説明

制御弁および車両用冷暖房装置

【課題】暖房運転時の除湿性能を良好に確保可能な車両用冷暖房装置、およびその車両用冷暖房装置に好適な制御弁を提供する。
【解決手段】ある態様の車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、制御弁、および制御部を備える。制御弁6は、上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の電磁弁である。パイロット弁体150は、主弁105の上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう副通路の開度を調整する差圧弁体156と、差圧弁体156とは別に供給電流の有無に応じて副通路を開閉する開閉弁体158とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁に関し、特に、車両用冷暖房装置に好適に適用可能な制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内燃機関を搭載した車両においてはエンジンの燃焼効率が向上したこともあり、熱源として利用してきた冷却水が暖房に必要な温度にまで上昇し難くなっている。一方、内燃機関と電動機を併用したハイブリッド車両においては内燃機関の稼働率が低いため、そのような冷却水の利用がさらに難しい。電気自動車に至っては内燃機関による熱源そのものがない。このため、冷房のみならず暖房にも冷媒を用いたサイクル運転を行い、車室内を除湿暖房可能なヒートポンプ式の車両用冷暖房装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような車両用冷暖房装置は、圧縮機、室外熱交換器、蒸発器、室内熱交換器等を含む冷凍サイクルを有し、暖房運転時と冷房運転時とで室外熱交換器の機能が切り替えられる。暖房運転時においては室外熱交換器が蒸発器として機能する。その際、冷凍サイクルを冷媒が循環する過程で室内熱交換器が放熱し、その熱により車室内の空気が加熱される。一方、冷房運転時においては室外熱交換器が凝縮器として機能する。その際、室外熱交換器にて凝縮された冷媒が蒸発器にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。その際、除湿も行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−240266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車両用冷暖房装置においては、暖房運転時に室外熱交換器を蒸発器として機能させたときにその蒸発量が必要以上に大きくなると、車室内の蒸発器に十分な液冷媒が供給されない事態が生じる可能性がある。そうなると、実質的に蒸発器での熱交換がなされなくなるため、車室内の除湿機能を適正に維持できなくなり、窓ガラスの曇り等の問題を発生させる可能性がある。そこで、発明者は、このように室外熱交換器を蒸発器として機能させるときにも車室内の蒸発器に適正量の液冷媒が供給されるように調整できれば、こうした問題を解決できると考えた。また、そのような調整のためにパイロット作動の制御弁を好適な形で車両用冷暖房装置に組み込めれば、装置全体の小型化も実現できる点で好ましいと考えた。
【0006】
本発明の目的の一つは、暖房運転時の除湿性能を良好に確保可能な車両用冷暖房装置、およびその車両用冷暖房装置に好適な制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁において、上流側通路と下流側通路とを直接つなぐ主通路を、両通路を接続する主弁孔に接離することにより開閉する主弁体を有し、その主弁体が、上流側通路と下流側通路と背圧室とを区画するように設けられる主弁と、背圧室と下流側通路とを連通する副弁孔を有し、上流側通路と下流側通路とを背圧室を介してつなぐ副通路を、副弁孔に接離することにより開閉するパイロット弁体を有する電磁駆動のパイロット弁と、を備える。パイロット弁体は、主弁の上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう副通路の開度を調整する差圧弁体と、差圧弁体とは別に供給電流の有無に応じて副通路を開閉する開閉弁体とを含む。
【0008】
この態様によると、電磁駆動によりパイロット弁が作動し、副通路の開度を調整することで、主弁の前後差圧(上流側と下流側との差圧)が供給電流値に応じた差圧となるよう制御可能となる。主弁体そのものに副弁孔が形成され、パイロット弁体がこれを開閉する構成としたため、パイロット作動式の制御弁が簡易な構成にて実現可能となる。また、パイロット弁体が差圧弁体と開閉弁体とを併せ持ち、電流が遮断されて差圧弁体が全開状態となっても開閉弁体にて副通路を閉じることができる。このため、例えば冷媒循環通路が並列に構成された車両用冷暖房装置に当該制御弁を好適に適用することが可能になる。すなわち、そのような車両用冷暖房装置の一方の循環回路に当該制御弁を配設する場合、供給電流の遮断によりその一方の循環回路を閉じることができ、冷凍サイクルの運転が安定に実現できるようになる。
【0009】
本発明の別の態様は、車両用冷暖房装置である。この車両用冷暖房装置は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器と、車室内に配置されて冷媒を蒸発させる室内蒸発器と、室内蒸発器が機能するとともに室外熱交換器が室外蒸発器として機能するときに室外熱交換器の下流側となる位置に設けられ、上流側から下流側への冷媒の流れを制御する電動の制御弁と、制御弁への供給電流を制御して制御弁の前後差圧を調整する制御部と、を備える。制御弁は、上流側通路と下流側通路とを直接つなぐ主通路を、両通路を接続する主弁孔に接離することにより開閉する主弁体を有し、その主弁体が、上流側通路と下流側通路と背圧室とを区画するように設けられる主弁と、背圧室と下流側通路とを連通する副弁孔を有し、上流側通路と下流側通路とを背圧室を介してつなぐ副通路を、副弁孔に接離することにより開閉するパイロット弁体を有する電磁駆動のパイロット弁と、を備え、パイロット弁体は、主弁の上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう副通路の開度を調整する差圧弁体と、差圧弁体とは別に供給電流の有無に応じて副通路を開閉する開閉弁体とを含む。
【0010】
この態様によると、室内蒸発器が機能するとともに室外熱交換器が室外蒸発器として機能するときに、制御弁の前後差圧(上流側と下流側との差圧)が制御されることにより、室外熱交換器における冷媒の蒸発温度ひいては蒸発量を調整することができる。その結果、室内蒸発器における冷媒の蒸発量を調整することができる。すなわち、その室内蒸発器の蒸発量を確保することで、暖房運転時においても室内蒸発器に導入される液冷媒の流量を確保することができる。つまり、制御弁の前後差圧を調整することで暖房運転時においても室内蒸発器の機能を確保することができ、それにより車室内の湿度機能を適正に維持することができる。
【0011】
特に、当該車両用冷暖房装置の冷媒循環回路が並列に構成される場合、すなわち、室内蒸発器が機能するとともに室外熱交換器が室外蒸発器として機能するときに制御弁のさらに下流側となる位置に、室内蒸発器から圧縮機に冷媒を戻す戻り通路との合流部が設けられるような構成の場合、制御弁への供給電流の遮断によりその一方の循環回路を閉じることができ、冷凍サイクルの運転が安定に実現できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、暖房運転時の除湿性能を良好に確保可能な車両用冷暖房装置、およびその車両用冷暖房装置に好適な制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
【図2】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図3】第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【図4】第2制御弁の動作状態を表す説明図である。
【図5】第2実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
【図6】車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。
【図7】第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【図8】第2制御弁の動作状態を表す説明図である。
【図9】変形例に第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。本実施形態は、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車の冷暖房装置として具体化したものである。
【0015】
車両用冷暖房装置1は、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて順次接続した冷凍サイクル(冷媒循環回路)を備える。車両用冷暖房装置1は、冷媒としての代替フロン(HFC−134a)が冷凍サイクル内を状態変化しながら循環する過程で、その冷媒の熱を利用して車室内の空調を行うヒートポンプ式の冷暖房装置として構成されている。
【0016】
車両用冷暖房装置1は、空気の熱交換が行われるダクト10を有し、そのダクト10における空気の流れ方向上流側から室内送風機12、蒸発器7、室内凝縮器3が配設されている。室内凝縮器3の上流側には、エアミックスドア14が回動自在に設けられ、室内凝縮器3を通過する風量と室内凝縮器3を迂回する風量との比率が調節される。また、室外熱交換器5に対向するように室外送風機16が配置されている。
【0017】
圧縮機2は、ハウジング内にモータと圧縮機構を収容する電動圧縮機として構成され、図示しないバッテリからの供給電流により駆動され、モータの回転数に応じて冷媒の吐出容量が変化する。この圧縮機2としては、レシプロ式、ロータリ式、スクロール式など、様々な形式の圧縮機を採用することができるが、電動圧縮機そのものは公知であるため、その説明については省略する。
【0018】
室内凝縮器3は、車室内に設けられ、室外熱交換器5とは別に冷媒を放熱させる補助凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧の冷媒が室内凝縮器3を通過する際に放熱する。エアミックスドア14の開度に応じて振り分けられた空気は、室内凝縮器3を通過する過程でその熱交換が行われる。
【0019】
第1制御弁4は、室内凝縮器3と室外熱交換器5とをつなぐ主通路の開度を調整する。第1制御弁4は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流の有無によって弁部を開閉する。また、主通路を第1制御弁4の前後で迂回するバイパス通路が設けられ、そのバイパス通路にオリフィス18が設けられている。オリフィス18の開口面積は、第1制御弁4の開弁時の開口面積よりも十分に小さいが、このように第1制御弁4と並列にオリフィス18が設けられることで、第1制御弁4の閉弁時においても所定流量の冷媒の流れが許容される。
【0020】
室外熱交換器5は、車室外に配置され、冷房運転時に内部を通過する冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には内部を通過する冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する。室外送風機16は、吸い込み式の送風機であり、軸流ファンをモータにより回転駆動することにより外気を導入する。室外熱交換器5は、その外気と冷媒との間で熱交換をさせる。
【0021】
第2制御弁6は、室外熱交換器5と蒸発器7とをつなぐ主通路の開度を調整する。第2制御弁6は、その主通路を開閉する弁部と、その弁部を駆動するソレノイドを備え、供給電流値に応じて弁部の開度を調整する。第2制御弁6は、その前後差圧(第2制御弁6の上流側圧力と下流側圧力との差圧)が供給電流値に応じた一定の値となるように動作する定差圧弁として機能可能に構成されている。すなわち、第2制御弁6の弁部は、前後差圧がソレノイドへの供給電流値に対応づけられた値となるよう自律的に動作する。ただし、第2制御弁6には、その閉弁時においても所定流量の冷媒の流れを許容するオリフィス20が設けられている。オリフィス20の開口面積は、第2制御弁6の全開時の開口面積よりも十分に小さい。なお、第2制御弁6の構造については後に詳述する。
【0022】
蒸発器7は、車室内に配置され、内部を通過する冷媒を蒸発させる室内蒸発器として機能する。すなわち、第2制御弁6の通過により低温・低圧となった冷媒は、蒸発器7を通過する際に蒸発する。ダクト10の上流側から導入された空気は、その蒸発潜熱によって冷却される。このとき冷却・除湿された空気は、エアミックスドア14の開度に応じて室内凝縮器3を通過するものと、室内凝縮器3を迂回するものとに振り分けられる。室内凝縮器3を通過する空気は、その通過過程で加熱される。室内凝縮器3を通過した空気と迂回した空気とが室内凝縮器3の下流側にて混合されて目標の温度に調整され、図示しない吹出口から車内に供給される。例えば、ベント吹出口、フット吹出口、デフ吹出口等から車室内所定場所に向かって吹き出される。
【0023】
アキュムレータ8は、蒸発器から送出された冷媒を気液分離して溜めておく装置であり、液相部と気相部とを有する。このため、仮に蒸発器7から想定以上の液冷媒が導出されたとしても、その液冷媒を液相部に溜めおくことができ、気相部の冷媒を圧縮機2に導出することができる。その結果、圧縮機2の圧縮動作に支障をきたすこともない。一方、本実施形態では、その液相部の冷媒の一部を圧縮機2に供給できるようにされており、圧縮機2に必要量の潤滑オイルを戻すことができるようになっている。
【0024】
以上のように構成された車両用冷暖房装置1は、制御部100により制御される。制御部100は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、入出力インターフェース等を備える。制御部100には、車両用冷暖房装置1に設置された図示しない各種センサ・スイッチ類からの信号が入力される。制御部100は、車両の乗員によりセットされた室温を実現するために各アクチュエータの制御量を演算し、各アクチュエータの駆動回路に制御信号を出力する。図示の例では、制御部100は、第1制御弁4の開閉制御、第2制御弁6の開閉制御(開度調整制御)のほか、圧縮機2,室内送風機12,室外送風機16およびエアミックスドア14の駆動制御も実行する。
【0025】
制御部100は、第2制御弁6の駆動回路に設定したデューティ比のパルス信号を出力するPWM出力部を有するが、その構成自体には公知のものが採用されるため、詳細な説明を省略する。制御部100は、車室内外の温度、蒸発器7の吹き出し空気温度等、各種センサにて検出された所定の外部情報に基づいて設定差圧を決定し、第2制御弁6の前後差圧(上流側と下流側との差圧)がその設定差圧となるよう通電制御を行う。言い換えれば、第2制御弁6の弁部が供給電流値に対応した前後差圧が得られるよう自律的に動作し、その開度を調整する。
【0026】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図2は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示している。なお、ここでいう「冷房運転」は、冷房機能が暖房機能よりも大きく機能する運転状態であり、「暖房運転」は、暖房機能が冷房機能よりも大きく機能する運転状態である。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示されている。その横軸がエンタルピーを表し、縦軸が各種圧力を表している。各図の下段には、冷凍サイクルの動作状態が示されている。図中の太線および矢印が冷媒の流れを示し、符号a〜fはモリエル線図のそれと対応している。また、図中の「×」は冷媒の流れが遮断されていることを示している。なお、同図の下段は図1に対応するが、エアミックスドア14等の図示を省略するなど便宜上簡略表記されている。
【0027】
図2(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁4が開弁される一方、第2制御弁6は閉弁される。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、オリフィス20、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。室内凝縮器3から導出された冷媒の一部は、オリフィス18を通過するが、その流量は第1制御弁4を通過する流量に比べて相当少ない。
【0028】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3および室外熱交換器5を経ることで凝縮され、オリフィス20にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、その蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却・除湿する。このとき、エアミックスドア14の開度が適度に調整され、その空気の温度調整が行われる。蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
【0029】
一方、図2(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁4が閉弁される一方、第2制御弁6が開弁される。このとき、エアミックスドア14は温度設定に応じた適切な開度となるよう駆動される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、室内凝縮器3、オリフィス18、室外熱交換器5、第2制御弁6、蒸発器7、アキュムレータ8の順に経由するように循環して圧縮機2に戻る。室外熱交換器5から導出された冷媒の一部は、オリフィス20を通過する。
【0030】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、オリフィス18にて断熱膨張され、室外熱交換器5にて蒸発され、さらに第2制御弁6およびオリフィス20にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7を通過する。すなわち、液冷媒は、室外熱交換器5および蒸発器7を通過する過程で順次蒸発するが、後段の蒸発器7における蒸発潜熱により車室内の空気が冷却され、除湿される。すなわち、蒸発器7によって冷却・除湿された空気は、室内凝縮器3を経由することで加熱され、適度に温められて車内に供給される。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
【0031】
図2(B)の上段に示すように、このとき室外熱交換器5および第2制御弁6の両蒸発器にて蒸発される比率が第2制御弁6の前後差圧ΔPにより制御される。図示のように、前後差圧ΔPが比較的大きく設定されると、実線部分にて示されるように、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に小さくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に大きくなる)。逆に、前後差圧ΔPが比較的小さく設定されると、点線部分にて示されるように、室外熱交換器5における蒸発量が相対的に大きくなる(蒸発器7における蒸発量が相対的に小さくなる)。制御部100は、設定温度を実現する過程で蒸発器7における熱交換量を制御するが、その際、前後差圧ΔPを適切に設定することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整する。それにより、蒸発器7での蒸発量を確保することができ、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
【0032】
次に、第2制御弁6の具体的構成について説明する。
図3は、第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に各構造の位置関係を表現することがある。
第2制御弁6は、その上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。第2制御弁6は、弁本体101とソレノイド102とを組み付けて構成される。
【0033】
弁本体101は、有底円筒状のボディ103に主弁105とパイロット弁106とを同軸状に収容して構成される。ボディ103の一方の側部には、冷凍サイクルの上流側通路に連通する入口ポート110が設けられ、他方の側部には、冷凍サイクルの下流側通路に連通する出口ポート112が設けられている。ボディ103の内部中央には、半径方向内向きに延出した区画壁114が設けられている。区画壁114は、ボディ103内を高圧側の圧力室116と低圧側の圧力室118とに区画している。圧力室116は入口ポート110に連通し、圧力室118は出口ポート112に連通している。
【0034】
区画壁114の環状の内周部により主弁孔120が形成され、その上流側開口端部により主弁座122が形成されている。圧力室116には段付円筒状の主弁体124が配設されている。主弁体124は、主弁座122に着脱して主弁105を開閉する。主弁体124は、円筒状の本体の下端部に半径方向外向きに突出するフランジ部130が設けられ、そのフランジ部130にて主弁座122に着脱する。そのフランジ部130からは下方に向けて複数の脚部132が延設されており(同図には1つのみ表示)、主弁孔120の内周面によって摺動可能に支持されている。
【0035】
一方、主弁体124の中央部には半径方向外向きに延出するフランジ部134が設けられ、ボディ103の内周面に摺動可能に支持されている。フランジ部134の外周面にはシール用のOリング136が嵌着されている。フランジ部134は、圧力室116を高圧室138と背圧室140とに区画する。また、フランジ部134から上方に向けて複数の脚部142が延設されており(同図には1つのみ表示)、ソレノイド102の内部まで延出している。また、フランジ部130には、高圧室138と圧力室118とを連通するオリフィス20が設けられている。既に述べたように、オリフィス20は、主弁105およびパイロット弁106が閉弁状態にあっても所定流量の冷媒の流れを許容する。なお、高圧室138と圧力室118とを主弁105を介してつなぐ通路が第2制御弁6における「主通路」を構成し、高圧室138と圧力室118とをパイロット弁106を介してつなぐ通路が第2制御弁6における「副通路」を構成する。
【0036】
主弁体124の内部中央には、半径方向内向きに延出した区画壁144が設けられている。区画壁144は、圧力室116と圧力室118とを区画しており、その環状の内周部により副弁孔146が形成されている。副弁孔146は、その上端部が縮径されている。そして、副弁孔146の下流側開口端部により弁座148が形成され、上流側開口端部により弁座149が形成されている。後述のように、パイロット弁106を構成するパイロット弁体150が、制御状態に応じて弁座148または弁座149に着脱して副弁孔146を開閉する。主弁体124の下端開口部には段付円筒状のアジャスト部材152(「区画壁」に該当する)が螺合されており、そのアジャスト部材152と主弁体124とに囲まれた空間が副弁室154を形成している。アジャスト部材152の螺入量によりパイロット弁106の開弁圧力を調整することが可能になっている。
【0037】
パイロット弁体150は、ステンレス材からなる長尺状の本体を有し、副弁孔146を貫通するように配設されている。パイロット弁体150は、差圧弁として機能する差圧弁体156と開閉弁として機能する開閉弁体158とが本体に一体に設けられて構成されている。差圧弁体156は、パイロット弁体150の本体の下端部に嵌着され、副弁室154に配置されている。差圧弁体156は、上方に向かって縮径するテーパ面にて弁座148に着脱する。差圧弁体156は、その下端部に半径方向外向きに延出する複数のガイド部155が設けられ、そのガイド部155を介して主弁体124の内周面に摺動可能に支持されている。差圧弁体156とアジャスト部材152との間には、差圧弁体156ひいてはパイロット弁体150を閉弁方向(差圧弁体156の閉弁方向)に付勢するスプリング160が介装されている。
【0038】
一方、開閉弁体158は、パイロット弁体150の本体に一体成形され、背圧室140に配置されている。開閉弁体158は、差圧弁体156が弁座148から所定量リフトしたときに(つまり、パイロット弁106が所定開度となったときに)、図示のように弁座149に着座してパイロット弁106を閉じるものである。
【0039】
また、主弁体124の側部には、高圧室138と背圧室140とを連通させるオリフィス162が設けられている。上流側の高圧室138の圧力P1(「上流側圧力P1」という)は、このオリフィス162を通過することで背圧室140にて中間圧力Ppとなる一方、主弁105を経て減圧されて圧力P2(「下流側圧力P2」という)となる。中間圧力Ppは、パイロット弁106の開閉状態によって変化する。主弁体124の側部には、オリフィス162を外方から囲むようにフィルタ164が設けられ、背圧室140への異物の侵入を防止している。
【0040】
一方、ソレノイド102は、ボディ103の上端開口部を封止するように取り付けられた有底円筒状のスリーブ170を有する。スリーブ170内には、第1プランジャ171(「第1の可動鉄心」に該当する)および第2プランジャ172(「第2の可動鉄心」に該当する)が軸線方向に対向配置されるように収容されている。スリーブ170の外周部にはボビン173が設けられ、そのボビン173に電磁コイル174が巻回されている。そして、電磁コイル174を外部から覆うようにケース176が設けられている。スリーブ170は、ケース176を軸線方向に貫通している。電磁コイル174からは通電用のハーネス178が引き出されている。
【0041】
第1プランジャ171は、円筒状をなし、その外周部には軸線方向に延びる複数のスリット180(同図にはその1つを表示)が設けられている。前述の主弁体124の脚部142は、このスリット180を介して上方に延出している。パイロット弁体150は、第1プランジャ171をその軸線にそって貫通し、その上端部が加締められることにより第1プランジャ171に固定されている。すなわち、パイロット弁体150は、第1プランジャ171と一体的に動作する。
【0042】
第2プランジャ172は、円筒状をなし、その内部中央に隔壁182が設けられている。第2プランジャ172は、その下端面にて脚部142の上端面に当接してこれを支持する。第1プランジャ171と第2プランジャ172との間には、第1プランジャ171を介してパイロット弁体150を開弁方向(差圧弁体156の開弁方向であり、開閉弁体158の閉弁方向)に付勢するスプリング184(「付勢部材」に該当する)が介装されている。第2プランジャ172とスリーブ170との間には、第2プランジャ172を介して主弁体124を閉弁方向に付勢するスプリング186が介装されている。すなわち、主弁体124は、第2プランジャ172と一体的に動作可能となっている。
【0043】
以上のように構成された第2制御弁6は、上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。
図4は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図4は、ソレノイド102がオンにされた差圧制御状態を表している。なお、既に説明した図3は、ソレノイド102がオフにされた状態を表している。
【0044】
ソレノイド102がオフにされた状態(非通電状態)では(図2(A)参照)、第2制御弁6は、差圧制御は行わず、膨張装置としてのみ機能する。すなわち図3に示すように、ソレノイド力が作用しないため、スプリング184によってパイロット弁体150が開閉弁体158の閉弁方向に付勢され、パイロット弁106が閉弁状態となる。このとき図示のように、差圧弁体156は開弁状態となるが、開閉弁体158により副弁孔146が閉じられる。一方、スプリング186によって第2プランジャ172を介して主弁体124が閉弁方向に付勢され、主弁105も閉弁状態となる。このとき、背圧室140には上流側からオリフィス162を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは、上流側圧力P1に等しくなる。上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、オリフィス20を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。
【0045】
一方、ソレノイド102がオンにされた状態(通電状態)では(図2(B)参照)、第2制御弁6は、その上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が供給電流値に応じた設定差圧となるよう動作する定差圧弁として機能するとともに、膨張装置としても機能する。
【0046】
すなわち、図4に示すように、ソレノイド力によって第1プランジャ171と第2プランジャ172との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体150が開閉弁体158の開弁方向に付勢され、パイロット弁106が開弁状態となる。このとき図示のように、差圧弁体156および開閉弁体158がともに開弁して副弁孔146を開放する。それにより、中間圧力Ppが低下するため、主弁体124が上流側圧力P1と中間圧力Ppとの差圧(P1−Pp)の影響を受けて開弁する。上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、開弁された主弁105およびオリフィス20を介して減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。また、その冷媒の一部は、オリフィス162を介して背圧室140に導入され、パイロット弁106を介して圧力室118に導出され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。このとき、主弁105がスリーブ170に係止されるまでリフトする全開状態となっても、アジャスト部材152の下端開口部は、主弁座122よりも下流側に位置するようになる。このため、副弁室154には、下流側圧力P2が確実に供給される。
【0047】
この差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも小さくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が小さくなるため、パイロット弁体150が閉弁方向(差圧弁体156の閉弁方向)に動作する。この結果、中間圧力Ppが上昇し、主弁体124が閉弁方向に動作して主弁105の開度を小さくする。その結果、差圧(P1−P2)が大きくなる方向に変化する。一方、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも大きくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が大きくなるため、パイロット弁体150が開弁方向(差圧弁体156の開弁方向)に動作する。この結果、中間圧力Ppが低下し、主弁体124が開弁方向に動作して主弁105の開度を大きくする。その結果、差圧(P1−P2)が小さくなる方向に変化する。すなわち、パイロット弁106の動作により、差圧(P1−P2)が設定差圧となるよう主弁105の開度が調整される。
【0048】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る車両用冷暖房装置は、冷凍サイクルの構成が異なり、また第2制御弁の構造が異なるが、第1実施形態と共通の構成部分も有する。このため、第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付す等して適宜その説明を省略する。図5は、第2実施形態に係る車両用冷暖房装置の概略構成を表すシステム構成図である。
【0049】
車両用冷暖房装置21は、第1実施形態と同様に、圧縮機2、室内凝縮器3、第1制御弁4、室外熱交換器5、第2制御弁26、蒸発器7およびアキュムレータ8を配管にて接続した冷凍サイクルを備える。ただし、第1実施形態とは異なり、室内凝縮器3と室外熱交換器5とは圧縮機2に対して直列ではなく並列に接続されている。
【0050】
圧縮機2と室内凝縮器3とをつなぐ高圧側の第1通路221と、圧縮機2と室外熱交換器5とをつなぐ高圧側の第2通路222とは、圧縮機2の下流側にて分岐しており、第2通路222を開閉するように第1制御弁4が設けられている。一方、室内凝縮器3と室外熱交換器5と蒸発器7とを接続するアクチュエータブロック210が設けられている。アクチュエータブロック210のハウジング内には、冷媒を通過させる内部通路が形成されており、後述するバランスオリフィス212と差圧オリフィス214とが配設されている。室内凝縮器3の下流側の第3通路223、蒸発器7の上流側の第4通路224、および室外熱交換器5から延びる第5通路225が、それぞれアクチュエータブロック210に接続されている。
【0051】
また、第2通路222の中間部においてバイパス通路226が分岐し、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。第2制御弁6は、そのバイパス通路226を開閉するように設けられている。一方、蒸発器7の下流側の戻り通路227が、バイパス通路226と第2制御弁26の下流側にて接続され、アキュムレータ8ひいては圧縮機2につながっている。
【0052】
バランスオリフィス212は、一対のオリフィスとそれらの開度を調整する一対の弁部を有する。一対の弁部は対応するオリフィスがそれぞれ前後差圧に応じた開度となるよう自律的に動作する。その一方のオリフィス(第1オリフィス231)がアクチュエータブロック210において第4通路224につながる内部通路に連通し、他方のオリフィス(第2オリフィス232)が第5通路225につながる内部通路に連通する。
【0053】
差圧オリフィス214は、前後差圧が設定値以上となったときに開弁する差圧弁235と、所定の開口面積を有するオリフィス236とを直列に配置して構成されている。差圧オリフィス214は、その上流側が第5通路225につながる内部通路に連通し、下流側が第4通路224につながる内部通路に連通する。すなわち、差圧オリフィス214は、その上流側(差圧弁235側)にて第2オリフィス232に連通し、下流側(オリフィス236側)にて第1オリフィス231に連通する。
【0054】
次に、本実施形態の冷凍サイクルの動作について説明する。図6は、車両用冷暖房装置の動作を表す説明図である。(A)は冷房運転時の状態を示し、(B)は暖房運転時の状態を示している。各図の上段には冷凍サイクルの動作を説明するモリエル線図が示され、各図の下段には冷凍サイクルの動作状態が示されている。符号a〜hはモリエル線図のそれと対応している。
【0055】
図6(A)に示すように、冷房運転時においては、第1制御弁4が開弁される一方、第2制御弁26は閉弁される。このとき、室外熱交換器5は室外凝縮器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、バランスオリフィス212、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻り、他方で第1制御弁4、室外熱交換器5、差圧オリフィス214、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
【0056】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、一方で室内凝縮器3を、他方で室外熱交換器5を経ることで凝縮される。そして、室内凝縮器3を経由した冷媒が第1オリフィス231にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。一方、室外熱交換器5を経由した冷媒が差圧オリフィス214にて断熱膨張され、冷温・低圧の液冷媒となって蒸発器7に導入される。そして、冷媒が蒸発器7を通過する過程で蒸発し、車室内の空気を冷却する。このとき、蒸発器7から導出された冷媒は、アキュムレータ8を経て圧縮機2に導入されるが、そのとき圧縮機2に潤滑オイルを戻すようになる。
【0057】
一方、図6(B)に示すように、暖房運転時においては、第1制御弁4が閉弁される一方、第2制御弁26が開弁される。このとき、室外熱交換器5は室外蒸発器として機能する。すなわち、圧縮機2から吐出された冷媒は、一方で室内凝縮器3、バランスオリフィス212、蒸発器7、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻り、他方で室内凝縮器3、バランスオリフィス212、室外熱交換器5、第2制御弁26、アキュムレータ8を経由するように循環して圧縮機2に戻る。
【0058】
すなわち、圧縮機2から吐出された高温・高圧のガス冷媒は、室内凝縮器3を経て凝縮され、バランスオリフィス212にて断熱膨張される。このとき、第1オリフィス231を経由した冷温・低圧の液冷媒が蒸発器7にて蒸発し、その蒸発潜熱により車室内の空気が冷却される。一方、第2オリフィス232を経由した冷温・低圧の液冷媒が室外熱交換器5にて蒸発する。このとき、室外熱交換器5および蒸発器7の両蒸発器にて蒸発される比率が、第2制御弁26の前後差圧ΔPにより制御される。制御部100は、設定温度を実現する過程で蒸発器7における熱交換量を制御するが、その際、前後差圧ΔPを適切に設定することで、循環する冷媒を室外熱交換器5と蒸発器7とで蒸発させる比率を調整する。それにより蒸発器7での蒸発量を確保することができ、除湿機能を確保することができる。また、潤滑オイルを蒸発器7に滞留させることなく圧縮機2へ戻すことができる。
【0059】
次に、第2制御弁26の具体的構成について説明する。図7は、第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。
第2制御弁26は、弁本体201とソレノイド102とを組み付けて構成され、その上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として構成されている。
【0060】
弁本体201は、ボディ103に主弁205とパイロット弁206とを同軸状に収容して構成される。主弁体220のフランジ230には、リング状の弁部材233が嵌着されている。弁本体201は、その弁部材233にて主弁座122に着脱し、主弁205を開閉する。弁部材233が弾性材(ゴム等)からなるため、主弁205の閉弁時に高いシール性を有する。なお、主弁体220のフランジ230には、第1実施形態のようなオリフィス20は設けられていない。したがって、主弁205とパイロット弁206が閉弁状態にある場合、冷媒の流れが確実に遮断される。主弁体220とボディ103との間には、スプリング186に対抗して主弁体220を開弁方向に付勢するスプリング234が介装されている。
【0061】
パイロット弁体250は、差圧弁として機能する差圧弁体156と、開閉弁として機能する開閉弁体258とが本体に一体に設けられて構成されている。開閉弁体258は、リング状をなし、パイロット弁体250の本体に嵌着されている。開閉弁体258が弾性材(ゴム等)からなるため、その閉弁時に高いシール性を有する。つまり、開閉弁体258そのものがシール部として機能する。
【0062】
また、主弁体220の側部には、有底円筒状の栓体260が圧入されており、その栓体260の底部に高圧室138と背圧室140とを連通させるオリフィス162が設けられている。上流側圧力P1は、このオリフィス162を通過することで背圧室140にて中間圧力Ppとなる一方、主弁105を経て減圧されて下流側圧力P2となる。中間圧力Ppは、パイロット弁206の開閉状態によって変化する。
【0063】
以上のように構成された第2制御弁26は、上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。
図8は、第2制御弁の動作状態を表す説明図である。図8は、パイロット弁206のソレノイド102がオンにされた差圧制御状態を表している。なお、既に説明した図7は、ソレノイド102がオフにされた状態を表している。
【0064】
ソレノイド102がオフにされた状態(非通電状態)では(図6(A)参照)、第2制御弁26は、冷媒の流れを遮断する。すなわち図7に示すように、ソレノイド力が作用しないため、スプリング184によってパイロット弁体250が開閉弁体258の閉弁方向に付勢され、パイロット弁206が閉弁状態となる。一方、スプリング186によって第2プランジャ172を介して主弁体220が閉弁方向に付勢され、主弁205も閉弁状態となる。このとき、背圧室140には上流側からオリフィス162を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは、上流側圧力P1に等しくなる。
【0065】
一方、ソレノイド102がオンにされた状態(通電状態)では(図6(B)参照)、第2制御弁26は、その上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が供給電流値に応じた設定差圧となるよう動作する定差圧弁として機能するとともに、膨張装置としても機能する。
【0066】
すなわち、図8に示すように、ソレノイド力によって第1プランジャ171と第2プランジャ172との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体250が開弁方向に付勢され、パイロット弁206が開弁状態となる。このとき、差圧弁体156および開閉弁体258がともに開弁して副弁孔146を開放する。それにより、中間圧力Ppが低下するため、主弁体220が上流側圧力P1と中間圧力Ppとの差圧(P1−Pp)の影響を受けて開弁する。上流側から入口ポート110を介して導入された冷媒は、開弁された主弁205を通過する際に減圧膨張され、出口ポート112を介して下流側へ導出される。このとき、主弁205がスリーブ170に係止されるまでリフトする全開状態となっても、アジャスト部材152の下端開口部は、主弁座122よりも下流側に位置するようになる。このため、副弁室154には、下流側圧力P2が確実に供給される。
【0067】
この差圧制御状態において、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも小さくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が小さくなるため、パイロット弁体150が閉弁方向(差圧弁体156の閉弁方向)に動作する。この結果、中間圧力Ppが上昇し、主弁体124が閉弁方向に動作して主弁105の開度を小さくする。その結果、差圧(P1−P2)が大きくなる方向に変化する。一方、差圧(P1−P2)が設定差圧よりも大きくなると、中間圧力Ppと下流側圧力P2との差圧(Pp−P2)が大きくなるため、パイロット弁体250が開弁方向(差圧弁体156の開弁方向)に動作する。この結果、中間圧力Ppが低下し、主弁体124が開弁方向に動作して主弁205の開度を大きくする。その結果、差圧(P1−P2)が小さくなる方向に変化する。すなわち、パイロット弁206の動作により、差圧(P1−P2)が設定差圧となるよう主弁205の開度が調整される。
【0068】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0069】
上記実施形態では、パイロット弁106として、弁座に着脱する弁体を採用する例を示した。変形例においては、弁体が弁孔に挿通されるいわゆるスプール弁を採用してもよい。図9は、変形例に第2制御弁の具体的構成を表す断面図である。なお、同図は、第2制御弁の差圧制御中において、上流側圧力P1と下流側圧力P2との差圧(P1−P2)が設定差圧よりも小さくなっているときの状態を示している。すなわち図示のように、パイロット弁体350を構成する差圧弁体356が、副弁孔146に挿通されることにより閉弁状態となる構成としてもよい。このような構成により、差圧弁体356が主弁体124に衝突し難くなるので、閉弁時の異音を防止または抑制することができるようになる。なお、本変形例は、第1実施形態の第2制御弁6の変形例にあたるが、第2実施形態の第2制御弁26についてもパイロット弁体について同様の構造を適用することができる。また、本変形例においても第2実施形態のように、開閉弁体をゴム等の可撓性部材にて形成し、その閉弁時のシール性を高めるようにしてもよい。
【0070】
上記実施形態では、本発明の車両用冷暖房装置を電気自動車に適用した例を示したが、内燃機関を搭載した自動車や、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車に提供することが可能であることは言うまでもない。上記実施形態では、圧縮機2として電動圧縮機を採用した例を示したが、エンジンの回転を利用して容量可変を行う可変容量圧縮機を採用することもできる。
【符号の説明】
【0071】
1 車両用冷暖房装置、 2 圧縮機、 3 室内凝縮器、 4 第1制御弁、 5 室外熱交換器、 6 第2制御弁、 7 蒸発器、 8 アキュムレータ、 18,20 オリフィス、 21 車両用冷暖房装置、 26 第2制御弁、 100 制御部、 101 弁本体、 102 ソレノイド、 105 主弁、 106 パイロット弁、 120 主弁孔、 122 主弁座、 124 主弁体、 146 副弁孔、 148,149 弁座、 150 パイロット弁体、 154 副弁室、 156 差圧弁体、 158 開閉弁体、 162 オリフィス、 171 第1プランジャ、 172 第2プランジャ、 201 弁本体、 205 主弁、 206 パイロット弁、 220 主弁体、 233 弁部材、 250 パイロット弁体、 258 開閉弁体、 350 パイロット弁体、 356 差圧弁体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御可能なパイロット作動式の制御弁において、
上流側通路と下流側通路とを直接つなぐ主通路を、両通路を接続する主弁孔に接離することにより開閉する主弁体を有し、その主弁体が、前記上流側通路と前記下流側通路と背圧室とを区画するように設けられる主弁と、
前記背圧室と前記下流側通路とを連通する副弁孔を有し、前記上流側通路と前記下流側通路とを前記背圧室を介してつなぐ副通路を、前記副弁孔に接離することにより開閉するパイロット弁体を有する電磁駆動のパイロット弁と、
を備え、
前記パイロット弁体は、前記主弁の上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう前記副通路の開度を調整する差圧弁体と、前記差圧弁体とは別に供給電流の有無に応じて前記副通路を開閉する開閉弁体とを含むことを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記主弁体および前記パイロット弁を含む弁本体と、前記パイロット弁を駆動するソレノイドとを組み付けて構成され、
前記ソレノイドは、
前記弁本体に対して固定されるスリーブと、
前記スリーブに対して内挿される第1の可動鉄心と、
前記第1の可動鉄心と軸線方向に対向配置されるとともに、前記パイロット弁体が一体に設けられた第2の可動鉄心と、
前記スリーブの周囲に巻回されて前記第1の可動鉄心および前記第2の可動鉄心とともに磁気回路を形成する電磁コイルと、
前記第2の可動鉄心を前記第1の可動鉄心から離間する方向に付勢する付勢部材と、
を備え、
前記パイロット弁体が前記副弁孔を軸線方向に貫通し、前記差圧弁体と前記開閉弁体とが前記副弁孔に対して互いに反対側に位置するように設けられ、
前記第1の可動鉄心と前記主弁体とが軸線方向に一体に動作するように構成され、前記第2の可動鉄心が前記第1の可動鉄心に対して相対変位することにより前記差圧弁体が前記副弁孔に接離して前記副通路の開度を調整する一方、前記ソレノイドへの通電が遮断されたときには前記第2の可動鉄心が前記第1の可動鉄心から離間することにより前記開閉弁体が前記副弁孔を閉じるように変位することを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
外部から前記副弁孔への異物の侵入を防止するためのフィルタが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記主弁体に前記副弁孔が設けられ、
前記主弁体の前記背圧室と反対側に前記主弁孔を貫通するように延びる区画壁が設けられ、その区画壁に囲まれた領域により前記副弁孔に連通する副弁室が形成され、
前記差圧弁体が前記副弁室に配置され、前記背圧室の圧力と前記主弁孔の下流側の圧力との差圧を受けるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御弁。
【請求項5】
前記開閉弁体は、前記副弁孔を閉じる際にその開口部に弾性的に密着するシール部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制御弁。
【請求項6】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器と、
車室内に配置されて冷媒を蒸発させる室内蒸発器と、
を備えた車両用冷暖房装置に設けられ、
前記室内蒸発器が機能するとともに前記室外熱交換器が室外蒸発器として機能するときに前記室外熱交換器の下流側となる位置に設けられ、上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう流体の流れを制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の制御弁。
【請求項7】
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、
車室外に配置され、冷房運転時に冷媒を放熱させる室外凝縮器として機能する一方、暖房運転時には冷媒を蒸発させる室外蒸発器として機能する室外熱交換器と、
車室内に配置されて冷媒を蒸発させる室内蒸発器と、
前記室内蒸発器が機能するとともに前記室外熱交換器が室外蒸発器として機能するときに前記室外熱交換器の下流側となる位置に設けられ、上流側から下流側への冷媒の流れを制御する電動の制御弁と、
前記制御弁への供給電流を制御して前記制御弁の前後差圧を調整する制御部と、
を備える車両用冷暖房装置であって、
前記制御弁は、
上流側通路と下流側通路とを直接つなぐ主通路を、両通路を接続する主弁孔に接離することにより開閉する主弁体を有し、その主弁体が、前記上流側通路と前記下流側通路と背圧室とを区画するように設けられる主弁と、
前記背圧室と前記下流側通路とを連通する副弁孔を有し、前記上流側通路と前記下流側通路とを前記背圧室を介してつなぐ副通路を、前記副弁孔に接離することにより開閉するパイロット弁体を有する電磁駆動のパイロット弁と、
を備え、前記パイロット弁体は、前記主弁の上流側と下流側との差圧が供給電流値に応じた差圧となるよう前記副通路の開度を調整する差圧弁体と、前記差圧弁体とは別に供給電流の有無に応じて前記副通路を開閉する開閉弁体とを含むことを特徴とする車両用冷暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−196427(P2011−196427A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62381(P2010−62381)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】