説明

光モジュール

【課題】光コネクタの光ファイバを伝達してきた光を高い結合効率で光デバイスに結合できる構造であり、光デバイスの実装から光デバイスの封止の工程をアレイ状態で実施できる構造を有する光モジュールを提供する。
【解決手段】光モジュール1は、光ファイバと光結合する光デバイスを実装する。光モジュール1は、光コネクタのフェルールをガイドするスリーブ3と、スリーブ3に一端を挿入しフェルールと光結合するスタブ2と、スタブ2の中心部に搭載される光ファイバ2aと、スタブ2の他端に嵌合固定され、スリーブ3を保持するベースプレート4と、ベースプレート4の開放面を封止する封止部材5とを備える。ベースプレート4の開放面には電気導体路が形成されスタブ2に搭載される光ファイバ2aと光結合する光デバイス6が実装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッシブアライメント方式により光デバイスを実装した光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバと半導体光素子(光デバイス)における光結合の調芯方法として、アクティブアライメント方式、パッシブアライメント方式が知られている。
前者のアクティブアライメント方式は、光デバイスと光ファイバ間の最適な位置関係を割り出すために、アウトプットをモニタしながら調芯するもので、半導体レーザ、フォトダイオード等の光デバイスとコア径が9μm程度の光ファイバをミクロン、サブミクロンオーダーで精度良く光結合させるのに適している。
【0003】
従来のアクティブアライメント方式を用いた光モジュールの例として、特許文献1には、フレキシブルケーブル付き基板に実装された光デバイスの光学軸が、光ファイバが埋め込まれたフェルールの端面とほぼ直角になるように、光デバイスとフェルールの端面を近接させて光ファイバを伝達してきた光を光デバイスに直接結合させることを特徴とする光モジュールが記載されている。この光モジュールは、光学レンズ等を必要とせず、また光学デバイスとフェルールを突き当てで調芯するため、結合効率を高くできる。
【0004】
しかし、アクティブアライメント方式では、最高出力やカップリングの検出にかなりの時間を必要とし、調芯装置も精度の高い高価なものが必要とされる。また、光結合の調芯後に位置固定のために接着や溶接を行うが、そのための機械的強度の確保と精密固定を満足させる必要があり、このための材料、設備上の制約からコスト高なものとなっていた。
【0005】
一方、後者のパッシブアライメント方式は、アウトプットをモニタせずに機械的な位置決めにより調芯を行うもので、自動化に適している。このパッシブアライメント方式は、アクティブアライメント方式に比べ、短時間での実装が可能となる。
光デバイスと光ファイバを光学的に結合する光モジュールにおいては、製造コスト及び製造装置コストの削減を図り、効率よく組み立てを行うことが求められる。このため、光結合の調芯方法はアクティブアライメント方式に代わってパッシブアライメント方式が主流となりつつある。
【0006】
従来のパッシブアライメント方式を用いた光モジュールの例として、特許文献2に記載のものがある。特許文献2に記載の光モジュールでは、光ファイバが埋め込まれたフェルールが挿通される貫通孔を有する基板片に透光性樹脂膜が積層され、光デバイスが貫通孔上に透光性樹脂膜を介して設置されており、貫通孔にフェルールを装着することにより、光ファイバを伝達してきた光が光デバイスに直接結合される。フェルールのガイドとなる基板片の貫通孔を基準として、光デバイスをフリップチップ実装することでパッシブアライメントを実現している。
【特許文献1】特開2004−341370号公報
【特許文献2】特開2004−361630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に記載の光モジュールは、アクティブアライメント方式を用いた特許文献1に記載の光モジュールと同様に、光学レンズを用いないため、光結合率を高くできる。また、光デバイスの実装はアレイ状態で実施できるため、量産性に優れる。
しかし、フォトダイオード等の光デバイス等を封止するために、トランスファモールドといった技術を用いた封止材で封止・保護する必要があるが、それはモジュールごとに行う必要があるため、生産性には多少難が残る。
【0008】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、光コネクタの光ファイバを伝達してきた光を高い結合効率で光デバイスに結合できる構造であり、光デバイスの実装から光デバイスの封止の工程をアレイ状態で実施できる構造を有する光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の光モジュールは、光ファイバと光結合する光デバイスを実装したものであって、光コネクタのフェルールをガイドするスリーブと、スリーブに一端を挿入しフェルールと光結合するスタブと、スタブの中心部に搭載される光ファイバと、スタブの他端に嵌合固定され、スリーブを保持するベースプレートと、ベースプレートの開放面を封止する封止部材とを備え、ベースプレートの開放面には電気導体路が形成され上記スタブに搭載される上記光ファイバと光結合する上記光デバイスが実装されていることを特徴とする。
【0010】
また、開放面にデバイス回路部品をさらに搭載し、さらに、当該デバイス回路部品に接続する電気導体路が上記開放面に形成されており、封止部材が、当該電気導体路と外部電気回路を接続するための接続部を有するようにしてもよい。なお、封止部材はチップキャリア型パッケージを形成するものであってもよい。
【0011】
本発明の光モジュールの製造方法は、それぞれが貫通孔を有するベースプレートと位置決め治具とを、貫通孔が互いに連続するように固定するステップと、ベースプレート及び位置決め治具の貫通孔にスタブを挿入して、スタブとベースプレートを固定するステップと、ベースプレートの位置決め治具側とは反対側の開放面に電気導体路を形成するステップと、スタブの開放面側に光デバイスとデバイス回路部品を実装し、電気導体路と電気的に接続するステップと、ベースプレートの開放面を封止すると共に電気導体路と外部電気回路を接続する接続部を有する封止部材で、接続部と外部電気回路が接続可能なように、光デバイスを封止するステップと、位置決め治具を取り除くステップと、スタブの位置決め治具に挿入されていた部分にスリーブを取り付けるステップと、から成ることを特徴とする。
【0012】
上記の光モジュールの製造方法において、ベースプレート、位置決め治具、及び封止部材がアレイ状に形成されており、さらに、光デバイスを封止するステップまでで組み立てられたアセンブリを個片に切断するステップを備えるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ファイバからの光をフォトダイオードなどの光デバイスへ直接結合することができ、既存の光モジュールに比べレンズなどを削減できるため、高い光結合効率で光デバイスに光を結合できる。また、光ファイバと光デバイスの結合をパッシブアライメントで実施することができ、製造設備に対する投資を安価にできる。
さらに、アレイ状態で実装を行うことができ、一度に多くの光モジュールを製造することができる。また、光デバイスやデバイス回路部品の気密封止工程もアレイ状態で行うことができ、高信頼性の光モジュールを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図を参照して、光デバイスとしてフォトダイオード(PD:Photo Diode)を用いる例で、本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の光モジュールの一例を示す図である。本発明の光モジュールは光ファイバと光デバイスを光学的に結合するものであり、図示するように、光モジュール1は、例えば、スタブ2、スリーブ3、ベースプレート4、リッドプレート5、光デバイス6を備える。なお、以下の説明では、リッドプレートを備える側を光モジュールの上側とし、また、ベースプレート及びスタブの上面のリッドプレートによって封止される側を、開放面とする。
【0015】
スタブ2は、例えば、ジルコニアキャピラリまたはガラスセラミックスキャピラリで構成され、中心部に光ファイバ2aを有している。スタブ2は、一端にベースプレート4を嵌合固定した状態で、スリーブ3に挿入される。図1の例では、スタブ2及びベースプレート4の上面が連続した面一な平面となっている。スタブ2の上面(開放面)には、光デバイス(PD)6が、PD6の受光面と光ファイバ2aとが光結合するように搭載される。
【0016】
スリーブ3は、光ファイバケーブルの先端に付属する光コネクタのフェルール(図示せず)及びスタブ2が挿入される挿通孔3aを有している。スリーブ3は、フェルールの挿入をガイドし、スリーブ内に挿入されているスタブ2とを突き合せ、フェルール内の光ファイバ(図示せず)とスタブ2内の光ファイバ2aとを光学的に接続させる。また、スリーブ3はベースプレート4の底面側に接合固定される。
【0017】
ベースプレート4は、貫通孔4aを有しており、貫通孔4aにスタブ2の上端が挿通されて、スタブ2に保持固定される。本発明の光モジュールを受光モジュールとして構成する場合、ベースプレート4の上面には、例えば、デバイス回路部品であるTIA(Trans Impedance Amplifier)7が搭載される。なお、図1には示していないが、ベースプレート4の上面(開放面)には、TIA7とスタブ2に搭載されるPD6に電源供給や電気黄信号の配線を行う電気導体路が形成されている(例えば、図5参照)。
【0018】
リッドプレート5は、光モジュール1が外部電気回路と接続可能なようにして、PD6及びTIA7をベースプレート4との間で気密封止する。リッドプレート5には、このためベースプレート4上の電気導体路と外部電気回路とを電気的に接続するための接続部5aが、例えば、メタライズ加工により形成されている。この接続部5aは、リッドプレート5の下部底面の、ベースプレート4上の電気導体路に対向する箇所から、リッドプレート5の側面を介し、リッドプレート5の上面に達するように形成されている。外部電気回路とベースプレート4上の電気導体路との電気的接続は、例えば、リッドプレート5の接続部5aの上端面とフレキシブル回路(FPC)基板(例えば、図10参照)とを接続し、そのFPC基板と外部電気回路を接続することにより達成される。このように、リッドプレートは、その側面に接続電極を有するチップキャリア型パッケージの形態を採ることができる。
【0019】
以上のような構成により、本発明の光モジュールにおいては、気密封止された光デバイスと光ファイバとを、レンズなどを介さずに直接光結合するので、高い光結合効率で光結合することができる。
【0020】
次に、図2〜図10を参照して、本発明の光モジュールの製造方法の一例を説明することにより、本発明の光モジュールの各構成要素について更に詳しく説明する。
図2は、ベースプレートとスタブとを固定するための前工程を説明する図である。この前工程は、スタブの位置決めのためのスタブ位置決め治具(以下、位置決め治具という)8にベースプレート4を固定する工程であって、図2(A)は固定前の状態を示し、図2(B)は固定後の状態を示す。
【0021】
ベースプレート4および位置決め治具8には、スタブを挿入するための貫通孔4a,8aがそれぞれ形成されており、両方の貫通孔4a,8aが一致するように、位置決め治具8とベースプレート4とを固定する。固定するための接着剤としては、例えば、温水や専用溶剤で剥離溶解可能なものを使用することが考えられる。なお、貫通孔4a,8aは、ベースプレート4と位置決め治具8を固定した後に孔明け加工を行って形成しても良い。ベースプレート4の貫通孔4aは、スタブを精度良く位置決めする必要があるため、スタブ外径(LCコネクタではφ1.2485〜1.2495mm)に対して、数μm程度のクリアランスとなるよう加工されていることが望ましい。ベースプレート4は、絶縁性の材料で形成され、その材料として、例えば、セラミックスや多成分ガラスのほか、耐熱性の高い樹脂材料を用いることができる。
【0022】
図3は、スタブをベースプレートに固定する工程を説明する図であり、図3(A)は固定前の状態を示し、図3(B),(C)は固定後の状態を示す。この工程では、まず、ベースプレート4及び位置決め治具8の貫通孔4a,8aにスタブ2を挿入する(図3(A),(B)参照)。スタブ2は、図3(C)に示すように、スタブ2の底面と位置決め治具8の底面とが一致するまで挿入される。その後に、ベースプレート4とスタブ2との接合部に接着剤を付与し、毛管作用で、嵌合部の隙間に接着剤を入り込ませて接着固定する。
【0023】
この工程により、スタブ2は、その下端が位置決め治具8の下端と一致するようにアセンブリされる。ただし、スタブ2の上面に関しては、図3(B),(C)に示すように、ベースプレート4の上面からスタブ2の端面が飛び出すようになっていても良い。なお、位置決め治具8とベースプレート4とは後工程で剥離するため、位置決め治具8とスタブ2の間に接着剤が回り込まないようにする。あらかじめ位置決め治具8の内径を大きく加工し、接着剤が流れ込まないようにするのが良い。
【0024】
図4は、スタブの研磨工程を説明する図であり、図4(A),(B)は共に、研磨後の状態を示している。
研磨工程の前は、例えば、図3(B),(C)に示したように、ベースプレート4の上面からスタブ2の上端部が多少突出するようにアセンブリされる。この研磨工程では、ベースプレート4の上面から突出しているスタブ2の上端部を研磨し、例えば、図4(A),(B)の状態となるように、すなわちスタブ2の上面とベースプレート4の上面が面一となるようにする。
ただし、スタブ2を、スタブ2の長さとベースプレート4の厚みとが等しくなるように、作製したときは、この研磨工程は省略することができる。
【0025】
図5は、ベースプレート上面に電気導体路を形成する工程を説明する図で、電気導体路が形成された状態を示している。この工程では、ベースプレート4の上面に電気導体路9をメタライズにより形成する。電気導体路9は、PDやTIAの電源ライン、TIAからの信号ラインの他、PDをフリップチップ実装するための電極や、PDとTIAを接続する信号ラインとされる。また、PDをパッシブアライメントで実装する際の位置決めの目印となるマーキング(図示せず)を形成しても良い。
【0026】
図6は、光デバイス及びデバイス回路部品を実装する工程を説明する図であり、図6(A)は実装前の状態を示し、図6(B),(C)は実装後の状態を示す。図6に示す工程では、光デバイスなどが実装されていない図6(A)の状態から、図6(B),(C)に示すような状態になるよう、光デバイス等の実装を行う。すなわち、デバイス回路部品であるTIA7をベースプレート4上に所定の状態で実装し、光デバイスであるPD6をスタブ2上に所定の状態で実装する。この所定の状態は、TIA7やPD6の上面に形成される電極7a,6aの位置や、電気導体路9の形状による。
【0027】
図6(B),(C)では、スタブ2の光ファイバ2aの位置を基準として、PD6の受光面が同軸となるよう実装する例を示す。PD6として裏面入射PDを用いて、その受光面がスタブ2と対向するよう実装する。光ファイバ2aからの光を阻害しないために、実装には透光性の接着材料を用いる。PD6には、スタブ2と対向する反対側の面に電極6aが設けてあり、電極6aとベースプレート4上の電気導体路9およびTIA7の電極7aとを、ワイヤボンディングにて電気的に接続する。なお、TIA7の実装は、樹脂固定の他、銀ペーストなどを用いたダイボンドとしても良い。TIA7と電気導体路9もワイヤボンディングにて電気的に接続する。
【0028】
また他の実装方法として、スタブ2の光ファイバ2a付近までのびるように電気導体路9を形成しておき、表面入射PDを、その受光面がスタブ2と対向するように、フリップチップ実装しても良い。その場合もスタブ2の光ファイバ2aとPDの受光面が同軸となるようパッシブアライメントで位置決めするが、光ファイバ2aの端面とPDが近接しているため、実装精度は多少低下しても、光をPDに受光することが可能となる。
【0029】
フリップチップ実装の場合、PDとスタブ2の線膨張係数の差による応力を緩和するために、PDとスタブ2の隙間にアンダーフィルを施しても良い。アンダーフィルに用いる材料は、透光性である必要がある。アンダーフィルの屈折率を光ファイバ2aのコアとほぼ等しいものを採用することで、光ファイバ2aの端面での光学損失を低減することができ、高い光結合効率でPD(光デバイス)と光ファイバ2aを結合することができる。
【0030】
図7は、光デバイス等を気密封止する工程を説明する図である。図7(A)は気密封止前の状態を示し、図7(B),(C)は気密封止後の状態を示す。この工程では、光デバイス及びデバイス回路部品を気密封止する封止部材であるリッドプレート5と上述のベースプレート4とを接着固定して、PD6及びTIA7を気密封止する。
【0031】
リッドプレート5は、例えば、絶縁性の材料を用いて形成され、例えば、セラミックスや多成分ガラスのほか、耐熱性の高い樹脂材料を用いることができる。リッドプレート5には、図7(A),(B)に示すように、外部電気回路と電気接続する接続部5aが形成されており、この接続部5aは、リッドプレート5の側面に、上下面に達するように所定の形状にメタライズ加工することにより形成することができる。また、リッドプレート5には、図7(C)に示すように、凹み5bが形成されていて、この凹み5bとベースプレート4(及びスタブ2)との間で形成される空間内に、PD6及びTIA7を収容し気密封止する。
【0032】
この気密封止工程でのリッドプレート5とベースプレート4との接着固定について、さらに詳しく説明する。ベースプレート4とリッドプレート5は、電気導体路9と接続部5aとが電気的に接続されるよう組み立てられる。電気導体路9と接続部5aとの接続には、はんだや銀ペーストによって接続する方法のほか、電極同士を超音波により接続する方法を用いても良い。電気導体路9及び接続部5a以外の部分には粘度の低い絶縁接着剤を用いて接着固定する。これらの作業は、窒素雰囲気中で行い、光デバイス等を気密封止するのが好ましい。
【0033】
図8は、スタブ位置決め治具を除去する工程を説明する図であり、図8(A)は除去前の状態を示し、図8(B),(C)は除去後の状態を示す。
この工程では、図8(A)に示すようにベースプレート4が固定されているスタブ位置決め治具8を、ベースプレート4より剥離し、図8(B),(C)に示すように、スタブ2を外部に露出した状態にする。位置決め治具8は、アセンブリ(組み立て)時のスタブ位置決め機能以外に、アセンブリ(組み立て)中にスタブ2の下部端面が汚染されることを防ぐ保護部品の役割を果たすこともできる。その場合は、位置決め治具8の下に、さらに、スタブ2の端面を保護するための保護プレートを取り付けておく。
【0034】
図9は、スリーブを装着する工程を説明する図である。この工程では、図8(B)に示すような状態に組み立てられた部品に、光コネクタのフェルールをガイドするスリーブ3を装着する。高精度に内径加工されたスリーブ3の挿通孔3aに、スタブ位置決め治具8の除去により外部に露出しているスタブ2を挿入し、ベースプレート4の底面とスリーブ3の上面とを接着固定することで、図1に示すような光モジュールが完成する。なお、スリーブ3の代わりに割スリーブとスリーブシェルを用いる構造としても良い。スタブ2と上述のフェルールとの位置決めは割スリーブが果たし、外形を決めるスリーブシェル部品は高精度の内径加工が不要となり、スリーブシェルを安価に製造することができる。
【0035】
本発明の光モジュールは、光モジュールが取り付けられる機器と光モジュールとを電気的に接続するものとして、例えば、FPC基板を備えていても良い。
図10は、FPC基板を取り付ける工程を説明する図であり、図10(A)は取り付け前の状態を示し、図10(B),(C)は取り付け後の状態を示す。この工程では、リッドプレート5の側面に形成した接続部5aの上端と、FPC基板10の一方の端部側に設けられたパッド(図示していない)をはんだ接続する。これにより、ベースプレート4上に形成された光モジュール回路とFPC基板10とが、接続部5aを介して電気的に接続される。そして、光モジュール1は、FPC基板10の他方の端部10aなどを光モジュールが取り付けられる機器に接続することにより、光ファイバを介してPD6で受光された光信号を電気信号に変換して送信することが可能となる。
【0036】
以上に説明した本発明の光モジュールの製造方法では、図2から図8を用いて説明した工程を、アレイ構造の部品(ベースプレートなど)を組み立ててアレイ状態のまま光デバイスの実装を行うことができるので、一度に多くの光モジュールを製造することができる。以下に、アレイ構造で本発明の光モジュールを製造する方法について説明する。
【0037】
まず、スタブ位置決め治具がアレイ状に形成されたスタブ位置決め治具アレイに、ベースプレートがアレイ状に形成されたベースプレートアレイを接着固定する。次に、上述の光モジュールを1つずつ製造する方法と同様に、ベースプレートアレイ(及びスタブ位置決め治具アレイ)の貫通孔のそれぞれにスタブを挿通し、スタブをベースプレートアレイに固定する。その後に、ベースプレートアレイ上に電気導体路を形成し、それぞれのスタブ上にPDを実装し、それぞれのPDに対応させてTIAを実装する。
その次の工程については、図11を用いて説明する。
【0038】
図11は、光モジュールをアレイ構造で製造する方法における一工程を説明する図である。図11に示すベースプレートアレイ4’は、これまでの工程により、スタブ位置決め治具アレイ8’上に固定され、そのスタブ位置決め治具アレイ8’側とは反対側には、電気導体路9が形成され、所定の位置にPD6及びTIA7が実装されている。リードプレートアレイ5’上には、所定のアレイ配列で接続部5aが上下面に表出するように貫通状態で形成されている。
【0039】
図11で説明する工程では、このようなベースプレートアレイ4’に、リッドプレートがアレイ状に形成されたリッドプレートアレイ5’を接着固定し、各リッドプレートでPD6及びTIA7を気密封止する。この気密封止は、リッドプレートの接続部5aと電気導体路9とが電気的に接続されるよう接着し、それ以外の部分を粘度の低い接着剤で接着固定することにより行われる。図11(A)は気密封止前の状態を示し、図11(B)は気密封止後の状態を示す。
【0040】
図11(B)に示すような状態のものを、次の工程では、個片に切断する。
図12は、アレイ状態で組み立てた部品を切断したときの様子を示す図である。部品の切断は、図示するように、リッドプレートアレイ5’に形成され接続部5aが形成されている円筒部5bを中心から切断するように行われ、これにより、矩形状の組み立て部品20が得られる。矩形状の組み立て部品20を、さらに、個片に切断していくことにより、図6に示すようなものが得られる。これら切断は、ダイシングやレーザによる方法で行うことができる。
【0041】
以降の工程は、上述の光モジュールを1つずつ製造する方法と同様に行われ、最終的に図1に示すような光モジュールを得ることができる。
以上のように、本発明の光モジュールの製造方法では、多くの工程をアレイ状態で行うことができ、一度に多くのものを組み立てることができるので、コスト削減を図ることができる。
【0042】
以上に、本発明について、所定の実施形態を参照して開示したが、この実施形態は例示であって本発明を限定するものではない。本発明の範囲は、本明細書に開示した実施形態に限定されることがなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の光モジュールの一例を示す図である。
【図2】ベースプレートとスタブとを固定するための前工程を説明する図である。
【図3】スタブをベースプレートに固定する工程を説明する図である。
【図4】スタブの研磨工程を説明する図である。
【図5】ベースプレート上面に電気導体路を形成する工程を説明する図である。
【図6】光デバイス及びデバイス回路部品を実装する工程を説明する図である。
【図7】光デバイス等を気密封止する工程を説明する図である。
【図8】スタブ位置決め治具を除去する工程を説明する図である。
【図9】スリーブを装着する工程を説明する図である。
【図10】FPC基板を取り付ける工程を説明する図である。
【図11】光モジュールをアレイ構造で製造する方法における一工程を説明する図である。
【図12】アレイ状態で組み立てた部品を切断したときの様子を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1…光モジュール、2…スタブ、2a…光ファイバ、3…スリーブ、3a…挿通孔、4…ベースプレート、4’…ベースプレートアレイ、4a…貫通孔、 5…リッドプレート、5’…リッドプレートアレイ、5a…接続部、5b…円筒部、6…光デバイス(PD)、6a…電極、7…TIA、7a…電極、8…スタブ位置決め治具、8’…スタブ位置決め治具アレイ、8a…貫通孔、9…電気導体路、10…FPC基板、10a…端部、20…組み立て部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと光結合する光デバイスを実装した光モジュールであって、
光コネクタのフェルールをガイドするスリーブと、
該スリーブに一端を挿入し前記フェルールと光結合するスタブと、
該スタブの中心部に搭載される光ファイバと、
前記スタブの他端に嵌合固定され、前記スリーブを保持するベースプレートと、
該ベースプレートの開放面を封止する封止部材とを備え、
前記ベースプレートの前記開放面には電気導体路が形成され前記スタブに搭載される光ファイバと光結合する前記光デバイスが実装されていることを特徴とする光モジュール。
【請求項2】
前記開放面にデバイス回路部品をさらに搭載し、さらに、該デバイス回路部品に接続する電気導体路が前記開放面に形成されており、
前記封止部材は、該電気導体路と外部電気回路を接続するための接続部を有することを特徴とする請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記封止部材はチップキャリア型パッケージを形成することを特徴とする請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の光モジュールの製造方法であって、
それぞれが貫通孔を有するベースプレートと位置決め治具とを、前記貫通孔が互いに連続するように固定するステップと、
前記ベースプレート及び前記位置決め治具の前記貫通孔にスタブを挿入して、該スタブと前記ベースプレートを固定するステップと、
前記ベースプレートの前記位置決め治具側とは反対側の開放面に電気導体路を形成するステップと、
前記スタブの前記開放面側に光デバイスとデバイス回路部品を実装し、前記電気導体路と電気的に接続するステップと、
前記ベースプレートの前記開放面を封止すると共に前記電気導体路と外部電気回路を接続する接続部を有する封止部材で、前記接続部と前記外部電気回路が接続可能なように、前記光デバイスを封止するステップと、
前記位置決め治具を取り除くステップと、
前記スタブの前記位置決め治具に挿入されていた部分にスリーブを取り付けるステップと、から成ることを特徴とする光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記ベースプレート、前記位置決め治具、及び前記封止部材がアレイ状に形成されており、
さらに、前記光デバイスを封止するステップまでで組み立てられたアセンブリを個片に切断するステップを備えたことを特徴とする請求項4記載の光モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−102254(P2008−102254A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283583(P2006−283583)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】