説明

光ジャイロ

【課題】製造が容易で消費電力が少ない新規な光ジャイロを提案する。
【解決手段】本発明の光ジャイロは、基板と、基板上に形成された円環状の光導波路(コア層13a)および光結合器(コア層13b)と、基板上に配置された半導体光増幅器(半導体光増幅器33)および光検出器(フォトダイオード34)とを備える。半導体光増幅器33は、コア層13aとともに円環状の光路41を形成するようにコア層13aに結合されている。半導体光増幅器33およびコア層13aは、光路41を時計回りに伝搬する第1のレーザ光と、光路41を反時計回りに伝搬する第2のレーザ光とを発生させる。コア層13bは、第1のレーザ光と第2のレーザ光とをコア層13aから引き出して重ね合わせる。フォトダイオード34は、重ね合わされた第1のレーザ光と第2のレーザ光とによって生じるビート信号を観測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ジャイロに関する。
【背景技術】
【0002】
回転する物体の角速度を検出するためのジャイロの中でも、光ジャイロは精度が高いという特徴を有する。光ジャイロでは、環状の光路を互いに逆方向に進む2つのレーザ光の周波数差を用いて角速度の検出を行う。このような光ジャイロとして、希ガスレーザを用いた光ジャイロが提案されている(たとえば特許文献1参照)。これらの光ジャイロでは、同じ経路を互いに逆方向に周回するレーザ光を取り出して干渉縞を形成させる。
【0003】
また、消費電力が少ない光ジャイロとして、三角環状の活性層(共振器)を備える半導体レーザ素子を用いたジャイロが提案されている(たとえば特許文献2参照)。この半導体レーザジャイロは、半導体レーザ素子に加えて、レーザ光の干渉縞を観測するための受光素子を備える。
【特許文献1】特開平11−351881号公報
【特許文献2】特開2000−230831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記半導体レーザジャイロは製造工程が複雑であり、特に、上記半導体レーザジャイロを構成する複数の素子を1つの基板上にモノリシックに形成しようとすると、製造工程が極めて複雑になる。
【0005】
このような状況において、本発明は、製造が容易で消費電力が少ない新規な光ジャイロを提案することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の光ジャイロは、基板と、前記基板上に形成された円環状の光導波路と、前記基板上に形成された光結合器と、前記基板上に配置された半導体光増幅器および光検出器とを備え、前記半導体光増幅器は、前記円環状の光導波路とともに円環状の光路を形成するように前記円環状の光導波路に結合されており、前記半導体光増幅器および前記円環状の光導波路は、前記光路を時計回りに伝搬する第1のレーザ光と、前記光路を反時計回りに伝搬する第2のレーザ光とを発生させ、前記光結合器は、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光とを前記円環状の光導波路から引き出して重ね合わせ、前記光検出器は、重ね合わされた前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光とによって生じるビート信号を観測する。なお、この明細書において、「基板上に形成された(または配置された)」とは、基板上に直接形成された(または配置された)場合を含み、さらに、何らかの層を介して基板上に形成された(または配置された)場合を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光ジャイロでは、レーザ光の吸収が少ない材料を用いてリング状の光路(光導波路)を形成できる。したがって、リング状の光路が活性層と同じ材料で形成されている半導体リングレーザを用いた従来の光ジャイロと比較して、低い電力で駆動させることが可能である。
【0008】
また、本発明の光ジャイロは、光導波路を形成した基板上に半導体光増幅器と光検出器とをマウントすることによって形成できる。そのため、従来の光ジャイロに比べて製造が容易である。
【0009】
また、本発明の光ジャイロで用いられている光導波路および光結合器は、半導体素子製造プロセスで用いられる技術(たとえばリソグラフィーやドライエッチングなど)によって同一基板上に形成できるため、小型で精度よく形成できる。そのため、本発明によれば、小型で性能がよい光ジャイロを得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について例を挙げて説明する。ただし、本発明は以下で述べる例には限定されない。以下の説明では、特定の数値や特定の材料を例示する場合があるが、本発明の効果が得られる限り、他の数値や他の材料を適用できる。
【0011】
[光ジャイロ]
以下に、本発明の光ジャイロ(光学式の回転角速度検出装置)について説明する。
【0012】
本発明の光ジャイロは、基板上に形成された円環状の光導波路と、基板上に形成された光結合器と、基板上に配置された半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier:SOA)および光検出器とを備える。別の観点では、本発明の光ジャイロは、基板と、その基板上に形成された平面光波回路(Planar Lightwave Circuit:PLC)とを備える。平面光波回路の全てまたは大部分は、半導体素子製造プロセスで形成される。そのため、基板には、半導体素子製造プロセスを行うのに適した基板が選択される。たとえば、基板には、単結晶シリコン基板が用いられる。シリコン基板は、それに配置される半導体光増幅器の放熱用ヒートシンクとしても機能し、低コスト化の点からも有効である。シリコン基板の他には、GaAs基板やInPなどの基板を用いてもよいし、AlNやAl23などの材料からなる基板を用いてもよい。
【0013】
半導体光増幅器は、上記の円環状の光導波路とともに円環状の光路を形成するように、その光導波路に結合される。
【0014】
半導体光増幅器および円環状の光導波路は、リング共振器を形成し、上記の円環状の光路を時計回りに伝搬する第1のレーザ光と、その光路を反時計回りに伝搬する第2のレーザ光とを発生させる。半導体光増幅器には、たとえば、直線状のキャビティーを有する半導体レーザ素子と同じ構造を有する積層構造を適用できる。半導体光増幅器のキャビティーと光導波路とによって、円環状の光路が形成される。
【0015】
半導体光増幅器(SOA)と光導波路とは、光導波路のコア中心と半導体光増幅器のモードフィールドの中心とがほぼ一致するように結合される。半導体光増幅器と光導波路との間には、数μm〜数十ミクロンの隙間ができる場合がある。そのような隙間による結合効率の低下を抑制するため、半導体光増幅器のキャビティーの2つの端面には、モードフィールド変換領域を形成することが好ましい。たとえば、キャビティーの2つの端面のそれぞれの近傍において活性層がテーパ状に広がっている半導体光増幅器を用いてもよい。
【0016】
本発明の効果が得られる限り、半導体光増幅器の構造に特に限定はない。たとえば、Al、GaおよびInといったIII族元素と、N、PおよびAsといったV族元素とを用いたIII−V族化合物半導体からなる活性層を備える半導体光増幅器を用いることができる。具体的には、InとPとを含むIII−V族化合物半導体や、GaとAsとを含むIII−V族化合物半導体を用いて形成された半導体光増幅器を用いてもよい。半導体光増幅器の一例は、2つの電極と、それらの電極の間に配置された2つのクラッド層と、それらのクラッド層の間に配置された活性層とを含む。
【0017】
光導波路は、一定の幅および厚さを有し円環状に形成されたコア層と、コア層の周囲を覆うように形成されたクラッド層とによって構成されている。コア層の幅、厚さおよび長さに特に限定はないが、高次モードが抑制された基本モードになるようにコア層の幅および厚さを設計することが好ましく、光導波路のコア層およびクラッド層の屈折率と発振波長とに基づいてこれらの値を決定することが好ましい。また、リング共振器を構成する光導波路の長さ(コア層の長さ)は、ジャイロ信号の検出感度に影響し、その長さが小さいほど感度が低下する。そのため、光導波路の長さは、2πmm以上としてもよい。
【0018】
クラッド層は、コア層にレーザ光を閉じ込めるため、レーザ光の波長においてコア層よりも屈折率が小さい材料からなる。コア層/クラッド層の組み合わせの例としては、公知の組み合わせを適用してもよく、たとえば、Si基板上のGeドープSiO2層/SiO2層、ポリイミド層/テフロン(登録商標)層といった組み合わせを適用してもよい。また、クラッド層として空気を用いる場合には、コア層には、GaAs基板上のGaAs/AlGaAs、(ポリ)Si、Ta25・SiO2、SiNなどを適用してもよい。コア層は、半導体光増幅器から出射されるレーザ光の吸収ができるだけ小さい材料で形成されていることが好ましい。この点で、SiO2はコア層の材料として好ましい。
【0019】
光結合器は、第1のレーザ光と第2のレーザ光とを、円環状の光導波路(光路)から引き出して重ね合わせる。光結合器は、第1および第2のレーザ光を円環状の光導波路から引き出して重ね合わせるための光導波路を含む。光結合器に含まれる光導波路は円環状ではないが、それ以外の構成については、上述した円環状の光導波路と同じ構成とすることができる。
【0020】
光結合器の光導波路は、第1および第2のレーザ光が円環状の光導波路から光結合器の光導波路に伝搬されるように形成される。一例の光結合器では、光結合器の光導波路のコア層の一部が、円環状の光導波路のコア層の一部の接線に、隣接して且つほぼ平行に配置される。このカップリング部分における、円環状の光導波路のコア層と光結合器の光導波路のコア層との最短距離は、たとえば、発振波長の数倍程度か、あるいはそれ以下の距離に設定される。
【0021】
光結合器は、たとえば、円環状の光路を周回する第1のレーザ光を取り出すための第1の方向性結合器(第1の光導波路)と、第2のレーザ光を取り出すための第2の方向性結合器(第2の光導波路)と、取り出した第1および第2のレーザ光を結合させるための第3の方向性結合器とを備えてもよい。これらの光導波路および方向性結合器は、1本の光導波路を所定の位置に配置することによって形成してもよいし、複数の光導波路を所定の位置に配置することによって形成してもよい。
【0022】
光結合器の第1の光導波路に伝搬した第1のレーザ光と、光結合器の第2の光導波路に伝搬した第2のレーザ光とは、第3の方向性結合器で結合される。第3の方向性結合器では、たとえば、第1のレーザ光が進行する第1の光導波路の一部と、第2のレーザ光が進行する第2の光導波路の一部とが、それらが互いに隣接するように、且つ、それらがほぼ平行になるように、且つ、第1および第2のレーザ光がともに同じ方向に伝搬されるように形成される。このカップリング部分では、第1の光導波路を進行する第1のレーザ光の一部が、第2の光導波路に結合し、第2の光導波路を進行する第2のレーザ光の一部が、第1の光導波路に結合する。その結果、このカップリング部分よりも光導波路の端部側(下流側)の部分では、第1のレーザ光と第2のレーザ光とが共に端部側(下流側)に向かって同じ導波路を進行する。その結果、第1のレーザ光と第2のレーザ光とに周波数差が存在する場合には、両者のビート信号が観測される。
【0023】
系が回転した場合、サニャック効果(sagnac効果)によって、第1のレーザ光の周波数と第2のレーザ光の周波数との間に差が生じ、光結合器の一端でビート信号を発生させる。光検出器は、重ね合わされた第1のレーザ光と第2のレーザ光とによって生じるビート信号を観測する。このビート信号は、光強度の変化として測定される。このビート信号の強度の変化を測定することによって、ジャイロの回転角速度を求めることができる。
【0024】
光検出器は、2つのレーザ光によって生じるビート信号を観測できる位置に配置され、たとえば、光結合器の第3の方向性結合器よりも下流側の光導波路の一端に配置される。光検出器は、1つ以上の受光素子を備える。受光素子には、たとえば、フォトダイオードやフォトトランジスタを用いることができる。光導波路との結合を容易にするため、導波路型のフォトダイオードを用いることが好ましい。その場合、フォトダイオードの端面において反射されたレーザ光が光導波路に戻らないように、フォトダイオードの導波路の端面が、光軸に対して数度だけ斜めになるようにフォトダイオードを配置することが好ましい。
【0025】
本発明の光ジャイロでは、円環状の光導波路が、基板上に積層された多層膜によって構成されていてもよい。この場合、半導体光増幅器および光検出器は、それぞれ、上記多層膜の一部を除去することによって形成された凹部に配置されていてもよい。
【0026】
本発明の光ジャイロでは、上記光結合器が、1本の光結合用光導波路を含んでもよい。この光結合用光導波路は、第1の部分と、第2の部分と、第1の部分と第2の部分との間に配置された第3の部分とを含む。第2の部分は、第1の部分に隣接して且つ第1の部分と実質的に平行に配置されている。第3の部分は、円環状の光導波路に隣接して且つ円環状の光導波路の接線方向と平行に配置されている。
【0027】
本発明の光ジャイロでは、上記光結合器が、第1および第2の光結合用光導波路を含んでもよい。そして、第1の光結合用光導波路の一部および第2の光結合用光導波路の一部は、それぞれ、前記円環状の光導波路に隣接して且つ前記円環状の光導波路の接線方向と平行に配置されていてもよい。また、第1の光結合用光導波路の他の一部と第2の光結合用光導波路の他の一部とは、互いに隣接して且つ実質的に互いに平行に配置されていてもよい。
【0028】
[光ジャイロの一例]
以下に、本発明の光ジャイロの製造方法の一例について説明する。最初に、円環状の光導波路と光結合器とを形成する。これらの製造工程を、図1に示す。なお、図1(a)および(c)は断面図であり、図1(b)は上面図である。
【0029】
まず、図1(a)に示すように、単結晶シリコンの基板11上に、下部クラッド層12、コア層13、およびフォトレジストパターン19を形成する。下部クラッド層12はSiO2層であり、コア層13はGeドープのSiO2層である。
【0030】
フォトレジストパターン19は、一般的なフォトリソグラフィーで形成できる。このフォトレジストパターン19をマスクとしてエッチングすることによって、フォトレジストパターン19と同じ平面形状を有するコア層13が形成される。エッチングは、たとえばRIE等のドライエッチング(エッチングガスはたとえばCF4など)、またはウエットエッチング(エッチャントはバッファードフッ酸など)によって実施できる。
【0031】
エッチング後のコア層13の平面形状を図1(b)に示す。コア層13は、円環状の光導波路となる第1のコア層13aと、光結合器となる第2のコア層13bとを含む。第1のコア層13aは円環状の形状を有する。第2のコア層13bの形状については後述する。
【0032】
次に、図1(c)に示すように、上部クラッド層14(埋め込み層)を形成する。上部クラッド層14は、下部クラッド層12と同様にSiO2層である。上部クラッド層14と下部クラッド層12とによって、コア層13の周囲が囲まれる。このようにして、多層膜(下部クラッド層12、コア層13および上部クラッド層14)によって構成された光導波路が形成される。
【0033】
クラッド層(下部クラッド層12および上部クラッド層14)とコア層13との比屈折率差は、たとえば1.5%とする。その結果、コア層13を進行するレーザ光は、コア層13内に閉じ込められる。
【0034】
下部クラッド層12、コア層13および上部クラッド層14は、一般的な方法、たとえば、火炎堆積法やスパッタ法で形成できる。
【0035】
次に、図2(a)の平面図に示すように、半導体光増幅器(SOA)およびフォトダイオード(光検出器)を配置するための2つの凹部(窓21および22)を形成する。具体的には、フォトリソ・エッチング工程により、多層膜(下部クラッド層12、コア層13および上部クラッド層14)の一部をエッチングすることによって、窓21および22を形成する。図2(a)の線IIb−IIbの部分(窓22の部分)の断面図を図2(b)に示す。半導体光増幅器を配置するための窓21は、第1のコア層13aのうち、第2のコア層13bと隣接していない部分の一部を切り取るように形成される。フォトダイオードを配置するための窓22は、第2のコア層13bの一端に形成される。
【0036】
窓21および22を形成するためのエッチングは、コア層13のエッチングと同様の方法で行うことができる。このとき、下部クラッド層12の途中まで、または基板11に到達するまでエッチングを行う。なお、基板11に到達するまでエッチングした方が、半導体光増幅器の放熱性の点でより好ましい。また、コア層13の光導波路の端面、すなわち、窓21と窓22とに露出する端面は、光導波路の中心軸に対して数度だけ斜めに傾いていることが好ましい。また、この端面における反射を低減するために、この端面にARコーティングを施してもよい。
【0037】
次に、図3(a)および図3(b)に示すように、半導体光増幅器に電流を注入するための電極31を窓21の部分に形成し、フォトダイオードの出力を取り出すための電極32を窓22の部分に形成する。図3(a)は平面図であり、図3(b)は、図3(a)の線IIIb−IIIbにおける断面図である。電極31および32は、リフトオフ法によって形成される。電極には、たとえば、基板11側から順に積層されたTi層/Pt層/Au層の積層膜を用いることができる。
【0038】
次に、図4の平面図に示すように、電極31上に半導体光増幅器33をマウントし、電極32上にフォトダイオード34をマウントする。半導体光増幅器33は、直線状のキャビティーを有する半導体レーザ素子と同様の積層構造を有する。なお、半導体光増幅器33の両端面を、発振波長に対して透明な窓構造としてもよい。
【0039】
半導体光増幅器33は、そのキャビティー33aが第1のコア層13aと光学的に結合するようにマウントされる。また、フォトダイオード34は、その受光領域が第2のコア層13bと光学的に結合するようにマウントされる。
【0040】
このようにして、図4に示す光ジャイロ40が形成される。半導体光増幅器33のキャビティー33aと第1のコア層13aとによって円環状の光路41が形成される。また、第2のコア層13bは、下部クラッド層12および上部クラッド層14とともに1本の光導波路42を構成する。この光導波路42が、光結合器として機能する。図5に示すように、光導波路42は、第1の部分42aと、第1の部分42aに隣接して且つ第1の部分42aと実質的に平行に配置された第2の部分42bと、光路41(円環状の光導波路)に隣接して且つ光路41の接線方向と平行に配置された第3の部分42cとを含む。
【0041】
以下、図5を参照しながら、光ジャイロ40の機能について説明する。なお、図5では、説明に不要な部分(上部クラッド層14など)の図示を省略している。
【0042】
半導体光増幅器33に電流を注入することによって、光路41を時計回りに周回する第1のレーザ光L1と、光路41を反時計回りに周回する第2のレーザ光L2とが発生する。
【0043】
光導波路42は、第1の結合部43において光路41と結合する。第1の結合部43は、第1のレーザ光L1を取り出すための方向性結合器、および第2のレーザ光L2を取り出すための方向性結合器として機能する。具体的には、第1の結合部43において、光路41を時計回りに周回する第1のレーザ光L1の一部が、光導波路42に結合して光導波路42を一方向に進行する。また、第1の結合部43において、光路41を反時計回りに周回する第2のレーザ光L2の一部が、光導波路42に結合して光導波路42を、上記一方向とは逆の方向に進行する。
【0044】
第1の結合部43は、光路41を進行するレーザ光のうち少量のレーザ光(たとえば1%〜10%)が光導波路42に結合するように形成される。第1の結合部43における光路41(第1のコア層13a)と光導波路42(第2のコア層13b)との最短距離は、たとえば2μm前後である。
【0045】
また、第2の結合部44において、光導波路42の第1の部分42aを進行する第1のレーザ光L1の一部(たとえば約50%)が、光導波路42の他の第2の部分42bに結合する。また、光導波路42の第2の部分42bを進行する第2のレーザ光L2の一部(たとえば約50%)が、光導波路42の第1の部分42aに結合する。第2の結合部44における第1の部分42aと第2の部分42bとの最短距離は、たとえば1μm前後である。
【0046】
結合された2つのレーザ光は、光導波路42の端面(窓22に露出した端面)から出射されフォトダイオード34で検知される。レーザ光L1の周波数とレーザ光L2の周波数とが異なる場合には、フォトダイオードでビート信号が検出される。
【0047】
なお、上記の例では、1つの結合部(第1の結合部43)においてレーザ光L1およびレーザ光L2を取り出す構成を説明したが、レーザ光L1とレーザ光L2とを別々の結合部において取り出してもよい。そのような光ジャイロの構成を図6の平面図に模式的に示す。
【0048】
図6の光ジャイロ50は、光ジャイロ40と比べて光導波路42の形状のみが異なるため、重複する説明を省略する。光ジャイロ50では、光導波路42の代わりに、光結合用の2つの光導波路52aおよび52bによって構成される光導波路52を用いる。光導波路52は、コア層13を光導波路の形状にエッチングすることによって簡単に形成できる。光導波路52aの一部は、第1の結合部53において、光路41(円環状の光導波路)に隣接して且つ光路41の接線方向と平行に配置されている。光導波路52bの一部は、第2の結合部54において、それぞれ、光路41(円環状の光導波路)に隣接して且つ光路41の接線方向と平行に配置されている。また、光導波路52aの他の一部と光導波路52bの他の一部とは、第3の結合部55において、互いに隣接して且つ実質的に互いに平行に配置されている。
【0049】
光導波路52aは第1の結合部53において光路41と結合し、光導波路52bは第2の結合部54において光路41と結合する。また、光導波路52aと光導波路52bとは、第3の結合部55において互いに結合する。すなわち、結合部53〜55はそれぞれ方向性結合器として機能する。第1の結合部53では、第1のレーザ光L1が光導波路52aに結合する。第2の結合部54では、第2のレーザ光L2が光導波路52bに結合する。レーザ光L1とレーザ光L2とは、第3の結合部55において結合される。結合された2つのレーザ光のビート信号は、フォトダイオード34によって観察される。光ジャイロ50でも、光ジャイロ40と同様にジャイロの回転角速度を求めることができる。
【0050】
なお、本発明の光ジャイロでは、導波路の途中に、様々な導波路型の素子を配置してもよい。また、製造工程は複雑になるが、半導体光増幅器および/または光検出器を、半導体素子製造プロセスを用いて基板上で形成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、光ジャイロに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の光ジャイロの製造工程の一例を示す模式図である。
【図2】図1に続く工程を示す模式図である。
【図3】図2に続く工程を示す模式図である。
【図4】本発明の光ジャイロの一例を模式的に示す上面図である。
【図5】図4に示した光ジャイロの機能を示す図である。
【図6】本発明の光ジャイロの他の一例を模式的に示す上面図である。
【符号の説明】
【0053】
11 基板
12 下部クラッド層
13、13a、13b コア層(光導波路)
14 上部クラッド層
21、22 窓
31、32 電極
40、50 光ジャイロ
33 半導体光増幅器
33a キャビティー
34 フォトダイオード
41 光路
42、52、52a、52b 光導波路(光結合器)
43、44、53、54、55 結合部(方向性結合器)
L1、L2 レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板上に形成された円環状の光導波路と、前記基板上に形成された光結合器と、前記基板上に配置された半導体光増幅器および光検出器とを備え、
前記半導体光増幅器は、前記円環状の光導波路とともに円環状の光路を形成するように前記円環状の光導波路に結合されており、
前記半導体光増幅器および前記円環状の光導波路は、前記光路を時計回りに伝搬する第1のレーザ光と、前記光路を反時計回りに伝搬する第2のレーザ光とを発生させ、
前記光結合器は、前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光とを前記光路から引き出して重ね合わせ、
前記光検出器は、重ね合わされた前記第1のレーザ光と前記第2のレーザ光とによって生じるビート信号を観測する、光ジャイロ。
【請求項2】
前記半導体光増幅器が、III−V族化合物半導体からなる活性層を備える、請求項1に記載の光ジャイロ。
【請求項3】
前記円環状の光導波路は、前記基板上に積層された多層膜によって構成されており、
前記半導体光増幅器および前記光検出器は、それぞれ、前記多層膜の一部を除去することによって形成された凹部に配置されている、請求項1または2に記載の光ジャイロ。
【請求項4】
前記光結合器は、1本の光結合用光導波路を含み、
前記光結合用光導波路は、第1の部分と、第2の部分と、前記第1の部分と前記第2の部分との間に配置された第3の部分とを含み、
前記第2の部分は、前記第1の部分に隣接して且つ前記第1の部分と実質的に平行に配置されており、
前記第3の部分は、前記円環状の光導波路に隣接して且つ前記円環状の光導波路の接線方向と平行に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ジャイロ。
【請求項5】
前記光結合器は、第1および第2の光結合用光導波路を含み、
前記第1の光結合用光導波路の一部および前記第2の光結合用光導波路の一部は、それぞれ、前記円環状の光導波路に隣接して且つ前記円環状の光導波路の接線方向と平行に配置されており、
前記第1の光結合用光導波路の他の一部と前記第2の光結合用光導波路の他の一部とは、互いに隣接して且つ実質的に互いに平行に配置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ジャイロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−2954(P2008−2954A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172647(P2006−172647)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度独立行政法人情報通信研究機構、研究テーマ「シームレスな位置情報検出を実現する高精度角速度センサチップの研究開発」に関する委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】