説明

光デバイス及びその製造方法

本発明は、基板表面と平行な方向に伝播する光の光軸方向を前記基板表面に対し角度を持つ方向に変化させる光デバイスであって、前記光軸方向を変化させる機構が前記基板表面に形成された反射面であり、前記反射面は、基板表面における幅が光の入射する側から光の進行方向に向かって減少または増加することにより、1工程でマスクを作成できるのでプロセス工程の増加を防止でき、マスクの精度が高く、傾斜面のばらつきが小さくなり、製造コストを低く抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、光デバイス及びその製造方法に関し、特に、光通信デバイスや光ピックアップなどに用いられる光デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
従来から、光導波路を用いた光デバイスが光スイッチなどに利用されている。例えば参考文献1(A.Himeno et.al.,“Silica−Based Planar Lightwave Circuits”,IEEE.J.Selected Topics Quantam Electronics,vol.4,no.6,pp.913,1998)に記載されているように、マッハツェンダー干渉計(MZI)回路を用いて光の光路を切り替える光通信デバイスがある。
このような光デバイスにおいて、光量を測定するために信号光の一部を導波路の上部方向に取り出し、PD(フォトダイオード)などを用いて受光することがある。このような光デバイスの場合、基板に形成した溝の側壁の少なくとも一部が傾斜面となるように形成し、その傾斜面を光の反射面として利用する方法が有効である。
膜に溝を掘る場合、反応性イオンエッチング法などのドライエッチング法が一般によく用いられる。反応性ドライエッチング法を用いて、基板上に、概ね垂直な側壁(垂直面)と傾斜を持つ側壁(傾斜面)を有する溝を形成する場合、傾斜面をエッチングする部分のマスクにも傾斜をつけることが必要となる。
例えば、マスク材料と被エッチング材料のエッチング選択比が1であれば、図1に示すように、作製したい傾斜面と同一角度でマスク材の角度をつける必要がある。図1では基板10上に被エッチング膜12が形成され、その上にマスク14とマスク15が形成されている。マスク14は垂直面14aを有し、マスク15は傾斜面15aを有している。
また、マスクに角度をつける代わりに、図2に示すように、マスク16を階段状に積み重ねて階段面16aを形成することで被エッチング膜12の傾斜面をエッチングすることは可能であるが、滑らかな傾斜面を形成する場合は、階段面16aの段数を多くする必要があり、レジストでこのマスク16を形成するとしてもレジストの複数回の塗布、露光、現像工程が必要となる。
これらのプロセス工程が増えることは、マスクの精度が悪くなり、形成される傾斜面のばらつきが大きくなることや、工数が増大するため、高コスト化という問題があった。
【発明の開示】
本発明は、プロセス工程の増加を防止し、マスクの精度が高く、傾斜面のばらつきが小さく、製造コストを低く抑えることができる光デバイス及びその製造方法を提供することを総括的な目的とする。
この目的を達成するため、本発明は、基板表面と平行な方向に伝播する光の光軸方向を前記基板表面に対し角度を持つ方向に変化させる光デバイスであって、前記光軸方向を変化させる機構が前記基板表面に形成された反射面であり、前記反射面は、基板表面における幅が光の入射する側から光の進行方向に向かって減少または増加するよう構成される。
このような光デバイスによれば、1工程でマスクを作成できるのでプロセス工程の増加を防止でき、マスクの精度が高く、傾斜面のばらつきが小さくなり、製造コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、従来の傾斜面製造方法を説明するための図である。
図2は、従来の傾斜面製造方法を説明するための図である。
図3は、本発明方法を説明するための平面図である。
図4は、本発明方法を説明するための断面図である。
図5は、本発明方法で用いるマスクの一実施例の平面図である。
図6は、被エッチング膜に垂直面と傾斜面を有する溝を形成した一実施例の断面図である。
図7は、本発明の製造工程を説明するための図である。
図8は、本発明方法を説明するための平面図,断面図である。
図9は、本発明の光デバイスを適用した光通信デバイスの一実施例の斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
本発明では、垂直な側壁(垂直面)と傾斜を持つ側壁(傾斜面)を有する溝を形成するプロセスを、マイクロローディング効果を用いたドライエッチングによって一度のプロセスにて行う。マイクロローディングとは、エッチングプロセスにおいて、エッチングを行う領域の面積に依存して、エッチングレートが異なることで、面積が狭い領域程エッチングレートが低くなる。すなわち、マスク材料の形状により、マイクロローディングをコントロールすることで、任意の傾斜を持つ傾斜面のエッチングが可能となる。
上記の垂直面と傾斜面を有する溝を一度のプロセスで形成するためには、傾斜面の上側に当たる部分のマスク開口部の幅を狭くし、傾斜面の下側に当たる部分の開口部の幅を広くすることで開口面積の差を生じさせる。つまり、マスク開口部の狭い部分は、マイクロローディング効果によって、エッチングレートが低下してエッチングされ難くなり、反対にマスク開口部の広い部分は、エッチングレートの低下がなくエッチングされ易いため、エッチングレートの変化により傾斜面が形成される。これにより、このようにすれば、マスクを階段状に形成して傾斜面を形成する必要がなく、工数の大幅な削減ができる。
本発明では、図3に示すように、ほぼ三角形のマスク開口部20を有するマスク22を形成する。このマスク22を用いて反応性イオンエッチング(RIE)を行えば、図4に示すように、被エッチング膜24に垂直面24aと傾斜面24bを有する溝26を形成することができる。この際、マスク22の形状に傾斜面を形成する必要もない。
図5は、本発明方法で用いるマスクの一実施例の平面図を示す。同図中、マスク開口部30を有するマスク34を形成する。マスク開口部30はほぼ三角形の主開口部31及びダミー開口部32と、これらの頂点を結ぶ連結開口部33とから構成されている。
主開口部31とダミー開口部32は連結開口部33の延在方向と直交する辺がほぼ200μmとされ、この辺の両端の頂点は曲率半径ほぼ30μmの円弧状に形成する。これは、マスク34のパターンニング時に頂点近傍からひび割れが生じるのを防止するためである。
ここで、主開口部31の3つの頂点をすべて半径30μmの円弧にしてしまうと、反射面として利用するのに十分な角度の傾斜面をマイクロローディング効果で形成することは難しくなる。従って、主開口部31とダミー開口部32の向き合った頂点間を幅2μmまで狭め、連結開口部33で連結している。
こうすることで、主開口部31の頂点での幅を2μmにすることができ、反射面として利用するのに十分な角度の傾斜面をマイクロローディング効果で形成することが可能となり、なおかつ、マスク34のひび割れを防ぐことができる。ダミー開口部32は連結開口部33の末端処理のために設けられており、必ずしもダミー開口部32を主開口部31と鏡対称にしなくとも良い。
図6は、被エッチング膜に垂直面と傾斜面を有する溝を形成した一実施例の断面図を示す。同図中、シリコン基板40上にSiO2を主成分とする厚さ約50μmの被エッチング膜42をCVD法により形成する。被エッチング膜42内には光導波路43が形成されている。
この被エッチング膜42に図5のマスクを重ね、反応性イオンエッチングを行うことにより被エッチング膜42に垂直面42aと傾斜面42bを有する溝44を形成する。傾斜面42bの角度は49.8°であった。溝44は主開口部31によって形成され、同様に垂直面42cと傾斜面42dを有する溝45がダミー開口部32によって形成される。なお、溝44,45の平面形状は、図5に示すマスクの主開口部31,ダミー開口部32と同様である。
ここで、光導波路43を伝搬した光は垂直面42aから溝44内に出射され、傾斜面42bに照射されて図6の上方に反射される。なお、傾斜面42bに例えば金やアルミニュームなどの金属を蒸着すれば光反射率を向上できる。また、傾斜面42bに例えば金を蒸着し、溝44内をマッチング材にて充填した後、反射光の光軸に合わせフォトダイオードを搭載すれば光導波路43を伝搬した光のモニタ機能を実現できる。
次に、本発明の製造工程について詳しく説明する。まず、図7(A)に示すように、シリコン基板50上にSiO2を主成分とする被エッチング膜52を形成する。被エッチング膜52内には光導波路が形成される。更に、被エッチング膜52上の全面にマスクとなるクロム(Cr)層54を形成する。
次に、図7(B)に示すように、レジスト56を形成したのちマスク位置のレジスト56を除去する。この後、レジスト56を用いてクロム層54をエッチングし、図7(C)に示すように、クロムのマスク55を形成する。このマスク55の形状が例えば図5に示すようなものである。
更に、マスク55を用いて反応性イオンエッチングを行うことにより、図7(D)に示すように、垂直面と傾斜面を有する溝58を形成する。
このように、1工程でマスクを作成できるのでプロセス工程の増加を防止でき、マスクの精度が高く、傾斜面のばらつきが小さくなり、製造コストを低く抑えることができる。
上記実施例では、光導波路からの出射光に対する反射面について説明したが、光ファイバからの射出光に対する反射面でも同様に扱える。また、半導体レーザや発光ダイオードなどの光源を溝の内部に収納し、上記光源からの射出光に対する反射面を扱うことも可能であり、CDやDVD等の光ピックアップなどに適用して好適である。
更に、図8(A)の平面図に示すように、光の入射側の幅が狭く、射出側の幅が広いほぼ三角形のマスク開口部60を有するマスク62を形成する。このマスク62を用いて反応性イオンエッチングを行えば、図8(B)に示すように、被エッチング膜64に傾斜面64aと垂直面64bを有する溝66を形成することができる。この場合には、光導波路65を伝搬した光を基板68方向(図中、下方)に射出することも容易に行うことができる。
図9は、本発明の光デバイスを適用した光通信デバイスの一実施例の斜視図を示す。同図中、シリコン基板70上にSiO2を主成分とする光導波路形成膜72を形成する。光導波路形成膜72内には光導波路73,74,75が形成されている。光導波路73は外部から光を入力され、一端は遮光溝78で終端されている。光導波路74は外部に光を出力する。光導波路73,74は互いに近接して3dBカップラ76,77が形成されており、3dBカップラ76,77の中間位置における光導波路73上に加熱素子79が設けられている。この加熱素子79を駆動するか否かによって、光導波路73に入力される光信号を光導波路74から出力するか否かを切り替える光スイッチを構成している。
また、光導波路73,75は互いに近接してカップラ80を構成している。カップラ80は光導波路73を伝搬する光の1/20を光導波路75に分ける。光導波路75の一端には図6に示すような溝82が形成されている。そして、この溝の傾斜面の上部には反射光の光軸に受光面を合わせたフォトダイオード84が搭載されている。フォトダイオード84は光導波路75を通して伝搬する光をモニタする。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面と平行な方向に伝播する光の光軸方向を前記基板表面に対し角度を持つ方向に変化させる光デバイスであって、
前記光軸方向を変化させる機構が前記基板表面に形成された反射面であり、
前記反射面は、基板表面における幅が光の入射する側から光の進行方向に向かって減少または増加する光デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の光デバイスにおいて、
前記反射面は、前記基板表面に形成された溝の傾斜面である光デバイス。
【請求項3】
請求項2記載の光デバイスにおいて、
前記溝の傾斜面に反射膜を設けた光デバイス。
【請求項4】
請求項3記載の光デバイスにおいて、
前記反射膜は金属膜である光デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか記載の光デバイスにおいて、
前記反射面に入射する光は、前記基板表面に形成された光導波路から射出される光である光デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか記載の光デバイスにおいて、
前記反射面に入射する光は、発光素子から射出される光である光デバイス。
【請求項7】
請求項1または2記載の光デバイスの反射面を、マイクロローディング効果を利用したプロセスによって形成する光デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の光デバイスの製造方法において、
前記プロセスは、反応性イオンエッチングである光デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項8記載の光デバイスの製造方法において、
前記溝を形成する工程で、前記溝の傾斜面と垂直面とを同時に形成する形状のマスクを用いる光デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の光デバイスの製造方法において、
前記マスクは、基板表面における開口幅が光の入射する側から光の進行方向に向かって減少または増加する開口部形状とした光デバイスの製造方法。
【請求項11】
請求項9記載の光デバイスの製造方法において、
前記マスクは、基板表面における開口幅が光の入射する側から光の進行方向に向かって減少し、その後、光の進行方向に向かって増加する開口部形状とした光デバイスの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/025343
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【発行日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−535833(P2004−535833)
【国際出願番号】PCT/JP2002/009295
【国際出願日】平成14年9月11日(2002.9.11)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】