説明

医用画像処理装置

【課題】医用画像に文字画像として含まれる患者情報の漏洩を防止する。また、医用画像の出力先において患者情報を伏せて医用画像のみを閲覧させることを可能とする。
【解決手段】本発明に係る医用画像処理装置2によれば、操作部22により選択された画像出力フォーマットに基づいて、モダリティ1から入力された医用画像を配置して出力フォーマット画像を作成し、作成した出力フォーマット画像から患者情報領域を抽出し、患者情報領域の画像のみに対し入力された暗号キーに応じて可逆変換に基づくマスク処理を施して、通信部29により通信ネットワークを介してPC3に出力する。又は、外部記録装置I/F26を介して外部記録装置26aに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者情報を示す文字画像を含む医用画像から患者情報領域を抽出し、患者情報領域の画像に可逆変換に基づくマスク処理を施して出力する医用画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者を撮影して医用画像を生成するCT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、超音波診断装置、内視鏡装置等の画像生成装置(以下、モダリティという。)においては、撮影した医用画像の取り違えを防止するために、医用画像に患者ID、患者名等の患者情報を示す文字画像を付加して出力している。例えば、特許文献1には、X線、CT装置等の医用診断画像発生装置において、患者氏名、患者ID等の撮影関連情報を含む画像情報を発生して処理装置に送信し、処理装置において、医用診断画像発生装置から転送された画像情報を必要に応じてマルチフォーマット化し、マルチフォーマット化された画像情報をレーザイメージャに出力する医用画像システムが記載されている。
【特許文献1】特開2004−321458号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、病院内のネットワーク化が進み、モダリティから出力された医用画像は、通信ネットワークを介して医師の読影診断用のPCやイメージャ、画像サーバ等に送信されるようになってきている。また、地域連携型の診断を行うケースも年々増加しており、この場合、モダリティにおいて生成された医用画像は、通信ネットワークや外部記録装置を介して他の病院の読影医に配信される。
【0004】
しかしながら、通信ネットワークによる情報の送受信は、途中で第3者に盗聴される危険性があり、また、外部記録装置を介しての情報の配信は、外部記録装置の紛失による情報の漏洩の危険性がある。配信する医用画像を暗号化して通信ネットワークを通じて送信したり、また、配信する医用画像を暗号化して外部記録装置に記録したりすれば、上述の危険性は低減されるが、暗号化した医用画像のデータを復号化することにより医用画像に含まれる患者情報も目視することが可能となるので、例えば、他の病院の読影医に画像診断のみを頼む場合等、患者情報を明かす必要がない場合にも患者情報が開示されてしまう。担当の医師が読影する場合においても、暗号化された医用画像を復号化して表示すれば必ず患者情報も表示されてしまうので、読影中に患者情報を知る必要のない人間にまでその情報を知られてしまう可能性がある。
【0005】
本発明の課題は、医用画像に文字画像として含まれる患者情報の漏洩を防止することである。また、医用画像の出力先において患者情報を伏せて医用画像のみを閲覧させることを可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の医用画像処理装置は、
患者情報を示す文字画像を含む医用画像から前記文字画像が位置する患者情報領域を抽出し、前記患者情報領域の画像のみにマスク処理を施すマスク処理手段と、
前記患者情報領域の画像にマスク処理が施された医用画像を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
キー情報を入力する入力手段を備え、
前記マスク処理手段は、前記患者情報領域の画像に対し前記入力手段により入力されたキー情報に応じて異なるアルゴリズムで可逆変換に基づくマスク処理を施すことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記マスク処理手段においてマスク処理された前記患者情報領域の画像は、前記マスク処理に用いられたキー情報に基づき逆変換を施すことにより復元可能であることを特徴としている。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記医用画像処理装置は、通信ネットワークを介して外部装置に接続されており、
前記出力手段は、前記患者情報領域の画像にマスク処理が施された医用画像を、前記通信ネットワークを介して外部装置に出力することを特徴としている。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明において、
前記医用画像処理装置は、外部記録装置を接続可能なインターフェースを有し、
前記出力手段は、前記患者情報領域の画像にマスク処理が施された医用画像を、前記インターフェースを介して外部記録装置に出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、医用画像に含まれる患者情報を示す文字画像がマスクされた状態で外部に出力されるので、医用画像に文字画像として含まれる患者情報の漏洩を防止することが可能となる。また、医用画像の患者情報領域のみにマスク処理が施されるので、医用画像の出力先において患者情報を伏せて医用画像のみを閲覧させることが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、医用画像の患者情報領域に対し、入力されたキー情報に応じて異なるアルゴリズムで可逆変換に基づくマスク処理が施されるので、患者情報を元に戻すことを可能としながらも、第3者がマスク処理のアルゴリズムを容易に特定できないようにすることが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、患者情報領域にマスク処理が施された画像は、マスク処理に用いられたキー情報に基づき逆変換を施すことにより復元可能であるので、キー情報を有する特定の者のみが医用画像に含まれる患者情報を復元して閲覧することが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、医用画像を通信ネットワークを介して接続された外部装置に出力する際に、医用画像の画像データが通信ネットワーク上を流れる間に第3者に盗聴されて患者情報が漏洩するといった危険を防止することが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、医用画像を外部記録装置に記録して配信する際に、外部記録装置の紛失により患者情報が漏洩するといった危険を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図1から図8を参照しながら本発明に係る医用画像システム100の実施の形態について説明する。ただし、本発明は図示例のものに限定されるものではない。
【0017】
まず、構成を説明する。
図1に、医用画像システム100のシステム構成例を示す。
図1に示すように、医用画像システム100は、モダリティ1に接続された医用画像処理装置2と、病院内に設置された医用画像読影用のPC(Personal Computer)3とがLAN(Local Area Network)等の通信ネットワークNを介して接続されて構成されている。なお、本実施の形態においては、通信ネットワークNを病院内のLANとして説明するが、公衆回線や専用回線、インターネット等を適用し、医用画像処理装置2を外部の病院のPC3と接続する構成としてもよい。
【0018】
以下、医用画像システム100を構成する各装置について説明する。
モダリティ1は、X線撮影装置、超音波診断装置、内視鏡診断装置又はMRI装置等の、患者を撮影して医用画像を生成する装置である。モダリティ1には、キーボート等の操作部が備えられており、撮影者によりこの操作部から撮影対象の患者の患者ID、患者氏名、性別、年齢等の患者情報が入力されると、入力された患者情報に対応する文字画像を生成し、撮影された医用画像の所定の位置に配置して合成する。そして、患者情報の文字画像を含む医用画像の画像信号を医用画像処理装置2に出力する。文字画像の配置位置は、例えば、図2に示す医用画像における文字画像領域R1、文字画像領域R2のように、医用画像の上端部や下端部等、統計的に医用画像中の被写体領域Oとの重複が少ない位置に予め設定されている。
【0019】
医用画像処理装置2は、モダリティ1から入力された医用画像信号をDICOM(Digital Image and Communications in Medicine)形式、JPEG(Joint Photographic Experts Group)形式等の所定形式の画像データに変換するとともに、画像データに含まれる文字画像領域に、入力されたキー情報(以下、暗号キーと称する)に応じたアルゴリズムで可逆変換に基づくマスク処理を施して、得られた画像データをPC3に出力する装置である。
【0020】
図3に、医用画像処理装置2の機能構成例を示す。
図3に示すように、医用画像処理装置2は、CPU21、操作部22、表示部23、画像I/F部24、カードリーダI/F25、外部記録装置I/F26、RAM27、記憶部28、通信部29等を備えて構成され、各部はバス30により接続されている。
【0021】
CPU21は、記憶部28に記憶されているシステムプログラムや処理プログラム等の各種プログラムを読み出してRAM27に展開し、展開されたプログラムに従って、図4に示す画像出力処理、図6に示す患者情報のマスク処理を始めとする各種処理を実行する。
【0022】
操作部22は、入力手段として機能するものであり、カーソルキーやテンキー等のキースイッチ、フットスイッチ等を備えて構成され、キースイッチ、フットスイッチの操作信号をCPU21に出力する。
【0023】
表示部23は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等のモニタを備えて構成されており、CPU21から入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
【0024】
画像I/F部24は、モダリティ1から出力されるビデオ信号やデジタル・シリアル画像信号等の入力信号を医用画像処理装置2に取り込み、画像データとして取得するためのインターフェース回路であり、例えば、NTSC(National Television Standards Committee)ビデオデコード回路やA/D変換回路、又はRS232C・RS422I/F回路等により構成される。CPU21は、画像I/F部24から時系列に出力される画像データをRAM27に順次転送することによりモダリティ1において生成された医用画像の画像データをRAM27内に形成する。次に、CPU21は、RAM27内の画像データを病院システムの要求に応じて、DICOM形式変換、ピットマップ形式変換、JPEG形式変換等の変換処理を行い、再び、RAM27に上記形式のファイルとして出力する。
【0025】
カードリーダI/F25は、カードリーダ25aと接続し、カードリーダ25aとのデータの入出力を行うためのインターフェースであり、カードリーダ25aによって読み取られたデータをCPU21に出力する。本実施の形態においては、診察券をICカードとし、カードリーダ25aをICカードリーダとして、診察券に記録された患者情報を読み取るものとするが、診察券が他の記録媒体により構成される場合には、その記録媒体に応じたカードリーダが接続される。例えば、磁気カードの場合には、磁気カードを読み取り可能なカードリーダが接続される。
【0026】
外部記録装置I/F26は、CF(CompactFlash)カード、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の外部記録装置26aを接続可能であり、外部記録装置26aとのデータの入出力を行うためのインターフェースである。なお、外部記録装置26aは、MO(magneto-optic)、CD−R(Compact Disk Recordable)、スマートメディア(登録商標)等であってもよく、この場合、外部記録装置I/F26には、外部記録装置26aに対しデータの読み出し及び書き込みを行うドライブも含まれる。
【0027】
RAM27は、CPU21により実行制御される各種処理において、記憶部28から読み出されたCPU21で実行可能な各種プログラム、入力若しくは出力データ、及びパラメータ等の一時的に記憶するワークエリアを形成する。
【0028】
記憶部28は、HDD(Hard Disc)や半導体の不揮発性メモリ等により構成される。
記憶部28には、CPU21で実行されるシステムプログラムや、画像出力処理プログラム、患者情報のマスク処理プログラムを始めとする各種プログラム、プログラムの実行に必要なパラメータやデータ等の各種情報が記憶されている。
【0029】
また、記憶部28には、暗号キーと図6に示す患者情報のマスク処理において使用するアルゴリズム(図7参照)との対応を示す暗号キー対応テーブル281が記憶されている。本実施の形態において、暗号キーは、例えば、1以上のアルファベット+数字の組み合わせ(例えば、A1B2・・・)により構成される。暗号キー対応テーブル281においては、一例として、アルファベット(A〜Z)の各文字に、後述する患者情報のマスク処理における画素のシフト方向(例えば、右斜め下、右斜め上、・・・)が対応付けられ、各数字(1〜9)には、後述するマスク処理における画素のシフト数が対応付けられている。当該暗号キー対応テーブル281を参照することにより、入力された暗号キーに応じたマスク処理で使用するアルゴリズムが特定される。
【0030】
また、記憶部28には、モダリティ1から入力される医用画像に含まれる患者情報を示す文字画像領域(患者情報領域)の位置(例えば、図2の文字画像領域R1、文字画像領域R2)を示す位置情報が予め記憶されている。なお、医用画像における文字画像領域の位置は、操作部22から設定入力可能である。更に、記憶部28には、同一患者の1以上の医用画像を1枚の出力フォーマット画像として出力するための各種フォーマットデータが記憶されている。
【0031】
通信部29は、LANインターフェース等により構成され、通信ネットワークNに接続されたPC3等の外部機器との間でデータの送受信を行う。
以上が、医用画像処理装置2の機能構成である。
【0032】
PC3は、CPU、RAM、記憶部、キーボード及びマウス等により構成される操作部、LCDやCRT等により構成される表示部、通信ネットワークNに接続するための通信インターフェースを備えて構成されたパーソナルコンピュータ等の端末装置であり、記憶部に記憶されているプログラムに従って、通信ネットワークNを介して医用画像処理装置2から配信された医用画像の画像データを医師による読影のために表示部に表示する。また、PC3は、外部記録装置26aとデータの入出力を行うための外部記録装置I/Fを備え、外部記録装置I/Fを介して接続された外部記録装置26aに記録されている医用画像データを読み込んで表示部に表示する。このPC3は、医用画像処理装置2でマスク処理が施された医用画像データを、入力された暗号キーに応じてマスク処理前の画像に戻すためのプログラム(暗号キーに応じたマスク処理アルゴリズムを特定するための暗号キー対応テーブルを含む)が記憶されており、操作部から処理対象の医用画像が指定されて暗号キーが入力され、復元処理の実行が指示されると、暗号キー対応テーブルを参照し、入力された暗号キーに基づいて、処理対象の医用画像データの患者情報領域にマスク処理の逆変換処理を施して、復元された医用画像を表示部に表示する。
【0033】
次に、動作について説明する。
図4に、CPU21により実行される画像出力処理を示す。当該処理は、CPU21と記憶部28に記憶された画像出力処理プログラムとの協働によるソフトウエア処理により実現される処理であり、操作部22を介して画像出力を指示する操作が入力された際に実行される処理である。当該処理の実行により出力手段が実現される。
【0034】
まず、表示部23に医用画像の出力先(外部のPC3の何れか又は外部記録装置26a)を選択するための出力先指定画面(図示せず)が表示され、当該画面上から操作部22の操作により医用画像の出力先が指定されると(ステップS1)、表示部23に画像出力フォーマットを選択するための出力フォーマット選択画面(図示せず)が表示され、当該画面上から撮影技師又は医師等のユーザの操作部22の操作により画像出力フォーマットが選択されると、選択された画像出力フォーマットのフォーマットデータが記憶部28からRAM27に読み出される(ステップS2)。医用画像処理装置2においては、モダリティ1から入力された同一患者の1〜12枚の医用画像を縮小して配列し、1枚の出力フォーマット画像としてPC3や外部記録装置26aに出力することができる。図5(a)、(b)に出力フォーマット画像の例を示す。図5(a)は、モダリティ1から入力された4枚の医用画像を縦2枚、横2枚の4コマ配列して1枚の出力フォーマット画像とするフォーマットである。図5(b)は、モダリティ1から入力された2枚の医用画像を縦2枚、横1枚の2コマ配列して1枚の出力フォーマット画像とするフォーマットである。ここで、モダリティ1から入力される各医用画像には、文字画像領域R1及び文字画像領域R2の位置に患者情報が含まれている。また、複数枚の医用画像を縮小して配列する出力フォーマット画像においては、文字画像領域R1、R2に含まれる文字が小さく見づらいため、医用画像が配置されない文字表示領域R3に、別途カードリーダ25a等により入力された患者情報が表示される。文字表示領域R3に表示する情報は、別途プログラム処理により、文字画像領域R1、R2の文字をOCR処理により認識した文字情報をそのまま拡大表示してもよい。
【0035】
画像出力フォーマットが選択されると、表示部23に「撮影対象患者の診察券をカードリーダ25aに挿入してください。」等のメッセージが表示され、当該メッセージに従ってカードリーダ25aに診察券が挿入されて患者情報が読み取られ、読み取られた患者情報がカードリーダI/F25を介して入力されると(ステップS3)、読み取られた患者情報を示す文字画像が生成され、ステップS1において選択され、RAM27に読み出されたフォーマットデータの文字表示領域R3の位置に記録される(ステップS4)。
【0036】
次いで、モダリティ1において患者の撮影が行われ、画像I/F部24を介してモダリティ1から医用画像信号が入力されると、ユーザによる操作部22のフットスイッチの押下操作に応じたタイミングで画像I/F部24により医用画像信号が取り込まれ、所定形式の画像データに変換されて医用画像データが取得される(ステップS5)。次いで、取得された画像データが画像出力フォーマットのコマ数に応じて縮小され、RAM27に読み出された画像出力フォーマットの所定の位置に追記されることにより、出力フォーマット画像が作成される(ステップS6)。操作部22から撮影終了の指示が入力されるまで、ステップS5〜S6が繰り返し実行され、撮影終了の指示が入力されると(ステップS7;YES)、出力フォーマット画像の予め定められた位置(例えば、図5の文字画像領域R1、R2、文字表示領域R3)に含まれる患者情報にマスク処理が施される(ステップS7)。
【0037】
図6は、CPU21において実行される患者情報のマスク処理を示すフローチャートである。以下、図6を参照して患者情報のマスク処理について説明する。当該処理の実行により、マスク処理手段が実現される。
【0038】
まず、記憶部28に記憶されている、モダリティ1から入力される医用画像に含まれる患者情報領域の位置情報及び指定された画像出力フォーマットに基づいて、出力フォーマット画像において患者情報を示す文字画像が位置する患者情報領域(例えば、文字画像領域R1、R2、文字表示領域R3)が抽出され、患者情報領域の画像がそれぞれ切り出される(ステップS101)。次いで、表示部23に暗号キーの入力を受け付ける暗号キー入力画面が表示され、この暗号キー入力画面上から操作部22によりマスク処理に用いる暗号キーが入力されると(ステップS102;YES)、切り出された各患者情報領域の画像に対し、入力された暗号キーに応じたアルゴリズムで可逆変換に基づくマスク処理が施される(ステップS103)。
【0039】
可逆変換に基づくマスク処理は、マスク処理後の画像を元に戻すことが可能なマスク処理であり、例えば、元の画像を所定画素ブロック単位(例えば、3画素×3画素)で分割し、各ブロック内での画素を規則的に入れ替える処理が適用可能である(参考となる一例として「モザイク処理とその応用について」岡山理科大学総合情報学部数理情報学科澤見研究室、池田宣子、前原直樹著P.12参照)。本実施の形態においては、暗号キー対応テーブル281が参照され、入力された暗号キーに応じた(予め暗号キーに対応付けられた)アルゴリズムで画素の入れ換え処理を行う。
【0040】
例えば、暗号キー対応テーブル281において、暗号キーA1に、図7(a)に示すような、ブロック内の画素を右斜め下に1画素ずつシフトさせるアルゴリズムが対応付けられている場合、暗号キーA1が入力されると、ブロック内の画素を右斜め下に1画素ずつシフトする処理が施される。暗号キーA1でマスク処理を施した画像を元の画像に戻す場合には、ブロック内の画素を逆方向(ここでは、左斜め上)に1画素シフトする逆変換を施すことで元に戻す(復元する)ことが可能である。
また、例えば、暗号キー対応テーブル281において、暗号キーB1に、図7(b)に示すような、ブロック内の画素を右斜め上に1画素ずつシフトさせるアルゴリズムが対応付けられている場合、暗号キーB1が入力されると、ブロック内の画素を右斜め上に1画素ずつシフトする処理が施される。暗号キーB1でマスク処理を施した画像を元の画像に戻す場合には、ブロック内の画素を逆方向(ここでは左斜め下)に1画素シフトする逆変換を施すことで元に戻すことが可能である。
また、例えば、暗号キー対応テーブル281において、暗号キーA2に、図7(c)に示すような、ブロック内の画素を右斜め下に2画素ずつシフトさせるアルゴリズムが対応付けられている場合、暗号キーA2が入力されると、ブロック内の画素を右斜め下に2画素ずつシフトする処理が施される。暗号キーA2でマスク処理を施した画像を元の画像に戻す場合には、ブロック内の画素を逆方向(ここでは、左斜め上)に2画素シフトする逆変換を施すことで元に戻すことが可能である。
また、暗号キーは、複数組み合わせることも可能であり、例えば、暗号キーB1A2が入力された場合、初めに図7(b)に示すアルゴリズムで各ブロックの画素の並び替えを行い、その処理結果を更に、図7(c)に示すアルゴリズムで各ブロックの画素の並び替えを行うことによりマスク処理が施される。
【0041】
マスク処理後、処理済みの画像が、出力フォーマット画像の切り出し前の位置に合成される(ステップS104)。そして、処理済みの画像データのヘッダ領域に、マスク処理をかけた患者情報領域の位置情報が付加され(ステップS105)、患者情報領域がマスクされた出力フォーマット画像が、暗号キーと対応付けられて記憶部28の画像保存領域に保存され(ステップS106)、処理は図4のステップS9に移行する。
【0042】
図4のステップS9においては、指定された出力先がPC3又は外部記録装置26aの何れであるかが判断され、指定された出力先がPC3であると判断された場合(ステップS9;PC)、患者情報がマスクされた出力フォーマット画像の画像データが通信部29により通信ネットワークNを介してPC3に出力(送信)され(ステップS10)、本処理は終了する。指定された出力先が外部記録装置26aであると判断された場合(ステップS9;外部記録装置)、外部記録装置I/F26を介して外部記録装置26aが接続されているか否かが判断され、接続されていると判断されると(ステップS9;YES)、外部記録装置I/F26を介して患者情報がマスクされた出力フォーマット画像の画像データが外部記録装置26aに出力されて書き込まれ(ステップS12)、本処理は終了する。
【0043】
患者情報がマスクされた出力フォーマット画像の送信又は外部記録装置への保存を行った後、上記画像出力処理の操作を行ったユーザは、必要があれば、当該出力フォーマット画像の読影を行う医師に対し、暗号キーを渡す。なお、読影医が患者情報を知る必要がない場合には、暗号キーを読影医に渡さなければ読影医が出力フォーマット画像の患者情報を復元することができないため、不必要な個人情報の流出を避けることが可能となる。
【0044】
PC3においては、通信ネットワークNを介して医用画像処理装置2から画像データが
受信されると、受信された画像データが記憶部に記憶される。読影を行う医師の操作部からの所定の操作により、受信された画像データの表示が指示されると、患者情報領域がマスクされた状態で出力フォーマット画像が表示部に表示される。操作部から表示対象の画像データのマスク処理に用いられた暗号キーが入力され、患者情報領域の復元が指示されると、入力された暗号キーに基づき、画像データのヘッダ領域に付加されている位置情報により特定される患者情報領域に対しマスク処理の逆変換処理(ここでは、暗号キーが示す画素シフト方向と逆方向に暗号キーにより示されたシフト数だけ画素をシフトさせる処理)が施され、患者情報領域の画像が復元された出力フォーマット画像が表示部に表示される。なお、復元された画像データは表示のみが可能であり、記憶部への保存はされない。
【0045】
また、PC3において、医用画像が記録された外部記録装置26aが接続され、操作部からの所定の操作により画像データの表示が指示されると、接続された外部記録装置から画像データが読み出され、文字画像領域がマスクされた、即ち、患者情報がマスクされた出力フォーマット画像が表示部に表示される。操作部から表示対象の画像データのマスク処理に用いられた暗号キーが入力され、患者情報領域の復元が指示されると、入力された暗号キーに基づき、画像データのヘッダ領域に付加されている位置情報により特定される患者情報領域に対し患者情報領域に対しマスク処理の逆変換処理(ここでは、暗号キーが示す画素シフト方向と逆方向に暗号キーにより示されたシフト数だけ画素をシフトさせる処理)が施され、患者情報領域の画像が復元された出力フォーマット画像が表示部に表示される。なお、復元された画像データは表示のみが可能であり、記憶部への保存はされない。
【0046】
以上説明したように、医用画像処理装置2によれば、操作部22により選択された画像出力フォーマットに基づいて、モダリティ1から入力された医用画像を配置して出力フォーマット画像を作成し、作成した出力フォーマット画像から患者情報領域を抽出し、患者情報領域の画像のみにマスク処理を施して、通信部29により通信ネットワークを介してPC3に出力する。又は、外部記録装置I/F26を介して外部記録装置26aに出力する。
【0047】
従って、医用画像に含まれる患者情報を示す文字画像がマスクされた状態で外部に出力されるので、画像データが通信ネットワーク上を流れる間に第3者に盗聴されて患者情報が漏洩するといった危険や、外部記録装置の紛失により患者情報が漏洩するといった危険を防止することが可能となる。また、医用画像に含まれる患者情報領域のみにマスク処理が施されるので、患者情報の開示が不要な場合には、患者情報をマスクしたまま医用画像を閲覧可能となり、患者情報を知る必要のない人間に患者情報が開示されることを防止することができる。
【0048】
更に、入力された暗号キーに応じて異なるアルゴリズムで可逆変換に基づくマスク処理が施されるので、患者情報を元に戻すことを可能としながらも、第3者がマスク処理のアルゴリズムを容易に特定できないようにすることが可能となる。
【0049】
更に、患者情報領域にマスク処理が施された画像は、マスク処理に用いられた暗号キーに基づき逆変換を施すことにより復元可能であるので、暗号キーを有する特定の者のみが医用画像に含まれる患者情報を復元して閲覧することが可能となる。
【0050】
なお、上記実施の形態における記述内容は、本発明に係る医用画像システム100の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0051】
例えば、上記実施の形態における医用画像システム100は、医用画像処理装置2が通信ネットワークNに接続された構成として説明したが、これに限定されるものではない。図8に、本発明を適用した他の医用画像システムの構成例を示す。図8に示すように、モダリティ1が往診による検査用に移動式となっている場合には、医用画像処理装置2を通信ネットワークNと接続せず、移動式のモダリティ1に接続し、モダリティ1から入力される医用画像に上記処理を施して外部記録装置26aに記録しておき、検査後にPC3に外部記録装置26aを装着して、PC3で往診時に撮影された医用画像を表示したり、PC3に接続されたプリンタから出力したりするようにしてもよい。
【0052】
また、上記実施の形態においては、モダリティ1から入力された医用画像を選択された画像出力フォーマットによりフォーマットする場合を例にとり説明したが、入力された医用画像の1枚1枚に対し、患者情報領域の抽出及び患者情報領域のマスク処理を行って、通信ネットワークを介して、又は外部記録装置を介して外部に出力するようにしてもよい。
【0053】
その他、医用画像システム100を構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る医用画像システム100の全体構成例を示す図である。
【図2】患者情報の文字画像を含む医用画像の一例を示す図である。
【図3】図1に示す医用画像処理装置2の機能的構成を示すブロック図である。
【図4】CPU21により実行される画像出力処理を示すフローチャートである。
【図5】出力フォーマット画像の例を示す図である。
【図6】CPU21により実行される患者情報のマスク処理を示すフローチャートである。
【図7】暗号キーに応じたマスク処理のアルゴリズムの一例を示す図である。
【図8】医用画像システムの他の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
100 医用画像システム
1 モダリティ
2 医用画像処理装置
3 PC
N 通信ネットワーク
21 CPU
22 操作部
23 表示部
24 画像I/F部
25 カードリーダI/F
25a カードリーダ
26 外部記録装置I/F
26a 外部記録装置
27 RAM
28 記憶部
281 暗号キー対応テーブル
29 通信部
30 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者情報を示す文字画像を含む医用画像から前記文字画像が位置する患者情報領域を抽出し、前記患者情報領域の画像のみにマスク処理を施すマスク処理手段と、
前記患者情報領域の画像にマスク処理が施された医用画像を出力する出力手段と、
を備えたことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
キー情報を入力する入力手段を備え、
前記マスク処理手段は、前記患者情報領域の画像に対し前記入力手段により入力されたキー情報に応じて異なるアルゴリズムで可逆変換に基づくマスク処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の医用画像処理装置。
【請求項3】
前記マスク処理手段においてマスク処理された前記患者情報領域の画像は、前記マスク処理に用いられたキー情報に基づき逆変換を施すことにより復元可能であることを特徴とする請求項2に記載の医用画像処理装置。
【請求項4】
前記医用画像処理装置は、通信ネットワークを介して外部装置に接続されており、
前記出力手段は、前記患者情報領域の画像にマスク処理が施された医用画像を、前記通信ネットワークを介して外部装置に出力することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像処理装置。
【請求項5】
前記医用画像処理装置は、外部記録装置を接続可能なインターフェースを有し、
前記出力手段は、前記患者情報領域の画像にマスク処理が施された医用画像を、前記インターフェースを介して外部記録装置に出力することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の医用画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−319342(P2007−319342A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151875(P2006−151875)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.COMPACTFLASH
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】