説明

制限速度案内装置、ナビゲーションシステム、制限速度案内方法、制限速度案内を行うためのコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを記録した記録媒体

【課題】無意識の制限速度オーバーを未然に防止する。
【解決手段】少なくとも制限速度に関する道路情報を保存する道路情報保存部14と、案内される経路上において自車位置を特定する自車位置特定部8と、自車の現在走行速度SPを特定する現在走行速度特定部9と、経路の進行方向先方にある道路の制限速度としての第1の制限速度S2を前記道路情報保存部14から読み出して、現在走行速度SPと比較する速度比較部225と、前記第1の制限速度S2が現在走行速度SPより遅いとき、案内信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナビゲーションシステムで経路案内をする際に、制限速度に関する注意喚起の案内を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーションシステムで経路案内をする際に、交通法規に違反した運行が生じたとき警報を案内する装置が知られている(特許文献1参照)。例えば、車速検出部にて自車の走行速度を検出し、検出した走行速度と法規データ記憶部に記憶されている自車走行道路における制限速度とを比較し、検出した車速が制限速度をオーバーしたときに警告メッセージが発せられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−337915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の案内装置では、制限速度オーバーをする度に警告メッセージが発せられるので、制限速度違反の常習者には警告メッセージが定常的なものとなる。したがって、警告メッセージに本来求められる注意喚起機能が希釈されるおそれがある。
他方、制限速度を遵守するつもりでいても「うっかり」により制限速度をオーバーしてしまう場合がある。例えば、現在位置の制限速度より遅い制限速度の道路が存在したとしても、道路標識の全てを完全に運転手が認識することは不可能である。したがって、ときとして、当該制限速度が遅い道路へ進入する際に以前の道路の速度を維持してしまうことがある。このような無意識の制限速度オーバーを未然に防止する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は上記課題を解決することを目的とする。この発明の第1の局面は次のように規定される。即ち、
少なくとも制限速度に関する道路情報を保存する道路情報保存部と、
案内される経路上において自車位置を特定する自車位置特定部と、
自車の現在走行速度を特定する現在走行速度特定部と、
前記経路の進行方向先方にある道路の制限速度としての第1の制限速度を前記道路情報保存部から読み出して、前記現在走行速度と比較する速度比較部と、
前記第1の制限速度が前記現在走行速度より遅いとき、案内信号を出力する案内信号出力部と、
を備えることを特徴とする制限速度案内装置。
【0006】
このように規定される第1の局面で規定の制限速度案内装置によれば、現在の走行速度より制限速度が遅い道路が進路先方に存在したときに案内信号が出され、この案内信号に基づきナビゲーション装置は各種の警告メッセージを出力できる。これにより、制限速度違反を未然に防止できる。
【0007】
この発明の第2の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面の制限速度案内装置において、前記自車位置から前記第1の制限速度の道路の始点までの距離を演算する手段と、
前記距離が所定の閾値以内になったとき、前記案内信号出力部が前記案内信号を出力する。
このように規定される第2の局面で規定の制限速度案内装置によれば、制限速度違反となる道路へ到達する以前に案内信号が出力されるので、余裕をもって運転者に警告メッセージを知らせられる。
【0008】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第2の局面の制限速度案内装置において、前記第1の制限速度と前記現在走行速度との速度差を演算する手段と、
演算された該速度差に基づき、前記案内信号を出力するタイミングを決定する手段と、を備える。
自車の現在の走行速度と第1の制限速度との差が大きければ大きいほど、安全に減速をするためには充分な時間を要する。そこで、この第3の局面のように第1の制限速度と自車の現在の走行速度との速度差を演算し、当該速度差に基づいて、案内信号の出力タイミングを決定することにより、即ち、速度差が大きいときにはより早めに案内信号を出力することにより、運転者はより安全に減速できることとなる。
【0009】
以上の局面では、現在の走行速度を維持すると速度制限違反となる道路(この明細書で「要注意道路」ということがある)が先方に存在するときは常に案内信号を出力して、警告メッセージの出力を可能としている。
警告メッセージの出力頻度が大きくなると、警告メッセージの注意喚起機能が希釈されるおそれがあるので、制限速度の遅くなる道路が存在したときに常に警告メッセージを出力すると注意喚起の観点からかえって非効果的なことがある。そこで、所定の条件においては案内信号出力手段を無効化することが好ましい。
【0010】
この発明の第4の局面は次のように規定される。即ち、
第1〜第3の局面に規定の制限速度案内装置において、所定の条件を満足したときに限り、前記案内信号出力部を有効化する案内信号出力制御部が更に備えられる。
ここに案内信号出力部を有効化するとは、案内信号出力部から案内信号を有効に出力することを意味し、有効に出力された案内信号に基づき警告メッセージ等が生成される。他方、案内信号出力部から有効に案内信号が出力されない態様、即ち案内信号出力部を無効化する態様としては、案内信号自体を生成しないことの外、案内信号出力部が一旦生成した案内信号を遮断することも含まれる。
【0011】
案内信号出力部を制御する条件として、この発明の第5の局面では要注意道路の道路情報を所定の条件と比較する。
ここに道路情報とは、地図情報を構成する道路(リンク情報)や交差点(ノード情報)等の道路要素に付随して保存される当該道路要素の特性を規定する情報であり、道路ごとに規定される制限速度も道路情報の一種である。
案内信号出力部の有効無効判断時に参照対象となる道路情報として、(1)過去に制限速度が変化した道路、(2)制限速度が期間、時間等に応じて変化する道路、(3)道路の勾配の変化が大きい、例えばサグ部等を挙げられる。
【0012】
案内信号出力部を制御する条件として、この発明の第6の局面では要注意道路の道路情報と自車走行道路の道路情報とを比較する。比較の対象となる道路情報として道路種、制限速度等が挙げられる。例えば、(イ)自車走行道路が高速道路であり要注意道路が一般道路であるときは、案内信号出力部を有効化する。また、(ロ)要注意道路の第1の制限速度と現在走行道路の制限速度との差が所定以上のとき案内信号出力手段を有効化する。
【0013】
案内信号出力部を制御する条件として、この発明の第7の局面では自車の走行履歴を参照する。自車の走行履歴として、(A)連続運転時間が所定時間(例えば1時間)を超えるとき、(B)過去に速度超過の実績があるとき、(C)初めての走行する道路であるとき、等を挙げられる。
【0014】
第1〜第7の局面で規定される制限速度案内装置を備えたナビゲーションシステムが第8の局面として規定される。
【0015】
また、この発明の第9の局面は、次のように規定される。即ち、
案内される経路上において自車位置を特定する自車位置特定ステップと、
自車の現在走行速度を特定する現在走行速度特定ステップと、
前記経路の進行方向先方にある道路の制限速度としての第1の制限速度を、少なくとも制限速度に関する道路情報を保存する道路情報保存部から読み出して、前記現在走行速度と比較する速度比較ステップと、
前記第1の制限速度が前記現在走行速度より遅いとき、案内信号を出力する案内信号出力ステップと、
を備えることを特徴とする制限速度案内方法。
このように規定される第9の局面に規定の制限速度案内方法によれば、第1の局面と同等の作用を奏する。
【0016】
この発明の第10の局面は、次のように規定される。即ち、
第9の局面の制限速度案内方法において、前記自車位置から前記第1の制限速度の道路の始点までの距離を演算するステップと、
前記距離が所定の閾値以内になったとき、前記案内信号出力ステップにおいて案内信号出力部が前記案内信号を出力する。
このように規定される第10の局面に規定の制限速度案内方法によれば、第2の局面と同等の作用を奏する。
【0017】
この発明の第11の局面は次のように規定される。即ち、
第10の局面の制限速度案内方法において、前記第1の制限速度と前記現在走行速度との速度差を演算するステップと、
演算された該速度差に基づき、前記案内信号を出力するタイミングを決定するステップと、を備える。
このように規定される第11の局面に規定の制限速度案内方法によれば、第3の局面と同等の作用を奏する。
【0018】
この発明の第12の局面は次のように規定される。即ち、
第9〜第11の局面に規定の制限速度案内方法において、所定の条件を満足したときに限り、前記案内信号出力部を有効にする案内信号出力制御ステップが更に備えられる。
このように規定される第12の局面に規定の制限速度案内方法によれば、第4の局面と同等の作用を奏する。
【0019】
この発明の第13の局面は次のように規定される。即ち、
第12の局面に規定の制限速度案内方法において、前記案内信号出力制御ステップは前記第1の制限速度の道路の道路情報を参照して前記案内信号出力部を制御する。
このように規定される第13の局面に規定の制限速度案内方法によれば、第5の局面と同等の作用を奏する。
【0020】
この発明の第14の局面は次のように規定される。即ち、
第12の局面に規定の制限速度案内方法において、前記案内信号出力制御ステップは前記第1の制限速度の道路の道路情報と自車の走行道路の道路情報とを比較して前記案内信号出力部を制御する。
このように規定される第14の局面に規定の制限速度案内方法によれば、第6の局面と同等の作用を奏する。
【0021】
この発明の第15の局面は次のように規定される。即ち、
第12〜第14の局面に規定の制限速度案内方法において、前記案内信号出力制御ステップは自車の走行履歴を参照して前記案内信号出力部を制御する。
このように規定される第15の局面に規定の制限速度案内方法によれば、第7の局面と同等の作用を奏する。
【0022】
さらに、この発明の第16の局面は次のように規定される。即ち、
制限速度を案内するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
案内される経路上において自車位置を特定する自車位置特定手段と、
自車の現在走行速度を特定する現在走行速度特定手段と、
前記経路の進行方向先方にある道路の制限速度としての第1の制限速度を、少なくとも制限速度に関する道路情報を保存する道路情報保存部から読み出して、前記現在走行速度と比較する速度比較手段と、
前記第1の制限速度が前記現在走行速度より遅いとき、案内信号を出力する案内信号出力手段、
として機能させること、を特徴とするコンピュータプログラム。
このように規定される第16の局面に規定のコンピュータプログラムによれば、第1の局面と同等の作用を奏する。
【0023】
この発明の第17の局面は次のように規定される。即ち、
第16の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、
前記自車位置から前記第1の制限速度の道路の始点までの距離を演算する手段と、
前記距離が所定の閾値以内になったとき、案内信号出力部が前記案内信号を出力する前記案内信号出力手段、
として機能させる。
このように規定される第17の局面に規定のコンピュータプログラムによれば、第2の局面と同等の作用を奏する。
【0024】
この発明の第18の局面は次のように規定される。即ち、
第17の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、
前記第1の制限速度と前記現在走行速度との速度差を演算する手段と、
演算された該速度差に基づき、前記案内信号を出力するタイミングを決定する手段、
として機能させる。
このように規定される第18の局面に規定のコンピュータプログラムによれば、第3の局面と同等の作用を奏する。
【0025】
この発明の第19の局面は次のように規定される。即ち、
第16〜第18の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、更に、
所定の条件を満足したときに限り、前記案内信号出力部を有効にする案内信号出力制御手段、
として機能させる。
このように規定される第19の局面に規定のコンピュータプログラムによれば、第4の局面と同等の作用を奏する。
【0026】
この発明の第20の局面は次のように規定される。即ち、
第19の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、
前記第1の制限速度の道路の道路情報を参照して前記案内信号出力部を制御する前記案内信号出力制御手段、
として機能させる。
このように規定される第20の局面に規定のコンピュータプログラムによれば、第5の局面と同等の作用を奏する。
【0027】
この発明の第21の局面は次のように規定される。即ち、
第19の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、
前記第1の制限速度の道路の道路情報と自車の走行道路の道路情報とを比較して前記案内信号出力部を制御する前記案内信号出力制御手段、
として機能させる。
このように規定される第21の局面に規定のコンピュータプログラムによれば、第6の局面と同等の作用を奏する。
【0028】
この発明の第22の局面は次のように規定される。即ち、
第19〜第21の局面に規定のコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータを、
自車の走行履歴を参照して前記案内信号出力部を制御する前記案内信号出力制御手段、
として機能させる。
このように規定される第22の局面に規定のコンピュータプログラムによれば、第7の局面と同等の作用を奏する。
【0029】
第16〜第22の局面で規定されるコンピュータプログラムを記録する記録媒体が第23の局面として規定される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は実施の形態のナビゲーションシステムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は案内信号生成部20の構成を示すブロック図である。
【図3】図3はナビゲーションシステムの動作を示すフローチャートである。
【図4】図4は要注意道路の特定動作を示すサブフローチャートである。
【図5】図5は案内信号の出力のタイミング調整を示すサブフローチャートである。
【図6】図6は案内信号のフィルタリング動作を示すサブフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の実施の形態を説明する。
実施の形態のナビゲーションシステム1は、図1に示すとおり、制御部3、メモリ部4、入力部5、出力部6、インターフェース部7、自車位置特定部8、速度計9、探索部11、ナビゲーション情報保存部13、走行履歴保存部17及び案内信号生成部20を備えている。
制御部3はCPU、バッファメモリその他の装置を備えたコンピュータ装置であり、ナビゲーションシステム1を構成する他の要素を制御する。メモリ部4にはコンピュータプログラムが保存され、このコンピュータプログラムはコンピュータ装置である制御部3に読み込まれて、これを機能させる。このコンピュータプログラムはDVD等の汎用的な媒体へ保存できる。
【0032】
入力部5は目的地等を設定するため用いられる。入力部5としてディスプレイの表示内容と協働するタッチパネル式の入力装置を用いることができる。
出力部6はディスプレイを含み、ナビゲーションに必要な地図情報、その他の情報を表示する。この出力部6は音声案内装置を含むこともできる。
インターフェース部7はナビゲーションシステム1を無線ネットワーク等へ連結させる。
自車位置特定部8はGPS装置やジャイロ装置を用いて利用者端末の現在の位置を検出する。
速度計9は自車の現在の速度を計測する。この速度計9としては、自車のトランスミッションに装備されるドリブンギアの回転速度を電気信号に変換するタイプを用いることができる。
【0033】
探索部11は指定された出発地から目的地までの経路を探索する。経路探索の際に、探索部11はナビゲーション情報保存部13に保存の情報を参照する。
ナビゲーション情報保存部13には道路情報保存部14と地図情報保存部15とが備えられる。地図情報保存部15にはリンク情報やノード情報など地図を規定するための情報が保存される。道路情報保存部14には道路や交差点の特性を規定する道路情報が保存される。この道路情報として、制限速度、道路勾配、道路種、信号機情報などが保存される。道路情報に対応してコスト情報が特定される。探索されたリンク及びノードについてコスト情報が積算されてコスト情報が演算される。この経路コストの最小の経路が推奨経路として表示される。
【0034】
走行履歴保存部17には自車の走行履歴が保存される。走行履歴には少なくとも過去に案内された経路を構成する道路とこの道路の走行速度が保存される。また、走行速度の履歴を道路情報保存部14に保存の制限速度情報と比較し、過去に制限速度違反があったときにはその違反履歴も保存できる。
【0035】
案内信号生成部20は自車位置特定部8により特定される自車位置情報、速度計9で特定される現在の走行速度情報、道路情報保存部14に保存される道路情報、及び必要に応じて走行履歴保存部17に保存される走行履歴情報を参照して、案内信号を生成する。生成された案内信号に基づき、制御部3は警告メッセージを生成して出力部6を介してこれを出力する。警告メッセージは画面に表示する画像情報とともに音声情報で構成することができる。警告メッセージの意味内容は案内信号に応じて事前に登録しておくことができる。警告メッセージの例として次のメッセージを挙げることができる。

「まもなく制限速度がXXkm/hになりますので、現在速度を確認してください」

自車位置特定部8、速度計9、道路情報保存部14、走行履歴保存部17及び案内信号生成部20により制限速度案内装置30が構成される。
【0036】
案内信号生成部20の詳細を図2に示す。
案内信号生成部20は案内信号生成制御部21、自車情報特定部23、要注意道路情報特定部25、案内信号出力部27及び案内信号出力制御部29を備えてなる。
案内信号生成制御部21は案内信号生成部20の各構成要素を制御する。
自車情報特定部23は現在位置制限速度特定部231と速度比較部233を備える。現在位置制限速度特定部231は自車位置特定部8で特定された自車位置情報に基づき、道路情報保存部14の内容を参照して、自車が走行する道路の制限速度(現在位置制限速度S1)を特定する。
速度比較部233は、現在位置制限速度特定部231により特定された現在位置制限速度S1と速度計9より得られた自車の現在の走行速度SPとを比較する。現在走行速度SPが現在位置制限速度S1より速い場合、速度比較部233は従来例と同様にして警告信号を出力する。この警告信号に基づき、出力部6から警告メッセージが発せられる。
【0037】
要注意道路情報特定部25は道路スキャン部251、制限速度特定部253、速度比較部255及び要注意道路特定部257を備える。道路スキャン部251は自車位置特定部8により特定された自車の現在走行中道路より順に経路上先方に道路をスキャンする。スキャンされた各道路につきその制限速度S2が制限速度特定部253により特定される。速度比較部255は、特定された制限速度S2と現在の走行速度SPとを比較する。要注意道路特定部257が現在走行速度SPより小さい制限速度S2の道路を「要注意道路」と特定する。
【0038】
案内信号出力部27は、案内対象範囲制限部271、タイミング調整部273、案内信号選択部275及び参照情報保存部277を備える。案内対象範囲制限部271は要注意道路を検出する範囲を特定する。即ち、要注意道路が現在位置より遠く離れているときは、速度制限案内を出力する必要がなく、ある程度まで近づいた段階で当該案内を行えばより案内効果が高まるからである。即ち、この案内対象範囲制限部271は現在位置から要注意道路の始点までの距離(第1の距離)と予め定められた第1の閾値距離とを比較する。第1の距離が第1の閾値距離以内となった段階で案内信号を出力可能とする。
タイミング調整部273は自車の現在の走行速度SPと要注意道路の制限速度S2との差を演算し、当該速度差に応じて案内信号の出力のタイミングを制御する。両者の速度差が大きければ要注意道路に到達する前に充分な距離をおいて案内信号を出力する。両者の速度差と案内信号を出力する位置から要注意道路までの距離との関係をタイミング表に規定したり、関数で表記したりすることができる。
【0039】
案内信号選択部275は現在走行速度SPと要注意道路の制限速度S2との差などに応じて種々の案内に対応する信号を選択する。選択対象となる信号の種類とその信号が選択されるべき条件との関係は参照情報保存部277に保存される。
参照情報保存部277には第1の閾値距離や、自車の現在走行速度SPと要注意道路の制限速度S2との速度差に応じたタイミング表など、既述の制御を実行するときに参照すべき情報も保存される。
【0040】
案内信号出力部27から出力された案内信号が全て警告メッセージの作成に供されるわけではない。案内信号出力制御部29は所定の条件を満足しないときは案内信号出力部25から出力された案内信号をカットする。条件は任意に設定可能であるが、例えば道路情報保存部14の道路情報や走行履歴保存部17の走行履歴を参照することができる。
制御情報保存部40には案内信号出力制御部29を動作させるための判断プログラムや各種条件を規定する情報が保存される。
この制御情報保存部40、参照情報保存部277、走行履歴保存部17、ナビゲーション情報保存部13及びメモリ部4はハードディスク装置の所定の領域を割り付けることにより形成できる。
【0041】
次に、この実施の形態のナビゲーションシステム1の動作を説明する(図3参照)。
入力部5を用いて目的地を設定し、さらに必要に応じて探索モードを指定することにより、出発地(自車の現在位置)から目的地までの経路が汎用的なアルゴリズムに基づき探索される。そして探索された経路に沿って自車の運行が進行する。
【0042】
ステップ1では、自車位置特定部8が自車位置を特定する。特定した現在位置情報を現在位置制限速度特定部231へ入力する。現在位置制限速度特定部231は現在位置情報から経路上における現在の自車位置を特定して、道路情報保存部14から当該道路の現在位置制限速度情報S1を読み込み特定する(ステップ3)。特定された現在位置制限速度情報S1と速度計9で特定された現在走行速度SPとを速度比較部233により比較し(ステップ5)、現在走行速度SPが現在位置制限速度S1より大きいとき(ステップ5:Y)、従来例と同様に警告メッセージが発せられる(ステップ7)。
【0043】
ステップ8における要注意道路の特定は次のようにして実行される(図4参照)。まずは、道路スキャン部251により現在の自車位置から経路進行方向先方に位置する道路を順に特定し(ステップ81)、特定された道路の制限速度S2を道路情報保存部14から読み出す(ステップ83)。読み出した制限速度S2と現在走行速度SPとを速度比較部255で比較し(ステップ85)、前者が後者より小さいときは(ステップ85:Y)、ステップ87へ進んで要注意道路特定部257がその制限速度S2の道路を要注意道路と認定する。他方、現在走行速度SPに比べて道路スキャン部251で特定された先方の道路の制限速度S2が小さくないとき、ステップ89へ進む。ステップ89では現在位置からスキャンした道路までの距離を演算し、その距離が所定の第1の閾値距離より大きくなったときには(ステップ89;N)、要注意道路の特定を中止する。要注意道路が遠く離れているときに制限速度が遅くなる旨の警告メッセージを発しても効果が無く、また演算量を制限することにより迅速な処理を達成するためである。現在位置より道路スキャン部251で特定された道路までの距離が第1の閾値距離内のときは、ステップ81へ戻り、一つ先の道路を特定する。
なお、第1の閾値距離は任意に設定可能であるが、例えば1kmとすることができる。一般道路と高速道路とで第1の閾値距離に変化をもたせることもできる。
ステップ89の処理は、案内信号出力部27の案内対象範囲制限部271により実行される。ステップ89の処理はなくてもよい。
【0044】
図3に戻り、ステップ9において、現在の走行速度SPと要注意道路の制限速度S2との速度差に基づき案内信号を出力するタイミングを調整する。即ち、図5に示すように、ステップ91において自車の現在走行速度SPを速度計9から読み込む。ステップ93では読み込んだ自車の現在走行速度SPと要注意道路の制限速度S2との差を演算する。当該速度差SP−S2が所定の閾値速度差SD以下の場合は(ステップ95:N)、特にタイミングの調整は行わない。速度差SP−S2が所定の閾値速度差SDより大きいときは、速度差SP−S2の大きさに応じて案内信号を出力するタイミングを調整する。(ステップ97)速度差SP−S2と調整すべきタイミングとの関係は参照情報保存部277に保存されている。例えば、速度差SP−S2が大きいときには、ステップ87において要注意道路が特定された段階で直ちに案内信号を出力させる。他方、速度差SP−S2が小さいときには、ステップ87において要注意道路が特定されても直ちに案内信号を出力させるとは限らず、現在位置から要注意道路の始点までの距離が所定の第2の閾値距離となった時点で案内信号を出力させる。なお、第2の閾値距離も予め参照情報保存部277に保存されている。
ステップ9は省略することができる。
【0045】
ステップ11では案内信号を選択する。この例では、現在走行速度SPと要注意道路の制限速度S2との速度差SP−S2に応じて案内信号に変化を与えることとした。そのため、当該速度差SP−S2と案内信号の種類との関係を参照情報保存部277に予め保存しておいて、演算された速度差SP−S2を当該関係に照らして出力すべき案内信号の種類を特定している。
ステップ11を省略し、案内信号を1つに固定することもできる。
【0046】
ステップ13では出力された案内信号を案内信号出力制御部29によりフィルタリングしている。これにより、真に必要な警告メッセージのみが発せられるように案内信号が出力される。
図6には、案内信号をフィルタリングするステップ13の詳細が記載されている。図6のステップ131では、要注意道路の道路情報が所定の条件1を満足するか否かが検証される。ここに所定の条件1として、(1)過去に制限速度が変化していること、(2)制限速度が期間、時間等に応じて変化すること、(3)下り勾配であること、などを挙げられる。この条件1を満足したとき案内信号が出力可能となる。
さらには、要注意道路の付近にいわゆるサグ部が存在するときも案内信号を出力させることが好ましい。
【0047】
ステップ133では、自車の現在走行中の道路の道路情報と要注意道路の道路情報とを比較して両者の相違が所定の条件2を満足するか否かが検証される。ここに所定の条件2として、(イ)現在走行中の道路が高速道路であり要注意道路が一般道路であること、(ロ)現在走行中の道路の制限速度S1と要注意道路の制限速度S2との速度差が所定以上であること、などを挙げられる。この条件2を満足したとき案内信号が出力可能である。
【0048】
ステップ135では、走行履歴保存部17に保存の走行履歴が所定の条件3を満足しているか否かが検証される。ここに所定の条件3として、(A)連続運転時間が所定時間(例えば1時間)を超えること、(B)過去に速度超過の実績があること、(C)初めて走行する道路であること、などを挙げられる。この条件3を満足したとき案内信号が出力可能である。
以上各ステップの判断は案内信号生成制御部21が所定の予め定められた判断プログラムにしたがって行う。この判断プログラムや条件1〜条件3は制御情報保存部40に保存される。
【0049】
図6の例では、各条件1〜条件3のいずれか1つを満足したとき案内信号を出力可能とした(ステップ139)。他方、全ての条件1〜条件3を満足しないときに案内信号を遮断した(ステップ137)。
案内信号の出力・遮断を判断するために更に条件を付加することができる。例えば、既述のように経路先方にサグ部が存在するとき、案内信号を出力させることができる。
ステップ13は省略可能である。
【0050】
図3に戻り、このようにして案内信号生成部20より案内信号が生成されると、ナビゲーションシステム1の制御部3は当該案内信号に基づき警告メッセージを生成し、出力部6を介して出力する。出力の形態としては、ディスプレイへ文字情報として表示すること及び/又は音声メッセージとしてスピーカから出力することなどを挙げられる。
【0051】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1 ナビゲーションシステム
8 自車位置特定部
9 速度計
14 道路情報保存部
17 走行履歴保存部
20 案内信号生成部
23 自車情報特定部
25 要注意道路情報特定部
27 案内信号出力部
29 案内信号出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも制限速度に関する道路情報を保存する道路情報保存部と、
案内される経路上において自車位置を特定する自車位置特定部と、
自車の現在走行速度を特定する現在走行速度特定部と、
前記経路の進行方向先方にある道路の制限速度としての第1の制限速度を前記道路情報保存部から読み出して、前記現在走行速度と比較する速度比較部と、
前記第1の制限速度が前記現在走行速度より遅いとき、案内信号を出力する案内信号出力部と、
を備えることを特徴とする制限速度案内装置。
【請求項2】
前記自車位置から前記第1の制限速度の道路の始点までの距離を演算する手段と、
前記距離が所定の閾値以内になったとき、前記案内信号出力部が前記案内信号を出力する、ことを特徴とする請求項1に記載の制限速度案内装置。
【請求項3】
前記第1の制限速度と前記現在走行速度との速度差を演算する手段と、
演算された該速度差に基づき、前記案内信号を出力するタイミングを決定する手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の制限速度案内装置。
【請求項4】
所定の条件を満足したときに限り、前記案内信号出力部を有効にする案内信号出力制御部が更に備えられる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の制限速度案内装置。
【請求項5】
前記案内信号出力制御部は前記第1の制限速度の道路の道路情報を参照して前記案内信号出力部を制御する、ことを特徴とする請求項4に記載の制限速度案内装置。
【請求項6】
前記案内信号出力制御部は前記第1の制限速度の道路の道路情報と自車の走行道路の道路情報とを比較して前記案内信号出力部を制御する、ことを特徴とする請求項4に記載の制限速度案内装置。
【請求項7】
前記案内信号出力制御部は自車の走行履歴を参照して前記案内信号出力部を制御する、ことを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の制限速度案内装置。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の制限速度案内装置を備えたナビゲーションシステム。
【請求項9】
案内される経路上において自車位置を特定する自車位置特定ステップと、
自車の現在走行速度を特定する現在走行速度特定ステップと、
前記経路の進行方向先方にある道路の制限速度としての第1の制限速度を、少なくとも制限速度に関する道路情報を保存する道路情報保存部から読み出して、前記現在走行速度と比較する速度比較ステップと、
前記第1の制限速度が前記現在走行速度より遅いとき、案内信号を出力する案内信号出力ステップと、
を備えることを特徴とする制限速度案内方法。
【請求項10】
前記自車位置から前記第1の制限速度の道路の始点までの距離を演算するステップと、
前記距離が所定の閾値以内になったとき、案内信号出力部が前記案内信号を出力する前記案内信号出力ステップと、
を備えることを特徴とする請求項9に記載の制限速度案内方法。
【請求項11】
前記第1の制限速度と前記現在走行速度との速度差を演算するステップと、
演算された該速度差に基づき、前記案内信号を出力するタイミングを決定するステップと、
を備えることを特徴とする請求項10に記載の制限速度案内方法。
【請求項12】
所定の条件を満足したときに限り、前記案内信号出力部を有効にする案内信号出力制御ステップが更に備えられる、ことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載の制限速度案内方法。
【請求項13】
前記案内信号出力制御ステップは前記第1の制限速度の道路の道路情報を参照して前記案内信号出力部を制御する、ことを特徴とする請求項12に記載の制限速度案内方法。
【請求項14】
前記案内信号出力制御ステップは前記第1の制限速度の道路の道路情報と自車の走行道路の道路情報とを比較して前記案内信号出力部を制御する、ことを特徴とする請求項12に記載の制限速度案内方法。
【請求項15】
前記案内信号出力制御ステップは自車の走行履歴を参照して前記案内信号出力部を制御する、ことを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の制限速度案内方法。
【請求項16】
制限速度を案内するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータを、
案内される経路上において自車位置を特定する自車位置特定手段と、
自車の現在走行速度を特定する現在走行速度特定手段と、
前記経路の進行方向先方にある道路の制限速度としての第1の制限速度を、少なくとも制限速度に関する道路情報を保存する道路情報保存部から読み出して、前記現在走行速度と比較する速度比較手段と、
前記第1の制限速度が前記現在走行速度より遅いとき、案内信号を出力する案内信号出力手段、
として機能させること、を特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記コンピュータを、
前記自車位置から前記第1の制限速度の道路の始点までの距離を演算する手段と、
前記距離が所定の閾値以内になったとき、案内信号出力部が前記案内信号を出力する前記案内信号出力手段、
として機能させること、を特徴とする請求項16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記コンピュータを、
前記第1の制限速度と前記現在走行速度との速度差を演算する手段と、
演算された該速度差に基づき、前記案内信号を出力するタイミングを決定する手段、
として機能させること、を特徴とする請求項17に記載のコンピュータプログラム。
【請求項19】
前記コンピュータを、更に、
所定の条件を満足したときに限り、前記案内信号出力部を有効にする案内信号出力制御手段、
として機能させること、を特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
前記コンピュータを、
前記第1の制限速度の道路の道路情報を参照して前記案内信号出力部を制御する前記案内信号出力制御手段、
として機能させること、を特徴とする請求項19に記載のコンピュータプログラム。
【請求項21】
前記コンピュータを、
前記第1の制限速度の道路の道路情報と自車の走行道路の道路情報とを比較して前記案内信号出力部を制御する前記案内信号出力制御手段、
として機能させること、を特徴とする請求項19に記載のコンピュータプログラム。
【請求項22】
前記コンピュータを、
自車の走行履歴を参照して前記案内信号出力部を制御する前記案内信号出力制御手段、
として機能させること、を特徴とする請求項19〜21のいずれかに記載のコンピュータプログラム。
【請求項23】
請求項16〜請求項22のいずれかに記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−217058(P2010−217058A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65441(P2009−65441)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(501271479)株式会社トヨタマップマスター (56)
【Fターム(参考)】