説明

光ピックアップ装置および光ディスク装置

【課題】センサへの迷光の漏れ込みを円滑に抑制すると共に、安定したフォーカスエラー信号を取得することが可能な光ピックアップ装置および光ディスク装置を提供する。
【解決手段】4分割センサC1には、分光素子によって回折されずに直進したBD光(信号光と迷光)の0次回折光が照射される。センサBs1〜Bs4には、トラック像の方向に並ぶ分光素子の回折領域によって回折されたBD光(信号光)の+1次回折光が照射される。センサBs1〜Bs4の検出信号により生成されるフォーカスエラー信号に所定の乗数を乗じて得た信号を、4分割センサC1の検出信号により生成されるフォーカスエラー信号に加算する。こうして得られる信号は、S/N比が高く維持されながら、迷光と溝信号の影響が低く抑えられた良好且つ安定したフォーカスエラー信号となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置および光ディスク装置に関するものであり、特に、複数の記録層が積層された記録媒体に対してレーザ光を照射する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。一枚のディスク内に複数の記録層を含めることにより、ディスクのデータ容量を顕著に高めることができる。記録層を積層する場合、これまでは片面2層が一般的であったが、最近では、さらに大容量化を進めるために、片面に3層以上の記録層が配されたディスクも実用化されている。ここで、記録層の積層数を増加させると、ディスクの大容量化を促進できる。しかし、その一方で、記録層間の間隔が狭くなり、層間クロストークによる信号劣化が増大する。
【0003】
記録層を多層化すると、記録/再生対象とされる記録層(ターゲット記録層)からの反射光が微弱となる。このため、ターゲット記録層の上下にある記録層から、不要な反射光(迷光)が光検出器に入射すると、検出信号が劣化し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。したがって、このように記録層が多数配されている場合には、適正に迷光を除去して、光検出器からの信号を安定化させる必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、記録層が多数配されている場合に、適正に迷光を除去し得る光ピックアップ装置の新たな構成が示されている。この構成によれば、光検出器の受光面上に、信号光のみが存在する方形状の領域(信号光領域)を作ることができる。ディスクからの反射光は、信号光領域の頂角付近に照射される。信号光領域の頂角付近に、光検出器のセンサを配置することで、検出信号に対する迷光による影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−211770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記光ピックアップ装置では、光検出器に配置されたセンサの検出信号を用いて、従来の非点収差法に基づくフォーカスエラー信号が生成される。しかしながら、ビームスポットがディスク上のトラックに不均等に掛かると、フォーカスエラー信号が不安定になり、フォーカスサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、センサへの迷光の漏れ込みを円滑に抑制すると共に、安定したフォーカスエラー信号を取得することが可能な光ピックアップ装置および光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、光ピックアップ装置に関する。この態様に係る光ピックアップ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向における前記レーザ光の収束により第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向における前記レーザ光の収束により第2の焦線を生成する非点収差素子と、前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、前記記録媒体
によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、回折作用によって、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導く分光素子と、を備える。ここで、前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記分光素子によって回折されずに直進した前記レーザ光が導かれる位置に配置された第1の4分割センサとを有する。前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ第3の方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ第4の方向に配置される。前記記録媒体上に配されたトラックの前記分光素子上の方向は、前記第3の方向に平行である。前記第1の4分割センサは、その検出信号により、非点収差法に基づく第1のフォーカスエラー信号が生成されるよう構成されている。また、前記2つの第1の領域に入射したレーザ光を受光するセンサは、その検出信号により、非点収差法に基づく第2のフォーカスエラー信号が生成されるよう構成されている。
【0009】
本発明の第2の態様は、光ディスク装置に関する。この態様に係る光ディスク装置は、上記第1の態様に係る光ピックアップ装置と、前記第1のフォーカスエラー信号を生成する第1の演算回路と、前記第2のフォーカスエラー信号を生成する第2の演算回路と、前記第2のフォーカスエラー信号に所定の乗数を乗じて得た信号を前記第1のフォーカスエラー信号に加算して第3のフォーカスエラー信号を生成する第3の演算回路と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、センサへの迷光の漏れ込みを円滑に抑制すると共に、安定したフォーカスエラー信号を取得することが可能な光ピックアップ装置および光ディスク装置を提供することができる。
【0011】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る技術原理(レーザ光の収束状態)を説明する図である。
【図2】実施の形態に係る技術原理(光束領域の分布状態)を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る技術原理(信号光と迷光の分布状態)を説明する図である。
【図4】実施の形態に係る技術原理(信号光のみを取り出す方法)を説明する図である。
【図5】実施の形態に係る技術原理に基づくセンサと信号生成方法を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る溝信号について説明するための図である。
【図7】実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図8】実施例に係る分光素子の構成を説明する図である。
【図9】実施例に係る光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図10】実施例に係る0次回折光、+1次回折光、−1次回折光の照射領域を示す模式図である。
【図11】実施例に係る演算処理部の構成を示す図である。
【図12】実施例および変更例に係る光ディスク装置の構成を示す図である。
【図13】実施例および変更例に係るテーブルを示す概念図である。
【図14】実施例に係るBDの初期処理を示すフローチャートである。
【図15】変更例1に係る分光素子の構成および光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図16】変更例2に係る分光素子の構成および光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図17】変更例3に係る分光素子の構成、光束領域、および光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図18】変更例3に係る分光素子を用いた場合のS字カーブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0014】
<技術的原理>
まず、図1ないし図5を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。
【0015】
図1(a)、(b)は、レーザ光の収束状態を説明する図である。図1(a)は、ターゲット記録層によって反射されたレーザ光(信号光)、ターゲット記録層よりも深い層によって反射されたレーザ光(迷光1)、ターゲット記録層よりも浅い層によって反射されたレーザ光(迷光2)の収束状態を示す図である。図1(b)は、本原理に用いるアナモレンズの構成を示す図である。
【0016】
図1(b)を参照して、アナモレンズは、レンズ光軸に平行に入射するレーザ光に対し、曲面方向と平面方向に収束作用を付与する。ここで、曲面方向と平面方向は、互いに直交している。また、曲面方向は、平面方向に比べ曲率半径が小さく、アナモレンズに入射するレーザ光を収束させる効果が大きい。
【0017】
なお、ここでは、アナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、レンズ光軸上の互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1(b)中の“平面方向”におけるアナモレンズの形状を平面に限定するものではない。なお、アナモレンズに収束状態でレーザ光が入射する場合は、“平面方向”におけるアナモレンズの形状は直線状(曲率半径=∞)となり得る。
【0018】
図1(a)を参照して、アナモレンズによって収束させられた信号光は、曲面方向および平面方向の収束により、それぞれ異なる位置で焦線を結ぶ。曲面方向の収束による焦線位置(P02)は、平面方向の収束による焦線位置(P03)よりも、アナモレンズに近い位置となり、信号光の収束位置(P01)は、曲面方向および平面方向の収束による焦線位置(P02)、(P03)の中間位置となる。信号光のビームは、収束位置(P01)において最小錯乱円となる。なお、収束位置(P01)において、アナモレンズに入射するレーザ光の光軸に垂直な面を、以下、「面P0」と称する。
【0019】
アナモレンズによって収束させられた迷光1についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(P12)は、平面方向の収束による焦線位置(P13)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光1の平面方向の収束による焦線位置(P13)が、信号光の収束位置(P01)よりも、アナモレンズに近い位置となるよう設計されている。
【0020】
アナモレンズによって収束させられた迷光2についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(P22)は、平面方向の収束による焦線位置(P23)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光2の曲面方向の収束による焦線位置(P22)
が、信号光の収束位置(P01)よりも、アナモレンズから遠い位置となるよう設計されている。
【0021】
以上を考慮して、面P0上における信号光および迷光1、2の光束領域の関係について検討する。
【0022】
図2(a)は、アナモレンズに入射するレーザ光に設定された4つの光束領域f1〜f4を示す図である。この場合、光束領域f1〜f4を通る信号光は、面P0上において、図2(b)のように分布する。また、光束領域f1〜f4を通る迷光1は、面P0上において、図2(c)のように分布する。光束領域f1〜f4を通る迷光2は、面P0上において、図2(d)のように分布する。なお、図2(b)〜(d)には、信号光のビーム径の大きさを示す円が実線で示されており、図2(c)、(d)に示すように、迷光1、2は信号光に比べて大きく広がっている。
【0023】
ここで、面P0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図3(a)〜(d)のようになる。この場合、各光束領域を通る信号光には、同じ光束領域を通る迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域を通る信号光と迷光1、2を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサにて受光するように構成すると、対応するセンサには信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができる。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0024】
このように、光束領域f1〜f4を通る光を分散させて面P0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0025】
図4(a)は、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)を面P0上において離間させるために、各光束領域を通るレーザ光の進行方向に付与するベクトルを示す図である。図4(a)は、アナモレンズ入射時の進行方向にレーザ光を見た図である。
【0026】
光束領域f1〜f4を通るレーザ光の進行方向は、それぞれ、ベクトルV1〜V4が付与されることにより変化する。ベクトルV1〜V4の方向は、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45度の傾きを持っている。ベクトルV1、V2の方向は同じであり、ベクトルV3、V4の方向は同じである。また、ベクトルV1、V4の大きさは同じであり、ベクトルV2、V3の大きさは同じである。ベクトルV1の大きさはベクトルV2よりも大きく、ベクトルV4の大きさはベクトルV3よりも大きい。ベクトルV1〜V4の大きさは、これらベクトルが付与される前のレーザ光の進行方向(アナモレンズ入射時の進行方向)に対する角度として規定される。
【0027】
図4(a)に示すように進行方向が変化されると、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)は、面P0上において、図4(b)に示すように照射される。なお、図4(b)には、進行方向が変化される前のレーザ光の光軸を示す中心Oが、併せて示されている。ベクトルV1〜V4を調節することにより、面P0上において、図4(b)に示すように各光束領域を通る信号光と迷光1、2を分布させることができる。
【0028】
この場合、光束領域f1、f2を通るレーザ光(信号光)の照射領域は、これら2つの照射領域のみが存在する直方形(信号光領域1)の対角位置にある頂角に位置付けられ、光束領域f3、f4を通るレーザ光(信号光)の照射領域は、これら2つの照射領域のみが存在する直方形(信号光領域2)の対角位置にある頂角に位置付けられる。
【0029】
ここで、上記原理に基づくセンサと信号生成方法について説明する。
【0030】
図5(a)は、ディスクからの反射光に設定された8つの光束領域a1〜a8を示す図であり、図5(b)は、従来の非点収差法に基づく信号光の照射領域とセンサを示す図である。図5(b)に示すセンサは、図1(a)の構成において面P0上に配され、図5(b)には、光束領域a1〜a8を通る信号光が、面P0上において、それぞれ照射される照射領域A1〜A8が示されている。
【0031】
また、図5(a)において、トラック溝による信号光の0次回折像と1次回折像の重なり(トラック像)の方向は、平面方向および曲面方向に対して45度の傾きを持っており、上下方向となっている。これにより、図5(b)において、信号光のトラック像の方向は、左右方向となる。図5(a)〜(c)には、トラック像の境界が点線で示されている。
【0032】
なお、トラック溝による信号光の0次回折像と1次回折像の重なり状態は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)で求められることが知られている。図5(a)に示すように光束領域a2、a3、a6、a7に1次回折像が収まる条件は、2>波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)>√2となる。
【0033】
図5(b)を参照して、従来の非点収差法では、光検出器の受光面上に4つのセンサSa〜Sdから構成される4分割センサが配される。なお、ここで、センサSa〜Sdは、便宜上、さらに平面方向または曲面方向に2分割されているものとする。すなわち、センサSaは、センサS1、S2に分割され、センサSbは、センサS3、S4に分割され、センサScは、センサS5、S6に分割され、センサSdは、センサS7、S8に分割されている。この場合、センサS1〜S8による検出信号をS1〜S8で表すと、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、それぞれ、以下の式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0034】
FE=(S3+S4+S7+S8)−(S1+S2+S5+S6) …(1)
PP=(S1+S2+S3+S4)−(S5+S6+S7+S8) …(2)
【0035】
次に、上記図4(b)に示した信号光を受光するためのセンサと信号生成方法について説明する。
【0036】
図5(c)は、図4(a)に示すように進行方向が変化された信号光を受光するためのセンサを示す図である。図5(c)において、センサS1〜S8は面P0上に配され、トラック像の方向は左右方向となる。
【0037】
図4(a)に示すように進行方向が変化させられると、図5(a)に示す光束領域a1〜a8を通る信号光は、それぞれ、図5(c)に示す照射領域A1〜A8に照射される。したがって、図5(c)に示すように、信号光の照射領域A1〜A8の位置に、センサS1〜S8を配置すれば、図5(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPを、上記式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0038】
以上のように、本原理によれば、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、迷光の影響が抑制されたフォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。
【0039】
ここで、上記式(1)に基づくフォーカスエラー信号FEには、いわゆる溝外乱成分(以下、「溝信号」という)が重畳する。すなわち、ビームスポットがディスク上のトラッ
ク(溝)に不均等に掛かると、トラック(溝)によって生じる回折光がセンサ上にアンバランスに照射される。これにより、フォーカスエラー信号FEに溝信号が含まれるようになる。かかる溝信号によりフォーカスエラー信号FEが不安定になり、フォーカスサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。
【0040】
図6(a)〜(d)は、溝信号について説明するための図である。
【0041】
図6(a)を参照して、ディスク10には、グルーブ10aとランド10bとが形成されている。対物レンズ11からディスク10に向かうレーザ光は、ディスク10のグルーブ10a上のスポット位置に照射され、このグルーブ10aによって、0次回折光と、+1次回折光と、−1次回折光が生じる。これら回折光を含むビームの形状は、開口絞り12によって整形され、対物レンズ11の光軸方向に見た場合、図6(b)の点線に示すように円形状となる。
【0042】
図6(b)を参照して、整形後のビームには、グルーブ10aによって回折された+1次回折光と−1次回折光が含まれている。0次回折光に対して+1次回折光と−1次回折光の重なる割合は、ディスクの種別によって決まる。なお、0次回折光と+1次回折光の境界と、0次回折光と−1次回折光の境界とが、トラック像の境界となる。
【0043】
図6(b)に示す整形後のビームは、光検出器上に図5(b)に示すようにセンサS1〜S8が配されている場合、照射領域A1〜A8の位置に照射される。また、整形後ビームは、図5(c)に示すようにセンサS1〜S8が配されている場合、照射領域A1〜A8の位置に照射される。何れの場合も、上述したようにセンサS1〜S8による検出信号に基づいて、上記式(1)、(2)の演算により、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPが得られる。
【0044】
ディスク10上に照射されるレーザ光のスポットが、ディスク10に対して図6(a)の左右方向に動くと、図6(b)に示す整形後のビームに含まれる+1次回折光と−1次回折光の光強度がアンバランスになる。上記プッシュプル信号PPは、かかる光強度のアンバランスを示すものであり、図6(c)に示すように、左右方向のスポット位置に応じて変化する。トラッキングサーボは、左右の光強度が等しくなるよう、すなわち上記プッシュプル信号PPの値が0になるよう行われる。
【0045】
一方、上記フォーカスエラー信号FEは、アナモレンズによって変形するビーム形状を示すものである。フォーカスサーボは、ビーム形状が真円となるよう、すなわち、フォーカスエラー信号FEの値が0になるよう行われる。このため、+1次回折光と−1次回折光の光強度のアンバランスにより生じる信号(溝信号)は、上記フォーカスエラー信号FEにとって不要な信号(外乱成分)となる。
【0046】
たとえば、所定の記録層上に対物レンズ11の焦点位置が位置付けられている場合に、左右方向にスポット位置が変化すると、上記フォーカスエラー信号FEには、図6(d)に示すように、溝信号によって振幅が生じてしまう。ディスク10の偏心等によりスポットがグルーブ10aに対して相対的に変位する場合にも溝信号が生じ、上記フォーカスエラー信号FEに振幅が生じてしまう。これにより、フォーカスエラー信号FEが不安定になり、フォーカスサーボに悪影響を及ぼす。
【0047】
以下の実施例には、図4(b)に示すように照射領域を分布させる場合の原理に基づく光ディスク装置において、図6(d)に示すようなフォーカスエラー信号の振幅を小さくすることにより、安定したフォーカスエラー信号を取得することができる具体的な構成例が示されている。
【0048】
<実施例>
本実施例は、BD、DVDおよびCDに対応可能な互換型の光ディスク装置に本発明を適用したものである。上記原理は、BD用の光学系にのみ適用され、CD用の光学系とDVD用の光学系には、従来の3ビーム方式(インライン方式)が適用されている。
【0049】
図7(a)、(b)は、本実施例に係る光ディスク装置に搭載されている光ピックアップ装置1の光学系を示す図である。図7(a)は、立ち上げミラー111、112よりもディスク側の構成を省略した光学系の平面図、図7(b)は、立ち上げミラー111、112以降の光学系を側面から透視した図である。
【0050】
図7(a)、(b)に示すように、光ピックアップ装置1は、半導体レーザ101と、1/2波長板102と、2波長レーザ103と、回折格子104と、ダイクロイックミラー105と、偏光ビームスプリッタ106と、フロントモニタ107と、コリメートレンズ108と、駆動機構109と、1/4波長板110と、立ち上げミラー111、112と、2波長対物レンズ113と、BD対物レンズ114と、分光素子H1と、アナモレンズ115と、光検出器116を備えている。
【0051】
半導体レーザ101は、波長405nm程度のBD用レーザ光(以下、「BD光」という)を出射する。1/2波長板102は、BD光の偏光方向が、偏光ビームスプリッタ106に対してS偏光からややずれた方向となるように、BD光の偏光方向を調整する。2波長レーザ103は、波長785nm程度のCD用レーザ光(以下、「CD光」という)と、波長660nm程度のDVD用レーザ光(以下、「DVD光」という)をそれぞれ出射する2つのレーザ素子を同一CAN内に収容している。2波長レーザ103は、出射するCD光とDVD光の偏光方向が、偏光ビームスプリッタ106に対してS偏光からややずれた方向となるよう設置されている。
【0052】
図7(c)は、2波長レーザ103内におけるレーザ素子(レーザ光源)の配置を示す図である。図7(c)は、2波長レーザ103をビーム出射側から見たときの図である。発光点103a、103bから、CD光とDVD光が発光され、発光点103aと発光点103bの間には、所定のギャップが設けられている。なお、CD光の発光点103aとDVD光の発光点103bとの間のギャップは、後述のように、DVD光が、DVD光用の4分割センサに適正に照射されるように設定される。このように、2つの光源を同一CAN内に収容することで、複数CANの構成に比べて光学系を簡素化することができる。
【0053】
図7(a)、(b)に戻り、回折格子104は、2段ステップ型の回折格子であり、CD光とDVD光を、それぞれ、メインビームと2つのサブビームに分割する。ダイクロイックミラー105は、内部にダイクロイック面105aを有している。ダイクロイック面105aは、BD光を反射し、CD光とDVD光を透過する。半導体レーザ101と、2波長レーザ103と、ダイクロイックミラー105は、ダイクロイック面105aにより反射されたBD光の光軸と、ダイクロイック面105aを透過したCD光の光軸とが互いに整合するように配置される。ダイクロイック面105aを透過したDVD光の光軸は、BD光とCD光の光軸から、図7(c)に示すギャップだけずれる。
【0054】
BD光、CD光、DVD光は、それぞれ、一部が偏光ビームスプリッタ106を透過し、大部分が偏光ビームスプリッタ106によって反射される。このようにBD光、CD光、DVD光の一部が偏光ビームスプリッタ106を透過するよう、1/2波長板102と、2波長レーザ103が配置される。
【0055】
CD光のメインビームおよび2つのサブビームと、DVD光のメインビームおよび2つ
のサブビームが、それぞれ、CDとDVDのトラックに沿うよう、回折格子104が配置される。CDによって反射されたCD光のメインビームと2つのサブビームは、後述する光検出器116上のCD用の4分割センサに照射される。DVDによって反射されたDVD光のメインビームと2つのサブビームは、後述する光検出器116上のDVD用の4分割センサに照射される。
【0056】
偏光ビームスプリッタ106を透過したBD光、CD光、DVD光は、フロントモニタ107に照射される。フロントモニタ107は、受光光量に応じた信号を出力する。フロントモニタ107からの信号は、半導体レーザ101と2波長レーザ103の出射パワー制御に用いられる。
【0057】
コリメートレンズ108は、偏光ビームスプリッタ106側から入射するBD光、CD光、DVD光を平行光に変換する。駆動機構109は、収差補正の際に、制御信号に応じてコリメートレンズ108を光軸方向に移動させる。駆動機構109は、コリメートレンズ108を保持するホルダ109aと、ホルダ109aをコリメートレンズ108の光軸方向に送るためのギア109bとを備え、ギア109bは、モータ109cの駆動軸に連結されている。
【0058】
コリメートレンズ108により平行光とされたBD光、CD光、DVD光は、1/4波長板110に入射する。1/4波長板110は、コリメートレンズ108側から入射するBD光、CD光、DVD光を円偏光に変換するとともに、立ち上げミラー111側から入射するBD光、CD光、DVD光を、コリメートレンズ108側から入射する際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクからの反射光は、偏光ビームスプリッタ106を透過する。なお、偏光ビームスプリッタ106を透過するディスクからの反射光の光軸は、図7(a)中のZ軸に平行である。
【0059】
立ち上げミラー111は、ダイクロイックミラーであり、BD光を透過するとともに、CD光とDVD光を2波長対物レンズ113に向かう方向に反射する。立ち上げミラー112は、BD光をBD対物レンズ114に向かう方向に反射する。
【0060】
2波長対物レンズ113は、CD光とDVD光を、それぞれ、CDとDVDに対して適正に収束させるよう構成されている。また、BD対物レンズ114は、BD光をBDに適正に収束させるよう構成されている。2波長対物レンズ113とBD対物レンズ114は、ホルダ121に保持された状態で、対物レンズアクチュエータ122により、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。
【0061】
分光素子H1は、上記原理に基づいて、図4(a)に示す各光束領域を通るレーザ光を、面P0上において図4(b)に示すように分布させる。分光素子H1の構成については、追って、図8(a)〜(c)を参照して説明する。
【0062】
アナモレンズ115は、図1(a)に示すアナモレンズに相当し、分光素子H1側から入射するBD光、CD光、DVD光に非点収差を導入する。アナモレンズ115を透過したBD光、CD光、DVD光は、光検出器116に入射する。光検出器116は、各光を受光するための複数のセンサを有している。光検出器116上のセンサについては、追って、図9を参照して説明する。
【0063】
図8(a)は、分光素子H1を偏光ビームスプリッタ106側から見たときの平面図である。図8(b)は、分光素子H1に入射するレーザ光を、分光素子H1の回折領域H11〜H15の境界線に対応するよう区分した光束領域a11〜a15を示す図である。なお、図8(a)には、平面方向と、曲面方向と、トラック像の方向が示されており、図8
(b)には、トラック像の境界が点線で示されている。
【0064】
分光素子H1は、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面に2段ステップ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。分光素子H1の光入射面は、図8(a)に示すように、5つの回折領域H11〜H15に区分されている。なお、回折領域H15は、後述のように、BD光の迷光による検出信号の劣化を低減させる程度に大きく、且つ、BD光に基づくトラッキングエラー信号が適正に得られる程度に小さく設定される。
【0065】
回折領域H11〜H15は、光束領域a11〜a15を通るレーザ光を、回折作用により0次回折光、+1次回折光、−1次回折光に分割する。光束領域a11〜a15を通るレーザ光の+1次回折光は、実線の矢印(V11〜V15)の方向に回折される。また、光束領域a11〜a15を通るレーザ光の−1次回折光は、点線の矢印(V11m〜V15m)の方向に回折される。光束領域a11〜a15を通るレーザ光の0次回折光は、回折されずに回折領域H11〜H15を透過する。
【0066】
また、図8(a)には、回折領域H11〜H15によりレーザ光に付与される回折の方向と大きさ(回折角)が、ベクトルV11〜V15およびベクトルV11m〜V15mで示されている。回折領域H11〜H15により生じる+1次回折光の進行方向は、それぞれ、これら回折領域H11〜H15に入射する前のレーザ光の進行方向にベクトルV11〜V15を付与したものとなる。また、回折領域H11〜H15により生じる−1次回折光の進行方向は、それぞれ、これら回折領域H11〜H15に入射する前のレーザ光の進行方向にベクトルV11m〜V15mを付与したものとなる。
【0067】
ベクトルV11〜V14は、図4(a)のベクトルV1〜V4と同様に設定される。すなわち、ベクトルV11、V12の方向は同じであり、ベクトルV13、V14の方向は同じである。また、ベクトルV11、V14の大きさは同じであり、ベクトルV12、V13の大きさは同じである。ベクトルV11の大きさは、ベクトルV12よりも大きく、ベクトルV14の大きさはベクトルV13よりも大きい。ベクトルV11m〜V14mは、それぞれ、ベクトルV11〜V14に対して反対方向であり、等しい大きさを有する。
【0068】
なお、本実施例では、分光素子H1がアナモレンズ115の前段に配置されている。このため、回折領域H11〜H14により生じる回折光は、ベクトルV11〜V14により互いに異なる方向に進んだ後、アナモレンズ115により非点収差作用をうけることになる。これにより、光検出器116の受光面上における回折光の照射領域の位置は、上記原理に基づく位置から僅かにずれることになる。そこで、本実施例では、上記原理と同様、回折光が後述するセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に照射されるよう、ベクトルV11〜V14の方向および大きさが僅かに調整されている。これにより、上記原理と同様、回折光の照射位置が所望の位置に位置付けられる。請求項2に記載の“同じ方向”は、このようにベクトルV11〜V14の方向が僅かに調整されていることも含むものである。
【0069】
また、本実施例では、図4(a)の場合に比べ、回折領域H15により、光束領域a15を通るレーザ光の進行方向が変えられる。回折領域H15により付与されるベクトルV15、V15mの方向は平面方向に平行で且つ互いに反対向きであり、また、ベクトルV15、V15mの大きさは、互いに等しい。
【0070】
なお、ベクトルV11〜V15、V11m〜V15mの方向は、各回折領域に設定される回折パターンの向きによって設定され、ベクトルV11〜V15、V11m〜V15mの大きさは、各回折領域に設定される回折パターンのピッチによって設定される。
【0071】
また、図8(b)に示すように、光束領域a11、a12を通るレーザ光には、点線で示す外側の領域に、トラック溝による+1次回折光と−1次回折光(トラック像)が大きく重なっており、かかるトラック像はレーザ光の中心近くに迫っている。このため、光束領域a11、a12を通るレーザ光の光強度は、トラック像の影響を受け易い。一方、光束領域a13、a14を通るレーザ光には、トラック像が少し重なっているものの、かかるトラック像はレーザ光の中心から遠い。このため、光束領域a13、a14を通るレーザ光の光強度は、強度が高いレーザ光の中央が掛かる部分における強度が支配的となり、トラック像による影響はかなり小さい。
【0072】
図8(c)は、回折領域H11〜H15のステップ高さと回折効率との関係を示す図である。
【0073】
図8(c)に示すように、分光素子H1に入射するBD光、DVD光、CD光の回折効率は、回折領域H11〜H15に設定された2段ステップ型の回折パターンのステップ高さによって変化する。本実施例のステップ高さは、図8(c)中に示す“設定値”に設定される。これにより、BD光の0次回折光と+1次回折光の回折効率は、それぞれ、約80%と約10%となり、DVD光とCD光の0次回折光の回折効率は、90%以上となる。なお、−1次回折光の回折効率は、+1次回折光の回折効率と略同じである。
【0074】
こうして、分光素子H1に入射したBD光は、上記回折効率でもって0次回折光、+1次回折光、−1次回折光に分割される。また、分光素子H1に入射したCD光とDVD光は、大半が分光素子H1による回折作用を受けずに、分光素子H1を透過する。
【0075】
図9は、光検出器116のセンサレイアウトを示す図である。
【0076】
光検出器116は、回折領域H11〜H14の回折作用によって生じるBD光(信号光)の+1次回折光を受光するBD用のセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4と、回折領域H15の回折作用によって生じるBD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光を受光する4分割センサBzと、分光素子H1による回折作用を受けずに透過したCD光を受光する4分割センサC1〜C3と、分光素子H1による回折作用を受けずに分光素子H1を透過したDVD光を受光する4分割センサD1〜D3とを有する。センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4は、それぞれ、上記原理で示した図5(c)のセンサS1〜S8と同様に配置される。なお、4分割センサC1は、後述のようにBD光の0次回折光の受光にも共用される。また、中心Oは、偏光ビームスプリッタ106からZ軸正方向に出射されるBD光の光軸が、光検出器116の受光面と交わる点であり、4分割センサC1の中心(分割線の交点)と一致する。
【0077】
光束領域a11〜a15を通るBD光(信号光)の+1次回折光は、それぞれ、照射領域A11〜A15に照射される。照射領域A11は、センサBa1、Ba4によって受光され、照射領域A12は、センサBa2、Ba3によって受光され、照射領域A13は、センサBs3、Bs4によって受光され、照射領域A14は、センサBs1、Bs2によって受光される。
【0078】
光束領域a15を通るBD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光は、中心Oに対して右上に位置する4分割センサBzに入射する。4分割センサBzは、センサBz1〜Bz4から構成されており、上下左右の方向に対して45度傾けて配置されている。また、4分割センサの分割線が、中心Oと4分割センサBzの中心BzOとを結ぶ一点鎖線の直線と重なるよう、4分割センサBzが配置されている。
【0079】
回折領域H11〜H14のピッチは、照射領域A11〜A14が、図9に示すように、
センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に位置付けられるよう設定される。また、回折領域H15のピッチは、光束領域a15を通るBD光の+1次回折光が4分割センサBzの中心BzOに位置付けられるよう設定されている。
【0080】
BD光とCD光の光軸は、上述したようにダイクロイック面105aによって整合しているため、回折格子104により生じたCD光のメインビーム(0次回折光)と、BD光の0次回折光は、その光軸が中心Oに一致するよう照射される。4分割センサC1の中心が中心Oに位置付けられるよう、4分割センサC1が配置される。4分割センサC2、C3は、CD光のサブビームを受光するよう、光検出器116の受光面上において、メインビームに対しCDのトラック像の方向に配置される。4分割センサC1〜C3は、それぞれ、センサC11〜C14と、センサC21〜C24と、センサC31〜C34から構成されている。
【0081】
DVD光の光軸は、上述したようにCD光の光軸からずれているため、DVD光のメインビームと2つのサブビームは、光検出器116の受光面上において、CD光のメインビームと2つのサブビームからずれた位置に照射される。4分割センサD1〜D3は、それぞれ、DVD光のメインビームと2つのサブビームの照射位置に配置される。なお、CD光のメインビームとDVD光のメインビームとの距離は、図7(c)に示すCD光の発光点103aとDVD光の発光点103bとの間のギャップによって決まる。
【0082】
図10は、光検出器116の受光面上と同じ平面(面P0)上に分布するBD光(信号光と迷光1、2)の0次回折光、+1次回折光、−1次回折光の照射領域を示す模式図である。破線はBD光の+1次回折光を示し、長鎖線はBD光の0次回折光を示し、点線はBD光の−1次回折光を示している。また、図10には、図9に示すセンサが併せて示されている。
【0083】
本実施例のように、分光素子H1の回折領域H11〜H15に2段ステップ型の回折パターンが形成されると、BD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光と−1次回折光の照射領域は、中心Oを点対称の中心として分布し、0次回折光の照射領域は中心Oに分布する。このとき、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4には、BD光(信号光)の+1次回折光のみが照射される。なお、本実施例では、BD光(信号光と迷光1、2)については、0次回折光と+1次回折光のみが利用され、−1次回折光は利用されない。
【0084】
また、分光素子H1に入射するBD光の中央部分は、4分割センサBz近傍に飛ばされるため、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の近傍に分布するBD光の迷光(迷光1、2)の+1次回折光の照射領域は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に掛かりにくくなっている。すなわち、センサBa1、Ba4の上端付近に分布する迷光1、2の照射領域は、それぞれ、左端と右端が、回折領域H15により除かれた形状となっている。同様に、センサBa2、Ba3の下端付近と、センサBs1、Bs2の右端付近と、センサBs3、Bs4の左端付近に分布する迷光1、2の照射領域は、回折領域H15に応じて端部が除かれた形状となっている。これにより、BD対物レンズ114がBDの径方向に移動して、BD対物レンズ114の光軸がレーザ光の光軸からシフトしても、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に、BD光(迷光1、2)の+1次回折光が入射し難くなる。また、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の位置が、光検出器116の受光面上でずれても、これらセンサに、BD光(迷光1、2)の+1次回折光が入射し難くなる。
【0085】
次に、本実施例におけるBD用の信号生成方法について説明する。本実施例では、BD用のフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号として、上記式(1)、(2)に示すような従来のフォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPとは異なる、フォーカスエラー信号FE3とトラッキングエラー信号TEが用いられる。
【0086】
本実施例におけるBD用のフォーカスエラー信号FE3は、乗数k1を用いて、以下の式(3)の演算により取得することができる。
【0087】
FE3=FE1+k1×FE2 …(3)
【0088】
ここで、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4、C11〜C14の検出信号を、それぞれ、Ba1〜Ba4、Bs1〜Bs4、C11〜C14と表すものとする。上記式(3)のフォーカスエラー信号FE1は、上記式(1)と同様に、以下の式(4)の演算により取得することができる。また、上記式(3)のフォーカスエラー信号FE2は、以下の式(5)の演算により取得することができる。
【0089】
FE1=(C11+C13)−(C12+C14) …(4)
FE2=(Bs1+Bs3)−(Bs2+Bs4) …(5)
【0090】
よって、本実施例におけるBD用のフォーカスエラー信号FE3は、以下の式(6)の演算により取得することができる。
【0091】
FE3=(C11+C13)−(C12+C14)
+k1×{(Bs1+Bs3)−(Bs2+Bs4)} …(6)
【0092】
ここで、フォーカスエラー信号FE1は、BD光の0次回折光に基づいて生成されるため、迷光1、2の影響を受け易い。また、4分割センサC1の検出信号には、図8(b)に示す全ての光束領域を通るBD光が照射されるため、フォーカスエラー信号FE1は溝信号を多く含んでしまう。しかしながら、分光素子H1の0次回折光の回折効率は約80%と高いため、フォーカスエラー信号FE1のS/N比は大きくなる。
【0093】
一方、フォーカスエラー信号FE2は、BD光(信号光)の+1次回折光に基づいて生成され、分光素子H1の+1次回折光の回折効率は約10%と小さいため、フォーカスエラー信号FE2のS/N比は小さくなる。しかしながら、図10に示すように、センサBs1〜Bs4には迷光1、2の照射領域が重ならないため、フォーカスエラー信号FE2は迷光の影響を受け難い。
【0094】
また、センサBs1〜Bs4には、図8(b)に示す光束領域a13、a14を通るBD光のみが照射されるため、フォーカスエラー信号FE2は溝信号を殆ど含まない。すなわち、図8(b)を参照して説明したように、光束領域a13、a14を通るレーザ光の光強度は、トラック像の影響を殆ど受けないため、光束領域a13、a14を通るBD光に基づいて生成されるフォーカスエラー信号FE2は、溝信号を殆ど含まない。
【0095】
よって、上記式(3)、(6)に示すように、フォーカスエラー信号FE1に、溝信号を殆ど含まないフォーカスエラー信号FE2を加算して、フォーカスエラー信号FE3を生成することで、溝信号の比率が抑制されたフォーカスエラー信号FE3を得ることができる。こうして生成されたフォーカスエラー信号FE3は、S/N比が高く維持されながら、迷光と溝信号の影響が低く抑えられた良好且つ安定したフォーカスエラー信号となる。
【0096】
なお、溝信号による影響は、BD−ROMを再生する場合には大きな問題とならず、BD−R、BD−RE等のディスクを再生/記録する場合に問題となる。このため、乗数k1の値は、BD−R、BD−RE等のディスクを再生/記録する場合に、図6(d)に示すような溝信号による振幅がBD−ROMと同程度となるように設定される。具体的には
、フォーカスエラー信号のS字カーブの振幅に対する溝信号の振幅の割合αが、所定の閾値Sr以下となるように、乗数k1が設定される。すなわち、上記式(6)によるフォーカスエラー信号FE3を参照して取得される割合αが閾値Sr以下となるように、乗数k1が設定される。たとえば、複数のBD−ROM、BD−R、BD−REについて、乗数k1を変えながら、実際に再生動作が行われ、上記式(6)によるフォーカスエラー信号FE3のS字カーブの振幅と溝信号の振幅および割合αが取得される。そして、その結果に基づき、各種類のBDに最適な乗数k1(割合αが閾値Sr以下となる乗数k1)が取得される。
【0097】
また、本実施例におけるBD用のトラッキングエラー信号TEは、乗数k2を用いて、以下の式(7)の演算により取得することができる。
【0098】
TE=(Ba1+Ba4)−(Ba2+Ba3)
−k2×{(Bs1+Bs4)−(Bs2+Bs3)} …(7)
【0099】
このように乗数k2を用いたトラッキングエラー信号TEの演算手法は、本件出願人が先に出願した特開2010−102813号公報に記載されている。
【0100】
また、本実施例におけるBD用のRF信号は、以下の式(8)の演算により取得することができる。
【0101】
RF=C11+C12+C13+C14 …(8)
【0102】
なお、4分割センサC1に入射するBD光の0次回折光には、信号光だけでなく迷光1、2も含まれる。しかしながら、4分割センサC1に入射するBD光の0次回折光のうち、迷光の割合は1/10程度であるため、BD用のRF信号の取得においては、迷光による影響が特に問題となることは無い。
【0103】
また、CD用のフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号およびRF信号は、4分割センサC1〜C3の検出信号に基づいて生成され、DVD用のフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号およびRF信号は、4分割センサD1〜D3の検出信号に基づいて生成される。CDおよびDVD用のフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号の生成には、3ビーム方式(インライン方式)による演算処理が用いられる。
【0104】
ここで、分光素子H1のZ軸方向の位置調整と、中心Oを中心とする回転方向の位置調整は、センサBz1〜Bz4の検出信号に基づいて行われる。センサBz1〜Bz4の検出信号を、それぞれ、Bz1〜Bz4と表し、分光素子H1のZ軸方向のずれ量と、中心Oを中心とする回転方向のずれ量を、それぞれ、HOEz、HOEθと表すと、HOEz、HOEθは、以下の式(9)、(10)の演算により取得することができる。
【0105】
HOEz={(Bz1+Bz4)−(Bz2+Bz3)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4) …(9)
HOEθ={(Bz1+Bz2)−(Bz3+Bz4)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4) …(10)
【0106】
分光素子H1は、Z軸方向において、上記式(9)のHOEzの値が0となるよう位置付けられ、中心Oを中心とする回転方向において、上記式(10)のHOEθの値が0となるよう位置付けられる。
【0107】
また、分光素子H1のXY平面内の位置調整は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs
4の検出信号に基づいて行われる。分光素子H1のX軸方向とY軸方向のずれ量を、それぞれ、HOEx、HOEyと表すと、HOEx、HOEyは、以下の式(11)、(12)の演算により取得することができる。
【0108】
HOEx={(Bs3+Bs4)−(Bs1+Bs2)}
/(Bs1+Bs2+Bs3+Bs4) …(11)
HOEy={(Ba2+Ba3)−(Ba1+Ba4)}
/(Ba1+Ba2+Ba3+Ba4) …(12)
【0109】
分光素子H1は、XY平面内において、上記式(11)、(12)のHOEx、HOEyの値が0となるよう位置付けられる。
【0110】
図11は、フォーカスエラー信号FE3と、トラッキングエラー信号TEと、RF信号を生成する演算処理部300の構成を示す図である。演算処理部300は、加算器301〜309、316と、減算器310〜313、317と、乗算器314、315を備えている。また、演算処理部300は、光ディスク装置の信号演算回路204(図12参照)に含まれている。
【0111】
加算器301は、センサC11、C13の検出信号を加算し、加算器302は、センサC12、C14の検出信号を加算する。加算器303は、センサBs1、Bs3の検出信号を加算し、加算器304は、センサBs2、Bs4の検出信号を加算する。加算器305は、センサBs1、Bs4の検出信号を加算し、加算器306は、センサBs2、Bs3の検出信号を加算する。加算器307は、センサBa1、Ba4の検出信号を加算し、加算器308は、センサBa2、Ba3の検出信号を加算する。
【0112】
加算器309は、加算器301、302の出力信号を加算し、RF信号を出力する。減算器310は、加算器301、302の出力信号を減算し、フォーカスエラー信号FE1を出力する。減算器311は、加算器303、304の出力信号を減算し、フォーカスエラー信号FE2を出力する。減算器312は、加算器305、306の出力信号を減算する。減算器313は、加算器307、308の出力信号を減算する。
【0113】
乗算器314は、減算器311の出力信号に乗数k1を乗算し、乗算器315は、減算器313の出力信号に乗数k2を乗算する。加算器316は、減算器310と乗算器314の出力信号を加算し、フォーカスエラー信号FE3を出力する。減算器317は、減算器312と乗算器315の出力信号を減算し、トラッキングエラー信号TEを生成する。
【0114】
図12(a)は、本実施例の光ディスク装置の構成を示す図である。
【0115】
本実施例の光ディスク装置は、光ピックアップ装置1と、コントローラ201と、レーザ駆動回路202と、再生回路203と、信号演算回路204と、サーボ回路205を備えている。なお、図12(a)の光ピックアップ装置1には、半導体レーザ101と、光検出器116と、駆動機構109と、対物レンズアクチュエータ122のみが示されている。
【0116】
コントローラ201は、内部にメモリ201aを有する。コントローラ201は、メモリ201aに格納されたプログラムに従って光ディスク装置内の各部を制御する。また、メモリ201aには、ディスクの種別に応じた複数の乗数k1を含むテーブルと、製品出荷時等に予め決められた乗数k2とが格納されている。コントローラ201は、ディスクの種別に応じて、乗数k1を信号演算回路204(乗算器314)に設定する。また、コントローラ201は、乗数k2を信号演算回路204(乗算器315)に設定する。乗数
k1については、追って図13を参照して説明する。
【0117】
レーザ駆動回路202は、コントローラ201の指示に応じて、半導体レーザ101を駆動する。再生回路203は、信号演算回路204から入力された再生RF信号を復調して再生データを生成する。
【0118】
信号演算回路204は、図11に示す演算処理部300を有し、信号演算回路204には、光検出器116上のセンサから出力された信号が入力される。信号演算回路204は、図11に示す回路によりフォーカスエラー信号FE1〜FE3を生成する。また、信号演算回路204は、図11に示す回路によりトラッキングエラー信号TEを生成する。さらに、信号演算回路204は、図11に示す回路によりRF信号を生成する。
【0119】
サーボ回路205は、信号演算回路204から入力されたフォーカスエラー信号FE1、FE3とトラッキングエラー信号TEから、フォーカスサーボ信号とトラッキングサーボ信号を生成し、これら信号を対物レンズアクチュエータ122に出力する。また、サーボ回路205は、信号演算回路204から入力されたRF信号の品質が最良となるよう、駆動機構109にサーボ信号を出力する。
【0120】
図13(a)は、メモリ201aに格納されるテーブルを示す概念図である。
【0121】
テーブルは、“ディスクの種別”の項目と“k1の値”の項目が含まれている。ディスクの種別の項目には、“BD”、“BD−R”、“BD−RE”が含まれている。k1の値の項目には、ディスクの種別の項目に対応する乗数k1の値が設定されている。
【0122】
コントローラ201は、装着されたディスクがBD−ROM、BD−R、BD−REであるとき、それぞれ、ディスクの種別の項目“BD”、“BD−R”、“BD−RE”に対応する乗数k1の値を、信号演算回路204内の乗算器314に設定する。
【0123】
図14は、BDの再生/記録の処理が開始されるまでの処理(BDの初期処理)を示すフローチャートである。
【0124】
光ディスク装置が起動されると、コントローラ201は、まず初期設定を行い(S11)、半導体レーザ101をONにする(S12)。このとき、半導体レーザ101のパワーは、所定の値に設定される。続いて、コントローラ201は、装着されたディスクがBD系か否かの判別処理を行う(S13)。具体的には、ディスクは停止状態のままで、対物レンズアクチュエータ122が駆動され、BD対物レンズ114がフォーカス方向に移動される。このとき、フォーカスエラー信号FE1の振幅によりディスクの反射率が検出され、ディスク表面での反射によるS字カーブと記録層での反射によるS字カーブの時間間隔によりディスクの基板厚が検出される。さらに、フォーカスエラー信号FE1に基づいてS字カーブの振幅や対称性が検出される。これら検出結果が予めメモリ201aに格納している閾値と比較されることにより、装着されたディスクがBD系のディスク(たとえば、BD−ROM、BD−R、BD−RE)であるかが判別される。また、このとき、検出されたS字カーブの個数から、ディスクの層数が判別される。
【0125】
装着されたディスクがBD系のディスクでない、すなわち、CDまたはDVDであると(S14:NO)、コントローラ201は、従来の3ビーム方式(インライン方式)によりフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を生成し、ディスクの再生/記録を行う。なお、ディスクがCDまたはDVDである場合の以降の処理については、従来同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0126】
他方、装着されたディスクがBD系のディスクであると(S14:YES)、コントローラ201は、図13(a)に示すテーブルを参照して、ディスクの種別“BD”に対応する乗数k1の値を、信号演算回路204内の乗算器314に設定する(S15)。そして、コントローラ201は、フォーカスエラー信号として、図11の回路により生成されるフォーカスエラー信号FE3がサーボ回路205に出力されるよう、信号演算回路204を設定する(S16)。
【0127】
次に、コントローラ201は、ディスクを回転させるスピンドルモータを回転させ(S17)、S13の処理で得られたディスクの層数に応じたパワーで、半導体レーザ101を発光させる(S18)。続いて、コントローラ201は、フォーカスサーチをONにする(S19)。これにより、目標となる記録層にBD対物レンズ114の焦点位置が位置付けられるよう、対物レンズアクチュエータ122がフォーカス方向に駆動される。目標となる記録層に焦点位置が位置付けられると、コントローラ201は、フォーカスサーボをONにする(S20)。
【0128】
続いて、コントローラ201は、信号演算回路204から出力されるトラッキングエラー信号TEの振幅等に基づいて、装着されたディスクがBD−ROMか否かの判別処理を行う(S21)。また、コントローラ201は、トラッキングサーボをONにする(S22)。これにより、目標となるトラックにBD対物レンズ114の焦点位置が位置付けられる。
【0129】
続いて、コントローラ201は、ディスクの物理情報を読み出し(S23)、S21の判別結果と合わせて、ディスクの種別を確定させる(S24)。コントローラ201は、図13(a)に示すテーブルを参照して、確定したディスクの種別に対応する乗数k1の値を、信号演算回路204内の乗算器314に設定する(S25)。なお、ディスクがBD−ROMの場合、S15で設定された乗数k1がそのまま用いられる。
【0130】
以上、本実施例によれば、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4には、BD光(信号光)の+1次回折光のみが照射される。また、分光素子H1に入射するBD光の中央部分は、回折領域H15により4分割センサBz近傍に飛ばされるため、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の近傍に分布するBD光の迷光(迷光1、2)の+1次回折光の照射領域は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に掛かりにくくなっている。これにより、迷光による検出信号の劣化を抑制して、精度の高い各種検出信号(たとえば、フォーカスエラー信号FE3とトラッキングエラー信号TE)を取得することができる。
【0131】
また、本実施例では、S/N比の高い4分割センサC1の検出信号を用いて、フォーカスエラー信号FE1を取得し、迷光の影響が少なく溝信号を殆ど含まないセンサBs1〜Bs4の検出信号を用いて、フォーカスエラー信号FE2を取得した。そして、フォーカスエラー信号FE3は、乗数k1を用いて、フォーカスエラー信号FE1、FE2に基づいて取得された。このとき、フォーカスエラー信号FE3の溝信号による振幅が、最終的にBD−ROMが用いられた場合の溝信号の振幅と同程度となるよう乗数k1が調整された。これにより、フォーカスエラー信号FE3は、S/N比が高く維持されながら、迷光と溝信号の影響が低く抑えられた良好且つ安定したフォーカスエラー信号となる。
【0132】
また、本実施例では、図4(b)に示すようにBD光の照射領域を分布させるために、2段ステップ型の回折パターンが形成された分光素子H1が用いられた。このように2段ステップ型の回折パターンが形成されると、図10に示すように広範囲に亘って照射領域が分布することとなる。しかしながら、本実施例によれば、照射領域を全て含むように光検出器上のセンサを設置する必要がない。すなわち、本実施例では、BD光を受光するための光検出器116上のセンサは、中心Oに分布する信号光(0次回折光)と、中心Oの
上側と右側に分布する信号光(+1次回折光)と、右上に分布する信号光(+1次回折光)の照射領域のみを含むように設置される。これにより、本実施例のように、安価な2段ステップ型が形成された分光素子H1が用いられても、光検出器116をコンパクトに構成することが可能となる。
【0133】
なお、図4(b)に示すように照射領域を分布させるために、ブレーズ型の回折パターンが形成された分光素子を用いることもできる。しかしながら、ブレーズ型の回折パターンが形成された分光素子は、本実施例のように2段ステップ型の回折パターンが形成された分光素子H1に比べて高価である。本実施例では、安価な2段ステップ型の回折パターンが形成された分光素子H1を用いることで、光ピックアップ装置1にかかるコストを低く抑えることができる。
【0134】
また、本実施例によれば、BD光(信号光と迷光1、2)の0次回折光は、光検出器116の中心Oに入射するため、CD用の4分割センサC1を用いて、BD用のフォーカスエラー信号FE3とRF信号を取得することができる。これにより、光検出器116上に設置するセンサの数を少なくすることができるため、光検出器にかかるコストを低く抑えることができ、且つ、光検出器をコンパクトに構成することができる。
【0135】
また、本実施例によれば、上記式(9)、(10)のHOEz、HOEθの値が0となるように、また、上記式(11)、(12)のHOEx、HOEyの値が0となるように、分光素子H1の位置を調整する。これにより、分光素子H1を適正な位置に位置付けることができる。
【0136】
<変更例1>
本変更例では、上記実施例の分光素子H1によって付与されるベクトル(図8(a)参照)が、図15(a)に示す分光素子H2のように変更され、上記実施例の光検出器116上のセンサ(図9参照)が、図15(b)に示すように変更される。
【0137】
図15(a)を参照して、本変更例の分光素子H2の回折領域H21〜H25は、+1次回折光について、ベクトルV21〜V25を付与し、−1次回折光について、ベクトルV21m〜V25mを付与するように構成される。上記分光素子H1と同様、ベクトルV21、V22の方向は同じであり、ベクトルV23、V24の方向は同じである。また、ベクトルV21、V24の大きさは同じであり、ベクトルV22、V23の大きさは同じである。ベクトルV22の大きさは、ベクトルV21よりも大きく、ベクトルV23の大きさはベクトルV24よりも大きい。ベクトルV25、V25mは、上記分光素子H1のベクトルV15、V15mと同様である。ベクトルV21m〜V25mは、それぞれ、ベクトルV21〜V25に対して反対方向であり、等しい大きさを有する。
【0138】
なお、本変更例においても、上記実施例の図8(a)の場合と同様、分光素子H2とアナモレンズ115の配置順に応じて、ベクトルV21〜V24の方向および大きさが僅かに調整されている。
【0139】
図15(b)を参照して、本変更例の4分割センサC1〜C3、D1〜D3、Bzは、上記実施例と同様である。本変更例では、上記実施例と異なり、センサBa1、Ba4は、センサBa2、Ba3よりも下側に配置され、センサBs1、Bs2は、センサBs3、Bs4よりも左側に配置される。回折領域H21〜H25に入射するBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A21〜A25に照射される。
【0140】
この場合も、上記実施例と同様の効果が奏され、安定したフォーカスエラー信号FE3を取得することができる。
【0141】
<変更例2>
本変更例では、上記実施例の分光素子H1によって付与されるベクトル(図8(a)参照)が、図16(a)に示す分光素子H3のように変更され、上記実施例の光検出器116上のセンサ(図9参照)が、図16(b)に示すように変更される。
【0142】
図16(a)を参照して、本変更例の分光素子H3の回折領域H31〜H35は、+1次回折光について、ベクトルV31〜V35を付与し、−1次回折光について、ベクトルV31m〜V35mを付与するように構成される。ベクトルV31〜V34の方向は、平面方向と曲面方向に対して45度の角度をなし、且つ、全て異なっている。ベクトルV31〜V34の大きさは、全て同じである。ベクトルV31m〜V35mは、それぞれ、ベクトルV31〜V35に対して反対方向であり、等しい大きさを有する。なお、ベクトルV35、V35mは、それぞれ、図10(a)に示すベクトルV25、V25mと同じ方向である。
【0143】
なお、本変更例においても、上記実施例と同様、分光素子H3とアナモレンズ115の配置順に応じて、ベクトルV31〜V34の方向および大きさが僅かに調整されている。
【0144】
図16(b)を参照して、本変更例の4分割センサC1〜C3、D1〜D3、Bzは、上記実施例と同様である。本変更例では、上記実施例と異なり、センサBa1、Ba4と、センサBa2、Ba3は、それぞれ、中心Oに対して上側と下側に配置され、センサBs1、Bs2と、センサBs3、Bs4は、それぞれ、中心Oに対して右側と左側に配置される。回折領域H31〜H35に入射するBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A31〜A35に照射される。
【0145】
なお、回折領域H31〜H34に入射するBD光(迷光1、2)の+1次回折光と、BD光(信号光と迷光1、2)の−1次回折光は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の頂角によって形成される信号光領域3の外側に照射される。回折領域H35に入射するBD光(信号光)の−1次回折光は、中心Oの左下に照射される。
【0146】
この場合も、上記実施例と同様、図11の演算回路により各種信号が生成され、図14の処理により、乗数k1が設定される。これにより、上記実施例と同様の効果が奏され、安定したフォーカスエラー信号FE3を取得することができる。
【0147】
<変更例3>
本変更例では、上記実施例の分光素子H1の回折領域H13、H14(図8(a)参照)が2分割され、図17(a)に示す分光素子H4のように変更される。図17(b)は、分光素子H3に入射するレーザ光を、分光素子H4の回折領域H41〜H47の境界線に対応するよう区分した光束領域a41〜a47を示す図である。
【0148】
図17(a)を参照して、本変更例の分光素子H4の光入射面は、7つの回折領域H41〜H47に区分されている。回折領域H43、H44と、回折領域H45、H46は、それぞれ、上記分光素子H1の回折領域H13、H14が、中心を通る上下方向の直線により左右に分割された形状とされる。回折領域H41〜H47の回折効率とピッチは、上記分光素子H1の対応する領域の回折効率とピッチと同様に設定される。
【0149】
回折領域H41、H42、H47は、光束領域a41、a42、a47を通るレーザ光の進行方向に対して、上記分光素子H1と同様のベクトルV41、V41m、V42、V42m、V47、V47mを付与する。回折領域H43〜H46は、それぞれ、光束領域a43〜a46を通るレーザ光の進行方向に対して、ベクトルV43〜V46と、ベクト
ルV43m〜V46mを付与する。ベクトルV43〜V46は、それぞれ、+1次回折光についてのベクトルであり、ベクトルV43m〜V46mは、それぞれ、−1次回折光についてのベクトルである。ベクトルV43、V44は、それぞれ、図8(a)のV13に下方向、上方向の成分を加えたベクトルであり、ベクトルV45、V46は、それぞれ、図8(a)のV14に下方向、上方向の成分を加えたベクトルである。なお、ベクトルV43m〜V46mは、それぞれ、ベクトルV43〜V46に対して反対方向であり、ベクトルV43〜V46と等しい大きさを有する。
【0150】
図17(c)は、図9に示すセンサBs1〜Bs4に位置付けられたBD光(信号光)の+1次回折光の照射領域を示す模式図である。なお、センサBs1〜Bs4以外のセンサ上の照射領域は、図10に示す場合と略同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0151】
図17(c)に示すように、光束領域a43〜a46を通るBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A43〜A46に照射される。このとき、照射領域A43、A44は、センサBs3とセンサBs4の境界線に重ならず、照射領域A45、A46は、センサBs1とセンサBs2の境界線に重ならない。すなわち、上記のようにベクトルV43〜V46が、下方向または上方向の成分を持つことにより、照射領域A43とA44の間に隙間が生じ、また、照射領域A45とA46との間に隙間が生じる。
【0152】
これにより、経年劣化等によりセンサBs1〜Bs4の位置が上下方向にずれた場合、および、レーザ光の光軸に対するBD対物レンズ114の光軸の位置がトラック像の方向に垂直な方向にシフトした場合(レンズシフト)でも、上記分光素子H1に比べて、センサBs1〜Bs4の検出信号の精度の劣化が抑制される。
【0153】
この場合も、上記実施例と同様、図11の演算回路により各種信号が生成され、図14の処理により、乗数k1が設定される。これにより、上記実施例と同様の効果が奏され、安定したフォーカスエラー信号FE3を取得することができる。
【0154】
以上、本発明の実施例および変更例について説明したが、本発明は、上記実施例および変更例に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施例も上記以外に種々の変更が可能である。
【0155】
たとえば、上記実施例では、分光素子がアナモレンズ115の前段に配置されたが、分光素子をアナモレンズ115の後段に配置しても良く、あるいは、アナモレンズ115の入射面または出射面に、分光素子と同様の回折作用をレーザ光に付与する回折パターンを一体的に配しても良い。なお、分光素子がアナモレンズ115の前段に配置される場合、上記実施例および変更例のように、分光素子とアナモレンズ115の配置順に応じて、各回折領域により付与されるベクトルを、図8(a)に示す原理上のベクトルから調整する必要はない。
【0156】
なお、分光素子は、アナモレンズ115の後段に配置するよりも前段に配置する方が望ましい。すなわち、分光素子をアナモレンズ115の前段に配置すると、後段に配置する場合に比べて、分光素子から光検出器116までの距離を長くすることができる。このため、分光素子の回折角を大きく設定しなくても、図10に示すように、光検出器116上でBD光(信号光)の+1次回折光を、中心Oから離れた位置に照射させることができる。
【0157】
また、上記実施例では、図12(a)に示すように、乗数k1を含むテーブルと乗数k2は、コントローラ201内部のメモリ201aに格納されたが、これに替えて、図12(b)に示すように、光ピックアップ装置1側にメモリ131と信号演算回路204とを
保持する回路基板を配し、このメモリ131に乗数k1を含むテーブルと乗数k2が格納されるようにしても良い。この場合、コントローラ201は、メモリ131から乗数k1、k2を読み出して、信号演算回路204に設定する。また、乗数k1、k2はコントローラ201側のメモリ201aに格納され、信号演算回路204のみが、光ピックアップ装置1側にあっても良い。さらに、信号演算回路204の一部が、光ピックアップ装置1側にあっても良い。たとえば、図11に示す演算処理部300の一部が、光ピックアップ装置1側にあっても、光ディスク装置側にあっても良い。
【0158】
また、上記実施例では、図13(a)に示すように、3つのディスクの種別に応じて乗数k1の値が設定されたが、さらに、多様なディスクの種類に応じて乗数k1の値が設定されるようにしても良い。たとえば、高い反射率から低い反射率へと変化させることにより情報を記録する従来のBD(High To Low)と、低い反射率から高い反射率へと変化さ
せることにより情報を記録するBD(Low To High)とで、異なる乗数k1を設定するよ
うにしても良い。
【0159】
また、上記実施例では、図13(a)に示すように、メモリ201aに複数の乗数k1を含むテーブルが格納されたが、かかるテーブルに、図13(b)に示すようにディスクのメーカー名を表す“メーカー名”の項目が含まれるようにしても良い。この場合、たとえば、図14のS23において、ディスクの物理情報からメーカーが特定されるまで、所定のメーカーに対応する乗数k1が信号演算回路204に設定され、メーカーが特定されると、特定されたメーカーに対応する乗数k1が信号演算回路204に設定される。
【0160】
また、図14のS20においてフォーカスサーボがONされた後に生じるフォーカスエラー信号FE1の振幅(溝信号による振幅)を参照し、かかる振幅を、S13において取得したS字カーブの振幅(S字振幅)で除算して得られる割合に応じて乗数k1が設定されても良い。この場合、乗数k1を含むテーブルには、図13(c)に示すように“振幅割合”の項目が含まれる。溝信号による振幅をS字振幅で除算して得られる割合が、振幅割合の項目に示す所定の範囲内にあるとき、この振幅割合の項目に対応する乗数k1が設定される。図13(c)に記載の“振幅割合”が請求項9に記載のパラメータに相当する。
【0161】
なお、S18において設定される半導体レーザ101の発光パワーが、S13の時点と異なる場合、半導体レーザ101の発光パワーの違いに応じて、溝信号による振幅がS字振幅と同じ基準となるように調整され、調整後の振幅に基づいて、振幅の割合が算出される。
【0162】
また、溝信号の大きさに関係する信号(たとえば、トラッキングエラー信号TE)等、他の信号の振幅を、S字振幅で除算して得られる割合に応じて乗数k1が設定されても良い。この場合も、乗数k1を含むテーブルには、かかる割合の項目が含まれる。
【0163】
また、上記実施例では、図13(a)〜(c)に示すように、メモリ201aに格納されたテーブルに基づいて乗数k1が設定されたが、乗数k1の値はディスクが装着される度に設定されるようにしても良い。たとえば、ディスクが装着されると乗数k1を0に設定し、フォーカスエラー信号FE3による振幅を参照して、フォーカスエラー信号FE3の溝信号による振幅が、所定の閾値Sr以下となるよう、徐々に乗数k1の値を大きくしても良い。なお、閾値Srは、予めコントローラ201のメモリ201aに格納される。
【0164】
また、上記実施例では、図14に示すように、S21において、トラッキングエラー信号TEの振幅等に基づいて、装着されたディスクがBD−ROMか否かの判別処理を行われた。しかしながら、S13において、BD系のディスクであると判別したときに、さら
に、光検出器116に入射する光の強度から得られるディスクの反射率に基づいて、装着されたディスクがBD−ROMか否かの判定処理が行われるようにしても良い。
【0165】
また、上記分光素子H1〜H3が用いられる場合、フォーカスエラー信号として、フォーカスエラー信号FE3でなく、フォーカスエラー信号FE2を用いるようにしても良い。この場合、フォーカスエラー信号FE2は、上述したように、S/N比が小さいものの、迷光の影響を受け難く、且つ、溝信号を殆ど含まないため、フォーカスエラー信号FE1を用いる場合に比べて、良好且つ安定したフォーカスエラー信号となり得る。
【0166】
なお、上記分光素子H4が用いられる場合、図17(c)に示すように、センサBs1とセンサBs2の境界線と、センサBs3とセンサBs4の境界線に、照射領域が重ならなくなる。このため、分光素子H4が用いられる場合、フォーカスエラー信号FE2のS字カーブには、図18に示すように、BD対物レンズ114の焦点位置が記録層に位置付けられる付近(ゼロクロス付近)において、平坦な部分が生じる。このため、フォーカスエラー信号として、フォーカスエラー信号FE2のみを用いることができない。しかしながら、4分割センサC1の検出信号に基づいて生成されるフォーカスエラー信号FE1は、図18に示すように、ゼロクロス付近において平坦な部分の無い適正なS字カーブを有する。よって、適正なS字カーブを有するフォーカスエラー信号FE1に、フォーカスエラー信号FE2が加算されたフォーカスエラー信号FE3は、図18に示すように、適正なS字カーブを有する。よって、上記分光素子H4が用いられる場合でも、フォーカスエラー信号FE3により、フォーカスサーボを適正に行うことができる。
【0167】
また、上記実施例において、上記分光素子H1の左右の回折領域H11、H12を上下方向に2分割して、センサBa1とセンサBa4の境界線と、センサBa2、Ba3の境界線に、照射領域が重ならないようにしても良い。この場合、分割した回折領域によるベクトルに、左方向または右方向の成分が加えられる。こうすると、センサBa1〜Ba4の位置が左右方向にずれた場合でも、上記分光素子H1に比べて、センサBa1〜Ba4の検出信号の精度の劣化が抑制される。
【0168】
また、上記実施例では、分光素子の中央に回折領域が設けられたが、かかる回折領域は無くても良い。この場合、図10のセンサBa1〜Ba4の周りの迷光1、2において、迷光の欠け部分が無くなるため、センサBa1、Ba4の上端付近と、センサBa2、Ba3の下端付近と、センサBs1、Bs2の右端付近と、センサBs3、Bs4の左端付近には、BD光の迷光1、2の+1次回折光が掛かり易くなる。しかしながら、BD光の信号光の+1次回折光と、BD光の迷光1、2の+1次回折光との照射領域がずれているため、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の検出信号の精度が維持され得る。
【0169】
また、上記実施例および変更例では、分光素子の中央の回折領域は、図8(a)に示すような形状とされたが、これに限らず、たとえば方形状とされても良い。また、上記実施例および変更例では、分光素子の中心の回折領域の外側近傍に形成されている回折領域の境界は、平面方向と曲面方向に対して45度の角度をなす直線とされたが、これに限らず、たとえば平面方向と曲面方向に対して45度以外の角度をなす直線であっても良い。また、分光素子の外側近傍に形成されている回折領域の境界は、左右方向の直線とされたが、これに限らず、たとえば平面方向と曲面方向に対して45度の角度をなす直線であっても良い。
【0170】
また、上記実施例および変更例では、分光素子の光入射面にステップ型の回折パターンが形成されたが、これに替えて、ブレーズ型の回折パターンが形成されても良い。すなわち、本発明は、+1次回折光と−1次回折光が生じる場合の他、何れか一方の回折光のみが生じる場合にも適用可能である。
【0171】
また、分光素子によるレーザ光の回折方向は上記実施例および変更例に示すものに限定されるものではない。平面方向と曲面方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光軸に整合させたときに、対頂角の方向にある2つの光束領域のレーザ光と、他の対頂角の方向にある他の2つの光束領域のレーザ光と、交点の位置にある光束領域のレーザ光が光検出器の受光面上において互いに離れるのであれば、分光素子によるレーザ光の回折方向を上記実施例で示す方向以外の方向に設定しても良い。
【0172】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0173】
1 … 光ピックアップ装置
101 … 半導体レーザ(レーザ光源)
114 … BD対物レンズ(対物レンズ)
115 … アナモレンズ(非点収差素子)
116 … 光検出器
131、201a … メモリ(乗数記憶部)
201 … コントローラ(ディスク判別部、乗数設定部、パラメータ取得部)
301、302 …加算器(第1の演算回路)
303、304 …加算器(第2の演算回路)
310 … 減算器(第1の演算回路)
311 … 減算器(第2の演算回路)
314 … 乗算器(第3の演算回路)
316 … 加算器(第3の演算回路)
Ba1〜Ba4 … センサ
Bs1〜Bs4 … センサ(2分割センサ)
Bz … 4分割センサ(第2の4分割センサ)
C1 … 4分割センサ(第1の4分割センサ)
H1〜H4 … 分光素子
H11、H12 … 回折領域(第2の領域)
H13、H14 … 回折領域(第1の領域)
H15 … 回折領域(第3の領域)
H21、H22 … 回折領域(第2の領域)
H23、H24 … 回折領域(第1の領域)
H25 … 回折領域(第3の領域)
H31、H32 … 回折領域(第2の領域)
H33、H34 … 回折領域(第1の領域)
H35 … 回折領域(第3の領域)
H41、H42 … 回折領域(第2の領域)
H43〜H46 … 回折領域(第1の領域、分割領域)
H47 … 回折領域(第3の領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向における前記レーザ光の収束により第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向における前記レーザ光の収束により第2の焦線を生成する非点収差素子と、
前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、回折作用によって、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導く分光素子と、を備え、
前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記分光素子によって回折されずに直進した前記レーザ光が導かれる位置に配置された第1の4分割センサとを有し、
前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ第3の方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ第4の方向に配置され、
前記記録媒体上に配されたトラックの前記分光素子上の方向は、前記第3の方向に平行であり、
前記第1の4分割センサは、その検出信号により、非点収差法に基づく第1のフォーカスエラー信号が生成されるよう構成され、
前記2つの第1の領域に入射したレーザ光を受光するセンサは、その検出信号により、非点収差法に基づく第2のフォーカスエラー信号が生成されるよう構成されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記2つの第1の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与し、前記2つの第2の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記2つの直線の前記交点の位置に第3の領域を備え、当該第3の領域に入射したレーザ光を、前記複数のセンサが配された位置とは異なる位置に導くように回折させる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光ピックアップ装置において、
前記光検出器は、前記第3の領域に入射し回折された前記レーザ光が導かれる位置に第2の4分割センサを備え、
前記第2の4分割センサは、当該第2の4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向くように、配置される、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記2つの第1の領域は、それぞれ、前記第4の方向に2つの分割領域に区分され、ペアとなる2つの前記分割領域に入射し回折された前記レーザ光が前記光検出器上において所定の隙間だけ離れるよう、前記分割領域の回折作用が調整され、
前記第1の領域に入射した前記レーザ光を受光する前記センサは、ペアとなる2つの前記分割領域に入射した前記レーザ光を個別に受光する2分割センサからなっている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記第1のフォーカスエラー信号を生成する第1の演算回路と、
前記第2のフォーカスエラー信号を生成する第2の演算回路と、
前記第2のフォーカスエラー信号に所定の乗数を乗じて得た信号を前記第1のフォーカスエラー信号に加算して第3のフォーカスエラー信号を生成する第3の演算回路と、を有する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の光ピックアップ装置と、
前記第1のフォーカスエラー信号を生成する第1の演算回路と、
前記第2のフォーカスエラー信号を生成する第2の演算回路と、
前記第2のフォーカスエラー信号に所定の乗数を乗じて得た信号を前記第1のフォーカスエラー信号に加算して第3のフォーカスエラー信号を生成する第3の演算回路と、を有する、
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
請求項7に記載の光ディスク装置において、
記録媒体の種別と前記乗数とを対応付けて記憶する乗数記憶部と、
前記記録媒体の種別を判別するディスク判別部と、
前記ディスク判別部により判別された前記記録媒体の種別に対応する前記乗数を前記乗数記憶部から読み出し、読み出した乗数を前記第3の演算回路の乗数として設定する乗数設定部と、を有する、
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
請求項7に記載の光ディスク装置において、
前記第1のフォーカスエラー信号に対する前記トラックの影響を表すパラメータの値と前記乗数とを対応付けて記憶する乗数記憶部と、
前記パラメータの値を取得するパラメータ取得部と、
前記パラメータ取得部により取得された前記パラメータの値に対応する前記乗数を前記乗数記憶部から読み出し、読み出した乗数を前記第3の演算回路の乗数として設定する乗数設定部と、を有する、
ことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−77365(P2013−77365A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218086(P2011−218086)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】