたければ照明光の線幅をそれ相応に細くする必要があり、x方向分解能を確保したければそれ相応の光学部品を用いる必要がある。また、物体全体をカバーしたければ、照明対象物体と照明用部材及び光学部品とを相対運動させる副相対走査用走査器を設ければよい。
【0052】
第2の手法を採る場合、照明野サイズを信号光サイズより大きめに設定すると共に、線状開口を提供する光学部品によって照明対象物体からの光のサイズを絞って線状信号光に変換し、且つその光学部品によってx方向分解能を画定する。この場合にも、照明野と開口形成用光学部品の間、即ち照明対象物体と照明用部材及び開口形成用光学部品との間に副相対走査運動を発生させるには、副相対走査用走査器を設ければよい。
【0053】
他方、図16〜図19に例示する手法即ち二次元物体を照明して二次元信号光を発生させる手法では、レンズ又はそれに類する光学部品を使用して照明対象物体の像を二次元フォトセンサアレイ42上に結び、x方向分解能、y方向分解能共にこの結像用光学部品によって画定する。また、結像用光学部品によってフォトセンサアレイ42上に結ばれる像においては、常に、照明対象物体上の個々の場所が照明対象物体上でのx方向位置及びy方向位置に対応したx方向位置及びy方向位置に結像する。従って、この手法によれば、照明対象物体上の様々な場所からの光子を同時に(但し光子到来位置のy方向位置に応じて異なる光子エネルギサブレンジにて)検知することができる。また、主相対走査運動によって照明用部材、照明対象物体及び光学部品と検知用のフォトセンサアレイ42との位置関係を略y方向に沿い変化させることにより、フォトセンサアレイ42上の各サブレンジセルに射突する光子の発生元が照明対象物体上のある場所から次の場所へと変化していくので、主相対走査運動を完遂することにより全ての光子エネルギサブレンジにて且つ全ての場所について、光子検知を実行することができる。
【0054】
以上概括した相対走査運動発生手法のうち図13に示す例においては、画像を担持する適当なシート状媒体例えば紙シート310が、その画像担持面を下に向けて配置されており、例えば白色LED(発光ダイオード)に適当な光学系を付加した構成を有する光源312から出射される線状照明光によって、その下側から照明されている。従って光源312によって照明されるのはシート310のうちのある線状部分316であり、それによって発生した線状信号光314即ち図2に示した信号光20と同様の形状を有する信号光は、例えばSelfocレンズアレイ320等の光学部品を介してセンシングアセンブリ22等に送られる。このSelfocレンズアレイ320によって線状信号光314のx方向分解能が決まる。また、シート310の全体像を得るには、光源312とシート310とを矢印線322により示す如く相対運動例えば副相対走査運動させることによって、それぞれこの線状信号光314と同様な形状を有する複数通りの線状信号光を、シート310上からくまなく得る必要がある。
【0055】
また、図14に示す例においては、物体350が光源352により背面から照明されている(前面からでもよい)。照明される物体350は、例えば生体標本や化学標本の解析に使用される96ウェルプレートのように、生物学的解析又は化学的解析の結果を光学的な形態で提示するアレイ等である。前面、背面のどちら側から照明するにせよ、この例においては、図13の例と同様に線状の照明光を照射することによってプレート状の物体350上の線状部分356にて線状の信号光354を発生させ、Selfocレンズアレイ320を介しセンシングアセンブリ22に送ることができる。この例でも、全体像を得るには、光源352と物体350とを矢印線360により示す如く相対運動例えば副相対走査運動させればよい。
【0056】
更に、図15に示す例においては、図10〜図12を参照して説明した方法のうち何れかで物体400を照明することにより、二次元的な広がりを有する信号光402を発生させる。また、図示されている光学部品404は、x方向に延びたスリット412を有する二次元的に広がった遮光層410と、図13及び図14に示したアレイ320と同様の構成を有しスリット412上に配されたSelfocレンズアレイ420とを、併有している。従って、二次元的な信号光402はスリット412により線状化され、そのx方向分解能がSelfocレンズアレイ420の構成により規定された線状信号光424として、センシングアセンブリ22に送られる。また、図中矢印線422により示す如く物体400及び光学部品404を相対運動例えば相対走査運動させることにより、線状信号光424の発生元のy方向位置を変えること、即ち線状信号光424を順繰りに複数通り発生させることができる。
【0057】
また、図13〜図15に例示した手法を応用すれば、例えば点状光源からの照明光により点状信号光を発生させることも、また任意形状光源からの照明光により発生させた信号光を点状信号光に変換することも、可能である。
【0058】
次に、図16に示す例においては、物体450を照明することにより二次元的な信号光452を発生させる。この例では、センシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42上に照明対象物体450の鮮明な像が結ばれるよう、信号光452の成分光を合焦させる光学部品として従来型のレンズ460を配してある。従って、物体450上の各照明箇所からの光子は、フォトセンサアレイ42上の対応するサブレンジセルにて、またそのサブレンジセルに係る光子エネルギサブレンジにて、検知される。また、物体450・フォトセンサアレイ42間の距離がレンズ460の焦点距離の2倍になるようそれらを配置した場合、物体450の大きさと、フォトセンサアレイ42上に結ばれた像の大きさとが、1対1の比率になる。勿論、物体450がより大きく結像するよう光学部品を用いることもより小さく結像するよう用いることもできる。像のサイズの大小によって、実現される分解能が高低し、また所要フォトセンサアレイサイズが増減する。
【0059】
また、従来型のレンズ460を用いた結像プロセスでは、不具合が生じることを防ぐため、レンズ460を大抵の結像対象物体よりも大きめにしておくのが常套手段である。こうした不便をなくすには、レンズ460をSelfocレンズ又はGRINレンズに置き換えればよい。例えば、図17に示す例においては、図16に示した例と同様、物体500を照明することにより二次元的な信号光502を発生させているが、結像用の光学部品としては二次元のSelfocレンズアレイ510が用いられている。こうした構成においても、光学的出力としては、図16に示した例とほぼ同じ出力が得られる。
【0060】
図18に、図17に示した例の一実施形態をより詳細に示す。この実施形態においては、物体500を照明することによって二次元的な信号光530〜534を発生させており、また二次元的なSelfocレンズアレイ510を用い物体500の像をセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42上に結んでいる。
【0061】
副相対走査運動時には、物体500が矢印線512により示される方向に動くにつれ、物体500上の各所例えば図中の場所520、522及び524は照明野内を過ぎっていく。場所520、522及び524からは反射現象、透過現象、蛍光現象等により光子が放射され、それら光子は場所毎に光線530、532又は534を形成してフォトセンサアレイ42上に入射し、入射先のサブレンジセル540、542又は544により検知される。フォトセンサアレイ42の各サブレンジセルから得られる読出値は、物体500上の対応する場所例えば場所520、522又は524についての情報のうち、そのサブレンジセルに係る光子エネルギサブレンジに属するスペクトラムについての情報として、使用することができる。また、物体500がフォトセンサアレイ42の上方を通り抜けていくとき物体500上の複数の場所がフォトセンサアレイ42上の別々のサブレンジセル上を動いていくため、それらの場所についての情報をフォトセンサアレイ42上の対応する別々のサブレンジセルにて同時に検知、取得できる。
【0062】
図19に、図18に示した実施形態に代わる実施形態を示す。この実施形態においては、短い間隔で連なるよう物体500に設けられている一群の場所が、照明野内を動いていく。
【0063】
図19においては、副相対走査運動時に、先頭の場所560と最後尾の場所564とその間にある何個かの場所562とを含む一群の場所が、照明野内を過ぎっていく。反射、透過乃至蛍光により場所560、562及び564から放射される光子は、それぞれ光線570を形成する。形成された光線570はSelfocレンズアレイ510を通過し、その大部分が光子放射元の場所560、562及び564毎に別々のサブレンジセルへと入射していく。同じフォトセンサアレイ42を構成する近隣のサブレンジセルに光子が入射することもあり得るが、その個数は少数である。フォトセンサアレイ42の各サブレンジセルから得られる読出値は、物体500上の対応する場所例えば場所560、562又は564についてのスペクトラム情報の一部を構成する。しかも、物体500がフォトセンサアレイ42の上方を通り抜けていくときそれら小間隔で連なる一群の場所が別々のサブレンジセル上を過ぎっていくので、それらの場所についての情報を同時並行的に得ることができる。
【0064】
図20に相対走査運動発生システムの構成を示す。この図に示すシステム600は、相対走査運動を伴う光検知によってスペクトラム情報を取得することが可能なシステムの例である。また、図示のシステム600は、バス604を介し各種構成部材をCPU(中央処理ユニット)602に接続した構成を有しているが、これは一例であって、使用できるアーキテクチャは多種多様である。
【0065】
システム600は、バス604を介しCPU602に接続される部材としてまず外部I/O(入出力部)606及びメモリ608を備えている。それらのうち外部I/O606は、CPU602とシステム600外の装置との間で通信を行えるようにする部材である。インタラクティブな形態でこのシステム600を運用する際には、例えばモニタやキーボード等、それに適したユーザインタフェースが外部I/O606に接続される。また、バス604には、システム600に内蔵される部材やシステム600に外付けされる部材を含め、更に他の部材を接続することができる。それらのうち集積回路I/O610は、CPU602と各ICとの間で通信を行えるようにする部材である。この図では、ICが第0IC612から第M−1IC614までM個設けられており、そのうちの第mIC616にはその内部のフォトセンサアレイ618も描かれている。同様に、走査器I/O620は、CPU602と相対走査運動発生用の各種装置、例えばモータやセンサとの間で通信を行えるようにする部材である。この図ではその種の装置が第0装置622から第N−1装置624までN個設けられている。
【0066】
また、メモリ608としてはプログラムメモリ630等が設けられており、このプログラムメモリ630内には、CPU602により実行される走査ルーチン640及び読出結合ルーチン642が格納されている。
【0067】
走査ルーチン640実行時には、CPU602は、走査関連の装置622〜624との通信等を行う。例えば、一群のセンサから信号を受け取り、受け取った信号に基づき走査ルーチン640による計算を行い、目的とする走査運動を実現するのにどのような運動が必要かをその計算結果に基づき判別し、そして目的とする信号光・フォトセンサアレイ42間相対運動が好適に発生するよう信号を送って一群のモータを作動させる。
【0068】
読出結合ルーチン642実行時には、CPU602は、第0〜第M−1IC612〜614それぞれに信号を送り、各サブレンジセルから各光子エネルギサブレンジにおける光子量の検知結果を読み出す。読み出された検知結果、即ち信号光中の各部分例えば個々のスポットについての検知結果は、同一の部分乃至スポットについての検知結果群により図示しない適当なデータ構造(例えばデータアレイやデータリスト等の構造)が形成されるよう、部分乃至スポット毎に結合されて格納される。即ち、読出処理によって各光子エネルギサブレンジ毎に得られた光子量検知結果情報を、結合処理に供して得られるスペクトラム情報が、場所毎に格納される。こうして格納されたスペクトラム情報は、図2に示す個々の場所Lmを例としていえば、その場所Lmに現れる光子エネルギ分布Dmを良好に近似するものとなる。なお、満足のいく分解能を得るには、それ相応に短い周期で検知を行いそれ相応に高い速度で読出を行うことが必要である。こうして所与の部分乃至場所Lmについて全検知結果の読出及び結合処理が済んだら、CPU602はその結果を外部I/O606を介し出力する。或いは、照明野全体に亘り光子量検知結果を結合して単一のデータ構造を作成し、その結果を外部I/O608を介し適当なストリーミング動作により出力するようにしてもよい。
【0069】
こうしたシステム600を実現するには、相対走査運動を実行する走査器が必要である。そのための走査器は様々な構成を採りうる。図21〜図23に、図20に示したシステム600にて採用しうる走査器の仕組みについて、種々の例を示す。
【0070】
まず、図21に例示する装置700は、物体710を照明することによって点状又は線状の信号光を発生させ、その信号光によってセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42(図1参照)を走査、即ち当該フォトセンサアレイ42を横切る経路に沿ってその信号光でフォトセンサアレイ42の表面をなぞらせる仕組みであり、且つ、主相対走査運動を発生させるための内部走査器720と、副相対走査運動を発生させるための外部走査器702とを有している。即ち、まず外部走査器702は、副相対走査運動が発生するよう支持部材704、支持部材706又はその双方を駆動する。支持部材704は物体710、例えば紙シート、バイオチップ、ウェルプレート等を支持しており、支持部材706は内部走査アセンブリ712を支持しており、内部走査アセンブリ712は照明光源732や光学部品734やセンシングアセンブリ22と共に内部走査器720を内蔵しているので、支持部材704、支持部材706又はその双方を駆動することによって、物体710に対する照明光源732、光学部品734、センシングアセンブリ22及び内部走査器720の相対走査運動、即ち副相対走査運動を発生させることができる。
【0071】
また、内部走査器720は、主相対走査運動が発生するよう支持部材722、支持部材724又はその双方を駆動する。支持部材722は信号光アセンブリ730を支持しており、支持部材724はセンシングアセンブリ22を支持している。ここでいう信号光アセンブリ730とは、信号光が好適に発生するよう協調して動かす必要がある一群の部材、例えば照明光源732や光学部品734のことである。従って、支持部材722、支持部材724又はその双方を駆動することにより、主相対走査運動を発生させることができる。
【0072】
信号光アセンブリ730内に設けられた照明光源732は、図示の如く点状又は線状の照明光を出射する。この照明光は物体710との相互作用例えば反射によって、点状又は線状の信号光になる。また、図中の光学部品734は例えば図13に示すSelfocレンズアレイを含んでおり、図1に示す如くフォトセンサアレイ42に対する主相対走査運動を実行する際、信号光のx方向分解能がこの光学部品734によって画定される。
【0073】
装置700の仕組みは、このように、内部走査器720によって物体710の各場所毎に全光子エネルギサブレンジを走査しつつ、外部走査器702によって物体710の各場所を走査することにより、物体710の全ての場所から全ての光子エネルギサブレンジについての情報を取得する、という仕組みである。図20に示した走査ルーチン640は、この装置700を制御するための信号を発生させる。発生させる信号の種類や信号の発生のさせ方は、走査ルーチン640の組み方次第であり、様々に定めることができる。例えば、物体710上の全ての場所にて信号光が発生するように外部走査器702を制御し、各場所毎に信号光・フォトセンサアレイ42間相対走査運動即ち主相対走査運動が発生するように内部走査器720を制御することが、可能である。即ち、主相対走査運動が発生するように内部走査器720を制御してフォトセンサアレイ42内の各サブレンジセル群に信号光を供給し、それらサブレンジセル群が順次物体710上の別の場所からの信号光により走査されるよう外部走査器702を制御することができる。
【0074】
図22に示す装置750は別の仕組みによる装置の例であり、物体760を照明することによって二次元信号光を発生させ、その信号光によってセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42の表面を図1に示す走査経路沿いになぞらせる構成である。同図中の装置750に設けられた走査器は1個、即ち支持部材754、支持部材756又はその双方を駆動することによって相対走査運動を発生させる走査器752だけである。支持部材754は例えば紙シート、バイオチップ、ウェルプレート等の物体760を支持しており、支持部材756は走査センシングアセンブリ762を支持しており、走査センシングアセンブリ762は相対走査運動を適切に発生させるため協調して動かす必要がある一群の部材から構成されている。
【0075】
走査センシングアセンブリ762内に設けられている照明光源764は、図示の如く二次元的な広がりを有する照明野内を照明する。この照明野内には物体760の下面全体又は大半が含まれている。照明光は物体760により反射され、それによって二次元信号光が発生する。光学部品766は信号光のx方向分解能及びy方向分解能を画定する。こうした動作は、走査センシングアセンブリ762内にあるセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42に対し、走査器752によって信号光を相対走査運動させる間中、実行される。
【0076】
装置750を制御する際、図20に示した走査ルーチン640は、例えば、走査器752を制御することによってフォトセンサアレイ42に対する信号光の相対走査運動を発生させ、それによって、フォトセンサアレイ42の表面を適切な横断走査経路に沿って信号光によりなぞらせる。読出結合ルーチン642は、例えば、その走査経路沿いの各位置における光子量検知結果を読み出し、それら検知結果のうち物体760上の同一場所についての検知結果を走査速度に基づきつつ結合させて、スペクトラム情報を示す適当なデータ構造にまとめる。
【0077】
図23に示す装置800は、相応の方法によって得られた二次元信号光によって、図1に示した走査経路、即ちセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42を過ぎる経路をなぞらせる仕組みの装置であり、図示の如く備えている走査器は1個だけ、即ち支持部材804、支持部材806又はその双方を駆動することによって相対走査運動を発生させる走査器802だけである。支持部材804は、相対走査運動を適正に発生させる上で互いに協調して動かさねばならない一群の部材からなる光学アセンブリ810を支持しており、同様に、支持部材806はセンシングアセンブリ22を支持している。
【0078】
光学アセンブリ810内の信号光源812は、スペクトラム情報を伴った信号光を出射する部材であり、様々な形態にて実現することができる。例えば、何らかのまた何個かの面、静止物体又は低速物体を図10〜図12に示した如き形態で照明する光源として、構成することができ、また例えば、外部から信号光を取り込んで整形乃至変形し光学アセンブリ810に送り込む開口等、各種の適当な光学部品によって、実現することができる。
【0079】
光学部品814は、図22に示した走査センシングアセンブリ762と同様、センシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42に対する相対走査運動の間、信号光のx方向分解能及びy方向分解能双方を画定する部材であるが、走査センシングアセンブリ762とは違い検知機能を備えていない。検知機能を提供するセンシングアセンブリ22は、光学アセンブリ810外に設けられている。従って、走査器802により実現される相対走査運動は、光学アセンブリ810・センシングアセンブリ22間の相対走査運動となる。
【0080】
装置800を制御する際には、図20に示した走査ルーチン640及び読出結合ルーチン642を実行すればよい。また、例えばカメラ等とこの装置800を併用する場合、走査器802に対しセンシングアセンブリ22を動かす操作のみでセンシングアセンブリ22・光学アセンブリ810間相対走査運動が実行されるよう、ひいてはカメラ等から入射してくる外部信号光がセンシングアセンブリ22に対し相対走査運動するよう、光学アセンブリ810を走査器802に対し常時相対固定しておくとよい。
【0081】
更に、図21〜図23に例示した装置700、750及び800においてはそれぞれ何個かずつ支持部材が使用されている。各図中、各支持部材はその支持元の走査器から延びた片持ち梁により実現されているが、一般論としては、支持元の走査器によって駆動・制御することができるよう当該走査器に連結されていれば足りる。即ち、そのサイズ、形状、構成素材等を含む各支持部材の構造や、各支持部材をその支持元の走査器に連結する手段には、取り立てて制約が課されておらず、従って各支持部材は様々な構造乃至支持形態にて実現することができる。更に、各支持部材とその支持対象物との連結は、直接か間接かの別等を問わず、適切な形態である限りどのような形態でもよい。例えば、支持対象物を好適に載置しうるプラテンを支持する等、走査時支持を好適に実現できる形態でありさえすれば、支持対象物の支持や支持対象物との連結をどのような形態で実現してもかまわない。また、一般論としては、相対走査運動は複数個の支持部材のうち1個又は複数個を駆動することによって実現できるのであるから、用途次第では、支持部材のうち何個か(但し全数ではない)を固定型としても差し支えない。
【0082】
そして、図1〜図23に示した構成においては、上述のもの以外に、多種多様な手法を使用することができる。
【0083】
例えば、複数通りの線状信号光を同時使用してフォトセンサアレイ42上を走査してもよい。どの信号光によって得られた検知結果なのかを識別、特定できるよう検知周期を設定しまたそれが可能な検知手法を使用することによって、こうした走査即ち複数線状信号光による対単一走査経路同時走査が可能になる。但し、これを実施するには、同一フォトセンサアレイ42上の同一走査経路上にある全てのサブレンジセルから情報を読み出してその結合によりスペクトラム情報を得るため、またそうした処理をx方向沿いにある各場所毎に実行するため、それなりの演算操作が必要となろう。明らかな通り、この手法によれば、複数の線状信号光を使用できる分、x方向解像度及びy方向解像度共に高くなる。また、使用する複数通りの信号光間にある程度の間隔を設けた場合、各信号光で別々のフォトセンサアレイを走査することや、各信号光で別々の走査を実行する構成も実現可能である。そうした構成においても、上記同様にして、1個のフォトセンサアレイに対する1回の走査で二次元的な照明野全体についての完全なスペクトラム情報を得ることが可能である。
【0084】
先に例示説明した何れの装置においても、信号光の分光計測等の機能を実現可能なコンポーネントをコンパクト且つ安価に実現することができ、しかも高い空間分解能及びスペクトラム分解能を得ることができる。更に、これらの装置は、既に消費者向け市場に出回っているものも含め、既存のスキャナや既存のプリンタに組み込むことができる。その検知結果は多数のICから迅速に且つ並列的に読み出すことができる。広い光子エネルギレンジにて光子を検知できるようにするには、それ相応の被覆素材を用いると共にそれ相応の個数のICを使用すればよい。原理的には、紫外域から遠赤外域更にはTHzオーダの周波数に相当する波長まで、広い波長域をカバーすることが可能である。
【0085】
上述した各種装置は、走査機能を有しているため、例えば文書スキャナ、文書コピア、ディジタルカメラ等、各種イメージング装置にて使用することができる。上述した各種走査型装置はまた、分光光度計等の色制御乃至プロセス制御用の分光器向けに構成することや、二次元フォトニッククリスタルセンサ乃至バイオセンサ等の光学センサ複数個からの並列読出向けに構成することも、可能である。そうした走査型装置が併設された分光器や光学センサは、固体例えば半導体素材を対象として或いは生体粒子その他の検体を含有する液体乃至エアロゾルを対象として分光計測を実行する際等に、使用することができる。相対運動は走査以外の様々な形態にて実行することができる。そして、フォトセンサアレイ及び信号光源は上述以外のものも含め様々な構成とすることができる。
【0086】
上述した各種の部材は、何れも上述とは異なる様々な形状、寸法、特性数値、特徴品質等を有するものとすることができる。
【0087】
先に例示した構成のうち幾つかにおいては、フォトセンサアレイや透過構造等を特定の素材によって形成しているが、それらの部材を例えば複数個の副層を組み合わせた層構造として形成する際、上記以外の素材も使用可能であり、また使用できる素材は数多くある。
【0088】
更に、各サブレンジセルが互いに別々の光子エネルギサブレンジにて光子を検知するようフォトセンサアレイを構成する手法としては、上述のように透過構造を形成する手法のほか、様々な手法がある。
【0089】
また、先に例示した構成のうち幾つかにおいては、導波構造内に光を入射することによりその導波構造を発光させているが、自発的に発光する物体(self-emitting/auto-fluorescing object)乃至粒子を導波構造内に入れておけば、入射光無しでも導波構造を発光させることができる。また、発光機構としては、ルミネッセンス、フォトルミネッセンス、ケモルミネッセンス、非弾性散乱等、様々な機構を使用することができる。更に、導波手法として示した反共振導波技術は使用できる種々の導波技術の一種に過ぎず、使用できる導波技術は連続的なものも間欠的なものも含め数多くあり、それぞれ各種パラメタを適切な値に調整設定すれば反共振導波を実現することができる。
【0090】
更に、上述のもの以外の物体を照明対象とすることもできる。どのような仕方で発生させた信号光でも、上述した手法による光検知の対象にすることができる。
【0091】
また、図20に例示した構成ではCPUを使用しているが、これに代え、他種マイクロプロセッサ等、適切な他種部材を用いることもできる。
【0092】
そして、先に例示した各種の構成においては、総じて、様々な部材を様々な形態で製作及び使用しその部材により特定の動作を実行させているが、それらの部材は上述の動作とは異なる形態で動作させることもできるし、上述の動作範囲乃至数値範囲とは異なる動作範囲乃至数値範囲にて動作させることもできるし、また上述以外の動作をそれらの部材の動作に付加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】センシングアセンブリ内に設けられたフォトセンサアレイ及びこれに対する信号光の相対走査運動を示す模式的側面図である。
【図2】図1における対フォトセンサアレイ線状信号光相対走査運動を示す模式的上面図である。
【図3】図1に示したセンシングアセンブリの平面構造を例示する模式的平面図である。
【図4】図1に示したセンシングアセンブリの断面構造、特に光透過横変特性を有する透過構造をフォトセンサアレイに添えたものを例示する模式的断面図である。
【図5】図4に示した透過構造の光透過横変特性を表すグラフである。
【図6】図4に示したものとは異なる透過構造を設けたセンシングアセンブリの断面構造を例示する模式的断面図である。
【図7】図6に示した透過構造の光透過横変特性を表すグラフである。
【図8】図1に示したセンシングアセンブリを得る際使用できる透過構造形成手法の第1例を示す図である。
【図9】図1に示したセンシングアセンブリを得る際使用できる透過構造形成手法の第2例を示す図である。
【図10】対物照明による線状信号光発生方法、特に紙シート等の物体によって照明光を反射させる方法を例示する模式的斜視図である。
【図11】対物照明による線状信号光発生方法、特に96ウェルアレイ等の薄板状物体を透過するよう照明する方法を例示する模式的斜視図である。
【図12】対物照明による線状信号光発生方法、特にバイオチップ等の薄板状物体内に照明光を入射し導波させる方法を例示する模式的斜視図である。
【図13】線状信号光発生用照明方法及び光学部品を例示する模式的斜視図である。
【図14】図13に示したものに代わる例を示す模式的斜視図である。
【図15】二次元信号光から線状信号光を生成する光学部品を例示する模式的部分斜視図である。
【図16】センシングアセンブリ上に図2の如く二次元信号光を合焦させる光学部品を例示する模式的部分斜視図である。
【図17】図16に示したものに代わる例を示す模式的部分斜視図である。
【図18】図17に示した光学部品の第1実施形態を仔細に示す模式的部分斜視図である。
【図19】図17に示した光学部品の第2実施形態を仔細に示す模式的部分斜視図である。
【図20】図1に示した相対走査運動を制御可能なシステムを例示する模式的ブロック図である。
【図21】外部走査器及び内部走査器を備えその内部走査器により図1に示した主相対走査運動を行わせる装置の第1例を示す模式図である。
【図22】図1に示した相対走査運動を行わせる装置の第2例を示す模式図である。
【図23】図1に示した相対走査運動を行わせる装置の第3例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0094】
20,254,274,294,314,354,402,424,452,502 信号光、40,612,614,616 IC、42,618 フォトセンサアレイ、44 サブレンジセル群、50,52 主相対走査方向、60 サブレンジ設定曲線、106,152,540,542,544 サブレンジセル、322,360,422,462,512 副相対走査方向、600 システム、700,750,800 装置、702,720,752,802 走査器、L1,Lm,LM 場所、M 場所の個数、N サブレンジセル群の個数、Y1,Yn,YN フォトセンサアレイ上のy方向位置、λ 波長、λ1,λn,λN 各サブレンジの代表波長。
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC(集積回路)上に形成されたフォトセンサアレイを用い信号光に含まれる光子又はそのエネルギ(photon energy)を検知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されている分光装置は、複数個の感光素子から構成された光電薄膜アレイと、連続可変な光学フィルタと、を有するスペクトラム分解センサを備えている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第5166755号明細書
【非特許文献1】Nicholas J. Goddard, Kirat Singh, Fatah Bounaira, Richard J. Holmes, Sara J. Baldock, Lynsay W. Pickering, Peter R. Fielden and Richard D. Snook, "ANTI-RESONANT REFLECTING OPTICAL WAVEGUIDES (ARROWS) AS OPTIMAL OPTICAL DETECTORS FOR MICROTAS APPLICATIONS", [Online] Internet URL: http://www.dias.umist.ac.uk/NJG/Abstracts/MicroTAS/MicroTas2.htm
【非特許文献2】K. Singh and N.J. Goddard, "Leaky ARROW Waveguides for Optical Chemical and Biosensors", Abstract Submitted to Biosensors 1998, [Online] Internet URL: http://www.dias.umist.ac.uk/NJG/Abstracts/Biosensors/ARROW-Biosensors.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来用いられていた光情報取得方法には幾つかの問題点があった。第1に、急峻に変化する信号光についてスペクトラム情報を得るには大規模で高価な装置が必要であり、そうした装置無しではスペクトラム情報取得が困難であった。第2に、書類等の薄板状物体(two-dimensional object)からのスペクトラム情報取得に使用しても、スペクトラムをさほど精細には分解できなかった。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みなされた発明であり、ICを用いた信号光検知技術の改良を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに、本発明の一実施形態に係る信号光検知方法は、(1)集積回路に内蔵され光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイと、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含む信号光との間に、相対走査運動を発生させることにより、それら複数個のセルのうち走査経路沿いにあるものが信号光内光子を検知できるよう、それぞれ1個又は複数個のセルを含む複数個の経路部分からなる走査経路に沿って信号光でフォトセンサアレイを横断走査させるステップと、(2)各経路部分がそれぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個の経路部分が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている走査経路にて、経路部分毎に且つその経路部分内のセルにより、信号光のうちその経路部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知するステップと、を有する。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る装置は、(1)それぞれ光子を受け取ってその量を検知するセルを複数個含むフォトセンサアレイを内蔵する集積回路と、(2)このフォトセンサアレイと、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含む信号光との間に、相対走査運動を発生させることにより、上記複数個のセルのうち走査経路沿いにあるものが信号光内光子を検知できるよう、それぞれ1個又は複数個のセルを含む複数個の経路部分からなる走査経路に沿って信号光でフォトセンサアレイを横断走査させる走査器と、を備え、(3)各経路部分がそれぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個の経路部分が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている走査経路にて、経路部分毎に且つその経路部分内のセルにより、信号光のうちその経路部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知する装置である。
【0008】
そして、本発明の一実施形態に係る方法は、(1)集積回路に内蔵され光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイに対して第1方向沿いに相対運動させつつ、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含み且つ複数個の場所に広がる信号光を、そのフォトセンサアレイにて受光するステップと、(2)第1方向に沿って配置され、それぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている複数の部分それぞれについて、且つその部分内のセルにより、信号光のうちその部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知するステップと、(3)上記場所又はその組合せ毎に、第1方向沿いの各部分内のセルによる光子量の検知結果を寄せ集めて組み合わせることにより、当該場所又はその組合せにおける信号光スペクトラムについての情報を取得するステップと、を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、まず本発明の特徴である相対走査運動について図1及び図2を参照しながら説明し、次いでその相対走査運動を実行するために使用されるIC及びセンシングアセンブリの特徴について図3〜図9を参照しながら説明する。また、本発明又はその実施形態の動作を記述するため、以下、信号光・フォトセンサアレイ間「相対運動」、信号光・他部材間「相対走査運動」等の用語を使用する。即ち、以下説明する実施形態においては、信号光が照明対象物体上の別々の場所(スポット)に由来する複数通りのスポット光(以下単にスポットともよぶ)を形成し、それらがフォトセンサアレイ上に入射する。信号光・フォトセンサアレイ間「相対運動」(relative movement/motion)とは、フォトセンサアレイ上へのスポット入射位置のうち少なくとも1個が変化することをいう。実施形態においては、こうした相対運動を、総じて信号光発生用部材のうち何個かの運動、信号光入射先たるフォトセンサアレイの運動、又はその双方の組合せによって発生させる。
【0010】
また、信号光・他部材間「相対走査運動」(relative scanning movement/motion)とは、信号光を形成するスポットのうちあるものが所定移動経路、例えばフォトセンサアレイを横断する(表面をなぞること;以下同様)経路、照明対象物体表面を横断する経路、信号光に作用する光学部品を横断する経路等を辿って移動するよう、信号光が当該他の部材に対して“走査的に”相対運動することである。
【0011】
図1に示すように、センシングアセンブリ22には信号光20のうち一部が入射している。同図中、光線32として表されているのは信号光20のうちセンシングアセンブリ22に入射するスポット光30であり、このスポット光30はスポットSに由来している。センシングアセンブリ22はこのスポット光30内の光が入射するIC40を備えており、IC40は更にセル群44から構成されたフォトセンサアレイ42を備えている。また、図中の矢印線50及び52は、信号光20・フォトセンサアレイ42間相対走査運動を表している。この相対走査運動は、スポット状の光線32の移動(矢印線50)、フォトセンサアレイ42を含むセンシングアセンブリ22の移動(矢印線52)又はその組合せによって実現される。
【0012】
また、スポットS内には、信号光20の生成、伝搬に関与する各種部材例えば光源、照明対象物体、(もしあるなら)照明対象物体・フォトセンサアレイ間所在光学部品等の作用によって、光子エネルギ分布が生じる。また、これら光源、照明対象物及び光学部品は様々な形態にて実現されうる。例えば、従来から知られている各種の結像レンズ(例えば屈折レンズ)、回折光学系(例えばフレネルレンズ)、マイクロレンズ、傾斜屈折率レンズ(例えばGRINやSelfocレンズ)等の光学部品若しくは光学部品群を、照明対象物体・フォトセンサアレイ間に配置することができる。なお、GRINは商標、Selfocは登録商標である。煩雑さを避けるため、以下の欄ではこれらについての商標表記・登録商標表記を省略する。
【0013】
スポットSにおけるこうした光子エネルギ分布をフォトセンサアレイ42によって情報として取得するため、ここでは、フォトセンサアレイ42を構成する各セル群44にて検知可能な光子の波長域即ち光子エネルギサブレンジを、セル群44毎に違えている。即ち、図中曲線60で示されているように、そのy方向(横方向)位置によって光子エネルギサブレンジが異なっている。本願ではこの種の変化乃至相違を「横変」と称している。また、ここで例示されている曲線60は、フォトセンサアレイ42内最左端セル群44にて検知可能な最短波長λminから同最右端セル群44にて検知可能な最長波長λmaxまで検知可能波長λが単調増加することを示す直線であり、従ってこの図のフォトセンサアレイ42を使用可能な光子エネルギレンジ即ち光子検知可能波長域全体は、最短波長λminから最長波長λmaxに及んでいる。但し、この曲線60は単なる例に過ぎず、光子エネルギサブレンジの横変具合を表す関数は、y方向位置を変数とする適当な関数とすることができる。
【0014】
図2に、フォトセンサアレイ42に対する信号光20の相対走査運動をより詳細に示す。同図中の信号光20は線状信号光であり、x方向に沿って延びている。x方向はy方向に対しほぼ直交している。y方向は信号光20がフォトセンサアレイ42を横切っていく方向、即ち走査方向である。信号光20は、y方向沿いに延びる走査経路に沿ってフォトセンサアレイ42の表面をなぞってゆき、フォトセンサアレイ42に対する射突位置をこの走査に伴い変化させてゆく。同図中、Y1〜YNはフォトセンサアレイ42に対する信号光20の射突位置のy座標値である。また、信号光20はx方向に沿ってM個の部分L1〜LMに分かれている。空間的に分離しているのでこれらの部分L1〜LMを「場所」(location)と呼ぶ。場所L1〜LMはそれぞれ画素に相当するものであり、その個数Mはx方向における信号光20の空間的広がり(線の長さ)を表している。例えばM=1という極端なケースなら、信号光20は点状信号光、即ち単一の場所L1のみからなる光である。また、信号光20は線状ではなく二次元にすることもできる。その場合、使用される二次元信号光は、ちょうど図2に示したものと同じく複数個の場所を含みx方向に延びる線状信号光を、y方向沿いに複数個横並びにして寄せ集めたものに相当する。二次元信号光を使用する場合も、フォトセンサアレイ42の表面をなぞるようy方向に沿って射突位置を動かしていく。即ち、y方向に沿った走査運動は線状信号光20でも二次元信号光でも同様に行う。
【0015】
場所Lmは信号光20の構成要素であり、先に示した定義によるスポット光30の一例に該当する。また、装置構成や実施環境、照明対象物等が決まると各場所Lmにおける光子エネルギ分布Dmが決まる。即ち、L1にはD1、LmにはDm、LMにはDM、というように一般に場所毎に異なる光子エネルギ分布が現れる。また、ここで「場所」という用語を用いていることから理解できるように、各スポット光30は照明対象物体上の互いに別々の場所に由来しフォトセンサアレイ42上の別々の場所に射突する。後に様々な手段を示して説明するように、信号光20及びその成分であるスポット光30を発生、形成させる際、フォトセンサアレイ42上にてこれら信号光20乃至スポット光30の射突位置をどのようにまたどの程度細分化できるかによって、信号光20の分解能を画定、確保することができる。また、以下の説明を参照することによってより全面的に理解できることとなろうが、相対走査運動方向即ちy方向における線状信号光20や二次元信号光の広がりを防ぎ、或いは抑えることが、望まれる。即ち、信号光成分がその集中状態を保ち、各スポット光30がそれに対応するセル群44の検知エリア内に収まり、対応する光子エネルギサブレンジでの光子検知が行われるようにすることが、有益である。
【0016】
場所L1〜LMに属する光子の検知は、フォトセンサアレイ42上にてまたN通りのy方向位置Y1〜YNそれぞれにて行われる。フォトセンサアレイ42上の各y方向位置Y1〜YNには、同一光子エネルギサブレンジで光子を検知する複数個のサブレンジセルが、いわば1個の「列」を形成するよう配置されており、同列に属するサブレンジセルによってそのy方向位置に係るセル群44が構成されている。また、そのx方向位置は同じだがそのy方向位置が異なる(従って担当する光子エネルギサブレンジが異なる)複数個のサブレンジセルの集合、即ち「行」を見ると、同一行内に属する複数個のサブレンジセルにより光子検知が行われる光子エネルギの中心波長は波長λ1から波長λNまで横変している。総じていうなら、個々のy方向位置Ynではその位置Ynに対応する中心波長λnを有する光子エネルギサブレンジでの信号光検知がその位置YnにあるM個のサブレンジセルによって行われるので、信号光20の射突位置をy方向位置Y1からy方向位置YNまで掃引的に変化させることによって全ての場所L1〜LMについてまたそれぞれ中心波長λ1〜λNを有する全ての光子エネルギサブレンジについて光子の量を検知することができ、それらの検知結果から各場所Lmにおける光子エネルギ分布Dmを導出することができる。
【0017】
図1及び図2に示す手法においては、場所Lmが重要な役割を演じている。第1に、実現可能な空間分解能が場所Lmのサイズ縮小限界によって決まる。これは、フォトセンサアレイ42を構成するセルの有効面積によって場所Lmの精細さ即ち空間分解能が制限されるためである。第2に、各場所Lmにて検知できるスペクトラムの精細さ即ちスペクトラム分解能もy方向セル有効寸法及びフォトセンサアレイ42横断方向検知波長λn変化勾配に依存している。例えば、被覆厚みに変化を加えることによって検知波長λnに勾配を付与する実施形態では被覆表面勾配乃至急峻さによってスペクトラム変化勾配が決まる。
【0018】
従って、図1及び図2に示す如く、各セル内で検知可能な光子エネルギサブレンジが横方向に沿って異なるフォトセンサアレイ42に対し、信号光20を相対走査運動させることによって、その光信号20についてのスペクトラム情報を得ることができる。各構成部品を形成する素材を適当な素材としさえすれば、深紫外域から遠赤外域更にはTHzオーダの周波数域に至るまでのスペクトラム情報を、得ることが可能である。
【0019】
図3に、IC40及びフォトセンサアレイ42の一例構成を模式的に示す。この図に示す構成は、後に示す図4〜図9の構成乃至手法にて使用乃至形成できる。図中のフォトセンサアレイ42は、それぞれ複数個のフォトセンサを含むセルを2行以上並べた構成を有する二次元アレイである。
【0020】
フォトセンサアレイ42の各部分例えば行は、その部分に属するセルが他の部分に属するセルとは異なる波長域即ち光子エネルギサブレンジにて光子を検知するよう、例えばその被覆を別様にする等して構造を違えておく。そうすることによって、単一のIC40から得られる情報だけで、広い光子エネルギ分布域全体に亘り、入射光子を仔細に解析することが可能になる。加えて、基準セルを設け、空間的に分解されたリアルタイム基準信号を当該基準セルにて発生させることにより、信号光位置を連続モニタすること等が可能になる。
【0021】
また、特徴的なことに、このフォトセンサアレイ42においてはサブレンジセル近傍に何個かの基準セルが設けられている。
【0022】
まず、行102内にある各セルは、適当に設定されたある共通の波長域(代表波長:λall)にて光子を検知し、別の行104内にある至近のサブレンジセルに対し基準信号を供給する。こうした構成を採る場合、一般には、行102内セルから得られる信号強度と、行104内にありこれと対をなすサブレンジセルから得られる信号強度とを、同じオーダにすることが有益である。そうするためには、例えばセル同士で検知面積を違えるなり、設けるグレイフィルタ被覆をセル同士で違えるなり、行102内セルと行104内サブレンジセルとを別様に形成するなり、相応の措置を執る必要がある。
【0023】
行102内セルとは異なり、行104内にあるサブレンジセルは、最短波長λminから最長波長λmaxに至る波長域に属し且つ互いに別々の光子エネルギサブレンジにて、光子を検知する。例えば、図中のサブレンジセル106は波長λpを中心とする光子エネルギサブレンジにて光子を検知する。こうして検知された情報は、IC40内に設けられている周辺回路110によって読み出される。なお、図示しないがIC40内にはセルのアレイ化によりフォトセンサアレイ42を形成する回路等も設けられている。また、周辺回路110は、上記以外の様々な機能的処理も実行する。
【0024】
図4にセンシングアセンブリ22の一例構造を示す。図示されていないが、センシングアセンブリ22は、例えば適当な支持部材(後に例示)に取り付ける等しておく。
【0025】
図4に示したのはフォトセンサアレイ42の一断片150の断面であり、この断面中には当該断片150を構成する何個かのセル152が模式的に示されている。同図中、一群のサブレンジセル152の上方に位置しているのは、入射光162受入部となる透過構造160である。
【0026】
透過構造160は、例えば、その光透過特性が各部の横方向位置により違う膜即ち光透過特性横変膜である。
【0027】
透過構造160は、フォトセンサアレイ42の上又は上方に適当な被覆を配することによって、形成することができる。透過構造160の構成要素である空胴(共振子)170、膜172及び174は、何れも、蒸着室内で堆積ビームにさらすことによって形成することができる。これらの構成部分のうち一定膜厚部分即ち膜172及び174は軸揃え堆積法(on-axis deposition)を使用することによって、また膜厚横変部分即ち共振子170は軸外し堆積法(off-axis deposition)を使用することによって、形成することができる。また、図4中の膜172及び174は共振子170に比べて厚みがあるが、こうした厚み設定は、SiO2、TiO2、Ta2O5等の非金属系素材の層の交互積層によってブラッグミラーを形成する場合等に適している。また、膜172及び174は反射素材によって形成することもでき、そうした場合は非金属系素材層により形成した場合に比べかなり薄くすることができる。
【0028】
共振子170、膜172及び174の膜厚の設計値は、透過させたい波長λ及び共振子170を形成する素材の屈折率nから決定することができる。共振子170の膜厚は、λ/(2n)又はその整数倍に設定するのが常道である。また、膜172及び174をブラッグミラーとして形成する際には、膜172及び174内の各ブラッグミラー層の膜厚を、λ/(4n)に設定するのが常道であり、また膜172及び174各々におけるブラッグミラー層のペア数を、例えば2〜5ペアといった少数から20〜30ペアといった多数に至る範囲内で設定するのが妥当であろう。各膜内ブラッグミラー層ペア数は、使用する2種類の素材間の屈折率差、透過させたい波長域の幅及び阻止したい波長域における反射率に応じて変える。そのため、ブラッグミラーを使用する実施形態では、膜172及び174が共振子170に比べかなり厚くなるのが普通である。
【0029】
図5に透過構造160の光透過横変特性を示す。共振子170の膜厚がy方向位置の関数に従い変化するため、共振子170を透過する光の波長もy方向位置の関数になる。図4に示した断片150内にある9組のセル152の反射率が極小になる波長、即ち光子が最もよく透過する波長は、図5中、番号1〜9が付された波長である。この図からも理解できるように、透過構造160においては、光子が高透過率で透過する光子エネルギレンジが、その構造上の横方向位置により異なっている(横変している)。
【0030】
図6に、センシングアセンブリ22の構成例をもう一つ示す。この図のセンシングアセンブリ22に設けられた透過構造180は、横グレーデッドブラッグミラー(laterally graded Bragg mirror)を有している。即ち、透過構造180を構成する層182、184、186及び188それぞれの厚みが、横方向勾配を有している。これらの層182、184、186及び188は、例えば軸外し堆積法を用いて共振子170上に成長させる。なお、同図では共振子170や他の反射層の図示を省略してある。
【0031】
図7に透過構造180の光透過横変特性を示す。透過構造180における反射波長はy方向位置の関数であり、各部分のy方向位置により異なっている。図示されている曲線200、202、204及び206は、透過構造180の構成部分のうち、断片150中の最左端から4個分のサブレンジセル152の上方に位置する部分における反射率を表している。即ち、曲線200は図6中の最左端サブレンジセル152の上方にある部分の反射率を表しており、曲線206はそれを含めて左から4番目(4個の中では一番右)のサブレンジセル152の上方にある部分の反射率を表している。このように、透過構造180が高反射率を呈する光子エネルギレンジは横変している。
【0032】
図8に、図5及び図7に示したものと同様の光透過横変特性が二方向に沿って現れる透過構造210を、形成する手法の例を示す。なお、ここでも他の層の図示を省略してある。
【0033】
図8に示した手法では、フォトセンサアレイ42の断片150を構成するサブレンジセル152の上又は上方に透過構造210を形成するため、透過構造210の表面上の各点から見て傾いた方向から、それも二通りの断面(同図の左右両半分)の何れにおいても傾いた方向から、堆積ビーム214が発せられる。透過構造210の表面各点から見た堆積ビーム214の方向は従って二種類の傾斜角により特定でき、またそれら傾斜角は各点毎に異なっている。それらの傾斜角のうち一つは断片150切断面におけるx方向堆積ビーム214方向角であり、もう一つはy方向堆積ビーム214方向角である。従って、透過構造210における厚みの勾配は、x方向についてもy方向についても、その大きさの差こそあれ同様の形態で変化する。即ち、y方向に沿って延びる個々の列内においては、図7に示したものと同様、同一の光子エネルギレンジにて各サブレンジセルが光子を検知するが、所属先の列が異なるセル同士は、図7に示したものとは違い、列単位で異なる光子エネルギレンジにて光子を検知する。
【0034】
図9に、光透過横変特性を有する透過構造220をその物理的な膜厚に変化を与えることなく形成する手法の例を示す。同図に示した手法の特徴は、厚みd及び屈折率nの積d×nとして与えられる光学的厚みを横変させることとし、実際の厚みdには変化を与えないで、光透過横変特性を実現している点にある。なお、ここでも他の層の図示を省略してある。
【0035】
光学的厚みを横変させるため、この手法では、まず図9の上半分に示すように、フォトセンサアレイ42の断片150の表面に向け堆積源224から均一に堆積ビーム226を送り、それによって均質な被覆222を成長させる。
【0036】
次いで、図9の下半分に示すように、フォトセンサアレイ42の断片150の表面をなぞるように、光源230が発する輻射光232によって被膜222上を走査し、これによってその屈折率に横変がある透過構造220を形成する。このとき使用する光源230は、例えば、x方向位置による発光強度Iの変化はないがy方向位置による変化がある紫外光源である(或いはそのような強度変化が生じるように紫外光源を用いる)。即ち、断片150の表面に対して平行な面上でx方向に延び且つy方向に並んだ多数の直線を考える。ここで用いる紫外光源は、例えば、それらの直線それぞれの上では発光強度Iが一定だが直線間ではその発光強度Iに違いがあり、例えば図中最左端の直線は最小強度Imin、最右端の直線は最大強度Imaxで発光する紫外光源である。このような光源230を用いて輻射光232を照射することによって、透過構造220の透過光の波長にはy方向位置による違い(横変)が生じる。即ち、形成される透過構造220を透過して断片150の各サブレンジセル152に到達する光の波長はそのy方向位置によって異なり、図示の如く最短波長λminから最長波長λmaxに至る範囲内の何れかの値になる。また、単一の光源230から同時に多数のフォトセンサアレイ42の断片150に向け且つ同一の強度パターンにて輻射光232を照射することもできる。そうする場合、複数個のアレイを適切に並べ光源230に対して適切に配置しさえすれば、単一の光源230を用いて透過構造220を複数アレイ分バッチ生産することができる。無論、アレイ上に二次元的な屈折率変化を形成することも可能である。
【0037】
図6〜図8に示す構成、即ちDBR(分布ブラッグ反射)ミラーのうち1個だけに僅かな透過特性勾配を付した構成においては、その下方にあるフォトダイオードアレイ等のフォトセンサアレイへの入射光スペクトラムが、そのフォトセンサアレイを構成するセル毎に異なり、従って各サブレンジセルに流れる光電流が、その隣のサブレンジセルに流れる光電流とは僅かに異なる大きさになる。従って、各セルの上方部分におけるDBRの透過特性が解っていれば、光電流の値から入射光の原スペクトラムを再現することができる。このとき、セルの個数によってスペクトラム再現点の個数が与えられ、従ってスペクトラム分解能も決まる。こうした原理によるスペクトラム再現は、セル間での透過率変化が急峻な波長にて最もうまくいく。
【0038】
図4に示した被覆を試作してみたところ、各光子エネルギサブレンジにおける光子透過率の典型値が約60%となった。これらの光子エネルギサブレンジの広さは、どのような構成の被覆を形成しその勾配をどの程度の勾配にするか、またフォトセンサアレイを構成する各サブレンジセルのサイズをどの程度にするか、等により決まり、波長でいうと例えば0.01〜数十nmの広さとなる。更に、高感度のフォトセンサを用いることによって、フォトセンサアレイ出力強度を顕著に高めることができる。
【0039】
図10〜図19に、薄板状物体を用い線状信号光や二次元信号光を発生させる手法の例、特にそれに使用する照明手法及び部品の例を幾つか示す。これらの例では照明によって信号光を得ているが、その必要がない場合もある。例えば、カメラで撮影された画像のように外部から与えられた信号光や、自発蛍光(self-fluorescence)等のように照明以外の励起形態によって得られた信号光をフォトセンサアレイに供給する場合、照明は必要ない。
【0040】
まず、図10〜図12に示す3個の例は、薄板状物体を照明して信号光を発生させる手法の例である。何れの手法においても単一の光源からの光によって物体を照らして信号光を発生させており、また何れの手法でも線状信号光や二次元信号光を発生させることができるが、その照明の仕方は例毎に異なっている。
【0041】
そのうち図10においては、光源252からの光によって物体250が照明され、物体250の表面における照明光の反射によって信号光254が生じている。この場合に照明対象にすることができる物体250は、その反射率が部位毎に異なる二次元的な表面を有する各種の物体である。例えば紙シート等のシート状媒体を照明対象にすることができ、更にはウェルプレートやバイオチップも照明対象になりうる。従って、この手法にて得られる信号光254は、物体表面の反射率を示す信号となる。
【0042】
次に、図11においては、光源272からの光によって物体270が背面から照明され、照明光がこの物体270を透過することによって、信号光274が生じている。従って、この構成においては、ウェルプレート、バイオチップ等のようにその吸収、内部反射等の特性が部位毎に異なり、その違いによって光の透過状況が変わる薄板状物体を、物体270とするのが適当である。従って、この手法にて得られる信号光274は、物体270の光吸収特性や内部反射特性を示す信号となる。
【0043】
そして、図12における物体290は光導波構造を呈している。この光導波構造内においては、光源292からの光による照明等、各種の励起に応じて光子が放射、散乱していく。物体290は、例えば、導波構造の内部又は近傍に流体を配し或いは導波構造の近傍に非流動性粒子を配したバイオチップとする。照明その他の形態による励起を受けると、物体290内にある粒子例えば検体が蛍光を発し、この蛍光が信号光294として出射される。この場合の信号光294は、従って、物体290の各部位間での蛍光スペクトラムの違いを表す信号となる。
【0044】
バイオチップを初めとする各種薄板状物体は、照明その他の励起手法を用いて蛍光を発生させる構成とすることもできる。そうした構成を用い、例えば孤立した又は単一の粒子の特徴を抽出し或いは低濃度の生物学的若しくは化学的物質の特性を調べる場合、それらの粒子又は物質が被着し又は含まれている物体とそれに対する励起手段との相互作用をできるだけ強めること、例えば光対標的相互作用強化法(enhanced light-target interaction)を励起手法として使用することが、とりわけ重要である。
【0045】
光対標的相互作用強化法は、例えば光導波構造を反共振導波構造(anti-resonant waveguide configuration)とすることによって実施できる。例えば、ガラスキャピラリ管内にエアロゾルを入れた構成或いはガラススライド間に液体膜を挟んだ構成を以て、反共振導波構造を実現することができる。これらを励起するには相応の電磁波を照射すればよい。
【0046】
図12においては、光源292からの光に応じて物体290内の物質例えば検体が蛍光を発する。その結果放射される光は特徴的な光子エネルギスペクトラムを有する光であり、そのうち一部がセンシングアセンブリ22方向に向かい信号光294の成分となる。この光は、(場合によっては何個かの光学部品を通過した上で)IC40上にあるフォトセンサアレイ42に達し、それを構成するサブレンジセルによって光子が検知されることとなる。
【0047】
このように、図10〜図12に示す何れの構成においても、発生した信号光254、274又は294がセンシングアセンブリ22へと送られる。その経路上には光学部品を設けることができるが、用途乃至構成によってはそうした光学部品の必要がない場合もある。
【0048】
次に、図13〜図19に示す例は、信号光とフォトセンサアレイとの間に相対走査運動を発生させる手法の例である。相対走査運動のうち第1のものは主相対走査運動と称しうるものであり、第2のものは副相対走査運動と称しうるものである。主相対走査運動は、フォトセンサアレイが全光子エネルギサブレンジで光子エネルギ情報を得るために必要な相対走査運動のことであり、副相対走査運動は物体のあらゆる部分即ちスポットから光子エネルギ情報を得たい場合に実行される相対走査運動のことである(従って副相対走査運動が不要な構成乃至用途もある)。主及び副相対走査運動は、例えば図16〜図19に示す構成では単一の走査器により実行可能である。但し、これらを実行するのに2個の走査器が必要な構成もありうる。
【0049】
また、図13及び図14に示す構成では、非常に細い線状の照明光で薄板状物体を照明し、例えば図示しないセンシングアセンブリ22を図示の構成に対して動かすことによって主相対走査運動を実行し、それによって各光子エネルギサブレンジにて情報を得ることができる。更に、照明光・薄板状物体間での副相対走査運動を実施することによって、その物体の各部から信号光を得てそれをセンシングアセンブリ22で検知することができる。こうした構成では、照明光の線の太さによりy方向空間分解能が決まり、使用する光学部品320の構成次第でx方向分解能が決まる。これに対し、図15〜図19に示す構成では、物体から得られる二次元信号光をある種の光学部品にて線状信号光(図15)又はまた別の二次元信号光(図16〜図19)に変換し、変換により得られた信号光によってセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42を走査するようにしている。
【0050】
図13〜図15に例示する手法即ち照明及び光学部品の併用により線状信号光を得る手法は、基本的に、直線を模した形状の光即ち線状照明光を用いる第1の手法と、直線を模した形状の開口即ち線状開口を用いる第2の手法とに、大別することができる。
【0051】
第1の手法を採る場合、照明野サイズ即ち照明光の断面サイズによって信号光のサイズが決まり、使用する光学部品によってその延長方向(x方向)沿い分解能が決まる。従って、y方向分解能を所望値まで高めたければ照明光の線幅をそれ相応に細くする必要があり、x方向分解能を確保したければそれ相応の光学部品を用いる必要がある。また、物体全体をカバーしたければ、照明対象物体と照明用部材及び光学部品とを相対運動させる副相対走査用走査器を設ければよい。
【0052】
第2の手法を採る場合、照明野サイズを信号光サイズより大きめに設定すると共に、線状開口を提供する光学部品によって照明対象物体からの光のサイズを絞って線状信号光に変換し、且つその光学部品によってx方向分解能を画定する。この場合にも、照明野と開口形成用光学部品の間、即ち照明対象物体と照明用部材及び開口形成用光学部品との間に副相対走査運動を発生させるには、副相対走査用走査器を設ければよい。
【0053】
他方、図16〜図19に例示する手法即ち二次元物体を照明して二次元信号光を発生させる手法では、レンズ又はそれに類する光学部品を使用して照明対象物体の像を二次元フォトセンサアレイ42上に結び、x方向分解能、y方向分解能共にこの結像用光学部品によって画定する。また、結像用光学部品によってフォトセンサアレイ42上に結ばれる像においては、常に、照明対象物体上の個々の場所が照明対象物体上でのx方向位置及びy方向位置に対応したx方向位置及びy方向位置に結像する。従って、この手法によれば、照明対象物体上の様々な場所からの光子を同時に(但し光子到来位置のy方向位置に応じて異なる光子エネルギサブレンジにて)検知することができる。また、主相対走査運動によって照明用部材、照明対象物体及び光学部品と検知用のフォトセンサアレイ42との位置関係を略y方向に沿い変化させることにより、フォトセンサアレイ42上の各サブレンジセルに射突する光子の発生元が照明対象物体上のある場所から次の場所へと変化していくので、主相対走査運動を完遂することにより全ての光子エネルギサブレンジにて且つ全ての場所について、光子検知を実行することができる。
【0054】
以上概括した相対走査運動発生手法のうち図13に示す例においては、画像を担持する適当なシート状媒体例えば紙シート310が、その画像担持面を下に向けて配置されており、例えば白色LED(発光ダイオード)に適当な光学系を付加した構成を有する光源312から出射される線状照明光によって、その下側から照明されている。従って光源312によって照明されるのはシート310のうちのある線状部分316であり、それによって発生した線状信号光314即ち図2に示した信号光20と同様の形状を有する信号光は、例えばSelfocレンズアレイ320等の光学部品を介してセンシングアセンブリ22等に送られる。このSelfocレンズアレイ320によって線状信号光314のx方向分解能が決まる。また、シート310の全体像を得るには、光源312とシート310とを矢印線322により示す如く相対運動例えば副相対走査運動させることによって、それぞれこの線状信号光314と同様な形状を有する複数通りの線状信号光を、シート310上からくまなく得る必要がある。
【0055】
また、図14に示す例においては、物体350が光源352により背面から照明されている(前面からでもよい)。照明される物体350は、例えば生体標本や化学標本の解析に使用される96ウェルプレートのように、生物学的解析又は化学的解析の結果を光学的な形態で提示するアレイ等である。前面、背面のどちら側から照明するにせよ、この例においては、図13の例と同様に線状の照明光を照射することによってプレート状の物体350上の線状部分356にて線状の信号光354を発生させ、Selfocレンズアレイ320を介しセンシングアセンブリ22に送ることができる。この例でも、全体像を得るには、光源352と物体350とを矢印線360により示す如く相対運動例えば副相対走査運動させればよい。
【0056】
更に、図15に示す例においては、図10〜図12を参照して説明した方法のうち何れかで物体400を照明することにより、二次元的な広がりを有する信号光402を発生させる。また、図示されている光学部品404は、x方向に延びたスリット412を有する二次元的に広がった遮光層410と、図13及び図14に示したアレイ320と同様の構成を有しスリット412上に配されたSelfocレンズアレイ420とを、併有している。従って、二次元的な信号光402はスリット412により線状化され、そのx方向分解能がSelfocレンズアレイ420の構成により規定された線状信号光424として、センシングアセンブリ22に送られる。また、図中矢印線422により示す如く物体400及び光学部品404を相対運動例えば相対走査運動させることにより、線状信号光424の発生元のy方向位置を変えること、即ち線状信号光424を順繰りに複数通り発生させることができる。
【0057】
また、図13〜図15に例示した手法を応用すれば、例えば点状光源からの照明光により点状信号光を発生させることも、また任意形状光源からの照明光により発生させた信号光を点状信号光に変換することも、可能である。
【0058】
次に、図16に示す例においては、物体450を照明することにより二次元的な信号光452を発生させる。この例では、センシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42上に照明対象物体450の鮮明な像が結ばれるよう、信号光452の成分光を合焦させる光学部品として従来型のレンズ460を配してある。従って、物体450上の各照明箇所からの光子は、フォトセンサアレイ42上の対応するサブレンジセルにて、またそのサブレンジセルに係る光子エネルギサブレンジにて、検知される。また、物体450・フォトセンサアレイ42間の距離がレンズ460の焦点距離の2倍になるようそれらを配置した場合、物体450の大きさと、フォトセンサアレイ42上に結ばれた像の大きさとが、1対1の比率になる。勿論、物体450がより大きく結像するよう光学部品を用いることもより小さく結像するよう用いることもできる。像のサイズの大小によって、実現される分解能が高低し、また所要フォトセンサアレイサイズが増減する。
【0059】
また、従来型のレンズ460を用いた結像プロセスでは、不具合が生じることを防ぐため、レンズ460を大抵の結像対象物体よりも大きめにしておくのが常套手段である。こうした不便をなくすには、レンズ460をSelfocレンズ又はGRINレンズに置き換えればよい。例えば、図17に示す例においては、図16に示した例と同様、物体500を照明することにより二次元的な信号光502を発生させているが、結像用の光学部品としては二次元のSelfocレンズアレイ510が用いられている。こうした構成においても、光学的出力としては、図16に示した例とほぼ同じ出力が得られる。
【0060】
図18に、図17に示した例の一実施形態をより詳細に示す。この実施形態においては、物体500を照明することによって二次元的な信号光530〜534を発生させており、また二次元的なSelfocレンズアレイ510を用い物体500の像をセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42上に結んでいる。
【0061】
副相対走査運動時には、物体500が矢印線512により示される方向に動くにつれ、物体500上の各所例えば図中の場所520、522及び524は照明野内を過ぎっていく。場所520、522及び524からは反射現象、透過現象、蛍光現象等により光子が放射され、それら光子は場所毎に光線530、532又は534を形成してフォトセンサアレイ42上に入射し、入射先のサブレンジセル540、542又は544により検知される。フォトセンサアレイ42の各サブレンジセルから得られる読出値は、物体500上の対応する場所例えば場所520、522又は524についての情報のうち、そのサブレンジセルに係る光子エネルギサブレンジに属するスペクトラムについての情報として、使用することができる。また、物体500がフォトセンサアレイ42の上方を通り抜けていくとき物体500上の複数の場所がフォトセンサアレイ42上の別々のサブレンジセル上を動いていくため、それらの場所についての情報をフォトセンサアレイ42上の対応する別々のサブレンジセルにて同時に検知、取得できる。
【0062】
図19に、図18に示した実施形態に代わる実施形態を示す。この実施形態においては、短い間隔で連なるよう物体500に設けられている一群の場所が、照明野内を動いていく。
【0063】
図19においては、副相対走査運動時に、先頭の場所560と最後尾の場所564とその間にある何個かの場所562とを含む一群の場所が、照明野内を過ぎっていく。反射、透過乃至蛍光により場所560、562及び564から放射される光子は、それぞれ光線570を形成する。形成された光線570はSelfocレンズアレイ510を通過し、その大部分が光子放射元の場所560、562及び564毎に別々のサブレンジセルへと入射していく。同じフォトセンサアレイ42を構成する近隣のサブレンジセルに光子が入射することもあり得るが、その個数は少数である。フォトセンサアレイ42の各サブレンジセルから得られる読出値は、物体500上の対応する場所例えば場所560、562又は564についてのスペクトラム情報の一部を構成する。しかも、物体500がフォトセンサアレイ42の上方を通り抜けていくときそれら小間隔で連なる一群の場所が別々のサブレンジセル上を過ぎっていくので、それらの場所についての情報を同時並行的に得ることができる。
【0064】
図20に相対走査運動発生システムの構成を示す。この図に示すシステム600は、相対走査運動を伴う光検知によってスペクトラム情報を取得することが可能なシステムの例である。また、図示のシステム600は、バス604を介し各種構成部材をCPU(中央処理ユニット)602に接続した構成を有しているが、これは一例であって、使用できるアーキテクチャは多種多様である。
【0065】
システム600は、バス604を介しCPU602に接続される部材としてまず外部I/O(入出力部)606及びメモリ608を備えている。それらのうち外部I/O606は、CPU602とシステム600外の装置との間で通信を行えるようにする部材である。インタラクティブな形態でこのシステム600を運用する際には、例えばモニタやキーボード等、それに適したユーザインタフェースが外部I/O606に接続される。また、バス604には、システム600に内蔵される部材やシステム600に外付けされる部材を含め、更に他の部材を接続することができる。それらのうち集積回路I/O610は、CPU602と各ICとの間で通信を行えるようにする部材である。この図では、ICが第0IC612から第M−1IC614までM個設けられており、そのうちの第mIC616にはその内部のフォトセンサアレイ618も描かれている。同様に、走査器I/O620は、CPU602と相対走査運動発生用の各種装置、例えばモータやセンサとの間で通信を行えるようにする部材である。この図ではその種の装置が第0装置622から第N−1装置624までN個設けられている。
【0066】
また、メモリ608としてはプログラムメモリ630等が設けられており、このプログラムメモリ630内には、CPU602により実行される走査ルーチン640及び読出結合ルーチン642が格納されている。
【0067】
走査ルーチン640実行時には、CPU602は、走査関連の装置622〜624との通信等を行う。例えば、一群のセンサから信号を受け取り、受け取った信号に基づき走査ルーチン640による計算を行い、目的とする走査運動を実現するのにどのような運動が必要かをその計算結果に基づき判別し、そして目的とする信号光・フォトセンサアレイ42間相対運動が好適に発生するよう信号を送って一群のモータを作動させる。
【0068】
読出結合ルーチン642実行時には、CPU602は、第0〜第M−1IC612〜614それぞれに信号を送り、各サブレンジセルから各光子エネルギサブレンジにおける光子量の検知結果を読み出す。読み出された検知結果、即ち信号光中の各部分例えば個々のスポットについての検知結果は、同一の部分乃至スポットについての検知結果群により図示しない適当なデータ構造(例えばデータアレイやデータリスト等の構造)が形成されるよう、部分乃至スポット毎に結合されて格納される。即ち、読出処理によって各光子エネルギサブレンジ毎に得られた光子量検知結果情報を、結合処理に供して得られるスペクトラム情報が、場所毎に格納される。こうして格納されたスペクトラム情報は、図2に示す個々の場所Lmを例としていえば、その場所Lmに現れる光子エネルギ分布Dmを良好に近似するものとなる。なお、満足のいく分解能を得るには、それ相応に短い周期で検知を行いそれ相応に高い速度で読出を行うことが必要である。こうして所与の部分乃至場所Lmについて全検知結果の読出及び結合処理が済んだら、CPU602はその結果を外部I/O606を介し出力する。或いは、照明野全体に亘り光子量検知結果を結合して単一のデータ構造を作成し、その結果を外部I/O608を介し適当なストリーミング動作により出力するようにしてもよい。
【0069】
こうしたシステム600を実現するには、相対走査運動を実行する走査器が必要である。そのための走査器は様々な構成を採りうる。図21〜図23に、図20に示したシステム600にて採用しうる走査器の仕組みについて、種々の例を示す。
【0070】
まず、図21に例示する装置700は、物体710を照明することによって点状又は線状の信号光を発生させ、その信号光によってセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42(図1参照)を走査、即ち当該フォトセンサアレイ42を横切る経路に沿ってその信号光でフォトセンサアレイ42の表面をなぞらせる仕組みであり、且つ、主相対走査運動を発生させるための内部走査器720と、副相対走査運動を発生させるための外部走査器702とを有している。即ち、まず外部走査器702は、副相対走査運動が発生するよう支持部材704、支持部材706又はその双方を駆動する。支持部材704は物体710、例えば紙シート、バイオチップ、ウェルプレート等を支持しており、支持部材706は内部走査アセンブリ712を支持しており、内部走査アセンブリ712は照明光源732や光学部品734やセンシングアセンブリ22と共に内部走査器720を内蔵しているので、支持部材704、支持部材706又はその双方を駆動することによって、物体710に対する照明光源732、光学部品734、センシングアセンブリ22及び内部走査器720の相対走査運動、即ち副相対走査運動を発生させることができる。
【0071】
また、内部走査器720は、主相対走査運動が発生するよう支持部材722、支持部材724又はその双方を駆動する。支持部材722は信号光アセンブリ730を支持しており、支持部材724はセンシングアセンブリ22を支持している。ここでいう信号光アセンブリ730とは、信号光が好適に発生するよう協調して動かす必要がある一群の部材、例えば照明光源732や光学部品734のことである。従って、支持部材722、支持部材724又はその双方を駆動することにより、主相対走査運動を発生させることができる。
【0072】
信号光アセンブリ730内に設けられた照明光源732は、図示の如く点状又は線状の照明光を出射する。この照明光は物体710との相互作用例えば反射によって、点状又は線状の信号光になる。また、図中の光学部品734は例えば図13に示すSelfocレンズアレイを含んでおり、図1に示す如くフォトセンサアレイ42に対する主相対走査運動を実行する際、信号光のx方向分解能がこの光学部品734によって画定される。
【0073】
装置700の仕組みは、このように、内部走査器720によって物体710の各場所毎に全光子エネルギサブレンジを走査しつつ、外部走査器702によって物体710の各場所を走査することにより、物体710の全ての場所から全ての光子エネルギサブレンジについての情報を取得する、という仕組みである。図20に示した走査ルーチン640は、この装置700を制御するための信号を発生させる。発生させる信号の種類や信号の発生のさせ方は、走査ルーチン640の組み方次第であり、様々に定めることができる。例えば、物体710上の全ての場所にて信号光が発生するように外部走査器702を制御し、各場所毎に信号光・フォトセンサアレイ42間相対走査運動即ち主相対走査運動が発生するように内部走査器720を制御することが、可能である。即ち、主相対走査運動が発生するように内部走査器720を制御してフォトセンサアレイ42内の各サブレンジセル群に信号光を供給し、それらサブレンジセル群が順次物体710上の別の場所からの信号光により走査されるよう外部走査器702を制御することができる。
【0074】
図22に示す装置750は別の仕組みによる装置の例であり、物体760を照明することによって二次元信号光を発生させ、その信号光によってセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42の表面を図1に示す走査経路沿いになぞらせる構成である。同図中の装置750に設けられた走査器は1個、即ち支持部材754、支持部材756又はその双方を駆動することによって相対走査運動を発生させる走査器752だけである。支持部材754は例えば紙シート、バイオチップ、ウェルプレート等の物体760を支持しており、支持部材756は走査センシングアセンブリ762を支持しており、走査センシングアセンブリ762は相対走査運動を適切に発生させるため協調して動かす必要がある一群の部材から構成されている。
【0075】
走査センシングアセンブリ762内に設けられている照明光源764は、図示の如く二次元的な広がりを有する照明野内を照明する。この照明野内には物体760の下面全体又は大半が含まれている。照明光は物体760により反射され、それによって二次元信号光が発生する。光学部品766は信号光のx方向分解能及びy方向分解能を画定する。こうした動作は、走査センシングアセンブリ762内にあるセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42に対し、走査器752によって信号光を相対走査運動させる間中、実行される。
【0076】
装置750を制御する際、図20に示した走査ルーチン640は、例えば、走査器752を制御することによってフォトセンサアレイ42に対する信号光の相対走査運動を発生させ、それによって、フォトセンサアレイ42の表面を適切な横断走査経路に沿って信号光によりなぞらせる。読出結合ルーチン642は、例えば、その走査経路沿いの各位置における光子量検知結果を読み出し、それら検知結果のうち物体760上の同一場所についての検知結果を走査速度に基づきつつ結合させて、スペクトラム情報を示す適当なデータ構造にまとめる。
【0077】
図23に示す装置800は、相応の方法によって得られた二次元信号光によって、図1に示した走査経路、即ちセンシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42を過ぎる経路をなぞらせる仕組みの装置であり、図示の如く備えている走査器は1個だけ、即ち支持部材804、支持部材806又はその双方を駆動することによって相対走査運動を発生させる走査器802だけである。支持部材804は、相対走査運動を適正に発生させる上で互いに協調して動かさねばならない一群の部材からなる光学アセンブリ810を支持しており、同様に、支持部材806はセンシングアセンブリ22を支持している。
【0078】
光学アセンブリ810内の信号光源812は、スペクトラム情報を伴った信号光を出射する部材であり、様々な形態にて実現することができる。例えば、何らかのまた何個かの面、静止物体又は低速物体を図10〜図12に示した如き形態で照明する光源として、構成することができ、また例えば、外部から信号光を取り込んで整形乃至変形し光学アセンブリ810に送り込む開口等、各種の適当な光学部品によって、実現することができる。
【0079】
光学部品814は、図22に示した走査センシングアセンブリ762と同様、センシングアセンブリ22内のフォトセンサアレイ42に対する相対走査運動の間、信号光のx方向分解能及びy方向分解能双方を画定する部材であるが、走査センシングアセンブリ762とは違い検知機能を備えていない。検知機能を提供するセンシングアセンブリ22は、光学アセンブリ810外に設けられている。従って、走査器802により実現される相対走査運動は、光学アセンブリ810・センシングアセンブリ22間の相対走査運動となる。
【0080】
装置800を制御する際には、図20に示した走査ルーチン640及び読出結合ルーチン642を実行すればよい。また、例えばカメラ等とこの装置800を併用する場合、走査器802に対しセンシングアセンブリ22を動かす操作のみでセンシングアセンブリ22・光学アセンブリ810間相対走査運動が実行されるよう、ひいてはカメラ等から入射してくる外部信号光がセンシングアセンブリ22に対し相対走査運動するよう、光学アセンブリ810を走査器802に対し常時相対固定しておくとよい。
【0081】
更に、図21〜図23に例示した装置700、750及び800においてはそれぞれ何個かずつ支持部材が使用されている。各図中、各支持部材はその支持元の走査器から延びた片持ち梁により実現されているが、一般論としては、支持元の走査器によって駆動・制御することができるよう当該走査器に連結されていれば足りる。即ち、そのサイズ、形状、構成素材等を含む各支持部材の構造や、各支持部材をその支持元の走査器に連結する手段には、取り立てて制約が課されておらず、従って各支持部材は様々な構造乃至支持形態にて実現することができる。更に、各支持部材とその支持対象物との連結は、直接か間接かの別等を問わず、適切な形態である限りどのような形態でもよい。例えば、支持対象物を好適に載置しうるプラテンを支持する等、走査時支持を好適に実現できる形態でありさえすれば、支持対象物の支持や支持対象物との連結をどのような形態で実現してもかまわない。また、一般論としては、相対走査運動は複数個の支持部材のうち1個又は複数個を駆動することによって実現できるのであるから、用途次第では、支持部材のうち何個か(但し全数ではない)を固定型としても差し支えない。
【0082】
そして、図1〜図23に示した構成においては、上述のもの以外に、多種多様な手法を使用することができる。
【0083】
例えば、複数通りの線状信号光を同時使用してフォトセンサアレイ42上を走査してもよい。どの信号光によって得られた検知結果なのかを識別、特定できるよう検知周期を設定しまたそれが可能な検知手法を使用することによって、こうした走査即ち複数線状信号光による対単一走査経路同時走査が可能になる。但し、これを実施するには、同一フォトセンサアレイ42上の同一走査経路上にある全てのサブレンジセルから情報を読み出してその結合によりスペクトラム情報を得るため、またそうした処理をx方向沿いにある各場所毎に実行するため、それなりの演算操作が必要となろう。明らかな通り、この手法によれば、複数の線状信号光を使用できる分、x方向解像度及びy方向解像度共に高くなる。また、使用する複数通りの信号光間にある程度の間隔を設けた場合、各信号光で別々のフォトセンサアレイを走査することや、各信号光で別々の走査を実行する構成も実現可能である。そうした構成においても、上記同様にして、1個のフォトセンサアレイに対する1回の走査で二次元的な照明野全体についての完全なスペクトラム情報を得ることが可能である。
【0084】
先に例示説明した何れの装置においても、信号光の分光計測等の機能を実現可能なコンポーネントをコンパクト且つ安価に実現することができ、しかも高い空間分解能及びスペクトラム分解能を得ることができる。更に、これらの装置は、既に消費者向け市場に出回っているものも含め、既存のスキャナや既存のプリンタに組み込むことができる。その検知結果は多数のICから迅速に且つ並列的に読み出すことができる。広い光子エネルギレンジにて光子を検知できるようにするには、それ相応の被覆素材を用いると共にそれ相応の個数のICを使用すればよい。原理的には、紫外域から遠赤外域更にはTHzオーダの周波数に相当する波長まで、広い波長域をカバーすることが可能である。
【0085】
上述した各種装置は、走査機能を有しているため、例えば文書スキャナ、文書コピア、ディジタルカメラ等、各種イメージング装置にて使用することができる。上述した各種走査型装置はまた、分光光度計等の色制御乃至プロセス制御用の分光器向けに構成することや、二次元フォトニッククリスタルセンサ乃至バイオセンサ等の光学センサ複数個からの並列読出向けに構成することも、可能である。そうした走査型装置が併設された分光器や光学センサは、固体例えば半導体素材を対象として或いは生体粒子その他の検体を含有する液体乃至エアロゾルを対象として分光計測を実行する際等に、使用することができる。相対運動は走査以外の様々な形態にて実行することができる。そして、フォトセンサアレイ及び信号光源は上述以外のものも含め様々な構成とすることができる。
【0086】
上述した各種の部材は、何れも上述とは異なる様々な形状、寸法、特性数値、特徴品質等を有するものとすることができる。
【0087】
先に例示した構成のうち幾つかにおいては、フォトセンサアレイや透過構造等を特定の素材によって形成しているが、それらの部材を例えば複数個の副層を組み合わせた層構造として形成する際、上記以外の素材も使用可能であり、また使用できる素材は数多くある。
【0088】
更に、各サブレンジセルが互いに別々の光子エネルギサブレンジにて光子を検知するようフォトセンサアレイを構成する手法としては、上述のように透過構造を形成する手法のほか、様々な手法がある。
【0089】
また、先に例示した構成のうち幾つかにおいては、導波構造内に光を入射することによりその導波構造を発光させているが、自発的に発光する物体(self-emitting/auto-fluorescing object)乃至粒子を導波構造内に入れておけば、入射光無しでも導波構造を発光させることができる。また、発光機構としては、ルミネッセンス、フォトルミネッセンス、ケモルミネッセンス、非弾性散乱等、様々な機構を使用することができる。更に、導波手法として示した反共振導波技術は使用できる種々の導波技術の一種に過ぎず、使用できる導波技術は連続的なものも間欠的なものも含め数多くあり、それぞれ各種パラメタを適切な値に調整設定すれば反共振導波を実現することができる。
【0090】
更に、上述のもの以外の物体を照明対象とすることもできる。どのような仕方で発生させた信号光でも、上述した手法による光検知の対象にすることができる。
【0091】
また、図20に例示した構成ではCPUを使用しているが、これに代え、他種マイクロプロセッサ等、適切な他種部材を用いることもできる。
【0092】
そして、先に例示した各種の構成においては、総じて、様々な部材を様々な形態で製作及び使用しその部材により特定の動作を実行させているが、それらの部材は上述の動作とは異なる形態で動作させることもできるし、上述の動作範囲乃至数値範囲とは異なる動作範囲乃至数値範囲にて動作させることもできるし、また上述以外の動作をそれらの部材の動作に付加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】センシングアセンブリ内に設けられたフォトセンサアレイ及びこれに対する信号光の相対走査運動を示す模式的側面図である。
【図2】図1における対フォトセンサアレイ線状信号光相対走査運動を示す模式的上面図である。
【図3】図1に示したセンシングアセンブリの平面構造を例示する模式的平面図である。
【図4】図1に示したセンシングアセンブリの断面構造、特に光透過横変特性を有する透過構造をフォトセンサアレイに添えたものを例示する模式的断面図である。
【図5】図4に示した透過構造の光透過横変特性を表すグラフである。
【図6】図4に示したものとは異なる透過構造を設けたセンシングアセンブリの断面構造を例示する模式的断面図である。
【図7】図6に示した透過構造の光透過横変特性を表すグラフである。
【図8】図1に示したセンシングアセンブリを得る際使用できる透過構造形成手法の第1例を示す図である。
【図9】図1に示したセンシングアセンブリを得る際使用できる透過構造形成手法の第2例を示す図である。
【図10】対物照明による線状信号光発生方法、特に紙シート等の物体によって照明光を反射させる方法を例示する模式的斜視図である。
【図11】対物照明による線状信号光発生方法、特に96ウェルアレイ等の薄板状物体を透過するよう照明する方法を例示する模式的斜視図である。
【図12】対物照明による線状信号光発生方法、特にバイオチップ等の薄板状物体内に照明光を入射し導波させる方法を例示する模式的斜視図である。
【図13】線状信号光発生用照明方法及び光学部品を例示する模式的斜視図である。
【図14】図13に示したものに代わる例を示す模式的斜視図である。
【図15】二次元信号光から線状信号光を生成する光学部品を例示する模式的部分斜視図である。
【図16】センシングアセンブリ上に図2の如く二次元信号光を合焦させる光学部品を例示する模式的部分斜視図である。
【図17】図16に示したものに代わる例を示す模式的部分斜視図である。
【図18】図17に示した光学部品の第1実施形態を仔細に示す模式的部分斜視図である。
【図19】図17に示した光学部品の第2実施形態を仔細に示す模式的部分斜視図である。
【図20】図1に示した相対走査運動を制御可能なシステムを例示する模式的ブロック図である。
【図21】外部走査器及び内部走査器を備えその内部走査器により図1に示した主相対走査運動を行わせる装置の第1例を示す模式図である。
【図22】図1に示した相対走査運動を行わせる装置の第2例を示す模式図である。
【図23】図1に示した相対走査運動を行わせる装置の第3例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0094】
20,254,274,294,314,354,402,424,452,502 信号光、40,612,614,616 IC、42,618 フォトセンサアレイ、44 サブレンジセル群、50,52 主相対走査方向、60 サブレンジ設定曲線、106,152,540,542,544 サブレンジセル、322,360,422,462,512 副相対走査方向、600 システム、700,750,800 装置、702,720,752,802 走査器、L1,Lm,LM 場所、M 場所の個数、N サブレンジセル群の個数、Y1,Yn,YN フォトセンサアレイ上のy方向位置、λ 波長、λ1,λn,λN 各サブレンジの代表波長。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路に内蔵され光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイと、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含む信号光との間に、相対走査運動を発生させることにより、それら複数個のセルのうち走査経路沿いにあるものが信号光内光子を検知できるよう、それぞれ1個又は複数個のセルを含む複数個の経路部分からなる走査経路に沿って信号光でフォトセンサアレイを横断走査させるステップと、
各経路部分がそれぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個の経路部分が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている走査経路にて、経路部分毎に且つその経路部分内のセルにより、信号光のうちその経路部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知するステップと、
を有する信号光検知方法。
【請求項2】
それぞれ光子を受け取ってその量を検知するセルを複数個含むフォトセンサアレイを内蔵する集積回路と、
このフォトセンサアレイと、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含む信号光との間に、相対走査運動を発生させることにより、上記複数個のセルのうち走査経路沿いにあるものが信号光内光子を検知できるよう、それぞれ1個又は複数個のセルを含む複数個の経路部分からなる走査経路に沿って信号光でフォトセンサアレイを横断走査させる走査器と、
を備え、各経路部分がそれぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個の経路部分が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている走査経路にて、経路部分毎に且つその経路部分内のセルにより、信号光のうちその経路部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知する装置。
【請求項3】
集積回路に内蔵され光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイに対して第1方向沿いに相対運動させつつ、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含み且つ複数個の場所に広がる信号光を、そのフォトセンサアレイにて受光するステップと、
第1方向に沿って配置され、それぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている複数の部分それぞれについて、且つその部分内のセルにより、信号光のうちその部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知するステップと、
上記場所又はその組合せ毎に、光子量の検知結果を第1方向沿いの各部分内のセルから寄せ集めて組み合わせることにより、当該場所又はその組合せにおける信号光スペクトラムについての情報を取得するステップと、
を有する方法。
【請求項1】
集積回路に内蔵され光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイと、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含む信号光との間に、相対走査運動を発生させることにより、それら複数個のセルのうち走査経路沿いにあるものが信号光内光子を検知できるよう、それぞれ1個又は複数個のセルを含む複数個の経路部分からなる走査経路に沿って信号光でフォトセンサアレイを横断走査させるステップと、
各経路部分がそれぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個の経路部分が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている走査経路にて、経路部分毎に且つその経路部分内のセルにより、信号光のうちその経路部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知するステップと、
を有する信号光検知方法。
【請求項2】
それぞれ光子を受け取ってその量を検知するセルを複数個含むフォトセンサアレイを内蔵する集積回路と、
このフォトセンサアレイと、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含む信号光との間に、相対走査運動を発生させることにより、上記複数個のセルのうち走査経路沿いにあるものが信号光内光子を検知できるよう、それぞれ1個又は複数個のセルを含む複数個の経路部分からなる走査経路に沿って信号光でフォトセンサアレイを横断走査させる走査器と、
を備え、各経路部分がそれぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個の経路部分が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている走査経路にて、経路部分毎に且つその経路部分内のセルにより、信号光のうちその経路部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知する装置。
【請求項3】
集積回路に内蔵され光子検知用のセルを複数個含むフォトセンサアレイに対して第1方向沿いに相対運動させつつ、複数個の光子エネルギサブレンジからなる光子エネルギレンジに属する光子を含み且つ複数個の場所に広がる信号光を、そのフォトセンサアレイにて受光するステップと、
第1方向に沿って配置され、それぞれ何れかの光子エネルギサブレンジに割り当てられており且つそのうち少なくとも2個が別々の光子エネルギサブレンジに割り当てられている複数の部分それぞれについて、且つその部分内のセルにより、信号光のうちその部分に割り当てられた光子エネルギサブレンジに属する光子の量を検知するステップと、
上記場所又はその組合せ毎に、光子量の検知結果を第1方向沿いの各部分内のセルから寄せ集めて組み合わせることにより、当該場所又はその組合せにおける信号光スペクトラムについての情報を取得するステップと、
を有する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2007−171181(P2007−171181A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−339561(P2006−339561)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【出願人】(502096543)パロ・アルト・リサーチ・センター・インコーポレーテッド (393)
【氏名又は名称原語表記】Palo Alto Research Center Incorporated
【Fターム(参考)】
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