説明

処理液供給装置

【課題】基板に対して衝撃やダメージを与えることなく、大流量の処理液を供給(吐出)することができ、かつ、処理液の供給(吐出)停止時には、ノズルからの液ダレやボタ落ちを防止できるようにする。
【解決手段】回転基台にて保持されるガラス基板Gに処理液であるリンス液を供給する処理液供給装置において、リンス液供給源34に接続される供給管路35の先端部に装着されるノズル33に、供給管路に連通する流通路36を設け、このノズルの流通路内に、供給管路から導かれるリンス液の流れ方向に対して直交する断面領域において液保持力を有する、例えばメッシュ部材40a,40b,40cからなる液保持部材40を設ける。これにより、ガラス基板に対して衝撃やダメージを与えることなく、大流量の処理液を供給(吐出)することができ、かつ、供給(吐出)の停止時には、ノズルからの液ダレやボタ落ちを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばレチクル,半導体ウエハやLCD用ガラス基板等に処理液を供給して処理を施す処理液供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば、半導体デバイスやレチクル等の基板の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程では、基板上にレジスト液を塗布してレジスト膜を形成するレジスト塗布処理,基板上のレジスト膜に対し所定のパターンの露光を行う露光処理,露光処理後の基板上に現像液を供給して基板上のレジスト膜を現像する現像処理等が行われている。
【0003】
また、この種の基板処理装置において、例えば現像処理後に洗浄処理を施す洗浄ノズルが具備されており、保持手段にて保持された基板に洗浄ノズルから洗浄用の処理液を供給(吐出)して、洗浄処理を行っている。一般に、洗浄ノズルは、チューブ状のストレートノズルが使用されており、このストレートノズルから直接基板に(供給)吐出している。
【0004】
ところで、例えばレチクル等の基板の現像処理後の洗浄においては、洗浄能力を向上させるために、通常のウエハ洗浄の場合に比べて約3倍の大流量(例えば、3L/min以上)の供給(吐出)が必要である。しかし、従来のストレートノズルを用いると流速が早くなるため、基板に対する衝撃が大きくなり基板にダメージを与えてしまう。そのために、口径を大きくしたノズルを使用するのであるが、口径が大きくなると、液の供給を停止したとき、液の重量にノズルの液保持力が負けてしまい、液ダレやボタ落ちを起こすという問題がある。
【0005】
ボタ落ちを防止する手段として、エアシリンダとハンマとからなる衝撃付与手段によりノズルに衝撃を与えて、ノズルに付着した液を落下させる構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、別のボタ落ちを防止する手段として、ノズルの先端部に、処理液の通過領域の大きさを変化させる可変手段を設けた構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−186141号公報(特許請求の範囲、図3)
【特許文献2】特開平11−33439号公報(特許請求の範囲、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前者すなわち特許文献1に記載のものは、エアシリンダとハンマとからなる衝撃付与手段を設ける必要があるため、構造が複雑になり、また、ノズルに付着した液を衝撃によって落下させるため、処理中には使用できない。
【0008】
また、後者すなわち特許文献2に記載のものは、処理液の流量が少ないとき、処理液の通過領域を小さくすることによって処理液の吐出流速を高めることができるので、ボタ落ちを防止することができるが、吐出流速を高めることで基板にダメージを与えるおそれがある。
【0009】
また、特許文献1及び特許文献2に記載のものは、いずれも大流量の液を供給(吐出)することによって流速が早くなり、基板に衝撃やダメージを与えることに関する対応については言及されていない。
【0010】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、基板に対して衝撃やダメージを与えることなく、大流量の処理液を供給(吐出)することができ、かつ、処理液の供給(吐出)停止時には、ノズルからの液ダレやボタ落ちを防止できるようにした処理液供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、保持手段にて保持される被処理基板に処理液を供給する処理液供給装置であって、 処理液供給源に接続される供給管路の先端部に装着され、供給管路に連通する流通路を有するノズルと、 上記ノズルの流通路内に設けられ、上記供給管路から導かれる処理液の流れ方向に対して直交する断面領域において液保持力を有する液保持部材と、を具備することを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、ノズルの流通路内に設けられた液保持部材は、供給管路から導かれる処理液の流れ方向に対して直交する断面領域において液保持力を有するので、処理液が大流量供給される場合は、処理液は均一に液保持部材に接触して流速が減速される。また、処理液の供給停止時には、液保持部材によって少量の処理液を保持することができる。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載の処理液供給装置において、 上記ノズルを、上記供給管路に固着される円筒部材にて形成し、 上記液保持部材を、上記円筒部材内に着脱可能に挿入し、シール部材を介して円筒部材に螺合される筒状キャップ部材にて固定してなる、ことを特徴とする。
【0014】
このように構成することにより、液保持部材をノズル内に着脱可能に取り付けることができる。
【0015】
また、この発明において、上記液保持部材は、供給管路から導かれる処理液の流れ方向に対して直交する断面領域において液保持力を有するものであれば、その形態は任意でよく、例えば、メッシュ部材,格子部材,多孔質部材,ハニカム部材、あるいは、同心円上に複数の筒部を有する同心円筒部材等にて形成することができる(請求項3〜7)。
【0016】
また、請求項8記載の発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の処理液供給装置において、上記液保持部材は、先端側に向かって順次開口率が異なる、例えば、先端側に向かって順次開口率が小さく、あるいは、大きくなるように形成される、複数の部材からなる、ことを特徴とする。
【0017】
このように構成することにより、複数の液保持部材が、ノズルの先端側に向かって順次開口率が異なるように形成されるので、ノズル先端側で少量となる処理液を先端側の液保持部材によって保持することができる。
【0018】
また、請求項9記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の処理液供給装置において、上記ノズルにおける液保持部材より先端側部位の側部に流通路と外部とを連通する連通路を設け、この連通路に吸引手段を接続してなる、ことを特徴とする。この場合、上記吸引手段の駆動及び停止と、供給管路に介設される開閉弁の開閉とを選択的に駆動する制御手段を更に具備し、上記制御手段からの制御信号に基づいて上記開閉弁の開放時に上記吸引手段を停止し、開閉弁の閉鎖時に吸引手段を駆動する方が好ましい(請求項10)。
【0019】
このように構成することにより、処理液の供給停止時に、液保持部材を通過してノズル先端側に流れる少量の処理液を、吸引手段の吸引作用によって連通路から排出することができる。
【0020】
また、請求項11記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の処理液供給装置において、上記ノズルにおける液保持部材より先端側部位の側部に、伸縮自在な中空環状部材を設け、この中空環状部材に流体を供給する流体供給手段を接続してなる、ことを特徴とする。この場合、上記流体供給手段の駆動及び停止と、供給管路に介設される開閉弁の開閉とを選択的に駆動する制御手段を更に具備し、上記制御手段からの制御信号に基づいて上記開閉弁の開放時に上記流体供給手段を停止し、開閉弁の閉鎖時に流体供給手段を駆動する方が好ましい(請求項12)。
【0021】
このように構成することにより、処理液の供給停止時に、中空環状部材の内径を小さくして、液保持部材を通過してノズル先端側に流れる処理液を保持することができる。
【0022】
加えて、請求項13記載の発明は、請求項1ないし8のいずれかに記載の処理液供給装置において、上記ノズルにおける液保持部材より先端側部位に、処理液の通過領域の大きさに応じて開口面積が可変可能な補助液保持部材を更に具備してなる、ことを特徴とする。この場合、上記補助液保持部材は、先端に向かって狭小テーパ状に形成され、かつ、周方向に適宜間隔をおいて複数のスリットを有する弾性部材にて形成される方が好ましい(請求項14)。
【0023】
このように構成することにより、処理液の供給停止時に、液保持部材を通過してノズル先端側に流れる少量の処理液を、補助液保持部材によって保持することができる。また、処理液が大流量供給されると、処理液の通過領域の大きさに応じて補助液保持部材の開口面積が可変して所定量の処理液を流すことができる。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果を奏する。
【0025】
(1)請求項1,3〜7記載の発明によれば、処理液が大流量供給される場合は、処理液は均一に液保持部材に接触して流速が減速されるので、被処理基板に対する衝撃やダメージを抑制することができる。また、処理液の供給停止時には、液保持部材によって少量の処理液を保持することができるので、液ダレやボタ落ちを防止することができる。
【0026】
(2)請求項2記載の発明によれば、液保持部材をノズル内に着脱可能に取り付けることができるので、上記(1)に加えて、更に液保持部材の交換を容易にすることができると共に、液保持部材の液保持機能を最適な状態に維持することができる。
【0027】
(3)請求項8記載の発明によれば、複数の液保持部材が、ノズルの先端側に向かって順次開口率が異なるように形成されることで、ノズル先端側で少量となる処理液を先端側の液保持部材によって保持することができるので、上記(1),(2)に加えて、更に液ダレやボタ落ちを確実に防止することができる。
【0028】
(4)請求項9,10記載の発明によれば、処理液の供給停止時に、液保持部材を通過してノズル先端側に流れる少量の処理液を、吸引手段の吸引作用によって連通路から排出することができるので、上記(1),(2)に加えて、更に液ダレやボタ落ちを確実に防止することができる。
【0029】
(5)請求項11,12記載の発明によれば、処理液の供給停止時に、中空環状部材の内径を小さくして、液保持部材を通過してノズル先端側に流れる処理液を保持することができるので、上記(1),(2)に加えて、更に液ダレやボタ落ちを確実に防止することができる。
【0030】
(6)請求項13,14記載の発明によれば、処理液の供給停止時に、液保持部材を通過してノズル先端側に流れる少量の処理液を、補助液保持部材によって保持することができるので、上記(1),(2)に加えて、更に液ダレやボタ落ちを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、この発明の最良の形態について、添付図示に基づいて詳細に説明する。この実施形態では、この発明に係る処理液供給装置を、フォトマスク用の被処理基板、例えばレチクル用のガラス基板に現像処理を施す現像処理装置に適用した場合について説明する。
【0032】
図1は、上記現像処理装置を示す概略断面図であり、図2は、上記現像処理装置の概略平面図である。
【0033】
上記現像処理装置は、ケーシング1を有し、このケーシング1内の中央部には、基板Gを回転させるための回転基台2が設けられている。回転基台2は、例えば円盤形状を有している。回転基台2は、例えばこの回転基台2の下方に設けられたモータ等の回転駆動部3に連結し、回転基台2の中心軸を回転軸として所定の回転速度で回転できるように構成されている。
【0034】
回転基台2上には、方形の基板Gの外周部を支持して保持するための基板保持部材4が取り付けられている。基板保持部材4に保持される基板の外方には、基板Gの外周部を囲むように外周板としての助走ステージ5が設けられている。
【0035】
助走ステージ5は、図2に示すように平面から見て円形の薄い板形状を有し、中央部に基板Gを収容する四角の開口部5aが形成されている。このように助走ステージ5の外形を円形状に形成することにより、助走ステージ5を回転させた際に、助走ステージ5の外周部付近において乱流が形成されることを防止している。また、助走ステージ5は、図1に示すように例えば円柱状の固定部材6によって回転基台2に固定されている。助走ステージ5は、基板Gの表面と同一平面上、若しくは、僅かに高い位置例えば200〜400μm高い位置に固定されている。これにより、基板Gの表面から助走ステージ3の表面に渡る同一平面上に連続した液膜を形成することができる。助走ステージ5の開口部5aは,基板Gよりも僅かに大きく形成されており、基板保持部材4に保持された基板Gと助走ステージ5との間には、基板Gの受け渡しのための隙間Cが形成されている。図2に示すように、隙間Cには、基板Gの外側面に当接し基板Gを位置決めするための複数の位置決めピン7が設けられている。位置決めピン7は、例えば基板Gの各角にそれぞれ2つずつ計8つ配置されている。
【0036】
図1に示すように回転基台2と基板保持部材4の基板Gの外周部に対応する位置には、垂直方向に貫通する貫通孔8が形成されている。貫通孔8内には、基板Gを支持して昇降させる昇降ピン9が設けられている。昇降ピン9は、例えばシリンダ等の昇降駆動部10によって昇降自在であり、回転基台2上に突出して基板保持部材4に対する基板Gの受け渡しを行うように構成されている。また、回転基台2の上面中央部には、上方に向けてリンス液を吐出し基板Gの裏面を洗浄するリンス液供給部としての裏面洗浄ノズル15が設けられている。
【0037】
回転基台2は、基板Gから飛散又は落下する液体を受け止め、回収するためのカップ16内に収容されている。カップ16は、回転基台2の側方と下方を覆うように、例えば下面が閉鎖され上面が開口した四角形の略筒状に形成されている。カップ16の下面には、例えば工場の排液部に連通した排出管17が接続されており、カップ16において回収した液体を現像処理装置1の外部に排出できる。
【0038】
図2に示すように、カップ16のY方向負方向(図2の左方向)側には、第1の待機部18が設けられている。第1の待機部18には、現像液及びリンス液(リンス液)の供給と吸引を行う現像ノズルヘッド20(以下にノズルヘッド20という)が設けられている。ノズルヘッド20は、例えば少なくとも基板Gの対向辺の寸法と同じかそれよりも長い、X方向に沿った略正方対形状を有している。ノズルヘッド20は、門型のヘッドアーム21に支持されている。ノズルヘッド20は、ヘッドアーム21が取り付けられた例えばボールねじとその回転モータ等からなる水平移動機構22によって、第1の待機部18から少なくともカップ16のY方向正方向(図2の右方向)側の端部付近まで水平移動できる。また,ノズルヘッド20は、例えばヘッドアーム21に取り付けられたシリンダなどの昇降機構(図示せず)によって上下方向にも移動できる。
【0039】
また、上記回転基台2,助走ステージ5及び基板保持台4は、カップ16内に収容可能に形成されており、カップ16の外方側の第1の待機部18と対向する第2の待機部19には、回転基台2に保持された基板Gに向かって処理液であるリンス液(リンス液)例えば純水を供給するこの発明に係る処理液供給装置30が配設されている。この処理液供給装置30は、例えば回転駆動軸31に取り付けられたノズルアーム32の先端部に後述するリンス用のノズル33を具備している。
【0040】
上記のように構成される現像処理装置において、装置外部の搬送アーム(図示せず)によって現像処理装置内に基板Gが搬入されると、基板Gは、予め上昇していた昇降ピン9に受け渡され、昇降ピン9の下降によって基板保持部材4上に載置される。このとき、基板Gの載置位置と基板保持部材4及び助走ステージ5との間には、十分な隙間Cが設けられているため、基板保持部材4に対する基板Gの受け渡しが適切に行われる。基板Gが基板保持部材4上に載置されると、吸引口(図示せず)からの吸引により基板Gが水平状態に吸着保持される。
【0041】
続いて第1の待機部18で待機していたノズルヘッド20がY方向正方向側に移動し、基板GよりY方向負方向側の助走ステージ5上まで移動して、ノズルヘッド20に設けられた図示しないリンス液吐出口,現像液吐出口及び現像液吸引口のある下面が助走ステージ5上に配置される。そして、ノズルヘッド20が下降し、スタート位置である助走ステージ5の表面に近接される。次にノズルヘッド20のリンス液吐出口からリンス液の吐出した状態でY方向正方向に移動して、例えば助走ステージ5の表面上から基板Gの表面上に渡ってリンス液の液膜を形成される。このようにして、基板Gの表面の濡れ性を向上するプリウェット処理が行われる。続いて、ノズルヘッド20が再び助走ステージ5のY方向負方向側のスタート位置まで戻される。ノズルヘッド20の下面がリンス液の液膜に接触した状態で、今度はリンス液吐出口からリンス液,現像吐出口から現像液を吐出し、現像液吸引口からそのリンス液と現像液を吸引しながらY方向正方向側に移動して、基板Gの表面の一部の領域に帯状の現像液の流れが形成される。この現像液の流れによって基板Gの表面が現像される。現像によって生じた溶解生成物は直ちに現像液吸引口から排出される。
【0042】
ノズルヘッド20が助走ステージ5のY方向正方向側の端部付近まで移動すると、現像液及びリンス液の供給とその吸引が停止され、ノズルヘッド20は、第1の待機部18に戻される。続いて、第2の待機部19で待機していたこの発明に係る処理液供給装置のリンス用のノズル33が基板Gの中心部上方まで移動し、回転基台2によって基板Gが回転される。ノズル33から回転された基板G上にリンス液例えば純水DWが吐出され、基板Gが洗浄される。このとき、例えば裏面洗浄ノズル15からもリンス液である純水DWを吐出し、基板Gの裏面に純水DWを供給してもよい。
【0043】
基板Gが所定時間洗浄された後、基板Gが高速回転され、基板Gが乾燥される。基板Gが乾燥されると、基板Gの吸着が解除され、再び昇降ピン9によって持ち上げられ、図示しない搬送アームによって基板処理装置の外部に搬出される。
【0044】
以下に、この発明に係る処理液供給装置30の装置構成について詳細に説明する。
【0045】
<第一実施形態>
図3は、この発明に係る処理液供給装置の第1実施形態を示す断面図、図4は、第1実施形態における液保持部材の取付状態を示す分解斜視図である。
【0046】
処理液供給装置30は、例えば回転駆動軸31に取り付けられたノズルアーム32の先端部に取り付けられると共に、処理液供給源であるリンス液供給源34に接続される例えばフッ素樹脂製チューブからなる供給管路35の先端部に装着されるリンス用のノズル33と、このノズル33の流通路36内に設けられ、供給管路35から導かれるリンス液例えば純水DWの流れ方向に対して直交する断面領域において液保持力を有する液保持部材40とを具備している。
【0047】
供給管路35には開閉弁Vが介設されており、供給管路35の先端部にノズル33が装着されている。このノズル33は、供給管路35に例えば溶接によって固着され、供給管路35に連通する流通路36を有する円筒部材37にて形成されている。この場合、円筒部材37は、図3及び図4に示すように、中間部の内周面に、供給管路35の内径と同じ口径の環状突部37aを有しており、円筒部材37内に挿入される供給管路35の先端が環状突部37aに当接した状態で、円筒部材37の一端開口部と供給管路35とが溶接によって固着されている。また、円筒部材37の先端側外周面には、雄ねじ部37bが設けられている。
【0048】
一方、液保持部材40は、図3及び図4に示すように、供給管路35の内径と同じ口径を有する筒状基部41の開口面にメッシュ体42を張設した複数例えば3個の開口率が異なるメッシュ部材40a,40b,40cにて形成されている。この場合、メッシュ部材40a,40b,40cの順に開口率が小さくなるように形成されている。これらメッシュ部材40a,40b,40cは、開口率が大きい順からノズル33の円筒部材37内に着脱可能に挿入され、シール部材例えばOリング38を介して円筒部材37の先端側外周面に設けられた雄ねじ部37bに螺合される略筒状のキャップ部材39にて固定される。なお、キャップ部材39には、供給管路35の内径と同じ口径の開口部39aが設けられている。また、キャップ部材39には、円筒部材37に設けられた雄ねじ部37bに螺合する雌ねじ部39bが設けられている。
【0049】
上記のように構成することにより、液保持部材40を構成するメッシュ部材40a,40b,40cは、供給管路35から導かれる純水DWの流れ方向に対して直交する断面領域において液保持力を有するので、純水DWが大流量供給される場合は、純水DWは均一にメッシュ部材40a,40b,40cに接触して流速が減速される。これにより、純水DWは衝撃力が抑制されたつまりソフトな状態で基板Gに供給(吐出)される。また、純水DWの供給(吐出)開始時又は供給(吐出)停止時には、メッシュ部材40a,40b,40cによって少量の純水DWを保持することができる。しかも、メッシュ部材40a,40b,40cは、ノズル33の先端側に向かって順次開口率が小さくなるように形成されているので、ノズル先端側で少量となる純水DWを先端側の小開口率のメッシュ部材40cによって保持することができるので、純水DWの液ダレやボタ落ちを確実に防止することができる。なお、上記説明では、液保持部材40は、メッシュ部材40a,40b,40cの順に開口率が小さくなるように形成される場合について説明したが、逆にしてもよい。すなわち、メッシュ部材40a,40b,40cの開口率を先端側に向かって順次を大きくなるように形成してもよい。
【0050】
また、メッシュ部材40a,40b,40cは、ノズル33の流通路36内に着脱可能に取り付けられるので、液保持部材40(メッシュ部材40a,40b,40c)の交換を容易にすることができると共に、液保持部材40(メッシュ部材40a,40b,40c)の液保持機能を最適な状態に維持することができる。
【0051】
上記説明では、液保持部材40が3個のメッシュ部材40a,40b,40cにて形成される場合について説明したが、開口率が異なれば2個あるいは4個以上の複数のメッシュ部材にて液保持部材40を形成してもよい。
【0052】
また、液保持部材の別の形態として、例えば図5に示すように、純水DWとの接触面積をもたせるべく純水DWの流れ方向に沿って長く形成される断面が格子状部材40Aによって液保持部材を形成してもよい。また、格子状部材40Aに代えて、図6(a)に示すような断面が多孔質状部材40Bや、図6(b)に示すような断面がハニカム状部材40C、あるいは、図6(c)に示すような断面が同心円上に位置する複数の複数の筒部を有する同心円筒部材40Dによって液保持部材40を形成してもよい。なお、同心円筒部材40Dによって液保持部材40を形成する場合は、図6(c)に示すように、隣接する筒部同士を例えば棒状の連結部材43によって連結する。
【0053】
なお、上記説明では、格子状部材40A,多孔質状部材40B,ハニカム状部材40C及び同心円筒部材40Dは、純水DWの流れ方向に沿って長く形成される場合について説明したが、メッシュ部材40a,40b,40cと同様に、格子状部材40A,多孔質状部材40B,ハニカム状部材40C,同心円筒部材40Dを複数の板状に形成し、各部材を異なる開口率にしてもよい。
【0054】
上記のように液保持部材を、格子状部材40A,多孔質状部材40B,ハニカム状部材40Cあるいは同心円筒部材40Dにて形成する場合においても、供給管路35から導かれる純水DWの流れ方向に対して直交する断面領域において液保持力を有するので、純水DWが大流量供給される場合は、純水DWは均一に格子状部材40A,多孔質状部材40B,ハニカム状部材40C,同心円筒部材40Dに接触して流速が減速され、純水DWは衝撃力が抑制されたつまりソフトな状態で基板Gに供給(吐出)される。また、純水DWの供給(吐出)開始時又は供給(吐出)停止時には、格子状部材40A,多孔質状部材40B,ハニカム状部材40C,同心円筒部材40Dによって少量の純水DWを保持することができる。
【0055】
<第2実施形態>
図7は、この発明の第2実施形態に係る処理液供給装置30Aを示す概略断面図である。
【0056】
第2実施形態は、ノズル33に、液保持部材例えばメッシュ部材40aを設けると共に、ノズル33におけるメッシュ部材40aより先端側部位の側部、具体的には上記キャップ部材39の側部に流通路36と外部とを連通する連通路50を設け、この連通路50に吸引管路51を介して吸引手段52を接続した場合である。この場合、吸引手段52の駆動及び停止と、供給管路35に介設される開閉弁Vの開閉とを選択的に駆動する制御手段であるコントローラ60が設けられている。このコントローラ60からの制御信号に基づいて開閉弁Vの開放時に吸引手段52を停止し、開閉弁Vの閉鎖時に吸引手段52が駆動されるように形成されている。
【0057】
なお、第2実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0058】
第2実施形態の処理液供給装置30Aによれば、リンス処理を行った後、コントローラ60からの制御信号に基づいて開閉弁Vが閉鎖して、純水DWの供給が停止すると、開閉弁Vの閉鎖と同時に吸引手段52が駆動して、図8(a)に示すように、ノズル33におけるメッシュ部材40aより先端側に付着する純水DWを連通路50及び吸引管路51を介して外部に排出することができる。したがって、ノズル33におけるメッシュ部材40aより先端側に付着する純水DWは除去され、ノズル33内の残りの純水DWはメッシュ部材40aの液保持力によって保持され、液ダレやボタ落ちを防止することができる(図8(b)参照)。
【0059】
<第3実施形態>
図9は、この発明の第3実施形態に係る処理液供給装置30Bの純水供給時の状態を示す概略断面図、図10は、上記処理液供給装置30Bの純水停止時の状態を示す概略断面図である。
【0060】
第3実施形態は、ノズル33に、液保持部材例えばメッシュ部材40aを設けると共に、ノズル33におけるメッシュ部材40aより先端側部位の側部、具体的には上記キャップ部材39の側部に、例えば合成ゴム製の伸縮自在な中空環状部材70を設け、この中空環状部材70の中空部70a内に流体例えば空気を供給する流体供給手段例えばコンプレッサ71を接続した場合である。この場合、コンプレッサ71の駆動及び停止と、供給管路35に介設される開閉弁Vの開閉とを選択的に駆動する制御手段であるコントローラ60Aが設けられている。このコントローラ60Aからの制御信号に基づいて開閉弁Vの開放時にコンプレッサ71を停止し、開閉弁Vの閉鎖時にコンプレッサ71が駆動されるように形成されている。
【0061】
なお、第3実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0062】
第3実施形態の処理液供給装置30Bによれば、リンス処理を行った後、コントローラ60Aからの制御信号に基づいて開閉弁Vが閉鎖して、純水DWの供給が停止すると、開閉弁Vの閉鎖と同時にコントローラ60Aが駆動して、図10に示すように、中空環状部材70の中空部70a内に空気を供給する。すると、中空環状部材70は膨隆して、ノズル33の流通路36の口径が小さくなり、ノズル33におけるメッシュ部材40aより先端側に付着する純水DWを保持する。したがって、ノズル33におけるメッシュ部材40aより先端側に付着する純水DWは中空環状部材70によって保持され、液ダレやボタ落ちを防止することができる。
【0063】
<第4実施形態>
図11は、この発明の第4実施形態に係る処理液供給装置30Cの純水供給時の状態を示す断面図(a)及び純水停止時の状態を示す断面図(b)である。
【0064】
第4実施形態は、ノズル33に、液保持部材例えばメッシュ部材40aを設けると共に、ノズル33におけるメッシュ部材40aより先端側部位に、純水DWの通過領域の大きさに応じて開口面積が可変可能な補助液保持部材80を設けた場合である。この場合、補助液保持部材80は、キャップ部材39の先端に接着されており、先端に向かって狭小テーパ状に形成され、かつ、周方向に適宜間隔をおいて複数のスリット81を有する弾性部材例えば可撓性を有する合成ゴム製部材にて形成されている。
【0065】
なお、第4実施形態において、その他の部分は第1実施形態と同じであるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0066】
第4実施形態の処理液供給装置30Cによれば、リンス処理時には、図11(a)に示すように、供給管路35を介してノズル33の流通路36内を流れる純水DWの通過領域が大きくなるので、これに応じて補助液保持部材80が拡径して純水DWを供給(吐出)することができる。また、リンス処理を行った後、開閉弁Vが閉鎖して、純水DWの供給が停止すると、図11(b)に示すように、供給管路35を介してノズル33の流通路36内を流れる純水DWの通過領域が小さくなるので、これに応じて補助液保持部材80が縮径して、ノズル33におけるメッシュ部材40aより先端側の純水DWを保持する。したがって、ノズル33におけるメッシュ部材40aより先端側に付着する純水DWは補助液保持部材80によって保持され、液ダレやボタ落ちを防止することができる。
【0067】
<その他の実施形態>
上記第2ないし第4実施形態では、液保持部材40がメッシュ部材40aにて形成される場合について説明したが、メッシュ部材40aに代えて上記格子状部材40A,多孔質状部材40B,ハニカム状部材40C又は同心円筒部材40Dを用いてもよい。また、液保持部材を複数用いてもよい。
【0068】
上記実施形態では、この発明に係る処理液供給装置30,30A,30B,30Cを現像処理装置のリンス処理部に適用した場合について説明したが、この発明に係る処理液供給装置は現像処理装置以外の処理液供給部にも適用可能である。
【0069】
なお、上記実施形態は、レチクル等のガラス基板の処理に関する場合について説明したが、この発明はこれに限らず、例えば、この発明は、LCD,FPD(フラットパネルディスプレイ)等の方形の基板や、ウエハ等の円形の基板など他の基板にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】この発明に係る処理液供給装置を適用した現像処理装置を示す概略縦断面図である。
【図2】上記現像処理装置の概略平面図である。
【図3】この発明に係る処理液供給装置の第1実施形態を示す断面図である。
【図4】第1実施形態における液保持部材の取付状態を示す分解斜視図である。
【図5】この発明における液保持部材の別の形態の取付状態を示す断面図(a)及び(a)のI−I線に沿う断面図(b)である。
【図6】この発明における液保持部材の更に別の形態を示す断面図である。
【図7】この発明に係る処理液供給装置の第2実施形態を示す概略断面図である。
【図8】第2実施形態の処理液排出時の状態を示す断面図(a)及び排出後の状態を示す断面図(b)である。
【図9】この発明に係る処理液供給装置の第3実施形態を示す概略断面図である。
【図10】第3実施形態の処理液供給停止時の状態を示す断面図である。
【図11】この発明に係る処理液供給装置の第4実施形態の処理液供給時の状態を示す断面図(a)及び処理液供給停止時の状態を示す断面図(b)である。
【符号の説明】
【0071】
G ガラス基板(被処理基板)
2 回転基台
30,30A,30B,30C 処理液供給装置
33 ノズル
34 リンス液供給源(処理液供給源)
35 供給管路
V 開閉弁
36 流通路
37 円筒部材
38 Oリング(シール部材)
39 キャップ部材
40 液保持部材
40a,40b,40c メッシュ部材(液保持部材)
40A 格子部材(液保持部材)
40B 多孔質部材(液保持部材)
40C ハニカム状部材(液保持部材)
40D 同心円筒部材(液保持部材)
50 連通路
51 吸引管路
52 吸引手段
60,60A コントローラ(制御手段)
70 中空環状部材
70a 中空部
71 コンプレッサ(流体供給手段)
80 補助液保持部材
81 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持手段にて保持される被処理基板に処理液を供給する処理液供給装置であって、
処理液供給源に接続される供給管路の先端部に装着され、供給管路に連通する流通路を有するノズルと、
上記ノズルの流通路内に設けられ、上記供給管路から導かれる処理液の流れ方向に対して直交する断面領域において液保持力を有する液保持部材と、を具備することを特徴とする処理液供給装置。
【請求項2】
請求項1記載の処理液供給装置において、
上記ノズルを、上記供給管路に固着される円筒部材にて形成し、
上記液保持部材を、上記円筒部材内に着脱可能に挿入し、シール部材を介して円筒部材に螺合される筒状キャップ部材にて固定してなる、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の処理液供給装置において、
上記液保持部材がメッシュ部材である、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の処理液供給装置において、
上記液保持部材が格子部材である、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の処理液供給装置において、
上記液保持部材が多孔質部材である、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の処理液供給装置において、
上記液保持部材がハニカム部材である、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項7】
請求項1又は2記載の処理液供給装置において、
上記液保持部材が同心円上に複数の筒部を有する同心円筒部材である、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の処理液供給装置において、
上記液保持部材は、先端側に向かって順次開口率が異なるように形成される、複数の部材からなる、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の処理液供給装置において、
上記ノズルにおける液保持部材より先端側部位の側部に流通路と外部とを連通する連通路を設け、この連通路に吸引手段を接続してなる、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項10】
請求項9記載の処理液供給装置において、
上記吸引手段の駆動及び停止と、供給管路に介設される開閉弁の開閉とを選択的に駆動する制御手段を更に具備し、
上記制御手段からの制御信号に基づいて上記開閉弁の開放時に上記吸引手段を停止し、開閉弁の閉鎖時に吸引手段を駆動する、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項11】
請求項1ないし8のいずれかに記載の処理液供給装置において、
上記ノズルにおける液保持部材より先端側部位の側部に、伸縮自在な中空環状部材を設け、この中空環状部材に流体を供給する流体供給手段を接続してなる、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項12】
請求項11記載の処理液供給装置において、
上記流体供給手段の駆動及び停止と、供給管路に介設される開閉弁の開閉とを選択的に駆動する制御手段を更に具備し、
上記制御手段からの制御信号に基づいて上記開閉弁の開放時に上記流体供給手段を停止し、開閉弁の閉鎖時に流体供給手段を駆動する、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項13】
請求項1ないし8のいずれかに記載の処理液供給装置において、
上記ノズルにおける液保持部材より先端側部位に、処理液の通過領域の大きさに応じて開口面積が可変可能な補助液保持部材を更に具備してなる、ことを特徴とする処理液供給装置。
【請求項14】
請求項13記載の処理液供給装置において、
上記補助液保持部材は、先端に向かって狭小テーパ状に形成され、かつ、周方向に適宜間隔をおいて複数のスリットを有する弾性部材にて形成される、ことを特徴とする処理液供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−205059(P2008−205059A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−37320(P2007−37320)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】