説明

動力出力装置

【課題】エンジントルクとモータトルクの合成トルクを駆動軸に伝達可能であり、状況に応じてモータの回転を停止可能な動力出力装置を提供する。
【解決手段】エンジン6と、モータ7とを備え、エンジン6に接続される2つの変速軸を備えた変速機20と、を備えた動力出力装置1、1Aであって、第1〜第3要素を互いに差動回転できるように構成された動力合成機構30を備え、第1要素は2つの変速軸のうちいずれか一方に接続され、第2要素は駆動軸9,9に接続され、第3要素はモータ7に接続されるとともに第3要素をロック可能なロック機構に接続され、第2要素は第1要素から伝達される動力と第3要素から伝達される動力を合成して駆動軸9,9に伝達し、2つの変速軸のうち他方の変速軸は動力合成機構30を介さずに動力を駆動軸9,9に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力出力装置に関し、特にハイブリッド車両の動力出力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、エンジンと、モータと、サンギヤとリングギヤとこれらサンギヤとリングギヤに噛合された複数のプラネタリギヤと、複数のプラネタリギヤを支持するキャリアからなる遊星歯車機構と、を備えたハイブリッド車両の動力出力装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図41に示すように、上記特許文献1に記載の動力出力装置100は、遊星歯車機構101のサンギヤ102にジェネレータとしての第1モータ104を接続し、キャリア105にエンジン106を接続し、リングギヤ107に駆動軸108を接続している。これにより、エンジン106のトルクは遊星歯車機構101によりリングギヤ107とサンギヤ102に分割され、リングギヤ107に分割された分割トルクが駆動軸108に伝達される。なお、上記特許文献1に記載の動力出力装置100においては、エンジン106のトルクが駆動軸108へ分割されて伝達されるため、駆動軸108へのトルクを補う第2モータ109がリングギヤ107に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−290677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこの上記特許文献1に記載の動力出力装置100においては、キャリア105にエンジン106が接続された動力分割方式を採用するため、エンジントルクは必ず分割され、エンジントルクと同等のトルクを駆動軸108に伝達する場合には、第2モータ109からモータトルクを補う必要があり、構造が複雑かつ高価となり車両への搭載が難しくなるという問題があった。
【0006】
また、エンジントルクとモータトルクの合成トルクを駆動軸に伝達可能な動力合成方式を採用する場合に、蓄電装置の蓄電量(以下、SOCと呼ぶ。)やモータの故障等によりモータの回転を停止させた状態でエンジンによる単独走行を行ないたい場合がある。
【0007】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、その目的は、エンジントルクとモータトルクの合成トルクを駆動軸に伝達可能であり、状況に応じてモータの回転を停止可能な動力出力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
内燃機関(例えば、後述の実施形態のエンジン6)と、電動機(例えば、後述の実施形態のモータ7)と、前記内燃機関に接続される2つの変速軸(例えば、後述の実施形態の第1主軸11、第2中間軸16)を備えた変速機(例えば、後述の実施形態の変速機20)と、を備えた動力出力装置(例えば、後述の実施形態の動力出力装置1、1A、1B、1C)であって、
第1〜第3要素(例えば、後述の実施形態のサンギヤ32、キャリア36、リングギヤ35)を互いに差動回転できるように構成された動力合成機構(例えば、後述の実施形態の動力合成機構30、遊星歯車機構31)を備え、
前記第1要素は前記2つの変速軸のいずれか一方(例えば、後述の実施形態の第1主軸11、第2中間軸16)に接続され、
前記第2要素は駆動軸(例えば、後述の実施形態の駆動軸9,9)に接続され、
前記第3要素は前記電動機に接続されるとともに前記第3要素をロック可能なロック機構(例えば、後述の実施形態のワンウェイクラッチ61)に接続され、
前記第2要素は前記第1要素から伝達される動力と前記第3要素から伝達される動力を合成して前記駆動軸に伝達し、
前記2つの変速軸のうち他方の変速軸(例えば、後述の実施形態の第2中間軸16、第1主軸11)は前記動力合成機構を介さずに動力を前記駆動軸に伝達する、
ことを特徴とする動力出力装置。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、
前記2つの変速軸は、第1断接手段(例えば、後述の実施形態の第1クラッチ41、第2クラッチ42)を介して前記内燃機関に接続される第1変速軸(例えば、後述の実施形態の第1主軸11、第2中間軸16)と、第2断接手段(例えば、後述の実施形態の第2クラッチ42、第1クラッチ41)を介して前記内燃機関に接続される第2変速軸(例えば、後述の実施形態の第2中間軸16、第1主軸11)と、から構成され、
前記第1変速軸が前記第1要素に接続される、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明の構成に加えて、
前記第1要素から伝達される動力と前記第3要素から伝達される動力を合成して前記駆動軸に伝達可能なトルク合成駆動において、
前記ロック機構で前記第3要素をロックして前記電動機の回転を停止させ、
前記内燃機関を駆動することにより、前記内燃機関の動力が前記第1及び第2要素を介して前記駆動軸に伝達される、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明の構成に加えて、
前記ロック機構はブレーキからなり、前記ブレーキはロック制御時に作動する、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明の構成に加えて、
前記ロック機構は、前記第3要素をロックして前記電動機の回転を停止させる状態と、前記第3要素の一方向の回転のみを許容し前記電動機の正転方向の回転のみを許容する状態と、前記第3要素の両方向の回転を許容し前記電動機の正転及び逆転方向の回転を許容する状態を切替可能なワンウェイクラッチ(例えば、後述の実施形態のワンウェイクラッチ61)からなり、
前記ワンウェイクラッチは、ロック制御時に前記第3要素をロックして前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加えて、
前記電動機に電力を供給する蓄電装置(例えば、後述の実施形態の蓄電装置82)を備え、
前記ロック機構は、前記蓄電装置のSOCが第1の所定値以下であり前記電動機を駆動できない場合、前記第3要素をロックし前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明の構成に加えて、
前記電動機に電力を供給する蓄電装置(例えば、後述の実施形態の蓄電装置82)を備え、
前記ロック機構は、前記蓄電装置のSOCが第2の所定値以上であり前記電動機を回生できない場合、前記第3要素をロックし前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項6又は7に記載の発明の構成に加えて、
駆動状態を予測する駆動状態予測装置をさらに備え、
前記ロック機構は、前記蓄電装置のSOCが前記第1の所定値以上又は第2の所定値以下にあるときには前記駆動状態予測装置の情報に応じて前記第3要素をロックし前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明の構成に加えて、
前記電動機に電力を供給する蓄電装置(例えば、後述の実施形態の蓄電装置82)と、
前記蓄電装置の温度を検出する温度検出装置(例えば、後述の実施形態の温度検出装置84)と、を備え、
前記ロック機構は、前記蓄電装置の温度が正常に出力できない第3の所定値以下の場合に、前記第3要素をロックし前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜9のいずれかに記載の発明の構成に加えて、
前記電動機を制御する制御部と、
前記電動機と前記蓄電装置を接続する配線と、を備え、
前記ロック機構は、前記電動機、前記蓄電装置、前記制御部と、前記配線の少なくとも1つに不具合がある場合に前記第3要素をロックし前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明の構成に加えて、
前記電動機、前記蓄電装置、前記制御部と、前記配線の少なくとも1つに不具合がある場合に、運転者に緊急走行であることを通知する通知手段を備える、
ことを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項2〜11のいずれかに記載の発明の構成に加えて、
前記第1及び第2断接手段は、発進クラッチである、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の動力出力装置によれば、第1〜第3要素が互いに差動回転する動力合成機構において、第1要素は2つの変速軸のうちのいずれか一方に接続され、第2要素は電動機に接続され、第3要素は電動機に接続され、第2要素は第1要素から伝達される動力と第3要素から伝達される動力を合成して駆動軸に伝達するので、内燃機関の動力と電動機の動力を合成して駆動軸に伝達することができる。
また、第3要素は電動機に接続されるとともに第3要素をロック可能なロック機構に接続されるので、電動機を駆動できない場合には、ロック機構により第3要素の回転を停止させて動力合成機構の減速比を上げることで、車両の始動トルクを確保し内燃機関の動力のみにより車両を発進させることができる。また、第3要素をロックすることで第3要素に接続された電動機の回転が停止し、不具合のある状態で電動機を強制的に回転させることに起因するさらなる故障を抑制することができる。
【0021】
請求項2の動力出力装置によれば、2つの変速軸がそれぞれ断接手段を介して内燃機関に接続されるので、2つの変速軸のいずれか一方に奇数段からなる変速段を設け、2つの変速軸の他方に偶数段からなる変速段を設けることによりツインクラッチ式変速機を構成することができる。これにより、クラッチを断接する時間の短縮を図ることができ変速ショックを抑制することができる。加えて、いずれかの変速軸に動力合成機構の第1要素を接続することができるので、ハイブリッド車両として設計の自由度を高くできる。
【0022】
請求項3の動力出力装置によれば、ロック機構により第3要素をロックして電動機の回転を停止させることで、内燃機関の動力が第1及び第2要素を介して駆動軸に伝達されるので、電動機や蓄電装置等の状態によらず十分な減速比が得られ内燃機関のみでも大きなトルクを得ることができる。
【0023】
請求項4の動力出力装置によれば、ロック機構をブレーキで構成することにより、電動機の回転を停止させる機構を簡易な構成で実現することができる。
【0024】
請求項5の動力出力装置によれば、ロック機構を第3要素をロックして電動機の回転を停止させる状態と、第3要素の一方向の回転のみを許容し電動機の正転方向の回転のみを許容する状態と、第3要素の両方向の回転を許容し電動機の正転及び逆転方向の回転を許容する状態を切替可能なワンウェイクラッチで構成することにより、電動機の回転を停止させる機構を実現することができる。これにより、ブレーキで構成する場合に比べて、電動機の正転方向の回転のみを許容する状態に設定することができ、電動機の逆転方向の回転を停止させたい場合にワンウェイクラッチにより機械的に停止させることができる。
【0025】
請求項6の動力出力装置によれば、蓄電装置のSOCが第1の所定値以下であり電動機を駆動できない場合に、ロック機構により第3要素をロックし電動機の回転を停止させて動力合成機構の減速比を上げることで、車両の始動トルクを確保し内燃機関の動力のみにより発進させることができる。また、走行中に蓄電装置のSOCが第1の所定値以下となり車両の走行状態により大きな駆動トルクが必要な場合にも、ロック機構により第3要素をロックし電動機の回転を停止させて動力合成機構の減速比を上げることで、大きな駆動トルクを得ることができる。
【0026】
請求項7の動力出力装置によれば、走行中に蓄電装置のSOCが第2の所定値以上となり車両の走行状態により電動機が回生せざるをえないが電動機を回生できない場合に、ロック機構により第3要素をロックし電動機の回転を停止させることにより、蓄電装置をこれ以上充電させる必要がない状態における電動機の連れまわりを防止することができる。
【0027】
請求項8の動力出力装置によれば、駆動状態予測装置によりカーナビゲーションの経路上の高低差を確認し、走行中において、蓄電装置のSOCが第1の所定値以下である場合には下り坂を認識してロック機構を解除することにより電動機で回生充電することができ、蓄電装置のSOCが第2の所定値以上である場合には下り坂を認識してロック機構を作動させることで電動機の連れまわりを防止することができる。このように駆動状態予測装置の情報に基づき予めロック機構の作動、解除時を認識することで電動機の駆動範囲を広くすることができる。
【0028】
請求項9の動力出力装置によれば、蓄電装置の温度が正常な出力が出せない第3の所定値以下の場合に、ロック機構により電動機の回転を停止させて動力合成機構の減速比を上げることで、車両の始動トルクを確保し内燃機関の動力のみにより車両を発進させることができる。
【0029】
請求項10の動力出力装置によれば、電動機、蓄電装置、制御部の故障や配線の断線により電動機が正常に作動しないとき、ロック機構により電動機の回転を停止させて動力合成機構の減速比を上げることで、車両の始動トルクを確保し内燃機関の動力のみにより車両を発進させることができる。
【0030】
請求項11の動力出力装置によれば、電動機、蓄電装置、制御部と、配線の少なくとも1つに不具合がある場合には、これを運転者に通知しサービスセンターへ誘導することにより緊急走行を短時間で終わらせることができる。
【0031】
請求項12の動力出力装置によれば、第1及び第2断接手段が発進クラッチであるので、ロック機構により電動機の回転を停止した状態であっても、クラッチ容量の大きい発進クラッチで発進時のショックを吸収することができるので、緊急時における内燃機関による発進を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る動力出力装置を概略的に示す図であり、図2のI−I線矢視図である。
【図2】図1の動力出力装置の伝達機構の関係を示す説明図である。
【図3】トルク合成モードの停車時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図4】トルク合成モードの加速時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図5】トルク合成モードの加速パターンを示す図であり、(a)はモータの回転数を固定した場合の速度線図であり、(b)はエンジンの回転数を固定した場合の速度線図である。
【図6】トルク合成モードの加速時の制御フローを示すフローチャートである。
【図7】(a)はトルク合成 Pre2モードにおける動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図であり、(b)は2ndモードにおける動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図8】2nd走行第1モードのアシスト時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図9】2nd走行第1モードの充電時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図10】2nd走行第2モードのアシスト時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図11】2nd走行第2モードの充電時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図12】(a)は2nd Pre3モードにおける動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図であり、(b)は3rd Pre2モードにおける動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図13】3rd走行第1モードのアシスト時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図14】3rd走行第1モードの充電時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図15】モータ走行第1モードにおける図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図16】モータ走行第1始動モードにおける図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図17】モータ走行第2始動モードにおける図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図18】停止中のエンジン始動時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図19】停止中の充電時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図20】モータ非駆動モードにおける図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図21】第1実施形態の動力出力装置の車両状態とクラッチ、変速用シフター、モータ、エンジンの状態をまとめた図である。
【図22】本発明の第2実施形態に係る動力出力装置を概略的に示す図であり、図23のXXII−XXII線矢視図である。
【図23】図22の動力出力装置の伝達機構の関係を示す説明図である。
【図24】2nd走行第3モードのアシスト時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図25】2nd走行第3モードの充電時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図26】(a)は3rd Pre4モードにおける動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図であり、(b)は4th Pre3モードにおける動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図27】4th走行第1モードのアシスト時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図28】4th走行第1モードの充電時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図29】4th走行第2モードのアシスト時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図30】4th走行第2モードの充電時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図31】4th走行第3モードのアシスト時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図32】4th走行第3モードの充電時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図33】(a)は4th Pre5モードにおける動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図であり、(b)は5th Pre4モードにおける動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図34】5th走行第1モードのアシスト時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図35】5th走行第1モードの充電時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図36】モータ走行第2モードにおける図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図37】第1後進モードのアシスト時における図であり、(a)は速度線図であり、(b)は動力出力装置のトルクの伝達状況を示す図である。
【図38】第2実施形態の動力出力装置の車両状態とクラッチ、変速用シフター、モータ、エンジンの状態をまとめた図である。
【図39】本発明の第3実施形態に係る動力出力装置を概略的に示す図である。
【図40】本発明の第4実施形態に係る動力出力装置を概略的に示す図である。
【図41】特許文献1に記載の動力出力装置の概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の各実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る動力出力装置1を概略的に示している。この動力出力装置1は、車両(図示せず)の駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWを駆動するためのものであり、駆動源である内燃機関(以下「エンジン」という)6と、電動機(以下「モータ」という)7と、動力を駆動輪DW,DWに伝達するための変速機20、動力合成機構30、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9とを備えている。
【0034】
エンジン6は、例えばガソリンエンジンであり、このエンジン6のクランク軸6aには、第1クラッチ41(第1断接手段)と第2クラッチ(第2断接手段)が接続されている。ここで第1クラッチ41及び第2クラッチ42はクラッチ容量の大きい発進クラッチで構成されている。
【0035】
モータ7は、3相ブラシレスDCモータであり3n個の電機子71aで構成されたステータ71と、このステータ71に対向するように配置されたロータ72とを有している。各電機子71aは、鉄芯71bと、この鉄芯71bに巻き回されたコイル71cで構成されており、不図示のケーシングに固定され、回転軸を中心に周方向にほぼ等間隔で並んでいる。3n個のコイル71cは、n組のU相、V相,W相の3相コイルを構成している。
【0036】
ロータ72は、回転軸を中心にほぼ等間隔で並んだn個の永久磁石72aを有しており、隣り合う各2つの永久磁石72aの極性は、互いに異なっている。各永久磁石72aは、軟磁性体(例えば鉄)で構成されたリング状の固定部72bを介して、後述する動力合成機構30のリングギヤ35の外周面に取り付けられている。この構成により、ロータ72は、リングギヤ35と一体に回転自在になっている。
【0037】
動力合成機構30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構31により構成されている。具体的には、サンギヤ32(第1要素、第3要素)と、このサンギヤ32と同軸上に配置され、かつ、このサンギヤ32の周囲を取り囲むように配置されたリングギヤ35(第1要素、第3要素)と、サンギヤ32とリングギヤ35に噛合されたプラネタリギヤ34と、このプラネタリギヤ34を自転可能、かつ、公転可能に支持するキャリア36(第2要素)とを有している。このようにして、サンギヤ32とリングギヤ35とキャリア36が、相互に差動回転自在に構成されている。
【0038】
遊星歯車機構31においては、サンギヤ32とリングギヤ35は互いに反対方向の反力を受けるため、エンジン6が駆動側となるときにはモータ7はエンジン6の回転方向とは反対側にモータ7を回転するように反力が作用し、モータ7が駆動側となるときにはエンジン6はモータ7の回転方向と反対側に回転するように反力が作用する。また、エンジン6とモータ7を共に駆動するときには、リングギヤ35から伝達される動力とサンギヤ32から伝達される動力とがキャリア36を介して合成される。
【0039】
また、リングギヤ35には、この動力出力装置1の少なくとも一部を収容するハウジング60に対しリングギヤ35をロック可能に構成されたワンウェイクラッチ61が接続されている。このワンウェイクラッチ61は電気駆動の切替手段を備え、切替手段を駆動することによりワンウェイクラッチ61は、リングギヤ35をロックしリングギヤ35の外周面に取り付けられたロータ72の回転を停止させるロック状態と、ワンウェイクラッチ61がリングギヤ35の一方向の回転のみを許容しロータ72の正転方向の回転のみを許容するワンウェイ状態と、空転してリングギヤ35の両方向の回転を許容しロータ72の正転及び逆転の両方向の回転を許容する空転状態の3つの状態をとりうるように構成されている。
【0040】
変速機20は、少なくとも2以上の変速機構と、前述した第1クラッチ41と第2クラッチ42にそれぞれ接続される2つの変速軸を備えた、いわゆるツインクラッチ式変速機である。なお、本実施形態の動力出力装置1は第2速用変速ギヤ対22と第2速用変速ギヤ対22より変速比の小さい第3速用変速ギヤ対23の2つの変速機構を備えた2段変速機である。
【0041】
より具体的に、変速機20は、同軸(回転軸線A1)上に配置された第1主軸11(第1変速軸)と、第2主軸12と、連結軸13と、回転軸線A1と平行に配置された回転軸線B1を中心として回転自在なカウンタ軸14と、回転軸線A1と平行に配置された回転軸線C1を中心として回転自在な第1中間軸15(中間軸)と、回転軸線A1と平行に配置された回転軸線D1を中心として回転自在な第2中間軸16(第2変速軸)と、を備えている。
【0042】
第1主軸11には、エンジン6側に第1クラッチ41が接続され、エンジン6側とは反対側に遊星歯車機構31のサンギヤ32が取り付けられ、第1クラッチ41によりクランク軸6aからサンギヤ32への動力伝達が断接可能に構成されている。
【0043】
第2主軸12は、第1主軸11より短く中空に構成されており、第1主軸11のエンジン6側の周囲を覆うように相対回転自在に配置され、不図示のケースシングに固定された軸受12aに支持されている。また、第2主軸12には、エンジン6側に第2クラッチ42が接続され、エンジン6側とは反対側にアイドル駆動ギヤ27aが取り付けられ、第2クラッチ42によりクランク軸6aからアイドル駆動ギヤ27aへの動力伝達が断接可能に構成されている。
【0044】
連結軸13は、第1主軸11より短く中空に構成されており、第1主軸11のエンジン6側とは反対側の周囲を覆うように相対回転自在に配置され、不図示のケーシングに固定された軸受13aに支持されている。また、連結軸13には、エンジン6側に第3速用駆動ギヤ23aが取り付けられ、軸受13aを挟んでエンジン6側とは反対側に遊星歯車機構31のキャリア36が取り付けられている。従って、プラネタリギヤ34の公転により連結軸13に取り付けられたキャリア36と第3速用駆動ギヤ23aが一体に回転するように構成されている。
【0045】
さらに、第1主軸11には、第1主軸11と連結軸13に取り付けられた第3速用駆動ギヤ23aとを連結又は開放する第1変速用シフター51が設けられており、第1変速用シフター51が第3速用接続位置でインギヤするときには、第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aが連結して一体に回転し、第1変速用シフター51がニュートラル位置にあるときには、第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aが開放され相対回転する。なお、第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aが一体に回転するとき、第1主軸11に取り付けられたサンギヤ32と第3速用駆動ギヤ23aに連結軸13で連結されたキャリア36が一体に回転するとともに、リングギヤ35も一体に回転し、遊星歯車機構31がロックして一体となる。
【0046】
カウンタ軸14は、両端部を不図示のケーシングに固定された軸受14a,14bにより回転自在に支持され、カウンタ軸14には連結軸13に取り付けられた第3速用駆動ギヤ23aと噛合する第3速用従動ギヤ23bと、差動ギヤ機構8と噛合するファイナルギヤ26aとが取り付けられている。このファイナルギヤ26aは、差動ギヤ機構8に接続され、差動ギヤ機構8は、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに連結されている。従って、第3速用従動ギヤ23bに伝達された動力はファイナルギヤ26aから駆動軸9,9へと出力され、動力出力装置1においてカウンタ軸14が出力軸として構成されている。なお、第3速用従動ギヤ23bは第3速用駆動ギヤ23aと共に第3速用ギヤ対23を構成している。
【0047】
第1中間軸15は、両端部を不図示のケーシングに固定された軸受15a,15bにより回転自在に支持され、第1中間軸15には第2主軸12に取り付けられたアイドル駆動ギヤ27aと噛合する第1アイドル従動ギヤ27bが取り付けられている。また、第1中間軸15には、第1中間軸15と相対回転可能な後進用駆動ギヤ28aが設けられており、後進用駆動ギヤ28aは、カウンタ軸14に取り付けられた第3速用従動ギヤ23bと噛合し、第3速用従動ギヤ23bと共に後進用ギヤ対28を構成している。さらに第1中間軸15には、第1中間軸15と後進用駆動ギヤ28aとを連結又は開放する後進用シフター53が設けられており、後進用シフター53が後進用接続位置でインギヤするときには、第1中間軸15に取り付けられた第1アイドル従動ギヤ27bと後進用駆動ギヤ28aとが一体に回転し、後進用シフター53がニュートラル位置にあるときには、第1アイドル従動ギヤ27bと後進用駆動ギヤ28aとが相対回転する。
【0048】
第2中間軸16は、両端部を不図示のケーシングに固定された軸受16a,16bにより回転自在に支持され、第2中間軸16には第1中間軸15に取り付けられた第1アイドル従動ギヤ27bと噛合する第2アイドル従動ギヤ27cが取り付けられている。なお、第2アイドル従動ギヤ27cは前述したアイドル駆動ギヤ27aと第1アイドル従動ギヤ27bとともにアイドルギヤ列27を構成している。また、第2中間軸16には、第2中間軸16と相対回転可能な第2速用駆動ギヤ22aが設けられており、第2速用駆動ギヤ22aは、カウンタ軸14に設けられた第3速用従動ギヤ23bと噛合し、第3速用従動ギヤ23bと共に第2速用ギヤ対22を構成する。さらに第2中間軸16には、第2中間軸16と第2速用駆動ギヤ22aとを連結又は開放する第2変速用シフター52が設けられており、第2変速用シフター52が第2速用接続位置でインギヤするときには、第2中間軸16に取り付けられた第2アイドル従動ギヤ27cと第2速用駆動ギヤ22aとが一体に回転し、第2変速用シフター52がニュートラル位置にあるときには、第2アイドル従動ギヤ27cと第2速用駆動ギヤ22aとが相対回転する。
【0049】
従って、変速機20は、2つの変速軸の一方の変速軸である第1主軸11周りに奇数段の変速段である第3速用駆動ギヤ23aが設けられ、2つの変速軸の他方の変速軸である第2中間軸16に偶数段の変速段である第2速用駆動ギヤ22aが設けられ、第1主軸11に動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31のサンギヤ32が取り付けられて構成されている。
【0050】
このように構成された動力出力装置1は、回転軸線A1に沿ってエンジン6とモータ7の間に変速機20が配置され、モータ7が動力合成機構30の外側を取り囲むように環状に構成されている。より具体的には、モータ7を構成するロータ72、又は、ステータ71、又は、ステータ71に巻き回されるコイル71c(渡り巻き線部)の一部又は全部が遊星歯車機構31と軸方向で重なって配置されている。
【0051】
なお、第1変速用シフター51、第2変速用シフター52、後進用シフター53は、例えば、ドグクラッチなどの噛み合いクラッチを用いることが可能であり、この実施例では、接続する軸同士又は接続する軸とギヤの回転数を一致させる同期機構(シンクロナイザー機構)を有するクラッチ機構を用いている。
【0052】
以上の構成により、エンジン6のクランク軸6aは、第1クラッチ41を接続し第1変速用シフター51を第3速用接続位置でインギヤすることにより、第1主軸11、第3速用ギヤ対23(第3速用駆動ギヤ23a、第3速用従動ギヤ23b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに連結されている。以下、上記の第1主軸11から駆動軸9,9までの一連の経路を、適宜、「第1伝達経路」という。
【0053】
また、エンジン6のクランク軸6aは、第2クラッチ42を接続し第2変速用シフター52を第2速用接続位置でインギヤすることにより、第2主軸12、アイドルギヤ列27(アイドル駆動ギヤ27a、第1アイドル従動ギヤ27b、第2アイドル従動ギヤ27c)、第2中間軸16、第2速用ギヤ対22(第2速用駆動ギヤ22a、第3速用従動ギヤ23b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに連結されている。以下、上記の第2主軸12から駆動軸9,9までの一連の経路を、適宜、「第2伝達経路」という。
【0054】
また、動力合成機構30のキャリア36は、連結軸13、第3速用ギヤ対23(第3速用駆動ギヤ23a、第3速用従動ギヤ23b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに連結されている。以下、上記のキャリア36から駆動軸9,9までの一連の経路を、適宜、「第3伝達経路」という。
【0055】
ここで、本発明の動力出力装置1は、第1クラッチ41を接続することによりサンギヤ32から伝達されたエンジン6の動力とモータ7の動力の合成動力によりキャリア36から第3伝達経路を介して駆動軸9,9に伝達される動力が発進ギヤ、すなわち第1速相当のトルクとなるように、動力合成機構30と第3伝達経路が構成されている。
【0056】
また、本実施形態の動力出力装置1は、モータ7との間で電力の授受をおこなう電力供給装置81が設けられている。この電力供給装置81は、二次電池などの蓄電装置82を有しており、蓄電装置82としてはバッテリ又はキャパシタを用いることができる。この蓄電装置82とモータ7とがモータ7を制御する不図示のインバータ(制御部)を介して接続され、蓄電装置82は蓄電装置82のSOCを検出するSOC検出装置83と蓄電装置82の温度を検出する温度検出装置84に接続されている。また、電力供給装置81は、蓄電装置82の他に、燃料電池システム(図示せず)を備えていてもよい。この燃料電池システムは、水素と酸素を反応させて起電力を得るシステムであり、発生した電力をモータに供給するか、又は蓄電装置に充電することができる。
【0057】
次に、車両の制御系統について説明すると、コントローラとしての電子制御装置85が設けられており、この電子制御装置85には、各種のセンサやスイッチなどの検知信号、例えば、加速要求、制動要求、エンジン回転数、モータ回転数、第1,第2主軸11、12の回転数、カウンタ軸14等の回転数などが入力される一方、この電子制御装置85からは、エンジン6を制御する信号、モータ7を制御する信号、電力供給装置81における発電状態・充電状態・放電状態などを示す信号、第1,第2変速シフター51、52、後進用シフター53を制御する信号、ワンウェイクラッチ61の切替手段を制御する信号などが出力される。また、この電子制御装置85は不図示の比較手段に接続され、電子制御装置85から出力される制御信号と電子制御装置85に入力される検知信号を比較し関連する機器、例えばモータ7、蓄電装置82、インバータの故障や、これらを接続する配線の断線等を認識可能に構成されている。
また、この車両には不図示の駆動状態予測装置が設けられており、駆動状態予測装置によりカーナビゲーションの経路上の高低差を予め確認することができる。
【0058】
このように構成された動力出力装置1は、図21に示すように、トルク合成駆動、通常走行、モータ走行、モータ走行中エンジン始動、パーキング、モータ非駆動走行の走行機能を有している。なお、トルク合成駆動とは第1クラッチ41のみを接続してエンジン6と遊星歯車機構31を接続した状態でいずれのギヤも入っていない状態(例え、第2変速用シフター52がインギヤしていても第2クラッチ42が切断されている状態を含む)をいい、第1速ギヤを用いずに第一速相当の駆動力で走行することをいう。
さらに、上述したワンウェイクラッチ61は、後述するモータ非駆動走行時にのみロック状態に設定され、その他の走行機能、例えばトルク合成駆動、通常走行、モータ走行、モータ走行中エンジン始動、パーキング時においては、ワンウェイ状態又は空転状態に設定されており、特に規定する場合を除き空転状態に設定されている。なお、図中、ワンウェイクラッチ61をロック状態に設定してモータ7の回転を停止させる場合を“ロックON”とし、ワンウェイクラッチ61をワンウェイ状態又は空転状態に設定してモータ7の少なくとも正転方向の回転を許容する状態を“ロックOFF”とした。
【0059】
先ず、動力出力装置1におけるトルク合成モードの停車中の状態について説明する。
図3(b)は、第1クラッチを接続した状態でエンジン6をアイドリングしている状態を示している。このとき、エンジン6のトルクは第1主軸11からサンギヤ32に伝達される。しかし、エンジン6のトルクが小さいためサンギヤ32のトルクによりプラネタリギヤ34は公転せずに自転し、リングギヤ35に伝達される。リングギヤ35はサンギヤ32の回転方向に対し反対方向に回転するため、ここでは逆転方向に回転しモータ7は回生する。従って、図3(a)の速度線図に示すように、サンギヤ32とリングギヤ35は公転が停止したキャリア36を中心に、サンギヤ32が正転方向に回転し、リングギヤ35は逆転方向に回転している。これにより、エンジン6のアイドリング中は、動力合成機構30としての遊星歯車機構31ですべりを吸収することができる。
【0060】
なお、図3(a)の速度線図は、モータ7の停止位置を0、右側を正転方向、左側を逆転方向とし、サンギヤ32を「S」、キャリア36を「C」、リングギヤ35を「R」でそれぞれ表している。このことは、後述する速度線図においても同様である。また、後述するトルクの伝達状況を示す図(例えば図4(b))では、ハッチング付の太い矢印はトルクの流れを表し、矢印中のハッチングはそれぞれの速度線図(例えば図4(a))のトルクを示す矢印のハッチングと対応している。また、モータ7の正転方向とは駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに前進方向のトルクを伝達する方向をいい、逆転方向とは駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに後進方向のトルクを伝達する方向をいう。
【0061】
次に動力出力装置1におけるトルク合成駆動の加速状態について説明する。
加速パターンとしては、(i)図4(a)に示すように、モータ7とエンジン6の回転数を共に上昇させるか、又は(ii)図5(a)に示すように、モータ7の回転数を変えないでエンジン6の回転数を上昇させるか、又は、(iii)図5(b)に示すように、エンジン6の回転数を変えないでモータ7の回転数を上昇させることにより行なわれる。なお、(i)の場合、車両の駆動力はエンジン6の動力とモータ7の動力の合成動力で決まり、(ii)の場合、車両の駆動力はエンジン6の動力で決まり、(iii)の場合、車両の駆動力はモータ7の動力で決まる。
【0062】
通常は(i)の加速状態が選択されるが、(ii)の加速状態を選択する場合としては、例えば蓄電装置82のSOCが少ない場合である。例えば坂道等で蓄電装置82のSOCが少なくなった場合等に、図5(a)のようにエンジントルクを増大させてモータ7の回転数を維持して回生させながら、駆動軸9,9に駆動力を伝達することができる。従って、このハイブリッド車両で蓄電装置82のSOCが少なくなった場合においてもモータ7を回生させて充電させながら低速走行を行うことができ、走行中に蓄電装置82のSOCが少なくなった場合に対応できる。
【0063】
一方、(iii)の加速状態を選択する場合としては、例えば蓄電装置82のSOCが多い場合等に設定される。蓄電装置82のSOCが多い場合には回生エネルギーをそれ以上充電することができないため、モータ7を用いて駆動することで蓄電装置82のSOCを減らして回生エネルギーの利用効率を向上させることができる。
なお、モータ7に対しエンジン6の回転数が高過ぎるとオーバーレブを誘発し、エンジン6に対しモータ7の回転数が高過ぎるとエンジンストールを誘発するため、エンジン6とモータ7のバランスを制御することが必要である。
【0064】
(i)の場合を例に、トルク合成モードにおける車両加速時の制御を説明すると、図4(a)示すように、エンジントルクとモータトルクを増大することで、サンギヤ32から伝達される正転方向のエンジントルクとリングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクがキャリア36で合成され、キャリア36にはエンジントルクとモータトルクを合成した正転方向のキャリアトルクが作用する。これにより、キャリア36はサンギヤ32廻りを公転し、このキャリアトルクが総駆動力となって、図4(b)示すように、第3伝達経路を介して駆動輪DW,DWに伝達され、車両を加速することができる。
【0065】
ここで、図4(a)及び図4(b)におけるエンジンとモータの制御フローについて図6を参照して説明する。
要求動力設定手段としての電力制御装置は、まず駆動軸9,9に伝達すべき要求動力を設定する(S1)。続いて、電力制御装置は、エンジン6の適正駆動領域でエンジン6を駆動し(S2)、モータ7の定格出力を超えるか否かを判断し(S3)、モータ7の定格出力を超える場合には、モータ7の定格出力で駆動するとともにエンジン6の回転数を制御する(S4)。一方、モータ7の定格出力を超えない場合には、モータ7の最高回転数を超えるか否かを判断する(S5)。その結果、モータ7の最高回転数を超えない場合には、エンジン6を適正駆動領域で駆動したままモータ7を駆動し(S6)、モータ7の最高回転数を超える場合には、モータ7の最高回転数で駆動するとともにエンジン6の回転数を制御する(S7)。なお、エンジン6の適正駆動領域とは、エンジン6の効率が著しく悪くならない領域をいう。
このようにエンジン6がエンジンストールが発生しないエンジンストール領域から最高回転の範囲内で駆動する、好ましくはエンジン6の適正駆動領域で駆動するとともに、要求動力と合成動力機構30で合成された合成動力を比較してモータ7の動力を制御するとともに、モータ7の定格出力と最高回転数を超えない範囲で駆動することにより、エンジン6とモータ7に不具合が生じるのを抑制することができる。
【0066】
次に、トルク合成モード走行から第2速走行にシフトアップする動力出力装置1の制御について説明する。
第1クラッチ41のみを接続した図4(b)のトルク合成モードでの加速状態から、図7(a)に示すように、第2変速用シフター52を第2速用接続位置でインギヤし、第2中間軸16と第2速用駆動ギヤ22aとを連結する(トルク合成 Pre2モード)。続いて、第1クラッチ41を切断し第2クラッチ42を接続することにより、図7(b)に示すように、エンジン6の動力は第2伝達経路を介して駆動軸9,9に伝達され、第2速走行が実現される(2ndモード)。
【0067】
続いて、この2ndモードで走行中に2つのモード(2nd走行第1モード、2nd走行第2モード)により、モータ7によるアシスト又は充電を行う場合について説明する。
2nd走行第1モードは、図8(b)に示すように、図7(b)の第2クラッチ42を接続した状態から、さらに第1クラッチ41を接続することにより実現される。これは、第1クラッチ41を接続することにより、第2速用ギヤ対22を介して走行する第2速走行において、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより回転するキャリア36の回転数に対し、第1クラッチ41を接続することでエンジン6に第1主軸11を介して連結されたサンギヤ32の回転数が必ず高くなることを利用して、強制的にエンジン6とモータ7にあるレシオを作り出すことを意味している。動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31の特性からキャリア36の回転数がサンギヤ32の回転数より低いと遊星歯車機構31の仮想支点Pは図8(a)において上方に位置し、リングギヤ35の回転数は必ずキャリア36の回転数よりも低くなる。
【0068】
このモードにおいてモータ7でアシストする場合、図8(a)及び図8(b)に示すように、モータ7から正転方向のモータトルクを作用させることにより、リングギヤ35から伝達されるモータトルクとサンギヤ32から伝達される正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達され、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより、このキャリアトルクが第3速用駆動ギヤ23aから第3速用従動ギヤ23bに3rdトルクとして伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が作用して第1主軸11に伝達されるので、エンジントルクからサンギヤ32における反力を差し引いたセカンダリトルクが第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第2速用ギヤ列22に2ndトルクとして伝達される。そして、カウンタ軸14、ここでは第3速用従動ギヤ23bにおいて3rdトルクと2ndトルクを足し合わせたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7でエンジン走行をアシストすることができる。
【0069】
このモードにおいてモータ7で充電する場合、図9(a)及び図9(b)に示すように、今度はモータ7を回生して負荷として利用することにより、リングギヤ35には回転方向と反対方向、すなわち逆転方向のモータトルクが作用する。これによりサンギヤ32にはプラネタリギヤ34を介して正転方向の反力が作用して第1主軸11に伝達されるため、エンジントルクとサンギヤ32の反力を足し合わせたセカンダリトルクが第2主軸12からアイドルギヤ列27を介して第2速用ギヤ対22に2ndトルクとして伝達される。また、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより、第3速用従動ギヤ23bにおいて、逆転方向のキャリアトルクが作用し、3rdトルクとしてキャリア36に伝達される。従って、カウンタ軸14、ここでは第3速用従動ギヤ23bにおいて2ndトルクから3rdトルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、車両を駆動しながらモータ7で充電することができる。
【0070】
続いて、2nd走行第2モードにおいて、モータ7によるアシスト又は充電を行う場合について説明する。
2nd走行第2モードは、図10(b)に示すように、図7(b)の第2クラッチ42を接続した状態から、第1変速用シフター51を第3速用接続位置でインギヤすることにより実現される。第1変速用シフター51を第3速用接続位置でインギヤすることで、第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとが連結して一体に回転し、必然的に第1主軸11に接続されたサンギヤ32と第3速用駆動ギヤ23aに連結軸13を介して接続されたキャリア36は一体に回転する。
【0071】
サンギヤ32とキャリア36が一体に回転することに伴い、リングギヤ35も一体に回転し、遊星歯車機構31がロックすることとなる。従って、第1変速用シフター51を第3速用接続位置に移動してインギヤすることは、強制的にエンジン6とモータ7との回転数を一致させる状態、すなわちレシオが1の状態を作り出すことを意味している。この場合、動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31の特性からサンギヤ32の回転数とキャリア36の回転数が等しいと遊星歯車機構31の仮想支点Pは図10(a)において無限遠方に位置することとなる。
【0072】
このモードにおいてモータ7でアシストする場合、図10(a)及び図10(b)に示すように、モータ7から正転方向のモータトルクを作用させることにより、リングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクとサンギヤ32から伝達される正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が作用し、第1変速用シフター51による第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとの連結によりキャリアトルクからサンギヤ32の反力が抜き取られる。そして、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bとの噛み合いによりキャリアトルクからサンギヤ32の反力が抜き取られた3rdトルクが第3速用従動ギヤ23bに伝達される。また、エンジントルクが第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第2速用ギヤ列22に2ndトルクとして伝達される。そして、カウンタ軸14、ここでは第3速用従動ギヤ23bにおいて3rdトルクと2ndトルクを足し合わせたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7でエンジン走行をアシストすることができる。なお、ここで3rdトルクはモータトルクに等しく、遊星歯車機構31をロックすることでモータトルクがそのままカウンタ軸14に伝達され、エンジントルクとモータトルクがそのまま駆動軸9,9に伝達されている。
【0073】
このモードにおいてモータ7で充電する場合、図11(a)及び図11(b)に示すように、今度はモータ7を回生して負荷として利用することにより、リングギヤ35には回転方向と反対方向、すなわち逆転方向のモータトルクが作用する。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは正転方向の反力が作用し、第1変速用シフター51による第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとの連結によりキャリアトルクからサンギヤ32の反力が抜き取られる。そして、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bとの噛み合いによりキャリアトルクからサンギヤ32の反力を差し引いたトルクが3rdトルクとして第3速用ギヤ対23からキャリア36に伝達される。また、エンジントルクは第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第2速用ギヤ列22に2ndトルクとして伝達される。従って、カウンタ軸14、ここでは第3速用従動ギヤ23bにおいて2ndトルクから3rdトルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、車両を駆動しながらモータ7で充電することができる。
【0074】
次に、第2速走行から第3速走行にシフトアップする制御について説明する。
図7(b)に示す2ndモードで走行中において、図12(a)に示すように、第1変速用シフター51を第3速用接続位置でインギヤし、第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとを連結する。(2nd Pre3モード)。続いて、第2クラッチ42を切断し第1クラッチ41を接続することにより、図12(b)に示すように、エンジン6のトルクは第1伝達経路を介して駆動輪DW,DWに伝達され、第3速走行が実現される(3rd Pre2モード)。
なお、第2変速用シフター52を第2速用接続位置でインギヤしておくと、第2中間軸16、第1中間軸15、第2主軸12を連れまわすため、第2変速用シフター52をニュートラル位置に移動させることが好ましい(3rdモード)。
【0075】
次に、第3速走行中にモータ7によるアシスト又は充電を行なう場合について説明する。以下、第2変速用シフター52をニュートラル位置にした状態(3rdモード)から説明する。なお、以下に示すモードを便宜上、3rd走行第1モードと呼ぶ。
この状態においては、遊星歯車機構31を一体に回転させて、強制的にエンジン6とモータ7との回転数を一致させる状態、すなわちレシオが1の状態が、第1変速用シフター51を第3速用接続位置でインギヤしたことで既に作り出されている。
【0076】
このモードにおいてモータ7でアシストする場合、図13(a)及び図13(b)に示すように、モータ7から正転方向のモータトルクを作用させることにより、リングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクとサンギヤ32からの正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に作用する。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が伝達され、第1主軸11に伝達される。従って、第1主軸11には、エンジントルクからサンギヤ32の反力を差し引いたトルクが伝達され、第1変速用シフター51による第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとの連結により、第1主軸11から第3速用ギヤ対23に3rdDogトルクとして伝達される。そして、第3速用駆動ギヤ23aにおいて3rdDogトルクとキャリアトルクが足し合わされ、足し合わされたトルクが総駆動力として第3速用従動ギヤ23b、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7でエンジン走行をアシストすることができる。
【0077】
このモードにおいてモータ7で充電する場合、図14(a)及び図14(b)に示すように、今度はモータ7を回生して負荷として利用することにより、リングギヤ35には回転方向と反対方向、すなわち逆転方向のモータトルクが作用する。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは正転方向の反力が作用し、第1主軸11に伝達される。従って、第1主軸11には、エンジントルクとサンギヤ32の反力が足し合わされたトルクが伝達され、第1変速用シフター51による第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとの連結により、第1主軸11から第3速用駆動ギヤ23aに3rdDogトルクとして伝達される。また、第3速用駆動ギヤ23aにおいて、3rdDogトルクから逆転方向のキャリアトルクが抜き取られる。従って、3rdDogトルクからキャリアトルクを差し引いたトルクが総駆動力として第3速用従動ギヤ23b、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、車両を駆動しながらモータ7で充電することができる。
【0078】
次に動力出力装置1におけるモータ走行について説明する。
なお、以下に示すモードを便宜上、モータ走行第1モードと呼ぶ。
モータ走行第1モードは、図15(b)に示すように、第1変速用シフター51を第3速用接続位置でインギヤするとともに第1及び第2クラッチ41、42を切断ことにより実現される。第1及び第2クラッチ11、12を切断することによりエンジン6との動力伝達は遮断される。また、第1変速用シフター51を第3速用接続位置に移動してインギヤすることで、上述したように遊星歯車機構31がロックし、強制的にエンジン6とモータ7との回転数を一致させる状態、すなわちレシオが1の状態が作り出される。
【0079】
この状態で、モータ7に正転方向のモータトルクを作用させることにより、モータ7の動力が遊星歯車機構31から第3速用ギヤ対23を介して駆動軸9,9に伝達される。より具体的には、リングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクとサンギヤ32からの正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が作用し、第1変速用シフター51による第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとの連結によりキャリアトルクからサンギヤ32の反力が抜き取られる。そして、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bとの噛み合いによりキャリアトルクからサンギヤ32の反力が抜き取られたトルクが総駆動力として、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7のトルクのみで車両を走行することができる。
【0080】
次に、動力出力装置1におけるモータ走行中エンジン始動について説明する。
車両がモータ走行中に、エンジン6を始動する場合として2つのモード(以下、モータ走行第1始動モード、モータ走行第2始動モードと呼ぶ。)により、エンジン6の始動を行なう場合について説明する。
モータ走行第1始動モードは、図16(b)に示すように、図15(b)に示すモータ走行中に第1クラッチ41を接続することにより実現される。第1変速用シフター51による第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとの連結により正転方向のキャリアトルクからサンギヤ32の逆転方向の反力が抜き取られるとともに、第1クラッチ41の接続により逆転方向の始動トルクが抜き取られる。従って、キャリアトルクからサンギヤ32の反力と始動トルクとを足し合わせた3rdDogトルクを差し引いたトルクが第3速用従動ギヤ23bに伝達され、総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。また、第1主軸11に伝達された始動トルクにより、第1主軸11がエンジン6のクランク軸6aを連れまわしてクランキングし、エンジン6を点火することができる。これによりモータ走行しながらエンジン6を始動させることができる。エンジン6の始動後は、第3速用シフター51をニュートラル位置に戻すことにより、トルク合成モードとなる。
【0081】
モータ走行第2始動モードは、図17(b)に示すように、図15(b)に示すモータ走行中に第2変速用シフター52を第2速用接続位置でインギヤするとともに第2クラッチ42を接続することにより実現される。第1変速用シフター51による第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとの連結により正転方向のキャリアトルクからサンギヤ32の逆転方向の反力が抜き取られたトルクが3rdトルクとして第3速用従動ギヤ23bに伝達される。また、第3速用従動ギヤ23bと第2速用駆動ギヤ23aとの噛み合いにより、第2速用駆動ギヤ23aには、逆転方向の始動トルクが作用する。従って、キャリアトルクからサンギヤ32の反力を差し引いた3rdトルクから始動トルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。また、第3速用従動ギヤ23bから第2速用ギヤ列22、アイドルギヤ列27、第2主軸12に伝達された始動トルクにより、第2主軸12がエンジン6のクランク軸6aを連れまわしてクランキングし、エンジン6を点火することができる。これによりモータ走行しながらエンジン6を始動させることができる。エンジン6の始動後は、第2速用シフター52をニュートラル位置に戻すとともに第2クラッチ42を切断し第1クラッチ41を接続することにより、トルク合成モードとなる。
【0082】
次に、車両の停止中、いわゆるパーキング中のエンジン始動について説明する。
車両の停止中にエンジン6を始動する場合には、まず第1クラッチ41を接続してエンジン6とモータ7を第1主軸11と動力合成機構30を介して接続するとともに、図18(a)に示すように、モータ7に逆転方向のモータトルクを作用させて逆転方向に回転駆動し、不図示のパーキング機構や車両走行安定装置(以下、VSAと呼ぶ。)などでファイナルギヤ26aから正転方向にロックトルクを作用させてキャリア36の回転を停止(ロック)させる。このとき、動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31の特性からサンギヤ32の回転数とキャリア36の回転数はキャリア36を中心に対角線上に位置することとなり、サンギヤ32はプラネタリギヤ34からの正転方向の反力を受けて正転方向に回転する。このサンギヤ32に作用する反力が図18(b)に示すように、サンギヤ32から、第1主軸11に伝達される。
【0083】
このサンギヤ32の反力によって、第1主軸11がエンジン6のクランク軸6aを連れまわしてクランキングし、エンジン6を点火することができる。
【0084】
次に、車両の停止中、いわゆるパーキング中の充電について説明する。
停止中にエンジン始動する図18(b)の状態から、エンジン6を始動した後、エンジン6のトルクを増大して不図示のパーキング機構やVSAなどでファイナルギヤ26aから逆転方向のロックトルクを作用させて、キャリア36の回転を停止させることにより、図19(b)に示すように、エンジントルクがサンギヤ32からリングギヤ35を介してモータ7に伝達される。このとき、モータ7を回生させて充電することができる。
【0085】
次に、動力出力装置1における後進走行について説明する。
車両の後進には、エンジン6のトルクのみを用いる場合として、後進用シフター53を後進用接続位置でインギヤして第2クラッチ42を接続することにより実現される。これにより、エンジン6のトルクが、第2主軸12、アイドル駆動ギヤ27a、第1アイドル従動ギヤ27b、後進用駆動ギヤ28aと第3速用従動ギヤ23bからなる後進用ギヤ列28、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達され、後進走行することができる。
【0086】
また、モータ走行により後進する場合として、第1及び第2クラッチ41、42を切断した状態で、第1変速用シフター51を第3速用接続位置でインギヤしてモータ7を逆転方向に駆動することにより実現される。これにより、逆転方向のモータトルクが、そのまま第3速用従動ギヤ23b、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達され、後進走行することができる。
【0087】
このように構成された動力出力装置1を備えた車両は、モータ走行第1モードで発進し、モータ走行第1始動モード又はモータ走行第2始動モードによりエンジン6を点火して、エンジン6の点火後、トルク合成モードによりモータ7とエンジン6の合成トルクにより加速されるか、又は、モータ走行第1始動モード又はモータ走行第2始動モードによりエンジン6を点火後、トルク合成モードによりモータ7とエンジン6の合成トルクにより発進・加速され、そして、車速と必要トルクに応じて第2速又は第3速走行がなされる。
しかしながら、モータ7に不具合がある場合や蓄電装置82のSOCに応じて以下に説明するモータ非駆動走行がなされる。
【0088】
モータ非駆動走行とは、モータ7の駆動ができないためモータ走行及びトルク合成駆動で発進・加速ができない場合、及びトルク合成モードで走行中に蓄電装置82のSOCによりモータ7の駆動又は回生ができなくなった場合における走行機能である。
【0089】
モータ7の駆動ができないため発進・加速ができない場合を例示すると、蓄電装置82のSOCが走行限界値(第1の所定値)以下である場合、蓄電装置82の温度が正常に出力できない臨界温度(第3の所定値)以下の場合、モータ7、蓄電装置82、インバータ、モータ7と蓄電装置82を接続する不図示の配線の少なくとも1つに不具体がある場合、又は、インバータが正常に出力できない温度以上の場合等があげられる。
【0090】
モータ非駆動走行は、図20(a)及び(b)に示すように、第1クラッチ41を接続するとともに、ロック制御により切替手段でワンウェイクラッチ61をロック状態にしてリングギヤ35をロックし、モータ7のロータ72の回転を停止させることにより行なわれる。即ち、トルク合成モードでロック制御によりリングギヤ35をロックした状態である。そして、エンジン6を駆動することで、エンジン6のトルクは、第1主軸11からサンギヤ32に伝達され、プラネタリギヤ34が固定されたリングギヤ35とサンギヤ32間で自転しながら公転することにより、第3伝達経路を介して駆動軸9、9に伝達される。このようにモータ非駆動走行においてはロック制御によりリングギヤ35をロックすることにより、動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31の減速比を上げることで車両の始動トルクを確保し、車両を発進させることができる。即ち、本来ならば動力合成機構30で合成されたエンジントルクとモータトルクの合成トルクにより得られる始動トルクを、リングギヤ35をロックして動力合成機構30を純粋な減速機として機能させることでエンジントルクのみで賄うことができる。
【0091】
より具体的に説明すると、SOC検出装置83により検出された蓄電装置82のSOCが、モータ7を駆動することができる下限値である走行限界値以下である場合には、モータ7を駆動することができないためロック制御によりモータ非駆動走行がなされる。モータ非駆動走行により車両の発進・加速がなされた後は、シフトアップして上述した通常走行における2ndモード(2nd走行第1モード、2nd走行第2モード)等で走行し、その走行中に、非ロック制御をしてモータ7を回生することで、蓄電装置82のSOCを増加させることができる。
【0092】
また、温度検出装置84により検出される蓄電装置82の温度が、蓄電装置82が正常な出力を出せずモータ7を適切に駆動することができない臨界温度以下である場合には、モータ7を適切に駆動することができないためロック制御によりモータ非駆動走行がなされる。そして、エンジン6の排熱や空調などにより蓄電装置82の温度が臨界温度より高くなった場合に非ロック制御を行うことで、エンジン6とモータ7でトルク合成してトルク合成駆動を行うことができる。
【0093】
さらに、電子制御装置85から出力される制御信号と電子制御装置85に入力される検知信号を比較する不図示の比較手段によりモータ7、蓄電装置82、インバータの故障や断線が認識された場合、ロック制御によりモータ非駆動走行がなされる。これにより、動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31の減速比を上げることで車両の始動トルクを確保し、車両を発進させることができるとともに、不具合のある状態でモータ7を強制的に回転させることに起因するさらなる更なる故障を回避することができる。このとき、運転者にはカーナビゲーションや他の表示装置により緊急走行であることを通知し、サービスセンターへ誘導することで、他の機器の故障を抑制し緊急走行を短時間で終わらせることができる。
【0094】
一方、トルク合成モードで走行中に蓄電装置82のSOCによりモータ7の駆動又は回生ができなくなった場合とは、トルク合成モードで走行中に蓄電装置82のSOCが走行限界値以下となり車両の走行状態により大きな駆動トルクが必要な場合(例えば、車両が上り坂を走行する場合等)や、蓄電装置82のSOCが回生限界値以上となり車両の走行状態によりモータ7が回生せざるをえないがモータ7を回生できない場合(例えば、車両が下り坂を走行する場合等)が挙げられる。
【0095】
より具体的に説明すると、トルク合成モードで走行中にSOC検出装置83により検出された蓄電装置82のSOCが、走行限界値以下となり、且つ、駆動状態予測装置によりカーナビゲーションの経路上の高低差から車両が上り坂に進入するとき、ロック制御によりモータ非駆動走行がなされる。車両が上り坂に進入するときにはより大きなトルクが必要となるものの蓄電装置82のSOCが低くモータ7を駆動できない場合には、ロック制御によりリングギヤ35をロックすることにより、動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31の減速比を上げて必要なトルクを得ることができ、車両が上り坂を走行することができる。そして、車両が平坦路や下り坂を走行する際に、非ロック制御をしてモータ7を回生することで、蓄電装置82のSOCを増加させることができる。
【0096】
また、トルク合成モードで走行中にSOC検出装置83により検出された蓄電装置82のSOCが、回生限界値以上となり、且つ、駆動状態予測装置によりカーナビゲーションの経路上の高低差から車両が下り坂に進入するとき、ロック制御によりモータ非駆動走行がなされる。これによりトルク合成モードで走行中に蓄電装置82が過充電状態となった場合にモータ7の連れまわりを防止することができる。そして、下り坂から平坦路又は上り坂に進入する際には、非ロック制御により積極的にモータ7を使用することで蓄電装置82のSOCを低下させることができる。
なお、このとき、非ロック制御によりワンウェイクラッチ61をワンウェイ状態に切り替えておけばモータ7の逆転方向の回転を規制することができるので、図3に示すアイドリング中及び図4(a)に示すトルク合成駆動の加速時においてモータ7の回生を機械的に停止することができる。
【0097】
ここで、走行限界値、回生限界値、臨界温度はモータや蓄電装置の仕様に応じて適宜設定することができる。
【0098】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る動力出力装置1Aについて、図22〜図38を参照して説明する。なお、第2実施形態の動力出力装置1Aは、変速機20Aが第3速用変速ギヤ対23より変速比の小さい第4速用ギヤ対24と、第4速用ギヤ対24より変速比の小さい第5速用ギヤ対25を備えている点を除き、第1実施形態の動力出力装置1と同様の構成を有する。このため、第1実施形態の動力出力装置1と同一又は同等部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0099】
図22は、本発明の第2実施形態に係る動力出力装置1Aを概略的に示している。
第2実施形態の動力出力装置1Aにおける変速機20Aにおいて、第2中間軸16には第2速用駆動ギヤ22aと第2アイドル従動ギヤ27cとの間に、第2中間軸16と相対回転可能な第4速用駆動ギヤ24aが設けられている。また、第2中間軸16に設けられた第2中間軸16と第2速用駆動ギヤ22aとを連結又は開放する第2変速用シフター52は、さらに第2中間軸16と第4速用駆動ギヤ24aとを連結又は開放するように構成され、第2速用接続位置、ニュートラル位置、第4速用接続位置を移動可能に構成されている。従って、第2変速用シフター52が第2速用接続位置でインギヤするときには、第2中間軸16に取り付けられた第2アイドル従動ギヤ27cと第2速用駆動ギヤ22aとが一体に回転し、第2変速用シフター52が第4速用接続位置でインギヤするときには、第2中間軸16に取り付けられた第2アイドル従動ギヤ27cと第4速用駆動ギヤ24aとが一体に回転し、第2変速用シフター52がニュートラル位置にあるときには、第2アイドル従動ギヤ27cは第2速用駆動ギヤ22aと第4速用駆動ギヤ24aに対し相対回転する。
【0100】
また、第1主軸11には、連結軸13に取り付けられた第3速用駆動ギヤ23aと第2主軸12に取り付けられたアイドル駆動ギヤ27aとの間に、第1主軸11と相対回転可能な第5速用駆動ギヤ25aが設けられている。また、第1主軸11に設けられた第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとを連結又は開放する第1変速用シフター51は、さらに第1主軸11と第5速用駆動ギヤ25aとを連結又は開放するように構成され、第3速用接続位置、ニュートラル位置、第5速用接続位置を移動可能に構成されている。従って、第1変速用シフター51が第3速用接続位置でインギヤするときには、第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aが一体に回転し、第1変速用シフター51が第5速用接続位置でインギヤするときには、第1主軸11と第5速用駆動ギヤ25aが一体に回転し、第1変速用シフター51がニュートラル位置にあるときには、第1主軸11は第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aに対し相対回転する。
【0101】
また、カウンタ軸14には、第3速用従動ギヤ23bとファイナルギヤ26aとの間に第4速用従動ギヤ24bが取り付けられ、第4速用従動ギヤ24bは、第2中間軸16に設けられた第4速用駆動ギヤ24aと第1主軸11に設けられた第5速用駆動ギヤ25aと噛合するように構成される。第4速用従動ギヤ24bは、第4速用駆動ギヤ24aと共に第4速用ギヤ対24を構成するとともに、第5速用駆動ギヤ25aと共に第5速用ギヤ対25を構成する。
【0102】
従って、変速機20Aは、2つの変速軸の一方の変速軸である第1主軸11周りに奇数段の変速段である第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aが設けられ、2つの変速軸の他方の変速軸である第2中間軸16に偶数段の変速段である第2速用駆動ギヤ22aと第4速用駆動ギヤ24aが設けられ、第1主軸11に動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31のサンギヤ32が取り付けられて構成されている。
【0103】
以上の構成により、エンジン6のクランク軸6aは、第2クラッチ42を接続し第2変速用シフター52を第4速用接続位置でインギヤすることにより、第2主軸12、アイドルギヤ列27(アイドル駆動ギヤ27a、第1アイドル従動ギヤ27b、第2アイドル従動ギヤ27c)、第2中間軸16、第4速用ギヤ対24(第4速用駆動ギヤ24a、第4速用従動ギヤ24b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに連結されている。以下、上記の第2主軸12から駆動軸9,9までの一連の構成要素を、適宜、「第4伝達経路」という。
【0104】
また、エンジン6のクランク軸6aは、第1クラッチ41を接続し第1変速用シフター51を第5速用接続位置でインギヤすることにより、第1主軸11、第5速用ギヤ対25(第5速用駆動ギヤ25a、第4速用従動ギヤ24b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに連結されている。以下、上記の第1主軸11から駆動軸9,9までの一連の構成要素を、適宜、「第5伝達経路」という。このように本実施形態の動力出力装置1Aは、第1実施形態の動力出力装置1の第1〜第3伝達経路に加えて、第4伝達経路と第5伝達経路とを有する。
【0105】
次に、このように構成された動力出力装置1Aの制御について説明する。
この動力出力装置1Aにおいてトルク合成駆動(トルク合成モード、トルク合成 Pre2モード)について第1実施形態の動力出力装置1と同様の制御によりなされるため説明を省略する。なお、通常走行、モータ走行、モータ走行エンジン始動、後進走行、モータ非駆動走行も第1実施形態の動力出力装置1と同様の制御によりなされるため、ここでは第4速用ギヤ対24と第5速用ギヤ対25を備えることにより可能となる走行モードについてのみ説明する。
この動力出力装置1Aにおいては、第2速走行におけるモータ7によるアシスト、充電パターンとして、2nd走行第1モード、2nd走行第2モードに加えて別の2nd走行第3モードを備える。
【0106】
2nd走行第3モードは、図24(b)に示すように、第2クラッチ42を接続した2ndモードから、さらに第1変速用シフター51を第5速用接続位置に移動してインギヤすることにより実現される。これは第1変速用シフター51を第5速用接続位置に移動してインギヤすることで、カウンタ軸14に第3速用ギヤ対23を介して接続されたキャリア36の回転数に対し、カウンタ軸14に第5速用ギヤ対25を介して接続されたサンギヤ32の回転数が必ず低くなることを利用して強制的にエンジン6とモータ7にあるレシオを作り出すことを意味している。動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31の特性からキャリア36の回転数がサンギヤ32の回転数より高いと遊星歯車機構31の仮想支点Pは図24(a)において下方に位置し、リングギヤ35の回転数は必ずキャリア36の回転数よりも高くなる。
【0107】
このモードにおいてモータ7でアシストする場合、図24(a)及び図24(b)に示すように、モータ7から正転方向のモータトルクを作用させることにより、リングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクとサンギヤ32から伝達される正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達され、3rdトルクとして第3速用ギヤ対23に伝達される。また、エンジントルクは第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第2速用ギヤ列22に2ndトルクとして伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が作用し、第5速用駆動ギヤ25aと第4速用従動ギヤ24bの噛み合いにより、第4速用従動ギヤ24aに5thトルクとして伝達される。従って、カウンタ軸14において3rdトルクと2ndトルクを足し合わせたトルクから5thトルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7でエンジン走行をアシストすることができる。
【0108】
このモードにおいてモータ7で充電する場合、図25(a)及び図25(b)に示すように、今度はモータ7を回生して負荷として利用することにより、リングギヤ35には回転方向と反対方向、すなわち逆転方向のモータトルクが作用する。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは正転方向の反力が作用し、第5速用駆動ギヤ25aと第4速用従動ギヤ24aの噛み合いにより第4速用従動ギヤ24aに5thトルクとして伝達される。また、エンジントルクは第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第2速用ギヤ列22に2ndトルクとして伝達される。また、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより、第3速用従動ギヤ23bにおいて、逆転方向のキャリアトルクが3rdトルクとしてキャリア36に伝達される。従って、カウンタ軸14において、2ndトルクと5thトルクを足し合わせて3rdトルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、車両を駆動しながらモータ7で充電することができる。
【0109】
次に、第3速走行から第4速走行にシフトアップする制御について説明する。
第1クラッチ41が接続され第1変速用シフター51が第3速用接続位置でインギヤした3rdモードでの走行中において、図26(a)に示すように、第2変速用シフター52を第4速用接続位置でインギヤして、第2中間軸16と第4速用駆動ギヤ24aとを連結する(3rd Pre4モード)。続いて、第1クラッチ41を切断し第2クラッチ42を接続することにより、図26(b)に示すように、エンジン6のトルクは第4伝達経路を介して駆動輪DW,DWに伝達される(4th Pre3モード)。
【0110】
次に、第4速走行中にモータ7によるアシスト又は充電を行なう場合について説明する。以下、4th Pre3モードから第1変速用シフター51をニュートラル位置にした状態(4thモード)から説明する。
この4thモードで走行中に3つのモード(4th走行第1モード、4th走行第2モード、4th走行第3モード)により、モータ7によるアシスト又は充電を行う場合について説明する。
【0111】
4th走行第1モードは、図27(b)に示すように、第2クラッチ42を接続した4thモードから、さらに第1クラッチ41を接続することにより実現される。これは、第1クラッチ41を接続することにより、第4速用ギヤ対24を介して走行する第4速走行において、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより回転するキャリア36の回転数に対し、第1クラッチ41を接続することでエンジン6に第1主軸11を介して連結されたサンギヤ32の回転数が必ず低くなることを利用して、強制的にエンジン6とモータ7にあるレシオを作り出すことを意味している。動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31の特性からキャリア36の回転数がサンギヤ32の回転数より高いと遊星歯車機構31の仮想支点Pは図27(a)において下方に位置し、リングギヤ35の回転数は必ずキャリア36の回転数よりも高くなる。
【0112】
このモードにおいてモータ7でアシストする場合、図27(a)及び図27(b)に示すように、モータ7から正転方向のモータトルクを作用させることにより、リングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクとサンギヤ32から伝達される正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達され、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いによりキャリアトルクが第3速用駆動ギヤ23aから第3速用従動ギヤ23bに3rdトルクとして伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が第1主軸11に作用するので、エンジントルクからサンギヤ32における反力を差し引いたセカンダリトルクが第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第4速用ギヤ列24に4thトルクとして伝達される。そして、カウンタ軸14において4thトルクと3rdトルクを足し合わせたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7でエンジン走行をアシストすることができる。
【0113】
このモードにおいてモータ7で充電する場合、図28(a)及び図28(b)に示すように、今度はモータ7を回生して負荷として利用することにより、リングギヤ35には回転方向と反対方向、すなわち逆転方向のモータトルクが作用する。これによりサンギヤ32にはプラネタリギヤ34を介して正転方向の反力が作用して第1主軸11に伝達されるため、エンジントルクとサンギヤ32の反力を足し合わせたセカンダリトルクが第2主軸12からアイドルギヤ列27を介して第4速用ギヤ対24に伝達される。また、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより、第3速用従動ギヤ23bには逆転方向のキャリアトルクが作用し3rdトルクとしてキャリア36へ伝達される。従って、カウンタ軸14においてセカンダリトルクから3rdトルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、車両を駆動しながらモータ7で充電することができる。
【0114】
続いて、4th走行第2モードにおいて、モータ7によるアシスト又は充電を行う場合について説明する。
4th走行第2モードは、図29(b)に示すように、第2クラッチ42を接続した4thモードから、第1変速用シフター51を第3速用接続位置でインギヤすることにより実現される。第1変速用シフター51を第3速用接続位置に移動してインギヤすることで、上述したように遊星歯車機構31がロックすることとなる。この場合、動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31の特性からサンギヤ32の回転数とキャリア36の回転数が等しいと遊星歯車機構31の仮想支点Pは図29(a)において無限遠方に位置することとなる。
【0115】
このモードにおいてモータ7でアシストする場合、図29(a)及び図29(b)に示すように、モータ7から正転方向のモータトルクを作用させることにより、リングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクとサンギヤ32から伝達される正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が作用し、第1変速用シフター51による第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとの連結によりキャリアトルクからサンギヤ32の反力が抜き取られる。そして、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bとの噛み合いによりキャリアトルクからサンギヤ32の反力が抜き取られた3rdトルクが第3速用従動ギヤ23bに伝達される。また、エンジントルクが第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第4速用ギヤ列24に4thトルクとして伝達される。そして、カウンタ軸14において3rdトルクと4thトルクを足し合わせたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7でエンジン走行をアシストすることができる。
【0116】
このモードにおいてモータ7で充電する場合、図30(a)及び図30(b)に示すように、今度はモータ7を回生して負荷として利用することにより、リングギヤ35には回転方向と反対方向、すなわち逆転方向のモータトルクが作用する。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは正転方向の反力が作用し、第1変速用シフター51による第1主軸11と第3速用駆動ギヤ23aとの連結によりキャリアトルクからサンギヤ32の反力が抜き取られる。そして、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bとの噛み合いによりキャリアトルクからサンギヤ32の反力を差し引いたトルクが3rdトルクとして第3速用駆動ギヤ23aに作用する。また、エンジントルクは第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第4速用ギヤ列24に4thトルクとして伝達される。従って、カウンタ軸14において4thトルクから3rdトルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、車両を駆動しながらモータ7で充電することができる。
【0117】
続いて、4th走行第3モードにおいて、モータ7によるアシスト又は充電を行う場合について説明する。
4th走行第3モードは、図31(b)に示すように、第2クラッチ42を接続した4thモードから、さらに第1変速用シフター51を第5速用接続位置でインギヤすることにより実現される。これは第1変速用シフター51を第5速用接続位置に移動してインギヤすることで、上述したようにキャリア36の回転数に対し、サンギヤ32の回転数が必ず低くなることを利用して強制的にエンジン6とモータ7にあるレシオを作り出している。
【0118】
このモードにおいてモータ7でアシストする場合、図31(a)及び図31(b)に示すように、モータ7から正転方向のモータトルクを作用させることにより、リングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクとサンギヤ32から伝達される正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達され、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bとの噛み合いにより3rdトルクとして第3速用ギヤ対23に伝達される。また、エンジントルクは第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第4速用ギヤ列24に4thトルクとして伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が作用し、第5速用駆動ギヤ25aと第4速用従動ギヤ24bの噛み合いにより、5thトルクとして第4速用従動ギヤ24bに伝達される。従って、カウンタ軸14において3rdトルクと4thトルクを足し合わせてたトルクから5thトルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7でエンジン走行をアシストすることができる。
【0119】
このモードにおいてモータ7で充電する場合、図32(a)及び図32(b)に示すように、今度はモータ7を回生して負荷として利用することにより、リングギヤ35には回転方向と反対方向、すなわち逆転方向のモータトルクが作用する。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは正転方向の反力が作用し、第5速用駆動ギヤ25aと第4速用従動ギヤ24aの噛み合いにより第4速用従動ギヤ24bに5thトルクとして伝達される。また、エンジントルクは第2主軸12から、アイドルギヤ列27を介して第4速用ギヤ列24に4thトルクとして伝達される。また、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより、第3速用従動ギヤ23bにおいて、逆転方向のキャリアトルクが3rdトルクとしてキャリア36に伝達される。従って、カウンタ軸14において、4thトルクと5thを足し合わせたトルクから3rdを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、車両を駆動しながらモータ7で充電することができる。
【0120】
次に、第4速走行から第5速走行にシフトアップする制御について説明する。
第2クラッチ42が接続され第2変速用シフター52が第4速用接続位置でインギヤした4thモードで走行中において、図33(a)に示すように、第1変速用シフター51を第5速用接続位置でインギヤして、第1主軸11と第5速用駆動ギヤ25aとを連結する(4th Pre5モード)。続いて、第2クラッチ42を切断し第1クラッチ41を接続することにより、図33(b)に示すように、エンジントルクは第5伝達経路を介して駆動輪DW,DWに伝達される(5th Pre4モード)。
なお、第2変速用シフター52を第4速用接続位置でインギヤしておくと、第2中間軸16、第1中間軸15、第2主軸12を連れまわすため、第2変速用シフター52をニュートラル位置に移動させることが好ましい(5thモード)。
【0121】
次に、第5速走行中にモータ7によるアシスト又は充電を行なう場合について説明する。以下、第1変速用シフター51をニュートラル位置にした状態(5thモード)から説明する。なお、以下に示すモードを便宜上、5th走行第1モードと呼ぶ。
この状態においては、第5速用ギヤ対25を介して走行する第5速走行において、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより回転するキャリア36の回転数に対し、第5速用ギヤ対25を介して連結されたサンギヤ32の回転数が必ず低くなることを利用して、強制的にエンジン6とモータ7にあるレシオを作り出す状態が、第1変速用シフター51を第5速用接続位置に移動してインギヤすることで既に作り出されている。
【0122】
このモードにおいてモータ7でアシストする場合、図34(a)及び図34(b)に示すように、モータ7から正転方向のモータトルクを作用させることにより、リングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクとサンギヤ32から伝達される正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達され、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより、3rdトルクとして第3速用従動ギヤ23bに伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が作用し、エンジントルクからサンギヤ32の反力を差し引いたトルクが第1主軸11から第5速用ギヤ対25に5thトルクとして伝達される。従って、カウンタ軸14において3rdトルクと5thトルクを足し合わせたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7でエンジン走行をアシストすることができる。
【0123】
このモードにおいてモータ7で充電する場合、図35(a)及び図35(b)に示すように、今度はモータ7を回生して負荷として利用することにより、リングギヤ35には回転方向と反対方向、すなわち逆転方向のモータトルクが作用する。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは正転方向の反力が作用し、エンジントルクとサンギヤ32の反力を足し合わせたトルクが第5速用ギヤ対25に5thトルクとして伝達される。また、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bの噛み合いにより、第3速用従動ギヤ23bには、逆転方向のキャリアトルクが3rdトルクとして伝達される。従って、カウンタ軸14において、5thトルクから3rdトルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、車両を駆動しながらモータ7で充電することができる。
【0124】
また、この動力出力装置1Aにおいては、モータ走行におけるモータ7によるアシスト、充電するモードとして、モータ走行第1モードに加えて別のモータ走行第2モードを備える。
モータ走行第2モードは、図36(b)に示すように、第1及び第2クラッチ11、12を切断し、第1変速用シフター51を第5速用接続位置に移動してインギヤすることにより実現される。第1変速用シフター51を第5速用接続位置に移動してインギヤすることで、上述したようにキャリア36の回転数に対し、サンギヤ32の回転数が必ず高くなることを利用して強制的にエンジン6とモータ7にあるレシオを作り出している。
【0125】
この状態で、モータ7に正転方向のモータトルクを作用させることにより、図36(b)に示すように、リングギヤ35から伝達される正転方向のモータトルクとサンギヤ32から伝達される正転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達され、第3速用駆動ギヤ23aと第3速用従動ギヤ23bとの噛み合いにより、3rdトルクとして第3速用ギヤ対23に伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは逆転方向の反力が作用し、第5速用駆動ギヤ25aと第4速用従動ギヤ24bの噛み合いにより、第4速用従動ギヤ24bには5thトルクが作用する。従って、カウンタ軸14において3rdトルクから5thトルクを差し引いたトルクが総駆動力として、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達される。その結果、モータ7のトルクのみで車両を走行することができる。
【0126】
また、この動力出力装置1Aにおいては、後進走行においてモータ7によるアシスト、充電を行うことができる。なお、以下に示すモードを便宜上、後進走行第1モードと呼ぶ。
後進走行第1モードは、図37(a)及び図37(b)に示すように、後進用シフター53を後進用接続位置でインギヤして第2クラッチ42を接続するとともに、モータ7に逆転方向のトルクを作用させることにより実現される。これにより、エンジントルクは、第2主軸12、アイドル駆動ギヤ27a、第1アイドル従動ギヤ27b、後進用駆動ギヤ28a、第3速用従動ギヤ23bに伝達される。一方、リングギヤ35から伝達される逆転方向のモータトルクとサンギヤ32から伝達される逆転方向のトルクの合成トルクがキャリアトルクとしてキャリア36に伝達され、3rdトルクとして第3速用ギヤ対23に伝達される。また、サンギヤ32にはプラネタリギヤ34との噛み合いによりモータトルクとは反対方向、ここでは正転方向の反力が作用し、第5速用駆動ギヤ25aと第4速用従動ギヤ24bの噛み合いにより、第4速用従動ギヤ24bに5thトルクに伝達される。従って、カウンタ軸14においてエンジントルクと3rdトルクを足し合わせたトルクから5thトルクを差し引いたトルクが総駆動力としてファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して駆動輪DW,DWに伝達され、モータ7でアシストしながら車両を後進させることができる。
【0127】
このように構成された本実施形態1、2の動力出力装置1、1Aによれば、サンギヤ32が2つの変速軸の一方である第1主軸11に接続され、キャリア36は駆動軸9,9に接続され、リングギヤ35がモータ7に接続されるので、キャリア36はサンギヤ32から伝達されるトルクとリングギヤ35から伝達されるトルクを合成して駆動軸9,9に伝達することができる。従って、エンジン6のトルクとモータ7のトルクを合成して駆動軸9,9に伝達することができ、より大きな駆動力を駆動軸9,9に伝達することができる。
【0128】
また、動力出力装置1、1Aによれば、第1主軸11と第2中間軸16の2つの変速軸を備えているので、ハイブリッド車両として設計の自由度を高くできる。また、第1主軸11は第1クラッチ41を介してエンジン6に接続され、第2中間軸16は第2クラッチを介してエンジン6に接続されているので、上述したモータ第1モード及びモータ走行第2モードで説明したように、第1クラッチ41と第2クラッチ42を切断することによりエンジン6を連れまわさずにモータ走行を行なうことができる。これにより、モータ走行時の負荷を軽減して燃費の向上を図ることができる。
さらに、シフトチェンジ時に第1変速用シフター51又は第2変速用シフター52をシフトチェンジする目的のギヤに予めインギヤした後、第1クラッチ41と第2クラッチ42を繋ぎかえることにより、クラッチを断接する時間の短縮を図ることができ、これにより変速ショックを抑制することができる。
【0129】
また、動力出力装置1、1Aによれば、リングギヤ35はモータ7に接続されるとともにリングギヤ35をロック可能なワンウェイクラッチ61に接続されるので、モータ7を駆動できない場合には、ワンウェイクラッチ61によりリングギヤ35の回転を停止させて動力合成機構30の減速比を上げることで、車両の始動トルクを確保しエンジン6の動力のみにより車両を発進させることができる。また、リングギヤ35をロックすることでリングギヤ35に接続されたモータ7の回転が停止し、不具合のある状態でモータ7を強制的に回転させることに起因するさらなる故障を抑制することができる。
【0130】
また、動力出力装置1、1Aによれば、モータ非駆動走行時に、ワンウェイクラッチ61によりリングギヤ35をロックしてモータ7の回転を停止させることで、エンジン6の動力がサンギヤ32及びキャリア36を介して駆動軸9、9に伝達されるので、モータ7や蓄電装置82等の状態によらず十分な減速比が得られエンジン6のみでも大きなトルクを得ることができる。
【0131】
また、動力出力装置1、1Aによれば、切替手段を駆動することによりワンウェイクラッチ61は、リングギヤ35をロックしリングギヤ35の外周面に取り付けられたロータ72の回転を停止させるロック状態と、ワンウェイクラッチ61がリングギヤ35の一方向の回転のみを許容しロータ72の正転方向の回転のみを許容するワンウェイ状態と、空転してリングギヤ35の両方向の回転を許容しロータ72の正転及び逆転の両方向の回転を許容する空転状態の3つの状態をとりうるように構成されているので、蓄電装置82のSOCが回生限界値以上である場合にワンウェイクラッチ61をワンウェイ状態にしておけば、自動的にモータ7の逆転方向の回転を停止することができ、アイドリング中及びトルク合成駆動の加速時においてモータ7の回生を機械的に停止させることができる。
【0132】
また、動力出力装置1、1Aによれば、蓄電装置82のSOCが走行限界値以下でありモータ7を駆動できない場合に、ワンウェイクラッチ61によりリングギヤ35をロックしモータ7の回転を停止させて動力合成機構30の減速比を上げることで、車両の始動トルクを確保しエンジン6の動力のみにより発進させることができる。また、走行中に蓄電装置82のSOCが走行限界値以下となり車両の走行状態により大きな駆動トルクが必要な場合にも、ワンウェイクラッチ61によりリングギヤ35をロックしモータ7の回転を停止させて動力合成機構30の減速比を上げることで、大きな駆動トルクを得ることができる。
【0133】
また、動力出力装置1、1Aによれば、走行中に蓄電装置82のSOCが回生限界値以上であり車両の走行状態により電動機が回生せざるをえないが電動機を回生できない場合に、ワンウェイクラッチ61によりリングギヤ35をロックしモータ7の回転を停止させることにより、蓄電装置82をこれ以上充電させる必要がない状態におけるモータ7の連れまわりを防止することができる。
【0134】
また、動力出力装置1、1Aによれば、駆動状態予測装置によりカーナビゲーションの経路上の高低差を確認し、走行中において、蓄電装置82のSOCが走行限界値以下にある場合には下り坂を認識してワンウェイクラッチ61のロック状態を解除することによりモータ7で回生充電することができ、蓄電装置82のSOCが回生限界値以上にある場合には下り坂を認識してワンウェイクラッチ61の切替手段を作動させることでモータ7の連れまわりを防止することができる。このように駆動状態予測装置の情報に基づき予めワンウェイクラッチ61の切替時を認識することでモータ7の駆動範囲を広くすることができる。
【0135】
また、動力出力装置1、1Aによれば、蓄電装置82の温度が正常な出力が出せない臨界温度以下の場合に、ワンウェイクラッチ61によりモータ7の回転を停止させて動力合成機構30の減速比を上げることで、車両の始動トルクを確保しエンジン6の動力のみにより車両を発進させることができる。
【0136】
また、動力出力装置1、1Aによれば、モータ7、蓄電装置82、インバータの故障や配線の断線によりモータ7が正常に作動しないとき、ワンウェイクラッチ61によりモータ7の回転を停止させて動力合成機構30の減速比を上げることで、車両の始動トルクを確保しエンジン6の動力のみにより車両発進させることができる。また、モータ7、蓄電装置82、インバータの故障や配線の断線がある場合には、これを運転者に通知しサービスセンターへ誘導することにより緊急走行を短時間で終わらせることができる。
【0137】
また、動力出力装置1、1Aによれば、第1及び第2クラッチ41、42が発進クラッチであるので、モータ非駆動走行において、ワンウェイクラッチ61をロック状態にしモータ7の回転を停止した状態であっても、クラッチ容量の大きい発進クラッチで発進時のショックを吸収することができるので、緊急時における発進を円滑に行うことができる。
【0138】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る動力出力装置について、図39を参照して説明する。なお、第3実施形態の動力出力装置は、変速機の構成が異なる以外は第2実施形態の動力出力装置1Aと同様の構成を有する。このため、第2実施形態の動力出力装置1Aと同一又は同等部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0139】
本実施形態の変速機20Bは、2つの変速軸の一方の変速軸である第1主軸11(第1変速軸)周りに偶数段の変速段である第2速用駆動ギヤ22aと第4速用駆動ギヤ24aが設けられ、2つの変速軸の他方の変速軸である第2中間軸16(第2変速軸)に奇数段の変速段である第1速用駆動ギヤ21aと第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aが設けられ、第1主軸11に動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31のサンギヤ32が取り付けられて構成されている。
【0140】
より具体的に、第1主軸11には、連結軸13に取り付けられた第2速用駆動ギヤ22aと第2主軸12に取り付けられたアイドル駆動ギヤ27aとの間に、第1主軸11と相対回転可能な第4速用駆動ギヤ24aと、第1主軸11と連結軸13に取り付けられた第2速用駆動ギヤ22aとを連結又は開放するとともに第1主軸11と第4速用駆動ギヤ24aとを連結又は開放する第1変速用シフター51が設けられている。そして第1変速用シフター51が、第2速用接続位置、ニュートラル位置、第4速用接続位置を移動可能に構成されている。第1変速用シフター51が第2速用接続位置でインギヤするときには、第1主軸11と第2速用駆動ギヤ22aが一体に回転し、第1変速用シフター51が第4速用接続位置でインギヤするときには、第1主軸11と第4速用駆動ギヤ24aが一体に回転し、第1変速用シフター51がニュートラル位置にあるときには、第1主軸11は第2速用駆動ギヤ22aと第4速用駆動ギヤ24aに対し相対回転する。なお、第1主軸11と第2速用駆動ギヤ22aが一体に回転するとき、第1主軸11に取り付けられたサンギヤ32と第2速用駆動ギヤ22aに連結軸13で連結されたキャリア36が一体に回転するとともに、リングギヤ35も一体に回転し、遊星歯車機構31がロックして一体となる。
【0141】
カウンタ軸14には、第1速用従動ギヤ21bと、連結軸13に取り付けられた第2速用駆動ギヤ22aと噛合する第3速用従動ギヤ23bと、第1主軸11に設けられた第4速用駆動ギヤ24aと噛合する第4速用従動ギヤ24bと、差動ギヤ機構8と噛合するファイナルギヤ26aとが取り付けられている。なお、第3速用従動ギヤ23bは第2速用駆動ギヤ22aと共に第2速用ギヤ対22を構成し、第4速用従動ギヤ24bは第4速用駆動ギヤ24aと共に第4速用ギヤ対24を構成している。
【0142】
第2中間軸16には、第2中間軸16と相対回転可能な第1速用駆動ギヤ21aと、第3速用駆動ギヤ23aと、第5速用駆動ギヤ25aとがモータ7側から順に設けられている。第1速用駆動ギヤ21aはカウンタ軸14に取り付けられた第1速用従動ギヤ21bと噛合し、第1速用従動ギヤ21bと共に第1速用ギヤ対21を構成する。また、第3速用駆動ギヤ23aはカウンタ軸14に取り付けられた第3速用従動ギヤ23bと噛合し、第3速用従動ギヤ23bと共に第3速用ギヤ対23を構成し、第5速用駆動ギヤ25aはカウンタ軸14に取り付けられた第4速用従動ギヤ24bと噛合し、第4速用従動ギヤ24bと共に第5速用ギヤ対25を構成する。
また、第2中間軸16には、第1速用駆動ギヤ21aと第3速用駆動ギヤ23aとの間に、第2中間軸16と第1速用駆動ギヤ21aとを連結又は開放する第3変速用シフター54が設けられている。そして第3変速用シフター54が第1速用接続位置でインギヤするときには、第2中間軸16と第1速用駆動ギヤ21aが連結して一体に回転し、第3変速用シフター54がニュートラル位置にあるときには、第2中間軸16と第1速用駆動ギヤ21aが開放され相対回転する。
さらに、第2中間軸16には、第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aとの間に、第2中間軸16と第3速用駆動ギヤ23aとを連結又は開放するとともに第2中間軸16と第5速用駆動ギヤ25aとを連結又は開放する第2変速用シフター52が設けられている。そして第2変速用シフター52が、第3速用接続位置、ニュートラル位置、第5速用接続位置を移動可能に構成されている。第2変速用シフター52が第3速用接続位置でインギヤするときには、第2中間軸16と第3速用駆動ギヤ23aが一体に回転し、第2変速用シフター52が第5速用接続位置でインギヤするときには、第2中間軸16と第5速用駆動ギヤ25aが一体に回転し、第2変速用シフター52がニュートラル位置にあるときには、第2中間軸16は第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aに対し相対回転する。
【0143】
このように構成された動力出力装置1Bは基本的に第1及び2実施形態における第2速用ギヤ対22と第3速用ギヤ対23を入れ替えるとともに第4速用ギヤ対24と第5速用ギヤ対25を入れ替えて構成され、適宜読み替えることで同様の作用・効果を有する。
【0144】
また、本実施形態の動力出力装置1Bは、第1速用ギヤ対21を備えるので、遊星歯車機構31が故障した場合などの緊急時においても、第3変速用シフター54を第1速用接続位置でインギヤし第2クラッチ42を接続することにより、エンジン6の動力が第2主軸12、アイドルギヤ列27、第2中間軸16、第1速用ギヤ対21(第1速用駆動ギヤ21a、第1速用従動ギヤ21b)、カウンタ軸14、ファイナルギヤ26a、差動ギヤ機構8、駆動軸9,9を介して、駆動輪DW,DWに伝達され第1速走行を行うことができる。
【0145】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態に係る動力出力装置について、図40を参照して説明する。なお、第4実施形態の動力出力装置は、動力合成機構を構成する遊星歯車機構と変速機の接続位置が異なる以外は第2実施形態の動力出力装置1Aと同様の構成を有する。このため、第2実施形態の動力出力装置1Aと同一又は同等部分には同一符号又は相当符号を付して説明を簡略化又は省略する。
【0146】
本実施形態の変速機20Cは、2つの変速軸の一方の変速軸である第1主軸11(第2変速軸)周りに奇数段の変速段である第3速用駆動ギヤ23aと第5速用駆動ギヤ25aが設けられ、2つの変速軸の他方の変速軸である第2中間軸16(第1変速軸)に偶数段の変速段である第2速用駆動ギヤ22aと第4速用駆動ギヤ24aが設けられ、第2中間軸16に動力合成機構30を構成する遊星歯車機構31のサンギヤ32が取り付けられて構成されている。そして、第1主軸11は第1クラッチ41(第2断接手段)を介してエンジン6に接続され、第2中間軸16は第2主軸12に接続された第2クラッチ42(第1断接手段)を介してエンジン6に接続されている。
【0147】
より具体的に、第1主軸11はエンジン6側とは反対側で不図示のケースシングに固定された軸受11aに支持され、連結軸13は第2中間軸16より短く中空に構成されて第2中間軸16のエンジン6側とは反対側の周囲を覆うように相対回転自在に配置され、不図示のケーシングに固定された軸受13aに支持されている。また、連結軸13には、エンジン6側に第2速用駆動ギヤ22aが取り付けられ、軸受13aを挟んでエンジン6側とは反対側に遊星歯車機構31のキャリア36が取り付けられている。従って、プラネタリギヤ34の公転により連結軸13に取り付けられたキャリア36と第2速用駆動ギヤ22aが一体に回転するように構成されている。
【0148】
そして第2中間軸16のエンジン6側とは反対側には遊星歯車機構31のサンギヤ32が取り付けられ、第2主軸12に接続された第2クラッチ42によりクランク軸6aからサンギヤ32への動力伝達が断接可能に構成されている。
【0149】
このように構成された動力出力装置1Cにおいても第1〜第3実施形態と同様の作用・効果を有する。なお、本実施形態においても第3実施形態と同様に奇数段の変速段を備える第1主軸11に第1速用駆動ギヤ21aを設け、カウンタ軸14に第1速用ギヤ対21を構成する第1速用従動ギヤ21bを取り付けることで、遊星歯車機構31が故障した場合などの緊急時に対応できる構成とすることができる。
【0150】
尚、本発明は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
【0151】
ロック機構として切替可能なワンウェイクラッチ61を例示したが、ワンウェイクラッチに限らず、リングギヤ35をロックすることによりリングギヤ35の外周面に取り付けられたロータ72の回転を停止させることが可能なブレーキを用いてもよい。これにより、モータ7の回転を停止させる機構を簡易な構成で実現することができる。なお、ブレーキを用いた場合には、ワンウェイクラッチ61のように自動的にモータ7の逆転方向の回転を停止させることはできないが、ブレーキのON/OFFを切り替えることにより同様の制御を行うことができる。
【0152】
例えば、動力合成機構としてシングルピニオン式の遊星歯車機構に限らず、ダブルピニオン式の遊星歯車機構であってもよく、遊星歯車機構のように機械式のものに限定されず例えば、相反差動モータのような磁気的に差動回転するものであってもよい。
【0153】
また、奇数段の変速段として第3速用駆動用ギヤと第5速用駆動用ギヤに加えて、第7、9・・速用駆動用ギヤを、偶数段の変速段として第2速用駆動用ギヤと第4速用駆動用ギヤに加えて、第6、8・・速用駆動用ギヤを設けてもよい。
【符号の説明】
【0154】
1、1A、1B、1C 動力出力装置
6 エンジン
7 モータ7
9 駆動軸
11 第1主軸(第1変速軸、第2変速軸)
12 第2主軸(入力軸)
13 連結軸
14 カウンタ軸
15 第1中間軸(中間軸)
16 第2中間軸(第2変速軸、第1変速軸)
20、20A、20B、20C 変速機
22 第2速用ギヤ対
22a 第2速用駆動ギヤ
23 第3速用ギヤ対
23a 第3速用駆動ギヤ
23b 第3速用従動ギヤ
24 第4速用ギヤ対
24a 第4速用駆動ギヤ
24b 第4速用従動ギヤ
25 第5速用ギヤ対
25a 第5速用駆動ギヤ
26a ファイナルギヤ
27 アイドルギヤ列
27a アイドル駆動ギヤ
27b 第1アイドル従動ギヤ
27c 第2アイドル従動ギヤ
30 動力合成機構
31 遊星歯車機構(動力合成機構)
32 サンギヤ(第1要素、第3要素)
35 リングギヤ(第1要素、第3要素)
36 キャリア(第2要素)
41 第1クラッチ(第1断接手段、第2断接手段)
42 第2クラッチ(第2断接手段、第1断接手段)
51 第1変速用シフター
52 第2変速用シフター
53 後進用シフター
61 ワンウェイクラッチ(ロック機構)
82 蓄電装置
83 SOC検出装置
84 温度検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、電動機と、前記内燃機関に接続される2つの変速軸を備えた変速機と、を備えた動力出力装置であって、
第1〜第3要素を互いに差動回転できるように構成された動力合成機構を備え、
前記第1要素は前記2つの変速軸のいずれか一方に接続され、
前記第2要素は駆動軸に接続され、
前記第3要素は前記電動機に接続されるとともに前記第3要素をロック可能なロック機構に接続され、
前記第2要素は前記第1要素から伝達される動力と前記第3要素から伝達される動力を合成して前記駆動軸に伝達し、
前記2つの変速軸のうち他方の変速軸は前記動力合成機構を介さずに動力を前記駆動軸に伝達する、
ことを特徴とする動力出力装置。
【請求項2】
前記2つの変速軸は、第1断接手段を介して前記内燃機関に接続される第1変速軸と、第2断接手段を介して前記内燃機関に接続される第2変速軸と、から構成され、
前記第1変速軸が前記第1要素に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載の動力出力装置。
【請求項3】
前記第1要素から伝達される動力と前記第3要素から伝達される動力を合成して前記駆動軸に伝達可能なトルク合成駆動において、
前記ロック機構で前記第3要素をロックして前記電動機の回転を停止させ、
前記内燃機関を駆動することにより、前記内燃機関の動力が前記第1及び第2要素を介して前記駆動軸に伝達される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の動力出力装置。
【請求項4】
前記ロック機構はブレーキからなり、前記ブレーキはロック制御時に作動する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の動力出力装置。
【請求項5】
前記ロック機構は、前記第3要素をロックして前記電動機の回転を停止させる状態と、前記第3要素の一方向の回転のみを許容し前記電動機の正転方向の回転のみを許容する状態と、前記第3要素の両方向の回転を許容し前記電動機の正転及び逆転方向の回転を許容する状態を切替可能なワンウェイクラッチからなり、
前記ワンウェイクラッチは、ロック制御時に前記第3要素をロックして前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動力出力装置。
【請求項6】
前記電動機に電力を供給する蓄電装置を備え、
前記ロック機構は、前記蓄電装置のSOCが第1の所定値以下であり前記電動機を駆動できない場合、前記第3要素をロックし前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の動力出力装置。
【請求項7】
前記電動機に電力を供給する蓄電装置を備え、
前記ロック機構は、前記蓄電装置のSOCが第2の所定値以上であり前記電動機を回生できない場合、前記第3要素をロックし前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の動力出力装置。
【請求項8】
駆動状態を予測する駆動状態予測装置をさらに備え、
前記蓄電装置のSOCの状態に応じて、前記駆動状態予測装置の情報に基づき前記ロック機構を作動させる、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の動力出力装置。
【請求項9】
前記電動機に電力を供給する蓄電装置と、
前記蓄電装置の温度を検出する温度検出装置と、を備え、
前記ロック機構は、前記蓄電装置の温度が正常に出力できない第3の所定値以下の場合に、前記第3要素をロックし前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする請求項1〜8に記載の動力出力装置。
【請求項10】
前記電動機を制御する制御部と、
前記電動機と前記蓄電装置を接続する配線と、を備え、
前記ロック機構は、前記電動機、前記蓄電装置、前記制御部と、前記配線の少なくとも1つに不具合がある場合に前記第3要素をロックし前記電動機の回転を停止させる、
ことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の動力出力装置。
【請求項11】
前記電動機、前記蓄電装置、前記制御部と、前記配線の少なくとも1つに不具合がある場合に、運転者に緊急走行であることを通知する通知手段を備える、
ことを特徴とする請求項10に記載の動力出力装置。
【請求項12】
前記第1及び第2断接手段は、発進クラッチである、
ことを特徴とする請求項2〜11に記載の動力出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2010−202004(P2010−202004A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48074(P2009−48074)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】