説明

個人認証方法、個人認証システムおよび生体情報測定システム

【課題】被識別者を拘束することなく、長時間にわたり継続的に個人認証を行い続けることを可能とする。
【解決手段】被識別者Xの周期的に変化する生体情報Aを所定時間にわたって検出し、検出された生体情報Aの時間変化における特徴部分Bを抽出し、抽出された特徴部分Bに基づいて被識別者Xの本人確認を行う個人認証方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、個人認証方法、個人認証システムおよび生体情報測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、識別コードを記憶した可搬式デバイスを患者が所持し、これら可搬式デバイスの有する識別コードを用いて患者の認証を行いながら、脈拍、血圧等の生体情報を測定する生体情報測定システムが知られている(特許文献1および特許文献2参照。)。
この生体情報測定システムにおいては、その可搬式デバイスを装着している者を患者本人として認証するものであるため、正しい認証を行うためには患者本人が可搬式デバイスを装着していることが前提となる。
【特許文献1】加国特許出願公開第2467326号公報
【特許文献2】特許第3075499号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1,2の生体情報測定システムにおいては、何らかの原因により、一の患者の装着していた可搬式デバイスを他の患者が装着することとなった場合、すなわち、一の患者の識別コードを有する可搬式デバイスの装着者が他の患者にすり替わった場合においても、生体情報測定システムは可搬式デバイスの装着者である他の患者を当該検査中の患者であると認識して生体情報の測定を行うこととなるという不都合がある。
【0004】
また、指紋、静脈パターンあるいは虹彩パターンのような患者自身の身体に備えられたバイオメトリクス情報を用いる個人認証方法も一般に知られている。これらのバイオメトリクス情報を用いた個人認証方法は、通常、ドアの出入口やパソコン等のセキュリティロックを解除するための鍵として使用されるものである。しかしながら、生体情報測定のように長時間にわたる測定の結果得られる膨大な測定データの本人確認を行うためにこの個人認証方法を使用する場合には、測定中に定期的にバイオメトリクス情報の入力を行うことが必要となり、患者を頻繁に拘束することとなるため現実的ではない。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、被識別者を拘束することなく、長時間にわたり継続的に個人認証を行い続けることができる個人認証方法、個人認証システムおよび生体情報測定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、被識別者の周期的に変化する生体情報を所定時間にわたって検出し、検出された生体情報の時間変化における特徴部分を抽出し、抽出された生体情報の時間変化における特徴部分に基づいて被識別者の本人確認を行う個人認証方法を提供する。
【0007】
個人認証は、通常、セキュリティロックを解除するための鍵として使用されるため、短時間で確実に行われることが好ましく、バイオメトリクス情報のような経時変化のない固定された識別情報が用いられてきた。発明者は、特に、脈波、心拍または血中酸素飽和度のように、周期的に変化する生体情報にも個人を特定する固有の識別能力が備えられていることを見いだした。
【0008】
本発明によれば、被識別者から検出された周期的に変化する生体情報からその時間変化における特徴部分を抽出することで、予め登録しておいた当該被識別者の生体情報の特徴部分との照合を行い、本人確認を行うことができる。脈波、心拍または血中酸素飽和度のように、周期的に変化する生体情報は、被識別者に大がかりな装置による認証作業を強いることなく、簡単なウェアラブル測定装置を装着するだけで、非拘束に継続的に検出し続けることができる。したがって、長時間にわたって継続的に認証し続けることが必要となるような用途、例えば、生体情報測定のように長時間にわたる測定中に本人確認を継続的に行うことができ、被識別者のなりすましやすり替わりを確実に防止することができる。
周期的に変化する生体情報としては、上述したように脈波、心拍または血中酸素飽和度であることが好ましい。
【0009】
また、上記発明においては、被識別者の周期的に変化する生体情報を環境パラメータに対応づけて記憶しておき、環境パラメータを検出し、検出された環境パラメータに対応して記憶されている生体情報の時間変化における特徴部分と、検出された生体情報の時間変化における特徴部分とを照合することが好ましい。
【0010】
脈波、心拍または血中酸素飽和度のような周期的に変化する生体情報は、被識別者の身体状態に応じて変化する。本発明によれば、被識別者の運動量または体温等の身体状態のような環境パラメータと対応づけて周期的に変化する生体情報を記憶しておき、認証時に検出した環境パラメータに対応して記憶されている生体情報を用いて認証を行うことにより、環境パラメータの変動にかかわらず精度よく本人確認を行うことができる。
【0011】
環境パラメータとしては、上述したように被識別者の運動量または体温であることが好ましい。運動量は加速度計、体温は体温計等により簡易にかつ非拘束に測定することができるからである。
【0012】
また、本発明は、被識別者の周期的に変化する生体情報を予め記憶する生体情報記憶部と、被識別者の周期的に変化する生体情報を所定時間にわたって検出する生体情報検出部と、前記生体情報記憶部に記憶されている生体情報および生体情報検出部により検出された生体情報の時間変化における特徴部分をそれぞれ抽出する特徴部分抽出部と、該特徴部分抽出部により抽出された2つの特徴部分を照合し、合致している場合に被識別者を認証する特徴部分照合部とを備える個人認証システムを提供する。
【0013】
本発明によれば、生体情報検出部の作動により、被識別者の周期的に変化する生体情報が検出される。被識別者の生体情報は予め生体情報記憶部に登録されているので、特徴部分抽出部の作動により、検出された生体情報および登録されている生体情報の時間変化における特徴部分がそれぞれ抽出される。そして、抽出された2つの特徴部分が特徴部分照合部により照合され、合致している場合に被識別者が認証される。これにより、本人確認を継続的に行うことができ、被識別者のなりすましやすり替わりを確実に防止することができる。
【0014】
上記発明においては、前記生体情報記憶部に、被識別者の所定時間にわたる生体情報が、環境パラメータに対応づけて記憶され、環境パラメータを検出する環境パラメータ検出部を備え、前記特徴部分抽出部が、環境パラメータ検出部により検出された環境パラメータに対応して記憶されている生体情報の時間変化における特徴部分を抽出することとしてもよい。
【0015】
環境パラメータ検出部の作動により検出された環境パラメータを用いて生体情報記憶部に記憶されている生体情報が検索され、検索された生体情報の時間変化における特徴部分が特徴部分抽出部の作動により抽出されるので、環境パラメータが変動しても精度よく本人確認を行うことができる。
【0016】
また、本発明は、被識別者の周期的に変化する生体情報の時間変化における特徴部分を予め記憶する生体情報記憶部と、被識別者の周期的に変化する生体情報を検出する生体情報検出部と、該生体情報検出部により検出された生体情報の時間変化における特徴部分を抽出する特徴部分抽出部と、該特徴部分抽出部により抽出された特徴部分と生体情報記憶部に記憶されている特徴部分とを照合し、合致している場合に被識別者を認証する特徴部分照合部とを備える個人認証システムを提供する。
【0017】
本発明によれば、生体情報検出部の作動により、被識別者の周期的に変化する生体情報が検出される。被識別者の生体情報の時間変化における特徴部分は予め生体情報記憶部に登録されているので、特徴部分抽出部の作動により、検出された生体情報の時間変化における特徴部分が抽出され、2つの特徴部分が特徴部分照合部により照合される。そして、2つの特徴部分が合致している場合に被識別者が認証される。これにより、本人確認を継続的に行うことができ、被識別者のなりすましやすり替わりを確実に防止することができる。予め特徴部分を記憶しておくことにより、認証時の処理を簡易にすることができる。
【0018】
上記発明においては、前記生体情報記憶部に、被識別者の生体情報の時間変化における特徴部分が、環境パラメータに対応づけて記憶され、環境パラメータを検出する環境パラメータ検出部を備え、前記特徴部分照合部が、環境パラメータ検出部により検出された環境パラメータに対応して記憶されている特徴部分を用いて照合を行うこととしてもよい。
【0019】
また、上記発明においては、環境パラメータが被識別者の運動量または体温であることとしてもよい。
また、上記発明においては、生体情報が、脈波、心拍または血中酸素飽和度であることとしてもよい。
【0020】
また、本発明は、周期的に変化する識別用生体情報を含む1以上の検査用生体情報を検出する生体情報検出部と、患者の識別用生体情報を所定時間にわたって記憶する識別用生体情報記憶部と、検出された識別用生体情報および記憶されている識別用生体情報の時間変化における特徴部分をそれぞれ抽出する特徴部分抽出部と、該特徴部分抽出部により抽出された2つの特徴部分を照合する特徴部分照合部と、該特徴部分照合部における照合の結果、2つの特徴部分が合致していると判断された場合に、検出された検査用生体情報を当該患者の識別情報に対応づけて記憶する検査用生体情報記憶部とを備える生体情報測定システムを提供する。
【0021】
本発明によれば、生体情報検出部の作動により、周期的に変化する識別用生体情報を含む1以上の検査用生体情報が検出され、特徴部分抽出部の作動により、検出された識別用生体情報および記憶されている識別用生体情報の時間的変化における特徴部分が抽出される。抽出された2つの特徴部分は特徴部分照合部により照合され、照合の結果、特徴部分が合致していると判断された場合に、検出された検査用生体情報が患者の識別情報に関連づけられた形態で検査用生体情報記憶部に記憶される。このようにすることで、検査用生体情報の検出を行う間に継続的に本人確認を行い、患者本人の検査用生体情報のみを記憶することができる。
【0022】
また、上記発明においては、前記識別用生体情報記憶部に、患者の識別用生体情報が、環境パラメータに対応づけて記憶され、環境パラメータを検出する環境パラメータ検出部を備え、前記特徴部分抽出部が、環境パラメータ検出部により検出された環境パラメータに対応して記憶されている識別用生体情報の時間変化における特徴部分を抽出することとしてもよい。
【0023】
また、本発明は、周期的に変化する識別用生体情報を含む1以上の検査用生体情報を検出する生体情報検出部と、前記識別用生体情報の時間変化における特徴部分を記憶する識別用生体情報記憶部と、検出された識別用生体情報の時間変化における特徴部分を抽出する特徴部分抽出部と、該特徴部分抽出部により抽出された特徴部分と生体情報記憶部に記憶されている特徴部分とを照合する特徴部分照合部と、該特徴部分照合部における照合の結果、2つの特徴部分が合致していると判断された場合に、検出された検査用生体情報を当該患者の識別情報に対応づけて記憶する検査用生体情報記憶部とを備える生体情報測定システムを提供する。
【0024】
本発明によれば、生体情報検出部の作動により、患者の周期的に変化する生体情報が検出される。患者の生体情報の時間変化における特徴部分は予め生体情報記憶部に登録されているので、特徴部分抽出部の作動により、検出された生体情報の時間変化における特徴部分が抽出され、2つの特徴部分が特徴部分照合部により照合される。そして、2つの特徴部分が合致している場合に患者が認証される。これにより、本人確認を継続的に行うことができ、患者のなりすましやすり替わりを確実に防止することができる。予め特徴部分を記憶しておくことにより、認証時の処理を簡易にすることができる。
【0025】
上記発明においては、前記識別用生体情報記憶部に、患者の識別用生体情報の時間変化における特徴部分が、環境パラメータに対応づけて記憶され、環境パラメータを検出する環境パラメータ検出部を備え、前記特徴部分照合部が、環境パラメータ検出部により検出された環境パラメータに対応して記憶されている特徴部分を用いて照合を行うこととしてもよい。
【0026】
また、上記発明においては、環境パラメータが、患者の運動量または体温であることとしてもよい。
また、上記発明においては、識別用生体情報が、脈波、心拍または血中酸素飽和度であることとしてもよい。
【0027】
また、上記発明においては、前記特徴部分照合部による照合の結果、2つの特徴部分が合致していないと判断された場合に、認証エラーを報知する報知手段を備えることとしてもよい。
このようにすることで、報知手段の作動により、認証エラーが報知され、患者がすり替わった状態のまま検査が継続されてしまうことを防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、被識別者を拘束することなく、長時間にわたり継続的に個人認証を行い続けることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の一実施形態に係る生体情報測定システム(個人認証システム)1について、図1〜図3を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る生体情報測定システム1は、各患者(被識別者)Xの生体情報A(A,A)を取得する種々のセンサ2を含む生体情報検出部3と、医療機関に配置される医療機関サーバ4と、各患者Xの家に配置されるホームサーバ5と、これらのサーバ4,5を接続するネットワーク6とを備えている。図1には、説明の簡略化のため、各サーバ4,5が1つずつネットワーク6に接続されている場合が示されているが、現実には、複数のホームサーバ5が1以上の医療機関サーバ4とネットワーク6により接続されている。
【0030】
患者Xの生体情報Aとしては、脈波、心拍、血中酸素飽和度、血糖値、睡眠量、体温などが挙げられる。
生体情報検出部3を構成するセンサ2としては、例えば、脈波の場合は脈波計、心拍の場合は心拍計、血中酸素飽和度の場合はパルスオキシメータ、血糖値の場合は血糖値測定器、体温の場合は体温計のように、患者Xの身体に常時装着状態に維持されて、所定の測定期間にわたって継続的に生体情報を取得し続けることができるウェアラブルセンサなどが採用されている。
【0031】
また、これらの生体情報検出部3を構成する各センサ2には、無線通信手段(図示略)が備えられていることが好ましい。センサ2により検出された各種生体情報Aが、無線通信手段により、無線でホームサーバ5に送信されるようになっている。このようにすることで、患者Xを配線により拘束することなく、低い拘束状態で生体情報Aの測定を行うことができるようになっている。
ホームサーバ5は各種センサ2からの生体情報Aを受信し、ネットワーク6を介して医療機関サーバ4に送信することができるようになっている。
【0032】
医療機関サーバ4は、ネットワーク6を介して送られてきた生体情報Aを受信し、その生体情報Aの中から患者Xを特定するための識別用生体情報Aを選択する識別情報選択部7と、選択された識別用生体情報Aが入力されて、当該識別用生体情報Aの時間変化における特徴部分Bを抽出する抽出部8aが備えられた特徴部分抽出手段8とを備えている。
【0033】
また、医療機関サーバ4には、各患者Xの識別用生体情報Aを登録しておく記憶部9が備えられている。記憶部9には識別用生体情報Aに対応づけて測定結果、その他の情報が記憶されるようになっている。また、記憶部9から読み出された患者Xの識別用生体情報Aも特徴部分抽出手段8に設けられた抽出部8bに入力されて、その時間変化における特徴部分Bが抽出されるようになっている。
【0034】
また、医療機関サーバ4には、抽出部8a,8bにおいて抽出された特徴部分B,Bを照合する照合部10が備えられている。照合部10においては2つの特徴部分B,Bが照合され、一致しているか否かの照合結果Cが出力されるようになっている。また、医療機関サーバ4には、照合部10において2つの特徴部分B,Bが一致しているとの照合結果Cが得られた場合に、ネットワーク6を介して送られてきた全ての生体情報A,Aを当該特徴部分Bに対応する識別用生体情報Aと対応づけて記憶部9に記憶させる処理部11が備えられている。
【0035】
前記抽出部8a,8bにおいては、例えば、識別用生体情報Aとして脈波情報を用いている。脈波情報は、図3(a)に示されるように、周期的に繰り返される生体情報Aであり、(b)に示されるように、その2次微分を演算することにより得られた加速度脈波のピーク値間の時間間隔を個人を識別するための特徴部分とすることができる。ピーク値は、収縮初期陽性波(a波)、収縮初期陰性波(b波)、収縮中期再上昇波(c波)、収縮工期再下降波(d波)および拡張初期陽性波(e波)において形成される。
【0036】
図3(a)の脈波の原波形と、(b)の加速度脈波とを比較すると、a波とb波は、心臓の収縮期前方の成分、c波とd波は収縮期後方の成分に含まれており、収縮期前方の成分は血液の駆出に生ずる駆動圧波を反映し、収縮期後方の成分は駆動圧波が末梢に伝播し反射して戻ってきた反射圧波を反映したものとなっている。これらのピーク値の位置は、患者個人の心臓の大きさのみならず血管系の形態に依存して相違するため、個人を特定するための特徴部分として使用することができる。さらに具体的には、特徴部分としては、b−a=T、c−a=T、d−a=T、e−a=T、a−a=T が用いられている。
【0037】
このように構成された本実施形態に係る生体情報測定システム1における個人認証方法について以下に説明する。
本実施形態に係る生体情報測定システム1を用いて、患者Xの生体情報Aを測定するには、患者Xの身体に固定した各種センサ2を作動させ、患者Xの生体情報Aを所定時間にわたって検出する。検出された生体情報Aには、周期的に変化する生体情報Aとして、脈波、心拍、血中酸素飽和度などがあり、非周期的に変化する生体情報Aとして血糖値、睡眠量、体温などがある。
【0038】
検出された生体情報Aは、各種センサ2からホームサーバ5に送られ、ホームサーバ5からネットワーク6を介して医療機関サーバ4に送られる。医療機関サーバ4においては、受信された生体情報Aが選択部7に入力され、識別用生体情報Aとして脈波情報が選択される。選択された脈波情報は抽出部8aに入力され、抽出部8aにおいて、その時間変化における特徴部分Bが抽出される。
【0039】
一方、医療機関サーバ4に備えられた記憶部9内には、複数の患者Xの脈波情報が記憶されており、記憶部9から逐次読み出された脈波情報が抽出部8bに入力されることにより、その特徴部分Bが抽出され、照合部10に送られる。
照合部10においては、検出された脈波情報から抽出部8aにおいて抽出された特徴部分Bと、記憶部9に記憶されていて抽出部8bにおいて抽出された特徴部分Bとが照合される。
【0040】
そして、照合部10から、2つの特徴部分B,Bが合致した旨の照合結果Cが出力されると、処理部11が、当該特徴部分Bに対応する患者Xのデータベースに、生体情報検出部3において検出された全ての生体情報A(A,A)を対応づけて記憶する。これにより、各患者Xから検出された生体情報Aが、当該患者Xのデータベースに間違いなく対応づけて記憶される。
【0041】
このように本実施形態に係る生体情報測定システム1および個人認証方法によれば、周期的に変化する生体情報Aとしての脈波情報を識別用生体情報Aに用いて、患者X本人の認証を行うので、生体情報Aの測定途中のいずれの時期においても、任意にあるいは継続的に患者X本人の確認を行い続けることができる。この場合に、指紋認証、虹彩認証あるいは掌静脈認証のように大がかりな装置に対して患者Xを固定して行うような拘束が必要なく、測定項目として必要な脈波情報の測定によって患者Xの認証を行うことができ、患者への負担を軽減することができるという利点がある。
【0042】
その結果、長時間にわたる生体情報Aの測定中において、何らかの原因により患者Xがすり替わった場合においても、迅速に照合エラーの判断を行い、誤った生体情報Aが患者Xの生体情報Aとして蓄積されてしまうことを未然に防止することができる。
【0043】
なお、本実施形態に係る生体情報測定システム1においては、患者Xの脈波情報を記憶部9に登録しておき、脈波情報が検出される度に、登録されていた脈波情報についても特徴部分Bを抽出することとした。このようにすることで、測定された生データとしての脈波情報を登録しておけば足りるので、識別用のデータを特別に登録しておく必要がなく、記憶部9内のデータ構造を簡略化することができるという利点がある。
【0044】
また、一旦認証された患者Xの脈波情報を、その後継続的に照合するために、照合履歴として記憶しておき、次に行われる照合の際に照合履歴内の脈波情報を優先的に使用することとしてもよい。
【0045】
一方、測定された生データとしての脈波情報以外に、脈波情報から抽出した特徴部分Bを記憶しておくこととしてもよい。このようにすることで、患者Xの照合作業を簡易かつ迅速に行うことができるという効果がある。
【0046】
また、本実施形態においては、脈波情報を識別用生体情報Aとして使用したが、これに代えて、周期的に変化する他の生体情報A、例えば、心拍や血中酸素飽和度などの生体情報Aを識別用生体情報Aとして使用することとしてもよい。
【0047】
また、脈波、心拍あるいは血中酸素飽和度のような生体情報Aは、他の環境パラメータEによって変化するものであるため、生体情報検出部3の他に環境情報検出部(図示略)を設け、環境パラメータEを検出して患者Xの認証に用いることとしてもよい。
環境パラメータEとしては、患者Xの運動量を測るための加速度、気温、患者の位置(高度)、環境音(音圧レベル)、周囲の臭いなどが挙げられる。
【0048】
具体的には、医療機関サーバ4内の記憶部9に、患者Xの識別用生体情報Aを環境パラメータEと対応づけて記憶しておき、図4に示されるように、検出された環境パラメータEを他の生体情報Aとともに医療機関サーバ4に送る。医療機関サーバ4においては、選択部7において、送られてきた情報内から環境パラメータEを選択し、該環境パラメータEをキーとして記憶部9内を検索することで、環境パラメータEに対応して記憶されている識別用生体情報Aを記憶部9内から逐次出力させる。これにより、環境パラメータEが変動しても、対応する識別用生体情報Aを用いて精度よく個人認証を行うことができる。
【0049】
また、脈波、心拍あるいは血中酸素飽和度などを識別用生体情報Aとして使用する場合、他の生体情報A、例えば、体温や発汗量などの変動によっても識別用生体情報Aが変動するので、体温や発汗量などの他の生体情報Aを環境パラメータEと同様に取り扱うこととしてもよい。
【0050】
また、本実施形態に係る生体情報測定システム1および個人認証方法においては、照合部10において2つの特徴部分B,Bが合致した旨の照合結果Cが得られた場合に、検出された生体情報Aを記憶することとしたが、2つの特徴部分B,Bが合致しない旨の照合結果Cが得られた場合には、検出された生体情報Aを記憶しない他、照合エラーが生じた旨を外部に報知する報知部12を備えていてもよい。このようにすることで、無駄な測定作業が継続されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る生体情報測定システムを示す全体構成図である。
【図2】図1の生体情報測定システムにおける医療機関サーバ内の構造を示すブロック図である。
【図3】図1の生体情報測定システムにおいて個人認証を行うための生体情報の一例としての脈波情報を示すグラフである。
【図4】図1の生体情報測定システムの変形例を示す医療機関サーバ内の構造を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
A 生体情報(検査用生体情報)
識別用生体情報
,B 特徴部分
E 環境パラメータ
X 患者(被識別者)
1 生体情報測定システム(個人認証システム)
3 生体情報検出部
8 特徴部分抽出手段(特徴部分抽出部)
8a,8b抽出部(特徴部分抽出部)
9 記憶部(生体情報記憶部)
10 照合部(特徴部分照合部)
12 報知部(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被識別者の周期的に変化する生体情報を所定時間にわたって検出し、
検出された生体情報の時間変化における特徴部分を抽出し、
抽出された特徴部分に基づいて被識別者の本人確認を行う個人認証方法。
【請求項2】
周期的に変化する生体情報が、脈波、心拍または血中酸素飽和度である請求項1に記載の個人認証方法。
【請求項3】
被識別者の周期的に変化する生体情報を環境パラメータに対応づけて記憶しておき、
環境パラメータを検出し、
検出された環境パラメータに対応して記憶されている生体情報の時間変化における特徴部分と、検出された生体情報の時間変化における特徴部分とを照合する請求項1または請求項2に記載の個人認証方法。
【請求項4】
環境パラメータが被識別者の運動量または体温である請求項3に記載の個人認証方法。
【請求項5】
被識別者の周期的に変化する生体情報を予め記憶する生体情報記憶部と、
被識別者の周期的に変化する生体情報を所定時間にわたって検出する生体情報検出部と、
前記生体情報記憶部に記憶されている生体情報および生体情報検出部により検出された生体情報の時間変化における特徴部分をそれぞれ抽出する特徴部分抽出部と、
該特徴部分抽出部により抽出された2つの特徴部分を照合し、合致している場合に被識別者を認証する特徴部分照合部とを備える個人認証システム。
【請求項6】
前記生体情報記憶部に、被識別者の所定時間にわたる生体情報が、環境パラメータに対応づけて記憶され、
環境パラメータを検出する環境パラメータ検出部を備え、
前記特徴部分抽出部が、環境パラメータ検出部により検出された環境パラメータに対応して記憶されている生体情報の時間変化における特徴部分を抽出する請求項5に記載の個人認証システム。
【請求項7】
被識別者の周期的に変化する生体情報の時間変化における特徴部分を予め記憶する生体情報記憶部と、
被識別者の周期的に変化する生体情報を検出する生体情報検出部と、
該生体情報検出部により検出された生体情報の時間変化における特徴部分を抽出する特徴部分抽出部と、
該特徴部分抽出部により抽出された特徴部分と生体情報記憶部に記憶されている特徴部分とを照合し、合致している場合に被識別者を認証する特徴部分照合部とを備える個人認証システム。
【請求項8】
前記生体情報記憶部に、被識別者の生体情報の時間変化における特徴部分が、環境パラメータに対応づけて記憶され、
環境パラメータを検出する環境パラメータ検出部を備え、
前記特徴部分照合部が、環境パラメータ検出部により検出された環境パラメータに対応して記憶されている特徴部分を用いて照合を行う請求項7に記載の個人認証システム。
【請求項9】
環境パラメータが被識別者の運動量または体温である請求項6または請求項8に記載の個人認証システム。
【請求項10】
生体情報が、脈波、心拍または血中酸素飽和度である請求項5から請求項9のいずれかに記載の個人認証システム。
【請求項11】
周期的に変化する識別用生体情報を含む1以上の検査用生体情報を検出する生体情報検出部と、
患者の識別用生体情報を所定時間にわたって予め記憶する識別用生体情報記憶部と、
検出された識別用生体情報および記憶されている識別用生体情報の時間変化における特徴部分をそれぞれ抽出する特徴部分抽出部と、
該特徴部分抽出部により抽出された2つの特徴部分を照合する特徴部分照合部と、
該特徴部分照合部における照合の結果、2つの特徴部分が合致していると判断された場合に、検出された検査用生体情報を当該患者の識別情報に対応づけて記憶する検査用生体情報記憶部とを備える生体情報測定システム。
【請求項12】
前記識別用生体情報記憶部に、患者の識別用生体情報が、環境パラメータに対応づけて記憶され、
環境パラメータを検出する環境パラメータ検出部を備え、
前記特徴部分抽出部が、環境パラメータ検出部により検出された環境パラメータに対応して記憶されている識別用生体情報の時間変化における特徴部分を抽出する請求項11に記載の生体情報測定システム。
【請求項13】
周期的に変化する識別用生体情報を含む1以上の検査用生体情報を検出する生体情報検出部と、
患者の識別用生体情報の時間変化における特徴部分を予め記憶する識別用生体情報記憶部と、
検出された識別用生体情報の時間変化における特徴部分を抽出する特徴部分抽出部と、
該特徴部分抽出部により抽出された特徴部分と生体情報記憶部に記憶されている特徴部分とを照合する特徴部分照合部と、
該特徴部分照合部における照合の結果、2つの特徴部分が合致していると判断された場合に、検出された検査用生体情報を当該患者の識別情報に対応づけて記憶する検査用生体情報記憶部とを備える生体情報測定システム。
【請求項14】
前記識別用生体情報記憶部に、患者の識別用生体情報の時間変化における特徴部分が、環境パラメータに対応づけて記憶され、
環境パラメータを検出する環境パラメータ検出部を備え、
前記特徴部分照合部が、環境パラメータ検出部により検出された環境パラメータに対応して記憶されている特徴部分を用いて照合を行う請求項13に記載の生体情報測定システム。
【請求項15】
環境パラメータが、患者の運動量または体温である請求項11または請求項13に記載の生体情報測定システム。
【請求項16】
識別用生体情報が、脈波、心拍または血中酸素飽和度である請求項11から請求項15のいずれかに記載の生体情報測定システム。
【請求項17】
前記特徴部分照合部による照合の結果、2つの特徴部分が合致していないと判断された場合に、認証エラーを報知する報知手段を備える請求項11から請求項16のいずれかに記載の生体情報測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−213196(P2007−213196A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30770(P2006−30770)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】