説明

光通信用モジュール及びその製造方法

【課題】 レセプタクルを安定して筐体に固定すると共に、電磁遮蔽を確実に行う光通信用モジュールを提供する。
【解決手段】 光素子を内部に備え、つば部16を有するレセプタクル10(11)と、レセプタクル10(11)が搭載される筐体20と、レセプタクル10(11)が挿入されると共に、つば部16よりも小さい開口を有し、つば部を筐体に対して押圧する冶具12(13)とを有する構成としている。
従って、レセプタクル10(11)を安定して筐体に固定することができると共に、筐体に搭載される光ファイバのコネクタ部から発生する高周波信号が漏れるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信に使用する光送受信モジュールに関する。特に、光ファイバと受・発光素子との間で光信号を光学的に接続するためのレセプタクルの固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型化を指向してきた光通信装置の分野では、通信装置をモジュール化して、ケージ等に着脱自在となるように構成している。例えば、半導体レーザーやフォトダイオード等の受発光素子をケース内に収納し、このケースを光ファイバの端面に対向して設け、光信号を光ファイバの端面に入射または出射して、光ファイバを通じて光信号を導入又は導出するレセプタクルが提案されている。
【0003】
また、さらなる小型化のため、1つの筐体内に少なくとも光送信モジュール及び光受信モジュールを収容することにより、光通信の1チャンネル分を1つのユニットとして提供するものも提案されている。
【0004】
このような光通信モジュールの信頼性を高めるためには、光学的接続部での安定した接続や、光学的接続部で不必要な高周波信号がモジュールの外部に漏れないように遮蔽することが重要な課題となる。
【0005】
特許文献1に開示の光モジュールは、図1に示すようにレセプタクルを上下方向から挟み込む固定冶具を設けて、この固定冶具をゲージに固定していた。
【0006】
【特許文献1】特開2005−249892号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の固定方法は、ゲージにレセプタクルを固定しているだけの構成であって、レセプタクルと光ファイバコネクタ部との連結部分から高周波信号が漏れてしまう。
【0008】
また、接着剤によってレセプタクルを筐体に固定する方法も取られているが、光ファイバや発光、受光素子の光軸を合わせながらの固定となるため、組み立て作業の効率が悪く、取り付けや取り外しが簡単にはできないという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、レセプタクルを安定して筐体に固定すると共に、高周波信号の遮蔽を確実に行う光通信用モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために本発明の光通信用モジュールは、光素子を内部に備え、つば部を有するレセプタクルと、前記レセプタクルが搭載される筐体と、前記レセプタクルが挿入されると共に、前記つば部よりも小さい開口を有し、前記つば部を前記筐体に対して押圧する冶具とを有する構成としている。
このように本発明は、つば部を有するレセプタクルを筐体に搭載し、このつば部を筐体に対して冶具で押圧することで、レセプタクルを安定して筐体に固定することができると共に、筐体に搭載される光ファイバのコネクタ部から発生する高周波信号が漏れるのを防止することができる。
【0011】
上記構成の光通信用モジュールにおいて、前記冶具は、バネ性を有し、前記レセプタクルを応力によって押圧するとよい。また、前記冶具は、前記レセプタクルに当接する第1冶具と、前記第1冶具を前記筐体の方向に押圧する第2冶具と、を有しているとよい。
バネ性を有する部材で部材公差を吸収することで、筐体に隙間なく押圧することができる。
【0012】
上記構成の光通信用モジュールにおいて、前記筐体には、前記つば部よりも小さい径を有する孔が設けられており、当該つば部が前記押圧によって前記孔を塞ぐとよい。
従って、筐体に搭載される光ファイバから発生する高周波信号が孔から漏れるのを確実に防ぐことができる。
【0013】
上記構成の光通信用モジュールにおいて、前記筐体は、前記第2冶具を前記筐体に固定するための溝を有しているとよい。
従って、第2冶具を筐体に簡単に固定することができる。
【0014】
本発明の光通信用モジュールの製造方法は、光素子を内部に備え、つば部を有するレセプタクルを冶具の前記つば部よりも小さい開口に挿入するステップと、筐体に対して前記冶具を挿入することで、前記レセプタクルのつば部を前記筐体の孔に対して押圧するステップとを有している。
【0015】
本発明の光通信用モジュールの製造方法は、光素子を内部に備え、つば部を有するレセプタクルを第1冶具の前記つば部よりも小さい開口に挿入するステップと、筐体に対して、前記第1冶具を挿入するステップと、前記第1冶具を前記筐体に対して押圧する第2冶具を挿入することで、前記レセプタクルのつば部を前記筐体の孔に対して押圧するステップとを有している。また、前記第2冶具は、前記筐体に設けた溝に嵌合させて、前記筐体に取り付けられるとよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レセプタクルを安定して筐体に固定すると共に、高周波信号の遮蔽を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例を説明する。
【実施例】
【0018】
まず、図2、図3を参照しながら光通信モジュールの全体構成を説明する。図2には、各部材を筐体20から取り外した分解斜視図を示し、図3には、光通信モジュールの上面図を示す。
光通信モジュール1は、1つの筐体20にレセプタクル10、11と、光送信モジュール及び光受信モジュールの制御回路を実装したプリント基板14とを搭載した構成である。光送信モジュールと光受信モジュールとはレセプタクル10、11内にそれぞれ設けられている。
プリント基板14上の制御回路と、レセプタクル10、11とはリード配線によって電気的に接続されている。プリント基板14上にはコネクタ部15が形成されており、マザーボードとの通信を取ることができる。また、プリント基板14上には、マザーボードからプリント基板14に電源を供給したり、両者間で信号のやりとりを行うための配線が設けられている。
【0019】
レセプタクル10、11内には、スリーブ、ファイバが収容されたフェルール、レンズ、光素子(発光素子又は受光素子)、ホルダ等で構成された光送信ユニットと光受信ユニットとがそれぞれ形成されている。
また、レセプタクル10、11には、図4に示すようにレセプタクル10、11本体の径よりも径が大きくなるように取り付けられたつば部16が設けられている。このつば部16を後述する冶具12、13によって筐体20に押し付けることで、レセプタクル10、11と、光ファイバコネクタ部との接合部で発生する高周波信号がプリント基板14側に漏れるのを防止している。
【0020】
筐体20には、図2に示すように送信用のレセプタクル10が差し込まれる光導出孔21と、受信用のレセプタクル11が差し込まれる光導入孔22とが設けられている。送信用と受信用のレセプタクル10、11は、これらの孔21、22に挿入され、冶具12、13によって光軸方向に押圧される。筐体20には、この光導出孔21、光導入孔22以外に穴や隙間のない構成を取っている。
冶具12、13は、レセプタクル10、11を筐体20に固定する連絡冶具12と、この連絡冶具12と連絡冶具12に固定されたレセプタクル10、11とを光導入孔21、光導出孔22方向に押圧する固定冶具13とを備えている。
【0021】
また、筐体20には、光ファイバのコネクタ部が装着される光インターフェース部30が設けられている。光インターフェース部30にコネクタ部を装着して、レクプタクル10、11の光素子と光学的に接続する。
【0022】
連絡冶具12は、図5に示すように連結冶具12の対向する2辺に切欠を設けた構成であり、この切欠部分に送信用と受信用のレセプタクル10、11が嵌め入れられる。連絡冶具12は、バネ性を備えており、筐体20に固定することでレセプタクル10、11を光軸方向に付勢する。レセプタクル10、11のつば部16に連絡冶具12が当接し、レセプタクル10、11を光軸方向に押圧する。本実施例の連絡冶具12は、両端を切り欠いて中央部分の冶具を残した形状であって、全体に平均しして応力がかかるように構成している。連絡冶具12は、金属(ステンレスなど)やプラスチック等の硬く、加工しやすい材料のものが使用される。
【0023】
固定冶具13は、図6に示すように連絡冶具12の両端部で連絡冶具12に接続し、連絡冶具12とレセプタクル10(11)とを光軸方向に押圧する。固定冶具13もバネ性を備えるステンレスやリン青銅などの金属や、プラスチック材料からなる。筐体20には、溝が設けられており、この溝に固定冶具13を嵌合させて筐体20に固定する。また、固定冶具13と筐体20とは、くさびを打って固定してもよい。固定冶具13の形状としては、図7に示す(A)、(B)、(C)ものを挙げることができるが、バネ性を有するものであれば形状は特に限定しない。
【0024】
このように本実施例は、つば部16付きのレセプタクル10、11を設けて、連結冶具12と固定冶具13とで、レセプタクル10、11を光軸方向に押圧して固定する。筐体20に設けた光導出孔21と光導入孔22とをつば部16でしっかりと押圧しているので、光インターフェース部30側で生じる高周波信号がプリント基板側に漏れることがなくなる。また、プリント基板14側で発生した高周波信号が筐体の外に漏れることがなくなる。なお、筐体20へのレセプタクル10、11の固定は、図8に示すようにネジ溝を設けて固定するものであってもよい。
【0025】
図9に示すフローチャートを参照しながら光通信モジュールの製造手順を説明する。
まず、プリント基板14とレセプタクル10、11とを連結し、連結冶具12の切欠部分に、レセプタクル10、11を嵌め入れる(ステップS1)。
次に、レセプタクル10、11の先端部分を光導出孔21と光導入孔22とに挿入する。このとき、レセプタクル10、11のつば部16が連絡冶具12よりも光導入孔21、光導出孔22側に来るように配置する(ステップS2)。
次に、連絡冶具12に固定冶具13を固定する。固定冶具13は、図6に示すように連絡冶具12の両端部であって、さらに連絡冶具12を挟んでつば部16とは反対側に取り付ける。固定冶具13は、筐体20に設けた溝にはめ込み固定する(ステップS3)。
【0026】
上述した実施例は本発明の好適な実施例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来のレセプタクルの固定方法を説明するための図である。
【図2】光通信モジュールの全体構成を示す図であり、レセプタクルとプリント基板を筐体から取り外した状態を示す図である。
【図3】光通信モジュールの上面図である。
【図4】レセプタクルの外観形状を示す図である。
【図5】連結冶具の形状を示す図である。
【図6】連絡冶具と固定冶具とによってレセプタクルを光軸方向に押圧している状態を示す図である。
【図7】固定冶具の形状を示す図である。
【図8】ネジでレセプタクルを筐体に固定する様子を示す図である。
【図9】製造手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
1 光通信モジュール
10、11 レセプタクル
12 連絡冶具
13 固定冶具
14 プリント基板
16 つば部
20 筐体
30 インターフェース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光素子を内部に備え、つば部を有するレセプタクルと、
前記レセプタクルが搭載される筐体と、
前記レセプタクルが挿入されると共に、前記つば部よりも小さい開口を有し、前記つば部を前記筐体に対して押圧する冶具と、
を有することを特徴とする光通信用モジュール。
【請求項2】
前記冶具は、バネ性を有し、前記レセプタクルを応力によって押圧することを特徴とする請求項1記載の光通信用モジュール。
【請求項3】
前記冶具は、前記レセプタクルに当接する第1冶具と、前記第1冶具を前記筐体の方向に押圧する第2冶具と、を有することを特徴とする請求項1又は2記載の光通信用モジュール。
【請求項4】
前記筐体には、前記つば部よりも小さい径を有する孔が設けられており、当該つば部が前記押圧によって前記孔を塞ぐことを特徴とする請求項1記載の光通信用モジュール。
【請求項5】
前記筐体は、前記第2冶具を前記筐体に固定するための溝を有することを特徴とする請求項3記載の光通信用モジュール。
【請求項6】
光素子を内部に備え、つば部を有するレセプタクルを冶具の前記つば部よりも小さい開口に挿入するステップと、
筐体に対して前記冶具を挿入することで、前記レセプタクルのつば部を前記筐体の孔に対して押圧するステップと、
を有することを特徴とする光通信用モジュールの製造方法。
【請求項7】
光素子を内部に備え、つば部を有するレセプタクルを第1冶具の前記つば部よりも小さい開口に挿入するステップと、
筐体に対して、前記第1冶具を挿入するステップと、
前記第1冶具を前記筐体に対して押圧する第2冶具を挿入することで、前記レセプタクルのつば部を前記筐体の孔に対して押圧するステップと、
を有することを特徴とする光通信用モジュールの製造方法。
【請求項8】
前記第2冶具は、前記筐体に設けた溝に嵌合させて、前記筐体に取り付けることを特徴とする請求項7記載の光通信用モジュールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−264508(P2007−264508A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−92554(P2006−92554)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(000154325)ユーディナデバイス株式会社 (291)
【復代理人】
【識別番号】100137615
【弁理士】
【氏名又は名称】横山 照夫
【復代理人】
【識別番号】100134511
【弁理士】
【氏名又は名称】八田 俊之
【Fターム(参考)】