説明

内燃機関の可変動弁装置及び内燃機関の始動制御装置

【課題】始動時の筒内コンプレッションのばらつきを抑制すると共に、吸気弁の閉時期の変換角を過度に大きくする必要のない可変動弁装置を提供する。
【解決手段】ステップ11で、排気VEL1と吸気VTC3によって吸排気弁のそれぞれの開閉時期を、EO1、EC1、IO1、IC1に予め保持し、ステップ12で、自立燃焼による始動条件であると判断した場合は、ステップ13で、ピストンの停止位置を検出する。ステップ14で、圧縮行程の気筒がBDC後のθp±Δθの範囲内と判断した場合は、ステップ15で、排気VEL1と吸気VTC3に、前述の開閉時期にそれぞれ変換する制御信号を出力する。ステップ16で、膨張行程の気筒に燃料噴射と点火制御を行って自立燃焼始動を開始し、ステップ21では、制御マップに基づいて通常制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、始動性の向上などを図り得る内燃機関の可変動弁装置及び始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の内燃機関の可変動弁装置としては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
概略を説明すれば、この可変動弁装置は、機関の始動条件が成立したら、可変機構によって吸気弁の閉時期を遅角側に制御し、これによってピストンの圧縮行程にある気筒の上死点における筒内コンプレッションを低下(デコンプ)させて有効圧縮比を低減させるようになっている。この結果、クランキングの回転立ち上がりを早めて良好な始動性を実現するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−125276号公報(図4、図8)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の可変動弁装置にあっては、以下の2つの技術的課題がある。
【0006】
すなわち、第1に機関始動時に、前記デコンプ状態を得るために、吸気弁の閉時期(IVC)をピストン上死点と下死点の中間位置あるいは上死点付近まで過度に大きく遅角する必要がある。一方、低回転高負荷域では、低速トルクを高めるために、IVCを下死点付近まで大きく進角させる必要があり、この結果、全体の変換角を大きく取らざるを得ないことから、前記可変機構に負荷が掛かると共に、作動応答性が悪化してしまうおそれがある。
【0007】
また、第2に始動時におけるコンプレッションは必ずしもIVCだけではなく、機関停止時における圧縮行程にある気筒のピストン(クランクシャフト)の停止位置の影響を受けてしまう。
【0008】
すなわち、機関停止時を考察すると、圧縮行程にある気筒のピストンは、筒内のコンプレッションによって上死点側から押し下げられて上死点と下死点の中間位置あたりで停止する場合が多く、この状態で次の再始動までの放置期間にピストンとシリンダボアとの間の隙間から大気圧が筒内に浸入する。ここで、ピストンの停止位置がIVCよりも進角している場合は、機関始動時には、IVCを大気圧として以後のピストン上昇に伴いコンプレッションが増加するが、このピストン停止位置がIVCよりも遅角していれば、このピストンの停止位置を大気圧として以後のピストン上昇に伴ってコンプレッションが増加する。つまり、コンプレッションの増加がIVCで決定される場合と、ピストンの停止位置で決定される場合の両方の場合が発生することから、前記コンプレッションにばらつきが発生して、クランキング特性が不安定になって、安定した始動性が得られない、といった技術的課題がある。
【0009】
本発明は、前記従来の可変動弁装置の技術的課題に鑑みて案出したもので、可変機構によるIVCの変換角を過度に大きくする必要がなく、また、始動時におけるコンプレッションのばらつきを抑制できる内燃機関の可変動弁装置及び内燃機関の始動制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、機関停止時にピストンの停止位置を制御可能なクランク位置制御機構と、少なくとも吸気弁の閉時期を可変制御可能な可変機構とを備え、機関停止時に、前記可変機構によって前記吸気弁の閉時期を、前記クランク位置制御機構によって停止制御された圧縮行程の気筒の前記ピストンの停止位置よりもさらに進角側の第1位置に保持制御したことを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載の発明は、機関停止時にクランクシャフトを介してピストンの停止位置を制御可能なクランク位置制御機構と、少なくとも吸気弁の閉時期を制御可能な可変機構とを備えた内燃機関の始動制御装置であって、
機関停止時に、前記可変機構によって、前記吸気弁の閉時期を所定の位置に制御すると共に、前記クランク位置制御機構によって停止制御された圧縮行程の気筒のピストン停止位置を、前記吸気弁閉時期の所定位置よりも遅角側の位置に制御することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、始動時における筒内コンプレッションのばらつきを抑制することができ、また、可変機構による吸気弁の閉時期の変換角を過度に大きくする必要がなくなって負荷を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の可変動弁装置が適用される内燃機関を示す概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態に供される可変動弁装置を示す要部斜視図である。
【図3】A及びBは可変動弁装置である排気VELによる小リフト制御時の作動説明図である。
【図4】A及びBは同排気VELによる最大リフト制御時の作動説明図である。
【図5】本実施形態に供される駆動機構を一部断面して示し、Aは最小リフト位置に保持された状態を示し、Bは最大リフト位置に制御された作動説明図である。
【図6】本実施形態における排気弁のバルブリフト量と作動角の特性図である。
【図7】本実施形態に供される吸気VTCの要部を断面して示す作動説明図であって、Aは最大進角制御状態を示す図8のA−A線断面図、Bは最大遅角制御状態を示す図8のA−A線断面図である。
【図8】同吸気VTCの縦断面である。
【図9】第1実施形態における排気VELと吸気VTCによる排気弁と吸気弁のそれぞれ開閉時期との関係でピストンの停止位置を示す特性図である。
【図10】第1実施形態におけるコントローラによる機関停止までの制御フローチャート図である。
【図11】同コントローラによる機関始動時の制御フローチャート図である。
【図12】第2実施形態における排気VTCと吸気VELによる排気弁と吸気弁のそれぞれ開閉時期との関係でピストンの停止位置を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る内燃機関の可変動弁装置及び始動制御装置の各実施形態を図面に基づいて詳述する。
〔第1実施形態〕
この実施形態では、火花点火式ガソリン仕様のいわゆる4サイクル4気筒の内燃機関であって、自らの意思によらず自動的に機関が停止、始動するいわゆるアイドルストップ車に適用されている。
【0015】
この内燃機関は、図1に示すように、シリンダブロック01とシリンダヘッド02との間に、ピストン03を介して燃焼室04が形成されていると共に、前記シリンダヘッド02のほぼ中央位置に点火プラグ05が設けられている。
【0016】
前記ピストン03は、コネクチングロッド06を介してクランクシャフト07に連結されており、このクランクシャフト07は、冷機時の通常の始動やアイドリングストップ後の自動的な始動(クランキング)がピニオンギア機構08を介して駆動モータ09によって行われるようになっている。なお、前記クランクシャフト07は、後述するクランク角センサ010によってクランク角及び回転数が検出されるようになっている。
【0017】
前記シリンダブロック01には、ウォータジャケット内の水温を検出する水温センサ011が取り付けられていると共に、シリンダヘッド02には、燃焼室04内に燃料を直接噴射する燃料噴射弁012が設けられている。
【0018】
さらに、シリンダヘッド02の内部に形成された吸気ポート013や排気ポート014を開閉する1気筒当たりそれぞれ2つ吸気弁4、4及び排気弁5、5が摺動自在に設けられていると共に、前記吸気弁4側と排気弁5側には、可変動弁装置が設けられている。
【0019】
前記可変動弁装置は、図2〜図4に示すように、内燃機関の両排気弁5,5のバルブリフト及び作動角(開期間)を制御する第1可変機構である排気VEL1と、排気弁5,5の開閉時期(バルブタイミング)を制御する第2可変機構である排気VTC2と、吸気弁4、4の開閉時期を制御する第3可変機構である吸気VTC3と、を備えている。また、前記排気VEL1と排気VTC2及び吸気VTC3は、後述する電子コントローラ22によって機関運転状態に応じてそれぞれの作動が制御されるようになっている。
【0020】
この第1実施形態では、前記排気VEL1と吸気VTC3のみを使用し、排気VTC2は使用しないが、便宜上、この図2中に合わせて記載した。
【0021】
前記排気VEL1は、本出願人が先に出願した例えば特開2003−172112号公報(吸気弁側に適用)などに記載されたものと同様の構成であるから、図2及び図3に基づいて簡単に説明すると、シリンダヘッド02の上部に有する軸受27に回転自在に支持された中空状の駆動軸6と、該駆動軸6の外周面に圧入等により固設された回転カム7と、駆動軸6の外周面に揺動自在に支持されて、各排気弁5,5の上端部に配設された各バルブリフター8、8の上面に摺接して各排気弁5,5を開作動させる2つの揺動カム9,9と、回転カム7と揺動カム9,9との間に介装されて、回転カム7の回転力を揺動運動に変換して揺動カム9,9に揺動力として伝達する伝達機構とを備えている。
【0022】
前記駆動軸6は、一端部に設けられたタイミングスプロケット31を介して前記クランクシャフト07から図外のタイミングチェーンによって回転力が伝達されており、この回転方向は図2中、時計方向(矢印方向)に設定されている。なお、前述のように、第1実施形態では、前記排気VTC2は装着されているものの使用しないので、前記駆動軸6とタイミングスプロケット31との回転位相は変化されず位相変換は行われない。
【0023】
前記回転カム7は、ほぼリング状を呈し、内部軸方向に形成された駆動軸挿通孔を介して駆動軸6に貫通固定されていると共に、カム本体の軸心Yが駆動軸6の軸心Xから径方向へ所定量だけオフセットしている。
【0024】
前記両揺動カム9は、円筒状のカムシャフト10の両端部に一体的に設けられていると共に、該カムシャフト10が内周面を介して駆動軸6に回転自在に支持されている。また、下面にベースサークル面やランプ面及びリフト面からなるカム面9aが形成されており、該ベースサークル面とランプ面及びリフト面が、揺動カム9の揺動位置に応じて各バルブリフター8の上面の所定位置に当接するようになっている。
【0025】
前記伝達機構は、駆動軸6の上方に配置されたロッカアーム11と、該ロッカアーム11の一端部11aと回転カム7とを連係するリンクアーム12と、ロッカアーム11の他端部11bと揺動カム9とを連係するリンクロッド13とを備えている。
【0026】
前記ロッカアーム11は、中央に有する筒状の基部が支持孔を介して後述する制御カムに回転自在に支持されていると共に、一端部11aがピン14によってリンクアーム12に回転自在に連結されている一方、他端部11bがリンクロッド13の一端部13aにピン15を介して回転自在に連結されている。
【0027】
前記リンクアーム12は、円環状の基端部12aの中央位置に有する嵌合孔に前記回転カム7のカム本体が回転自在に嵌合している一方、基端部12aから突出した突出端12bが前記ピン14によってロッカアーム一端部11aに連結されている。
【0028】
前記リンクロッド13は、他端部13bがピン16を介して揺動カム9のカムノーズ部に回転自在に連結されている。
【0029】
また、駆動軸6の上方位置に同じ軸受部材に制御軸17が回転自在に支持されていると共に、該制御軸17の外周に前記ロッカアーム11の支持孔に摺動自在に嵌入されて、ロッカアーム11の揺動支点となる制御カム18が固定されている。
【0030】
前記制御軸17は、駆動軸6と並行に機関前後方向に配設されていると共に、駆動機構19によって回転制御されている。一方、前記制御カム18は、円筒状を呈し、軸心P2位置が制御軸17の軸心P1から所定分だけ偏倚している。
【0031】
前記駆動機構19は、図5A,Bに示すように、ケーシング19aの一端部に固定された電動モータ20と、ケーシング19aの内部に設けられて電動モータ20の回転駆動力を前記制御軸17に伝達するボール螺子伝達手段21とから構成されている。
【0032】
前記電動モ−タ20は、比例型のDCモータによって構成され、機関運転状態を検出する制御機構であるコントローラ22からの制御信号によって駆動するようになっている。
【0033】
前記ボール螺子伝達手段21は、電動モータ20の駆動シャフト20aとほぼ同軸上に配置されたボール螺子軸23と、該ボール螺子軸23の外周に螺合する移動部材であるボールナット24と、前記制御軸17の一端部に直径方向に沿って連結された連係アーム25と、該連係アーム25と前記ボールナット24とを連係するリンク部材26と、から主として構成されている。
【0034】
前記ボール螺子軸23は、両端部を除く外周面全体に所定幅のボール循環溝23aが螺旋状に連続して形成されていると共に、一端部にモータ駆動軸を介して連結され電動モータ20によって回転駆動されるようになっている。
【0035】
前記ボールナット24は、ほぼ円筒状に形成され、内周面に前記ボール循環溝23aと共同して複数のボールを転動自在に保持するガイド溝24aが螺旋状に連続して形成されていると共に、各ボールを介してボール螺子軸23の回転運動をボールナット24に直線運動に変換しつつ軸方向の移動力が付与されるようになっている。また、このボールナット24は、付勢手段であるコイルスプリング30のばね力によって電動モータ20側(最小リフト側)に付勢されている。したがって、機関停止時には、かかるボールナット24が、前記コイルスプリング30のばね力によってボール螺子軸23の軸方向に沿って最小リフト側に移動するようになっている。
【0036】
また、前記制御軸17は、ボールナット24の前後移動に伴ってリンク部材26を介して正逆回転し、前記ケーシング19aに突設された一対のストッパピンS1、S2に前記リンク部材26の各側面が当接して正逆の最大回転位置、つまり、最小リフト(最小作動角)と最大リフト(最大作動角)が規制されるようになっている。
【0037】
前記コントローラ22は、機関のコントロールユニット(ECU)の内部に組み込まれており、現在の機関回転数N(rpm)やクランク角を検出する前記クランク角センサ010からの検出信号やアクセル開度センサ、車速センサ、ギア位置センサ、前記水温センサ011などから各種情報信号から現在の機関運転状態を検出している。また、駆動軸6の回転角度を検出する駆動軸角度センサ28からの検出信号や、前記制御軸17の回転位置を検出するポテンショメータ29からの検出信号を入力して、駆動軸6のクランク角に対する相対回転角度や各排気弁5,5のバルブリフト量や作動角を検出するようになっている。
【0038】
以下、前記排気VEL1の基本作動を説明すると、所定の運転領域で、前記コントローラ22からの制御電流によって一方向へ回転駆動した電動モータ20の回転トルクによってボール螺子軸23が一方向へ回転すると、ボールナット24が、図5Aに示すように、コイルスプリング30のばね力にアシストされながら最大一方向(電動モータ20に接近する方向)へ直線状に移動し、これによって制御軸17がリンク部材26と連係アーム25を介して一方向へ回転する。
【0039】
したがって、制御カム18は、図3A、B(フロントビュー)に示すように、軸心が制御軸17の軸心の回りを同一半径で回転して、肉厚部が駆動軸6から上方向に離間移動する。これにより、ロッカアーム11の他端部11bとリンクロッド13の枢支点は、駆動軸6に対して上方向へ移動し、このため、各揺動カム9は、リンクロッド13を介してカムノーズ部側が強制的に引き上げられて全体が図3に示す時計方向へ回動する。
【0040】
よって、回転カム7が回転してリンクアーム12を介してロッカアーム11の一端部11aを押し上げると、そのリフト量がリンクロッド13を介して揺動カム9及びバルブリフター16に伝達され、これによって、排気弁5,5は、そのバルブリフト量が図6のバルブリフト曲線で示すように小リフト(L1)になり、その作動角D1(クランク角での開弁期間)が小さくなる。前記作動角は、前記排気弁5のリフトの開時期から閉時期までを示している。
【0041】
別の運転状態では、コントローラ22からの制御信号によって電動モータ20が他方向へ回転して、この回転トルクがボール螺子軸23に伝達されて回転すると、この回転に伴ってボールナット24がコイルスプリング30のばね力に抗して反対方向、つまり、図5A中、右方向へ所定量だけ直線移動する。これにより、制御軸17が、図3中、時計方向へ所定量だけ回転駆動する。
【0042】
このため、制御カム18は、軸心が制御軸17の軸心P1から所定量だけ下方の回転角度位置に保持されて肉厚部が下方へ移動する。このため、ロッカアーム11は、全体が図3の位置から反時計方向へ移動して、これによって各揺動カム9がリンクロッド13を介してカムノーズ部側が強制的に押し下げられて、全体が反時計方向へ僅かに回動する。
【0043】
したがって、前記回転カム7が回転してリンクアーム12を介してロッカアーム11の一端部11aを押し上げると、そのリフト量がリンクロッド13を介して各揺動カム9及びバルブリフター8に伝達され、排気弁5,5のリフト量が図6に示すように、中リフト(L2)あるいは大リフト(L3)になり、作動角もD2、D3のように大きくなる。
【0044】
また、例えば高回転高負荷領域に移行した場合などは、コントローラ22からの制御信号によって電動モータ20がさらに他方向に回転してボールナット24を、図5Bに示すように、最大右方向へ移動させる。これにより、制御軸17は、制御カム18をさらに図3中、時計方向へ回転させて、軸心P2をさらに下方向へ回動させる。このため、ロッカアーム11は、図4A、Bに示すように、全体がさらに駆動軸6方向寄りに移動して他端部11bが揺動カム9のカムノーズ部を、リンクロッド13を介して下方へ押圧して該揺動カム9全体を所定量だけさらに反時計方向へ回動させる。
【0045】
よって、回転カム7が回転してリンクアーム12を介してロッカアーム11の一端部11aを押し上げると、そのリフト量がリンクロッド13を介して揺動カム9及びバルブリフター8に伝達されるが、そのバルブリフト量は、図6に示すようにL2、L3からL4に連続的に大きくなる。その結果、高回転域での排気効率を高め、もって出力を向上させることができる。
【0046】
すなわち、排気弁5,5のリフト量は、機関の運転状態に応じて、最小リフトL1、中リフトL2、大リフトL3から最大リフトL4まで連続的に変化するようになっており、したがって、各排気弁5,5の作動角も最小リフトのD1から最大リフトのD4まで連続的に変化する。
【0047】
また、機関の停止時には、前述したように、ボールナット24がコイルスプリング30のばね力によって電動モータ20側へ付勢されて自動的に移動することから、最小作動角D1及び最小リフトL1位置(デフォルト位置)に安定に保持される。
【0048】
前記吸気VTC3は、いわゆるベーンタイプのものであって、図7A,B及び図8に示すように、機関のクランクシャフト07によって回転駆動されて、この回転駆動力を吸気側カムシャフト59に伝達するタイミングスプロケット61と、前記吸気側カムシャフト59の端部に固定されてタイミングスプロケット61内に回転自在に収容されたベーン部材32と、該ベーン部材32を油圧によって正逆回転させる油圧回路とを備えている。
【0049】
前記タイミングスプロケット61は、前記ベーン部材32を回転自在に収容したハウジング34と、該ハウジング34の前端開口を閉塞する円板状のフロントカバー35と、ハウジング34の後端開口を閉塞するほぼ円板状のリアカバー36とから構成され、これらハウジング34及びフロントカバー35,リアカバー36は、4本の小径ボルト37によって吸気側カムシャフト59の軸方向から一体的に共締め固定されている。
【0050】
前記ハウジング34は、前後両端が開口形成された円筒状を呈し、内周面の周方向の約90°位置に4つの隔壁であるシュー34aが内方に向かって突設されている。
【0051】
この各シュー34aは、横断面ほぼ台形状を呈し、ほぼ中央位置に前記各ボルト37の軸部が挿通する4つのボルト挿通孔34bが軸方向へ貫通形成されていると共に、各内端面に軸方向に沿って切欠形成された保持溝内に、コ字形のシール部材38と該シール部材38を内方へ押圧する図外の板ばねが嵌合保持されている。
【0052】
前記フロントカバー35は、円盤プレート状に形成されて、中央に比較的大径な支持孔35aが穿設されていると共に、外周部に前記各シュー34aの各ボルト挿通孔34bに対応する位置に図外の4つのボルト孔が穿設されている。
【0053】
前記リアカバー36は、後端側に前記タイミングチェーンが噛合する歯車部36aが一体に設けられていると共に、ほぼ中央に大径な軸受孔36bが軸方向に貫通形成されている。
【0054】
前記ベーン部材32は、中央にボルト挿通孔を有する円環状のベーンロータ32aと、該ベーンロータ32aの外周面の周方向のほぼ90°位置に一体に設けられた4つのベーン32bとを備えている。
【0055】
前記ベーンロータ32aは、前端側の小径筒部が前記フロントカバー35の支持孔35aに回転自在に支持されている一方、後端側の小径な円筒部が前記リアカバー36の軸受孔36bに回転自在に支持されている。
【0056】
また、ベーン部材32は、前記ベーンロータ32aのボルト挿通孔に軸方向から挿通した固定ボルト57によって吸気側カムシャフト59の前端部に軸方向から固定されている。
【0057】
前記各ベーン32bは、その内の3つが比較的細長い長方体形状に形成され、他の1つの幅長さが大きな台形状に形成されて、前記3つのベーン32bはそれぞれの幅長さがほぼ同一に設定されているのに対して1つのベーン32bはその幅長さが前記3つのものよりも大きく設定されて、ベーン部材32全体の重量バランスが取られている。
【0058】
また、各ベーン32bは、各シュー34a間に配置されていると共に、各外面の軸方向に形成された細長い保持溝内に前記ハウジング34の内周面に摺接するコ字形のシール部材40及び該シール部材40をハウジング34の内周面方向に押圧する板ばねが夫々嵌着保持されている。また、各ベーン32bの前記吸気側カムシャフト59の回転方向と反対側の一側面には、ほぼ円形状の凹溝32cが形成されている。
【0059】
また、この各ベーン32bの両側と各シュー34aの両側面との間に、それぞれ4つの進角側油圧室41と遅角側油圧室42がそれぞれ隔成されている。
【0060】
前記油圧回路は、図8に示すように、前記各進角側油圧室41に対して作動油の油圧を給排する第1油圧通路43と、前記各遅角側油圧室42に対して作動油の油圧を給排する第2油圧通路44との2系統の油圧通路を有し、この両油圧通路43,44には、供給通路45とドレン通路46とが夫々通路切り換え用の電磁切換弁47を介して接続されている。前記供給通路45には、オイルパン48内の油を圧送する一方向のオイルポンプ49が設けられている一方、ドレン通路46の下流端がオイルパン48に連通している。
【0061】
前記第1、第2油圧通路43,44は、円柱状の通路構成部39の内部に形成され、この通路構成部39は、一端部が前記ベーンロータ32aの小径筒部から内部の支持穴32d内に挿通配置されている一方、他端部が前記電磁切換弁47に接続されている。
【0062】
また、前記通路構成部39の一端部の外周面と支持穴14dの内周面との間には、各油圧通路43,44の一端側間を隔成シールする3つの環状シール部材60が嵌着固定されている。
【0063】
前記第1油圧通路43は、前記支持穴32dの駆動軸6側の端部に形成された油室43aと、ベーンロータ32aの内部にほぼ放射状に形成されて油室43aと各進角側油圧室41とを連通する4本の分岐路43bとを備えている。
【0064】
一方、第2油圧通路44は、通路構成部39の一端部内で止められ、該一端部の外周面に形成された環状室44aと、ベーンロータ32の内部にほぼL字形状に折曲形成されて、前記環状室44aと各遅角側油圧室42と連通する第2油路44bとを備えている。
【0065】
前記電磁切換弁47は、4ポート3位置型であって、内部の弁体が各油圧通路43、44と供給通路45及びドレン通路46とを相対的に切り替え制御するようになっていると共に、前記コントローラ22からの制御信号によって切り替え作動されるようになっている。
【0066】
また、この電磁切換弁47は、制御電流が出力されない場合に、供給通路45が進角側油圧室41に連通する第1油圧通路43と連通し、ドレン通路46が遅角側油圧室42と連通する前記第2油圧通路44に連通するようになっている。また、電磁切換弁47内のコイルスプリングによって機械的にかかるポジションとなるように形成されている。
【0067】
前記コントローラ22は、排気VEL1と共通のものであって、機関運転状態を検出すると共に、前記吸気側カムシャフト59の回転位置を検出するカム角センサ015からの検出信号と前記クランク角センサ010の検出信号からクランクシャフト07に対する吸気側カムシャフト59の相対回転角(吸気VTC3の実位置)を検出するようになっている。
【0068】
また、前記ベーン部材32とハウジング34との間には、このハウジング34に対してベーン部材32の回転を拘束及び拘束を解除する拘束手段であるロック機構が設けられている。このロック機構は、前記幅長さの大きな1つのベーン32bとリアカバー36との間に設けられ、前記ベーン32bの内部の駆動軸6の軸方向に沿って形成された摺動用穴50と、該摺動用穴50の内部に摺動自在に設けられた有蓋円筒状のロックピン51と、前記リアカバー36に有する固定孔内に固定された横断面カップ状の係合穴構成部52に設けられて、前記ロックピン51のテーパ状先端部51aが係脱する係合穴52aと、前記摺動用穴50の底面側に固定されたスプリングリテーナ53に保持されて、ロックピン51を係合穴52a方向へ付勢するばね部材54とから構成されている。
【0069】
また、前記係合穴52aには、図外の油孔を介して前記進角側油圧室41内の油圧あるいはオイルポンプ49の油圧が直接供給されるようになっている。
【0070】
そして、前記ロックピン51は、前記ベーン部材32が最進角側に回転した位置で、先端部51aが前記ばね部材54のばね力によって係合穴52aに係合してハウジング30とベーン部材32との相対回転をロックする。また、前記進角側油圧室41から係合穴52a内に供給された油圧あるいはオイルポンプ49の油圧によって、ロックピン51が後退移動して係合穴52aとの係合が解除されるようになっている。
【0071】
また、各進角側油圧室41の内部、つまり、前記各ベーン32bの一側面と該一側面に対向する各シュー34aの対向面との間には、ベーン部材32を進角側へ回転付勢する付勢部材である一対のコイルスプリング55、56が配置されている。
【0072】
各コイルスプリング55,56は、最大圧縮変形時にも互いが接触しない軸間距離をもって並設されていると共に、各一端部がベーン32bの凹溝32cに嵌合する図外の薄板状のリテーナを介して連結されている。
【0073】
以下、吸気VTC3の基本的な動作を説明すると、まず、機関停止時には、コントローラ22から電磁切換弁47に対する制御電流の出力が停止されて、図8に示すように、供給通路45と進角側の第1油圧通路43とが連通されると共に、ドレン通路46と第2油圧通路44が連通される。また、かかる機関が停止された状態ではオイルポンプ49の油圧が作用せず供給油圧も0になる。
【0074】
したがって、ベーン部材32は、図7Aに示すように、前記各コイルスプリング55,56のばね力によって最進側に回転付勢されて1つの幅広ベーン32bの一端面が対向する1つのシュー34aの一側面に当接する、と同時に前記ロック機構のロックピン51の先端部51aが係合穴52a内に係入して、ベーン部材32をかかる最進角位置に安定に保持する。すなわち、最進角位置に吸気VTC3が機械的に安定するデフォルト位置になっている。
【0075】
ここで、デフォルト位置とは、非作動時、つまり、制御信号が発せられない場合や、油圧が発生していない場合にメカニカルに自動的に安定する位置のことである。
【0076】
次に、機関始動時、つまりイグニッションスイッチをオン操作して、駆動モータ09や燃焼圧などによりクランクシャフト07をクランキング回転させると、電磁切換弁47にコントローラ22から制御信号が出力される。しかしながら、このクランク開始直後の時点では、まだオイルポンプ49の吐出油圧が十分に上昇していないことから、ベーン部材32は、ロック機構と各コイルスプリング55,56のばね力とによって最進角側に保持されている。
【0077】
このとき、コントローラ22から出力された制御信号によって電磁切換弁47が供給通路45と第1油圧通路43を連通させると共に、ドレン通路46と第2油圧通路44とを連通させている。そして、クランキングが進み、オイルポンプ49から圧送された油圧の上昇とともに第1油圧通路43を通って進角側油圧室41に供給される一方、遅角側油圧室42には、機関停止時と同じく油圧が供給されずにドレン通路46から油圧がオイルパン48内に開放されて低圧状態を維持している。
【0078】
ここで、クランキング回転が上昇し油圧がさらに上昇した後は、電磁切換弁47による自在のベーン位置制御ができるようになる。つまり、進角側油圧室41の油圧の上昇に伴ってロック機構の係合穴52a内の油圧も高まってロックピン51が後退移動し、先端部51aが係合穴52aから抜け出してハウジング34に対するベーン部材32の相対回転を許容するため、自在なベーン位置制御が可能になる。
【0079】
その後、例えば、コントローラ22からの制御信号によって電磁切換弁47が作動して、供給通路45と第2油圧通路44を連通させる一方、ドレン通路46と第1油圧通路43を連通させる。
【0080】
したがって、今度は進角側油圧室41内の油圧が第1油圧通路43を通ってドレン通路46からオイルパン48内に戻され、該進角側油圧室41内が低圧になる一方、遅角側油圧室42内に油圧が供給されて高圧となる。
【0081】
よって、ベーン部材32は、かかる遅角側油圧室42内の高圧化によって各コイルスプリング55,56のばね力に抗して図中反時計方向へ回転して図7Bに示す位置に向かって相対回転して、タイミングスプロケット61に対する吸気カムシャフト59の相対回転位相を遅角側に変換する。また、電磁切換弁47のポジションを中立位置にすることで、任意の相対回転位相に保持できる。
【0082】
さらに、始動後の機関運転状態に応じて前記相対回転位相を最進角(図7A)から最遅角(図7B)まで連続的に変化させるのである。
【0083】
次に、第1実施形態では使用せず第2実施形態にのみ使用される前記排気VTC2は、基本構成は、吸気VTC3と同様にベーンタイプのものであるから、簡単に説明すると、前記駆動軸6の端部に配置されてクランクシャフト07から回転駆動力が伝達されるタイミングスプロケット31と、該タイミングスプロケット31の内部に回転自在に収容された図外のベーン部材と、該ベーン部材を油圧によって正逆回転させる油圧回路とを備えている。
【0084】
前記油圧回路は、基本的に吸気VTC3のものと同様であるが、電磁切換弁における前述の3ポジション(図8参照)とは異なり、左右のポジションが入れ替わった構成になっている。また、ベーンを付勢するコイルスプリングがベーンを最遅角側に押し付けるようになっており、ロック位置も最遅角側になっている。すなわち、デフォルト位置が最遅角になっているのである。
【0085】
この電磁切換弁は、吸気VTC3と同様に、前記同じコントローラ22からの制御信号によって切り替え作動されるようになっている。
〔第1実施形態における排気弁の開閉時期制御〕
図9は第1実施形態における各吸気弁4と各排気弁5のそれぞれの開閉時期と、機関停止時のピストン03の位置を示したものである。実際は、図1に示すように、ピストン03はコンロッド06を介してクランクシャフト07のピン部に連結されるが、分かりやすくするために、ピストン03は直接クランクシャフト07のピン部に連結されるように記載してある。こうしても、ピストン上下動を議論する場合には支障がない。ここでは、1番気筒(#1気筒)が圧縮行程とした例を示している。なお、サイクル順序は#1気筒−#3気筒−#4気筒−#2気筒−#1気筒の順になっており、#1気筒よりも1サイクル進んだ#2気筒が膨張行程になる。
【0086】
各排気弁5側では、排気VEL1によって最小リフトL1(最小作動角D1)に制御されている場合は、開時期と閉時期が図示のEO1(第3位置)、EC1になっている。この開閉タイミングが、前述のように排気VEL1が機械的に安定するデフォルト位置になっている。
【0087】
前記吸気VTC3は、最進角位相であり、吸気弁04の開時期と閉時期はIO1とIC1(第1位置)になっており、この開閉タイミングが機械的に安定するデフォルト位置になっている。なお、吸気弁VTC3による吸気弁04開閉時期の最遅角位相がIO4、IC4(第2位置)になっている。
【0088】
前記駆動モータ09は、機関の停止への移行時に、クランクシャフト07を回転制御して、膨張行程にある2番気筒(#2気筒)のピストン03と、圧縮行程にある1番気筒(#1気筒)のピストン03の各位置を図9に示す位置に調整制御する。その後、機関が停止される。
【0089】
圧縮行程の気筒である前記#1気筒のクランク角(ピストン位置)は、ピストン下死点(BDC)後90°より大きなθp(遅角)となっており、膨張行程気筒である#2気筒のクランク角は上死点(TDC)後θp’(遅角)となっている。4気筒機関では、気筒間隔が180°であるからθp’=θpとなっている。
【0090】
機関停止後に放置されると、吸気弁04と排気弁05が閉じている圧縮行程の#1気筒及び膨張行程の#2気筒の各筒内にもピストン03とシリンダボアとの間の隙間から空気が即座に浸入する。したがって、次に始動する際には、ピストン03の位置が図9に示す状態のままで前記#1,#2の両気筒の筒内は大気圧になっている。
〔機関始動動作〕
次に、機関始動の動作について説明する。膨張行程の#2気筒の筒内に燃料噴射弁012から燃料が噴射されて点火を行うことによって、駆動モータ09によらない自立燃焼始動により#2気筒のピストン03を初期燃焼圧により押し下げ、これによって、クランキングが開始される。
【0091】
ここで、ピストン03の位置は、やや下死点寄り(θp’>90°)で筒内容積(燃焼容積)も比較的取れているが、筒内大気圧での燃焼なので、通常の圧縮圧下での燃焼に較べたら燃焼トルクが非力であり、クランキング時に圧縮行程の#1気筒が上死点を越えることができるかが問題となる。
【0092】
しかしながら、圧縮行程の#1気筒のピストン初期位置は、上死点側寄りのθ>90°であるので、筒内が大気圧の状態から上死点まで圧縮されても、そのコンプレッション(上死点筒内圧)は比較的低いデコンプ状態なので、容易に上死点を乗り越えることができる。
【0093】
これと同等のデコンプ効果を吸気弁04の閉時期(IVC)で行おうとすると、IVCを下死点後θpまで遅角する必要がある。また、低速トルクを高め必要がある低回転高負荷域では、IVCは下死点付近にする必要がある。
【0094】
してみると、吸気VTC3のIVC変換角は、ほぼθpだけ、つまり、クランク角90°(吸気側カムシャフト59の回転角で45°)程度あるいはそれ以上の大きな変換角が必要になる。ここで、吸気VTC3において45°あるいはそれ以上のベーン変換角が要求されることになる。
【0095】
前記図7においてベーン変換角を、例えば45°まで増加する場合を想定してみると、最進角時に、コイルスプリング55,56が圧縮方向で密着してしまい、45°変換は不可能である。コイルスプリング55,56がなくともこれだけの変換角は機構レイアウト上からして難しく、ベーン数を4枚から3枚乃至2枚に減らして対応することになるが、その場合、変換油圧により発生する変換トルクが低下して応答性が悪化したり、保持安定性が悪化するとか、吸気VTC3に過度な負荷が発生する。
【0096】
したがって、本実施形態にように、圧縮行程のピストン03の位置でデコンプを行うと、このような吸気弁04の閉時期(IVC)大変換角の問題を避けることが可能になるのである。
【0097】
また、圧縮行程の#1気筒のピストン03の位置、つまり、クランク角である下死点後θpの位置は、停止時のIVCクランク角である吸気弁閉時期IC1(第1位置)に対して十分遅角しているので、クランク位置制御手段である駆動モータ09によるθp制御においてθp±Δθなら、ばらつきがあってもIC1(第1位置)より進角することはない。したがって、IVCの影響を受けずに、機関停止時の圧縮行程にある#1気筒のピストン03の位置によってデコンプされるので、コンプレッションを安定化でき、初期クランキングの安定した立ち上がりを得ることができる。
【0098】
ここで、IC1は機関始動前から機械的に安定するデフォルト位置であるから、機関始動の開始の瞬間から前記効果を得ることができる。
【0099】
また、例えば吸気VTC3の断線などの電気系統に故障は発生した場合でも、IVCは前記IC1になっているので、前述の安定的な初期クランキングの回転立ち上がり効果を得ることができる。
【0100】
一方、断線ではなく、吸気VTC3の誤作動(制御異常)について考えてみる。仮に、IVCが機械的最遅角位置IC4(第2位置)まで、最大限遅角した場合を考えてみても、図9に示すように、圧縮気筒ピストン位置(θp)まで遅れることはなく、従って、IVCの影響を受けずに、機関停止時の圧縮気筒ピストン位置によりデコンプ制御できるので、コンプレッションの安定化が図れ、安定的な初期クランキング回転の立ち上がりを得ることができる。
【0101】
次に、初回燃焼気筒である膨張行程の#2気筒の動作について説明する。
【0102】
前述のように、自立燃焼始動によって#2気筒のピストン03を初期燃焼圧に押し下げることによってクランキングを開始するが、ピストン03の位置はやや下死点寄り(θp’>90°)であり、筒内容積(燃焼容積)も比較的大きくなっているが、筒内が大気圧の燃焼なので、通常の圧縮圧下での燃焼に較べると非力である。
【0103】
そこで、図9に示すように、排気弁05の開時期(EVO)を下死点付近のEO1(第3位置)まで遅角している。これによって、燃焼圧が排気弁05の開弁より抜ける時期を遅延させて、ピストン03が下降して行った際に、燃焼圧を下死点付近まで長期間作用させることができ、有効にクランクシャフトのトルクに変換できる。このEO1(第3位置)は、排気VEL1が機械的に安定するデフォルト位置であるので、初回燃焼を開始する前に予めEO1になっていることから、前記効果を始動開始(初回燃焼開始)の瞬間から得ることができる。
【0104】
また、排気VEL1の電気系統に断線などの故障があった場合であっても、EO1になっているので、前記安定的な初期クランキングの立ち上がり効果を得ることができる。
【0105】
一方、電気系統の断線でなく排気VEL1の誤作動(制御異常)について考察する。
【0106】
仮に、排気弁05の開時期が最進角のEO4(第4位置)まで最大限に進角した場合にも、図9に示すように、膨張行程にある#2気筒のピストン03の位置(θp’)まで進むことはない。したがって、ピストン03が動き出してから燃焼圧が排気弁05の開作動により開放されるまでの期間をある程度確保することはでき、機関トルクはある程度落ち込むものの最低限機関トルクは確保できるので、最低限の始動性は確保できる。
【0107】
次に、初回燃焼気筒である膨張行程にある#2気筒の次に燃焼する気筒となる#1気筒(機関停止時圧縮行程気筒)について考察する。
【0108】
初回燃焼に初回クランキングが開始されると、前述の#1気筒のθpによる安定的なデコンプ効果と前記排気弁05の開時期遅延(EO1)の効果によって、初期クランキングは迅速に立ち上がる。
【0109】
そして、#1気筒は上死点を越えて膨張行程に移行すると直ちに燃料噴射、点火が行われ、第2燃焼となる。
【0110】
この第2燃焼は、機関停止時の筒内空気容積が#2気筒よりも少ないものの、圧縮上死点での筒内圧が大気圧より高く、燃焼開始するクランク角が進角しているので、第1燃焼と同等以上の軸トルクを生じる。
【0111】
#1気筒に続いて燃焼するのは、#3気筒(燃焼停止吸気行程気筒)である。#3気筒は、始動前の機関停止時は吸気行程にあり、クランキングが開始されると、上死点と下死点の中間付近にあった#3気筒のピストン03が下降して行くが、ほぼ下死点になった時点で吸気弁04は閉弁する。機関回転数は、十分に低いことから、新気の充填効率はほぼIVCの下死点で最大となるため十分に新気を導入することができる。そして、#3気筒は十分な燃焼トルクを発生して機関回転は上昇する。
【0112】
機関停止時に吸気行程にある#3気筒に続いて燃焼するのは、機関停止時に排気行程にある#4気筒である。#4気筒は始動前の機関停止時は排気行程にあり、クランキングが開始されると、筒内の空気を排出し、続いて吸気行程に移ると、吸気弁04から新気を吸い込む。ここで、吸気弁04の開時期は、IO1は上死点前であるが、排気弁05の閉時期EC1との間でバルブオーバーラップが殆どないので、#2気筒、#1気筒、#3気筒の各気筒から排出された排気ガスを再吸入することが抑制され、また、ピストン上死点付近から新気を吸い込むため、#3気筒以上に十分に新気を吸い込める。したがって、燃焼トルクを高め、機関回転数はさらに増加する。
【0113】
#4気筒に続いて燃焼するのは、#2気筒であり、初回自立燃焼の後の2回目の燃焼である。この燃焼パターンは、#4気筒と同様であり、#4気筒と同等の燃焼トルクと機関回転数が維持される。このようにして、良好な始動性を実現できるのである。
【0114】
図10は本実施形態における機関が停止するまでの前記コントローラ22による制御フローチャートを示している。
【0115】
まず、ステップ1では、前記各種センサ類から現在の機関運転状態を読み込み、ステップ2では機関停止条件か否かを判断する。つまり、車両が停止した際に、機関温度などがアイドリングストップになる条件になっているか否かを判断する。ここで、機関停止条件になっていないと判断した場合はリターンするが、機関停止条件であると判断した場合は、ステップ3に移行する。
【0116】
このステップ3では燃料噴射や点火を停止して排気VEL1と吸気VEL3への制御信号をオフにする。
【0117】
この結果、ステップ4において、機関回転数が低下すると共に、排気VEL1と吸気VTC3がそれぞれのコイルスプリング30、55,56のばね力によって機械的に前記デフォルト位置(IO1、IC1、EO1、EC1)に移行する。
【0118】
ステップ5では、機関回転数Nが所定回転数ΔN以下になっているか否かを判断する。所定回転以上であると判断した場合はステップ4に戻るが、所定回転以下である場合は機関が停止間際であると判断してステップ6に進む(機関回転数が逆回転(符号がマイナス)になっている場合も含む)。
【0119】
このステップ6では、前記駆動モータ09に制御電流を通電し、圧縮行程気筒のピストン位置(クランク位置)が下死点後θpになるように、クランク角センサ010でクランクシャフト07の回転位置をモニターしつつ位置決め制御する。
【0120】
次に、ステップ7では、前記クランク角センサ010によって実際のクランクシャフト07のクランク回転角θを読み込み、ステップ8に移行する。
【0121】
ステップ8では、前記クランク回転角θがθp±Δθの範囲内に収まっているか否かを判断し、前記範囲内に収まっていると判断した場合は制御を終了するが、範囲外であると判断した場合は、再度ステップ6に戻って駆動モータ09を制御し、これを何サイクルか繰り返すと、前記範囲内に収まる。
【0122】
図11は本実施形態の機関始動時のコントローラ22による制御フローチャートを示している。
【0123】
ステップ11では、排気VEL1によって排気弁05の開閉時期と吸気VTC3によって吸気弁04の開閉時期とを、図9に示すEO1、EC1、IO1、IC1にそれぞれ予めデフォルト位置に機械的に保持する。
【0124】
ステップ12では、現在の機関状態が機関温度などをパラメータとした自立燃焼による始動条件か否かを判断する。例えば、冷機始動の場合は燃焼不良が発生し易く、また機関のフリクションが大きいことから、自立燃焼によるクランキングは不可能と判断して、後述する通常始動のステップに移行する。暖機状態にある場合など自立燃焼始動条件であると判断した場合は、ステップ13に移行する。
【0125】
このステップ13では、クランク角センサ010によって実際のクランクシャフト07のクランク角、つまりピストン03の停止位置を検出してステップ14に進む。
【0126】
このステップ14では、自立燃焼始動ができるクランク角になっているか否かを判断する。すなわち、圧縮行程の気筒がBDC後のθp±Δθの範囲内か否かを判断する(膨張行程に気筒がTDC後のθp’±Δθの範囲内か否かを判断する)。ここで、前記範囲外であると判断した場合は通常始動のステップに移行するが、範囲内であると判断した場合はステップ15に進む。
【0127】
このステップ15では、前記排気VEL1及び吸気VTC3によって、前記デフォルト位置、つまり、排気弁05の開閉時期をEO1、EC1に、吸気弁04の開閉時期をIO1、IC1にそれぞれ変換する制御信号を出力する。
【0128】
この制御処理は、前記ステップ11における排気弁と吸気弁のそれぞれの開閉時期が機械的にデフォルト位置に十分には安定していなかった場合や、その後の放置期間で僅かに目標からずれてしまった場合の補正という意味をもち、また、燃焼及び機関回転が開始された場合に、その振動によって前記デフォルト位置から乖離しないように保持するという意味をもつ。
【0129】
次にステップ16では、前記膨張行程の気筒に燃料噴射と点火制御を行って自立燃焼始動を開始する(初回自立燃焼)。このときの吸気弁04と排気弁05の開閉時期は、前述のように自立燃焼に適したものになっている。
【0130】
ステップ17で機関回転Nが立ち上がったことを確認すると、ステップ18では後続行程の気筒に順次燃料噴射と点火制御を行う。
【0131】
その後、ステップ19では、クランク角センサ010によって現在の機関回転数Nを検出して、ステップ20に進む。
【0132】
このステップ20では、機関回転数Nがアイドル回転N0まで上昇したか否かを判断して、上昇していないと判断した場合はステップ18に戻るが、上昇したと判断した場合は、始動フェーズは終了したと判断してステップ21に移行する。
【0133】
ステップ21では、制御マップに基づいて、前記排気VEL1と吸気VTC3を制御すると共に、燃料噴射量や点火の制御を行う。
【0134】
一方、ステップ12において例えば冷機始動時であると判断された場合は、通常始動の制御に移行するが、この場合は、ステップ22でイグニッションスイッチをオン操作すると、ステップ23で、前記駆動モータ09に通電してクランキングが開始される。つまり、騒音面や始動時間の面で不利であるが、始動の確実性では有利な始動パターンが選択される。
【0135】
ステップ24では、自立燃焼始動と同様に、排気VEL1と吸気VTC3を介して排気弁05と吸気弁04の開閉時期を前記デフォルト位置(EO1、EC1、IO1、IC1)にそれぞれ変換する制御信号を出力する。
【0136】
なお、ここで、自立燃焼始動の必要性がないので、やや大きな排気VEL1の作動角D2(EO2、EC2)に変換する制御信号を出力してバルブオーバーラップを生成することによって排気エミッションを低減しても良い。
【0137】
次に、ステップ25では、点火順序に基づいて各気筒に順次燃焼噴射、点火による燃焼制御を行い、暖機を促進する。そして、ステップ26では水温センサによって機関温度Tを検出し、ステップ27で、前記機関温度Tが所定の暖機終了温度T0よりも高い(等しい)か否かを判断する。
【0138】
ここで、低いと判断した場合は、ステップ25に移行して前記デフォルト位置の状態で繰り返し各気筒に燃料噴射、点火を行うが、高いと判断した場合は、前記ステップ21に移行して制御マップによる通常制御を行う。
【0139】
以上のように、本実施形態では、自立燃焼始動時における筒内コンプレッションを吸気弁04のIVCの位置によらずに、制御可能なピストン03の制御位置によって決定できるので、筒内コンプレッションのばらつきを抑制でき、常時安定的な初期クランキングの立ち上がりを得ることができる。
【0140】
なお、ここで、純粋な自立燃焼始動ではなく、駆動モータ09を併用しても良い。このようにすれば、始動の確実性がさらにアップする。
【0141】
また、吸気VTC3によって吸気弁04の閉時期の変換角を過度に大きくする必要がなくなるので、前記吸気VTC3の負荷を軽減することが可能になり、これによって、作動応答性の低下などを抑制することができる。
【0142】
さらに、たとえ吸気VTC3の電気系統の故障などが発生した場合であっても、IVCは機械的に第1位置に保持されるので、始動初期のクランキングの立ち上がり性が良好になり、安定した始動性を確保できる。
【0143】
なお、本実施形態では、アイドリングストップ車に適用したが、走行モードによって駆動源を電動モータと内燃機関に切り換えるいわゆるハイブリッド車の始動時に適用することも可能である。この場合は、前述の駆動モータ09に代えて、ハイブリッド車の電動モータを用いれば良い。
【0144】
また、前述のIVC,EVOなどのバルブタイミングは、まさしくリフト終了乃至開始のタイミングとしているが、微小リフトのランプ区間を除いたリフト終了乃至開始のタイミングとしてもよい。後者の場合は、気体の実質的な流動を考慮した実質的な開閉タイミングと対応しているので、発明の実質的な効果が大きい。
〔第2実施形態〕
図12は第2実施形態における各吸気弁4と各排気弁5のそれぞれの開閉時期と、機関停止時のピストン03の位置を示し、#1気筒が圧縮行程、#2気筒が膨張行程とした例を示している。なお、サイクル順序は第1実施形態と同じである。
【0145】
そして、機構的には、第1実施形態に排気側に装着されていたVEL1が吸気側に装着され、吸気VELでのデフォルト位置は、第1実施形態と同じく最小作動角D1であり、吸気弁04の開閉時期はIO1、IC1になっている。また、機械的に制御される最大作動角はD4であって、IO4、IC4になっている。
【0146】
また、吸気側に装着されていた吸気VTC3が無くなり、排気側に排気VTC2が装着される。第1実施形態の吸気VTCとは異なり、本実施形態では排気VTC2は、前述のように最遅角側がデフォルト位置になっている。つまり、第1実施形態では最進角側がデフォルト位置になっているが、本実施形態の排気VTC2は、最遅角側がデフォルト位置になっている。つまり、本実施形態では、第1実施形態の図7におけるバイアススプリング55,56がベーン部材32を最進角ではなく最遅角側に押し付けるように構成されている。したがって、排気弁05の開閉時期のデフォルト位置は最遅角側でEO1、EC1になっている。
【0147】
この第2実施形態では、第1実施形態のように自立燃焼始動ではなく、駆動モータ09による通常始動に用いられており、図12に示すように、第1実施形態と同様のピストン03の停止位置になっている。つまり、圧縮行程にある気筒のピストン03の停止位置が下死点後θpであるが、これに対して、デフォルトIC1(第1位置)は十分に進角側にあり、圧縮行程のピストン03のコンプレッションは第1実施形態と同様に、吸気弁04の閉時期(IVC)の影響を受けずにθpのみで決定されるので、駆動モータ09でクランキングした際に、安定的な回転上昇効果が得られる。
【0148】
第2実施形態では、さらにIVCが下死点より進角しているので、次のような効果が得られる。
【0149】
すなわち、後続気筒のピストン03が排気上死点を越えて、吸気行程に移行した際に、IO1からIC1の間で新気を吸入するが、IC1が下死点より進角している。これによって、いわゆるIVCの早閉じのデコンプ効果によって有効圧縮比と吸気充填効率をやや低下させて、静粛な燃焼と適度な燃焼トルクを得ることができる。また作動角が小さいので、動弁フリクションも低く、安定的な初期クランキングの立ち上がりに続いて、前述の後続気筒でのデコンプ効果による低騒音でスムーズな回転上昇を得ることができる。
【0150】
また、吸気VELによる機械的な最遅角IVCでもあるIC4もθpより進角しているので、吸気VELが誤作動しても、初回圧縮吸気筒のコンプレッションは吸気弁04のIVCの影響を受けずに、θpのみで決まる。したがって、良好な初期回転の立ち上がりが得られる。
【0151】
さらに、排気VTC2によるデフォルトEO1(第3位置)が遅角側の位置にあるので、回転数が低い始動燃焼時に、燃焼圧が早めに抜けるのを抑制し、自立燃焼始動でない通常の始動の場合においても、機関トルクの落ち込みを抑制することができる。
【0152】
なお、この実施形態では、吸気側にVELのみを装着した例を示したが、最進角デフォルトのVTCを並設することも可能である。この場合、IC1をより進角することができ、前述の吸気弁の早閉じによるデコンプ効果を一層高めることができる。
【0153】
一方、始動以外の大作動角領域では、VTCを遅角制御することによって、吸気弁04のIVOの変化(バルブオーバーラップの変化)を抑制し、筒内残留ガス量を安定化することも可能である。
【0154】
本発明は、前記各実施形態の構成などに限定されるものではなく、本願発明の主旨から逸脱しない範囲でどのようなものにも適用可能である。
【0155】
また、適用される内燃機関については、4気筒(気筒間隔180°)のものを示し、つまり、図9、図12においてθp’=θpに示す通りである。
【0156】
しかしながら、気筒数はこれ以外にも適用でき、例えば、気筒間隔120°の6気筒であれば、θp’=θp−60°、気筒間隔120°の3気筒であればθp’=θp+60°になるだけである。つまり、例えば、θpと吸気弁04のIVCとの関して考えれば同じことになる。
【0157】
前記実施形態から把握される前記請求項以外の発明の技術的思想について以下に説明する。
〔請求項a〕請求項1または2に記載の内燃機関の可変動弁装置において、
前記吸気弁の閉時期の第1位置を、前記可変機構によって、圧縮行程気筒の前記ピストンの停止位置の制御範囲内で最も進角した位置よりもさらに進角側の位置に制御したことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
【0158】
この発明によれば、ピストンの停止位置の制御範囲内において、コンプレッションは吸気弁閉時期の影響を受けず、安定的な初期クランキングの回転立ち上がりを得ることができる。
〔請求項b〕請求項1〜aのいずれか1項に記載の内燃機関の可変動弁装置において、
前記吸気弁閉時期の第1位置を、ピストン下死点付近としたことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
【0159】
この発明によれば、吸気充填効率を十分に高めることができることにより、燃焼トルクを増大させることができるので、安定的な初期クランキングの回転立ち上がりに続いて後続気筒でのトルク増大により機関回転が速やかに立ち上がる。これによって、さらに始動時間の短縮化が図れる。
〔請求項c〕請求項1〜aのいずれか1項に記載の内燃機関の可変動弁装置において、
前記吸気弁閉時期の第1位置をピストン下死点よりも進角側の位置に制御したことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
【0160】
この発明によれば、いわゆる吸気弁閉時期IVCの早閉じによるデコンプ効果によって、有効圧縮比と吸気充填効率をやや低下させて、静粛な燃焼と適度な燃焼トルクを得ることができる。この結果、安定的な初期クランキング回転の立ち上がりに続く、後続気筒での騒音の低減化とスムーズな回転上昇を得ることができる。
〔請求項d〕請求項1〜cのいずれか1項に記載の内燃機関の可変動弁装置において、
前記可変機構は、排気弁の開時期をも可変制御できると共に、機関停止時に、前記排気弁の開時期を遅角側の第3位置に保持制御したことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
【0161】
この発明によれば、回転数の低い始動燃焼時に、燃焼圧が排気弁開作動によって開放される時期を遅延させることによって、機関トルクの落ち込みを抑制することが可能になる。
〔請求項e〕請求項dに記載の内燃機関の可変動弁装置において、
前記可変機構による前記排気弁の開時期の機械的な最進角位置が、機関停止時における膨張行程の気筒におけるピストンの停止位置よりも所定量だけ遅角側の第4位置にしたことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
【0162】
この発明によれば、可変機構が誤作動して排気弁の開時期が最遅角側になった場合であっても、回転数の低い始動燃焼時に、燃焼圧が排気弁の開作動により開放されるまでの期間をある程度確保でき、機関トルクは落ち込むものの最低限の機関トルクは確保できるので、最低限の始動性は確保できる。
【符号の説明】
【0163】
03…ピストン
09…駆動モータ(クランク位置制御機構)
07…クランクシャフト
1…排気VEL
2…排気VTC
3…吸気VTC
4…吸気弁
5…排気弁
6…駆動軸
20…電動モータ
22…電子コントローラ
30…コイルスプリング
31・61…タイミングスプロケット
32…ベーン部材
41…進角側油圧室
42…遅角側油圧室
55,56…コイルスプリング
59…吸気カムシャフト
IO1…吸気弁開時期
IC1…吸気弁閉時期(第1位置)
IC4…吸気弁閉時期(第2位置)
EO1…排気弁開時期(第3位置)
EC1…排気弁閉時期
EO4…排気弁開時期(第4位置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関停止時にピストンの停止位置を制御可能なクランク位置制御機構と、少なくとも吸気弁の閉時期を可変制御可能な可変機構とを備え、
機関停止時に、前記可変機構によって前記吸気弁の閉時期を、前記クランク位置制御機構によって停止制御された圧縮行程の気筒の前記ピストンの停止位置よりもさらに進角側の第1位置に制御したことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の可変動弁装置において、
前記可変機構による前記吸気弁の閉時期の最遅角位置を、前記圧縮行程の気筒における前記ピストンの停止位置よりも進角側の第2位置に制御したことを特徴とする内燃機関の可変動弁装置。
【請求項3】
機関停止時にクランクシャフトを介してピストンの停止位置を制御可能なクランク位置制御機構と、少なくとも吸気弁の閉時期を制御可能な可変機構とを備えた内燃機関の始動制御装置であって、
機関停止時に、前記可変機構によって、前記吸気弁の閉時期を所定の位置に制御すると共に、前記クランク位置制御機構によって停止制御された圧縮行程の気筒のピストン停止位置を、前記吸気弁閉時期の所定位置よりも遅角側の位置に制御することを特徴とする内燃機関の始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−251483(P2012−251483A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124771(P2011−124771)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】