内燃エンジンの動弁装置
【課題】バルブのリフト量及び開閉タイミングの双方を可変にすることが可能な動弁装置であって、構成が簡単化されたものを提供する。
【解決手段】エンジンと同期して回転する回転部材1と、回転部材1から駆動力の伝達を受けるカムシャフト2とを備える。回転部材1とカムシャフト2とは同軸に配置され、これらの間には相対回動角を可変となすカム機構5が設けられている。カム機構5は、カムシャフト2に付設された径方向のピン51と、回転部材1に設けられピン51に係合するカム溝52とからなり、カム溝52はカムシャフト2の軸方向と平行な方向に対して斜めに延びている。カムシャフト2には三次元カム21が取り付けられており、バルブ開駆動力は三次元カム21からロッカーアーム4を介してバルブ3へと伝達される。カムシャフト2には軸方向移動駆動手段7が接続されている。
【解決手段】エンジンと同期して回転する回転部材1と、回転部材1から駆動力の伝達を受けるカムシャフト2とを備える。回転部材1とカムシャフト2とは同軸に配置され、これらの間には相対回動角を可変となすカム機構5が設けられている。カム機構5は、カムシャフト2に付設された径方向のピン51と、回転部材1に設けられピン51に係合するカム溝52とからなり、カム溝52はカムシャフト2の軸方向と平行な方向に対して斜めに延びている。カムシャフト2には三次元カム21が取り付けられており、バルブ開駆動力は三次元カム21からロッカーアーム4を介してバルブ3へと伝達される。カムシャフト2には軸方向移動駆動手段7が接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンの動弁装置に関するものであり、とくに弁(バルブ)のリフト量及び開閉タイミングの双方を可変となす動弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンにおいては、シリンダ内へと吸入した燃料混合気を密閉シリンダ内で圧縮し着火爆発させることで、駆動出力を得ている。爆発により形成された燃焼ガスはシリンダから排気される。シリンダへの吸気及びシリンダからの排気を適正に行うために、吸気バルブ及び排気バルブを適時開閉させる制御が行われる。この制御のために、エンジンの出力シャフトからタイミングベルトを介して動弁装置のカムシャフトへと同期回転力が入力される。カムシャフトには、吸気側カムまたは排気側カムが固定されている。吸気バルブ及び排気バルブはそれぞれ、バルブスプリングにより、常時、シリンダの吸気開口及び排気開口を閉じる向きに付勢されている。カムシャフトの吸気側カムまたは排気側カムは、吸気側ロッカーアームまたは排気側ロッカーアームの入力部と係合している。これらのロッカーアームは、それぞれロッカーシャフトに回動可能に取り付けられており、出力部が吸気バルブのステムまたは排気バルブのステムと係合している。ロッカーアームは、その入力部の吸気側カムまたは排気側カムとの係合関係に基づき、出力部が適時バルブスプリングの付勢力に抗してバルブステムを押し吸気開口または排気開口を開くようになっている。
【0003】
内燃エンジンに関しては、燃費改善及び排気ガス浄化を目的とする研究が絶えず続けられている。その目的のためには、エンジンの動作状態に応じて吸気バルブ及び排気バルブの開閉のタイミング及びこれらのバルブのリフト量を適正に制御することが求められる。このような目的の達成に繋がる1つの技術として、以下に述べるようなエンジン効率低下防止のためのノンスロットリング技術がある。
【0004】
エンジンの出力を決定する1つの要因として、1行程当たりシリンダへと吸入される燃料混合気(燃料直噴方式の場合には空気)の量すなわち吸気量が挙げられる。吸気量は吸気経路中に設けられたスロットルバルブの開度を変化させることで、変化させることができる。
【0005】
しかしながら、このスロットルバルブの開度を調節することによる吸気量調節は、エンジンにポンピングロスを引き起こし、とくに低出力時にはスロットルバルブの開度を小さくするので、ポンピングロスの影響が大きくなり、エンジンの効率低下の原因となる。
【0006】
このような原因によるエンジン効率低下を防止するために、スロットルバルブを使用せずに吸気量の調節を行うノンスロットリングの技術が提案されている。ノンスロットリングのための機構としては、動弁装置により吸気バルブのリフト量を変化させるものが挙げられる。このようなノンスロットリング技術に適用可能な動弁機構すなわち動弁装置は、例えば、特開2003−56322号公報(特許文献1)及び特開2005−282474号公報(特許文献2)に開示されている。
【特許文献1】特開2003−56322号公報
【特許文献2】特開2005−282474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1または特許文献2に開示された動弁装置では、バルブリフト量を変化させるために、カムシャフトに固定される吸気側カムとして所謂三次元カムを使用しており、ロッカーシャフトを適時軸方向に移動させることで、ロッカーアームに付設されたローラとカムシャフトに固定された三次元カムとの軸方向当接位置を変化させている。
【0008】
一方、上記ノンスロットリング技術の実用化のためには、バルブリフト量の変化に伴い発生する吸気バルブ開のタイミングの変動を十分に小さなものとすることが必要である。このような吸気バルブ開タイミングの調節を行うために、上記特許文献1または特許文献2には、具体的には詳細に開示されていないが、可変バルブタイミング機構を付加することが提案されている。
【0009】
しかし、このような別途のバルブタイミング機構の付加は、更にエンジンの構成を複雑化する要因となる。
【0010】
本発明は、以上の如き技術的課題に鑑みて、バルブのリフト量及び開閉タイミングの双方を可変にすることが可能な動弁装置であって、構成が簡単化されたものを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
内燃エンジンの吸気または排気のバルブの開閉を制御するための動弁装置であって、エンジンと同期して回転する回転部材と、該回転部材から駆動力の伝達を受けるカムシャフトとを備え、該カムシャフトから前記バルブへとバルブ開駆動力を伝達する動弁装置において、
前記回転部材と前記カムシャフトとは同軸に配置されており、これらの間には相対回動角を可変となすカム機構が設けられており、
前記カムシャフトには三次元カムが取り付けられており、前記バルブ開駆動力は前記三次元カムを介して前記バルブへと伝達され、
前記カムシャフトには、その軸方向移動を駆動する軸方向移動駆動手段が接続されていることを特徴とする動弁装置、
が提供される。
【0012】
本発明の一態様においては、前記カム機構は、前記カムシャフト及び前記回転部材のうちの一方に付設された径方向のピンと、前記カムシャフト及び前記回転部材のうちの他方に設けられ前記ピンに係合するカム溝とからなり、該カム溝は前記カムシャフトの軸方向と平行な方向に対して斜めに延びている。本発明の一態様においては、前記カム溝は、前記カムシャフトの軸方向と平行な方向に対する傾きが前記軸方向の位置に応じて変化している。本発明の一態様においては、前記カム機構は、前記カムシャフトの軸方向移動に基づくバルブリフト量の変動に伴うバルブ開タイミングの変動を補償するように形成されている。
【0013】
本発明の一態様においては、前記回転部材は、エンジンの出力シャフトと同期して回転する駆動シャフトに取り付けられた第1のギヤと噛み合う第2のギヤを備えている。本発明の一態様においては、前記軸方向移動駆動手段はステップモータと前記カムシャフトに回転可能に取り付けられたアーム部材とを含んでおり、前記ステップモータの出力回転軸に付された雄ねじと前記アーム部材に形成された雌ねじとを噛み合わせてなるものである。
【0014】
本発明の一態様においては、前記カムシャフトから前記バルブへとバルブ開駆動力を伝達するロッカーアームが設けられており、前記三次元カムと前記ロッカーアームの入力部とが係合している。本発明の一態様においては、前記ロッカーアームの入力部には前記三次元カムと係合するローラーフォロワが設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の動弁装置によれば、エンジンと同期して回転する回転部材をカムシャフトに対して同軸に配置し、これらの間に相対回動角を可変となすカム機構を設け、カムシャフトに三次元カムを取り付け、該三次元カムを介してバルブへとバルブ開駆動力を伝達し、カムシャフトに軸方向移動駆動手段を接続しているので、軸方向移動駆動手段によりカムシャフトを軸方向に移動させることで、三次元カムによりバルブリフト量を変化させ且つ同時にカム機構によりバルブ開閉タイミングを変化させることが可能になり、装置構成が簡単化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明による動弁装置の一実施形態を示す模式図であり、ここで、(a)は模式的平面図で、(b)は模式的正面図で、(c)は模式的側面図である。図2は本実施形態の動弁装置の模式的分解斜視図であり、図3はその模式的部分分解図である。図4は本実施形態の動弁装置のカム機構を示す模式図であり、ここで、(a)は模式的断面図で、(b)は模式的平面図である。
【0018】
本実施形態の動弁装置は、エンジンと同期して回転する回転部材1と、該回転部材1から駆動力の伝達を受けるカムシャフト2と、該カムシャフト2から吸気バルブ3へとバルブ開駆動力を伝達するためのロッカーアーム4とを備えている。
【0019】
回転部材1は、カムシャフト2に被せられるようにして該カムシャフトと同軸に配置されている。これら回転部材1とカムシャフト2との間には、それらの相対回動角を可変となすカム機構5が設けられている。カム機構5は、カムシャフト2に付設された径方向のピン51と、回転部材1に設けられピン51に係合するカム溝52とからなる。但し、カム機構としては、回転部材1に径方向内方へと突出するようにピンを設け、該ピンに係合するようにカムシャフトの周面にカム溝を形成したものであってもよい。カム機構は、カムシャフト2の軸方向移動に伴い、該カムシャフトに対して回転部材1が回転し、これによりカムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角を変化させるものである。
【0020】
カム溝52は、カムシャフト2の軸方向と平行な方向に対して斜めに延びている。カム溝52は、例えば、図4に示されているように、カムシャフト2の軸方向と平行な方向に対して角度θをなして延びている。この角度θは、後述する所望のバルブ開閉タイミングに基づき適宜設定することができ、カム溝52の全長に亘り一定であってもよいし、カムシャフト2の軸方向の位置に応じて変化するものであってもよい。
【0021】
回転部材1は、カムシャフト2と同軸に形成されたギヤ(第2のギヤ)11を備えている。一方、エンジンの不図示の出力シャフトから不図示のタイミングベルトを介して駆動シャフト6へと駆動力が伝達される。駆動シャフト6は、カムシャフト2と平行に配置されており、タイミングベルトが巻き掛けられるタイミングプーリ61と、ギヤ(第1のギヤ)62とが取り付けられている。ギヤ62は、上記回転部材1のギヤ11と噛み合っている。
【0022】
カムシャフト2には、三次元カム21が取り付けられている。三次元カム21は、カムシャフト2の周方向(カムシャフトの軸方向の周りの方向)に関してバルブリフト量を最大にする部分(すなわち図1(b)において最上部に位置する部分)の近傍の形状が略円錐面形状をなしている(図1(c)参照)。この三次元カム21は、ロッカーアーム4の入力部と係合している。この係合は、カムシャフト2と平行にロッカーアーム入力部に配置されたピン41に回転可能に取り付けられたローラーフォロワ42に対してなされている。ローラーフォロワ42は、三次元カム21の上記バルブリフト量を最大にする部分と線接触するような円錐面形状をなしている(図1(c)参照)。
【0023】
カムシャフト2には、その軸方向移動を駆動する軸方向移動駆動手段7が接続されている。軸方向移動駆動手段7は、ステップモータ71と、カムシャフト2にその回転中心の周りで相対的に回転可能に取り付けられたアーム部材72とを含んでいる。ここで、ステップモータ71の出力回転軸には雄ねじ71’が付されており、アーム部材72には不図示の雌ねじが形成されており、これら雄ねじ71’と雌ねじとが噛み合わされている。これにより、ステップモータ71を所要角度正転または逆転させることで、カムシャフト2を軸方向に所要ストロークで往復移動させることができる。
【0024】
ロッカーアーム4は、カムシャフト2と平行なロッカーシャフト43を中心として回動可能であり、ロッカーシャフト43に関して上記入力部とは反対側に位置する出力部がバルブ3のステムの上端に当接可能に配置されている。図1(b)に示されているように、バルブ3は、バルブスプリング31により常時シリンダの吸気開口8を閉じる向きに付勢されている。ロッカーアーム4が三次元カム21との係合に基づきロッカーシャフト43の周りで揺動することで、所要のタイミングで、吸気バルブ3がリフトせしめられ(図1(b)において下方へと移動せしめられ)、吸気バルブ3がリフト量Lをもって開かれる。図1(b)に示されているように、シリンダの吸気開口8は吸気経路9に連なっている。
【0025】
次に、本実施形態の動弁装置の動作につき、図5、図6及び図7を参照して説明する。図5及び図6において、(a)は図1(b)に対応する図であり、(b)は図1(c)に対応する図である。
【0026】
図5は、最小バルブリフト量の場合を示す。すなわち、軸方向移動駆動手段7によりカムシャフト2が図5(b)及び図4(b)その他において軸方向に左へと移動して、ストローク左限位置にある場合である。この場合には、三次元カム21がローラーフォロワ42の左側部分すなわち小径部分に当接するので、ロッカーシャフト43の周りでのロッカーアーム4の回動角度は最小になり、従ってバルブリフト量(ピーク値)は最小値L1となる。
【0027】
図6は、最大バルブリフト量の場合を示す。すなわち、軸方向移動駆動手段7によりカムシャフト2が図5(b)及び図4(b)その他において軸方向に右へと移動して、ストローク右限位置にある場合である。この場合には、三次元カム21がローラーフォロワ42の右側部分すなわち大径部分に当接するので、ロッカーシャフト43の周りでのロッカーアーム4の回動角度は最大になり、従ってバルブリフト量(ピーク値)は最大値L2となる。
【0028】
図6の状態と図5の状態とでは、カムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角が異なる。この最小バルブリフト量の場合と最大バルブリフト量の場合との相対回動角の差は、図4(b)においてピン51がカム溝52のストローク左限位置にある場合の図4(a)におけるピン51の方向と、図4(b)においてピン51がカム溝52のストローク右限位置にある場合の図4(a)におけるピン51の方向との角度差に相当し、図4(a)において角度φで示されている。この相対回動角の差の角度φは、例えば、30度程度とすることができる。
【0029】
図7はエンジンのクランク角に対するバルブリフト変化を示す図である。図7において、(a)は上記実施形態とは異なりカム機構5がなく回転部材1がカムシャフトに固定されているものとした場合の図である。この場合には、カムシャフト2が軸方向に移動してバルブリフト量が最小値L1と最大値L2との間で変化すると、バルブ開タイミングがクランク角a1とクランク角a2との間で変化する。このようなバルブ開タイミングの変動をできるだけ少なくするために、上記本発明実施形態では、カムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角を、バルブリフト量が最小値L1をとる時と最大値L2をとる時との間で、クランク角でいえばa1とa2との差に相当する角度φだけ変化させている。これにより、図7において、(b)で示すように、バルブリフト量が最小値L1の時と最大値L2の時とでのバルブ開タイミングのずれが生じないようにしている。
【0030】
以上の説明では、単純化してバルブリフト量が最小値L1の時及び最大値L2の時のみに関して説明した。この場合には、カム溝52の形状を、例えば角度θが一定の直線状としてもよい。更に詳細には、最小値L1及び最大値L2の間のバルブリフト量の場合についても、同様にしてバルブ開タイミングの変動が少なくなるようにカムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角を設定することができる。このように、一般的には、カム溝52の形状は、三次元カム21の形状に応じて種々の形態をとり、角度θがカムシャフト軸方向の位置に応じて変化するものとなる。かくして、カム機構5は、カムシャフト2の軸方向移動に基づくバルブリフト量の変動に伴うバルブ開タイミングの変動を補償するように形成されている。
【0031】
図8は本発明による動弁装置の他の実施形態を示す模式図であり、ここで、(a)は模式的平面図で、(b)は模式的正面図で、(c)は模式的側面図である。図9は本実施形態の動弁装置の模式的分解斜視図である。これらの図8及び図9において、上記図1〜6におけると同様の部材または部分には同一の符号が付されている。図8及び図9は、それぞれ上記実施形態の図1及び図2に対応する部分を示す。
【0032】
本実施形態においては、ローラーフォロワ42の形状が図1他の実施形態のものとは異なる。すなわち、本実施形態では、ローラーフォロワ42は円筒形状(または円盤形状)をなしており、その一方の円形状端縁(図8(a)では下側に位置する端縁:図8(c)では左側に位置する端縁)が三次元カム21と接触する。
【0033】
次に、本実施形態の動弁装置の動作につき、図10及び図11を参照して説明する。図10及び図11において、(a)は図8(b)に対応する図であり、(b)は図8(c)に対応する図である。
【0034】
図10は、最小バルブリフト量の場合を示す。すなわち、軸方向移動駆動手段7によりカムシャフト2が図10(b)その他において軸方向に左へと移動して、ストローク左限位置にある場合である。この場合には、三次元カム21の右側部分にローラーフォロワ42の左側端縁が当接するので、ロッカーシャフト43の周りでのロッカーアーム4の回動角度は最小になり、従ってバルブリフト量(ピーク値)は最小値L1となる。
【0035】
図11は、最大バルブリフト量の場合を示す。すなわち、軸方向移動駆動手段7によりカムシャフト2が図10(b)その他において軸方向に右へと移動して、ストローク右限位置にある場合である。この場合には、三次元カム21の左側部分にローラーフォロワ42の左側端縁が当接するので、ロッカーシャフト43の周りでのロッカーアーム4の回動角度は最大になり、従ってバルブリフト量(ピーク値)は最大値L2となる。
【0036】
図11の状態と図10の状態とでは、カムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角が異なる。この最小バルブリフト量の場合と最大バルブリフト量の場合との相対回動角の差については、上記の図1他の実施形態において図4他を参照して説明した通りである。
【0037】
以上の実施形態では、カムシャフト2の三次元カム21からロッカーアーム4を介してバルブ3へとバルブ開駆動力を伝達するロッカーアーム式の動弁機構を有する例を示したが、本発明のバルブのリフト量及び開閉タイミングの双方を可変にする動弁装置は、ロッカーアームを用いることなく三次元カム21からバルブ3へとバルブ開駆動力を伝達する直動式の動弁機構を有するものにも適用できる。この場合、バルブリフターに上記ピン41及びローラーフォロワ42と同等なピン及びローラーフォロワを取り付けておけばよい。
【0038】
以上の実施形態ではバルブ開タイミングの変動を補償することでノンスロットリングに適用する例を示したが、本発明のバルブのリフト量及び開閉タイミングの双方を可変にする動弁装置は、他の燃費改善及び排気ガス浄化の目的その他の目的にも使用することができる。その場合には、所望のバルブリフト量変化及び所望のバルブ開閉タイミング(バルブ開時間を含む)に応じて、三次元カム21の形状及びカム機構5の特性(例えばカム溝52の形状)を適宜設定することができる。
【0039】
更に、以上の実施形態では吸気バルブに関して述べたが、本発明のバルブのリフト量及び開閉タイミングの双方を可変にする動弁装置は、排気バルブに適用することも可能である。排気バルブに適用する目的としては、例えば、予混合圧縮着火(HCCI)方式のエンジンにおける内部EGR量を最適に制御することが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による動弁装置の一実施形態を示す模式図であり、(a)は模式的平面図で、(b)は模式的正面図で、(c)は模式的側面図である。
【図2】図1の動弁装置の模式的分解斜視図である。
【図3】図1の動弁装置の模式的部分分解図である。
【図4】図1の動弁装置のカム機構を示す模式図であり、(a)は模式的断面図で、(b)は模式的平面図である。
【図5】図1の動弁装置の動作説明のための模式図である。
【図6】図1の動弁装置の動作説明のための模式図である。
【図7】図1の動弁装置におけるバルブリフト変化を示す図である。
【図8】本発明による動弁装置の一実施形態を示す模式図であり、(a)は模式的平面図で、(b)は模式的正面図で、(c)は模式的側面図である。
【図9】図8の動弁装置の模式的分解斜視図である。
【図10】図8の動弁装置の動作説明のための模式図である。
【図11】図8の動弁装置の動作説明のための模式図である。
【符号の説明】
【0041】
1 回転部材
11 ギヤ
2 カムシャフト
21 三次元カム
3 吸気バルブ
31 バルブスプリング
4 ロッカーアーム
41 ピン
42 ローラーフォロワ
43 ロッカーシャフト
5 カム機構
51 径方向ピン
52 カム溝
6 駆動シャフト
61 タイミングプーリ
62 ギヤ
7 軸方向移動駆動手段
71 ステップモータ
71’ 雄ねじ
72 アーム部材
8 吸気開口
9 吸気経路
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンの動弁装置に関するものであり、とくに弁(バルブ)のリフト量及び開閉タイミングの双方を可変となす動弁装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンにおいては、シリンダ内へと吸入した燃料混合気を密閉シリンダ内で圧縮し着火爆発させることで、駆動出力を得ている。爆発により形成された燃焼ガスはシリンダから排気される。シリンダへの吸気及びシリンダからの排気を適正に行うために、吸気バルブ及び排気バルブを適時開閉させる制御が行われる。この制御のために、エンジンの出力シャフトからタイミングベルトを介して動弁装置のカムシャフトへと同期回転力が入力される。カムシャフトには、吸気側カムまたは排気側カムが固定されている。吸気バルブ及び排気バルブはそれぞれ、バルブスプリングにより、常時、シリンダの吸気開口及び排気開口を閉じる向きに付勢されている。カムシャフトの吸気側カムまたは排気側カムは、吸気側ロッカーアームまたは排気側ロッカーアームの入力部と係合している。これらのロッカーアームは、それぞれロッカーシャフトに回動可能に取り付けられており、出力部が吸気バルブのステムまたは排気バルブのステムと係合している。ロッカーアームは、その入力部の吸気側カムまたは排気側カムとの係合関係に基づき、出力部が適時バルブスプリングの付勢力に抗してバルブステムを押し吸気開口または排気開口を開くようになっている。
【0003】
内燃エンジンに関しては、燃費改善及び排気ガス浄化を目的とする研究が絶えず続けられている。その目的のためには、エンジンの動作状態に応じて吸気バルブ及び排気バルブの開閉のタイミング及びこれらのバルブのリフト量を適正に制御することが求められる。このような目的の達成に繋がる1つの技術として、以下に述べるようなエンジン効率低下防止のためのノンスロットリング技術がある。
【0004】
エンジンの出力を決定する1つの要因として、1行程当たりシリンダへと吸入される燃料混合気(燃料直噴方式の場合には空気)の量すなわち吸気量が挙げられる。吸気量は吸気経路中に設けられたスロットルバルブの開度を変化させることで、変化させることができる。
【0005】
しかしながら、このスロットルバルブの開度を調節することによる吸気量調節は、エンジンにポンピングロスを引き起こし、とくに低出力時にはスロットルバルブの開度を小さくするので、ポンピングロスの影響が大きくなり、エンジンの効率低下の原因となる。
【0006】
このような原因によるエンジン効率低下を防止するために、スロットルバルブを使用せずに吸気量の調節を行うノンスロットリングの技術が提案されている。ノンスロットリングのための機構としては、動弁装置により吸気バルブのリフト量を変化させるものが挙げられる。このようなノンスロットリング技術に適用可能な動弁機構すなわち動弁装置は、例えば、特開2003−56322号公報(特許文献1)及び特開2005−282474号公報(特許文献2)に開示されている。
【特許文献1】特開2003−56322号公報
【特許文献2】特開2005−282474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1または特許文献2に開示された動弁装置では、バルブリフト量を変化させるために、カムシャフトに固定される吸気側カムとして所謂三次元カムを使用しており、ロッカーシャフトを適時軸方向に移動させることで、ロッカーアームに付設されたローラとカムシャフトに固定された三次元カムとの軸方向当接位置を変化させている。
【0008】
一方、上記ノンスロットリング技術の実用化のためには、バルブリフト量の変化に伴い発生する吸気バルブ開のタイミングの変動を十分に小さなものとすることが必要である。このような吸気バルブ開タイミングの調節を行うために、上記特許文献1または特許文献2には、具体的には詳細に開示されていないが、可変バルブタイミング機構を付加することが提案されている。
【0009】
しかし、このような別途のバルブタイミング機構の付加は、更にエンジンの構成を複雑化する要因となる。
【0010】
本発明は、以上の如き技術的課題に鑑みて、バルブのリフト量及び開閉タイミングの双方を可変にすることが可能な動弁装置であって、構成が簡単化されたものを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
内燃エンジンの吸気または排気のバルブの開閉を制御するための動弁装置であって、エンジンと同期して回転する回転部材と、該回転部材から駆動力の伝達を受けるカムシャフトとを備え、該カムシャフトから前記バルブへとバルブ開駆動力を伝達する動弁装置において、
前記回転部材と前記カムシャフトとは同軸に配置されており、これらの間には相対回動角を可変となすカム機構が設けられており、
前記カムシャフトには三次元カムが取り付けられており、前記バルブ開駆動力は前記三次元カムを介して前記バルブへと伝達され、
前記カムシャフトには、その軸方向移動を駆動する軸方向移動駆動手段が接続されていることを特徴とする動弁装置、
が提供される。
【0012】
本発明の一態様においては、前記カム機構は、前記カムシャフト及び前記回転部材のうちの一方に付設された径方向のピンと、前記カムシャフト及び前記回転部材のうちの他方に設けられ前記ピンに係合するカム溝とからなり、該カム溝は前記カムシャフトの軸方向と平行な方向に対して斜めに延びている。本発明の一態様においては、前記カム溝は、前記カムシャフトの軸方向と平行な方向に対する傾きが前記軸方向の位置に応じて変化している。本発明の一態様においては、前記カム機構は、前記カムシャフトの軸方向移動に基づくバルブリフト量の変動に伴うバルブ開タイミングの変動を補償するように形成されている。
【0013】
本発明の一態様においては、前記回転部材は、エンジンの出力シャフトと同期して回転する駆動シャフトに取り付けられた第1のギヤと噛み合う第2のギヤを備えている。本発明の一態様においては、前記軸方向移動駆動手段はステップモータと前記カムシャフトに回転可能に取り付けられたアーム部材とを含んでおり、前記ステップモータの出力回転軸に付された雄ねじと前記アーム部材に形成された雌ねじとを噛み合わせてなるものである。
【0014】
本発明の一態様においては、前記カムシャフトから前記バルブへとバルブ開駆動力を伝達するロッカーアームが設けられており、前記三次元カムと前記ロッカーアームの入力部とが係合している。本発明の一態様においては、前記ロッカーアームの入力部には前記三次元カムと係合するローラーフォロワが設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の動弁装置によれば、エンジンと同期して回転する回転部材をカムシャフトに対して同軸に配置し、これらの間に相対回動角を可変となすカム機構を設け、カムシャフトに三次元カムを取り付け、該三次元カムを介してバルブへとバルブ開駆動力を伝達し、カムシャフトに軸方向移動駆動手段を接続しているので、軸方向移動駆動手段によりカムシャフトを軸方向に移動させることで、三次元カムによりバルブリフト量を変化させ且つ同時にカム機構によりバルブ開閉タイミングを変化させることが可能になり、装置構成が簡単化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は本発明による動弁装置の一実施形態を示す模式図であり、ここで、(a)は模式的平面図で、(b)は模式的正面図で、(c)は模式的側面図である。図2は本実施形態の動弁装置の模式的分解斜視図であり、図3はその模式的部分分解図である。図4は本実施形態の動弁装置のカム機構を示す模式図であり、ここで、(a)は模式的断面図で、(b)は模式的平面図である。
【0018】
本実施形態の動弁装置は、エンジンと同期して回転する回転部材1と、該回転部材1から駆動力の伝達を受けるカムシャフト2と、該カムシャフト2から吸気バルブ3へとバルブ開駆動力を伝達するためのロッカーアーム4とを備えている。
【0019】
回転部材1は、カムシャフト2に被せられるようにして該カムシャフトと同軸に配置されている。これら回転部材1とカムシャフト2との間には、それらの相対回動角を可変となすカム機構5が設けられている。カム機構5は、カムシャフト2に付設された径方向のピン51と、回転部材1に設けられピン51に係合するカム溝52とからなる。但し、カム機構としては、回転部材1に径方向内方へと突出するようにピンを設け、該ピンに係合するようにカムシャフトの周面にカム溝を形成したものであってもよい。カム機構は、カムシャフト2の軸方向移動に伴い、該カムシャフトに対して回転部材1が回転し、これによりカムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角を変化させるものである。
【0020】
カム溝52は、カムシャフト2の軸方向と平行な方向に対して斜めに延びている。カム溝52は、例えば、図4に示されているように、カムシャフト2の軸方向と平行な方向に対して角度θをなして延びている。この角度θは、後述する所望のバルブ開閉タイミングに基づき適宜設定することができ、カム溝52の全長に亘り一定であってもよいし、カムシャフト2の軸方向の位置に応じて変化するものであってもよい。
【0021】
回転部材1は、カムシャフト2と同軸に形成されたギヤ(第2のギヤ)11を備えている。一方、エンジンの不図示の出力シャフトから不図示のタイミングベルトを介して駆動シャフト6へと駆動力が伝達される。駆動シャフト6は、カムシャフト2と平行に配置されており、タイミングベルトが巻き掛けられるタイミングプーリ61と、ギヤ(第1のギヤ)62とが取り付けられている。ギヤ62は、上記回転部材1のギヤ11と噛み合っている。
【0022】
カムシャフト2には、三次元カム21が取り付けられている。三次元カム21は、カムシャフト2の周方向(カムシャフトの軸方向の周りの方向)に関してバルブリフト量を最大にする部分(すなわち図1(b)において最上部に位置する部分)の近傍の形状が略円錐面形状をなしている(図1(c)参照)。この三次元カム21は、ロッカーアーム4の入力部と係合している。この係合は、カムシャフト2と平行にロッカーアーム入力部に配置されたピン41に回転可能に取り付けられたローラーフォロワ42に対してなされている。ローラーフォロワ42は、三次元カム21の上記バルブリフト量を最大にする部分と線接触するような円錐面形状をなしている(図1(c)参照)。
【0023】
カムシャフト2には、その軸方向移動を駆動する軸方向移動駆動手段7が接続されている。軸方向移動駆動手段7は、ステップモータ71と、カムシャフト2にその回転中心の周りで相対的に回転可能に取り付けられたアーム部材72とを含んでいる。ここで、ステップモータ71の出力回転軸には雄ねじ71’が付されており、アーム部材72には不図示の雌ねじが形成されており、これら雄ねじ71’と雌ねじとが噛み合わされている。これにより、ステップモータ71を所要角度正転または逆転させることで、カムシャフト2を軸方向に所要ストロークで往復移動させることができる。
【0024】
ロッカーアーム4は、カムシャフト2と平行なロッカーシャフト43を中心として回動可能であり、ロッカーシャフト43に関して上記入力部とは反対側に位置する出力部がバルブ3のステムの上端に当接可能に配置されている。図1(b)に示されているように、バルブ3は、バルブスプリング31により常時シリンダの吸気開口8を閉じる向きに付勢されている。ロッカーアーム4が三次元カム21との係合に基づきロッカーシャフト43の周りで揺動することで、所要のタイミングで、吸気バルブ3がリフトせしめられ(図1(b)において下方へと移動せしめられ)、吸気バルブ3がリフト量Lをもって開かれる。図1(b)に示されているように、シリンダの吸気開口8は吸気経路9に連なっている。
【0025】
次に、本実施形態の動弁装置の動作につき、図5、図6及び図7を参照して説明する。図5及び図6において、(a)は図1(b)に対応する図であり、(b)は図1(c)に対応する図である。
【0026】
図5は、最小バルブリフト量の場合を示す。すなわち、軸方向移動駆動手段7によりカムシャフト2が図5(b)及び図4(b)その他において軸方向に左へと移動して、ストローク左限位置にある場合である。この場合には、三次元カム21がローラーフォロワ42の左側部分すなわち小径部分に当接するので、ロッカーシャフト43の周りでのロッカーアーム4の回動角度は最小になり、従ってバルブリフト量(ピーク値)は最小値L1となる。
【0027】
図6は、最大バルブリフト量の場合を示す。すなわち、軸方向移動駆動手段7によりカムシャフト2が図5(b)及び図4(b)その他において軸方向に右へと移動して、ストローク右限位置にある場合である。この場合には、三次元カム21がローラーフォロワ42の右側部分すなわち大径部分に当接するので、ロッカーシャフト43の周りでのロッカーアーム4の回動角度は最大になり、従ってバルブリフト量(ピーク値)は最大値L2となる。
【0028】
図6の状態と図5の状態とでは、カムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角が異なる。この最小バルブリフト量の場合と最大バルブリフト量の場合との相対回動角の差は、図4(b)においてピン51がカム溝52のストローク左限位置にある場合の図4(a)におけるピン51の方向と、図4(b)においてピン51がカム溝52のストローク右限位置にある場合の図4(a)におけるピン51の方向との角度差に相当し、図4(a)において角度φで示されている。この相対回動角の差の角度φは、例えば、30度程度とすることができる。
【0029】
図7はエンジンのクランク角に対するバルブリフト変化を示す図である。図7において、(a)は上記実施形態とは異なりカム機構5がなく回転部材1がカムシャフトに固定されているものとした場合の図である。この場合には、カムシャフト2が軸方向に移動してバルブリフト量が最小値L1と最大値L2との間で変化すると、バルブ開タイミングがクランク角a1とクランク角a2との間で変化する。このようなバルブ開タイミングの変動をできるだけ少なくするために、上記本発明実施形態では、カムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角を、バルブリフト量が最小値L1をとる時と最大値L2をとる時との間で、クランク角でいえばa1とa2との差に相当する角度φだけ変化させている。これにより、図7において、(b)で示すように、バルブリフト量が最小値L1の時と最大値L2の時とでのバルブ開タイミングのずれが生じないようにしている。
【0030】
以上の説明では、単純化してバルブリフト量が最小値L1の時及び最大値L2の時のみに関して説明した。この場合には、カム溝52の形状を、例えば角度θが一定の直線状としてもよい。更に詳細には、最小値L1及び最大値L2の間のバルブリフト量の場合についても、同様にしてバルブ開タイミングの変動が少なくなるようにカムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角を設定することができる。このように、一般的には、カム溝52の形状は、三次元カム21の形状に応じて種々の形態をとり、角度θがカムシャフト軸方向の位置に応じて変化するものとなる。かくして、カム機構5は、カムシャフト2の軸方向移動に基づくバルブリフト量の変動に伴うバルブ開タイミングの変動を補償するように形成されている。
【0031】
図8は本発明による動弁装置の他の実施形態を示す模式図であり、ここで、(a)は模式的平面図で、(b)は模式的正面図で、(c)は模式的側面図である。図9は本実施形態の動弁装置の模式的分解斜視図である。これらの図8及び図9において、上記図1〜6におけると同様の部材または部分には同一の符号が付されている。図8及び図9は、それぞれ上記実施形態の図1及び図2に対応する部分を示す。
【0032】
本実施形態においては、ローラーフォロワ42の形状が図1他の実施形態のものとは異なる。すなわち、本実施形態では、ローラーフォロワ42は円筒形状(または円盤形状)をなしており、その一方の円形状端縁(図8(a)では下側に位置する端縁:図8(c)では左側に位置する端縁)が三次元カム21と接触する。
【0033】
次に、本実施形態の動弁装置の動作につき、図10及び図11を参照して説明する。図10及び図11において、(a)は図8(b)に対応する図であり、(b)は図8(c)に対応する図である。
【0034】
図10は、最小バルブリフト量の場合を示す。すなわち、軸方向移動駆動手段7によりカムシャフト2が図10(b)その他において軸方向に左へと移動して、ストローク左限位置にある場合である。この場合には、三次元カム21の右側部分にローラーフォロワ42の左側端縁が当接するので、ロッカーシャフト43の周りでのロッカーアーム4の回動角度は最小になり、従ってバルブリフト量(ピーク値)は最小値L1となる。
【0035】
図11は、最大バルブリフト量の場合を示す。すなわち、軸方向移動駆動手段7によりカムシャフト2が図10(b)その他において軸方向に右へと移動して、ストローク右限位置にある場合である。この場合には、三次元カム21の左側部分にローラーフォロワ42の左側端縁が当接するので、ロッカーシャフト43の周りでのロッカーアーム4の回動角度は最大になり、従ってバルブリフト量(ピーク値)は最大値L2となる。
【0036】
図11の状態と図10の状態とでは、カムシャフト2に対する回転部材1の相対回動角が異なる。この最小バルブリフト量の場合と最大バルブリフト量の場合との相対回動角の差については、上記の図1他の実施形態において図4他を参照して説明した通りである。
【0037】
以上の実施形態では、カムシャフト2の三次元カム21からロッカーアーム4を介してバルブ3へとバルブ開駆動力を伝達するロッカーアーム式の動弁機構を有する例を示したが、本発明のバルブのリフト量及び開閉タイミングの双方を可変にする動弁装置は、ロッカーアームを用いることなく三次元カム21からバルブ3へとバルブ開駆動力を伝達する直動式の動弁機構を有するものにも適用できる。この場合、バルブリフターに上記ピン41及びローラーフォロワ42と同等なピン及びローラーフォロワを取り付けておけばよい。
【0038】
以上の実施形態ではバルブ開タイミングの変動を補償することでノンスロットリングに適用する例を示したが、本発明のバルブのリフト量及び開閉タイミングの双方を可変にする動弁装置は、他の燃費改善及び排気ガス浄化の目的その他の目的にも使用することができる。その場合には、所望のバルブリフト量変化及び所望のバルブ開閉タイミング(バルブ開時間を含む)に応じて、三次元カム21の形状及びカム機構5の特性(例えばカム溝52の形状)を適宜設定することができる。
【0039】
更に、以上の実施形態では吸気バルブに関して述べたが、本発明のバルブのリフト量及び開閉タイミングの双方を可変にする動弁装置は、排気バルブに適用することも可能である。排気バルブに適用する目的としては、例えば、予混合圧縮着火(HCCI)方式のエンジンにおける内部EGR量を最適に制御することが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明による動弁装置の一実施形態を示す模式図であり、(a)は模式的平面図で、(b)は模式的正面図で、(c)は模式的側面図である。
【図2】図1の動弁装置の模式的分解斜視図である。
【図3】図1の動弁装置の模式的部分分解図である。
【図4】図1の動弁装置のカム機構を示す模式図であり、(a)は模式的断面図で、(b)は模式的平面図である。
【図5】図1の動弁装置の動作説明のための模式図である。
【図6】図1の動弁装置の動作説明のための模式図である。
【図7】図1の動弁装置におけるバルブリフト変化を示す図である。
【図8】本発明による動弁装置の一実施形態を示す模式図であり、(a)は模式的平面図で、(b)は模式的正面図で、(c)は模式的側面図である。
【図9】図8の動弁装置の模式的分解斜視図である。
【図10】図8の動弁装置の動作説明のための模式図である。
【図11】図8の動弁装置の動作説明のための模式図である。
【符号の説明】
【0041】
1 回転部材
11 ギヤ
2 カムシャフト
21 三次元カム
3 吸気バルブ
31 バルブスプリング
4 ロッカーアーム
41 ピン
42 ローラーフォロワ
43 ロッカーシャフト
5 カム機構
51 径方向ピン
52 カム溝
6 駆動シャフト
61 タイミングプーリ
62 ギヤ
7 軸方向移動駆動手段
71 ステップモータ
71’ 雄ねじ
72 アーム部材
8 吸気開口
9 吸気経路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンの吸気または排気のバルブの開閉を制御するための動弁装置であって、エンジンと同期して回転する回転部材と、該回転部材から駆動力の伝達を受けるカムシャフトとを備え、該カムシャフトから前記バルブへとバルブ開駆動力を伝達する動弁装置において、
前記回転部材と前記カムシャフトとは同軸に配置されており、これらの間には相対回動角を可変となすカム機構が設けられており、
前記カムシャフトには三次元カムが取り付けられており、前記バルブ開駆動力は前記三次元カムを介して前記バルブへと伝達され、
前記カムシャフトには、その軸方向移動を駆動する軸方向移動駆動手段が接続されていることを特徴とする動弁装置。
【請求項2】
前記カム機構は、前記カムシャフト及び前記回転部材のうちの一方に付設された径方向のピンと、前記カムシャフト及び前記回転部材のうちの他方に設けられ前記ピンに係合するカム溝とからなり、該カム溝は前記カムシャフトの軸方向と平行な方向に対して斜めに延びていることを特徴とする、請求項1に記載の動弁装置。
【請求項3】
前記カム溝は、前記カムシャフトの軸方向と平行な方向に対する傾きが前記軸方向の位置に応じて変化していることを特徴とする、請求項2に記載の動弁装置。
【請求項4】
前記カム機構は、前記カムシャフトの軸方向移動に基づくバルブリフト量の変動に伴うバルブ開タイミングの変動を補償するように形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の動弁装置。
【請求項5】
前記回転部材は、エンジンの出力シャフトと同期して回転する駆動シャフトに取り付けられた第1のギヤと噛み合う第2のギヤを備えていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の動弁装置。
【請求項6】
前記軸方向移動駆動手段はステップモータと前記カムシャフトに回転可能に取り付けられたアーム部材とを含んでおり、前記ステップモータの出力回転軸に付された雄ねじと前記アーム部材に形成された雌ねじとを噛み合わせてなるものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の動弁装置。
【請求項7】
前記カムシャフトから前記バルブへとバルブ開駆動力を伝達するロッカーアームが設けられており、前記三次元カムと前記ロッカーアームの入力部とが係合していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の動弁装置。
【請求項8】
前記ロッカーアームの入力部には前記三次元カムと係合するローラーフォロワが設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の動弁装置。
【請求項1】
内燃エンジンの吸気または排気のバルブの開閉を制御するための動弁装置であって、エンジンと同期して回転する回転部材と、該回転部材から駆動力の伝達を受けるカムシャフトとを備え、該カムシャフトから前記バルブへとバルブ開駆動力を伝達する動弁装置において、
前記回転部材と前記カムシャフトとは同軸に配置されており、これらの間には相対回動角を可変となすカム機構が設けられており、
前記カムシャフトには三次元カムが取り付けられており、前記バルブ開駆動力は前記三次元カムを介して前記バルブへと伝達され、
前記カムシャフトには、その軸方向移動を駆動する軸方向移動駆動手段が接続されていることを特徴とする動弁装置。
【請求項2】
前記カム機構は、前記カムシャフト及び前記回転部材のうちの一方に付設された径方向のピンと、前記カムシャフト及び前記回転部材のうちの他方に設けられ前記ピンに係合するカム溝とからなり、該カム溝は前記カムシャフトの軸方向と平行な方向に対して斜めに延びていることを特徴とする、請求項1に記載の動弁装置。
【請求項3】
前記カム溝は、前記カムシャフトの軸方向と平行な方向に対する傾きが前記軸方向の位置に応じて変化していることを特徴とする、請求項2に記載の動弁装置。
【請求項4】
前記カム機構は、前記カムシャフトの軸方向移動に基づくバルブリフト量の変動に伴うバルブ開タイミングの変動を補償するように形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の動弁装置。
【請求項5】
前記回転部材は、エンジンの出力シャフトと同期して回転する駆動シャフトに取り付けられた第1のギヤと噛み合う第2のギヤを備えていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の動弁装置。
【請求項6】
前記軸方向移動駆動手段はステップモータと前記カムシャフトに回転可能に取り付けられたアーム部材とを含んでおり、前記ステップモータの出力回転軸に付された雄ねじと前記アーム部材に形成された雌ねじとを噛み合わせてなるものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の動弁装置。
【請求項7】
前記カムシャフトから前記バルブへとバルブ開駆動力を伝達するロッカーアームが設けられており、前記三次元カムと前記ロッカーアームの入力部とが係合していることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の動弁装置。
【請求項8】
前記ロッカーアームの入力部には前記三次元カムと係合するローラーフォロワが設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の動弁装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−218087(P2007−218087A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29786(P2006−29786)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000129851)株式会社ケイセブン (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000129851)株式会社ケイセブン (39)
【Fターム(参考)】
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