説明

内燃機関の制御装置

【課題】NOxの増加の抑制とトルク段差の抑制とを両立することが可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】上記の内燃機関の制御装置は、吸気通路及び排気通路に配置された第1及び第2の過給機と、第2の過給機に供給される吸気及び排気の量を調整するための吸気切替弁及び排気切替弁と、排気通路から吸気通路へとEGRガスを還流させるEGR通路と、EGR通路に設けられたEGR弁と、を有する。内燃機関の制御装置は、実空気量と目標空気量との偏差に基づいてフィードバック量を算出し、当該フィードバック量で基本開度を補正した値をEGR弁の開度として設定するEGR制御手段を有する。ここで、EGR制御手段は、ターボモードの切替え時におけるフィードバック量を、シングルターボモードとした場合のフィードバック量とツインターボモードとした場合の前記フィードバック量との間で変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインターボシステムの内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸気系及び排気系に2つの過給機を並列に配置し、これらの過給機の作動個数を適宜切り替えるツインターボシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、ツインターボシステムにおいて、プライマリターボ過給機のみを動作させるシングルターボモードから2つの過給機を動作させるツインターボモードへの切替え時に、EGR(Exhaust Gas Recirculation)量を減量してセカンダリターボを予回転させて、切替え時に発生するトルク段差を低減する技術が記載されている。特許文献2には、直列ターボシステムにおいて、1段過給と2段過給とでそれぞれの排気圧に応じてEGR弁の開度を設定する技術が記載されている。特許文献3にも本発明と関連のある技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−175114号公報
【特許文献2】特開平4−17765号公報
【特許文献3】特開2004−156458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術では、切り替え時のトルク段差の低減のみを目的としてEGR量を減量している。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、トルク段差の発生とEGR量の減少量との間に明確な相関がないため、EGR量を減少させ過ぎることによりNOxが大幅に増加する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、NOxの増加の抑制とトルク段差の抑制とを両立することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、吸気通路及び排気通路に配置された第1及び第2の過給機と、前記第2の過給機に供給される吸気及び排気の量を調整するための吸気切替弁及び排気切替弁と、前記排気通路から前記吸気通路へとEGRガスを還流させるEGR通路と、前記EGR通路に設けられたEGR弁と、を有する内燃機関の制御装置は、前記吸気切替弁及び前記排気切替弁を制御することにより、前記第1の過給機のみを動作させるシングルターボモードと前記第1及び第2の過給機の両方を動作させるツインターボモードとの間でターボモードを切り替える切替制御手段と、前記内燃機関に供給される燃料供給量を燃焼させるのに必要な最低限の空気量を目標空気量として設定する目標空気量設定手段と、前記吸気通路に流入する実空気量を検出する実空気量検出手段と、前記実空気量と前記目標空気量との偏差に基づいてフィードバック量を算出し、当該フィードバック量で基本開度を補正した値を前記EGR弁の開度として設定するEGR制御手段と、を備え、前記EGR制御手段は、前記ターボモードの切替え時における前記フィードバック量を、前記シングルターボモードとした場合の前記フィードバック量と前記ツインターボモードとした場合の前記フィードバック量との間で変化させる。
【0007】
上記の内燃機関の制御装置は、吸気通路及び排気通路に配置された第1及び第2の過給機と、第2の過給機に供給される吸気及び排気の量を調整するための吸気切替弁及び排気切替弁と、排気通路から吸気通路へとEGRガスを還流させるEGR通路と、EGR通路に設けられたEGR弁と、を有する。内燃機関の制御装置は、ターボモードを切替える切替制御手段と、目標空気量設定手段と、EGR制御手段と、実空気量を検出する実空気量検出手段と、を備える。これらの切替制御手段、目標空気量設定手段、EGR制御手段は、例えばECU(Engine Control Unit)により実現される。実空気量検出手段は、例えばエアフロメータである。切替制御手段は、吸気切替弁及び排気切替弁を制御することにより、第1の過給機のみを動作させるシングルターボモードと第1及び第2の過給機の両方を動作させるツインターボモードとの間でターボモードを切り替える。目標空気量設定手段は、内燃機関に供給される燃料供給量を燃焼させるのに必要な最低限の空気量を目標空気量として設定する。EGR制御手段は、実空気量と目標空気量との偏差に基づいてフィードバック量を算出し、当該フィードバック量で基本開度を補正した値をEGR弁の開度として設定する。ここで、EGR制御手段は、ターボモードの切替え時におけるフィードバック量を、シングルターボモードとした場合のフィードバック量とツインターボモードとした場合の前記フィードバック量との間で変化させる。このようにすることで、実空気量を目標空気量に追従させやすくなるとともに、ハンチングを防止することができ、実空気量を目標空気量近傍に保持することができる。これにより、ターボモードの切替中において、トルク段差を抑制するとともに、NOxの増加や騒音の急変を抑えることができる。
【0008】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記排気切替弁の開度を検出する排気切替弁開度検出手段を備え、前記EGR制御手段は、前記ターボモードの切替え時において、前記排気切替弁の開度に応じて前記フィードバック量を変化させる。排気切替弁開度検出手段は、例えば開度センサである。これにより、ターボモードの切替期間におけるフィードバック量を正確に求めることができる。
【0009】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記EGR制御手段は、前記フィードバック量の上下限幅を設定している。これにより、明らかに不適切なフィードバック量が算出された場合であっても、EGR弁の開度がそれに合わせて制御されるのを防ぐことができる。
【0010】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記排気通路から前記吸気通路へとEGRガスを還流させる際の実EGR率を算出する実EGR率算出手段と、EGR率の目標値を目標EGR率として設定する目標EGR率設定手段と、を備え、前記EGR制御手段は、前記ターボモードの切替え時において、前記実空気量が前記目標空気量以上になっている場合には、前記目標EGR率と前記実EGR率との偏差に応じて前記EGR弁の開度を設定し、前記実空気量が前記目標空気量よりも小さくなっている場合には、前記EGR弁を閉じ側に制御する。実EGR率算出手段、目標EGR率設定手段は、例えばECUにより実現される。これにより、実EGR率が目標EGR率より大きく外れるのを防ぐことができるとともに、トルク段差の発生を防ぐことができる。
【0011】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記実EGR率算出手段は、前記排気切替弁の開度に応じて前記実EGR率を算出する。これにより、排気圧を精度良く算出することができ、精度良く実EGR率を算出することができる。
【0012】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記実EGR率算出手段は、前記吸気切替弁の開度に応じて前記実EGR率を算出する。これにより、より精度良く実EGR率を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用された車両の構成を示す概略図である。
【図2】ターボ過給機4、5付近の構成要素のみを図示したものである。
【図3】排気切替弁の開度、吸気切替弁の開度、空気量、EGR弁の開度、燃料供給量、トルクについての時間に対する変化を示すグラフである。
【図4】第1実施形態に係る内燃機関の制御処理を示すフローチャートである。
【図5】EGR弁開度に対する空気量(又はEGR率)の変化を示すグラフである。
【図6】排気切替弁の開度、吸気切替弁の開度、空気量、EGR弁の開度についての時間に対する変化を示すグラフである。
【図7】排気切替弁の開度、吸気切替弁の開度、EGR率、空気量、EGR弁についての時間に対する変化を示すグラフである。
【図8】第3実施形態に係る内燃機関の制御処理を示すフローチャートである。
【図9】排気切替弁の開度及び排気圧の時間に対する変化を示すグラフである。
【図10】実EGR率を算出する算出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0015】
[装置構成]
まず、本実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用されたシステムの全体構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用された車両の構成を示す概略図である。図1では、実線矢印がガスの流れを示し、破線矢印が信号の入出力を示している。なお、図1においては、シングルターボモードに設定した場合のガスの流れを示している。
【0017】
車両は、主に、エアクリーナ2と、吸気通路3と、ターボ過給機4、5と、吸気切替弁6と、リード弁7と、内燃機関(エンジン)8と、過給圧センサ9と、排気通路10と、EGR通路11と、EGR弁14と、排気切替弁15と、排気バイパス弁16と、ECU(Engine Control Unit)50と、を備える。即ち、車両は、所謂ツインターボシステムを有している。
【0018】
エアクリーナ2は、外部から取得された空気(吸気)を浄化して、吸気通路3に供給する。吸気通路3は途中で吸気通路3a、3bに分岐されており、吸気通路3aにはターボ過給機4のコンプレッサ4aが配設されており、吸気通路3bにはターボ過給機5のコンプレッサ5aが配設されている。コンプレッサ4a、5aは、それぞれ、吸気通路3a、3bを通過する吸気を圧縮する。
【0019】
また、吸気通路3b中には、吸気切替弁6、及びリード弁7が設けられている。吸気切替弁6は、ECU50から供給される制御信号S6によって開閉が制御され、吸気通路3bを通過する吸気の流量を調整可能に構成されている。例えば、吸気切替弁6を開閉させることにより、吸気通路3bにおける吸気の流通/遮断を切り替えることができる。リード弁7は、通路中の圧力が所定以上となった際に開弁するように構成されている。吸気通路3には、エアフロメータ21が設けられている。エアフロメータ21は、吸気された空気量(実空気量)を検出し、実空気量に対応する検出信号S21をECU50に供給する。また、コンプレッサ4a、4bの下流側の吸気通路3には、過給圧センサ9が設けられている。過給圧センサ9は、過給された吸気の圧力(過給圧)を検出し、この過給圧に対応する検出信号S9をECU50に供給する。
【0020】
内燃機関8は、左右のバンク(気筒群)8L、8Rにそれぞれ4つずつの気筒(シリンダ)8La、8Raが設けられたV型8気筒のエンジンとして構成されている。内燃機関8は、吸気通路3より供給される吸気と燃料との混合気を燃焼することによって、動力を発生する装置である。内燃機関8は、例えばディーゼルエンジンによって構成される。気筒8Laには燃料噴射弁22aより燃料が供給され、気筒8Raには燃料噴射弁22bより燃料が供給される。燃料噴射弁22a、22bは、ECU50からの制御信号S22a、22bにより制御される。そして、内燃機関8内における燃焼により発生した排気は、排気通路10に排出される。なお、内燃機関8を、8つの気筒にて構成することに限定はされない。
【0021】
排気通路10中には、EGR通路11が接続されている。EGR通路11は、一端が排気通路10に接続されており、他端が吸気通路3に接続されている。EGR通路11は、排気(EGRガス)を吸気系に還流するための通路である。具体的には、EGR通路11には、EGRクーラ12と、EGR弁14と、バイパス通路11aと、バイパス弁13とが設けられている。EGRクーラ12はEGRガスを冷却する装置であり、EGR弁14はEGR通路11を通過するEGRガスの流量を調節する弁、言い換えると吸気系に還流させるEGRガスの量を調節する(即ちEGR率を調節する)弁である。この場合、EGR弁14は、ECU50から供給される制御信号S14によって開度が制御される。また、バイパス通路11aは、EGRクーラ12をバイパスする通路であり、通路上にはバイパス弁13が設けられている。このバイパス弁13によって、バイパス通路11aを通過するEGRガスの流量が調節される。なお、図1においては、EGR弁14が閉に設定されているため、EGRガスは還流されない。
【0022】
排気通路10は途中で排気通路10a、10bに分岐されており、排気通路10aにはターボ過給機4のタービン4bが配設されており、排気通路10bにはターボ過給機5のタービン5bが配設されている。タービン4b、5bは、それぞれ、排気通路10a、10bを通過する排気によって回転される。このようなタービン4b、5bの回転トルクが、ターボ過給機4内のコンプレッサ4a及びターボ過給機5内のコンプレッサ5aに伝達されて回転することによって、吸気が圧縮される(即ち過給される)こととなる。
【0023】
なお、ターボ過給機4は、低中速域で過給能力の大きい小容量の低速型の過給機として構成され、ターボ過給機5は、中高速域で過給能力の大きい大容量の高速型の過給機として構成されている。つまり、ターボ過給機4は所謂プライマリターボ過給機に相当し、ターボ過給機5は所謂セカンダリターボ過給機に相当する。尚、ターボ過給機4は本発明における第1の過給機に相当し、ターボ過給機5は本発明における第2の過給機に相当する。
【0024】
更に、排気通路10bには、排気切替弁15が設けられていると共に、排気バイパス通路10baが接続されている。排気切替弁15は、ECU50から供給される制御信号S15によって開閉が制御され、排気通路10bを通過する排気の流量を調整可能に構成されている。例えば、排気切替弁15を開閉させることにより、排気通路10bにおける排気の流通/遮断を切り替えることができる。ここで、排気切替弁15には開度センサ15aが設けられている。開度センサ15aは、排気切替弁15の開度を検出し、検出した開度に応じた検出信号S15aをECU50に供給する。また、排気バイパス通路10baは、排気切替弁15が設けられた排気通路10bをバイパスする通路として構成されている。具体的には、排気バイパス通路10baは、排気切替弁15が設けられた排気通路10bよりも、通路の径が小さく構成されている。また、排気バイパス通路10ba中には排気バイパス弁16が設けられており、この排気バイパス弁16によって、排気バイパス通路10baを通過する排気の流量が調節される。
【0025】
なお、前述した吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16が全て閉である場合には、ターボ過給機4にのみ吸気及び排気が供給され、ターボ過給機5には吸気及び排気が供給されない。そのため、ターボ過給機4のみが作動し、ターボ過給機5は作動しない。一方、吸気切替弁6が開であり、排気切替弁15及び排気バイパス弁16のいずれかが開である場合には、ターボ過給機4、5の両方に吸気及び排気が供給される。そのため、ターボ過給機4、5の両方が作動する。
【0026】
ECU50は、図示しないCPU、ROM、RAM、及びA/D変換器などを含んで構成される。ECU50は、車両内の各種センサから供給される出力等に基づいて、車両内の制御を行う。具体的には、ECU50は、エアフロメータ21より実空気量を取得し、過給圧センサ9から過給圧を取得し、実空気量及び過給圧などに基づいて、吸気切替弁6、EGR弁14、及び排気切替弁15、並びに排気バイパス弁16などに対する制御を行う。各実施形態では、ECU50は、主に、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を制御することによって、ターボ過給機4のみを作動させるモード(シングルターボモード)と、ターボ過給機4、5の両方を作動させるモード(ツインターボモード)との間でターボモードを切り替える制御を行う。
【0027】
ここで、シングルターボモードとツインターボモードとを切り替える際に実行される基本的な制御について、簡単に説明する。前述したように、モードの切り替えは、ECU50が、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を制御することによって行う。具体的には、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合には、ECU50は、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を閉から開に制御する。この場合、ECU50は、基本的には、排気バイパス弁16、排気切替弁15、吸気切替弁6の順に弁を開にすることによって、切り替えを実行する。より詳しくは、まず排気バイパス弁16を少しずつ開いていき、この状態において所定の条件が満たされたときに排気切替弁15を開いていき、その後に吸気切替弁6を開く。この場合、最初に排気バイパス弁16を少し開くのは、比較的小流量の排気(排気バイパス通路10baの径が小さいため)をターボ過給機5に供給することで、ターボ過給機5を徐々に作動(即ち、助走)させるためである。言い換えると、最初に排気切替弁15を開くことによって、比較的大流量の排気がターボ過給機5に一気に流れて、トルクショックなどが生じてしまうことを防止するためである。一方、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合には、ECU50は、上記と同様にして、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16を開から閉に制御する。
【0028】
次に、図2を参照して、シングルターボモード及びツインターボモードにおけるガスの流れについて説明する。図2は、図1におけるターボ過給機4、5付近の構成要素のみを図示したものである。図2(a)は、シングルターボモードに設定された際の図を示しており、図2(b)は、ツインターボモードに設定された際の図を示している。図2(a)に示すように、シングルターボモードにおいては、吸気切替弁6、排気切替弁15、及び排気バイパス弁16が全て閉であるため、ターボ過給機4にのみ吸気及び排気が供給され、ターボ過給機5には吸気及び排気が供給されない。そのため、ターボ過給機4のみが作動し、ターボ過給機5は作動しない。一方、図2(b)に示すように、ツインターボモードにおいては、吸気切替弁6が開であり、排気切替弁15及び排気バイパス弁16が開であるため、ターボ過給機4、5の両方に吸気及び排気が供給される。そのため、ターボ過給機4、5の両方が作動する。
【0029】
[第1実施形態]
第1実施形態に係る内燃機関の制御方法について説明する。
【0030】
ツインターボシステムでは、シングルターボモードとツインターボモードとの間で切り替えを行う際に、内燃機関の出力トルクに段差が生じる恐れがある。そのため、一般的なツインターボシステムの制御では、出力トルクに段差が生じるのを防ぐため、吸気系に還流させるEGRガスの量(EGR量)を減少させ、内燃機関に流入する実空気量を増加させている。しかしながら、この場合において、EGR量を減少させ過ぎると、NOxの排出量が増加する恐れがある。
【0031】
ここで、内燃機関がディーゼルエンジンの場合には、内燃機関に供給される燃料を完全に燃焼できるだけの最低限の空気量を供給しさえすれば、内燃機関の出力トルクの低下が発生しないことが知られている。そこで、第1実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、シングルターボモードとツインターボモードとの間で切り替えを行う際に燃料供給量を燃焼させるのに必要な最低限の空気量を目標空気量として設定し、実空気量と目標空気量との大小関係に基づいて、EGR弁14を制御することとする。以下で、具体的に説明する。
【0032】
図3は、排気切替弁15の開度(排気切替弁開度)、吸気切替弁6の開度(吸気切替弁開度)、空気量、EGR弁14の開度(EGR弁開度)、燃料供給量、内燃機関8より出力されるトルクについての時間に対する変化を示している。図3において、「シングル期間」とはシングルターボモードにターボモードが設定される期間を示し、「ツイン期間」とはツインターボモードにターボモードが設定される期間を示している。また、「切替期間」とは、ターボモードの切替え中の期間を示している。
【0033】
ECU10は、燃料供給量を燃焼させるのに必要な最低限の目標空気量を適合値として予め求めておき、目標空気量Gntrgとしてメモリなどに保持しておく。目標空気量Gntrgは燃料供給量を燃焼させるのに必要な最低限の空気量を示しているので、図3に示すように、燃料供給量の増加に伴い、目標空気量Gntrgも増加している。
【0034】
ECU50は、切替期間において、実空気量Gnが目標空気量Gntrgに追従させる制御を行う。具体的には、ECU50は、実空気量Gnが目標空気量Gntrg以上となっている場合には、EGR弁14の開度を開き側に制御してEGR量を増加させることで実空気量Gnを減少させる。一方、ECU50は、実空気量Gnが目標空気量Gntrgよりも小さくなっている場合には、EGR弁14の開度を閉じ側に制御してEGR量を減少させることで実空気量Gnを増加させる。
【0035】
例えば、切替期間中の時刻Ta1では、実空気量Gnが目標空気量Gntrgよりも小さくなっているので、ECU50は、EGR弁14の開度を閉じ側に制御してEGR量を減少させることで実空気量Gnを増加させる。時刻Ta2では、実空気量Gnが目標空気量Gntrg以上となっているので、ECU50は、EGR弁14の開度を開き側に制御してEGR量を増加させることで実空気量Gnを減少させる。
【0036】
このようにすることで、囲み破線A1で示すように、切替期間では、実空気量Gnは目標空気量Gntrg近傍に保持される。従って、上述の制御方法によれば、燃料供給量を燃焼させるのに必要な最低限の空気量が内燃機関8に供給されるので、切替期間におけるトルクの低下を抑え、トルク段差の発生を抑制することができる。また、このようにすることで、EGR量を減少させ過ぎることがなくなるので、NOxの排出量の増加や騒音を抑えることができる。
【0037】
次に、第1実施形態に係る内燃機関の制御処理について図4を用いて説明する。図4は、第1実施形態に係る内燃機関の制御処理を示すフローチャートである。
【0038】
ステップS101において、ECU50は、ターボモードが切替え中にあるか否かについて判定する。例えば、ECU50は、排気切替弁15を開き側に制御するための制御信号S15を供給したか否かを判定することにより、ターボモードが切替え中にあるか否かを判定することができる。ECU50は、ターボモードが切替え中にないと判定した場合(ステップS101:No)、即ち、シングルターボモード又はツインターボモードになっていると判定した場合には、ステップS105の処理へ進み、通常制御を行う。ECU50は、通常制御として、排気通路10から吸気通路3へとEGRガスが還流される際のEGR率(実EGR率)を目標EGR率に追従させる制御を行う。ここで、実EGR率は、過給圧や排気圧などに基づいて算出される値であり、目標EGR率は、実験などにより予め適合値として算出される値である。ステップS105において、ECU50は、通常制御を行った後、本制御処理をリターンする。一方、ステップS101において、ECU50は、ターボモードが切替え中にあると判定した場合には(ステップS101:Yes)、ステップS102の処理へ進む。
【0039】
ステップS102において、ECU50は、燃料供給量Qfinに基づいて目標空気量Gntrgを算出する。目標空気量Gntrgは、例えば、燃料供給量Qfinの関数funcAを用いて求められる。この関数funcAは、予め実験などにより求められた関数である。
【0040】
ステップS103において、ECU50は、エアフロメータ21からの検出信号S21に基づいて実空気量Gnを求める。なお、ステップS102の処理とステップS103の処理とは、順番を逆に行っても良いし、又は、同時に行っても良いのは言うまでもない。
【0041】
ステップS104において、ECU50は、実空気量Gnが目標空気量Gntrgよりも小さいか否かについて判定する。ECU50は、実空気量Gnが目標空気量Gntrgよりも小さいと判定した場合には(ステップS104:Yes)、EGR弁14を所定量閉じる制御を行った後(ステップS105)、本制御処理をリターンする。一方、ECU50は、実空気量Gnが目標空気量Gntrg以上になっていると判定した場合には(ステップS104:No)、EGR弁14を所定量開く制御を行った後(ステップS106)、本制御処理をリターンする。ここで、所定量は、実空気量Gnと目標空気量Gntrgとの偏差の関数として算出される。
【0042】
以上に述べたように、第1実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、切替期間において、燃料供給量を燃焼させるのに必要な最低限の空気量を目標空気量として設定し、実空気量が目標空気量よりも小さいと判定した場合には、EGR弁14を閉じ側に制御し、実空気量が目標空気量以上になっていると判定した場合には、EGR弁14を開き側に制御する。このようにすることで、ターボモードの切替中において、トルク段差の発生を抑えるとともに、NOxの増加や騒音の急変を抑えることができる。
【0043】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る内燃機関の制御方法について説明する。
【0044】
ツインターボシステムでは、例えば、シングルターボモードからツインターボモードへとターボモードが切り替わる場合には、吸気切替弁6及び排気切替弁15が開くことで、吸気通路3及び排気通路10の経路が拡大し、過給圧及び排気圧が低下する。そのため、シングルターボモードからツインターボモードへとターボモードが切り替わる場合には、EGR弁14の開度(EGR弁開度)の変化に対する空気量の変化感度が低下する。
【0045】
図5は、EGR弁開度に対する空気量(又はEGR率)の変化を示すグラフである。図5に示すように、EGR弁開度が変化量Wnだけ変化した場合、シングルターボモードの場合の空気量(又はEGR率)の変化量はVsとなり、ツインターボモードの場合の空気量(又はEGR率)の変化量はVtとなる。ここで、変化量Vsと比較して、変化量Vtは小さくなっている。つまり、シングルターボモードからツインターボモードへとターボモードの切替えが行われると、過給圧及び排気圧が低下するため、EGR弁開度の変化に対する空気量の変化感度は低下する。また、反対に、ツインターボモードからシングルターボモードへとターボモードの切替えが行われると、過給圧及び排気圧が上昇するため、EGR弁開度の変化に対する空気量の変化感度は上昇する。
【0046】
ターボモードの切替中においても、排気切替弁15の開度が次第に変化するので、EGR弁開度の変化に対し、空気量の変化感度も次第に変化する。従って、先に述べた図4のフローチャートにおけるステップS105、S106の処理において、排気切替弁15の開度を考慮せずに、目標空気量と実空気量との偏差のみに基づいてEGR弁14の開度の所定量を決定した場合には、追従性の悪化やハンチングを引き起こす可能性がある。
【0047】
そこで、第2実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、基本開度をフィードバック量で補正した値をEGR弁14の開度として設定するとともに、ターボモードの切替え時には、排気切替弁15の開度に応じて当該フィードバック量を変化させることとする。ここで、基本開度は、予め適合値として求められた値であり、シングルターボモード時よりもツインターボモード時において開き側となるように設定される。
【0048】
図6は、排気切替弁15の開度(排気切替弁開度)、吸気切替弁6の開度(吸気切替弁開度)、空気量、EGR弁14の開度(EGR弁開度)についての時間に対する変化を示している。
【0049】
図6におけるEGR弁14の開度の変化を示すグラフでは、基本開度を破線で示し、当該基本開度に対するフィードバック量を実線で示し、フィードバック量の上下限幅であるフィードバック制御幅を一点鎖線で示している。
【0050】
このグラフを見ても分かるように、EGR弁14の基本開度は、シングル期間における開度よりもツイン期間における開度の方が開き側となるように設定されている。切替期間のおける基本開度は、ツイン期間における基本開度とシングル期間における基本開度との間の値となるように設定される。
【0051】
フィードバック量は、シングル期間におけるフィードバック量よりもツイン期間におけるフィードバック量の方が大きくなるように設定されている。ここで、フィードバック量は、シングル期間及びツイン期間では、実EGR率と目標EGR率との偏差に基づいて算出され、切替期間においては、実空気量Gnと目標空気量Gntrgとの偏差及び排気切替弁の開度に基づいて算出される。
【0052】
フィードバック制御幅は、基本開度に基づいた適合値として実験などにより求められる。ここで、ツイン期間におけるフィードバック制御幅は、シングル期間におけるフィードバック制御幅よりも大きな値となるように設定される。また、切替期間のおけるフィードバック幅は、ツイン期間におけるフィードバック制御幅とシングル期間におけるフィードバック幅との間の値となるように設定される。フィードバック制御幅を設けることにより、センサの故障などにより明らかに不適切なフィードバック量が算出された場合であっても、EGR弁の開度がそれに合わせて制御されるのを防ぐことができる。
【0053】
次に、ターボモードの切替期間におけるフィードバック量の算出方法について具体的に説明する。ECU50は、ターボモードをシングルターボモード及びツインターボモードとした場合のそれぞれについて、実空気量Gnと目標空気量Gntrgとの偏差に基づくフィードバック量を算出し、それらのフィードバック量の間で排気切替弁15の開度に応じて変化させた値を切替期間におけるフィードバック量として算出する。
【0054】
シングルターボモードの場合のフィードバック量eegrfbsは、以下の式(1)で求められる。
【0055】
eegrfbs = funcB(Grtrg−Gn)・・・(1)
ここで、funcBは実験などにより求められた関数である。フィードバック量eegrfbsは、ターボモードをシングルターボモードとした場合において、実空気量Gnを目標空気量Gntrgに追従させるためのフィードバック量である。
【0056】
ツインターボモードの場合のフィードバック量eegrfbsは、上述の式(1)に係数Kをかけた以下の式(2)で求められる。
【0057】
eegrfbt = K×funcB(Grtrg−Gn)・・・(2)
フィードバック量eegrfbtは、ターボモードをツインターボモードとした場合において、実空気量Gnを目標空気量Gntrgに追従させるためのフィードバック量である。ここで、式(2)における係数Kは1よりも大きな値であり、ツインターボモードの場合のフィードバック量eegrfbtは、シングルターボモードの場合のフィードバック量eegrfbsよりも大きな値に設定される。具体的には、図5に示したグラフを基に、EGR弁14の開度の変化に対する空気量の変化感度が、シングルターボモードとツインターボモードとで同一となるように係数Kは設定される。
【0058】
ターボモードの切替期間におけるフィードバック量eegrfbchは、上述の式(1)、(2)より算出されたフィードバック量eegrfbt、eegrfbsと、排気切替弁15の開度とを基に、以下の式(3)を用いて算出される。以下の式(3)は、フィードバック量eegrfbt、eegrfbsの間で排気切替弁15の開度ecvactに応じて変化させた値を、切替期間におけるフィードバック量eegrfbchとして算出している。なお、排気切替弁15の開度ecvactは、排気切替弁15の開度を検出する開度センサ15aからの検出信号を基に求められる。
【0059】
eegrfbch = eegrfbs×(ecvact/100)
+eegrfbt×((100−ecvact)/100)
・・・(3)
ECU50は、ターボモードの切替え時において、基本開度をフィードバック量eegrfbchで補正した値をEGR弁開度に設定する。この方法によれば、開度センサ15aにより検出された排気切替弁15の開度を用いるので、切替期間におけるフィードバック量を排気切替弁15の開度に応じた値として正確に求めることができる。これにより、実空気量を目標空気量に追従させやすくなるとともに、ハンチングを防止することができ、実空気量を目標空気量近傍に保持することができる。
【0060】
なお、切替期間におけるフィードバック量eegrfbchは、式(3)に示すように、排気切替弁15の開度ecvactを検出して求めるのには限られない。図6を見ると、切替期間において、排気切替弁15の開度は時間に対し一定の割合で変化している。従って、上述の式(3)を用いる代わりに、以下の式(4)を用いるとしてもよい。以下の式(4)では、排気切替弁15の開度ecvcatを時間tの関数U(t)として予め求めている。例えば、図6に示す例では、U(t)は時間tに対する一次関数となる。
【0061】
eegrfbch = eegrfbs×(U(t)/100)
+eegrfbt×((100−U(t))/100)
・・・(4)
式(4)を用いた方法によれば、排気切替弁15の開度を開度センサ15aにより検出しなくても、切替期間におけるフィードバック量を時間に応じて算出することができる。
【0062】
以上に述べたように、第2実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、切替期間におけるフィードバック量を、シングルターボモードとした場合のフィードバック量とツインターボモードとした場合のフィードバック量との間で変化させることとする。このようにすることで、実空気量を目標空気量に追従させやすくなるとともに、ハンチングを防止することができ、実空気量を目標空気量近傍に保持することができる。
【0063】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る内燃機関の制御方法について説明する。
【0064】
第1及び第2実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、切替期間以外では、実EGR率が目標EGR率に追従するようにEGR弁14を制御するとし、切替期間では、実空気量が目標空気量に追従するようにEGR弁14を制御するとしていた。
【0065】
しかしながら、切替期間において、実空気量が目標空気量に常に追従するようにEGR弁14が制御された場合には、実EGR率が目標EGR率から大きく外れる可能性がある。一方、切替期間において、実EGR率が目標EGR率に常に追従するようにEGR弁14が制御された場合には、第1実施形態で述べたように、実空気量が減少し過ぎてトルク段差が発生する可能性がある。
【0066】
そこで、第3実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、切替期間において、実空気量が目標空気量よりも小さくなっているか否かについて判定し、実空気量が目標空気量よりも小さくなっていない、即ち、実空気量が目標空気量以上になっていると判定した場合に、実EGR率を目標EGR率に追従させる制御を行うこととする。一方、ECU50は、実空気量が目標空気量よりも小さくなっていると判定した場合には、実EGR率を目標EGR率に追従させる制御を行わずに、実空気量を目標空気量に追従させるべく、EGR弁14を閉じ側に制御することとする。
【0067】
図7は、排気切替弁15の開度(排気切替弁開度)、吸気切替弁6の開度(吸気切替弁開度)、EGR率、空気量、EGR弁14の開度(EGR弁開度)についての時間に対する変化を示すグラフである。図7のEGR率を示すグラフにおいて、実線は実EGR率egrの時間に対する変化を示すグラフであり、破線は目標EGR率egrtrgの時間に対する変化を示すグラフである。
【0068】
図7に示すように、切替期間における期間Tnでは、実EGR率egrは目標EGR率egrtrgよりも大きくなっている。このとき、ECU50は、実EGR率を目標EGR率に追従させるため、EGR弁14を閉じ側に制御する。一方、切替期間における期間Tmでは、実EGR率egrは目標EGR率egrtrgよりも小さくなっている。従って、実EGR率を目標EGR率に追従させる場合には、EGR弁14は開き側に制御されるはずである。しかしながら、期間Tmでは、実空気量Gnは目標空気量Gntrgよりも小さくなっているため、EGR弁14が開き側に制御された場合には、実空気量が減少してトルク段差が発生する恐れがある。そこで、このときには、ECU50は、トルク段差の発生を防止するため、EGR弁14を閉じ側に制御する。
【0069】
つまり、第3実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、切替期間において、実空気量が目標空気量以上になっている場合に限り、実EGR率を目標EGR率に追従させる制御を行い、実空気量が目標空気量よりも小さくなっている場合には、実空気量を目標空気量に追従させるべくEGR弁を閉じ側に制御することとする。このようにすることで、切替期間において、実EGR率が目標EGR率より大きく外れるのを防ぐことができるとともに、トルク段差の発生を防ぐことができる。
【0070】
次に、上述の第3実施形態に係る内燃機関の制御処理について図8を用いて説明する。図8は、第3実施形態に係る内燃機関の制御処理を示すフローチャートである。
【0071】
ステップS301において、ECU50は、ターボモードが切替え中にあるか否かについて判定する。例えば、ECU50は、排気切替弁15を開き側に制御するための制御信号S15を供給したか否かを判定することにより、ターボモードが切替え中にあるか否かを判定することができる。ECU50は、ターボモードが切替え中にないと判定した場合(ステップS301:No)、即ち、シングルターボモード又はツインターボモードになっていると判定した場合には、ステップS310の処理へ進み、通常制御、即ち、実EGR率を目標EGR率に追従させる制御を行う。ステップS310において、ECU50は、通常制御を行った後、本制御処理をリターンする。一方、ステップS301において、ECU50は、ターボモードが切替中にあると判定した場合には(ステップS301:Yes)、ステップS302の処理へ進む。
【0072】
ステップS302において、ECU50は、燃料供給量Qfinに基づいて目標空気量Gntrgを算出する。目標空気量Gntrgは、例えば、実験などにより予め求められた燃料供給量Qfinの関数funcAを用いて求められる。この後、ECU50はステップS103の処理へ進む。
【0073】
ステップS303において、ECU50は、エアフロメータ21からの検出信号に基づいて、実空気量Gnを求める。なお、ステップS302の処理とステップS303の処理とは、順番を逆に行っても良いし、又は、同時に行っても良いのは言うまでもない。この後、ECU50はステップS304の処理へ進む。
【0074】
ステップS304において、ECU50は、実空気量Gnが目標空気量Gntrgよりも小さいか否かについて判定する。ECU50は、実空気量Gnが目標空気量Gntrgよりも小さいと判定した場合には(ステップS304:Yes)、EGR弁14を所定量閉じる制御を行った後(ステップS309)、本制御処理をリターンする。一方、ECU50は、実空気量Gnが目標空気量Gntrg以上になっていると判定した場合には(ステップS304:No)、ステップS305の処理へ進む。
【0075】
ステップS305において、ECU50は、目標EGR率egrtrgを算出する。目標EGR率egrtrgは適合値として求められる。ステップS306において、ECU50は、過給圧や排気圧に基づいて実EGR率egrを算出する。なお、ステップS305の処理とステップS306の処理とは、順番を逆に行っても良いし、又は、同時に行っても良いのは言うまでもない。
【0076】
ステップS307において、ECU50は、実EGR率egrが目標EGR率egrtrgよりも小さいか否かについて判定する。ECU50は、実EGR率egrが目標EGR率egrtrgよりも小さいと判定した場合には(ステップS307:Yes)、EGR弁14を所定量開く制御を行った後(ステップS308)、本制御処理をリターンする。一方、ECU50は、実EGR率egrが目標EGR率egrtrg以上になっていると判定した場合には(ステップS307:No)、EGR弁14を所定量閉じる制御を行った後(ステップS309)、本制御処理をリターンする。
【0077】
以上に述べたことから分かるように、第3実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、切替期間において、実空気量が目標空気量以上になっている場合に限り、実EGR率を目標EGR率に一致させる制御を行う。一方、ECU50は、切替期間において、実空気量が目標空気量よりも小さくなっている場合には、実空気量を目標空気量に追従させるべくEGR弁を閉じ側に制御する。このようにすることで、実EGR率が目標EGR率より大きく外れるのを防ぐことができるとともに、トルク段差の発生を防ぐことができる。
【0078】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る内燃機関の制御方法について説明する。
【0079】
ターボモードの切替期間及びその前後では、吸気切替弁6及び排気切替弁15の開度の変化に応じて過給圧や排気圧が大きく変化し、それに伴い、過給圧や排気圧を基に算出される実EGR率も大きく変化する。そのため、ECU50は、切替期間及びその前後では、実EGR率を精度よく算出することが難しい。図9は、排気切替弁15の開度及び排気圧の時間に対する変化を示すグラフである。図9に示すように、排気切替弁15の開度が大きくなるほど、排気圧は小さくなる。
【0080】
そこで、第4実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、吸気切替弁6及び排気切替弁15の開度に応じて実EGR率を算出することとする。以下、図10に示すフローチャートを用いて、実EGR率を算出する算出方法について説明する。
【0081】
まず、ステップS401において、ECU50は、排気切替弁15の開度vnfinを基に排気圧p4を算出する。具体的には、排気圧p4は、排気切替弁15の開度vnfinの関数funcD1を用いて算出される。この関数funcD1は、図9に示した排気切替弁15の開度と排気圧との関係を基に求められる。なお、このようにする代わりに、排気圧p4は、排気切替弁15の全閉時と全開時における排気圧の値を2点補間したマップを用いて算出されるとしても良い。
【0082】
ステップS402において、ECU50は、排気圧p4を基に排気温度t4を算出する。具体的には、排気温度t4は、ボイルシャルルの法則を用いることにより導出された排気圧p4の関数funcD2を用いて算出される。
【0083】
ステップS403において、ECU50は、排気圧p4とEGR弁14の開度pegfinとを基にEGR量gegrを算出する。EGR量gegrは、実験などにより求められた関数funcD3に、排気圧p4とEGR弁14の開度pegfinとを代入することにより算出される。なお、ステップS402の処理とステップS403の処理とは、逆順に行うとしても良いし、又は、同時に行うとしても良いのは言うまでもない。
【0084】
ステップS404において、ECU50は、排気温度t4、EGR量gegr、EGRクーラ12内を流れる冷却水の温度thwを基に、EGRガス冷却効率itaegrを算出する。具体的には、EGRガス冷却効率itaegrは、実験などにより求められた関数funcD4に、排気温度t4、EGR量gegr、冷却水温度thwを代入することにより算出される。
【0085】
ステップS405において、ECU50は、排気温度t4、EGRガス冷却効率itaegr、冷却水温度thwを基に、EGRガス温度tegrを算出する。具体的には、EGRガス温度tegrは、実験などにより求められた関数funcD5に、排気温度t4、EGRガス冷却効率itaegr、冷却水温度thwを代入することにより算出される。
【0086】
ステップS406において、ECU50は、EGR量gegr、EGRガス温度tegr、実空気量Gnを基に、吸気温度tbを算出する。具体的には、吸気温度tbは、実験などにより求められた関数funcD6に、EGR量gegr、EGRガス温度tegr、実空気量Gnを代入することにより算出される。
【0087】
ステップS407において、ECU50は、吸気温度tbと過給圧pbとを基に、気筒8Ra、8Laのそれぞれに流入するシリンダ流入ガス量gcylを算出する。具体的には、シリンダ流入ガス量gcylは、実験などにより求められた関数funcD7に、吸気温度tbと過給圧pbとを代入することにより算出される。過給圧pbは、実験などにより求められた関数に吸気切替弁6の開度を代入することにより、又は、吸気切替弁6の全閉時と全開時における過給圧の値を2点補間したマップを用いることにより算出される。ツインターボシステムでは、吸気切替弁6の開度変化により、吸気系の圧力損失やシリンダへのガスの充填効率が大きく変化する。従って、このようにすることで、シリンダ流入ガス量gcylを精度良く算出することができる。なお、ここで、過給圧pbとして、吸気切替弁6の開度を用いて算出せずに、過給圧センサ9により検出された過給圧を用いるとしても良い。しかし、過給圧センサ9の位置が内燃機関8と離れた位置にある場合には、過給圧センサ9により検出された過給圧の値は、気筒8La、8Lbに実際に吸気が流入するときの過給圧pbとは異なる恐れがある。したがって、吸気切替弁6の開度に応じて過給圧pbを算出する方がシリンダ流入ガス量gcylをより精度良く算出することができ好適である。
【0088】
ステップS408において、ECU50は、シリンダ流入ガス量gcylと実空気量Gnとを基に、実EGR率egrを算出する。具体的には、実EGR率egrは、実験などにより求められた関数funcD8に、シリンダ流入ガス量gcylと実空気量Gnとを代入することにより算出される。
【0089】
以上に述べたように、第4実施形態に係る内燃機関の制御方法では、ECU50は、吸気切替弁6及び排気切替弁15の開度を基に、実EGR率egrを算出している。このようにすることで、シングル期間、切替期間、ツイン期間の全ての期間を通して、シリンダ流入ガス量gcylや排気圧を精度良く算出することができ、精度良く実EGR率を算出することができる。
【0090】
[変形例]
なお、上述の実施形態では、2個の過給機が並列に配置されたエンジンシステムを例に説明したが、本発明を適用可能な例としてはこれに限られず、2個の過給機が直列に配置され、過給機1個で動作する動作モードと過給機2個で動作する動作モードとの間で切り替えを行うことが可能なエンジンシステムにおいても本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0091】
6 吸気切替弁
8 内燃機関(エンジン)
10 吸気通路
11 排気通路
15 排気切替弁
14 EGR弁
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路及び排気通路に配置された第1及び第2の過給機と、前記第2の過給機に供給される吸気及び排気の量を調整するための吸気切替弁及び排気切替弁と、前記排気通路から前記吸気通路へとEGRガスを還流させるEGR通路と、前記EGR通路に設けられたEGR弁と、を有する内燃機関の制御装置であって、
前記吸気切替弁及び前記排気切替弁を制御することにより、前記第1の過給機のみを動作させるシングルターボモードと前記第1及び第2の過給機の両方を動作させるツインターボモードとの間でターボモードを切り替える切替制御手段と、
前記内燃機関に供給される燃料供給量を燃焼させるのに必要な最低限の空気量を目標空気量として設定する目標空気量設定手段と、
前記吸気通路に流入する実空気量を検出する実空気量検出手段と、
前記実空気量と前記目標空気量との偏差に基づいてフィードバック量を算出し、当該フィードバック量で基本開度を補正した値を前記EGR弁の開度として設定するEGR制御手段と、を備え、
前記EGR制御手段は、前記ターボモードの切替え時における前記フィードバック量を、前記シングルターボモードとした場合の前記フィードバック量と前記ツインターボモードとした場合の前記フィードバック量との間で変化させる内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記排気切替弁の開度を検出する排気切替弁開度検出手段を備え、
前記EGR制御手段は、前記ターボモードの切替え時において、前記排気切替弁の開度に応じて前記フィードバック量を変化させる請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記EGR制御手段は、前記フィードバック量の上下限幅を設定している請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記排気通路から前記吸気通路へとEGRガスを還流させる際の実EGR率を算出する実EGR率算出手段と、
EGR率の目標値を目標EGR率として設定する目標EGR率設定手段と、を備え、
前記EGR制御手段は、前記ターボモードの切替え時において、前記実空気量が前記目標空気量以上になっている場合には、前記目標EGR率と前記実EGR率との偏差に応じて前記EGR弁の開度を設定し、前記実空気量が前記目標空気量よりも小さくなっている場合には、前記EGR弁を閉じ側に制御する請求項1乃至3のいずれかに記載に内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記実EGR率算出手段は、前記排気切替弁の開度に応じて前記実EGR率を算出する請求項4に記載の内燃機関の制御装置
【請求項6】
前記実EGR率算出手段は、前記吸気切替弁の開度に応じて前記実EGR率を算出する請求項5に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−190054(P2010−190054A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32608(P2009−32608)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】