内燃機関の排気浄化装置及び排気浄化方法
【課題】主にリーン条件で燃焼する内燃機関の排気ガスに含まれる窒素酸化物を低温始動時においても高効率で浄化することができる排気浄化技術を提供する
【解決手段】内燃機関1から排出される排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性と周期的に変化させ含まれる窒素酸化物を除去する排気浄化装置9において、前記排気ガスを大気側に導く排気流路11に水素及び一酸化炭素が含まれる改質ガスを導入する改質手段18と、前記水素を消費して還元する酸化銀を少なくとも含み前記窒素酸化物を吸着し温度上昇とともに前記吸着した窒素酸化物を脱離する吸着手段30と、前記一酸化炭素を消費して前記窒素酸化物を還元させ前記排気ガスを浄化する浄化手段17とを、備える。
【解決手段】内燃機関1から排出される排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性と周期的に変化させ含まれる窒素酸化物を除去する排気浄化装置9において、前記排気ガスを大気側に導く排気流路11に水素及び一酸化炭素が含まれる改質ガスを導入する改質手段18と、前記水素を消費して還元する酸化銀を少なくとも含み前記窒素酸化物を吸着し温度上昇とともに前記吸着した窒素酸化物を脱離する吸着手段30と、前記一酸化炭素を消費して前記窒素酸化物を還元させ前記排気ガスを浄化する浄化手段17とを、備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にリーン条件で燃焼する内燃機関が大気中に排出する排気ガスを浄化する技術に関し、特にこの排気ガス中の窒素酸化物を除去する内燃機関の排気浄化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の観点から、発電機や自動車などの内燃機関の排気ガス中に存在している窒素酸化物(NOx)の排出量を規制する動きが世界的に広まっている。
この窒素酸化物は、酸性雨や光化学スモッグの原因となる有害成分であり、内燃室がリーン条件で燃焼するディーゼルエンジンやリーンバーンエンジンなどの内燃機関の排気ガス中に多く含まれている。
このため、そのような有害成分である窒素酸化物を排気ガス中から除去し、大気に排出される窒素酸化物(NOx)の排出量削減に貢献する排気浄化技術の確立が急務となっている。
【0003】
なお、ここでリーン条件とは、空気と燃料との混合気体が過不足なく燃焼反応する理論比14.7(ストイキ)に対し、この燃料の濃度が希薄となるように混合気体が調節されて内燃機関に供給される場合を指す。逆に、燃料の濃度が濃厚となるように調節されている場合をリッチ条件という。
【0004】
排気ガス中の窒素酸化物を除去する排気浄化は、この窒素酸化物を還元反応させることにより行われる。しかし、排気ガス中は、酸素分圧が高く、そのような還元反応を起すことが困難な問題があり、従来からその解決のための様々な方法が検討されている。
例えば、まず排気ガスを、窒素酸化物が吸蔵・吸着する触媒に通過させ、含まれる窒素酸化物を一時的に吸収・吸着させる。
その後、一時的に供給する混合気体をリッチ条件にし、排気ガス中の酸素分圧を引き下げて吸収・吸着された窒素酸化物を還元するといった技術が公知であり、この技術を応用した様々な従来例が提案されている。
【0005】
第1の従来例は、カリウム・バリウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属等と白金等を組み合わせてなる触媒を用いる技術である。この技術によれば、燃焼条件を周期的にリーン/リッチ条件として繰り返すことにより、排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性に切り替え、触媒で窒素酸化物を吸収/還元させ排気ガスの浄化を図ることになる(例えば、非特許文献1、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
第2の従来例は、セリア、白金、固体酸等を組み合わせてなる触媒を用いる技術である。この技術によれば、前記と同様に燃焼条件が周期的にリーン/リッチ条件として繰り返される。そして、排気ガスが還元性雰囲気になると一酸化炭素と水とが反応して水素を生成し、この水素が窒素酸化物に反応してアンモニアを生成する。次に排気ガスが酸化性雰囲気に切り替わると、このアンモニアと窒素酸化物とが反応して窒素ガスと水に変化して排気ガスの浄化が図られることになる(非特許文献2、特許文献3)。
【0007】
第3の従来例は、前記第1の従来例をベースとして、水素富化手段を排気流路内に触媒の配置位置よりも上流側へ設ける。そして、この水素富化手段で水素含有気体を合成し下流に送出し、触媒により窒素酸化物を還元して排気ガスの浄化が図られる(特許文献4)。
この技術は、窒素酸化物を還元する還元剤として別個に製造された水素を採用する方式であって、前記第1、第2の従来例のように燃焼時の副生成物である一酸化炭素及び炭化水素を利用する方式と相異する。
【0008】
一方で第4の従来技術として、リーン条件で燃焼し生成した窒素酸化物を、低温で還元する技術が存在する。これは金属活性種にパラジウムを用い、酸化物担体にバナジア、チタニア、アルミナを用いる方式(非特許文献3)、また金属活性種に白金を用い、酸化物担体にジルコニアを用いる方式(非特許文献4)が採用されている。
いずれの方式も還元剤として水素を用い、窒素酸化物を低温から効率的に還元し排気ガスを浄化する技術である(非特許文献3、非特許文献4)。
【特許文献1】特許第2586738号公報
【特許文献2】特許第2600492号公報
【特許文献3】国際公開番号W02005/044426
【特許文献4】特許第3642273号公報
【非特許文献1】「NOX吸蔵還元型三元触媒システムの開発」自動車技術会論文集Vol.26,NO.4,0ctober 1995
【非特許文献2】"A NOX Reduction System Using Ammonia Storage-Selective Catalytic Reduction in Rich and Lean Poerations",15.Aachener Kolloquium Fahrzeug-und Motorentechnik 2006 p.259-270
【非特許文献3】"Selective catalytic reaction of nitric oxide with hydrogen over Pd-based catalysts",G.Qi et al,Journal of Catalysis 237(2006)p.381-392
【非特許文献4】"improvements in the N2 selectivity of Pt catalysts in the NO-H2-O2 reaction at low temperature",T.Nanba et al,Applied Catalysis B:Environmental 46 (2003)p.353-364
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、触媒が窒素酸化物を効率的に処理して排気ガスを浄化する温度は約200℃以上と高く、それよりも低温では排気ガスが十分に浄化されない。このために前記した第1,第2,第3の従来技術においては、内燃機関の低温始動時において、窒素酸化物を処理できず排気ガスを浄化することができない問題がある。
【0010】
そして、第4の従来技術では、確かに約80℃の低温において窒素酸化物が還元され排気ガスの浄化を開始する。しかし、排気ガス中の酸素濃度が5%以下で一酸化炭素が共存していないことが必要条件であり、この条件から外れる場合は、浄化性能が急激に低下する問題がある。リーン条件で燃焼する実際の内燃機関の排気ガスは、酸素濃度が10%以上であって一酸化炭素も存在しており、排気浄化を期待するのは非現実的である。
【0011】
本発明は、前記した問題を解決することを課題とし、低温始動時においても排気ガスを高効率で浄化することができる内燃機関の排気浄化装置及び浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するために本発明は、内燃機関から排出される排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性と周期的に変化させ含まれる窒素酸化物を除去する排気浄化装置であって、前記排気ガスを大気側に導く排気流路に水素及び一酸化炭素が含まれる改質ガスを導入する改質手段と、前記水素を消費して還元される酸化銀を少なくとも含み前記窒素酸化物を吸着し、温度上昇とともに前記吸着した窒素酸化物を脱離する吸着手段と、前記一酸化炭素を消費して前記窒素酸化物を還元させ前記排気ガスを浄化する浄化手段とを、備えることを特徴とする。
【0013】
このように構成されることによって、浄化手段が動作できない低温始動時において、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段で一時的にトラップされる。そして、浄化手段が動作する高温状態になったところで吸着手段にトラップされていた窒素酸化物はリリースされて浄化手段で遅延的に処理されて無害な窒素ガスになって大気に放出される。
さらに、そのような高温状態が維持されている状態においては、吸着手段のトラップ機能は失われており、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段をスルーして浄化手段で直接処理され無害な窒素ガスになって大気に放出される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、低温から高温にわたる広い温度範囲で窒素酸化物を除去して排気ガスを高効率で浄化することができる内燃機関の排気浄化装置及び浄化方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の内燃機関の排気浄化装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の排気浄化装置を備えるディーゼルエンジン(内燃機関)の実施形態を示す概念図である。
この内燃機関1は、シリンダヘッド2と、ターボチャージャ4と、排出ガス循環流路(以下、「EGR」という)5と、吸気マニホールド6と、排気マニホールド7と、ECU(電子制御装置)8と、排気浄化装置9とを備えている。
なお、内燃機関としてディーゼルエンジンを例示しているが、本発明に係る排気浄化装置及び方法が適用される内燃機関がこれに限定されず、ガソリンエンジンに適用することもできる。
【0016】
シリンダヘッド2は、複数の燃焼室(図中4つ)を有している。
各燃焼室は、酸素含有気体(空気)が吸入される吸気マニホールド6を介して連結している。そして吸入された空気は、燃料室で上下動するシリンダにより圧縮され、燃料タンク(図示せず)に貯留された燃焼用の燃料(軽油)が、噴射弁(図示せず)を介して噴射される。
すると燃焼室で自然着火(圧縮着火)して燃焼が起こり、その燃焼圧力によってピストンが下方に駆動された後、再び上昇するときに、排気ガスが排気マニホールド7に排出され排気流路11を流通する。
【0017】
この内燃機関1の燃焼室における通常の燃焼は、空燃比(空気/燃料)が、理論比(ストイキ;14.7)よりも高いリーン条件で行われる。従って通常の燃焼後、排気流路11を流通する排気ガスは、酸素分圧の高い酸化性雰囲気になっている。
一方、内燃機関1においては、前記した通常の燃焼の行程を経た後に、ポスト噴射と呼ばれる噴射した燃料を燃焼させることなく排気流路11に流通させる工程を有する。この燃料の成分のほとんどはHC(炭化水素)であるために、未燃焼の燃料を多く含む排気ガスは、酸素分圧の低い還元性雰囲気になっている。
【0018】
このように、内燃機関1から排出される排気ガスの雰囲気は、酸化性/還元性が周期的に変化している。このように、排気ガスの雰囲気を周期的に変化させる方法は、いろいろな方式が提案されており、前記したポスト噴射の他に、燃焼室における燃焼条件をリーン条件/リッチ条件に周期的に変化させる方法も採用されている。
【0019】
ターボチャージャ4は、排気マニホールド7から排出される排気ガスによってタービン4bが回転し、その回転に同期してコンプレッサ4aが駆動し、吸気流路10の上流端から空気を吸入し過給する。このようにして過給された空気は、断熱圧縮して高温なためインタークーラ12で冷却してから吸気マニホールド6に供給される。
EGR5は、EGRクーラ13及びEGRバルブ14の動作に基づいて、排気マニホールド7から排気ガスの一部を吸気マニホールド6に還流して、燃焼温度を下げて窒素酸化物の生成を抑制する。
ECU8は、内燃機関1の構成要素の動作を制御するものであって、内燃機関1の負荷状況に応じて最適な燃焼状態が得られるように制御を行う。
【0020】
排気浄化装置9は、第1排気コンバータ15と、第2排気コンバータ16と、第3排気コンバータ30(吸着手段)と、第4排気コンバータ17(浄化手段)と、燃料改質器18(改質手段)とを有するものである。このうち第1、第2、第3、第4排気コンバータ15,16,30,17は、この順番で排気流路11の上流側から下流側に沿って配置され、燃料改質器18は排気流路11とは別個に独立して設けられている。
【0021】
第1排気コンバータ15は、触媒作用により、排気ガス中の一酸化炭素と炭化水素を燃焼させて窒素酸化物を還元するものであって、第4排気コンバータ17における排気ガスの浄化を補助する。
第2排気コンバータ16は、排気中の煤などの粒子状物質(PM)を捕捉するものである。捕捉された粒子状物質は徐々に堆積するが燃焼してクリーニングされる。
【0022】
<改質手段の説明>
燃料改質器18(改質手段)は、触媒として、白金、ロジウム、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、から選ばれる少なくとも1種類以上の金属成分と、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ゼオライト、から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物もしくは複合酸化物とを、含んで構成されている。
改質手段18は、上流側で、燃料供給バルブ19aを有する燃料供給路18aを介して燃料タンク(図示せず)に連結している。そして、燃料供給路18aは、圧力調整バルブ19bを介してコンプレッサ20に連結されている。
また、改質手段18は、下流側で、改質気体流路18bを介して第3排気コンバータ30(吸着手段)の上流に位置する排気流路11(11a)に連結されている。なお図1に示される改質手段18は、排気流路11とは別個に独立して設けられているが(適宜、図2(a)参照)、改質手段はそのような構成に限定されるものでなく、排気流路11の内部に設けられる場合もある(図2(b)参照)。
【0023】
このように構成される改質手段18は、燃料タンク(図示せず)から供給される燃料と、コンプレッサ20から供給される空気(酸素含有気体)とから、一酸化炭素及び水素を含む改質ガスを生成し排気流路11(11a)に導入する。
【0024】
改質ガスは、次に例示される3つの反応式(1)〜(3)により一般に得られる(後述する図6参照)。
6CnH1.8n+3nO2 →6nCO+5.4nH2 (1):部分酸化反応(POX)
6CnH1.8n+2nO2+2nH2O →6nCO+7.4nH2 (2):自己熱改質反応(ATR)
6CnH1.8n+6nH2O →6nCO+11.4nH2 (3):水蒸気改質反応(SR)
*上記式には水性ガスシフト反応は含まない。
*燃料は軽油(C:H=1.8)を使用している。
【0025】
ところで、本実施形態で適用される改質ガスは、反応式(1)で示される炭化水素の部分酸化反応により生成されることが好ましく、その理由は次の通りである。
つまり、水素を高効率で生成させるためには、反応式(2)(3)に示されるように、水を原料に用いて反応させるとよいが、そのような反応は吸熱反応であり、反応を促進させるのに加熱手段が必要になる。
そうすると、改質手段18の起動時に多くの熱量を必要とし、排気浄化装置9の低温始動時の起動の長時間化、さらに水供給手段を必要とし、排気浄化装置9の大型化・高コスト化を招く。
【0026】
反応式(1)により得られる改質ガスは、改質反応に水分が関与せず、排気浄化装置9の小型化・低コスト化に貢献し、低温始動時において改質ガスの迅速な生成(起動の短縮化)が可能となる効果を有する。さらに、反応式(1)により得られる改質ガスは、水素よりも一酸化炭素を多く含む水素含有ガスであり、後記する第4排気コンバータ17(浄化手段)における反応効率を向上させる観点からも好ましい。
【0027】
改質手段18は、燃料供給バルブ19a、コンプレッサ20及び圧力調整バルブ19bを適宜調節して、排気ガス中の水素濃度が0.01容量%〜4容量%の範囲に含まれるように、改質ガスを排気流路11に導入することが望ましい。
【0028】
水素の比率が0.01容量%未満では、水素が少ないために後記する酸化銀から金属銀への反応(反応式(4))が不十分となり、吸着手段30における窒素酸化物の吸着率が150℃において数%と低レベルに留まる。
水素の比率が0.01容量%以上である事により酸化銀から金属銀に変化する割合が増加し、それに伴い吸着手段30における窒素酸化物の吸着率が飛躍的に向上し、0.5容量%では150℃において吸着率は90%程度と高レベルになる(後述する図9(b)参照)。
【0029】
一方、水素濃度が4容量%を超えると、約200℃から水素と酸素の燃焼反応量が増大し、燃焼熱を触媒に与えて触媒温度を上昇させ、窒素酸化物の脱離を促進させる結果、窒素酸化物吸着能は必ずしも比例的に増加しない。そのため、窒素酸化物吸着能は水素濃度を増加しても飽和した状態となってしまう。また、水素濃度が4容量%を超えると爆発限界領域に入る。よって、4容量%を超える水素の添加は効果的な吸着量向上が望めないばかりか、経済性、コスト面においても不利となり好ましくない。
【0030】
また改質ガスは、排気流路11の温度よりも高温にしてから排気ガスに混合させることが望ましい。これによって、吸着手段30、及び浄化手段17における触媒温度の上昇を助け、吸着開始時間及び浄化開始時間を短縮させることが可能となる。
【0031】
改質手段18は、燃料供給バルブ19a、コンプレッサ20及び圧力調整バルブ19bを適宜調節して、排気ガス中の酸素濃度が0.2容量%〜21容量%の範囲に含まれるように、改質ガスを排気流路11に導入することが望ましい(後述する図10(b)参照)。
これにより、後段の第3排気コンバータ30(吸着手段)において高効率な窒素酸化物の吸着が可能となる。
【0032】
排気ガス中の酸素濃度が0.2容量%未満では150℃において窒素酸化物の吸着率が数%の留まり、吸着手段30の性能が充分に発揮されず好ましくない。
これは、後記する反応式(5)(6)に示される通り、吸着手段は窒素酸化物を吸着するにあたり排気ガス中の酸素を必要とし、0.2容量%未満の酸素濃度では窒素酸化物を充分にNO3の状態にできないためである。
排気ガス中の酸素濃度を増加させる事により排気ガス中の窒素酸化物をNO3へ変化させることが容易となり、10容量%であると150℃での吸着率は90%程度の高レベルになる。
【0033】
しかし、酸素濃度が増加し過ぎると約150℃以上で水素と燃焼反応して吸着手段30の温度を上昇させ、後記する反応式(7)(8)に示すように窒素酸化物の脱離を促進させてしまう。よって、酸素濃度が増えすぎると窒素酸化物の吸着量は若干の減少傾向をとる。しかし、排気ガスの酸素濃度は通常空気中の酸素濃度である21容量%を超えることはなく、それ以上に酸素濃度を増加させることは別途酸素導入装置の導入が必要となりコスト的にも不利となり好ましくない。
【0034】
<吸着手段の説明>
吸着手段30は、触媒として少なくとも酸化銀の粒子を含み、さらにアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ゼオライトの中から選ばれる1種類以上の酸化物成分を含んで構成される。
【0035】
このように構成されることにより吸着手段30は、100℃程度の低温状態で、排気ガスに混合している改質ガス中の水素を消費して酸化銀を還元し、この排気ガスに含まれる窒素酸化物を吸着する。そして、この吸着手段30は、この低温状態から温度上昇して高温状態に到達するとともに吸着している窒素酸化物を脱離させる。
【0036】
ここで、吸着手段30に配合される試薬の種類及びその分量は、前記した例に限定されるものではないが、担持される触媒中の銀の含有率が0.1〜10重量%の範囲となるように配合されることが好ましい(後述する図8(c)参照)。
銀の含有率が0.1重量%未満では、窒素酸化物の吸着点が不足することによりその吸着性能が充分に発揮されず、150℃において数%程度といった低レベルの吸着率に留まる。
銀の含有率が0.1重量%以上である事により排気ガスと接触する銀粒子上の吸着点が増加し窒素酸化物の吸着性能が飛躍的に向上し、4重量%では150℃において吸着率は90%程度の高レベルとなる。
銀の含有率が10重量%を超えると、銀粒子同士が結合して吸着点となる表面積の増加が限界に達し、窒素酸化物の吸着量は銀担持量の増加に対し頭打ち状態になる。よって必要量以上に銀を添加しても窒素酸化物の吸着量を向上させることは望めなく、経済性・コスト面の観点において好ましくない。
【0037】
<吸着手段における窒素酸化物の吸着メカニズム>
吸着手段30における反応は、例示される下記の反応式(4)〜(8)に従って進行する。
AgO+H2→Ag(*)+H2O (4)
NO+O2+Ag(*)→NO3(ad)+Ag(*) (5)
2NO2+O2+Ag(*)→2NO3(ad)+Ag(*) (6)
2Ag(*)+O2→2AgO (7)
2NO3(ad)+Ag(*)→2NO2+O2+AgO (8)
*AgO:酸化銀、Ag(*):金属銀
*(ad)は吸着手段への吸着を示す
【0038】
すなわち、吸着手段30に含まれる銀粒子は、酸化性雰囲気において酸化物(酸化銀)の状態であり、通常は窒素酸化物に対し不活性であり吸着能力はない。しかし、排気ガスに水素(改質ガス)が導入されて還元性雰囲気に切り替わると、酸化銀はこの水素を消費して還元され金属銀に変化する(反応式(4))。
【0039】
還元された金属銀は、酸化銀の状態と比較して窒素酸化物を吸着する能力が飛躍的に向上する。そして、吸着手段30の温度が約100℃になると、窒素酸化物は、酸化しながらこの吸着手段に吸着する。この場合の窒素酸化物は、一酸化窒素及び二酸化窒素のいずれの形態も指す(反応式(5)(6))。
【0040】
吸着手段30の温度が約200℃以上になると、水素は酸素と直接反応して燃焼して消費されてしまうため、金属銀は酸化されて再び酸化銀の状態に戻る(反応式(7))。これにより窒素酸化物を吸着する能力が低下し、すでに吸着されている窒素酸化物は主に二酸化窒素として脱離し始める(反応式(8))。吸着手段の温度の上昇とともに脱離する二酸化窒素の排出量は増加し、約300℃に到達するまでこの二酸化窒素の排出は続くことになる。
【0041】
つまり吸着手段30は、第4排気コンバータ17(浄化手段)が動作できない低温状態において、排気ガス中の窒素酸化物を一時的にトラップして大気に排出されないようにする。そして、第4排気コンバータ17が動作する高温状態になったところで吸着手段30にトラップされていた窒素酸化物はリリースされて第4排気コンバータ17で遅延的に処理されて無害な窒素ガスになって大気に放出される。さらに、そのような高温状態が維持されている状態においては、吸着手段30のトラップ機能は失われており、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段30をスルーして第4排気コンバータ17で直接処理される。
そして、排気ガスに混合している改質ガス中の水素は前記したように吸着手段30を通過する際に消費されてしまうが、一酸化炭素は吸着手段30をスルーして第4排気コンバータ17に到達する。
【0042】
<浄化手段の説明>
第4排気コンバータ17(浄化手段)は、(a)をセリアとして、(b)を酸化プラセオジムとして、(c)をセリウム、ジルコニウム、プラセオジム、ネオジム、テルビウム、サマリウム、ガドリニウム及びランタンから選ばれる少なくとも2つの元素の酸化物として、(a)(b)(c)の混合物及び/又は複合酸化物を含む触媒成分Aと、白金、ロジウム、パラジウム及びこれらの酸化物から選ばれる少なくとも1種からなる貴金属触媒成分を含む触媒成分Bと、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を担待させた固体酸を含む触媒成分Cとを、構成に有している。
【0043】
さらに第4排気コンバータ17(浄化手段)は、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)の中から選ばれる1種類以上を含むことが好ましく、これにより窒素酸化物を高効率に除去することが可能となる。
【0044】
このように構成される第4排気コンバータ17(浄化手段)は、上流から流通してくる一酸化炭素を消費して窒素酸化物を還元させ排気ガスを浄化する。
この浄化手段17は、前記したように内燃機関から排出される排気ガスが、酸化性/還元性と雰囲気を周期的に変化させるのに対応して、例示される下記の反応式(9)〜(16)に従って窒素酸化物を還元させ排気ガスを浄化する。
【0045】
NO→NO(ad) (9)
2NO+O2→2NO2(ad) (10)
NO2→NO2(ad) (11)
CO+H2O→H2+CO2 (12)
5H2+2NO(ad)→2NH3(ad)+2H2O (13)
4NH3+4NO+O2→4N2+6H2O (14)(反応性小)
2NH3+NO2+NO→2N2+3H20 (15)(反応性大)
8NH3+6NO2→7N2+12H20 (16)
※反応式(9)〜(11)、(14)〜(16);酸化性雰囲気(酸素分圧大)
※反応式(12)(13);還元性雰囲気(酸素分圧小)
【0046】
すなわち、排気ガスが酸化性雰囲気である場合、窒素酸化物は触媒反応により浄化手段17に吸着したり、さらに酸化してNO2の形態で吸着したりする(反応式(9)〜(11))。
次に排気ガスが還元性雰囲気に切り替わると一酸化炭素と水とが反応し、水素を生成する(反応式(12);水性ガスシフト)。さらに生成した水素と吸着している窒素酸化物とが反応し、アンモニアが生成し浄化手段に吸着する(反応式(13))。
そして排気ガスが酸化性雰囲気に再び切り替わると、吸着していたアンモニアと排ガス中の窒素酸化物とが反応し、この窒素酸化物が高効率に還元されて無害な窒素ガスに変化し、排気ガスが浄化される(反応式(14)〜(16))。
【0047】
ところで、吸着手段30から脱離する窒素酸化物の多くは二酸化窒素であるため(反応式(8)参照)、前記した反応式(14)よりも前記した反応式(15)(16)が主に進行するようになり、浄化手段17による窒素酸化物の処理性能が向上する。
さらに、改質手段18からの改質ガスに含まれる一酸化炭素は、吸着手段30をスルーして浄化手段17に導入されるので、反応式(12)が促進され、浄化手段17における窒素酸化物の処理性能が向上する。
【0048】
ところで、浄化手段17における前記した触媒反応(反応式(9)〜(16))を進行させるには、触媒が活性化する温度まで温度上昇している必要がある。よって、内燃機関1が低温始動した直後から温度上昇している途中の一定の期間は、浄化手段17が機能しないわけであるが、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段30で一時的にトラップされるので浄化手段17には到達しない。
そして浄化手段17が動作する高温状態になったところで吸着手段30にトラップされていた窒素酸化物はリリースされて浄化手段17に遅延して到達し処理され無害な窒素ガスになる。
さらに、そのような高温状態が維持されている状態においては、吸着手段のトラップ機能は失われており、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段をスルーして浄化手段で直接処理され無害な窒素ガスになる。
このようにして、内燃機関1が低温始動する直後から継続的に窒素酸化物を高効率で除去して排気ガスを浄化することが可能となる。
【0049】
<吸着手段及び浄化手段を複合化させた実施形態>
吸着手段を第3排気コンバータ30に担持させ、その下流に浄化手段を担持させた第4排気コンバータ17を配置した構成(図1、図2(a)(b)参照)は例示であって、本発明はそのような構成に限定されるものではない。
図2(c)に示されるように、共通のコンバータ31において、吸着手段30及び浄化手段17が互いに積層して保持材33に担持される構成も取り得る。
また、吸着手段30及び浄化手段17が保持材33に積層する順番は任意で、またそれぞれの界面に他の部材が設けられている場合もある。
もしくは、そのような積層構造を有するのでなく、図2(d)に示されるように、共通のコンバータ32において、吸着手段30及び浄化手段17が互いの粒子が分散した状態で混合して保持材33に担持される構成も取り得る。
【実施例】
【0050】
<改質手段を構成する触媒の調製方法>
次に改質手段18を構成する触媒の調製方法の実施例を示す(実施例A)。
a)CeO2(ニッキ社製酸化セリウムC)125g、5%硝酸ロジウム溶液(小島化学薬品株式会社製特級)25gにイオン交換水を加え、ロータリーエバポレーターにて余分な水分を取り除き、乾燥炉にて200℃で2時間、マッフル炉にて600℃で2時間焼成し粉末を得る。
b)上記粉末45g、アルミナバインダー(Al2O3濃度20%;日産化学工業株式会社製)25g、イオン交換水を加えスラリーを得る。
c)このスラリーに、φ50mm×L35mm(67cc),400セル/inch2,仕切壁厚3.5mil(3.5×10−3inch)のコージエライト製ハニカム支持体を浸漬する。次に、このハニカム支持体を、スラリーから取り出しエア噴射して過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。
そして、このようにスラリー浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成する。
このようにして、改質手段18を構成する触媒として、ウオッシュコート量100g/L、1wt%Rh/CeO2触媒担持ハニカムが得られる。
【0051】
<吸着手段を構成する触媒の調製方法>
次に吸着手段30を構成する触媒の調製方法の実施例示す(実施例B)。
a)ベーマイト(SASOL社製PURAL SB)125.3g、硝酸銀(小島化学薬品株式会社製特級)6.28gにイオン交換水を加えロータリーエバポレーターにて余分な水分を取り除き、乾燥炉にて200℃で2時間、マッフル炉にて600℃で2時間焼成し粉末を得る。
b)上記粉末45g、アルミナバインダー(A1203濃度20%;日産化学工業株式会社製)25g、イオン交換水を加えスラリーを得た。
c)このスラリーにφ25.4mm×L60mm(30cc),400セル/inch2,仕切壁厚3.5mil(3.5×10−3inch)のコージエライト製ハニカム支持体を浸漬する。次に、このハニカム支持体をスラリーから取り出しエア噴射して過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。
そして、このようにスラリー浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成する。
このように吸着手段30として、ウオッシュコート量300g/L、銀の含有率4重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、4Ag/Al203(べーマイト)が得られる。
【0052】
次に前記した吸着手段の触媒の調製方法において、ベーマイト及び硝酸銀の配合量を変更し、他の条件は同一にして、銀の含有率を可変させた銀アルミナ触媒担持ハニカム(実施例C〜実施例H)を作製した。
ベーマイトを130.41g、硝酸銀を0.157gにし、銀担持率0.1重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、0.1Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例C)。
ベーマイトを129.89g、硝酸銀を0.78gにし、銀担持率0.5重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、0.5Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例D)。
ベーマイトを129.24g、硝酸銀を1.57gにし、銀担持率1重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、1Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例E)。
ベーマイトを127.93g、硝酸銀を3.14gにし、銀担持率2重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、2Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例F)。
ベーマイトを122.72g、硝酸銀を9.42gにし、銀担持率6重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、6Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例G)。
ベーマイトを117.49g、硝酸銀を15.7gにし、銀担持率10重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、10Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例H)。
【0053】
<浄化手段を構成する浄化触媒の調製方法>
次に浄化手段17を構成する触媒の調製方法の実施例を示す(実施例I)。
a)酸化セリウム38.8g、セリウムとプラセオジムとランタンの複合酸化物38.8g、アルミナ19.4g、ジニトロジアンミンPt溶液(Pt:5wt%)58.2gにイオン交換水を加え、ロータリーエバポレーターにて余分な水分を取り除き、乾燥炉にて200℃で2時間、マッフル炉にて450℃で2時間焼成し粉末を得る。
b)上記粉末50gにイオン交換水を加えスラリーAを得る。
c)このスラリーAに、φ25.4mm×L60mm(30cc)、400セル/inch2,仕切壁厚3.5milのコージエライト製ハニカム支持棒を浸漬する。次に、このハニカム支持棒をスラリーから取り出してエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。
そしてこのようにスラリーAに浸漬して加熱する操作を、所定量(150g)がハニカム支持棒に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成して浄化触媒C’を得る。
d)Fe、Ceイオン交換βゼオライト41g、アルミナバインダー26.7g(A1203濃度20%)、イオン交換水を加え、スラリーBを得る。
e)このスラリーBに浄化触媒C’を浸漬し、取り出してエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。
そしてこのようにスラリーBに浸漬して加熱する操作を、所定量(150g)が浄化触媒C’に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成して浄化触媒Cを得る。図5に実施例Iに係る浄化手段を構成する触媒組成を示す。
【0054】
次に浄化手段17を構成する触媒の調製方法の他の実施例を示す(実施例J)。
a)アルミナ粉末45g、アルミナバインダー(日産化学工業株式会社製)25g(Al203濃度20%)、イオン交換水150g、をポリエチレン製容器(250ml)に入れ湿式粉砕を14時間行いスラリーを得る。
このスラリーにφ25.4mm×L60mm(30cc)、400セル/inch2、3.5milのコージエライト製ハニカム支持体を浸漬する。次に、そのハニカム支持体をスラリーから取り出しエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。そしてこのようにスラリーに浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成し、200g/Lのアルミナをコーティングした。
【0055】
b)続いて硝酸セリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、チタニアゾルをセリウム:ナトリウム:カリウム:チタン=6:3:3:4となる様混合してイオン交換水を加えスラリーを得る。
このスラリーにa)で調製したハニカム支持体を浸漬し、取り出してエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。このようにスラリーに浸漬して加熱する操作を、所定量がアルミナ担持ハニカムに担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で600℃で1時間焼成し、80g/Lをコーティングした。
【0056】
c)続いてジニトロジアミン白金硝酸溶液と硝酸ロジウム溶液とを白金:ロジウム=19:1になるように混合しさらにイオン交換水を加えて混合溶液を得る。この混合溶液にb)で調製したハニカム支持体を浸漬し、取り出してエア噴射により過刺分を除去し、200℃、で2時間加熱する。このようにスラリーに浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で450℃1時間焼成し、12g/Lをコーティングした。
【0057】
d)最後に硝酸マグネシウムにイオン交換水を加えたスラリーを得る。このスラリーにc)で調製したハニカム支持体を浸漬し、取り出してエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。このようにスラリーに浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、マッフル炉で450℃で1時間焼成し8g/Lをコーティングした。
【0058】
その結果、ウオッシュコート量は300g/L、2.7Mg-(3.8Pt・0.2Rh)-(10Ce・5Na・5K・6.7Ti)/Al2O3の触媒担持ハニカム得た。ここで元素記号前の数値はハニカム見掛け容積1Lあたりに担持した表示金属成分の重量(g)である。表示順序は担持順序を示しており、A1203に近く表記される成分から順番に積層され、()で括られている成分は共通の層に担持されている。
【0059】
<改質ガスの性能評価試験>
改質手段18の性能評価を図3に示す性能評価装置を用いて行った(反応式(1)〜(3)参照)。
前記した実施例Aで作製した触媒担持ハニカム(改質手段18)を性能評価装置に充填し、加熱器41によって350℃まで加熱した後にガス流量調節器42にて下記条件となるよう空気、窒素、水蒸気を調整し導入する。そして温度が安定してから、下記条件のように流量が調節された軽油を導入する。その後、触媒担持ハニカム(改質手段18)の上端の温度が900−1000℃になる様、加熱器41を調節し、温度が安定したところでガスクロマトグラフ43によって水素と一酸化炭素の濃度を測定する。
なお、ガスクロマトグラフ43はジーエルサイエンス社製のGC390Bを用い、カラムには、TCDにmolecular Sieve 5A、FIDにPorapak Q を用いた。
軽油にはUS認定軽油(Chevron Phmips製、C/H=1.81)を用い実施例、比較例共に同量(4.25g/min)を導入する。酸化剤の導入条件は以下の通りである。
【0060】
次のような条件で実施した性能評価試験の結果を図6に示す。
部分酸化反応(反応式(1)参照)については、モデルガスの組成を「空気:18.7L/min,O/C:1.05」とした。
自己熱改質反応(反応式(2)参照)について、比較例として、モデルガスの組成を「空気:16.0L/min,水蒸気:40.2g/min,O/C:0.9,S/C:0.95」とした。
水蒸気改質反応(反応式(3)参照)について、比較例として、モデルガスの組成を「水蒸気:126.8g/min,S/C:3.0,窒素:10L/min」とした。
【0061】
<排気ガスの浄化性能評価試験>
排気浄化装置9によって窒素酸化物が除去された排気ガスの浄化性能評価を図4に示す性能評価装置を用いて実施した。
ガス流量調節器44にて下記ガス条件を満たす様に混合させたモデルガスをフローする。このモデルガスは、加熱器41によって所定の温度に加熱される。温度は50℃より20℃/分にて450℃まで測定した。測定ガスは前記した触媒担持ハニカム(吸着手段30及び浄化手段17)を通ってガス分析計45に入り、各成分の濃度が測定される。ガス分析計45にて測定された窒素酸化物の濃度は以下の式にて各温度における吸着率として計算される。なお、窒素酸化物の濃度測定はケミカル・ルミネッセンス法にて求めた。
【0062】
窒素酸化物浄化率:Anox(%)=(Cnox in −Cnox out)/Cnox in×100
Cnox in :入力した窒素酸化物濃度
Cnox out :出力された窒素酸化物濃度
【0063】
<実施例1>
図4に示す性能評価装置を用いてモデルガスを図7(a)に示される組成で混合し、図7(b)に示されるように構成した吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)にSV=50000h−1の条件で流通し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図8(a)に示す。
【0064】
<実施例2>
同じ組成のモデルガスを(図7(a)参照)、図7(b)に示されるように構成した吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例J)に同じ条件で流通し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図8(b)に示す。
【0065】
<実施例3>
同じ組成のモデルガスを(図7(a)参照)、図7(b)の構成のうち吸着手段30を実施例C〜実施例Hに変更して(浄化手段17は実施例Iで固定)、150℃における窒素酸化物吸着率値をプロットした結果を図8(c)に示す。
【0066】
<実施例4>
図9(a)に示すように、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるH2濃度のみを100ppm〜20000ppmの範囲で変化させる。図7(b)に示されるように吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)を構成し、流通したモデルガスの150℃における窒素酸化物の吸着率を測定した結果を図9(b)に示す。
【0067】
<実施例5>
図10(a)に示すように、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるO2濃度のみを0.3%〜15%の範囲で変化させる。図7(b)に示されるように吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)を構成し、流通したモデルガスの150℃における窒素酸化物の吸着率を測定した結果を図10(b)に示す。
【0068】
<実施例6>
図11(a)に示すように、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるCO濃度のみを1000ppm〜10000ppmの範囲で変化させる。図7(b)に示されるように吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)を構成し、流通したモデルガスの150℃における窒素酸化物の吸着率を測定した結果を図11(b)に示す。
【0069】
<比較例1>
図12は、改質手段18を具備しない排気浄化装置9を想定し、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるCO濃度を1000ppmに減少させH2濃度を0ppmにする(図12(a)参照)。図7(b)に示されるように吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)を構成し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図12(b)に示す。
【0070】
<比較例2>
図13は、吸着手段30を具備しない排気浄化装置9を想定し、図7(a)の組成のモデルガスを図13(a)に示されるように構成した浄化手段17(実施例I)に流通し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図13(b)に示す。
【0071】
<比較例3>
図14は、改質手段18と浄化手段17を具備しない排気浄化装置9を想定し、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるCO濃度を1000ppmに減少させH2濃度を0ppmにする(図12(a)参照)。この組成のモデルガスを図14(a)に示されるように構成した吸着手段30(実施例B)に流通し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図14(b)に示す。
【0072】
以上示した、評価試験結果の中から、特に実施例1と比較例1(比較例2)とを対比して明らかなように、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置及び浄化方法により、低温から広い温度範囲にわたって窒素酸化物を除去して排気ガスを高効率で浄化する顕著な効果が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係る排気浄化装置を備えるディーゼルエンジン(内燃機関)の概念図である。
【図2】(a)〜(d)は、排気浄化装置の構成要素である改質手段、吸着手段、浄化手段、それぞれの配置の変形例を示している。
【図3】改質手段の性能評価装置の概略図である。
【図4】排気浄化装置によって窒素酸化物が除去された排気ガスの浄化性能評価を行う装置の概略図である。
【図5】本発明に適用される浄化手段の触媒組成の実施例を示す概念図である。
【図6】本発明に適用される改質手段の改質性能評価結果である。
【図7】(a)は実施例1における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は浄化性能評価を行う装置の構成要素の配置を簡略化して示す図である。
【図8】(a)は評価試験を設定温度を変化させて実施した実施例1の結果であり、(b)は評価試験を設定温度を変化させて実施した実施例2の結果であり、(c)は評価試験を吸着手段の銀担持率を変化させて実施した実施例3の結果である。
【図9】(a)は実施例4における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は評価試験をモデルガスの水素添加量を変化させて実施した結果である。
【図10】(a)は実施例5における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は評価試験をモデルガスの酸素濃度を変化させて実施した結果である。
【図11】(a)は実施例6における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は評価試験をモデルガスの一酸化炭素濃度を変化させて実施した結果である。
【図12】(a)は比較例1における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は評価試験を設定温度を変化させて実施した結果である。
【図13】(a)は比較例2の浄化性能評価を行う装置の構成要素の配置を簡略化して示す図であり、(b)は評価試験を設定温度を変化させて実施した結果である。
【図14】(a)は比較例3の浄化性能評価を行う装置の構成要素の配置を簡略化して示す図であり、(b)は評価試験を設定温度を変化させて実施した結果である。
【符号の説明】
【0074】
1 内燃機関
2 シリンダヘッド
9 排気浄化装置
11 排気流路
17 第4排気コンバータ(浄化手段)
18 燃料改質器(改質手段)
30 第3排気コンバータ(吸着手段)
31,32 共通のコンバータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にリーン条件で燃焼する内燃機関が大気中に排出する排気ガスを浄化する技術に関し、特にこの排気ガス中の窒素酸化物を除去する内燃機関の排気浄化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保全の観点から、発電機や自動車などの内燃機関の排気ガス中に存在している窒素酸化物(NOx)の排出量を規制する動きが世界的に広まっている。
この窒素酸化物は、酸性雨や光化学スモッグの原因となる有害成分であり、内燃室がリーン条件で燃焼するディーゼルエンジンやリーンバーンエンジンなどの内燃機関の排気ガス中に多く含まれている。
このため、そのような有害成分である窒素酸化物を排気ガス中から除去し、大気に排出される窒素酸化物(NOx)の排出量削減に貢献する排気浄化技術の確立が急務となっている。
【0003】
なお、ここでリーン条件とは、空気と燃料との混合気体が過不足なく燃焼反応する理論比14.7(ストイキ)に対し、この燃料の濃度が希薄となるように混合気体が調節されて内燃機関に供給される場合を指す。逆に、燃料の濃度が濃厚となるように調節されている場合をリッチ条件という。
【0004】
排気ガス中の窒素酸化物を除去する排気浄化は、この窒素酸化物を還元反応させることにより行われる。しかし、排気ガス中は、酸素分圧が高く、そのような還元反応を起すことが困難な問題があり、従来からその解決のための様々な方法が検討されている。
例えば、まず排気ガスを、窒素酸化物が吸蔵・吸着する触媒に通過させ、含まれる窒素酸化物を一時的に吸収・吸着させる。
その後、一時的に供給する混合気体をリッチ条件にし、排気ガス中の酸素分圧を引き下げて吸収・吸着された窒素酸化物を還元するといった技術が公知であり、この技術を応用した様々な従来例が提案されている。
【0005】
第1の従来例は、カリウム・バリウムなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属等と白金等を組み合わせてなる触媒を用いる技術である。この技術によれば、燃焼条件を周期的にリーン/リッチ条件として繰り返すことにより、排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性に切り替え、触媒で窒素酸化物を吸収/還元させ排気ガスの浄化を図ることになる(例えば、非特許文献1、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
第2の従来例は、セリア、白金、固体酸等を組み合わせてなる触媒を用いる技術である。この技術によれば、前記と同様に燃焼条件が周期的にリーン/リッチ条件として繰り返される。そして、排気ガスが還元性雰囲気になると一酸化炭素と水とが反応して水素を生成し、この水素が窒素酸化物に反応してアンモニアを生成する。次に排気ガスが酸化性雰囲気に切り替わると、このアンモニアと窒素酸化物とが反応して窒素ガスと水に変化して排気ガスの浄化が図られることになる(非特許文献2、特許文献3)。
【0007】
第3の従来例は、前記第1の従来例をベースとして、水素富化手段を排気流路内に触媒の配置位置よりも上流側へ設ける。そして、この水素富化手段で水素含有気体を合成し下流に送出し、触媒により窒素酸化物を還元して排気ガスの浄化が図られる(特許文献4)。
この技術は、窒素酸化物を還元する還元剤として別個に製造された水素を採用する方式であって、前記第1、第2の従来例のように燃焼時の副生成物である一酸化炭素及び炭化水素を利用する方式と相異する。
【0008】
一方で第4の従来技術として、リーン条件で燃焼し生成した窒素酸化物を、低温で還元する技術が存在する。これは金属活性種にパラジウムを用い、酸化物担体にバナジア、チタニア、アルミナを用いる方式(非特許文献3)、また金属活性種に白金を用い、酸化物担体にジルコニアを用いる方式(非特許文献4)が採用されている。
いずれの方式も還元剤として水素を用い、窒素酸化物を低温から効率的に還元し排気ガスを浄化する技術である(非特許文献3、非特許文献4)。
【特許文献1】特許第2586738号公報
【特許文献2】特許第2600492号公報
【特許文献3】国際公開番号W02005/044426
【特許文献4】特許第3642273号公報
【非特許文献1】「NOX吸蔵還元型三元触媒システムの開発」自動車技術会論文集Vol.26,NO.4,0ctober 1995
【非特許文献2】"A NOX Reduction System Using Ammonia Storage-Selective Catalytic Reduction in Rich and Lean Poerations",15.Aachener Kolloquium Fahrzeug-und Motorentechnik 2006 p.259-270
【非特許文献3】"Selective catalytic reaction of nitric oxide with hydrogen over Pd-based catalysts",G.Qi et al,Journal of Catalysis 237(2006)p.381-392
【非特許文献4】"improvements in the N2 selectivity of Pt catalysts in the NO-H2-O2 reaction at low temperature",T.Nanba et al,Applied Catalysis B:Environmental 46 (2003)p.353-364
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、触媒が窒素酸化物を効率的に処理して排気ガスを浄化する温度は約200℃以上と高く、それよりも低温では排気ガスが十分に浄化されない。このために前記した第1,第2,第3の従来技術においては、内燃機関の低温始動時において、窒素酸化物を処理できず排気ガスを浄化することができない問題がある。
【0010】
そして、第4の従来技術では、確かに約80℃の低温において窒素酸化物が還元され排気ガスの浄化を開始する。しかし、排気ガス中の酸素濃度が5%以下で一酸化炭素が共存していないことが必要条件であり、この条件から外れる場合は、浄化性能が急激に低下する問題がある。リーン条件で燃焼する実際の内燃機関の排気ガスは、酸素濃度が10%以上であって一酸化炭素も存在しており、排気浄化を期待するのは非現実的である。
【0011】
本発明は、前記した問題を解決することを課題とし、低温始動時においても排気ガスを高効率で浄化することができる内燃機関の排気浄化装置及び浄化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するために本発明は、内燃機関から排出される排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性と周期的に変化させ含まれる窒素酸化物を除去する排気浄化装置であって、前記排気ガスを大気側に導く排気流路に水素及び一酸化炭素が含まれる改質ガスを導入する改質手段と、前記水素を消費して還元される酸化銀を少なくとも含み前記窒素酸化物を吸着し、温度上昇とともに前記吸着した窒素酸化物を脱離する吸着手段と、前記一酸化炭素を消費して前記窒素酸化物を還元させ前記排気ガスを浄化する浄化手段とを、備えることを特徴とする。
【0013】
このように構成されることによって、浄化手段が動作できない低温始動時において、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段で一時的にトラップされる。そして、浄化手段が動作する高温状態になったところで吸着手段にトラップされていた窒素酸化物はリリースされて浄化手段で遅延的に処理されて無害な窒素ガスになって大気に放出される。
さらに、そのような高温状態が維持されている状態においては、吸着手段のトラップ機能は失われており、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段をスルーして浄化手段で直接処理され無害な窒素ガスになって大気に放出される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、低温から高温にわたる広い温度範囲で窒素酸化物を除去して排気ガスを高効率で浄化することができる内燃機関の排気浄化装置及び浄化方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の内燃機関の排気浄化装置を詳細に説明する。
図1は、本発明の排気浄化装置を備えるディーゼルエンジン(内燃機関)の実施形態を示す概念図である。
この内燃機関1は、シリンダヘッド2と、ターボチャージャ4と、排出ガス循環流路(以下、「EGR」という)5と、吸気マニホールド6と、排気マニホールド7と、ECU(電子制御装置)8と、排気浄化装置9とを備えている。
なお、内燃機関としてディーゼルエンジンを例示しているが、本発明に係る排気浄化装置及び方法が適用される内燃機関がこれに限定されず、ガソリンエンジンに適用することもできる。
【0016】
シリンダヘッド2は、複数の燃焼室(図中4つ)を有している。
各燃焼室は、酸素含有気体(空気)が吸入される吸気マニホールド6を介して連結している。そして吸入された空気は、燃料室で上下動するシリンダにより圧縮され、燃料タンク(図示せず)に貯留された燃焼用の燃料(軽油)が、噴射弁(図示せず)を介して噴射される。
すると燃焼室で自然着火(圧縮着火)して燃焼が起こり、その燃焼圧力によってピストンが下方に駆動された後、再び上昇するときに、排気ガスが排気マニホールド7に排出され排気流路11を流通する。
【0017】
この内燃機関1の燃焼室における通常の燃焼は、空燃比(空気/燃料)が、理論比(ストイキ;14.7)よりも高いリーン条件で行われる。従って通常の燃焼後、排気流路11を流通する排気ガスは、酸素分圧の高い酸化性雰囲気になっている。
一方、内燃機関1においては、前記した通常の燃焼の行程を経た後に、ポスト噴射と呼ばれる噴射した燃料を燃焼させることなく排気流路11に流通させる工程を有する。この燃料の成分のほとんどはHC(炭化水素)であるために、未燃焼の燃料を多く含む排気ガスは、酸素分圧の低い還元性雰囲気になっている。
【0018】
このように、内燃機関1から排出される排気ガスの雰囲気は、酸化性/還元性が周期的に変化している。このように、排気ガスの雰囲気を周期的に変化させる方法は、いろいろな方式が提案されており、前記したポスト噴射の他に、燃焼室における燃焼条件をリーン条件/リッチ条件に周期的に変化させる方法も採用されている。
【0019】
ターボチャージャ4は、排気マニホールド7から排出される排気ガスによってタービン4bが回転し、その回転に同期してコンプレッサ4aが駆動し、吸気流路10の上流端から空気を吸入し過給する。このようにして過給された空気は、断熱圧縮して高温なためインタークーラ12で冷却してから吸気マニホールド6に供給される。
EGR5は、EGRクーラ13及びEGRバルブ14の動作に基づいて、排気マニホールド7から排気ガスの一部を吸気マニホールド6に還流して、燃焼温度を下げて窒素酸化物の生成を抑制する。
ECU8は、内燃機関1の構成要素の動作を制御するものであって、内燃機関1の負荷状況に応じて最適な燃焼状態が得られるように制御を行う。
【0020】
排気浄化装置9は、第1排気コンバータ15と、第2排気コンバータ16と、第3排気コンバータ30(吸着手段)と、第4排気コンバータ17(浄化手段)と、燃料改質器18(改質手段)とを有するものである。このうち第1、第2、第3、第4排気コンバータ15,16,30,17は、この順番で排気流路11の上流側から下流側に沿って配置され、燃料改質器18は排気流路11とは別個に独立して設けられている。
【0021】
第1排気コンバータ15は、触媒作用により、排気ガス中の一酸化炭素と炭化水素を燃焼させて窒素酸化物を還元するものであって、第4排気コンバータ17における排気ガスの浄化を補助する。
第2排気コンバータ16は、排気中の煤などの粒子状物質(PM)を捕捉するものである。捕捉された粒子状物質は徐々に堆積するが燃焼してクリーニングされる。
【0022】
<改質手段の説明>
燃料改質器18(改質手段)は、触媒として、白金、ロジウム、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、から選ばれる少なくとも1種類以上の金属成分と、セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ゼオライト、から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物もしくは複合酸化物とを、含んで構成されている。
改質手段18は、上流側で、燃料供給バルブ19aを有する燃料供給路18aを介して燃料タンク(図示せず)に連結している。そして、燃料供給路18aは、圧力調整バルブ19bを介してコンプレッサ20に連結されている。
また、改質手段18は、下流側で、改質気体流路18bを介して第3排気コンバータ30(吸着手段)の上流に位置する排気流路11(11a)に連結されている。なお図1に示される改質手段18は、排気流路11とは別個に独立して設けられているが(適宜、図2(a)参照)、改質手段はそのような構成に限定されるものでなく、排気流路11の内部に設けられる場合もある(図2(b)参照)。
【0023】
このように構成される改質手段18は、燃料タンク(図示せず)から供給される燃料と、コンプレッサ20から供給される空気(酸素含有気体)とから、一酸化炭素及び水素を含む改質ガスを生成し排気流路11(11a)に導入する。
【0024】
改質ガスは、次に例示される3つの反応式(1)〜(3)により一般に得られる(後述する図6参照)。
6CnH1.8n+3nO2 →6nCO+5.4nH2 (1):部分酸化反応(POX)
6CnH1.8n+2nO2+2nH2O →6nCO+7.4nH2 (2):自己熱改質反応(ATR)
6CnH1.8n+6nH2O →6nCO+11.4nH2 (3):水蒸気改質反応(SR)
*上記式には水性ガスシフト反応は含まない。
*燃料は軽油(C:H=1.8)を使用している。
【0025】
ところで、本実施形態で適用される改質ガスは、反応式(1)で示される炭化水素の部分酸化反応により生成されることが好ましく、その理由は次の通りである。
つまり、水素を高効率で生成させるためには、反応式(2)(3)に示されるように、水を原料に用いて反応させるとよいが、そのような反応は吸熱反応であり、反応を促進させるのに加熱手段が必要になる。
そうすると、改質手段18の起動時に多くの熱量を必要とし、排気浄化装置9の低温始動時の起動の長時間化、さらに水供給手段を必要とし、排気浄化装置9の大型化・高コスト化を招く。
【0026】
反応式(1)により得られる改質ガスは、改質反応に水分が関与せず、排気浄化装置9の小型化・低コスト化に貢献し、低温始動時において改質ガスの迅速な生成(起動の短縮化)が可能となる効果を有する。さらに、反応式(1)により得られる改質ガスは、水素よりも一酸化炭素を多く含む水素含有ガスであり、後記する第4排気コンバータ17(浄化手段)における反応効率を向上させる観点からも好ましい。
【0027】
改質手段18は、燃料供給バルブ19a、コンプレッサ20及び圧力調整バルブ19bを適宜調節して、排気ガス中の水素濃度が0.01容量%〜4容量%の範囲に含まれるように、改質ガスを排気流路11に導入することが望ましい。
【0028】
水素の比率が0.01容量%未満では、水素が少ないために後記する酸化銀から金属銀への反応(反応式(4))が不十分となり、吸着手段30における窒素酸化物の吸着率が150℃において数%と低レベルに留まる。
水素の比率が0.01容量%以上である事により酸化銀から金属銀に変化する割合が増加し、それに伴い吸着手段30における窒素酸化物の吸着率が飛躍的に向上し、0.5容量%では150℃において吸着率は90%程度と高レベルになる(後述する図9(b)参照)。
【0029】
一方、水素濃度が4容量%を超えると、約200℃から水素と酸素の燃焼反応量が増大し、燃焼熱を触媒に与えて触媒温度を上昇させ、窒素酸化物の脱離を促進させる結果、窒素酸化物吸着能は必ずしも比例的に増加しない。そのため、窒素酸化物吸着能は水素濃度を増加しても飽和した状態となってしまう。また、水素濃度が4容量%を超えると爆発限界領域に入る。よって、4容量%を超える水素の添加は効果的な吸着量向上が望めないばかりか、経済性、コスト面においても不利となり好ましくない。
【0030】
また改質ガスは、排気流路11の温度よりも高温にしてから排気ガスに混合させることが望ましい。これによって、吸着手段30、及び浄化手段17における触媒温度の上昇を助け、吸着開始時間及び浄化開始時間を短縮させることが可能となる。
【0031】
改質手段18は、燃料供給バルブ19a、コンプレッサ20及び圧力調整バルブ19bを適宜調節して、排気ガス中の酸素濃度が0.2容量%〜21容量%の範囲に含まれるように、改質ガスを排気流路11に導入することが望ましい(後述する図10(b)参照)。
これにより、後段の第3排気コンバータ30(吸着手段)において高効率な窒素酸化物の吸着が可能となる。
【0032】
排気ガス中の酸素濃度が0.2容量%未満では150℃において窒素酸化物の吸着率が数%の留まり、吸着手段30の性能が充分に発揮されず好ましくない。
これは、後記する反応式(5)(6)に示される通り、吸着手段は窒素酸化物を吸着するにあたり排気ガス中の酸素を必要とし、0.2容量%未満の酸素濃度では窒素酸化物を充分にNO3の状態にできないためである。
排気ガス中の酸素濃度を増加させる事により排気ガス中の窒素酸化物をNO3へ変化させることが容易となり、10容量%であると150℃での吸着率は90%程度の高レベルになる。
【0033】
しかし、酸素濃度が増加し過ぎると約150℃以上で水素と燃焼反応して吸着手段30の温度を上昇させ、後記する反応式(7)(8)に示すように窒素酸化物の脱離を促進させてしまう。よって、酸素濃度が増えすぎると窒素酸化物の吸着量は若干の減少傾向をとる。しかし、排気ガスの酸素濃度は通常空気中の酸素濃度である21容量%を超えることはなく、それ以上に酸素濃度を増加させることは別途酸素導入装置の導入が必要となりコスト的にも不利となり好ましくない。
【0034】
<吸着手段の説明>
吸着手段30は、触媒として少なくとも酸化銀の粒子を含み、さらにアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ゼオライトの中から選ばれる1種類以上の酸化物成分を含んで構成される。
【0035】
このように構成されることにより吸着手段30は、100℃程度の低温状態で、排気ガスに混合している改質ガス中の水素を消費して酸化銀を還元し、この排気ガスに含まれる窒素酸化物を吸着する。そして、この吸着手段30は、この低温状態から温度上昇して高温状態に到達するとともに吸着している窒素酸化物を脱離させる。
【0036】
ここで、吸着手段30に配合される試薬の種類及びその分量は、前記した例に限定されるものではないが、担持される触媒中の銀の含有率が0.1〜10重量%の範囲となるように配合されることが好ましい(後述する図8(c)参照)。
銀の含有率が0.1重量%未満では、窒素酸化物の吸着点が不足することによりその吸着性能が充分に発揮されず、150℃において数%程度といった低レベルの吸着率に留まる。
銀の含有率が0.1重量%以上である事により排気ガスと接触する銀粒子上の吸着点が増加し窒素酸化物の吸着性能が飛躍的に向上し、4重量%では150℃において吸着率は90%程度の高レベルとなる。
銀の含有率が10重量%を超えると、銀粒子同士が結合して吸着点となる表面積の増加が限界に達し、窒素酸化物の吸着量は銀担持量の増加に対し頭打ち状態になる。よって必要量以上に銀を添加しても窒素酸化物の吸着量を向上させることは望めなく、経済性・コスト面の観点において好ましくない。
【0037】
<吸着手段における窒素酸化物の吸着メカニズム>
吸着手段30における反応は、例示される下記の反応式(4)〜(8)に従って進行する。
AgO+H2→Ag(*)+H2O (4)
NO+O2+Ag(*)→NO3(ad)+Ag(*) (5)
2NO2+O2+Ag(*)→2NO3(ad)+Ag(*) (6)
2Ag(*)+O2→2AgO (7)
2NO3(ad)+Ag(*)→2NO2+O2+AgO (8)
*AgO:酸化銀、Ag(*):金属銀
*(ad)は吸着手段への吸着を示す
【0038】
すなわち、吸着手段30に含まれる銀粒子は、酸化性雰囲気において酸化物(酸化銀)の状態であり、通常は窒素酸化物に対し不活性であり吸着能力はない。しかし、排気ガスに水素(改質ガス)が導入されて還元性雰囲気に切り替わると、酸化銀はこの水素を消費して還元され金属銀に変化する(反応式(4))。
【0039】
還元された金属銀は、酸化銀の状態と比較して窒素酸化物を吸着する能力が飛躍的に向上する。そして、吸着手段30の温度が約100℃になると、窒素酸化物は、酸化しながらこの吸着手段に吸着する。この場合の窒素酸化物は、一酸化窒素及び二酸化窒素のいずれの形態も指す(反応式(5)(6))。
【0040】
吸着手段30の温度が約200℃以上になると、水素は酸素と直接反応して燃焼して消費されてしまうため、金属銀は酸化されて再び酸化銀の状態に戻る(反応式(7))。これにより窒素酸化物を吸着する能力が低下し、すでに吸着されている窒素酸化物は主に二酸化窒素として脱離し始める(反応式(8))。吸着手段の温度の上昇とともに脱離する二酸化窒素の排出量は増加し、約300℃に到達するまでこの二酸化窒素の排出は続くことになる。
【0041】
つまり吸着手段30は、第4排気コンバータ17(浄化手段)が動作できない低温状態において、排気ガス中の窒素酸化物を一時的にトラップして大気に排出されないようにする。そして、第4排気コンバータ17が動作する高温状態になったところで吸着手段30にトラップされていた窒素酸化物はリリースされて第4排気コンバータ17で遅延的に処理されて無害な窒素ガスになって大気に放出される。さらに、そのような高温状態が維持されている状態においては、吸着手段30のトラップ機能は失われており、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段30をスルーして第4排気コンバータ17で直接処理される。
そして、排気ガスに混合している改質ガス中の水素は前記したように吸着手段30を通過する際に消費されてしまうが、一酸化炭素は吸着手段30をスルーして第4排気コンバータ17に到達する。
【0042】
<浄化手段の説明>
第4排気コンバータ17(浄化手段)は、(a)をセリアとして、(b)を酸化プラセオジムとして、(c)をセリウム、ジルコニウム、プラセオジム、ネオジム、テルビウム、サマリウム、ガドリニウム及びランタンから選ばれる少なくとも2つの元素の酸化物として、(a)(b)(c)の混合物及び/又は複合酸化物を含む触媒成分Aと、白金、ロジウム、パラジウム及びこれらの酸化物から選ばれる少なくとも1種からなる貴金属触媒成分を含む触媒成分Bと、バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を担待させた固体酸を含む触媒成分Cとを、構成に有している。
【0043】
さらに第4排気コンバータ17(浄化手段)は、アルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)の中から選ばれる1種類以上を含むことが好ましく、これにより窒素酸化物を高効率に除去することが可能となる。
【0044】
このように構成される第4排気コンバータ17(浄化手段)は、上流から流通してくる一酸化炭素を消費して窒素酸化物を還元させ排気ガスを浄化する。
この浄化手段17は、前記したように内燃機関から排出される排気ガスが、酸化性/還元性と雰囲気を周期的に変化させるのに対応して、例示される下記の反応式(9)〜(16)に従って窒素酸化物を還元させ排気ガスを浄化する。
【0045】
NO→NO(ad) (9)
2NO+O2→2NO2(ad) (10)
NO2→NO2(ad) (11)
CO+H2O→H2+CO2 (12)
5H2+2NO(ad)→2NH3(ad)+2H2O (13)
4NH3+4NO+O2→4N2+6H2O (14)(反応性小)
2NH3+NO2+NO→2N2+3H20 (15)(反応性大)
8NH3+6NO2→7N2+12H20 (16)
※反応式(9)〜(11)、(14)〜(16);酸化性雰囲気(酸素分圧大)
※反応式(12)(13);還元性雰囲気(酸素分圧小)
【0046】
すなわち、排気ガスが酸化性雰囲気である場合、窒素酸化物は触媒反応により浄化手段17に吸着したり、さらに酸化してNO2の形態で吸着したりする(反応式(9)〜(11))。
次に排気ガスが還元性雰囲気に切り替わると一酸化炭素と水とが反応し、水素を生成する(反応式(12);水性ガスシフト)。さらに生成した水素と吸着している窒素酸化物とが反応し、アンモニアが生成し浄化手段に吸着する(反応式(13))。
そして排気ガスが酸化性雰囲気に再び切り替わると、吸着していたアンモニアと排ガス中の窒素酸化物とが反応し、この窒素酸化物が高効率に還元されて無害な窒素ガスに変化し、排気ガスが浄化される(反応式(14)〜(16))。
【0047】
ところで、吸着手段30から脱離する窒素酸化物の多くは二酸化窒素であるため(反応式(8)参照)、前記した反応式(14)よりも前記した反応式(15)(16)が主に進行するようになり、浄化手段17による窒素酸化物の処理性能が向上する。
さらに、改質手段18からの改質ガスに含まれる一酸化炭素は、吸着手段30をスルーして浄化手段17に導入されるので、反応式(12)が促進され、浄化手段17における窒素酸化物の処理性能が向上する。
【0048】
ところで、浄化手段17における前記した触媒反応(反応式(9)〜(16))を進行させるには、触媒が活性化する温度まで温度上昇している必要がある。よって、内燃機関1が低温始動した直後から温度上昇している途中の一定の期間は、浄化手段17が機能しないわけであるが、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段30で一時的にトラップされるので浄化手段17には到達しない。
そして浄化手段17が動作する高温状態になったところで吸着手段30にトラップされていた窒素酸化物はリリースされて浄化手段17に遅延して到達し処理され無害な窒素ガスになる。
さらに、そのような高温状態が維持されている状態においては、吸着手段のトラップ機能は失われており、排気ガス中の窒素酸化物は、吸着手段をスルーして浄化手段で直接処理され無害な窒素ガスになる。
このようにして、内燃機関1が低温始動する直後から継続的に窒素酸化物を高効率で除去して排気ガスを浄化することが可能となる。
【0049】
<吸着手段及び浄化手段を複合化させた実施形態>
吸着手段を第3排気コンバータ30に担持させ、その下流に浄化手段を担持させた第4排気コンバータ17を配置した構成(図1、図2(a)(b)参照)は例示であって、本発明はそのような構成に限定されるものではない。
図2(c)に示されるように、共通のコンバータ31において、吸着手段30及び浄化手段17が互いに積層して保持材33に担持される構成も取り得る。
また、吸着手段30及び浄化手段17が保持材33に積層する順番は任意で、またそれぞれの界面に他の部材が設けられている場合もある。
もしくは、そのような積層構造を有するのでなく、図2(d)に示されるように、共通のコンバータ32において、吸着手段30及び浄化手段17が互いの粒子が分散した状態で混合して保持材33に担持される構成も取り得る。
【実施例】
【0050】
<改質手段を構成する触媒の調製方法>
次に改質手段18を構成する触媒の調製方法の実施例を示す(実施例A)。
a)CeO2(ニッキ社製酸化セリウムC)125g、5%硝酸ロジウム溶液(小島化学薬品株式会社製特級)25gにイオン交換水を加え、ロータリーエバポレーターにて余分な水分を取り除き、乾燥炉にて200℃で2時間、マッフル炉にて600℃で2時間焼成し粉末を得る。
b)上記粉末45g、アルミナバインダー(Al2O3濃度20%;日産化学工業株式会社製)25g、イオン交換水を加えスラリーを得る。
c)このスラリーに、φ50mm×L35mm(67cc),400セル/inch2,仕切壁厚3.5mil(3.5×10−3inch)のコージエライト製ハニカム支持体を浸漬する。次に、このハニカム支持体を、スラリーから取り出しエア噴射して過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。
そして、このようにスラリー浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成する。
このようにして、改質手段18を構成する触媒として、ウオッシュコート量100g/L、1wt%Rh/CeO2触媒担持ハニカムが得られる。
【0051】
<吸着手段を構成する触媒の調製方法>
次に吸着手段30を構成する触媒の調製方法の実施例示す(実施例B)。
a)ベーマイト(SASOL社製PURAL SB)125.3g、硝酸銀(小島化学薬品株式会社製特級)6.28gにイオン交換水を加えロータリーエバポレーターにて余分な水分を取り除き、乾燥炉にて200℃で2時間、マッフル炉にて600℃で2時間焼成し粉末を得る。
b)上記粉末45g、アルミナバインダー(A1203濃度20%;日産化学工業株式会社製)25g、イオン交換水を加えスラリーを得た。
c)このスラリーにφ25.4mm×L60mm(30cc),400セル/inch2,仕切壁厚3.5mil(3.5×10−3inch)のコージエライト製ハニカム支持体を浸漬する。次に、このハニカム支持体をスラリーから取り出しエア噴射して過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。
そして、このようにスラリー浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成する。
このように吸着手段30として、ウオッシュコート量300g/L、銀の含有率4重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、4Ag/Al203(べーマイト)が得られる。
【0052】
次に前記した吸着手段の触媒の調製方法において、ベーマイト及び硝酸銀の配合量を変更し、他の条件は同一にして、銀の含有率を可変させた銀アルミナ触媒担持ハニカム(実施例C〜実施例H)を作製した。
ベーマイトを130.41g、硝酸銀を0.157gにし、銀担持率0.1重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、0.1Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例C)。
ベーマイトを129.89g、硝酸銀を0.78gにし、銀担持率0.5重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、0.5Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例D)。
ベーマイトを129.24g、硝酸銀を1.57gにし、銀担持率1重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、1Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例E)。
ベーマイトを127.93g、硝酸銀を3.14gにし、銀担持率2重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、2Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例F)。
ベーマイトを122.72g、硝酸銀を9.42gにし、銀担持率6重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、6Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例G)。
ベーマイトを117.49g、硝酸銀を15.7gにし、銀担持率10重量%の銀アルミナ触媒担持ハニカム、10Ag/Al203(べーマイト)を得る(実施例H)。
【0053】
<浄化手段を構成する浄化触媒の調製方法>
次に浄化手段17を構成する触媒の調製方法の実施例を示す(実施例I)。
a)酸化セリウム38.8g、セリウムとプラセオジムとランタンの複合酸化物38.8g、アルミナ19.4g、ジニトロジアンミンPt溶液(Pt:5wt%)58.2gにイオン交換水を加え、ロータリーエバポレーターにて余分な水分を取り除き、乾燥炉にて200℃で2時間、マッフル炉にて450℃で2時間焼成し粉末を得る。
b)上記粉末50gにイオン交換水を加えスラリーAを得る。
c)このスラリーAに、φ25.4mm×L60mm(30cc)、400セル/inch2,仕切壁厚3.5milのコージエライト製ハニカム支持棒を浸漬する。次に、このハニカム支持棒をスラリーから取り出してエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。
そしてこのようにスラリーAに浸漬して加熱する操作を、所定量(150g)がハニカム支持棒に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成して浄化触媒C’を得る。
d)Fe、Ceイオン交換βゼオライト41g、アルミナバインダー26.7g(A1203濃度20%)、イオン交換水を加え、スラリーBを得る。
e)このスラリーBに浄化触媒C’を浸漬し、取り出してエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。
そしてこのようにスラリーBに浸漬して加熱する操作を、所定量(150g)が浄化触媒C’に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成して浄化触媒Cを得る。図5に実施例Iに係る浄化手段を構成する触媒組成を示す。
【0054】
次に浄化手段17を構成する触媒の調製方法の他の実施例を示す(実施例J)。
a)アルミナ粉末45g、アルミナバインダー(日産化学工業株式会社製)25g(Al203濃度20%)、イオン交換水150g、をポリエチレン製容器(250ml)に入れ湿式粉砕を14時間行いスラリーを得る。
このスラリーにφ25.4mm×L60mm(30cc)、400セル/inch2、3.5milのコージエライト製ハニカム支持体を浸漬する。次に、そのハニカム支持体をスラリーから取り出しエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。そしてこのようにスラリーに浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で500℃で2時間焼成し、200g/Lのアルミナをコーティングした。
【0055】
b)続いて硝酸セリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、チタニアゾルをセリウム:ナトリウム:カリウム:チタン=6:3:3:4となる様混合してイオン交換水を加えスラリーを得る。
このスラリーにa)で調製したハニカム支持体を浸漬し、取り出してエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。このようにスラリーに浸漬して加熱する操作を、所定量がアルミナ担持ハニカムに担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で600℃で1時間焼成し、80g/Lをコーティングした。
【0056】
c)続いてジニトロジアミン白金硝酸溶液と硝酸ロジウム溶液とを白金:ロジウム=19:1になるように混合しさらにイオン交換水を加えて混合溶液を得る。この混合溶液にb)で調製したハニカム支持体を浸漬し、取り出してエア噴射により過刺分を除去し、200℃、で2時間加熱する。このようにスラリーに浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、最後にマッフル炉で450℃1時間焼成し、12g/Lをコーティングした。
【0057】
d)最後に硝酸マグネシウムにイオン交換水を加えたスラリーを得る。このスラリーにc)で調製したハニカム支持体を浸漬し、取り出してエア噴射により過剰付着分を除去し、200℃で2時間加熱する。このようにスラリーに浸漬して加熱する操作を、所定量がハニカム支持体に担持されるまで繰り返し、マッフル炉で450℃で1時間焼成し8g/Lをコーティングした。
【0058】
その結果、ウオッシュコート量は300g/L、2.7Mg-(3.8Pt・0.2Rh)-(10Ce・5Na・5K・6.7Ti)/Al2O3の触媒担持ハニカム得た。ここで元素記号前の数値はハニカム見掛け容積1Lあたりに担持した表示金属成分の重量(g)である。表示順序は担持順序を示しており、A1203に近く表記される成分から順番に積層され、()で括られている成分は共通の層に担持されている。
【0059】
<改質ガスの性能評価試験>
改質手段18の性能評価を図3に示す性能評価装置を用いて行った(反応式(1)〜(3)参照)。
前記した実施例Aで作製した触媒担持ハニカム(改質手段18)を性能評価装置に充填し、加熱器41によって350℃まで加熱した後にガス流量調節器42にて下記条件となるよう空気、窒素、水蒸気を調整し導入する。そして温度が安定してから、下記条件のように流量が調節された軽油を導入する。その後、触媒担持ハニカム(改質手段18)の上端の温度が900−1000℃になる様、加熱器41を調節し、温度が安定したところでガスクロマトグラフ43によって水素と一酸化炭素の濃度を測定する。
なお、ガスクロマトグラフ43はジーエルサイエンス社製のGC390Bを用い、カラムには、TCDにmolecular Sieve 5A、FIDにPorapak Q を用いた。
軽油にはUS認定軽油(Chevron Phmips製、C/H=1.81)を用い実施例、比較例共に同量(4.25g/min)を導入する。酸化剤の導入条件は以下の通りである。
【0060】
次のような条件で実施した性能評価試験の結果を図6に示す。
部分酸化反応(反応式(1)参照)については、モデルガスの組成を「空気:18.7L/min,O/C:1.05」とした。
自己熱改質反応(反応式(2)参照)について、比較例として、モデルガスの組成を「空気:16.0L/min,水蒸気:40.2g/min,O/C:0.9,S/C:0.95」とした。
水蒸気改質反応(反応式(3)参照)について、比較例として、モデルガスの組成を「水蒸気:126.8g/min,S/C:3.0,窒素:10L/min」とした。
【0061】
<排気ガスの浄化性能評価試験>
排気浄化装置9によって窒素酸化物が除去された排気ガスの浄化性能評価を図4に示す性能評価装置を用いて実施した。
ガス流量調節器44にて下記ガス条件を満たす様に混合させたモデルガスをフローする。このモデルガスは、加熱器41によって所定の温度に加熱される。温度は50℃より20℃/分にて450℃まで測定した。測定ガスは前記した触媒担持ハニカム(吸着手段30及び浄化手段17)を通ってガス分析計45に入り、各成分の濃度が測定される。ガス分析計45にて測定された窒素酸化物の濃度は以下の式にて各温度における吸着率として計算される。なお、窒素酸化物の濃度測定はケミカル・ルミネッセンス法にて求めた。
【0062】
窒素酸化物浄化率:Anox(%)=(Cnox in −Cnox out)/Cnox in×100
Cnox in :入力した窒素酸化物濃度
Cnox out :出力された窒素酸化物濃度
【0063】
<実施例1>
図4に示す性能評価装置を用いてモデルガスを図7(a)に示される組成で混合し、図7(b)に示されるように構成した吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)にSV=50000h−1の条件で流通し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図8(a)に示す。
【0064】
<実施例2>
同じ組成のモデルガスを(図7(a)参照)、図7(b)に示されるように構成した吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例J)に同じ条件で流通し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図8(b)に示す。
【0065】
<実施例3>
同じ組成のモデルガスを(図7(a)参照)、図7(b)の構成のうち吸着手段30を実施例C〜実施例Hに変更して(浄化手段17は実施例Iで固定)、150℃における窒素酸化物吸着率値をプロットした結果を図8(c)に示す。
【0066】
<実施例4>
図9(a)に示すように、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるH2濃度のみを100ppm〜20000ppmの範囲で変化させる。図7(b)に示されるように吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)を構成し、流通したモデルガスの150℃における窒素酸化物の吸着率を測定した結果を図9(b)に示す。
【0067】
<実施例5>
図10(a)に示すように、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるO2濃度のみを0.3%〜15%の範囲で変化させる。図7(b)に示されるように吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)を構成し、流通したモデルガスの150℃における窒素酸化物の吸着率を測定した結果を図10(b)に示す。
【0068】
<実施例6>
図11(a)に示すように、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるCO濃度のみを1000ppm〜10000ppmの範囲で変化させる。図7(b)に示されるように吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)を構成し、流通したモデルガスの150℃における窒素酸化物の吸着率を測定した結果を図11(b)に示す。
【0069】
<比較例1>
図12は、改質手段18を具備しない排気浄化装置9を想定し、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるCO濃度を1000ppmに減少させH2濃度を0ppmにする(図12(a)参照)。図7(b)に示されるように吸着手段30(実施例B)及び浄化手段17(実施例I)を構成し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図12(b)に示す。
【0070】
<比較例2>
図13は、吸着手段30を具備しない排気浄化装置9を想定し、図7(a)の組成のモデルガスを図13(a)に示されるように構成した浄化手段17(実施例I)に流通し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図13(b)に示す。
【0071】
<比較例3>
図14は、改質手段18と浄化手段17を具備しない排気浄化装置9を想定し、図7(a)の場合と対比してモデルガスの組成におけるCO濃度を1000ppmに減少させH2濃度を0ppmにする(図12(a)参照)。この組成のモデルガスを図14(a)に示されるように構成した吸着手段30(実施例B)に流通し、設定温度を変化させて実施した評価試験の結果を図14(b)に示す。
【0072】
以上示した、評価試験結果の中から、特に実施例1と比較例1(比較例2)とを対比して明らかなように、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置及び浄化方法により、低温から広い温度範囲にわたって窒素酸化物を除去して排気ガスを高効率で浄化する顕著な効果が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の実施形態に係る排気浄化装置を備えるディーゼルエンジン(内燃機関)の概念図である。
【図2】(a)〜(d)は、排気浄化装置の構成要素である改質手段、吸着手段、浄化手段、それぞれの配置の変形例を示している。
【図3】改質手段の性能評価装置の概略図である。
【図4】排気浄化装置によって窒素酸化物が除去された排気ガスの浄化性能評価を行う装置の概略図である。
【図5】本発明に適用される浄化手段の触媒組成の実施例を示す概念図である。
【図6】本発明に適用される改質手段の改質性能評価結果である。
【図7】(a)は実施例1における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は浄化性能評価を行う装置の構成要素の配置を簡略化して示す図である。
【図8】(a)は評価試験を設定温度を変化させて実施した実施例1の結果であり、(b)は評価試験を設定温度を変化させて実施した実施例2の結果であり、(c)は評価試験を吸着手段の銀担持率を変化させて実施した実施例3の結果である。
【図9】(a)は実施例4における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は評価試験をモデルガスの水素添加量を変化させて実施した結果である。
【図10】(a)は実施例5における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は評価試験をモデルガスの酸素濃度を変化させて実施した結果である。
【図11】(a)は実施例6における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は評価試験をモデルガスの一酸化炭素濃度を変化させて実施した結果である。
【図12】(a)は比較例1における排気ガスのモデルガスの組成を示す図で、(b)は評価試験を設定温度を変化させて実施した結果である。
【図13】(a)は比較例2の浄化性能評価を行う装置の構成要素の配置を簡略化して示す図であり、(b)は評価試験を設定温度を変化させて実施した結果である。
【図14】(a)は比較例3の浄化性能評価を行う装置の構成要素の配置を簡略化して示す図であり、(b)は評価試験を設定温度を変化させて実施した結果である。
【符号の説明】
【0074】
1 内燃機関
2 シリンダヘッド
9 排気浄化装置
11 排気流路
17 第4排気コンバータ(浄化手段)
18 燃料改質器(改質手段)
30 第3排気コンバータ(吸着手段)
31,32 共通のコンバータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性と周期的に変化させ含まれる窒素酸化物を除去する排気浄化装置であって、
前記排気ガスを大気側に導く排気流路に水素及び一酸化炭素が含まれる改質ガスを導入する改質手段と、
前記水素を消費して還元される酸化銀を少なくとも含み前記窒素酸化物を吸着し温度上昇とともに前記吸着した窒素酸化物を脱離する吸着手段と、
前記一酸化炭素を消費して前記窒素酸化物を還元させ前記排気ガスを浄化する浄化手段とを、備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記吸着手段は、触媒における銀の含有率が0.1〜10重量%であることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記吸着手段は、触媒としてさらにアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ゼオライトの中から選ばれる1種類以上の酸化物成分を含むことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質ガスが混合した後の前記排気ガスは、水素濃度が0.01容量%〜4容量%であることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質ガスが混合した後の前記排気ガスは、酸素濃度が0.2容量%〜21容量%であることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質ガスは、前記燃料及び酸素含有気体から生成し、前記水素よりも前記一酸化炭素の濃度が高いことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質手段は、
白金、ロジウム、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、から選ばれる少なくとも1種類以上の金属成分と、
セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ゼオライト、から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物もしくは複合酸化物とを、触媒として含むことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質手段は、前記排気流路とは別個に独立して設けられることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質手段は、前記排気流路の内部に設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記浄化手段は、
(a)をセリアとして、(b)を酸化プラセオジムとして、(c)をセリウム、ジルコニウム、プラセオジム、ネオジム、テルビウム、サマリウム、ガドリニウム及びランタンから選ばれる少なくとも2つの元素の酸化物として、(a)(b)(c)の混合物及び/又は複合酸化物を含む触媒成分Aと、
白金、ロジウム、パラジウム及びこれらの酸化物から選ばれる少なくとも1種からなる貴金属触媒成分を含む触媒成分Bと、
バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を担待させた固体酸を含む触媒成分Cとを、有することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
請求項10に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記浄化手段は、さらにアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)の中から選ばれる1種類以上を含むことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記吸着手段及び前記浄化手段は、互いに積層構造をなし共通のコンバータに配置されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記吸着手段及び前記浄化手段は、互いに分散した混合構造をなし共通のコンバータに配置されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項14】
内燃機関から排出される排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性と周期的に変化させ含まれる窒素酸化物を除去する排気浄化方法であって、
前記排気ガスに一酸化炭素及び水素が含まれる改質ガスを混合する改質工程と、
前記水素を消費して酸化銀が還元されてなる金属銀が前記窒素酸化物を吸着する吸着工程と、
温度上昇に伴い前記金属銀が酸化して前記酸化銀に戻るとともに吸着している前記窒素酸化物が脱離する脱離工程と、
前記一酸化炭素を消費して前記窒素酸化物を還元させ前記排気ガスを浄化する浄化工程と、を含むことを特徴とする内燃機関の排気浄化方法。
【請求項1】
内燃機関から排出される排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性と周期的に変化させ含まれる窒素酸化物を除去する排気浄化装置であって、
前記排気ガスを大気側に導く排気流路に水素及び一酸化炭素が含まれる改質ガスを導入する改質手段と、
前記水素を消費して還元される酸化銀を少なくとも含み前記窒素酸化物を吸着し温度上昇とともに前記吸着した窒素酸化物を脱離する吸着手段と、
前記一酸化炭素を消費して前記窒素酸化物を還元させ前記排気ガスを浄化する浄化手段とを、備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記吸着手段は、触媒における銀の含有率が0.1〜10重量%であることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記吸着手段は、触媒としてさらにアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ゼオライトの中から選ばれる1種類以上の酸化物成分を含むことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質ガスが混合した後の前記排気ガスは、水素濃度が0.01容量%〜4容量%であることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質ガスが混合した後の前記排気ガスは、酸素濃度が0.2容量%〜21容量%であることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質ガスは、前記燃料及び酸素含有気体から生成し、前記水素よりも前記一酸化炭素の濃度が高いことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質手段は、
白金、ロジウム、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、から選ばれる少なくとも1種類以上の金属成分と、
セリア、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、ゼオライト、から選ばれる少なくとも1種類以上の酸化物もしくは複合酸化物とを、触媒として含むことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質手段は、前記排気流路とは別個に独立して設けられることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記改質手段は、前記排気流路の内部に設けられていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記浄化手段は、
(a)をセリアとして、(b)を酸化プラセオジムとして、(c)をセリウム、ジルコニウム、プラセオジム、ネオジム、テルビウム、サマリウム、ガドリニウム及びランタンから選ばれる少なくとも2つの元素の酸化物として、(a)(b)(c)の混合物及び/又は複合酸化物を含む触媒成分Aと、
白金、ロジウム、パラジウム及びこれらの酸化物から選ばれる少なくとも1種からなる貴金属触媒成分を含む触媒成分Bと、
バナジウム、タングステン、モリブデン、銅、鉄、コバルト、ニッケル及びマンガンから選ばれる少なくとも1種の金属酸化物を担待させた固体酸を含む触媒成分Cとを、有することを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項11】
請求項10に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記浄化手段は、さらにアルカリ金属(Li、Na、K、Rb、Cs)及びアルカリ土類金属(Mg、Ca、Sr、Ba)の中から選ばれる1種類以上を含むことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記吸着手段及び前記浄化手段は、互いに積層構造をなし共通のコンバータに配置されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置において、
前記吸着手段及び前記浄化手段は、互いに分散した混合構造をなし共通のコンバータに配置されていることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項14】
内燃機関から排出される排気ガスの雰囲気を酸化性/還元性と周期的に変化させ含まれる窒素酸化物を除去する排気浄化方法であって、
前記排気ガスに一酸化炭素及び水素が含まれる改質ガスを混合する改質工程と、
前記水素を消費して酸化銀が還元されてなる金属銀が前記窒素酸化物を吸着する吸着工程と、
温度上昇に伴い前記金属銀が酸化して前記酸化銀に戻るとともに吸着している前記窒素酸化物が脱離する脱離工程と、
前記一酸化炭素を消費して前記窒素酸化物を還元させ前記排気ガスを浄化する浄化工程と、を含むことを特徴とする内燃機関の排気浄化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−112967(P2009−112967A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290273(P2007−290273)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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