光導電リレー、組立体および光導電リレーの組立方法
【課題】小型、高周波、高性能光導電リレーの提供。
【解決手段】本発明の光導電リレー(100)は、半導体発光素子(101)と、該発光素子の発光面から発生する駆動光を受光する受光面を備えた光導電スイッチ素子(102)と、前記発光面と前記受光面とを対向させて固定接続するための導電柱(103)を3本以上備え、前記発光面と受光面との距離を100μm以下にしている。
【解決手段】本発明の光導電リレー(100)は、半導体発光素子(101)と、該発光素子の発光面から発生する駆動光を受光する受光面を備えた光導電スイッチ素子(102)と、前記発光面と前記受光面とを対向させて固定接続するための導電柱(103)を3本以上備え、前記発光面と受光面との距離を100μm以下にしている。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は概して半導体発光素子と半導体受光素子からなる光導電リレーの構造に関し、特にマイクロ波への応用における小型化、高性能化、低製造コスト化に関する。
【0002】
【従来の技術】所定の間隙を有する電極を備えた光導電素子に光を照射してスイッチ動作を行わせる光導電スイッチがある。光導電素子はGaAsやInPに代表されるIII-V族系半導体からなる半絶縁性半導体である。光導電素子をレーザや発光ダイオード(以下LEDと称する)等の発光素子と組み合わせた小型、超高速光導電リレー素子に期待が持たれている。
【0003】特開平6−18554号公報には、図1に示すように、このような光導電スイッチを用いた高周波信号測定用のプローブ装置50が開示されている。半導体レーザのような光源20により生成される輻射パルスは、例えば、光ファイバー21及びコリメータ・レンズ22から成る光学システムを経由して基板14上の配線13を中継する光導電スイッチ16に伝送されている。光導電スイッチ16により配線13上を流れる信号電流が導通・遮断される。また、同公報には、もし半導体レーザが光源として使われ、光導電素子の近くに基板と直接接触してそれを配置することができるならば、大袈裟な伝送システムは省略されるであろうことが述べられている。さらにまた、同公報には、光ファイバーのコアの端面に被着された透明電極と測定用チップで光導電素子を挟持する構成も開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、光源を基板に直接接続して小型化することが望まれる。高速スイッチの受光面積は小さく、また短絡時の端子間抵抗を下げるため、その受光面積になるべく多くの光を集光させることが望まれる。そのため光源とスイッチの受光領域との距離を短くかつ正確に位置あわせしなければならない。小型化するにつれ、位置あわせの精度への要求も高くなるが、製造工程が簡単で、調整時間やコストがかからず、不良率も低いことが望まれる。スイッチの開放時の端子間容量(オフ容量)を少なくするためにはスイッチ周囲の誘電率は低いことが望まれる。また、リレーの駆動信号がスイッチの接続される回路に漏れないことが望ましい。さらに、発光素子の駆動電力による温度上昇に対しても機械的、電気的安定性が確保されることが望ましい。また、新しい発光素子や光導電素子に適応してそれらを採用できることが望ましい。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決或いは問題の解消に役立つ本発明の光導電リレーは半導体発光素子と光導電スイッチ素子とをフリップチップボンディング方式により導電柱を設けて接続している。素子間の位置あわせは、溶融バンプの表面張力による自己整合によっている。また、受光素子と発光素子との熱膨張係数を合わせることにより、バンプ接続部の熱応力の発生を軽減している。
【0006】上記課題を達成するため、本発明の光導電リレーは、半導体発光素子と、該発光素子の発光面から発生する駆動光を受光する受光面を備えた光導電スイッチ素子と、前記発光面と前記受光面とを対向させて固定接続するための導電柱を3本以上備え、前記発光面と受光面との距離を100μm以下にした構成である。上記導電柱にはすず、鉛、銀、金、インジウム、アンチモン、ビスマスのうちのいずれか1つを含む合金が用い得る。すずやインジウムは単体で用いることもできる。
【0007】さらに、導電柱が前記発光素子を駆動するための駆動電流を供給するように、例えば光導電スイッチ素子側から駆動電流を供給しても良い。また、逆に、導電柱が前記光導電スイッチ素子へ信号電流を供給するように、例えば発光素子側から信号電流を導入・導出してもよい。半導体発光素子としてはLED素子もしくは面発光型レーザー素子が好適である。LED素子は廉価であるが、入力できるパワーに限界があり、スイッチ素子の導通時の抵抗であるON抵抗が比較的高くなります。一方、レーザー素子は高価だが、高いパワーを入力できるので、ON抵抗を下げられるというメリットがあります。また、LED素子からの放射光は比較的広帯域であり、一方、レーザー素子からの放射光は狭帯域であるので、LED素子の光導電スイッチの光波長特性に対する適応度が大きい。すなわち、光導電スイッチ素子の種類と光導電リレーの用途によって使い分けることが可能です。
【0008】光導電スイッチ素子として、第1、第2、第3の層を順次積層してなる3層構造を有し、第2の層は一のエネルギーバンド幅を有する材料から成りるとともに第1、第3の層は該一のエネルギー・バンド幅より広いエネルギー・バンド幅を有する材料から成り、第2の層は前記駆動光の照射により抵抗の低下を生じる高性能素子が好適である。この高性能素子は本発明の発明者等により発明されたものである。
【0009】半導体発光素子の駆動電流の方向と前記光導電スイッチ素子を流れる信号電流の方向とが前記受光面の近傍で略直交しているように配置すれば、駆動電流の影響が信号電流に及ぶことを緩和できる。発光面と受光面とが対向する空間は透明な樹脂を充填することにより補強を図ることもできるが、真空、不活性気体、空気等の絶縁性気体が実質的に充満しているようにすれば、光導電スイッチの浮遊容量を少なくすることができる。また、例えば図8に示すように、一つの基板に本発明の光導電リレーを複数集積して、多チャンネルの信号収録装置のサンプリングを行うサンプリング・ヘッドを構成することができる。あるいは、多重化スイッチと本発明の光伝導リレーを用いることもできる。
【0010】本発明の光伝導リレーを組立てるばあいは、受光面のそれぞれに導電パッドを設け、発光面と受光面とを対向位置決めして、対向する前記導電パドの間に導電塊を挟持させる。つぎに、導電塊を溶融させ、溶融した該導電塊により前記発光面と前記受光面の一方を他方に対して偏移させ、溶融した導電塊を凝固させて導電柱とすることで発光面と受光面とを固定接続する。固定接続された前記発光面と前記受光面との間隙が100μm以下であるのが好ましい。溶融した該導電塊により前記発光面と前記受光面の一方を他方に対して偏移させるばあいに、発光面と受光面とが水平面に平行で、上方に位置する面が固定支持されているようにもできるし、下方に位置する面を固定支持するようににもできる。
【0011】
【発明の実施の形態】発光素子と受光素子を組み合わせた光導電リレーでは、発光素子からの光をできるだけ損失なく受光素子即ち受光スイッチ素子に入力させることが重要である。そのため両素子の光学中心を一致させ、両素子間の距離を短く保つことが必要である。発光素子はレンズなどの光学部品を用いない限り、広がりを持った照射パターンを有している。したがって、発光中心の位置が一致しないと照射パターンが受光素子の受光すべき領域である受光領域から外れる光があり、そのような光はスイッチの短絡抵抗を低下させる効果を有しない。また、光の強度も発光点からの距離の2乗に反比例するため、発光素子と受光素子の距離が近い方がより高密度に高エネルギーの光を照射することができる。本発明の光導電リレーでは、小型化、組立や調整の容易さを考えレンズや光ファイバの利用を極力避けるものである。
【0012】図2に本発明の一実施例のリレー100の封じエポキシ樹脂120を一部剥離して示す正面図を示し、図3はエポキシ樹脂120を全部剥離して示す図2の一部の拡大図である。発光面から発光するLEDや面発光型レーザーである光源106を有する半導体発光素子101の駆動電極でもある導電パッド即ち接続パッド108−1と108−2は、光導電スイッチ107を備えた光導電スイッチ素子102上の接続パッド109−1と109−2に導電柱またはバンプ103−1と103−2を介して取り付けられている。光導電スイッチ素子102上には接続パッド109−1と109−2に結合された、或いは光導電スイッチ107の電極に光導電スイッチ素子102上のメタル114(複数のメタル114−1、−2、−3、・・・の総称)により結合されたボンディングパッド110−1と110−2が設けられている。光導電スイッチ素子102は導電性ペースト(図示せず)により金属製リードフレーム104に固定され、前記ボンディングパッド110−1及び110−2とリードフレーム104上のリード112−1及び112−2との電気的接続はボンディングワイヤ105−1及び105−2とによりなされている。
【0013】本明細書において接続パッド108−1と108−2等を総称して接続パッド108と呼称し、接続パッド109−1と109−2等を総称して接続パッド109と呼称し、バンプ103−1と103−2等を総称してバンプ103、或いは導電柱103と呼称し、ボンディングパッド110−1と110−2等を総称してボンディングパッド110と呼称し、リード112−1及び112−2等を総称してリード112と呼称することとする。
【0014】この実施例では発光素子101と光導電スイッチ素子102全体をエポキシ樹脂120によりモールドしている。発光素子101の光を放射する発光領域106と光導電スイッチ107の間の空間の全部或いは一部間を除いてエポキシ樹脂120を充填モールドすれば、光導電スイッチ近傍に置かれる誘電率の大きい材料が減少し、光導電スイッチ素子の開放容量を減らせるので好ましい。樹脂モールドせずに、セラミックパッケージ内に収納してもよい。従来例に比較すると全体を小さく、電気配線を短くでき、高周波の信号を扱えることがわかる。
【0015】図3を参照してさらに説明すると、接続パッド108や109は錫鉛合金に塗れ易い、例えばニッケルと金の多層構造が選ばれる。バンプ103は錫鉛合金からなり、接続パッド108や109を機械的、電気的に接続する。発光素子からの光が効率よく光導電スイッチを駆動するためには相対する発光面と受光面の距離が100μm以下であることが望ましく、本実施例のバンプの高さは約30μm、直径は約50μmである。また、これら互いに略平行な両面間の距離はバンプの高さを調節することによって、駆動効率を上げるため必要に応じて10μmか、あるいはそれ以下にすることも可能であることが判明した。また、後述する自己整合効果によって、光源106の発光面と、光導電スイッチ107の受光面の面内での相対位置を正確に合わせることができる。
【0016】図4は、本発明の一実施例の光導電スイッチ素子102の平面図である。ボンディングパッド110−1と110−3のそれぞれから、メタル114−1、114−3のそれぞれが光導電スイッチ107の電極まで伸びている。光導電スイッチ107の開閉に応じてボンディングパッド110−1と110−3間の電気接続が断続する。ボンディングパッド110−2と110−4のそれぞれから、メタル114−2、114−4のそれぞれが接続パッド109−2,109−4にそれぞれ伸びている。ボンディングパッド110−2と110−4間に電流を流すことにより、光導電リレー組立後の半導体発光素子101をバンプ103を介して駆動して発光させる。光源6を流れる電流を点線115で示す。
【0017】この実施例ではボンディングパッド110−1と110−3の間のメタル114−1と114−3とは好ましくは略直線的に延伸し、メタル114−2と114−4および半導体発光素子101の光源106を流れる駆動電流も略直線的であり前記延伸方向と直交させることが望ましい。接続パッド109−1は実質的な電気的作用を持たず、両素子102,101の位置決めをおこなうためのものである。位置決め精度の統計的効果による精密化や光導電スイッチ周囲のシールド、素子101上の他の電気素子との通信のため等の目的でさらに多くの接続パッドを設けることもできる。
【0018】図5には本発明の別の実施例におけるの光導電スイッチ素子502の平面図である。光導電スイッチ素子502は光導電スイッチ素子102と実質的に同様の構成であるが、メタル514の配置がメタル114の配置と異なり、光導電スイッチを通る信号電流と光源106の駆動電流の伝送路の向きが異なる。ボンディングパッド510−3と510−4のそれぞれから、メタル514−3、514−4のそれぞれが光導電スイッチ507の電極まで伸びている。光導電スイッチ507の開閉に応じてボンディングパッド510−3と510−4間の電気接続が断続する。ボンディングパッド510−1と510−2のそれぞれから、メタル514−1、514−2のそれぞれが接続パッド509−1,509−2にそれぞれ伸びている。ボンディングパッド510−1と510−2間に電流を流すことにより、光導電リレー組立後の光源106をバンプ103を介して駆動して発光させる。発光素子101の光源106を流れる電流を点線515で示す。
【0019】この実施例ではメタル514−4と514−3とは好ましくは略直交して延伸する。ボンディングパッド510−1からメタル514−1、接続パッド509−1を介して光源106に至る駆動電流通路は略直線的であり、ボンディングパッド510−2からメタル514−2、接続パッド509−2を介して光源106に至る駆動電流通路も略直線的であり、両通路は略直交するのが望ましい。また、メタル514−1とメタル514−4とはそれらの延伸方向が直交するようにすることが望ましい。この素子構成では、リレーの駆動用ボンディングパッドと信号電流取り出し用ボンディングパッドがそれぞれの辺にまとめられるので、実装上好都合な場合がある。接続パッド509−3は実質的な電気的作用を持たず、両素子502,101の位置決めをおこなうためのものである。位置決め精度の統計的効果による精密化や光導電スイッチ周囲のシールド、素子101上の他の電気素子との通信のため等の目的でさらに多くの接続パッドを設けることもできる。
【0020】上述の実施例において光源106の駆動を平衡駆動とすることにより、光源106の駆動電流が光導電スイッチ107、507を通る信号電流に及ぼす影響を小さくできる。
【0021】本発明の光導電リレー100を組立てる場合、半導体発光素子101と光導電スイッチ素子102、502とを正確に位置決めして結合することが必要である。図6を参照して説明する結合方法は、光導電スイッチ素子102、502上に半導体発光素子101をフリップチップ・ボンディングにより結合するものである。もちろん、光導電スイッチ素子102、502を半導体発光素子101上にフリップチップ・ボンディングして結合する構成をとることもできる。この構成では、発光素子101の発生する熱を放熱するのが容易になる場合がある。
【0022】図6の(a)に示すように面発光型レーザー素子101上の接続パッド108には、予めバンプ103a(103−1a、103−2a、・・・の総称)が形成されており、これを光導電スイッチ素子102の上に設置する。この設置は市販のフリップチップボンダを用いて行っても良いが、後述するように正確な位置あわせを必ずしも要としないので、市販のチップ部品の自動マウンターや、目視で位置合せを行う簡易手動マウンターでも可能である。この際、一点鎖線で示された両者の光学中心は必ずしも正確に一致させる必要はない。実用的にはバンプ103aが、光導電スイッチ素子102上の接続パッド109から外れない程度の精度があれば良い。また、この際必要に応じてフラックスなどの界面活性剤を接続パッド109上に印刷により塗布するか、あるいはあらかじめバンプ103a上に転写により塗布ことによって良好な接続が得られる。予め塗布や印刷などで付着した界面活性剤は光導電スイッチ素子102上と接続パッド109とを軽く接着する作用も持ちあわせているので、次の加熱工程までに両素子間に位置ずれが生じるのを防いでいる。
【0023】両素子を101,102を上下方向で重ねたものをステージ上に載置し加熱装置に搬送する。加熱はステージを通じて下の素子チップを加熱するか、あるいは装置内雰囲気全体を加熱する。ベルトコンベアーのついた雰囲気炉を用いるのが好適である。バンプ103aの融点以上、錫鉛合金場合は例えば220度程度、に加熱するとバンプ103aが溶融し図6の(b)に示すように溶融バンプ103bの状態に成る。溶融した錫鉛合金のバンプ103bは接続パッド108,109のみに濡れる。この時、その各バンプ103bの表面張力によって各バンプ103bは最も安定する形状すなわち球に近い形状になろうとするため、両素子101,102は接続パッド108と109とが相対する位置になるように自然に移動する。即ち自己整列効果を生ずる。したがって、接続パッドをフォトリソグラフィ等の方法により正確に位置決め設計しておけば、例えば、最も単純には面発光型レーザー素子101上の接続パッド108を光導電スイッチ素子102上の接続パッド109を鏡面対称の位置に設計しておけば、両素子の温度を降下させて温図6の(c)に示したように光学中心が一致するように接続パッドを凝固させて接続パッド103とすることができる。なお、加熱時間は加熱方法やチップの熱容量によって異なるが、30秒から長くとも数分である。例えば、ベルトコンベアー付きの雰囲気炉を用いた場合には入り口から徐々に昇温し、ある場所で最高温度となり、また出口に向かって降温するので、最高温度に保持される時間はほんの数秒ということもある。
【0024】図7には自己整合(セルフアライメント)効果を測定した実験結果を示す。3mm角のシリコンチップを4つの同一形状バンプを用いてガラス基板上に結合する実験を行った。周知の金とニッケルの多層接続パッドの大きさとすず鉛共晶半田バンプの大きさを変えて結合を行い、結合後に合致すべき中心位置の相互ずれを顕微鏡を用いて測定した。これによると、バンプ103aの直径が小さいほど中心位置の相互ずれ即ち誤差も小さくなることがわかる。この例では直径30μmのバンプを用いると接合位置の設計値に対する誤差が0.5μm以下になる。この実験結果は、本発明の実施において有効に利用できよう。バンプの配置方法や個数の増加によってさらに接合位置の設計値に対する誤差を小さくすることも可能である。
【0025】上記した本発明の実施例の説明では、バンプの数は3であるが、バンプにより平面を画定するために必要な個数である。バンプの個数を増加すれば、両素子の位置あわせ精度が向上するが、小さな径のバンプは製造ならびに取り扱いが困難となるので、最終的に光導電リレーのコストが上昇する。したがって、バンプの径は両素子間の距離にたいする要求を満足する程度で良い。また、金属バンプは熱伝導率が高く、その素子面における配置も比較的自由であるから、発熱部からの放熱経路をえらんで、温度敏感な回路をさけたり、放熱量をますようにすることもできる。これは、熱伝導率の小さい樹脂等で結合する場合には得られない本発明の利点の一つである。
【0026】光導電スイッチ素子を多数集積した基板に各光導電スイッチを駆動する半導体発光素子をフリップチップ・ボンディングしてリレーの配列を得ることもできる。また、半導体発光素子を多数集積した基板に各光源が駆動するは光導電スイッチ素子をフリップチップ・ボンディングしてリレーの配列を得ることもできる。上記のいずれの場合でも、基板上に他の回路を混載することにより色々な機能を有する集積回路を実現することができる。図8は多数の実装素子810(実装素子810−1、810−2、・・・の総称)を実装集積基板805に実装した光導電リレー組立体800を模式的に示すものである。各実装素子810は、例えば、それが発光素子ならば、実装集積基板805に集積された各光導電スイッチ807に対応し、したがってそれらは各光導電リレーを構成している。実装素子810が光導電スイッチならば、対応して実装集積基板805に集積さるのは光源である。各光導電リレー間の距離や各光導電リレーと回路との距離が小さくでき、また、マイクロストリップ・ライン等を使用し、ボンディング・ワイアを不要にできるので、回路全体としての周波数特性が良くなるというメリットが生まれる。一例では2GHz以上の信号電流を開閉できる。上記のように本発明は光導電リレーを単体で使うこともできるし、多数を集積して使うこともできる。単体として樹脂封じしたものは性能は劣るが従来部品との置き換えが容易である。
【0027】また、両素子間の距離が小さく、また両素子の温度係数に差があると、両素子間の温度差により素子に熱応力を生じ素子性能に悪影響を及ぼすおそれがある。両素子の温度係数、少なくとも基板(あるいは最も熱応力を発揮する層)の熱膨張係数を近似させるのが良い。光導電スイッチとしては光導電層を電子閉じ込め層で挟持したヘテロ接合を有する構造が高性能で好ましい。
【0028】
【発明の効果】本発明を実施することによって、従来のものに比較して、レンズなどの部品を用いること無く、単純な構造で、半導体発光素子と光導電スイッチ素子とを結合した小型、高速光導電リレーが提供できる。また、結合効率を高めることが可能になり、スイッチの挿入損失を小さくできる。スイッチの開放時にの浮遊容量の増加も少ない。さらに、一括集積が困難な高性能の発光素子と光導電スイッチ素子とを組み合わせて高性能光導電リレーが構成できる。光導電スイッチをフォトトランジスタやフォトダイオードで置き換えた構成においても、本発明を実施することが可能である。光導電スイッチと光源とをモノリシックに組立てることも可能であるが、現在は製造の歩留りがわるく、開放時容量が大きい、放熱経路の自由度がない等の点で本願発明の光導電リレーがより実用的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術による高周波信号測定用のプローブ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例のリレーにおいて、その封じエポキシ樹脂を一部剥離して示す正面図である。
【図3】エポキシ樹脂120を全部剥離して示す図2のリレーの一部拡大図である。
【図4】本発明の一実施例の光導電スイッチ素子の平面図である。
【図5】本発明の別の実施例における光導電スイッチ素子の平面図である。
【図6】本発明の一実施例において、光導電スイッチ素子に半導体発光素子をフリップチップ・ボンディングする方法を説明するための図である。
【図7】光導電スイッチ素子に半導体発光素子をフリップチップ・ボンディングする場合の自己整合(セルフアライメント)効果を測定した実験結果を示すグラフである。
【図8】多数の実装素子を実装集積基板に実装した光導電リレー組立体を模式的に示す図である。
【符号の説明】
100 光導電リレー
101 発光素子
102、502 光導電スイッチ素子
103 バンプ
104、106 光源
107、507 光導電スイッチ
108、109 接続パッド
800 光導電リレー組立体
805 実装集積回路基板
810 実装素子
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は概して半導体発光素子と半導体受光素子からなる光導電リレーの構造に関し、特にマイクロ波への応用における小型化、高性能化、低製造コスト化に関する。
【0002】
【従来の技術】所定の間隙を有する電極を備えた光導電素子に光を照射してスイッチ動作を行わせる光導電スイッチがある。光導電素子はGaAsやInPに代表されるIII-V族系半導体からなる半絶縁性半導体である。光導電素子をレーザや発光ダイオード(以下LEDと称する)等の発光素子と組み合わせた小型、超高速光導電リレー素子に期待が持たれている。
【0003】特開平6−18554号公報には、図1に示すように、このような光導電スイッチを用いた高周波信号測定用のプローブ装置50が開示されている。半導体レーザのような光源20により生成される輻射パルスは、例えば、光ファイバー21及びコリメータ・レンズ22から成る光学システムを経由して基板14上の配線13を中継する光導電スイッチ16に伝送されている。光導電スイッチ16により配線13上を流れる信号電流が導通・遮断される。また、同公報には、もし半導体レーザが光源として使われ、光導電素子の近くに基板と直接接触してそれを配置することができるならば、大袈裟な伝送システムは省略されるであろうことが述べられている。さらにまた、同公報には、光ファイバーのコアの端面に被着された透明電極と測定用チップで光導電素子を挟持する構成も開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、光源を基板に直接接続して小型化することが望まれる。高速スイッチの受光面積は小さく、また短絡時の端子間抵抗を下げるため、その受光面積になるべく多くの光を集光させることが望まれる。そのため光源とスイッチの受光領域との距離を短くかつ正確に位置あわせしなければならない。小型化するにつれ、位置あわせの精度への要求も高くなるが、製造工程が簡単で、調整時間やコストがかからず、不良率も低いことが望まれる。スイッチの開放時の端子間容量(オフ容量)を少なくするためにはスイッチ周囲の誘電率は低いことが望まれる。また、リレーの駆動信号がスイッチの接続される回路に漏れないことが望ましい。さらに、発光素子の駆動電力による温度上昇に対しても機械的、電気的安定性が確保されることが望ましい。また、新しい発光素子や光導電素子に適応してそれらを採用できることが望ましい。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決或いは問題の解消に役立つ本発明の光導電リレーは半導体発光素子と光導電スイッチ素子とをフリップチップボンディング方式により導電柱を設けて接続している。素子間の位置あわせは、溶融バンプの表面張力による自己整合によっている。また、受光素子と発光素子との熱膨張係数を合わせることにより、バンプ接続部の熱応力の発生を軽減している。
【0006】上記課題を達成するため、本発明の光導電リレーは、半導体発光素子と、該発光素子の発光面から発生する駆動光を受光する受光面を備えた光導電スイッチ素子と、前記発光面と前記受光面とを対向させて固定接続するための導電柱を3本以上備え、前記発光面と受光面との距離を100μm以下にした構成である。上記導電柱にはすず、鉛、銀、金、インジウム、アンチモン、ビスマスのうちのいずれか1つを含む合金が用い得る。すずやインジウムは単体で用いることもできる。
【0007】さらに、導電柱が前記発光素子を駆動するための駆動電流を供給するように、例えば光導電スイッチ素子側から駆動電流を供給しても良い。また、逆に、導電柱が前記光導電スイッチ素子へ信号電流を供給するように、例えば発光素子側から信号電流を導入・導出してもよい。半導体発光素子としてはLED素子もしくは面発光型レーザー素子が好適である。LED素子は廉価であるが、入力できるパワーに限界があり、スイッチ素子の導通時の抵抗であるON抵抗が比較的高くなります。一方、レーザー素子は高価だが、高いパワーを入力できるので、ON抵抗を下げられるというメリットがあります。また、LED素子からの放射光は比較的広帯域であり、一方、レーザー素子からの放射光は狭帯域であるので、LED素子の光導電スイッチの光波長特性に対する適応度が大きい。すなわち、光導電スイッチ素子の種類と光導電リレーの用途によって使い分けることが可能です。
【0008】光導電スイッチ素子として、第1、第2、第3の層を順次積層してなる3層構造を有し、第2の層は一のエネルギーバンド幅を有する材料から成りるとともに第1、第3の層は該一のエネルギー・バンド幅より広いエネルギー・バンド幅を有する材料から成り、第2の層は前記駆動光の照射により抵抗の低下を生じる高性能素子が好適である。この高性能素子は本発明の発明者等により発明されたものである。
【0009】半導体発光素子の駆動電流の方向と前記光導電スイッチ素子を流れる信号電流の方向とが前記受光面の近傍で略直交しているように配置すれば、駆動電流の影響が信号電流に及ぶことを緩和できる。発光面と受光面とが対向する空間は透明な樹脂を充填することにより補強を図ることもできるが、真空、不活性気体、空気等の絶縁性気体が実質的に充満しているようにすれば、光導電スイッチの浮遊容量を少なくすることができる。また、例えば図8に示すように、一つの基板に本発明の光導電リレーを複数集積して、多チャンネルの信号収録装置のサンプリングを行うサンプリング・ヘッドを構成することができる。あるいは、多重化スイッチと本発明の光伝導リレーを用いることもできる。
【0010】本発明の光伝導リレーを組立てるばあいは、受光面のそれぞれに導電パッドを設け、発光面と受光面とを対向位置決めして、対向する前記導電パドの間に導電塊を挟持させる。つぎに、導電塊を溶融させ、溶融した該導電塊により前記発光面と前記受光面の一方を他方に対して偏移させ、溶融した導電塊を凝固させて導電柱とすることで発光面と受光面とを固定接続する。固定接続された前記発光面と前記受光面との間隙が100μm以下であるのが好ましい。溶融した該導電塊により前記発光面と前記受光面の一方を他方に対して偏移させるばあいに、発光面と受光面とが水平面に平行で、上方に位置する面が固定支持されているようにもできるし、下方に位置する面を固定支持するようににもできる。
【0011】
【発明の実施の形態】発光素子と受光素子を組み合わせた光導電リレーでは、発光素子からの光をできるだけ損失なく受光素子即ち受光スイッチ素子に入力させることが重要である。そのため両素子の光学中心を一致させ、両素子間の距離を短く保つことが必要である。発光素子はレンズなどの光学部品を用いない限り、広がりを持った照射パターンを有している。したがって、発光中心の位置が一致しないと照射パターンが受光素子の受光すべき領域である受光領域から外れる光があり、そのような光はスイッチの短絡抵抗を低下させる効果を有しない。また、光の強度も発光点からの距離の2乗に反比例するため、発光素子と受光素子の距離が近い方がより高密度に高エネルギーの光を照射することができる。本発明の光導電リレーでは、小型化、組立や調整の容易さを考えレンズや光ファイバの利用を極力避けるものである。
【0012】図2に本発明の一実施例のリレー100の封じエポキシ樹脂120を一部剥離して示す正面図を示し、図3はエポキシ樹脂120を全部剥離して示す図2の一部の拡大図である。発光面から発光するLEDや面発光型レーザーである光源106を有する半導体発光素子101の駆動電極でもある導電パッド即ち接続パッド108−1と108−2は、光導電スイッチ107を備えた光導電スイッチ素子102上の接続パッド109−1と109−2に導電柱またはバンプ103−1と103−2を介して取り付けられている。光導電スイッチ素子102上には接続パッド109−1と109−2に結合された、或いは光導電スイッチ107の電極に光導電スイッチ素子102上のメタル114(複数のメタル114−1、−2、−3、・・・の総称)により結合されたボンディングパッド110−1と110−2が設けられている。光導電スイッチ素子102は導電性ペースト(図示せず)により金属製リードフレーム104に固定され、前記ボンディングパッド110−1及び110−2とリードフレーム104上のリード112−1及び112−2との電気的接続はボンディングワイヤ105−1及び105−2とによりなされている。
【0013】本明細書において接続パッド108−1と108−2等を総称して接続パッド108と呼称し、接続パッド109−1と109−2等を総称して接続パッド109と呼称し、バンプ103−1と103−2等を総称してバンプ103、或いは導電柱103と呼称し、ボンディングパッド110−1と110−2等を総称してボンディングパッド110と呼称し、リード112−1及び112−2等を総称してリード112と呼称することとする。
【0014】この実施例では発光素子101と光導電スイッチ素子102全体をエポキシ樹脂120によりモールドしている。発光素子101の光を放射する発光領域106と光導電スイッチ107の間の空間の全部或いは一部間を除いてエポキシ樹脂120を充填モールドすれば、光導電スイッチ近傍に置かれる誘電率の大きい材料が減少し、光導電スイッチ素子の開放容量を減らせるので好ましい。樹脂モールドせずに、セラミックパッケージ内に収納してもよい。従来例に比較すると全体を小さく、電気配線を短くでき、高周波の信号を扱えることがわかる。
【0015】図3を参照してさらに説明すると、接続パッド108や109は錫鉛合金に塗れ易い、例えばニッケルと金の多層構造が選ばれる。バンプ103は錫鉛合金からなり、接続パッド108や109を機械的、電気的に接続する。発光素子からの光が効率よく光導電スイッチを駆動するためには相対する発光面と受光面の距離が100μm以下であることが望ましく、本実施例のバンプの高さは約30μm、直径は約50μmである。また、これら互いに略平行な両面間の距離はバンプの高さを調節することによって、駆動効率を上げるため必要に応じて10μmか、あるいはそれ以下にすることも可能であることが判明した。また、後述する自己整合効果によって、光源106の発光面と、光導電スイッチ107の受光面の面内での相対位置を正確に合わせることができる。
【0016】図4は、本発明の一実施例の光導電スイッチ素子102の平面図である。ボンディングパッド110−1と110−3のそれぞれから、メタル114−1、114−3のそれぞれが光導電スイッチ107の電極まで伸びている。光導電スイッチ107の開閉に応じてボンディングパッド110−1と110−3間の電気接続が断続する。ボンディングパッド110−2と110−4のそれぞれから、メタル114−2、114−4のそれぞれが接続パッド109−2,109−4にそれぞれ伸びている。ボンディングパッド110−2と110−4間に電流を流すことにより、光導電リレー組立後の半導体発光素子101をバンプ103を介して駆動して発光させる。光源6を流れる電流を点線115で示す。
【0017】この実施例ではボンディングパッド110−1と110−3の間のメタル114−1と114−3とは好ましくは略直線的に延伸し、メタル114−2と114−4および半導体発光素子101の光源106を流れる駆動電流も略直線的であり前記延伸方向と直交させることが望ましい。接続パッド109−1は実質的な電気的作用を持たず、両素子102,101の位置決めをおこなうためのものである。位置決め精度の統計的効果による精密化や光導電スイッチ周囲のシールド、素子101上の他の電気素子との通信のため等の目的でさらに多くの接続パッドを設けることもできる。
【0018】図5には本発明の別の実施例におけるの光導電スイッチ素子502の平面図である。光導電スイッチ素子502は光導電スイッチ素子102と実質的に同様の構成であるが、メタル514の配置がメタル114の配置と異なり、光導電スイッチを通る信号電流と光源106の駆動電流の伝送路の向きが異なる。ボンディングパッド510−3と510−4のそれぞれから、メタル514−3、514−4のそれぞれが光導電スイッチ507の電極まで伸びている。光導電スイッチ507の開閉に応じてボンディングパッド510−3と510−4間の電気接続が断続する。ボンディングパッド510−1と510−2のそれぞれから、メタル514−1、514−2のそれぞれが接続パッド509−1,509−2にそれぞれ伸びている。ボンディングパッド510−1と510−2間に電流を流すことにより、光導電リレー組立後の光源106をバンプ103を介して駆動して発光させる。発光素子101の光源106を流れる電流を点線515で示す。
【0019】この実施例ではメタル514−4と514−3とは好ましくは略直交して延伸する。ボンディングパッド510−1からメタル514−1、接続パッド509−1を介して光源106に至る駆動電流通路は略直線的であり、ボンディングパッド510−2からメタル514−2、接続パッド509−2を介して光源106に至る駆動電流通路も略直線的であり、両通路は略直交するのが望ましい。また、メタル514−1とメタル514−4とはそれらの延伸方向が直交するようにすることが望ましい。この素子構成では、リレーの駆動用ボンディングパッドと信号電流取り出し用ボンディングパッドがそれぞれの辺にまとめられるので、実装上好都合な場合がある。接続パッド509−3は実質的な電気的作用を持たず、両素子502,101の位置決めをおこなうためのものである。位置決め精度の統計的効果による精密化や光導電スイッチ周囲のシールド、素子101上の他の電気素子との通信のため等の目的でさらに多くの接続パッドを設けることもできる。
【0020】上述の実施例において光源106の駆動を平衡駆動とすることにより、光源106の駆動電流が光導電スイッチ107、507を通る信号電流に及ぼす影響を小さくできる。
【0021】本発明の光導電リレー100を組立てる場合、半導体発光素子101と光導電スイッチ素子102、502とを正確に位置決めして結合することが必要である。図6を参照して説明する結合方法は、光導電スイッチ素子102、502上に半導体発光素子101をフリップチップ・ボンディングにより結合するものである。もちろん、光導電スイッチ素子102、502を半導体発光素子101上にフリップチップ・ボンディングして結合する構成をとることもできる。この構成では、発光素子101の発生する熱を放熱するのが容易になる場合がある。
【0022】図6の(a)に示すように面発光型レーザー素子101上の接続パッド108には、予めバンプ103a(103−1a、103−2a、・・・の総称)が形成されており、これを光導電スイッチ素子102の上に設置する。この設置は市販のフリップチップボンダを用いて行っても良いが、後述するように正確な位置あわせを必ずしも要としないので、市販のチップ部品の自動マウンターや、目視で位置合せを行う簡易手動マウンターでも可能である。この際、一点鎖線で示された両者の光学中心は必ずしも正確に一致させる必要はない。実用的にはバンプ103aが、光導電スイッチ素子102上の接続パッド109から外れない程度の精度があれば良い。また、この際必要に応じてフラックスなどの界面活性剤を接続パッド109上に印刷により塗布するか、あるいはあらかじめバンプ103a上に転写により塗布ことによって良好な接続が得られる。予め塗布や印刷などで付着した界面活性剤は光導電スイッチ素子102上と接続パッド109とを軽く接着する作用も持ちあわせているので、次の加熱工程までに両素子間に位置ずれが生じるのを防いでいる。
【0023】両素子を101,102を上下方向で重ねたものをステージ上に載置し加熱装置に搬送する。加熱はステージを通じて下の素子チップを加熱するか、あるいは装置内雰囲気全体を加熱する。ベルトコンベアーのついた雰囲気炉を用いるのが好適である。バンプ103aの融点以上、錫鉛合金場合は例えば220度程度、に加熱するとバンプ103aが溶融し図6の(b)に示すように溶融バンプ103bの状態に成る。溶融した錫鉛合金のバンプ103bは接続パッド108,109のみに濡れる。この時、その各バンプ103bの表面張力によって各バンプ103bは最も安定する形状すなわち球に近い形状になろうとするため、両素子101,102は接続パッド108と109とが相対する位置になるように自然に移動する。即ち自己整列効果を生ずる。したがって、接続パッドをフォトリソグラフィ等の方法により正確に位置決め設計しておけば、例えば、最も単純には面発光型レーザー素子101上の接続パッド108を光導電スイッチ素子102上の接続パッド109を鏡面対称の位置に設計しておけば、両素子の温度を降下させて温図6の(c)に示したように光学中心が一致するように接続パッドを凝固させて接続パッド103とすることができる。なお、加熱時間は加熱方法やチップの熱容量によって異なるが、30秒から長くとも数分である。例えば、ベルトコンベアー付きの雰囲気炉を用いた場合には入り口から徐々に昇温し、ある場所で最高温度となり、また出口に向かって降温するので、最高温度に保持される時間はほんの数秒ということもある。
【0024】図7には自己整合(セルフアライメント)効果を測定した実験結果を示す。3mm角のシリコンチップを4つの同一形状バンプを用いてガラス基板上に結合する実験を行った。周知の金とニッケルの多層接続パッドの大きさとすず鉛共晶半田バンプの大きさを変えて結合を行い、結合後に合致すべき中心位置の相互ずれを顕微鏡を用いて測定した。これによると、バンプ103aの直径が小さいほど中心位置の相互ずれ即ち誤差も小さくなることがわかる。この例では直径30μmのバンプを用いると接合位置の設計値に対する誤差が0.5μm以下になる。この実験結果は、本発明の実施において有効に利用できよう。バンプの配置方法や個数の増加によってさらに接合位置の設計値に対する誤差を小さくすることも可能である。
【0025】上記した本発明の実施例の説明では、バンプの数は3であるが、バンプにより平面を画定するために必要な個数である。バンプの個数を増加すれば、両素子の位置あわせ精度が向上するが、小さな径のバンプは製造ならびに取り扱いが困難となるので、最終的に光導電リレーのコストが上昇する。したがって、バンプの径は両素子間の距離にたいする要求を満足する程度で良い。また、金属バンプは熱伝導率が高く、その素子面における配置も比較的自由であるから、発熱部からの放熱経路をえらんで、温度敏感な回路をさけたり、放熱量をますようにすることもできる。これは、熱伝導率の小さい樹脂等で結合する場合には得られない本発明の利点の一つである。
【0026】光導電スイッチ素子を多数集積した基板に各光導電スイッチを駆動する半導体発光素子をフリップチップ・ボンディングしてリレーの配列を得ることもできる。また、半導体発光素子を多数集積した基板に各光源が駆動するは光導電スイッチ素子をフリップチップ・ボンディングしてリレーの配列を得ることもできる。上記のいずれの場合でも、基板上に他の回路を混載することにより色々な機能を有する集積回路を実現することができる。図8は多数の実装素子810(実装素子810−1、810−2、・・・の総称)を実装集積基板805に実装した光導電リレー組立体800を模式的に示すものである。各実装素子810は、例えば、それが発光素子ならば、実装集積基板805に集積された各光導電スイッチ807に対応し、したがってそれらは各光導電リレーを構成している。実装素子810が光導電スイッチならば、対応して実装集積基板805に集積さるのは光源である。各光導電リレー間の距離や各光導電リレーと回路との距離が小さくでき、また、マイクロストリップ・ライン等を使用し、ボンディング・ワイアを不要にできるので、回路全体としての周波数特性が良くなるというメリットが生まれる。一例では2GHz以上の信号電流を開閉できる。上記のように本発明は光導電リレーを単体で使うこともできるし、多数を集積して使うこともできる。単体として樹脂封じしたものは性能は劣るが従来部品との置き換えが容易である。
【0027】また、両素子間の距離が小さく、また両素子の温度係数に差があると、両素子間の温度差により素子に熱応力を生じ素子性能に悪影響を及ぼすおそれがある。両素子の温度係数、少なくとも基板(あるいは最も熱応力を発揮する層)の熱膨張係数を近似させるのが良い。光導電スイッチとしては光導電層を電子閉じ込め層で挟持したヘテロ接合を有する構造が高性能で好ましい。
【0028】
【発明の効果】本発明を実施することによって、従来のものに比較して、レンズなどの部品を用いること無く、単純な構造で、半導体発光素子と光導電スイッチ素子とを結合した小型、高速光導電リレーが提供できる。また、結合効率を高めることが可能になり、スイッチの挿入損失を小さくできる。スイッチの開放時にの浮遊容量の増加も少ない。さらに、一括集積が困難な高性能の発光素子と光導電スイッチ素子とを組み合わせて高性能光導電リレーが構成できる。光導電スイッチをフォトトランジスタやフォトダイオードで置き換えた構成においても、本発明を実施することが可能である。光導電スイッチと光源とをモノリシックに組立てることも可能であるが、現在は製造の歩留りがわるく、開放時容量が大きい、放熱経路の自由度がない等の点で本願発明の光導電リレーがより実用的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術による高周波信号測定用のプローブ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施例のリレーにおいて、その封じエポキシ樹脂を一部剥離して示す正面図である。
【図3】エポキシ樹脂120を全部剥離して示す図2のリレーの一部拡大図である。
【図4】本発明の一実施例の光導電スイッチ素子の平面図である。
【図5】本発明の別の実施例における光導電スイッチ素子の平面図である。
【図6】本発明の一実施例において、光導電スイッチ素子に半導体発光素子をフリップチップ・ボンディングする方法を説明するための図である。
【図7】光導電スイッチ素子に半導体発光素子をフリップチップ・ボンディングする場合の自己整合(セルフアライメント)効果を測定した実験結果を示すグラフである。
【図8】多数の実装素子を実装集積基板に実装した光導電リレー組立体を模式的に示す図である。
【符号の説明】
100 光導電リレー
101 発光素子
102、502 光導電スイッチ素子
103 バンプ
104、106 光源
107、507 光導電スイッチ
108、109 接続パッド
800 光導電リレー組立体
805 実装集積回路基板
810 実装素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】半導体発光素子と、該発光素子の発光面から発生する駆動光を受光する受光面を備えた光導電スイッチ素子と、前記発光面と前記受光面とを対向させて固定接続するための導電柱を3本以上備え、前記発光面と受光面との距離を100μm以下にしたことを特徴とする光導電リレー。
【請求項2】前記導電柱がすず、鉛、銀、金、インジウム、アンチモン、ビスマスのいずれかの金属であるか、それら金属の1つを含む合金からなることを特徴とする請求項1に記載の光導電リレー。
【請求項3】前記導電柱が前記発光素子を駆動するための駆動電流を供給することを特徴とする請求項1に記載の光導電リレー。
【請求項4】前記導電柱が前記光導電スイッチ素子へ信号電流を供給することを特徴とする請求項1に記載の光導電リレー。
【請求項5】前記半導体発光素子がLED素子もしくは面発光型レーザー素子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光導電リレー。
【請求項6】前記光導電スイッチ素子が、第1、第2、第3の層を順次積層してなる3層構造を有し、第2の層は一のエネルギーバンド幅を有する材料から成りるとともに第1、第3の層は該一のエネルギー・バンド幅より広いエネルギー・バンド幅を有する材料から成り、第2の層は前記駆動光の照射により抵抗の低下を生じることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光導電リレー。
【請求項7】前記半導体発光素子の駆動電流の方向と前記光導電スイッチ素子を流れる信号電流の方向とが前記受光面の近傍で略直交していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光導電リレー。
【請求項8】前記発光面と前記受光面とが対向する空間は真空、不活性気体、空気等の絶縁性気体、実質的に充満していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光導電リレー。
【請求項9】一の基板に請求項1〜5のいずれかに記載の光導電リレーが複数集積されてなる光導電リレー組立体。
【請求項10】駆動光を発生する発光面を備えた半導体発光素子と、該駆動光を受光する受光面を備えた光導電スイッチとを、前記発光面と前記受光面とを対向させて固定接続して成る光導電リレーの組立方法であって、前記発光面と前記受光面のそれぞれに導電パッドを設けるステップ;前記発光面と前記受光面とを対向位置決めして、対向する前記導電パドの間に導電塊を挟持させるステップ;前記導電塊を溶融させ、溶融した該導電塊により前記発光面と前記受光面の一方を他方に対して偏移させるステップ;および前記溶融した導電塊を凝固させて前記発光面と前記受光面とを固定接続するステップ;とを備え、前記固定接続された前記発光面と前記受光面との間隙が100μm以下であることを特徴とする、光導電リレーの組立方法。
【請求項11】前記偏移させるステップにおいて、前記発光面と前記受光面とが水平面に平行であり、前記発光面と前記受光面のうち上方に位置する面が固定支持されていることを特徴とする請求項9に記載の光導電リレーの組立方法。
【請求項12】前記偏移させるステップにおいて、前記発光面と前記受光面とが水平面に平行であり、前記発光面と前記受光面のうち下方に位置する面が固定支持されていることを特徴とする請求項9に記載の光導電リレーの組立方法。
【請求項1】半導体発光素子と、該発光素子の発光面から発生する駆動光を受光する受光面を備えた光導電スイッチ素子と、前記発光面と前記受光面とを対向させて固定接続するための導電柱を3本以上備え、前記発光面と受光面との距離を100μm以下にしたことを特徴とする光導電リレー。
【請求項2】前記導電柱がすず、鉛、銀、金、インジウム、アンチモン、ビスマスのいずれかの金属であるか、それら金属の1つを含む合金からなることを特徴とする請求項1に記載の光導電リレー。
【請求項3】前記導電柱が前記発光素子を駆動するための駆動電流を供給することを特徴とする請求項1に記載の光導電リレー。
【請求項4】前記導電柱が前記光導電スイッチ素子へ信号電流を供給することを特徴とする請求項1に記載の光導電リレー。
【請求項5】前記半導体発光素子がLED素子もしくは面発光型レーザー素子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光導電リレー。
【請求項6】前記光導電スイッチ素子が、第1、第2、第3の層を順次積層してなる3層構造を有し、第2の層は一のエネルギーバンド幅を有する材料から成りるとともに第1、第3の層は該一のエネルギー・バンド幅より広いエネルギー・バンド幅を有する材料から成り、第2の層は前記駆動光の照射により抵抗の低下を生じることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光導電リレー。
【請求項7】前記半導体発光素子の駆動電流の方向と前記光導電スイッチ素子を流れる信号電流の方向とが前記受光面の近傍で略直交していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光導電リレー。
【請求項8】前記発光面と前記受光面とが対向する空間は真空、不活性気体、空気等の絶縁性気体、実質的に充満していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光導電リレー。
【請求項9】一の基板に請求項1〜5のいずれかに記載の光導電リレーが複数集積されてなる光導電リレー組立体。
【請求項10】駆動光を発生する発光面を備えた半導体発光素子と、該駆動光を受光する受光面を備えた光導電スイッチとを、前記発光面と前記受光面とを対向させて固定接続して成る光導電リレーの組立方法であって、前記発光面と前記受光面のそれぞれに導電パッドを設けるステップ;前記発光面と前記受光面とを対向位置決めして、対向する前記導電パドの間に導電塊を挟持させるステップ;前記導電塊を溶融させ、溶融した該導電塊により前記発光面と前記受光面の一方を他方に対して偏移させるステップ;および前記溶融した導電塊を凝固させて前記発光面と前記受光面とを固定接続するステップ;とを備え、前記固定接続された前記発光面と前記受光面との間隙が100μm以下であることを特徴とする、光導電リレーの組立方法。
【請求項11】前記偏移させるステップにおいて、前記発光面と前記受光面とが水平面に平行であり、前記発光面と前記受光面のうち上方に位置する面が固定支持されていることを特徴とする請求項9に記載の光導電リレーの組立方法。
【請求項12】前記偏移させるステップにおいて、前記発光面と前記受光面とが水平面に平行であり、前記発光面と前記受光面のうち下方に位置する面が固定支持されていることを特徴とする請求項9に記載の光導電リレーの組立方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2001−15794(P2001−15794A)
【公開日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−172748
【出願日】平成11年6月18日(1999.6.18)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成11年6月18日(1999.6.18)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】
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