説明

医用画像表示処理装置、及び、医用画像表示処理プログラム

【課題】1つのシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像及び当該スライス画像に表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像を高速に表示することが可能な装置等を提供する。
【解決手段】被検体を撮像検査することによって得られた複数のシリーズのスライス画像を画像表示端末3に表示させる画像サーバ2であって、複数のシリーズのスライス画像の各々に表された体部の部位を認識する部位認識部12と、1つのシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像を画像表示端末3に表示させると共に、部位認識部12による認識結果に基づいて、画像表示端末3に表示されているスライス画像によって表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像を画像表示端末3に表示させる表示処理部14とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用撮像モダリティによって取得された画像データに基づいて医用画像を表示するための医用画像表示処理装置、及び、そのような装置において用いられる医用画像表示処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療診断においては、生体の内部が表示された医用画像が多く用いられており、そのような医用画像を取得するために、X線撮影や、X線CT(computed tomography:コンピュータ断層撮影)装置や、超音波(US)診断装置や、MRI(magnetic resonance imaging:磁気共鳴撮像)装置や、PET(positron emission tomography:ポジトロン断層撮影)等の様々な技術や装置(モダリティ)が広く利用されている。それらの装置の多くはディジタル化されており、病院内での診断情報処理システム等の構築が進められている。また、それらの撮像技術の内でも、CTやMRIは生体の軸位断画像を比較的狭い間隔で取得して表示できるので、生体の病変部位の発見や評価に大きな成果を上げている。ここで、軸位断画像とは、被検体の体軸に直交又はほぼ直交する面(所謂、輪切り面)が表された断層像のことをいう。以下において、軸位断画像のことを、単にスライス画像とも言う。
【0003】
ところで、疾病の経過観察等のため、1人の患者に対して複数回の断層撮像が時間間隔を空けて行われることがある。この場合に、読影医は、今回の検査において得られたスライス画像と以前の検査において得られたスライス画像とを比較すること(比較読影)により、疾病の進行等をより的確に把握することができる。そこで、従来より、今回の検査において得られたスライス画像と以前の検査において得られたスライス画像とを並べて表示させることが可能な医用画像表示装置が用いられている。
【0004】
図15は、従来の医用画像表示装置において、今回の検査において得られたスライス画像と前回の検査において得られたスライス画像とを画像表示端末の表示画面に並べて表示させた様子を示す模式図である。図15(a)において、画像表示端末の表示画面90の領域91内には、今回の検査において得られたスライス画像(ここでは、腹部)が表示されており、領域92内には、前回の検査において得られたスライス画像(ここでは、腹部)が表示されている。
【0005】
このような従来の医用画像表示装置においては、読影医が、今回の検査において得られた1シリーズのスライス画像の内の1枚のスライス画像を前回の検査において得られた1シリーズのスライス画像の内の1枚のスライス画像に関連付け、この関連付けられた1対のスライス画像に基づいて、その他のスライス画像を表示させていた。例えば、読影医が、図15(a)の領域91内に表示されているスライス画像(今回の検査において得られた腹部を表すスライス画像)を図15(a)の領域92内に表示されているスライス画像(前回の検査において得られた腹部を表すスライス画像)に関連付けることが行われていた。しかしながら、患者の姿勢や肺野の大きさ(患者が呼吸を一時停止した時に肺内に蓄積された空気量等によって変化する)が今回の検査時と前回の検査時とで異なってしまう場合がある。そのため、例えば、読影医が所定のキー(例えば、カーソル移動キー等)を操作することで、図15(b)に示すように、今回の検査において得られた1シリーズのスライス画像の内の胸部を表すスライス画像を領域91内に表示させた場合に、領域91内に表示されているスライス画像によって表された体部と異なる体部を表すスライス画像が領域92内に表示されることが起こってしまっていた。
【0006】
また、1回の撮像によって得られた一連(1シリーズ)のスライス画像は、通常、千数百枚〜数千枚に上る。そのため、今回の検査において得られた1シリーズのスライス画像の内の1枚を前回の検査において得られた1シリーズのスライス画像の内の1枚に関連付けるための手間や負担はかなり大きい。
【0007】
このような問題を解決する技術として、下記の特許文献1には、比較読影に係る読影者の負担、読影時間や読影にかかるコストを低減させることが可能な画像表示システムが開示されている。この画像表示システムは、少なくとも1つの医用画像撮影モダリティに基づく複数回の検査により取得された複数枚の断層像から成る複数組の三次元画像を出力デバイスに表示するようにした画像表示システムにおいて、複数組の三次元画像の中から、解剖学的断層位置が略同一の第1の断層像対を少なくとも1つ指定する指定手段と、複数組の三次元画像中の少なくとも1つの三次元画像の断層間隔及び第1の断層像対間の位置情報に基づいて、複数組の三次元画像の中から、解剖学的断層位置が略同一の少なくとも1つの断層像対を設定する断層像対設定手段と、設定された少なくとも1つの断層像対を出力デバイスに表示させる表示制御手段とを備えている(第2頁、図1)。この画像表示システムによれば、解剖学的断層位置を合わせるという非常に困難な操作を簡単な操作により行うことができ、読影者の負担を軽減することができる。
【0008】
また、特許文献1には、解剖学的断層位置が略同一の断層像対を指定する処理において、その指定処理を三次元画像の特徴量を利用して自動的に行うことも開示されている(第15頁の第136〜第139段落)。これにより、読影者が、解剖学的断層位置が略同一の断層像対を指定する必要をなくすことができる。
【0009】
さらに、特許文献1には、断層像対を次々表示するために、算出したz座標の位置に断層像が無い場合は、その断層面からいちばん近い断層像を表示することも開示されている(第16〜第17頁の第148〜第153段落)。また、特許文献1には、断層像対どうしのサブトラクション画像を表示することも開示されている(第19〜第20頁の第177〜第181段落)。
【0010】
特許文献1掲載の画像表示システムにおいては、解剖学的断層位置が略同一の断層像対の指定処理を三次元画像の特徴量を利用して自動的に行うために、三次元画像間の三次元相関演算又は二次元相関演算を用いている(第15頁の第136〜第139段落)。しかしながら、三次元画像間の三次元相関演算又は二次元相関演算の処理量は非常に多いため、処理負荷が大きく、処理時間が長くなってしまうという問題がある。また、患者の姿勢や肺野の大きさが今回の検査時と前回の検査時とで異なっているような場合や、病変部が大きくなっているような場合には、相関係数が最大である断層像対の解剖学的断層位置が略同一になるとは限らない。
【特許文献1】特開平8−294485号公報(第2頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、上記の点に鑑み、本発明は、1つのシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像及び当該スライス画像に表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像を高速且つ高精度で表示部に表示させることが可能な装置と、そのような装置において用いられるプログラムとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の1つの観点に係る医用画像表示処理装置は、被検体を撮像検査することによって得られた複数のシリーズの軸位断画像を表す画像データに基づいて軸位断画像を表示部に表示させる装置であって、複数のシリーズの軸位断画像の各々に表された体部の部位を認識する部位認識手段と、1つのシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像を表示部に表示させると共に、部位認識手段による認識結果に基づいて、表示部に表示されている軸位断画像によって表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像を表示部に表示させる表示処理手段とを具備する。
【0013】
また、本発明の1つの観点に係る医用画像表示処理プログラムは、被検体を撮像検査することによって得られた複数のシリーズの軸位断画像を表す画像データに基づいて軸位断画像を表示部に表示させるためのプログラムであって、複数のシリーズの軸位断画像の各々に表された体部の部位を認識する手順(a)と、1つのシリーズの軸位断画像に含まれている1つの軸位断画像を表示部に表示させる手順(b)と、手順(a)における認識結果に基づいて、表示部に表示されている軸位断画像によって表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像を表示部に表示させる手順(c)とをCPUに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数のシリーズの軸位断画像について部位認識を行い、その認識結果に基づいて、1つのシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像及び当該スライス画像に表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像を高速且つ高精度で表示部に表示させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照番号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る医用画像表示処理装置を含む医用画像撮影システムの構成を示すブロック図である。この医用画像撮影システムは、被検体について医用画像の撮像検査を行うモダリティ1と、本発明の一実施形態に係る医用画像表示処理装置としての画像サーバ2と、画像表示端末3と、読影用端末4とを含んでいる。これらの装置1〜4は、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)規格に準拠している。
【0016】
モダリティ1は、CT装置1aや、CR(computed radiography)装置1bや、MRI装置1cや、PET装置1dや、超音波診断装置(US)1e等の医用画像撮像装置を含んでいる。これらのモダリティ1a〜1eは、撮像検査を行うことにより画像データを生成して、画像付帯情報と共に画像サーバ2に出力する。
【0017】
画像サーバ2は、モダリティ1によって取得された画像データを保管及び管理するPACS(Picture Archiving and Communication System:医用画像情報システム)用のサーバである。画像サーバ2は、後述する読影用端末4の要求に従って、画像データを画像表示端末3に出力する。
【0018】
図1に示すように、画像サーバ2は、制御部11と、部位認識部12と、格納部13と、表示処理部14とを有している。制御部11、部位認識部12、及び、表示処理部14は、例えば、CPU(中央演算処理装置)と本実施形態に係る医用画像表示処理プログラムによって構成されている。
【0019】
制御部11は、モダリティ1から出力された画像データを格納部13に格納させる。また、制御部11は、入力された画像データによって表される画像の方向(軸位断(axial)、冠状断(coronal)、矢状断方向(sagittal)等)を確認し、軸位断方向である場合には、その画像データを部位認識部12にも出力する。なお、画像の方向は、例えば、DICOMタグ(0020,0037):Image Orientation(Patient)、又は、(0020,0020):Patient Orientationが付された画像付帯情報によって取得される。
【0020】
部位認識部12は、1シリーズの画像データによって表される複数の軸位断画像(以下において、「スライス画像」ともいう)に基づいて、各軸位断画像に被検体のどの部位が表されているかを認識する。そして、認識結果(部位)を含む情報(部位情報)を生成し、画像データに関連付けて格納部13に格納させる。部位は、例えば、「Head(頭)」、「Neck(頸)」、「Chest(胸)」等のように、文字列によって示されても良いし、1:head、2:neck、3:chest等のように、予めコード化された整数値によって示されても良い。
【0021】
格納部13は、例えば、画像サーバ2に内蔵されているハードディスクドライブであり、制御部11の制御の下で、画像データ及びその画像付帯情報や、部位認識部12によって生成された部位情報や、部位認識部12を動作させるための制御プログラム等を格納する。なお、記録媒体としては、ハードディスクの他に、MO、MT、RAM、CD−ROM、又は、DVD−ROM等を用いても良く、その場合には、それらの記録媒体を駆動する駆動装置が、画像サーバ2に内蔵され、又は、画像サーバ2の外部に接続される。
【0022】
表示処理部14は、スライス画像を指示するための表示スライス画像指示情報を読影用端末4から受信し、1つのシリーズのスライス画像(例えば、今回の検査において得られた複数のスライス画像)の中の表示スライス画像指示情報に応じたスライス画像を画像表示端末3に表示させると共に、表示スライス画像指示情報に応じて画像表示端末3に表示されたスライス画像によって表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズのスライス画像(例えば、前回の検査において得られた複数のスライス画像)の中のスライス画像を画像表示端末3に表示させる。
【0023】
画像表示端末3は、検査画像が表示される端末装置であり、高精細なディスプレイを備えている。なお、図1に示す画像表示端末3の画面3aには、複数の軸位断画像が模式的に示されている。
読影用端末4は、ユーザ(読影医)が、画像表示端末3に表示された検査画像を参照しながら読影レポート等を作成するために用いられる装置であり、読影レポート等を表示する画面4aや、キーボード等の入力デバイス4b等を備えている。
【0024】
次に、図1に示す部位認識部12の構成及び動作について、図2〜図4を参照しながら説明する。
図2は、図1に示す部位認識部12の機能を示すブロック図である。図2に示すように、部位認識部12は、特徴量計算部21と、部位確信度計算部22と、スコアテーブル記憶部22aと、部位決定処理部23と、部位情報記憶部24と、部位修正処理部25とを含んでいる。この内の特徴量計算部21〜部位決定処理部23は、各スライス画像について、そこに表された部位を暫定的に決定するように動作し、部位修正処理部25は、複数のスライス画像の部位情報に基づいて、各スライス画像について暫定的に決定された部位を修正するように動作する。なお、スライス画像の部位情報については後述する。
【0025】
図3は、部位認識部12の動作を示すフローチャートである。制御部11(図1)において軸位断画像を表すものであると判断された画像データが部位認識部12に入力されると、以下に説明する部位認識動作が開始される。
ステップS1において、画像データ及びその画像付帯情報は、1スライス分ごとに、特徴量計算部21に入力される。ここで、画像付帯情報には、画像の方向を表す情報((0020,0037):Image Orientation(Patient)、又は、(0020,0020):Patient Orientation)や、1画素のピッチを表す情報((0028,0030):Pixel Spacing)や、スライスの厚さを表す情報((0018,0050):Slice Thickness)や、1行及び1列に含まれる画素数を表す情報((0028,0010):Raws、及び、(0028,0011):Columns)や、画像の左上位置の3次元座標を表す情報((0020,0032):Image Position(Patient))等が含まれる。ここで、括弧内は、各情報のDICOMタグ及び属性名を示している。
【0026】
ステップS2において、特徴量計算部21は、1つのスライス画像について特徴量を算出する。ここで、特徴量とは、スライス画像に表された体部の特徴を数値化したものである。特徴量は、例えば、次の(a)に示すように、スライス画像に表された体部の形状に基づいて算出される。また、各画素データの値(即ち、画素の輝度)が体部の特性(組織性状等)に対応している場合には、次の(b)や(c)に示すように、その値に応じて特徴量を算出しても良い。例えば、CT画像における画素データの値はCT値によって決定されるが、この値は、体部を透過した放射線量を表す物理量である。なお、水のCT値は0HUであり、空気領域のCT値は−1000HU程度であり、骨領域のCT値は250HU〜3000HU程度である。
【0027】
(a)体部全体の円形度
円形度ρは、対象領域の面積S及びその周囲の長さLを用いて、次式(1)によって算出される。
ρ=4πS/L …(1)
円形度ρは、対象領域の形状が真円に近づくほど1.0に近づき、形状が真円から離れるほど(例えば、楕円率が1から離れるほど)小さくなる。例えば、対象領域が頭部である場合には、円形度は比較的高くなる。反対に、対象領域が胸部や腹部である場合には、円形度は比較的低くなる。
(b)空気領域特徴量:(空気領域を示すCT値の画素数)/(体部全体の画素数)
例えば、対象領域が胸部である場合には、肺が存在しているために空気領域は比較的広くなる。反対に、対象領域が頭部である場合には、空気領域はほぼゼロとなる。
(c)骨領域特徴量:(骨領域を示すCT値の画素数)/(体部全体の画素数)
例えば、対象領域が腹部である場合には、体部全体に対する骨部の領域は比較的狭い範囲となる。反対に、対象領域が脚部である場合には、体部全体に対して骨部が多くの割合を占める。
【0028】
次に、ステップS3において、部位確信度計算部22は、特徴量計算部21によって計算された特徴量に基づいて、部位確信度を算出する。ここで、部位確信度とは、対象部位が、「ある部位」である可能性(「頭部」らしさ、「胸部」らしさ等)を数値化したものである。本実施形態において、部位確信度は、予め用意されているスコアテーブルを用いて算出される。
【0029】
図4は、部位確信度の算出に用いられるスコアテーブルの例を示している。このスコアテーブルは、空気領域特徴量(空気量)の値に基づいて、「頭部」らしさ、「胸部」らしさ、「腹部」らしさ、及び、「脚部」らしさを求める際に用いられる。この他に、部位の項目として、「骨盤部」や「肺野」を挙げても良い。また、隣接する2つの部位の境界(境界領域)や、複数の部位が混在している領域(混在領域、例えば、頭部と頸部、又は、胸部と腹部等)を示す項目(例えば、「頭頸部」又は「胸腹部」)を挙げても良い。
【0030】
例えば、あるCT画像に表された体部の空気領域特徴量が60%である場合に、スコアテーブルにおいて60%が含まれる「40〜80%」の欄を参照すると、その体部の「頭部」らしさのスコアは−1.0であり、「胸部」らしさのスコアは0.8であり、「腹部」らしさのスコアは−0.2であり、「脚部」らしさのスコアは−1.0であることがわかる。
このようなスコアテーブルは、特徴量ごとに作成され、スコアテーブル記憶部22aに記憶されている。スコアテーブルは、統計に基づいて作成されても良いし、ユーザ(医師等)の経験等に基づいて意図的に作成されても良い。
【0031】
部位確信度計算部22は、そのようなスコアテーブルを参照することによって、各特徴量について各「部位」らしさのスコアを求め、それらのスコアを部位ごとに加算する。そのようにして得られた部位ごとのスコアの総和が、部位確信度となる。
【0032】
再び図3を参照すると、ステップS4において、部位決定処理部23は、ステップS3において得られた部位確信度の内で値が最も大きいものを、そのスライス画像に表された体部の部位として仮決定する。その際に、部位確信度の値が大きい部位が複数あり、それらの差が所定の範囲内(例えば、10%以内)である場合には、両方の部位を採用しても良い。例えば、胸部と腹部の部位確信度が大きい場合には、そのスライスの部位を「胸部」又は「腹部」とする。或いは、境界領域又は混在領域を示す項目(例えば、「胸腹部」)がある場合には、それを採用しても良い。
【0033】
ステップS5において、部位情報記憶部24は、ステップS2において得られた特徴量や、ステップS3において得られた部位確信度や、ステップS4において仮決定された部位を、そのスライス画像の部位情報(部位に関する情報)として保存する。なお、特徴量については、必ずしも全てを記憶しておく必要はなく、所定の特徴量(例えば、後述するステップS8において用いられる特徴量)のみを保存するようにしても良い。
このようなステップS1〜S5の動作は、1シリーズに含まれる全てのスライス画像について行われる(ステップS6)。
【0034】
全てのスライス画像についての部位情報が得られると、ステップS7において、部位修正処理部25は、部位情報記憶部24に保存されている部位情報を、スライス順に整列する。モダリティ1(図1)において生成された画像データは、画像サーバ2にスライス順に送信されるとは限らないからである。なお、スライスの順序は、画像付帯情報の内の画像位置情報((0020,0032):Image Position (Patient))に基づいて判断される。或いは、ステップS7の替わりに、部位情報記憶部24が、ステップS5において、画像位置情報に基づいて部位情報をスライス順に整列しながら保存するようにしても良い。
【0035】
次に、ステップS8において、部位修正処理部25は、各スライスについて仮決定された部位を、複数のスライス画像の部位情報を用いて修正する。修正方法としては、例えば、次の(1)〜(3)に示す方法が挙げられる。
(1)隣接スライスの部位情報を用いる方法
この方法は、隣接スライスの位置関係に基づいて、あるスライス画像について仮決定された部位を修正する方法である。
仮決定された部位が、例えば、第1〜第5スライスにおいて頸部(neck)、第6スライスにおいて頭部(head)、第7〜第10スライスにおいて頸部(neck)、第11〜第15スライスにおいて胸部(chest)、第16スライスにおいて脚部(leg)、第17〜第20スライスにおいて胸部(chest)、第21〜第30スライスにおいて腹部(abdomen)となっている場合について検討する。この場合に、第6スライスの前後のスライスにおいて頸部となっているので、第6スライスが頭部であるというのは認識誤りであり、正しくは頸部である。また、第16スライスの前後のスライスにおいては胸部となっているので、第16スライスが脚部であるというのは認識誤りであり、正しくは胸部である。このように、あるスライス画像について仮決定された部位が前後のスライス画像の部位と異なっている場合には、前後のスライス画像を参照することにより、そのスライス画像の部位が修正される。
【0036】
(2)特徴量を用いる方法
この方法は、体軸方向における特徴量の変化に基づいて、あるスライス画像について仮決定された部位を修正する方法である。
図5の(a)は、空気領域特徴量をスライス位置(体軸方向)順に示す図であり、図5の(b)は、空気領域特徴量の微分値を示す図である。図5の(b)に示すように、空気領域特徴量の変化を被検体の上部(頭部側)から下部(脚部側)に向けて観察すると、空気領域特徴量が突然増加し始める部分が存在する。この部分を胸部の開始位置とする。また、さらに脚部側に向けて観察すると、空気領域特徴量が減少から増加に転じる部分が存在する。この部分を胸部と腹部の境界とする。そして、胸部の開始位置から胸部と腹部との境界との間に、胸部以外の部位が仮決定されているスライス画像が存在する場合には、そのスライス画像の部位が胸部に修正される。
【0037】
(3)マッチングカーブを利用する方法
この方法は、被検体(例えば、人体)における部位の通常の配置を参照することにより、各スライス画像について仮決定された部位を修正する方法である。
まず、図6に示すように、各スライス画像について仮決定された部位を、被検体の上部(頭部側)から下部(脚部側)に向けてスライス順に配置する。図6に示すとおり、この部位認識結果には、頭部(Head)と頸部(Neck)とが交互に現れている領域や、胸部(Chest)の間に頸部が現れている領域が見られることから、仮決定された部位には多くの認識誤りが含まれるものと考えられる。
【0038】
次に、図7に示すように、図6に示す部位認識結果と予め作成された参照部位との間のマッチングカーブを探索する。ここで、人体の部位は、頭部→頸部→胸部→腹部の順に配置されているので、図7の縦軸に示すように、それらの部位がこのような順序で配置された参照部位を予め作成しておく。
【0039】
マッチングカーブを探索する際には、部位認識結果と参照部位とが不一致である場合にコストがかかるようにし、コストが最小となるようなカーブを求める。探索手法としては、最適化問題を解くための様々な手法を適用することができる。以下に、その1つとして良く知られている動的計画法(dynamic programming)を用いたマッチングカーブの探索方法を説明する。
【0040】
まず、図8に示すような重みマップを作成する。図8において、列はスライス番号に対応しており、行は部位に対応している。この重みマップにおいて、仮決定されている部位は、重みがゼロになるように設定されている(太枠の領域)。例えば、図6を参照すると、最初のスライスは頭部と仮決定されているので、重みマップにおけるスライス番号1の頭部(Head)のセルの値は「0.0」となっている。また、それ以外のセルについては、ゼロより大きい値が設定される。具体的には、各スライス画像について確信度が算出されている場合には、その確信度と仮決定された部位の確信度との差の値を設定しても良いし、それとは異なる所定の値の値を設定しても良い。
【0041】
次に、図9に示すようなコストマップを作成する。図9において、各セル(n,m)のコストは次のように設定される。ここで、nはスライス番号を示しており、mは部位番号(1:Head、2:Neck、3:Chest、4:Abdomen)を示している。
(1,1):重みマップにおける(1,1)の値(図8参照)
(n,1):重みマップにおける(n−1,1)の値+所定の値
(1,m):重みマップにおける(1,m−1)の値+所定の値
(n,m):次の(i)〜(iii)の内の最小値
(i)コストマップにおける(n−1,m−1)の値
+重みマップにおける(n,m)の値
(ii)コストマップにおける(n,m−1)の値
+重みマップにおける(n,m)の値+所定の値
(iii)コストマップにおける(n−1,m)の値
+重みマップにおける(n,m)の値+所定の値
【0042】
次に、コストマップを、右側から左側に向かって、周辺の最小値を順次辿って行く。それにより、スライス番号と部位との対応マップが作成される。
図7に示すように、そのようにして得られたマッチングカーブに基づいて、仮決定された部位を参照部位における対応部位に置き換えることにより、部位の修正が行われる。
【0043】
再び、図3を参照すると、ステップS8において、部位修正処理部25は、修正後の部位情報を画像付帯情報として格納部13に出力して保存させる。部位認識部12から出力された部位情報は、画像情報データベースによって管理するようにしても良いし、格納部13に既に格納されている画像データに、タグとして書き込むようにしても良い。
【0044】
以上説明したように、本実施形態においては、1シリーズに含まれる複数のスライス画像の各々について部位認識を行った後で、複数スライスに関する部位情報の相互関係を用いて、各スライスの部位情報を修正する。このように、2つの段階を経て部位認識を行う利点は、次の通りである。即ち、1シリーズの全ての画像データがサーバ2に入力されるのを待つことなく、入力されたスライス順に部位認識処理を開始できるので、比較的高速に部位認識結果を得ることができる。また、各スライスについて得られた部位認識結果を、複数のスライス画像の集合によって表される被検体の3次元情報に基づいて修正するので、大きな部位認識誤りを低減することができる。従って、効率良く、且つ、正確な部位認識を行うことが可能となる。
【0045】
ここで、本実施形態において、部位認識部12(図2)は、入力された全てのスライス画像について部位認識処理を行っている。しかしながら、部位認識処理を開始する前にDICOMタグを参照し、撮像部位を表す情報((0018,0015):Body Part)が存在しないスライス画像のみに対して部位認識処理を行うようにしても良い。撮像段階において部位が付される場合もあるからである。
【0046】
或いは、部位認識部12は、連続して入力されるスライス画像に対して、所定のスライス間隔で間引きしながら部位認識処理を行うようにしても良い。その場合には、全体として処理を高速化することが可能となる。さらに、部位認識部12は、連続して入力されるスライス画像の内の所定の範囲についてのみ、部位認識処理を行うようにしても良い。例えば、診断対象が被検体の腹部である場合には、腹部の開始領域(又は、胸部及び腹部の混在領域)が認識できれば良い。その場合には、例えば、スライス画像の3次元座標を表す情報(DICOMタグ(0020,0032):Image Position(Patient))から判断して明らかに脚部と考えられる範囲については、部位認識処理を省略しても良い。
【0047】
また、本実施形態においては、ステップS3及びS4においてスライスに表された体部の部位を仮決定する際に、スコアテーブルを用いているが、その替わりに、ニューラルネットワーク等の機械学習法を利用して部位を認識しても良い。
ここで、ニューラルネットワークを利用して部位を仮決定する方法を説明する。
図10に示すように、スライス画像に表された体部の特徴量(例えば、ステップS2において説明した特徴量(a)〜(c))を、ニューラルネットに入力する。そして、そのスライス画像に表された部位に一致する部位に対して1を出力し、それ以外の部位に対してゼロを出力するように、ニューラルネットを学習させる。例えば、スライス画像に頭部が表されている場合には、「Head」の出力を1とし、「Neck」、「Chest」及び「Abdomen」の出力をゼロとする。このように学習させたニューラルネットを利用することにより、入力された特徴量に対応する部位が取得される。
【0048】
次に、図1に示す表示処理部14の構成及び動作について、図11〜図14を参照しながら説明する。
なお、以下においては、1人の患者に対して2回の検査が時間間隔を空けて行われ、2回の検査によってそれぞれ得られた2つのシリーズのスライス画像が部位認識部12によって部位認識され、格納部13に格納されているものとする。そして、2回目の検査(今回の検査)において得られた1シリーズのスライス画像(以下、「第1のシリーズのスライス画像」という)が、第1〜第25のスライス画像を含んでおり、これらのスライス画像の内の第1〜第10のスライス画像によって表される部位が胸部であり、第11〜第18のスライス画像によって表される部位が腹部であり、第19〜第25のスライス画像によって表される部位が骨盤部であるものとする。また、1回目の検査(前回の検査)において得られた1シリーズのスライス画像(以下、「第2のシリーズのスライス画像」という)が、第1〜第28のスライス画像を含んでおり、これらのスライス画像の内の第1〜第12のスライス画像によって表される部位が胸部であり、第13〜第21のスライス画像によって表される部位が腹部であり、第22〜第28のスライス画像によって表される部位が骨盤部であるものとする。
【0049】
図11は、図1に示す表示処理部14の機能を示すブロック図である。図11に示すように、表示処理部14は、スライス画像関連付け情報作成処理部81と、スライス画像関連付け情報格納部82と、初期表示スライス情報格納部83と、スライス画像表示処理部84とを含んでいる。
【0050】
スライス画像関連付け情報作成処理部81は、部位認識部12による部位認識結果に基づいて、第1のシリーズのスライス画像の各々を第2のシリーズのスライス画像に関連付ける情報を作成して、スライス画像関連付け情報格納部82に格納させる。
【0051】
初期表示スライス情報格納部83は、初期(例えば、ユーザ(読影医)が読影用端末4を操作して読影を開始したとき等)において画像表示端末3に表示させる第1のシリーズのスライス画像の内の1つのスライス画像を決定するための初期表示スライス情報を格納する。初期表示スライス情報は、スライス番号(例えば、「1」(第1のシリーズの軸位断画像の内の第1番目のスライス画像を表す)等)であっても良いし、部位(例えば、「腹部上端」等)であっても良い。初期表示スライス情報が初期表示スライス情報格納部15に格納されていない場合には、スライス画像表示処理部84が、第1のシリーズの軸位断画像の内のいずれかの軸位断画像を表示するようにしても良い。初期表示スライス情報は、読影用端末4から書き込み又は更新可能としても良い。なお、格納部13(図1参照)とスライス画像関連付け情報格納部82と初期表示スライス情報格納部83とを1つの記録媒体で実現することとしても良い。
【0052】
スライス画像表示処理部84は、ユーザ(読影医)が所望するスライス画像を指示するための表示スライス画像指示情報を読影用端末4から受信し、第1のシリーズのスライス画像の内の表示スライス画像指示情報に応じたスライス画像を画像表示端末3に表示させると共に、第2のシリーズのスライス画像の内の表示スライス画像指示情報に応じて画像表示端末3に表示されたスライス画像に関連付けられたスライス画像を画像表示端末3に表示させる。
【0053】
図12は、スライス画像関連付け情報作成処理部81の動作を示すフローチャートである。
ステップS11において、スライス画像関連付け情報作成処理部81は、第1のシリーズのスライス画像の内の部位の境界部を表すスライス画像を第2のシリーズのスライス画像の内の部位の境界部を表すスライス画像にそれぞれ関連付ける情報を作成して、スライス画像関連付け情報格納部82に格納させる。ここでは、スライス画像関連付け情報作成処理部81は、第1のシリーズのスライス画像の内の第10のスライス画像(胸部の下端部を現す)を第2のシリーズのスライス画像の内の第12のスライス画像(胸部の下端部を現す)に、第1のシリーズのスライス画像の内の第11のスライス画像(腹部の上端部を現す)を第2のシリーズのスライス画像の内の第13のスライス画像(腹部の上端部を現す)にそれぞれ関連付ける情報を作成して、スライス画像関連付け情報格納部82に格納させる。また、スライス画像関連付け情報作成処理部81は、第1のシリーズのスライス画像の内の第18のスライス画像(腹部の下端部を現す)を第2のシリーズのスライス画像の内の第21のスライス画像(腹部の下端部を現す)に、第1のシリーズのスライス画像の内の第19のスライス画像(骨盤部の上端部を現す)を第2のシリーズのスライス画像の内の第22のスライス画像(骨盤部の上端部を現す)にそれぞれ関連付ける情報を作成して、スライス画像関連付け情報格納部82に格納させる。
【0054】
ステップS12において、スライス画像関連付け情報作成処理部81は、上端部及び下端部を表すスライス画像が第1及び第2のシリーズのスライス画像に含まれている部位について、第1のシリーズのスライス画像の内の当該部位(上端部及び下端部を除く)を表すスライス画像を第2のシリーズのスライス画像の内の当該部位(上端部及び下端部を除く)を表すスライス画像にそれぞれ関連付ける情報を作成して、スライス画像関連付け情報格納部82に格納させる。ここでは、腹部の上端部及び下端部を表すスライス画像が第1及び第2のシリーズのスライス画像に含まれているので、スライス画像関連付け情報作成処理部81は、第1のシリーズのスライス画像の内の第12〜第17のスライス画像(腹部(上端部及び下端部を除く)を表す)を第2のシリーズのスライス画像の内の第14〜第20のスライス画像(腹部(上端部及び下端部を除く)を表す)にそれぞれ関連付ける情報を作成して、スライス画像関連付け情報格納部82に格納させる。
【0055】
なお、ここで、第1のシリーズのスライス画像の内の腹部(上端部及び下端部を除く)を表すスライス画像の枚数(第12〜第17のスライス画像の計6枚)と、第2のシリーズのスライス画像の内の腹部(上端部及び下端部を除く)を表すスライス画像の枚数(第14〜第20のスライス画像の計7枚)とが異なっている。このような場合には、第1のシリーズの第12〜第17のスライス画像の各々を、第2のシリーズのスライス画像であって、第2のシリーズの第13のスライス画像(腹部の上端部を表す)との間のスライス枚数と第2のシリーズの第21のスライス画像(腹部の下端部を表す)との間のスライス枚数との比が第1のシリーズの第12〜第17のスライス画像の各々と第1のシリーズの第11のスライス画像(腹部の上端部を表す)との間のスライス枚数と第1のシリーズの第12〜第17のスライス画像の各々と第1のシリーズの第18のスライス画像(腹部の下端部)との間のスライス枚数との比に最も近いスライス画像に関連付けるようにすれば良い。
【0056】
ステップS13において、スライス画像関連付け情報作成処理部81は、上端部又は下端部のいずれかを表すスライス画像が第1及び第2のシリーズのスライス画像に含まれている部位について、第1のシリーズのスライス画像の内の当該部位(上端部又は下端部を除く)を表すスライス画像を第2のシリーズのスライス画像の内の当該部位(上端部又は下端部を除く)を表すスライス画像にそれぞれ関連付ける情報を作成して、スライス画像関連付け情報格納部82に格納させる。ここでは、胸部の下端部を表すスライス画像が第1及び第2のシリーズのスライス画像に含まれているので、スライス画像関連付け情報作成処理部81は、第1のシリーズのスライス画像の内の第1〜第9のスライス画像(胸部(下端部を除く)を表す)を第2のシリーズのスライス画像の内の胸部の下端部の直近上方を表す第3〜第11のスライス画像(胸部(下端部を除く)を表す)にそれぞれ関連付ける情報を作成して、スライス画像関連付け情報格納部82に格納させる。また、骨盤部の上端部を表すスライス画像が第1及び第2のシリーズのスライス画像に含まれているので、スライス画像関連付け情報作成処理部81は、第1のシリーズのスライス画像の内の第20〜第25のスライス画像(骨盤部(上端部を除く)を表す)を第2のシリーズのスライス画像の内の第23〜第28のスライス画像(骨盤部(上端部を除く)を表す)にそれぞれ関連付ける情報を作成して、スライス画像関連付け情報格納部82に格納させる。
【0057】
図13は、スライス画像表示処理部84の動作を示すフローチャートである。
ステップS21において、スライス画像表示処理部84は、初期表示スライス情報格納部83から初期表示スライス情報を読み出し、第1のシリーズのスライス画像の内の初期表示スライス情報によって決定されるスライス画像を表示するための画像データを格納部13から読み出し、読み出した画像データに基づくスライス画像を画像表示端末3の表示画面3aの第1の領域内に表示させる。
【0058】
ステップS22において、スライス画像表示処理部84は、スライス画像関連付け情報格納部82に格納されているスライス画像関連付け情報を参照し、ステップS21にて表示されたスライス画像に関連付けられたスライス画像を表示するための画像データを格納部13から読み出し、読み出した画像データに基づくスライス画像を画像表示端末3の表示画面3aの第2の領域内に表示させる。
【0059】
ステップS23において、スライス画像表示処理部84は、表示スライス指示情報を読影用端末4から受信したか否かをチェックし、表示スライス指示情報を読影用端末4から受信した場合には、処理をステップS24に移す。
【0060】
ステップS24において、スライス画像表示処理部84は、第1のシリーズのスライス画像の内の表示スライス指示情報に応じたスライス画像を表示するための画像データを格納部13から読み出し、読み出した画像データに基づくスライス画像を画像表示端末3の表示画面3aの第1の領域71内に表示させる。
【0061】
ステップS25において、スライス画像表示処理部84は、スライス画像関連付け情報格納部82に格納されているスライス画像関連付け情報を参照し、第2のシリーズのスライス画像の内のステップS24にて表示されたスライス画像に関連付けられたスライス画像を表示するための画像データを格納部13から読み出し、読み出した画像データに基づくスライス画像を画像表示端末3の表示画面3aの第2の領域72内に表示させ、処理をステップS23に戻す。
【0062】
次に、スライス画像表示処理部84の動作について、具体例を挙げて説明する。ここでは、初期表示スライス情報格納部83には、初期表示スライス情報として「第1のシリーズのスライス画像の内の最後のスライス画像」(ここでは、第25の画像データに基づくスライス画像(腹部)に相当)が格納されているものとする。
【0063】
図14(a)は、画像表示端末3の表示画面3aの例を示す図である。図14(a)に示すように、画像表示端末3の表示画面3aの領域71内には、第1のシリーズのスライス画像の内の初期表示スライス情報によって決定されるスライス画像(ここでは、第25のスライス画像)が表示されており(ステップS21参照)、画像表示端末3の表示画面3aの領域72内には、第2のシリーズのスライス画像の内の領域71内に表示されたスライス画像(第1のシリーズのスライス画像の内の第25のスライス画像)に関連付けられたスライス画像(ここでは、第28のスライス画像)が表示されている(ステップS22参照)。
【0064】
ここで、読影医が読影用端末4の所定のキー(例えば、カーソル移動キー等)を操作することで(ステップS23参照)、図15(b)に示すように、第1のシリーズのスライス画像の内の胸部を表すスライス画像(例えば、第10のスライス画像)を領域71内に表示させることができる(ステップS24参照)。そして、領域72内には、第2のシリーズのスライス画像の内の領域71内に表示されたスライス画像(ここでは、第1のシリーズのスライス画像の内の第10のスライス画像)に関連付けられたスライス画像(ここでは、第12のスライス画像)が表示される(ステップS25参照)。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、2つのシリーズに含まれる複数のスライス画像の各々について部位認識を行い、この部位認識結果に基づいて、第1のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像及び当該スライス画像に表された体部と略同一の体部を表す第2のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像を画像表示端末3に表示させることができる。従って、第1のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像及び当該スライス画像に表された体部と略同一の体部を表す第2のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像を画像表示端末3に表示させることを高速に行うことができる。また、第1のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像に表された体部と略同一の体部を表す第2のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像をより高い精度で決定することができる。
【0066】
本実施形態において、部位認識部12は、モダリティ1から直接画像サーバ2に入力された画像データについて部位認識処理を行っている。しかしながら、モダリティ1において生成された後で一旦記録媒体に格納された画像データを画像サーバ2に読み込むことにより、部位認識処理を行っても良い。また、表示処理部14が画像表示端末3に画像を表示する際に、部位認識処理及びスライス画像関連付け処理を行っても良い。
【0067】
また、本実施形態においては、1つのシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像及び当該スライス画像に表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像を並べて表示させることとしているが、1つのシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像と当該スライス画像に表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズのスライス画像に含まれているスライス画像とのサブトラクション画像を表示させるようにしても良い。
【0068】
さらに、本実施形態においては、スライス画像関連付け情報をスライス画像関連付け情報格納部82に格納することとしているが、スライス画像関連付け情報を格納部13に格納されているスライス画像に画像付帯情報又はタグとして付加することとしても良い。
【0069】
また、本実施形態においては、2つのシリーズのスライス画像(今回及び前回の検査において得られた2つのシリーズのスライス画像)を表示させることとしているが、3つ以上のシリーズのスライス画像を表示させることも可能である。この場合には、1つのシリーズのスライス画像(例えば、今回の検査において得られた1つのシリーズのスライス画像)を、他の2つ以上のシリーズのスライス画像に関連付けるようにすれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、医療用撮像モダリティによって取得された画像データに基づいて軸位断画像を表示するための医用画像表示処理装置、及び、そのような装置において用いられる医用画像表示処理プログラムにおいて利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態に係る医用画像表示処理装置を含む医用画像撮影システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す部位認識部の機能を示すブロック図である。
【図3】図1に示す部位認識部の動作を示すフローチャートである。
【図4】空気領域特徴量を用いた部位確信度スコアテーブルを示す図である。
【図5】空気領域特徴量及びその微分値を示す図である。
【図6】仮決定された部位(部位認識結果)をスライス順に配置した図である。
【図7】部位認識結果と参照部位との間のマッチングカーブを示す図である。
【図8】動的計画法によるマッチングカーブの探索に用いられる重みマップである。
【図9】動的計画法によるマッチングカーブの探索に用いられるコストマップである。
【図10】ニューラルネットを利用した部位の仮決定方法を説明するための図である。
【図11】図1に示す表示処理部の機能を示すブロック図である。
【図12】図1に示す表示処理部の動作を示すフローチャートである。
【図13】図1に示す表示処理部の動作を示すフローチャートである。
【図14】図1に示す画像表示端末に表示される画像の例を示す図である。
【図15】従来の画像表示端末に表示される画像の例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
1 モダリティ
1a コンピュータ断層撮影(CT)装置
1b コンピュータ放射線撮影(CR)装置
1c 磁気共鳴撮像(MRI)装置
1d ポジトロン断層撮影(PET)装置
1e 超音波撮像(US)装置
2 画像サーバ
3 画像表示端末
3a、4a、90 画面
4 読影用端末
4b 入力デバイス
11 制御部
12 部位認識部
13 格納部
14 表示処理部
21 特徴量計算部
22 部位確信度計算部
22a スコアテーブル記憶部
23 部位決定処理部
24 部位情報記憶部
25 部位修正処理部
81 スライス画像関連付け情報作成処理部
82 スライス画像関連付け情報格納部
83 初期表示スライス情報格納部
84 スライス画像表示処理部
71、72、91、92 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を撮像検査することによって得られた複数のシリーズの軸位断画像を表す画像データに基づいて軸位断画像を表示部に表示させる装置であって、
複数のシリーズの軸位断画像の各々に表された体部の部位を認識する部位認識手段と、
1つのシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像を前記表示部に表示させると共に、前記部位認識手段による認識結果に基づいて、前記表示部に表示されている軸位断画像によって表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像を前記表示部に表示させる表示処理手段と、
を具備する医用画像表示処理装置。
【請求項2】
前記部位認識手段が、
1シリーズの軸位断画像の各々に表された体部の部位を暫定的に決定する部位決定手段と、
1シリーズの軸位断画像に関する情報に基づいて、前記部位決定手段により少なくとも1つの軸位断画像について暫定的に決定された部位を修正する部位修正手段と、
を含む、請求項1記載の医用画像表示処理装置。
【請求項3】
前記表示処理手段が、
前記部位認識手段による認識結果に基づいて、1つのシリーズの軸位断画像の各々を当該軸位断画像に表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像に関連付ける軸位断画像関連付け処理手段と、
1つのシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像を前記表示部に表示させると共に、前記軸位断画像関連付け処理手段によって前記表示部に表示されている軸位断画像に関連付けられた他のシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像を前記表示部に表示させる軸位断画像表示処理手段と、
を含む、請求項1又は2記載の医用画像表示処理装置。
【請求項4】
前記部位認識手段が、頭部と、頸部と、胸部と、腹部と、骨盤部と、脚部と、肺野と、それらの内の隣接する2つの境界領域又はそれらの内の複数の領域を含む混在領域との内の少なくとも2つを部位として認識する、請求項1〜3のいずれか1項記載の医用画像表示処理装置。
【請求項5】
被検体を撮像検査することによって得られた複数のシリーズの軸位断画像を表す画像データに基づいて軸位断画像を表示部に表示させるためのプログラムであって、
複数のシリーズの軸位断画像の各々に表された体部の部位を認識する手順(a)と、
1つのシリーズの軸位断画像に含まれている1つの軸位断画像を前記表示部に表示させる手順(b)と、
手順(a)における認識結果に基づいて、前記表示部に表示されている軸位断画像によって表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像を前記表示部に表示させる手順(c)と、
をCPUに実行させる医用画像表示処理プログラム。
【請求項6】
手順(a)が、
1シリーズの軸位断画像の各々に表された体部の部位を暫定的に決定する手順(a1)と、
1シリーズの軸位断画像に関する情報に基づいて、手順(a1)において少なくとも1つの軸位断画像について暫定的に決定された部位を修正する手順(a2)と、
を含む、請求項5記載の医用画像表示処理プログラム。
【請求項7】
手順(c)が、
手順(a)における認識結果に基づいて、1つのシリーズの軸位断画像の各々を当該軸位断画像に表された体部と略同一の体部を表す他のシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像に関連付ける手順(c1)と、
手順(b)において表示された軸位断画像に手順(c1)において関連付けられた他のシリーズの軸位断画像に含まれている軸位断画像を前記表示部に表示させる手順(c2)と、
を含む、請求項5又は6記載の医用画像表示処理プログラム。
【請求項8】
手順(a)が、頭部と、頸部と、胸部と、腹部と、骨盤部と、脚部と、肺野と、それらの内の隣接する2つの境界領域又はそれらの内の複数の領域を含む混在領域との内の少なくとも2つを部位として認識することを含む、請求項5〜7のいずれか1項記載の医用画像表示処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−6188(P2008−6188A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−181609(P2006−181609)
【出願日】平成18年6月30日(2006.6.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】