説明

光走査装置、およびそれを用いた画像形成装置

【課題】半導体レーザを用いる光走査装置では、偏向器前光学系に、樹脂製の回折面を採用して光学特性を安定させる手法が知られている。樹脂製の回折面を用いても温度変動によるビームスポット径変動や、モードホップによる発振波長の変化によるビームスポット径変動を低減した光走査装置を提供する。
【解決決手段】前記半導体レーザからの光ビームを前記偏向手段に導く第1光学系と、前記偏向手段により偏向された光ビームを被走査面上に集光させて光スポットを形成するための第2光学系と、前記被走査面を前記光ビームが走査するのに先立ち該光ビームを検出する受光手段とを有する光走査装置において、前記第1光学系は、少なくとも副走査方向にパワーを有する1つ以上の樹脂製回折レンズを含み、該樹脂製回折レンズの少なくとも1面は前記光ビームの進行方向に垂直な面に対し、主走査断面内でチルトしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光走査装置は従来から、光プリンタやデジタル複写機、光プロッタ等の画像形成装置に関連して広く知られているが、近時、低価格化とともに環境変動の影響を受け難く、高精細な画像を形成できるものが求められるようになってきている。
【0003】
光走査装置に用いられる各種のレンズを樹脂材料で形成すると、樹脂製レンズは、軽量であり、低コストで形成できるとともに、非球面に代表される特殊な面形状の形成が容易であるため、樹脂製レンズに特殊面を採用することにより、光学的な特性を向上させるとともに、光学系を構成するレンズ枚数を低減させることができる。即ち、樹脂製レンズの採用は、光走査装置のコンパクト化・軽量化・低コスト化に資するところが大きい。しかし反面、良く知られたように、樹脂製レンズは、環境変化、特に温度変化に伴って、形状が変化したり、屈折率が変化したりするので、光学特性、特にパワーが設計値から変化し、被走査面上の光スポットの径である「ビームスポット径」が環境変動により変動する問題がある。
【0004】
温度変化に伴う樹脂製レンズのパワー変動は、正レンズと負レンズとで互いに逆に発生するので、光走査装置の光学系内に、正と負の樹脂製レンズを含め、これら正・負樹脂製レンズにおいて発生する「環境変化に起因する光学特性変化」を互いに相殺させる方法は良く知られている。
【0005】
また、光走査装置の光源として一般的な半導体レーザは、温度が上昇すると発光波長が長波長側へずれるという性質(「温度変化による波長変化」)があり、また「モードホップ」による波長変化もある。光源における波長変化は、光走査装置に用いられる光学系の色収差による特性変化を惹起し、この特性変化もビームスポット径変動の原因となる。
したがって、光学系内に樹脂製レンズを含み、光源に半導体レーザを用いる光走査装置では、温度変化に伴う光学特性の変化とともに、光源における波長変化に伴う光学特性の変化をも考慮した光学設計を行う必要がある。温度変化に伴う光学特性の変化と、光源における波長変化とを考慮し、偏向器前光学系に、回折面を採用して光学特性を安定させた光走査装置(レーザ走査装置)が知られている(例えば特許文献1 参照。)。また、偏向器後に回折面を採用した光走査装置が知られている(例えば特許文献2 参照。)。
【0006】
特許文献1では偏向器前に回折面を用いた光学素子を用いているが、樹脂製回折レンズは以下の理由により、半導体レーザへの戻り光に留意する必要がある。なお、特許文献1では戻り光については言及していない。
・回折面は屈折面に比べ、反射散乱光が大きい。
・樹脂はガラスに比べ、融点が低く、コーティングが困難である。
【0007】
このような反射散乱光が再び半導体レーザに戻ると以下の問題が発生する。
・半導体レーザの共振器に再び同じ光源のビームが入射すると出射光量にばらつきが発生し、画像上で濃度むらが発生する。
・半導体レーザの端面やステム等で再反射したビームが被走査面上に戻り、やはり画像上で濃度むらが発生する。
【0008】
また、走査光学系に回折面を有した例は特許文献2等、多くの例がある。走査光学系に回折面を用いた場合、偏向手段により偏向された後のビームを通過させるので、LDへの戻り光は気にする必要は無いが、形状変化と光源波長の変化が同時に発生する温度変動による主走査の倍率の変化と、波長とび等の光源波長変化のみによる主走査の倍率変化に差異が発生してしまい、多色対応の画像形成装置に光走査装置を搭載した場合、色ずれが大きくなってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上述した事情に鑑み、回折面を用いることにより、温度変動によるビームスポット径変動のみならず、モードホップによる発振波長の変化によるビームスポット径変動をも低減し、より安定したビームスポット径で光走査を行い得る光走査装置において、被走査面に向かう光ビームの光量ばらつきが小さく、なおかつ、副走査ビーム位置変動が小さい光走査装置を提供することを目的とする。
【0010】
さらには、かかる光走査装置を用いる、濃度むらが小さく高画質対応の画像形成装置の実現を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明では、少なくとも1つの半導体レーザと、該半導体レーザからの光ビームを偏向させる偏向手段と、前記半導体レーザからの光ビームを前記偏向手段に導く第1光学系と、前記偏向手段により偏向された光ビームを被走査面上に集光させて光スポットを形成するための第2光学系と、前記被走査面を前記光ビームが走査するのに先立ち該光ビームを検出する受光手段とを有する光走査装置において、前記第1光学系は、少なくとも副走査方向にパワーを有する1つ以上の樹脂製回折レンズを含み、該樹脂製回折レンズの少なくとも1面は前記光ビームの進行方向に垂直な面に対し、主走査断面内でチルトしていることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の光走査装置において、前記第1光学系は、複数の半導体レーザからの光ビームを前記偏向手段に導き、前記樹脂製回折レンズの少なくとも1面は、前記複数の光ビームにそれぞれ垂直な複数の面に対し、主走査断面内で面の光軸がチルトしていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の光走査装置において、前記樹脂製回折レンズの少なくとも1面に対し、前記複数の面のうち少なくとも1組は主走査断面内で互いに逆方向にチルトしていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記樹脂製回折レンズは、入射した光ビームを主走査方向に長い線像に変換する線像形成レンズであって、なおかつ、該線像形成レンズの回折面は主走査方向に平行な溝形状として形成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記光源と、前記第1光学系と、前記第2光学系を複数組有し、それぞれ異なる被走査面に光ビームを導くことを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光走査装置と、前記被走査面としての感光性の像担持体と、該像担持体表面を均一に帯電させる帯電手段と、前記光走査装置によって形成された潜像を可視化する現像手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0017】
請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の画像形成装置において、前記像担持体を複数有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、少なくとも副走査方向にパワーを有する1つ以上の樹脂製回折レンズの少なくとも1面を前記光ビームの進行方向に垂直な面に対し、主走査断面内でチルトさせることにより、半導体レーザへの戻り光を低減でき、なおかつ、被走査面でのビーム位置ずれも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用する画像形成装置の基本構成を示す図である。
【図2】カップリングレンズによる反射光の問題を説明するための模式図である。
【図3】本発明の参考例の構成を説明するための模式図である。
【図4】マルチビーム光源を用いた場合の構成を説明するための図である。
【図5】反射散乱光の不具合を説明するための図である。
【図6】反射散乱光の不具合を解消した本発明の参考例の構成を示す図である。
【図7】本発明に係る入射面と出射面の光軸を互いに傾斜(チルト)させた図である。
【図8】樹脂製回折レンズの構成を説明するための図である。
【図9】多色画像形成装置の基本的な構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は本発明及び本発明の参考例を適用する画像形成装置の基本構成を示す図である。同図において符号1、1’は光源(半導体レーザ)、2、2’はカップリングレンズ(第1レンズ)、3は第1アパーチャ、4はアナモフィックレンズ(第2レンズ)、5は偏向器としてのポリゴンミラー、6は偏向器側走査レンズ、7は像面側走査レンズ、8は防塵ガラス、9は像面、10は防音ガラス、11は同期ミラー、12は同期検知手段(フォトディテクター)をそれぞれ示す。
【0021】
光源1は厚さ0.3mmのカバーガラスの付いた半導体レーザである。光源1から射出した光束は樹脂製の回折面を有するカップリングレンズ2により平行、または、弱い発散光、または弱い収束光となり、アパーチャ3を経て、樹脂製の回折面を有するアナモフィックレンズ4により主走査方向は平行光、副走査方向はポリゴンミラー5近傍に集束する光束となる。さらにポリゴンミラー5により偏向され、偏向器側走査レンズ6と像面側走査レンズ7により、防塵ガラス8を経て、像面9に結像する。また、偏向器と偏向器側レンズの間に防音ガラス10を配備する。光源1からポリゴンミラー5に至る間の光学系を第1光学系、ポリゴンミラー5から像面9に至る間の光学系を第2光学系と呼ぶ。また、光源1とカップリングレンズ2は材質がアルミである同一の部材に固定されている。
【0022】
ポリゴンミラーは矢印の方向に等角速度的に回転しており、被走査面上の有効範囲を露光するのに先立ち、同期ミラー11で反射させたビームを同期検知手段12に導き、各ポリゴンミラー面について同期検知信号を得た後、一定時間後に被走査面上の露光を開始するようにする。このような構成をとることにより、偏向器前において、主走査断面内でポリゴンミラーへの入射ビームの角度が変化しても、主走査方向についてはビームスポット位置ずれを低減できる。
【0023】
図2はカップリングレンズによる反射光の問題を説明するための模式図である。図3は本発明の参考例の構成を説明するための模式図である。両図において符号3’は第2アパーチャを示す。両図は図1に対応してそれぞれ主走査方向断面を示している。したがって、紙面に平行な面が主走査方向である。半導体レーザ1から出射した発散光束をカップリングするカップリングレンズ2(回折レンズ2と呼ぶことがある)は「片面が階段形状の同心円状の回折面、他方の面は回転対称非球面を有する樹脂製レンズ」であり、入射面が主走査方向、副走査方向ともパワーを有さない面であり、出射面が共軸非球面形状である。ただし、同図の階段形状は誇張して示してある。
【0024】
このとき、図2に示すように、カップリングレンズ2の光軸(主走査断面内および副走査断面内の対称軸を光軸と定義する。以下も同様。)をビーム中心にくるように配置すると、回折面で反射散乱した光が再び半導体レーザ1に戻り、前述した画像上での濃度むらの要因となる様々な問題が発生する。なお、ここで、図示するように、被走査面上におけるビーム径を規定するための第1アパーチャ3と、不要光をカットするための第2アパーチャ3’を配備しており、第2アパーチャ3’を配備することにより、LDへの戻り光を低減できるが、十分では無い。
【0025】
そこで、図3に示すように、樹脂製回折レンズ2の少なくとも1面を入射ビームに対し、面の光軸を主走査方向にシフトさせる。主走査方向にシフトさせる代わりに、面の光軸を副走査方向にシフトしても良いが、回折レンズ2を副走査方向にシフトすると、温度変動に起因する半導体レーザの波長変化により、被走査面上で副走査方向のビーム位置が変化してしまう。当然のことながら、主走査方向に光軸をシフトした場合も、被走査面上で温度変動に起因する半導体レーザの波長変化により、ビーム位置そのものは変化するが、ビームを走査するのに先立ち光ビームを受光する(同期検知)受光手段によって、その都度書き出し基準位置が設定されるため、変動はキャンセルされ、実際に画像形成するためのビーム位置の変化は無視できる。つまり、同期検知を行う主走査方向に対し、光軸をシフトさせることにより、半導体レーザへの戻り光を低減でき、なおかつ、被走査面でのビーム位置ずれも低減できる。
【0026】
図4はマルチビーム光源を用いた場合の本発明の参考例の構成を説明するための図である。高密度化・高速化のための有効な手段として、マルチビーム化(複数ビーム化)がある。ポリゴンミラーの高速回転化という方法もあるが、騒音・振動・消費電力増大といった問題が発生する。マルチビームで走査すればこのような問題は発生しない。同図はモノリシックな半導体レーザアレイ1と回折レンズ2を組み合わせた構成を示す図である。前述の1ビームのときと同様に、カップリングレンズ2の光軸を複数ビームのどちらかのビーム中心にくるように配置すると、回折面で反射散乱した光が再び半導体レーザに戻り、前述した画像上での濃度むらの要因となる様々な問題が発生する。そこで、同図に示すように、樹脂製回折レンズ2の少なくとも1面を複数の入射ビームに対し、面の光軸を主走査方向にシフトさせる。これにより、同期検知を行う主走査方向に対し、光軸をシフトさせることにより、半導体レーザへの戻り光を低減でき、なおかつ、被走査面でのビーム位置ずれも低減できる。面の光軸を副走査方向にシフトする場合の問題点は前述のとおりである。
【0027】
図5は反射散乱光の不具合を説明するための図である。同図の構成の特徴点を示すと次の3点になる。
1.入射面が屈折面、出射面が回折面になっている。
2.入射面のパワーの絶対値が出射面のパワーの絶対値よりも大きくなっている。
3.出射面は回折パワーと屈折パワーが相殺されるように設定されている。
【0028】
以上の条件を満足すると、出射面で反射したビームが入射面で屈折され、光軸方向について、発光点に近い位置で集光する。このとき、半導体レーザチップやステム等で再反射した光ビームはカップリングレンズ、アナモフィックレンズ、ポリゴンミラー、走査レンズ1、走査レンズ2を通り、被走査面上で集光されたゴースト光となる。被走査面上にはレンズ面等で反射された様々なゴースト光が到達するが、最も画像に影響を及ぼすのは、被走査面で集光されたビームである。
【0029】
図6は反射散乱光の不具合を解消した本発明の参考例の構成を示す図である。同図の構成の特徴点を示すと次の2点になる。
1.入射面が回折面、出射面が屈折面である。
2.入射面のパワーの絶対値が出射面のパワーの絶対値よりも小さい。
【0030】
このとき、出射面で反射したビームは、光軸方向について、発光点から離れた位置に集光する。従って、半導体レーザチップやステム等で再反射した光ビームはカップリングレンズ、アナモフィックレンズ、ポリゴンミラー、走査レンズ1、走査レンズ2を通って被走査面に向かうゴースト光が発生しても、このゴースト光は被走査面上では集光されていないため、画像上大きな問題となることは無い。また、樹脂製回折レンズは一般的に成型加工により製作されるが、このとき、微細な多数の溝が形成される回折面の面積が小さいほうが離型が容易である。従って、回折面を入射面にもってきたほうが加工上も有利である。なお、ここで入射面は同心円状の回折面であり、出射面は共軸非球面形状の屈折面であり、出射光の波面収差が良好に補正されるように設計されている。
【0031】
入射面の回折面は基板形状となる曲率半径(屈折パワー)と回折パワーが合成された面である。このとき、出射面は主走査、副走査方向ともに正のパワーを有しており、入出射面の相対的な面偏心(加工上どうしても誤差が残存する)に対する影響をできるだけ低減するのが望ましい。そのためには、入射面は回折パワーと屈折パワーが相殺されるように設定されているのが良い。究極的には回折パワーと屈折パワーの絶対値が同じで、なおかつ、符号が異なるのが望ましい。このとき、回折面は同心円階段形状となり、面の総合的なパワーは0となる。このような階段状の回折面は加工・計測上も有利な面である。なお、温度変動に対する、ビームウエスト位置変化を低減するためには回折パワーを正とするのが良い。
【0032】
回折レンズの入射面を回折パワーと屈折パワーが相殺されるように設定することにより、入出射面の相対的な面偏心(加工上どうしても誤差が残存する)があってもビームスポット小径化を実現でき、高画質対応の光走査装置を提供できる。
【0033】
図7は本発明に係る入射面と出射面の光軸を互いに傾斜(チルト)させた図である。この構成によれば、図3によって説明した効果のほかに、カップリングレンズ内のみで発生するゴースト光を取り除くことができる。例えば、出射面で反射されたビームが再び入射面で反射することにより発生するゴースト光を主走査方向にずらし、ゴースト光を低減できる。
【0034】
ここで図1に戻って、樹脂製の回折面を有するアナモフィックレンズ4(以下樹脂製回折レンズ4と呼ぶ)について、本発明の適用例を説明する。
【0035】
第1光学系は、少なくとも副走査方向にパワーを有する樹脂製回折レンズ4を有する。図示するように、樹脂製回折レンズ4の少なくとも1面(同図では入射面、出射面とも)入射ビームに垂直な面に対し、主走査断面内でチルトしている。同期検知を行う主走査方向に対し、副走査方向にパワーを有する樹脂製レンズ4の面をチルトさせることにより、半導体レーザ1、1’への戻り光を低減でき、なおかつ、被走査面でのビーム位置ずれも低減できる。
【0036】
樹脂製回折レンズ4の少なくとも1面を、入射ビームに垂直な面に対し副走査断面内でチルトさせても、半導体レーザ1、1’への戻り光を低減できる点は同じであるが、光軸シフトの場合と同様に、温度変動に起因する半導体レーザの波長変化により、被走査面上で副走査方向のビーム位置が変化してしまう。
【0037】
また、同図では複数のビームにより、被走査面を走査するようにしているが、樹脂製回折レンズ4の少なくとも1面(ここでは入射面、出射面とも)が複数の入射ビームにそれぞれ垂直な複数の面に対し、主走査断面内でチルトしている。これにより、複数のビームについて、半導体レーザへの戻り光を低減でき、なおかつ、被走査面でのビーム位置ずれも低減できる。
【0038】
同図に示すように、樹脂製回折レンズ4の面に対し、2つの入射ビームに垂直な面は主走査断面内で互いに逆方向にチルトさせている。これにより、戻り光の低減を実現しながら、入射ビームに対する面のチルトに伴う波面収差劣化および回折レンズの温度補正効果を最小限度に抑えている。また、複数ビームに対する光量面でのロスも最小限度に抑えることができる。
【0039】
図8は樹脂製回折レンズの構成を説明するための図である。マルチビーム方式の場合、樹脂製回折レンズ4(線像形成レンズ)を通過するとき、一般的には互いに光線の中心が主走査方向に離れてしまう。また、設計中央値では複数ビームの光線の中心が重なっていても、メカ的な配置誤差により光線が主走査方向に離れてしまう。同図は横方向を主走査方向とし、光軸方向から樹脂製回折レンズ4をみた図であるが、このような主走査方向に長い直線状の回折面を設けることにより、光線の中心が主走査方向から離れても副走査方向のパワーを同じにでき、温度変動による副走査ビームスポット位置変化を同じにでき、被走査面上での副走査ビームピッチ変動を低減できる。
【0040】
図9は多色画像形成装置の基本的な構成を示す図である。同図において符号21は感光体、22は帯電ユニット、24は現像器、25はクリーニング手段、26は転写用帯電手段、30は転写ベルト、40は書き込みユニット、50は定着手段をそれぞれ示す。また、添字Y、M、C、Kはイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色を示す。ただし、すべての色に共通な説明には色を示す添字を省略する。感光体21は矢印の方向に回転し、回転順に帯電器22、現像器24、転写用帯電手段26、クリーニング手段25が配備されている。
【0041】
帯電部材22は、感光体21表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。この帯電部材と現像部材4の間の感光体21表面に、書き込みユニット(光走査装置)40によりビームが照射され、感光体21に静電潜像が形成されるようになっている。そして、静電潜像に基づき、現像器24により感光体21面上にトナー像が形成される。さらに、転写用帯電手段26により、記録紙Pに各色順次転写トナー像が転写され、最終的に定着手段50により記録紙Pに画像が定着する。
【0042】
光走査装置としては、各色に対応して図1に示したような光学配置を有するものを独立に用いることもできるし、従来から知られたもののように、光偏向器(回転多面鏡)を共用し、各光走査装置における走査光学系の偏向器側走査レンズを、感光体21Mと21Yの光走査に共用するとともに、感光体21K、21Cの光走査に共有するものとすることもできる。いずれの光走査装置とも、本発明の参考例の主走査方向のシフトや本発明の主走査断面内のチルトにより、LDへの戻り光を低減するという方式をとることにより、補正手段の無い副走査方向のビーム位置ずれを低減できる。特に、多色対応の画像形成装置では、色ずれ低減の要求が高く、本技術の有効性は極めて高い。したがって、本発明を適用すれば、色ずれを低減でき、なおかつ、LDへの戻り光を低減できる高画質対応の画像形成装置を提供できる。また、本発明を感光体が1つしかない画像形成装置に適用できることは言うまでも無い。
【0043】
本発明によれば、被走査面に向かう光ビームの光量ばらつきが小さく、なおかつ副走査ビーム位置変動が小さい光走査装置を提供することが可能となり、濃度むらが小さく高画質対応の画像形成装置に産業上の利用の可能性がある。
【符号の説明】
【0044】
1 光源(半導体レーザ)
2 カップリングレンズ
3 アパーチャ
4 アナモフィックレンズ
5 ポリゴンミラー
21 感光体
40 光走査装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開2005−258392号公報
【特許文献2】特開平11−223784号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの半導体レーザと、該半導体レーザからの光ビームを偏向させる偏向手段と、前記半導体レーザからの光ビームを前記偏向手段に導く第1光学系と、前記偏向手段により偏向された光ビームを被走査面上に集光させて光スポットを形成するための第2光学系と、前記被走査面を前記光ビームが走査するのに先立ち該光ビームを検出する受光手段とを有する光走査装置において、前記第1光学系は、少なくとも副走査方向にパワーを有する1つ以上の樹脂製回折レンズを含み、該樹脂製回折レンズの少なくとも1面は前記光ビームの進行方向に垂直な面に対し、主走査断面内でチルトしていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光走査装置において、前記第1光学系は、複数の半導体レーザからの光ビームを前記偏向手段に導き、前記樹脂製回折レンズの少なくとも1面は、前記複数の光ビームにそれぞれ垂直な複数の面に対し、主走査断面内で面の光軸がチルトしていることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光走査装置において、前記樹脂製回折レンズの少なくとも1面に対し、前記複数の面のうち少なくとも1組は主走査断面内で互いに逆方向にチルトしていることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記樹脂製回折レンズは、入射した光ビームを主走査方向に長い線像に変換する線像形成レンズであって、なおかつ、該線像形成レンズの回折面は主走査方向に平行な溝形状として形成されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の光走査装置において、前記光源と、前記第1光学系と、前記第2光学系を複数組有し、それぞれ異なる被走査面に光ビームを導くことを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光走査装置と、前記被走査面としての感光性の像担持体と、該像担持体表面を均一に帯電させる帯電手段と、前記光走査装置によって形成された潜像を可視化する現像手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の画像形成装置において、前記像担持体を複数有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−168542(P2012−168542A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65689(P2012−65689)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【分割の表示】特願2006−253375(P2006−253375)の分割
【原出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】