説明

内燃機関の制御装置

【課題】ターボモード切替時において、トルクショックやEGR量の急変を抑制することが可能な内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の制御装置は、吸気通路及び排気通路に配置された第1及び第2の過給機と、前記第2の過給機に供給される排気の量を調整するための排気切替弁と、前記第1の過給機のタービンに取り付けられた可動ノズルベーンと、を有する内燃機関に適用される。内燃機関の制御装置は、排気切替弁開度検出手段と、可動ノズルベーン開度検出手段と、弁開度制御手段と、を備える。弁開度制御手段は、ターボモードの切替え時において、排気圧が一定となるように、前記排気切替弁及び前記可動ノズルベーンのうち、いずれか一方の弁の目標開度を他方の弁の開度に応じて設定し、前記一方の弁の開度を前記目標開度に調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツインターボシステムの内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、吸気系及び排気系に2つの過給機を配置し、これらの過給機の作動個数を適宜切り替えるツインターボシステムが提案されている。例えば、特許文献1には、ツインターボシステムにおいて、可動ノズルベーンを備えた可変容量式(Variable Nozzle Turbo:VNT)の高圧ターボ過給機を有し、排気切替弁の開度と可動ノズルベーンの開度(VN開度)とを制御することにより過給圧を制御する技術が記載されている。特許文献2には、1つのターボ過給機のみを動作させるシングルターボモードから2つのターボ過給機を動作させるツインターボモードへのターボモード切替時において、可変容量式の第1のターボチャージャにおけるVN開度を絞って排気圧と過給圧の急低下を防止する技術が記載されている。特許文献3及び4にも本発明と関連のある技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−315163号公報
【特許文献2】特開2005−155356号公報
【特許文献3】特開平5−288069号公報
【特許文献4】特開平7−217476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の技術では、内燃機関の運転状態が過渡状態にある場合において、排気切替弁の開度よりもVN開度を優先して制御することで、排気圧の急な落ち込みによるEGR(Exhaust Gas Recirculation)変化を抑制している。しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ターボモード切替時において、排気切替弁の開度とVN開度との最適な協調制御が行われていない。そのため、ターボモード切替時において、トルクショックやEGR量の急変が発生する可能性がある。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ターボモード切替時において、トルクショックやEGR量の急変を抑制することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、吸気通路及び排気通路に配置された第1及び第2の過給機と、前記第2の過給機に供給される排気の量を調整するための排気切替弁と、前記第1の過給機のタービンに取り付けられた可動ノズルベーンと、を有する内燃機関の制御装置であって、前記第1の過給機のみを動作させるシングルターボモードと前記第1及び第2の過給機の両方を動作させるツインターボモードとの間でターボモードを切り替える切替制御手段と、前記排気切替弁の開度を検出する排気切替弁開度検出手段と、前記可動ノズルベーンの開度を検出する可動ノズルベーン開度検出手段と、ターボモードの切替え時において、排気圧が一定となるように、前記排気切替弁及び前記可動ノズルベーンのうち、いずれか一方の弁の目標開度を他方の弁の開度に応じて設定し、前記一方の弁の開度を前記目標開度に調節する弁開度制御手段と、を備える。
【0007】
上記の内燃機関の制御装置は、吸気通路及び排気通路に配置された第1及び第2の過給機と、前記第2の過給機に供給される排気の量を調整するための排気切替弁と、前記第1の過給機のタービンに取り付けられた可動ノズルベーンと、を有する内燃機関に適用される。内燃機関の制御装置は、切替制御手段と、排気切替弁開度検出手段と、可動ノズルベーン開度検出手段と、弁開度制御手段と、を備える。排気切替弁開度検出手段及び可動ノズルベーン開度検出手段は、それぞれの弁に取り付けられた開度センサである。切替制御手段及び弁開度制御手段は、例えばECU(Electronic Control Unit)である。切替制御手段は、第1の過給機のみを動作させるシングルターボモードと第1及び第2の過給機の両方を動作させるツインターボモードとの間でターボモードを切り替える。弁開度制御手段は、ターボモードの切替え時において、排気圧が一定となるように、前記排気切替弁及び前記可動ノズルベーンのうち、いずれか一方の弁の目標開度を他方の弁の開度に応じて設定し、前記一方の弁の開度を前記目標開度に調節する。このようにすることで、トルクショックやEGR量の急変を抑えることができる。
【0008】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記弁開度制御手段は、前記排気切替弁の開度の時間に対する変化量を前記可動ノズルベーンの開度に応じて設定する。このようにすることで、排気圧が急激に変化するのを防ぐことができるとともに、排気切替弁が中間開度となっている時間を短縮することができ、過給圧が不安定になるのを防ぐことができる。
【0009】
上記の内燃機関の制御装置の好適な実施例は、前記弁開度制御手段は、シングルターボモードからツインターボモードへとターボモードを切り替える際に、前記可動ノズルベーンの開度が全閉側に近づくほど、前記排気切替弁の開弁速度を遅くするとともに、前記可動ノズルベーンの開度が全閉になった後では、前記可動ノズルベーンの開度が全閉になる前よりも、前記開弁速度をさらに遅くする。
【0010】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記弁開度制御手段は、前記排気切替弁の開度に応じて前記可動ノズルベーンの目標開度を設定し、前記排気切替弁の開度が全閉側に近づくほど、前記可動ノズルベーンの目標開度を全開側に設定する。これによっても、排気圧が急激に変化するのを防ぐことができる。
【0011】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記弁開度制御手段は、前記排気切替弁及び前記可動ノズルベーンのそれぞれの開口面積の和である全体開口面積が一定となるように、前記一方の弁の目標開度を前記他方の弁の開度に応じて設定する。これにより、マップの適合値を設計段階で容易に決定することができ、実機での合わせ込みをせずに済む。
【0012】
上記の内燃機関の制御装置の他の一態様は、前記内燃機関の回転数及び燃料噴射量に基づいて、目標排気圧を算出する目標排気圧算出手段と、実排気圧を検出する排気圧検出手段と、前記排気圧検出手段により検出された前記実排気圧と前記目標排気圧との差分に基づいて、前記一方の弁の開度のフィードバック量を算出するフィードバック量算出手段と、を有し、前記弁開度制御手段は、前記一方の弁の目標開度を前記フィードバック量で補正する。ここで、排気圧検出手段は、例えば排気圧センサである。目標排気圧算出手段、フィードバック量算出手段は、例えばECUである。これにより、さらに、ロバスト性及び応答性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】各実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用された車両の構成を示す概略図である。
【図2】ターボ過給機付近の構成要素のみを図示したものである。
【図3】排気切替弁の開度に対するトルク及び排気圧の変化を示すグラフである。
【図4】排気切替弁開度、VN開度、排気圧、トルクについて時間に対する変化を示すグラフである。
【図5】VN開度と排気切替弁の開弁速度との関係を示すグラフである。
【図6】第1実施形態に係るターボモード切替制御処理を示すフローチャートである。
【図7】排気切替弁の開度とVN開度との関係を示すグラフである。
【図8】第1実施形態の変形例に係るターボモード切替制御処理を示すフローチャートである。
【図9】エンジン回転数と燃料噴射量と全体開口面積との関係を示すグラフである。
【図10】排気切替弁の開度と開口面積との関係を示すグラフである。
【図11】目標VN開口面積とVN開度との関係を示すグラフである。
【図12】第2実施形態に係るターボモード切替制御処理を示すフローチャートである。
【図13】第3実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用された車両の構成を示す概略図である。
【図14】エンジン回転数と燃料噴射量と目標排気圧との関係を示すグラフである。
【図15】目標排気圧から実排気圧を引いた差分とVN開度のフィードバック量との関係を示すグラフである。
【図16】第3実施形態に係るターボモード切替制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0015】
[装置構成]
まず、各実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用されたシステムの全体構成について説明する。
【0016】
図1は、各実施形態に係る内燃機関の制御装置が適用された車両の構成を示す概略図である。図1では、実線矢印がガスの流れを示し、破線矢印が信号の入出力を示している。なお、図1においては、シングルターボモードに設定した場合のガスの流れを示している。
【0017】
車両は、主に、エアクリーナ2と、吸気通路3と、ターボ過給機4、5と、吸気切替弁6と、リード弁7と、内燃機関(エンジン)8と、過給圧センサ9と、排気通路10と、EGR通路11と、EGR弁14と、排気切替弁15と、ECU(Electronic Control Unit)50と、を備える。即ち、車両は、所謂ツインターボシステムを有している。
【0018】
エアクリーナ2は、外部から取得された空気(吸気)を浄化して、吸気通路3に供給する。吸気通路3は途中で吸気通路3a、3bに分岐されており、吸気通路3aにはターボ過給機4のコンプレッサ4aが配設されており、吸気通路3bにはターボ過給機5のコンプレッサ5aが配設されている。コンプレッサ4a、5aは、それぞれ、吸気通路3a、3bを通過する吸気を圧縮する。また、吸気通路3bには、吸気バイパス通路3cが設けられている。吸気バイパス通路3cは、一端がコンプレッサ4aの上流側に接続されており、他端がコンプレッサ5aの下流側に接続されている。吸気バイパス通路3cの一端には、吸気バイパス弁17が設けられている。
【0019】
また、吸気通路3b中には、吸気切替弁6及びリード弁7が設けられている。吸気切替弁6は、ECU50から供給される制御信号S6によって開閉が制御され、吸気通路3bを通過する吸気の流量を調整可能に構成されている。例えば、吸気切替弁6を開閉させることにより、吸気通路3bにおける吸気の流通/遮断を切り替えることができる。リード弁7は、通路中の圧力が所定以上となった際に開弁するように構成されている。吸気通路3には、エアフロメータ21が設けられている。エアフロメータ21は、吸気された空気量(実空気量)を検出し、実空気量に対応する検出信号S21をECU50に供給する。また、コンプレッサ4a、4bの下流側の吸気通路3には、過給圧センサ9が設けられている。過給圧センサ9は、過給された吸気の圧力(過給圧)を検出し、この過給圧に対応する検出信号S9をECU50に供給する。
【0020】
内燃機関8は、左右のバンク(気筒群)8L、8Rにそれぞれ4つずつの気筒(シリンダ)8La、8Raが設けられたV型8気筒のエンジンとして構成されている。内燃機関8は、吸気通路3より供給される吸気と燃料との混合気を燃焼することによって、動力を発生する装置である。内燃機関8は、例えばディーゼルエンジンによって構成される。気筒8Laには燃料噴射弁22aより燃料が供給され、気筒8Raには燃料噴射弁22bより燃料が供給される。燃料噴射弁22a、22bは、ECU50からの制御信号S22a、22bにより制御される。そして、内燃機関8内における燃焼により発生した排気は、排気通路10に排出される。なお、内燃機関8を、8つの気筒にて構成することに限定はされない。
【0021】
排気通路10中には、EGR通路11が接続されている。EGR通路11は、一端が排気通路10に接続されており、他端が吸気通路3に接続されている。EGR通路11は、排気(EGRガス)を吸気系に還流するための通路である。具体的には、EGR通路11には、EGRクーラ12と、EGR弁14と、バイパス通路11aと、バイパス弁13とが設けられている。EGRクーラ12はEGRガスを冷却する装置であり、EGR弁14はEGR通路11を通過するEGRガスの流量を調節する弁、言い換えると吸気系に還流させるEGRガスの量を調節する(即ちEGR率を調節する)弁である。この場合、EGR弁14は、ECU50から供給される制御信号S14によって開度が制御される。また、バイパス通路11aは、EGRクーラ12をバイパスする通路であり、通路上にはバイパス弁13が設けられている。このバイパス弁13によって、バイパス通路11aを通過するEGRガスの流量が調節される。なお、図1においては、EGR弁14が閉に設定されているため、EGRガスは還流されない。
【0022】
排気通路10は途中で排気通路10a、10bに分岐されており、排気通路10aにはターボ過給機4のタービン4bが配設されており、排気通路10bにはターボ過給機5のタービン5bが配設されている。タービン4b、5bは、それぞれ、排気通路10a、10bを通過する排気によって回転される。このようなタービン4b、5bの回転トルクが、ターボ過給機4内のコンプレッサ4a及びターボ過給機5内のコンプレッサ5aに伝達されて回転することによって、吸気が圧縮される(即ち過給される)こととなる。
【0023】
なお、ターボ過給機4は、低中速域で過給能力の大きい小容量の低速型の過給機として構成され、ターボ過給機5は、中高速域で過給能力の大きい大容量の高速型の過給機として構成されている。つまり、ターボ過給機4は所謂プライマリターボ過給機に相当し、ターボ過給機5は所謂セカンダリターボ過給機に相当する。尚、ターボ過給機4は本発明における第1の過給機に相当し、ターボ過給機5は本発明における第2の過給機に相当する。
【0024】
ここで、ターボ過給機4は、タービン4bに可変ノズルベーン16が取り付けられた可変容量型のターボ過給機である。ターボ過給機4では、可動ノズルベーン16の開度を調整して、タービン4bを通過する排気ガス量を制御することにより過給圧が調整される。可変ノズルベーン16が全閉になったときに、タービン4bを通過する排気ガス量が最も少なくなり、可変ノズルベーン16が全開になったときに、タービン4bを通過する排気ガス量が最も多くなる。可変ノズルベーン16はECU50から供給される制御信号S16によって開度が制御される。ここで、可変ノズルベーン16には開度センサ16aが設けられている。開度センサ16aは、可変ノズルベーン16の開度を検出し、検出した開度に応じた検出信号S16aをECU50に供給する。
【0025】
更に、排気通路10bには、排気切替弁15が設けられている。排気切替弁15は、ECU50から供給される制御信号S15によって開閉が制御され、排気通路10bを通過する排気の流量を調整可能に構成されている。例えば、排気切替弁15を開閉させることにより、排気通路10bにおける排気の流通/遮断を切り替えることができる。ここで、排気切替弁15には開度センサ15aが設けられている。開度センサ15aは、排気切替弁15の開度を検出し、検出した開度に応じた検出信号S15aをECU50に供給する。
【0026】
なお、前述した吸気切替弁6、排気切替弁15が全て閉である場合には、ターボ過給機4にのみ吸気及び排気が供給され、ターボ過給機5には吸気及び排気が供給されない。そのため、ターボ過給機4のみが作動し、ターボ過給機5は作動しない。一方、吸気切替弁6、排気切替弁15が全て開である場合には、ターボ過給機4、5の両方に吸気及び排気が供給される。そのため、ターボ過給機4、5の両方が作動する。
【0027】
ECU50は、図示しないCPU、ROM、RAM、及びA/D変換器などを含んで構成される。ECU50は、車両内の各種センサから供給される出力等に基づいて、車両内の制御を行う。各実施形態では、ECU50は、主に、吸気切替弁6、排気切替弁15を制御することによって、ターボ過給機4のみを作動させるモード(シングルターボモード)と、ターボ過給機4、5の両方を作動させるモード(ツインターボモード)との間でターボモードを切り替える制御を行う。また、ECU50は、ターボモードの切替え時において、開度センサ15aから排気切替弁15の開度を検出し、開度センサ16aからVN開度を検出し、これらの弁の開度を基に、排気圧が一定となるように、排気切替弁15又は可動ノズルベーン16に対する制御を行う。
【0028】
ここで、シングルターボモードとツインターボモードとを切り替える際に実行される基本的な制御について、簡単に説明する。前述したように、ターボモードの切り替えは、ECU50が、吸気切替弁6、排気切替弁15を制御することによって行う。具体的には、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合には、ECU50は、吸気切替弁6及び排気切替弁15を閉から開に制御する。この場合、ECU50は、基本的には、排気切替弁15、吸気切替弁6の順に弁を開にすることによって、切り替えを実行する。一方、シングルターボモードからツインターボモードへ切り替える場合には、ECU50は、上記と同様にして、吸気切替弁6及び排気切替弁15を開から閉に制御する。
【0029】
次に、図2を参照して、シングルターボモード及びツインターボモードにおけるガスの流れについて説明する。図2は、図1におけるターボ過給機4、5付近の構成要素のみを図示したものである。図2(a)は、シングルターボモードに設定された際の図を示しており、図2(b)は、ツインターボモードに設定された際の図を示している。図2(a)に示すように、シングルターボモードにおいては、吸気切替弁6、排気切替弁15が全て閉であるため、ターボ過給機4にのみ吸気及び排気が供給され、ターボ過給機5には吸気及び排気が供給されない。そのため、ターボ過給機4のみが作動し、ターボ過給機5は作動しない。一方、図2(b)に示すように、ツインターボモードにおいては、吸気切替弁6及び排気切替弁15が開であるため、ターボ過給機4、5の両方に吸気及び排気が供給される。そのため、ターボ過給機4、5の両方が作動する。
【0030】
ここで、一般的なターボモードの切替制御における排気切替弁15及び可変ノズルベーン16のそれぞれの制御について図3を用いて説明する。図3は、排気切替弁の開度に対するトルク及び排気圧の変化を示すグラフである。
【0031】
例えば、シングルターボモードからツインターボモードへの切り替えを行う一般的なターボモード切替制御では、ECUは、排気切替弁を全閉から徐々に開き側に制御して全開にするとともに、過給圧が一定となるように可変ノズルベーンの開度(VN開度)を全開から閉じ側へ制御する。しかしながら、このとき、排気切替弁を全閉から開き側に制御することにより、排気圧が急激に低下して、トルク上昇やEGR量の急変が発生する恐れが有る。これは、排気切替弁及び可変ノズルベーンはいずれも同じ排気系に取り付けられているにもかかわらず、ECUはそれぞれを互いに無関係に制御しているためである。一方、ツインターボモードからシングルターボモードへの切り替えを行う場合においても、排気切替弁を全開から閉じ側に制御することにより、排気圧が急激に上昇して、トルク低下やEGR量の急変が発生する恐れが有る。
【0032】
そこで、以下に述べる各実施形態に係るターボモード切替制御処理では、ECU50は、ターボモードの切替えを行う際に、排気圧が一定となるように、排気切替弁15及び可変ノズルベーン16の協調制御を行うこととする。具体的には、ECU50は、排気圧が一定となるように、排気切替弁15及び可動ノズルベーン16のうち、いずれか一方の開度を他方の開度に応じて制御することとする。このようにすることで、トルクショックを防ぐことができるとともに、EGR量の急変を抑制することができる。以下、各実施形態について説明する。
【0033】
[第1実施形態]
第1実施形態に係るターボモード切替制御処理について説明する。
【0034】
第1実施形態に係るターボモード切替制御処理では、シングルターボモードからツインターボモードへとターボモードを切替える際において、ECU50は、VN開度に応じて、排気切替弁15の開弁速度を算出して、排気切替弁15の目標開度を求めることとする。以下、図4を用いて具体的に説明する。
【0035】
図4は、シングルターボモードからツインターボモードへとターボモードを切替える際における、排気切替弁開度、VN開度、排気圧、トルクについて時間に対する変化を示すグラフである。図4において、破線は、一般的なターボモード切替制御処理を示すグラフであり、実線は、第1実施形態に係るターボモード切替制御処理を示すグラフである。
【0036】
シングルターボモードからツインターボモードへと切替える一般的なターボモード切替制御処理では、図4の破線に示すように、まず、ECUは、排気切替弁の開度を全閉から徐々に開き側に制御して全開にする制御を行う。このとき、排気圧が急激に低下して、トルクが急上昇する。一方、排気切替弁の開度とは無関係に、VN開度は制御されており、図4に示す例では、排気圧が急激に低下した後で、VN開度は全開から閉じ側に制御されている。つまり、ECUは、排気切替弁の開度制御とは関係なく、VN開度を制御しているため、排気切替弁の開度を全閉から開き側に制御することによる排気圧の低下が発生してしまっている。また、排気切替弁が中間開度の状態では、過給圧が不安定になるため、図4に示すように、ECUは、VN開度を制御する際に、一旦全閉へ制御した後、開き側への制御と閉じ側への制御とを交互に行っている。そのため、排気圧が安定した状態になるのに時間がかかり、ターボモードの切替時間がかかる。
【0037】
そこで、第1実施形態に係るターボモード切替制御処理では、ECU50は、シングルターボモードからツインターボモードへとターボモードを切替える際に、VN開度と排気切替弁15の開弁速度との関係を示すマップを用いて、VN開度に応じて排気切替弁15の開弁速度を算出することとする。
【0038】
図5は、VN開度と排気切替弁15の開弁速度との関係を示すグラフである。
【0039】
ECU50は、図5に示す関係をマップとしてメモリなどに記憶しておき、VN開度を基に、当該マップを用いて、排気切替弁15の開弁速度を算出する。図5に示すマップでは、VN開度に応じて、排気圧を一定に保持することができる排気切替弁15の開弁速度が規定されている。具体的には、図5に示すマップによれば、VN開度が全閉側に近いほど、排気切替弁15の開弁速度は速く設定され、VN開度が全開側に近いほど、排気切替弁15の開弁速度は遅く設定される。ECU50は、図5を用いて算出された排気切替弁15の開弁速度を基に、排気切替弁15の目標開度を算出する。
【0040】
このようにすることで、図4の実線に示すように、排気圧が急激に低下するのを防ぐことができ、トルクが急激に上昇するのを防ぐことができる。また、図4の実線に示すように、VN開度が全閉側に近いほど、排気切替弁15の開弁速度を速く設定することにより、排気切替弁15が中間開度となっている時間を短縮することができ、過給圧が不安定になるのを防ぐことができる。さらに、図4の実線に示すように、ECU50は、VN開度が全閉になった後では、VN開度が全閉になる前よりも、排気切替弁15の開弁速度を更に遅く設定する。このように、VN開度が全閉になった後、排気切替弁15の開弁速度を更に遅く設定することで、排気圧の急変を防ぐことができる。
【0041】
次に、第1実施形態に係るターボモード切替制御処理について図6を用いて説明する。図6は、第1実施形態に係るターボモード切替制御処理を示すフローチャートであり、シングルターボモードからツインターボモードへとターボモードを切替えるときの排気切替弁15の制御処理を示している。
【0042】
ステップS101において、ECU50は、ターボモードが切替え中にあるか否かについて判定する。例えば、ECU50は、排気切替弁15を開き側に制御するための制御信号S15を供給したか否かを判定することにより、ターボモードが切替え中にあるか否かを判定することができる。ECU50は、ターボモードが切替え中にないと判定した場合(ステップS101:No)、即ち、シングルターボモード又はツインターボモードになっていると判定した場合には、ステップS105の処理へ進み、通常制御を行った後、本制御処理をリターンする。一方、ECU50は、ターボモードが切替え中にあると判定した場合には(ステップS101:Yes)、ステップS102の処理へ進む。
【0043】
ステップS102において、ECU50は、開度センサ16aからの検出信号に基づいて、VN開度を検出する。続くステップS103において、ECU50は、検出されたVN開度を基に、図5に示した関係のマップを用いて、排気切替弁の開弁速度を算出する。なお、ここで、ECU50は、検出されたVN開度が全閉となっている場合には、VN開度が全閉になる前よりも、排気切替弁15の開弁速度を更に遅く設定する。
【0044】
ステップS104において、ECU50は、ステップS102にて求められた排気切替弁15の開弁速度を基に、排気切替弁15の目標開度を算出する。そして、ECU50は、算出された目標開度に対応する制御信号を排気切替弁15に送信することにより、当該目標開度となるように排気切替弁15の開度を調節する。この後、ECU50は、本制御処理をリターンする。
【0045】
以上に述べたように、シングルターボモードからツインターボモードへのターボモード切替処理では、ECU50は、VN開度が全閉側に近づくほど、排気切替弁15の開弁速度を遅くする。これにより、排気圧が急激に変化するのを防ぐことができ、トルクが急激に変化するのを防ぐことができる。また、これにより、排気切替弁15が中間開度となっている時間を短縮することができ、過給圧が不安定になるのを防ぐことができる。なお、反対に、ECU50は、ツインターボモードからシングルターボモードへのターボモード切替処理を行う場合には、VN開度が全開側に近づくほど、排気切替弁15の閉弁速度を遅くすれば良い。これによっても、上述したのと同様の効果を得ることができる。
【0046】
以上に述べたように、第1実施形態に係るターボモード切替制御処理では、ECU50は、排気切替弁15の開度の時間に対する変化量(開弁速度又は閉弁速度)をVN開度に応じて算出して、排気切替弁15の目標開度を求めている。このようにすることで、排気圧が急激に変化するのを防ぐことができるとともに、排気切替弁15が中間開度となっている時間を短縮することができ、過給圧が不安定になるのを防ぐことができる。
【0047】
(第1実施形態の変形例)
なお、上述の第1実施形態に係るターボモード切替制御処理では、ECU50は、VN開度に応じて、排気切替弁15の開度の時間に対する変化量を算出して、排気切替弁15の目標開度を求めるとしていた。しかしながら、これに限られるものではなく、代わりに、ECU50は、排気切替弁15の開度に応じて、VN開度の目標開度(目標VN開度)を決めるとしても良い。
【0048】
図7は、排気切替弁15の開弁と目標VN開度との関係を示すグラフである。
【0049】
ECU50は、図7に示す関係をマップとしてメモリなどに記憶しておき、排気切替弁15の開度を基に、当該マップを用いて、目標VN開度を求める。図7に示すマップでは、排気切替弁15の開度に応じて、排気圧を一定に保持することができる目標VN開度が規定されている。具体的には、図7に示すマップによれば、排気切替弁15の開度が全閉側に近いほど、目標VN開度は全開側に設定され、排気切替弁15の開度が全開側に近いほど、目標VN開度は全閉側に設定される。
【0050】
次に、第1実施形態の変形例に係るターボモード切替制御処理について図8を用いて説明する。図8は、第1実施形態の変形例に係るターボモード切替制御処理を示すフローチャートである。なお、以下のターボモード切替制御処理を示すフローチャートは、シングルターボモードからツインターボモードへの切替、及び、ツインターボモードからシングルターボモードへの切替のどちらの場合であっても同様となる。
【0051】
ステップS111において、ECU50は、ターボモードが切替え中にあるか否かについて判定する。例えば、ECU50は、排気切替弁15を開き側(又は閉じ側)に制御するための制御信号S15を供給したか否かを判定することにより、ターボモードが切替え中にあるか否かを判定することができる。ECU50は、ターボモードが切替え中にないと判定した場合(ステップS111:No)、即ち、シングルターボモード又はツインターボモードになっていると判定した場合には、ステップS114の処理へ進み、通常制御を行った後、本制御処理をリターンする。一方、ECU50は、ターボモードが切替え中にあると判定した場合には(ステップS111:Yes)、ステップS112の処理へ進む。
【0052】
ステップS112において、ECU50は、開度センサ15aからの検出信号に基づいて、排気切替弁15の開度を検出する。続くステップS113において、ECU50は、検出された排気切替弁15の開度を基に、図7に示した関係のマップを用いて、目標VN開度を算出する。そして、ECU50は、算出された目標VN開度に対応する制御信号を可動ノズルベーン16に送信することにより、当該目標VN開度となるようにVN開度を調節する。この後、ECU50は、本制御処理をリターンする。
【0053】
以上に述べたようにしても、第1実施形態に係るターボモード切替制御処理と同様、排気圧が急激に変化するのを防ぐことができ、トルクが急激に変化するのを防ぐことができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係るターボモード切替制御処理について説明する。
【0055】
第1実施形態に係るターボモード切替制御処理によれば、ECU50は、排気切替弁15及び可動ノズルベーン16のうち、いずれか一方の開度を基に、マップを用いて、他方の開度を求めることとしていた。ここで、排気切替弁15及び可動ノズルベーン16のそれぞれの開度は排気圧に対して感度があるが、直接的には互いに物理的な因果関係がない。そのため、排気切替弁15と可動ノズルベーン16との間の関係を示す図5や図7に示したマップを作成するために、実機での合わせ込みが必要となる。
【0056】
そこで、第2実施形態に係るターボモード切替制御処理では、ECU50は、排気切替弁15及び可動ノズルベーン16のそれぞれの開口面積の和である全体開口面積が一定となるように、いずれか一方の開度を制御することとする。以下、図9〜図11を用いて具体的に説明する。図9は、エンジン回転数と燃料噴射量と全体開口面積との関係を示すグラフである。図10は、排気切替弁15の開度と排気切替弁15の開口面積との関係を示すグラフである。図11は、可動ノズルベーン16の目標開口面積(目標VN開口面積)と目標VN開度との関係を示すグラフである。
【0057】
内燃機関8から排出される排気の量は、ターボモードの切替前後で一定となるので、内燃機関8における排気の出口面積が一定であれば、流出するガス量も一定となり、排気圧も一定となる。そこで、ECU50は、エンジン回転数と燃料噴射量とを基に、図9のグラフの関係を示すマップを用いて、排気圧を一定にすることが可能な全体開口面積、即ち、排気切替弁15の開口面積と可動ノズルベーン16の開口面積との和を算出する。
【0058】
次に、ECU50は、排気切替弁15の開度を基に、排気切替弁15の開口面積を算出する。具体的には、ECU50は、排気切替弁15の開度を基に、図10のグラフの関係を示すマップを用いて、排気切替弁15の開口面積を算出する。図10に示すように、排気切替弁15の開度が大きくなるほど、排気切替弁15の開口面積は大きくなる。ここで、図10に示す排気切替弁15の開度と開口面積との関係は、設計段階で一意に決まるものであるので、実機での合わせ込みを必要としない。
【0059】
ECU50は、全体開口面積から排気切替弁15の開口面積を引くことにより、目標VN開口面積を算出し、算出された目標VN開口面積を基に、図11のグラフの関係を示すマップを用いて、目標VN開度を算出する。図11に示すように、目標VN開口面積が大きくなるほど、目標VN開度は大きくなる。ここで、図11に示す目標VN開口面積と目標VN開度との関係も、設計段階で一意に決まるものであり、実機での合わせ込みを必要としない。ECU50は、算出された目標VN開度に対応する制御信号を可動ノズルベーン16に送信する。
【0060】
このようにすることで、第1実施形態と同様に、排気圧が急激に変化するのを防ぐことができ、トルクが急激に変化するのを防ぐことができる。また、これによれば、用いられるマップの適合値は設計段階で一意に決まるものであるため、マップ作成の際における実機での合わせ込みをせずに済む。
【0061】
次に、第2実施形態に係るターボモード切替制御処理について図12を用いて説明する。図12は、第2実施形態に係るターボモード切替制御処理を示すフローチャートである。なお、以下のターボモード切替制御処理を示すフローチャートは、シングルターボモードからツインターボモードへの切替、及び、ツインターボモードからシングルターボモードへの切替のどちらの場合であっても同様となる。
【0062】
ステップS201において、ECU50は、ターボモードが切替え中にあるか否かについて判定する。例えば、ECU50は、排気切替弁15を開き側(又は閉じ側)に制御するための制御信号S15を供給したか否かを判定することにより、ターボモードが切替え中にあるか否かを判定することができる。ECU50は、ターボモードが切替え中にないと判定した場合(ステップS201:No)、即ち、シングルターボモード又はツインターボモードになっていると判定した場合には、ステップS207の処理へ進み、通常制御を行った後、本制御処理をリターンする。一方、ECU50は、ターボモードが切替え中にあると判定した場合には(ステップS201:Yes)、ステップS202の処理へ進む。
【0063】
ステップS202において、ECU50は、エンジン回転数と燃料噴射量とを基に、図9のグラフの関係を示すマップを用いて、排気圧を一定にすることが可能な全体開口面積を算出する。この後、ECU50は、ステップS203の処理へ進む。
【0064】
ステップS203において、ECU50は、開度センサ15aからの検出信号に基づいて、排気切替弁15の開度を検出する。そして、続くステップS204において、ECU50は、検出された排気切替弁15の開度を基に、図10のグラフの関係を示すマップを用いて、排気切替弁15の開口面積を算出する。なお、ステップS202の処理と、ステップS203及びS204の処理とは、逆順に行っても良いのは言うまでもない。この後、ECU50は、ステップS205の処理へ進む。
【0065】
ステップS205において、ECU50は、ステップS202で算出された全体開口面積から排気切替弁15の開口面積を引くことにより、目標VN開口面積を算出する。続くステップS206において、ECU50は、算出された目標VN開口面積を基に、図11のグラフの関係を示すマップを用いて、目標VN開度を算出する。そして、ECU50は、算出された目標VN開度に対応する制御信号を可動ノズルベーン16に送信することにより、当該目標VN開度となるようにVN開度を調節する。この後、ECU50は、本制御処理をリターンする。
【0066】
以上に述べたように、第2実施形態に係る内燃機関の制御装置では、ECU50は、排気切替弁15の開度を基に排気切替弁の開口面積を算出し、全体開口面積から排気切替弁15の開口面積を引くことにより目標VN開口面積を算出して、当該目標VN開口面積となるようにVN開度を調節する。このようにすることで、排気圧が急激に変化するのを防ぐことができ、トルクが急激に変化するのを防ぐことができる。また、これによれば、マップの適合値を設計段階で容易に決定することができ、第1実施形態と異なり、実機での合わせ込みをせずに済む。
【0067】
なお、上述の第2実施形態に係る内燃機関の制御装置では、ECU50は、排気切替弁15の開度を基に排気切替弁の開口面積を算出し、全体開口面積から排気切替弁15の開口面積を引くことにより目標VN開口面積を算出するとしていた。しかしながら、これに限られるものではない。代わりに、ECU50は、VN開度を基に可動ノズルベーン16の開口面積を算出し、全体開口面積から可動ノズルベーン16の開口面積を引くことにより排気切替弁15の目標開口面積を算出して、当該目標開口面積となるように排気切替弁15の開度を調節するとしても良い。これによっても、上述したのと同様の効果を得ることができる。
【0068】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係るターボモード切替制御処理について説明する。先に述べた第1及び第2実施形態に係るターボモード切替制御処理では、排気切替弁15及び可動ノズルベーン16のうち、一方の弁の目標開度を、開度センサにより検出された他方の弁の開度に基づいて算出して制御を行っている。しかしながら、これらの制御は、当該他方の弁の開度センサにより検出された開度に基づく見込み制御となっているため、排気ガスの流量変化や機差ばらつきに対するロバスト性が低いものとなっている。例えば、排気切替弁15又は可動ノズルベーン16のうち、一方の弁に向かう排気通路10a又は10bが煤などの堆積により流量が変化した場合には、排気圧が変動してしまう。
【0069】
そこで、第3実施形態に係るターボモード切替制御処理では、ECU50は、第1又は第2実施形態に係るターボモード切替制御処理に加えて、排気圧センサにより検出された実排気圧が目標排気圧となるように排気切替弁15又は可動ノズルベーン16に対しフィードバック制御を行うこととする。
【0070】
図13は、図1と同様、車両の構成を示す概略図である。図13では、図1で述べた構成に加えて、排気圧センサ31が、排気切替弁15の上流側の排気通路10に取り付けられている。排気圧センサ31は、検出した排気圧に対応する検出信号S31をECU50に送信する。第3実施形態では、ECU50は、排気圧センサ31により検出された実排気圧が目標排気圧となるように排気切替弁15又は可動ノズルベーン16に対しフィードバック制御を行う。
【0071】
以下では、第3実施形態に係るターボモード切替制御処理の一例として、第2実施形態に係るターボモード切替制御処理に加えて、可動ノズルベーン16の開度のフィードバック制御を行う例について図14〜図15を用いて具体的に説明する。図14は、エンジン回転数と燃料噴射量と目標排気圧との関係を示すグラフである。図15は、目標排気圧から実排気圧を引いた差分と可動ノズルベーン16の開度のフィードバック量(VN F/B量)との関係を示すグラフである。
【0072】
まず、ECU50は、エンジン回転数と燃料噴射量とを基に、図14のグラフの関係を示すマップを用いて、目標排気圧を算出する。また、ECU50は、排気圧センサ31からの検出信号S31に基づいて、実排気圧を検出する。そして、ECU50は、目標排気圧から実排気圧を引いた差分を算出し、算出された当該差分を基に、図15のグラフの関係を示すマップを用いて、実排気圧を目標排気圧に一致させることが可能なVN開度のフィードバック量を算出する。図15に示すように、目標排気圧から実排気圧を引いた差分が大きくなるほど、VN開度のフィードバック量は大きくなる。
【0073】
ECU50は、図12のフローチャートのステップS206で算出された目標VN開度を基本VN開度として、当該基本VN開度に対し、図15より算出されたVN開度のフィードバック量を加えた値を、最終的な目標VN開度(最終目標VN開度)として算出する。そして、ECU50は、算出された最終目標VN開度に対応する制御信号を可動ノズルベーン16に送信する。
【0074】
このようにすることで、実排気圧が変動した場合であっても、当該実排気圧を目標排気圧に一致させるように、VN開度のフィードバック制御を行うことができ、ロバスト性を向上させることができる。
【0075】
次に、第3実施形態に係るターボモード切替制御処理について図16を用いて説明する。図16は、第3実施形態に係るターボモード切替制御処理を示すフローチャートである。なお、以下のターボモード切替制御処理を示すフローチャートは、シングルターボモードからツインターボモードへの切替、及び、ツインターボモードからシングルターボモードへの切替のどちらの場合であっても同様となる。
【0076】
ステップS301〜S307までの処理は、図12のフローチャートのステップS201〜S207までの処理と同様であるので説明を省略する。
【0077】
ステップS308において、ECU50は、エンジン回転数と燃料噴射量とを基に、図14のグラフの関係を示すマップを用いて、目標排気圧を算出する。続くステップS309において、ECU50は、排気圧センサ31からの検出信号S31に基づいて、実排気圧を検出する。この後、ECU50は、ステップS310の処理へ進む。なお、ステップS308の処理とステップS309の処理とは逆順に行っても良いのは言うまでもない。
【0078】
ステップS310において、ECU50は、目標排気圧から実排気圧を引いた差分を算出し、算出された当該差分を基に、図15のグラフの関係を示すマップを用いて、VN開度のフィードバック量を算出する。
【0079】
ステップS311において、ECU50は、図12のフローチャートのステップS206で算出された基本VN開度に対し、図15より算出されたVN開度のフィードバック量を加えた値を、最終目標VN開度として算出する。そして、ECU50は、算出された最終目標VN開度に対応する制御信号を可動ノズルベーン16に送信することにより、当該最終目標VN開度となるようにVN開度を調節する。この後、ECU50は、本制御処理をリターンする。
【0080】
以上に述べたように、第3実施形態に係るターボモード切替制御処理では、ECU50は、第2実施形態に係るターボモード切替制御処理に加えて、排気圧センサ31により検出された実排気圧と目標排気圧との差分に基づいて、可動ノズルベーンの開度のフィードバック制御を行うこととする。このようにすることで、第2実施形態で述べた効果に加えて、ロバスト性を向上させることができる。また、第2実施形態に係るターボモード切替制御処理に加えてフィードバック制御を行うことにより、単にフィードバック制御のみを行う場合と比較して、応答性を向上させることができる。
【0081】
また、上述の第3実施形態に係るターボモード切替制御処理では、ECU50は、排気圧センサにより検出された実排気圧が目標排気圧となるようにVN開度のフィードバック制御を行うこととしていた。しかしながら、これに限られるものではない。ECU50は、可動ノズルベーンの開度のフィードバック制御を行う代わりに、排気切替弁の開度のフィードバック制御を行うこととしても良い。このようにしても、上述したのと同様に、ロバスト性及び応答性を向上させることができる。
【0082】
さらには、上述の第3実施形態に係るターボモード切替制御処理では、ECU50は、第2実施形態に係るターボモード切替制御処理に加えて、排気切替弁15又は可動ノズルベーン16の開度のフィードバック制御を行うとしていた。しかしながら、これに限られるものではない。この代わりに、ECU50は、第1実施形態に係るターボモード切替制御処理に加えて、排気切替弁又は可動ノズルベーンの開度のフィードバック制御を行うこととしても良い。
【0083】
なお、上述の各実施形態では、2個の過給機が並列に配置されたエンジンシステムを例に説明したが、本発明を適用可能な例としてはこれに限られず、2個の過給機が直列に配置され、過給機1個で動作する動作モードと過給機2個で動作する動作モードとの間で切り替えを行うことが可能なエンジンシステムにおいても本発明を適用可能である。
【0084】
また、本発明は、上述した各実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う実施形態もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0085】
8 内燃機関(エンジン)
10 吸気通路
11 排気通路
15 排気切替弁
16 可動ノズルベーン
50 ECU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気通路及び排気通路に配置された第1及び第2の過給機と、前記第2の過給機に供給される排気の量を調整するための排気切替弁と、前記第1の過給機のタービンに取り付けられた可動ノズルベーンと、を有する内燃機関の制御装置であって、
前記第1の過給機のみを動作させるシングルターボモードと前記第1及び第2の過給機の両方を動作させるツインターボモードとの間でターボモードを切り替える切替制御手段と、
前記排気切替弁の開度を検出する排気切替弁開度検出手段と、
前記可動ノズルベーンの開度を検出する可動ノズルベーン開度検出手段と、
ターボモードの切替え時において、排気圧が一定となるように、前記排気切替弁及び前記可動ノズルベーンのうち、いずれか一方の弁の目標開度を他方の弁の開度に応じて設定し、前記一方の弁の開度を前記目標開度に調節する弁開度制御手段と、を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記弁開度制御手段は、前記排気切替弁の開度の時間に対する変化量を前記可動ノズルベーンの開度に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記弁開度制御手段は、シングルターボモードからツインターボモードへとターボモードを切り替える際に、前記可動ノズルベーンの開度が全閉側に近づくほど、前記排気切替弁の開弁速度を遅くするとともに、前記可動ノズルベーンの開度が全閉になった後では、前記可動ノズルベーンの開度が全閉になる前よりも、前記開弁速度をさらに遅くする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記弁開度制御手段は、前記排気切替弁の開度に応じて前記可動ノズルベーンの目標開度を設定し、前記排気切替弁の開度が全閉側に近づくほど、前記可動ノズルベーンの目標開度を全開側に設定する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記弁開度制御手段は、前記排気切替弁及び前記可動ノズルベーンのそれぞれの開口面積の和である全体開口面積が一定となるように、前記一方の弁の目標開度を前記他方の弁の開度に応じて設定する請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記内燃機関の回転数及び燃料噴射量に基づいて、目標排気圧を算出する目標排気圧算出手段と、
実排気圧を検出する排気圧検出手段と、
前記排気圧検出手段により検出された前記実排気圧と前記目標排気圧との差分に基づいて、前記一方の弁の開度のフィードバック量を算出するフィードバック量算出手段と、を有し、
前記弁開度制御手段は、前記一方の弁の目標開度を前記フィードバック量で補正する請求項1乃至5に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−209845(P2010−209845A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58425(P2009−58425)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】