説明

光電変換モジュール

【課題】小型化を図ったとしても、光ファイバーの先端部の接続強度が確保されて信頼性が高い光電変換モジュールを提供する。
【解決手段】光電変換モジュール(24)は、透光性及び可撓性を有する回路基板(26)の一方の面に実装されたICチップ(34)及び光電変換素子(32)と、回路基板(26)の他方の面に設けられた樹脂層(40)に形成された保持溝(42)内に配置された先端部を有する光ファイバー(23)と、保持溝(42)を覆う補強部材(46)と、光ファイバー(23)の先端と光電変換素子(32)とを回路基板(26)を通して光学的に結合する光学要素とを備える。保持溝(42)は、ICチップ(34)及び光電変換素子(32)の配列方向でみて、ICチップ(34)側に位置する樹脂層(40)の端に開口端を有し、光ファイバー(23)の先端部の少なくとも一部は、ICチップ(34)に沿って延びている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電変換モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばデータセンターにおけるサーバとスイッチ間の接続や、デジタルAV(オーディオ・ビジュアル)機器間の接続では、伝送媒体として、メタル線の外に、光ファイバーも用いられている。また、近年、携帯電話やパーソナルコンピュータ等の情報処理機器においても、伝送媒体として光ファイバーを用いること(光インターコネクト)が検討されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
光ファイバーを用いる場合、電気信号を光信号に、或いは、光信号を電気信号に変換する光電変換モジュールが必要になる。例えば、特許文献2が開示する光電変換モジュールは、フレキシブル基板を備え、フレキシブル基板に、光電変換素子としての発光素子又は受光素子が、ICチップとともに実装される。また、フレキシブル基板には光導波路が一体に形成され、光導波路に形成された溝内に、光ファイバーの先端部が固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−21459号公報
【特許文献2】特開2010−10254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2が開示する光電変換モジュールにおいては、フレキシブル基板がICチップの側面を超えて延出し、この延出したフレキシブル基板の部分に光ファイバーの先端部が固定されている。このため、この光電変換モジュールにおいては、フレキシブル基板の小型化を図ることが困難であった。すなわち、この光電変換モジュールには、フレキシブル基板の小型化を図った場合、フレキシブル基板に対して光ファイバーの先端部が固定される長さが短くなり、光ファイバーの接続強度が弱くなってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされ、その目的とするところは、小型化を図ったとしても、光ファイバーの先端部の接続強度が確保されて信頼性が高い光電変換モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、透光性及び可撓性を有する回路基板と、前記回路基板の一方の面に相互に隣り合って実装されたICチップ及び光電変換素子と、前記回路基板の他方の面に設けられた樹脂層であって、前記回路基板に沿って保持溝が形成された樹脂層と、前記保持溝内に配置された先端部を有する光ファイバーと、前記樹脂層の保持溝を覆う補強部材と、前記光ファイバーの先端と前記光電変換素子とを前記回路基板を通して光学的に結合する光学要素とを備え、前記保持溝は、前記ICチップ及び前記光電変換素子の配列方向でみて、前記ICチップ側に位置する前記樹脂層の端に開口端を有し、前記光ファイバーの先端部の少なくとも一部は、前記ICチップに沿って延びている、光電変換モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型化を図ったとしても、光ファイバーの先端部の接続強度が確保されて信頼性が高い光電変換モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態の光電変換モジュールを用いた光配線を備える携帯電話の概略的な構成を示す斜視図である。
【図2】図1の携帯電話に用いられる第1マザー基板及び第2マザー基板ととともに、光配線を示す概略的な斜視図である。
【図3】一実施形態の光電変換モジュールの外観を概略的に示す斜視図である。
【図4】図3の光電変換モジュールを別方向から見た外観を、補強部材を取り外した状態で概略的に示す斜視図である。
【図5】第2マザー基板に取り付けられた状態の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図6】図3中のFPC基板の概略的な平面図である。
【図7】第2マザー基板に取り付けられた状態の変形例の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【図8】第2マザー基板に取り付けられた状態の変形例の光電変換モジュールの概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、携帯電話10の外観を概略的に示す斜視図である。携帯電話10は例えば折り畳み型であり、第1ケース11と第2ケース12がヒンジを介して連結されている。第1ケース11には液晶パネル14が設置され、第2ケース12にはボタン16が設置され、利用者は、液晶パネル14に表示される画像から情報を得ることが出来る。
【0011】
図2は、第1ケース11及び第2ケース12内にそれぞれ配置された第1マザー基板18及び第2マザー基板20を示している。図示しないけれども、第1マザー基板18には液晶パネル14のドライブ回路を構成する電気部品が実装され、第2マザー基板20には、ボタン16と接続される入力回路、通信回路及び画像処理回路を構成する電気部品が実装されている。
【0012】
第1マザー基板18のドライブ回路と第2マザー基板20の画像処理回路とは、光配線22によって接続されている。即ち、ドライブ回路は、画像処理回路から光配線22を通じて画像データを受け取り、受け取った画像データに基づいて画像を液晶パネル14に表示させる。
【0013】
〔光電変換モジュール〕
光配線22は、光ファイバー23と、光ファイバー23の両端に一体に設けられた一実施形態の光電変換モジュール24,24とからなる。
図3は、光電変換モジュール24の外観を概略的に示す斜視図である。光電変換モジュール24は、FPC(フレキシブルプリント回路)基板26を備え、FPC基板26は、例えば、ポリイミド製の可撓性及び透光性を有するフィルム28と、フィルム28に設けられた例えば銅等の金属からなる導体パターン30とからなる。フィルム28の厚さは、例えば15μm以上50μm以下の範囲にあり、本実施形態では25μmである。
FPC基板26の一方の面(実装面)には、光電変換素子32及びIC(集積回路)チップ34が例えばフリップチップ実装されている。
【0014】
より詳しくは、第2マザー基板20に接続される光電変換モジュール24では、光電変換素子32は、LD(レーザダイオード)等の発光素子であり、ICチップ34は、光電変換素子32を駆動するための駆動回路を構成している。
また、第1マザー基板18に接続される光電変換モジュール24では、光電変換素子32は、PD(フォトダイオード)等の受光素子であり、ICチップ34は、受光素子が出力した電気信号を増幅するための増幅回路を構成している。
なお、光電変換素子32は、面発光型又は面受光型であり、出射部又は入射部が実装面と対向するように配置される。
【0015】
光電変換素子32及びICチップ34とFPC基板26との間には、透光性を有する樹脂からなる充填部材36が設けられ、更に、光電変換素子32及びICチップ34は、樹脂からなるモールド部材38によって覆われている。充填部材36及びモールド部材38は、ICチップ34及び光電変換素子32とFPC基板26との間の接続強度を確保しながら、ICチップ34及び光電変換素子32を保護している。
なお、図3においては、モールド部材38が部分的に除去されており、モールド部材38の一部が断面にて表されている。
【0016】
図4は、光電変換モジュールの図3とは反対側を、一部を分解して示す概略的な斜視図である。
FPC基板26の他方の面(背面)には、透光性を有する樹脂層40が、全域に渡って一体に設けられている。樹脂層40には、光ファイバー23の先端部を固定するための保持溝42が形成されている。
保持溝42は、FPC基板26に沿って、光電変換素子34及びICチップ34の配列方向(以下、単に配列方向Dという)に延びている。保持溝42の断面形状は四角形状、則ち角張ったU字形状であり、保持溝42はU溝である。
【0017】
配列方向Dでみて、ICチップ34側に位置する保持溝42の一端は、樹脂層40の側面にて開口し、他端は壁面によって構成されている。また、保持溝42は、FPC基板26とは反対側の樹脂層40の面においても開口し、保持溝42の底面は、FPC基板26によって構成されている。光ファイバー23の先端部は、保持溝42内に接着剤で固定され、光ファイバー23の先端面は、保持溝42の壁面に当接している。
【0018】
また樹脂層40にはV溝が形成され、V溝の壁面には、例えばAu等の金属からなる蒸着膜が形成されている。蒸着膜はミラー44を構成し、ミラー44は、光電変換素子32と光ファイバー23の先端面とを、FPC基板26を通して光学的に結合する光学要素を構成している。
【0019】
樹脂層40には、例えばガラス製の板形状の補強部材46が接着剤を用いて接着される。補強部材46は保持溝42を覆い、光ファイバー23の先端部を樹脂層40とともに強固に保持する。補強部材46の面積は、例えば、FPC基板26の面積に略等しいか、僅かに小さい。
【0020】
図5は、第2マザー基板20に実装された状態の光電変換モジュール24の概略的な断面図である。
樹脂層40は、ポリマー光導波路部材からなり、ポリマー光導波路部材は、アンダークラッド層48、コア50、及び、オーバークラッド層52を含む。アンダークラッド層48は、FPC基板26に積層され、光信号の進行方向から見た断面形状が四角形のコア50がアンダークラッド層48上を延びている。
【0021】
コア50の数は、光ファイバー23の数に対応して1本であり、光ファイバー23の先端部と同軸上に位置している。オーバークラッド層52は、アンダークラッド層48と協働してコア50を囲むように、アンダークラッド層48及びコア50の上に積層されている。
アンダークラッド層48、コア50、及び、オーバークラッド層52の材料としては、特に限定されることはないが、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂及びポリイミド系樹脂等を用いることができる。
【0022】
第2マザー基板20には、モールド部材38を受け容れる凹みとして、孔54が形成されている。なお実装位置によっては、孔54ではなく切欠きであってもよい。
第2マザー基板20は、例えばガラスエポキシ樹脂製のリジッドな基板本体56と、銅等の導体からなる導体パターン58とからなる。第2マザー基板20の導体パターン58は、例えば半田59を介して、FPC基板26の導体パターン30に接続されている。
【0023】
光電変換素子32及びICチップ34は、入出力端子として、それぞれ複数の電極パッド60,62を有し、FPC基板26の導体パターン30は、電極パッド60,62に対応してランド(電極部)64,66を有する。電極パッド60,62と導体パターン30のランド64,66とは、例えばAuからなるバンプ68,70によって相互に接続されている。
【0024】
光電変換モジュール24において、配列方向Dでの、ICチップ34の長さLicは、1ch(チャンネル)の場合、例えば500μm以上1000μm以下であり、光電変換素子32とICチップ34との間隔の長さLsは、例えば、50μm以上400μm以下であり、保持溝42の長さLgは、例えば、600μm以上1500μm以下である。
また、保持溝42の長さLgは、配列方向Dでみて、光ファイバー23の先端面の位置が、好ましくは、光電変換素子32側のICチップ34の側面よりも光電変換素子32側に位置するように設定され、より好ましくは、光電変換素子32の両側面の間に位置するように設定される。
【0025】
図6は、FPC基板26の平面図であり、1点鎖線にて、光電変換素子32、ICチップ34、及び、保持溝42の位置をそれぞれ示している。本実施形態では、好ましい態様として、ランド64,66の各々の中心位置は、保持溝42が投影される領域から外れている。なお、ランド64,66の周縁は、保持溝42が投影される領域に一部重なっていてもよい。
【0026】
上述した光電変換モジュール24は、例えば以下のように製造される。
まず、FPC基板26に、樹脂層40を形成した後、樹脂層40に保持溝42及びミラー44を順次形成する。この後、FPC基板26に光電変換素子32及びICチップ34をフリップチップ実装してから、充填部材36を充填し、モールド部材38で覆う。それから、保持溝42内に、光ファイバー23の先端部を固定してから、補強部材46を接着し、光電変換モジュール24が製造される。
【0027】
上述した一実施形態の光電変換モジュール24では、配列方向Dでみて、保持溝42がICチップ34側に開口端を有し、開口端を通して延びる光ファイバー23の先端部が、ICチップ34と平行に延びている。
この配置構成によれば、ICチップ34からのFPC基板26の延び出しが短くても、FPC基板26及び樹脂層40に対し光ファイバー23の先端部を固定する長さが十分に確保され、光ファイバー23の先端部が堅固に固定される。このため、この光電変換モジュール24によれば、光ファイバー23の先端部の接続強度を確保しながら、小型化が図られる。
【0028】
上述した一実施形態の光電変換モジュール24では、ランド64,66の中心位置が保持溝42の投影領域の外にあるので、光電変換素子32及びICチップ34を実装するときに、ランド64,66が撓むことが無く、実装が確実に行われる。
また、上述した一実施形態の光電変換モジュール24の製造方法では、光電変換素子32及びICチップ34の実装後に光ファイバー23の先端部が固定されるので、光電変換素子32及びICチップ34の実装が容易である。
【0029】
本発明は、上述した一実施形態に限定されることはなく、一実施形態に変更を加えた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態の光電変換モジュール24では、FPC基板26側が第2マザー基板20に接続されていたが、補強部材46側が、第2マザー基板20に接続されていてもよい。FPC基板26及び樹脂層40にはスルーホールが設けられ、スルーホールにめっき導体が設けられる。この場合、補強部材46は、樹脂層40よりも小さく、補強部材46によって覆われていない樹脂層40の領域にて、めっき導体が表出させられる。
【0030】
上述した一実施形態の光電変換モジュール24では、樹脂層40は、ポリマー光導波路部材によって構成されているが、光ファイバー23の先端面と光電変換素子32との間の光路が短ければ、図7に示した変形例の光電変換モジュール72のように、透光性を有する単一な樹脂によって構成された樹脂層74を用いてもよい。
【0031】
上述した一実施形態の光電変換モジュール24では、樹脂層40のV溝の壁面にミラー44が形成されていたが、図8に示した変形例の光電変換モジュール76のように、樹脂層40に凹部78を設け、凹部78に、ミラー80を有するミラー部材82を配置してもよい。
【0032】
最後に、本発明の光電変換モジュールを備える光配線は、携帯電話以外の情報処理機器、ネットワーク機器、デジタルAV機器、及び、家電製品に適用可能である。より詳しくは、光電変換モジュールは、例えば、パーソナルコンピュータ、スイッチングハブ、及び、HDMIケーブル等にも適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
22 光配線
23 光ファイバー
24 光電変換モジュール
26 FPC基板(回路基板)
28 フィルム
32 光電変換素子
34 ICチップ
40 樹脂層
42 保持溝
44 ミラー(光学要素)
46 補強部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性及び可撓性を有する回路基板と、
前記回路基板の一方の面に相互に隣り合って実装されたICチップ及び光電変換素子と、
前記回路基板の他方の面に設けられた樹脂層であって、前記回路基板に沿って保持溝が形成された樹脂層と、
前記保持溝内に配置された先端部を有する光ファイバーと、
前記樹脂層の保持溝を覆う補強部材と、
前記光ファイバーの先端と前記光電変換素子とを前記回路基板を通して光学的に結合するミラーとを備え、
前記保持溝は、前記ICチップ及び前記光電変換素子の配列方向でみて、前記ICチップ側に位置する前記樹脂層の端に開口端を有し、
前記光ファイバーの先端部の少なくとも一部は、前記ICチップに沿って延びている、
光電変換モジュール。
【請求項2】
前記光ファイバーの先端は、前記配列方向でみて、前記光電変換素子側の前記ICチップの側面よりも前記光電変換素子側に位置している、
請求項1に記載の光電変換モジュール。
【請求項3】
前記回路基板は、前記一方の面に前記光電変換素子及び前記ICチップの入出力端子が接続される複数の電極部を有し、
前記電極部の少なくとも中心は、前記一方の面において、前記保持溝が投影される領域の外に位置している
請求項1又は2に記載の光電変換モジュール。
【請求項4】
前記樹脂層にはV溝が形成され、
前記ミラーは、前記V溝の壁面に蒸着された金属膜からなる、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の光電変換モジュール。
【請求項5】
前記樹脂層には凹部が形成され、
前記凹部に前記ミラーを有するミラー部材が配置されている、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の光電変換モジュール。
【請求項6】
前記樹脂層は、コア及びクラッドを含むポリマー光導波路部材からなる、
請求項1乃至5の何れか一項に記載の光電変換モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−150223(P2012−150223A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8022(P2011−8022)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】