説明

光電変換素子及び撮像装置、太陽電池

【課題】十分な感度を有し、かつ低いコストで実現することが可能な構成の光電変換素子を提供する。
【解決手段】チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層12を有する、光電変換素子10を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、有機光電変換材料を用いた光電変換素子に係わる。また、この光電変換素子を備えた撮像装置、太陽電池に係わる。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板にフォトダイオードを形成して、その上にカラーフィルタを設けた、従来の構成のイメージセンサでは、カラーフィルタによる光の損失があるため、光の利用効率が悪くなる。
また、カラーフィルタが透過する波長の光が限定されることから、色再現の際の偽色の発生を防止するために光学的ローパスフィルタが必要になり、光学的ローパスフィルタにおいても光の損失を生じる。
【0003】
このような問題を改善するために、有機光電変換材料を用いた光電変換素子が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3を参照)。
有機光電変換材料を用いた光電変換素子を、カラー用の撮像装置(イメージセンサ)に使用した場合には、カラーフィルタによる損失を生じないで、入射した光を有機光電変換材料の内部で光電変換させることができる。
これにより、光の利用効率を向上させることができる。
【0004】
有機光電変換材料を用いた光電変換素子は、例えば、有機光電変換材料から成る光電変換膜を、第1の電極と第2の電極との間に設けて、光照射側の電極に光透過性を有する導電材料を用いて構成することができる。光透過性を有する導電材料としては、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)等が挙げられ、通常、大きい仕事関数を有する。
【0005】
ところで、提案されている光電変換素子では、光電変換膜にキナクリドン誘導体等の有機光電変換材料を使用している。キナクリドン誘導体を用いた場合、光電変換の効率が良い、という利点がある。
しかしながら、キナクリドン誘導体はイオン化ポテンシャルが小さいので、仕事関数の大きな電極に正の電圧を印加すると、正孔注入性リーク電流が生じやすい。
このため、光のない状態でも電流値が大きくなり、即ち、暗時電流が増大し、結果として感度が低下する。
【0006】
そこで、正孔注入性リーク電流を低減させて、感度を向上させるために、光電変換膜の他に仕事関数調整膜等を付与することが提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−332551号公報
【特許文献2】特開2005−303266号公報
【特許文献3】特開2006−100767号公報
【特許文献4】特開2007−81137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光電変換膜の他に仕事関数調整膜等を付与して多層化すると、膜の数が増えることから、構造や製造工程が複雑となる。
そのため、材料コストや製造コストが増大してしまう。
また、仕事関数調整膜等を付与して多層化すると、界面抵抗等が増加するため、信号となる光電流の値も低下してしまい、光電変換素子の量子効率が低下してしまう。
【0009】
本技術の目的は、十分な感度を有し、かつ低いコストで実現することが可能な構成の光電変換素子を提供するものである。また、この光電変換素子を備えた撮像装置、太陽電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術の光電変換素子は、チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層を有する。
【0011】
本技術の撮像装置は、光電変換部からなる画素が複数形成された固体撮像素子を備えた撮像装置である。そして、入射光を集光する集光光学部と、光電変換部上に配置され、チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層、並びに、光電変換部上に配置された有機カラーフィルタ層を含む。
さらに、集光光学部で集光した光を受光して光電変換する固体撮像素子と、光電変換された信号を処理する信号処理部とを備える。
【0012】
本技術の太陽電池は、光電変換層に光が入射することにより起電力を生じる太陽電池である。そして、光透過性導電材料を用いた第1の電極と、第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に挟まれ、チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層とを備える。
【0013】
上述の本技術の光電変換素子の構成によれば、チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層を有するので、光電変換層のイオン化ポテンシャルが深くなる。
これにより、正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制することができる。
そして、光電変換層のみで正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制することが可能になるため、正孔注入を抑制するための仕事関数調整膜等を設けて多層化する必要がなくなる。
【0014】
上述の本技術の撮像装置の構成によれば、チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層及び有機カラーフィルタ層を光電変換部上に配置した固体撮像素子を備えている。
これにより、光電変換層において、正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制することが可能になる。
そして、光電変換層のみで正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制することが可能になるため、正孔注入を抑制するための仕事関数調整膜等を設けて多層化する必要がなくなる。
【0015】
上述の本技術の太陽電池の構成によれば、チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層を備えている。
これにより、光電変換層において、正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制することが可能になる。
そして、光電変換層のみで正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制することが可能になるため、正孔注入を抑制するための仕事関数調整膜等を設けて多層化する必要がなくなる。
【発明の効果】
【0016】
上述の本技術によれば、正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制することが可能になるので、感度を向上することができる。
そして、正孔注入を抑制するための仕事関数調整膜等を設けて多層化する必要がなくなることにより、光電変換層を含む、光電変換素子や固体撮像素子の構成を単純化することができ、材料コストや製造コストの低減を図ることができる。
【0017】
また、本技術によれば、十分な感度を有し、かつ低いコストで製造することが可能な構成の光電変換素子や撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態の光電変換素子の概略構成図(断面図)である。
【図2】図1の光電変換素子の両側の電極間に電圧をかけて光を照射したときの電流密度の変化を示す図である。
【図3】光電変換層の材料としてチオインジゴ誘導体を用いた場合とキナクリドン誘導体を用いた場合とで、暗時電流密度を比較した図である。
【図4】A、B 図3に示したそれぞれの材料を用いた場合のエネルギー図である。
【図5】第2の実施の形態の固体撮像素子の概略構成図(一部断面を示す斜視図)である。
【図6】A、B 図5の固体撮像素子の有機光電変換膜と有機カラーフィルタ層の平面的配置を示す図である。
【図7】第2の実施の形態の撮像装置の概略構成図(ブロック図)である。
【図8】第3の実施の形態の太陽電池の概略構成図(断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術を実施するための最良の形態(以下、実施の形態とする)について説明する。
なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(光電変換素子)
2.第2の実施の形態(固体撮像素子及び撮像装置)
3.第3の実施の形態(太陽電池)
【0020】
<1.第1の実施の形態(光電変換素子)>
第1の実施の形態の光電変換素子の概略構成図(断面図)を、図1に示す。
図1に示す光電変換素子10は、光透過電極11と、対極13との間に、有機材料から成る光電変換層12を挟んで構成されている。
【0021】
光透過電極11の材料としては、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン等の光透過性導電材料を使用することができる。
【0022】
対極13の材料としては、例えば、Al,Pt,Pd,Cr,Ni,Ag,Ta,W,Cu,Ti,In,Sn,Fe,Co,Mo等の金属やこれらの金属元素を含む合金等を使用することができる。
光透過性導電材料は仕事関数が大きく、光透過電極11が電子を取り出すアノード電極として作用するので、対極13には正孔を取り出すカソード電極として作用する、仕事関数の小さい材料を使用する。
【0023】
本実施の形態の光電変換素子10では、特に、光電変換層12の材料として、チオインジゴ誘導体を使用する。
【0024】
チオインジゴ誘導体としては、例えば、以下に挙げる構造の物質群を使用することができる。
【0025】
【化1】

【0026】
また、上述の物質群の他、下記(1)の構造を有するチオインジゴ誘導体を使用することができる。なお、上述の物質群のうち、M07の構造は、下記(1)の構造には含まれていない。
【化2】

なお、R〜R、R´〜R´の部分は任意の元素もしくは任意の基であるが、一般には、水素、塩素等のハロゲン、メチル基である。
【0027】
より好ましくは、チオインジゴ誘導体が、置換基として、電子求引性基を少なくとも1つ以上含む構成とする。
電子求引性基としては、ハロゲン(Cl,Br,I)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO)、フェニル基等が挙げられる。
上述した物質群では、M01〜M03,M05,M07,M10〜M13が該当する。
上述した(1)の構造のチオインジゴ誘導体の場合には、R〜R、R´〜R´のうちの少なくとも1つを、電子求引性基とする。
置換基として、電子求引性基を少なくとも1つ以上含むことにより、電子求引性基を含まない場合と比較して、イオン化ポテンシャルを大きくすることができる。
【0028】
さらに好ましくは、イオン化ポテンシャルが−6.0eV以下であるチオインジゴ誘導体を使用する。イオン化ポテンシャルが−6.0eV以下で、イオン化ポテンシャルの絶対値が大きいことにより、正孔注入性リーク電流の発生を抑制する効果が高くなる。
【0029】
光電変換層12の材料としてチオインジゴ誘導体を使用することにより、チオインジゴ誘導体はイオン化ポテンシャルが大きいので、正孔注入性リーク電流の発生を抑制することができ、暗時電流を小さくして、感度を向上することが可能になる。
【0030】
本実施の形態の光電変換素子10において、図1に示すように、光透過電極11と対極13の間に電圧をかければ、光電変換層12に電流を生じて光伝導体(フォトコンダクター)となり、光センサ・撮像素子等に利用することができる。そして、光Lの照射の量に対応した量の電流が得られる。
一方、光透過電極11と対極13の間に電圧をかけずに、光Lの照射のみを行えば、光電変換素子10によって光起電力を取り出すことができ、光電池として作用させることができる。
【0031】
ここで、図1の光電変換素子10を光センサとして利用した場合に、両側の電極11,13間に電圧をかけて、光Lを照射したときの電流密度の変化を、図2に示す。
【0032】
図2に示すように、光照射に応じて、電流値が増加する。
電流密度の応答波形は、照射の最初に高い電流密度となり、照射時間の経過に従い、徐々に電流密度が低下して、照射が終わると急激に電流密度が下がっている。
【0033】
このように、生成する電流が照射時間の経過に従って変化するため、例えば、特開2010―040783号公報に記載された方法を使えば、検出感度に優れた光センサとすることができる。
即ち、例えば、同公報に記載されているように、電流減少期間における時定数τ(P)を電流検出回路で算出し、この時定数を利用して、電流減少期間における電流Idecを下記の式(2)によって求めればよい。
dec=C・I(P)・exp[−t/τ(P)]+C (2)
ただし、tは、電流変化における電流増加期間から電流減少期間に遷移するときをt=0としたとき、その電流減少期間開始時刻(t=0)からの経過時間を示す。I(P)は、t=0において一定光量の光が光電変換層に照射されているときに光電変換層で生成する電流の量を示す。C及びCは定数である。
【0034】
ここで、光電変換層の材料として、チオインジゴ誘導体を用いた本実施の形態の場合と、キナクリドン誘導体を用いた比較例の場合とで、暗時電流密度を比較して、図3に示す。
図3からわかるように、キナクリドン誘導体を用いた場合には、電極からの注入電流のために、印加電圧を増大させると、急激に暗時電流が増加してしまう。
一方、チオインジゴ誘導体を用いた場合には、電極からの注入が抑制されるため、高電圧を印加しても暗時電流はあまり増加しない。
【0035】
また、図3に示した光電変換層12の2つの材料を用いた場合について、それぞれのエネルギー図を、図4A及び図4Bに示す。図4Aは、チオインジゴ誘導体を用いた場合のエネルギー図を示し、図4Bは、キナクリドン誘導体を用いた場合のエネルギー図を示している。いずれも、光透過電極11にITOを用いて、対極13にAlを用いた構成としている。
なお、有機膜中の主要キャリアは一般に正孔であるため、対極13のAlからの電子注入の影響は小さいと予想される。
【0036】
図4Aに示すように、チオインジゴ誘導体を用いた場合には、光電変換層12のイオン化ポテンシャル(≒HOMO=6.6eV)が深いので、光透過電極11のITOからのホール注入が起こりにくい。
一方、図4Bに示すように、キナクリドン誘導体を用いた場合には、光電変換層12のイオン化ポテンシャル(≒HOMO=5.4eV)が浅いので、光透過電極11のITOからのホール注入が起こりやすく、暗電流が増える。
従って、チオインジゴ誘導体を使用することにより、従来使用されていたキナクリドン誘導体と比較して、暗電流を低減することができる。
【0037】
上述の本実施の形態の光電変換素子10の構成によれば、光電変換層12の材料にチオインジゴ誘導体を使用していることにより、光電変換層12のイオン化ポテンシャルが深くなる。これにより、光透過電極11からの正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制することができる。
このように、光電変換層12のみで正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制することが可能になるため、正孔注入を抑制するための仕事関数調整膜等を設けて多層化する必要がなくなる。
このため、光電変換素子10の構成を単純化することができ、材料コストを低減できる。また、複雑な構成の製造装置を必要とせず、製造装置を簡素化することができるので、多層化した構成と比較して製造工程数を低減することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0038】
また、本実施の形態の光電変換素子10の構成によれば、チオインジゴ誘導体を使用した光電変換層12を備えたことにより、フィルタ等による光の損失を生じることなく、入射した光を光電変換層12の内部で光電変換させることができる。
さらに、多層化の必要がないため、界面抵抗による光電流の取り出し効率の低下を抑制することができる。
これらのことから、光の利用効率を向上して、感度を向上することが可能になる。
【0039】
従って、本実施の形態の光電変換素子10の構成によれば、十分な感度を有し、かつ低いコストで製造することが可能な構成の光電変換素子10を実現することができる。
【0040】
<2.第2の実施の形態(固体撮像素子及び撮像装置)>
第2の実施の形態の固体撮像素子の概略構成図(一部断面を示す斜視図)を、図5に示す。
本実施の形態は、CMOS型の固体撮像素子及びこの固体撮像素子を備えた撮像装置に本技術を適用した場合である。
【0041】
図5に示す固体撮像素子30は、シリコン基板等の半導体基板31に、例えばフォトダイオードから成り、入射光Lを電気信号に変換する光電変換部32と、トランジスタ群33とを有する画素Pが多数形成されて成る。
トランジスタ群33は、転送トランジスタ、増幅トランジスタ、リセットトランジスタ等であり、図5ではその一部を図示しており、ソース・ドレイン領域が半導体基板31内に形成され、ゲート電極が半導体基板31の下側に形成されている。なお、半導体基板31には、図示しない部分に、各光電変換部32から読み出した信号電荷を処理する信号処理部が形成されている。
半導体基板31の、隣接する画素Pの間の部分には、素子分離領域34が形成されている。素子分離領域34は、例えば、光電変換部32(例えばn型)とは逆導電型の高濃度の半導体領域(例えばp型)によって形成することができる。
半導体基板31の下側には、複数層の配線層37とその間の絶縁層36とから成る配線部35が形成されている。
配線部35の下には、例えばシリコン基板から成る支持基板38が形成されている。
【0042】
半導体基板31の上側には、光透過性を有する第1電極41が形成されている。
この第1電極41の上には、光電変換層として、有機光電変換材料から成る有機光電変換膜42が形成されている。
さらに、有機光電変換膜42の上に、光透過性を有する第2電極43を介して、有機カラーフィルタ層44が形成されている。この有機カラーフィルタ層44は、光電変換部32に対応して形成され、例えば、シアンのカラーフィルタとイエローのカラーフィルタを配置して成る。
有機カラーフィルタ層44の上には、光電変換部32に入射光Lを集光させる集光レンズ45が形成されている。
【0043】
光透過性を有する、第1電極41及び第2電極43の材料としては、ITO(インジウム錫酸化物)、酸化錫、アルミニウム亜鉛酸化物、ガリウム亜鉛酸化物、インジウム亜鉛酸化物等の光透過性導電材料を使用することができる。また、CuI,InSbO,ZnMgO,CuInO,MgIn,CdO,ZnSnO等を使用することもできる。
第1電極41と第2電極43は、同じ材料で形成することも、異なる材料で形成することも、どちらも可能である。
なお、有機光電変換膜42の下の第1電極41は、画素毎に分離された構成とすることが好ましい。
【0044】
第1電極41と第2電極43との間に電圧を印加した状態で、入射光Lの量に対応する電流を得て、有機光電変換膜42に入射した入射光Lの量を検出することができる。
【0045】
そして、本実施の形態では、特に、有機光電変換膜42の材料として、チオインジゴ誘導体を使用する。より好ましくは、チオインジゴ誘導体が、置換基として、電子求引性基を少なくとも1つ以上含む構成とする。電子求引性基としては、ハロゲン(Cl,Br,I)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO)、フェニル基等が挙げられる。
チオインジゴ誘導体はイオン化ポテンシャルが大きいので、正孔注入性リーク電流の発生を抑制することができ、暗時電流を小さくして、感度を向上することが可能になる。
【0046】
図5に示す固体撮像素子30は、緑を有機光電変換膜42から信号を取り出し、青と赤をシアンとイエローの有機カラーフィルタ層44との組み合わせにより取り出す構成である。
【0047】
ここで、有機光電変換膜42と有機カラーフィルタ層44の平面的配置(コーディング)の一形態を、図6A及び図6Bに示す。図6Aは有機光電変換膜42を示し、図6Bは有機カラーフィルタ層44を示している。
図6Aに示すように、緑を取り出す有機光電変換膜42は、全画素に配置されている。
また、図6Bに示すように、シアンのカラーフィルタ44Cと、イエローのカラーフィルタ44Yとは、所謂市松配列となっている。
シアンのカラーフィルタ44Cによる吸収で赤成分が除去され、有機光電変換膜42による吸収で緑成分が除去されて、残った青成分にて青を取り出すことができる。
イエローのカラーフィルタ44Yによる吸収で青成分が除去され、有機光電変換膜42による吸収で緑成分が除去されて、残った赤成分にて赤を取り出すことができる。
以上の構成により、本実施の形態の固体撮像素子30では、緑、青、赤の分離された色信号を出力することができる。
なお、有機カラーフィルタ層44の平面的配置(コーディング)は、図6Bに示した市松配列に限定されるものではなく、他の配置とすることも可能である。
【0048】
本実施の形態では、さらに、固体撮像素子を備えた撮像装置を構成する。
第2の実施の形態の撮像装置の概略構成図(ブロック図)を、図7に示す。
【0049】
図7に示すように、本実施の形態の撮像装置100は、撮像部101と結像光学系102と信号処理部103とを有して成る。そして、撮像部101には、固体撮像素子(図示せず)を備えている。
この撮像部101の集光側には、入射光を集光する集光光学部として、像を結像させる結像光学系102が備えられ、また、撮像部101には、撮像部101を駆動する駆動回路や、固体撮像素子で光電変換された信号を画像に処理する信号処理回路等を有する、信号処理部103が接続されている。
信号処理部103によって処理された画像信号は、画像記憶部(図示せず)によって記憶させることができる。
【0050】
この撮像装置100の具体的な製品としては、例えば、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話のカメラ等がある。
【0051】
そして、本実施の形態では、撮像装置100の撮像部101に、図5に示した固体撮像素子30を用いる。
撮像装置100の撮像部101に図5に示した固体撮像素子30を用いることから、固体撮像素子30がチオインジゴ誘導体から成る有機光電変換膜42を有している。
これにより、チオインジゴ誘導体はイオン化ポテンシャルが大きいので、正孔注入性リーク電流の発生を抑制することができ、暗時電流を小さくして、感度を向上することが可能になる。
【0052】
上述の本実施の形態の撮像装置100の構成によれば、撮像部101に、チオインジゴ誘導体から成る有機光電変換膜42を有している固体撮像素子30を用いている。これにより、有機光電変換膜42において、正孔注入性リーク電流の発生を抑制できるので、正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制して、感度を向上することができる。
そして、有機光電変換膜42のみで暗時電流の発生を抑制することが可能であり、正孔注入を抑制するための仕事関数調整膜等を設ける必要がなくなる。
【0053】
また、チオインジゴ誘導体を使用した有機光電変換膜42において、緑の光を受光検出することができる。
これにより、有機光電変換膜を使用しないで有機カラーフィルタ層のみを設けた構成と比較して、有機カラーフィルタ層における緑の光の損失を低減することができ、緑の光について、利用効率を向上して、感度を向上することが可能になる。
【0054】
従って、本実施の形態の撮像装置100の構成によれば、単純な構成で緑の光に対して十分な感度を有する撮像装置を実現することができる。
【0055】
なお、上述の実施の形態では、有機光電変換膜42を緑で形成し、青と赤をシアンのカラーフィルタ44Cとイエローのカラーフィルタ44Yとの組合せにて取り出す構成であったが、青と赤を取り出す構成は、その他の構成としても構わない。
また、上述の実施の形態では、半導体基板31の光電変換部32に、配線部35とは反対の側から光を入射させる構成(所謂裏面照射型の構成)であったが、配線部と同じ側から光を入射させる構成(所謂表面照射型の構成)にも本技術を適用することができる。
また、有機光電変換膜42と有機カラーフィルタ層44の積層順序を逆にして、有機カラーフィルタ層44の方が半導体基板31に近い構成としても構わない。
【0056】
図5の固体撮像素子30では、有機光電変換膜42が多数の画素にわたって、連続して一様に形成された構成としていた。
これに対して、有機光電変換膜の画素間の部分に分離領域を形成して、有機光電変換膜が画素毎に分離された構成とすることも可能である。
この分離領域としては、例えば、有機光電変換膜に、酸素、窒素、ヘリウム、アルゴン、水素等の不純物を注入して、有機光電変換膜の物性(導電性、屈折率、光吸収等)や分子結合を変化させた構成が可能である。また、有機光電変換膜に溝を形成して、絶縁性であり有機光電変換膜の材料とは光学特性(吸収又は反射特性)の異なる材料で、溝を埋めた構成も可能である。
【0057】
上述の実施の形態では、撮像装置100の撮像部101に図5の固体撮像素子30を用いる構成としたが、撮像部に用いる固体撮像素子の構成は、図5の固体撮像素子30の構成に限定されるものではなく、他の構成も可能である。
光電変換膜の材料として、チオインジゴ誘導体を用いた構成の固体撮像装置であれば、図5の固体撮像素子30と同様に、図7の撮像装置100の撮像部101に用いても構わない。
【0058】
固体撮像素子30は、ワンチップとして形成された形態であってもよいし、撮像部と、信号処理部又は光学系とがまとめてパッケージングされた撮像機能を有するモジュール状の形態であってもよい。
【0059】
本技術において、「撮像装置」は、例えば、カメラや撮像機能を有する携帯機器のことを示す。また「撮像」は、通常のカメラ撮影時における像の撮りこみだけではなく、広義の意味として、指紋検出等も含むものである。
【0060】
<3.第3の実施の形態(太陽電池)>
第3の実施の形態の太陽電池の概略構成図(断面図)を、図8に示す。
図8に示す太陽電池50は、光透過性材料を用いた第1の電極(光透過電極)51と、第2の電極(対極)53との間に、有機材料から成る光電変換層52を挟んで構成されている。
【0061】
第1の電極(光透過電極)51の材料としては、例えば、ITO(インジウム錫酸化物)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン等の光透過性導電材料を使用することができる。
【0062】
第2の電極(対極)53の材料としては、例えば、Al,Pt,Pd,Cr,Ni,Ag,Ta,W,Cu,Ti,In,Sn,Fe,Co,Mo等の金属やこれらの金属元素を含む合金等を使用することができる。
光透過性導電材料は仕事関数が大きく、第1の電極(光透過電極)51が電子を取り出すアノード電極として作用するので、第2の電極(対極)53には正孔を取り出すカソード電極として作用する、仕事関数の小さい材料を使用する。
【0063】
本実施の形態の太陽電池50では、特に、光電変換層52の材料として、チオインジゴ誘導体を使用する。より好ましくは、置換基として、電子求引性基を少なくとも1つ以上含むチオインジゴ誘導体を使用する。電子求引性基としては、ハロゲン(Cl,Br,I)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO)、フェニル基等が挙げられる。
【0064】
本実施の形態の太陽電池50においては、図8に示すように、光Lが照射されることにより、太陽電池50によって起電力を取り出すことができる。
【0065】
上述の本実施の形態の太陽電池50の構成によれば、チオインジゴ誘導体を使用した光電変換層52を備えたことにより、入射した光Lを光電変換層52の内部で光電変換させて、起電力を得ることができる。
そして、光電変換層52がチオインジゴ誘導体を使用しているので、光電変換層52において、正孔注入性リーク電流の発生を抑制できるので、正孔注入性リーク電流による暗時電流の発生を抑制して、開放電圧を向上することができる。これにより、入射光の光量に対する太陽電池50の発電量の比率(発電効率)を向上することができる。
さらに、多層化の必要がないため、界面抵抗による光電流の取り出し効率の低下を抑制することができる。
【0066】
なお、本開示は以下のような構成も取ることができる。
1.チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層を有する光電変換素子。
2.前記チオインジゴ誘導体が、少なくとも1つ以上の電子求引性基を含む前記1.の光電変換素子。
3.前記チオインジゴ誘導体が下記(1)の構造を有する前記1.の光電変換素子。
【化3】

(R〜R、R´〜R´の部分は、任意の元素もしくは任意の基である)
4.前記(1)の構造のR〜R、R´〜R´の少なくとも1つ以上が、電子求引性基である、前記3.の光電変換素子。
5.光電変換部からなる画素が複数形成された固体撮像素子を備えた撮像装置であって、入射光を集光する集光光学部と、前記光電変換部上に配置され、チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層、並びに、前記光電変換部上に配置された有機カラーフィルタ層を含み、前記集光光学部で集光した光を受光して光電変換する前記固体撮像素子と、光電変換された信号を処理する信号処理部とを備えた撮像装置。
6.前記光電変換層の前記チオインジゴ誘導体が、少なくとも1つ以上の電子求引性基を含む前記5.の撮像装置。
7.光電変換層に光が入射することにより起電力を生じる太陽電池であって、光透過性導電材料を用いた第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟まれ、チオインジゴ誘導体を含んで成る前記光電変換層とを備えた太陽電池。
8.前記光電変換層の前記チオインジゴ誘導体が、少なくとも1つ以上の電子求引性基を含む前記7.の太陽電池。
【0067】
本技術は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【符号の説明】
【0068】
10 光電変換素子、11 光透過電極、12 光電変換層、13 対極、30 固体撮像素子、31 半導体基板、32 光電変換部、33 トランジスタ群、34 素子分離領域、35 配線部、36 絶縁層、37 配線層、38 支持基板、41 第1電極、42 有機光電変換膜、43 第2電極、44 有機カラーフィルタ層、45 集光レンズ、50 太陽電池、51 第1の電極(光透過電極)、52 光電変換層、53 第2の電極(対極)、100 撮像装置、101 撮像部、102 結像光学系、103 信号処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層を有する
光電変換素子。
【請求項2】
前記チオインジゴ誘導体が、少なくとも1つ以上の電子求引性基を含む請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記チオインジゴ誘導体が下記(1)の構造を有する請求項1に記載の光電変換素子。


(R〜R、R´〜R´の部分は、任意の元素もしくは任意の基である)
【請求項4】
前記(1)の構造のR〜R、R´〜R´の少なくとも1つ以上が、電子求引性基である、請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
光電変換部からなる画素が複数形成された固体撮像素子を備えた撮像装置であって、
入射光を集光する集光光学部と、
前記光電変換部上に配置され、チオインジゴ誘導体を含んで成る光電変換層、並びに、前記光電変換部上に配置された有機カラーフィルタ層を含み、前記集光光学部で集光した光を受光して光電変換する前記固体撮像素子と、
光電変換された信号を処理する信号処理部とを備えた
撮像装置。
【請求項6】
前記光電変換層の前記チオインジゴ誘導体が、少なくとも1つ以上の電子求引性基を含む請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
光電変換層に光が入射することにより起電力を生じる太陽電池であって、
光透過性導電材料を用いた第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に挟まれ、チオインジゴ誘導体を含んで成る前記光電変換層とを備えた
太陽電池。
【請求項8】
前記光電変換層の前記チオインジゴ誘導体が、少なくとも1つ以上の電子求引性基を含む請求項7に記載の太陽電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−30592(P2013−30592A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165184(P2011−165184)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】