光記録方法、光再生方法、光記録媒体、および光記録再生装置
【課題】環境による記録再生波長の変動や、装置間での記録再生波長のばらつきに強く、可搬性や装置間での互換性に優れた、ホログラフィを利用する光記録方法または光再生方法を提供する。
【解決手段】ホログラフィを利用して光記録媒体に情報を記録する光記録方法または光記録媒体に記録された情報を再生する光再生方法であって、記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、情報の記録時にまたは再生時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して記録または再生を行う。
【解決手段】ホログラフィを利用して光記録媒体に情報を記録する光記録方法または光記録媒体に記録された情報を再生する光再生方法であって、記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、情報の記録時にまたは再生時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して記録または再生を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィ、特にデジタルボリュームホラグラフィを利用する光記録方法、光再生方法、光記録媒体、および光記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度画像など容量の大きなデータを記録可能な情報記録媒体として光記録媒体がある。従来、光記録媒体としては、光磁気記録媒体、相変化光記録媒体、CD−Rなどが実用化されているが、光記録媒体の高容量化に対する要求は高まる一方である。このような高容量の光記録を実現するためにホログラフィ、特にデジタルボリュームホログラフィを用いたホログラム型光記録媒体が提案されている。
【0003】
ホログラフィを用いた光記録再生方法では、一般に、記録時には2次元パターンとして情報を付与された情報光と参照光とを光記録媒体の内部で干渉させ、情報を干渉縞として記録し、再生時には記録された干渉縞に対して参照光のみを照射することにより、干渉縞からの回折像として記録された情報を2次元パターンとして取り出す。このため、この方式は高速で情報の入出力ができるという利点を持つ。特にデジタルボリュームホログラフィを用いた光記録再生方法は、光記録媒体の厚み方向を利用して3次元的に干渉縞を記録することにより回折効率を高め、光記録媒体内部の同一領域に多重に情報を記録することを可能にし、記録容量を増大できるという利点がある。
【0004】
上記のようにして光記録媒体にすでに記録された干渉縞に照射する参照光の配置(照射する角度、位置など)を元の記録時の配置からほんの少しだけずらすと、記録された干渉縞に参照光が照射されているにもかかわらず、参照光の位相と干渉縞の位相の整合が取れなくなり回折像が得られなくなる。この回折像が得られなくなった参照光の配置で、別の情報光との干渉縞を記録することにより、光記録媒体内部の同一領域に、参照光の配置に応じて複数の2次元情報を多重に記録できる。このように、ホログラフィを用いた光記録再生では干渉縞と光の位相との整合を利用して情報の多重記録を可能にしている。しかし、このことは、記録時と再生時の波長が異なった場合にも回折光が得られなくなる、換言すれば、記録再生光の波長変動に弱い、という性質も表している。
【0005】
ホログラムを記録する際、空間的に変調された参照光を用いると、記録される干渉縞が複雑になり、参照光と干渉縞の位相整合条件が厳しくなることから、記録の多重度を上げることが可能であることが知られている。例えば、空間的に位相が変調された記録用参照光を用いるホログラフィを用いた光記録再生装置が開示されている(特許文献1参照)。最近では、一つの空間光変調器を用いて情報光と変調された参照光とを生成しホログラムを記録する方法が発表されている(非特許文献1参照)。しかし、この方法を用いると、参照光と干渉縞の位相整合条件がさらに厳しくなることから、記録再生光の波長の変動が記録再生の性能に、より大きな影響を与え、光記録媒体の可搬性や装置間での互換性などの面で大きな問題になってくる。
【特許文献1】特開2002−123949号公報
【非特許文献1】Hideyuki Horimai and Kun Li, “A novel Collinear optical Setup for Holographic data Storage System”, Technical Digest of Optical Data Storage Topical Meeting 2004, pp 258-260, (2004).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホログラムを記録再生するためには一般的にレーザ装置が用いられる。ホログラムを記録するレーザ装置としては、単色性や可干渉性などの観点からアルゴンレーザやヘリウムネオンレーザのようなガスレーザや、YAGレーザといった固体レーザがよく用いられてきた。しかし、小型で低消費電力の光記録再生装置を実現するには半導体レーザを用いるのが好ましい。半導体レーザは既にCD−ROMやDVDなどの光記録再生装置に組み込まれており、実用的に十分高輝度なレーザ光を出射させることができる。しかし、半導体レーザは、材料の組成や素子のサイズや構造などのわずかなばらつきが原因で、複数の波長で発振したり、個体ごとに発振波長が数nmから十nm程度ばらついたりすることがある。また、1つの半導体レーザでも温度変化や注入電流量などによって発振波長が変動することが知られている。従って、半導体レーザをそのまま波長変動に弱いホログラムの記録再生に用いるのは不適切である。また、記録時と再生時のレーザ波長を、異なる環境や異なる装置間で同じくするには、DFB(Distributed feedback)やDBR(Distributed Bragg Reflector)と呼ばれる波長選択構造を半導体レーザ素子自体に作り込んだ上、レーザの製造条件を厳密に制御し特性を揃えることが考えられるが、歩留まりが悪く製造コストも高くなるため現実的ではない。
【0007】
本発明の目的は、ホログラム記録再生に使用される半導体レーザのばらつきや環境による波長変動の補正が容易であり、良好な記録再生性能が得られる光記録方法、光再生方法、光記録媒体、および光記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る光記録方法は、ホログラフィを利用して光記録媒体に情報を記録する光記録方法であって、記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、情報の記録時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して記録を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様に係る光再生方法は、ホログラフィを利用して光記録媒体に記録された情報を再生する光再生方法であって、記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、情報の再生時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して再生を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様に係る光記録媒体は、ホログラフィを利用して情報を記録する光記録媒体であって、情報記録領域と、記録光および再生光を回折することにより記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークが形成された領域とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに他の態様に係る光記録再生装置は、情報記録領域と、記録光および再生光を回折することにより記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークが形成された領域とを有する光記録媒体を用い、ホログラフィを利用して情報を記録・再生する光記録再生装置であって、光源装置と、前記光源装置から出射される光から情報光および/または参照光を生成する空間光変調器と、前記光記録媒体の情報記録領域に記録光である情報光と参照光を照射し、前記光記録媒体の情報記録領域に再生光である参照光を照射し、前記光記録媒体の波長基準マークが形成された領域に記録光または再生光を照射する光学系と、前記光記録媒体の波長基準マークの領域に照射された記録光または再生光の回折光に基づいて、記録の基準波長に対する光源装置の波長のずれを検出する光検出器と、前記波長のずれを小さくするように前記光源装置の波長を制御する波長制御器とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、環境による記録再生波長の変動や、装置間での記録再生波長のばらつきに強く、可搬性や装置間での互換性に優れた、ホログラフィを利用する光記録方法、光再生方法、光記録媒体、および光記録再生装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳しく説明する。尚、実施の形態や実施例を通して共通する構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、参照する各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、図面表示の便宜上、形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、また、以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0014】
本発明の実施形態に係るホログラフィ(ホログラム)は、透過型ホログラフィ(透過型ホログラム)であっても反射型ホログラフィ(反射型ホログラム)であってもよい。
【0015】
本発明の実施形態に係るホログラフィを用いた光記録再生装置における情報光と参照光の干渉方法は、二光束干渉法であっても同軸干渉法であってもよい。
【0016】
本発明の実施形態に係る光記録媒体の典型的な形状は円盤状、カード状、ブロック状などであるが、形状はこれらに限られない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る、反射型同軸干渉法が適用されるディスク状の光記録媒体1と、その近傍に位置する光学系を示す斜視図である。光記録媒体1は、ガラス、ポリカーボネートなどによって形成された透明基板4の一方の主面(光入射側)上に光記録層3、他方の主面上に反射層5を備え、さらに光記録層3の光入射側に保護層2を備えたものである。なお、保護層2は必ずしも設ける必要はない。
【0018】
光記録層3は電磁波を照射したとき、その強度に応じて吸光係数、屈折率などの光学特性が変化する材料により形成されている。光記録層3に用いられるホログラム記録材料は有機材料であっても無機材料であってもよい。有機材料としては例えばフォトポリマ、フォトリフラクティブポリマ、フォトクロミック色素分散ポリマなどが挙げられ、無機材料としては例えばニオブ酸リチウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。
【0019】
反射層5は記録光波長における反射率が高い材料、例えばアルミニウムなどによって形成されている。図示していないが、反射層5が形成される透明基板4の主面にはトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報を予め凹凸などの構造により記録してもよい。トラッキングサーボを行うには、連続サーボ方式を用いることが好ましいが、反射層5での記録光の乱れが問題になる場合はサンプルドサーボ方式を用いてもよい。トラッキングサーボを行うための情報としては、例えばウォブルピットを用いることができる。
【0020】
対物レンズ7を通して光記録媒体1に照射された記録光(情報光および参照光)は光記録層3の中で干渉してホログラム6を形成する。
【0021】
図2に、図1に示した反射型光記録媒体の断面図を示す。この光記録媒体1では、透明基板4に凹部が設けられた領域85が形成され、この領域上に反射層5を形成することにより波長基準マーク40が形成されている。この波長基準マーク40により、記録光波長に応じた回折光を記録光の入射側へ出射するようになっている。
【0022】
また、透明基板4の主面上に記録光の走査方向を制御するためのガイド86が形成されている場合は、波長基準マーク40の周期方向はガイド86の周期方向と異なっていることが望ましい。図3の斜視図は、波長基準マーク40とガイド86の周期方向がほぼ直交している例に示す。
【0023】
光記録媒体1がディスク状である場合、図4(a)の平面図に例を示すように、波長基準マーク40は放射状に形成されていてもよく、図4(b)の平面図に例を示すように等間隔に区切られた記録セクターの先頭部分に形成されていてもよい。
【0024】
光記録媒体1がカード状であり、記録光走査方向を制御するためのガイド86が形成されている場合、図5(a)の平面図に例を示すように、波長基準マーク40の周期方向はガイド86の周期方向と異なっていることが望ましく、記録光走査方向を制御するためのガイド86が形成されていない場合、図5(b)の平面図に例を示すように波長基準マーク40の周期方向に特に制約はない。
【0025】
次に、反射型同軸ホログラフィを用いた光記録再生装置の一例を説明する。これまで、反射型同軸ホログラフィは、再生時に参照光を照射した場合、再生光としての回折光と回折されなかった残りの透過光とが同軸で光検出器に入射するためにSN比が悪くなるという問題があった。このような問題点を解決する新しい記録方式として、偏光によって参照光と再生光を分離する反射型偏光同軸干渉方式が提案されている(既述の特許文献1参照)。また、最近では、一つの空間光変調器を用いて情報光と変調された参照光とを生成してホログラムを記録し、光軸の中心部と周辺部で参照光と再生光を分離する新しい同軸干渉の方式が提案されている(既述の特許文献2参照)。
【0026】
図6に、本発明の一実施形態に係る、同軸干渉法を用いた光記録再生装置の概略図を示す。この装置は、一つの空間光変調器を用いて情報光と変調された参照光とを生成してホログラムを記録する同軸干渉法を用いている。
【0027】
光源装置8としては、可干渉性などの観点から直線偏光をしたレーザが望ましい。具体的には半導体レーザ、He−Neレーザ、アルゴンレーザ、YAGレーザなどが挙げられる。また、光源装置8はその出射波長を調整できる機能を有している。ビームエキスパンダ9は光源装置8の出射光を拡張し、平行光束に整形する。整形された光はミラー10により反射型空間光変調器11に照射される。反射型空間光変調器11は格子状に2次元に配置された複数の画素を有し、画素ごとに反射光の方向を変えるか、または画素ごとに反射光の偏光方向を変えることにより、2次元パターンとして情報を付与した情報光と、空間的に変調された参照光を同時に生成できる。反射型空間光変調器11としてはデジタルミラーデバイスや反射型液晶素子、磁気光学効果を用いた反射型変調素子などを用いることができる。図6は反射型空間光変調器としてデジタルミラーデバイスを用いた例である。反射型空間光変調器11には図7に示すような変調模様が表示されている。この変調模様は記録光に相当し、そのうち光軸の中心付近を情報光領域31、周辺部分を参照光領域32として用いる。
【0028】
反射型空間光変調器11によって反射された記録光(情報光および参照光)は結像レンズ12、13を介して偏光ビームスプリッタ14に入射する。記録光は偏光ビームスプリッタ14を透過するように、光源装置8からの出射時点で偏光方向が調整されている。偏光ビームスプリッタ14を透過した記録光は旋光用光学素子15を透過し、ダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16は記録光の波長を透過するように設計されている。ダイクロイックプリズム16を透過した光は対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。旋光用光学素子15としては1/4波長板や1/2波長板などを用いることができる。このように、光軸の中心部を情報光、周辺部を参照光とする記録光が光記録媒体1に照射されることにより、光記録層3の内部で情報光と参照光が干渉し、光記録媒体1にホログラム6が形成される。
【0029】
記録された情報を再生するには、図8に示すように参照光領域32を反射型空間光変調器11に表示し、記録時と同様に光記録媒体1に参照光として照射する。図8に示した参照光領域32は、図7に示した周辺部の参照光領域32と同一の変調模様を示す。参照光の一部は光記録媒体1を透過する際にホログラム6により回折され再生光となる。再生光は反射層5によって反射された後、対物レンズ7、ダイクロイックプリズム16を透過し、旋光用光学素子15を透過する際に参照光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ14によって反射される。なお、偏光ビームスプリッタ14での再生光の反射率が最も高くなるように旋光用光学素子15の回転角度が調節されていることが望ましい。偏光ビームスプリッタ14によって反射された再生光の大半はビームスプリッタ18によって反射された後、結像レンズ19により2次元光検出器20上に再生像として結像される。ホログラム6により回折されなかった参照光は透過光となって再生光と同様に2次元光検出器20上に結像するが、中心部が再生光、周辺部が透過光となるので、空間的に容易に分離することができる。なお、再生信号のSN比を良くするために、光検出器20の前にアイリス21を配して参照光部分を遮ってもよい。
【0030】
次に、光記録媒体1に対するサーボの方法について説明する。図6に示した光記録再生装置はサーボ用光源装置22を有している。光源装置22としては直線偏光をしたレーザが望ましい。レーザとしては具体的には半導体レーザ、He−Neレーザ、アルゴンレーザ、YAGレーザなどが挙げられる。光源装置22は記録用光源装置8と波長が異なり、光記録層3の光学特性を変化させないものであることが望ましく、波長650nm付近の赤色半導体レーザが最も望ましい。光源装置22により射出されたサーボ光はコリメートレンズ23によって平行光束に整形され偏光ビームスプリッタ24に入射する。サーボ光は偏光ビームスプリッタ24を透過するように、光源装置22からの出射時点で偏光方向が調整されている。偏光ビームスプリッタ24を透過したサーボ光は旋光用光学素子25を透過し、ダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16はサーボ光の波長を反射するように設計されている。旋光用光学素子25としては1/4波長板、1/2波長板などを用いることができる。ダイクロイックプリズム16によって反射されたサーボ光は、対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。サーボ光は反射層5によって反射され、その際、反射面上に形成されたピットによって変調される。光記録媒体1からのサーボ戻り光は対物レンズ7を透過し、ダイクロイックプリズム16によって反射され、更に旋光用光学素子25を透過する。サーボ戻り光は、旋光用光学素子25を透過する際に光源装置22により射出されたサーボ光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ24によって反射される。なお、偏光ビームスプリッタ24でのサーボ戻り光の反射率が最も高くなるように旋光用光学素子25の回転角度が調節されていることが望ましい。偏光ビームスプリッタ24で反射されたサーボ戻り光は、凸レンズ26、シリンドリカルレンズ27を透過した後、4分割フォトディテクタ28によって検出される。この4分割フォトディテクタの出力に基づいてアドレス信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号が生成さる。
【0031】
図9は、4分割フォトディテクタ28の出力に基づいて、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を検出するための回路を示すブロック図である。この検出回路は、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、および再生信号RFを生成する。
【0032】
フォーカスエラー信号FEは、4分割フォトディテクタ28の対角の受光部28a、28dの各出力を加算する加算器33と、4分割フォトディテクタ28の対角の受光部28b、28cの各出力を加算する加算器34と、加算器33の出力と加算器34の出力との差を演算して、非点収差法によるフォーカスエラー信号FEを生成する減算器35とを用いて生成される。
【0033】
トラッキングエラー信号TEは、4分割フォトディテクタのトラック方向に沿って隣り合う受光部28a、28bの各出力を加算する加算器36と、4分割フォトディテクタのトラック方向に沿って隣り合う受光部28c、28dの各出力を加算する加算器37と、加算器36の出力と加算器37の出力との差を演算して、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号TEを生成する減算器38とを用いて生成される。
【0034】
再生信号RFは、加算器36の出力と加算器37の出力とを加算して再生信号RFを生成する加算器39を用いて生成される。なお、本実施形態では、再生信号RFは光記録媒体1の反射層5上に予め記録された情報を再生することにより得られる信号である。
【0035】
光記録再生装置と光記録媒体との位置ずれ補正は、上述のように4分割フォトディテクタ28より得られたフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEがそれぞれ0になるように図6に示したボイスコイルモータ17を用いて対物レンズ19を駆動することにより行う。
【0036】
次に、基準波長からのずれを検出する方法の一例について説明する。波長ずれの検出時には、図6に示した反射型空間光検出器11の画素をすべてONにし均一な光束が光記録媒体1に照射されるようにすることが望ましい。光源装置8から出射された光は、記録再生時と同様にビームエキスパンダ9、ミラー10、反射型空間光変調器11、結像レンズ12、13、偏光ビームスプリッタ14、旋光用光学素子15、ダイクロイックプリズム16、対物レンズ7を経て光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。
【0037】
図2に示したように、光記録媒体1の反射層5の表面には、回折格子状の波長基準マーク40が設けられている。波長基準マーク40の領域は光記録媒体1における情報記録領域とは異なる。波長基準マーク40に光源装置8からの光が入射すると、図10に示した反射光41に加えて回折光42、43が現れる。本発明の実施形態においては、この回折光を用いて基準波長からのずれの検出を行う。図6に示すように、波長基準マーク40からの反射光41、回折光42、43は再び対物レンズ7、ダイクロイックプリズム16を透過し、旋光用光学素子15を透過する際に入射光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ14によって反射される。偏光ビームスプリッタ14によって反射された反射光41、回折光42、43の一部はビームスプリッタ18を透過した後、の上に投影される。
【0038】
図11(a)、(b)、(c)に分割フォトディテクタ30上での反射光41、回折光42、43の状態を示す。光源装置8の波長が基準波長と一致している場合には図11(b)の状態、光源装置8の波長が短波長側にずれた場合には図11(a)の状態、長波長側にずれた場合は図11(c)の状態になる。
【0039】
図12は、分割フォトディテクタ30の出力に基づいて、波長エラー信号を検出するための回路を示すブロック図である。分割フォトディテクタ30は図12に示すように短冊状に4分割されている。この検出回路は、分割フォトディテクタ30の外側の受光部30a、30dの各出力を加算する加算器44と、分割フォトディテクタ30の内側の受光部30b、30cの各出力を加算する加算器45と、加算器44の出力と加算器45の出力を減算する減算器46と、減算器46の出力にオフセットを与えるオフセット回路47とを備えている。また、この検出回路では、回折光42、43が分割フォトディテクタ30に対して左右対称に入射した時点で基準波長検出をする必要がある。このため、分割フォトディテクタ30における半分の受光部30a、30bの各出力を加算する加算器48と、残り半分の受光部30c、30dの各出力を加算する加算器49と、加算器48の出力と加算器49の出力の差を演算して検出タイミング信号TMを生成する減算器50とを備えている。そして、検出タイミング信号TMが0になった時点でのオフセット回路47からの出力を波長エラー信号WEとして用いる。なお、2次元光検出器20を仮想的な分割フォトディテクタとして、その出力を用いて同様に波長エラー信号を得ることもできる。
【0040】
次に、図12に示した分割フォトディテクタ30によって得られる波長エラー信号について説明する。図13に、波長エラー検出回路における減算器46からの出力と記録光の基準波長からのズレとの関係を示す。減算器46からの出力は加算器45の出力から加算器44の出力を減算したものである。このように減算器46からは、基準波長に対しても出力があるため、図12に示すオフセット回路47によってオフセットをかけたものを波長エラー信号とし、この波長エラー信号の出力が0になるように光源装置にフィードバックをかけ記録波長の制御を行う。
【0041】
次に、波長基準マークの周期について説明する。本発明の実施形態においては、波長基準マークとしての回折格子は対物レンズの焦点に配されている。このため、図14に示すように、回折格子に垂直方向から平面波が入射するというモデルを適用できる。この図は、空気(屈折率n0)から屈折率nの媒体中にある周期dを持つ回折格子に垂直方向から波長λの平面波が入射した状態を示している。2つの回折格子で回折された光の媒体中での光路長差はn*d*sin(θ)で表され、1次回折光の回折条件はn*d*sin(θ)=λとなる。媒体中での回折角度をθ、空気中での回折角度をθ0とすると、スネルの屈折の法則より、n*sin(θ)=n0*sin(θ0)となる。よって、n*d*sin(θ)=n0*d*sin(θ0)=λとなる。したがって、空気の屈折率n0を1とすると、空気中での回折角度θ0は下記式(1)で表される。
【0042】
sin(θ0)=λ/d …(1)。
【0043】
上記のように1次回折光の回折角度がθ0で、対物レンズと焦点の距離がLであるとき、光記録媒体がLに比較して薄い場合、図15に示すように、対物レンズの位置において反射光の光軸と回折光の光軸との間にずれaが生じる。この光軸のずれaは、下記式(2)で近似できる。
【0044】
a=L*tan(θ0) …(2)。
【0045】
ここで、対物レンズの空気中での開口数をNA、対物レンズの直径をφとすると、対物レンズから焦点までの距離は下記式(3)で近似できる。
【0046】
NA=sin{tan-1(φ/2L)}≒φ/2L、
L=φ/2NA …(3)。
【0047】
次に、sin(θ0)≒tan(θ0)と近似すると、式(1)、(2)、(3)より、下記式(4)の関係式が得られる。
【0048】
d=λ*φ/(2NA*a) …(4)
これは、波長、対物レンズの直径、開口数が与えられたときの、波長基準マーク40の周期dと分割フォトディテクタ30上での反射光と回折光のずれaとの関係を表す式である。図11(b)に示したような回折光が重なることなく接している場合は図15においてa=φ/2であり、この時の波長基準マークの周期は式(4)よりd=λ/NAである。
【0049】
ここで、波長のずれを検出するのに適した波長基準マークの周期について考える。図12に示したような短冊状に4等分された分割フォトディテクタを用いた場合の、反射光と回折光の位置関係を図16に示す。図16(a)は、a=φ/4であり、かつ反射光と回折光のずれが小さい場合を示している。ずれaがφ/4より小さいと、分割フォトディテクタ30のどの受光部でも回折光が検出されるので、回折光と反射光を区別するのが困難になる。図16(b)は、a=3φ/4であり、かつ反射光と回折光のずれが大きい場合を示している。ずれaが3φ/4より大きいと、分割フォトディテクタ30の端部の受光部で回折光が検出されなくなるおそれがある。したがって、φ/4≦a≦3φ/4であることが望ましい。これを式(4)に代入すると、波長基準マークの周期dの範囲は、2λ/3NA≦d≦2λ/NAとなる。この式を満たすdが、本発明の実施形態において波長のずれを検出するのに適した波長基準マークの周期である。典型的な値としてλ=405nm、NA=0.5とすると、dの範囲は135nm≦d≦405nmとなる。
【0050】
以上においては、図10に示した回折格子状の波長基準マーク40と、図12に示した短冊状の分割フォトディテクタ30を用いる方法について説明したが、波長基準マークや分割フォトディテクタの構造は特に限定されない。波長基準マークは回折光が生じるような周期構造をもったものであればよい。分割フォトディテクタは、生じる回折光の方向に応じて異なる分割方向や複数の分割方向を持ったものであってもよい。
【0051】
次に、波長制御機能を備えた光源装置8の一例について説明する。図17は光源装置8として用いることのできる外部共振器付き半導体レーザの概略図である。51は発振中心波長405nmの窒化ガリウム系の半導体レーザである。半導体レーザから出射されたレーザ光52はコリメートレンズ53によって平行光束とされた後、回折格子54に入射する。レーザ光52のうち回折格子54によって反射された0次回折光55は光源装置8からの出力として用いられる。一方、回折格子54によって回折された1次回折光56はミラー57に入射する。ミラー57は紙面に対する垂線を軸としてその角度を変えることのできるマウント58に保持されており、その角度は圧電素子59に印加する電圧により制御することができる。1次回折光56のミラー57からの反射光60は回折格子54、コリメートレンズ53を介して半導体レーザ51にフィードバックされる。この場合、半導体レーザ51−コリメートレンズ53−回折格子54−ミラー57により外部共振器が形成され、ミラー57の角度を制御することによって出力光55の波長を制御することができる。
【0052】
図18(a)および(b)は、それぞれ記録時および再生時におけるシーケンスを示すフローチャートである。
図18(a)に示すように、記録を開始すると(S1)、まず波長基準マークを読み込み(S2)、波長ずれを検出する(S3)。波長ずれがなければデータを記録する(S4)。一方、波長ずれを検出し(S3)、波長ずれが大きければ波長を変更し(S5)、再び波長基準マークを読み込み(S2)、波長ずれを検出し(S3)、波長ずれがなくなればデータを記録する(S4)。その後、記録終了(S6)を判断する。
【0053】
図18(b)に示すように、再生を開始すると(S11)、まず波長基準マークを読み込み(S12)、波長ずれを検出する(S13)。波長ずれがなければデータを再生する(S14)。一方、波長ずれを検出し(S13)、波長ずれが大きければ波長を変更し(S15)、再び波長基準マークを読み込み(S12)、波長ずれを検出し(S13)、波長ずれがなくなればデータを再生する(S14)。その後、再生終了(S16)を判断する。
【0054】
このように本発明の実施形態では、データの記録前、データの再生前に波長基準マークにより光源の基準波長からのずれを検出して波長制御を行う。
【0055】
図19を参照して本発明の実施形態に係る光記録再生装置の構成について説明する。光記録再生装置は光記録媒体1が取り付けられるスピンドル62と、このスピンドルを回転させるスピンドルモータ63と、光記録媒体の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータを制御するスピンドルサーボ回路64とを備えている。なお、スピンドルモータ63の代わりにステッピングモータを用いてもよい。
【0056】
光記録再生装置は、光記録媒体1に対して情報光と記録用参照光とを照射して情報を記録するとともに、光記録媒体1に対して再生用参照光を照射して再生光を検出し光記録媒体1に記録されている情報を再生するためのピックアップ61と、波長制御が可能な光源装置66と、このピックアップ61と光源装置66を光記録媒体1の半径方向に移動可能とする駆動装置65とを備えている。
【0057】
光記録再生装置は、ピックアップ61の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、波長エラー信号WE、および再生信号RFを検出するための検出回路67と、この検出回路67によって検出されるフォーカスエラー信号FEに基づいて、ピックアップ61内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体1の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路68と、検出回路67によって検出されるトラッキングエラー信号TEに基づいてピックアップ61内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体1の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路69と、トラッキングエラー信号TEおよび後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置65を制御してピックアップ61を光記録媒体1の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路70と、検出回路67によって検出される波長エラー信号WEに基づいて光源装置66内の波長選択装置を駆動して波長制御を行う波長制御回路71を備えている。
【0058】
光記録再生装置は、ピックアップ61内の2次元光検出器の出力データをデコードして、光記録媒体1の情報記録領域に記録されたデータを再生したり、検出回路67からの再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路72と、光記録再生装置の全体を制御するコントローラ73と、このコントローラに対して種々の指示を与える操作部74とを備えている。コントローラ73は、信号処理回路72より出力される基本クロックやアドレス情報を入力するとともに、ピックアップ61、スピンドルサーボ回路64、スライドサーボ回路70、波長制御回路71などを制御するようになっている。スピンドルサーボ回路64は、信号処理回路72より出力される基本クロックを入力するようになっている。コントローラ73は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)およびRAM(ランダム・アクセス・メモリ)を含み、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することによって、その機能を実現する。
【0059】
なお、本発明の実施形態においては、以下のような種々の変形例を採用することができる。たとえば、空間光変調器にデジタルミラーデバイスではなく、反射型液晶素子や反射型磁気光学素子を用いてもよい。光記録媒体1としてダイクロイック反射層を有するものを用いてもよい(既述の非特許文献1参照)。一方、光記録媒体1として透過型光記録媒体を用いてもよい。また、光記録再生装置における情報光と参照光の干渉方法は、同軸干渉法であっても二光束干渉法であってもよい。以下、これらの変形例について説明する。
【0060】
反射型液晶素子や反射型磁気光学素子のように、素子に対して垂直に光を入射し、偏光方向を変えることによって光を変調する反射型空間光変調器を適用した光記録再生装置について説明する。図20は偏光方向を変えることによって光を変調する反射型空間光変調器を用いた光記録再生装置の概略図である。
【0061】
図20に示した光記録再生装置の基本的な構成は、図6に示した反射型同軸干渉法による装置とほぼ同じである。光源装置8としては波長制御機能を持つレーザが望ましい。ビームエキスパンダ9は光源装置8の出射光を拡張、平行光束に整形する。整形された光は偏光ビームスプリッタ14に入射する。光源装置8から出た光は予め偏光ビームスプリッタ14を透過するように偏光方向が調整されており、偏光ビームスプリッタ14を透過した記録光は反射型空間光変調器11に照射される。反射型空間光変調器11は格子状に2次元に配置された複数の画素を有し、画素ごとに反射光の偏光方向を変えることにより、2次元パターンとして情報を付与した情報光と、空間的に変調された参照光を同時に生成できる。反射型空間光変調器11には図7に示すような変調模様が表示されており、光軸の中心付近を情報光領域31、周辺部分を参照光領域32として用いる。
【0062】
反射型空間光変調器11によって変調された記録光(情報光および参照光)は入射時とは異なった偏光成分を有するため、偏光ビームスプリッタ14によって反射された後、旋光用光学素子15を透過し、ダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16は記録光の波長を透過するように設計されている。ダイクロイックプリズム16を透過した記録光は結像レンズ12、13を介した後、対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。このように、光軸の中心部を情報光、周辺部を参照光とする記録光が光記録媒体1に照射されることにより、光記録層3の内部で情報光と参照光が干渉し、光記録媒体1にホログラム6が形成される。
【0063】
記録された情報を再生するには、図8に示すように参照光領域32を反射型空間光変調器11に表示し、記録時と同様に光記録媒体1に参照光として照射する。図8に示した参照光領域32は、図7に示した周辺部の参照光領域32と同一の変調模様を示す。参照光の一部は光記録媒体1を透過する際にホログラム6により回折され再生光となる。再生光は反射層5によって反射された後、対物レンズ7、結像レンズ13、12、ダイクロイックプリズム16を透過し、旋光用光学素子15を透過する際に参照光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ14を透過する。なお、偏光ビームスプリッタ14での再生光の透過率が最も高くなるように旋光用光学素子15の回転角度が調節されていることが望ましい。偏光ビームスプリッタ14を透過した再生光の大半はビームスプリッタ18によって反射された後、結像レンズ19により2次元光検出器20上に再生像として結像される。また、ホログラム6により回折されなかった参照光は透過光となって再生光と同様に2次元光検出器20上に結像するが、中心部が再生光、周辺部が透過光となるので、空間的に容易に分離することができる。なお、再生信号のSN比を良くするために、光検出器20の前にアイリス21を配して参照光部分を遮ってもよい。図20の装置におけるサーボの方法は、図6の装置に関して説明した方法と同じである。
【0064】
次に、図20に示す装置を用いた場合の基準波長からのずれの検出方法について説明する。波長ずれの検出時には図20に示した反射型空間光検出器11の画素をすべてONにし均一な光束が光記録媒体1に照射されるようにすることが望ましい。光源装置8から出射された光は、記録再生時と同様にビームエキスパンダ9、偏光ビームスプリッタ14、反射型空間光変調器11、旋光用光学素子15、ダイクロイックプリズム16、結像レンズ12、13、対物レンズ7を経て光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。
【0065】
光記録媒体1の反射層5の表面には図2に示すような回折格子状の波長基準マーク40が設けられており、波長基準マーク40からの反射光41、回折光42、43は再び対物レンズ7、結像レンズ13、12、ダイクロイックプリズム16を透過し、旋光用光学素子15を透過する際に参照光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ14を透過する。偏光ビームスプリッタ14を透過した反射光41、回折光42、43の一部はビームスプリッタ18を透過した後、レンズ29により分割フォトディテクタ30の上に投影され、分割フォトディテクタ30により波長エラー信号が得られる。なお、2次元光検出器20を仮想的な分割フォトディテクタとして、その出力を用いて同様に波長エラー信号を得ることもできる。
【0066】
次に、ダイクロイック反射層を有する光記録媒体について説明する。図21に反射型同軸干渉法に用いられるダイクロイック反射層を有する光記録媒体1の斜視図を示す。光記録媒体1は、図1に示した光記録媒体に加えてダイクロイック反射層77およびギャップ層78を備えている。ダイクロイック反射層77は、光源装置8から出射された記録光を反射し、サーボ用光源装置23から出射されたサーボ光を透過する性質をもっており、誘電体多層膜などからなっている。誘電体多層膜を形成する材料としてはSiO2、TiO2、NbO3、CaF2などを用いることができる。ギャップ層78は、記録光が集光され、光強度が非常に強くなっている領域でのホログラムの記録を避ける機能を有するが、必ずしも設けなくてもよい。ギャップ層78の材料は、記録光を透過し、光記録層3の記録材料と相溶しないものであればよく、ガラスやポリカーボネートなどが挙げられる。
【0067】
ホログラム記録時、記録光は対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1のダイクロイック反射層77の表面でそのビーム径が最小になるように集光され、光記録層3の中にホログラム6を形成する。一方、サーボ光はダイクロイック反射層77を透過し反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。記録光とサーボ光の集光位置を異ならせるには、色収差のある対物レンズを用いる、サーボ用光源装置22とコリメートレンズ23の間隔を広げる、旋光用光学素子25とダイクロイックプリズム16の間に補正用の凹レンズを挿入する、などの方法を用いることができる。
【0068】
図22に、図21に示したダイクロイック反射層を有する反射型光記録媒体の断面図を示す。波長基準マーク40は透明基板4のダイクロイック反射層77との界面に設けられており、記録光波長に応じた回折光を記録光入射側方向に出射する構造となっている。
【0069】
図23に、図21に示したダイクロイック反射層を有する反射型光記録媒体の別の断面図を示す。波長基準マーク40は透明基板4の反射層5との界面に設けられており、波長基準マーク40の上部はダイクロイック反射層77が欠落した構造になっている。これにより記録光を波長基準マーク40上に集光することができる。
【0070】
次に、透過型同軸干渉法に本発明を適用した例について説明する。図24に透過型同軸干渉法に用いられる光記録媒体の斜視図を示す。図24に示した透過型同軸干渉法に用いられるディスク状に形成された光記録媒体1は、図1に示した光記録媒体1から反射層5を取り除いた構造を有する。図25に、図24に示した透過型光記録媒体の断面図を示す。波長基準マーク40は透明基板4の外側界面に設けられており、記録光波長に応じた回折光を記録光透過側方向に出射する構造となっている。
【0071】
図26に透過型同軸干渉法を用いた光記録再生装置の概略図を示す。図26に示した光記録再生装置の基本的の構成は、図6に示した反射型同軸干渉法による装置とほぼ同じである。光源装置8としては波長制御機能を持つレーザが望ましい。ビームエキスパンダ9は光源装置8の出射光を拡張、平行光束に整形する。整形された光はミラー10により反射型空間光変調器11に照射される。反射型空間光変調器11は格子状に2次元に配置された複数の画素を有し、画素ごとに反射光の方向を変えるか、または画素ごとに反射光の偏光方向を変えることにより、2次元パターンとして情報を付与した情報光と、空間的に変調された参照光を同時に生成できる。図26は反射型空間光変調器11としてデジタルミラーデバイスを用いた例である。反射型空間光変調器11には図7に示すような変調模様が表示されており、光軸の中心付近を情報光領域31、周辺部分を参照光領域32として用いる。
【0072】
反射型空間光変調器11によって反射された記録光(情報光および参照光)は結像レンズ12、13を介してダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16は記録光の波長を透過するように設計されている。ダイクロイックプリズム16を透過した光は対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の透明基板4の外側界面でそのビーム径が最小になるように集光する。このように、光軸の中心部を情報光、周辺部を参照光とする記録光が光記録媒体1に照射されることにより、光記録層3の内部で情報光と参照光が干渉し、光記録媒体1にホログラム6が形成される。
【0073】
記録された情報を再生するには、図8に示すように参照光領域32を反射型空間光変調器11に表示し、記録時と同様に光記録媒体1に参照光として照射する。図8に示した参照光領域32は、図7に示した周辺部の参照光領域32と同一の変調模様を示す。参照光の一部は光記録媒体1を透過する際にホログラム6により回折され再生光となる。再生光は光記録媒体1を透過する形で出射され、ピックアップレンズ75を透過し、ビームスプリッタ18に入射する。ビームスプリッタ18に入射した再生光の大半は反射された後、結像レンズ19により2次元光検出器20上に再生像として結像される。また、ホログラム6により回折されなかった参照光は透過光となって再生光と同様に2次元光検出器20上に結像するが、中心部が再生光、周辺部が透過光となるので、空間的に容易に分離することができる。なお、再生信号のSN比を良くするために、光検出器20の前にアイリス21を配して参照光部分を遮ってもよい。
【0074】
図26の装置におけるサーボの方法は、サーボ光の一部が透明基板4の外側界面で反射され、その際、透明基板4の外側面上に形成されたピットによって変調される面を除いて、図6の装置に関して説明した方法と同じである。また、4分割フォトディテクタ28より得られるフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を用いてボイスコイルモータ76を駆動してピックアップレンズ75の位置調整を行うこともできる。
【0075】
次に、図26の装置を用いた場合の基準波長からのずれを検出方法について説明する。波長ずれの検出時には図26に示した反射型空間光検出器11の画素をすべてONにし均一な光束が光記録媒体1に照射されるようにすることが望ましい。光源装置8から出射された光は、記録再生時と同様にビームエキスパンダ9、ミラー10、反射型空間光変調器11、結像レンズ12、13、偏光ビームスプリッタ14、旋光用光学素子15、ダイクロイックプリズム16、対物レンズ7を経て光記録媒体1の透明基板4の外側界面でそのビーム径が最小になるように集光される。
【0076】
図25に示すように、光記録媒体1の透明基板4の外側界面には、回折格子状の波長基準マーク40が設けられている。波長基準マーク40に光源装置8からの光が入射すると、透過光に加えて回折光が現れる。波長基準マーク40からの透過光、回折光は再びピックアップレンズ75を透過し、さらにその一部はビームスプリッタ18を透過した後、レンズ29により分割フォトディテクタ30の上に投影され、分割フォトディテクタ30により波長エラー信号が得られる。なお、2次元光検出器20を仮想的な分割フォトディテクタとして、その出力を用いて同様に波長エラー信号を得ることもできる。
【0077】
次に、透過型2光束干渉法に本発明を適用した例について説明する。光記録媒体には図24、図25に示した透過型媒体と同様の構造を有するものを用いることができる。図27に透過型2光束干渉法を用いた光記録再生装置の一例を示す。光源装置8としては波長制御機能を持つレーザが望ましい。光源装置8から出射した光は、まず旋光用光学素子79と偏光ビームスプリッタ80によって2つのビームに分割される。旋光用光学素子79としては1/2波長板や1/4波長板などを用いることができる。偏光ビームスプリッタ80を透過したビームは情報光として用いられる。情報光はビームエキスパンダ9によって拡張、平行光束とされた後、ミラー10により反射型空間光変調器11に照射される。反射型空間光変調器11は格子状に2次元に配置された複数の画素を有し、画素ごとに反射光の方向を変えるか、または画素ごとに反射光の偏光方向を変えることにより、2次元パターンとして情報を付与した情報光を生成できるようになっている。図27は反射型空間光変調器11としてデジタルミラーデバイスを用いた例である。反射型空間光変調器11によって生成された情報光はダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16は記録光の波長を透過するように設計されている。ダイクロイックプリズム16を透過した光は対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の透明基板4の外側界面でそのビーム径が最小になるように集光する。一方、偏光ビームスプリッタ80によって反射されたビームは参照光として用いられる。参照光は旋光用光学素子81によって記録光と干渉し得る偏光成分を有する光とされる。旋光用光学素子81としては主に1/2波長板を用いることができる。旋光用光学素子81を透過した参照光は、ガルバノミラー82、リレーレンズ83、84によって、入射角度を変えて光記録媒体1の光記録層3の同一スポットに照射されるようになっている。このように情報光と参照光が光記録媒体1に照射されることにより、光記録層3の内部にホログラムが形成される。また記録時の参照光の入射角度を変えることにより、ホログラムの角度多重記録も可能である。
【0078】
記録された情報を再生するには、記録されたホログラムに対して、記録時と同じ入射角度で参照光を照射する。参照光の一部は光記録媒体1を透過する際、記録されたホログラムにより回折され情報光を再現する再生光となる。再生光は光記録媒体1を透過する形で出射され、ピックアップレンズ75を透過し、ビームスプリッタ18に入射する。ビームスプリッタ18に入射した再生光の大半は反射された後、2次元光検出器20上に再生像として結像される。図27の光記録再生装置は、図26の光記録再生装置と同様に、透明基板4の外側界面で反射されたサーボ光を用いて位置決めを行う。透過型2光束干渉法の場合、ホログラムの記録中、情報光と参照光の位置関係を固定する必要があるため、同軸干渉法で用いた、対物レンズ7を駆動するサーボは行わず、4分割フォトディテクタ28より得られるフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に基づいて光記録媒体1を微動するか、または図27に示す光記録媒体1以外の光学部品すべてをユニット化して微動することにより位置決めを行う。
【0079】
記録光の基準波長からのずれを検出方法は透過型同軸干渉法で説明した方法とほぼ同じである。反射型空間光検出器11の画素をすべてONにし均一な光束が光記録媒体1に照射されるようにした状態で、波長基準マーク40からの回折光を分割フォトディテクタ30によって検出し波長エラー信号を得る。なお、2次元光検出器20を仮想的な分割フォトディテクタとして、その出力を用いて同様に波長エラー信号を得ることもできる。また、参照光のみを波長基準マーク40に照射し、そこからの回折光の角度を2次元光検出器20により検出することにより、基準波長からのズレを検出することもできる。
【0080】
以上のように、本発明の実施形態によれば、環境による記録再生波長の変動や、装置間の記録再生波長のばらつきに強く、可搬性や装置間の互換性に優れたホログラム型光記録再生装置および再生方法が提供される。
【実施例】
【0081】
<光記録媒体の準備>
本実施例では、以下の方法により図1に示す反射型光記録媒体1を準備した。
(透明基板の作製)
まず、以下のようにしてディスク原版を作製した。ディスク状のガラス基板上に電子線レジストをスピンコートにより塗布した。電子線描画装置を用いて、電子線レジストに、トラックのパターンと、波長基準マークのパターンを描画した。トラックは同心円をなし、波長基準マークはディスク上において角度π/4おきに4つの領域に設けられ、トラックに直交する方向に延びている。波長基準マークが設けられている各領域のトラックに沿う長さは50μmである。電子線描画後、現像工程、ニッケルスパッタ工程、ニッケルメッキ工程を経てディスク原版を得た。次に、得られたディスク原版を用いてポリカーボネートの射出成形を行い、本実施例に用いる図1に示した透明基板4を得た。原子間力顕微鏡によって観察したところトラックピッチは400nm、波長基準マークの周期は800nmであった。図1の反射層5としてスパッタにより厚さ200nmのアルミニウム層を形成した。
【0082】
(光記録層材料の調製)
まず、ビニルカルバゾール3.86gとビニルピロリドン2.22gとを混合し、次いで、イルガキュア784(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.1gを加えて攪拌した。すべてが溶解した後、パーブチルH(日本油脂製)0.04gを混合してモノマー溶液Aを調製した。次に、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル10.1gとジエチレントリアミン3.6gを混合してエポキシ溶液Bを調製した。Aのモノマー溶液1.5mlとBのエポキシ溶液8.5mlを混合、脱泡して光記録層材料の前駆体を調製した。
【0083】
(光記録媒体の作製)
上記透明基板の反射層と反対側の主面上円周部にフッ素樹脂からなる厚さ250μmのスペーサを載置し、その間に光記録層材料の前駆体である混合溶液をキャストした。キャスト後、別途準備したディスク状ポリカーボネート基板を対向配置し、さらに一様に圧力を加えることにより、上記混合溶液を厚さ250μmにまで延伸した。最後に、50℃で10時間加熱して厚さ250μmの光記録層をもつディスク状の光記録媒体1を作製した。本実施例で作製した光記録媒体1では上部ポリカーボネート基板を保護層2として用いた。なお、本実施例では一連の作業は、光記録層3が感光しないように、波長600nmより短波長の光を遮光した室内で行った。
【0084】
<光記録再生装置の作製>
まず、光記録再生装置として、図6に示す構成の光記録再生装置を2台作製した。対物レンズ7は開口数NAが0.5であるものを用いた。これらを光記録再生装置A、光記録再生装置Bとする。光源装置8として窒化ガリウム系の半導体レーザ素子を用い、図17に示した外部共振器構造を作製した(発振波長403nm−405nm)。サーボ用光源装置22として直線偏光した半導体レーザ(波長650nm)を用いた。反射型空間光変調器11してデジタルミラーデバイスを用い、2次元光検出器20としてCCDアレイを用いた。旋光用光学素子15として波長405nm用の1/4波長板、旋光用光学素子25として波長650nm用の1/4波長板を用いた。旋光用光学素子15として用いた1/4波長板は、2次元光検出器20上で再生光の強度が最も大きくなるようにその方位を調整した。同様に、旋光用光学素子25として用いた1/4波長板も4分割フォトディテクタ28上で光強度が最も強くなるようにその方位を調整した。
【0085】
<試験1>
(情報の記録)
上記の方法で作製した光記録媒体1を光記録再生装置Aに搭載して、実際に情報の記録を行った。光記録媒体1はスピンドルモータに固定されており、1rpmの回転数で光記録媒体1を回転させ、光記録媒体に対するサーボおよび波長基準マーク40に基づく波長補正を行いながら、アドレス信号に同期してレーザを点灯させホログラムの記録を行った。光記録媒体1表面での光強度は0.1mW、光記録層3の上面でのレーザビームのスポットサイズは400μm径であった。デジタルミラーデバイス11上の画素として400×400の160000画素の領域を用い、そのうち情報光領域として中心部の144×144の領域を用い、隣接する4×4の16画素を1シンボルとし、16画素中の3画素を明点とする16:3変調方法を用いた。位置合わせマークのための領域を除いた情報光領域内のシンボルの数は1120シンボルであった。
【0086】
(情報の再生)
上記の方法により情報が記録された光記録媒体1を光記録再生装置Aのスピンドルモータから取り外した。この光記録媒体1を再び光記録再生装置Aのスピンドルモータに固定し、1rpmの回転数で光記録媒体1を回転させ、光記録媒体に対するサーボおよび波長基準マークに基づく波長補正を行いながら、アドレス信号に同期してレーザを点灯させ2次元光検出器(CCDアレイ)20によってホログラムの再生を行った。再生の際には、図8に示したように、参照光領域32のみをデジタルミラーデバイス上に表示し参照光とした。光記録媒体1表面での光強度は0.05mWであった。
【0087】
(情報の判別)
試験1における記録再生性能を以下のような方法により評価した。すなわち、2次元光検出器(CCDアレイ)20で得られた情報光領域にある各1120シンボルに対して、位置合わせマークを用いて画像処理を行った後、明点、暗点の判別を行い、出力パターンを認識し、デジタルミラーデバイス11に入力したパターンと比較した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120シンボル中、0シンボルであった。
【0088】
<試験2>
試験1で記録された光記録媒体1を再び光記録再生装置Aのスピンドルモータに固定し、波長基準マークに基づく波長補正を行わずにホログラムの再生を行った。
【0089】
試験2における記録再生性能を試験1と同様の方法により評価した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120シンボル中、5シンボルであった。
【0090】
<試験3>
試験1で記録された光記録媒体1を、記録時とは異なる光記録再生装置Bのスピンドルモータに固定し、1rpmの回転数で光記録媒体1を回転させ、試験1と同様に光記録媒体に対するサーボおよび波長基準マークに基づく波長補正を行いながら、アドレス信号に同期してレーザを点灯させ2次元光検出器20によってホログラムの再生を行った。
【0091】
試験3における記録再生性能を試験1と同様の方法により評価した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120シンボル中、1シンボルであった。
【0092】
<試験4>
試験1で記録された光記録媒体1を再び光記録再生装置Aのスピンドルモータに固定し、波長基準マークに基づく波長補正を行わずにホログラムの再生を行った。
【0093】
試験4における記録再生性能を試験1と同様の方法により評価した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120パネル中、24シンボルであった。
【0094】
<試験5>
上記と同一の光記録媒体および光記録再生装置Aを用い、試験1とは異なり波長基準マークに基づく波長補正を行わず、その他の記録条件を試験1と同一に設定して、光記録媒体に対してサーボを行いながら、アドレス信号に同期してホログラムの記録を行った。
【0095】
上記の方法により情報が記録された光記録媒体1を光記録再生装置Aのスピンドルモータから取り外した。この光記録媒体1を再び光記録再生装置Aのスピンドルモータに固定し、1rpmの回転数で光記録媒体1を回転させ、光記録媒体1に対するサーボを行いながら、波長基準マークでの波長補正を行わずに、アドレス信号に同期してレーザを点灯させホログラムの再生を行った。
【0096】
試験5における記録再生性能を試験1と同様の方法により評価した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120パネル中、8シンボルであった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク状の光記録媒体とその近傍に位置する光学系を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る光記録媒体に設けられた波長基準マークを示す断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る光記録媒体に設けられた波長基準マークとガイドとの関係を示す斜視図。
【図4】図1のディスク状の光記録媒体に設けられた波長基準マークとガイドとの関係を示す平面図。
【図5】カード状の光記録媒体に設けられた波長基準マークとガイドとの関係を示す平面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る光記録再生装置の概略図。
【図7】反射型空間光変調器に表示される記録光(情報光および参照光)に相当する変調模様を示す平面図。
【図8】反射型空間光変調器に表示される再生光(参照光)に相当する変調模様を示す平面図。
【図9】フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を検出するための回路を示すブロック図。
【図10】波長基準マークに光が入射したときに現れる反射光および回折光を示す斜視図。
【図11】分割フォトディテクタ上での反射光および回折光の状態を示す模式図。
【図12】波長エラー信号を検出するための回路を示すブロック図。
【図13】波長エラー検出回路における減算器46からの出力と記録光の基準波長からのズレとの関係を示す図。
【図14】回折格子に垂直方向から平面波が入射している状態を示す模式図。
【図15】対物レンズの位置における反射光の光軸と回折光の光軸との間にずれを示す模式図。
【図16】分割フォトディテクタにおける反射光と回折光の位置関係を示す模式図。
【図17】外部共振器付き半導体レーザの概略図。
【図18】記録時および再生時におけるシーケンスを示すフローチャート。
【図19】本発明に実施形態に係る光記録再生装置の構成図。
【図20】偏光方向を変えることによって光を変調する反射型空間光変調器を用いた光記録再生装置の概略図。
【図21】ダイクロイック反射層を有する光記録媒体の斜視図。
【図22】図21の光記録媒体の断面図。
【図23】図21の光記録媒体の別の断面図。
【図24】透過型同軸干渉法に用いられる光記録媒体の斜視図。
【図25】図24の光記録媒体の断面図。
【図26】透過型同軸干渉法を用いた光記録再生装置の概略図。
【図27】透過型2光束干渉法を用いた光記録再生装置の概略図。
【符号の説明】
【0098】
1…光記録媒体、2…保護層、3…光記録層、4…透明基板、5…反射層、6…ホログラム、7…対物レンズ、8…光源装置、9…ビームエキスパンダ、10…ミラー、11…反射型空間光変調器、12、13…結像レンズ、14…偏光ビームスプリッタ、15…旋光用光学素子、16…ダイクロイックプリズム、17…ボイスコイルモータ、18…ビームスプリッタ、19…結像レンズ、20…2次元光検出器、21…アイリス、22…サーボ用光源装置、23…コリメートレンズ、24…偏光ビームスプリッタ、25…旋光用光学素子、26…凸レンズ、27…シリンドリカルレンズ、28…4分割フォトディテクタ、29…レンズ、30…分割フォトディテクタ、31…情報光領域、32…参照光領域、33、34…加算器、35…減算器、36、37…加算器、38…減算器、39…加算器、40…波長基準マーク、41…反射光、42、43…回折光、44、45…加算器、46…減算器、47…オフセット回路、48、49…加算器、50…減算器、51…半導体レーザ、52…レーザ光、53…コリメートレンズ、54…回折格子、55…0次回折光、56…1次回折光、57…ミラー、58…マウント、59…圧電素子、60…反射光、61…ピックアップ、62…スピンドル、63…スピンドルモータ、64…スピンドルサーボ回路、65…駆動装置、66…光源装置、67…検出回路、68…フォーカスサーボ回路、69…トラッキングサーボ回路、70…スライドサーボ回路、71…波長制御回路、72…信号処理回路、73…コントローラ、74…操作部、75…ピックアップレンズ、76…ボイスコイルモータ、77…ダイクロイック反射層、78…ギャップ層、79…旋光用光学素子、80…偏光ビームスプリッタ、81…旋光用光学素子、82…ガルバノミラー、83、84…リレーレンズ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィ、特にデジタルボリュームホラグラフィを利用する光記録方法、光再生方法、光記録媒体、および光記録再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度画像など容量の大きなデータを記録可能な情報記録媒体として光記録媒体がある。従来、光記録媒体としては、光磁気記録媒体、相変化光記録媒体、CD−Rなどが実用化されているが、光記録媒体の高容量化に対する要求は高まる一方である。このような高容量の光記録を実現するためにホログラフィ、特にデジタルボリュームホログラフィを用いたホログラム型光記録媒体が提案されている。
【0003】
ホログラフィを用いた光記録再生方法では、一般に、記録時には2次元パターンとして情報を付与された情報光と参照光とを光記録媒体の内部で干渉させ、情報を干渉縞として記録し、再生時には記録された干渉縞に対して参照光のみを照射することにより、干渉縞からの回折像として記録された情報を2次元パターンとして取り出す。このため、この方式は高速で情報の入出力ができるという利点を持つ。特にデジタルボリュームホログラフィを用いた光記録再生方法は、光記録媒体の厚み方向を利用して3次元的に干渉縞を記録することにより回折効率を高め、光記録媒体内部の同一領域に多重に情報を記録することを可能にし、記録容量を増大できるという利点がある。
【0004】
上記のようにして光記録媒体にすでに記録された干渉縞に照射する参照光の配置(照射する角度、位置など)を元の記録時の配置からほんの少しだけずらすと、記録された干渉縞に参照光が照射されているにもかかわらず、参照光の位相と干渉縞の位相の整合が取れなくなり回折像が得られなくなる。この回折像が得られなくなった参照光の配置で、別の情報光との干渉縞を記録することにより、光記録媒体内部の同一領域に、参照光の配置に応じて複数の2次元情報を多重に記録できる。このように、ホログラフィを用いた光記録再生では干渉縞と光の位相との整合を利用して情報の多重記録を可能にしている。しかし、このことは、記録時と再生時の波長が異なった場合にも回折光が得られなくなる、換言すれば、記録再生光の波長変動に弱い、という性質も表している。
【0005】
ホログラムを記録する際、空間的に変調された参照光を用いると、記録される干渉縞が複雑になり、参照光と干渉縞の位相整合条件が厳しくなることから、記録の多重度を上げることが可能であることが知られている。例えば、空間的に位相が変調された記録用参照光を用いるホログラフィを用いた光記録再生装置が開示されている(特許文献1参照)。最近では、一つの空間光変調器を用いて情報光と変調された参照光とを生成しホログラムを記録する方法が発表されている(非特許文献1参照)。しかし、この方法を用いると、参照光と干渉縞の位相整合条件がさらに厳しくなることから、記録再生光の波長の変動が記録再生の性能に、より大きな影響を与え、光記録媒体の可搬性や装置間での互換性などの面で大きな問題になってくる。
【特許文献1】特開2002−123949号公報
【非特許文献1】Hideyuki Horimai and Kun Li, “A novel Collinear optical Setup for Holographic data Storage System”, Technical Digest of Optical Data Storage Topical Meeting 2004, pp 258-260, (2004).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ホログラムを記録再生するためには一般的にレーザ装置が用いられる。ホログラムを記録するレーザ装置としては、単色性や可干渉性などの観点からアルゴンレーザやヘリウムネオンレーザのようなガスレーザや、YAGレーザといった固体レーザがよく用いられてきた。しかし、小型で低消費電力の光記録再生装置を実現するには半導体レーザを用いるのが好ましい。半導体レーザは既にCD−ROMやDVDなどの光記録再生装置に組み込まれており、実用的に十分高輝度なレーザ光を出射させることができる。しかし、半導体レーザは、材料の組成や素子のサイズや構造などのわずかなばらつきが原因で、複数の波長で発振したり、個体ごとに発振波長が数nmから十nm程度ばらついたりすることがある。また、1つの半導体レーザでも温度変化や注入電流量などによって発振波長が変動することが知られている。従って、半導体レーザをそのまま波長変動に弱いホログラムの記録再生に用いるのは不適切である。また、記録時と再生時のレーザ波長を、異なる環境や異なる装置間で同じくするには、DFB(Distributed feedback)やDBR(Distributed Bragg Reflector)と呼ばれる波長選択構造を半導体レーザ素子自体に作り込んだ上、レーザの製造条件を厳密に制御し特性を揃えることが考えられるが、歩留まりが悪く製造コストも高くなるため現実的ではない。
【0007】
本発明の目的は、ホログラム記録再生に使用される半導体レーザのばらつきや環境による波長変動の補正が容易であり、良好な記録再生性能が得られる光記録方法、光再生方法、光記録媒体、および光記録再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る光記録方法は、ホログラフィを利用して光記録媒体に情報を記録する光記録方法であって、記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、情報の記録時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して記録を行うことを特徴とする。
【0009】
本発明の他の態様に係る光再生方法は、ホログラフィを利用して光記録媒体に記録された情報を再生する光再生方法であって、記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、情報の再生時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して再生を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の他の態様に係る光記録媒体は、ホログラフィを利用して情報を記録する光記録媒体であって、情報記録領域と、記録光および再生光を回折することにより記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークが形成された領域とを有することを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに他の態様に係る光記録再生装置は、情報記録領域と、記録光および再生光を回折することにより記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークが形成された領域とを有する光記録媒体を用い、ホログラフィを利用して情報を記録・再生する光記録再生装置であって、光源装置と、前記光源装置から出射される光から情報光および/または参照光を生成する空間光変調器と、前記光記録媒体の情報記録領域に記録光である情報光と参照光を照射し、前記光記録媒体の情報記録領域に再生光である参照光を照射し、前記光記録媒体の波長基準マークが形成された領域に記録光または再生光を照射する光学系と、前記光記録媒体の波長基準マークの領域に照射された記録光または再生光の回折光に基づいて、記録の基準波長に対する光源装置の波長のずれを検出する光検出器と、前記波長のずれを小さくするように前記光源装置の波長を制御する波長制御器とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、環境による記録再生波長の変動や、装置間での記録再生波長のばらつきに強く、可搬性や装置間での互換性に優れた、ホログラフィを利用する光記録方法、光再生方法、光記録媒体、および光記録再生装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための最良の形態について詳しく説明する。尚、実施の形態や実施例を通して共通する構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、参照する各図は発明の説明とその理解を促すための模式図であり、図面表示の便宜上、形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、また、以下の説明と公知の技術を参酌して適宜、設計変更することができる。
【0014】
本発明の実施形態に係るホログラフィ(ホログラム)は、透過型ホログラフィ(透過型ホログラム)であっても反射型ホログラフィ(反射型ホログラム)であってもよい。
【0015】
本発明の実施形態に係るホログラフィを用いた光記録再生装置における情報光と参照光の干渉方法は、二光束干渉法であっても同軸干渉法であってもよい。
【0016】
本発明の実施形態に係る光記録媒体の典型的な形状は円盤状、カード状、ブロック状などであるが、形状はこれらに限られない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る、反射型同軸干渉法が適用されるディスク状の光記録媒体1と、その近傍に位置する光学系を示す斜視図である。光記録媒体1は、ガラス、ポリカーボネートなどによって形成された透明基板4の一方の主面(光入射側)上に光記録層3、他方の主面上に反射層5を備え、さらに光記録層3の光入射側に保護層2を備えたものである。なお、保護層2は必ずしも設ける必要はない。
【0018】
光記録層3は電磁波を照射したとき、その強度に応じて吸光係数、屈折率などの光学特性が変化する材料により形成されている。光記録層3に用いられるホログラム記録材料は有機材料であっても無機材料であってもよい。有機材料としては例えばフォトポリマ、フォトリフラクティブポリマ、フォトクロミック色素分散ポリマなどが挙げられ、無機材料としては例えばニオブ酸リチウム、チタン酸バリウムなどが挙げられる。
【0019】
反射層5は記録光波長における反射率が高い材料、例えばアルミニウムなどによって形成されている。図示していないが、反射層5が形成される透明基板4の主面にはトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報を予め凹凸などの構造により記録してもよい。トラッキングサーボを行うには、連続サーボ方式を用いることが好ましいが、反射層5での記録光の乱れが問題になる場合はサンプルドサーボ方式を用いてもよい。トラッキングサーボを行うための情報としては、例えばウォブルピットを用いることができる。
【0020】
対物レンズ7を通して光記録媒体1に照射された記録光(情報光および参照光)は光記録層3の中で干渉してホログラム6を形成する。
【0021】
図2に、図1に示した反射型光記録媒体の断面図を示す。この光記録媒体1では、透明基板4に凹部が設けられた領域85が形成され、この領域上に反射層5を形成することにより波長基準マーク40が形成されている。この波長基準マーク40により、記録光波長に応じた回折光を記録光の入射側へ出射するようになっている。
【0022】
また、透明基板4の主面上に記録光の走査方向を制御するためのガイド86が形成されている場合は、波長基準マーク40の周期方向はガイド86の周期方向と異なっていることが望ましい。図3の斜視図は、波長基準マーク40とガイド86の周期方向がほぼ直交している例に示す。
【0023】
光記録媒体1がディスク状である場合、図4(a)の平面図に例を示すように、波長基準マーク40は放射状に形成されていてもよく、図4(b)の平面図に例を示すように等間隔に区切られた記録セクターの先頭部分に形成されていてもよい。
【0024】
光記録媒体1がカード状であり、記録光走査方向を制御するためのガイド86が形成されている場合、図5(a)の平面図に例を示すように、波長基準マーク40の周期方向はガイド86の周期方向と異なっていることが望ましく、記録光走査方向を制御するためのガイド86が形成されていない場合、図5(b)の平面図に例を示すように波長基準マーク40の周期方向に特に制約はない。
【0025】
次に、反射型同軸ホログラフィを用いた光記録再生装置の一例を説明する。これまで、反射型同軸ホログラフィは、再生時に参照光を照射した場合、再生光としての回折光と回折されなかった残りの透過光とが同軸で光検出器に入射するためにSN比が悪くなるという問題があった。このような問題点を解決する新しい記録方式として、偏光によって参照光と再生光を分離する反射型偏光同軸干渉方式が提案されている(既述の特許文献1参照)。また、最近では、一つの空間光変調器を用いて情報光と変調された参照光とを生成してホログラムを記録し、光軸の中心部と周辺部で参照光と再生光を分離する新しい同軸干渉の方式が提案されている(既述の特許文献2参照)。
【0026】
図6に、本発明の一実施形態に係る、同軸干渉法を用いた光記録再生装置の概略図を示す。この装置は、一つの空間光変調器を用いて情報光と変調された参照光とを生成してホログラムを記録する同軸干渉法を用いている。
【0027】
光源装置8としては、可干渉性などの観点から直線偏光をしたレーザが望ましい。具体的には半導体レーザ、He−Neレーザ、アルゴンレーザ、YAGレーザなどが挙げられる。また、光源装置8はその出射波長を調整できる機能を有している。ビームエキスパンダ9は光源装置8の出射光を拡張し、平行光束に整形する。整形された光はミラー10により反射型空間光変調器11に照射される。反射型空間光変調器11は格子状に2次元に配置された複数の画素を有し、画素ごとに反射光の方向を変えるか、または画素ごとに反射光の偏光方向を変えることにより、2次元パターンとして情報を付与した情報光と、空間的に変調された参照光を同時に生成できる。反射型空間光変調器11としてはデジタルミラーデバイスや反射型液晶素子、磁気光学効果を用いた反射型変調素子などを用いることができる。図6は反射型空間光変調器としてデジタルミラーデバイスを用いた例である。反射型空間光変調器11には図7に示すような変調模様が表示されている。この変調模様は記録光に相当し、そのうち光軸の中心付近を情報光領域31、周辺部分を参照光領域32として用いる。
【0028】
反射型空間光変調器11によって反射された記録光(情報光および参照光)は結像レンズ12、13を介して偏光ビームスプリッタ14に入射する。記録光は偏光ビームスプリッタ14を透過するように、光源装置8からの出射時点で偏光方向が調整されている。偏光ビームスプリッタ14を透過した記録光は旋光用光学素子15を透過し、ダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16は記録光の波長を透過するように設計されている。ダイクロイックプリズム16を透過した光は対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。旋光用光学素子15としては1/4波長板や1/2波長板などを用いることができる。このように、光軸の中心部を情報光、周辺部を参照光とする記録光が光記録媒体1に照射されることにより、光記録層3の内部で情報光と参照光が干渉し、光記録媒体1にホログラム6が形成される。
【0029】
記録された情報を再生するには、図8に示すように参照光領域32を反射型空間光変調器11に表示し、記録時と同様に光記録媒体1に参照光として照射する。図8に示した参照光領域32は、図7に示した周辺部の参照光領域32と同一の変調模様を示す。参照光の一部は光記録媒体1を透過する際にホログラム6により回折され再生光となる。再生光は反射層5によって反射された後、対物レンズ7、ダイクロイックプリズム16を透過し、旋光用光学素子15を透過する際に参照光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ14によって反射される。なお、偏光ビームスプリッタ14での再生光の反射率が最も高くなるように旋光用光学素子15の回転角度が調節されていることが望ましい。偏光ビームスプリッタ14によって反射された再生光の大半はビームスプリッタ18によって反射された後、結像レンズ19により2次元光検出器20上に再生像として結像される。ホログラム6により回折されなかった参照光は透過光となって再生光と同様に2次元光検出器20上に結像するが、中心部が再生光、周辺部が透過光となるので、空間的に容易に分離することができる。なお、再生信号のSN比を良くするために、光検出器20の前にアイリス21を配して参照光部分を遮ってもよい。
【0030】
次に、光記録媒体1に対するサーボの方法について説明する。図6に示した光記録再生装置はサーボ用光源装置22を有している。光源装置22としては直線偏光をしたレーザが望ましい。レーザとしては具体的には半導体レーザ、He−Neレーザ、アルゴンレーザ、YAGレーザなどが挙げられる。光源装置22は記録用光源装置8と波長が異なり、光記録層3の光学特性を変化させないものであることが望ましく、波長650nm付近の赤色半導体レーザが最も望ましい。光源装置22により射出されたサーボ光はコリメートレンズ23によって平行光束に整形され偏光ビームスプリッタ24に入射する。サーボ光は偏光ビームスプリッタ24を透過するように、光源装置22からの出射時点で偏光方向が調整されている。偏光ビームスプリッタ24を透過したサーボ光は旋光用光学素子25を透過し、ダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16はサーボ光の波長を反射するように設計されている。旋光用光学素子25としては1/4波長板、1/2波長板などを用いることができる。ダイクロイックプリズム16によって反射されたサーボ光は、対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。サーボ光は反射層5によって反射され、その際、反射面上に形成されたピットによって変調される。光記録媒体1からのサーボ戻り光は対物レンズ7を透過し、ダイクロイックプリズム16によって反射され、更に旋光用光学素子25を透過する。サーボ戻り光は、旋光用光学素子25を透過する際に光源装置22により射出されたサーボ光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ24によって反射される。なお、偏光ビームスプリッタ24でのサーボ戻り光の反射率が最も高くなるように旋光用光学素子25の回転角度が調節されていることが望ましい。偏光ビームスプリッタ24で反射されたサーボ戻り光は、凸レンズ26、シリンドリカルレンズ27を透過した後、4分割フォトディテクタ28によって検出される。この4分割フォトディテクタの出力に基づいてアドレス信号、フォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号が生成さる。
【0031】
図9は、4分割フォトディテクタ28の出力に基づいて、フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を検出するための回路を示すブロック図である。この検出回路は、フォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、および再生信号RFを生成する。
【0032】
フォーカスエラー信号FEは、4分割フォトディテクタ28の対角の受光部28a、28dの各出力を加算する加算器33と、4分割フォトディテクタ28の対角の受光部28b、28cの各出力を加算する加算器34と、加算器33の出力と加算器34の出力との差を演算して、非点収差法によるフォーカスエラー信号FEを生成する減算器35とを用いて生成される。
【0033】
トラッキングエラー信号TEは、4分割フォトディテクタのトラック方向に沿って隣り合う受光部28a、28bの各出力を加算する加算器36と、4分割フォトディテクタのトラック方向に沿って隣り合う受光部28c、28dの各出力を加算する加算器37と、加算器36の出力と加算器37の出力との差を演算して、プッシュプル法によるトラッキングエラー信号TEを生成する減算器38とを用いて生成される。
【0034】
再生信号RFは、加算器36の出力と加算器37の出力とを加算して再生信号RFを生成する加算器39を用いて生成される。なお、本実施形態では、再生信号RFは光記録媒体1の反射層5上に予め記録された情報を再生することにより得られる信号である。
【0035】
光記録再生装置と光記録媒体との位置ずれ補正は、上述のように4分割フォトディテクタ28より得られたフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TEがそれぞれ0になるように図6に示したボイスコイルモータ17を用いて対物レンズ19を駆動することにより行う。
【0036】
次に、基準波長からのずれを検出する方法の一例について説明する。波長ずれの検出時には、図6に示した反射型空間光検出器11の画素をすべてONにし均一な光束が光記録媒体1に照射されるようにすることが望ましい。光源装置8から出射された光は、記録再生時と同様にビームエキスパンダ9、ミラー10、反射型空間光変調器11、結像レンズ12、13、偏光ビームスプリッタ14、旋光用光学素子15、ダイクロイックプリズム16、対物レンズ7を経て光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。
【0037】
図2に示したように、光記録媒体1の反射層5の表面には、回折格子状の波長基準マーク40が設けられている。波長基準マーク40の領域は光記録媒体1における情報記録領域とは異なる。波長基準マーク40に光源装置8からの光が入射すると、図10に示した反射光41に加えて回折光42、43が現れる。本発明の実施形態においては、この回折光を用いて基準波長からのずれの検出を行う。図6に示すように、波長基準マーク40からの反射光41、回折光42、43は再び対物レンズ7、ダイクロイックプリズム16を透過し、旋光用光学素子15を透過する際に入射光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ14によって反射される。偏光ビームスプリッタ14によって反射された反射光41、回折光42、43の一部はビームスプリッタ18を透過した後、の上に投影される。
【0038】
図11(a)、(b)、(c)に分割フォトディテクタ30上での反射光41、回折光42、43の状態を示す。光源装置8の波長が基準波長と一致している場合には図11(b)の状態、光源装置8の波長が短波長側にずれた場合には図11(a)の状態、長波長側にずれた場合は図11(c)の状態になる。
【0039】
図12は、分割フォトディテクタ30の出力に基づいて、波長エラー信号を検出するための回路を示すブロック図である。分割フォトディテクタ30は図12に示すように短冊状に4分割されている。この検出回路は、分割フォトディテクタ30の外側の受光部30a、30dの各出力を加算する加算器44と、分割フォトディテクタ30の内側の受光部30b、30cの各出力を加算する加算器45と、加算器44の出力と加算器45の出力を減算する減算器46と、減算器46の出力にオフセットを与えるオフセット回路47とを備えている。また、この検出回路では、回折光42、43が分割フォトディテクタ30に対して左右対称に入射した時点で基準波長検出をする必要がある。このため、分割フォトディテクタ30における半分の受光部30a、30bの各出力を加算する加算器48と、残り半分の受光部30c、30dの各出力を加算する加算器49と、加算器48の出力と加算器49の出力の差を演算して検出タイミング信号TMを生成する減算器50とを備えている。そして、検出タイミング信号TMが0になった時点でのオフセット回路47からの出力を波長エラー信号WEとして用いる。なお、2次元光検出器20を仮想的な分割フォトディテクタとして、その出力を用いて同様に波長エラー信号を得ることもできる。
【0040】
次に、図12に示した分割フォトディテクタ30によって得られる波長エラー信号について説明する。図13に、波長エラー検出回路における減算器46からの出力と記録光の基準波長からのズレとの関係を示す。減算器46からの出力は加算器45の出力から加算器44の出力を減算したものである。このように減算器46からは、基準波長に対しても出力があるため、図12に示すオフセット回路47によってオフセットをかけたものを波長エラー信号とし、この波長エラー信号の出力が0になるように光源装置にフィードバックをかけ記録波長の制御を行う。
【0041】
次に、波長基準マークの周期について説明する。本発明の実施形態においては、波長基準マークとしての回折格子は対物レンズの焦点に配されている。このため、図14に示すように、回折格子に垂直方向から平面波が入射するというモデルを適用できる。この図は、空気(屈折率n0)から屈折率nの媒体中にある周期dを持つ回折格子に垂直方向から波長λの平面波が入射した状態を示している。2つの回折格子で回折された光の媒体中での光路長差はn*d*sin(θ)で表され、1次回折光の回折条件はn*d*sin(θ)=λとなる。媒体中での回折角度をθ、空気中での回折角度をθ0とすると、スネルの屈折の法則より、n*sin(θ)=n0*sin(θ0)となる。よって、n*d*sin(θ)=n0*d*sin(θ0)=λとなる。したがって、空気の屈折率n0を1とすると、空気中での回折角度θ0は下記式(1)で表される。
【0042】
sin(θ0)=λ/d …(1)。
【0043】
上記のように1次回折光の回折角度がθ0で、対物レンズと焦点の距離がLであるとき、光記録媒体がLに比較して薄い場合、図15に示すように、対物レンズの位置において反射光の光軸と回折光の光軸との間にずれaが生じる。この光軸のずれaは、下記式(2)で近似できる。
【0044】
a=L*tan(θ0) …(2)。
【0045】
ここで、対物レンズの空気中での開口数をNA、対物レンズの直径をφとすると、対物レンズから焦点までの距離は下記式(3)で近似できる。
【0046】
NA=sin{tan-1(φ/2L)}≒φ/2L、
L=φ/2NA …(3)。
【0047】
次に、sin(θ0)≒tan(θ0)と近似すると、式(1)、(2)、(3)より、下記式(4)の関係式が得られる。
【0048】
d=λ*φ/(2NA*a) …(4)
これは、波長、対物レンズの直径、開口数が与えられたときの、波長基準マーク40の周期dと分割フォトディテクタ30上での反射光と回折光のずれaとの関係を表す式である。図11(b)に示したような回折光が重なることなく接している場合は図15においてa=φ/2であり、この時の波長基準マークの周期は式(4)よりd=λ/NAである。
【0049】
ここで、波長のずれを検出するのに適した波長基準マークの周期について考える。図12に示したような短冊状に4等分された分割フォトディテクタを用いた場合の、反射光と回折光の位置関係を図16に示す。図16(a)は、a=φ/4であり、かつ反射光と回折光のずれが小さい場合を示している。ずれaがφ/4より小さいと、分割フォトディテクタ30のどの受光部でも回折光が検出されるので、回折光と反射光を区別するのが困難になる。図16(b)は、a=3φ/4であり、かつ反射光と回折光のずれが大きい場合を示している。ずれaが3φ/4より大きいと、分割フォトディテクタ30の端部の受光部で回折光が検出されなくなるおそれがある。したがって、φ/4≦a≦3φ/4であることが望ましい。これを式(4)に代入すると、波長基準マークの周期dの範囲は、2λ/3NA≦d≦2λ/NAとなる。この式を満たすdが、本発明の実施形態において波長のずれを検出するのに適した波長基準マークの周期である。典型的な値としてλ=405nm、NA=0.5とすると、dの範囲は135nm≦d≦405nmとなる。
【0050】
以上においては、図10に示した回折格子状の波長基準マーク40と、図12に示した短冊状の分割フォトディテクタ30を用いる方法について説明したが、波長基準マークや分割フォトディテクタの構造は特に限定されない。波長基準マークは回折光が生じるような周期構造をもったものであればよい。分割フォトディテクタは、生じる回折光の方向に応じて異なる分割方向や複数の分割方向を持ったものであってもよい。
【0051】
次に、波長制御機能を備えた光源装置8の一例について説明する。図17は光源装置8として用いることのできる外部共振器付き半導体レーザの概略図である。51は発振中心波長405nmの窒化ガリウム系の半導体レーザである。半導体レーザから出射されたレーザ光52はコリメートレンズ53によって平行光束とされた後、回折格子54に入射する。レーザ光52のうち回折格子54によって反射された0次回折光55は光源装置8からの出力として用いられる。一方、回折格子54によって回折された1次回折光56はミラー57に入射する。ミラー57は紙面に対する垂線を軸としてその角度を変えることのできるマウント58に保持されており、その角度は圧電素子59に印加する電圧により制御することができる。1次回折光56のミラー57からの反射光60は回折格子54、コリメートレンズ53を介して半導体レーザ51にフィードバックされる。この場合、半導体レーザ51−コリメートレンズ53−回折格子54−ミラー57により外部共振器が形成され、ミラー57の角度を制御することによって出力光55の波長を制御することができる。
【0052】
図18(a)および(b)は、それぞれ記録時および再生時におけるシーケンスを示すフローチャートである。
図18(a)に示すように、記録を開始すると(S1)、まず波長基準マークを読み込み(S2)、波長ずれを検出する(S3)。波長ずれがなければデータを記録する(S4)。一方、波長ずれを検出し(S3)、波長ずれが大きければ波長を変更し(S5)、再び波長基準マークを読み込み(S2)、波長ずれを検出し(S3)、波長ずれがなくなればデータを記録する(S4)。その後、記録終了(S6)を判断する。
【0053】
図18(b)に示すように、再生を開始すると(S11)、まず波長基準マークを読み込み(S12)、波長ずれを検出する(S13)。波長ずれがなければデータを再生する(S14)。一方、波長ずれを検出し(S13)、波長ずれが大きければ波長を変更し(S15)、再び波長基準マークを読み込み(S12)、波長ずれを検出し(S13)、波長ずれがなくなればデータを再生する(S14)。その後、再生終了(S16)を判断する。
【0054】
このように本発明の実施形態では、データの記録前、データの再生前に波長基準マークにより光源の基準波長からのずれを検出して波長制御を行う。
【0055】
図19を参照して本発明の実施形態に係る光記録再生装置の構成について説明する。光記録再生装置は光記録媒体1が取り付けられるスピンドル62と、このスピンドルを回転させるスピンドルモータ63と、光記録媒体の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータを制御するスピンドルサーボ回路64とを備えている。なお、スピンドルモータ63の代わりにステッピングモータを用いてもよい。
【0056】
光記録再生装置は、光記録媒体1に対して情報光と記録用参照光とを照射して情報を記録するとともに、光記録媒体1に対して再生用参照光を照射して再生光を検出し光記録媒体1に記録されている情報を再生するためのピックアップ61と、波長制御が可能な光源装置66と、このピックアップ61と光源装置66を光記録媒体1の半径方向に移動可能とする駆動装置65とを備えている。
【0057】
光記録再生装置は、ピックアップ61の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、波長エラー信号WE、および再生信号RFを検出するための検出回路67と、この検出回路67によって検出されるフォーカスエラー信号FEに基づいて、ピックアップ61内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体1の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路68と、検出回路67によって検出されるトラッキングエラー信号TEに基づいてピックアップ61内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体1の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路69と、トラッキングエラー信号TEおよび後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置65を制御してピックアップ61を光記録媒体1の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路70と、検出回路67によって検出される波長エラー信号WEに基づいて光源装置66内の波長選択装置を駆動して波長制御を行う波長制御回路71を備えている。
【0058】
光記録再生装置は、ピックアップ61内の2次元光検出器の出力データをデコードして、光記録媒体1の情報記録領域に記録されたデータを再生したり、検出回路67からの再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路72と、光記録再生装置の全体を制御するコントローラ73と、このコントローラに対して種々の指示を与える操作部74とを備えている。コントローラ73は、信号処理回路72より出力される基本クロックやアドレス情報を入力するとともに、ピックアップ61、スピンドルサーボ回路64、スライドサーボ回路70、波長制御回路71などを制御するようになっている。スピンドルサーボ回路64は、信号処理回路72より出力される基本クロックを入力するようになっている。コントローラ73は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)およびRAM(ランダム・アクセス・メモリ)を含み、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することによって、その機能を実現する。
【0059】
なお、本発明の実施形態においては、以下のような種々の変形例を採用することができる。たとえば、空間光変調器にデジタルミラーデバイスではなく、反射型液晶素子や反射型磁気光学素子を用いてもよい。光記録媒体1としてダイクロイック反射層を有するものを用いてもよい(既述の非特許文献1参照)。一方、光記録媒体1として透過型光記録媒体を用いてもよい。また、光記録再生装置における情報光と参照光の干渉方法は、同軸干渉法であっても二光束干渉法であってもよい。以下、これらの変形例について説明する。
【0060】
反射型液晶素子や反射型磁気光学素子のように、素子に対して垂直に光を入射し、偏光方向を変えることによって光を変調する反射型空間光変調器を適用した光記録再生装置について説明する。図20は偏光方向を変えることによって光を変調する反射型空間光変調器を用いた光記録再生装置の概略図である。
【0061】
図20に示した光記録再生装置の基本的な構成は、図6に示した反射型同軸干渉法による装置とほぼ同じである。光源装置8としては波長制御機能を持つレーザが望ましい。ビームエキスパンダ9は光源装置8の出射光を拡張、平行光束に整形する。整形された光は偏光ビームスプリッタ14に入射する。光源装置8から出た光は予め偏光ビームスプリッタ14を透過するように偏光方向が調整されており、偏光ビームスプリッタ14を透過した記録光は反射型空間光変調器11に照射される。反射型空間光変調器11は格子状に2次元に配置された複数の画素を有し、画素ごとに反射光の偏光方向を変えることにより、2次元パターンとして情報を付与した情報光と、空間的に変調された参照光を同時に生成できる。反射型空間光変調器11には図7に示すような変調模様が表示されており、光軸の中心付近を情報光領域31、周辺部分を参照光領域32として用いる。
【0062】
反射型空間光変調器11によって変調された記録光(情報光および参照光)は入射時とは異なった偏光成分を有するため、偏光ビームスプリッタ14によって反射された後、旋光用光学素子15を透過し、ダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16は記録光の波長を透過するように設計されている。ダイクロイックプリズム16を透過した記録光は結像レンズ12、13を介した後、対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。このように、光軸の中心部を情報光、周辺部を参照光とする記録光が光記録媒体1に照射されることにより、光記録層3の内部で情報光と参照光が干渉し、光記録媒体1にホログラム6が形成される。
【0063】
記録された情報を再生するには、図8に示すように参照光領域32を反射型空間光変調器11に表示し、記録時と同様に光記録媒体1に参照光として照射する。図8に示した参照光領域32は、図7に示した周辺部の参照光領域32と同一の変調模様を示す。参照光の一部は光記録媒体1を透過する際にホログラム6により回折され再生光となる。再生光は反射層5によって反射された後、対物レンズ7、結像レンズ13、12、ダイクロイックプリズム16を透過し、旋光用光学素子15を透過する際に参照光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ14を透過する。なお、偏光ビームスプリッタ14での再生光の透過率が最も高くなるように旋光用光学素子15の回転角度が調節されていることが望ましい。偏光ビームスプリッタ14を透過した再生光の大半はビームスプリッタ18によって反射された後、結像レンズ19により2次元光検出器20上に再生像として結像される。また、ホログラム6により回折されなかった参照光は透過光となって再生光と同様に2次元光検出器20上に結像するが、中心部が再生光、周辺部が透過光となるので、空間的に容易に分離することができる。なお、再生信号のSN比を良くするために、光検出器20の前にアイリス21を配して参照光部分を遮ってもよい。図20の装置におけるサーボの方法は、図6の装置に関して説明した方法と同じである。
【0064】
次に、図20に示す装置を用いた場合の基準波長からのずれの検出方法について説明する。波長ずれの検出時には図20に示した反射型空間光検出器11の画素をすべてONにし均一な光束が光記録媒体1に照射されるようにすることが望ましい。光源装置8から出射された光は、記録再生時と同様にビームエキスパンダ9、偏光ビームスプリッタ14、反射型空間光変調器11、旋光用光学素子15、ダイクロイックプリズム16、結像レンズ12、13、対物レンズ7を経て光記録媒体1の反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。
【0065】
光記録媒体1の反射層5の表面には図2に示すような回折格子状の波長基準マーク40が設けられており、波長基準マーク40からの反射光41、回折光42、43は再び対物レンズ7、結像レンズ13、12、ダイクロイックプリズム16を透過し、旋光用光学素子15を透過する際に参照光とは異なる偏光成分を含むようになり、偏光ビームスプリッタ14を透過する。偏光ビームスプリッタ14を透過した反射光41、回折光42、43の一部はビームスプリッタ18を透過した後、レンズ29により分割フォトディテクタ30の上に投影され、分割フォトディテクタ30により波長エラー信号が得られる。なお、2次元光検出器20を仮想的な分割フォトディテクタとして、その出力を用いて同様に波長エラー信号を得ることもできる。
【0066】
次に、ダイクロイック反射層を有する光記録媒体について説明する。図21に反射型同軸干渉法に用いられるダイクロイック反射層を有する光記録媒体1の斜視図を示す。光記録媒体1は、図1に示した光記録媒体に加えてダイクロイック反射層77およびギャップ層78を備えている。ダイクロイック反射層77は、光源装置8から出射された記録光を反射し、サーボ用光源装置23から出射されたサーボ光を透過する性質をもっており、誘電体多層膜などからなっている。誘電体多層膜を形成する材料としてはSiO2、TiO2、NbO3、CaF2などを用いることができる。ギャップ層78は、記録光が集光され、光強度が非常に強くなっている領域でのホログラムの記録を避ける機能を有するが、必ずしも設けなくてもよい。ギャップ層78の材料は、記録光を透過し、光記録層3の記録材料と相溶しないものであればよく、ガラスやポリカーボネートなどが挙げられる。
【0067】
ホログラム記録時、記録光は対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1のダイクロイック反射層77の表面でそのビーム径が最小になるように集光され、光記録層3の中にホログラム6を形成する。一方、サーボ光はダイクロイック反射層77を透過し反射層5の表面でそのビーム径が最小になるように集光される。記録光とサーボ光の集光位置を異ならせるには、色収差のある対物レンズを用いる、サーボ用光源装置22とコリメートレンズ23の間隔を広げる、旋光用光学素子25とダイクロイックプリズム16の間に補正用の凹レンズを挿入する、などの方法を用いることができる。
【0068】
図22に、図21に示したダイクロイック反射層を有する反射型光記録媒体の断面図を示す。波長基準マーク40は透明基板4のダイクロイック反射層77との界面に設けられており、記録光波長に応じた回折光を記録光入射側方向に出射する構造となっている。
【0069】
図23に、図21に示したダイクロイック反射層を有する反射型光記録媒体の別の断面図を示す。波長基準マーク40は透明基板4の反射層5との界面に設けられており、波長基準マーク40の上部はダイクロイック反射層77が欠落した構造になっている。これにより記録光を波長基準マーク40上に集光することができる。
【0070】
次に、透過型同軸干渉法に本発明を適用した例について説明する。図24に透過型同軸干渉法に用いられる光記録媒体の斜視図を示す。図24に示した透過型同軸干渉法に用いられるディスク状に形成された光記録媒体1は、図1に示した光記録媒体1から反射層5を取り除いた構造を有する。図25に、図24に示した透過型光記録媒体の断面図を示す。波長基準マーク40は透明基板4の外側界面に設けられており、記録光波長に応じた回折光を記録光透過側方向に出射する構造となっている。
【0071】
図26に透過型同軸干渉法を用いた光記録再生装置の概略図を示す。図26に示した光記録再生装置の基本的の構成は、図6に示した反射型同軸干渉法による装置とほぼ同じである。光源装置8としては波長制御機能を持つレーザが望ましい。ビームエキスパンダ9は光源装置8の出射光を拡張、平行光束に整形する。整形された光はミラー10により反射型空間光変調器11に照射される。反射型空間光変調器11は格子状に2次元に配置された複数の画素を有し、画素ごとに反射光の方向を変えるか、または画素ごとに反射光の偏光方向を変えることにより、2次元パターンとして情報を付与した情報光と、空間的に変調された参照光を同時に生成できる。図26は反射型空間光変調器11としてデジタルミラーデバイスを用いた例である。反射型空間光変調器11には図7に示すような変調模様が表示されており、光軸の中心付近を情報光領域31、周辺部分を参照光領域32として用いる。
【0072】
反射型空間光変調器11によって反射された記録光(情報光および参照光)は結像レンズ12、13を介してダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16は記録光の波長を透過するように設計されている。ダイクロイックプリズム16を透過した光は対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の透明基板4の外側界面でそのビーム径が最小になるように集光する。このように、光軸の中心部を情報光、周辺部を参照光とする記録光が光記録媒体1に照射されることにより、光記録層3の内部で情報光と参照光が干渉し、光記録媒体1にホログラム6が形成される。
【0073】
記録された情報を再生するには、図8に示すように参照光領域32を反射型空間光変調器11に表示し、記録時と同様に光記録媒体1に参照光として照射する。図8に示した参照光領域32は、図7に示した周辺部の参照光領域32と同一の変調模様を示す。参照光の一部は光記録媒体1を透過する際にホログラム6により回折され再生光となる。再生光は光記録媒体1を透過する形で出射され、ピックアップレンズ75を透過し、ビームスプリッタ18に入射する。ビームスプリッタ18に入射した再生光の大半は反射された後、結像レンズ19により2次元光検出器20上に再生像として結像される。また、ホログラム6により回折されなかった参照光は透過光となって再生光と同様に2次元光検出器20上に結像するが、中心部が再生光、周辺部が透過光となるので、空間的に容易に分離することができる。なお、再生信号のSN比を良くするために、光検出器20の前にアイリス21を配して参照光部分を遮ってもよい。
【0074】
図26の装置におけるサーボの方法は、サーボ光の一部が透明基板4の外側界面で反射され、その際、透明基板4の外側面上に形成されたピットによって変調される面を除いて、図6の装置に関して説明した方法と同じである。また、4分割フォトディテクタ28より得られるフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号を用いてボイスコイルモータ76を駆動してピックアップレンズ75の位置調整を行うこともできる。
【0075】
次に、図26の装置を用いた場合の基準波長からのずれを検出方法について説明する。波長ずれの検出時には図26に示した反射型空間光検出器11の画素をすべてONにし均一な光束が光記録媒体1に照射されるようにすることが望ましい。光源装置8から出射された光は、記録再生時と同様にビームエキスパンダ9、ミラー10、反射型空間光変調器11、結像レンズ12、13、偏光ビームスプリッタ14、旋光用光学素子15、ダイクロイックプリズム16、対物レンズ7を経て光記録媒体1の透明基板4の外側界面でそのビーム径が最小になるように集光される。
【0076】
図25に示すように、光記録媒体1の透明基板4の外側界面には、回折格子状の波長基準マーク40が設けられている。波長基準マーク40に光源装置8からの光が入射すると、透過光に加えて回折光が現れる。波長基準マーク40からの透過光、回折光は再びピックアップレンズ75を透過し、さらにその一部はビームスプリッタ18を透過した後、レンズ29により分割フォトディテクタ30の上に投影され、分割フォトディテクタ30により波長エラー信号が得られる。なお、2次元光検出器20を仮想的な分割フォトディテクタとして、その出力を用いて同様に波長エラー信号を得ることもできる。
【0077】
次に、透過型2光束干渉法に本発明を適用した例について説明する。光記録媒体には図24、図25に示した透過型媒体と同様の構造を有するものを用いることができる。図27に透過型2光束干渉法を用いた光記録再生装置の一例を示す。光源装置8としては波長制御機能を持つレーザが望ましい。光源装置8から出射した光は、まず旋光用光学素子79と偏光ビームスプリッタ80によって2つのビームに分割される。旋光用光学素子79としては1/2波長板や1/4波長板などを用いることができる。偏光ビームスプリッタ80を透過したビームは情報光として用いられる。情報光はビームエキスパンダ9によって拡張、平行光束とされた後、ミラー10により反射型空間光変調器11に照射される。反射型空間光変調器11は格子状に2次元に配置された複数の画素を有し、画素ごとに反射光の方向を変えるか、または画素ごとに反射光の偏光方向を変えることにより、2次元パターンとして情報を付与した情報光を生成できるようになっている。図27は反射型空間光変調器11としてデジタルミラーデバイスを用いた例である。反射型空間光変調器11によって生成された情報光はダイクロイックプリズム16に入射する。ダイクロイックプリズム16は記録光の波長を透過するように設計されている。ダイクロイックプリズム16を透過した光は対物レンズ7によって光記録媒体1に照射され、光記録媒体1の透明基板4の外側界面でそのビーム径が最小になるように集光する。一方、偏光ビームスプリッタ80によって反射されたビームは参照光として用いられる。参照光は旋光用光学素子81によって記録光と干渉し得る偏光成分を有する光とされる。旋光用光学素子81としては主に1/2波長板を用いることができる。旋光用光学素子81を透過した参照光は、ガルバノミラー82、リレーレンズ83、84によって、入射角度を変えて光記録媒体1の光記録層3の同一スポットに照射されるようになっている。このように情報光と参照光が光記録媒体1に照射されることにより、光記録層3の内部にホログラムが形成される。また記録時の参照光の入射角度を変えることにより、ホログラムの角度多重記録も可能である。
【0078】
記録された情報を再生するには、記録されたホログラムに対して、記録時と同じ入射角度で参照光を照射する。参照光の一部は光記録媒体1を透過する際、記録されたホログラムにより回折され情報光を再現する再生光となる。再生光は光記録媒体1を透過する形で出射され、ピックアップレンズ75を透過し、ビームスプリッタ18に入射する。ビームスプリッタ18に入射した再生光の大半は反射された後、2次元光検出器20上に再生像として結像される。図27の光記録再生装置は、図26の光記録再生装置と同様に、透明基板4の外側界面で反射されたサーボ光を用いて位置決めを行う。透過型2光束干渉法の場合、ホログラムの記録中、情報光と参照光の位置関係を固定する必要があるため、同軸干渉法で用いた、対物レンズ7を駆動するサーボは行わず、4分割フォトディテクタ28より得られるフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号に基づいて光記録媒体1を微動するか、または図27に示す光記録媒体1以外の光学部品すべてをユニット化して微動することにより位置決めを行う。
【0079】
記録光の基準波長からのずれを検出方法は透過型同軸干渉法で説明した方法とほぼ同じである。反射型空間光検出器11の画素をすべてONにし均一な光束が光記録媒体1に照射されるようにした状態で、波長基準マーク40からの回折光を分割フォトディテクタ30によって検出し波長エラー信号を得る。なお、2次元光検出器20を仮想的な分割フォトディテクタとして、その出力を用いて同様に波長エラー信号を得ることもできる。また、参照光のみを波長基準マーク40に照射し、そこからの回折光の角度を2次元光検出器20により検出することにより、基準波長からのズレを検出することもできる。
【0080】
以上のように、本発明の実施形態によれば、環境による記録再生波長の変動や、装置間の記録再生波長のばらつきに強く、可搬性や装置間の互換性に優れたホログラム型光記録再生装置および再生方法が提供される。
【実施例】
【0081】
<光記録媒体の準備>
本実施例では、以下の方法により図1に示す反射型光記録媒体1を準備した。
(透明基板の作製)
まず、以下のようにしてディスク原版を作製した。ディスク状のガラス基板上に電子線レジストをスピンコートにより塗布した。電子線描画装置を用いて、電子線レジストに、トラックのパターンと、波長基準マークのパターンを描画した。トラックは同心円をなし、波長基準マークはディスク上において角度π/4おきに4つの領域に設けられ、トラックに直交する方向に延びている。波長基準マークが設けられている各領域のトラックに沿う長さは50μmである。電子線描画後、現像工程、ニッケルスパッタ工程、ニッケルメッキ工程を経てディスク原版を得た。次に、得られたディスク原版を用いてポリカーボネートの射出成形を行い、本実施例に用いる図1に示した透明基板4を得た。原子間力顕微鏡によって観察したところトラックピッチは400nm、波長基準マークの周期は800nmであった。図1の反射層5としてスパッタにより厚さ200nmのアルミニウム層を形成した。
【0082】
(光記録層材料の調製)
まず、ビニルカルバゾール3.86gとビニルピロリドン2.22gとを混合し、次いで、イルガキュア784(チバスペシャルティケミカルズ社製)0.1gを加えて攪拌した。すべてが溶解した後、パーブチルH(日本油脂製)0.04gを混合してモノマー溶液Aを調製した。次に、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル10.1gとジエチレントリアミン3.6gを混合してエポキシ溶液Bを調製した。Aのモノマー溶液1.5mlとBのエポキシ溶液8.5mlを混合、脱泡して光記録層材料の前駆体を調製した。
【0083】
(光記録媒体の作製)
上記透明基板の反射層と反対側の主面上円周部にフッ素樹脂からなる厚さ250μmのスペーサを載置し、その間に光記録層材料の前駆体である混合溶液をキャストした。キャスト後、別途準備したディスク状ポリカーボネート基板を対向配置し、さらに一様に圧力を加えることにより、上記混合溶液を厚さ250μmにまで延伸した。最後に、50℃で10時間加熱して厚さ250μmの光記録層をもつディスク状の光記録媒体1を作製した。本実施例で作製した光記録媒体1では上部ポリカーボネート基板を保護層2として用いた。なお、本実施例では一連の作業は、光記録層3が感光しないように、波長600nmより短波長の光を遮光した室内で行った。
【0084】
<光記録再生装置の作製>
まず、光記録再生装置として、図6に示す構成の光記録再生装置を2台作製した。対物レンズ7は開口数NAが0.5であるものを用いた。これらを光記録再生装置A、光記録再生装置Bとする。光源装置8として窒化ガリウム系の半導体レーザ素子を用い、図17に示した外部共振器構造を作製した(発振波長403nm−405nm)。サーボ用光源装置22として直線偏光した半導体レーザ(波長650nm)を用いた。反射型空間光変調器11してデジタルミラーデバイスを用い、2次元光検出器20としてCCDアレイを用いた。旋光用光学素子15として波長405nm用の1/4波長板、旋光用光学素子25として波長650nm用の1/4波長板を用いた。旋光用光学素子15として用いた1/4波長板は、2次元光検出器20上で再生光の強度が最も大きくなるようにその方位を調整した。同様に、旋光用光学素子25として用いた1/4波長板も4分割フォトディテクタ28上で光強度が最も強くなるようにその方位を調整した。
【0085】
<試験1>
(情報の記録)
上記の方法で作製した光記録媒体1を光記録再生装置Aに搭載して、実際に情報の記録を行った。光記録媒体1はスピンドルモータに固定されており、1rpmの回転数で光記録媒体1を回転させ、光記録媒体に対するサーボおよび波長基準マーク40に基づく波長補正を行いながら、アドレス信号に同期してレーザを点灯させホログラムの記録を行った。光記録媒体1表面での光強度は0.1mW、光記録層3の上面でのレーザビームのスポットサイズは400μm径であった。デジタルミラーデバイス11上の画素として400×400の160000画素の領域を用い、そのうち情報光領域として中心部の144×144の領域を用い、隣接する4×4の16画素を1シンボルとし、16画素中の3画素を明点とする16:3変調方法を用いた。位置合わせマークのための領域を除いた情報光領域内のシンボルの数は1120シンボルであった。
【0086】
(情報の再生)
上記の方法により情報が記録された光記録媒体1を光記録再生装置Aのスピンドルモータから取り外した。この光記録媒体1を再び光記録再生装置Aのスピンドルモータに固定し、1rpmの回転数で光記録媒体1を回転させ、光記録媒体に対するサーボおよび波長基準マークに基づく波長補正を行いながら、アドレス信号に同期してレーザを点灯させ2次元光検出器(CCDアレイ)20によってホログラムの再生を行った。再生の際には、図8に示したように、参照光領域32のみをデジタルミラーデバイス上に表示し参照光とした。光記録媒体1表面での光強度は0.05mWであった。
【0087】
(情報の判別)
試験1における記録再生性能を以下のような方法により評価した。すなわち、2次元光検出器(CCDアレイ)20で得られた情報光領域にある各1120シンボルに対して、位置合わせマークを用いて画像処理を行った後、明点、暗点の判別を行い、出力パターンを認識し、デジタルミラーデバイス11に入力したパターンと比較した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120シンボル中、0シンボルであった。
【0088】
<試験2>
試験1で記録された光記録媒体1を再び光記録再生装置Aのスピンドルモータに固定し、波長基準マークに基づく波長補正を行わずにホログラムの再生を行った。
【0089】
試験2における記録再生性能を試験1と同様の方法により評価した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120シンボル中、5シンボルであった。
【0090】
<試験3>
試験1で記録された光記録媒体1を、記録時とは異なる光記録再生装置Bのスピンドルモータに固定し、1rpmの回転数で光記録媒体1を回転させ、試験1と同様に光記録媒体に対するサーボおよび波長基準マークに基づく波長補正を行いながら、アドレス信号に同期してレーザを点灯させ2次元光検出器20によってホログラムの再生を行った。
【0091】
試験3における記録再生性能を試験1と同様の方法により評価した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120シンボル中、1シンボルであった。
【0092】
<試験4>
試験1で記録された光記録媒体1を再び光記録再生装置Aのスピンドルモータに固定し、波長基準マークに基づく波長補正を行わずにホログラムの再生を行った。
【0093】
試験4における記録再生性能を試験1と同様の方法により評価した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120パネル中、24シンボルであった。
【0094】
<試験5>
上記と同一の光記録媒体および光記録再生装置Aを用い、試験1とは異なり波長基準マークに基づく波長補正を行わず、その他の記録条件を試験1と同一に設定して、光記録媒体に対してサーボを行いながら、アドレス信号に同期してホログラムの記録を行った。
【0095】
上記の方法により情報が記録された光記録媒体1を光記録再生装置Aのスピンドルモータから取り外した。この光記録媒体1を再び光記録再生装置Aのスピンドルモータに固定し、1rpmの回転数で光記録媒体1を回転させ、光記録媒体1に対するサーボを行いながら、波長基準マークでの波長補正を行わずに、アドレス信号に同期してレーザを点灯させホログラムの再生を行った。
【0096】
試験5における記録再生性能を試験1と同様の方法により評価した。その結果、判別エラーとなったシンボルは1120パネル中、8シンボルであった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク状の光記録媒体とその近傍に位置する光学系を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係る光記録媒体に設けられた波長基準マークを示す断面図。
【図3】本発明の一実施形態に係る光記録媒体に設けられた波長基準マークとガイドとの関係を示す斜視図。
【図4】図1のディスク状の光記録媒体に設けられた波長基準マークとガイドとの関係を示す平面図。
【図5】カード状の光記録媒体に設けられた波長基準マークとガイドとの関係を示す平面図。
【図6】本発明の一実施形態に係る光記録再生装置の概略図。
【図7】反射型空間光変調器に表示される記録光(情報光および参照光)に相当する変調模様を示す平面図。
【図8】反射型空間光変調器に表示される再生光(参照光)に相当する変調模様を示す平面図。
【図9】フォーカスエラー信号およびトラッキングエラー信号を検出するための回路を示すブロック図。
【図10】波長基準マークに光が入射したときに現れる反射光および回折光を示す斜視図。
【図11】分割フォトディテクタ上での反射光および回折光の状態を示す模式図。
【図12】波長エラー信号を検出するための回路を示すブロック図。
【図13】波長エラー検出回路における減算器46からの出力と記録光の基準波長からのズレとの関係を示す図。
【図14】回折格子に垂直方向から平面波が入射している状態を示す模式図。
【図15】対物レンズの位置における反射光の光軸と回折光の光軸との間にずれを示す模式図。
【図16】分割フォトディテクタにおける反射光と回折光の位置関係を示す模式図。
【図17】外部共振器付き半導体レーザの概略図。
【図18】記録時および再生時におけるシーケンスを示すフローチャート。
【図19】本発明に実施形態に係る光記録再生装置の構成図。
【図20】偏光方向を変えることによって光を変調する反射型空間光変調器を用いた光記録再生装置の概略図。
【図21】ダイクロイック反射層を有する光記録媒体の斜視図。
【図22】図21の光記録媒体の断面図。
【図23】図21の光記録媒体の別の断面図。
【図24】透過型同軸干渉法に用いられる光記録媒体の斜視図。
【図25】図24の光記録媒体の断面図。
【図26】透過型同軸干渉法を用いた光記録再生装置の概略図。
【図27】透過型2光束干渉法を用いた光記録再生装置の概略図。
【符号の説明】
【0098】
1…光記録媒体、2…保護層、3…光記録層、4…透明基板、5…反射層、6…ホログラム、7…対物レンズ、8…光源装置、9…ビームエキスパンダ、10…ミラー、11…反射型空間光変調器、12、13…結像レンズ、14…偏光ビームスプリッタ、15…旋光用光学素子、16…ダイクロイックプリズム、17…ボイスコイルモータ、18…ビームスプリッタ、19…結像レンズ、20…2次元光検出器、21…アイリス、22…サーボ用光源装置、23…コリメートレンズ、24…偏光ビームスプリッタ、25…旋光用光学素子、26…凸レンズ、27…シリンドリカルレンズ、28…4分割フォトディテクタ、29…レンズ、30…分割フォトディテクタ、31…情報光領域、32…参照光領域、33、34…加算器、35…減算器、36、37…加算器、38…減算器、39…加算器、40…波長基準マーク、41…反射光、42、43…回折光、44、45…加算器、46…減算器、47…オフセット回路、48、49…加算器、50…減算器、51…半導体レーザ、52…レーザ光、53…コリメートレンズ、54…回折格子、55…0次回折光、56…1次回折光、57…ミラー、58…マウント、59…圧電素子、60…反射光、61…ピックアップ、62…スピンドル、63…スピンドルモータ、64…スピンドルサーボ回路、65…駆動装置、66…光源装置、67…検出回路、68…フォーカスサーボ回路、69…トラッキングサーボ回路、70…スライドサーボ回路、71…波長制御回路、72…信号処理回路、73…コントローラ、74…操作部、75…ピックアップレンズ、76…ボイスコイルモータ、77…ダイクロイック反射層、78…ギャップ層、79…旋光用光学素子、80…偏光ビームスプリッタ、81…旋光用光学素子、82…ガルバノミラー、83、84…リレーレンズ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホログラフィを利用して光記録媒体に情報を記録する光記録方法であって、
記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、
情報の記録時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、
前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して記録を行うことを特徴とする光記録方法。
【請求項2】
ホログラフィを利用して光記録媒体に記録された情報を再生する光再生方法であって、
記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、
情報の再生時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、
前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して再生を行うことを特徴とする光再生方法。
【請求項3】
ホログラフィを利用して情報を記録する光記録媒体であって、情報記録領域と、記録光および再生光を回折することにより記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークが形成された領域とを有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項4】
透明基板と、前記透明基板の一方の面に形成された光記録層と、前記透明基板の他方の面に形成された反射層とを有し、前記波長基準マークの前記周期構造は凹凸面を有し、前記凹凸面は前記透明基板と前記反射層との界面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項5】
透明基板と、前記透明基板の一方の面に順次形成されたダイクロイック反射層および光記録層と、前記透明基板の他方の面に形成された反射層とを有し、前記波長基準マークの前記周期構造は凹凸面を有し、前記凹凸面は前記ダイクロイック反射層と前記光記録層との間に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項6】
透明基板と、前記透明基板の一方の面に順次形成されたダイクロイック反射層および光記録層と、前記透明基板の他方の面に形成された反射層とを有し、前記波長基準マークの前記周期構造は凹凸面を有し、前記凹凸面は前記透明基板と前記反射層との界面に形成され、前記波長基準マークの上方ではダイクロイック反射層が欠落していることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項7】
透明基板と、前記透明基板の一方の面に形成された光記録層とを有し、前記波長基準マークの前記周期構造は凹凸面を有し、前記凹凸面は前記透明基板の他方の面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記波長基準マークの前記周期構造の周期方向はトラック方向に沿っていることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項9】
前記波長基準マークの周期dが、基準波長をλ、対物レンズの開口数をNAとするとき、2λ/3NA≦d≦2λ/NAの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項10】
情報記録領域と、記録光および再生光を回折することにより記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークが形成された領域とを有する光記録媒体を用い、ホログラフィを利用して情報を記録・再生する光記録再生装置であって、
光源装置と、
前記光源装置から出射される光から情報光および/または参照光を生成する空間光変調器と、
前記光記録媒体の情報記録領域に記録光である情報光と参照光を照射し、前記光記録媒体の情報記録領域に再生光である参照光を照射し、前記光記録媒体の波長基準マークが形成された領域に記録光または再生光を照射する光学系と、
前記光記録媒体の波長基準マークの領域に照射された記録光または再生光の回折光に基づいて、記録の基準波長に対する光源装置の波長のずれを検出する光検出器と、
前記波長のずれを小さくするように前記光源装置の波長を制御する波長制御器と
を具備したことを特徴とする光記録再生装置。
【請求項11】
前記光検出器は、前記光記録媒体の波長基準マークの周期方向と同一方向に沿って複数の部分に分割されていることを特徴とする請求項10に記載の光記録再生装置。
【請求項1】
ホログラフィを利用して光記録媒体に情報を記録する光記録方法であって、
記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、
情報の記録時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、
前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して記録を行うことを特徴とする光記録方法。
【請求項2】
ホログラフィを利用して光記録媒体に記録された情報を再生する光再生方法であって、
記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークを有する光記録媒体を用意し、
情報の再生時に前記波長基準マークに光源から光を照射し、前記波長基準マークからの回折光に基づいて基準波長に対する光源の波長のずれを検出し、
前記波長のずれを小さくするように光源の波長を制御して再生を行うことを特徴とする光再生方法。
【請求項3】
ホログラフィを利用して情報を記録する光記録媒体であって、情報記録領域と、記録光および再生光を回折することにより記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークが形成された領域とを有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項4】
透明基板と、前記透明基板の一方の面に形成された光記録層と、前記透明基板の他方の面に形成された反射層とを有し、前記波長基準マークの前記周期構造は凹凸面を有し、前記凹凸面は前記透明基板と前記反射層との界面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項5】
透明基板と、前記透明基板の一方の面に順次形成されたダイクロイック反射層および光記録層と、前記透明基板の他方の面に形成された反射層とを有し、前記波長基準マークの前記周期構造は凹凸面を有し、前記凹凸面は前記ダイクロイック反射層と前記光記録層との間に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項6】
透明基板と、前記透明基板の一方の面に順次形成されたダイクロイック反射層および光記録層と、前記透明基板の他方の面に形成された反射層とを有し、前記波長基準マークの前記周期構造は凹凸面を有し、前記凹凸面は前記透明基板と前記反射層との界面に形成され、前記波長基準マークの上方ではダイクロイック反射層が欠落していることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項7】
透明基板と、前記透明基板の一方の面に形成された光記録層とを有し、前記波長基準マークの前記周期構造は凹凸面を有し、前記凹凸面は前記透明基板の他方の面に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項8】
前記波長基準マークの前記周期構造の周期方向はトラック方向に沿っていることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項9】
前記波長基準マークの周期dが、基準波長をλ、対物レンズの開口数をNAとするとき、2λ/3NA≦d≦2λ/NAの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項10】
情報記録領域と、記録光および再生光を回折することにより記録の基準波長に関連づけられる、周期構造をもつ波長基準マークが形成された領域とを有する光記録媒体を用い、ホログラフィを利用して情報を記録・再生する光記録再生装置であって、
光源装置と、
前記光源装置から出射される光から情報光および/または参照光を生成する空間光変調器と、
前記光記録媒体の情報記録領域に記録光である情報光と参照光を照射し、前記光記録媒体の情報記録領域に再生光である参照光を照射し、前記光記録媒体の波長基準マークが形成された領域に記録光または再生光を照射する光学系と、
前記光記録媒体の波長基準マークの領域に照射された記録光または再生光の回折光に基づいて、記録の基準波長に対する光源装置の波長のずれを検出する光検出器と、
前記波長のずれを小さくするように前記光源装置の波長を制御する波長制御器と
を具備したことを特徴とする光記録再生装置。
【請求項11】
前記光検出器は、前記光記録媒体の波長基準マークの周期方向と同一方向に沿って複数の部分に分割されていることを特徴とする請求項10に記載の光記録再生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
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【図26】
【図27】
【公開番号】特開2006−215191(P2006−215191A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26605(P2005−26605)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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