説明

分子篩SSZ−56組成物及びその合成

本発明は、トランス縮合環N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオンを構造指向剤として用いて製造した、新規な結晶質分子篩SSZ−56、SSZ−56の合成方法、及び触媒としてSSZ−56を用いる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な結晶質分子篩SSZ−56、N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオンを構造指向剤(structure directing agent)として用いてSSZ−56を製造する方法、及びSSZ−56を、例えば、炭化水素転化反応のための触媒として用いることに関する。
【背景技術】
【0002】
結晶質分子篩及びゼオライトは、それらの触媒性と同様、それらの独特の篩特性のために、炭化水素転化、ガス乾燥、及び分離のような用途で特に有用である。多くの異なった結晶質分子篩が開示されてきているが、ガス分離及び乾燥、炭化水素及び化学的転化、及び他の用途にとって望ましい性質を有する新規なゼオライトが要求され続けている。新規なゼオライトは、これらの方法で向上した選択性を与える或る新規な内部気孔構造を持っていることがある。
【0003】
結晶質アルミノ珪酸塩は、アルカリ又はアルカリ土類金属酸化物、シリカ、及びアルミナを含む水性反応混合物から通常製造されている。結晶質硼珪酸塩は、硼素がアルミニウムの代わりに用いられている点を除き、通常同様な反応条件で製造されている。合成条件及び反応混合物の組成を変えることにより、異なったゼオライトを屡々形成することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、「分子篩SSZ−56」又は単に「SSZ−56」としてここで言及する、独特の性質を有する一連の結晶質分子篩系列に関する。SSZ−56は、その珪酸塩、アルミノ珪酸塩、チタノ珪酸塩、バナド珪酸塩、又は硼珪酸塩の形になっているのが好ましい。用語「珪酸塩」とは、酸化アルミニウムに対する酸化珪素のモル比が大きく、好ましくは100より大きなモル比を有し、全てが酸化珪素からなる分子篩を含めた分子篩を指す。ここで用いる用語「アルミノ珪酸塩」とは、酸化アルミニウムと酸化珪素の両方を含む分子篩を指し、用語「硼珪酸塩」とは、硼素及び珪素の両方の酸化物を含む分子篩を指す。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従い、(1)第一の四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一四価元素とは異なった第二の四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩が与えられる。
【0006】
更に、本発明に従い、(1)酸化珪素対(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化バナジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、下の表2のX線回折線を有する分子篩が与えられる。第一酸化物対第二酸化物のモル比は無限大にすることができ、即ち、分子篩中には第二酸化物が存在していなくてもよいことに注意すべきである。その場合、分子篩は全てがシリカの分子篩になる。
【0007】
本発明は、更に、合成したままの無水状態で、モル比で表して次のような組成を有するそのような分子篩を与える:
YO/W 15−∞(無限大)
2/n/YO 0−0.03
Q/YO 0.02−0.05
式中、Yは珪素であり;Wはアルミニウム、ガリウム、鉄、硼素、チタン、インジウム、バナジウム、又はそれらの混合物であり;cは1又は2であり;dは、cが1(即ち、Wが四価)の時、2であり、又はdは、cが2の時3又は5であり(即ち、dは、Wが三価の時3であるか、又はWが五価の時5であり);Mはアルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン、又はそれらの混合物であり;nはMの原子価(即ち、1又は2)であり;Qは、トランス縮合環N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオンAである。
【0008】
【化1】

【0009】
本発明に従い、酸化珪素対、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化バナジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きな分子篩を約200℃〜約800℃の温度で熱処理することにより製造された分子篩も与えられ、このようにして製造された分子篩は、表2のX線回折線を有する。本発明は、主に水素型になっているこのように製造された分子篩も包含し、その水素型は、酸又はアンモニウム塩溶液でイオン交換し、次に第二のか焼を行うことにより製造される。もし分子篩が、充分大きなSDA陽イオン対ナトリウムイオン比をもって合成されているならば、か焼単独で充分であろう。触媒活性度を大きくするためには、SSZ−56分子篩は、主にその水素イオン型になっているべきである。ここで用いる「主に(predominantly)水素イオン型」とは、か焼後、陽イオン部位の少なくとも80%が水素イオン及び/又は稀土類イオンで占められていることを意味する。
【0010】
本発明に従い、(1)酸化珪素を含む第一酸化物、及び(2)酸化硼素、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化バナジウム、及びそれらの混合物を含む第二酸化物、を含み、前記第一酸化物対前記第二酸化物のモル比が約15より大きい、結晶質物質を製造する方法で、前記酸化物の原料と、トランス縮合環N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオンを含む構造指向剤とを結晶化条件で接触させることを含む方法も与えられる。
【0011】
本発明は、炭化水素質供給物と、本発明の分子篩を含む触媒とを炭化水素転化条件で接触させることを含む炭化水素転化方法を与える。その分子篩は、主に水素型であることができる。それは実質的に酸性(acidity)でないとすることができる。本発明は、分子篩が、(1)酸化珪素対(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、下の表2のX線回折線を有するそのような方法を含む。
【0012】
更に、本発明により、本発明の分子篩、好ましくは主に水素型になっている分子篩を含む触媒と、炭化水素供給原料とを水素化分解条件で接触させることを含む水素化分解法も与える。
【0013】
本発明は、好ましくは主に水素型になっている本発明の分子篩を含む触媒と、炭化水素供給原料とを脱蝋条件で接触させることを含む脱蝋方法も包含する。
【0014】
本発明は、好ましくは主に水素型になっている本発明の分子篩を含む触媒と、ワックス状炭化水素供給物とを異性化脱蝋条件で接触させることを含む、ワックス状炭化水素供給物の脱蝋生成物の粘度指数を改良するための方法も包含する。
【0015】
本発明は、更に、C20+オレフィン供給物からC20+潤滑油を製造する方法で、本発明の分子篩を含む触媒上で、前記オレフィン供給物を異性化条件で異性化することを含む、潤滑油製造方法を包含する。分子篩は、主に水素型になっていてもよい。触媒は、少なくとも一種類の第VIII族金属を含んでいてもよい。
【0016】
本発明に従い、約350°F(177℃)より高い温度で沸騰し、直鎖及び僅かに分岐した鎖の炭化水素を含む炭化水素油供給原料を接触脱蝋する方法で、本発明の分子篩、好ましくは主に水素型になっている分子篩を含む触媒と、前記炭化水素油供給原料とを、添加水素ガスを存在させて約15〜3000psi(0.103〜20.7MPa)の水素圧力で接触させることを含む接触脱蝋方法も与えられる。触媒は、少なくとも一種類の第VIII族金属を含むことができる。触媒は、本発明の分子篩を含む第一層、及び前記第一層の分子篩よりも一層形状選択性であるアルミノ珪酸塩ゼオライトを含む第二層を含む層状触媒でもよい。第一層は、少なくとも一種類の第VIII族金属を含んでいてもよい。
【0017】
本発明には、水素化分解領域で炭化水素質供給原料を水素化分解し、水素化分解された油を含む流出物を得、その水素化分解された油を含む流出物を、本発明の分子篩を含む触媒を用いて、少なくとも約400°F(204℃)の温度で、約15psig〜約3000psigゲージ(0.103〜20.7MPa)の圧力で、添加水素ガスを存在させて接触脱蝋することを含む、潤滑油製造方法も包含する。分子篩は主に水素型であることができる。触媒は、少なくとも一種類の第VIII族金属を含むことができる。
【0018】
更に本発明には、ラフィネートを異性化脱蝋する方法で、本発明の分子篩を含む触媒と、前記ラフィネートとを、添加水素を存在させて接触することを含む異性化脱蝋方法も含まれる。ラフィネートはブライトストック(bright stock)であることができ、分子篩は主に水素型であることができる。触媒は、少なくとも一種類の第VIII族金属を含むことができる。
【0019】
本発明には、約40℃より高く、約200℃より低い沸騰範囲を有する直鎖及び僅かに分岐した炭化水素を含む炭化水素質供給原料を、本発明の分子篩で、その分子篩を塩基性金属で中和することにより実質的に酸性でないようにした分子篩を含む触媒と芳香族転化条件で接触することを含む、炭化水素供給原料のオクタン価を増大して芳香族含有量が増大した生成物を製造する方法も含まれる。本発明には、分子篩が第VIII族金属成分を含む場合のそのような方法も与えられている。
【0020】
本発明により、反応領域で炭化水素供給原料を、本発明の分子篩、好ましくは主に水素型になっている分子篩を含む触媒と接触分解条件で添加水素を入れずに接触させることを含む接触分解法も与えられる。本発明には、触媒が更に大気孔で結晶質の分解用成分を含む場合のそのような接触分解方法も含まれる。
【0021】
本発明は、更に、直鎖及び僅かに分岐したC〜C炭化水素を有する供給物を、本発明の分子篩、好ましくは主に水素型になっている分子篩を含む触媒と異性化条件で接触させることを含む、C〜C炭化水素を異性化するための異性化方法を与える。分子篩には、少なくとも一種類の第VIII族金属、好ましくは白金を含浸させることができる。触媒は、第VIII族金属を含浸させた後、水蒸気/空気混合物中で上昇させた温度でか焼することができる。
【0022】
本発明により、C〜C20オレフィンと、少なくとも過剰モルの芳香族炭化水素とをアルキル化条件で少なくとも部分的に液相の条件で、本発明の分子篩、好ましくは主に水素型になっている分子篩を含む触媒を存在させて接触させることを含む、芳香族炭化水素をアルキル化する方法も与えられる。オレフィンはC〜Cオレフィンであることができ、芳香族炭化水素及びオレフィンは、夫々約4:1〜約20:1のモル比で存在させることができる。芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ナフタレン、ナフタレン誘導体、ジメチルナフタレン、又はそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0023】
更に、本発明に従い、芳香族炭化水素とポリアルキル芳香族炭化水素とを、少なくとも部分的に液相の条件で、本発明の分子篩、好ましくは主に水素型になっている分子篩を含む触媒を存在させてアルキル交換条件で接触させることを含む、芳香族炭化水素をアルキル交換する方法が与えられる。芳香族炭化水素とポリアルキル芳香族炭化水素とは、夫々約1:1〜約25:1のモル比で存在させることができる。
【0024】
芳香族炭化水素は、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、又はそれらの混合物からなる群から選択することができ、ポリアルキル芳香族炭化水素は、ジアルキルベンゼンであることができる。
【0025】
更に本発明により、パラフィンと、本発明の分子篩を含む触媒とを、パラフィンを転化して芳香族にする条件で接触させることを含む、パラフィンを芳香族へ転化する方法が与えられ、前記触媒は、ガリウム、亜鉛、或はガリウム又は亜鉛の化合物を含む。
【0026】
本発明に従い、オレフィンを、本発明の分子篩を含む触媒と、前記オレフィンの異性化を起こす条件で接触させることを含む、オレフィンを異性化する方法も与えられる。
【0027】
更に本発明に従い、キシレン異性体の芳香族C流又はキシレン異性体とエチルベンゼンとの混合物を含む異性化供給物を異性化するための方法で、前記供給物を異性化条件で本発明の分子篩を含む触媒と接触させることを含む、一層平衡に近いオルト−、メタ−、及びパラ−キシレン比が得られる異方化方法が与えられる。
【0028】
本発明は、更に、オレフィン供給物をオリゴマー化条件で本発明の分子篩を含む触媒と接触させることを含む、オレフィンをオリゴマー化する方法を与える。
【0029】
本発明は、含酸素炭化水素を、本発明の分子篩を含む触媒と、液体生成物を生成する条件で接触することを含む、含酸素炭化水素を転化する方法も与える。含酸素炭化水素は低級アルコールであることができる。
【0030】
更に、本発明に従い、低分子量炭化水素から高分子量炭化水素を製造する方法で、
(a) 反応領域に低分子量炭化水素含有ガスを導入し、前記ガスを前記領域中で、低分子量炭化水素を高分子量炭化水素へ転化することができる触媒及び金属又は金属化合物とC2+炭化水素合成条件で接触させる工程、及び
(b) 前記反応領域から高分子量炭化水素含有流を取り出す工程、
を含む製造方法が与えられる。
【0031】
本発明により、1−オレフィンの重合を促進するための触媒組成物で、
(A)(1)第一四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一四価元素とは異なった第二四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩;及び
(B) 有機チタン又は有機クロム化合物;
を含む、触媒組成物も与えられる。
【0032】
酸化物(1)は酸化珪素であり、酸化物(2)は、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウムから選択された酸化物にすることができる。
【0033】
本発明は、更に、1−オレフィン単量体を、
(A)(1)第一四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一四価元素とは異なった第二四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩;及び
(B) 有機チタン又は有機クロム化合物;
を含む、触媒として有効な量の触媒組成物と、重合反応を開始し、促進するのに適した温度及び圧力を含む重合条件で接触させることを含む、1−オレフィンを重合する方法を与える。
【0034】
酸化物(1)が酸化珪素で、酸化物(2)は、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウムから選択された酸化物にすることができる。
【0035】
本発明は、更に、不飽和炭化水素を含む炭化水素供給物を水素化する方法で、前記供給物と水素を、本発明の分子篩を含む触媒と、水素化を起こす条件で接触することを含む、水素化方法を与える。触媒は、金属、塩、錯体を含んでいてもよく、この場合、その金属は、白金、パラジウム、ロジウム、イリジム、又はそれらの組合せからなる群、或は、ニッケル、モリブデン、コバルト、タングステン、チタン、クロム、バナジウム、レニウム、マンガン、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0036】
本発明により、炭化水素供給原料を、水素化処理触媒で、本発明の分子篩を含む触媒及び水素と、水素化処理条件で接触させることを含む、炭化水素供給原料を水素化処理する方法も与えられる。
【0037】
本発明により、ガス流中に含まれる窒素酸化物を還元する方法で、前記ガス流と分子篩とを接触させることを含み、然も、前記分子篩が、(1)第一四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一四価元素とは異なった第二四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する、窒素酸化物還元方法が与えられる。ガス流中に含まれる窒素酸化物を還元する方法で、前記ガス流と分子篩とを接触させることを含み、然も、前記分子篩が、(1)酸化珪素対(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する、窒素酸化物還元方法が与えられる。分子篩は、窒素酸化物の還元に対し触媒作用を及ぼすことができる金属又は金属イオン(例えば、コバルト、銅、白金、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、ランタン、パラジウム、ロジウム、又はそれらの混合物)を含むことができ、化学量論的に過剰の酸素の存在下でその方法を行なうことができる。好ましい態様として、ガス流は、内燃機関の排気ガス流である。
【0038】
本発明は、炭化水素及び他の汚染物を含む低温始動エンジン排気ガス流を処理する方法で、前記エンジン排気ガス流を水よりも炭化水素を優先的に吸着する分子篩床上に流し、第一排気ガス流を与え、前記第一排気ガス流を触媒の上に流し、前記第一排気ガス流中に含まれていた全ての残留炭化水素及び汚染物を無害の生成物へ転化し、処理済み排気ガス流を与え、前記処理済み排気ガス流を大気中に放出することからなり、然も、前記分子篩床が、(1)第一四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一四価元素とは異なった第二四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有することを特徴とする、排気ガス流処理方法を与える。
【0039】
更に、本発明により、上記低温始動エンジン排気ガスの処理方法で、分子篩が、(1)酸化珪素対(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する、排気ガス処理方法が与えられる。本発明は、更にエンジンが、自動車エンジンを含めた内燃機関で、炭化水素質燃料を供給することができる機関である場合の、そのような方法を与える。また、本発明により、分子篩には、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択された金属が上に付着されている場合のそのような方法が与えられる。
【0040】
発明の詳細な記述
本発明は、ここで「分子篩SSZ−56」又は単に「SSZ−56」と呼ぶ結晶質分子篩の系列を含む。SSZ−56を製造する際、N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオン(トランス縮合環異性体)を、結晶化テンプレートとしても知られている構造指向剤(structure directing agent)(SDA)として用いる。SSZ−56を製造するのに有用なSDAは、次の構造を有する:
【0041】
【化2】

【0042】
SDA陽イオンは陰イオン(X)を伴ない、その陰イオンは、分子篩の形成に有害でないどのような陰イオンでもよい。代表的な陰イオンには、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、及び沃化物イオンなどのハロゲンイオン、水酸化物イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、テトラフルオロ硼酸イオン、カルボン酸イオン、等が含まれる。水酸化物イオンが最も好ましい。
【0043】
SSZ−56は、下の表Aで示した組成を有する反応混合物から製造する。

反応混合物
典型的範囲 好ましい範囲
YO/W >15 30−60
OH−/YO 0.10−0.50 0.20−0.30
Q/YO 0.05−0.50 0.10−0.30
2/n/YO 0−0.40 0.10−0.25
O/YO 20−80 30−45
ここでYは珪素であり;Wは、アルミニウム、ガリウム、鉄、硼素、チタン、インジウム、バナジウム、又はそれらの混合物であり;aは1又は2であり、bは、aが1(即ち、Wが四価)の時、2であり、bは、aが2(即ち、Wが三価)の時、3であり;Mは、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン、又はそれらの混合物であり;nは、Mの原子価(即ち、1又は2)であり;そしてQは、トランス縮合環N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオンである。
【0044】
実際に、SSZ−56は、
(a) 結晶質分子篩を形成することができる酸化物の源、及びSSZ−56の形成に有害ではない陰イオン性対イオンを有するトランス縮合環N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオンを含む水溶液を調製し;
(b) 前記水溶液をSSZ−56の結晶を形成するのに充分な条件下に維持し、そして
(c) SSZ−56の結晶を回収する、
ことを含む方法により製造する。
【0045】
従って、SSZ−56は、架橋した三次元的結晶構造を形成するように、共有酸素原子によって四面体配位状に結合した金属及び非金属の酸化物と組合された結晶質物質及びSDAを含むことができる。酸化珪素の典型的な源には、珪酸塩、シリカヒドロゲル、珪酸、ヒュームドシリカ、コロイドシリカ、テトラアルキルオルト珪酸塩、及びシリカ水酸化物が含まれる。硼素は、硼酸のような、その珪素の対イオンに相当する形で添加することができる。
【0046】
原料ゼオライト反応物は、硼酸源を与えることができる。殆どの場合、原料ゼオライトはシリカ源にもなる。脱硼素(deboronated)型の原料ゼオライトを、例えば、上に列挙した慣用的原料を用いて付加的珪素を添加して、シリカの原料として用いてもよい。本発明の方法のために原料ゼオライト反応物を用いることについては、ナカガワによる「分子篩の製造方法」(Method of Making Molecular Sieves)と題する1993年7月6日に公告された米国特許第5,225,179号明細書(その記載は参考のためここに入れてある)に一層完全に記述されている。
【0047】
典型的には、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウム、ルビジウム、カルシウム、及びマグネシウムの水酸化物を反応混合物中に用いる。しかし、この成分は、同等の塩基度が維持される限り、省略することができる。SDAは水酸化物イオンを与えるために用いることができる。このように、例えば、ハロゲン化物イオンと水酸化物イオンとをイオン交換し、それによって必要なアルカリ金属水酸化物の量を減少するか、又は除外するのが有利なこともある。アルカリ金属陽イオン又はアルカリ土類金属陽イオンは、合成したままの結晶質酸化物物質の一部分となって、その中の原子価電子の帯電を釣り合わせるようにすることができる。
【0048】
反応混合物は、SSZ−56の結晶が形成されるまで、上昇させた温度に維持する。水熱結晶化は、通常自然発生圧力下で100℃〜200℃、好ましくは135℃〜160℃の温度で行われる。結晶化時間は、典型的には1日より長く、好ましくは約3日〜約20日間である。
【0049】
分子篩は、穏やかな撹拌・かき回しを用いて製造するのが好ましい。
【0050】
水熱結晶化工程中、SSZ−56結晶を反応混合物から自然的に核生成させることができる。SSZ−56結晶を種子材料として用いることは、完全な結晶化を起こすのに必要な時間を短縮するのに有利になることがある。更に種子添加は、望ましくない相よりもSSZ−56の核生成及び/又は形成を促進することにより、得られる生成物の純度を大きくすることができる。種子として用いる場合、SSZ−56結晶は、第一四価元素酸化物、例えば、反応混合物に用いたシリカの重量の0.1〜10%の量で添加する。
【0051】
分子篩結晶が形成されたならば、固体生成物を濾過のような標準的機械的分離方法により反応混合物から分離する。結晶を水洗し、次に、例えば90℃〜150℃で8〜24時間乾燥し、合成されたままのSSZ−56結晶を得る。乾燥工程は、大気圧でも、或は真空中でも行うことができる。
【0052】
製造されたままのSSZ−56は、酸化珪素対酸化硼素のモル比が、約15より大きく、か焼後、下の表2のX線回折線を有する。更に、合成されたまま(即ち、SSZ−56からSDAを除去する前)のSSZ−56は、無水状態で、モル比で表して下の表Bに示す組成を有する:
表B
合成したままのSSZ−56
YO/W 15−∞(無限大)
2/n/YO 0−0.03
Q/YO 0.02−0.05
ここで、Y、W、M、n、及びQは、上で定義した通りであり、cは1又は2であり;dは、cが1(即ち、Wが四価)の時、2であり、又はdは、cが2の時、3又は5である(即ち、dは、Wが三価の時3であるか、又はWが五価の時5である)。
【0053】
SSZ−56は、全てシリカにすることができる。SSZ−56を、硼珪酸塩として製造し、もし望むならば、次に、その硼珪酸塩SSZ−56を上昇させた温度で酢酸で処理することにより硼素を除去し〔ジョーンズ(Jones)その他、Chem.Mater.,2001,13,1041−1050に記載されているように〕、SSZ−56の全シリカ型のもの(即ち、YO/Wが∞(無限大)〕を製造することができる。
【0054】
もし望むならば、SSZ−56を硼珪酸塩として製造し、次に、上に記載したようにして硼素を除去し、当分野で既知の技術により金属原子で置換することができる。このやり方で、アルミニウム、ガリウム、鉄、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物を添加することができる。
【0055】
SSZ−56は、そのX線回折像により特徴付けられる新しい骨組み構造、即ちトポロジーから構成されていると考えられる。SSZ−56は、合成したままでは、表1に示す特性線を示す粉末X線回折像を有する結晶構造を有し、従って、他の分子篩とは区別される。
【0056】
【表1】


(a) ±0.10
(b) 与えられたX線像は、相対強度スケールに基づいており、この場合、X線像の最も強い線には100の値を付け、W(弱)は20より小さく、M(中程度)は20〜40、S(強)は40〜60、VS(非常に強)は60より大きい値が付けられている。
【0057】
下の表1Aは、合成したままのSSZ−56についての実際の相対的強度を含む粉末X線回折線を示している:
【表2−1】


【表2−2】

【0058】
か焼後、SSZ−56分子篩は、表2に示す特性線を含む粉末X線回折像を有する結晶構造を有する。
【表3】


(a) ±0.10
【0059】
下の表2Aは、か焼したSSZ−56についての実際の相対的強度を含む粉末X線回折線を示している。
【表4−1】


【表4−2】


【表4−3】


(a) ±0.10
【0060】
粉末X線回折像は、標準的方法により決定された。放射線は銅のK−α/二重線であった。ピークの高さ及び位置を2θ(θはブラッグ角である)の関数としてピークの相対強度から読取り、記録した線に相当する面間隔d(Å)を計算することができる。
【0061】
装置誤差及び個々の試料の差による散乱角(2θ)測定の変動は、±0.10°であると概算された。
【0062】
表IのX線回折像は、「合成したまま」又は「製造したまま」のSSZ−56分子篩を代表するものである。回折像の僅かな変動は、格子定数の変化による特定の試料のシリカ対硼素モル比の変動により起きることがある。更に、充分小さな結晶はピークの形及び強度に影響を与え、かなりピークを広くすることになるであろう。
【0063】
か焼したSSZ−56のX線回折像からの代表的ピークは、表2に示しある。か焼は、回折像の僅かな移行と同様、「製造したまま」の物質の像と比較して、ピークの強度にも変動を与える結果になることがある。分子篩中に存在する金属又は他の陽イオンを、種々の他の陽イオン(例えば、H又はNH)と交換することにより生成した分子篩は、本質的に同じ回折像を生ずるが、その場合も面間隔の僅かな変動及びピークの相対強度に変動を生ずることがある。これらの僅かな変動にも拘わらず、基本的結晶格子は、これらの処理によっても変化しないままになっている。
【0064】
結晶質SSZ−56は、合成したままで用いることができるが、熱的に処理(か焼)するのが好ましいであろう。通常、イオン交換によりアルカリ金属陽イオンを除去し、それを水素、アンモニウム、又は希望の金属イオンで置き換えることが望ましい。分子篩はキレート剤、例えばEDTA又は希釈酸溶液で浸出し、シリカ対アルミナモル比を増大することができる。分子篩は水蒸気処理することもできる。水蒸気処理は、結晶格子が酸によって侵食されることに対し安定化するのに役立つ。
【0065】
分子篩は、タングステン、バナジウム、モリブデン、レニウム、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、或はパラジウム又は白金のような貴金属のような水素化成分と緊密に組合せて、水素化・脱水素化機能が望まれる用途に用いることができる。
【0066】
金属は、分子篩中の陽イオンの幾つかを標準的イオン交換法により金属陽イオンで置き換えることにより分子篩中へ導入することもできる〔例えば、プランク(Plank)その他による1964年7月7日に公告された米国特許第3,140,249号明細書、プランクその他による1964年7月7日に公告された米国特許第3,140,251号明細書、及びプランクその他による1964年7月7日に公告された米国特許第3,140,253号明細書参照〕。典型的な置換用陽イオンには、金属陽イオン、例えば、稀土類、第IA族、第IIA族、及び第VIII族の金属、及びそれらの混合物が含まれる。置換用金属陽イオンの中で、稀土類、Mn、Ca、Mg、Zn、Cd、Pt、Pd、Ni、Co、Ti、Al、Sn、及びFeのような金属の陽イオンが特に好ましい。
【0067】
水素、アンモニウム、及び金属成分は、SSZ−56中にイオン交換で入れることができる。SSZ−56は金属を含浸させることもでき、或は金属をSSZ−56と、当分野で知られている標準的方法を用いて物理的によく混合することができる。
【0068】
典型的なイオン交換法には、合成分子篩を希望の置換用陽イオン(一種又は多種)の塩を含む溶液と接触させることが含まれる。多種類の塩を用いることができるが、塩化物及び他のハロゲン化物、酢酸塩、硝酸塩、及び硫酸塩が特に好ましい。分子篩は、通常イオン交換手順の前にか焼し、溝中及び表面上に存在する有機物質を除去する。なぜなら、これは一層効果的なイオン交換を与える結果になるからである。イオン交換法の代表的なものは、プランクその他による1964年7月7日に公告された米国特許第3,140,249号明細書、プランクその他による1964年7月7日に公告された米国特許第3,140,251号明細書、及びプランクその他による1964年7月7日に公告された米国特許第3,140,253号明細書を含む多くの種類の特許に記載されている。
【0069】
希望の置換用陽イオンの塩溶液と接触させた後、その分子篩を水で洗浄し、65℃〜約200℃の範囲の温度で乾燥するのが典型的である。洗浄後、分子篩を空気中又は不活性ガス中、約200℃〜約800℃の範囲の温度で1〜48時間以上の範囲の時間か焼し、炭化水素転化法で特に有用な触媒活性生成物を生成させることができる。
【0070】
合成された形のSSZ−56中に存在する陽イオンとは無関係に、分子篩の基本的結晶格子を形成する原子の空間的配列は本質的に未変化のままである。
【0071】
SSZ−56は、多種類の物理的形態に形成することができる。一般的に言って、分子篩は2メッシュ(タイラー)篩を通過し、400メッシュ(タイラー)篩上に留まるのに充分な粒径を有する押出し物のような、粉末、顆粒、成形生成物の形にすることができる。触媒を有機結合剤を用いた押出しなどにより成形する場合、SSZ−56は押出した後乾燥するか、或は乾燥又は部分的に乾燥してから押出すことができる。
【0072】
SSZ−56は、有機転化工程で用いられる温度及び他の条件に対し耐久性のある他の材料と複合体にすることができる。そのようなマトリックス材料には、活性及び不活性材料及び合成又は天然産ゼオライトの外、粘土、シリカ、及び金属酸化物のような無機材料も含まれる。そのような材料の例及びそれらを用いることができる仕方は、ゾーンズ(Zones)その他による1990年5月20日に公告された米国特許第4,910,006号明細書、及びナカガワによる1994年5月31日に公告された米国特許第5,316,753号明細書(これらの両方共参考のため全体的にここに入れてある)に記載されている。
【0073】
SSZ−56は、水素化分解、脱蝋、異性化、等のような、ガス流中の窒素酸化物を減少するため、又低温始動エンジン排気ガス流を処理するための種々の炭化水素転化反応のための触媒として有用である。
【0074】
炭化水素転化方法
SSZ−56ゼオライトは炭化水素転化反応で有用である。炭化水素転化反応は、炭素含有化合物を異なった炭素含有化合物へ変化させる触媒を用いた化学的方法である。SSZ−56が有用になると予想される炭化水素転化反応の例には、水素化分解、脱蝋、接触分解、オレフィン及び芳香族形成反応が含まれる。それら触媒は、n−パラフィン及びナフテンの異性化、イソブチレン及び1−ブテンのようなオレフィン系又はアセチレン系化合物の重合及びオリゴマー化、1−オレフィン(例えば、エチレン)の重合、改質、ポリアルキル置換芳香族(例えば、m−キシレン)の異性化、及びベンゼン、キシレン、及び高級メチルベンゼン類の混合物を与える芳香族(例えば、トルエン)の不均化、及び酸化反応等の他の石油改質及び炭化水素転化反応に有用であるとも予想さている。種々のナフタレン誘導体を製造するための再配列反応、及び低分子量炭化水素から高分子量炭化水素の形成(例えば、メタン高級化)も含まれる。
【0075】
SSZ−56触媒は高い選択性を持ち、炭化水素転化条件で全生成物に対し大きな割合の希望の生成物を与えることができる。
【0076】
触媒活性度を大きくするためには、SSZ−56ゼオライトは、主に水素イオン型になっているのがよい。一般に、ゼオライトは、アンモニウム交換し、次にか焼することにより、その水素型に転化される。もしゼオライトが充分大きなSDA陽イオン対ナトリウムイオン比をもって合成されているならば、か焼単独で充分であろう。か焼後、陽イオン部位の少なくとも80%が水素イオン及び/又は稀土類イオンで占められているのが好ましい。ここで用いる「主に水素型」とは、か焼後、陽イオン部位の少なくとも80%が水素イオン及び/又は稀土類イオンで占められていることを意味する。
【0077】
SSZ−56ゼオライトは、炭化水素質供給原料を処理するのに用いることができる。炭化水素質供給原料には炭素化合物が含まれ、未使用石油留分、リサイクル石油留分、頁岩油、液化石炭、タールサンドオイル、NAOからの合成パラフィン、リサイクルプラスチック供給原料のような多くの異なった原料から得ることができ、一般にゼオライトを触媒とした反応を受け易いどのような炭素含有供給原料でもよい。炭化水素質供給物が受ける工程の種類により、供給物は金属を含むか、又は金属を含まなくてもよく、それは窒素又は硫黄不純物が多いか又は少ないものにすることもできる。しかし、供給原料の金属、窒素、及び硫黄の含有量が低い程、その処理は一般に一層効果的になる(触媒が一層活性になる)であろうことを認めることができる。
【0078】
炭化水素質供給物の転化はどのような便利な方式で行なってもよく、希望の方法の種類により、例えば、流動床、移動床、又は固定床の反応器で行うことができる。触媒粒子の配合は、転化法及び操作法によって変わるであろう。
【0079】
金属、例えば白金のような第VIII族金属を含む本発明の触媒を用いて行うことができる他の反応には、水素化・脱水素化反応、脱硝、及び脱硫反応が含まれる。
【0080】
次の表は、本発明の炭化水素転化反応でSSZ−56を含む触媒を用いた場合に使用することができる典型的な反応条件を示している。好ましい条件は括弧の中に示してある。
【0081】
【表5】


数百気圧
気相反応
炭化水素分圧
液相反応
WHSV
【0082】
他の反応条件及びパラメーターは下に与えてある。
【0083】
水素化分解
好ましくは主に水素型のSSZ−56及び水素化促進剤を含む触媒を用いて、重油残留物供給原料、環式原料、及び他の水素化分解物供給原料は、前記米国特許第4,910,006号及び米国特許第5,316,753号明細書に記載されている処理条件及び触媒成分を用いて水素化分解することができる。
【0084】
水素化分解触媒は、水素化分解触媒で一般に用いられている種類の少なくとも一種類の水素化成分を有効な量含んでいる。水素化成分は、一般に、塩、錯体、及びそれらを含む溶液を含めた、第VIB族及び第VIII族の一種類以上の金属からなる水素化触媒群から選択される。水素化触媒は、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、及びそれらの混合物の少なくとも一種類からなる群、又はニッケル、モリブデン、コバルト、タングステン、チタン、クロム、及びそれらの混合物の少なくとも一種類からなる群の金属、塩、及びそれらの錯体からなる群から選択されるのが好ましい。触媒活性金属(一種又は多種)についての言及は、元素状態、又は酸化物、硫化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、等のような或る形のそのような金属(一種又は多種)を含めるものとする。水素化触媒は、水素化分解触媒の水素化機能を与えるのに有効な量で、好ましくは0.05〜25重量%の範囲の量で存在する。
【0085】
脱蝋
好ましくは主に水素型のSSZ−56は、直鎖パラフィンを選択的に除去することにより炭化水素質供給物を脱蝋するのに用いることができる。典型的には、ワックス状供給物を異性化脱蝋条件でSSZ−56と接触させると、脱ろうされた生成物の粘度指数が改良される(ワックス状供給物と比較して)。
【0086】
接触脱蝋条件は、用いられる供給物及び希望の流動点に大きく依存する。接触脱蝋工程中反応領域中に水素が存在するのが好ましい。水素対供給物比は典型的には約500〜約30,000SCF/bbl(標準立法フィート/バレル)〔0.089〜5.34SCM/l(標準立法メートル/リットル)〕、好ましくは約1000〜約20,000SCF/bbl〔0.178〜3.56SCM/l〕である。一般に水素は、生成物から分離され、反応領域へ再循環されるであろう。典型的な供給原料には、軽質ガスオイル、重質ガスオイル、及び約350°F(177℃)より高い温度で沸騰する還元粗製油が含まれる。
【0087】
典型的な脱蝋法は、約350°F(177℃)より高い温度で沸騰し、直鎖及び僅かに分岐した鎖の炭化水素を含む炭化水素油供給原料を、SSZ−56及び少なくとも一種類の第VIII族金属を含む触媒と、約15〜3000psi(0.103〜20.7Mpa)の水素圧力で、添加した水素ガスの存在下で接触させることにより接触脱蝋することである。
【0088】
SSZ−56水素化脱蝋触媒は、場合により脱蝋触媒で一般に用いられている種類の水素化成分を含むことができる。これらの水素化成分の例については、前記米国特許第4,910,006号及び米国特許第5,316,753号明細書を参照されたい。
【0089】
水素化成分は、効果的な水素化脱蝋及び水素化異性化触媒を与えるのに有効な量で、好ましくは約0.05〜5重量%の範囲の量で存在する。触媒は、クラッキング反応を犠牲にして異性化脱蝋を増大させるような方式で働らかせることもできる。
【0090】
供給物は水素化分解し、次に脱蝋してもよい。この型の二段階法及び典型的な水素化分解条件は、ミラー(Miller)による1990年5月1日に公告された米国特許第4,921,594号明細書(これは参考のため全体的にここに入れてある)に記載されている。
【0091】
SSZ−56は、層状触媒の形で脱蝋触媒として用いることもできる。即ち、触媒は、ゼオライトSSZ−56及び少なくとも一種類の第VIII族金属を含む第一層と、ゼオライトSSZ−56よりも更に形状選択性を持つアルミノ珪酸塩ゼオライトを含む第二層とを含む。層状触媒を使用することは、ミラーによる1992年9月22日に公告された米国特許第5,149,421号明細書(これは参考のため全体的にここに入れてある)に記載されている。層状体は、水素化分解又は水素化仕上げ用に設計した非ゼオライト成分を用いて層状にしたSSZ−56の床を含んでいてもよい。
【0092】
SSZ−56は、ブライトストックを含めたラフィネートを、ギレスピー(Gillespie)その他による1980年1月1日に公告された米国特許第4,181,598号明細書(これは参考のため全体的にここに入れてある)に記載されているような条件下で脱蝋するのに用いることもできる。
【0093】
穏やかな水素化(時々水素化仕上げとして言及されている)を用いて、一層安定な脱蝋生成物を製造することが屡々望ましい。水素化仕上げ工程は、脱蝋工程の前又は後で行うことができ、後であるのが好ましい。水素化仕上げは、典型的には、約190℃〜約340℃の範囲の温度で、約400psig〜約3000psig(2.76〜20.7Mpaゲージ)の圧力で、約0.1〜20の空間速度(LHSV)、及び約400〜1500SCF/bbl(約0.071〜0.27SCM/l)の水素再循環速度で行われる。用いられる水素化触媒は、存在することがあるオレフィン、ジオレフィン、及び着色物体を水素化するのみならず、芳香族含有量を減少させるのに充分な活性を持たなければならない。適当な水素化触媒は、ミラーによる1990年5月1日に公告された米国特許第4,921,594号明細書(これは参考のため全体的にここに入れてある)に記載されている。水素化仕上げ工程は、許容できる安定性をもつ生成物(例えば、潤滑油)を製造するのに有利である。なぜなら、水素化分解された原料から製造された脱蝋生成物は、空気及び光に対し不安定になる傾向があり、自然に速くスラッジを形成する傾向があるからである。
【0094】
SSZ−56を用いて潤滑油を製造することができる。例えば、水素型のSSZ−56及び少なくとも一種類の第VIII族金属を含む触媒上でC20+オレフィン供給物を異性化することにより、C20+潤滑油を製造することができる。別法として、炭化水素質供給原料を水素化分解領域内で水素化分解して、水素化分解油を含む流出物を得、その流出物を少なくとも約400°F(204℃)の温度で、約15psig〜約3000psig(0.103〜20.7Mpaゲージ)の圧力で、添加水素ガスを存在させて、水素型のSSZ−56及び少なくとも一種類の第VIII族金属を含む触媒により接触脱蝋することにより、潤滑油を製造することができる。
【0095】
芳香族形成
SSZ−56は軽質直留ナフサ及び同様な混合物を高度に芳香族化合物の混合物へ転化するのに用いることができる。例えば、直鎖及び僅かに分岐した鎖の炭化水素、好ましくは約40℃より高く、約200℃よりは低い沸点範囲を有するものを、実質的に一層大きなオクタン価の芳香族含有量を有する生成物へ、その炭化水素供給物とSSZ−56含有触媒とを接触させることにより転化することができる。SSZ−56含有触媒を用いて、一層重質の供給物をBTX又は価値のあるナフタレン誘導体へ転化することもできる。
【0096】
転化触媒は、好ましくは第VIII族金属化合物を含み、商業的用途にとって充分な活性度を持つようにする。ここで用いられる第VIII族金属化合物とは、金属それ自体又はその化合物を意味する。第VIII族貴金属及びそれらの化合物、白金、パラジウム、及びイリジウム、又はそれらの組合せを用いることができる。レニウム又は錫又はそれらの混合物を、第VIII族金属化合物、好ましくは貴金属化合物と一緒に用いることもできる。最も好ましい金属は白金である。転化触媒中に存在する第VIII族金属の量は、改質用触媒で用いられる通常の範囲、約0.05〜2.0重量%、好ましくは0.2〜0.8重量%の範囲内にあるべきである。
【0097】
有用な量で芳香族を選択的に製造するためには、転化触媒が、塩基性金属、例えばアルカリ金属の化合物でゼオライトを中和することにより、酸性を実質的に持たないようにすることが必須である。触媒を、酸性を持たないようにする方法は当分野で知られている。そのような方法の記載については、前記米国特許第4,910,006号及び米国特許第5,316,753号明細書を参照されたい。
【0098】
好ましいアルカリ金属は、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムである。ゼオライト自身は非常に高いシリカ:アルミナ モル比でのみ実質的に酸性をもたなくすることができる。
【0099】
接触分解
炭化水素分解原料は、好ましくは主に水素型のSSZ−56を用い、水素を存在させずに接触分解することができる。
【0100】
SSZ−56は、水素を存在させずに接触分解触媒として用いた場合、その触媒は、慣用的分解触媒、例えば分解触媒の一成分としてこれまで用いられてきたどのようなアルミノ珪酸塩でも、それらと一緒に用いることができる。典型的には、これらは大気孔結晶質アルミノ珪酸塩である。これらの慣用的分解触媒の例は、前述の米国特許第4,910,006号及び米国特許第5,316,753号明細書に記載されている。慣用的分解触媒(TC)成分を用いた場合、SSZ−56に対するTCの相対的重量比は、一般に約1:10〜約500:1、望ましくは約1:10〜約200:1、好ましくは約1:2〜約50:1、最も好ましくは約1:1〜約20:1である。新規なゼオライト及び/又は慣用的分解成分は、更に稀土類イオンとイオン交換して選択性を改良してもよい。
【0101】
分解触媒は、典型的には、無機酸化物マトリックス成分と一緒に用いられる。そのようなマトリックス成分の例については、前記米国特許第4,910,006号及び米国特許第5,316,753号明細書を参照されたい。
【0102】
異性化
本発明の触媒は、C〜C炭化水素の異性化に対し高度に活性で、高度の選択性を有する。活性であるとは、高度に分岐したパラフィンに熱力学的に都合がよいような比較的低い温度で触媒が働くことができることを意味する。従って、その触媒は高オクタン価生成物を生ずることができる。選択性が高いとは、触媒を高オクタン価で操作した時、比較的大きな液体収率を達成することができることを意味する。
【0103】
本発明の方法は、異性化触媒、即ち水素型のSSZ−56を含む触媒と、炭化水素供給物とを異性化条件で接触させることを含む。供給物は30°F〜250°F(−1℃〜121℃)、好ましくは60°F〜200°F(16℃〜93℃)の範囲内の沸点を有する軽い直留留分であるのが好ましい。好ましくはその方法のための炭化水素供給物は、実質的量のC〜C直鎖及び僅かに分岐した低オクタン価炭化水素、一層好ましくはC及びC炭化水素を含む。
【0104】
異性化反応は水素を存在させて行うのが好ましい。好ましくは水素は、0.5〜10のH/HCの水素対炭化水素比(H/HC)、一層好ましくは1〜8のH/HCを与えるように添加される。異性化処理条件についての一層の説明については、前述の米国特許第4,910,006号及び米国特許第5,316,753号明細書を参照されたい。
【0105】
低硫黄供給物が本発明の方法で特に好ましい。供給物の硫黄含有量は、好ましくは10ppm未満、一層好ましくは1ppm未満、最も好ましくは0.1ppm未満である。未だ硫黄含有量が低くなっていない供給物の場合には、硫黄被毒に対する抵抗性がある水素化触媒で、事前飽和領域中の供給物を水素化することにより許容出来る水準に到達させることができる。この水素化脱硫法についての更に詳しい検討については、前述の米国特許第4,910,006号及び米国特許第5,316,753号明細書を参照されたい。
【0106】
供給物の窒素量及び水含有量を制限することが好ましい。これらの目的に適した触媒及び方法は当業者に知られている。
【0107】
操作期間後、触媒は硫黄又はコークスにより不活性になっていることがある。この硫黄及びコークスの除去及びその触媒の再生方法についての更に詳しい検討については、前述の米国特許第4,910,006号及び米国特許第5,316,753号明細書を参照されたい。
【0108】
転化触媒は、好ましくは第VIII族金属化合物を含み、商業的用途に充分な活性度を有する。ここで用いられる第VIII族金属化合物とは、金属それ自体又はそれらの化合物を意味する。第VIII族貴金属及びそれらの化合物、白金、パラジウム、イリジウム、又はそれらの組合せを用いることができる。レニウム及び錫も貴金属と一緒に用いることができる。最も好ましい金属は白金である。転化触媒中に存在する第VIII族金属の量は、異性化触媒で通常の使用範囲内、約0.05〜2.0重量%、好ましくは0.2〜0.8重量%であるのがよい。
【0109】
アルキル化及びアルキル交換
SSZ−56は、芳香族炭化水素のアルキル化又はアルキル交換のための方法で用いることができる。その方法は、芳香族炭化水素をC〜C16オレフィンアルキル化剤又はポリアルキル芳香族炭化水素アルキル交換剤と、少なくとも部分的に液相の条件で、SSZ−56を含む触媒の存在下で接触させることを含む。
【0110】
SSZ−56は、上で述べたように、ベンゼンをアルキル化し、そのアルキル化生成物をガソリンから除去することにより、ガソリンからベンゼンを除去するのにも用いることができる。
【0111】
高い触媒活性度のためには、SSZ−56ゼオライトは、主に水素イオン型になっているべきである。か焼後、陽イオン部位の少なくとも80%が水素イオン及び/又は稀土類イオンによって占められていることが好ましい。
【0112】
本発明の方法によりアルキル化又はアルキル交換することができる適当な芳香族炭化水素供給原料の例には、ベンゼン、トルエン、及びキシレンのような芳香族化合物が含まれる。好ましい芳香族炭化水素はベンゼンである。ナフタレン、或はジメチルナフタレンのようなナフタレン誘導体が望ましい場合もある。芳香族炭化水素の混合物も用いることができる。
【0113】
芳香族炭化水素のアルキル化に適したオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、トランス−ブテン−2、及びシス−ブテン−2、又はそれらの混合物のように2〜20個、好ましくは2〜4個の炭素原子を有するオレフィンである。ペンテンが望ましい場合もある。好ましいオレフィンはエチレン及びプロピレンである。一層長い鎖のαオレフィンも同様に用いることができる。
【0114】
アルキル交換が望まれる場合、アルキル交換剤は、夫々2〜約4個の炭素原子を有する2つ以上のアルキル基を有するポリアルキル芳香族炭化水素である。例えば、適当なポリアルキル芳香族炭化水素には、ジ−、トリ−、及びテトラ−アルキル芳香族炭化水素、例えば、ジエチルベンゼン、トリエチルベンゼン、ジエチルメチルベンゼン(ジエチルトルエン)、ジ−イソプロピルベンゼン、ジ−イソプロピルトルエン、ジブチルベンゼン等が含まれる。好ましいポリアルキル芳香族炭化水素はジアルキルベンゼンである。特に好ましいポリアルキル芳香族炭化水素はジ−イソプロピルベンゼンである。
【0115】
行われる方法がアルキル化である場合、反応条件は次の通りである。芳香族炭化水素供給物は化学量論的に過剰に存在するのがよい。芳香族対オレフィンのモル比は、早い触媒汚染を防ぐため4:1より大きいのが好ましい。反応温度は100°F〜600°F(38℃〜315℃)、好ましくは250°F〜450°F(121℃〜232℃)の範囲にすることができる。反応圧力は、触媒汚染を遅らせるため少なくとも部分的に液相を維持するのに充分であるべきである。これは供給原料及び反応温度により50psig〜1000psig(0.345〜6.89Mpaゲージ)であるのが典型的である。接触時間は10秒〜10時間の範囲でよいが、通常5分〜1時間である。1時間当たり触媒1g(ポンド)についての芳香族炭化水素及びオレフィンのg(ポンド)数で表した重量空間時速(WHSV)は、一般に約0.5〜50の範囲内にある。
【0116】
行われる方法がアルキル交換である場合、芳香族炭化水素のモル比は一般に約1:1〜25:1、好ましくは約2:1〜20:1の範囲にあるであろう。反応温度は約100°F〜600°F(38℃〜315℃)の範囲であろうが、好ましくは約250°F〜450°F(121℃〜232℃)である。反応圧力は少なくとも部分的液相を維持するのに充分であるのがよく、典型的には約50psig〜1000psig(0.345〜6.89Mpaゲージ)、好ましくは300psig〜600psig(2.07〜4.14Mpaゲージ)の範囲にある。重量空間時速は約0.1〜10の範囲にあるであろう。1992年1月21日に公告されたフシー(Hsieh)その他による米国特許第5,082,990号明細書には、そのような方法が記載されており、参考のためここに入れてある。
【0117】
パラフィンから芳香族への転化
SSZ−56は、軽いガス状C〜Cパラフィンを芳香族化合物を含めた一層分子量の大きな炭化水素へ転化するのに用いることができる。そのゼオライトは触媒金属又は金属酸化物を含むのが好ましく、その場合その金属は周期表第IB、IIB、VIII、又はIIIA族からなる群から選択される。好ましくは、金属は、ガリウム、ニオブ、インジウム、又は亜鉛で、約0.05〜5重量%の範囲にある。
【0118】
オレフィンの異性化
SSZ−56は、オレフィンを異性化するのに用いることができる。供給物流は、少なくとも一種類のC4−6オレフィン、好ましくはC4−6直鎖オレフィン、一層好ましくは直鎖ブテンを含有する炭化水素流である。本明細書で用いる直鎖(normal)ブテンとは、直鎖ブテン全ての形態、例えば、1−ブテン、シス−2−ブテン、及びトランス−2−ブテンを意味する。典型的には、直鎖ブテン以外の炭化水素、又は他のC4−6直鎖オレフィンが供給物流中に存在するであろう。これらの他の炭化水素には、例えば、アルカン、他のオレフィン、芳香族、水素、及び不活性ガスが含まれることがある。
【0119】
供給物流は、流体接触分解装置又はメチル−t−ブチルエーテル装置からの流出物であるのが典型的であろう。流体接触分解装置流出物は、約40〜60重量%の直鎖ブテンを含有するのが典型的である。メチル−t−ブチルエーテル装置流出物は、40〜100重量%の直鎖ブテンを含むのが典型的である。供給物流は、好ましくは少なくとも約40重量%の直鎖ブテン、一層好ましくは少なくとも約65重量%の直鎖ブテンを含有する。用語、イソオレフィン及びメチル分岐イソオレフィンは、本明細書中互換性のある言葉として用いられている。
【0120】
この方法は、異性化条件で行う。炭化水素供給物を気相でSSZ−56を含有する触媒と接触させる。この方法は、一般に、ブテンについては約625°F〜約950°F(329℃〜510℃)、好ましくは約700°F〜約900°F(371℃〜482℃)、ペンテン及びヘキセンについては約350°F〜約650°F(177℃〜343℃)の温度で行うことができる。圧力は減圧から約200psig(1.38Mpaゲージ)、好ましくは約15psig〜約200psig(0.103〜1.38Mpaゲージ)、一層好ましくは約1psig〜約150psig(0.00689〜1.03Mpaゲージ)の範囲にある。
【0121】
接触中の液体空間時速は、炭化水素供給物に基づき、一般に約0.1〜約50時−1、好ましくは約0.1〜約20時−1、一層好ましくは約0.2〜約10時−1、最も好ましくは約1〜約5時−1である。水素/炭化水素モル比は、約0〜約30以上に維持する。水素は、供給物流へ直接、又は異性化領域へ直接添加することができる。反応は実質的に水を含まないのが好ましく、典型的には、供給物に基づき約2重量%より少ない。この方法は、充填床反応器、固定床、流動床反応器、又は移動床反応器で行うことができる。触媒床は上方へ又は下方へ移動させることができる。モル%転化率、例えば、直鎖ブテンからイソブテンへの転化率は、少なくとも10、好ましくは少なくとも25、最も好ましくは少なくとも35である。
【0122】
キシレン異性化
SSZ−56は、C芳香族供給物中の一種類以上のキシレン異性体を異性化して、平衡値に近い比率でオルト−、メタ−、及びパラ−キシレンを得る方法でも有用である。特にキシレン異性化は、パラ−キシレンを製造する別の方法に関連して用いられる。例えば、混合C芳香族流中のパラ−キシレンの一部分を結晶化及び遠心分離により回収することができる。結晶化器からの母液を、次にキシレン異性化条件下で反応させ、オルト−、メタ−、及びパラ−キシレンを平衡比に近い所まで回復させる。同時に、母液中のエチルベンゼンの一部分を、キシレン又は濾過により容易に分離される生成物へ転化する。アイソメレート(isomerate)を新しい供給物と混合し、その一緒にした流れを蒸留して重質及び軽質副生成物を除去する。得られたC芳香族流を、次に結晶化器へ送り、その工程を繰り返す。
【0123】
場合により、気相異性化はアルキルベンゼン(例えば、エチルベンゼン)1モル当たり3.0〜30.0モルの水素を存在させて行う。水素を用いた場合、触媒は周期表第VIII族金属成分から選択された水素化/脱水素化成分、特に白金又はニッケルを約0.1〜2.0重量%含むであろう。第VIII族金属成分とは、それら金属、及びそれらの酸化物及び硫化物のような化合物を意味する。
【0124】
場合により、異性化供給物は、トルエン、トリメチルベンゼン、ナフテン、又はパラフィンのような希釈剤を10〜90重量%含むことができる。
【0125】
オリゴマー化
SSZ−56は、約2〜21、好ましくは2〜5個の炭素原子を有する直鎖及び分岐鎖オレフィンをオリゴマー化するのにも用いることができると期待されている。その方法の生成物であるオリゴマーは、燃料、即ちガソリン又はガソリン混合用原料と、化学物質との両方にとって有用な中程度から重質のオレフィンである。
【0126】
オリゴマー化法は、オレフィン供給原料を気相又は液相でSSZ−56を含む触媒と接触させることを含む。
【0127】
ゼオライトは、最初にそれに伴われている陽イオンを、当分野でよく知られている技術に従って他の多種類の陽イオンによって置き換えることができる。典型的な陽イオンには、水素、アンモニウム、金属陽イオン、及びそれらの混合物が含まれるであろう。置換用金属陽イオンの中で、特に、稀土類金属、マンガン、カルシウムの外、周期表第II族の金属、例えば亜鉛、及び周期表第VIII族、例えばニッケルのような金属の陽イオンが好ましい。重要な要件の一つは、ゼオライトの芳香族化活性度がかなり低く、即ち、生成する芳香族の量が約20重量%以下であると言うことである。このことは、n−ヘキサンを分解する能力により測定して、約0.1〜約120、好ましくは約0.1〜約100の制御された酸性活性度[α値]を持つゼオライトを用いることにより達成される。
【0128】
α値は、例えば、1976年6月1日に公告されたギブンス(Givens)その他による米国特許第3,960,978号明細書(これは参考のため全体的にここに入れてある)に示されているように、当分野で知られた標準的試験によって定義されている。もし必要ならば、そのようなゼオライトは水蒸気処理により、又は転化工程で用いることにより、或は当業者が思いつくような他の方法により得ることができる。
【0129】
アルコールの縮合
SSZ−56は、1〜10個の炭素原子を有する低級脂肪族アルコールを、混合脂肪族及び芳香族炭化水素を含むガソリン沸点炭化水素生成物へ縮合するのに用いることができる。バター(Butter)その他による1975年7月8日に公告された米国特許第3,894,107号明細書(この特許は参考のため全体的にここに入れてある)に記載の方法は、この方法で用いられる工程条件を述べている。
【0130】
触媒は水素型でもよく、或は好ましくは約0.05〜5重量%の範囲で、アンモニウム又は金属陽イオン補充物を含むように塩基交換又は含浸させることができる。存在することができる金属陽イオンには、周期表第I〜VIII族の金属のいずれでも含まれる。しかし、第IA族金属の場合には、陽イオン含有量が触媒を効果的に不活性にする程大きくなるような場合がないようにすべきであり、或は交換を、酸性が全て除かれるようなものにすべきではない。塩基性触媒が望まれる場合、酸素化物質の処理を含む他の工程が存在することもある。
【0131】
メタン高級化
低分子量炭化水素と、SSZ−56及び低分子量炭化水素を高分子量炭化水素へ転化することができる金属又は金属化合物を含む触媒とを接触させることにより、低分子量炭化水素から高分子量炭化水素を形成することができる。そのような反応の例には、メタンから、エチレン又はベンゼン又はそれらの両方のようなC2+炭化水素への転化が含まれる。有用な金属及び金属化合物の例には、ランタニド及び/又はアクチニド金属又は金属化合物が含まれる。
【0132】
これらの反応、用いられる金属又は金属化合物、及びそれらを実施することができる条件は、デブリーズ(Devries)その他による1988年3月29日に公告された米国特許第4,734,537号;ウォシェチェック(Washecheck)その他による1990年7月3日に公告された第4,939,311号;アブレバヤ(Abrevaya)その他による1990年10月9日に公告された第4,962,261号;アブレバヤその他による1992年3月10日に公告された第5,095,161号;ハン(Han)その他による1992年4月14日に公告された第5,105,044号;ウォシェチェックによる1992年4月14日に公告された第5,105,046号;ハンその他による1993年8月24日に公告された第5,238,898号;ファン・デル・バート(van der Vaart)による1994年6月14日に公告された第5,321,185号;及びチョゥドハリー(Choudhary)その他による1994年8月9日に公告された第5,336,825号(これらの各々は参考のため全体的にここに入れてある)に記載されている。
【0133】
1−オレフィンの重合
本発明の分子篩は、1−オレフィンの重合、例えば、エチレンの重合のための触媒に用いることができる。オレフィン重合触媒を形成するために、これまで記載してきたような分子篩を、特別な種類の有機金属化合物と反応させる。重合触媒を形成するのに有用な有機金属化合物には、アルキル部分、場合によりハロ部分を有する三価及び四価の有機チタン及び有機クロム化合物が含まれる。本発明の内容で、用語「アルキル」には、直鎖及び分岐鎖アルキル、シクロアルキル、及びベンジルのようなアルカリール基が含まれる。
【0134】
三価及び四価有機クロム及び有機チタン化合物の例は、チェスター(Chester)その他による1983年3月15日に公告された米国特許第4,376,722号、チェスターその他による1983年3月22日に公告された米国特許第4,377,497号、チェスターその他による1984年5月1日に公告された米国特許第4,446,243号、及びチェスターその他による1985年7月2日に公告された米国特許第4,526,942号明細書に記載されている。前記特許の記載は、参考のため全体的にここに入れてある。
【0135】
重合触媒を形成するために用いられる有機金属化合物の例は、一般式:
MYm−n
(式中、Mは、チタン及びクロムから選択された金属であり;Yはアルキルであり;Xはハロゲン(例えば、Cl又はBr)であり;nは1〜4であり;mはnに等しいか又はそれより大きく、3又は4である。)
に相当する化合物が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0136】
そのような式によって包含される有機チタン及び有機クロム化合物の例には、式、CrY、CrY、CrYX、CrYX、CrY、CrYX、CrYX、TiY、TiY、TiYX、TiYX、TiY、TiYX、TiYX〔式中、XはCl又はBrにすることができ、Yは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ネオヘキシル、2−エチルブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、2,2−ジエチルブチル、2−イソプロピル−3−メチルブチル等、例えば、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、3−シクロヘキシルプロピル、4−シクロヘキシルブチル、のようなシクロヘキシルアルキル、及び例えば、(4−メチルシクロヘキシル)メチルのような対応するアルキル置換シクロヘキシルラジカル、ネオフィル、即ち、β、β−ジメチル−フェネチル、ベンジル、エチルベンジル、及びp−イソプロピルベンジルにすることができる〕の化合物が含まれる。Yの好ましい例には、C1−5アルキル、特にブチルが含まれる。
【0137】
触媒で用いられる有機チタン及び有機クロム物質は、当分野でよく知られている技術により製造することができる。例えば、チェスターその他による前記特許を参照されたい。
【0138】
有機チタン又は有機クロム化合物は、その有機金属化合物と分子篩とを反応させるなどにより、本発明の分子篩と一緒にし、オレフィン重合触媒を形成することができる。一般にそのような反応は、有機金属化合物を製造するのに用いられる同じ反応媒体中で、そのような反応生成物の形成を促進する条件下で行う。分子篩は、有機金属化合物の形成が完了した後の反応混合物に単に添加することができる。分子篩は、反応媒体中、分子篩100重量部当たり、約0.1〜10重量部、好ましくは約0.5〜5重量部の有機金属化合物を与えるのに充分な量で添加する。
【0139】
有機金属化合物と分子篩との反応中、反応媒体の温度も、有機金属反応物の安定性を確実に与えるのに充分な低いレベルに維持する。例えば、約−150℃〜50℃、好ましくは約−80℃〜0℃の範囲の温度を有効に用いることができる。有機チタン又は有機クロム化合物と分子篩とを反応させるのに、約0.01〜10時間、一層好ましくは約0.1〜1時間の反応時間を用いることができる。
【0140】
反応が完了した時、そのようにして形成された触媒物質を回収し、窒素雰囲気中で反応媒体溶媒を蒸発させることにより乾燥することができる。別法として、オレフィン重合反応は、触媒を形成するのに用いたのと同じこの溶媒系反応媒体中で行うことができる。
【0141】
その重合触媒を用いて1−オレフィンの重合に触媒作用を与えることができる。本発明の触媒を用いて製造される重合体は、通常1分子当たり2〜8個の炭素原子を有する少なくとも一種類のモノ−1−オレフィンの固体重合体である。これらの重合体は、通常、固体のエチレン単独重合体、又はエチレンと、1分子当たり3〜8個の炭素原子を有する別のモノ−1−オレフィンとの共重合体である。共重合体の例には、エチレン/プロピレン、エチレン/1−ブテン、エチレン/1−ヘキセン、及びエチレン/1−オクテン、等の共重合体が含まれる。そのような共重合体の主要部分は、エチレンから誘導され、一般に約80〜99、好ましくは95〜99モル%のエチレンからなる。これらの重合体は、押出し、吹き込み成形、射出成形、等によく適している。
【0142】
重合反応は、単量体(一種又は多種)、例えば、エチレン単独又はそれと一種類以上の他のオレフィンとを、実質的に湿分及び空気のような触媒毒を存在させずに、触媒として有効な量の担体付き有機金属触媒を用いて、重合反応を開始させるのに充分な温度及び圧力で接触させることにより行うことができる。もし望むならば、不活性有機溶媒を希釈剤として用い、もし重合反応が液相、例えば、粒子状(スラリー)又は溶液法で反応物を用いて行われるならば、材料を取扱い易くするため用いることもできる。反応は、溶媒を存在させないが、もし望むならば、窒素のような不活性ガスを存在させて流動床の構成で気相の反応物を用いて行うこともできる。
【0143】
重合反応は、操作圧力、オレフィン単量体の圧力、用いる特定の触媒及びその濃度に依存して約30℃以下から約200℃以上までの温度で行われる。勿論、選択される操作温度は、希望の重合体メルトインデックスにも依存する。なぜなら、温度が重合体の分子量を調節する因子であることは確実であるからである。好ましくは、用いられる温度は、慣用的スラリー又は「粒子形成」法では約30℃〜約100℃であり、或は「溶液形成」法では100℃〜150℃である。流動床法では、約70℃〜110℃の温度を用いることができる。
【0144】
重合反応で用いられる圧力は、単量体(一種又は多種)の高分子量重合体への重合を開始するのに充分などのような圧力でもよい。従って、希釈剤として不活性ガスを用いて、減圧から約30,000psig以上までの超高気圧までの範囲にすることができる。好ましい圧力は大気圧(0psig)から約1000psigまでである。一般的規則として、20〜800psigの圧力が最も好ましい。
【0145】
本発明の溶液又はスラリー法の態様で用いられる不活性有機溶媒媒体の選択は、余り厳密ではないが、溶媒は、担体付き有機金属触媒及び製造されるオレフィン重合体に対し不活性で、用いる反応温度で安定であるべきである。しかし、不活性有機溶媒媒体が、製造される重合体の溶媒としても働く必要はない。そのような目的で適用することができる不活性有機溶媒の中には、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、イソオクタン、精製ケロセン、等のような1分子当たり約3〜12個の炭素原子を有する飽和脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、等のような1分子当たり約5〜12個の炭素原子を有する飽和脂環式炭化水素、及びベンゼン、トルエン、キシレン、等のような1分子当たり約6〜12個の炭素原子を有する芳香族炭化水素を挙げることができる。特に好ましい溶媒媒体は、シクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、及びヘプタンである。
【0146】
製造される重合体の分子量を低下する(即ち、遥かに高いメルトインデックス、MIを与える)ため、重合反応領域に水素を導入することができる。水素を用いる場合の水素の分圧は、5〜100psig、好ましくは25〜75psigの範囲内にすることができる。本発明に従って製造される重合体のメルトインデックスは、約0.1〜約70、或はそれ以上の範囲にすることができる。
【0147】
粒状、溶液、及び流動床重合構成の例を含めた適当な重合条件についての一層詳細な記述は、カラピンカ(Karapinka)による1973年1月9日公告の米国特許第3,709,853号、カロル(Karol)その他による1978年4月25日公告の米国特許第4,086,408号明細書に見出される。これらの特許の両方共、参考のためここに入れてある。
【0148】
水素化処理
SSZ−56は水素化処理触媒として有用である。水素化処理中、炭化水素質供給物中に存在する酸素、硫黄、及び窒素は、低いレベルへ減少する。芳香族及びオレフィンがその供給物中に存在するならば、それらが持つ二重結合も飽和されるであろう。或る場合には、水素化処理触媒及び水素化処理条件は、最も脱硫された生成物(典型的には燃料として有用な生成物)の収率を低下することがある分解反応を最小にするように選択される。
【0149】
水素化処理条件には、400〜900°F(204〜482℃)、好ましくは650〜850°F(343〜454℃)の反応温度;500〜5000psig(3.5〜34.6Mpa)、好ましくは1000〜3000psig(7.0〜20.8MPa)の圧力;0.5時−1〜20時−1(v/v)の供給速度(LHSV);及び液体炭化水素供給物1バレル当たり300〜2000scfのH(液体炭化水素供給物1m当たり53.4〜356mのH)の全水素消費量が含まれるのが典型的である。水素化処理触媒は、本発明の分子篩に担持された第VI族金属又はその化合物、及び第VIII族金属又はその化合物の複合体であるのが典型的であろう。そのような水素化処理触媒は予め硫化されているのが典型的である。
【0150】
炭化水素供給物を水素化処理するのに有用な触媒は、メイヤー(Mayer)その他による1982年8月31日に公告された米国特許第4,347,121号、及びチェスター(Chester)その他による1989年3月7日に公告された米国特許第4,810,357号明細書(それらの両方共参考のため全体的にここに入れてある)に記載されている。適当な触媒には、Fe、Co、Ni、Pt、又はPdのような第VIII族からの貴金属及び/又はCr、Mo、Sn、又はWのような第VI族金属が含まれる。第VIII族及び第VI族金属の組合せの例には、Ni−Mo、又はNi−Snが含まれる。他の適当な触媒は、イワオ(Iwao)その他による1979年6月5日に公告された米国特許第4,157,294号、及びフィッシャー(Fischer)その他による1975年9月9日に公告された米国特許第3,904,513号に記載されている。ストランゲランド(Strangeland)その他による1974年12月3日に公告された米国特許第3,852,207号明細書には、適当な貴金属触媒及び穏やかな水素化処理条件が記載されている。これらの特許の内容は、参考のためここに入れてある。
【0151】
触媒中の水素化成分(単数又は複数)の量は、全触媒100重量部当たりの金属酸化物(一種又は多種)として計算して、約0.5重量%〜約10重量%の第VIII族成分(一種又は多種)、及び5重量%〜約25重量%の第VI族金属成分(一種又は多種)の範囲にあるのが適切である。この場合、重量%は硫化前の触媒の重量に基づく。触媒中の水素化成分(単数又は複数)は、酸化状態及び/又は硫化状態になっていてもよい。
【0152】
水素化
SSZ−56は、不飽和炭化水素を含有する炭化水素供給物の水素化に触媒作用を与える触媒として用いることができる。不飽和炭化水素は、オレフィン、ジエン、ポリエン、芳香族化合物、等を含むことができる。
【0153】
不飽和炭化水素を含む炭化水素供給物を、SSZ−56を含む触媒を存在させて水素と接触させることにより水素化を達成する。この触媒は、第VIB族及び第VIII族の一種類以上の金属で、それらの塩、錯体、及び溶液を含めたものを含むこともできる。これらの触媒として活性な金属についての言及は、元素状態、又は酸化物、硫化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、等のような或る形態のそのような金属(一種又は多種)を包含するものとする。そのような金属の例には、金属が、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、又はそれらの組合せからなる群、又はニッケル、モリブデン、コバルト、タングステン、チタン、クロム、バナジウム、レニウム、マンガン、及びそれらの組合せからなる群から選択された金属、塩、又は錯体が含まれる。
【0154】
触媒の水素化成分(即ち、前記金属)は、触媒の水素化機能を与えるのに有効な量で、好ましくは0.05〜25重量%の範囲内で存在する。
【0155】
温度、圧力、空間速度、接触時間、等のような水素化条件は、当分野でよく知られている。
【0156】
ガス流中の窒素酸化物の還元
SSZ−56は、ガス流中の窒素の酸化物を接触還元するのに用いることもできる。典型的には、ガス流は酸素も含み、屡々それを化学量論的に過剰含んでいる。また、SSZ−56は窒素酸化物の還元に対し触媒作用を及ぼすことができる金属又は金属イオンをその内部又はその上に含んでいてもよい。そのような金属又は金属イオンの例には、コバルト、銅、白金、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、ランタン、パラジウム、ロジウム、及びそれらの混合物が含まれる。
【0157】
ゼオライトを存在させて窒素酸化物を接触還元するそのような方法の一例は、リッチャー(Ritscher)その他による1981年10月27日に公告された米国特許第4,297,328号明細書(これは参考のためここに入れてある)に記載されている。そこではその接触過程は、一酸化炭素及び炭化水素の燃焼と、内燃機関からの排気ガスのようなガス流中に含まれている窒素酸化物の接触還元である。用いられるゼオライトは、そのゼオライト内又はその上に有効な量の触媒銅金属又は銅イオンを与えるのに充分な金属がイオン交換、ドープ、又は付着されている。更に、その過程は、過剰の酸化剤、例えば、酸素中で行われる。
【0158】
低温始動排気物
ガソリン及び燃料油のような炭化水素質燃料の燃焼から生ずるガス状廃棄生成物は、燃焼又は不完全燃焼の生成物として一酸化炭素、炭化水素、及び窒素酸化物を含み、大気の汚染に関連して深刻な健康問題を与える。静止エンジン、工業的炉、等のような他の炭素質燃料燃焼関係機構からの排気ガスは、実質的な大気汚染の原因となり、自動車エンジンからの排気ガスは主な汚染源である。これらの健康問題が関与しているため、環境保護局(EPA)は、自動車が排出する一酸化炭素、炭化水素、及び窒素酸化物の量について厳しい規制を発表している。これらの規制の実施は、自動車から排出される汚染物の量を減少するため触媒コンバーターを使用する結果になっている。
【0159】
一酸化炭素、炭化水素、及び窒素酸化物汚染物質の同時転化を達成するため、エンジン排出系内の酸素センサーからのフィードバック信号に応答する機能を果たす空気対燃料比制御手段と共に触媒を用いることが行われるようになってきている。これらの三成分制御触媒は、それらが約300℃の作動温度に到達した後では充分によく働くが、それより低い温度では、それらは実質的量の汚染物質を転化することができない。このことは、エンジン、特に自動車エンジンが始動した時、その三成分制御触媒が炭化水素及び他の汚染物質を無害な化合物へ転化することができないことを意味する。
【0160】
エンジンの低温始動部分中、炭化水素を吸着するため吸着床が用いられてきた。その方法は典型的には炭化水素燃料の場合に用いられるであろうが、本発明は、アルコール燃料エンジンからの排気ガス流を処理するのにも用いることができる。吸着床は、触媒の直前に配置されるのが典型的である。即ち、排気ガス流を、先ず吸着床を通って流し、次に触媒に通す。吸着床は、排気ガス流に存在する条件下で水よりも炭化水素を主に吸着する。或る長さの時間の後、吸着床は、その床が排気ガス流から炭化水素をもはや除去することができない温度(典型的には、約150℃)に到達する。即ち、炭化水素が吸着される代わりに、吸着床から実際脱着される。これは、吸着床を再生し、その結果それが次の低温始動中に炭化水素を吸着することができるようになる。
【0161】
従来法では、エンジン低温始動操作中、炭化水素の放出を最小にするため吸着床を使用することを取扱った幾つかの文献が提出されている。そのような文献の一つは米国特許第3,699,683号明細書であり、そこでは吸着剤床が、還元触媒及び酸化触媒の両方の後に置かれている。特許権者は、排気ガス流が200℃より低い場合にそのガス流を還元触媒に通し、次に酸化触媒に通し、最後に吸着剤床を通して流し、それにより吸着剤床で炭化水素を吸着することを開示している。温度が200℃より高くなると、酸化触媒から放出されたガス流を大部分と小部分に分け、大部分を直接大気中に排出し、小部分を吸着剤床に通すことにより未燃焼炭化水素を脱着し、次に脱着した未燃焼炭化水素を含むこの排気ガス流の得られた小部分をエンジンへ流し、そこでそれらを燃焼する。
【0162】
別の文献は米国特許第2,942,932号明細書であり、これは、排気ガス流中に含まれている一酸化炭素及び炭化水素を酸化するための方法を教示している。この特許に開示されている方法は、800°Fより低い排気ガス流を吸着領域へ流し、そこで一酸化炭素及び炭化水素を吸着し、次にこの吸着領域から得られた流れを酸化領域へ送ることからなる。排気ガス流の温度が約800°Fに到達すると、その排気ガス流は最早その吸着領域に通さず、直接酸化領域へ過剰の空気を添加して送る。
【0163】
デュン(Dunne)による1992年1月7日に公告された米国特許第5,078,979号明細書(これは参考のため全体的にここに入れてある)には、分子篩吸着剤床を用いてエンジンからの排気ガス流を低温始動排出物を防ぐように処理することが記載されている。分子篩の例には、ホージャサイト(faujasite)、クリノプティロライト(clinoptilolite)、モルデナイト(mordenite)、チャバザイト(chabazite))、シリカライト(silicalite)、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、及びZSM−5が含まれる。
【0164】
カナダ特許第1,205,980号明細書には、アルコール燃料自動車から廃棄放出物を減少させる方法が記載されている。この方法は、低温エンジン始動排気ガスをゼオライト粒子の床に送り、次に酸化触媒の上に送ることからなり、次にそのガスを大気中へ放出する。排気ガス流が温かくなってくると、それを吸着床と、次に酸化床に連続的に通す。
【0165】
既に述べたように、本発明は、一般にエンジン排気ガス流を処理するための方法に関し、特にエンジンの低温始動操作中の排出物を最少にする方法に関する。エンジンは内燃又は外燃機関からなり、それは未燃焼又は熱分解した炭化水素又は同様な有機物を含む有毒な成分又は汚染物を含む排気ガス流を発生する。排気ガスに通常存在する他の有毒な成分には、窒素酸化物及び一酸化炭素が含まれる。エンジンには炭化水素質燃料が供給されてもよい。本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられている用語「炭素質燃料」には、炭化水素、アルコール、及びそれらの混合物が含まれる。エンジンの燃料として用いることができる炭化水素の例は、ガソリン又はディーゼル燃料を構成する炭化水素混合物である。エンジンの燃料として用いることができるアルコールには、エタノール及びメタノールが含まれる。アルコール混合物及びアルコールと炭化水素との混合物も用いることができる。エンジンは、ジェットエンジン、ガスタービン、内燃機関、例えば、自動車、トラック、又はバスのエンジン、ディーゼルエンジン、等でもよい。本発明の方法は、特に自動車に搭載されている炭化水素、アルコール、又は炭化水素・アルコール混合物の内燃機関に適している。本発明を例示するのに簡明にするため、燃料としての記載は炭化水素を用いることにする。以下の記載で炭化水素を用いても、本発明を炭化水素燃料エンジンに限定するものと見做すべきではない。
【0166】
エンジンを始動した時、エンジン排気ガス流中に比較的高い濃度の炭化水素のみならず、他の汚染物を生ずる。ここで用いる汚染物とは、排気ガス流中に見出されるどのような未燃焼燃料成分及び燃焼副生成物でも集約的に言及している。例えば、燃料が炭化水素燃料である場合、エンジン排気ガス流の中には炭化水素、窒素酸化物、一酸化炭素、及び他の燃焼副生成物が見出されるであろう。このエンジン排気ガス流の温度は比較的冷たく、一般に500℃より低く、典型的には、200〜400℃の範囲にある。このエンジン排気流は、エンジンの初期作動期間中、典型的には、冷たいエンジンを始動した後の最初の30〜120秒の間、上記特性を有する。エンジン排気流は、体積で約500〜1000ppmの炭化水素を含むのが典型的であろう。
【0167】
処理すべきエンジン排気ガス流を、分子篩SSZ−56を含む分子篩床上に流し、第一排気流を生成する。分子篩SSZ−56については下に記載する。分子篩床から放出された第一排気流を、今度は触媒上に流し、第一排気流中に含まれている汚染物を無害の成分へ転化し、処理済み排気流を与え、それを大気中へ放出する。大気中へ放出する前、その処理済み排気流を当分野でよく知られているマフラー又は他の消音装置を通って流すことができることは分かる。
【0168】
汚染物を無害の成分へ転化するのに用いられる触媒は、当分野では通常三成分制御触媒と呼ばれている。なぜなら、それは、第一排気流中に存在する全ての残留炭化水素を二酸化炭素と水へ酸化し、全ての残留一酸化炭素を二酸化炭素へ酸化し、全ての残留窒素酸化物を窒素と酸素へ還元することを同時に行うことができるからである。或る場合には、例えば、アルコールが燃料として用いられた場合、触媒は窒素酸化物を窒素と酸素へ転化する必要は無いかも知れない。この場合には触媒は酸化触媒と呼ばれる。エンジン排気流及び第一排気流の温度が比較的低いため、この触媒は非常に高い効率では機能せず、そのため分子篩床を必要とする。
【0169】
分子篩床が充分な温度、典型的には、約150〜200℃に到達すると、床に吸着された汚染物が脱着し始め、第一排気流により触媒上に運ばれる。この点では触媒はその作動温度に到達しており、従って、それら汚染物を無害の成分へ完全に転化することができる。
【0170】
本発明で用いられる吸着剤床は、粒状形態で便利に用いることができ、或は吸着剤を一体的固体キャリヤーに付着させてもよい。粒状形態が望ましい場合、吸着剤は、小球、ペレット、顆粒、リング、球、等のような形に形成することができる。一体的形態を使用する場合、吸着剤に構造的支持を与える不活性キャリヤー材料に付着させた薄膜又は被覆として吸着剤を用いるのが通常最も便利である。不活性キャリヤー材料は、セラミック又は金属材料のようなどのような耐火性材料でもよい。キャリヤー材料は吸着剤と反応せず、それが曝されるガスによって劣化しないことが望ましい。適当なセラミック材料の例には、シリマナイト、ペタライト、コーディエライト、ムライト、ジルコン、ジルコンムライト、スポジウメン、アルミナ・チタネート、等が含まれる。更に、本発明の範囲内に入る金属材料には、耐酸化性を持つか、さもなければ高温に耐えることができる、米国特許第3,920,583号明細書に記載されているような金属及び合金が含まれる。
【0171】
キャリヤー材料は、ガスの流れの方向に伸びる複数の孔又は溝を与えるどのような堅い一体的形状でも最もよく用いることができる。形状は蜂の巣状構造であるのが好ましい。蜂の巣状構造は、一体的形態又は多重モジュールの配列として有利に用いることができる。蜂の巣状構造は、その蜂の巣状構造の部屋又は溝と同じ方向に全体的にガスが流れるように通常配向されている。一体的構造体についての一層詳細な検討については、米国特許第3,785,998号及び第3,767,453号明細書を参照されたい。
【0172】
当分野でよく知られているどのような都合のよいやり方でもよいが、分子篩をキャリヤーに付着させる。好ましい方法には、分子篩を用いてスラリーを調製し、そのスラリーで一体的蜂の巣状キャリヤーを被覆することが含まれる。スラリーは、適当な量の分子篩及び結合剤と水とを一緒にするような当分野で既知の手段により調製することができる。この混合物を、次に超音波、粉砕、等のような手段を用いて混合する。このスラリーを用い、一体的蜂の巣状構造体をそのスラリー中に浸漬し、排出させるか又は吹き込みにより過剰のスラリーを溝から除去し、約100℃まで加熱することによりその蜂の巣状構造体を被覆する。分子篩の希望の装填量が達成されていないならば、上記方法を、希望の装填量を達成するのに必要な回数繰り返すことができる。
【0173】
分子篩を一体的蜂の巣状構造体に付着させる代わりに当分野で既知の手段により、分子篩を一体的蜂の巣状構造体に形成することができる。
【0174】
吸着剤は、場合により、その上に分散された一種類以上の触媒金属を含んでいてもよい。吸着剤上に分散させることができる金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びそれらの混合物からなる貴金属である。当分野でよく知られている適当なやり方で、担体として働く吸着剤上に望ましい貴金属を付着させることができる。吸着剤担体上に貴金属を分散させる方法の一例は、希望の貴金属(一種又は多種)の分解可能な化合物の水溶液を吸着剤担体に含浸させ、貴金属化合物が上に分散したその吸着剤を乾燥し、次に空気中で約400℃〜約500℃の温度で約1〜約4時間か焼することを含んでいる。分解可能な化合物とは、空気中で加熱すると金属又は金属酸化物を与える化合物を意味する。用いることができる分解可能な化合物の例は、参考としてここに入れる米国特許第4,791,091号明細書に記載されている。好ましい分解可能な成分は、クロロ白金酸、三塩化ロジウム、クロロパラジウム酸(chloropalladic acid)、ヘキサクロロイリジウム(IV)酸[hexachloroiridate(VI) acid]、及びヘキサクロロルテニウム酸塩(hexachlororuthenate)である。貴金属は、吸着剤担体の約0.01〜約4重量%の範囲の量で存在するのが好ましい。特に、白金及びパラジウムの場合、その範囲は0.1〜4重量%であるが、ロジウム及びルテニウムの場合には、その範囲は約0.01〜2重量%である。
【0175】
これらの触媒金属は、炭化水素及び一酸化炭素を酸化することができ、窒素酸化物成分を無害の生成物へ還元することができる。従って、吸着剤床は、吸着剤と触媒との両方として働くことができる。
【0176】
本発明で用いられる触媒は、当分野でよく知られているどのような三成分制御触媒又は酸化触媒からでも選択される。それら触媒の例は、参考のための全てここに入れる米国特許第4,528,279号、第4,791,091号、第4,760,044号、第4,868,148号、及び第4,868,149号明細書に記載されているものである。当分野でよく知られている好ましい触媒は、白金及びロジウム、及び場合によりパラジウムを含むものであるが、酸化触媒は、通常ロジウムを含まない。酸化触媒は、通常白金及び/又はパラジウム金属を含む。これらの触媒は、バリウム、セリウム、ランタン、ニッケル、及び鉄のような促進剤及び安定化剤を含んでいてもよい。貴金属促進剤及び安定化剤は、通常、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミノ珪酸塩、及びそれらの混合物のような担体上に付着されており、アルミナが好ましい。触媒は粒子状形態で便利に用いることができ、或は触媒複合体を一体的固体キャリヤーに付着させることができ、一体的キャリヤーが好ましい。粒子状形態及び一体的形態の触媒は、吸着剤について上で記載したようにして製造される。
【実施例】
【0177】
次の例は、本発明を実証するものであり、限定するものではない。
【0178】
例1
指向剤水酸化N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウムの合成
母体アミン2−メチルデカヒドロキノリンを、下に記載するように、2−メチルキノリン(キナルジン)の水素化により得た。1000mlのステンレス鋼水素化容器に、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)から購入した200g(1.4モル)の2−メチルキノリン(キナルジン)及び300mlの氷酢酸、10gのPtO、及び15mlの濃HSOを導入した。その混合物を窒素によるパージ(容器を1000psiまで窒素で加圧し、真空にする)を2回行なった。次に反応容器を水素ガスで1500psiまで加圧し、50℃で一晩撹拌した。圧力は一晩で低下し、容器を1500psiへ(Hガスで)加圧して戻し、圧力の低下が最早観察されなくなるまで撹拌した。反応が完了したならば、混合物を濾過し、濾液を50重量%の水素化ナトリウム水溶液で、pHが〜9になるまで処理した。処理された濾液を1000mlのジエチルエーテルで希釈した。有機層を分離し、水及び塩水で洗浄し、無水MgSOで乾燥した。真空中で(回転蒸発器を用いて)濃縮することにより、一対の異性体(シス縮合及びトランス縮合環系異性体で、両方共、メチル基がエクアトリアル位置にある異性体)を1.1:0.9のトランス縮合:シス縮合異性体比で97%の収率でアミン(208g)を与えた。生成物の確実性を、NMR、IR、及びGCMS分光分析を含めたスペクトルデーター分析により確定した。原理的に、四つの同様な異性体が存在するが、二つの異性体だけが生成した。
【0179】
N−エチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム沃化水素酸塩を、下に記載する方法に従って製造した。2−メチルデカヒドロキノリン(トランス及びシス)の100g(0.65モル)を350mlのアセトニトリル中に入れた溶液に111g(0.72モル)の沃化エチルを添加した。混合物を、室温で96時間(オーバーヘッド撹拌器を用いて)撹拌した。次に更に1/2モル当量の沃化エチルを添加し、混合物を6時間還流加熱した。反応混合物を減圧で回転蒸発器で濃縮し、得られた固体を500mlのエチルエーテルで濯ぎ、未反応アミン及び過剰の沃化物を全て除去した。この反応は、二種類のN−エチル−2−メチル−デカヒドロキノリニウム沃化水素酸塩(モノ−エチル誘導体)と、僅かな量の第四級化誘導体混合物を与えた。生成物を数回イソプロピルアルコールによる再結晶化により分離し、純粋なトランス縮合環N−エチル−2−メチル−デカヒドロキノリニウム沃化水素酸塩及び純粋なシス縮合環N−エチル−2−メチル−デカヒドロキノリニウム沃化水素酸塩を与えた(下の方式参照)。
【0180】
沃化N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウムを、下に示した手順に従い調節した。下の手順は、沃化N,N−ジエチル−2−メチル−デカヒドロ−キノリニウムを製造するのに典型的なものである。得られたトランス縮合環N−エチル−2−メチル−デカヒドロキノリニウム沃化水素酸塩(28g、0.09モル)を、アセトニトリル(150ml)及びKHCO(14g、0.14モル)溶液に添加した。この溶液に、30g(0.19モル)の沃化エチルを添加し、得られた混合物を(オーバーヘッド撹拌器を用いて)室温で72時間撹拌した。更に1以上のモル当量の沃化エチルを添加し、反応を還流加熱し、還流温度で6時間撹拌した。加熱を止め、反応を更に室温で一晩撹拌した。過剰の沃化エチル及び溶媒を減圧で回転蒸発器で除去することにより反応を終了した。得られた固体を500mlのクロロホルムに懸濁し、それにより希望の生成物を溶解し、不必要なKHCO及びその塩副生成物を残した。溶液を濾過し、濾液を無水MgSOにより乾燥した。濾過し、減圧で回転蒸発器で濃縮することにより、淡い黄褐色の固体として希望の沃化N,N−ジエチル−2−メチル−デカヒドロキノリニウムを与えた。この固体を更にイソプロピルアルコールで再結晶化することにより精製した。この反応は26.8g(87%の収率)を与えた。上に記載した手順により、シス縮合環異性体である沃化N,N−ジエチル−2−メチル−デカヒドロ−キノリニウムが製造された。トランス縮合環誘導体A(下の方式1参照)は、SSZ−56、水酸化N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウムを製造するのに有用なテンプレート剤(SDA)である。
【0181】
N,N−ジエチル−2−メチル−デカヒドロ−キノリニウム陽イオンの水酸化物型のものを、下の手順に記載したように、イオン交換により製造した。80mlの水の中に入れた20g(0.06モル)の沃化N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロ−キノリニウムの溶液に、80gのOHイオン交換樹脂〔バイオラド(BIORAD)(登録商標名)AGI−X8〕を添加し、得られた混合物を室温で数時間穏やかに撹拌した。混合物を濾過し、そのイオン交換樹脂を更に30mlの水で濯いだ(樹脂から全ての陽イオンを確実に除去するため)。濯ぎ液と元の濾液を一緒にし、濾液の僅かな試料の0.1N HClによる滴定分析は、0.5MのOHイオン濃度(0.055モルの陽イオン)を示していた。下の方式1は、テンプレート剤の合成を描いたものである。
【0182】
【化3】

【0183】
この合成からは4つの異性体が可能である(下に描く)が、2つの異性体:トランス縮合エクアトリアルメチルA及びシス縮合エクアトリアルメチルB;が生成した。
【0184】
【化4】

【0185】
例2
か焼硼素BETAゼオライトから硼珪酸塩SSZ−56の合成
23ccのテフロン(登録商標)ライナー(Teflon liner)中で、水酸化N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム(トランス縮合環異性体)の0.5M溶液3g(1.5mM)、NaOHの1.0N水溶液0.5g(0.5mM)、4.5gの脱イオン水、及び0.65gのか焼硼素BETAゼオライトを全て混合した。テフロン(登録商標)ライナーに蓋をし、パール(Parr)反応器中へ入れ、炉中で約43rpmで回転させながら150℃に加熱した。反応の進行を、ゲルのpHを監視し、3〜6日の間隔で走査電子顕微鏡(SEM)を用いて結晶形成を探すことによりチェックした。通常、反応は、18〜24日間加熱した後に完了した(160℃では、達成される結晶化時間は一層短かかった)。反応が終わった時の最終的pHは、10.8〜11.6の範囲であった。結晶化が完了したならば(SEM分析による)、反応混合物(通常透明な液体と共に白色の微細な粉末沈澱物)を濾過した。収集した固体を脱イオン水(〜1000ml)で数回濯ぎ、次に一晩空気乾燥し、次に炉中で120℃で15〜20分間乾燥した。この反応により、XRD分析により決定して、0.55〜0.6gの純粋な硼素SSZ−56を生成した。
【0186】
例3
粒子添加硼珪酸塩SSZ−56の製造
23ccのテフロン(登録商標)ライナー中で、水酸化N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム(トランス縮合環異性体)の0.5M溶液3g(1.5mM)、NaOHの1.0N水溶液0.5g(0.5mM)、4.5gの脱イオン水、及び0.65gのか焼硼素BETAゼオライト、及び0.03gのSSZ−56(上に記載したようにして製造したもの)を混合した。テフロン(登録商標)ライナーに蓋をし、パール反応器中へ入れ、炉中で約43rpmで回転させながら150℃に加熱した。反応の進行を、ゲルのpHを監視し、3日の間隔で走査電子顕微鏡(SEM)を用いて結晶形成を探すことによりチェックした。6日間加熱した後に結晶化が完了した(SEM分析)。反応が終わった時の最終的pHは、通常11.2であった。結晶化が完了したならば、反応混合物を濾過し、収集した固体を脱イオン水(〜1000ml)で濯ぎ、次に一晩空気乾燥し、次に炉中で120℃で15〜20分間乾燥した。この反応により、0.6gの純粋な硼素SSZ−56を生成した。その物質の正体及び特性はXRD分析により決定した。
【0187】
例4
硼素源として硼酸ナトリウム10水和物及び珪素源としてキャブ・オ・シル(CAB−O−SIL)M−5から硼珪酸塩SSZ−56の直接合成
23ccのテフロン(登録商標)ライナー中で、水酸化N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム(トランス縮合環異性体)の0.5M溶液6g(3mM)、NaOHの1.0N水溶液1.2g(1.2mM)、4.8gの脱イオン水、及び0.065gの硼酸ナトリウム10水和物を混合し、硼酸ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌した。次に0.9gのキャブ・オ・シルM−5(〜98%SiO)を添加し、完全に混合した。得られたゲルに蓋をし、パール反応器中へ入れ、炉中で約43rpmで回転させながら160℃に加熱した。反応の進行を、ゲルのpHを監視し、6日の間隔で走査電子顕微鏡(SEM)を用いて結晶形成を探すことによりチェックした。通常、反応は、18〜24日間加熱した後、完了した。反応が終わった時の最終的pHは、11.5〜12.3の範囲であった。結晶化が完了したならば(SEM分析による)、反応混合物である、透明な液体と白色の微細な粉末状沈澱物を濾過した。収集した固体を脱イオン水(〜1000ml)で数回濯ぎ、次に一晩空気乾燥し、次に炉中で120℃で15分間乾燥した。この反応により、通常、0.75〜0.9gの純粋な硼素SSZ−56を生成する。
【0188】
例5
硼素源として硼酸ナトリウム10水和物及び珪素源としてキャブ・オ・シルM−5から粒子添加硼珪酸塩SSZ−56の合成
23ccのテフロン(登録商標)ライナー中で、水酸化N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム(トランス縮合環異性体)の0.5M溶液6g(3mM)、NaOHの1.0N水溶液1.2g(1.2mM)、4.8gの脱イオン水、及び0.062gの硼酸ナトリウム10水和物を混合し、硼酸ナトリウムが完全に溶解するまで撹拌した。次に0.9gのキャブ・オ・シルM−5(〜98%SiO)及び例4の場合のようにしてして製造した0.04gのB−SSZ−56を添加し、完全に混合した。得られたゲルに蓋をし、パール反応器中へ入れ、炉中で約43rpmで回転させながら160℃に加熱した。反応の進行を、ゲルのpHを監視し、3〜5日の間隔で走査電子顕微鏡(SEM)を用いて結晶形成を探すことによりチェックした。反応は、7日間加熱した後、完了した。反応が終わった時の最終的pHは、約12.2であった。結晶化が完了したならば(SEM分析による)、反応混合物である、透明な液体と白色の微細な粉末状沈澱物を濾過した。収集した固体を脱イオン水(〜1000ml)で数回濯ぎ、次に一晩空気乾燥し、次に炉中で120℃で15分間乾燥した。この反応により、0.88gの純粋な硼素SSZ−56を生成した。
【0189】
例6
SSZ−56のか焼
下に記載するか焼方法によりテンプレート剤分子(構造指向剤:SDA)をゼオライトSSZ−56から除去し、その溝及び空洞の解放を達成した。上で論じた例2、3、4、又は5の手順により合成し、製造したままのSSZ−56の試料を、か焼皿中にSSZ−56の薄い床を作り、それをマッフル炉中で室温から595℃へ三段階で加熱することによりか焼した。試料を120℃へ1℃/分の速度で加熱し、2時間保持した。次に温度を1℃/分の速度で540℃へ上昇し、5時間保持した。次に温度を再び1℃/分の速度で595℃へ上昇させ、そこで5時間保持した。わずかに空気の漏れがある窒素流を、か焼過程加熱中、20標準ft/分(0.57標準m/分)の速度でゼオライト上に通した。
【0190】
例7
SSZ−56のアンモニウムイオン交換
例2、3、4、又は5のようにして製造し、例6のようにしてか焼したNa型のSSZ−56を、NHNOの水溶液(典型的には、20mlのHO中、1gのNHNO/1gのSSZ−56)中で90℃で2〜3時間加熱することによりNH型SSZ−56へ転化した。次に、その混合物を濾過し、この工程を希望に応じ、何回も繰り返した(通常2〜3回行なった)。濾過の後、得られたNH交換生成物を脱イオン水で洗浄し、空気乾燥した。このNH型SSZ−56を540℃までか焼することによりH型に転化することができる(上の例6に記載したようにして、第二段階が終わった時に止める)。
【0191】
例8
硼素−SSZ−56のアルミニウム交換によるアルミノ珪酸塩SSZ−56の製造
硼珪酸塩SSZ−56を、下に記載する手順により硝酸アルミニウムで交換することによりアルミノ珪酸塩型のSSZ−56を製造した。か焼したH型の硼珪酸塩SSZ−56(例2、3、4、又は5のようにして製造し、例6のようにして硝酸アンモニウムで処理し、か焼したもの)を、硝酸アルミニウム九水和物の1モル溶液中にそのゼオライト(H/硼珪酸塩SSZ−56)を懸濁することにより(10mlのAl(NO・9HOの1M溶液/1gのSSZ−56)、容易にアルミノ珪酸塩SSZ−56へ転化した。その懸濁物を一晩還流加熱した。次に得られた混合物を濾過し、収集した固体を脱イオン水で完全に濯ぎ、一晩空気乾燥した。その固体を炉中で120℃で2時間更に乾燥した。この交換は、Na型のSSZ−56(例2、3、4、又は5のようにして製造し、例6のようにしてか焼したもの)に対しても行うことができる。
【0192】
例9
窒素吸着(微細孔体積分析)
上記例2及び4のようにして合成し、例6及び7のようにして処理したNa及びH型のSSZ−56を、吸着物としてNを用い、BET法により比表面積及び微細孔体積分析にかけた。ゼオライトは、Na型については0.18cc/g、H型については0.19cc/gの微細孔体積を持ち、かなりの空隙体積を示していた。
【0193】
例10
アルゴン吸着(微細孔体積分析)
Na型の硼珪酸塩SSZ−56(例2のようにして合成し、例6のようにしてか焼したもの)のか焼試料は、マイクロメリティーズ(Micromerities)からのASAP2010設備で記録した87.5°K(−186℃)のアルゴン吸着等温線に基づき0.16cc/gの微細孔体積を持っていた。試料を、先ず400℃で16時間脱ガスし、然る後、アルゴンを吸着させた。低圧導入量は2.00cm/g(STP)であった。1回の導入量に対して用いた最大平衡時間は1時間であり、全操作時間は37時間であった。そのアルゴン吸着等温線を、ホバース・カワゾエ(Horvarth−Kawazoe)形式のサイトウ・フォレイ(Saito Foley)修正〔Microporous Materials,3,531(1995)〕、及び慣用的t−プロット法〔J. Catalysis,4,319(1965)〕を用い、密度関数理論(DFT)形式、及びオリビエ(Olivier)による活性炭スリットについて発展させたパラメーター〔Porous Mater. 2.9(1995)〕を用いて分析した。
【0194】
例11
束縛指数(Constraint Index)試験
例2のようにして合成した水素型のSSZ−56を、例6及び7のようにしてか焼し、アンモニウム交換し、例8のようにしてアルミニウム交換した。得られたアルミニウム交換SSZ−56の試料を、次に、例7のようにしてアンモニウム交換し、次に例6のようにして540℃へか焼した。H−Al−SSZ−56を、4kpsiでペレット化し、粉砕し、20〜40メッシュの粒状にした。その粒状材料の試料0.6gを約540℃で空気中で4時間か焼し、デシケーター中で冷却し、確実に乾燥した。次に、0.5gを3/8inステンレス鋼管中に詰め、その分子篩床の両側にアランダム(登録商標)を詰めた。リンドバーグ(Lindburg)炉を用いてその反応管を加熱した。ヘリウムを10cc/分及び大気圧で反応管中に導入した。その反応器を約315℃に加熱し、n−ヘキサン及び3−メチルペンタンの50/50供給物を8μl/分の速度で反応器中に導入した。供給物は、ブラウンリー(Brownlee)ポンプで送った。供給物導入10分後に、直接GCへの試料採取を始めた。束縛指数(CI)値を当分野で知られている方法を用いてGCデーターから計算した。SSZ−56は、操作15分後に、0.76のCI及び79%の転化率を持っていた。この材料は直ぐに汚染され、105分でCIは0.35になり、転化率は25.2%になった。CI試験は、この材料が非常に活性な触媒材料であることを示していた。
【0195】
例12
n−ヘキサデカン水素化分解試験
SSZ−56の試料(例11の束縛指数試験について記載したようにして製造されたもの)の1gを、10gの脱イオン水中に懸濁した。この懸濁物に、その分子篩試料の乾燥重量に対して0.5重量%のPdを与える濃度でPd(NH(NOの溶液を添加した。この溶液のpHを、水酸化アンモニウムの0.15Nの溶液を滴下して9.2のpHに調節した。次にこの混合物を炉で48時間75℃で加熱した。次にその混合物をガラスフリットに通して濾過し、脱イオン水で洗浄し、空気乾燥した。収集したPd−SSZ−56試料を空気中、482℃までゆっくりか焼し、そこに3時間保持した。
【0196】
か焼したPd/SSZ−56触媒をカルバープレス(Carver Press)でペレット化し、粉砕して20/40メッシュの粒径を有する粒子を生成させた。粒径分類した触媒(0.5g)を、n−ヘキサデカン水素化転化のためのマイクロユニット中の外径1/4インチの管状反応器中に充填した。下の表は、そのn−ヘキサデカンに対する水素化分解試験の実験条件及び生成物データーを与えている。
【0197】
下の表に示した結果が示しているように、SSZ−56は非常に活性な、256℃で96.5%のn−C16転化率を与える異性化選択性触媒である。
【0198】
【表6】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)第一の四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一の四価元素以外の第二の四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩。
【請求項2】
(1)酸化珪素対(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩。
【請求項3】
前記酸化物が酸化珪素及び酸化アルミニウムを含む、請求項2に記載の分子篩。
【請求項4】
前記酸化物が酸化珪素及び酸化硼素を含む、請求項2に記載の分子篩。
【請求項5】
前記酸化物が酸化珪素を含む、請求項2に記載の分子篩。
【請求項6】
前記分子篩が主に水素型になっている、請求項1又は2に記載の分子篩。
【請求項7】
前記分子篩が実質的に酸性でない、請求項1又は2に記載の分子篩。
【請求項8】
合成したままの無水状態で、モル比で表して次のような組成:
YO/W 15−無限大
2/n/YO 0.01−0.03
Q/YO 0.02−0.05
〔式中、Yは、珪素であり;Wは、アルミニウム、ガリウム、鉄、硼素、チタン、インジウム、バナジウム、又はそれらの混合物であり;cは1又は2であり;cが1の時、dは2であるか、又はcが2の時、dは3又は5であり;Mはアルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン、又はそれらの混合物であり;nはMの原子価であり;Qは、トランス縮合環N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオンである。〕
を有する分子篩。
【請求項9】
(1)酸化珪素を含む第一酸化物、及び(2)酸化硼素を含む第二酸化物、を含み、前記第一酸化物対前記第二酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する結晶質物質を製造する方法であって、前記酸化物の原料と、トランス縮合環N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオンを含む構造指向剤とを結晶化条件で接触させることを含む方法。
【請求項10】
前記分子篩が、モル比で表して:
YO/W ≧15
OH−/YO 0.10−0.50
Q/YO 0.05−0.50
2/n/YO 0.02−0.40
O/YO 30−80
(ここで、Yは珪素であり;Wは、アルミニウム、ガリウム、鉄、硼素、チタン、インジウム、バナジウム、又はそれらの混合物であり;aは1又は2であり、aが1の時、bは2であり、aが2の時、bは3であり;Mは、アルカリ金属陽イオン、アルカリ土類金属陽イオン、又はそれらの混合物であり;nは、Mの原子価であり;そしてQは、トランス縮合環N,N−ジエチル−2−メチルデカヒドロキノリニウム陽イオンである。)
を含む反応混合物から製造する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
炭化水素質供給物と、(1)第一の四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一の四価元素以外の第二の四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩を含む触媒とを、炭化水素転化条件で接触させることを含む炭化水素を転化する方法。
【請求項12】
前記分子篩が、実質的に酸性でない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記方法が前記触媒と、炭化水素供給原料とを水素化分解条件で接触させることを含む水素化分解する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、前記触媒と、炭化水素供給物とを脱蝋条件で接触させることを含む脱蝋方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記方法が、前記触媒と、ワックス状炭化水素供給物とを異性化脱蝋条件で接触させることを含む、ワックス状炭化水素供給物の脱蝋生成物の粘度指数を改良する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、当該方法が前記触媒上で、前記オレフィン供給物を異性化条件で異性化することを含むC20+オレフィン供給物からC20+潤滑油を製造する方法。
【請求項17】
前記触媒が、少なくとも一種類の第VIII族金属を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項11に記載の方法であって、当該方法が約350°F(177℃)より高い温度で沸騰し、直鎖及び僅かに分岐した鎖の炭化水素を含む炭化水素油供給原料を接触脱蝋する方法であり、前記触媒と前記炭化水素油供給原料とを脱蝋条件で、添加水素ガスを存在させて、約15〜3000psi(0.103〜20.7MPa)の水素圧力で接触させることを含む方法。
【請求項19】
前記触媒が、少なくとも一種類の第VIII族金属を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記触媒が、前記分子篩及び少なくとも一種類の第VIII族金属を含む第一層と、前記第一層の分子篩よりも更に形状選択性のあるアルミノ珪酸塩ゼオライトを含む第二層とを含む層状触媒を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
請求項11に記載の方法であって、当該方法が、
水素化分解領域で炭化水素質供給原料を水素化分解し、水素化分解された油を含む流出物を得ること;及び
水素化分解された油を含む前記流出物を、前記触媒を用いて、少なくとも約400°F(204℃)の温度で、約15psig〜約3000psig(0.103〜20.7MPaゲージ)の圧力で、添加水素ガスを存在させて接触脱蝋すること;
を含む、潤滑油を製造する方法。
【請求項22】
前記触媒が、少なくとも一種類の第VIII族金属を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法がラフィネートと前記触媒とを、添加水素を存在させて異性化脱蝋条件で接触することを含むラフィネートを異性化脱蝋する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項24】
前記触媒が、少なくとも一種類の第VIII族金属を更に含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ラフィネートがブライトストックである、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
請求項11に記載の方法であり、当該方法が約40℃より高く、約200℃より低い沸騰範囲を有する直鎖及び僅かに分岐した炭化水素を含む炭化水素質供給原料を、前記触媒と、芳香族転化条件で接触することを含み、炭化水素供給原料のオクタン価を増大させ芳香族含有量が増大した生成物を生成させる方法。
【請求項27】
前記分子篩が、実質的に酸性でない、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記分子篩が、第VIII族金属成分を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が、反応領域で炭化水素供給原料を、前記触媒と、接触分解条件で添加水素を存在させずに接触させることを含む接触分解する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項30】
前記触媒が、大気孔で結晶質の分解用成分を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が直鎖及び僅かに分岐したC〜C炭化水素を有する供給物を、前記触媒と、異性化条件で接触させることを含み、C〜C炭化水素を異性化する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項32】
前記分子篩に、少なくとも一種類の第VIII族金属が含浸させてある、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記触媒が、第VIII族金属を含浸させた後、水蒸気/空気混合物中で高温でか焼してある、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記第VIII族金属が白金である、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記方法がC〜C20オレフィンと、少なくとも過剰モルの芳香族炭化水素とを、アルキル化条件で、少なくとも部分的に液相の条件で、前記触媒を存在させて接触させることを含み、芳香族炭化水素をアルキル化する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項36】
前記オレフィンがC〜Cオレフィンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記芳香族炭化水素及び前記オレフィンが、夫々約4:1〜約20:1のモル比で存在する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記芳香族炭化水素を、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、ナフタレン、ナフタレン誘導体、ジメチルナフタレン、又はそれらの混合物からなる群から選択する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記方法が芳香族炭化水素とポリアルキル芳香族炭化水素とを、少なくとも部分的に液相の条件で、触媒を存在させてアルキル交換条件で接触させることを含み、芳香族炭化水素をアルキル交換する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項40】
前記分子篩が、主に水素型になっている、請求項11、13〜16、18、21、23、29、31、35、又は39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記芳香族炭化水素及びポリアルキル芳香族炭化水素が、夫々約1:1〜約25:1のモル比で存在する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記芳香族炭化水素を、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、又はそれらの混合物からなる群から選択する、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記ポリアルキル芳香族炭化水素がジアルキルベンゼンである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記方法がパラフィンと、前記分子篩及びガリウム、亜鉛、或はガリウム又は亜鉛の化合物を含む触媒とを、パラフィンを芳香族に転化する条件で接触させることを含み、パラフィンを芳香族へ転化する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項45】
前記方法がオレフィンと前記触媒とを、前記オレフィンの異性化を起こす条件で接触させることを含み、オレフィンを異性化する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項46】
前記方法がキシレン異性体の芳香族C流又はキシレン異性体とエチルベンゼンとの混合物を含む異性化供給物を異性化するための方法で、前記供給物を前記触媒と異性化条件で接触させることを含み、一層平衡に近いオルト−、メタ−、及びパラ−キシレン比が得られる、請求項11に記載の方法。
【請求項47】
前記方法がオレフィン供給物を前記触媒とオリゴマー化条件で接触させることを含み、オレフィンをオリゴマー化する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項48】
含酸素炭化水素と、第一の四価元素の酸化物対、前記第一の四価元素以外の第二の四価元素、三価元素、五価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩を含む触媒とを、液体生成物を生成する条件で接触することを含む、含酸素炭化水素を転化する方法。
【請求項49】
前記含酸素炭化水素が低級アルコールである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記低級アルコールがメタノールである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
請求項11に記載の方法であって、当該方法が低分子量炭化水素から高分子量炭化水素を製造する方法であって、
(a) 反応領域に低分子量炭化水素含有ガスを導入し、前記ガスを、前記反応領域中で、低分子量炭化水素を高分子量炭化水素へ転化することができる触媒及び金属又は金属化合物と、C2+炭化水素合成条件で接触させる工程;及び
(b) 前記反応領域から高分子量炭化水素含有流を取り出す工程;
を含む方法。
【請求項52】
前記金属又は金属化合物が、ランタニド又はアクチニド金属又は金属化合物を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記低分子量炭化水素がメタンである、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
1−オレフィンの重合を促進するための触媒組成物で、
(A)(1)第一の四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一の四価元素以外の第二の四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩;及び
(B) 有機チタン又は有機クロム化合物;
を含む、触媒組成物。
【請求項55】
酸化物(1)が酸化珪素であり、酸化物(2)が、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウムから選択された酸化物である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記方法が、1−オレフィン単量体を、
(A)(1)第一の四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一の四価元素以外の第二の四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩;及び
(B) 有機チタン又は有機クロム化合物;
を含む、触媒として有効な量の触媒組成物と、重合反応を開始し、促進するのに適した温度及び圧力を含む重合条件で接触させることを含む、1−オレフィンを重合する方法である、請求項11に記載の方法。
【請求項57】
酸化物(1)が酸化珪素であり、酸化物(2)が、酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウムから選択された酸化物である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記1−オレフィン単量体がエチレンである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記1−オレフィン単量体がエチレンである、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
請求項11に記載の方法であって、当該方法が不飽和炭化水素を含む炭化水素供給物を水素化する方法であり、前記供給物と水素とを、水素化を起こす条件で前記触媒と接触することを含む方法。
【請求項61】
前記触媒が、金属、塩、又は錯体を含み、前記金属を、白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、又はそれらの組合せからなる群、或は、ニッケル、モリブデン、コバルト、タングステン、チタン、クロム、バナジウム、レニウム、マンガン、及びそれらの組合せからなる群から選択する、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
炭化水素供給原料を、水素化処理触媒及び水素と、水素化処理条件で接触させることを含み、然も、前記触媒が、(1)第一の四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一の四価元素以外の第二の四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩を含む、炭化水素供給原料を水素化処理する方法。
【請求項63】
前記触媒が、第VIII族金属又は化合物、第VI族金属又は化合物、又はそれらの組合せを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
炭化水素供給原料を、水素化処理触媒及び水素と、水素化処理条件で接触させることを含み、然も、前記触媒が、(1)酸化珪素対(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩を含む、炭化水素供給原料を水素化処理する方法。
【請求項65】
前記酸化物が、酸化珪素及び酸化アルミニウムを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記酸化物が、酸化珪素及び酸化硼素を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記酸化物が酸化珪素を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
触媒が、第VIII族金属又は化合物、第VI族金属又は化合物、又はそれらの組合せを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
炭化水素質供給物と、(1)酸化珪素対(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩を含む触媒とを、炭化水素転化条件で接触させることを含む炭化水素を転化する方法。
【請求項70】
ガス流中に含まれる窒素酸化物を還元する方法であって、前記ガス流と分子篩とを接触させることを含み、然も、前記分子篩が、(1)第一の四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一の四価元素以外の第二の四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する、前記方法。
【請求項71】
ガス流中に含まれる窒素酸化物を還元する方法であって、前記ガス流と分子篩とを接触させることを含み、然も、前記分子篩が、(1)酸化珪素対(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する、前記方法。
【請求項72】
酸素の存在下で行われる、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
前記分子篩が、窒素酸化物の還元に対し触媒作用を及ぼすことができる金属又は金属イオンを含む、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項74】
前記金属が、コバルト、銅、白金、鉄、クロム、マンガン、ニッケル、亜鉛、ランタン、パラジウム、ロジウム、又はそれらの混合物である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記ガス流が、内燃機関の排気ガス流である、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項76】
前記ガス流が、内燃機関の排気ガス流である、請求項73に記載の方法。
【請求項77】
炭化水素及び他の汚染物を含む低温始動エンジン排気ガス流を処理する方法であって、前記エンジン排気ガス流を分子篩床上に流し、そこで水よりも炭化水素を優先的に吸着し、第一排気ガス流を得、前記第一排気ガス流を触媒の上に流し、前記第一排気ガス流中に含まれていた全ての残留炭化水素及び汚染物を無害の生成物へ転化し、処理済み排気ガス流を得、前記処理済み排気ガス流を大気中に放出することからなり、然も、前記分子篩床が、(1)第一の四価元素の酸化物対(2)三価元素、五価元素、前記第一の四価元素以外の第二の四価元素、又はそれらの混合物の酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する分子篩を含むことを特徴とする、前記方法。
【請求項78】
前記分子篩が、(1)酸化珪素対(2)酸化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化鉄、酸化硼素、酸化チタン、酸化インジウム、及びそれらの混合物から選択された酸化物のモル比が約15より大きく、か焼後、表2のX線回折線を有する、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記酸化物が、酸化珪素及び酸化アルミニウムを含む、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記酸化物が、酸化珪素及び酸化硼素を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項81】
前記酸化物が酸化珪素を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項82】
前記エンジンが内燃機関である、請求項77に記載の方法。
【請求項83】
前記内燃機関が自動車エンジンである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記エンジンに炭化水素質燃料が供給される、請求項77に記載の方法。
【請求項85】
前記分子篩に、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、及びそれらの混合物からなる群から選択された金属が上に付着されている請求項77に記載の方法。
【請求項86】
前記金属が白金である、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記金属がパラジウムである、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
前記金属が白金とパラジウムとの混合物である、請求項85に記載の方法。

【公表番号】特表2008−546624(P2008−546624A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518263(P2008−518263)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/023671
【国際公開番号】WO2007/001934
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】