説明

半導体チップの実装方法及び半導体チップの実装装置

【課題】半導体チップと回路基板とのギャップを高精度に制御することができる半導体チップの実装方法を提供する。
【解決手段】チップ側バンプと基板側バンプが接触する様に回路基板と半導体チップを配置し、チップ側バンプ及び基板側バンプに加熱処理を施して実装ノズルで荷重を印加してチップ側バンプと基板側バンプを一体化した後に冷却処理を施す半導体チップの実装方法において、加熱処理時または加熱処理前には実装ノズルを上昇し、冷却処理時には実装ノズルを下降する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体チップの実装方法及び半導体チップの実装装置に関する。詳しくは、フリップチップ方式による半導体チップの実装方法及び半導体チップの実装装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用ゲーム機やノート型パソコン、携帯型電話機等の各種電化製品の小型化、高性能化に伴い、その内部に使用される半導体パッケージの高密度化が進み、半導体パッケージを高密度に回路基板に実装するための高密度技術も益々進歩している。その1つとして、半導体チップを回路基板に直接フェースダウンで電気的に接続するフリップチップ方式による実装技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
以下、フリップチップ方式によって実装する従来の半導体パッケージの製造方法について図面を用いて説明する。なお、ここでは従来の半導体パッケージの製造方法としてガラスエポキシ基板から成る回路基板に半導体チップを実装する場合を例に挙げるが、半導体チップ同士の組み合わせ、即ち、半導体チップ上に半導体チップを実装することで半導体パッケージを製造しても良い。
【0004】
従来のフリップチップ方式による実装では、先ず、図4(a)で示す様に、半導体チップ101の電極102に、はんだを主成分とし、一般的にバンプと称される例えば約15μmの高さを有する突起電極103(以下、チップ側バンプと称する。)を形成する。
【0005】
また、チップ側バンプの形成とは別に、図4(b)で示す様に、半導体チップを実装する例えばガラスエポキシ基板から成る回路基板104の電極105に、はんだを主成分とし、約15μmの高さを有する突起電極106(以下、基板側バンプと称する。)を形成する。
【0006】
次に、図4(c)で示す様に、チップ側バンプが形成された半導体チップを反転して実装ノズル107で吸着固定を行い、半導体チップを吸着固定した状態の実装ノズルを回路基板の上方より下降させる。ここで、半導体チップに形成されたチップ側バンプと回路基板に形成された基板側バンプが接触した後も、実装ノズルを下降させる方向に荷重を印加して半導体チップに所定の荷重を印加する。なお、半導体チップに形成されたチップ側バンプと回路基板に形成された基板側バンプが接触し、チップ側バンプと基板側バンプとが突き合わせられた状態では、チップ側バンプ及び基板側バンプが潰れていないと仮定すると、図中符合Aで示す半導体チップと回路基板との間隙(ギャップ)は約30μmである。
【0007】
次に、図4(d)で示す様に、加熱処理を行いながら半導体チップと回路基板とのギャップが例えば約25μmとなるまで実装ノズルを下降させ、即ち、チップ側バンプ及び基板側バンプを成すはんだを溶融させた状態で実装ノズルを約5μm下降させることによってチップ側バンプと基板側バンプとを一体化し、半導体チップと回路基板を電気的に接続する。
【0008】
その後、半導体チップと電気的に接続された回路基板間に、例えば注入性の良いエポキシ樹脂を注入し、接続部を封止することによって、図4(e)で示す様な半導体パッケージを得ることができる。
【0009】
ここで、上記した従来の半導体パッケージの製造方法では、チップ側バンプと基板側バンプとを一体化する際に、チップ側バンプ及び基板側バンプを成すはんだが溶融するのに充分な温度に達する熱量を与え、その後、凝固するまでに一定の時間放置し、若しくは強制的に冷却してはんだを凝固させる必要がある。
【0010】
即ち、加熱処理によるチップ側バンプ及び基板側バンプを溶融させ、チップ側バンプと基板側バンプを一体化した後に冷却処理による凝固を行なうといった一連の流れを経ることによってチップ側バンプと基板側バンプの溶融接続が成立するのである。
【0011】
【特許文献1】特開平10−50769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、チップ側バンプ及び基板側バンプを溶融するために必要となる「加熱処理」を行なった場合には実装ノズルが膨張し、溶融して一体化したチップ側バンプ及び基板側バンプを凝固させるために必要となる「冷却処理」を行なった場合には実装ノズルが収縮するといった熱変化が生じ、半導体チップと回路基板とのギャップを高精度に制御することが困難であった。以下、この点について説明する。
【0013】
先ず、加熱処理によって実装ノズルが膨張しないと仮定すると、チップ側バンプと基板側バンプを突き合わせた状態の半導体チップと回路基板とのギャップと、半導体チップの実装後に求める半導体チップと回路基板とのギャップとの差分(上記した従来の半導体パッケージの製造方法の例の場合には、チップ側バンプと基板側バンプと突き合わせた状態の半導体チップと回路基板とのギャップである30μmと、半導体チップの実装後に求める半導体チップと回路基板とのギャップである25μmとの差分である5μm)だけ実装ノズルを下降させることによって、半導体チップと回路基板とのギャップが所望の値になると考えられる。
しかし、現実的には加熱処理により実装ノズルが膨張するために、実装ノズルを一切移動させなかったとしても、実装ノズルの膨張量だけ半導体チップと回路基板とのギャップが小さくなってしまい、チップ側バンプと基板側バンプを突き合わせた状態の半導体チップと回路基板とのギャップと、半導体チップの実装後に求める半導体チップと回路基板とのギャップとの差分だけ実装ノズルを下降させた場合には、必要以上に実装ノズルを下降させることとなり、結果として半導体チップと回路基板とのギャップが所望の値よりも小さな値となってしまう。
【0014】
また、冷却処理によって実装ノズルが膨張しないと仮定すると、冷却処理の前後で半導体チップと回路基板とのギャップに変動が生じないと考えられるために、冷却処理前(バンプの凝固前)に半導体チップと回路基板とのギャップが所望の値になっている場合には、実装ノズルを移動させることなくそのままの状態で冷却処理を行なうことで、冷却処理後(バンプの凝固後)において半導体チップと回路基板とのギャップが所望の値になると考えられる。
しかし、現実的には冷却処理により実装ノズルが収縮するために、実装ノズルを一切移動させなかったとしても、実装ノズルの収縮量だけ半導体チップと回路基板とのギャップが大きくなってしまい、結果として冷却処理後(バンプの凝固後)において半導体チップと回路基板とのギャップが所望の値よりも大きな値となってしまう。
【0015】
従って、上記した従来の半導体パッケージの製造方法の様に、加熱処理時には実装ノズルを5μmだけ下降させ、冷却処理時には実装ノズルは移動させないといった方式だと、加熱処理によって実装ノズルが膨張し、冷却処理により実装ノズルが収縮することに起因して半導体チップと回路基板とのギャップを高精度に制御できないこととなる。
【0016】
本発明は以上の点に鑑みて創案されたものであって、半導体チップと回路基板とのギャップを高精度に制御することができる半導体チップの実装方法及び半導体チップの実装装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明に係る半導体チップの実装方法は、第1の突起電極が形成された基板上に第2の突起電極が形成された半導体チップを、前記第1の突起電極と前記第2の突起電極とを接触させて配置する工程と、前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に加熱処理を施し、前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極を一体化する工程と、一体化した前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に冷却処理を施す工程とを備える半導体チップの実装方法において、前記加熱処理時または前記加熱処理前に前記基板と前記半導体チップとの間隙が大きくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程、若しくは、前記冷却処理時に前記基板と前記半導体チップとの間隙が小さくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程を備える。
【0018】
ここで、加熱処理時または加熱処理前に基板と半導体チップとの間隙が大きくなる方向に押圧治具を移動させることによって、加熱処理により基板と半導体チップとの間隙が小さくなってしまう現象を抑制することができる。
詳しくは、加熱処理を施すことで押圧治具は膨張するために、加熱処理前(膨張前)は基板と半導体チップとの間隙が所望の距離(以下、「設定距離」と称する)であったとしても、加熱処理に起因して基板と半導体チップとの間隙が設定距離よりも小さくなってしまうと考えられるのであるが、加熱処理時または加熱処理前に基板と半導体チップとの間隙が大きくなる方向に押圧治具を移動することによって、即ち、加熱処理による膨張量を考慮した上で、押圧治具の膨張後における基板と半導体チップとの間隙が設定距離となる様に押圧治具を移動することによって、加熱処理を施すことで押圧治具が膨張したとしても基板と半導体チップとの間隙を概ね設定距離に保つことができるのである。
【0019】
また、冷却処理時に基板と半導体チップとの間隙が小さくなる方向に押圧治具を移動させることによって、冷却処理により基板と半導体チップとの間隙が大きくなってしまう現象を抑制することができる。
詳しくは、冷却処理を施すことで押圧治具は収縮するために、冷却処理前(収縮前)は基板と半導体チップとの間隙が設定距離であったとしても、冷却処理に起因して基板と半導体チップとの間隙が設定距離よりも大きくなってしまうと考えられるのであるが、冷却処理時に基板と半導体チップとの間隙が小さくなる方向に押圧治具を移動することによって、即ち、冷却処理による収縮量を考慮した上で、押圧治具の収縮後における基板と半導体チップとの間隙が設定距離となる様に押圧治具を移動することによって、冷却処理を施すことで押圧治具が収縮したとしても基板と半導体チップとの間隙を概ね設定距離に保つことができるのである。
【0020】
また、本発明に係る半導体チップの実装方法は、第1の突起電極が形成された第1の半導体チップ上に第2の突起電極が形成された第2の半導体チップを、前記第1の突起電極と前記第2の突起電極とを接触させて配置する工程と、前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に加熱処理を施し、押圧治具により前記第2の半導体チップに荷重を印加して、前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極を一体化する工程と、一体化した前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に冷却処理を施す工程とを備える半導体チップの実装方法において、前記加熱処理時または前記加熱処理前に前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間隙が大きくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程、若しくは、前記冷却処理時に前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間隙が小さくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程を備える。
【0021】
ここで、加熱処理時または加熱処理前に第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間隙が大きくなる方向に押圧治具を移動させることによって、加熱処理により第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間隙が小さくなってしまう現象を抑制することができる。
また、冷却処理時に第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間隙が小さくなる方向に押圧治具を移動させることによって、冷却処理により第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間隙が大きくなってしまう現象を抑制することができる。
【0022】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る半導体チップの実装装置は、第1の突起電極が形成された基板上に第2の突起電極が形成された半導体チップを、前記第1の突起電極と前記第2の突起電極とを接触させて配置して前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に加熱処理を施し、前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極を一体化した後に、一体化した前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に冷却処理を施す半導体チップの実装装置において、前記加熱処理時または前記加熱処理前に前記基板と前記半導体チップとの間隙が大きくなる方向に前記押圧治具を移動させると共に、前記冷却処理時に前記基板と前記半導体チップとの間隙が小さくなる方向に前記押圧治具を移動させる押圧治具制御手段を備える。
【0023】
ここで、加熱処理時または加熱処理前に基板と半導体チップとの間隙が大きくなる方向に押圧治具を移動させると共に、冷却処理時に基板と半導体チップとの間隙が小さくなる方向に押圧治具を移動させる押圧治具制御手段によって、加熱処理により基板と半導体チップとの間隙が小さくなってしまう現象を抑制することができると共に、冷却処理により基板と半導体チップとの間隙が大きくなってしまう現象を抑制することができる。
【0024】
また、本発明に係る半導体チップの実装装置は、第1の突起電極が形成された第1の半導体チップ上に第2の突起電極が形成された第2の半導体チップを、前記第1の突起電極と前記第2の突起電極とを接触させて配置して前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に加熱処理を施し、押圧治具により前記第2の半導体チップに荷重を印加して前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極を一体化した後に、一体化した前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に冷却処理を施す半導体チップの実装装置において、前記加熱処理時または前記加熱処理前に前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間隙が大きくなる方向に前記押圧治具を移動させると共に、前記冷却処理時に前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間隙が小さくなる方向に前記押圧治具を移動させる押圧治具制御手段を備える。
【0025】
ここで、加熱処理時または加熱処理前に第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間隙が大きくなる方向に押圧治具を移動させると共に、冷却処理時に第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間隙が小さくなる方向に押圧治具を移動させる押圧治具制御手段によって、加熱処理により第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間隙が小さくなってしまう現象を抑制することができると共に、冷却処理により第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間隙が大きくなってしまう現象を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
上記した本発明の半導体チップの実装方法及び半導体チップの実装装置では、加熱処理により基板と半導体チップとの間隙が小さくなってしまう現象を抑制することができると共に、冷却処理により基板と半導体チップとの間隙が大きくなってしまう現象を抑制することができるために、基板と半導体チップとの間隙(ギャップ)を高精度に制御することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
なお、以下では回路基板と半導体チップとのギャップが例えば25μmとなる様に半導体チップを回路基板に実装する場合を例に挙げて説明を行う。また、以下ではガラスエポキシ基板から成る回路基板に半導体チップを実装する場合を例に挙げるが、半導体チップ同士の組み合わせ、即ち、半導体チップ上に半導体チップを実装することで半導体パッケージを製造しても良い。
【0028】
図1は半導体チップを回路基板に実装する際の押圧治具である実装ノズルの位置及び温度、並びに半導体チップに印加される荷重値の時間的変化を示したグラフの一例である。
【0029】
本発明を適用した半導体チップの実装方法の一例では、上記した従来の半導体チップの実装方法と同様に、先ず、半導体チップの電極に、はんだを主成分とする約15μmの高さを有するチップ側バンプを形成すると共に(図4(a)参照。)、半導体チップを実装するガラスエポキシ基板から成る回路基板の電極に、はんだを主成分とする例えば約15μmの高さを有する基板側バンプを形成する(図4(b)参照。)。
【0030】
次に、チップ側バンプが形成された半導体チップを反転して実装ノズルで吸着固定を行い、半導体チップを吸着固定した状態の実装ノズルを回路基板の上方より下降させる(図4(c)参照。)。なお、実装ノズルを回路基板の上方より下降させる動作は図1中符合aで示す期間である。
【0031】
ところで、半導体チップに形成されたチップ側バンプと回路基板に形成された基板側バンプが接触した後も実装ノズルの下降動作を停止させずに、実装ノズルにより半導体チップに印加される荷重値が設定値に達した際に実装ノズルの下降を停止する。また、実装ノズルの下降動作の停止と共に、実装ノズルの温度を上昇させて半導体チップの加熱処理を開始する。なお、半導体チップの加熱処理は図1中符合bで示す期間である。
【0032】
次に、半導体チップの加熱処理によってバンプ(チップ側バンプ及び基板側バンプ)が溶融し、半導体チップに印加される荷重値が0となった後に、時間の経過に伴って徐々に実装ノズルを上昇させる。即ち、回路基板と半導体チップとのギャップが25μmとなる様に、時間の経過に伴って徐々に実装ノズルを上昇させる。ここで、実装ノズルの動作制御(上昇動作及び下降動作の制御)については、実装ノズル制御手段で行なっているのであるが、実装ノズル制御手段での動作制御については、予めメモリされた通りに制御を行なっても良いし、例えばレーザ変位計等を用いて回路基板と半導体チップとのギャップを計測し、こうした計測結果に基づいて制御を行なっても良い。なお、回路基板と半導体チップとのギャップが25μmとなる様に、実装ノズルを上昇させているのは、図1中符合cで示す期間である。
尚、バンプの接続信頼性を確保するために、実装ノズルの上昇動作は、加熱処理による実装ノズルの膨張スピードよりも確実に遅いスピードで行なうことが好ましい。
以下、ギャップを25μmにすべく実装ノズルを上昇させる必要性について詳細に説明を行う。
【0033】
先ず、約15μmの高さを有するチップ側バンプと約15μmの高さを有する基板側バンプとを突き合わせた状態(バンプの溶融前の状態)では、回路基板と半導体チップとのギャップは約30μmであり、バンプを一体化した後に回路基板と半導体チップとのギャップを25μmとするためには、半導体チップを回路基板側に5μmだけ近づける必要がある。即ち、加熱処理によって実装ノズルが膨張しないと仮定した場合には、実装ノズルを5μmだけ下降させれば良いということになる。
しかし、実際には加熱処理によって実装ノズルが膨張し、実装ノズルの膨張量は実装ノズルを下降させたものと実質的に同一視できるために、加熱処理によって実装ノズルが膨張しないと仮定した場合と同様に実装ノズルを下降させたのでは、回路基板と半導体チップとのギャップは25μmよりも小さくなってしまう。
そこで、(1)(加熱処理によって実装ノズルが膨張しないと仮定した場合と同様に)実装ノズルを5μm下降させるという制御を行ないつつ、(2)加熱処理による実装ノズルの膨張量を相殺すべく膨張量だけ実装ノズルを上昇させるという制御を行なうことによって、加熱処理により実装ノズルが膨張したとしても、回路基板と半導体チップとの間隙を25μmとすることができるのである。
なお、図1中符合Z1は、加熱処理による実装ノズルの膨張を考慮した上で、半導体チップを回路基板側に5μmだけ近づけるための実装ノズルの移動距離(上昇距離)である。例えば、加熱処理により実装ノズルが半導体チップを回路基板に近づける方向に10μmだけ膨張するとした場合には、実装ノズルを5μmだけ上昇することで(Z1=5μmとすることで)、結果的に半導体チップを回路基板側に5μmだけ近づけることができる。
【0034】
続いて、回路基板と半導体チップとの間隙を25μmに保ちながら、一体化したバンプを凝固させるべく、時間の経過に伴って実装ノズルを下降させながら冷却処理を行なう。なお、冷却期間は図1中符合dで示す期間である。
【0035】
ここで、加熱処理の段階で回路基板と半導体チップとのギャップは25μmに保たれているとすると、そのままの状態(回路基板と半導体チップとのギャップが25μmの状態)で一体化したバンプを凝固させれば良いことになる。即ち、冷却処理によって実装ノズルが収縮しないと仮定した場合には、実装ノズルを移動させる必要はないということになる。
しかし、実際には冷却処理によって実装ノズルが収縮し、実装ノズルの収縮量は実装ノズルを上昇させたものと実質的に同一視できるために、冷却処理によって実装ノズルが収縮しないと仮定した場合と同様に実装ノズルを移動させなかったのでは、回路基板と半導体チップとのギャップが25μmよりも大きくなってしまう。
そこで、(1)(冷却処理によって実装ノズルが収縮しないと仮定した場合と同様に)実装ノズルの移動を行なわないという制御を行いつつ、(2)冷却処理による実装ノズルの収縮量を相殺すべく収縮量だけ実装ノズルを下降させるという制御を行なうことによって、冷却処理により実装ノズルが収縮したとしても、回路基板と半導体チップとの間隙を25μmとすることができるのである。
なお、図1中符合Z2は、冷却処理による実装ノズルの収縮を考慮した上で、回路基板と半導体チップとのギャップに変更を加えないための実装ノズルの移動距離(下降距離)である。即ち、冷却処理による実装ノズルの収縮を相殺するために必要な実装ノズルの移動距離(下降距離)である。例えば、冷却処理により実装ノズルが半導体チップを回路基板から遠ざける方向に10μmだけ収縮するとした場合には、実装ノズルを10μmだけ下降させることで(Z2=10μmとすることで)、冷却処理による実装ノズルの収縮を相殺することができる。
【0036】
上記した様に、冷却処理による実装ノズルの収縮が回路基板と半導体チップとのギャップである25μmを変動させないように、時間の経過に伴って徐々に実装ノズルを下降させるのであるが、バンプが凝固しているときに瞬間的に実装ノズルの収縮が生じることも充分に考えられる。
このような場合には実装ノズルを下降させる動作が実装ノズルの瞬間的な収縮動作に追随できずに、結果的にバンプにストレスを与えることとなり、図2(a)や図2(b)で示す様に、電極(半導体チップの電極10a、回路基板の電極10b)とバンプ20との接続部にクラックが生じたり、電極とバンプとの接続部から引きちぎれが生じたりする原因となり、接続信頼性が著しく低下する一因となってしまう。
従って、バンプの接続信頼性を確保するために、実装ノズルの下降動作は、冷却処理による実装ノズルの収縮スピードよりも確実に早いスピードで行なうことが好ましい。
【0037】
なお、半導体チップを回路基板に実装した後に、半導体チップと電気的に接続された回路基板間に、例えば注入性の良いエポキシ樹脂を注入し、接続部を封止することによって、図4(e)で示す様な半導体パッケージを得ることができる。
【0038】
上記した本発明を適用した半導体チップの実装方法の一例では、加熱処理時に実装ノズルを徐々に上昇させることによって、加熱処理で実装ノズルが膨張することによる回路基板と半導体チップとのギャップへの悪影響を抑制し、冷却処理時に実装ノズルを徐々に下降させることによって、冷却処理で実装ノズルが収縮することによる回路基板と半導体チップとのギャップへの悪影響を抑制することができ、回路基板と半導体チップとのギャップを高精度にコントロールすることができる。
【0039】
図3は半導体チップを回路基板に実装する際の押圧治具である実装ノズルの位置及び温度、並びに半導体チップに印加される荷重値の時間的変化を示したグラフの他の一例である。
【0040】
本発明を適用した半導体チップの実装方法の他の一例では、上記した本発明を適用した半導体チップの実装方法の一例と同様に、先ず、半導体チップの電極に、はんだを主成分とする約15μmの高さを有するチップ側バンプを形成すると共に、半導体チップを実装するガラスエポキシ基板から成る回路基板の電極に、はんだを主成分とする約15μmの高さを有する基板側バンプを形成する。
【0041】
次に、チップ側バンプが形成された半導体チップを反転して実装ノズルで吸着固定を行い、半導体チップを吸着固定した状態の実装ノズルを回路基板の上方より下降させる。なお、実装ノズルを回路基板の上方より下降させる動作は図3中符合eで示す期間である。
【0042】
ところで、半導体チップに形成されたチップ側バンプと回路基板に形成された基板側バンプが接触した後に、加熱処理による実装ノズルの膨張量よりも5μmを減じた距離(図2中符合Z1で示す距離)だけ実装ノズルを上昇させる。即ち、加熱処理を施した後の回路基板と半導体チップをのギャップが25μmとなる様に、加熱処理による実装ノズルの膨張量よりも5μmを減じた距離だけ実装ノズルを上昇させる。なお、加熱処理により実装ノズルが膨張した場合に、回路基板と半導体チップとのギャップが25μmとなる様に、実装ノズルを上昇させるのは図3中符合fで示すタイミングである。
以下、この点について詳しく説明を行う。
【0043】
先ず、約15μmの高さを有するチップ側バンプと約15μmの高さを有する基板側バンプとを突き合わせた状態(バンプの溶融前の状態)では、回路基板と半導体チップとのギャップは約30μmであり、バンプを一体化した後に回路基板と半導体チップとのギャップを25μmとするためには、半導体チップを回路基板側に5μmだけ近づける必要がある。即ち、加熱処理によって実装ノズルが膨張しないと仮定した場合には、実装ノズルを5μmだけ下降させれば良いということになる。
しかし、実際には加熱処理によって実装ノズルが膨張し、実装ノズルの膨張量は実装ノズルを下降させたものと同一視できるために、加熱処理によって実装ノズルが膨張しないと仮定した場合と同様に実装ノズルを下降させたのでは、回路基板と半導体チップとのギャップは25μmよりも小さくなってしまう。
そこで、加熱処理による実装ノズルの膨張量から5μmを減じた距離だけ実装ノズルを上昇させておくことによって、加熱処理により実装ノズルが膨張した場合に、回路基板と半導体チップとのギャップを25μmとすることができるのである。
【0044】
ここで、本実施例では、半導体チップの加熱処理によってバンプが溶融した後に時間の経過に伴って徐々に実装ノズルを上昇させる方法(本発明を適用した半導体チップの実装方法の一例で採用している実装ノズルの制御方法)ではなく、加熱処理を行なう前に実装ノズルを上昇させており、こうした方法を採用することによって、バンプの接続信頼性を確保することができる。
即ち、加熱処理によってバンプが溶融した後に時間の経過に伴って徐々に実装ノズルを上昇させる方法も加熱処理前に実装ノズルを上昇させる方法も、加熱処理による実装ノズルの膨張が回路基板と半導体チップとのギャップである25μmを変動させないように実装ノズルを制御する方法であるが、バンプを溶融しているときに瞬間的に実装ノズルの膨張が生じることも考えられる。
このような場合に、時間の経過に伴って徐々に実装ノズルを上昇させる方法を採用していたのでは、実装ノズルを上昇させる動作が実装ノズルの瞬間的な膨張動作に追従できずに、結果的にバンプにストレスを与えることとなり、図2(a)や図2(b)で示す様に、電極(半導体チップの電極、回路基板の電極)とバンプの接続部にクラックが生じたり、電極とバンプとの接続部から引きちぎれが生じたりする原因となり、接続信頼性が低下する一因となるとも考えられる。
従って、上記した通り、加熱処理を行なう前に実装ノズルを上昇させるといった実装ノズルの制御方法を採用することによって、バンプの接続信頼性を確保することができるのである。
【0045】
続いて、半導体チップの加熱処理によってバンプ(チップ側バンプ及び基板側バンプ)を溶融し、チップ側バンプと基板側バンプとを一体化する。上記した様に、加熱処理を行う前に、加熱処理による実装ノズルの膨張量よりも5μmを減じた距離だけ実装ノズルを上昇させているために、加熱処理を行なうことによって回路基板と半導体チップとのギャップが25μmとなっている。なお、加熱処理を施すことにより実装ノズルが膨張している期間は図3中符合gで示す期間である。
【0046】
その後、回路基板と半導体チップとの間隙の25μmを確保しながら、一体化したバンプを凝固させるべく、時間の経過に伴って実装ノズルを下降させながら冷却処理を行なう。なお、冷却期間は図3中符合hで示す期間である。
【0047】
なお、半導体チップを回路基板に実装した後は、半導体チップと電気的に接続された回路基板間に、例えば注入性の良いエポキシ樹脂を注入し、接続部を封止することによって、図4(e)で示す様な半導体パッケージを得ることができる。
【0048】
上記した本発明を適用した半導体チップの実装方法の他の一例では、加熱処理前に実装ノズルを上昇させることによって、加熱処理で実装ノズルが膨張することによる回路基板と半導体チップとのギャップへの悪影響を抑制し、冷却処理時に実装ノズルを徐々に下降させることによって、冷却処理で実装ノズルが収縮することによる回路基板と半導体チップとのギャップへの悪影響を抑制することができ、回路基板と半導体チップとのギャップを高精度にコントロールすることができる。
【0049】
ここで、表1に従来のフリップチップ方式による半導体チップの実装におけるバンプの剥れ発生数及び剥れ発生率と、本発明を適用したフリップチップ方式による半導体チップの実装におけるバンプの剥れ発生数及び剥れ発生率とを示している。なお、表1は半導体チップ上に半導体チップをフリップチップ方式により実装した場合についてのバンプの剥れ発生数及び剥れ発生率を示している。
【0050】
【表1】

【0051】
表1からも明らかな様に、本発明を適用したフリップチップ方式による半導体チップの実装においては半導体チップと半導体チップとのギャップを高精度にコントロールすることができるために、従来のフリップチップ方式による半導体チップの実装方法と比較すると剥れ発生率が低減している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】半導体チップを回路基板に実装する際の実装ノズルの位置及び温度、並びに半導体チップに印加される荷重値の時間的変化を示したグラフの一例である。
【図2】電極とバンプとの間に生じるクラックや引きちぎれ現象を説明するための模式図である。
【図3】半導体チップを回路基板に実装する際の実装ノズルの位置及び温度、並びに半導体チップに印加される荷重値の時間的変化を示したグラフの他の一例である。
【図4】従来の半導体パッケージの製造方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0053】
10a 半導体チップの電極
10b 回路基板の電極
20 バンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の突起電極が形成された基板上に第2の突起電極が形成された半導体チップを、前記第1の突起電極と前記第2の突起電極とを接触させて配置する工程と、
前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に加熱処理を施し、押圧治具により前記半導体チップに荷重を印加して、前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極を一体化する工程と、
一体化した前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に冷却処理を施す工程とを備える半導体チップの実装方法において、
前記加熱処理時または前記加熱処理前に前記基板と前記半導体チップとの間隙が大きくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程、若しくは、前記冷却処理時に前記基板と前記半導体チップとの間隙が小さくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程を備える
ことを特徴とする半導体チップの実装方法。
【請求項2】
前記加熱処理時または前記加熱処理前に前記基板と前記半導体チップとの間隙が大きくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程と、
前記冷却処理時に前記基板と前記半導体チップとの間隙が小さくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体チップの実装方法。
【請求項3】
前記冷却処理時には、同冷却処理による前記押圧治具の収縮速度よりも速い速度で前記押圧治具を移動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体チップの実装方法。
【請求項4】
前記加熱処理時には、同加熱処理による前記押圧治具の膨張速度よりも遅い速度で前記押圧治具を移動させ、前記冷却処理時には、同冷却処理による前記押圧治具の収縮速度よりも早い速度で前記押圧治具を移動させる
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体チップの実装方法。
【請求項5】
第1の突起電極が形成された第1の半導体チップ上に第2の突起電極が形成された第2の半導体チップを、前記第1の突起電極と前記第2の突起電極とを接触させて配置する工程と、
前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に加熱処理を施し、押圧治具により前記第2の半導体チップに荷重を印加して、前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極を一体化する工程と、
一体化した前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に冷却処理を施す工程とを備える半導体チップの実装方法において、
前記加熱処理時または前記加熱処理前に前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間隙が大きくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程、若しくは、前記冷却処理時に前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間隙が小さくなる方向に前記押圧治具を移動させる工程を備える
ことを特徴とする半導体チップの実装方法。
【請求項6】
第1の突起電極が形成された基板上に第2の突起電極が形成された半導体チップを、前記第1の突起電極と前記第2の突起電極とを接触させて配置して前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に加熱処理を施し、押圧治具により前記半導体チップに荷重を印加して前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極を一体化した後に、一体化した前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に冷却処理を施す半導体チップの実装装置において、
前記加熱処理時または前記加熱処理前に前記基板と前記半導体チップとの間隙が大きくなる方向に前記押圧治具を移動させると共に、前記冷却処理時に前記基板と前記半導体チップとの間隙が小さくなる方向に前記押圧治具を移動させる押圧治具制御手段を備える
ことを特徴とする半導体チップの実装装置。
【請求項7】
第1の突起電極が形成された第1の半導体チップ上に第2の突起電極が形成された第2の半導体チップを、前記第1の突起電極と前記第2の突起電極とを接触させて配置して前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に加熱処理を施し、押圧治具により前記第2の半導体チップに荷重を印加して前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極を一体化した後に、一体化した前記第1の突起電極及び前記第2の突起電極に冷却処理を施す半導体チップの実装装置において、
前記加熱処理時または前記加熱処理前に前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間隙が大きくなる方向に前記押圧治具を移動させると共に、前記冷却処理時に前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間隙が小さくなる方向に前記押圧治具を移動させる押圧治具制御手段を備える
ことを特徴とする半導体チップの実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−214241(P2007−214241A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30690(P2006−30690)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】