説明

分光計の波長較正法

【課題】特に比較的広い帯域幅を有する分光計について、従来のピーク探索法に比べてかなり良好な較正精度を達成する、分光計(特に2次分光計)の波長較正法を提供すること。
【解決手段】本発明の方法は、相関値がそれぞれのシフト段階について計算される、モデルスペクトルおよび較正スペクトルの対応する測定値ブロックの段階的な相対シフトの原理に基づく。それぞれの測定値ブロックについて、相関値が最適値に達するシフト値が決定される。測定値ブロックの位置マーカおよび関連するシフト値からなる値の対は、それぞれの測定値ブロックについて決定される。これらの値の対は、適した割り当て関数へのフィッティングについての設計点を表す。こうして得られた係数は、波長割り当ての係数として直接使用することができるし、あるいは、得られた係数を、たとえば、既存の第1の波長割り当ての係数と置き換えるかまたは既存の第1の波長割り当ての係数に対して補うように、既存の第1の波長割り当ての係数と組み合わせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光計の波長較正法に関する。特に、本発明は、ユーザによる2次分光計の波長較正法に関し、前記2次分光計は、工場で利用可能な1次分光計と構成が実質的に同じであり、また、波長較正用の標準器の役をする。本発明に係る方法は、好ましくは、検出ユニットおよびデータを記憶し処理するデータ処理デバイスを有する分光計の波長較正のために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
分光計は、一般に、スペクトルを表示するデバイスであり、光スペクトルを記録し、分析することができる。分光計は、液体成分をそのスペクトル特性に基づいて決定するために、とりわけ化学分析および医療分析において広く使用される。この目的で使用される分光計は、多色光分光器の原理に従って動作することが多い、すなわち、これらの方法では、照射光は、照射光がサンプル液体を通過した後まで、多色光分光器によってスペクトル成分に分割されず、スペクトル成分は、検出器アレイ上に同時に結像されることができる。これにより、スペクトル全体が同時に記録されることが可能となる(光学マルチチャンネル分析器(Optical Multichannel Analyzer)(OMA)またはマルチチャンネル分光計(Multi Channel Spectrometer)(MCS))。これは、波長を連続して走査する必要のある従来の単色光分光器システムに比べて有利である。最新のマルチチャンネル分光計は、完全スペクトルを非常に高速に評価電子部品に転送することができる。代表的な測定時間は、数ミリ秒であり、使用される検出器アレイの代表的な分解能は、128、256、512、1024または2048ピクセル/スペクトルである。多色光分光器分光計の他の利点は、光学コンポーネントの数が少ないことおよび機械的に動く部品が省略されることであり、分光計の製造がかなり安価になる。
【0003】
分光計についての代表的な使用分野は、たとえば、血液中のヘモグロビン誘導体の分析測定、いわゆる、CO酸素測定法である。こうした分光計測定基準の例は、ビリルビン(bili)、総ヘモグロビン(tHb)およびヘモグロビン誘導体であるオキシヘモグロビン(O2Hb)、デオキシヘモグロビン(HHb)、カルボキシヘモグロビン(COHb)およびメトヘモグロビン(MetHb)を測定するためのcobas b 211(Roche Diagnostics GmbH、ドイツ)のCOOX測定基準である。この場合、ヘモグロビン誘導体およびビリルビンは、ランバートベールの法則に基づいて測定される。このCO酸素測定法の測定基準の光学システムは、ハロゲンランプ、スリット、キュベットを有するキュベットホルダ、ならびに、多色光分光器および検出ユニットからなる。ハロゲンランプの光は、光ガイドを使用してキュベットホルダに誘導される。キュベットでは、光は、サンプルによって一部が吸収され、一部が透過する。吸収は、サンプルの組成に特徴的である。透過光は、さらなる光ガイドによって多色光分光器に誘導され、多色光分光器で、透過光は、そのスペクトル成分に分割され、光感応性受信器(CCDセンサ)の表面上に結像される。吸収、最終的に、ヘモグロビン誘導体の濃度は、得られる電気信号から計算される。動作の信頼性の高さを達成するために、多色光分光器は、内蔵式スペクトル光源によって較正される。この較正は、機器がスイッチオンされるたびに、また、システム較正中、少なくとも毎日1回、実施される。
【0004】
分光計用の多くの分析用途は、機器固有の較正データを必要とし、その生成は、時間がかかり、高価であることが多い。たとえば、同じ製造業者によって生産された明らかに同一の機器は、小さな機器変動を示す可能性があり、こうした変動は、機器に別の機器内の同じ要素からわずかに外れる要素が組み込まれるときに見られる。さらに、ある製造業者によって生産された機器についての較正器セットは、一般に、別の製造業者によって生産される同様の機器には適していない。さらに、単一機器の修理は、機器のスペクトル応答が変動するという影響を及ぼす可能性がある。機器が経年変化する場合、それによってスペクトル応答が変わる可能性がある。機器のスペクトル応答は、さらに、動作環境の変動によって変わる可能性がある。非常に低い濃度で分析物の正確な分析を必要とすることが多い医療診断用途の場合、わずかな機器変動でさえも、許容できない分析誤差をもたらす可能性がある。
【0005】
分光法に基づく生物医学用途のための分析機器の開発では、ある用途についての何百〜何千の同様に構築された分析機器を生産する必要性が存在する。こうした多数の機器の場合、個々の機器を迅速にかつ費用効果的に較正するための有効な方法は存在しない。したがって、この場合、1つの分析機器から次の分析機器へ較正を転送することが試みられる。これは、実際には、標準器の役をする1次分光計に関する較正データセットを工場で生成することによって達成される。このデータセットは、その後、構成が同一である1つまたは多くの2次分光計に転送され、2次分光計は、その後、これらの1次分光計の較正データと共に、顧客に配送することができる。上述したように、1次分光計と2次分光計との間のわずかの個々の差でさえも、2次分光計に関する変更なしでは、1次分光計の較正データを使用することができないことを意味する可能性がある。それは、変更しなければ、較正データが機器固有でないため、特に医療診断用途の場合に分析物測定において許容できない不正確さが生じる可能性があるからである。分光分析システムの重要な較正パラメータは、波長較正、すなわち、記録されたスペクトルの個々のピクセルを、ピクセル上に結像されるある波長範囲へ割り当てることである。
【0006】
こうした波長較正は、たとえば、適した割り当て関数の形の波長割り当てによって決定することができ、割り当て関数は、たとえば、3次の多項式の形では、多項式関数λ(x)=a+ax+a+aによって、たとえばnm単位の波長λを、あるピクセル番号xに割り当てる。
【0007】
分光計の波長を較正するための種々の方法が、従来技術で既に知られている。
【0008】
従来の波長較正法では、検出ユニット上に結像した、たとえば、ネオンランプのスペクトルを、ピーク探索法で使用して、その正確な波長がわかっているネオンランプの各発光ピークがどのピクセルにあるかが判定される。この場合、それぞれのピークは、通常、いくつかのピクセルにわたって広がり、最大値は、2つのピクセルの間になる可能性がある。このピークは、ピクセルの強度値を使用する、適した数学的関数によって表すことができる。できる限り正確にピークの位置を決定する1つの方法は、使用される数学的関数を積分し、その後、こうして決定した曲線下面積をサイズが同じ2つの部分面積に細分することであり、ピーク中心は、この細分線が位置するピクセル番号として規定される。この場合、ピーク中心が2つの実際のピクセルの間になり、そのため、非整数の仮想ピクセル番号をピーク中心として得ることも可能である。既知の波長と各ピークのピクセル番号とからなるこれらの値の対は、たとえば最小二乗誤差法に従って3次の多項式にフィッティングするための設計点を形成するいくつかのピークのそれぞれについてこうして決定する必要がある。十分に正確な波長較正のために、通常、少なくとも4〜8のピークが、ピーク探索法で必要とされる。十分に狭いピークが全く見出されないスペクトルの他の測定範囲は、この方法でさらに使用することができない。たとえば、3次の多項式へのフィッティングの場合に、フィッティングによって決定された係数、たとえば、a、a、a、aは、同時に、たとえば、λ(x)=a+ax+a+aに従って波長割り当ての係数を表す。
【0009】
従来技術で使用される多数の他のピーク探索法が存在する。そのため、たとえば、最大強度値を有するピクセルが最初に1つのピークについて決定される帯域幅法が使用される。その後、最大強度値のあるパーセンテージ、たとえば、70%、50%または30%に達するピクセル番号が決定される。同様に、この場合、精度を上げるために、補間法がやはり使用されることがあり、したがって、非整数ピクセル番号が、仮想ピクセル番号として得られる。2つのピクセル番号、すなわち強度最大値の左の番号と右の番号が得られ、2つのピクセル番号から平均によって望ましいピーク中心が得られる。
【0010】
考えられる別の方法は、放物線法である。この方法の基礎は、放物線が3点によって多義的に規定されることができることである。最初に、観測ピークの最大強度値を有するピークのピクセルが決定される。さらに、このピクセルの左と右にあるピクセルの強度値が決定される。放物型方程式をこれら3つの値の対によって決定することができ、その頂点はピーク中心に相当する。同様に、この場合、補間法を使用して精度を上げることができるため、非整数ピクセル番号が、仮想ピクセル番号として得られる。
【0011】
米国特許第6,700,661号は、規定された参照サンプルを2次分光計において測定し、その(補正された)スペクトル曲線Ssecを、機器上に同様に記憶される参照スペクトルXsecと比較する波長較正法を記載する。いわゆる、「スペクトル残差(spectral residual)」値が、2つのスペクトル間の一致のための値として導入される。波長較正の場合、「スペクトル残差」値の最小値に達する波長−ピクセル番号の関係が使用される。反復法が使用されて、この最小値が決定され、それにより、参照サンプルの測定スペクトルと保管された参照スペクトルとの間の最良の一致が起こる波長−ピクセル番号の関係が決定される。
【0012】
この方法に従って波長較正を実施するために、正確に規定された組成を有する参照サンプルを測定することが絶対的に必要である。このために、さらなる較正解決策が必要となり、このロット固有の組成は、較正にさらなる変数を導入し、較正の精度を損なう可能性がある。ここで使用される反復法の場合、2次以上の多項式を用いて波長割り当てを決定することはさらに非常に難しく、較正の精度を制限する。さらに、この方法は、補正スペクトルを計算するさらなるステップを必要とし、計算を実行するように指示されるデータ処理システムの計算パワーに関する要求を増加させる。
【0013】
励起光をサンプルに連続して照射されるスペクトル成分に分割するために、回転回折格子(swiveling defraction gratings)または干渉フィルタ配置などの移動式光学要素を使用する分光計が、米国特許第4,866,644号に記載される。波長割り当ての誤差は、特に機械式格子ドライブおよびコントロールの結果として、こうした分光計タイプで起こる可能性がある。
【0014】
こうした誤差を考慮するために、1次分光計を参照した2次分光計の波長較正およびスペクトル補正は、工場で実施される。このために、多数の異なるサンプルが、1次分光計ならびに2次分光計において測定され、それぞれのサンプルタイプについてこれらのデータに基づいて固有モデルスペクトルが設定される。種々のモデルスペクトルの測定値は、その後、波長または対応する単位当たりの各セットに統合される。相関分析は、1次スペクトルのそれぞれのセットについて2次スペクトルのおよそ5つの近傍セットに関して実施される。この場合、最良相関値は、最大値として、または、個々の値を2次関数にフィッティングすることによって決定される。これは、1次スペクトルの全てのセットについて連続して実施される。新しい波長割り当ては、個々の値の対の間で1次の関数を使用する相関計算によって決定される。この場合、工場での波長較正を実施するために、大豆または穀物などの天然サンプルをサンプルとして使用する。したがって、こうした天然サンプルは、その光学特性を変えないで長期間貯蔵することができないため、ユーザが後に波長較正を実施することは難しい。こうした天然参照材料の使用はまた、これらのスペクトル特性の標準化を確保することが可能でないため問題がある。
【0015】
米国特許第5,347,475号は、厳密に規定された原子発光線を有する単色光に本質的に基づく波長較正法を記載する。これらは、1次分光計と2次分光計によってその既知の位置を決定することによる波長較正のために使用される。この場合、ピーク探索法は、原子発光線の位置を見出すために使用され、使用される分光計の分解能および精度に関する高い要求を行う。記載されている方法は、2nm未満の分解能を有する高分解能分光計で使用するのに主に適する。
【0016】
米国特許第5,771,094号は、照射光のスペクトルから、1本または複数本の以前に選択されたピークまたは原子線の位置を決定することによって、2次分光計の波長較正を連続して監視する方法を記載する。このために従来のピーク探索法が使用される。こうして、実際の値と2次分光計に保管されたピーク最大との比較から、偏差が決定され、また、補正処置が始動される。同様に、この場合、記載される方法は、原子線を分解する必要のある分光計の精度および分解能に関する高い要求を行う。
【0017】
上述した波長較正法は、システムに関連する理由で、これまで、高分解能分光計(すなわち、考えられる最も狭い帯域幅を有する分光計)にしか使用されないという主な欠点を有する。その理由は、十分な程度まで分解されるピークが、そのような高分解能分光計でしか得られないためである。図1は、この関連で、660nm〜960nmの波長範囲における同じネオンランプの2つのスペクトルを示す。波長λ(nm)はx軸上にプロットされ、最大値に正規化された強度I(相対単位)はy軸上にプロットされる。連続線で示すスペクトルは、2.5nmの帯域幅を有する分光計で記録され、点線で示すスペクトルは、8nmの帯域幅を有する分光計で記録された。
【0018】
ピーク探索法による波長較正に必要とされるネオンスペクトルの狭いピークは、波長較正の適切な品質を確保するために、高分解能分光計で適切に分解されるのみであることがはっきりわかる。これに必要とされるピークは、分解能が低い分光計によってはもはや適切に分解されることができず(たとえば、680〜700nmおよび870〜890nmの範囲の分解された単一ピークの代わりに、660〜680nmまたは730〜760nmまたはショルダ(shoulder)の分解されない複数ピークを参照されたい)、ピーク探索法によってこの方法に基づく波長較正の精度を大幅に減少させることになる。先に述べたピーク探索法、特に、表面積分法を使用したピーク探索法によって、特に、医療診断分野の用途に必要な±5・10−3nmの較正精度が、狭い帯域幅の高品質分光計を使用することによって達成されることができるだけである。この場合、較正精度は、全波長範囲にわたる最大誤差(計算波長から参照波長を引いた値)として理解される。結果として、製造品質および分解能に関する要求が高いため、複雑でかつ高価である高分解能分光計だけが、こうした医療診断分析システムのために使用されてきた。既に述べたように、こうした分析システムは、大量に製造されることが多いため、こうした分光計に対するこの制約は、かなりの生産コスト要因となる。
【0019】
したがって、こうした用途の場合、全体サイズが小さく価格が低い分光計を使用することが望ましい。しかし、こうした分光計は、広い帯域幅および非対称ピークの表示などの不十分な光学特性を有することが多い。これらの分光計が、従来のピーク探索法を使用してユーザによって較正されるとき、最高1nmに過ぎない較正精度が可能であり、医療診断用途には十分ではない。1nm未満の較正精度が工場で達成されるが、これは、非常に費用のかかるスペクトルランプの使用を必要とし、また、非常に面倒であるため、ユーザによって標準器として使用されることができない。その結果、以前から使用されるピーク探索法は、こうした低コスト分光計について満足できる結果をもたらさない。
【0020】
さらに、ピーク探索原理に基づく従来の波長較正法は、スペクトルランプ、または、できる限り狭い多数のピークを有する同様な光源を必要とすることが多い。波長較正のための、代替的かつおそらくより費用効果的な光源の使用は、あまりに少なくかつ/または広い発光ピークを通常有する発光スペクトルのために、これまで可能でなかった。一方で分光計の光学帯域幅のため、他方でスペクトルランプの制限されたピーク数のため、少数の適したピークだけが利用可能であり、スペクトルの全ての他の範囲を使用して較正値を決定することができないため、波長較正の品質が制限される。
【特許文献1】米国特許第6,700,661号
【特許文献2】米国特許第4,866,644号
【特許文献3】米国特許第5,347,475号
【特許文献4】米国特許第5,771,094号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
そのため、本発明の目的は、波長較正のための代替の方法を提供することである。
【0022】
特に、本発明の目的は、広い帯域幅を有する低コスト分光計を使用しても、高い較正精度を確保し、そのため、特に、医療診断用の分析器におけるこうした分光計の使用をも可能にする波長較正法を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、代替的であり、かつ、おそらくより費用効果的な光源を使用することが可能である波長較正法を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、複雑な計算ステップができる限り回避され、またそれにより、より単純なデータ処理システムによって実施することができる波長較正法を提供することである。
【0025】
本発明のさらなる目的は、波長較正を実施するための外部参照媒体を使用することのない波長較正法を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は、付加的な労力なしで、分光計のための通常の較正手順の一部として実施することができる波長較正法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的は、以下に記載する波長較正法を提供することによって本発明によって達成される。こうした方法の特に有利な実施形態は以下に示される。
【0028】
一般に、これは、分光計の波長較正法であって、該分光計において少なくともモデルスペクトルの2つの測定値ブロックのデータが存在する、以下のステップを含む分光計の波長較正法によって達成される:
(a)分光計における光源の強度スペクトルを較正スペクトルとして決定するステップと、
(b)モデルスペクトルの、分光計に存在する測定値ブロックの一方に相当する測定値ブロックを較正スペクトルから削除するステップと、
(c)モデルスペクトルの測定値ブロックに対して較正スペクトルの測定値ブロックを段階的にシフトさせ、2つの測定値ブロック間の相関値をそれぞれの場合に決定するステップと、
(d)相関値がそこで最適値に達するシフト値を決定するステップと、
(e)モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカとシフト値とからなる値の対を決定するステップと、
(f)モデルスペクトルの全てのさらなる測定値ブロックについて、プロセスステップ(b)〜(e)を繰り返すステップと、
(g)モデルスペクトルの各測定値ブロックの位置マーカと、関連するシフト値とからなる、プロセスステップ(b)〜(f)で得られた値の対を、割り当て関数にフィッティングさせ、それにより、係数a、a…を得るステップと、
(h)これらの係数を使用して、分光計の波長割り当てを決定するステップとを含む。
【0029】
本発明の第1の好ましい実施形態では、これは、検出ユニット、ならびに、光源の強度スペクトルとして1次分光計において決定された、少なくともモデルスペクトルの2つの測定値ブロックのデータが存在するメモリを有する2次分光計の波長較正のための方法によって実施され、この方法は、少なくとも以下のステップ、
(a)2次分光計における光源の強度スペクトルを較正スペクトルとして決定するステップであって、このために使用される光源および検出ユニットは、モデルスペクトルを決定するのに使用される光源および検出ユニットと同等のタイプの構成を有し、較正スペクトルは、モデルスペクトルを決定するのに使用される条件と同等の条件下で決定されるステップと、
(b)2次分光計のメモリに存在する、モデルスペクトルの測定値ブロックの一方に相当する測定値ブロックを較正スペクトルから削除するステップと、
(c)モデルスペクトルの測定値ブロックに対して較正スペクトルの測定値ブロックを、それぞれの場合に単一または複数ピクセル値だけ、段階的にシフトさせ、2つの測定値ブロックの強度値間の一致の尺度である2つの測定値ブロック間の相関値をそれぞれの場合に決定するステップと、
(d)モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと較正スペクトルの対応する位置マーカとの間の距離との和として、相関値がそこで最適値に達するシフト値を決定するステップと、
(e)モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカとプロセスステップ(d)後のシフト値とからなる値の対を決定するステップと、
(f)モデルスペクトルの全てのさらなる測定値ブロックについて、プロセスステップ(b)〜(e)を繰り返すステップと、
(g)波長割り当てを割り当て関数として決定するステップであって、割り当て関数の係数a、a…が、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、関連するシフト値とからなる、プロセスステップ(b)〜(f)で得られた値の対をフィッティングさせることによって得られるものである前記ステップとを含む。
【0030】
本発明の第2の好ましい実施形態では、これは、検出ユニット、ならびに、光源の強度スペクトルとして1次分光計において決定された、少なくともモデルスペクトルの2つの測定値ブロックのデータ、および、係数a、a…を有する割り当て関数の形の第1の波長割り当てが存在するメモリを有する2次分光計の波長較正のための方法によって実施され、この方法は、少なくとも以下のステップ、
(a)2次分光計における光源の強度スペクトルを較正スペクトルとして決定するステップであって、このために使用される光源および検出ユニットは、モデルスペクトルを決定するのに使用される光源および検出ユニットと同等のタイプの構成を有し、較正スペクトルは、モデルスペクトルを決定するのに使用される条件と同等の条件下で決定されるステップと、
(b)2次分光計のメモリに存在する、モデルスペクトルの測定値ブロックの一方に相当する測定値ブロックを較正スペクトルから削除するステップと、
(c)モデルスペクトルの測定値ブロックに対して較正スペクトルの測定値ブロックを、それぞれの場合に単一または複数ピクセル値だけ、段階的にシフトさせ、2つの測定値ブロックの強度値間の一致の尺度である2つの測定値ブロック間の相関値をそれぞれの場合に決定するステップと、
(d)モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと較正スペクトルの対応する位置マーカとの間の距離との和として、相関値がそこで最適値に達するシフト値を決定するステップと、
(e)モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカとプロセスステップ(d)後のシフト値とからなる値の対を決定するステップと、
(f)モデルスペクトルの全てのさらなる測定値ブロックについて、プロセスステップ(b)〜(e)を繰り返すステップと、
(g)モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、関連するシフト値とからなる、プロセスステップ(b)〜(f)で得られた値の対を割り当て関数にフィッティングさせることによって、補正係数a’、a’…を決定するステップと、
(h)第1の波長割り当ての係数a、a…を、プロセスステップ(g)で決定された対応する補正係数a’、a’…で置き換えることによって、波長較正された波長割り当てを決定するステップとを含む。
【0031】
本発明の第3の好ましい実施形態では、これは、検出ユニット、ならびに、光源の強度スペクトルとして1次分光計において決定された、少なくともモデルスペクトルの2つの測定値ブロックのデータ、および、係数a、a…を有する割り当て関数の形の第1の波長割り当てが存在するメモリを有する2次分光計の波長較正のための方法によって実施され、この方法は、少なくとも以下のステップ、
(a)2次分光計における光源の強度スペクトルを較正スペクトルとして決定するステップであって、このために使用される光源および検出ユニットは、モデルスペクトルを決定するのに使用される光源および検出ユニットと同等のタイプの構成を有し、較正スペクトルは、モデルスペクトルを決定するのに使用される条件と同等の条件下で決定されるステップと
(b)2次分光計のメモリに存在する、モデルスペクトルの測定値ブロックの一方に相当する測定値ブロックを較正スペクトルから削除するステップと、
(c)モデルスペクトルの測定値ブロックに対して較正スペクトルの測定値ブロックを、それぞれの場合に単一または複数ピクセル値だけ、段階的にシフトさせ、2つの測定値ブロックの強度値間の一致の尺度である2つの測定値ブロック間の相関値をそれぞれの場合に決定するステップと、
(d)モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、較正スペクトルの対応する位置マーカとの間の距離として、相関値がそこで最適値に達するシフト値を決定するステップと、
(e)モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカとプロセスステップ(d)後のシフト値とからなる値の対を決定するステップと、
(f)モデルスペクトルの全てのさらなる測定値ブロックについて、プロセスステップ(b)〜(e)を繰り返すステップと、
(g)モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、関連するシフト値とからなる、プロセスステップ(b)〜(f)で得られた値の対を割り当て関数にフィッティングさせることによって、補正係数Δa、Δa…を決定するステップと、
(h)プロセスステップ(g)で決定された補正係数Δa、Δa…を、第1の波長割り当ての対応する係数a、a…と組み合わせること、特に、補正係数Δa、Δa…を係数a、a…に加算することによって、波長較正された波長割り当てを決定するステップとを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
これらの種々の好ましい実施形態は、2次分光計において決定された(プロセスステップ(a)に相当)較正スペクトルの測定値ブロックを、2次分光計のメモリに存在する(プロセスステップ(b)に相当)モデルスペクトルの対応する測定値ブロックに関して段階的に相対シフトさせる(プロセスステップ(c)に相当)という本発明に共通する原理の適用に基づいており、測定値ブロック間の一致についての相関値は、シフトステップごとに決定される(プロセスステップ(c)に相当)。本発明によれば、モデルスペクトルのそれぞれの測定値ブロックの場合、相関値がそこで最適値に達する、すなわち、モデルスペクトルと較正スペクトルの対応する測定値ブロックがそこで最良に一致するシフト値が決定される(プロセスステップ(d)に相当)。このシフト値は、モデルスペクトルと較正スペクトルの対応する測定値ブロックのどの相対的シフトにおいて、最良の一致が達成されるかを示す。較正スペクトルの測定値ブロックが、位置マーカピクセル32を有するモデルスペクトルの対応する測定値ブロックに対して右に2ピクセルだけシフトされるときの最適相関の場合、これは、たとえば、差分値+2の形(第3の好ましい実施形態に相当)または絶対値34(=位置マーカピクセル32+(+2ピクセルの相対シフト))の形(第1および第2の好ましい実施形態に相当)で表される。モデルスペクトルのそれぞれの測定値ブロックについて、モデルスペクトルの測定値ブロックの各位置マーカと、関連するシフト値とからなる値の対が決定される(プロセスステップ(e)に相当)。これらの値の対は、適した割り当て関数にフィッティングする(プロセスステップ(g)に相当)ための設計点を表す。こうして得られた係数a、a…は、波長割り当ての係数として直接使用される(第1の好ましい実施形態のプロセスステップ(g)に相当)か、あるいは、これは既存の第1の波長割り当ての係数と組み合わせることができ、たとえば、係数a、a…を、既存の第1の波長割り当ての係数に置き換える(第2の好ましい実施形態のプロセスステップ(h)に相当)か、または、係数a、a…を、既存の第1の波長割り当ての係数と組み合わせる(第3の好ましい実施形態のプロセスステップ(h)に相当)ことによって行う。
【0033】
本発明に係る方法の第1の好ましい実施形態の場合、第1の波長割り当てが、2次分光計に存在するのではなく、むしろ、モデルスペクトルの少なくとも2つの測定値ブロックだけが存在し、この少なくとも2つの測定値ブロックは、測定値ブロックの位置マーカ、ならびに、それぞれがピクセル番号とそのピクセル番号のモデルスペクトルの強度値とからなる、少なくとも2つの値の対からなる。本発明に係る方法を使用して、モデルスペクトルの測定値ブロックの各位置マーカと、関連するシフト値とからなるこれらの測定値ブロックのそれぞれについての値の対を決定することができる。モデルスペクトルの測定値ブロックの既知の位置マーカと組み合わされると、得られた割り当て関数によって、モデルスペクトルの位置マーカを較正スペクトルの対応する位置マーカの対応する位置に割り当てることによって、2次分光計の波長を較正することが可能となる。こうした方法は、対応する波長に対するピクセルの波長割り当てが不可欠ではない場合に、特に使用することができる。そのため、たとえば、用途によっては、正確な波長割り当てを知ることなく、一定の領域を互いに比較することができることで十分な場合がある。こうした場合、対応するスペクトル領域が確実に考慮されれば十分である。これは、好ましくは、第1の好ましい実施形態による本発明の方法によって達成することができる。
【0034】
多くの場合、波長割り当ては、2次分光計について既に利用可能である。こうした波長割り当ては、分光計製造業者によって提供されることが多く、また、本発明においては第1の波長割り当てに相当する。こうした波長割り当ては、一般に、適した割り当て関数によって、また、少なくとも、式λ(nm)=a+ax+…の形の少なくとも1次の多項式によって表され、係数a、a…は、ピクセルxの各波長割り当てを決定し、したがって、波長較正の一部として決定されなければならないパラメータを表す。同一の構成を有する分光計の場合、波長割り当ては、たとえば、従来のピーク探索法によって、たとえば、標準器または参照分光計の役をする1次分光計において工場で決定され、その後、2次分光計に転送され、同一の構成を有する分光計が同様の光学特性を有するという仮定の下で第1の波長割り当てとして2次分光計に記憶される。しかし、各2次分光計の光学システムと1次分光計の光学システムとの個々の差のために、結像特性の偏差が生じるため、2次分光計に関する第1の波長割り当ては、もはや同等の結果をもたらさない。そのため、2次分光計の波長を較正することによって、分光計間のこれらの個々の差を考慮する必要性があることになる。本発明に係る方法は、このために使用することが好ましい。
【0035】
2次分光計において第1の波長割り当てを作成する別の方法は、規定された光源および/または規定された較正溶液(calibration solution)を用いる較正によって工場で分光計を較正することである。しかし、工場でのこうした較正ステップは、製造されるそれぞれの2次分光計について個々に実施する必要があるため複雑である。この場合、工場内での個々の較正によって得られる波長割り当ては、本発明においては、第1の波長割り当てに相当する。2次分光計におけるこうした第1の波長割り当ては、公知の較正法、特に、ピーク探索法によって決定することができる。分光計はまた、その光学特性が、外部環境および条件(温度、機械的振動など)に応じて経時的に変化する可能性があるという特性を有する。そのため、2次分光計の定期的な波長較正によって、分光計の生じる個々の差を考慮することが必要であることが多い。本発明に係る方法は、このために使用することが好ましい。
【0036】
本発明に係る方法の第2の好ましい実施形態の場合、割り当て関数にフィッティングすることによって、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカとシフト値とからなる値の対に基づいて、補正係数a’、a’…を、プロセスステップ(g)で得る。この場合、相関値がそこで最適値に達するシフト値は、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと較正スペクトルの対応する位置マーカとの間の距離との和として、プロセスステップ(d)で決定されるため、シフト値は、元の波長割り当てならびに考えられる個々の波長シフトを既に考慮している絶対値に相当する。この場合、プロセスステップ(h)にて、第1の波長割り当ての係数a、a…は、プロセスステップ(g)で決定された補正係数a’、a’…と置き換えることができ、したがって、波長較正された波長割り当てが得られ、この波長割り当てが多項式の場合には、たとえば、式λcal(nm)=a’+a’x+…の形の割り当て関数として得られる。
【0037】
本発明に係る方法の第3の好ましい実施形態の場合、割り当て関数にフィッティングすることによって、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカとシフト値とからなる値の対に基づいて、補正係数Δa、Δa…を、プロセスステップ(g)で得る。この場合、相関値がそこで最適値に達するシフト値は、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと較正スペクトルの対応する位置マーカとの間の距離としてプロセスステップ(d)において決定されるため、これは考えられる個々の波長シフトを考慮するのみの差分値に相当する。この場合、プロセスステップ(h)にて、プロセスステップ(g)で決定された補正係数Δa、Δa…は、元の波長割り当ても考慮するために、第1の波長割り当ての係数a、a…とさらに組み合わせ、特に、その係数a、a…に加算する必要がある。そのため、結果として、波長較正された波長割り当てが得られるが、これは、多項式の場合、たとえば式λcal(nm)=(a+Δa)+(a+Δa)x+…の形の割り当て関数として得られる。
【0038】
特に好ましい場合、補正係数は、プロセスステップ(g)において、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、割り当てられたシフト値とからなる値の対を、第1の波長割り当ての割り当て関数に相当する割り当て関数にフィッティングすることによって決定される。しかし、原理的には、プロセスステップ(g)で使用されるこの割り当て関数は、第1の波長割り当ての割り当て関数と同一である必要はない。2つの異なる割り当て関数を組み合わせること、特に、両者を加算することも可能である。これは、特に、割り当て関数が多項式の場合に可能である。そのため、プロセスステップ(g)にて第1の波長割り当ての多項式の次数より高い次数の多項式が使用される場合、第1の波長割り当ての多項式の係数は、プロセスステップ(g)で使用される多項式の対応する係数によって置き換えられる、または、それらの係数と組み合わせ、特に、それらの係数に加算し、第1の波長割り当ての多項式とは全く同等性が見出されないプロセスステップ(g)で使用される多項式の係数は、波長較正された波長割り当ての付加的な係数として加算される。プロセスステップ(g)にて第1の波長割り当ての多項式の次数より低い次数の多項式が使用される場合、プロセスステップ(g)で使用される多項式の係数は、第1の波長割り当ての多項式の対応する係数と置き換える、または、その係数と組み合わせる、特に、その係数に加算することができる。プロセスステップ(g)で使用される多項式とは全く同等性が見出されないプ第1の波長割り当ての多項式の付加的な係数は、波長較正された波長割り当てにおいて、ゼロに設定される。
【0039】
2次分光計の波長較正のための本発明に係る方法は、比較的低い光学品質、すなわち、広い帯域幅を有する分光計の波長較正法を初めて提供する。かなり安価でかつよりコンパクトであることが多いこれらの分光計はまた、本発明に係る方法を用いて非常に正確に較正することができ、そのため、医療診断用の分析器内での使用のために初めて利用可能になる。
【0040】
さらに、多数の非常に狭いピークを有する較正スペクトルを較正の基礎として使用することにもはや制限されることのない本発明に係る波長較正法により、こうした多数のピークを有するスペクトルを必ずしも生じる必要がない代替的な低コスト光源の使用が可能となる。これは、たとえば、ハロゲンランプなどの広帯域光源の使用を可能にし、ハロゲンランプの発光スペクトルは、希土類金属フィルタなどのフィルタを使用することによって、本発明に係る使用についてさらに最適化することができる。
【0041】
従来技術の多くの方法とは対照的に、本発明に係る方法は、反復的方法、したがって、高い計算能力を必要とする方法に基づかないため、複雑な計算ステップの繰り返しをできる限り省略することができ、それにより、本発明に係る方法は、比較的単純なデータ処理システムを用いて実施することができる。
【0042】
本発明に係る方法では、分光計の光源の強度スペクトルを波長較正のために使用するため、波長較正を実施するために、さらなる外部参照媒体を使用する必要がない。本発明に係る波長較正法は、短時間で自動化することができ、また、規則正しい間隔で実施することができ、信頼性および利便性に関してかなりの利点を有する。そのため、本発明の波長較正法は、たとえば、ユーザが介入する必要なしで、分光計用の通常の較正手順の一部としてさらなる労力なしに自動的に実施することができる。
【0043】
定義
本発明において、波長較正は、一般に、結像される波長範囲を、検出ユニットによって記録されたスペクトルのある領域に割り当てる方法として理解される。記録されたスペクトルの各範囲は、一般に、対応するピクセル(番号と位置)を指定することによって表される。
【0044】
本発明において波長割り当ては、結像される規定された波長(または、規定された小さな波長範囲)を、検出ユニットによって記録されたスペクトルのあるピクセルxに割り当てる割り当て関数として理解される。こうした波長割り当ては、通常、少なくとも1次の多項式関数の形で実施される。こうした波長割り当ては、3次の多項式関数で表されることが多く、多項式関数λ(x)=a+ax+a+aによって、波長λを特定のピクセル番号xに割り当てる。この場合、係数a、a、a、およびaは、個々の較正パラメータを表し、その値は、波長較正の一部として決定することができる。割り当て関数は、好ましい多項式関数に加えて、原理的に、あるピクセルと結像される波長または波長範囲との明確な関係を確立する任意の他のタイプの関数であってもよい。こうしたタイプの関数は、たとえば、1次関数、2次関数、3次関数、べき関数、ルート関数、有理関数または断続的有理関数、三角関数、アーカス関数(arcus function)、指数関数、対数関数、双曲線関数、および当業者に公知の他のタイプの関数があり、当業者は、これらから、存在する値の対に応じて適した関数を選択することができる。
【0045】
本発明において1次分光計(同様に、1次機器またはマスタ機器)は、標準器として使用され、また、参照としてそこでモデルスペクトルが生成される、参照分析器として理解される。さらに、波長割り当てはまた、1次分光計において生成することができ、そしてこれは、同一の構成を有する2次分光計に転送することができ、本発明においてはこれらの2次分光計における第1の波長割り当てに相当する。1次分光計は、通常、工場内にあり、同じタイプの多くの2次分光計を較正するための参照機器の役をする。1次分光計の波長割り当てはまた、従来技術の方法に従って(たとえば、ピーク探索法によって)実施することも可能である。
【0046】
本発明において2次分光計(同様に、2次機器、ターゲット機器、フィールド機器、またはスレーブ機器)は、エンドユーザによって使用され、1次分光計と同じタイプの構成を有する分光計として理解される。2次分光計は、大量に製造されることが多いため、それぞれの各2次分光計の個々の較正は、非常に時間がかかり、かつ、費用がかかる。第1の波長割り当ては2次分光計上に既に存在することが多く、この第1の波長割り当ては、工場内での個々の第1の較正によって、あるいは、1次分光計と2次分光計が同じ製品(same make)である場合、1次分光計の波長割り当てを2次分光計に転送することによって実施される。2次分光計と1次分光計が非常に異なる場合、2次分光計の第1の波長割り当ては、公知の較正法、特に、ピーク探索法によって決定することもできる。この場合、特に、第1の波長較正は、測定値ブロックの位置をおよそ決定するためにピーク探索法によって実施することができ、その後、本発明に係る方法を使用して、これを基に、より正確な波長較正を実施する。
【0047】
原理的に、1次分光計と2次分光計は、同じ機器であることもできる。この場合、分光計は、たとえば、従来の波長較正法を使用して工場内で1回較正され、それ自体のモデルスペクトルが記録される(1次分光計に相当する)。その後、顧客への配送後に、分光計は、本発明に係る方法を使用して、ユーザによって較正される(2次分光計に相当する)。こうした実施形態もまた本発明に包含される。
【0048】
本発明においてモデルスペクトルは、1次分光計を使用して参照スペクトルとして決定された光源の強度スペクトルとして理解される。スペクトルは、一般に、波長、周波数、またはエネルギーの関数としての電磁放射の強度として理解され、波長、エネルギー、および周波数は、等価な量である。特に、検出器アレイを使用する分光測定法の場合、スペクトルがその上に結像される検出器アレイのピクセル番号の関数として強度をプロットすることが可能である。それは、適切な波長較正後に、ピクセル番号とそのピクセルに結像されたスペクトル範囲との間に明白な関係が存在するからである。この関係で、光源の強度スペクトルは、光源の直接発光スペクトルとして理解されるだけではない。そのスペクトル特性が光源の発光部位と検出ユニットとの間で修正された光源の発光スペクトルはまた、本発明においては光源の強度スペクトルとみなすことができる。そのため、たとえば、あるスペクトル範囲が選択的に通過するのを可能にするか、または、これらの範囲を排除するために、光学フィルタ要素を導入することができる。さらに、ある色素または光学的に吸収性のかつ/もしくは散乱性の媒体を、たとえば、光学経路に導入することができ、それによって、較正または制御のために、たとえば、さらなる最大または最小の形で特に使用することができるスペクトルのさらなる修正がもたらされる。こうした媒体は、たとえば、特別な較正液または品質管理液であることができる。さらに、特別な色素を、光学経路に導入することができ、これにより蛍光および/または発光によって検出ユニットに到達する光のスペクトル範囲を拡大することができる。検出器によって、記録された1次モデルスペクトルは、制限された数の測定値(=実際のピクセル)を有するに過ぎず、したがって、中間値を得るために適した方法で補間して、さらなる仮想測定値を得ることができる。こうした方法は、波長較正の精度をかなり上げる可能性がある。
【0049】
本発明において較正スペクトルは、2次分光計を使用して決定された光源の強度スペクトルとして理解され、2次分光計の波長較正についての出発点の役をする。2次分光計において較正スペクトルを決定するとき、このために使用される2次分光計の光源と検出ユニットは、モデルスペクトルを決定するのに使用される光源と検出ユニットと同等のタイプの構成を有するべきであり、較正スペクトルは、モデルスペクトルを決定するのに使用される条件と同等の光学条件下で決定されるべきである。
【0050】
本発明において測定値ブロックは、モデルスペクトルまたは較正スペクトルからの複数の(たとえば、32の)隣接強度値の部分(区域)として理解される。測定値ブロックは、測定値ブロックの位置マーカと、少なくとも2つの値の対とを含み、2つの値の対はそれぞれ、ピクセル番号と、このピクセル番号におけるモデルスペクトルまたは較正スペクトルの強度値とからなる。そのため、測定値ブロックは、位置マーカとスペクトル範囲の幅(値の対の数)によって明白に識別されるモデルスペクトルまたは較正スペクトルのある部分的なスペクトルに相当する。
【0051】
本発明において検出器アレイは、一般に、隣接する光感応性検出器の配置構成を指す。こうしたダイオードアレイ検出器またはフォトダイオードアレイは、通常、直線に配置された(リニア)フォトダイオードの群、ならびに、通常、1つの集積化された電源および読み取り回路からなる。チップ上の個々のダイオードの数は制限される。最新のコンポーネントは、通常、128、256、512または1024の個々の要素を有する。この場合、こうした個々の要素はピクセルに相当する。互いに重なったいくつかのリニア検出器ラインの配置構成は、同様に(2次元アレイとして)知られており、これは適切に作動されると、本発明においてリニア検出器アレイとして使用することができる。こうした1次元または2次元検出器アレイは、たとえば、CCDチップ、CMOSチップ、フォトダイオードアレイ、アバランシェダイオードアレイ、マルチチャンネルプレート、およびマルチチャンネル光電子増倍管であることができる。
【0052】
本発明においてピクセルは、一般に、スペクトルのx軸が細分される最小単位として理解される。検出器アレイ、特に、リニア検出器アレイを検出器ユニットとして使用するとき、ピクセルは、最初は基本的に、個々の隣接する光感応性コンポーネント(フォトダイオード)に相当する。単色光分光器タイプの分光計では、検出器ユニットとして検出器アレイが使用されるのではなく、むしろ、感応性が適度にある単一検出器(たとえば、フォトダイオード、半導体検出器、または光電子増倍管)が使用される。単色光分光器タイプの分光計の場合、結像システムは、スリット上に光源の像を形成し、単色光分光器を使用して、スリットを通過する波長が選択される。単色光分光器は、たとえば、ステッパモータによって駆動され、単色光分光器の位置に関連する波長をスリットにそれぞれの場合に放射する。単色光分光器スリットからサンプル上に放射を収束させ、サンプルとの相互作用後に、それを検出器ユニット上に結像させるために、さらなる結像システムが使用される。順序は、基本的に逆にすることができる。すなわち、光源の光の経路は、最初にサンプルを通り、その後単色光分光器を通り、さらに検出器ユニット上に進む。通常、分析システムは、その後、各照射波長の各値および関連する検出器信号を一緒にし、それをスペクトルの形で表示する。本発明に係る方法は、こうした単色光分光器分光計によって得られたスペクトルと共に使用するのに基本的に適する。この場合、検出ユニット上で同時に結像される波長または波長範囲は、ピクセルとみなされる。これらのパラメータは、一方で、単色光分光器スリットの幅に、他方で、このスペクトル分解に使用される光学要素(たとえば、プリズムまたは回折格子)が作動する方法に依存する。たとえば、ステッパモータが、スペクトル分解に使用される光学要素を作動させるのに使用される場合、単色光分光器スリットにおける各スペクトル範囲は、たとえば、ステッパモータの各位置によって決定される。スペクトル分解に使用される光学要素が、たとえば、連続運動で作動される場合、単色光分光器スリットにおけるスペクトル範囲は、たとえば、スペクトル分解に使用される光学要素の運動を開始した後の、ある時間間隔との相関によって規定することができる。
【0053】
たとえば、検出器アレイのx(たとえば、128、256、512または1024)の個々の要素に相当するxの実際のピクセル値に加えて、付加的な中間値を補間法によって得ることができ、この中間値は、実際のピクセル間の規定された距離における仮想ピクセルとして存在する。そのため、たとえば、2つの実際のピクセル間での、それぞれの場合の9または99の仮想中間値の補間によって、512の個々のダイオードからなる検出器アレイによって得られたスペクトルのピクセル番号は、5111または51101のピクセルの計算されたピクセル番号まで増加することができる。ピクセル番号を増加させるこうした補間法は、本発明に係る波長較正法の精度を高める。測定される実際のピクセルおよび補間によって得られる仮想ピクセルは、本発明においてピクセルとして使用することができる。
【0054】
本発明において測定値ブロックの位置マーカは、スペクトルのx軸上で測定値ブロックの位置を明白に規定する値として理解される。この関係で、こうした位置マーカは、照射の波長、周波数、またはエネルギー、あるいは、同様に、ピクセル番号として表すことができる。それぞれの場合に、測定値ブロックの、最初のピクセル番号か、最後のピクセル番号か、または中間のピクセル番号を位置マーカとして使用することができる。
【0055】
モデルスペクトルの測定値ブロックに相当する較正スペクトルの測定値ブロックは、本発明において、その位置(位置マーカ)、好ましくは、同様にそのサイズのために、2次分光計のメモリに存在するモデルスペクトルの測定値ブロックに相当する較正スペクトルの範囲として理解される。このために、モデルスペクトルの測定値ブロックの既知の位置マーカは、最初に較正スペクトルに転送され、この位置規定から始めて、位置マーカに対するその位置に関して、また、好ましくは同様にそのデータコンテンツ(値の対の数)に関して、モデルスペクトルの測定値ブロックと本質的に同一の測定値ブロックが、較正スペクトルから削除される。たとえば、2次分光計のメモリに存在する測定値ブロックが、位置マーカピクセル104とデータコンテンツ(位置マーカ+後続の9個のピクセル)によって規定される場合、すなわち測定値ブロックが、位置マーカ104と、それぞれがピクセル番号と関連強度値とからなる10個の値の対とを含む場合、較正スペクトルの対応する測定値ブロックは、やはりピクセル番号104で始まり、この値の対および後続の9個の値の対、すなわちピクセル番号104〜113の値の対を含む測定値ブロックがこのスペクトルから削除されるように、決定することができる。1次分光計と2次分光計との間の機器関連の個々の差は、この場合、既に考慮されている。そのため、たとえば、分光計間の機器固有の差が大きい場合、2次分光計には、たとえば、1次分光計に対して1ピクセルだけシフトされるピーク探索法を使用した第1の波長割り当てが存在する状態が起こり得る。こうした場合、たとえば、較正スペクトルの測定値ブロックとモデルスペクトルの測定値ブロックが、互いから1ピクセル移動して削除されること、および、このシフトが、本発明の方法による厳密な波長較正中に考慮されることも可能である。
【0056】
本発明において測定値ブロックの段階的な相対シフトは、2つの測定値ブロックが互いに対して規定された距離だけ繰り返し移動する方法として理解される。実際には、モデルスペクトルの対応する測定値ブロックと同じ位置マーカを特徴とする較正スペクトルの直接対応する測定値ブロックを使用する代わりに、これは、たとえば、位置マーカが1ピクセルまたは多数のピクセルの距離を移動する較正スペクトルの測定値ブロックを使用して実施される。シフトは、元の位置マーカで始まり、小さいピクセル番号ならびに大きいピクセル番号に向かうことができる。そのため、これらのシフトステップを繰り返して実施することによって、測定値ブロックの考えられる全ての相対シフトを、ある範囲にわたって記録することができる。そのため、たとえば、較正スペクトルの、相対的にシフトした測定値ブロックP102:(102/I(102),103/I(103),104/I(104),105/I(105),106/I(106);P103:(103/I(103),104/I(104),105/I(105),106/I(106),107/I(107);P104:(104/I(104),105/I(105),106/I(106),107/I(107),108/I(108);P105:(105/I(105),106/I(106),107/I(107),108/I(108),109/I(109);および、P106:(106/I(106),107/I(107),108/I(108),109/I(109),110/I(110)は、それぞれの場合に、測定値ブロックの左と右への2ピクセルの段階的な相対シフトによって、位置マーカ104と、5つの値の対(たとえば、P104:(104/I(104),105/I(105),106/I(106),107/I(107),108/I(108)によって表される)とを有するモデルスペクトルの測定値ブロックについて連続して得ることができる。
【0057】
相関値は、本発明において、考慮中の、モデルスペクトルの各測定値ブロックの強度値と較正スペクトルの各測定値ブロックの強度値との一致の尺度の役をする値として理解される。一致または相関を定量化するために、相関係数、ならびに原理的に、伝達情報量(transinformation)およびカルバック・ライブラ・ダイバージェンスなどの他の方法、および同様に、ノンパラメトリック検定法、たとえばスピアマンの順位相関係数またはケンドールの順位相関を特に使用することが可能である。実際に最も頻繁に使用される相関係数は、2つの少なくとも間隔尺度で測定された値のブロック間の線形相関の程度についての無次元尺度であるピアソンによる相関係数である。相関係数は、−1〜1の値を採用することができ、+1(または−1)の値では、測定値の観測されるブロック間に完全に正の(または、負の)線形関係が存在する。相関係数が値0を有する場合、測定値の2つのブロック間に線形依存性が全く存在しない。数学的方法、いわゆる相互相関は、2つの機能、すなわち互いに対する測定値ブロックの自動的なシフト実行と、相関値の同時計算とを含む。したがって、相互相関の使用は、本発明に係る方法において特に有利である。
【0058】
シフト値は、本発明において、モデルスペクトルと較正スペクトルの対応する測定値ブロックのどの相対シフトで強度値間の最良の一致が存在するか、すなわち、対応する測定値ブロックのどの相対シフトで相関値の最適値が存在するかを指定する値として理解される。相関値の最適値は、相関のタイプおよび相関値の定量的決定の選択に応じて最大値または最小値であることができる。この場合、シフト値は、差分値(右もしくは左へのΔxピクセルのシフトにおける測定値ブロックの最適相関:シフト値=+Δxもしくは−Δx)または絶対値(右もしくは左へのΔxピクセルのシフトにおける測定値ブロックの最適相関:シフト値=x+Δxもしくはx−Δx)の形である。たとえば、較正スペクトルの測定値ブロックが位置マーカピクセル32を有するモデルスペクトルの対応する測定値ブロックに対して右に2ピクセルだけシフトしたときに最適相関が起こる場合、シフト値は、差分値+2または絶対値34(=位置マーカピクセル32+(+2ピクセルの相対シフト))の形で表すことができる。
【0059】
モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、こうして決定されたシフト値とからなる値の対は、モデルスペクトルのそれぞれの観測される測定値ブロックにシフト値を割り当て、そのシフト値は、測定値ブロック間の最良の相関が存在する2つの測定値ブロックの相対シフトを指定する。こうした値の対は、たとえば、先の例の場合、(シフト値として差分値を使用するとき)値(32/+2)または(シフト値として絶対値を使用するとき)値(32/34)を採用することになる。
【0060】
フィッティングは、一般に、本発明において、一連の値の対について、所与の割り当て関数の最良フィッティングパラメータまたは係数を決定するための数学的最適化法として理解される。この用語は、一般に、曲線フィッティング計算についての全ての数学的方法を包含する。こうした曲線フィッティング計算の目的は、データに対する関数の考えられる最良のフィットである。この場合、最小2乗法による(または、別法として、別の誤差評価関数、たとえば、絶対誤差の最小化による)フィッティングが、しばしば使用される。この場合、関数の係数は、全ての値の対の偏差の2乗の和が最小になり、したがって、値と関数との間に考えられる最良の一致が存在するように決定される。たとえば、式y=a+ax+a+aの形の3次多項式関数をフィッティング関数として選択する場合、係数a、a、aおよびaは、この関数の曲線ができる限り値の対に近接にフィットするように、これらの最適化法によって決定される。
【0061】
本発明に係る方法の個々のステップを実施する手順は、以下でより詳細に明らかにされ、また、他の任意選択の、代替の、かつ/または、有利なプロセスステップも述べられる。
【0062】
モデルスペクトルおよび/または較正スペクトルを生成するための適した光源は、原理的に、考えられる最も広いスペクトル範囲にわたって明らかに示差的な推移を有し、さらに、経時的に小さなスペクトル変化を示す全ての光源である。スペクトルランプ、特に、ネオン、アルゴン、または水銀スペクトルランプ、広帯域光源の組合せ、特に、フィルタ(特に、希土類金属フィルタ)を有するハロゲン光源、あるいは、いくつかの波長安定化レーザまたはLEDの組合せが、本発明に係る方法を実施するための特に適した光源として使用することができる。希土類金属フィルタは、希土類金属の群に属する化学元素またはその化合物(たとえば、酸化ホルミウムまたはジジウム(ネオジムとプラセオジムの混合物))が添加された光学ガラスフィルタである。結果として、これらの光学フィルタは、固有のフィルタ特徴(バンドパス特性)を有し、温度不依存性および光学的長期安定性を特徴とする。
【0063】
本発明に従って使用されるモデルスペクトルは、好ましくは、同じ構成タイプのいくつかの光源、同じ構成タイプのいくつかの検出ユニット、または同じ構成タイプのいくつかの分光計によって測定された、いくつかの強度スペクトルを使用(平均)することによって得ることができる。これは、同じタイプの多くの2次分光計の波長を較正するのに、1つでかつ同じモデルスペクトルを使用する場合に、特に有利である。それは、結果として、参照スペクトルとして決定された個々のスペクトルの個々の差が補償されて、より頑強なモデルスペクトルが得られるからである。そのため、特に、モデルスペクトルを決定するときに、分光計の光源、検出ユニット、および/または、全光学システムの個々の差を考慮することが可能である。
【0064】
本発明の好ましい実施形態では、較正スペクトルは、1次分光計におけるモデルスペクトルの決定の場合と、できる限り同じ積分時間、できる限り同じ測定反復数、および/または、できる限り同じ光学条件を使用して、2次分光計において決定される。結果として、較正スペクトルは、参照の役をするモデルスペクトルとできる限り同じ境界条件下で決定されるため、スペクトルには、異なる測定条件によるさらなる差がないはずである。これは、考えられる最も正確な波長較正を可能にする。
【0065】
値の対の数、したがって、2次分光計のメモリに存在するモデルスペクトルの個々の測定値ブロックのサイズが異なる可能性がある。そのため、たとえば、サイズが比較的小さい測定値ブロックは、明らかに顕著なピークなどの示差的な強度推移を有するスペクトル範囲で使用することができ、一方、サイズが大きい測定値ブロックは、徐々に増加するスペクトルショルダなどのあまり示差的ではない強度推移を有するスペクトル範囲で使用することが好ましい。モデルスペクトルの個々の測定値ブロックはまた部分的に重なる可能性があり、また、より小さな測定値ブロックは全て、より大きな測定値ブロック内にある可能性がある。測定値ブロックの値の対の最小数は2つの値の対であり、値の対の最大数は、分光計または検出ユニットの分解能によって決定される。しかし、補間法によって中間値をさらに決定することができ、これによって値の対の数が増加することになる。さらに、較正スペクトルとモデルスペクトルの対応する測定値ブロックの値の対の数は、補間された仮想中間値の対が異なるため異なる可能性がある。そのため、特に、モデルスペクトルの測定値ブロックは、較正精度を上げるために、補間された中間値の対を含むことができ、一方、較正スペクトルの対応する測定値ブロックは、実際の値の対だけからなってもよい。さらに、測定値ブロックのマージン(margin)は、ある相関法を実施するために、ある数の値の対だけ短縮することができる。
【0066】
測定値ブロックの選択は、好ましくは、モデルスペクトルのスペクトル推移に適合する。この全体のスペクトルから、当業者は、スペクトルのこの部分的な領域内で十分に示差的な推移を有する領域を測定値ブロックとして好ましく選択することになる。モデルスペクトルのこれらの領域は、有利には、大きな強度差か、低ノイズか、または、低散乱光を示す領域である。適した測定値ブロックの例は、1または複数のピークか、1または複数の吸収ギャップか、特定の吸収または発光線か、あるいは、特徴的な強度パターン(ショルダ、ベンド、ジャンプ…)を有するスペクトル領域である。
【0067】
本発明に係る方法の一実施形態では、モデルスペクトルの測定値ブロックは、2次分光計のメモリに直接保管され、そこから、それぞれの測定値ブロックについて、測定値ブロックの位置マーカと、それぞれの場合に少なくとも2つの値の対の形で利用可能である。測定値ブロックを保管するこの方法は、好ましくは、比較的少数でかつ重なることのない測定値ブロックが存在する場合に使用することができる。
【0068】
本発明に係る方法の別の実施形態では、モデルスペクトルの個々の測定値ブロックは、それ自体、2次分光計のメモリに保管されないで、むしろ代わりに、全モデルスペクトル、または、測定値ブロックが削除されるモデルスペクトルの少なくとも一部が保管される。これらのスペクトル領域に加えて、個々の測定値ブロックに関する情報は、2次分光計のメモリに存在する必要がある。この情報は、各測定値ブロックの位置(たとえば、測定値ブロックの位置マーカ)およびサイズ(値の対の数および位置マーカに対するそれらの位置)を少なくとも含む必要がある。この情報を使用して、本発明に係る方法を2次分光計で実施する前かまたは実施している間に、2次分光計に保管されたモデルスペクトルから各測定値ブロックを決定することができる。このタイプの測定値ブロックの決定は、好ましくは、多くの重なる測定値ブロックが存在するときに使用することができるが、この場合には測定値ブロックが個々に記憶される必要がないため、メモリ空間が節約される。さらに、他のまたはさらなる測定値ブロックを、動作中でさえも、本方法によって単純に使用することができる。この実施形態では、新しい広範なスペクトルデータを記録する必要なしに、新しい測定値ブロックの位置およびサイズの2次分光計への保管で十分である。
【0069】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、モデルスペクトルの測定値ブロックの値の対はまた、1次分光計においてモデルスペクトルを決定するときに直接決定された実際の値の対に加えて、補間されたピクセル値の形のさらなる仮想的な値の対と強度値とからなる。これらの仮想的な値の対はまた、2次分光計のメモリに存在し、本方法を実施するときに考慮される。1次分光計に記録されたモデルスペクトルは、検出器のために制限された数の測定値(すなわち、実際のピクセル)を有するだけであるため、こうしたさらなる仮想的な値の対は、測定値ブロックのサイズを増加させることができ、使用される統計的方法に基づく波長較正の精度をかなり上げる可能性がある。
【0070】
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、相互相関分析法を使用して、互いに対してシフトされるモデルスペクトルと較正スペクトルの対応する測定値ブロック間の相関値が決定される。特に好ましい実施形態では、平均値補正および正規化(標準化)を有する相互相関法が使用される。相互相関関数は、互いに対してシフトした2つの関数間の相関を表し、こうして得られたそれぞれの相関値は、互いに対するスペクトルのある相対シフトに関連する。信号解析では、以下に示す相互相関関数を使用して、2つの信号間の異なる時間シフトτにおける2つの信号間の相関を表す。
【数1】

【0071】
本発明によれば、類似の相互相関関数を使用して、モデルスペクトルと較正スペクトルの対応する測定値ブロック間の波長シフトを決定することができる。
【実施例1】
【0072】
実施例1は、第3の好ましい実施形態に類似の本発明に係る方法の特定の実施形態を述べる。
【0073】
波長較正は、Jobin Yvon Company(Longjiumeau Cedex、France)製のCP20と呼ばれる回折格子分光計に対して本発明の方法に従って実施する。この分光計は、256ピクセルを有するリニアラインセンサを有し、638〜1038nmの波長範囲を分解することができ、約8nmのスペクトル帯域幅を有する。
【0074】
第1のCP20分光計は1次分光計として規定され、同じタイプの別のCP20分光計は2次分光計として規定される。従来のピーク探索法を使用して製造業者によって工場で実施された第1の波長割り当ては、両方の分光計について利用可能であり、また、両方の分光計に収納されていた。特定の場合、波長割り当ては、3次の多項式(λ=a+ax+a+a)であり、波長割り当てについての4つの係数a、a、aおよびaは、それぞれの分光計において供給されていた。
【0075】
1次分光計は、ネオンランプが位置するランプハウジングにライトガイドによって接続された。スペクトルの波長範囲が長いほどその波長範囲内のピークは小さい強度を有するため、強度スペクトルは、2つの異なる積分時間によって測定される。そのため、ピクセル1〜75の強度値は、330msの短い積分時間によって決定され、ピクセル76〜256の強度値は、8000msの長い積分時間によって決定される。較正スペクトルは、同じ構成を使用し、かつ、できる限り同じ条件下で、2次分光計によって測定された。
【0076】
モデルスペクトルを得るために、1次分光計によって記録されたスペクトルの実際の値の対が補間される。この場合、スプラインを使用する方法が選択された。補間を使用して、さらなる仮想的な値の対を計算する。それぞれの場合に、99の中間の値の対が、2ピクセル間で計算された。そのため、25501の値の対を含むモデルスペクトルが、256の値の対を有する元の測定値から得られた。
【0077】
図2は、こうして決定された2つのスペクトルを示す。各ピクセル番号が、x軸上にプロットされ、最大値に正規化された強度I(相対単位)が、y軸上にプロットされる。連続線で示すスペクトルは1次分光計において得られたモデルスペクトルを表し、点線で示すスペクトルは2次分光計において得られた較正スペクトルを表す。分光計が同じ製品であるにもかかわらず、波長割り当てにおけるシフトが、特に、ピクセル番号5〜12および35〜50の付近の領域に見られる。図2に示すように、曲線は、あるスペクトル範囲において、比較的示差的ではない強度推移を有する。ピクセル番号68〜74および144〜250の領域では、少数でかつ非常に小さなピークの形で、わずかな強度差だけが存在する。したがって、ピクセル番号1〜67および75〜143の範囲を使用して測定値ブロックを決定する。それは、これらの領域が、本発明に係る方法について、十分に示差的な強度推移を有するからである。それぞれの場合に30のピクセル番号によって重なる、それぞれの場合に32のピクセル番号(+さらなる補間された中間の値の対)からなる全部で30の測定値ブロックが、モデルスペクトルから選択される。ピクセル番号は、各測定値ブロックの中心に位置するピクセルのピクセル番号に相当する位置マーカとしてそれぞれの測定値ブロックに割り当てられる。その後、対応する測定値ブロックは、較正スペクトルおよびモデルスペクトルから削除され、較正スペクトルの測定値ブロックは、それぞれの場合、左と右で2ピクセル番号だけさらに短縮される。結果として、+2ピクセル〜−2ピクセルの最大波長シフトを計算することが可能である。そのため、較正スペクトルから削除されたそれぞれの測定値ブロックは、28の値の対からなり、モデルスペクトルから削除されたそれぞれの測定値ブロックは、32の値の対に全ての補間された中間の値の対を足したもの、すなわち、3101の値の対からなる。
【0078】
モデルスペクトルの測定値ブロックと較正スペクトルの測定値ブロックとの間の波長シフトを決定するために、平均値補正および正規化を用いた相互相関が実施される。この場合、較正スペクトルの測定値ブロックは、モデルスペクトルの対応する測定値ブロックに対して段階的にシフトされる。シフトのそれぞれの段階は、モデルスペクトルの(仮想)分解能、すなわち、実際のピクセル間隔の100分の1と同じ程度である。ピアソンによる経験的な相関係数(Kor)は、それぞれの段階について計算される。それぞれの場合に、較正スペクトルの28の値の対全てと、さらにモデルスペクトルの28の値の対のみが、このために使用される。このために、それぞれの100番目の値の対だけが、モデルスペクトルの対応する測定値ブロックから取得される。すなわち、相関値の第1の計算において、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置1、101、…〜2701における値の対が使用され、第2の後続のシフトの場合には、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置2、102、…〜2702における値の対が使用される。最後のシフトの場合、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置401、501、…〜3101における値の対が使用される。これは、401のシフト段階、したがって、同じ数の相関値をもたらす。相関値自体は、以下の式に従って計算される。
【数2】

【数3】

【数4】

【0079】
測定値系列x、x、…、xは、モデルスペクトルのブロックの値に相当し、測定値系列y、y、…、yは、較正スペクトルの対応するブロックの値に相当する。
【0080】
高い相関係数Korは、2つのブロック間の高い一致に相当するため、この場合、相関値の最適値は最大相関係数に相当する。本発明に従ってシフト値を決定するために、この最大相関係数が生じる、較正スペクトルの相対的にシフトした測定値ブロックが最初に決定される。この最大相関係数が生じるシフト値は、ここで、モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと較正スペクトルの対応する位置マーカとの間の距離として決定される。同様に考慮される99の補間された中間値による、モデルスペクトルの測定値ブロックの補間により、シフト値は、ピクセル番号の100番目となりうる。
【0081】
モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、上述した相互相関法によってそれぞれの場合に決定されたシフト値とからなる値の対は、モデルスペクトルの30の測定値ブロックのそれぞれについて決定される。
【0082】
これら30の値の対は、補正係数Δa、Δa、ΔaおよびΔaを計算する3次の多項式への最小誤差2乗法によるフィッティングについての設計点の役をする。
【0083】
プロセスの最後のステップにおいて、こうして決定された補正係数Δa、Δa、ΔaおよびΔaは、第1の波長割り当ての対応する係数a、a、aおよびaに加算されるため、本発明に係る波長較正法の結果として、以下の波長較正された波長割り当て、すなわち、
λcal(nm)=(a+Δa)+(a+Δa)x+(a+Δa)x+(a+Δa)x
が2次分光計に存在する。
【0084】
図3および4は、ネオンスペクトルの対応する部分(区域)の比較を示す。両方の場合、1次分光計において記録されたモデルスペクトルの一部は、連続線で描かれた曲線で示される。図3の点線は、従来のピーク探索法を使用して波長較正された、2次分光計によって決定されたネオンスペクトルの対応する部分を表す。図4では、点線の曲線は、本発明に係る方法によって波長較正された、2次分光計によって決定されたネオンスペクトルの対応する部分を表す。図3は、2次分光計の曲線が、1次分光計の曲線に対して右にかなりシフトしていることを示す。本発明に係る方法を使用した図4では、2つの曲線のこうしたシフトは見られない。
【実施例2】
【0085】
以前に使用されているピーク探索法と比較して、本発明に係る方法の利点を示しかつ定量化するために、分光計の波長較正を、種々の計算による帯域幅の幅広化における655〜1035nmの波長範囲のネオンランプのスペクトルに対してシミュレートした。ネオンスペクトルは、シミュレーションのための基礎として2nmのスペクトル帯域幅を有する、Jobin Yvon Company(Longjiumeau Cedex、France)製のタイプCP140の回折格子分光計によって測定する。6nm、7.5nm、9nmおよび12nmの各帯域幅を有するシミュレートスペクトルは、それぞれの場合に適合するガウス曲線を使用する移動式乗算(sliding multiplication)によって、このデータセットから計算される。波長較正は、これらの種々のスペクトルに関して、a)ピーク探索法、および、b)本発明に係る方法によって実施し、各最大誤差が全波長範囲にわたって計算される。これらの誤差は、表1に挙げられる。誤差は、この場合、計算によって幅広化されたスペクトルの波長較正と元のスペクトルについての波長較正との間の、全波長範囲にわたる最大の差として計算される。元のスペクトルの波長較正について計算される誤差は考慮されない。
【表1】

【0086】
両方の波長較正法について、誤差は、帯域幅が増加するにつれて高まる。ピーク探索法では、誤差は、BW6における1.42nmから9nmの帯域幅を有するスペクトルの場合の3.13nmである。12nmの帯域幅において、ピーク探索法は、ピーク探索法を実施するのに十分に適したピークが存在しないため、もはや使用することができない。
【0087】
本発明に係る方法の場合、誤差は、BW6における0.021nmからBW12における0.075nmである。したがって、本発明に係る方法の場合の誤差は、ピーク探索法の場合の誤差より何倍も小さい。したがって、光学品質の低い、すなわち、帯域幅が非常に広い分光計は、本方法によって依然として十分に正確に波長較正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】660nm〜960nmの波長範囲における同じネオンランプの2つのスペクトルを示す。
【図2】実施例1で決定された2つのスペクトルを示す。
【図3】従来のピーク探索法を使用して波長較正された、2次分光計によって決定されたネオンスペクトルを示す。
【図4】本発明に係る方法を使用して波長較正された、2次分光計によって決定されたネオンスペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分光計の波長較正方法であって、該分光計に少なくともモデルスペクトルの2つの測定値ブロックのデータが存在するものであり、
(a)前記分光計における光源の強度スペクトルを較正スペクトルとして決定するステップと、
(b)前記モデルスペクトルの、分光計に存在する前記測定値ブロックの一方に相当する測定値ブロックを前記較正スペクトルから削除するステップと、
(c)前記モデルスペクトルの測定値ブロックに対して前記較正スペクトルの測定値ブロックを段階的にシフトさせ、2つの測定値ブロック間の相関値をそれぞれの場合に決定するステップと、
(d)前記相関値がそこで最適値に達するシフト値を決定するステップと、
(e)前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと前記シフト値とからなる値の対を決定するステップと、
(f)前記モデルスペクトルの全てのさらなる測定値ブロックについて、プロセスステップ(b)〜(e)を繰り返すステップと、
(g)前記モデルスペクトルの各測定値ブロックの位置マーカと前記関連するシフト値とからなる、プロセスステップ(b)〜(f)で得られた値の対を、割り当て関数にフィッティングさせ、それにより、係数a、a…を得るステップと、
(h)前記係数を使用して、前記分光計の波長割り当てを決定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
検出ユニット、ならびに、光源の強度スペクトルとして1次分光計において決定された、少なくともモデルスペクトルの2つの測定値ブロックのデータが存在するメモリを有する2次分光計の波長較正のための方法であって、
(a)前記2次分光計における光源の強度スペクトルを較正スペクトルとして決定するステップであって、このために使用される前記光源および検出ユニットは、前記モデルスペクトルを決定するのに使用される前記光源および検出ユニットと同等のタイプの構成を有し、前記較正スペクトルは、前記モデルスペクトルを決定するのに使用される条件と同等の条件下で決定されるステップと、
(b)前記2次分光計のメモリに存在する、前記モデルスペクトルの測定値ブロックの一方に相当する測定値ブロックを前記較正スペクトルから削除するステップと、
(c)前記モデルスペクトルの測定値ブロックに対して前記較正スペクトルの測定値ブロックを、それぞれの場合に単一または複数ピクセル値だけ、段階的にシフトさせ、前記2つの測定値ブロックの強度値間の一致の尺度である2つの測定値ブロック間の相関値をそれぞれの場合に決定するステップと、
(d)前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと前記較正スペクトルの対応する位置マーカとの間の距離との和として、前記相関値がそこで最適値に達するシフト値を決定するステップと、
(e)前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカとプロセスステップ(d)後の前記シフト値とからなる値の対を決定するステップと、
(f)前記モデルスペクトルの全てのさらなる測定値ブロックについて、プロセスステップ(b)〜(e)を繰り返すステップと、
(g)波長割り当てを割り当て関数として決定するステップであって、前記割り当て関数の係数a、a…が、前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと前記関連するシフト値とからなる、プロセスステップ(b)〜(f)で得られた値の対をフィッティングさせることによって得られるものである前記ステップと
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検出ユニット、ならびに、光源の強度スペクトルとして1次分光計において決定された、少なくともモデルスペクトルの2つの測定値ブロックのデータ、および、前記係数a、a…を有する割り当て関数の形の第1の波長割り当てが存在するメモリを有する2次分光計の波長較正のための方法であって、
(a)前記2次分光計における光源の強度スペクトルを較正スペクトルとして決定するステップであって、このために使用される前記光源および検出ユニットは、前記モデルスペクトルを決定するのに使用される前記光源および検出ユニットと同等のタイプの構成を有し、前記較正スペクトルは、前記モデルスペクトルを決定するのに使用される条件と同等の条件下で決定されるステップと、
(b)前記2次分光計のメモリに存在する、前記モデルスペクトルの測定値ブロックの一方に相当する測定値ブロックを前記較正スペクトルから削除するステップと、
(c)前記モデルスペクトルの測定値ブロックに対して前記較正スペクトルの測定値ブロックを、それぞれの場合に単一または複数ピクセル値だけ、段階的にシフトさせ、前記2つの測定値ブロックの強度値間の一致の尺度である2つの測定値ブロック間の相関値をそれぞれの場合に決定するステップと、
(d)前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと、前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと前記較正スペクトルの対応する位置マーカとの間の距離との和として、前記相関値がそこで最適値に達するシフト値を決定するステップと、
(e)前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカとプロセスステップ(d)後の前記シフト値とからなる値の対を決定するステップと、
(f)前記モデルスペクトルの全てのさらなる測定値ブロックについて、プロセスステップ(b)〜(e)を繰り返すステップと、
(g)前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと前記関連するシフト値とからなる、プロセスステップ(b)〜(f)で得られた値の対を割り当て関数にフィッティングさせることによって、補正係数a’、a’…を決定するステップと、
(h)第1の波長割り当ての係数a、a…を、プロセスステップ(g)で決定された前記対応する補正係数a’、a’…で置き換えることによって、波長較正された波長割り当てを決定するステップと
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
検出ユニット、ならびに、光源の強度スペクトルとして1次分光計において決定された、少なくともモデルスペクトルの2つの測定値ブロックのデータ、および、前記係数a、a…を有する割り当て関数の形の第1の波長割り当てが存在するメモリを有する2次分光計の波長較正のための方法であって、
(a)前記2次分光計における光源の強度スペクトルを較正スペクトルとして決定するステップであって、このために使用される前記光源および検出ユニットは、前記モデルスペクトルを決定するのに使用される前記光源および検出ユニットと同等のタイプの構成を有し、前記較正スペクトルは、前記モデルスペクトルを決定するのに使用される条件と同等の条件下で決定されるステップと、
(b)前記2次分光計のメモリに存在する、前記モデルスペクトルの測定値ブロックの一方に相当する測定値ブロックを前記較正スペクトルから削除するステップと、
(c)前記モデルスペクトルの測定値ブロックに対して前記較正スペクトルの測定値ブロックを、それぞれの場合に単一または複数ピクセル値だけ、段階的にシフトさせ、前記2つの測定値ブロックの強度値間の一致の尺度である2つの測定値ブロック間の相関値をそれぞれの場合に決定するステップと、
(d)前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと前記較正スペクトルの対応する位置マーカとの間の距離として、前記相関値がそこで最適値に達するシフト値を決定するステップと、
(e)前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカとプロセスステップ(d)後の前記シフト値とからなる値の対を決定するステップと、
(f)前記モデルスペクトルの全てのさらなる測定値ブロックについて、プロセスステップ(b)〜(e)を繰り返すステップと、
(g)前記モデルスペクトルの測定値ブロックの位置マーカと前記関連するシフト値とからなる、プロセスステップ(b)〜(f)で得られた値の対を割り当て関数にフィッティングさせることによって、補正係数Δa、Δa…を決定するステップと、
(h)プロセスステップ(g)で決定された補正係数Δa、Δa…を、第1の波長割り当ての対応する係数a、a…と組み合わせること、特に、前記補正係数Δa、Δa…を前記係数a、a…に加算することによって、波長較正された波長割り当てを決定するステップと
を含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記割り当て関数が、少なくとも1次の多項式、特に、3次の多項式である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
公知の較正法によって決定される波長割り当てが前記1次分光計について利用可能であり、前記1次分光計と前記2次分光計が同等のタイプの構成を有するとき、前記2次分光計の第1の波長割り当ては、前記1次分光計の波長割り当てに相当する、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
公知の較正法がピーク探索法である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記モデルスペクトルが、同じ構成タイプのいくつかの光源か、同じ構成タイプのいくつかの検出ユニットか、または、同じ構成タイプのいくつかの分光計によって測定された強度スペクトルを平均することによって得られる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記モデルスペクトルの測定値ブロックのデータが、前記モデルスペクトルを決定するときに直接決定されたピクセル値および強度値からなる第1の値の対に加えて、前記分光計のメモリ内にも存在しまた前記方法を実施するときに考慮される補間されたピクセル値および強度値の形の付加的な値の対を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記モデルスペクトルの測定値ブロックが、示差的な推移(differentiated course)を有する、特に大きな強度差、低ノイズまたは低散乱光を示す、前記モデルスペクトルの領域から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光源がスペクトルランプである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記スペクトルランプが、ネオン、アルゴンまたは水銀スペクトルランプ、広帯域光源とフィルタとの組合せ、あるいは、いくつかの波長安定化レーザの組合せである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
プロセスステップ(c)における相関値の決定が相互相関法によって実施される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
プロセスステップ(c)における相関値の決定が平均値補正および正規化を行う相互相関法によって実施される、請求項13に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−298776(P2008−298776A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−140295(P2008−140295)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】