説明

加圧磁気粘性流体ダンパー

加圧された磁気粘性(MR)液体を含む、改良された性能を有するMR流体装置が、提供される。また、一般的な磁気粘性装置のキャビテーションを最小限に抑える方法であって、MR流体を少なくとも100psiの圧力で装置内に供給することを特徴とする方法も提供される。この装置は、装置内のキャビテーションを最小限に押さえ、鉄道車両のサスペンションシステムに広く用いられ、優れた性能を発揮することとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2005年7月29に出願された米国仮特許出願第60/703,428号の利得を主張するものであり、この内容を参照することによって、その全体がここに明瞭に含まれるものとする。
【0002】
本発明は、磁気粘性(MR)流体装置に関し、さらに詳細には、加圧MR流体を含む磁気粘性(MR)流体ダンパーに関する。
【背景技術】
【0003】
制御可能な粘性減衰力を生じさせるためにMR流体を作動媒体として用いる磁気粘性流体装置は、振動低減用途で極めて有望である。可変オリフィスダンパーのような従来の半能動装置と比較して、MR流体ダンパーは、迅速に応答し、移動部品が少なく(ピストンアセンブリしか有せず)、シンプルかつ信頼性が高くなっている。
【0004】
MR装置の優れた順応性によって、融通性という点で新規の用途が得られることとなる。さまざまなMR装置が、種々の用途向けに開発されており、その用途には、例えば、運動器具に用いられるMR回転装置、クラッチおよびブレーキ、および自動車または鉄道車両のサスペンションシステムに用いられるリニアMR装置が挙げられる。
【0005】
MR装置に一般的に用いられるMR流体は、磁場に晒されると粘性液体から制御可能な降伏強度を有する半固体にミリ秒単位で可逆的に変化(すなわち、粘性的に変化)できる制御可能な流体の一種である。一般的なMR液体は、3つの主構成成分、すなわち、分散された強磁性粒子、キャリア液体、および安定化剤から構成されている。磁場が印加されないとき(オフ状態のとき)には、MR流体は、通常の流体のように自在に流動する。十分な強度の磁場が印加されたとき(オン状態のとき)には、強磁性粒子が、磁場の方向に並んで配列される双極子モーメントを得て、印加された磁場と平行な直鎖を形成する。この現象によって、MR流体が凝固し、その結果、MR流体の降伏強度を増大させ、MR流体の運動を拘束する。印加された磁場の強度が増大すると、MR流体の降伏強度が増大する。印加された磁場が除去されると、MR流体は、ミリ秒単位の時間内で再び自在に流動する液体に戻ることとなる。
【0006】
一般的なMRダンパーは、ピストンロッドを有するピストンアセンブリを備えており、ピストンロッドは、MR流体によって十分に満たされた閉空間であるダンパー本体の内部で摺動するように構成されている。ピストンロッドは、ダンパー本体内のピストンアセンブリに取り付けられる少なくとも1つの端部、およびダンパー本体の外側の少なくとも1つの端部を有している。
【0007】
ダンパー本体およびピストンロッドの少なくとも1つの端部が、2つの別個の構造体に取り付けられ、これらの構造体間での相対的な運動に従って、減衰力がピストンロッドの方向に沿って生じる。具体的には、ピストンが変位すると、MRダンパー内で、MR流体がオリフィスを介して圧縮チャンバから膨張チャンバに移動する。その結果、オリフィスの内側のMR流体は、用途により異なる振幅を有する印加磁場に晒されることとなる。通常、磁場はピストンコアの中間の領域に位置する電磁回路によって発生させられる。
【0008】
カールソン(Carlson)らに付与された米国特許第5,277,282号および5,878,851号、およびカールソンに付与された米国特許第6,427,813号では、種々のMRダンパーの設計が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、MR流体は力遅れ現象の影響を受ける。第1に、力遅れ現象にはMR流体を充填するプロセス中にMRダンパー内に閉じ込められたエアポケットによるものがある。第2に、力遅れ現象にはMR流体の粘度が比較的高いことによるものがある。これらの2つの要因の両方によって、減衰動作中にキャビテーション(気泡発生)を生じさせ、MRダンパーの性能を低下させることとなる。従って、キャビテーションを最小限に抑えることができるMR流体ダンパーを提供することが望まれる。
【0010】
カールソンの特許(米国特許第6,427,813号)には、MR液体の膨張用および抽出用の外部補償チャンバとガス充填チャンバとを有する蓄圧器を備えたMRダンパーが開示されている。カールソンは、MR液体を蓄圧器によって加圧し、これによって、キャビテーションを最小限に抑えることができると述べているが、キャビテーションをどのようにして最小限に抑えるかについては触れていない。
【0011】
ここに引用した参考文献は、参照することによって、その全体がここに明瞭に含まれるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
先行技術の上述の問題を解消するために、本発明は、少なくとも100psiの加圧MR液体を含む磁気粘性流体装置を提供する。
【0013】
本発明の一態様によれば、
(a)空洞を有するハウジングと、
(b)前記空洞内の移動機構であって、前記ハウジングおよび移動機構が少なくとも1つの作動部および少なくとも1つのチャンバを空洞内に画定するように配置される構成となっている移動機構と、
(c)前記少なくとも1つの作動部および前記少なくとも1つのチャンバ内の磁気粘性流体(MR流体)であって、少なくとも100psiの圧力を有するMR流体と、
(d)該MR流体に粘性変化を生じさせるために、前記作動部内の前記MR流体に作用する磁場を生成する手段と、
を備えていることを特徴とする磁気粘性流体装置が提供される。
【0014】
本発明の別の態様によれば、磁気粘性装置のキャビテーションを最小限に抑える方法であって、該装置内のMR流体を少なくとも100psiの圧力で供給することを含むことを特徴とする方法が対象とされる。
【0015】
本発明のさらに別の態様によれば、鉄道車両のサスペンションシステムであって、本発明によって画定された少なくとも1つの磁気粘性ダンパーを鉄道車両の台車と車体との間に備えていることを特徴とするサスペンションシステムが提供される。
【0016】
本発明の例示的な実施形態では、前記MR流体が、100psi〜400psiの範囲内の圧力を有する。別の例示的な実施形態では、前記MR流体は、100psi〜200psiの範囲内の圧力を有する。
【0017】
本発明によって提供されるMR装置は、当技術分野におけるMR装置と比較して、キャビテーションをごく最小限に抑えることによって、改良された性能を発揮することができる。鉄道車両システムに適用される場合には、このMR装置が、高周波での上側首振りモード(upper sway mode)における鉄道車両の性能を低下させることなく、下側首振りモード(lower sway mode)での減衰力を増大させることができる。さらに、本発明による装置は、異なる状況下における種々の振動に対処することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の前述の特徴および他の利点は、本発明の例示的な実施形態を示す以下の説明および添付の図面からよく理解されるであろう。
【0019】
以下、図面を参照して、本発明のいくつかの例示的な実施形態について説明する。図面の全体にわたって、同一の符号は、同一の要素を示す。
【0020】
本発明の例示的な実施形態によるMR装置10、特にMRダンパーが、図1に示されている。
【0021】
MRダンパー10は、一般的に低炭素鋼のような軟磁性材料から作製されるハウジングまたは本体14を備えている。この実施形態では、ハウジング14は、円筒状の空洞140を有している。
【0022】
ハウジング14では、その両端部が、それぞれ、カバー16,16’によって閉鎖されている。これらのカバー16,16’は、タイロッドナット18,18’,18’’,18’’’によって、タイロッド20,20’に結合されている(この実施形態では、総計8つのタイロッドナットおよび4つのタイロッドが用いられているが、これらは、図1に完全に示されていない)。これらの部品が共に組み合わされ、部分的に閉鎖された区画を形成している。
【0023】
2つの円形開口24,24’が、それぞれ、ロッドカバー16,16’の中心に形成されている。開口24,24’は、それぞれ、軸方向に摺動可能な2つのピストンロッド30,30’を受けている。開口24,24’は、好ましくは、ピストンロッドが軸方向に移動するのを可能にすると共に内部の流体が区画22から漏れるのを防ぐ2つの軸受・シール44,44’を備えている。
【0024】
2つのピストンロッドをハウジング14内で軸方向に同時に摺動させるために、これらのピストンロッドを囲むようにピストンアセンブリ12が設けられている。ピストンアセンブリ12は、ピストンヘッドスリーブ26を備えている。このピストンヘッドスリーブ26は、ネジ締結または溶接によって、2つのピストンロッド30,30’に取り付けられている。
【0025】
本発明の例示的な実施形態では、ピストンロッド30,30’は、同一の直径を有し、軸方向に沿ってハウジング14から外に延在している。
【0026】
この構成によれば、ピストンロッドが移動しても、閉鎖された内部区画22内の容積が変化しないため、ロッド容積の補償装置、蓄圧器、または他の同様の装置をダンパー内に組み込む必要がないという効果が得られる。
【0027】
ピストンヘッドスリーブ26は、好ましくは、軟磁性材料によって製造され、少なくとも1つのスプール、この実施形態では、3つのスプール28,28’,28’’を有している。別体のピストンヘッドスリーブ26をピストンロッド30,30’に取り付けてピストンアセンブリ12を形成することによって、より高級な一体式ピストンアセンブリに取り替えることができる。また、この構成は、複雑化および後で詳述する芯出しの問題を低減させながら、従来のピストンダンパーをMRダンパーに変更するためのシンプルかつコスト効率のよい方法を可能にする。加えて、この構成は、外側のシリンダー状ハウジングを磁性回路の一部とする特にシンプルな幾何学的形状を有している。
【0028】
ピストンアセンブリ12は、区画22を第1の流体チャンバ32および第2の流体チャンバ34に分割している。
【0029】
本発明では、クッションリング36,36’が設けられる。クッションリング36,36’は、それぞれ、ピストンロッド30,30’に取り付けられ、ピストンヘッドスリーブ26からピストンロッドに沿って軸方向に延在している。クッションリングは、円滑な運動を油圧機械的にもたらすと共に、減衰作動中にMR流体の比較的高い粘度によって生じるピストンアセンブリ12とMR流体48との間の抵抗を低減させるような形状に作製されている。
【0030】
円筒状ハウジングの内壁(内径)38とピストンスリーブ26の外径40との間の間隙によって、作動部、すなわち、流体オリフィス42が形成されている。
【0031】
ピストンロッド30,30’は、それぞれ、ネジ付きロッド端46,46’を備えている。振動制御を必要とする第1の構造体が、ネジ付きロッド端46,46’の少なくとも1つに溶接されるかまたは締め付けられることによって、ピストンロッド30,30’の少なくとも1つに取り付けられることとなる。この第1の構造体に関連する第2の構造体が、カバー16,16’に溶接されるかまたはタイロッド20,20’に締付けられることによって、MRダンパーハウジングまたは本体14に取り付けられることとなる。
【0032】
MRダンパーの本体14に取り付けられた構造体の振動を誘発する運動によって、ピストンロッド30,30’が変位すると、(例えば、図1において右から左に移動すると)、MR流体48が、管状の流体オリフィス42を通って、圧縮されるチャンバ(第1の流体チャンバ32)から膨張するチャンバ(第2の流体チャンバ34)に流れる。
【0033】
好ましくは巻線50,50’,50’’の3つのスプールに電流が印加されると、磁場が生じ、生じた磁場に応じて、MR流体48の降伏強度が増大することとなる。流体チャンバ32,34間におけるMR流体48の流れは、巻線50,50’,50’’に印加される電流の変調によって誘発される磁場の振幅によって制御される。従って、取り付けられた構造体の振動を低減するように、MRダンパー10の減衰率を所望の値に調整することができる。
【0034】
磁極片52,52’、52’’間の空間および円筒状の本体14の内径38が、MR流体48を分極する能動的な流体領域を形成する。本発明のこの例示的な実施形態では、巻線50,50’,50’’は、インダクタンスを最小にし、磁極片52,52’’での追加的に磁場を生じさせることを可能にするような代替的な方法によって、巻かれてもよい。巻線50,50’,50’’に接続される電線54は、好ましくは、パイロット孔58内に位置する気密シール56を用いて、密封されている。次いで、電線54は、ピストンヘッドスリーブ26から出て、ワイヤトンネル60を介して、ネジ付きロッド端46’に至っている。巻線50,50’,50’’がMR流体と直接接触し、損耗および短絡することを防ぐために、エポキシ樹脂ペースト62,62’,62’’が、巻線50,50’,50’’の外径に被覆されている。
【0035】
図1を参照すると、1つまたは複数のセンサ74が、前述の構造体に配置されている。センサ74は、信号を受信するように構成されている。この信号は、巻線54に印加される電流を制御する制御装置72に伝達されることとなる。制御装置72は、当該技術分野におけるどのような形式のものでもよい。
【0036】
図1を再び参照すると、MR流体ダンパー10がオン状態のとき、MR流体48は、電磁回路によって誘発された高磁場によって高降伏応力レベルに分極されて、ピストンアセンブリ12により分割された2つの流体チャンバ32,34間の流体オリフィス42において、栓(プラグ)のように作用する。その結果、環状の流体オリフィス42内のMR流体は、Oリングシールのように作用し、円筒状ハウジング14の内径の方向にピストンアセンブリ12と共に摺動し、これによって、減衰運転サイクル中に、流体は、流体オリフィス42を介して、圧縮チャンバから膨張チャンバ、または膨張チャンバから圧縮チャンバに流れることができないこととなる。このような状況は、膨張チャンバ内にキャビテーション(気泡生成)を生じさせ、その結果、MRダンパーの力遅れ現象を引き起こす原因になる。
【0037】
MR流体の粘度は比較的高いため、当該技術分野においてなされているような特別の注意を払っても、エアポケットの全ておよびそこに溶解した空気をなくすことは極めて困難である。
【0038】
本発明者らは、MR液体に適切な圧力を加えることによって上記の欠点を解消する独創的な方法および装置を開発した。
【0039】
本発明者らは、閉じ込められた空気の影響を低減させるとともに、MR流体48の比較的高い降伏応力によってシールプラグ効果を克服するためには、閉鎖された内部区画22内のMR流体に加えられる圧力を増大させることが、良好な解決策であることを見出した。
【0040】
本発明者らは、装置内のMR流体の圧力に対する力遅れ現象の影響を確認する実験を行なった。本発明による種々の加圧流体を含むMRダンパーを、1.5Aの作動電流によって、20mm、0.1Hzの三角形状に変位する加振の下で試験を実施した。その結果が、図2に示されている。
【0041】
図2は、力遅れ現象に対する0,25,50,75,および100psiの加圧MR流体の影響を示している。この図を参照すると、MR流体の圧力が増大すると、力遅れ現象が低減することが分かる。ダンパー内のMR流体の圧力が100psiまで上昇すると、力遅れ現象は、ほぼなくなることとなる。
【0042】
MR流体を100psi〜400psiの圧力、好ましくは、100psi〜200psiの圧力に維持すれば、MRダンパーの性能が良好になることが予期される。
【0043】
また、本発明者らは、MRダンパー10の力遅れ現象を防止するためには、閉じ込められたエアポケットを最小限にするように特別の注意を払って、MR流体を充填する必要があることも見出した。図1に示されるように、この例示的な実施形態では、装置に充填される流体を一方向に維持するために、入口64および出口64’が、それぞれ、カバー16,16’に設けられている。このことも、この問題を解決することに役立つこととなる。
【0044】
好ましい実施形態では、入口は、一方向弁に接続されている。他の実施形態では、当業者に容易に理解されるように、一方向弁が、入口としてハウジング14に嵌合されている。
【0045】
本発明に用いられる一方向弁は、当該技術分野におけるどのような形式のものでもよい。
【0046】
MRダンパーの力遅れ現象を防止する目的で流体チャンバを加圧するために、ハンドポンプ(例えば、ENERPAC(登録商標)P−142)、2つの圧力ゲージ、2つの迅速着脱連結器(例えば、FASTER(登録商標)ANV14GAS)などを備える例示的なMR流体充填機構が本発明に用いられる。MR流体は、ハンドポンプを用いることによって、MRダンパー内に送り込まれることとなる。1つの圧力ゲージを用いて、ハンドポンプの出口圧力を監視し、他の圧力ゲージを用いて、MRダンパーの内部圧力を監視する。迅速連結器を流体システムに用いて、流体または流体圧の漏れを生じることなく、ラインを迅速に接続する。迅速連結器は、2つの互いに嵌合する半体、すなわち、プラグ(雄)半体および連結器(雌)半体から構成されている。雌連結器は、一方向弁として作用し、5,000psiに至るような高い作動圧に耐えることができる。
【0047】
MR流体48は、まず、区画22に通路66または66’を介して通じる入口/出口64または64’から、MRダンパー10内に導入される。区画22がMR流体48によって十分に満たされると、油圧一方向弁68および油圧締め具70が、それぞれ、入口64および出口64’または出口64’および入口64に締め付けられる。MRダンパー10の内側の閉じ込められたエアポケットを最小限に抑えるために、MRダンパー10は、数サイクルだけ予備的に運転され、数時間にわたって安定的に保たれる。次いで、前述したようなMR流体を充填するプロセスが、最大限の補給がなされるまで繰り返される。これによって、MRダンパーの内側のエアポケットを最小限に抑えることが促されることとなる。最終的に、力遅れ効果を防止するために、一方向弁68を介してMRダンパー10内のMR流体を加圧することによって、MRダンパー10の区画22が加圧されることとなる。一方向弁68を用いることによって、力遅れ効果を解消するために蓄圧器を用いる方法に対する小形化について、および代替について解決策がもたらされることとなる。
【0048】
本発明によるMRダンパーは、振動低減システム、特に、鉄道車両サスペンションシステムに広く用いられる。鉄道車両サスペンションシステムにすぐれた性能をもたらすために、従来のダンパーに代えて、MRダンパー10を用いることができる。実際には、MRダンパーの本体が、カバー16,16またはタイロッド20,20’を介して、鉄道車両(例えば、台車)の第1の構造体に取り付けられている。次いで、ピストンロッド30,30’の少なくとも1つが、ネジ付きロッド端46,46’の少なくとも1つの端を介して、鉄道車両(例えば、車体)の第1の構造体に取り付けられている。制御装置72を用いて、センサ74からの情報によって入力電流を制御することによって、MRダンパー10を制御することができる。
【0049】
図3、図4、図5は、本発明の例示的な実施形態によって、MRダンパー78,78’,78’’,78’’’を利用する鉄道車両76を示している。
【0050】
MRダンパー78,78’は、車体80と前台車82との間の二次サスペンションシステムに取り付けられている。MRダンパー78’’,78’’’は、車体80と後台車84との間の二次サスペンションシステムに取り付けられている。符号86,86’、86’’は、それぞれ、鉄道車両の長手方向(x)、横方向(y)、および垂直方向(z)を表し、符号88,88’,88’’は、鉄道車両の偏揺れ(yaw)の方向、横揺れ(roll)の方向、および縦揺れ(pitch)の方向を表している。
【0051】
車体の横方向絶対速度の測定値と所定の閾速度との比較に基づく制御方式は、オニール(O'Neil)およびウエイル(Wale)による「半能動サスペンションによる鉄道車両の運転の改良」にて見出される。本発明のこの実施形態では、前台車82上の車体中心90の横方向絶対速度および後台車84上の車体中心92の横方向絶対速度が、異なるセンサによって、個々に測定される。その結果、2組のMRダンパー78,78’,78’’,78’’の減衰力が、各センサの測定値を所定の閾速度と比較することによって、個々に制御される。
【0052】
本発明の上記の例示的実施形態を例示の目的でここに説明したが、当業者であれば、種々の修正、追加、および変更が、本発明の精神から逸脱することなくなされてもよく、それらの修正、追加、および変更も、特許請求の範囲に含まれることを理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明によるMRダンパーの一部を断面で示す側面図である。
【図2】種々の加圧MR流体の力遅れ現象の影響を示すグラフである。
【図3】本発明のMR流体ダンパーを利用する概略的な鉄道車両の底面図、側面図、および正面図である。
【図4】本発明のMR流体ダンパーを利用する概略的な鉄道車両の底面図、側面図、および正面図である。
【図5】本発明のMR流体ダンパーを利用する概略的な鉄道車両の底面図、側面図、および正面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)空洞を有するハウジングと、
(b)前記空洞内の移動機構であって、前記ハウジングおよび前記移動機構が少なくとも1つの作動部および少なくとも1つのチャンバを前記空洞内に画定するように配置される構成となっている移動機構と、
(c)前記少なくとも1つの作動部および前記チャンバ内のMR流体であって、少なくとも100psiの圧力を有するMR流体と、
(d)該MR流体に粘性変化を生じさせるために、前記作動部内の前記MR流体に作用する磁場を生成する磁場発生器と
を備えていることを特徴とする磁気粘性流体装置。
【請求項2】
流体入口および流体出口を備えていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体入口が、一方向弁を備えていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ハウジングの外に延在する少なくとも1つのピストンロッドを備えるダンパーとなっている装置であって、
前記移動機構が、前記ピストンロッドの周囲に取り付けられたピストンヘッドスリーブと、前記ピストンロッドに取り付けられるとともに、前記ピストンヘッドスリーブから前記ピストンロッドに沿って軸方向に延在する少なくとも1つのクッションリングと
を備えるピストンアセンブリとなっていることを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記クッションリングが、前記ダンパーの運動中に、前記ピストンアセンブリと前記MR流体との間の抵抗を低減するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記装置が、同一の直径を有する2つのピストンロッドを備えていることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記圧力が、100psi〜400psiの範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記圧力が、100psi〜400psiの範囲内にあることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記圧力が、100psi〜200psiの範囲内にあることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
磁気粘性装置のキャビテーションを最小限に抑える方法であって、該装置内のMR流体を少なくとも100psiの圧力で加圧することを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記圧力は、100psi〜400psiの範囲内にあることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記磁気粘性装置が、入口および出口を有する磁気粘性ダンパーであり、前記MR流体が、前記入口に接続された一方向弁を通して供給されることを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記加圧がなされる前に前記ダンパー内に最大限の補給がなされるように、前記磁気粘性ダンパーを予備運転する方法を含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
鉄道車両のサスペンションシステムであって、前記鉄道車両の台車と車体との間に配置された少なくとも1つの磁気粘性ダンパーを備えるサスペンションシステムにおいて、
前記磁気粘性ダンパーが、
(a)空洞を有するハウジングと、
(b)前記空洞内の移動機構であって、前記ハウジングおよび移動機構が、少なくとも1つの作動部および少なくとも1つのチャンバを前記空洞内に画定するように配置される構成となっている移動機構と、
(c)前記少なくとも1つの作動部および前記チャンバ内のMR流体であって、少なくとも100psiの圧力を有するMR流体と、
(d)前記MR流体に粘性変化を生じさせるために、前記作動部内の前記MR流体に作用する磁場を生成する磁場発生器と、
を備えていることを特徴とするサスペンションシステム。
【請求項15】
前記台車または前記車体に取り付けられた少なくとも1つのセンサと、前記センサからの信号を処理するとともに、該信号に従って前記ダンパーの運動を制御する制御装置と、を備えていることを特徴とする請求項14に記載のサスペンションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3−5】
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【公表番号】特表2009−503378(P2009−503378A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523109(P2008−523109)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001887
【国際公開番号】WO2007/012283
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(504375477)ザ チャイニーズ ユニバーシティー オブ ホンコン (1)
【Fターム(参考)】