説明

制御弁

【課題】アクチュエータの駆動力に対する作動応答性に優れ、精度良く機能可能な制御弁を提供する。
【解決手段】ある態様の制御弁1は、上流側から冷媒を導入する導入ポート20と、下流側へ冷媒を導出する導出ポート22と、導入ポート20と導出ポート22とを連通する弁孔28とを有するボディ5と、弁孔28の開口部に設けられた弁座30に着脱して弁部を開閉する可撓性を有する弁体66と、弁体66を弁部の開閉方向に駆動するソレノイド4と、弁体66に対向配置されて弁体66と一体に動作するとともに、弁体66との対向面にて閉弁方向の圧力を受圧する受圧体57と、弁部が閉弁状態となるときに受圧体57に密着してその有効受圧面積を拡大する可撓性を有するシール部材56と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上流側から下流側への流体の流れを制御する制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用空調装置は、一般に、圧縮機、凝縮器、蒸発器等を冷媒循環通路に配置して構成される。そして、このような冷凍サイクルの運転状態に応じた冷媒循環通路の切り替えや冷媒流量の調整等のために種々の制御弁が設けられている(例えば特許文献1参照)。このような制御弁は、外部から電気的に開度を調整できるようソレノイド等のアクチュエータを備えるものが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−287354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような制御弁は、ボディの内部に弁体を有し、その弁体がアクチュエータにより駆動されることで弁部を開閉する。そのアクチュエータによる駆動力を弁体に効率よく作用させるために、弁体に作用する冷媒の圧力をキャンセルするキャンセル構造を備えたものもある。しかしながら、弁体の作動時における冷媒の漏洩を防止するために設けられるシール部材の存在により、このようなキャンセル構造が厳密に実現されなかったり、弁体の作動応答性に限界をもたらすことがあり、その点で改善の余地があった。
【0005】
本発明の一つの目的は、アクチュエータの駆動力に対する作動応答性に優れ、精度良く機能可能な制御弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の制御弁は、上流側から流体を導入する導入ポートと、下流側へ流体を導出する導出ポートと、導入ポートと導出ポートとを連通する弁孔とを有するボディと、弁孔の開口部に設けられた弁座に着脱して弁部を開閉する可撓性を有する弁体と、弁体を弁部の開閉方向に駆動するアクチュエータと、弁体に対向配置されて弁体と一体に動作するとともに、弁体との対向面にて弁体と反対向きの圧力を受圧する受圧部と、弁部が閉弁状態となるときに受圧部に密着してその有効受圧面積を拡大する可撓性を有する受圧調整部材と、を備える。
【0007】
ここで、「弁体」は、弁座に着脱する部分において可撓性を有するが、弾性体にて構成されるものであってもよい。「受圧調整部材」もまた、受圧部に密着する部分において可撓性を有するが、弾性体にて構成されるものであってもよい。
【0008】
この態様によると、弁体が弁座に着座することによりその有効受圧面積が弁孔よりも大きくなるのに伴い、受圧部に受圧調整部材が密着することで受圧部と受圧調整部材との結合体の有効受圧面積が拡大される。すなわち、閉弁時に弁体に作用する圧力の影響が大きくなるに伴って、これに対抗するように受圧部に作用する圧力の影響が大きくなる。その結果、弁体に作用する圧力の影響を精度良くキャンセルすることが可能となる。それにより、アクチュエータの駆動力に対する弁体の作動応答性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、アクチュエータの駆動力に対する作動応答性に優れ、精度良く機能可能な制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1実施形態に係る制御弁の構成を表す断面図である。
【図2】弁駆動体の圧力キャンセル構造を示す部分拡大断面図である。
【図3】制御弁の動作状態を表す説明図である。
【図4】第2実施形態に係る制御弁の具体的構成を表す断面図である。
【図5】図4の部分拡大図である。
【図6】制御弁の動作状態を表す説明図である。
【図7】制御弁の動作状態を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明においては便宜上、図示の状態を基準に位置関係を表現することがある。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る制御弁の構成を表す断面図である。図2は、弁駆動体の圧力キャンセル構造を示す部分拡大断面図である。
本実施形態の制御弁1は、自動車用空調装置の冷媒循環通路の分岐点に設けられ、上流側通路から下流側の各分岐通路への冷媒の流れを切り替える切替弁として構成されている。すなわち、制御弁1は、上流側通路から導入された冷媒を、第1下流側通路または第2下流側通路のいずれか一方に導くものである。
【0012】
図1に示すように、制御弁1は、内部に弁機構を収容した弁本体2と、その弁機構を駆動するソレノイド4とを組み付けて構成される。弁本体2のボディ5には、上流側通路からの冷媒の流れを第1下流側通路または第2下流側通路へ切り替える主弁6と、主弁6の開閉状態を制御するパイロット弁8が組み込まれている。
【0013】
ボディ5は、金属製の第1ボディ12の上半部に樹脂製の第2ボディ14を同軸状に嵌合して構成されている。第1ボディ12の一方の側面には、その中央部に上流側通路につながる導入ポート20が設けられている。第1ボディ12の反対側の側面には、その上部に第1下流側通路につながる導出ポート22(「第1導出ポート」に該当する)が設けられ、下部に第2下流側通路につながる導出ポート24(「第2導出ポート」に該当する)が設けられている。
【0014】
第2ボディ14は、下方に向けて小径化する段付円筒状の本体を有し、第1ボディ12に同心状に圧入されている。第2ボディ14の上端部にはダイヤフラム25が配設され、下端部外周面にはOリング27が嵌着されている。これにより、第1ボディ12と第2ボディ14との間隙を介した冷媒の漏洩が防止されている。第2ボディ14の下半部の内周面がガイド孔26を形成し、その下端部が弁孔28(「第1弁孔」に該当する)を形成している。また、第2ボディ14の下端開口縁により弁座30(「第1弁座」に該当する)が形成されている。第2ボディ14の下端開口部は、導入ポート20に連通している。また、第2ボディ14の導出ポート22との対向面には、内外を連通させる連通孔が形成されている。導入ポート20、弁孔28、および導出ポート22をつなぐ内部通路により、上流側通路と第1下流側通路とをつなぐ第1通路が形成されている。
【0015】
第1ボディ12における導入ポート20と導出ポート24との連通部には、円ボス状の弁座形成部34が設けられている。弁座形成部34は、第2ボディ14側に突出し、その内方に弁孔36(「第2弁孔」に該当する)が形成されている。また、弁座形成部34の上端開口縁により弁座38(「第2弁座」に該当する)が形成されている。導入ポート20、弁孔36および導出ポート24をつなぐ内部通路により、上流側通路と第2下流側通路とをつなぐ第2通路が形成されている。
【0016】
ボディ5の内方には弁駆動体41が配設されている。弁駆動体41は、ボディ5の中央部を弁孔28,36を貫通するように延びる段付円筒状の弁形成部材42と、弁形成部材42を貫通するように設けられた円筒状の弁座形成部材43とを有する。弁駆動体41の上端部は、ダイヤフラム25およびストッパ44に接続されている。ダイヤフラム25は、可撓性を有する円板薄膜状の本体を有し、その外周縁部がボディ5とソレノイド4との間に挟持されるように支持され、中央部がストッパ44と弁形成部材42とに挟まれるように支持されている。ダイヤフラム25は、その外周縁部および中央部が厚肉状になっており、シール部材としても機能する。
【0017】
ダイヤフラム25は、ボディ5の内部を高圧室46と背圧室48とに区画する「区画部」として機能する。弁座形成部材43の上端部は、ダイヤフラム25とストッパ44の中心部を貫通して背圧室48に延出している。ストッパ44は、有底円筒状をなし、その底面と弁形成部材42の上面との間にダイヤフラム25を挟むように支持している。ストッパ44は、スナップリング(止め輪)によりダイヤフラム25および弁座形成部材43に固定されている。図示のように、ストッパ44の上端開口部がソレノイド4の下面に係止されることで、弁駆動体41の上方への移動が規制される。また、ストッパ44には、ダイヤフラム25を貫通して高圧室46と背圧室48とを連通させる微小断面のリーク通路50が設けられている。
【0018】
弁駆動体41の長手方向中央部には半径方向外向きに延出するフランジ部52(「受圧部」として機能する)が設けられ、第2ボディ14のガイド孔26に摺動可能に支持されている。フランジ部52の上面には、凹状の環状係合部54が形成されている。一方、第2ボディ14の上端中央開口部には、リング状のシール部材56(「受圧調整部材」として機能する)が配設されている。シール部材56は、本実施形態では薄膜状のダイヤフラムからなり、その外周縁部が第2ボディ14とリング状の固定部材58との間に挟まれるように支持されている。また、シール部材56の中央開口部には円ボス状(ビード状)の係合部60が下方に突設され、弁形成部材42の環状係合部54に係合可能に構成されている。
【0019】
固定部材58は樹脂材からなり、その下面内周縁にはR面取りがなされ、シール部材56に接触してもこれを損傷させることがないようになっている。固定部材58は、スナップリング(止め輪)により第2ボディ14からの脱落が防止されている。フランジ部52とシール部材56は、第2ボディ14の下半部を区画する「区画部」として機能する。一方、第2ボディ14の外周近傍には、導入ポート20と高圧室46とを連通させる連通路80が形成されている。
【0020】
弁形成部材42の下端部には半径方向外向きに突出するフランジ部62が設けられ、そのフランジ部62の外周面にリング状の弾性体(本実施例ではゴム)からなる弁体形成部材64が嵌着されている。弁体形成部材64の上端部が弁体66(「第1弁体」に該当する)を構成し、弁座30に着脱して第1通路を開閉する。また、弁体形成部材64の下端部が弁体68(「第2弁体」に該当する)を構成し、弁座38に着脱して第2通路を開閉する。フランジ部62からは下方に向けて複数の脚部70が延設されており(同図には1つのみ表示)、弁孔36の内周面によって摺動可能に支持されている。弁駆動体41は、フランジ部52と脚部70とがボディ5の内周面に摺動可能に支持されるようにして弁部の開閉方向に安定に動作する。
【0021】
弁座形成部材43は、弁形成部材42の軸線に沿って挿入され、その上端部が縮径されてパイロット弁孔72を形成している。そして、弁座形成部材43の上端面によりパイロット弁座74が形成されている。また、背圧室48には、ソレノイド4により駆動されるパイロット弁体76が配設されている。パイロット弁体76は、その下端中央に弾性体77(本実施例ではゴム)を装着して構成され、パイロット弁座74に着脱してパイロット弁8を開閉する。パイロット弁孔72は、弁座形成部材43の内方に形成されるパイロット通路78の一部を形成する。弁座形成部材43は、図示のように弁駆動体41が上死点に位置してもその下端開口部が弁座38よりも下方に位置するように延設されている。
【0022】
以上のような構成において、導入ポート20から導入された上流側の圧力P1(「上流側圧力P1」という)は、第1通路において主弁6を経ることで圧力P2(「下流側圧力P2」という)となる一方、第2通路において主弁6を経ることで圧力P3(「下流側圧力P3」という)となる。また、上流側圧力P1は、連通路80を通って高圧室46に導入され、リーク通路50を通過することで背圧室48にて中間圧力Ppとなり、さらにパイロット弁8を経ることで下流側圧力P3となる。
【0023】
ここで図2に示すように、本実施形態においては、弁孔28および弁孔36の有効径Aとガイド孔26の有効径Bとが等しく設定されているため(フランジ部62の有効受圧面積とフランジ部52の有効受圧面積とが実質的に等しくされているため)、弁駆動体41に作用する下流側圧力P2の影響はキャンセルされる。特に、シール部材56を設けたことがその圧力キャンセルを厳密に実現している。すなわち、図示のように弁体66により第1の弁部が閉弁状態となるときに、シール部材56の下面とフランジ部52の上面とが密着し、それらの結合体である受圧体57の有効受圧面積を拡大する受圧調整構造が実現される。
【0024】
すなわち、弁体66の有効受圧面積は、弁孔28の有効径Aに対応するように設定されている。しかし、図示のように弁体66が弁座30に着座した完全シール状態においては、弁体66(および弁体68)を構成する弾性体の性質(変形)により実際の有効受圧径A’が弁孔28の有効径Aよりもやや大きくなる(図中二点差線参照)。これに対応するため、その完全シール時においては、フランジ部52の上面がシール部材56の下面に密着するようにすることで、弁体66に対向する受圧体57の有効受圧径B’がガイド孔26の有効径Bよりもやや大きくなるようにする(図中二点差線に一致する)。
【0025】
有効受圧径B’は、具体的には図示のように、シール部材56の外周部において固定部材58と第2ボディ14とに挟持された内周端の径Cと、フランジ部52の外径Bとの中間の径(B’=B+C/2)となる。第1の弁部の閉弁時においては、弁体66の有効受圧径A’と受圧体57の有効受圧径B’とが等しくなるように構成され、下流側圧力P2の完全な圧力キャンセルが実現される。これにより、ソレノイド4がオフにされたときには、弁体66が弁座30に速やかに着座して第1の弁部を確実に閉弁できるようになっている。
【0026】
また、ソレノイド4がオンにされて弁体66が開弁方向に動作したときには(弁体68が閉弁方向に動作したとき)、シール部材56の下面とフランジ部52の上面との密着状態が解除される。このため、弁体66の有効受圧径Aと受圧体57の有効受圧径Bとが等しくなり、圧力キャンセルが実現される。弁体66は、ソレノイド4による付勢力により開弁方向に速やかに動作する。
【0027】
この第1の弁部の開弁時には、シール部材56の下面とフランジ部52の上面とがその周縁部において剥離されるため、シール部材56によって弁駆動体41の変位が規制されることもない。すなわち、シール部材56が薄膜状の受圧部材(ダイヤフラム)でありながら、例えばベローズと比較しても遜色のないほど弁駆動体41のストロークを大きくとることが可能となる。さらに、弁駆動体41と第2ボディ14との摺動面にOリング等のシール部材が設けられないため、弁駆動体41の摺動抵抗を非常に小さくすることができる。このため、たとえ弁駆動体41に作用する駆動力(ソレノイド力)が小さくても、弁駆動体41を弁部の開閉方向に円滑に動作させることができる。すなわち、弁駆動体41に作用する差圧がキャンセルされ、また摺動抵抗が小さいことから、制御弁1を開閉させるための駆動力が小さくても、制御弁1の開閉制御の応答性を良好に維持することが可能になる。
【0028】
図1に戻り、ソレノイド4は、ボディ5の上端開口部を封止するように取り付けられた段付円筒状のコア84(固定鉄心)と、コア84の上半部を収容するように組み付けられた有底円筒状のスリーブ86を有する。スリーブ86内にはプランジャ88(可動鉄心)がコア84と軸線方向に対向配置されるように収容されている。スリーブ86の外周部にはボビン90が設けられ、そのボビン90に電磁コイル92が巻回されている。そして、電磁コイル92を外部から覆うようにケース94が設けられている。スリーブ86は、ケース94を軸線方向に貫通している。電磁コイル92からは通電用のハーネス96が引き出されている。
【0029】
プランジャ88は円筒状をなし、その下半部に作動ロッド98の上端部が圧入されている。作動ロッド98は円筒状をなし、コア84を貫通してパイロット弁体76に連結されている。すなわち、パイロット弁体76は、作動ロッド98を介してプランジャ88と一体に設けられている。すなわち、パイロット弁体76は、プランジャ88と一体的に動作する。コア84とプランジャ88との間には、プランジャ88を介してパイロット弁体76を開弁方向に付勢するスプリング99が介装されている。
【0030】
以上のように構成された制御弁1は、ソレノイド4への通電状態に応じて冷媒の流通路を切り替えるパイロット作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。図3は、制御弁の動作状態を表す説明図である。図3は、ソレノイド4がオンにされた通電状態を表している。なお、既に説明した図1は、ソレノイド4がオフにされた非通電状態を表している。
【0031】
図1に示すように、ソレノイド4がオフにされた状態ではソレノイド力が作用しないため、スプリング99によってパイロット弁体76が開弁方向に付勢され、パイロット弁8が開弁状態となる。このとき、背圧室48の冷媒がパイロット通路78を介して下流側に導出されて中間圧力Ppが低下するため、弁駆動体41が上流側圧力P1と中間圧力Ppとの差圧(P1−Pp)により上方に付勢される。それにより、主弁6については弁体66が閉弁状態となり、弁体68が開弁状態となる。その結果、図示のように第2通路が開放され、第1通路が閉じられた状態が実現される。すなわち、上流側通路から導入された冷媒は、導出ポート24からバイパス通路へ向けて導出されるようになる。
【0032】
一方、ソレノイド4がオンにされると、ソレノイド力によってプランジャ88とコア84との間に吸引力が作用するため、パイロット弁体76が閉弁方向に付勢され、パイロット弁8が閉弁状態となる。このとき、上流側からリーク通路50を介して冷媒が導入されるため、中間圧力Ppは上流側圧力P1となる。このとき、弁駆動体41に作用する冷媒の圧力がキャンセルされており、弁駆動体41とボディ5との間の摺動抵抗も小さいため、弁駆動体41はソレノイド力によって円滑に駆動される。その結果、主弁6については速やかに弁体66が開弁状態となり、弁体68が閉弁状態となる。すなわち、図示のように第1通路が開放されて第2通路が閉じられた状態が実現され、上流側通路から導入された冷媒は、導出ポート22から凝縮器へ向けて導出されるようになる。
【0033】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る制御弁は、その開度が設定開度に調整される比例弁であり、アクチュエータがステッピングモータからなり、さらに三方弁ではなく二方弁として構成されている点で第1実施形態と異なる。図4は、第2実施形態に係る制御弁の具体的構成を表す断面図である。図5は、図4の部分拡大図である。(A)は図4のC部拡大図を示し、(B)は図4のD部拡大図を示す。
【0034】
本実施形態の制御弁201は、その開度がアクチュエータへの供給電流値に応じた設定開度に自律的に調整される。制御弁201は、基本的には全開状態、大口径制御状態、小口径制御状態、閉弁状態のいずれかの状態に制御される。なお、大口径制御状態は全開状態には到らないが開度が大きい状態であり、小口径制御状態は閉弁状態には到らないが開度が小さい状態である。制御弁201は、小口径制御により膨張装置としても機能する。
【0035】
図4に示すように、制御弁201は、ステッピングモータ駆動式の電動弁として構成され、弁本体101とモータユニット102とを接続部材103を介して組み付けて構成されている。弁本体101は、有底筒状のボディ104に小口径の第1弁105(「第1の弁部」を開閉する)と、大口径の第2弁106(「第2の弁部」を開閉する)とを同軸状に収容して構成される。
【0036】
ボディ104は、金属製の第1ボディ107に樹脂製の第2ボディ108を同軸状に嵌合して構成されている。第1ボディ107の一方の側部には導入ポート110が設けられ、他方の側部には導出ポート112が設けられている。
【0037】
第2ボディ108は、下方に向けて小径化する段付円筒状の本体を有し、第1ボディ107に同心状に圧入されている。第2ボディ108における導入ポート110との対向面および導出ポート112との対向面には、それぞれ内外を連通する連通孔が設けられている。それらの連通孔の近傍をシールするようにOリング114が配設されている。
【0038】
第2ボディ108と接続部材103との間には、円板状の区画部材116が配設されている。区画部材116は、その外周縁部が接続部材103と第2ボディ108とに挟まれるようにして支持され、弁本体101の内部とモータユニット102の内部とを区画する。区画部材116の中央部には、円ボス状の軸受部118が設けられている。軸受部118の内周面には雌ねじ部120が設けられ、外周面は滑り軸受として機能する。接続部材103と区画部材116との間には、リング状のシール部材122が介装されている。第2ボディ108は、その下半部が小径化されている。そして、その下半部の内周面がガイド孔124を形成し、その上端部が弁孔126(「第2の弁孔」に該当する)を形成している。また、弁孔126の上端開口端縁により弁座128(「第2の弁座」に該当する)が形成されている。
【0039】
ボディ104の内方には、大径の弁体130(「第2の弁体」に該当する)、小径の弁体132(「第1の弁体」に該当する)、および弁作動体134が同軸状に配設されている。弁体130は、上流側から弁孔126に接離して大口径の第2の弁部を開閉する。弁体130の外周面にはリング状の弾性体(例えばゴム)からなる弁部材136が嵌着されており、その弁部材136が弁座128に着座することにより、第2の弁部を完全に閉じることが可能になる。弁体130の中央を軸線方向に貫通する段付孔が設けられ、その上端開口部にリング状の弁座形成部材138が圧入されている。
【0040】
弁座形成部材138の内周部により弁孔140(「第1の弁孔」に該当する)が形成され、その上端開口端縁により弁座142(「第1の弁座」に該当する)が形成されている。弁座形成部材138は、金属体(例えばステンレス)からなり、弁体132が弁座142に着座することにより、第1の弁部を閉じることが可能になる。図示のように、弁孔126および弁孔140の上流側に導入ポート110に連通する高圧室115が形成され、弁孔126および弁孔140の下流側に導出ポート112に連通する低圧室117が形成されている。
【0041】
弁体130は、縮径部を介して区画部144(「受圧部」として機能する)が連設されている。区画部144は、低圧室117に配置されている。そして、区画部144の下端部がガイド孔124に摺動可能に支持されることにより、弁体130の開閉方向への安定した動作が確保されている。区画部144とボディ104の底部との間には背圧室146が形成される。また、弁体130と区画部144とを貫通する連通路148が形成され、高圧室115と背圧室146とを連通させている。これにより、背圧室146には常に、導入ポート110から導入される上流側圧力P1が満たされる。
【0042】
本実施形態においては、弁孔126の有効径Aとガイド孔124の有効径Bとが等しく設定されているため(弁体130の有効受圧面積と区画部144の有効受圧面積とが実質的に等しくされているため)、弁体130に作用する上流側圧力P1の影響はキャンセルされる。特に、その圧力キャンセルを厳密に実現するために、背圧室146における区画部144の下方には、第2の弁部が閉弁状態となるときに区画部144に密着してその有効受圧面積を拡大する受圧調整部材149が配設されている。受圧調整部材149は、リング状をなす薄膜状の弾性体(例えばゴム)からなり、その外周端部の厚肉部が第1ボディ107と第2ボディ108との間に挟まれるようにして支持されている。
【0043】
すなわち、図5(A)に示すように、弁体130の有効受圧面積は、弁孔126の有効径Aに対応するように設定されている。しかし、図示のように弁部材136が弁座128に着座した完全シール状態においては、弾性体の性質により実際の有効受圧径A’が弁孔126の有効径Aよりもやや大きくなる(図中二点差線参照)。これに対応するため、図5(B)に示すように、その完全シール時においては、受圧調整部材149が区画部144の下面に密着するようにすることで、背圧室146側の有効受圧径B’がガイド孔124の有効径Bよりもやや大きくなるようにする(図中二点差線に一致する)。このようにして弁体130の有効受圧面積と区画部144の有効受圧面積とを等しくすることにより、完全な圧力キャンセルを実現している。
【0044】
図4に戻り、弁体130の上端部には、円板状のばね受け部材150が設けられている。ばね受け部材150には、冷媒を通過させるための連通孔151が設けられている。そして、ばね受け部材150と区画部材116との間に、弁体130を閉弁方向に付勢するスプリング152(「付勢部材」に該当する)が介装されている。一方、区画部144とボディ104との間には、区画部144を介して弁体130を開弁方向に付勢するスプリング154(「付勢部材」に該当する)が介装されている。なお、本実施形態では、スプリング152の荷重をスプリング154の荷重よりも大きく設定している。
【0045】
弁体132は、段付円柱状をなし、その下半部がばね受け部材150を貫通して弁孔140に対向配置され、上半部が弁作動体134に支持されている。弁体132は、いわゆるニードル弁体として構成され、その尖った先端部が弁孔140に挿抜される。そして、弁体132が弁座142に着脱することにより第1の弁部が開閉される。弁体132の上端部は弁作動体134を貫通し、その先端部が外方に加締められて係止部156となっている。
【0046】
弁作動体134は、段付円筒状をなし、その外周部に雄ねじ部158が形成されている。雄ねじ部158は、軸受部118の雌ねじ部120に螺合する。弁作動体134の上端部には半径方向外向きに延出する複数(本実施形態では4つ)の脚部160が設けられており、モータユニット102のロータに嵌合している。弁作動体134と弁体132との間には、弁体132を閉弁方向に付勢するスプリング162が介装されている。通常の状態では図示のように、スプリング162によって弁体132が下方へ付勢される一方、弁体132の係止部156が弁作動体134の上端部に係止される。このため、弁体132は、弁作動体134に対して最も下方に位置する状態となる。
【0047】
弁作動体134は、モータユニット102の回転駆動力を受けて回転し、その回転力を並進力に変換する。すなわち、弁作動体134が回転すると、ねじ機構によって弁作動体134が軸線方向に変位し、弁体132を開閉方向に駆動する。第1の弁部の開弁時には弁体132と弁作動体134とが一体に動作する。本実施形態では図示のように、弁作動体134が移動しうる閉弁方向の限界位置(下死点)において第1の弁部がちょうど閉弁状態となるよう設計されている。ただし、仮に組み付け誤差等により弁作動体134が下死点に位置する前に弁体132が弁座142に着座して第1の弁部が閉弁状態となったとしても、弁体132がスプリング162の付勢力に抗して弁作動体134と相対変位することが可能であるため、全く問題はない。
【0048】
一方、モータユニット102は、ロータ172とステータ173とを含むステッピングモータとして構成されている。モータユニット102は、有底円筒状のスリーブ170の内方にロータ172を回転自在に支持するようにして構成されている。スリーブ170の外周には、励磁コイル171を収容したステータ173が設けられている。スリーブ170は、その下端開口部が接続部材103を介してボディ104に組み付けられており、ボディ104とともに制御弁201のボディを構成する。
【0049】
ロータ172は、円筒状に形成された回転軸174と、その回転軸174の外周に配設されたマグネット176を備える。本実施形態では、マグネット176は24極に磁化されている。
【0050】
回転軸174の内方にはモータユニット102のほぼ全長にわたる内部空間が形成されている。回転軸174の内周面の特定箇所には、軸線に平行に延びるガイド部178が設けられている。ガイド部178は、後述する回転ストッパと係合するための突部を形成するものであり、軸線に平行に延びる一つの突条により構成されている。
【0051】
回転軸174の下端部はやや縮径され、その内周面に軸線に平行に延びる4つのガイド部180が設けられている。ガイド部180は、軸線に平行に延びる一対の突条により構成され、回転軸174の内周面に90度おきに設けられている。この4つのガイド部180には、上述した弁作動体134の4つの脚部160が嵌合し、ロータ172と弁作動体134とが一体に回転できるようになっている。ただし、弁作動体134は、ロータ172に対する回転方向の相対変位は規制されるものの、そのガイド部180にそった軸線方向の変位は許容される。すなわち、弁作動体134は、ロータ172とともに回転しつつ弁体132の開閉方向に駆動される。
【0052】
ロータ172の内方には、その軸線に沿って長尺状のシャフト182が配設されている。シャフト182は、その上端部がスリーブ170の底部中央に圧入されることにより片持ち状に固定され、ガイド部178に平行に内部空間に延在している。シャフト182は、弁作動体134と同一軸線上に配置されている。シャフト182には、そのほぼ全長にわたって延在する螺旋状のガイド部184が設けられている。ガイド部184は、コイル状の部材からなり、シャフト182の外面に嵌着されている。ガイド部184の上端部は折り返されて係止部186となっている。
【0053】
ガイド部184には、螺旋状の回転ストッパ188が回転可能に係合している。回転ストッパ188は、ガイド部184に係合する螺旋状の係合部190と、回転軸174に支持される動力伝達部192とを有する。係合部190は一巻きコイルの形状をなし、その下端部に半径方向外向きに延出する動力伝達部192が連設されている。動力伝達部192の先端部がガイド部178に係合している。すなわち、動力伝達部192は、ガイド部178の一つの突条に当接して係止される。このため、回転ストッパ188は、回転軸174により回転方向の相対変位は規制されるが、ガイド部178に摺動しつつその軸線方向の変位が許容される。
【0054】
すなわち、回転ストッパ188は、ロータ172と一体に回転し、その係合部190がガイド部184にそってガイドされることで、軸線方向に駆動される。ただし、回転ストッパ188の軸線方向の駆動範囲はガイド部178の両端に形成された係止部により規制される。同図には、回転ストッパ188が下死点に位置した状態が示されている。回転ストッパ188が上方へ変位して係止部186に係止されると、その位置が上死点となる。
【0055】
ロータ172は、その上端部がシャフト182に回転自在に支持され、下端部が軸受部118に回転自在に支持されている。具体的には、回転軸174の上端開口部を封止するように有底円筒状の端部部材194が設けられ、その端部部材194の中央に設けられた円筒軸196の部分がシャフト182に支持されている。すなわち、軸受部118が一端側の軸受部となり、シャフト182における円筒軸196との摺動部が他端側の軸受部となっている。
【0056】
以上のように構成された制御弁201は、モータユニット102の駆動制御によってその弁開度を調整可能なステッピングモータ作動式の制御弁として機能する。以下、その動作について詳細に説明する。
図6および図7は、制御弁の動作状態を表す説明図である。図6は第1の弁部の全開状態を表し、図7は第2の弁部の全開状態を表している。なお、既に説明した図4は、第1の弁部および第2の弁部の閉弁状態を表している。
【0057】
制御弁201の流量制御において、図示しない制御部は、設定開度に応じたステッピングモータの駆動ステップ数を演算し、励磁コイル171に駆動電流(駆動パルス)を供給する。それによりロータ172が回転し、一方で弁作動体134が回転駆動されて小口径の第1の弁部および大口径の第2の弁部の開度が設定開度に調整され、他方で回転ストッパ188がガイド部184にそって駆動されることにより、各弁体の動作範囲が規制される。
【0058】
具体的には、除湿制御を行う特定暖房運転時などの小口径制御を実行する場合、ロータ172が一方向に回転駆動(正転)されることにより弁体132が開弁方向に変位し、第1の弁部が開弁状態となる。つまり、弁体132が、図4に示す全閉状態と図6に示す全開位置との間の範囲で駆動される。本実施形態では、第1の弁部の閉弁状態からロータ172が5回転すると第1の弁部が全開状態となり、弁体132が弁座142から2.5mmリフトする(1回転あたり0.5mm)。その間、小口径の第1の弁部の弁開度(弁ストローク)は比例的に変化する。
【0059】
また、除霜運転時などの大口径制御を実行する場合、図6に示す第1の弁部の全開状態からロータ172がさらに同方向に回転(正転)される。その結果、弁体130が弁体132に引き上げられるようにして開弁方向に駆動される。このとき、ばね受け部材150がストッパとなって弁体132を係止するため、第1の弁部の開度(全開状態)は一定に維持される。逆に、ばね受け部材150が弁体132とともに引き上げられるため、スプリング154の付勢力により弁体130が開弁方向に駆動される。
【0060】
このとき、弁体130は、図6に示す全閉状態と図7に示す全開位置との間の範囲で駆動される。本実施形態では、第2の弁部の閉弁状態(第1の弁部の全開状態)からロータ172が7回転すると第2の弁部が全開状態となり、弁体130が弁座128から3.5mmリフトする(1回転あたり0.5mm)。すなわち、回転ストッパ188が上死点位置で係止部186に係止される結果、ロータ172の回転そのものが停止される。その間、大口径の第2の弁部の弁開度(弁ストローク)は比例的に変化する。なお、ロータ172が逆方向に回転されると、上述と逆の手順で弁体130および弁体132が閉弁方向に動作する。ロータ172の回転数は制御指令値としての駆動ステップ数に対応する。
【0061】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はその特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内で種々の変形が可能であることはいうまでもない。
【0062】
上記実施形態にかかる制御弁は、内燃機関を搭載した自動車、内燃機関と電動機を同載したハイブリッド式の自動車、電気自動車などの車両用冷暖房装置に好適であるが、車両用以外の冷暖房装置への適用も可能であることは言うまでもない。また、上記実施形態にかかる制御弁は、冷暖房装置以外の用途にも適用できる。例えば、冷媒ではなく、水やオイルその他の作動流体の流れを制御する制御弁としても用いることができる。
【符号の説明】
【0063】
1 制御弁、 2 弁本体、 4 ソレノイド、 5 ボディ、 6 主弁、 8 パイロット弁、 20 導入ポート、 22,24 導出ポート、 25 ダイヤフラム、 26 ガイド孔、 28 弁孔、 30 弁座、 36 弁孔、 38 弁座、 41 弁駆動体、 42 弁形成部材、 43 弁座形成部材、 44 ストッパ、 46 高圧室、 48 背圧室、 50 リーク通路、 52 フランジ部、 54 環状係合部、 56 シール部材、 57 受圧体、 60 係合部、 62 フランジ部、 64 弁体形成部材、 66,68 弁体、 72 パイロット弁孔、 74 パイロット弁座、 76 パイロット弁体、 78 パイロット通路、 80 連通路、 84 コア、 88 プランジャ、 98 作動ロッド、 101 弁本体、 102 モータユニット、 104 ボディ、 105 第1弁、 106 第2弁、 110 導入ポート、 112 導出ポート、 115 高圧室、 116 区画部材、 117 低圧室、 124 ガイド孔、 126 弁孔、 128 弁座、 130,132 弁体、 134 弁作動体、 136 弁部材、 138 弁座形成部材、 140 弁孔、 142 弁座、 144 区画部、 146 背圧室、 148 連通路、 149 受圧調整部材、 156 係止部、 172 ロータ、 173 ステータ、 174 回転軸、 176 マグネット、 178,180 ガイド部、 182 シャフト、 184 ガイド部、 186 係止部、 188 回転ストッパ、 190 係合部、 192 動力伝達部、 201 制御弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から流体を導入する導入ポートと、下流側へ流体を導出する導出ポートと、前記導入ポートと前記導出ポートとを連通する弁孔とを有するボディと、
前記弁孔の開口部に設けられた弁座に着脱して弁部を開閉する可撓性を有する弁体と、
前記弁体を前記弁部の開閉方向に駆動するアクチュエータと、
前記弁体に対向配置されて前記弁体と一体に動作するとともに、前記弁体との対向面にて前記弁体と反対向きの圧力を受圧する受圧部と、
前記弁部が閉弁状態となるときに前記受圧部に密着してその有効受圧面積を拡大する可撓性を有する受圧調整部材と、
を備えることを特徴とする制御弁。
【請求項2】
前記受圧調整部材は、前記弁体が閉弁状態から開弁状態へ動作したときに前記受圧部から少なくとも部分的に剥離して前記受圧部との接触面積が小さくなるよう前記ボディに支持されていることを特徴とする請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記ボディに前記弁孔と有効径が等しく同軸状に設けられたガイド孔を備え、
前記受圧部が、前記ガイド孔に沿って前記弁部の開閉方向に摺動可能に支持され、
前記受圧調整部材は、前記ボディにおける前記受圧部の摺動面と異なる位置に配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記弁部の閉弁状態における前記受圧部と前記受圧調整部材との結合体の有効受圧面積と、前記弁体の有効受圧面積とが等しくなるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制御弁。
【請求項5】
前記受圧調整部材がダイヤフラムからなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の制御弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−77787(P2012−77787A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221388(P2010−221388)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000133652)株式会社テージーケー (280)
【Fターム(参考)】