説明

光量調整装置

【課題】羽根部材を配置した基板に複数の電磁駆動装置を配置する際に、非通電状態で羽根部材を所定位置に磁気的に確実に保持することが可能な電磁駆動装置を提供する。
【解決手段】隣接配置する第1、第2の各磁石ロータを、外周にN−S磁極を形成する着磁領域と非着磁領域とに区割した永久磁石で構成する。そしてこの磁石ロータを作動角度規制手段で所定角度範囲で往復動するように設定する。また、上記着磁領域にはこれに形成された磁極に対向する位置に外側ヨークを配置する。このヨークは、コイルに生起した磁気を上記永久磁石の外周に誘導して駆動磁界を形成する軟磁性部材で構成する。このような構成の第1、第2の電磁駆動装置を装置基板に、上記各磁石ロータの作動角度範囲において上記非着磁領域が互いに近接し、上記着磁領域が互いに距離を隔てて離間するように隣接配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラ、カメラ付携帯電話等の撮像装置やプロジェクタ等の光学機器に組み込まれ、その撮影光若しくは投射光等の光量を調整する光量調整装置に係わり、詳細にはシャッタ羽根、絞り羽根など2つ以上の光量調節羽根をそれぞれ個別に開閉する駆動装置を備えた光量調節装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子スチルカメラやビデオカメラ等に搭載されるシャッタ装置、絞り装置、プロジェクタ装置などに搭載される投影光量の調整装置など光学機器に組込まれる光量調整装置は、レンズ鏡筒に組込まれた基板(地板)にフィルム状の羽根部材を開閉自在に取付け、この羽根部材を開閉することによって光量を遮蔽するシャッタ装置或いは羽根部材を開閉して通過光量を大小調節する絞り装置として広く用いられている。
【0003】
そして、上述の羽根部材は1枚若しくは複数枚で構成され基板の光路開口の周囲にピンなどの軸で回動自在か、若しくは摺動(スライド)自在に支持され、電磁駆動装置で開閉駆動されるようになっている。またこのような光量調整装置は組込む光学機器の仕様に応じてシャッタ装置を構成する羽根部材と絞り装置を構成する第1、第2、2つの羽根部材を同一の基板に組込み、同時にこの基板に取付けた2つの駆動装置で2つの羽根部材を個別に開閉動するように構成している。
【0004】
そこでこの駆動装置は、永久磁石を備えたロータと、このロータに回転力を付与する励磁コイルとから構成され、励磁コイルへの電流の供給によって羽根の開閉動を制御する電磁駆動装置が多く用いられている。最近、特にこれらの光量調整装置はカメラ装置の小型化、軽量化が進むに伴って消費電力が小さく、しかも小型で軽量なものが要求されるに至っている。上述のように第1、第2、複数の羽根部材を複数の電磁駆動装置で開閉動する場合に電磁駆動装置の小型化及び消費電力の省力化が必要となり、本出願人は先に特願2005−152420号として小型で消費電力の小さい駆動装置を提案した。
【0005】
この装置は、光路開口に配置した基板に第1、第2の羽根部材を開閉自在に取付け、この2つの羽根部材を基板に併設した電磁駆動装置で開閉動する際に、この電磁駆動装置を中空円筒形状の永久磁石で構成した磁石ロータと、この磁石ロータの中央中空部に内側ヨークを外周部に外側ヨークをそれぞれ軟磁性部材で配置し、この内側ヨークと外側ヨークの基端部にコイルを巻回して生起した磁気を軟磁性部材で誘導して永久磁石の周囲に駆動磁界を形成する方法を提案した。このような構成によって電磁駆動装置はコイル巻回部と磁石ロータとを上下に配置することが出来、従来の磁石ロータの外周にコイル枠を設け、このコイル枠の外周にコイルを巻回する構造に比べ、装置の小型化と同時に大きな駆動トルクが得られ、消費電力を小さくすることが可能となった。
【0006】
これと同時にシャッタ羽根或いは絞り羽根は撮影途上、或いは非撮影時に開放(オープン)位置若しくは閉成(クローズ)位置に保持する必要があるが、この装置は磁石ロータの外周に配置した軟磁性材の外側ヨークはコイルへの非通電時(非使用時)に磁石ロータの磁極を吸引して羽根部材を所定位置に保持することが出来、従来のクローズバネ若しくは微弱電流を供給し続けて羽根位置を保持する必要がないなどのメリットがある。
【特許文献1】特願2005−152420号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように基板に2つ若しくは複数の電磁駆動装置を配置した場合、一方の電磁駆動装置に対して隣接する他方の電磁駆動装置から漏洩した磁界によって磁気的な影響を受ける問題がある。特に磁石ロータとして強い磁性の永久磁石を用いた場合、或いは小型化のため2つの電磁駆動装置を至近距離に接近して配置した場合にはより大きな影響を受ける。この2つの電磁駆動装置を併設した場合の磁気的影響を図11及び図12に基づいて説明すると、図示のものは本出願人が先に提案した前掲特許文献1の構造を示し、第1、第2の電磁駆動装置は同一構造の磁石ロータで構成されている。
【0008】
そこで図11は第1の電磁駆動装置B1が羽根をクローズ位置に作動した後コイルを非通電にしたとき第2の電磁駆動装置B2が同(a)のオープン位置、同(b)のクローズ位置にある状態を示す。このように第1の電磁駆動装置B1のコイルへの通電が断たれると磁石ロータの外周に対向する一対の軟磁性部材である外側ヨーク101、102は消磁され、その磁石ロータ(永久磁石70)はこの一対のヨークに磁気的に吸引され図示時計方向の回転力が働く。このとき隣接する第2の電磁駆動装置B2の磁石ロータは図11(a)の状態で最も接近した位置にN極が位置し、最も接近した位置にはN極同士が置かれることとなる。
【0009】
そこで第1の電磁駆動装置B1の磁石ロータはヨークに吸引され図示時計方向に回転して羽根をクローズ状態に維持しようとするのに対し、第2の電磁駆動装置B2の永久磁石がN極に置かれている為、その漏洩磁界で反発力が生じて第1の電磁駆動装置B1のロータには反時計方向の回転トルクが作用し不安定な状態となり、これに連結された羽根部材はクローズ位置で不安定な開閉動作を示すこととなる。
【0010】
同様に図11(b)の状態における磁気バランスも第1の電磁駆動装置B1の永久磁石70がN極であり、これに最も接近した第2の電磁駆動装置B2の永久磁石70もN極が位置した状態となる為、上記同(a)と同様の挙動を示す。この場合、第2の電磁駆動装置B2のロータをクローズ位置(図示CL)からオープン位置に時計方向に移動しようとすると第1の電磁駆動装置B1のロータから反時計方向の力を受けて羽根を確実にオープン位置に移動することが出来ない現象が起きる。
【0011】
次に図12は、第1の電磁駆動装置B1が羽根をオープン位置に作動した際、第2の電磁駆動装置B2が同(a)のオープン位置、同(b)のクローズ位置に作動された状態を示す。この状態で第2の電磁駆動装置B2のコイルへの通電が断たれるとその磁石ロータ(永久磁石70)は軟磁性部材(ヨーク)に磁気的に吸引され同(a)は時計方向の回転力、同(b)は反時計方向の回転力が作用する。このとき第1の電磁駆動装置B1の磁石ロータがS極であるため第2の電磁駆動装置B2の磁石ロータは反時計方向の回転トルクが作用し不安定な状態になり、これに連結された羽根はオープン位置で不安定な開閉動を示す。同様に同(b)のクローズ状態ではN極である第2の磁石ロータは、隣接する第1の電磁駆動装置B1の磁石ロータはS極が位置しているため逆に時計方向の回転トルクが作用し不安定な状態となる。
【0012】
このように基板に2つの電磁駆動装置を近接して配置すると一方の駆動装置に他方の駆動装置の漏洩磁束が磁気的に影響を及ぼし、正確な駆動制御の妨げとなり、特に駆動装置への電源を断った状態で磁気的な吸引力で羽根部材をオープン位置若しくはクローズ位置に維持しようとすると所定姿勢に羽根を維持することが困難となる。このような磁気的影響は2つの電磁駆動装置の取付け位置、配列方向などで装置毎に異なり機体差が生ずるためその対策が困難であるなどの問題があった。
【0013】
そこで本発明は、羽根部材を配置した基板に第1、第2、複数の電磁駆動装置を配置する際に、それぞれの磁石ロータが隣接する他の磁石ロータに磁気的な影響を及ぼすことがなく常に安定した動作斑のない円滑な作動が可能であり、特に非通電状態で羽根部材を所定位置に磁気的に確実に保持することが可能な電磁駆動装置の提供をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
課題を達成するため本発明は以下の手段を採ったものである。
光路開口を有する基板と、上記光路開口に進退自在に配置した第1、第2少なくとも2つの羽根部材と、上記基板に互いに隣接して配置した上記第1の羽根部材を開閉動する第1の電磁駆動装置と上記第2の羽根部材を開閉動する第2の電磁駆動装置を備える。そして上記第1及び第2の電磁駆動装置はそれぞれ磁石ロータと、コイルと、このコイルに生起した磁気を誘導して駆動磁界を形成するヨークとで上記磁石ロータを所定の作動角度範囲で往復動するように構成する。この上記磁石ロータは、中央に回転中心を有し、外周にN−S磁極を有する着磁領域と非着磁領域とを具えた円筒形状の永久磁石と、その回転を外部に伝達する伝動部材とから構成する。上記コイルは、供給された電流によって磁気を生起するように構成し、上記ヨークは、上記コイルに生起した磁気を上記永久磁石の外周に誘導して駆動磁界を形成する軟磁性部材で構成する。
【0015】
そこで上記第1、第2の電磁駆動装置は、各磁石ロータの作動角度範囲において上記非着磁領域が互いに近接し、上記着磁領域が互いに距離を隔てて離間するように上記基板に配置する。これによって、作動角度範囲に於いて第1第2の駆動装置は作動時に隣接する駆動装置の磁石ロータからの漏洩磁界の影響を受けることが少なく作動斑を生ずることなく確実に羽根部材を開閉駆動することが出来る。
【0016】
また、上記構成において前記永久磁石を中空円筒形状に構成し、前記ヨークは、上記永久磁石の中央中空部に配置された内側ヨークと、円筒外周部に配置された外側ヨークとから構成し、この内側ヨークと外側ヨークには前記コイルに生起した磁気によって上記永久磁石を挟んでN−S対向する磁極が形成されるようにする。これによって最も効率的な磁気回路が構成され、装置の消費電力を小さく抑えることが出来る。
【0017】
また前記外側ヨークは、前記永久磁石のN−S磁極と対向する位置に配置された一対の軟磁性部材で構成する。そして、前記第1及び第2の電磁駆動装置の前記磁石ロータには、それぞれクローズ位置とオープン位置との間で回転角度を規制する作動角度規制手段を設け、前記ヨークは、前記コイルへの非通電状態で上記各磁石ロータを上記クローズ位置及び/又はオープン位置に保持する磁気吸引力を付与する位置に配置する。このように構成することによって、磁石ロータはコイルへの通電が遮断された後、磁極誘導片がロ−タをクローズ位置及び/又はオープン位置に磁気的に吸引し角度規制手段(後述のスリット孔)に係止することとなる。
【0018】
前記第1及び第2の電磁駆動装置の前記永久磁石は、それぞれの前記着磁領域に2極のN−S磁極を形成し、この着磁領域と前記非着磁領域は円周方向の略々180度範囲に区割する。上記第1、第2の電磁駆動装置の上記N−S磁極は円周方向の異なる方向に、例えば第1の駆動装置がN極−S極のときには第2の駆動装置はS極−N極の順に配置する。このように構成することによって隣接する磁石ロータから漏洩磁束が発生したとしてもその影響を受けることがない。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、互いに隣接配置された第1、第2の電磁駆動装置の磁石ロータを円筒形状の永久磁石で構成し、この磁石ロータの外周をN−S着磁領域と、非着磁領域に区割し、それぞれの作動角度範囲で第1、第2の電磁駆動装置の非着磁領域が互いに近接し、着磁領域が互いに距離を隔てて離間するように基板に配置した為、一方の磁石ロータに他方の磁石ロータから漏洩する磁界が軽減されその影響を受けることがない。従って第1、第2の電磁駆動装置は斑のない円滑な作動が可能である。更に、第1、第2の電磁駆動装置の磁石ロータを非通電時にヨークなどの軟磁性部材に磁気的に吸引することによって羽根部材をクローズ位置及び/又はオープン位置に保持する場合に他方の磁石ロータからの漏洩磁界の影響を受けることが少なく確実な開閉動作と同時に羽根部材を所定姿勢に保持することが可能であるなどの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明を採用した光量調整装置を光量調整部側から見た外観斜視図であり、図2は同装置を背面側から見た外観斜視図である。図3は同装置の光量調節部を示す要部分解斜視図であり、図4は電磁駆動装置の分解斜視図である。図5は同電磁駆動装置の中央縦断面図であり、図4において中心部X−Xより右側の1/4部分の断面を紙面手前から平面状に図示している。
【0021】
本発明に係わる光量調整装置は、カメラ装置などの撮像装置或いはプロジエクタ装置などの投影装置の光学経路に組み込まれ、この光路を通過する光量を大小光量調整する絞り羽根(第1の羽根部材)と、光路中を通過する光量を遮断するシャッタ羽根(第2の羽根部材)とを第1、第2の電磁駆動装置で開閉動するように構成する。以下、図示の撮像装置用の光量調整装置について説明する。図3に示すようにカメラ装置の鏡筒に組込まれ、光路開口11を有する一対の板状フレーム部材である基板40と押さえ板10との間に第1の羽根部材20(図示のものは絞り羽根)と第2の羽根部材30(図示のものはシャッタ羽根)を後述する方法で開閉自在に支持し、光量調整部A(図1参照)を構成する。そしてこの基板40の背面側に第1の電磁駆動装置B1と第2の電磁駆動装置B2を取り付け、第1の電磁駆動装置B1で第1の羽根部材20を第2の電磁駆動装置B2で第2の羽根部材30を開閉動する駆動部B(図2参照)を構成する。
【0022】
以下各構成について説明する。基板40は、合成樹脂のモールド成形、或いはアルミ合金などの非磁性金属で光学機器の光路に適合する形状に構成し、その中央には光路開口41を形成する。図示の基板40は合成樹脂のモールド成形で光路開口41の周囲に図3に示す凹陥部が形成してあり、この凹陥部に第1の羽根部材20(以下絞り羽根という)と第2の羽根部材30(以下シャッタ羽根という)を組み込む。図示のものは基板40にシャッタ羽根30を、このシャッタ羽根30の上に絞り羽根20を重ね合わせてある。基板40の光路開口41の周囲にはフランジ状の突出部からガイドリブ43が形成してあり、このガイドリブ43に沿ってシャッタ羽根30が基板に一体成形(植設)した支軸46に回動自在に支持してある。図示32はシャッタ羽根30に形成した係合孔であり、この係合孔32に支軸46が嵌合する。
【0023】
また、同様に絞り羽根20はシャッタ羽根30の上に重ねられ基板に植設した支軸47に回動自在に支持してある。このシャッタ羽根30と絞り羽根20とは基板上に互いに重なり合う構造を示したが、両羽根部材の間に仕切板を介在させ、互いに開閉動する羽根相互が重ならないようにすることも可能である。
【0024】
第1、第2の羽根部材20及び30は、アルミニゥム合金、ステンレス鋼などの金属薄板で構成するか、プラスチックフィルムで適宜形状に構成する。図示の羽根部材は黒色顔料を含侵したポリエステル樹脂などの板状材をプレス加工で打抜き成形してある。そして絞り羽根20には上述の係合孔23と絞り孔21が穿設してあり、この絞り孔21が光路開口41に位置するときは小口径に通過光量を調整する。従って撮影条件に応じてこの絞り羽根20を光路開口41から退避した位置(オープン状態)に移動すると最大口径に、またこの絞り羽根20を光路開口41に臨む位置(クローズ状態)に移動すると撮影光量を小口径に調整することが可能となる。シャッタ羽根30は、上述の係合孔32と光路開口41に臨んで該開口を閉成する遮蔽部31とが設けられている。
【0025】
また上記絞り羽根20及びシャッタ羽根30には後述する電磁駆動装置Bの伝動部材60に形成した駆動ピン61の係合溝33及び22がそれぞれに形成されている。尚、上記基板40には、後述する第1及び第2の電磁駆動装置B1、B2を取付ける係止溝42が2箇所に形成してある。これと同時に基板40には第1の電磁駆動装置B1の駆動ピン61を挿通するスリット孔44と第2の電磁駆動装置B2の駆動ピン61を挿通するスリット孔45が設けてある。このように構成された基板41には略々同一形状の押さえ板10が羽根部材を覆うように重ね合わせられ、一体化されている。
【0026】
図示の押さえ板10は金属薄板で構成され、撮像光軸Y−Yを中心とし、前記基板40に形成した光路開口41と同一若しくは若干小径の開口が設けられ、この開口が撮像光学系の光学開ロ(アパーチャー)11を形成している。この光学開口11が最大開口径を形成することとなる。
【0027】
以上説明した第1、第2の羽根部材20及び30は、絞り羽根とシャッタ羽根をそれぞれ1枚の羽根で構成する場合を示したがこの両者は2枚若しくは複数枚の羽根部材で構成しても良く、その組み合わせ構造は種々のものが既に知られている。この複数の羽根部材について代表的な構成を説明すると、光路開口41の周囲に3枚構成若しくは5枚構成その他複数の羽根部材を等間隔に基端部を回動自在に軸支持し、各羽根部材の端部を鱗状に重ね合わせて光路開口41に配置する。そしてこの複数の羽根部材を光路開口41の周囲に配置した伝動リングに係合し、このリングを旋回動することによって羽根部材を同一量ずつ回転する。すると絞り羽根構成の場合には、羽根先端部が光路開口の中心に絞り口径を形成し、羽根部材の回転量に応じてその絞り口径は大小に変化する。またシャッタ羽根の場合には羽根先端部が互いに重なり合って光路開口を遮蔽する。
【0028】
また、これと異なる複数の羽根構造として、光路開口の左右に一対の羽根部材を直線方向に摺動自在に基板に取り付ける。そしてこの左右の羽根部材を相反方向に移動し、絞り羽根の場合に羽根先端部に円形状の口径を設けて羽根の重なり度合いによって口径が大小に変化するようにする。またシャッタ羽根の場合には左右の羽根部材の先端部が互いに重なり合って開口を遮蔽するように構成する。
【0029】
このように本発明は、第1及び第2の羽根部材20、30をそれぞれ図示のように1枚のブレードで構成しても、複数枚のブレードで構成してもいずれでも良く、複数枚のブレードで構成する場合は複数の羽根を互いに重ね合わせてその先端が光路開口41に臨むように配置する。そして各ブレードに直接電磁駆動装置の伝動部材を係合連結するか、或いは伝動リングなどの伝動手段を設けて各ブレードに係合連結し、この伝動手段を電磁駆動装置の伝動部材(後述の駆動アームの駆動ピン)に連結する。
【0030】
次に電磁駆動装置Bについて図4乃至図7に従って説明する。上述のように絞り羽根20を開閉動する第1の電磁駆動装置B1とシャッタ羽根30を開閉動する第2の電磁駆動装置B2は前記第1及び第2の羽根部材20、30を組み込んだ基板40に取付けられ、各羽根部材に伝動部材60を介して連結される。この電磁駆動装置Bは図2に示すように第1の電磁駆動装置B1と第2の電磁駆動装置B2とが互いに隣り合わせて基板40に併設される。両者は、後述する磁石ロータMの構成が異なる他、同一の駆動原理で構成されている。
【0031】
まずこの同一の駆動原理について説明すると、図示の電磁駆動装置Bは、外周にN−S磁極を着磁形成した円筒形状の永久磁石70と、この永久磁石70の回転を外部に伝達する伝動部材60と、上記永久磁石70の磁極と対向する駆動磁界を形成するヨーク100と、このヨーク100に磁界を生起する励磁コイル81とから構成される。そして永久磁石70と伝動部材60とは一体化され磁石ロータMを構成し、励磁コイル81とこれを巻回するコイル枠80とヨーク100とでステータを構成する。永久磁石70は例えばネオジウム希土類プラスチックその他適宜の強磁性材料を中空円筒形状に焼成し、その外周にN−S磁極を着磁形成する。
【0032】
図示の永久磁石70は中空に形成してあるが、これは中空内部に軸形状の軟磁性材を挿通し、この軟磁性材で励磁コイル81に生起した磁気を誘導して永久磁石70の着磁磁界に対向する駆動磁界形成する内側ヨーク90を構成するためである。この内側ヨーク90は後述の外側ヨーク100と協働して効率的な駆動磁界を形成するためであり、効率を考慮しないときにはその構成を省くことが出来、この場合は永久磁石70を中空形状にする必要はない。また永久磁石70の外周に形成する磁極は第1の電磁駆動装置B1と第2の駆動装置B2とでは異なった構成を採用するが詳細は後述する。
【0033】
上記構成の永久磁石70には、その回転を外部に伝達するアーム形状の伝動部材60が次のように一体的に取付けられる。上記永久磁石70には液晶ボリマー等の樹脂材料でホルダー部材(上述の伝動部材)60が例えばインサート成形で一体に取付けられ、このホルダー部材60には永久磁石70と接合するフランジ部62と、永久磁石70の中空部に嵌合する軸受部63とが形成されている。この軸受け部63には非磁性特性を有する軸受孔64が図5に示す回転軸心X−Xと永久磁石70の外周に形成した磁極(円筒形状)の中心が一致するように設けてある。この樹脂材料で形成された軸受孔64は非磁性特性を有することとなる。このホルダー部材60には軸心(図5X−X)を中心に所定距離隔てた位置に伝動部材61(以下伝動ピンという)がピン状の突起で形成してある。
【0034】
そこで永久磁石70とホルダー部材60とで構成される磁石ロータMは、内側ヨーク90の軸部91に上記の軸受孔64が嵌合され、この軸部を中心に回動自在に支持される。尚ホルダー部材60にはリブ65が形成され、その回転運動がガタつきなく円滑に行えるようになっている(詳細は後述する)。上記励磁コイル81は図4に示すコイル枠82が合成樹脂のモールド成型で構成され、このコイル枠80は中央に内側ヨーク90を挿通する嵌合部と、その外周にコイルを巻回するコイル巻回部82と、コイルの端縁を結線する口出し処理ステム83、84が一体形成されている。図示100は装置外筺を兼ねる外側ヨークであり、その一部若しくは全体が鉄などの軟磁性材で形成される。
【0035】
図示のものは図4に示すように鉄材料で外筺を形成するように筒形状に外側ヨーク100を形成し、この筒型の外側ヨーク100に1つ若しくは2つの磁極誘導片101、102を設け、筒形状の底部にコイル枠80と内側ヨーク90が取付けてあり、内側ヨーク90はその軸端部93をカシメなどによって外側ヨークの底部に固定されている。従って内側ヨーク90にコイル枠80が組み込まれ、内側ヨーク90で固定され、この外側と内側のヨークはいずれも軟磁性材料でその端部が一体に連結されることとなる。
【0036】
そして励磁コイル80に通電すると、これに生起した磁気は内側ヨーク90と外側ヨーク100に誘導され、両ヨークの先端部に磁極が形成される。外側ヨーク100を構成する磁極誘導片101、102は永久磁極70の外周に形成された磁極と少許の間隙を形成して対向する位置に配置され、この磁極誘導片101、102の端部はキャップ状の取付け板50に固定される。図示の取付け板50は非磁性材からなる金属板材をプレス加工により成形したものであり、非磁性剤で構成したのは図6に示すように内側ヨーク90と外側ヨーク100とで磁石ロータMを挟んで磁気回路を構成するようにするためである。図示51は取付け板に形成した切り欠きであり、この切り欠き51を弾性変形させて磁極誘導片の先端部を嵌合固定する。また取付け板50には内側ヨーク90の軸端部95を嵌合支持する軸穴53と、伝動ピン61の逃げ溝52が設けてある。
【0037】
従って、外側ヨーク100にコイル枠80を組込み、内側ヨーク90の軸端部93を固定すると、内側ヨーク90に形成した鍔部94がコイル枠80を係止して固定し、次いで内側ヨーク90の軸部91に磁石ロータMの軸受け孔64を回動自在に嵌合し、その後取り付け板50を内側ヨークの磁極誘導片101と102に固定すると電磁駆動装置Bが組上がることとなる。この状態で前記ホルダー部材60に形成した突起状のリブ65は取り付け板50の壁面に当接して磁石ロータのスラスト方向のガタつきを防止するのと同時にその回転運動を円滑にする。従ってこのリブ65は、図示の突起に限らず円環状のリブであっても良く、ホルダー部材60か、取付け板50のいずれか一方に形成すればよい。
【0038】
また、上記構成において内側ヨーク90と永久磁石70とは磁気的に導通しないように配慮する必要があり、図示のものは合成樹脂製のホルダー部材60を介して軸受け嵌合してあるが、内側ヨーク90の外周に非磁性体のスリーブを設け、このスリーブに永久磁石70を軸受け嵌合する構造であっても良い。このように、軸形状に形成した内側ヨーク90の外周面に、中空円筒形状の磁石ロータMの内周面を嵌合することによって磁石ロータMを軸受け支持したので、従来の磁石ロータに先鋭状の回転軸を設けてコイル枠などに軸受け支持する構造に比べ、円滑な回転運動が得られる。
【0039】
また、図示構造の磁石ロータMは永久磁石70とホルダー部材60との2部品で2体構造にしてあるが、永久磁石70をプラスチックマグネットで構成し、伝動ピンなどの伝動部材を一体成形することも可能であり、このように構成すると永久磁石とホルダー部材とを接着或いはインサート成形する場合に比べ、機械的強度と位置精度に富だ小型な磁石ロータに構成することが可能である。
【0040】
更に、図示構造にあって、外側ヨーク100と内側ヨーク90とを磁気的に連結するのと同時にカシメなど構造的に一体連結すると機械的強度が増し、堅牢な装置外筺を構成することが出来、磁石ロータMを構成する永久磁石70をその中心部に位置する内側ヨーク90と外周部に位置する外側ヨーク100とで挟む状態で駆動磁界を形成することによって効率的な駆動磁界を形成することができ、励磁コイル81の消費電力を小さくすることが出来る。尚、図示の外側ヨーク100には磁極誘導片101と102を距離を隔てて2箇所に配置してあるが、これは後述する磁石ロータMの永久磁石70にN−S磁界を交互に配置する関係で一方の磁極誘導片は磁気的に吸引し他方の磁極誘導片は磁気的に反発して磁石ロータに同方向の回転トルクを付与するようにするためである。
【0041】
次にヨークとロータとの磁気回路について説明する。
「永久磁石の磁極形成」
前記永久磁石70は前述のように図5回転軸心X−Xを中心とする円筒形状に構成されているが、本発明は図7に示すように円筒形状に焼成した強磁性体に着磁処理を施す際に円筒形状の周方向を2つに区割する。そしてその片側の半円部にN極とS極を着磁形成して着磁領域を形成する。そして残りの半円部には着磁処理を施さない非着磁領域を設ける。この着磁領域に形成したN極とS極に対向するように外側ヨークの磁極誘導片101と102が配置してある。このように外側ヨークを構成する磁極誘導片をN−S極それぞれに対向する位置に配置したのは1つの磁極誘導片に比べより大きい回転トルクを得るためである。従って、この一対の磁極誘導片は永久磁石70の外周に形成されたそれぞれの磁極から同一方向の回転トルクを得るような位置関係に配置される。
【0042】
図7(a)は一対の磁極誘導片101、102にN極を帯びさせた場合を示し、一方の磁極誘導片101には永久磁石のS極が対向して反時計方向の回転力を得る位置に配置してあり、このとき他方の磁極誘導片102には永久磁石のS極が対向して反時計方向の回転力を得るような位置関係に配置してある。図7(b)は一対の磁極誘導片101、102にS極を帯びさせた場合を示し、磁極誘導片101には永久磁石のS極が対向し、他方の磁極誘導片102にはN極が対向してそれぞれ時計方向の回転トルクを得るようになっている。このように磁極誘導片を複数配置する場合は磁石ロータMに相反する方向の回転力を付与しないよう配置する。
【0043】
「ヨークへの磁極形成」
前述のように内側ヨーク90と外側ヨーク100とはそれぞれ軟磁性材でその一端を磁気的に連結され、その一部に励磁コイル81が巻回してある。従って励磁コイル81に電流を供給すると内側ヨーク90と外側ヨーク100には、その一方にN極が他方にS極が形成され、逆電流を供給するとN−S極が反転し、磁石ロータMに及ぼす回転力も反転する。そしてこの内側ヨーク90と外側ヨーク100とは磁石ロータMの永久磁石70に形成した磁極を挟んで対向する位置関係に配置され、両ヨークの間に形成される磁界を永久磁石70が過ぎるような関係になっている。
【0044】
「作動角度規制手段」
上記構成において、磁石ロータMは励磁コイルへの通電で時計方向および反時計方向に回転するが、この回転力は永久磁石70に形成された磁極範囲内に限られ、図示のものは最大90度範囲であり、さらにコントロール可能な角度範囲はこれより小さい。一方、前述のように磁石ロータMには伝動部材(伝動ピン)61がその回転を外部に伝達するようにアーム形状に設けられている。この伝動ピン61は基板40に形成したスリット孔44及び45に貫通され第1、第2の羽根部材20、30に形成した係合溝23及び33に係合している。つまり第1の電磁駆動装置B1の伝動ピン61はスリット孔44に挿通され第1の羽根部材20の係合溝23に係合し、第2の電磁駆動装置B2の伝動ピン61はスリット孔45に挿通され第2の羽根部材30の係合溝33に係合している。
【0045】
そこで第1及び第2の電磁駆動装置B1、B2の伝動部材60にはその作動角度を規制する作動角度規制手段が設けられる。この規制手段は、磁石ロータ自体或いは羽根部材自体に運動規制ストッパーを適宜な構成で設けても良いが、磁石ロータから羽根部材に至る伝動部材に設けるのが一般的である。図示のものは特別なストッパー部材を設けることなく、上述のスリット孔44及び45で運動規制ストッパーを兼用する構造を採用している。
【0046】
図示の第1、第2の電磁駆動装置B1、B2の作動角度規制手段は同一構造であるのでその一方について説明する。図7に示すようにスリット孔44及び45は磁石ロータMが所定角度、例えば60度範囲で揺動回転するように伝動部材(伝動ピン61)を規制する。図示スリット孔(44および45;以下同様)の左限に伝動ピン61が位置する同図(a)の状態で、絞り羽根20はクローズ位置(羽根先端が光路開口に進入した位置)、シャッタ羽根30はオープン位置(羽根先端が光路開口から退避した位置)に位置するように連結されている。また図示スリット孔の右限に伝動ピン61が位置する同図(b)の状態で、絞り羽根20はオープン位置(羽根先端が光路開口から退避した位置)、シャッタ羽根30はクローズ位置(羽根先端が光路開口に進入した位置)に位置するように連結されている。
【0047】
「羽根部材の位置保持」
第1及び第2の羽根部材20、30は前記励磁コイル81に通電しない状態でオープン位置および/又はクローズ位置に保持する必要がある。絞り羽根の場合設定した光量(例えばクローズ位置)が撮影中に羽根が振動その他の衝撃で移動することがあり、また装置の非使用時にクローズ位置に保持して太陽光などが撮影装置内に長時間進入しないようにする必要がある。同様にシャッタ羽根はクローズ位置の羽根がモニタリングなど撮影準備中に開口して異常露光を招く恐れがある。
【0048】
そこで各羽根部材は、装置の非使用時(ノーマル状態)にオープン位置か若しくはクローズ位置に保持する必要があり、従来クローズバネなどスプリングの付勢力を作用させることが知られている。また羽根部材は装置の使用中であっても設定した位置に保持する必要があり、絞り羽根の場合撮影中に設定した光量に羽根を維持してシャッタ動作など撮影を実行し、シャッタ羽根の場合、露光前のモニタリングの際に羽根をオープン位置に維持する必要がある。従来この場合コイルに微弱電流を通電して羽根位置を保持しているが消費電力を要する問題がある。
【0049】
そこで図示実施例のものは、羽根部材をオープン位置又はクローズ位置若しくはオープン位置とクローズ位置の両位置で磁石ロータMが磁気的に保持されるように構成している。このような磁気的な保持は永久磁石70の磁極をクローズ方向及び/又はオープン方向に吸引なする方法であり種々の方法が知られている。その1つは鉄片などの軟磁性部材で磁石ロータを吸引する方法であり、他の方法は軟磁性部材のヨークに切欠きなどで磁力集中その他の磁気的変化域を設ける方法である。図示実施例に示す前者の軟磁性部材で吸引する場合を説明すると、前記の外側ヨークは少なくともその磁極誘導片が軟磁性材で構成されている関係で、この磁極誘導片は励磁コイルに通電しない状態では永久磁石の磁極と互いに吸引する性質を有することを利用している。
【0050】
前述のように磁極誘導片は、1つであっても良いが対向する位置に2つ設けることが好ましく。図示のものは磁極誘導片101と102が図7(a)(b)の状態に配置されている。この配置関係は永久磁石70に形成した磁極の周方向中心と磁極誘導片101、102が距離を隔てて偏心する位置になっている。つまり磁石ロータMの永久磁石70に形成した磁極の磁界は周方向の中心が最も強く、この中心が磁極誘導片の軟磁性部材に接近した位置が磁気的に安定する。
【0051】
図7(a)の状態では磁石ロータMに形成された磁極はS極と磁極誘導片101が対向し、磁極誘導片102は磁石ロータの非着磁領域と対向する位置に配置されている。この状態では磁石ロータのS極が磁極誘導片101に吸引されて反時計方向に回転し、磁石ロータは伝動ピン61がスリット孔44(45)の左限に係止され図示位置に保持される。また同図(b)の状態では磁極誘導片102に磁石ロータMのN磁が対向し、他方の磁極誘導片101には非着磁領域が対向している。従って磁石ロータMは磁極誘導片102に吸引されて図示時計方向の回転力を得るため磁石ロータはその伝動ピンがスリット孔44(45)の右限位置で係止され図示位置に保持される。
【0052】
以上第1及び第2の羽根部材20、30をオープン位置とクローズ位置との両位置で磁気的に保持する場合を説明したが、これはいずれか一方の位置でのみ磁気的に保持することも可能で、その場合は磁石ロータの磁極と磁極誘導片との相対的位置がシフトするようにスリット孔44(45)を配置すればよい。
【0053】
「第1、第2の電磁駆動装置の磁極配置関係」
図示装置は、第1の電磁駆動装置B1と第2の電磁駆動装置B2を図2に示すように隣接して基板40に第1と第2の電磁駆動装置B1、B2を配置している。そして第1の電磁駆動装置B1は反時計方向回転で絞り羽根がオープン位置からクローズ位置に移動し、第2の電磁駆動装置B2は逆にシャッタ羽根が反時計方向回転でクローズ位置からオープン位置に移動するように対称に配置されている。そこで第1と第2の磁石ロータは図9及び図10に示す磁極位置関係にしてある。
【0054】
つまり一方の駆動装置が作動して羽根を開閉し、その後その位置に羽根を保持する際に、他方の駆動装置の磁石ロータからの漏洩磁界によって、先に図11、12に基づいて説明したようにその作動に悪影響を及ぼさないように配慮する必要がある。このため本発明は第1、第2の電磁駆動装置B1、B2の磁石ロータが作動角度範囲においてそれぞれ非着磁領域が近接し、着磁領域が距離を隔てて離間するように配置してある。
【0055】
つまり図9(a)の絞り羽根がクローズ位置でシャッタ羽根30がオープン位置のとき、第1の電磁駆動装置B2の伝動ピン61は図示CL位置(前述の図7スリット孔の左限)に係止され、第2の電磁駆動装置B2の伝動ピン61は図示OP位置(図7のスリット孔の左限)に係止されている。このとき第1、第2の磁石ロータは非着磁領域が互いに近接し、着磁領域は距離を隔てて離間している。従って第1の磁石ロータをCL位置、第2の磁石ロータをOP位置に磁気的若しくはスプリングなどの付勢力で位置保持しようとするとき、隣接する駆動装置からの漏洩磁界の影響を受けることがない。
【0056】
図9(b)の状態、第1の電磁駆動装置B1が絞り羽根20をクローズ位置に、第2の電磁駆動装置B2がシャッタ羽根30をクローズ位置に移動した状態のときには、第1、第2の磁石ロータは非着磁領域がそれぞれ対向し前述の場合と同様に第1、第2の駆動装置を駆動する際、或いは第1、第2の磁石ロータをCL位置に磁気的に保持するとき隣接する駆動装置からの漏洩磁界の影響を受けることがない。
【0057】
図10の状態は、図(a)は第1の電磁駆動装置B1がオープン位置(伝動ピン61が図示OP位置)、第2の電磁駆動装置B2がオープン位置(伝動ピン61が図示OP位置)に位置している場合を、同図(b)は第1の電磁駆動装置B1がオープン位置(伝動ピン61が図示OP位置)で第2の電磁駆動装置B2がクローズ位置(伝動ピン61が図示CL位置)にある場合を示しているが、第1、第2の磁石ロータはいずれも非着磁領域が近接して隣り合う位置関係になっている。更に、図示実施例は、図9(a)(b)、図10(a)(b)で説明した磁石ロータの配置関係において距離を隔てて離間した位置に配置されている着磁領域にはN−S磁極が円周方向の異なる方向に配置してある。つまり記第1磁石ロータは時計方向にN極S極の順に着磁してあるのに対し第2磁石ロータはS極N極の順に着磁してある。つまり第1、第2の磁石ロータは図示上半部にS極が下半部にN極が位置するように配置されている。
【0058】
次に本発明の作用を説明する。
図6において励磁コイル81に電流を供給するとコイルに生起した磁界によって外側ヨーク100と内側ヨーク90は磁化される。このとき内側ヨーク90と外側ヨーク100は磁気的に一端が連結され、他端は磁石ロータMを介して対向し、外側ヨーク100がN極の場合は内側ヨーク90がS極となり、外側ヨーク100がS極の場合は内側ヨーク90はN極となる。つまり外側ヨーク100と内側ヨーク90とは軟磁性部材で形成されカシメ、溶接によって固定された一端で磁気的に連結されている。棒状の内側ヨーク90先端と外側ヨーク100の磁極誘導片101、102先端には永久磁石70を挟んで対向する磁極(N−S極)が形成される。
【0059】
そこで磁石ロータMは図7に示すように中空円筒形状の外周の着磁領域に2極着磁されており、また伝動ピン61は、この分極部の1箇所に対向する位置で非着磁領域に配置されている。そしてN−S2極に着磁されたロータMは分極位置を中心に所定角度時計方向及び反時計方向に揺動し、その角度範囲は前記基板40のスリット孔44、45によって回動領域が規制されている。従って図7(a)の磁極誘導片101、102がN極、内側ヨーク90がS極の場合には、磁極誘導片101、102のN極とロータMのS極が磁気吸引され、同時にそのN極は磁気的に反発されるので磁石ロータMは反時計方向に回転する。
【0060】
この磁石ロータMの回転は伝動ピン61が基板40のスリット孔44、45に当接する位置で停止される。この位置では励磁コイル81への通電が遮断(OFF)されても磁極誘導片101、102に近い(近接)位置に磁石ロータMの磁極(S極)が位置している為、磁石ロータMの永久磁石70が磁性体である磁極誘導片101、102に吸引されその位置に保持される。
【0061】
次に励磁コイル81に逆方向の電流を供給すると図7(b)に示すように外側ヨーク100の磁極誘導片101、102にS極、内側ヨーク90にN極が形成される。この状態では磁極誘導片101、102のS極と磁石ロータMの極が磁気吸引され、磁石ロータMのS極は磁気的に反発されるので磁石ロータMは時計方向に回転し、伝動ピン61が基板40のスリット孔44、45に規制され停止するまで回転する。この状態で励磁コイル81の通電が遮断されても前述と同様磁石ロータMのN極が磁性体である磁極誘導片101、102に吸引され伝動ピン61が長孔(スリット)44、45の端縁に係止された状態で保持される。このように外側ヨーク100は磁石ロータMを構成する磁石ロータの着磁領域に少なくとも1箇所、或いはN−S各磁極と対向する2箇所に配置することによってより大きな回転トルクが得られるのと同時に励磁コイル81への通電をOFFした際に絞り羽根20をオープン位置とクローズ位置とに保持することが可能となる。
【0062】
以上説明した実施例では永久磁石70を周方向にN−S2極着磁する場合を示したがこれは周方向への着磁と同時に径方向にN−S極が形成されるように着磁しても良い。このような着磁構成によって磁石ロータMの内周側の磁極と内側ヨーク90の楕円形状の近接部との磁気吸引によって生起する回転力方向は磁石ロータM外周側に生起する回転力方向と同一方向となるので電磁駆動装置の駆動トルクが向上する。特に図1のものと同様に棒軸状に内側ヨーク90の基端部93に励磁コイルを配置し、この内側ヨーク90の先端部をロータに近接するように配置し、中央部に軸部91を設けているので、磁極が大きく生起する内側ヨーク90の先端部とロータとの磁気吸引力が軸受構造によって影響を受けることがなく、小さな消費電力で大きな回転力を得ることが出来る。更に、第1、第2磁石ロータは着磁領域と非着磁領域とを略々180度で区割した場合を示したが、非着磁領域は180度以下であってもそれ以上であっても良く、ロータの作動角度と、漏洩磁界の関係から最適な角度領域に形成すればよい。
【0063】
「異なる実施例の説明」
次に図8に示す変形実施例について説明する。図示のものは永久磁石70を一体に保持するホルダー部材60を前述のものと同様に内側ヨーク90の軸部91に嵌合支持するに際し、前述のものが取付部材50とコイル枠体80との間でスラスト方向に移動しないように支持するのに対し、以下の構造を採用したものである。前述のものと同一構成同一機能の構成要素については同一番号を付してその説明を省略する。
【0064】
樹脂のモールド成形で永久磁石70と伝動部材61(伝動ピン)を一体に構成した支持部材60には取付部材50と当接する接合面65と内側ヨーク90に当接する接合面66が図示の位置に設けてある。そして接合面65は支持部材60から取付部材50側に突出するリブで構成してあり、接合面66は内側ヨーク90側に突出するリブで構成してある。これらのリブは支持部材の端面に少なくとも1箇所に形成されれば良く、好ましくは平面方向3箇所に形成される。また、先の説明で、磁石ロータMを取付部材50とコイル81を巻廻するコイル枠体80との間で前記内側ヨーク90の軸部91に摺動自在に支持し、前記取付部材50と前記コイル枠体80との接合面にそれぞれリブ65、66を形成する場合について説明したが、これらの構造に限定されず図8で示す様に内側ヨーク90の軸部91に軸長方向(スラスト方向)止下の端面に適宜数力所にリブを形成することによってロータ摺動時の摩擦負荷を軽減することが出来る。この場合にリブはスペースの関係で、取付部材50の当接面側のみに形成している。
【0065】
以上の説明から判るように両電磁駆動装置の対峙隣接することで、互いに磁気的干渉による磁気的影響が良い方向に作用し作動斑が少なく、特にコイルが非通電状態における互いの電磁駆動装置の磁気作用により保持位置が安定し維持される。また上記実施例では各種カメラ装置の撮像鏡筒に組込まれる光量調整装置について説朋したが、プロジェクタなどの投影装置、その他の光学機器の光量調整装置として適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係わる光量調整装置の表側からの全体斜視図。
【図2】本発明に係わる光量調整装置の裏側からの全体斜視図。
【図3】図1の装置の組立て分解斜視図。
【図4】電磁駆動装置の組立て分解斜視図。
【図5】図4の装置における駆動部(駆動装置)の中央縦断断面図。
【図6】図4の装置における駆動部の磁気回路の説明図。
【図7】図4の装置の動作状態説明図であり、(a)はコイルに正方向の電流を供給した場合を示し、(b)は逆方向の電流を供給した場合を示す。
【図8】図5の装置と異なる駆動部(駆動装置)の変形例を示す中央縦断断面図。
【図9】図4の装置の動作状態説明図であり、(a)は第1の電磁駆動装置がクローズ位置、第2の電磁駆動装置がオープン位置の状態図であり、(b)は第1の電磁駆動装置がクローズ位置、第2の電磁駆動装置がクローズ位置の状態図である。
【図10】図4の装置の動作状態説明図であり、(a)は第1の電磁駆動装置がオープン位置、第2の電磁駆動装置がオープン位置の状態図であり、(b)は第1の電磁駆動装置がオープン位置、第2の電磁駆動装置がクローズ位置の状態図である。
【図11】本発明に先行する特許文献1に開示された電磁駆動装置の動作状態を示し、(a)は第1の電磁駆動装置がクローズ位置、第2の電磁駆動装置がオープン位置の状態図であり、(b)は第1の電磁駆動装置がクローズ位置、第2の電磁駆動装置がクローズ位置の状態図である。
【図12】本件発明に先行する特許文献1に開示された電磁駆動装置の動作状態を示し、(a)は第1の電磁駆動装置がオープン位置、第2の電磁駆動装置がオープン位置の状態図であり、(b)は第1の電磁駆動装置がオープン位置、第2の電磁駆動装置がクローズ位置の状態図である。
【符号の説明】
【0067】
A 光量調整部
10 押え板
20 絞り羽根
30 シャッタ羽根
40 基板
B 電磁駆動装直
B1 第1の電磁駆動装置(絞り駆動装置)
B2 第2の電磁駆動装置(シャッタ駆動装置)
M ロータ
50 取付部材(フレーム部材)
60 支持体
64 軸受部
65 リブ
66 リブ
70 永久磁石
80 コイル枠体
81 励磁コイル
90 内側ヨーク
91 軸部
100 外側ヨーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路開口を有する基板と、
上記光路開口に進退自在に配置された第1、第2少なくとも2つの羽根部材と、
上記基板に互いに隣接して配置され上記第1の羽根部材を開閉動する第1の電磁駆動装置と上記第2の羽根部材を開閉動する第2の電磁駆動装置とを備え、
上記第1及び第2の電磁駆動装置はそれぞれ磁石ロータと、コイルと、このコイルに生起した磁気を誘導して駆動磁界を形成するヨークとで上記磁石ロータを所定の作動角度範囲で往復動するように構成した光量調整装置において、
上記磁石ロータは、中央に回転中心を有し、外周にN−S磁極を有する着磁領域と非着磁領域とを具えた永久磁石と、
その回転を外部に伝達する伝動部材とから構成され、
上記コイルは、供給された電流によって磁気を生起するように構成され、
上記ヨークは、上記コイルに生起した磁気を上記永久磁石の外周に誘導して磁界を形成する軟磁性部材で構成され、
上記第1、第2の電磁駆動装置は、上記各磁石ロータの作動角度範囲において上記非着磁領域が互いに近接し、上記着磁領域が互いに距離を隔てて離間するように上記基板その他の装置フレームに配置されていることを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
前記永久磁石は中空円筒形状に構成され、
前記ヨークは、上記永久磁石の中央中空部に配置された内側ヨークと、円筒外周部に配置された外側ヨークとから構成され、
この内側ヨークと外側ヨークには前記コイルに生起した磁気によって上記永久磁石を挟んでN−S対向する磁極が形成されることを特徴とする請求項1に記載の光量調整装置。
【請求項3】
前記外側ヨークは、前記永久磁石のN−S磁極と対向する位置に配置された一対の軟磁性部材で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光量調整装置。
【請求項4】
前記第1及び第2の電磁駆動装置の前記磁石ロータには、それぞれクローズ位置とオープン位置との間で回転角度を規制する揺動角度規制手段が設けられ、
前記ヨークは、前記コイルへの非通電状態で上記各磁石ロータを上記クローズ位置及び/又はオープン位置に保持する磁気吸引力を付与する位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調整装置。
【請求項5】
前記第1及び第2の電磁駆動装置の前記永久磁石は、それぞれの前記着磁領域に2極のN−S磁極が形成され、
この着磁領域と前記非着磁領域は円周方向の略々180度範囲に区割され、
上記第1、第2の電磁駆動装置の上記N−S磁極は円周方向の異なる方向に配列されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の光量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−47281(P2007−47281A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229535(P2005−229535)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(000231589)ニスカ株式会社 (568)
【Fターム(参考)】