説明

半導体チップ接合用接着剤

【課題】硬化物の線膨張率及び弾性率が低く、接合された半導体チップへの応力の発生を低減することでハンダ等の導通部分のクラックの発生を防止し、信頼性の高い半導体装置を製造することができる半導体チップ接合用接着剤を提供する。また、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムを提供する。
【解決手段】硬化性化合物、硬化剤及びポリイミド粒子を含有する半導体チップ接合用接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物の線膨張率及び弾性率が低く、接合された半導体チップへの応力の発生を低減することでハンダ等の導通部分のクラックの発生を防止し、信頼性の高い半導体装置を製造することができる半導体チップ接合用接着剤に関する。また、本発明は、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造方法において、半導体チップを基板等に接着固定(フリップチップボンディング)する際には、例えば、液状エポキシ等の接着剤が用いられる。フリップチップボンディング工程において用いられる接着剤には、接合後、接合された半導体チップや、ハンダ等からなるバンプ等の導通部分にできる限り応力を発生させない性質が求められる。半導体チップに応力が発生すると、基板と半導体チップとが剥がれたり、導通部分にクラックが入ったりすることによって、半導体装置の導通不良等が生じるためである。
【0003】
半導体チップへの応力は、接着剤を加熱硬化した温度から冷却する過程において、半導体チップと、接着剤硬化物と、基板との間の収縮率の温度依存性(線膨張率)の差、及び、硬化物の弾性率が大きな要因であり、接着剤硬化物の線膨張率と弾性率とを低下させることで抑制できると考えられている。従来、半導体チップへの応力の発生を低減するために、接着剤に無機充填材を大量に添加することによって硬化物の線膨張率を低下させる方法が用いられてきた。例えば、特許文献1に開示される接着性、速硬化性、信頼性に優れた半導体用ダイアタッチペーストには、必須成分として銀粉、シリカ等の充填材が添加されている。
【0004】
また、近年、半導体装置の小型化、高集積化への要望に伴って配線及び配線間距離の微細化が進行し、半導体チップの製造に用いられる配線用絶縁膜材料として、比誘電率の小さい、いわゆるLow−k材が注目を集めており、Low−k材を用いた半導体チップに対しては、従来の無機充填材を添加した接着剤では充分に対応できなくなっている。
【0005】
Low−k材は、配線及び配線間距離の微細化に起因する配線遅延を防止するために配線用絶縁膜材料として用いられており、例えば、SiOC、SiOF等からなる硬く脆い多孔質状の材料であるため、接合された半導体チップに大きな応力が発生した場合には剥離を生じやすく、ハンダ等の導通部分にクラックを生じやすい。そのため、Low−k材を用いる場合にも信頼性の高い半導体装置を製造するためには、半導体チップへの応力の発生をより厳密に低減する必要があり、硬化物が低線膨張率であるだけでなく低弾性率でもある接着剤が求められる。しかし、無機充填材の添加量を増やすと、接着剤硬化物の線膨張率を低下させることはできるものの同時に弾性率を上昇させてしまうことから、低線膨張率と低弾性率とを同時に実現することのできる新たな方法が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−172443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、硬化物の線膨張率及び弾性率が低く、接合された半導体チップへの応力の発生を低減することでハンダ等の導通部分のクラックの発生を防止し、信頼性の高い半導体装置を製造することができる半導体チップ接合用接着剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、硬化性化合物、硬化剤及びポリイミド粒子を含有する半導体チップ接合用接着剤である。
以下、本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、硬化性化合物及び硬化剤を含有する半導体チップ接合用接着剤にポリイミド粒子を添加することにより、硬化物の線膨張率及び弾性率が低い半導体チップ接合用接着剤を製造することができ、該半導体チップ接合用接着剤を用いると、接合された半導体チップへの応力を小さくすることができ、ハンダ等の導通部分のクラックの発生を良好に防止することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、硬化性化合物を含有する。
上記硬化性化合物は特に限定されず、例えば、付加重合、重縮合、重付加、付加縮合、又は、開環重合等の反応により硬化する化合物が挙げられる。上記硬化性化合物として、具体的には、例えば、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、キシレン樹脂、アルキル−ベンゼン樹脂、エポキシアクリレート樹脂、珪素樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性化合物が挙げられる。なかでも、接合後に得られる半導体装置の信頼性及び接合強度が優れることから、エポキシ樹脂が好ましい。
【0011】
上記エポキシ樹脂は特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型、ビスフェノールS型等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型等のノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル等の芳香族エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、及び、これらの変性物、水添化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0012】
上記硬化性化合物として上記エポキシ樹脂を用いる場合、上記硬化性化合物は、上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有してもよい。上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有することで、得られる半導体チップ接合用接着剤が靭性をもち、優れた耐衝撃性を有することができる。
【0013】
上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物は特に限定されず、例えば、アミノ基、ウレタン基、イミド基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基等を有する高分子化合物等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を有する高分子化合物が好ましい。
上記硬化性化合物として上記エポキシ樹脂を用いる場合には、更に、上記エポキシ基を有する高分子化合物を含有することで、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物が優れた靭性を発現する。即ち、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物は、上記エポキシ樹脂に由来する優れた機械的強度、耐熱性及び耐湿性と、上記エポキシ基を有する高分子化合物に由来する優れた靭性とを兼備することにより、高い接着信頼性や高い導通信頼性を発現することができる。
【0014】
上記エポキシ基を有する高分子化合物は、末端及び/又は側鎖(ペンダント位)にエポキシ基を有する高分子化合物であれば特に限定されず、例えば、エポキシ基含有アクリルゴム、エポキシ基含有ブタジエンゴム、ビスフェノール型高分子量エポキシ樹脂、エポキシ基含有フェノキシ樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有ウレタン樹脂、エポキシ基含有ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、エポキシ基を多く含み、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物が優れた機械的強度、耐熱性等を有することができることから、エポキシ基含有アクリル樹脂が好ましい。これらのエポキシ基を有する高分子化合物は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0015】
上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、重量平均分子量の好ましい下限は1万である。重量平均分子量が1万未満であると、得られる半導体チップ接合用接着剤の造膜性が不充分となり、例えば、半導体チップ接合用接着剤をフィルム状にして用いようとしても、フィルムとして形状を保持することができないことがある。
【0016】
上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物として、上記エポキシ基を有する高分子化合物、特にエポキシ基含有アクリル樹脂を用いる場合、エポキシ当量の好ましい下限は200、好ましい上限は1000である。エポキシ当量が200未満であると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物が堅くて脆くなることがある。エポキシ当量が1000を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物の機械的強度や耐熱性が不充分となることがある。
【0017】
本発明の半導体チップ接合用接着剤が上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物を含有する場合、上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量は特に限定されないが、上記エポキシ樹脂100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が500重量部である。上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が1重量部未満であると、熱によるひずみが発生する際、靭性が不足し、接着信頼性が劣ることがある。上記エポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する高分子化合物の含有量が500重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物の耐熱性が低下することがある。
【0018】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、硬化剤を含有する。
上記硬化剤は特に限定されず、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノール系硬化剤等が挙げられる。なかでも、酸無水物硬化剤が好ましい。
【0019】
上記酸無水物硬化剤は特に限定されないが、2官能酸無水物硬化剤が好ましい。上記2官能酸無水物硬化剤は特に限定されず、例えば、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸等が挙げられる。
【0020】
また、上記酸無水物硬化剤として、3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を用いてもよい。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子は特に限定されず、例えば、無水トリメリット酸等の3官能の酸無水物からなる粒子、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等の4官能以上の酸無水物からなる粒子等が挙げられる。
【0021】
上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.1μm、好ましい上限が20μmである。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、硬化剤粒子の凝集が生じ、得られる半導体チップ接合用接着剤が増粘することがある。上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の平均粒子径が20μmを超えると、硬化時に硬化剤粒子が充分に拡散することができず、硬化不良となることがある。
【0022】
上記硬化剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が5重量部、好ましい上限が150重量部である。上記硬化剤の含有量が5重量部未満であると、得られる半導体チップ接合用接着剤が充分に硬化しないことがある。上記硬化剤の含有量が150重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の接続信頼性が低下することがある。上記硬化剤の含有量は、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい下限が10重量部、より好ましい上限が140重量部である。
【0023】
また、上記硬化剤が、上記2官能酸無水物硬化剤と上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子とを含有する場合、これらの配合比は特に限定されないが、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量(重量)を上記2官能酸無水物硬化剤の含有量(重量)で除した値[=(3官能以上の酸無水物硬化剤粒子の含有量)/(2官能酸無水物硬化剤の含有量)]の好ましい下限が0.1、好ましい上限が10である。上記値が0.1未満であると、上記3官能以上の酸無水物硬化剤粒子を添加する効果が充分に得られないことがある。上記値が10を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物が脆くなり、充分な接着信頼性が得られないことがある。上記値のより好ましい下限は0.2、より好ましい上限は8である。
【0024】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、硬化促進剤を含有することが好ましい。
上記硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾール系硬化促進剤、3級アミン系硬化促進剤等が挙げられる。なかでも、硬化速度や硬化物の物性等の調整をするための反応系の制御をしやすいことから、イミダゾール系硬化促進剤が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0025】
上記イミダゾール系硬化促進剤は特に限定されず、例えば、イミダゾールの1位をシアノエチル基で保護した1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾールや、イソシアヌル酸で塩基性を保護したイミダゾール系硬化促進剤(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)等が挙げられる。これらのイミダゾール系硬化促進剤は、単独で用いられてもよく、二種以上が併用されてもよい。
【0026】
本発明の半導体チップ接合用接着剤が上記硬化促進剤を含有する場合、上記硬化促進剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限が1重量部、好ましい上限が20重量部である。上記硬化促進剤の含有量が1重量部未満であると、得られる半導体チップ接合用接着剤が充分に硬化しないことがある。上記硬化促進剤の含有量が20重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の接着信頼性が低下することがある。
【0027】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、ポリイミド粒子を含有する。
上記ポリイミド粒子を添加することによって、無機充填材等を添加しなくても半導体チップ接合用接着剤の硬化物の線膨張率を低下させることができる。更に、無機充填材は、線膨張率を低下させると同時に弾性率を上昇させる効果を有するのに対し、上記ポリイミド粒子は、弾性率の上昇を抑制しながら線膨張率を低下させることができる。接合された半導体チップへの応力の発生は、半導体チップ接合用接着剤の硬化物の線膨張率と弾性率とを低下させることで防止することができるため、本発明の半導体チップ接合用接着剤を用いた場合には、接合された半導体チップへの応力の発生及びハンダ等の導通部分のクラックの発生を良好に防止することができる。
【0028】
上記ポリイミド粒子に含有されるポリイミド化合物は特に限定されないが、主骨格に芳香環を有するポリイミド化合物が好ましい。上記ポリイミド化合物は、主骨格に芳香環を有することで、より剛直で揺らぎの少ない分子構造となり、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物の線膨張率を更に低下させることができる。
上記主骨格に芳香環を有するポリイミド化合物は特に限定されず、例えば、フェニル、ビフェニル、ナフタレン等の芳香環を主骨格に有するポリイミド化合物が挙げられ、具体的には、例えば、ポリ(N,N’−p−フェニレン−ビフェニルテトラカルボキシルイミド)等が挙げられる。
【0029】
上記ポリイミド粒子中の上記ポリイミド化合物の含有量の好ましい下限は10重量%である。上記ポリイミド化合物の含有量が10重量%未満であると、上記ポリイミド粒子を添加する効果をほとんど得ることができないことがあり、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物が充分に低い線膨張率及び弾性率を有することができないことがある。上記ポリイミド粒子中の上記ポリイミド化合物の含有量のより好ましい下限は20重量%、更に好ましい下限は50重量%である。
【0030】
上記ポリイミド粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限は0.1μm、好ましい上限は30μmである。上記ポリイミド粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、ポリイミド粒子を添加することにより半導体チップ接合用接着剤が増粘しやすいため、充分な量を添加できないことがある。上記ポリイミド粒子の平均粒子径が30μmを超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物の低線膨張化が充分に発現されないことがある。上記ポリイミド粒子の平均粒子径のより好ましい下限は0.5μm、より好ましい上限は20μmである。
【0031】
上記ポリイミド粒子は、表面処理されていることが好ましい。
表面処理を施すことにより、半導体チップ接合用接着剤の増粘を抑え、流動性及び濡れ性を確保しながら上記ポリイミド粒子を多量に添加することができ、硬化物の線膨張率を低下させる効果を更に高めることができる。
【0032】
上記表面処理する方法は特に限定されず、例えば、シランカップリング剤を用いて表面処理する方法等が挙げられる。
上記シランカップリング剤を用いて表面処理する方法は特に限定されず、例えば、ポリイミド粒子の表面に存在する官能基とシランカップリング剤とを反応させる方法、ポリイミド粒子の表面にコーティング層を形成した後、コーティング層の表面に存在する官能基とシランカップリング剤とを反応させる方法等が挙げられる。
上記コーティング層を形成する方法は特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコールを物理吸着させる方法等が挙げられる。
【0033】
上記ポリイミド粒子を製造する方法は特に限定されないが、例えば、無水テトラカルボン酸含有溶液とジアミン化合物含有溶液とをそれぞれ調製し、これらの溶液を混合して超音波攪拌を行うことにより、混合溶液からポリアミド酸粒子を析出させた後、得られたポリアミド酸粒子をイミド化することによりポリイミド粒子とし、必要に応じて、得られたポリイミド粒子に対して上述のような表面処理を行う方法が挙げられる。この方法によれば、超音波攪拌を行うことにより、微細なポリイミド粒子を得ることができる。
【0034】
また、上記ポリイミド粒子を製造する方法として、例えば、反応溶媒に対して可溶性のイミド構造を形成するジアミン化合物と、反応溶媒に対して不溶性のイミド構造を形成するジアミン化合物と、アミノ基等の官能基を有するイミド構造を形成するジアミン化合物とからなるジアミン混合物を用い、該ジアミン混合物と無水テトラカルボン酸とを反応溶媒中で反応させることによりポリアミド酸ワニスを調製し、得られたポリアミド酸ワニスを加熱することにより、反応溶媒からポリイミド粒子を析出させた後、必要に応じて、得られたポリイミド粒子に対して上述のような表面処理を行う方法も挙げられる。この方法によれば、ジアミン混合物中のジアミン化合物の配合比を調整することにより、所望の平均粒子径を有するポリイミド粒子を得ることができる。
【0035】
更に、上述のようなポリイミド粒子を製造する方法を改良することによっても、上記ポリイミド粒子を表面処理することができる。
例えば、上記無水テトラカルボン酸と上記ジアミン化合物の2種類の原料に、更に、例えば、2,4,6−トリアミノピリジン等の3価のアミンを組み合わせることで、表面にアミノ基を有するポリイミド粒子が得られる。このアミノ基に、例えば、グリシジル基、カルボキシル基等を有する機能性化合物を反応させることで、ポリイミド粒子の表面を2次修飾することができる。
【0036】
上記ポリイミド粒子のうち、市販品としては、例えば、UIP−S、UIP−R等(いずれも宇部興産社製)が挙げられる。
【0037】
本発明の半導体チップ接合用接着剤において、上記ポリイミド粒子の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は900重量部である。上記ポリイミド粒子の含有量が5重量部未満であると、上記ポリイミド粒子を添加する効果をほとんど得ることができないことがあり、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物が充分に低い線膨張率及び弾性率を有することができないことがある。上記ポリイミド粒子の含有量が900重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の流動性が不充分となって、濡れ性が確保できないことがある。
上記ポリイミド粒子の含有量は、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい下限は50重量部、より好ましい上限は700重量部、更に好ましい下限は100重量部、更に好ましい上限は500重量部である。
【0038】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内、即ち、硬化物の線膨張率を更に低下させ、かつ、弾性率を上昇させない範囲内であれば、無機充填材を含有してもよい。
上記無機充填材は特に限定されず、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等のシリカや、ガラス繊維や、アルミナ微粒子等が挙げられる。
【0039】
上記無機充填材として粒子状の無機充填材を用いる場合、平均粒子径の好ましい下限は0.1nm、好ましい上限は30μmである。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が0.1nm未満であると、増粘効果が高く、得られる半導体チップ接合用接着剤の流動性が低下することがある。上記粒子状の無機充填材の平均粒子径が30μmを超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤を用いて圧接合する際に、電極間で上記無機充填材を噛みこむことがある。
【0040】
本発明の半導体チップ接合用接着剤が上記無機充填材を含有する場合、上記無機充填材の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限は5重量部、好ましい上限は100重量部である。上記無機充填材の含有量が5重量部未満であると、上記無機充填材を添加する効果をほとんど得ることができないことがある。上記無機充填材の含有量が100重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の硬化物の線膨張率は低下するものの、同時に弾性率が上昇し、接合された半導体チップへの応力が大きくなりハンダ等の導通部分のクラックが発生しやすくなることがある。上記無機充填材の含有量は、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい上限が50重量部である。
【0041】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内で希釈剤を含有してもよい。
上記希釈剤は特に限定されないが、半導体チップ接合用接着剤の加熱硬化時に硬化物に取り込まれる反応性希釈剤が好ましい。なかでも、得られる半導体チップ接合用接着剤の接着信頼性を悪化させないために、1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤がより好ましい。
上記1分子中に2以上の官能基を有する反応性希釈剤として、例えば、脂肪族型エポキシ、エチレンオキサイド変性エポキシ、プロピレンオキサイド変性エポキシ、シクロヘキサン型エポキシ、ジシクロペンタジエン型エポキシ、フェノール型エポキシ等が挙げられる。
【0042】
本発明の半導体チップ接合用接着剤が上記希釈剤を含有する場合、上記希釈剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性化合物100重量部に対する好ましい下限は1重量部、好ましい上限は50重量部である。上記希釈剤の含有量が1重量部未満であると、上記希釈剤を添加する効果をほとんど得ることができないことがある。上記希釈剤の含有量が50重量部を超えると、得られる半導体チップ接合用接着剤の接着信頼性が劣ったり、後述する粘度特性が得られなかったりすることがある。上記希釈剤の含有量は、上記硬化性化合物100重量部に対するより好ましい下限が5重量部、より好ましい上限が20重量部である。
【0043】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、必要に応じて、溶媒を含有してもよい。
上記溶媒は特に限定されず、例えば、芳香族炭化水素類、塩化芳香族炭化水素類、塩化脂肪族炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、グリコールエーテル(セロソルブ)類、脂環式炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。
【0044】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、必要に応じて、無機イオン交換体を含有してもよい。上記無機イオン交換体のうち、市販品としては、例えば、IXEシリーズ(東亞合成社製)等が挙げられる。
上記無機イオン交換体の含有量は特に限定されないが、好ましい下限が1重量%、好ましい上限が10重量%である。
【0045】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、その他必要に応じて、ブリード防止剤、イミダゾールシランカップリング剤等の接着性付与剤等の添加剤を含有してもよい。
【0046】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃にて粘度を測定したときに、0.5rpmにおける粘度の好ましい下限が20Pa・s、好ましい上限が1000Pa・sである。上記粘度が20Pa・s未満であると、半導体チップ接合用接着剤は形状保持性に欠けることがある。上記粘度が1000Pa・sを超えると、半導体チップ接合用接着剤はエアーディスペンサーで塗布する場合の吐出安定性に欠けることがある。
【0047】
また、本発明の半導体チップ接合用接着剤は、E型粘度計を用いて25℃、5rpmの条件で測定した粘度をT、E型粘度計を用いて25℃、0.5rpmの条件で測定した粘度をTとしたときに、T/Tの下限が2、上限が8であることが好ましい。上記T/Tが上記範囲内にあることで、半導体チップ接合用接着剤は、塗布に好適なチクソ性を有することができる。
【0048】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、加熱により硬化して得られる硬化物のガラス転移温度以下の温度における線膨張率の好ましい下限が10ppm、好ましい上限が60ppmである。上記線膨張率が10ppm未満であると、ハンダや基板等よりも線膨張率が低くなることで、ハンダや基板等の熱膨張によって接合部へ応力が集中して剥離することがあり、接着信頼性が低下することがある。上記線膨張率が60ppmを超えると、熱によるひずみが発生する際、接合された半導体チップへの応力が大きくなりハンダ等の導通部分のクラックが発生しやすくなることがある。上記線膨張率のより好ましい下限は15ppm、より好ましい上限は55ppmである。
【0049】
また、本発明の半導体チップ接合用接着剤は、加熱により硬化して得られる硬化物のガラス転移温度以上の温度における線膨張率の好ましい下限が50ppm、好ましい上限が140ppmである。上記線膨張率のより好ましい下限は60ppm、より好ましい上限は130ppmである。
なお、本明細書中、半導体チップ接合用接着剤の硬化物の線膨張率は、接着剤を110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、熱応力歪測定装置(「EXTEAR TMA/SS 6100」、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用いて、荷重2N、昇温速度5℃/分、サンプル長1cmで300℃まで昇温し、このとき得られたSSカーブの傾きから求められる値である。
【0050】
本発明の半導体チップ接合用接着剤は、加熱により硬化して得られる硬化物の−55〜125℃における弾性率の好ましい下限が0.01GPa、好ましい上限が7GPaである。上記弾性率が0.01GPa未満であると、半導体チップ接合用接着剤の硬化物は充分な耐熱性が得られないことがある。上記弾性率が7GPaを超えると、熱によるひずみが発生する際、接合された半導体チップへの応力が大きくなりハンダ等の導通部分のクラックが発生しやすくなることがある。上記弾性率のより好ましい下限は0.05GPa、より好ましい上限は6.5GPa、更に好ましい上限は6GPaである。
また、(−55℃における弾性率/125℃における弾性率)の値の好ましい下限は1、好ましい上限は3である。上記値が、特に3を超えると、熱によるひずみの影響が大きくなり、接合された半導体チップへの応力が大きくなりハンダ等の導通部分のクラックがより発生しやすくなることがある。上記値のより好ましい下限は2である。
なお、本明細書中、半導体チップ接合用接着剤の硬化物の弾性率は、接着剤を110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、粘弾性測定機(型式「DVA−200」、アイティー計測制御社製)を用いて、昇温速度5℃/分、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzで300℃まで昇温し、−55℃、125℃にて測定して得られる値(GPa)である。
【0051】
本発明の半導体チップ接合用接着剤を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記硬化性化合物、上記硬化剤及び上記ポリイミド粒子、並びに、必要に応じて上記硬化促進剤、上記無機充填材、その他の添加剤等を所定量配合して混合することにより半導体チップ接合用接着剤を得る方法等が挙げられる。
上記混合する方法は特に限定されず、例えば、ホモディスパー、万能ミキサー、バンバリーミキサー、ニーダー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
【0052】
本発明の半導体チップ接合用接着剤の用途は特に限定されないが、例えば、半導体装置の製造において、本発明の半導体チップ接合用接着剤を用いて、半導体チップを基板又は他の半導体チップに接着固定することができる。また、本発明の半導体チップ接合用接着剤を用いて非導電性ペースト(NCP)及び非導電性フィルム(NCF)を製造し、該非導電性ペースト及び非導電性フィルムを用いて、半導体チップを基板又は他の半導体チップに接着固定することもできる。
【0053】
本発明の半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムもまた、本発明の1つである。本発明の非導電性ペースト及び非導電性フィルムは、本発明の半導体チップ接合用接着剤を用いて製造されることから、硬化物の線膨張率及び弾性率が低く、接合された半導体チップへの応力の発生を低減することでハンダ等の導通部分のクラックの発生を良好に防止することができる。
【0054】
本発明の非導電性フィルムの厚みは特に限定されないが、好ましい下限は2μm、好ましい上限は500μmである。上記厚みが2μm未満であると、異物の混入によって平滑なフィルムが得られないことがある。上記厚みが500μmを超えると、溶剤が残留しやすく、圧接合時及び硬化時に気泡が発生することがある。
【0055】
本発明の非導電性フィルムを製造する方法は特に限定されず、例えば、押出機による押出成型法、硬化性化合物等を溶剤で希釈して硬化性組成物溶液を調製し、この溶液をセパレーター上にキャスティングした後、乾燥させる溶剤キャスト法、上記溶液をウェーハに直接塗工するスピンコート法、上記溶液をスクリーン印刷する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、硬化物の線膨張率及び弾性率が低く、接合された半導体チップへの応力の発生を低減することでハンダ等の導通部分のクラックの発生を防止し、信頼性の高い半導体装置を製造することができる半導体チップ接合用接着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0058】
(実施例1〜13、比較例1〜5)
表1、2及び3の組成に従って、下記に示す各材料をホモディスパーを用いて攪拌混合して半導体チップ接合用接着剤を調製した。
【0059】
(硬化性化合物)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「YL−980」、ジャパンエポキシレジン社製)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名「1004AF」、ジャパンエポキシレジン社製)
グリシジル基含有アクリル樹脂(商品名「G−2050M」、日油社製)
【0060】
(硬化剤)
トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸(商品名「YH−306」、JER社製)
【0061】
(硬化促進剤)
2,4−ジアミノ−6−[2’メチルイミダゾリン−(1’)]−エチルs−トリアジンイソシアヌル酸付加物(商品名「2MA−OK」、四国化成工業社製)
【0062】
(有機粒子)
ポリイミド粒子(商品名「UIP−S」及び「UIP−R」、宇部興産社製)
ナイロン粒子(商品名「トレパール SP−500」、東レ社製)
ベンゾグアナミン粒子(商品名「エポスター MS05」、日本触媒社製)
【0063】
(表面処理されたポリイミド粒子)
(表面処理されたポリイミド粒子Aの製造)
ポリイミド粒子「UIP−S」(宇部興産社製)100gをポリビニルアルコールの1wt%水溶液100mLに攪拌しながら添加した。常温で2時間攪拌後、得られた生成物をイオン交換水で洗浄し、メタノール100gとフェニルトリエトキシシラン2gとを添加して、常温で2時間攪拌した。その後、得られた生成物をアセトンで2回洗浄後、12時間室温で減圧乾燥させることにより、シランカップリング剤により表面処理されたポリイミド粒子Aを得た。
【0064】
(表面処理されたポリイミド粒子Bの製造)
フェニルトリエトキシシランをジメチルジエトキシシランに変更したこと以外は上記表面処理されたポリイミド粒子Aの製造と同様にして、表面処理されたポリイミド粒子Bを得た。
【0065】
(表面処理されたポリイミド粒子Cの製造)
フェニルトリエトキシシランをグリシドキシプロピルトリメトキシシランに変更したこと以外は上記表面処理されたポリイミド粒子Aの製造と同様にして、表面処理されたポリイミド粒子Cを得た。
【0066】
(その他)
シランカップリング剤(商品名「KBM−573」、信越化学社製)
増粘剤(商品名「レオロシール MT−10」、トクヤマ社製)
無機充填材(シリカ)(商品名「SE−4000」、アドマテックス社製)
溶剤(メチルエチルケトン(MEK))
【0067】
<評価1>
実施例1〜7及び比較例1〜5で得られた半導体チップ接合用接着剤を用いて、以下の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0068】
(1)線膨張率
得られた半導体チップ接合用接着剤について、110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、熱応力歪測定装置(型式「EXTEAR TMA/SS 6100」、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、荷重2N、昇温速度5℃/分、サンプル長1cmで300℃まで昇温し、このとき得られたSSカーブの傾きから線膨張係数を求めた。
【0069】
(2)弾性率
得られた半導体チップ接合用接着剤について、110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、粘弾性測定機(型式「DVA−200」、アイティー計測制御社製)を用い、昇温速度5℃/分、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzで300℃まで昇温し、−55℃、125℃にて測定して得られる値(GPa)を弾性率とした。また、Tanδのピーク時の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0070】
(3)冷熱サイクル試験
ハンダボールがペリフェラル状に配置されている半導体チップ(10mm×10mm)と、半導体チップを介して電気的に接続されたときに半導体チップ内のメタル配線とデイジーチェーンとなるように銅が配線された20mm×20mm×1.0mm厚の基板(ガラス/エポキシ系FR−4)とを用い、得られた半導体チップ接合用接着剤を用いてフリップチップ実装(250℃、10秒、5N)した。得られた積層体に対し、−55℃〜125℃(各10分間ずつ)、1000サイクルの冷熱サイクル試験を行った後、チップ−接着剤−基板の剥がれの評価及び導通試験を行った。
なお、8つのサンプルについて上記剥がれ評価及び導通試験を行い、剥がれ及び導通不良が見られた積層体の個数を評価した。上記導通試験については、導通抵抗値が10%以上変化したものを不良とした。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
<評価2>
実施例8〜13で得られた半導体チップ接合用接着剤を用いて、以下の評価を行った。結果を表3に示す。
【0074】
(1)粘度
得られた半導体チップ接合用接着剤について、E型粘度計(VISCOMETER TV−22、東海産業社製、φ15mmローターを使用)を用いて、25℃、10rpmの条件で粘度(Pa・s)を測定した。
【0075】
(2)濡れ広がり(塗布安定性)
得られた半導体チップ接合用接着剤について、エアーディスペンサー(SHOT MASTER300、武蔵エンジニアリング社製)を用いて塗布安定性を評価した。このとき、使用した部品は、精密ノズル(武蔵エンジニアリング社製、内径0.3mm)、10mLシリンジ(武蔵エンジニアリング社製)であった。吐出条件を吐出圧0.4MPa、半導体チップとニードルとのギャップ200μmとし、吐出量5mg狙いで半導体チップ接合用接着剤をガラス基板上に塗布した。次いで、塗布した半導体チップ接合用接着剤の上にガラスチップ(10mm×10mm、厚み100μm)をボンディングし、これを80℃1時間オーブンに入れた。
半導体チップ接合用接着剤がガラスチップ下の領域に完全に広がっている場合を「◎」、ガラスチップ下の100%未満90%以上の領域まで広がっている場合を「○」、ガラスチップ下の90%未満70%以上の領域まで広がっている場合を「△」、ガラスチップ下の70%未満の領域までしか広がっていない場合を「×」と評価した。
【0076】
(3)線膨張率
得られた半導体チップ接合用接着剤について、110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、熱応力歪測定装置(型式「EXTEAR TMA/SS 6100」、エスアイアイ・ナノテクノロジー社製)を用い、荷重2N、昇温速度5℃/分、サンプル長1cmで300℃まで昇温し、このとき得られたSSカーブの傾きから線膨張係数を求めた。
【0077】
(4)弾性率
得られた半導体チップ接合用接着剤について、110℃40分、更に、170℃30分で硬化させた厚さ500μmの硬化物を作製し、粘弾性測定機(型式「DVA−200」、アイティー計測制御社製)を用い、昇温速度5℃/分、引っ張り、つかみ幅24mm、10Hzで300℃まで昇温し、−55℃、125℃にて測定して得られる値(GPa)を弾性率とした。また、Tanδのピーク時の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0078】
(5)冷熱サイクル試験
ハンダボールがペリフェラル状に配置されている半導体チップ(10mm×10mm)と、半導体チップを介して電気的に接続されたときに半導体チップ内のメタル配線とデイジーチェーンとなるように銅が配線された20mm×20mm×1.0mm厚の基板(ガラス/エポキシ系FR−4)とを用い、得られた半導体チップ接合用接着剤を用いてフリップチップ実装(250℃、10秒、5N)した。得られた積層体に対し、−55℃〜125℃(各10分間ずつ)、1000サイクルの冷熱サイクル試験を行った後、チップ−接着剤−基板の剥がれの評価及び導通試験を行った。
なお、8つのサンプルについて上記剥がれ評価及び導通試験を行い、剥がれ及び導通不良が見られた積層体の個数を評価した。上記導通試験については、導通抵抗値が10%以上変化したものを不良とした。
【0079】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明によれば、硬化物の線膨張率及び弾性率が低く、接合された半導体チップへの応力の発生を低減することでハンダ等の導通部分のクラックの発生を防止し、信頼性の高い半導体装置を製造することができる半導体チップ接合用接着剤を提供することができる。また、本発明によれば、該半導体チップ接合用接着剤を用いて製造される非導電性ペースト及び非導電性フィルムを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性化合物、硬化剤及びポリイミド粒子を含有することを特徴とする半導体チップ接合用接着剤。
【請求項2】
ポリイミド粒子は、主骨格に芳香環を有するポリイミド化合物を含有することを特徴とする請求項1記載の半導体チップ接合用接着剤。
【請求項3】
ポリイミド粒子は、表面処理されていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体チップ接合用接着剤。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の半導体チップ接合用接着剤を用いて製造されることを特徴とする非導電性ペースト。
【請求項5】
請求項1、2又は3記載の半導体チップ接合用接着剤を用いて製造されることを特徴とする非導電性フィルム。

【公開番号】特開2010−239106(P2010−239106A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210315(P2009−210315)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】