説明

光通信装置

【課題】支持部材側から支持部材上の回路に伝播する電磁ノイズを軽減することができる光通信装置を提供する。
【解決手段】光通信装置1は、素子実装面4aを有する支持部材4と、支持部材4の素子実装面4aに実装され、光信号を入力又は出力する面発光素子2、及び面発光素子2に第1配線パターン9及びワイヤ7,8(接続配線部)を介して接続された駆動回路6とを備え、支持部材4は、少なくとも接続配線部に対応する領域に空間部4cを有する。実装用基板5の内部配線パターン15から発生し、支持部材4の空間部4cを介して支持部材4上の回路に伝播する電磁ノイズを軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光通信装置として、電子回路及び接続配線部が第1面に形成された支持部材と、この支持部材の第1面と直交する第2面に実装された光素子と、この光素子に光コネクタを介して光結合された光ファイバとを備えたものがある(特許文献1)。
【0003】
このような光通信装置においては、光素子に対する光ファイバの光結合時に支持部材の第1面に対し略水平方向に沿って光素子の光結合が可能となり、装置厚さ方向の小型化が図れる。
【特許文献1】特開平11−97720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、支持部材側から支持部材上の回路に伝播する電磁ノイズを軽減することができる光通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の光通信装置を提供する。
【0006】
[1]素子実装面を有する支持部材と、前記支持部材の前記素子実装面に実装され、光信号を入力又は出力する光素子、及び前記光素子に接続配線部を介して接続された電子回路とを備え、前記支持部材は、少なくとも前記接続配線部に対応する領域に空間部を有する光通信装置。
【0007】
[2]前記支持部材が実装される回路基板を更に備えた前記[1]に記載の光通信装置。
【0008】
[3]前記支持部材の前記空間部に前記光素子に光結合する光導波路を更に備えた前記[1]に記載の光通信装置。
【0009】
[4]前記支持部材は、前記空間部に連通し、かつ前記光導波路に光結合する光コネクタを着脱可能なコネクタ着脱口を有する前記[3]に記載の光通信装置。
【0010】
[5]前記光導波路は、前記支持部材を形成する材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料によって形成された前記[3]に記載の光通信装置。
【0011】
[6]素子実装面を有する支持部材と、前記支持部材の前記素子実装面に実装され、光信号を入力又は出力する光素子、及び前記光素子に接続配線部を介して接続された電子回路とを備え、前記支持部材は、少なくとも前記接続配線部に対応する領域に形成された空間部に充填され、前記支持部材を形成する材料の誘電率よりも小さい誘電率の材料から形成された充填部材とを備えた光通信装置。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、支持部材側から支持部材上の回路に伝播する電磁ノイズを軽減することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、回路基板から支持部材を介して支持部材上の回路に伝播する電磁ノイズを軽減することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、空間部を利用して光導波路を配置することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、空間部の一部をコネクタ着脱口として利用することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、支持部材側から光導波路を介して支持部材上の回路に伝播する電磁ノイズを軽減することができる。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、支持部材側から充填部材を介して支持部材上の回路に伝播する電磁ノイズを軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信装置の概略の構成を示す断面図である。この光通信装置1は、発光部2aを半導体積層体(図示せず)に有する面発光素子2と、面発光素子2を支持する支持部材4と、支持部材4に内蔵され、面発光素子2に光結合する光導波路3と、支持部材4が実装される実装用基板5とから大略構成されている。この光通信装置1は、例えばノート型パーソナルコンピュータや携帯電話機等の情報処理装置に適用される。
【0019】
支持部材4の素子実装面4aには、上記面発光素子2と、面発光素子2を駆動する駆動回路(電子回路)6とが実装され、面発光素子2及び駆動回路6にそれぞれワイヤ7,8を介して接続する第1配線パターン9と、駆動回路6にワイヤ10を介して接続する第2配線パターン11とが形成されている。なお、第1配線パターン9及びワイヤ7,8は、接続配線部を構成する。
【0020】
面発光素子2は、例えばVCSEL(垂直共振型面発光レーザー:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)からなり、その発光面に垂直な方向に光を出力するように構成されている。また、面発光素子2は、発光面と反対側の面にGaAs等の半導体が露出し、この露出面にp電極及びn電極(図示せず)を配置している。そして、面発光素子2は、発光面が支持部材3の素子実装面2aに導電性接着剤(図示せず)により実装されている。
【0021】
光導波路3は、一方の端面に45°ミラー面からなる光路変換面30aが形成されたコア層3aと、コア層3aを覆うクラッド層3bとを有する。光路変換面30aは、面発光素子2の発光部2aに光路形成用開口部4b(後述)を介して光結合する。また、光導波路3は、全体が支持部材4を形成する材料の誘電率ε(ε≒8)よりも小さい誘電率ε(ε≒4)のエポキシ樹脂等の高分子材料から形成されている。これにより、実装用基板5から光導波路3を介して支持部材4の素子実装面4a上の回路に伝播する電磁ノイズが軽減される。
【0022】
実装用基板5は、ガラスエポキシ樹脂等からなる基材を有し、基材の表面に第3配線パターン15が形成され、基材の内部に内部配線パターン16が形成されたプリント配線基板である。実装用基板5上には、図示しない制御部が実装されており、制御部から第3配線パターン15、ワイヤ14、第2配線パターン11及びワイヤ10を介して駆動回路6に電源及び信号を伝送するように構成されている。また、内部配線パターン16は、伝送速度が1〜10Gビット/秒程度の信号伝送路であり、電磁ノイズの発生源になっている。
【0023】
(支持部材4の構成)
支持部材4は、素子実装面4aに形成された光路形成用開口部4bと、光路形成用開口部4bに連通する空間部4cと、空間部4cに連通するコネクタ着脱口4dとを有し、素子実装面4aと反対側の面が実装用基板5に実装されている。
【0024】
光路形成用開口部4bは、面発光素子2の発光部2aの光軸上に形成されている。
【0025】
空間部4cは、駆動回路6、第1配線パターン9及び面発光素子2に対応する領域に形成されており、これにより、空間部4c(空気)の誘電率ε(ε≒1)が支持部材4を形成する材料の誘電率εよりも低い(ε<ε)ため、実装用基板5の内部配線パターン16から空間部4cを介して支持部材4の素子実装面4a上の回路に伝播する電磁ノイズが軽減される。なお、空間部4cは、第1配線パターン9及びワイヤ7,8に対応する領域にのみ形成されていてもよい。
【0026】
コネクタ着脱口4dは、光路形成用開口部4bの開口方向と直交する方向に開口し、かつ空間部4cに連通し、光ファイバ13が接続される光コネクタ12が着脱可能に構成されている。コネクタ着脱口4dは、空間部4cの形成と同時に形成される。
【0027】
(光通信装置1の製造方法)
次に、光通信装置の製造方法の一例を図2及び図3を参照して説明する。図2は、支持部材4の製造方法の一例を説明するための分解斜視図である。図3は、支持部材4の組立方法の一例を説明するための分解斜視図である。
【0028】
図2に示すように、支持部材4を構成する、例えばアルミナ(Al)等のセラミックからなる5層の成形体4A〜4Eを製造する。すなわち、ベースとなる成形体4Aと、切り欠き41Bを設けた成形体4Bと、切り欠き40C,41Cを設けた成形体4Cと、平面矩形開口による貫通孔40D及び切り欠き41Dを設けた成形体4Dと、平面矩形開口による貫通孔40Eを設けた成形体4Eを製造する。成形体4Eの上面に第1配線パターン9及び第2配線パターン11を形成する。
【0029】
光路形成用開口部4bは、成形体4D,4Eに設けた貫通孔40D,40Eにより構成される。空間部4cは、成形体4Cに設けた切り欠き40Cにより構成される。コネクタ着脱口4dは、成形体4B,4C,4Dに設けた切り欠き41B,41C,41Dにより構成される。
【0030】
各成形体4A〜4Eを製造した後、図3(下側)に示すように、切り欠き41Bが設けられた成形体4Bと、切り欠き40C,41Cが設けられた成形体4Cとを接着剤により接着して組み付けることにより組付体Aを形成する。次に、組付体Aを成形体4Aに積層して組付体Bを形成し、成形体4Cの切り欠き40Cに光導波路3を配置する。次に、図3(上側)に示すように、貫通孔40D及び切り欠き41Dが設けられた成形体4Dと、第1配線パターン9及び第2配線パターン11(図1に示す)が形成され、かつ貫通孔40Eが設けられた成形体4Eとを接着剤により接着して組み付けることにより組付体Cを形成する。次に、組付体Cを組付体B上に積層する。このようにして支持部材4が組み立てられる。
【0031】
(光通信装置1の動作)
次に、光通信装置1の動作を説明する。図1において、制御部から第3配線パターン15、ワイヤ14、第2配線パターン11及びワイヤ10を介して駆動回路6に電源及び信号を出力すると、駆動回路6は、面発光素子2に駆動信号を出力し、面発光素子2は、発光部2aから光信号を出力する。面発光素子2から出力された光信号は、光導波路3の光路変換面30aで反射し、コア層3aを伝播して光コネクタ12から光ファイバ13を介して受信側に送信される。一方、内部配線パターン16が信号を伝送中に電磁ノイズを発生するが、支持部材4の内部に設けた空間部4cによって電磁ノイズが第1配線パターン9等に影響するのを軽減することができる。
【0032】
[第2の実施の形態]
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る光通信装置の全体を説明するために示す断面図である。図4において、図1と同一又は同等の部材については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0033】
図4に示すように、本発明の第2の実施の形態に係る光通信装置21は、支持部材4の空間部4cにおける駆動回路6、第1配線パターン9及び面発光素子2に対応する領域に充填部材22を充填した点に特徴がある。
【0034】
このため、充填部材22は、支持部材4を形成する材料の誘電率ε(ε≒8)よりも小さい誘電率ε(ε≒4)を有する例えばエポキシ樹脂からなる材料によって形成されている。これにより、実装用基板5から充填部材22を介して支持部材4の素子実装面4a上の回路に伝播する電磁ノイズを軽減することができる。充填部材22の材料としては、フッ素樹脂(誘電率ε≒2.1)を用いてもよく、支持部材4を形成する材料の誘電率より低い誘電率を有する他の材料を用いてもよい。
【0035】
本実施の形態の光コネクタ12は、コネクタ着脱口4dに装着される装着部12aと、支持部材4の空間部4cよりも上側部分が挿入される挿入口12bとが形成されている。
【0036】
支持部材4の上方には、面発光素子2及び光コネクタ11に光結合する光路変換素子としてのプリズム23が配置されている。プリズム23には、支持部材4の素子実装面4a側の端面及び光コネクタ12側の端面に集光レンズ24,25が設けられている。
【0037】
[他の実施の形態]
以上、本発明の光通信装置を上記の実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能であり、例えば次に示すような変形も可能である。
【0038】
(1)各実施の形態では、空間部4c又は充填部材22が駆動回路6、第1配線パターン9及び面発光素子2に対応する領域に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、駆動回路6、第1配線パターン9及び面発光素子2が実装されている領域よりも広い領域に空間部又は充填部材が配置されていてもよい。また、駆動回路及び第1配線パターンに対応する領域に、第1配線パターン及び面発光素子に対応する領域に、あるいは第1配線パターンに対応する領域に空間部又は充填部材を配置してもよい。すなわち要するに、本発明は、駆動回路(電子回路)と光素子とを接続する少なくとも接続配線部に対応する領域に空間部が、あるいは支持部材を形成する材料より低い誘電率をもつ材料からなる充填部材が配置されていればよい。
【0039】
(2)実施の形態(第1の実施の形態)では、光導波路3の光路変換面30aが45°ミラー面で形成されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の角度をもつミラー面で光導波路のコア層を形成してもよい。また、コア層の光路変換面には、Al(アルミニウム),Au(金),Ag(銀),Ti(チタン)等の金属膜を形成してもよい。
【0040】
(3)各実施の形態では、光通信装置がVCSELからなる面発光素子2を備えた場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、発光ダイオードなど他の発光素子を備えた場合やフォトダイオードなどの受光素子を備えた場合であってもよく、また両光素子を備えた場合であってもよい。また、受信側の光通信装置を送信側と同様の構成とし、支持部材上に実装する光素子として受光素子を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態に係る光通信装置の概略の構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る支持部材の製造方法の一例を説明するために示す分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施の形態に係る支持部材の組立方法の一例を説明するための分解斜視図である。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態に係る光通信装置の概略の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…光通信装置、2…面発光素子、2a…発光部、3…光導波路、3a…コア層、3b…クラッド層、4…支持部材、4a…素子実装面、4b…光路形成用開口部、4c…空間部、4d…コネクタ着脱口、4A〜4E…成形体、5…実装用基板、6…駆動回路、7,8…ワイヤ、9…第1配線パターン、10…ワイヤ、11…第2配線パターン、12…光コネクタ、12a…装着部、12b…挿入口、13…光ファイバ、14…ワイヤ、15…第3配線パターン、16…内部配線パターン、21…光通信装置、22…充填部材、23…プリズム、24,25…集光レンズ、30a…光路変換面、40C…切り欠き、40D…貫通孔、40E…貫通孔、41B…切り欠き、41C…切り欠き、41D…切り欠き、A,B,C…組付体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子実装面を有する支持部材と、
前記支持部材の前記素子実装面に実装され、光信号を入力又は出力する光素子、及び前記光素子に接続配線部を介して接続された電子回路とを備え、
前記支持部材は、少なくとも前記接続配線部に対応する領域に空間部を有する光通信装置。
【請求項2】
前記支持部材が実装される回路基板を更に備えた請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記支持部材の前記空間部に前記光素子に光結合する光導波路を更に備えた請求項1に記載の光通信装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記空間部に連通し、かつ前記光導波路に光結合する光コネクタを着脱可能なコネクタ着脱口を有する請求項3に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記光導波路は、前記支持部材を形成する材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料によって形成された請求項3に記載の光通信装置。
【請求項6】
素子実装面を有する支持部材と、
前記支持部材の前記素子実装面に実装され、光信号を入力又は出力する光素子、及び前記光素子に接続配線部を介して接続された電子回路とを備え、
前記支持部材は、少なくとも前記接続配線部に対応する領域に形成された空間部に充填され、前記支持部材を形成する材料の誘電率よりも小さい誘電率の材料から形成された充填部材とを備えた光通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−157562(P2010−157562A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334076(P2008−334076)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】