半導体基板、その製造方法、半導体デバイス及びその製造方法
【課題】異種材料の基板上で平坦かつ剥離が容易なGaN基板を低コストで製造することを可能にする製造方法を提供するとともに、そのGaN基板を用いて製造するLEDやレーザダイオード等の半導体デバイスの低コスト化、性能向上や長寿命化を実現することである。
【解決手段】本発明の半導体基板は、基板と、前記基板上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で形成された金属性材料層と、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に形成された第2の半導体層と、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有する。
【解決手段】本発明の半導体基板は、基板と、前記基板上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で形成された金属性材料層と、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に形成された第2の半導体層と、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、その製造方法、半導体デバイス及びその製造方法に関する。特に、基板上にGaN層を形成する半導体基板、その製造方法、半導体デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系半導体を用いた発光ダイオード(以下、LEDという)は、信号機や液晶パネルのバックライト等の様々な機器に利用されている。LEDの発光効率は、結晶の転位密度、欠陥に影響されることが知られている。GaN系半導体の結晶成長は、サファイア等の異種基板上で行われるが、GaN層と基板との間の格子不整合及び熱膨張係数のミスマッチが発生し、高転位密度や欠陥の増大をもたらすとされている。
【0003】
そこで、GaN系半導体の結晶成長は、GaN基板等の同種材料の基板上で行うことが望ましい。一方、GaNは窒素の解離率が高いこと等によりGaN融液の形成が難しく、GaN基板の製造を困難にしている。また、GaN基板用に成長させたGaNバルク結晶をGaN基板として剥離するため、機械研磨やレーザ剥離等が用いられているが、実用的なサイズのGaN基板を再現良く得ることは非常に困難であった。特に、レーザ剥離は膨大な時間を要し、GaN基板のコストを上昇させる原因になっている。
【0004】
また、非特許文献1では、石英基板上、W,Mo,Ta,及びNbの高融点金属基板上、及びSi基板上のそれぞれに、プラズマ分子線エピタキシ(plasma assisted molecular beam epitaxy)を用いてGaNを結晶成長させる例を示している。
【0005】
上述のように、GaN基板の製造は非常に困難でありコストも高いため、LEDやレーザダイオード等の半導体デバイスは、サファイア等の異種基板上でGaN層を成長させて製造される場合が多い。しかし、上述の高転位密度や欠陥の増大により、LEDの発光性能の向上を妨げている。さらに、サファイア基板は、GaN基板に比べて熱伝導率が低く、デバイスの熱放熱性を低下させる。このことは、LEDやレーザダイオードを製造する場合、長寿命化を妨げる原因になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Polycrystalline GaN for light emitter and field electron emitter applications” S. Hasegawa, S. Nishida, T. Yamashita, H. Asahi, Thin Solid Films 487 (2005) 260-267
【非特許文献2】“Buried Tungsten Metal Structure Fabricated by Epitaxial-Lateral-Overgrown GaN via Low-Pressure Metalorganic Vapor Phase Epitaxy” M. Haino, et. Al., Jpn. J. Appl. Phys., 39 (2000) L449
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、異種材料の基板上で平坦かつ剥離が容易なGaN基板を低コストで製造することを可能にする製造方法を提供するとともに、そのGaN基板を用いて製造するLEDやレーザダイオード等の半導体デバイスの性能向上や長寿命化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、基板と、前記基板上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で形成された金属性材料層と、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に形成された第2の半導体層と、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有する半導体基板が提供される。
【0009】
また、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層は、同一又は異なる化合物半導体であってもよく、前記金属性材料層は、前記第2の半導体層を形成する際の加熱温度より高融点の金属であってもよい。
【0010】
また、前記金属性材料層は、酸化領膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成することが好ましい。
【0011】
また、前記金属性材料層は、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔を有してもよい。
【0012】
また、前記金属性材料層は、タンタルであり、その膜厚が5nmより厚く、前記第1の半導体層上に形成後、前記タンタルの表面が酸化タンタルで被われており、前記第1の半導体層と前記タンタルとの界面がタンタルと酸化タンタルで被われていてもよい。
【0013】
また、前記金属性材料層は、チタンであり、その膜厚が50nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成してもよい。
【0014】
また、また、前記金属性材料層は、クロムであり、その膜厚が23nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成してもよい。
【0015】
また、本発明の一実施形態によれば、基板と、前記基板上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有する半導体基板が提供される。
【0016】
また、本発明の一実施形態によれば、基板と、前記基板上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、前記第2の半導体層上に形成された第3の半導体層と、前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有する半導体基板が提供される。
【0017】
また、前記基板は、サファイア基板又はシリコン基板等であってもよい。
【0018】
また、前記第1の半導体層は、GaN又はInGaAlN等のNを含む化合物半導体であってもよい。
【0019】
また、本発明の一実施形態によれば、基板上に第1の半導体層を形成し、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成する半導体基板の製造方法が提供される。
【0020】
また、前記金属性材料層は、前記第1の半導体層上に一定の間隔及び幅でストライプ状に形成し、前記第2の半導体層は、前記金属性材料層の幅の1/2倍以上の層厚に形成してもよい。
【0021】
また、前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成することが好ましい。
【0022】
また、前記金属性材料層は、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔が形成される厚さに形成してもよい。
【0023】
また、前記第2の半導体層は、有機金属気相成長法を用いて形成し、前記第2の半導体層を成長させるとともに、前記金属性材料層が形成されていない部分の前記第1の半導体層を上層に向かって成長させることが好ましい。
【0024】
また、前記有機金属気相成長法を用いて前記第2の半導体層を成長させる際に、前記第1の半導体層の成長速度に合わせて、前記第2の半導体層を成長させるように前記有機金属気相成長法の設定条件を調整することが好ましい。
【0025】
また、前記有機金属気相成長法の設定条件として、原料ガスの流量、加熱温度、成長時間の何れか一つ又は複数を調整してもよい。
【0026】
また、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層は、同一又は異なる化合物半導体材料を用いて形成し、前記金属性材料層は、前記第2の半導体層を形成する際の加熱温度より高融点の金属性材料を用いて形成することが好ましい。
【0027】
また、前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成するとともに、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔を形成し、前記第2の半導体層を前記有機金属気相成長法を用いて形成する際に、前記金属性材料層が形成された部分の下層の前記第1の半導体層を前記金属性材料層及び酸素と反応させて前記複数の孔から蒸発させて、前記空洞を形成することが好ましい。
【0028】
また、前記金属性材料層は、タンタルであり、その膜厚が5nmより厚く、前記第1の半導体層上に形成後、前記タンタルの表面が酸化タンタルで被われており、前記第1の半導体層と前記タンタルとの界面がタンタルと酸化タンタルで被われていてもよい。
【0029】
また、前記金属性材料層は、チタンであり、その膜厚が50nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成してもよい。
【0030】
また、前記金属性材料層は、クロムであり、その膜厚が23nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成してもよい。
【0031】
また、本発明の一実施形態によれば、基板上に第1の半導体層を形成し、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層の一部を形成し、前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を溶液中で洗浄して前記金属性材料層を除去し、前記第2の半導体層の一部上に更に当該第2の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成する半導体基板の製造方法が提供される。
【0032】
また、本発明の一実施形態によれば、基板上に第1の半導体層を形成し、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層を形成し、前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を溶液に浸して前記金属性材料層を除去し、前記第2の半導体層上に第3の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層を除去した下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成する半導体基板の製造方法が提供される。
【0033】
また、前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を前記溶液を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去してもよい。
【0034】
また、前記第2の半導体層を形成した前記基板を前記溶液を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去してもよい。
【0035】
また、前記溶液は、前記金属性材料層が溶けあるいは破壊され、且つ前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層が溶けない溶液であってもよい。
【0036】
また、前記溶液は水、塩酸、水および塩酸、硫酸、水および硫酸、硝酸、水および硝酸、フッ化水素酸、水およびフッ化水素酸、水および水酸化ナトリウム、または水および水酸化カリウムであってもよい。
【0037】
また、前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を水を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去してもよい。
【0038】
また、前記第2の半導体層を形成した前記基板を水を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去してもよい。
【0039】
また、前記第1の半導体層は、GaN又はInGaAlN等のNを含む化合物半導体であってもよい。
【0040】
また、前記基板は、サファイア基板又はシリコン基板等であってもよい。
【0041】
また、前記第1の半導体層に形成された前記空洞を利用して前記基板を剥離して、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層から形成された半導体基板を製造してもよい。
【0042】
また、前記基板を剥離する際に、レーザ・リフトオフ法を用いてもよい。
【0043】
また、前記基板を剥離する際に、研磨法を用いてもよい。
【0044】
また、本発明の一実施形態によれば、前記半導体基板上に形成される半導体デバイスであって、前記第2の半導体層上に形成された第1の化合物半導体層と、前記第1の化合物半導体層上に形成された活性層と、前記第活性層上に形成された第2の化合物半導体層と、を少なくとも有する半導体デバイスが提供される。
【0045】
また、本発明の一実施形態によれば、前記半導体基板上に形成される半導体デバイスの製造方法であって、前記第2の半導体層上に第1の化合物半導体層を形成し、前記第1の化合物半導体層上に活性層を形成し、前記第活性層上に第2の化合物半導体層を形成する半導体デバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、異種基板上で平坦かつ剥離が容易なGaN基板を低コストで製造することを可能にする製造方法を提供することができるとともに、そのGaN基板を用いて製造するLEDやレーザダイオード等の半導体デバイスの低コスト化、性能向上や長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態1に係る半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は第2のGaN層の形成が完了を示す断面図、(E)はサファイア基板を剥離した断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。
【図2】実施例1に係る半導体基板のSEM断面写真である。
【図3】実施例1に係るEDXのスペクトル図である。
【図4】実施例1に係る(A)は図2の拡大領域のSEM断面写真、(B)はGaのEDX図、(C)はAlのEDX図、(D)はOのEDX図である。
【図5】実施例1に係る(A)は半導体基板のSEM断面写真、(B)は半導体基板のSEM表面写真である。
【図6】実施例1に係る半導体基板のEDX図であり、(A)はGaのEDX図、(B)はTaのEDX図である。
【図7】比較例1に係る(A)は半導体基板のSEM鳥瞰写真、(B)は半導体基板のSEM表面写真である。
【図8】比較例1に係る(A)は図7(B)のEDXのスペクトル図、(B)は図7(B)のGaのEDX図、(C)は図7(B)のNのEDX図である。
【図9】比較例1に係る(A)はボイドのSEM断面写真、(B)は(A)のEDXのスペクトル図である。
【図10】比較例1に係る(A)は図9(A)のGaのEDX図、(B)は図9(A)のNのEDX図、(C)は図9(A)のTaのEDX図である。
【図11】本発明の実施形態3に係るLEDアレイの構成を示す断面図である。
【図12】実施例2に係る半導体基板のSEM断面写真である。
【図13】実施例3に係る半導体基板のSEM断面写真である。
【図14】実施例4に係る半導体基板のSEM断面写真である。
【図15】(A)は厚さ5nmのTa層がTa2O5に変化した例を模式的に示す図、(B)は厚さ100nmのTa層の表面がTa2O5に変化した例を模式的に示す図である。
【図16】(A)は厚さ5nmのTaマスクを形成した基板のSEM表面写真であり、(B)は厚さ10nmのTa2O5マスクを形成した基板のSEM断面写真である。
【図17】本発明の実施形態2に係る半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は第2のGaN層の形成が完了を示す断面図、(E)はサファイア基板を剥離した断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。
【図18】(A)は実施例5に係る半導体基板のSEM断面写真、(B)は比較例1に係る半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。
【図19】実施例6に係る(A)は条件1で形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真、(B)は条件2で形成した半導体基板のSEM表面写真である。
【図20】比較例2に係るW層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。
【図21】比較例2に係るPt層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。
【図22】比較例2に係るNi層を用いて形成した半導体基板のSEM断面写真である
【図23】比較例2に係るMo層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。
【図24A】本発明の実施形態3に係る半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は超音波洗浄によりTa層を除去した第2のGaN層を示す断面図、(E)は第2のGaN層の形成が完了を示す断面図である。
【図24B】本発明の実施形態3に係る半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は超音波洗浄によりTa層を除去した第2のGaN層を示す断面図、(E)は第3のGaN層の形成が完了を示す断面図である。
【図25A】図24Aに続く半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)はサファイア基板を剥離した断面図、(B)は完成したGaN基板の断面図、(C)及び(D)はGaN基板の上面にシリコン系基板を貼り付けて下面側を平坦加工したデバイス製造用の半導体基板の断面図である。
【図25B】図24Bに続く半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)はサファイア基板を剥離した断面図、(B)は完成したGaN基板の断面図、(C)及び(D)はGaN基板の上面にシリコン系基板を貼り付けて下面側を平坦加工したデバイス製造用の半導体基板の断面図である。
【図26】実施形態3に係る(A)は第2のGaN層の一部を形成した半導体基板のSEM表面写真、(B)(A)のSEM断面写真である。
【図27】実施形態3に係る(A)はTa層が除去された半導体基板表面の光学顕微鏡写真、(B)は(A)の基板に第2のGaN層を形成した半導体基板のSEM断面写真である。
【図28】実施形態3に係る(A)は第1のGaN層の間隔が狭い場合のGaN層の成長状態を模式的に示す断面図、(B)は第1のGaN層の間隔が広い場合のGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。
【図29】実施形態3に係る(A)は第1のGaN層の間隔が狭く、MOCVD装置内の圧力が低い場合のTMGの濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図、(B)は第1のGaN層の間隔が広く、MOCVD装置内の圧力が高い場合のTMGの濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図、(C)は第1のGaN層の間隔が狭く、MOCVD装置内の圧力が高い場合のTMGの濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図、(D)は第1のGaN層の間隔が広く、MOCVD装置内の圧力が低い場合のTMGの濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。
【図30】実施形態3の実施例2に係るKOHを用いたエッチング処理前後の半導体基板表面のSEM鳥瞰写真である。
【図31】実施形態3の実施例3に係るKOHを用いたエッチング処理前後の半導体基板表面の光学顕微鏡表面写真、断面図及びSEM鳥瞰写真である。
【図32】実施形態3の実施例4に係るHF水溶液を用いた浸漬処理前後の半導体基板表面のSEM及び光学顕微鏡写真である。
【図33】実施形態3の実施例4に係る第2のGaN層を形成後の半導体基板表面のSEM鳥瞰写真である。
【図34】実施形態3の実施例5に係るNaOHを用いたエッチング処理前後の半導体基板表面の光学顕微鏡表面写真である。
【図35】実施形態3の実施例5に係る第2のGaN層を形成後の半導体基板表面のSEM及び光学顕微鏡表面写真、SEM断面写真及びSEM鳥瞰写真である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、添付した図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に記載する実施形態はそれぞれ本発明の一形態に過ぎず、本発明はこれらの実施形態に限定されるわけではない。
【0049】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る半導体基板100の製造方法の概略を示す図である。図1(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は完成した半導体基板の断面図、(E)はサファイア基板を剥離する工程を示す断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。
【0050】
図1(A)において、101はサファイア(Al2O3)基板である。まず、サファイア基板101上に2μm厚程度の第1のGaN層102を形成する。この第1のGaN層102の厚さは一例であり、限定するものではない。
【0051】
次に、図1(B)において、第1のGaN層102上にEB(Electron Beam)蒸着及びリフトオフを用いて50nm厚程度のTa層(金属性材料層)103をストライプ状に5μm幅、5μm間隔で形成する。このTa層103の形状、厚さ、幅、間隔は一例であり、限定するものではない。
【0052】
次に、図1(C)において、第1のGaN層102上及びTa層103上に有機金属気相成長法(以下、MOCVD法という)を用いて第2のGaN層104を形成する。この図1(C)は、第2のGaN層104の形成途中の状態を示している。この場合、GaN層のNとTaが結合してTaNができ、これが異物となり、よりNが濃い気相中に上昇して行く。900℃以上でTaNは不安定になり、その不安定さに伴って穴が深くなっていき、空洞102aが形成される。GaNのNはTaNとなるが、Gaが残る。このGaは、気相成長中に堆積するGaと同じものなので、原料として使われる。しかし、Ta膜の上にGaNを成長させた例がある。上記非特許文献1では、Ta層103の表面はTaだけではなく、空気中で処理されることにより、Ta2O5になっている可能性があることが判明した。
【0053】
次に、図1(D)において、第2のGaN層104の形成が終了し、半導体基板100が完成する。MOCVD法により第2のGaN層104の形成を進めると、図中に示すように、Ta層103の下層にある第1のGaN層102のエッチングが進み、空洞102aの形成領域もほぼサファイア基板101上まで拡大される。また、第2のGaN層104の成長とともに、第1のGaN層102の成長も進むため、図1に示すように基板表面は平坦化される。
【0054】
次に、図1(E)において、サファイア基板101を剥離する。続いて、図1(F)において、剥離した第1のGaN層102を研磨することにより、GaN基板100を得ることができる。このGaN基板100の図中の上面側にSiやSiC等のシリコン系基板を貼り付けて下面側を平坦加工し、デバイス製造用の半導体基板としてもよい。なお、サファイア基板101を剥離する場合、第1のGaN層102に形成された空洞102aを利用することが可能である。サファイア基板101を剥離する場合、例えば、基板となったサファイアおよびSiやSiCといったデバイス用基板の2つを剥離する方法、およびレーザ・リフトオフ法を用いてもよいし、研磨法を用いてもよい。本実施形態は、サファイア基板101を剥離する方法を特に限定するものではない。
【0055】
以上のように、MOCVD法を用いてGaN層を有する半導体基板100を形成することにより、空洞102aを利用して第1のGaN層102をサファイア基板101から剥離することが容易になり、剥離したGaN層をGaN基板として利用することが可能になる。したがって、従来のGaN基板よりも低コストでGaN基板を製造することが可能になる。
【0056】
(実施例1)
次に、上記半導体基板100の製造方法の具体例について、以下に説明する。本実施例1では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてトリメチルガリウム(以下、TMGという)を用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。また、本実施例1では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが50nmのTa層103を形成している。
【0057】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図2に示す。図2は、半導体基板100の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。この空洞102aを含む図中に示す拡大領域について、エネルギー分散型X線分光器(以下、EDXという)を用いて分析した結果を図3に示す。
【0058】
図3のEDXによるスペクトル図に示すように、第1のGaN層102のGaNと、サファイア基板101のAl及びOが観測され、Taは殆ど観測されなかった。また、図4(B)〜(D)のEDX図に示すように、第1のGaN層102のGaと、サファイア基板101のAl及びOが観測されたが、Taは観測されなかった。
【0059】
今回の実施例1では、第2のGaN層104の形成過程でTa層103に孔103aが形成されることを観測した。このTa層103に形成された孔103aの分析結果を図5及び図6に示して更に説明する。なお、図5及び図6に示す分析結果は、上述のMOCVD装置を用いた第2のGaN層104の形成過程を途中で止めて、EDXにより分析した結果である。
【0060】
図5において、(A)は半導体基板100のSEM断面写真であり、(B)は半導体基板100のSEM表面写真である。図6において、(A)は図5(B)の半導体基板100の表面からEDX分析したGaのEDX図であり、(B)は図5(B)の半導体基板100の表面からEDX分析したTaのEDX図である。
【0061】
図5(A)に示す半導体基板100のSEM断面写真では、Ta層103の下層にある第1のGaN層102がエッチングされて空洞102aが形成されたことを観測した。図(B)に示す半導体基板100のSEM表面写真では、Ta層103の表面に孔103aが形成されたことを観測した。更に、この孔103aを含むTa層103の表面をEDX法によりGa,Taについて分析した結果を図6(A)及び(B)に示す。これらのEDX図により、Ta層103が残り、Ta層103上にGa及びGaNが薄く成長していることが判明した。
【0062】
以上のように、本実施例1に係る半導体基板100では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ta層を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態1で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0063】
なお、本実施例1に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞103aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例1では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0064】
また、本実施例1では、第2のGaN層104の成長過程において、Ta層103に孔103aが形成される場合を示したが、例えば、Ta層103を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTa層103を形成するようにしてもよい。また、Ta層103の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板100上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板100を利用したデバイスの例については、後述する。
【0065】
また、本実施例1に示した半導体基板100は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0066】
(実施例2)
本実施例2では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。また、本実施例2では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが30nmのTa層103を形成している。
【0067】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図12に示す。図12は、半導体基板100の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102の一部には空洞102aが形成されている。また、今回の実施例2では、第2のGaN層104の形成過程でTa層103に孔103aが形成されることを観測した。
【0068】
本実施例2に係る半導体基板100では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ta層103を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施例2で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0069】
図12に示した断面図では、Ta層103の真下全体ではなく、各Ta層103の左右両端部分の下層に位置する第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aが形成されている。これは、第1のGaN層102内にエッチングが各Ta層103の左右両端部分から進行することを示している。
【0070】
なお、本実施例2に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例2では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0071】
また、本実施例2では、第2のGaN層104の成長過程において、Ta層103に孔103aが形成される場合を示したが、例えば、Ta層103を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTa層103を形成するようにしもよい。また、Ta層103の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板100上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板100を利用したデバイスの例については、後述する。
【0072】
また、本実施例2に示した半導体基板100は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0073】
(実施例3)
本実施例3では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。また、本実施例3では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが50nmのTa層103を形成している。
【0074】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図13に示す。図13は、半導体基板100の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。また、今回の実施例3では、第2のGaN層104の形成過程でTa層103に孔103aが形成されることを観測した。
【0075】
本実施例3に係る半導体基板100では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ta層103を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態1で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0076】
なお、本実施例3に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例3では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0077】
また、本実施例3では、第2のGaN層104の成長過程において、Ta層103に孔103aが形成される場合を示したが、例えば、Ta層103を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTa層103を形成するようにしもよい。また、Ta層103の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板100上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板100を利用したデバイスの例については、後述する。
【0078】
また、本実施例3に示した半導体基板100は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0079】
(実施例4)
本実施例4では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。また、本実施例4では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが100nmのTa層103を形成している。
【0080】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図14に示す。図14は、半導体基板100の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。また、今回の実施例4では、第2のGaN層104の形成過程でTa層103に孔103aが形成されることを観測した。
【0081】
本実施例4に係る半導体基板100では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ta層103を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態1で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0082】
なお、本実施例4に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例4では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0083】
また、本実施例4では、第2のGaN層104の成長過程において、Ta層103に孔103aが形成される場合を示したが、例えば、Ta層103を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTa層103を形成するようにしもよい。また、Ta層103の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板100上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板100を利用したデバイスの例については、後述する。
【0084】
また、本実施例4に示した半導体基板100は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0085】
(比較例1)
次に、上述の実施例1に対する比較例について説明する。この比較例では、MOCVD装置の設定条件を変更して、半導体基板100の第2のGaN層104を形成する具体例を説明する。
【0086】
本比較例1では、原料ガスとしてTMGを用い、TMGを87μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。
【0087】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図7に示す。図7において、(A)は半導体基板100の一部分のSEM断面写真であり、(B)は(A)の表面を部分的に拡大したSEM表面写真である。この図から明らかなように、第2のGaN層104の面上には、粒状のものが析出されており、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。粒状の物質は、以下のEDX分析及びEDX分析によりGa粒、N粒、Ta粒であることが判明した。
【0088】
上記粒状物質の表面をEDX分析した結果を図8に示す。図8において、(A)は図7(B)の粒状物質をEDX分析したスペクトル図であり、(B)は図7(B)の粒状物質をEDX分析したGaのEDX図であり、(C)は図7(B)の粒状物質をEDX分析したNのEDX図である。図8(A)のスペクトル図に示すようにGa及びNと僅かなTaが観測され、図8(B)及び(C)のEDX図に示すようにGa及びNが観測された。
【0089】
更に、粒状物質の断面をEDX分析した結果を図9及び図10に示す。図9において、(A)は図7(B)の粒状物質としてのボイド部分を拡大したSEM断面写真であり、(B)は(A)の断面をEDX分析スペクトル図である。図10において、(A)は図9(A)の断面をEDX分析したGaのEDX図であり、(B)は図9(A)の断面をEDX分析したNのEDX図であり、(C)は図9(A)の断面をEDX分析したTaのEDX図である。
【0090】
図9(B)のスペクトル図に示すように、第2のGaN層104及び粒状物質のGa及びN、Ta層103のTa、サファイア基板101のAl及びOが観測された。また、図10(A)〜(C)に示すように、ボイド部分にGa,N,Taが観測された。
【0091】
以上の観測結果から第2のGaN層104の面上に析出した粒状物質は、Ga粒、N粒とTa粒であることが判明した。
【0092】
(Ta層のTa2O5形成について)
上記実施例1〜実施例4では、Ta層103の厚さを30nm,50nm,100nmに変更する例を示した。これらのようにTa層103の厚さを変更しても、第1のGaN層104中にはエッチングにより空洞102aが形成されることが確認できた。
【0093】
Ta層103は、その厚さに応じてTa2O5が生成される領域が変化することを、図15に模式的に示す。図15(A)は、厚さを5nmのTa層103がTa2O5に変化した例を示し、図15(B)は、厚さを100nmのTa層103の表面がTa2O5に変化した例を示す。第1のGaN層102の上面にTa層103をEB蒸着装置で蒸着した後、MOCVD装置まで運ぶ間にTa層103は大気中に曝される。この間にTaと酸素が反応してTa層103がTa2O5に変化していることが判明した。このため、図15(A)に示すTa層103の厚さを5nmにした場合は全体がTa2O5に変化し、図15(B)に示すTa層103の厚さを100nmにした場合は表面がTa2O5に変化することが判明した。すなわち、Taが室温で空気に触れると、Ta2O5ができる。図15(A)に厚さ5nmのTa膜がGaN層上の横方向に成長する例を模式的に示す。また、実際に厚さ10nmのTa2O5を基板上の横方向に成長させた例を図16に示す。両方とも、Ta膜の下のGaN層がエッチングされることなく、成長が進んでいる。つまり、厚さ5nmのTa膜を形成した基板を、空気中でMOCVD装置まで運んだ結果、図15(A)では5nmのTa2O5が形成された。Ta2O5は非常に良い横方向に成長するマスクである。一方、図15(B)に示す厚さ100nmのTaを形成した場合は事情が異なる。TaをEB蒸着で形成する場合、原料のTaを空気中で装着するため、Ta表面に薄い酸化膜が蒸着される。これを更に蒸着すると、最初はTa2O5になるが、この状態は次第に収まり、Ta金属の蒸着になる。従って、GaN層上のTaのTa2O5の膜厚は5nm以下であり、部分的にTaである部分が含まれている。このTa2O5膜から上の層はTaである。そして、Ta層形成後の基板を空気中でMOCVD装置まで運ぶことにより、Ta層の表面に薄くTa2O5膜が形成される。その結果、Ta層の表面を薄くTa2O5膜で被った形になる。このTa層のうち、GaN層上のTa2O5膜は、部分的にTaが混じった層になる。この様子を図15(B)に模式的に示している。GaN層のNとTa層のTaは結合してTaNになるが、Gaは気相成長中に堆積するGaと同じものなので、そのまま原料として使われる。
【0094】
上記実施例1〜実施例4において、Ta層103が酸化したTa2O5領域は、第1のGaN層104に対して横方向に成長して非常によいエッチングマスクとして作用する。このため、実施例2において図12に示したように、厚さが30nmのTa層103の左右両端部分ではTa2O5領域が形成されておらず、この部分の下層に位置する第1のGaN層102から空洞102aの形成が進行することが判明した。厚さが50nm,100nmとしたTa層103を形成した実施例3及び4においても、その表面にTa2O5領域が形成されて第1のGaN層104に対してエッチングマスクとして作用するため、同様に空洞102aの形成が進行する。
【0095】
したがって、エッチングマスクとして作用させるTa2O5領域が形成されるTa層103の厚さは、実施例1〜実施例4に示したように20nm〜100nmであってもよい。なお、第1のGaN層上に厚さ5nmのTaマスクを形成して例を示した図16(A)では、Taマスクの下層に空洞が形成されなかった。また、Ta2O5マスクのみを形成した例を示した図16(B)では、Ta2O5マスクがGaN層上、及びInGaAIn上に形成可能であることを確認した。したがって、Ta層103の厚さによらずTa2O5マスクが形成されるため、上記実施例1〜実施例4に示したように、Ta2O5マスクの下層に位置する第1のGaN層102内に空洞102aの形成を進行させることが可能である。
【0096】
(実施形態2)
上記実施形態1では、第1のGaN層102上にTa層103をストライプ状に形成し、このTa層103をエッチングマスクとして作用させて、Ta層103の下層の第1のGaN層102に空洞102aを形成させる場合を示した。本実施形態2では、エッチングマスクの材料として、TiとCrを用いる場合について説明する。
【0097】
図17は、実施形態2に係る半導体基板300の製造方法の概略を示す図である。図17(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTi層(又は、Cr層)を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は完成した半導体基板の断面図、(E)はサファイア基板を剥離する工程を示す断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。なお、図17において、図1に示した半導体基板100と同一の構成部分には同一符号を付している。
【0098】
図17(A)において、101はサファイア(Al2O3)基板である。まず、サファイア基板101上に2μm厚程度の第1のGaN層102を形成する。この第1のGaN層の厚さは一例であり、限定するものではない。
【0099】
次に、図17(B)において、第1のGaN層102上にEB(Electron Beam)蒸着及びリフトオフを用いて50nm厚程度のTi層(金属性材料層)301をストライプ状に5μm幅、5μm間隔で形成する。このTi層301の形状、厚さ、幅、間隔は一例であり、限定するものではない。
【0100】
次に、図17(C)において、第1のGaN層102上及びTi層301上に有機金属気相成長法(以下、MOCVD法という)を用いて第2のGaN層104を形成する。この図17(C)は、第2のGaN層104の形成途中の状態を示している。この場合、GaN層のNとTiが結合してTiNができ、これが異物となり、よりNが濃い気相中に上昇して行く。900℃以上でTiNは不安定になり、その不安定さに伴って穴が深くなっていき、空洞102aが形成される。GaNのNはTiNとなるが、Gaが残る。このGaは、気相成長中に堆積するGaと同じものなので、原料として使われる。
【0101】
次に、図17(D)において、第2のGaN層104の形成が終了し、半導体基板300が完成する。MOCVD法により第2のGaN層104の形成を進めると、図中に示すように、Ti層301の下層にある第1のGaN層102のエッチングが進み、空洞102aの形成領域もほぼサファイア基板101上まで拡大される。また、第2のGaN層104の成長とともに、第1のGaN層102の成長も進むため、図17に示すように基板表面は平坦化される。このため、本実施形態2の半導体基板300では、基板表面を平坦化する工程を省略することが可能である。
【0102】
図17(E)及び(F)は、サファイア基板101を剥離する工程と、剥離した第1のGaN層102を研磨する工程であり、実施形態1の図1(E)及び(F)で説明した工程と同様であるため、説明は省略する。
【0103】
以上のように、MOCVD法を用いてGaN層を有する半導体基板300を形成することにより、空洞102aを利用して第1のGaN層102をサファイア基板101から剥離することが容易になり、剥離したGaN層をGaN基板として利用することが可能になる。したがって、従来のGaN基板よりも低コストでGaN基板を製造することが可能になる。図17に示した半導体基板300の製造工程は、エッチングマスクの材料としてCrを用いた場合も同様であり、その製造工程の図示及び説明は省略する。すなわち、エッチングマスクとしてCr層を第1のGaN層102上にストライプ状に形成し、MOCVD法を用いてGaN層を有する半導体基板300を形成することにより、空洞102aを利用して第1のGaN層102をサファイア基板101から剥離することが可能な半導体基板300を製造することが可能である。なお、エッチングマスクとしてCr層を用いた場合の半導体基板300の具体例については、以下に示す実施例6において説明する。
【0104】
(実施例5)
次に、上記Ti層301を形成した半導体基板300の製造方法の具体例について、以下に説明する。本実施例5では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を50分行った例を示す。また、本実施例5では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが50nmのTi層301を形成している。
【0105】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板300を図18(A)に示す。図18(A)は、半導体基板300の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ti層301の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。また、今回の実施例5では、第2のGaN層104の形成過程でTi層301に孔301aが形成されることを観測した(図17(C)、(D)参照)。
【0106】
本実施例5に係る半導体基板300では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ti層301を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態2で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層としてTi層301を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0107】
なお、本実施例5に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層102の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例5では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0108】
また、本実施形態2では、第2のGaN層104の成長過程において、Ti層301に孔301aが形成される場合を示したが、例えば、Ti層301を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTi層301を形成するようにしもよい。また、Ti層301の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板300上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板300を利用したデバイスの例については、後述する。
【0109】
また、本実施形態2に示した半導体基板300は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0110】
(比較例2)
次に、上述の実施例5に対する比較例2について説明する。この比較例2では、Ti層301の厚さを変更し、MOCVD装置の設定条件を変更して、半導体基板300の第2のGaN層104を形成する具体例を説明する。
【0111】
本比較例2では、原料ガスとしてTMGを用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1120℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板300を図18(B)に示す。図18(B)において、Ti層301の厚さは10nmである。この場合、Ti層301の下層の第1のGaN層102には空洞102aは形成されなかった。
【0112】
したがって、エッチングマスクの材料としてTiを用いる場合、第1のGaN層102に空洞102aが形成されるTi層301の好ましい厚さは50nm以上であり、TMGの好ましい流量Xは、X<80μmol/minの範囲であることが判明した。
【0113】
(実施例6)
次に、上記Cr層を形成した半導体基板300の製造方法の具体例について、以下に説明する。本実施例6の条件1では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1060℃に設定して、結晶成長を40分行った例を示す。また、本実施例6の条件1では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが23nmのCr層を形成している。
【0114】
上記条件1により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板300を図19(A)に示す。図19(A)は、半導体基板300の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Cr層の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。
【0115】
また、本実施例6の条件2では、原料ガスとしてTMGを用い、TMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を40分行った例を示す。また、本実施例6の条件2では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが50nmのCr層を形成している。
【0116】
上記条件2により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板300を図19(B)に示す。図19(B)は、半導体基板300の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Cr層の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。
【0117】
本実施例6に係る半導体基板300では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Cr層を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態2で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層としてCr層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0118】
なお、本実施例6に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例6では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0119】
(比較例3)
次に、上記実施例5及び6に示したTi層及びCr層以外の金属性材料層を形成して半導体基板を形成した比較例3について、以下に説明する。
【0120】
図20は、金属性材料層としてW層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。この半導体基板は、第1のGaN層上に金属性材料層として厚さが17nmのW層をストライプパターン状に形成し、MOCVD装置を用いてTMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を40分行って第2のGaN層を形成したものである。この場合、W層の下層の第1のGaN層には空洞は形成されなかった。
【0121】
図21は、金属性材料層としてPt層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。この半導体基板は、第1のGaN層上に金属性材料層として厚さが8nmのPt層をストライプパターン状に形成し、MOCVD装置を用いてTMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1120℃に設定して、結晶成長を40分行って第2のGaN層を形成したものである。この場合、Pt層の下層の第1のGaN層には空洞は形成されなかった。
【0122】
図22は、金属性材料層としてNi層を用いて形成した半導体基板のSEM断面写真である。この半導体基板は、第1のGaN層上に金属性材料層として厚さが12nmのNi層をストライプパターン状に形成し、MOCVD装置を用いてTMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を40分行って第2のGaN層を形成したものである。この場合、Ni層の下層の第1のGaN層には空洞は形成されなかった。
【0123】
図23は、金属性材料層としてMo層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。この半導体基板は、第1のGaN層上に金属性材料層として厚さが30nmのMo層をストライプパターン状に形成し、MOCVD装置を用いてTMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を40分行って第2のGaN層を形成したものである。この場合、Mo層の下層の第1のGaN層には空洞は形成されなかった。
【0124】
以上のように、金属性材料層としてW層、Pt層、Ni層及びMo層を用いた場合、第1のGaN層に空洞は形成されず、空洞を利用して第1のGaN層をサファイア基板から剥離することを可能にする半導体基板を製造するには至らなかった。
【0125】
なお、上記実施形態1及び実施形態2に示した半導体基板100,300では、第1のGaN層102上に金属性材料層としてストライプパターン状のTa層103、Ti層301及びCr層を形成する場合を示したが、金属性材料層の下層に用いる材料はGaNに限定されない。すなわち、金属性材料層と反応するNが含まれる材料であればよく、例えば、InGaAlNを用いてもよい。
【0126】
(実施形態3)
本実施形態3では、第2のGaN層を形成する際に、第1のGaN層とTa層上に第2のGaN層の一部を形成した後、半導体基板を超音波洗浄してTa層を除去し、更に第2のGaN層を形成する製造方法について説明する。
【0127】
図24Aは、実施形態3に係る半導体基板400の製造方法の概略を示す図である。図24(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は完成した半導体基板の断面図、(E)はサファイア基板を剥離する工程を示す断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。
【0128】
図24A(A)において、401はサファイア(Al2O3)基板である。まず、サファイア基板401上に2μm厚程度の第1のGaN層402を形成する。この第1のGaN層402の厚さは一例であり、限定するものではない。
【0129】
次に、図24A(B)において、第1のGaN層402上にEB(Electron Beam)蒸着及びリフトオフを用いて50nm厚程度のTa層(金属性材料層)403をストライプ状に5μm幅、5μm間隔で形成する。このTa層403の形状、厚さ、幅、間隔は一例であり、限定するものではない。
【0130】
次に、図24A(C)において、第1のGaN層402上及びTa層403上に第2のGaN層404の一部を形成する。この第2のGaN層404を形成する際は、図24A(B)の第1のGaN層402上にTa層403を形成した半導体基板400をMOCVD装置(図示せず)に入れ、NH3ガスを0.4mol/minで流しながらMOCVD装置内の圧力を500Torrに設定し、1000℃で20分加熱した。この工程により第2のGaN層404の一部を形成した半導体基板400の表面のSEM写真を図26(A)に示す。この半導体基板のSEM断面写真を図26(B)に示す。この場合、半導体基板400の表面は凸凹になった。この工程では、NH3ガスを流しているだけであり、原料ガスとしてTMGは流していないにもかかわらず、図26(B)に示すように、第2のGaN層が成長している。これは、第1のGaN層のGaが加熱温度1000℃以上でMOCVD装置内に飛び、NH3ガス中で再びGaNになって第2のGaN層404を成長させたからである。また、900℃以上でTaNは不安定になり、その不安定さに伴って穴が深くなっていき、空洞402aが形成される。第1のGaN層402のNはTaNとなるが、Gaが残る。このGaは、気相成長中に堆積するGaと同じものなので、原料として使われる。なお、この第2のGaN層404の一部の形成においては、NH3ガスではなく、実施形態1に示したように原料ガスとしてTMGを用いて、例えば、MOCVD装置でTMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長させてもよい。
【0131】
次に、図24A(D)において、図24A(C)において第2のGaN層404の一部を形成して、表面が凸凹になった半導体基板400をMOCVD装置から取り出し、この半導体基板400の表面を純水を用いた超音波洗浄機(図示せず)により45kHzで15分洗浄した。この超音波洗浄により半導体基板のTa層403を除去した。この場合、Taは水に溶けないため、Taは超音波洗浄時の振動等により破壊されたと思われる。このTa層403が除去された半導体基板400表面の光学顕微鏡写真を図27(A)に示す。図27(A)に示すように、Ta層403が除去された結果、半導体基板400の表面にはサファイア基板と第1のGaN層が見えている。この場合、Ta層が除去された後に穴404aが空き、半導体基板の表面に第1のGaN層が見えるようになり、半導体基板の表面は更に凸凹になった。なお、Ta層部分に空いた穴の幅(図27(A)に示すD)は4μmである。また、半導体基板400の洗浄は純水を用いた超音波洗浄に限定するものではなく、Ta層403が溶け、且つ第1のGaN層402及び第2のGaN層403が溶けない溶液中で超音波洗浄により半導体基板400を洗浄してよい。この場合の溶液としては、例えば、水、塩酸、水および塩酸、硫酸、水および硫酸、硝酸、水および硝酸、フッ化水素、水およびフッ化水素酸、水および水酸化ナトリウム、または水および水酸化カリウム(但し、水の組成は、0〜90%)等を用いてもよい。
【0132】
次に、図24A(E)において、MOCVD装置を用いて表面が凸凹になった半導体基板400の第1のGaN層402上に更に第2のGaN層404を形成する。この第2のGaN層404を形成する際は、原料ガスとしてTMGを160μmol/minで流しながらMOCVD装置内の圧力を500torrに設定し、1040℃で1時間加熱して、厚さ4.5μmの第2のGaN層を形成した。この工程により第2のGaN層404の一部を形成した半導体基板の断面のSEM写真を図26(B)に示す。図26(B)に示すように、Ta層403が形成されていた部分の下層の第1のGaN層402には空洞が形成され、第2のGaN層402の表面は平坦化されている。また、この工程では、予めTa層が除去されているため、半導体基板の表面には上記実施形態1において説明したような粒状物質は析出していない。
【0133】
なお、図24A(C)において形成した第2のGaN層404の一部は、第1のGaN層402上に形成したため、欠陥はない。このため、図24A(E)において、第2のGaN層404の一部上に形成した第2のGaN層404との間には層構造の境界は見られない。また、図24A(C)において形成した第2のGaN層の一部を第2のGaN層とし、図24A(E)において形成した第2のGaN層を第3のGaN層405として捉えることもできる。この例を図24Bに示す。この図24Bにおいて(A)〜(E)に示す各工程は、図24A(A)〜(E)に示した各工程と同様であり、その各工程の説明は省略する。図24B(E)は、図24A(E)に対して第2のGaN層の構造上の捉え方の違いを説明するために図示したものである。この図24B(E)では、図24B(C)において形成したGaN層を第2のGaN層404として示し、図24B(E)において形成したGaN層を第3のGaN層405(第3の半導体層)として示す。この図24B(E)では、第2のGaN層404と第3のGaN層405の境界を点線で示す。このように、超音波洗浄工程の前後に第1のGaN層402上に形成されるGaN層は、実質的に同様の結晶成長方法により形成されるものであり、構造が異なるものではないが、結晶成長させる工程が異なることから、第2のGaN層404と第3のGaN層405として示してもよい。
【0134】
なお、第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の形成過程において、第1のGaN層402に空洞が形成されるか否かはTa層403を除去した後の穴404aの幅とMOCVD装置内の圧力が影響していることが判明した。このことについて図28と図29を参照して説明する。なお、図28及び図29では、穴404aの幅を第1のGaN層402の間隔dとして示す。図28(A)は、第1のGaN層402の間隔dが狭い場合のGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図28(B)は、第1のGaN層402の間隔dが広い場合のGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図29(A)は、第1のGaN層402の間隔dが狭く、MOCVD装置内の圧力Pが低い場合のTMGの気相中の濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図29(B)は、第1のGaN層402の間隔dが広く、MOCVD装置内の圧力Pが高い場合のTMGの気相中の濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図29(C)は、第1のGaN層402の間隔dが狭く、MOCVD装置内の圧力Pが高い場合のTMGの気相中の濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図29(D)は、第1のGaN層402の間隔dが広く、MOCVD装置内の圧力Pが低い場合のTMGの気相中の濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。
【0135】
まず、図28(A)及び(B)について説明する。図28(A)及び(B)において、第1のGaN層402の厚さが4μmであるとすると、図28(A)の第1のGaN層の間隔dは4μmより小さく(d<4μm)、図28(B)の第1のGaN層の間隔dは10μmより大きい(d>10μm)。これら第1のGaN層402の間隔dは、Ta層403の形成工程において形成するTa層403の幅に依存する。例えば、Ta層403の形成工程においてTa層403の幅が4μmに設定されたとすると、上記超音波洗浄によりTa層403が除去された後に第1のGaN層402に空く穴404aにより図28(A)に示すように第1のGaN層402の間隔dは4μmより小さくなる。また、例えば、Ta層403の形成工程においてTa層403の幅が10μmに設定されたとすると、上記超音波洗浄によりTa層403が除去された後に第1のGaN層402に空く穴404aにより図28(B)に示すように第1のGaN層402の間隔dは10μmより大きくなる。
【0136】
そして、図24A(E)(又は、図24B(E))の第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の形成工程において、MOCVD装置内の圧力設定と第1のGaN層402の間隔dにより図28(A)及び(B)に示す再成長GaN層の成長過程は異なる。図28(A)及び(B)に示す再成長GaN層の成長過程において、例えば、MOCVD装置内の圧力を共に500Torrに設定した場合、図28(A)のサファイア基板上にGaNは付かないが、図28(B)のサファイア基板上にGaNは付いた。また、図28(A)及び(B)に示す再成長GaN層の成長において、MOCVD装置内の圧力を共に500Torrより低い圧力(例えば、10Torr〜100Torr)に設定した場合、図28(A)及び(B)のサファイア基板上にGaN層は付かなかった。すなわち、MOCVD装置内の圧力を低く設定することにより、第1のGaN層の間隔dが広い場合でもサファイア基板上にGaN層は付かなかった。また、MOCVD装置内の圧力を高く設定することにより、第1のGaN層の間隔dが狭い場合でもサファイア基板上にGaN層は付いた。
【0137】
次に、第1のGaN層の間隔dと、MOCVD装置内の圧力と、再成長GaN層の成長状態との関係について図29を参照して以下に説明する。図29(A)〜(D)に示す「TMGの気相中濃度」は、再成長GaN層を成長させるTMGの気相中の濃度(m−3)を模式的に示したものである。この「TMGの気相中濃度」は、MOCVD装置内の圧力設定により変化する。MOCVD装置内の圧力設定が低い(例えば、10Torr〜100Torr)と、TMGの気相中の濃度(m−3)が低くなり、TMGの平均自由工程が長くなると共に、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が長くなる。また、MOCVD装置内の圧力設定が高い(例えば、200Torr〜760Torr)と、TMGの気相中の濃度(m−3)が高くなり、TMGの平均自由工程が短くなると共に、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が短くなる。従って、MOCVD装置内の成長圧力が低い場合は、拡散長が長くなる。ここで、拡散長とは、個体となって基板中を移動する距離であって、その距離内に安定できる点を求めている。サファイアとGaNがあった場合、安定できる点はGaNである。広い基板面積中では、成長圧力が高い場合と比べると、成長速度は同等である。第1のGaN層の間隔dが同じ場合は、MOCVD装置内の圧力を低く設定した方がサファイア基板上に付くGaNの量が減る。また、図29(A)及び図29(B)に示す矢印はGaNの成長方向を模式的に示しており、第1のGaN層402の表面(平面及び斜面)に対して再成長GaN層が垂直方向に成長することを示している。
【0138】
図29(A)では、第1のGaN層402の間隔dを狭く(d<4μm)し、MOCVD装置内の圧力Pを低く設定(例えば、10Torr〜100Torr)した場合を示している。この場合、TMGの気相中の濃度(m−3)が低くなり、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が長くなり、GaN層の成長速度は遅くなる。このため、図29(A)に示すサファイア基板上にはGaNが付いていない。図29(B)では、第1のGaN層402の間隔dを広く(d>10μm)し、MOCVD装置内の圧力Pを高く設定(例えば、200Torr〜600Torr)した場合を示している。この場合、TMGの気相中の濃度(m−3)が高くなり、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が短くなる。このため、図29(B)に示すサファイア基板上にはGaNが付いている。
【0139】
図29(A)の条件(第1のGaN層の間隔dが狭く、MOCVD装置内の圧力Pが低い場合)では、サファイア基板上にGaNが付き難いため、再成長GaN層の成長に伴ってTa層402を除去した後の穴404aは埋められず、第1のGaN層402に形成された空洞402aは残る。また、図29(B)の条件(第1のGaN層の間隔dが広く、MOCVD装置内の圧力が高い場合)では、サファイア基板上にGaNが付き易いため、再成長GaN層の成長に伴ってTa層402を除去した後の穴404aは埋められて、第1のGaN層402に形成された空洞402aは残らない。
【0140】
図29(C)では、第1のGaN層402の間隔dを狭く(d<4μm)し、MOCVD装置内の圧力Pを高く設定(例えば、200Torr〜600Torr)した場合を示している。この場合、TMGの気相中の濃度(m−3)が高くなり、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が短くなり、GaN層の成長速度は早くなる。このため、図29(B)に示すサファイア基板上にはGaNが付いている。すなわち、MOCVD装置内の圧力Pを高く設定した場合は、第1のGaN層402の間隔dが狭い方がサファイア基板上にGaNは付き難いことを確認した。図29(D)では、第1のGaN層402の間隔dを広く(d>10μm)し、MOCVD装置内の圧力Pを低く設定(例えば、10Torr〜100Torr)した場合を示している。この場合、TMGの気相中の濃度(m−3)が低くなり、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が長くなり、GaN層の成長速度は遅くなる。このため、図29(A)に示すサファイア基板上にはGaNが付いていない。
【0141】
図29(C)の条件(第1のGaN層の間隔dが狭く、MOCVD装置内の圧力Pが高い場合)では、サファイア基板上にGaNが付き易いため、再成長GaN層の成長に伴ってTa層402を除去した後の穴404aは埋められるが、第1のGaN層の間隔dが広い場合よりもサファイア基板上に付くGaNの量は少ないため、第1のGaN層402に形成された空洞402aは完全には埋まらない。また、図29(D)の条件(第1のGaN層の間隔dが広く、MOCVD装置内の圧力が低い場合)では、サファイア基板上にGaNが付き難いため、再成長GaN層の成長に伴ってTa層402を除去した後の穴404aは埋められず、第1のGaN層402に形成された空洞402aは残る。
【0142】
以上、図29(A)〜(D)に示したようにGaNの成長条件であるMOCVD装置内の圧力設定と第1のGaN層402の間隔dとの違いにより、第1のGaN層402に空洞402aが残る場合と、第1のGaN層402に空洞402aが残らない場合があることが判明した。従って、第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)を成長させる際に、第1のGaN層402の間隔dとMOCVD装置内の圧力を適宜設定して第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の成長条件を調整することにより、第1のGaN層402に空洞402aを残すことができる。
【0143】
次に、図25A(A)において、サファイア基板401を剥離する。続いて、図25A(B)において、剥離した第1のGaN層402を研磨することにより、GaN基板400を得ることができる。また、図25A(C)及び(D)に示すように、このGaN基板400の図中の上面側にSiやSiC等のシリコン系基板500を貼り付けて下面側を平坦加工し、デバイス製造用の半導体基板としてもよい。なお、サファイア基板401を剥離する場合、第1のGaN層402に形成された空洞402aを利用することが可能である。サファイア基板401を剥離する場合、例えば、エピ成長側をSi等に貼り付け、それとサファイア基板401側を持って2つに分離する方法、あるいはレーザ・リフトオフ法を用いてもよいし、研磨法を用いてもよい。本実施形態3は、サファイア基板401を剥離する方法を特に限定するものではない。なお、図24B(E)に示した半導体基板400からサファイア基板401を剥離する工程を図25B(A)に示し、剥離した第1のGaN層402を研磨する工程を図25B(B)に示す。この図25B(A),(B)では、第2のGaN層404と第3のGaN層405の境界を点線で示す。また、図25B(C)及び(D)に示すように、このGaN基板400の図中の上面側にSiやSiC等のシリコン系基板500を貼り付けて下面側を平坦加工し、デバイス製造用の半導体基板としてもよい。
【0144】
以上のように、本実施形態3に係る半導体基板400では、第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)を形成する際に、MOCVD装置内にNH3ガスを流して圧力を一定に調整しながらアニールして第2のGaN層404の一部(又は、第2のGaN層404)を形成し、MOCVD装置から一旦半導体基板400を取り出して超音波洗浄してTa層403を除去した後、MOCVD装置内に戻してTMGを流して圧力を一定に調整しながら残りの第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)を形成して、Ta層403を除去した穴を利用して第1のGaN層402内に空洞402aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態3で示した第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)を形成する際に、超音波洗浄によりTa層を除去した後の穴を利用して第1のGaN層402内に空洞402aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層402上の一部に上述のような穴を形成させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層402内に空洞402aを形成することが可能になることが判明した。また、本実施形態3に係る半導体基板400では、第2のGaN層404を形成する前に、超音波洗浄によりTa層403を除去したため、第2のGaN層404の表面に粒状物質が析出することがなく、表面が平坦な第2のGaN層404を形成することができる。
【0145】
なお、本実施形態3に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の成長と空洞402aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の成長過程において、第1のGaN層402内に空洞が形成されるか否かは、Ta層403の幅とMOCVD装置内の圧力設定に依存するため、本実施形態3では、Ta層403の幅の設定とMOCVD装置内の圧力設定を調整した。
【0146】
また、本実施形態3では、Ta層403の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板400上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板400を利用したデバイスの例については、後述する。
【0147】
また、本実施形態3に示した半導体基板400は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板401のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板401として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0148】
次に、上記図27では純水を用いた超音波洗浄により半導体基板のTa層を除去する例を説明したが、第1のGaN層及び第2のGaN層が溶けない溶液として、NaOH、KOH、HFを用いて半導体基板のTa層の除去に関する実験を行った。
【0149】
(実施例1)
本実施例1では、KOHを用いてTa層の除去に関する実験を行った。KOHを入れたNi坩堝をMOCVD装置(図示せず)内に入れて300℃で加熱した後、図24A(B)の第1のGaN層402上にTa層403を形成した半導体基板400をMOCVD装置内に挿入して3分間放置してエッチングを行った。このエッチング処理前後の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真を図30に示す。図30において、(A)はエッチング処理前の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真であり、(B)はエッチング処理後の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真である。図30(A)では半導体基板400表面にTa粒が残っていた。このエッチング処理後の図30(B)では図30(A)のTa粒は半導体基板400表面からなくなり、その表面は凹凸になった。したがって、このKOHを用いたエッチング処理では、半導体基板400表面からTa粒を除去できることを確認できた。
【0150】
(実施例2)
本実施例2では、KOHを用いてTaマスクの除去に関する実験を行った。KOHを入れたNi坩堝をMOCVD装置(図示せず)内に入れて200℃で加熱した後、図24A(B)の第1のGaN層402上にTaマスク403を形成した半導体基板400をMOCVD装置内に挿入して5分間放置してエッチングを行った。このエッチング処理前後の半導体基板400表面のSEM写真を図31に示す。図31において、(A)はエッチング処理前の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(B)は(A)のA−A´線から見た断面を模式的に示す図、(C)はエッチング処理後の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(D)はエッチング処理後の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真である。図31(A)及び(B)ではTaマスク403の下の第1のGaN層402に空洞402aが形成されている。このエッチング処理後の図31(C)及び(D)では図31(A)の第1のGaN層402の一部とTaマスク403がエッチングにより除去され、残った第1のGaN層402と空洞402aにより半導体基板400表面は凹凸になった。なお、空洞402a部分の底部にはサファイア基板401が露出している。したがって、このKOHを用いたエッチング処理では、Taマスク403を除去できることを確認できた。この場合、Taマスク403の間隔は2μm以下である場合に空洞402aが形成されて、Taマスク403の除去により半導体基板400表面は凹凸になることを確認した。
【0151】
(実施例3)
本実施例3では、HF水溶液を用いてTaマスクの除去に関する実験を行った。50%濃度のHF水溶液内に図24A(B)の第1のGaN層402上にTaマスク403を形成した半導体基板400を浸漬して24時間放置した後、半導体基板400を水で洗浄した。この処理前後の半導体基板400表面のSEM写真を図32に示す。図32において、(A)は処理前の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(B)は処理前の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真であり、(C)は処理前の半導体基板400表面のSEM写真であり、(D)は処理後の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(E)は処理後の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真であり、(F)は処理後の半導体基板400表面のSEM写真である。図32(B)ではTaマスク403の下の第1のGaN層402に空洞402aが形成されている。この処理後の図32(D)〜(F)では図32(A)〜(C)の第1のGaN層402の一部とTaマスク403が除去され、残った第1のGaN層402と空洞402aにより半導体基板400表面は凹凸になった。なお、空洞402a部分の底部にはサファイア基板401が露出している。したがって、このHF水溶液を用いた処理では、Taマスク403を除去できることを確認できた。
【0152】
続いて、HF水溶液を用いてTaマスク403を除去した後、第2のGaN層404を成膜した。この場合、第2のGaN層404は、MOCVD装置内に原料ガスとしてTMGを40μmol/minで流し、NH3ガスを5SLMで流しながら、1010℃で90分間加熱して成長させた。この第2のGaN層404を成膜した結果を図33に示す。図33において、(A)は半導体基板400表面のSEM写真であり、(B)は(A)のSEM鳥瞰写真である。図33(A)及び(B)に示すように、第2のGaN層404の成膜後にTaマスク403が除去された凹部には空洞が形成されることを確認した。
【0153】
(実施例4)
本実施例4では、NaOHを用いてTaマスクの除去に関する実験を行った。NaOHを入れたNi坩堝をMOCVD装置(図示せず)内に入れて300℃に加熱して、図24A(B)の第1のGaN層402上にTaマスク403を形成した半導体基板400に対して10分間エッチングを行った。このエッチング処理の後、半導体基板400を水で洗浄した。このエッチング処理前後の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真を図34に示す。図34において、(A)はエッチング処理前の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(B)は(A)を拡大した光学顕微鏡写真であり、(C)はエッチング処理後の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(D)は(C)を拡大した光学顕微鏡写真である。このエッチング処理後の図35(C)では図34(A)及び(B)の第1のGaN層402の一部とTaマスク403が除去され、残った第1のGaN層402と空洞402aにより半導体基板400表面は凹凸になった。なお、凹部の底部にはサファイア基板401が露出している。したがって、このNaOHを用いたエッチング処理では、Taマスク403を除去できることを確認できた。
【0154】
続いて、NaOHを用いてTaマスクを除去した後、第2のGaN層404を成膜した。この場合、第2のGaN層404は、MOCVD装置内に原料ガスとしてTMGを40μmol/minで流し、NH3ガスを5SLMで流しながら、1010℃で90分間加熱して成長させた。この第2のGaN層404を成膜した結果を図35に示す。図35において、(A)は半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(B)は(A)の半導体基板400断面のSEM写真であり、(C)は半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真である。図35(B)に示すように、第2のGaN層404の成膜後にTaマスク403が除去された凹部には小さな空洞が形成されることを確認した。また、第2のGaN層404の成膜後の表面は、図35(C)に示すように平坦になった。
【0155】
以上のように、実施例2のKOHを用いたエッチング処理では半導体基板400表面のTa粒を除去することを確認した。また、実施例3KOHを用いたエッチング処理、実施例4のHF水溶液を用いた浸漬処理、及び実施例5のNaOHを用いたエッチング処理ではTaマスクを除去して半導体基板400表面が凹凸になることを確認し、第2のGaN層を成膜後に、Taマスクが除去された凹部には空洞が形成されることを確認した。
【0156】
(実施形態4)
次に、上記実施形態1に示した半導体基板100上、又は、上記実施形態2に示した半導体基板300上、又は、上記実施形態3に示した半導体基板400上に形成した半導体デバイスの例として、LEDを形成した場合について図11を参照して説明する。
【0157】
図11は、本実施形態4に係るLEDを説明するための部分断面図である。この図11では、半導体基板100を適用した場合を示す。
【0158】
図11において、半導体基板100上には複数のLED200が互いに離隔して形成される。各LED200は、第1の導電型化合物半導体層からなる下部半導体層201と、活性層202と、第2の導電型化合物半導体層からなる上部半導体層203と、を有する。活性層202は、バリア層を有する単一又は多重量子井戸構造を有しもよく、要求される発光長により、その物質及び組成が選択される。例えば、活性層202は、窒化ガリウム系の化合物半導体で形成されてもよい。下部及び上部半導体層201,203は、活性層202に比べてバンドギャップが大きい物質で形成され、窒化ガリウム系の化合物半導体で形成されてもよい。
【0159】
この場合、半導体基板100上に形成される下部半導体層201は、第2のGaN層104上に形成される。したがって、半導体基板100を用いてLED200を製造することにより、製造コストを低減することが可能になる。
【0160】
上部半導体層203は、下部半導体層201の一部領域の上部に位置し、活性層202は、上部半導体層203と下部半導体層201の間に介在される。また、上部半導体層203上に上部電極層204を形成してもよい。上部電極層204は、透明電極層、例えば、インジウムスズ酸化物膜(ITO)、又は、Ni/Au等の物質で形成されてもよい。
【0161】
また、上部電極層204上には、上部電極パッド205が形成され、下部半導体層201の露出した領域には、下部電極207が形成される。
【0162】
このように、単一の半導体基板100上で複数のLED200を形成した後、LED200間を切断することにより、個々のLED200に分離することが可能である。このLED200のように、上部電極205と下部電極パッド207を横型に配置するものだけではなく、各電極を縦型に配置したLEDも製造可能である。すなわち、半導体基板100の空洞102aを利用してサファイア基板101を剥離し、第1のGaN層102の剥離面をRIE等により平坦化した後、下部電極を形成することにより、縦型構造のLEDを製造することが可能である。
【0163】
以上のように、半導体基板100上、又は、半導体基板300上を利用して複数のLED200を製造することにより、LEDの製造コストを低減することが可能になる。また、第2のGaN層104上にLED200を形成する際に、第2のGaN層104と下部半導体層201の屈折率を互いに異ならせた化合物半導体を形成することにより、発光効率の向上を図ることができ、高輝度のLEDアレイを構成することも可能である。また、サファイア基板101を剥離したGaN基板100、又は、GaN基板300を利用してレーザダイオードを形成すれば、サファイア基板101よりも熱伝導率が良いGaN層104上に形成されるため、放熱特性を向上でき、レーザダイオードの長寿命化を図ることも可能である。
【0164】
なお、上記実施形態4では、半導体基板100、又は、半導体基板300の第2のGaN層上にLED200を形成する場合を示したが、サファイア基板101から剥離したGaN基板を利用して同様にLED200を形成してもよい。また、サファイア基板101から剥離したGaN基板の被剥離面にSiやSiC等のシリコン系基板を指示材として貼り付け、剥離面をRIE等により研磨して、FET等の半導体デバイスを形成するようにしてもよい。この場合、大電流デバイスを製造することが可能になる。
【0165】
したがって、半導体基板100、又は、半導体基板300を利用してLEDやレーザダイオード等の半導体デバイスを形成することにより、高価なGaN基板を用いることなく、低コストで高性能の半導体デバイスを容易に製造することが可能になる。
【0166】
なお、上記実施形態1〜3では、金属性材料層としてTa層、Ti層、Cr層を形成した場合を示したが、複数の金属の合金や金属と半導体等の合金等を用いてもよく、上述の第1のGaN層に対してエッチング作用を発揮する金属性材料であればよい。
【符号の説明】
【0167】
100,300,400:半導体基板、101,401:サファイア基板、102,402:第1のGaN層、102a,402a:空洞、103,403:Ta層、103a,301a:孔、104,404:第2のGaN層、200:LED、201:下部半導体層、202:活性層、203:上部半導体層、301:Ti層、404a:穴、405:第3のGaN層
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、その製造方法、半導体デバイス及びその製造方法に関する。特に、基板上にGaN層を形成する半導体基板、その製造方法、半導体デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系半導体を用いた発光ダイオード(以下、LEDという)は、信号機や液晶パネルのバックライト等の様々な機器に利用されている。LEDの発光効率は、結晶の転位密度、欠陥に影響されることが知られている。GaN系半導体の結晶成長は、サファイア等の異種基板上で行われるが、GaN層と基板との間の格子不整合及び熱膨張係数のミスマッチが発生し、高転位密度や欠陥の増大をもたらすとされている。
【0003】
そこで、GaN系半導体の結晶成長は、GaN基板等の同種材料の基板上で行うことが望ましい。一方、GaNは窒素の解離率が高いこと等によりGaN融液の形成が難しく、GaN基板の製造を困難にしている。また、GaN基板用に成長させたGaNバルク結晶をGaN基板として剥離するため、機械研磨やレーザ剥離等が用いられているが、実用的なサイズのGaN基板を再現良く得ることは非常に困難であった。特に、レーザ剥離は膨大な時間を要し、GaN基板のコストを上昇させる原因になっている。
【0004】
また、非特許文献1では、石英基板上、W,Mo,Ta,及びNbの高融点金属基板上、及びSi基板上のそれぞれに、プラズマ分子線エピタキシ(plasma assisted molecular beam epitaxy)を用いてGaNを結晶成長させる例を示している。
【0005】
上述のように、GaN基板の製造は非常に困難でありコストも高いため、LEDやレーザダイオード等の半導体デバイスは、サファイア等の異種基板上でGaN層を成長させて製造される場合が多い。しかし、上述の高転位密度や欠陥の増大により、LEDの発光性能の向上を妨げている。さらに、サファイア基板は、GaN基板に比べて熱伝導率が低く、デバイスの熱放熱性を低下させる。このことは、LEDやレーザダイオードを製造する場合、長寿命化を妨げる原因になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Polycrystalline GaN for light emitter and field electron emitter applications” S. Hasegawa, S. Nishida, T. Yamashita, H. Asahi, Thin Solid Films 487 (2005) 260-267
【非特許文献2】“Buried Tungsten Metal Structure Fabricated by Epitaxial-Lateral-Overgrown GaN via Low-Pressure Metalorganic Vapor Phase Epitaxy” M. Haino, et. Al., Jpn. J. Appl. Phys., 39 (2000) L449
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、異種材料の基板上で平坦かつ剥離が容易なGaN基板を低コストで製造することを可能にする製造方法を提供するとともに、そのGaN基板を用いて製造するLEDやレーザダイオード等の半導体デバイスの性能向上や長寿命化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態によれば、基板と、前記基板上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で形成された金属性材料層と、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に形成された第2の半導体層と、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有する半導体基板が提供される。
【0009】
また、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層は、同一又は異なる化合物半導体であってもよく、前記金属性材料層は、前記第2の半導体層を形成する際の加熱温度より高融点の金属であってもよい。
【0010】
また、前記金属性材料層は、酸化領膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成することが好ましい。
【0011】
また、前記金属性材料層は、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔を有してもよい。
【0012】
また、前記金属性材料層は、タンタルであり、その膜厚が5nmより厚く、前記第1の半導体層上に形成後、前記タンタルの表面が酸化タンタルで被われており、前記第1の半導体層と前記タンタルとの界面がタンタルと酸化タンタルで被われていてもよい。
【0013】
また、前記金属性材料層は、チタンであり、その膜厚が50nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成してもよい。
【0014】
また、また、前記金属性材料層は、クロムであり、その膜厚が23nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成してもよい。
【0015】
また、本発明の一実施形態によれば、基板と、前記基板上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有する半導体基板が提供される。
【0016】
また、本発明の一実施形態によれば、基板と、前記基板上に形成された第1の半導体層と、前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、前記第2の半導体層上に形成された第3の半導体層と、前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有する半導体基板が提供される。
【0017】
また、前記基板は、サファイア基板又はシリコン基板等であってもよい。
【0018】
また、前記第1の半導体層は、GaN又はInGaAlN等のNを含む化合物半導体であってもよい。
【0019】
また、本発明の一実施形態によれば、基板上に第1の半導体層を形成し、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成する半導体基板の製造方法が提供される。
【0020】
また、前記金属性材料層は、前記第1の半導体層上に一定の間隔及び幅でストライプ状に形成し、前記第2の半導体層は、前記金属性材料層の幅の1/2倍以上の層厚に形成してもよい。
【0021】
また、前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成することが好ましい。
【0022】
また、前記金属性材料層は、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔が形成される厚さに形成してもよい。
【0023】
また、前記第2の半導体層は、有機金属気相成長法を用いて形成し、前記第2の半導体層を成長させるとともに、前記金属性材料層が形成されていない部分の前記第1の半導体層を上層に向かって成長させることが好ましい。
【0024】
また、前記有機金属気相成長法を用いて前記第2の半導体層を成長させる際に、前記第1の半導体層の成長速度に合わせて、前記第2の半導体層を成長させるように前記有機金属気相成長法の設定条件を調整することが好ましい。
【0025】
また、前記有機金属気相成長法の設定条件として、原料ガスの流量、加熱温度、成長時間の何れか一つ又は複数を調整してもよい。
【0026】
また、前記第1の半導体層と前記第2の半導体層は、同一又は異なる化合物半導体材料を用いて形成し、前記金属性材料層は、前記第2の半導体層を形成する際の加熱温度より高融点の金属性材料を用いて形成することが好ましい。
【0027】
また、前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成するとともに、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔を形成し、前記第2の半導体層を前記有機金属気相成長法を用いて形成する際に、前記金属性材料層が形成された部分の下層の前記第1の半導体層を前記金属性材料層及び酸素と反応させて前記複数の孔から蒸発させて、前記空洞を形成することが好ましい。
【0028】
また、前記金属性材料層は、タンタルであり、その膜厚が5nmより厚く、前記第1の半導体層上に形成後、前記タンタルの表面が酸化タンタルで被われており、前記第1の半導体層と前記タンタルとの界面がタンタルと酸化タンタルで被われていてもよい。
【0029】
また、前記金属性材料層は、チタンであり、その膜厚が50nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成してもよい。
【0030】
また、前記金属性材料層は、クロムであり、その膜厚が23nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成してもよい。
【0031】
また、本発明の一実施形態によれば、基板上に第1の半導体層を形成し、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層の一部を形成し、前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を溶液中で洗浄して前記金属性材料層を除去し、前記第2の半導体層の一部上に更に当該第2の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成する半導体基板の製造方法が提供される。
【0032】
また、本発明の一実施形態によれば、基板上に第1の半導体層を形成し、前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層を形成し、前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を溶液に浸して前記金属性材料層を除去し、前記第2の半導体層上に第3の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層を除去した下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成する半導体基板の製造方法が提供される。
【0033】
また、前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を前記溶液を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去してもよい。
【0034】
また、前記第2の半導体層を形成した前記基板を前記溶液を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去してもよい。
【0035】
また、前記溶液は、前記金属性材料層が溶けあるいは破壊され、且つ前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層が溶けない溶液であってもよい。
【0036】
また、前記溶液は水、塩酸、水および塩酸、硫酸、水および硫酸、硝酸、水および硝酸、フッ化水素酸、水およびフッ化水素酸、水および水酸化ナトリウム、または水および水酸化カリウムであってもよい。
【0037】
また、前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を水を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去してもよい。
【0038】
また、前記第2の半導体層を形成した前記基板を水を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去してもよい。
【0039】
また、前記第1の半導体層は、GaN又はInGaAlN等のNを含む化合物半導体であってもよい。
【0040】
また、前記基板は、サファイア基板又はシリコン基板等であってもよい。
【0041】
また、前記第1の半導体層に形成された前記空洞を利用して前記基板を剥離して、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層から形成された半導体基板を製造してもよい。
【0042】
また、前記基板を剥離する際に、レーザ・リフトオフ法を用いてもよい。
【0043】
また、前記基板を剥離する際に、研磨法を用いてもよい。
【0044】
また、本発明の一実施形態によれば、前記半導体基板上に形成される半導体デバイスであって、前記第2の半導体層上に形成された第1の化合物半導体層と、前記第1の化合物半導体層上に形成された活性層と、前記第活性層上に形成された第2の化合物半導体層と、を少なくとも有する半導体デバイスが提供される。
【0045】
また、本発明の一実施形態によれば、前記半導体基板上に形成される半導体デバイスの製造方法であって、前記第2の半導体層上に第1の化合物半導体層を形成し、前記第1の化合物半導体層上に活性層を形成し、前記第活性層上に第2の化合物半導体層を形成する半導体デバイスの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、異種基板上で平坦かつ剥離が容易なGaN基板を低コストで製造することを可能にする製造方法を提供することができるとともに、そのGaN基板を用いて製造するLEDやレーザダイオード等の半導体デバイスの低コスト化、性能向上や長寿命化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態1に係る半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は第2のGaN層の形成が完了を示す断面図、(E)はサファイア基板を剥離した断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。
【図2】実施例1に係る半導体基板のSEM断面写真である。
【図3】実施例1に係るEDXのスペクトル図である。
【図4】実施例1に係る(A)は図2の拡大領域のSEM断面写真、(B)はGaのEDX図、(C)はAlのEDX図、(D)はOのEDX図である。
【図5】実施例1に係る(A)は半導体基板のSEM断面写真、(B)は半導体基板のSEM表面写真である。
【図6】実施例1に係る半導体基板のEDX図であり、(A)はGaのEDX図、(B)はTaのEDX図である。
【図7】比較例1に係る(A)は半導体基板のSEM鳥瞰写真、(B)は半導体基板のSEM表面写真である。
【図8】比較例1に係る(A)は図7(B)のEDXのスペクトル図、(B)は図7(B)のGaのEDX図、(C)は図7(B)のNのEDX図である。
【図9】比較例1に係る(A)はボイドのSEM断面写真、(B)は(A)のEDXのスペクトル図である。
【図10】比較例1に係る(A)は図9(A)のGaのEDX図、(B)は図9(A)のNのEDX図、(C)は図9(A)のTaのEDX図である。
【図11】本発明の実施形態3に係るLEDアレイの構成を示す断面図である。
【図12】実施例2に係る半導体基板のSEM断面写真である。
【図13】実施例3に係る半導体基板のSEM断面写真である。
【図14】実施例4に係る半導体基板のSEM断面写真である。
【図15】(A)は厚さ5nmのTa層がTa2O5に変化した例を模式的に示す図、(B)は厚さ100nmのTa層の表面がTa2O5に変化した例を模式的に示す図である。
【図16】(A)は厚さ5nmのTaマスクを形成した基板のSEM表面写真であり、(B)は厚さ10nmのTa2O5マスクを形成した基板のSEM断面写真である。
【図17】本発明の実施形態2に係る半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は第2のGaN層の形成が完了を示す断面図、(E)はサファイア基板を剥離した断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。
【図18】(A)は実施例5に係る半導体基板のSEM断面写真、(B)は比較例1に係る半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。
【図19】実施例6に係る(A)は条件1で形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真、(B)は条件2で形成した半導体基板のSEM表面写真である。
【図20】比較例2に係るW層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。
【図21】比較例2に係るPt層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。
【図22】比較例2に係るNi層を用いて形成した半導体基板のSEM断面写真である
【図23】比較例2に係るMo層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。
【図24A】本発明の実施形態3に係る半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は超音波洗浄によりTa層を除去した第2のGaN層を示す断面図、(E)は第2のGaN層の形成が完了を示す断面図である。
【図24B】本発明の実施形態3に係る半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は超音波洗浄によりTa層を除去した第2のGaN層を示す断面図、(E)は第3のGaN層の形成が完了を示す断面図である。
【図25A】図24Aに続く半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)はサファイア基板を剥離した断面図、(B)は完成したGaN基板の断面図、(C)及び(D)はGaN基板の上面にシリコン系基板を貼り付けて下面側を平坦加工したデバイス製造用の半導体基板の断面図である。
【図25B】図24Bに続く半導体基板の製造方法を示す図であり、(A)はサファイア基板を剥離した断面図、(B)は完成したGaN基板の断面図、(C)及び(D)はGaN基板の上面にシリコン系基板を貼り付けて下面側を平坦加工したデバイス製造用の半導体基板の断面図である。
【図26】実施形態3に係る(A)は第2のGaN層の一部を形成した半導体基板のSEM表面写真、(B)(A)のSEM断面写真である。
【図27】実施形態3に係る(A)はTa層が除去された半導体基板表面の光学顕微鏡写真、(B)は(A)の基板に第2のGaN層を形成した半導体基板のSEM断面写真である。
【図28】実施形態3に係る(A)は第1のGaN層の間隔が狭い場合のGaN層の成長状態を模式的に示す断面図、(B)は第1のGaN層の間隔が広い場合のGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。
【図29】実施形態3に係る(A)は第1のGaN層の間隔が狭く、MOCVD装置内の圧力が低い場合のTMGの濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図、(B)は第1のGaN層の間隔が広く、MOCVD装置内の圧力が高い場合のTMGの濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図、(C)は第1のGaN層の間隔が狭く、MOCVD装置内の圧力が高い場合のTMGの濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図、(D)は第1のGaN層の間隔が広く、MOCVD装置内の圧力が低い場合のTMGの濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。
【図30】実施形態3の実施例2に係るKOHを用いたエッチング処理前後の半導体基板表面のSEM鳥瞰写真である。
【図31】実施形態3の実施例3に係るKOHを用いたエッチング処理前後の半導体基板表面の光学顕微鏡表面写真、断面図及びSEM鳥瞰写真である。
【図32】実施形態3の実施例4に係るHF水溶液を用いた浸漬処理前後の半導体基板表面のSEM及び光学顕微鏡写真である。
【図33】実施形態3の実施例4に係る第2のGaN層を形成後の半導体基板表面のSEM鳥瞰写真である。
【図34】実施形態3の実施例5に係るNaOHを用いたエッチング処理前後の半導体基板表面の光学顕微鏡表面写真である。
【図35】実施形態3の実施例5に係る第2のGaN層を形成後の半導体基板表面のSEM及び光学顕微鏡表面写真、SEM断面写真及びSEM鳥瞰写真である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、添付した図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に記載する実施形態はそれぞれ本発明の一形態に過ぎず、本発明はこれらの実施形態に限定されるわけではない。
【0049】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る半導体基板100の製造方法の概略を示す図である。図1(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は完成した半導体基板の断面図、(E)はサファイア基板を剥離する工程を示す断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。
【0050】
図1(A)において、101はサファイア(Al2O3)基板である。まず、サファイア基板101上に2μm厚程度の第1のGaN層102を形成する。この第1のGaN層102の厚さは一例であり、限定するものではない。
【0051】
次に、図1(B)において、第1のGaN層102上にEB(Electron Beam)蒸着及びリフトオフを用いて50nm厚程度のTa層(金属性材料層)103をストライプ状に5μm幅、5μm間隔で形成する。このTa層103の形状、厚さ、幅、間隔は一例であり、限定するものではない。
【0052】
次に、図1(C)において、第1のGaN層102上及びTa層103上に有機金属気相成長法(以下、MOCVD法という)を用いて第2のGaN層104を形成する。この図1(C)は、第2のGaN層104の形成途中の状態を示している。この場合、GaN層のNとTaが結合してTaNができ、これが異物となり、よりNが濃い気相中に上昇して行く。900℃以上でTaNは不安定になり、その不安定さに伴って穴が深くなっていき、空洞102aが形成される。GaNのNはTaNとなるが、Gaが残る。このGaは、気相成長中に堆積するGaと同じものなので、原料として使われる。しかし、Ta膜の上にGaNを成長させた例がある。上記非特許文献1では、Ta層103の表面はTaだけではなく、空気中で処理されることにより、Ta2O5になっている可能性があることが判明した。
【0053】
次に、図1(D)において、第2のGaN層104の形成が終了し、半導体基板100が完成する。MOCVD法により第2のGaN層104の形成を進めると、図中に示すように、Ta層103の下層にある第1のGaN層102のエッチングが進み、空洞102aの形成領域もほぼサファイア基板101上まで拡大される。また、第2のGaN層104の成長とともに、第1のGaN層102の成長も進むため、図1に示すように基板表面は平坦化される。
【0054】
次に、図1(E)において、サファイア基板101を剥離する。続いて、図1(F)において、剥離した第1のGaN層102を研磨することにより、GaN基板100を得ることができる。このGaN基板100の図中の上面側にSiやSiC等のシリコン系基板を貼り付けて下面側を平坦加工し、デバイス製造用の半導体基板としてもよい。なお、サファイア基板101を剥離する場合、第1のGaN層102に形成された空洞102aを利用することが可能である。サファイア基板101を剥離する場合、例えば、基板となったサファイアおよびSiやSiCといったデバイス用基板の2つを剥離する方法、およびレーザ・リフトオフ法を用いてもよいし、研磨法を用いてもよい。本実施形態は、サファイア基板101を剥離する方法を特に限定するものではない。
【0055】
以上のように、MOCVD法を用いてGaN層を有する半導体基板100を形成することにより、空洞102aを利用して第1のGaN層102をサファイア基板101から剥離することが容易になり、剥離したGaN層をGaN基板として利用することが可能になる。したがって、従来のGaN基板よりも低コストでGaN基板を製造することが可能になる。
【0056】
(実施例1)
次に、上記半導体基板100の製造方法の具体例について、以下に説明する。本実施例1では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてトリメチルガリウム(以下、TMGという)を用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。また、本実施例1では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが50nmのTa層103を形成している。
【0057】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図2に示す。図2は、半導体基板100の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。この空洞102aを含む図中に示す拡大領域について、エネルギー分散型X線分光器(以下、EDXという)を用いて分析した結果を図3に示す。
【0058】
図3のEDXによるスペクトル図に示すように、第1のGaN層102のGaNと、サファイア基板101のAl及びOが観測され、Taは殆ど観測されなかった。また、図4(B)〜(D)のEDX図に示すように、第1のGaN層102のGaと、サファイア基板101のAl及びOが観測されたが、Taは観測されなかった。
【0059】
今回の実施例1では、第2のGaN層104の形成過程でTa層103に孔103aが形成されることを観測した。このTa層103に形成された孔103aの分析結果を図5及び図6に示して更に説明する。なお、図5及び図6に示す分析結果は、上述のMOCVD装置を用いた第2のGaN層104の形成過程を途中で止めて、EDXにより分析した結果である。
【0060】
図5において、(A)は半導体基板100のSEM断面写真であり、(B)は半導体基板100のSEM表面写真である。図6において、(A)は図5(B)の半導体基板100の表面からEDX分析したGaのEDX図であり、(B)は図5(B)の半導体基板100の表面からEDX分析したTaのEDX図である。
【0061】
図5(A)に示す半導体基板100のSEM断面写真では、Ta層103の下層にある第1のGaN層102がエッチングされて空洞102aが形成されたことを観測した。図(B)に示す半導体基板100のSEM表面写真では、Ta層103の表面に孔103aが形成されたことを観測した。更に、この孔103aを含むTa層103の表面をEDX法によりGa,Taについて分析した結果を図6(A)及び(B)に示す。これらのEDX図により、Ta層103が残り、Ta層103上にGa及びGaNが薄く成長していることが判明した。
【0062】
以上のように、本実施例1に係る半導体基板100では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ta層を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態1で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0063】
なお、本実施例1に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞103aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例1では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0064】
また、本実施例1では、第2のGaN層104の成長過程において、Ta層103に孔103aが形成される場合を示したが、例えば、Ta層103を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTa層103を形成するようにしてもよい。また、Ta層103の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板100上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板100を利用したデバイスの例については、後述する。
【0065】
また、本実施例1に示した半導体基板100は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0066】
(実施例2)
本実施例2では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。また、本実施例2では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが30nmのTa層103を形成している。
【0067】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図12に示す。図12は、半導体基板100の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102の一部には空洞102aが形成されている。また、今回の実施例2では、第2のGaN層104の形成過程でTa層103に孔103aが形成されることを観測した。
【0068】
本実施例2に係る半導体基板100では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ta層103を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施例2で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0069】
図12に示した断面図では、Ta層103の真下全体ではなく、各Ta層103の左右両端部分の下層に位置する第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aが形成されている。これは、第1のGaN層102内にエッチングが各Ta層103の左右両端部分から進行することを示している。
【0070】
なお、本実施例2に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例2では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0071】
また、本実施例2では、第2のGaN層104の成長過程において、Ta層103に孔103aが形成される場合を示したが、例えば、Ta層103を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTa層103を形成するようにしもよい。また、Ta層103の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板100上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板100を利用したデバイスの例については、後述する。
【0072】
また、本実施例2に示した半導体基板100は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0073】
(実施例3)
本実施例3では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。また、本実施例3では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが50nmのTa層103を形成している。
【0074】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図13に示す。図13は、半導体基板100の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。また、今回の実施例3では、第2のGaN層104の形成過程でTa層103に孔103aが形成されることを観測した。
【0075】
本実施例3に係る半導体基板100では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ta層103を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態1で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0076】
なお、本実施例3に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例3では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0077】
また、本実施例3では、第2のGaN層104の成長過程において、Ta層103に孔103aが形成される場合を示したが、例えば、Ta層103を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTa層103を形成するようにしもよい。また、Ta層103の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板100上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板100を利用したデバイスの例については、後述する。
【0078】
また、本実施例3に示した半導体基板100は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0079】
(実施例4)
本実施例4では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。また、本実施例4では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが100nmのTa層103を形成している。
【0080】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図14に示す。図14は、半導体基板100の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。また、今回の実施例4では、第2のGaN層104の形成過程でTa層103に孔103aが形成されることを観測した。
【0081】
本実施例4に係る半導体基板100では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ta層103を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態1で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0082】
なお、本実施例4に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例4では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0083】
また、本実施例4では、第2のGaN層104の成長過程において、Ta層103に孔103aが形成される場合を示したが、例えば、Ta層103を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTa層103を形成するようにしもよい。また、Ta層103の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板100上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板100を利用したデバイスの例については、後述する。
【0084】
また、本実施例4に示した半導体基板100は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0085】
(比較例1)
次に、上述の実施例1に対する比較例について説明する。この比較例では、MOCVD装置の設定条件を変更して、半導体基板100の第2のGaN層104を形成する具体例を説明する。
【0086】
本比較例1では、原料ガスとしてTMGを用い、TMGを87μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。
【0087】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板100を図7に示す。図7において、(A)は半導体基板100の一部分のSEM断面写真であり、(B)は(A)の表面を部分的に拡大したSEM表面写真である。この図から明らかなように、第2のGaN層104の面上には、粒状のものが析出されており、Ta層103の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。粒状の物質は、以下のEDX分析及びEDX分析によりGa粒、N粒、Ta粒であることが判明した。
【0088】
上記粒状物質の表面をEDX分析した結果を図8に示す。図8において、(A)は図7(B)の粒状物質をEDX分析したスペクトル図であり、(B)は図7(B)の粒状物質をEDX分析したGaのEDX図であり、(C)は図7(B)の粒状物質をEDX分析したNのEDX図である。図8(A)のスペクトル図に示すようにGa及びNと僅かなTaが観測され、図8(B)及び(C)のEDX図に示すようにGa及びNが観測された。
【0089】
更に、粒状物質の断面をEDX分析した結果を図9及び図10に示す。図9において、(A)は図7(B)の粒状物質としてのボイド部分を拡大したSEM断面写真であり、(B)は(A)の断面をEDX分析スペクトル図である。図10において、(A)は図9(A)の断面をEDX分析したGaのEDX図であり、(B)は図9(A)の断面をEDX分析したNのEDX図であり、(C)は図9(A)の断面をEDX分析したTaのEDX図である。
【0090】
図9(B)のスペクトル図に示すように、第2のGaN層104及び粒状物質のGa及びN、Ta層103のTa、サファイア基板101のAl及びOが観測された。また、図10(A)〜(C)に示すように、ボイド部分にGa,N,Taが観測された。
【0091】
以上の観測結果から第2のGaN層104の面上に析出した粒状物質は、Ga粒、N粒とTa粒であることが判明した。
【0092】
(Ta層のTa2O5形成について)
上記実施例1〜実施例4では、Ta層103の厚さを30nm,50nm,100nmに変更する例を示した。これらのようにTa層103の厚さを変更しても、第1のGaN層104中にはエッチングにより空洞102aが形成されることが確認できた。
【0093】
Ta層103は、その厚さに応じてTa2O5が生成される領域が変化することを、図15に模式的に示す。図15(A)は、厚さを5nmのTa層103がTa2O5に変化した例を示し、図15(B)は、厚さを100nmのTa層103の表面がTa2O5に変化した例を示す。第1のGaN層102の上面にTa層103をEB蒸着装置で蒸着した後、MOCVD装置まで運ぶ間にTa層103は大気中に曝される。この間にTaと酸素が反応してTa層103がTa2O5に変化していることが判明した。このため、図15(A)に示すTa層103の厚さを5nmにした場合は全体がTa2O5に変化し、図15(B)に示すTa層103の厚さを100nmにした場合は表面がTa2O5に変化することが判明した。すなわち、Taが室温で空気に触れると、Ta2O5ができる。図15(A)に厚さ5nmのTa膜がGaN層上の横方向に成長する例を模式的に示す。また、実際に厚さ10nmのTa2O5を基板上の横方向に成長させた例を図16に示す。両方とも、Ta膜の下のGaN層がエッチングされることなく、成長が進んでいる。つまり、厚さ5nmのTa膜を形成した基板を、空気中でMOCVD装置まで運んだ結果、図15(A)では5nmのTa2O5が形成された。Ta2O5は非常に良い横方向に成長するマスクである。一方、図15(B)に示す厚さ100nmのTaを形成した場合は事情が異なる。TaをEB蒸着で形成する場合、原料のTaを空気中で装着するため、Ta表面に薄い酸化膜が蒸着される。これを更に蒸着すると、最初はTa2O5になるが、この状態は次第に収まり、Ta金属の蒸着になる。従って、GaN層上のTaのTa2O5の膜厚は5nm以下であり、部分的にTaである部分が含まれている。このTa2O5膜から上の層はTaである。そして、Ta層形成後の基板を空気中でMOCVD装置まで運ぶことにより、Ta層の表面に薄くTa2O5膜が形成される。その結果、Ta層の表面を薄くTa2O5膜で被った形になる。このTa層のうち、GaN層上のTa2O5膜は、部分的にTaが混じった層になる。この様子を図15(B)に模式的に示している。GaN層のNとTa層のTaは結合してTaNになるが、Gaは気相成長中に堆積するGaと同じものなので、そのまま原料として使われる。
【0094】
上記実施例1〜実施例4において、Ta層103が酸化したTa2O5領域は、第1のGaN層104に対して横方向に成長して非常によいエッチングマスクとして作用する。このため、実施例2において図12に示したように、厚さが30nmのTa層103の左右両端部分ではTa2O5領域が形成されておらず、この部分の下層に位置する第1のGaN層102から空洞102aの形成が進行することが判明した。厚さが50nm,100nmとしたTa層103を形成した実施例3及び4においても、その表面にTa2O5領域が形成されて第1のGaN層104に対してエッチングマスクとして作用するため、同様に空洞102aの形成が進行する。
【0095】
したがって、エッチングマスクとして作用させるTa2O5領域が形成されるTa層103の厚さは、実施例1〜実施例4に示したように20nm〜100nmであってもよい。なお、第1のGaN層上に厚さ5nmのTaマスクを形成して例を示した図16(A)では、Taマスクの下層に空洞が形成されなかった。また、Ta2O5マスクのみを形成した例を示した図16(B)では、Ta2O5マスクがGaN層上、及びInGaAIn上に形成可能であることを確認した。したがって、Ta層103の厚さによらずTa2O5マスクが形成されるため、上記実施例1〜実施例4に示したように、Ta2O5マスクの下層に位置する第1のGaN層102内に空洞102aの形成を進行させることが可能である。
【0096】
(実施形態2)
上記実施形態1では、第1のGaN層102上にTa層103をストライプ状に形成し、このTa層103をエッチングマスクとして作用させて、Ta層103の下層の第1のGaN層102に空洞102aを形成させる場合を示した。本実施形態2では、エッチングマスクの材料として、TiとCrを用いる場合について説明する。
【0097】
図17は、実施形態2に係る半導体基板300の製造方法の概略を示す図である。図17(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTi層(又は、Cr層)を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は完成した半導体基板の断面図、(E)はサファイア基板を剥離する工程を示す断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。なお、図17において、図1に示した半導体基板100と同一の構成部分には同一符号を付している。
【0098】
図17(A)において、101はサファイア(Al2O3)基板である。まず、サファイア基板101上に2μm厚程度の第1のGaN層102を形成する。この第1のGaN層の厚さは一例であり、限定するものではない。
【0099】
次に、図17(B)において、第1のGaN層102上にEB(Electron Beam)蒸着及びリフトオフを用いて50nm厚程度のTi層(金属性材料層)301をストライプ状に5μm幅、5μm間隔で形成する。このTi層301の形状、厚さ、幅、間隔は一例であり、限定するものではない。
【0100】
次に、図17(C)において、第1のGaN層102上及びTi層301上に有機金属気相成長法(以下、MOCVD法という)を用いて第2のGaN層104を形成する。この図17(C)は、第2のGaN層104の形成途中の状態を示している。この場合、GaN層のNとTiが結合してTiNができ、これが異物となり、よりNが濃い気相中に上昇して行く。900℃以上でTiNは不安定になり、その不安定さに伴って穴が深くなっていき、空洞102aが形成される。GaNのNはTiNとなるが、Gaが残る。このGaは、気相成長中に堆積するGaと同じものなので、原料として使われる。
【0101】
次に、図17(D)において、第2のGaN層104の形成が終了し、半導体基板300が完成する。MOCVD法により第2のGaN層104の形成を進めると、図中に示すように、Ti層301の下層にある第1のGaN層102のエッチングが進み、空洞102aの形成領域もほぼサファイア基板101上まで拡大される。また、第2のGaN層104の成長とともに、第1のGaN層102の成長も進むため、図17に示すように基板表面は平坦化される。このため、本実施形態2の半導体基板300では、基板表面を平坦化する工程を省略することが可能である。
【0102】
図17(E)及び(F)は、サファイア基板101を剥離する工程と、剥離した第1のGaN層102を研磨する工程であり、実施形態1の図1(E)及び(F)で説明した工程と同様であるため、説明は省略する。
【0103】
以上のように、MOCVD法を用いてGaN層を有する半導体基板300を形成することにより、空洞102aを利用して第1のGaN層102をサファイア基板101から剥離することが容易になり、剥離したGaN層をGaN基板として利用することが可能になる。したがって、従来のGaN基板よりも低コストでGaN基板を製造することが可能になる。図17に示した半導体基板300の製造工程は、エッチングマスクの材料としてCrを用いた場合も同様であり、その製造工程の図示及び説明は省略する。すなわち、エッチングマスクとしてCr層を第1のGaN層102上にストライプ状に形成し、MOCVD法を用いてGaN層を有する半導体基板300を形成することにより、空洞102aを利用して第1のGaN層102をサファイア基板101から剥離することが可能な半導体基板300を製造することが可能である。なお、エッチングマスクとしてCr層を用いた場合の半導体基板300の具体例については、以下に示す実施例6において説明する。
【0104】
(実施例5)
次に、上記Ti層301を形成した半導体基板300の製造方法の具体例について、以下に説明する。本実施例5では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を50分行った例を示す。また、本実施例5では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが50nmのTi層301を形成している。
【0105】
上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板300を図18(A)に示す。図18(A)は、半導体基板300の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Ti層301の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。また、今回の実施例5では、第2のGaN層104の形成過程でTi層301に孔301aが形成されることを観測した(図17(C)、(D)参照)。
【0106】
本実施例5に係る半導体基板300では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Ti層301を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態2で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層としてTi層301を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0107】
なお、本実施例5に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層102の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例5では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0108】
また、本実施形態2では、第2のGaN層104の成長過程において、Ti層301に孔301aが形成される場合を示したが、例えば、Ti層301を形成する際に、予め孔を形成したパターンマスクを用いてTi層301を形成するようにしもよい。また、Ti層301の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板300上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板300を利用したデバイスの例については、後述する。
【0109】
また、本実施形態2に示した半導体基板300は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板101のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板101として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0110】
(比較例2)
次に、上述の実施例5に対する比較例2について説明する。この比較例2では、Ti層301の厚さを変更し、MOCVD装置の設定条件を変更して、半導体基板300の第2のGaN層104を形成する具体例を説明する。
【0111】
本比較例2では、原料ガスとしてTMGを用い、TMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1120℃に設定して、結晶成長を5時間行った例を示す。上記条件により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板300を図18(B)に示す。図18(B)において、Ti層301の厚さは10nmである。この場合、Ti層301の下層の第1のGaN層102には空洞102aは形成されなかった。
【0112】
したがって、エッチングマスクの材料としてTiを用いる場合、第1のGaN層102に空洞102aが形成されるTi層301の好ましい厚さは50nm以上であり、TMGの好ましい流量Xは、X<80μmol/minの範囲であることが判明した。
【0113】
(実施例6)
次に、上記Cr層を形成した半導体基板300の製造方法の具体例について、以下に説明する。本実施例6の条件1では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する過程について説明する。原料ガスとしてTMGを用い、TMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1060℃に設定して、結晶成長を40分行った例を示す。また、本実施例6の条件1では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが23nmのCr層を形成している。
【0114】
上記条件1により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板300を図19(A)に示す。図19(A)は、半導体基板300の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Cr層の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。
【0115】
また、本実施例6の条件2では、原料ガスとしてTMGを用い、TMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を40分行った例を示す。また、本実施例6の条件2では、第1のGaN層102上にストライプ状に厚さが50nmのCr層を形成している。
【0116】
上記条件2により第2のGaN層104の形成が終了した半導体基板300を図19(B)に示す。図19(B)は、半導体基板300の一部分のSEM断面写真である。この図から明らかなように、Cr層の形成領域の下層にある第1のGaN層102には空洞102aが形成されている。
【0117】
本実施例6に係る半導体基板300では、MOCVD装置を用いて第2のGaN層104を形成する条件を調整して、Cr層を利用して第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態2で示した第2のGaN層104を形成する際に、第1のGaN層102の成長とともに、第1のGaN層102内にエッチングによる空洞102aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層102上の一部に上述のようなエッチング作用を発生させる金属性材料層としてCr層を形成することにより、第1のGaN層102内に空洞102aを形成することが可能になることが判明した。
【0118】
なお、本実施例6に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第1のGaN層の成長と空洞102aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層104の成長過程において、第2のGaN層104の成長速度に比べて第1のGaN層102の成長速度は遅いため、本実施例6では、第1のGaN層102の成長速度に合わせてMOCVD装置の設定条件を調整した。
【0119】
(比較例3)
次に、上記実施例5及び6に示したTi層及びCr層以外の金属性材料層を形成して半導体基板を形成した比較例3について、以下に説明する。
【0120】
図20は、金属性材料層としてW層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。この半導体基板は、第1のGaN層上に金属性材料層として厚さが17nmのW層をストライプパターン状に形成し、MOCVD装置を用いてTMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を40分行って第2のGaN層を形成したものである。この場合、W層の下層の第1のGaN層には空洞は形成されなかった。
【0121】
図21は、金属性材料層としてPt層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。この半導体基板は、第1のGaN層上に金属性材料層として厚さが8nmのPt層をストライプパターン状に形成し、MOCVD装置を用いてTMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1120℃に設定して、結晶成長を40分行って第2のGaN層を形成したものである。この場合、Pt層の下層の第1のGaN層には空洞は形成されなかった。
【0122】
図22は、金属性材料層としてNi層を用いて形成した半導体基板のSEM断面写真である。この半導体基板は、第1のGaN層上に金属性材料層として厚さが12nmのNi層をストライプパターン状に形成し、MOCVD装置を用いてTMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を40分行って第2のGaN層を形成したものである。この場合、Ni層の下層の第1のGaN層には空洞は形成されなかった。
【0123】
図23は、金属性材料層としてMo層を用いて形成した半導体基板の光学顕微鏡断面写真である。この半導体基板は、第1のGaN層上に金属性材料層として厚さが30nmのMo層をストライプパターン状に形成し、MOCVD装置を用いてTMGを80μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長を40分行って第2のGaN層を形成したものである。この場合、Mo層の下層の第1のGaN層には空洞は形成されなかった。
【0124】
以上のように、金属性材料層としてW層、Pt層、Ni層及びMo層を用いた場合、第1のGaN層に空洞は形成されず、空洞を利用して第1のGaN層をサファイア基板から剥離することを可能にする半導体基板を製造するには至らなかった。
【0125】
なお、上記実施形態1及び実施形態2に示した半導体基板100,300では、第1のGaN層102上に金属性材料層としてストライプパターン状のTa層103、Ti層301及びCr層を形成する場合を示したが、金属性材料層の下層に用いる材料はGaNに限定されない。すなわち、金属性材料層と反応するNが含まれる材料であればよく、例えば、InGaAlNを用いてもよい。
【0126】
(実施形態3)
本実施形態3では、第2のGaN層を形成する際に、第1のGaN層とTa層上に第2のGaN層の一部を形成した後、半導体基板を超音波洗浄してTa層を除去し、更に第2のGaN層を形成する製造方法について説明する。
【0127】
図24Aは、実施形態3に係る半導体基板400の製造方法の概略を示す図である。図24(A)は第1のGaN層を形成する工程を示す断面図、(B)はTa層を形成する工程を示す断面図、(C)は第2のGaN層及び空洞の形成途中を示す断面図、(D)は完成した半導体基板の断面図、(E)はサファイア基板を剥離する工程を示す断面図、(F)は完成したGaN基板の断面図である。
【0128】
図24A(A)において、401はサファイア(Al2O3)基板である。まず、サファイア基板401上に2μm厚程度の第1のGaN層402を形成する。この第1のGaN層402の厚さは一例であり、限定するものではない。
【0129】
次に、図24A(B)において、第1のGaN層402上にEB(Electron Beam)蒸着及びリフトオフを用いて50nm厚程度のTa層(金属性材料層)403をストライプ状に5μm幅、5μm間隔で形成する。このTa層403の形状、厚さ、幅、間隔は一例であり、限定するものではない。
【0130】
次に、図24A(C)において、第1のGaN層402上及びTa層403上に第2のGaN層404の一部を形成する。この第2のGaN層404を形成する際は、図24A(B)の第1のGaN層402上にTa層403を形成した半導体基板400をMOCVD装置(図示せず)に入れ、NH3ガスを0.4mol/minで流しながらMOCVD装置内の圧力を500Torrに設定し、1000℃で20分加熱した。この工程により第2のGaN層404の一部を形成した半導体基板400の表面のSEM写真を図26(A)に示す。この半導体基板のSEM断面写真を図26(B)に示す。この場合、半導体基板400の表面は凸凹になった。この工程では、NH3ガスを流しているだけであり、原料ガスとしてTMGは流していないにもかかわらず、図26(B)に示すように、第2のGaN層が成長している。これは、第1のGaN層のGaが加熱温度1000℃以上でMOCVD装置内に飛び、NH3ガス中で再びGaNになって第2のGaN層404を成長させたからである。また、900℃以上でTaNは不安定になり、その不安定さに伴って穴が深くなっていき、空洞402aが形成される。第1のGaN層402のNはTaNとなるが、Gaが残る。このGaは、気相成長中に堆積するGaと同じものなので、原料として使われる。なお、この第2のGaN層404の一部の形成においては、NH3ガスではなく、実施形態1に示したように原料ガスとしてTMGを用いて、例えば、MOCVD装置でTMGを20μmol/minの流量で流しながら加熱温度を1045℃に設定して、結晶成長させてもよい。
【0131】
次に、図24A(D)において、図24A(C)において第2のGaN層404の一部を形成して、表面が凸凹になった半導体基板400をMOCVD装置から取り出し、この半導体基板400の表面を純水を用いた超音波洗浄機(図示せず)により45kHzで15分洗浄した。この超音波洗浄により半導体基板のTa層403を除去した。この場合、Taは水に溶けないため、Taは超音波洗浄時の振動等により破壊されたと思われる。このTa層403が除去された半導体基板400表面の光学顕微鏡写真を図27(A)に示す。図27(A)に示すように、Ta層403が除去された結果、半導体基板400の表面にはサファイア基板と第1のGaN層が見えている。この場合、Ta層が除去された後に穴404aが空き、半導体基板の表面に第1のGaN層が見えるようになり、半導体基板の表面は更に凸凹になった。なお、Ta層部分に空いた穴の幅(図27(A)に示すD)は4μmである。また、半導体基板400の洗浄は純水を用いた超音波洗浄に限定するものではなく、Ta層403が溶け、且つ第1のGaN層402及び第2のGaN層403が溶けない溶液中で超音波洗浄により半導体基板400を洗浄してよい。この場合の溶液としては、例えば、水、塩酸、水および塩酸、硫酸、水および硫酸、硝酸、水および硝酸、フッ化水素、水およびフッ化水素酸、水および水酸化ナトリウム、または水および水酸化カリウム(但し、水の組成は、0〜90%)等を用いてもよい。
【0132】
次に、図24A(E)において、MOCVD装置を用いて表面が凸凹になった半導体基板400の第1のGaN層402上に更に第2のGaN層404を形成する。この第2のGaN層404を形成する際は、原料ガスとしてTMGを160μmol/minで流しながらMOCVD装置内の圧力を500torrに設定し、1040℃で1時間加熱して、厚さ4.5μmの第2のGaN層を形成した。この工程により第2のGaN層404の一部を形成した半導体基板の断面のSEM写真を図26(B)に示す。図26(B)に示すように、Ta層403が形成されていた部分の下層の第1のGaN層402には空洞が形成され、第2のGaN層402の表面は平坦化されている。また、この工程では、予めTa層が除去されているため、半導体基板の表面には上記実施形態1において説明したような粒状物質は析出していない。
【0133】
なお、図24A(C)において形成した第2のGaN層404の一部は、第1のGaN層402上に形成したため、欠陥はない。このため、図24A(E)において、第2のGaN層404の一部上に形成した第2のGaN層404との間には層構造の境界は見られない。また、図24A(C)において形成した第2のGaN層の一部を第2のGaN層とし、図24A(E)において形成した第2のGaN層を第3のGaN層405として捉えることもできる。この例を図24Bに示す。この図24Bにおいて(A)〜(E)に示す各工程は、図24A(A)〜(E)に示した各工程と同様であり、その各工程の説明は省略する。図24B(E)は、図24A(E)に対して第2のGaN層の構造上の捉え方の違いを説明するために図示したものである。この図24B(E)では、図24B(C)において形成したGaN層を第2のGaN層404として示し、図24B(E)において形成したGaN層を第3のGaN層405(第3の半導体層)として示す。この図24B(E)では、第2のGaN層404と第3のGaN層405の境界を点線で示す。このように、超音波洗浄工程の前後に第1のGaN層402上に形成されるGaN層は、実質的に同様の結晶成長方法により形成されるものであり、構造が異なるものではないが、結晶成長させる工程が異なることから、第2のGaN層404と第3のGaN層405として示してもよい。
【0134】
なお、第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の形成過程において、第1のGaN層402に空洞が形成されるか否かはTa層403を除去した後の穴404aの幅とMOCVD装置内の圧力が影響していることが判明した。このことについて図28と図29を参照して説明する。なお、図28及び図29では、穴404aの幅を第1のGaN層402の間隔dとして示す。図28(A)は、第1のGaN層402の間隔dが狭い場合のGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図28(B)は、第1のGaN層402の間隔dが広い場合のGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図29(A)は、第1のGaN層402の間隔dが狭く、MOCVD装置内の圧力Pが低い場合のTMGの気相中の濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図29(B)は、第1のGaN層402の間隔dが広く、MOCVD装置内の圧力Pが高い場合のTMGの気相中の濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図29(C)は、第1のGaN層402の間隔dが狭く、MOCVD装置内の圧力Pが高い場合のTMGの気相中の濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。図29(D)は、第1のGaN層402の間隔dが広く、MOCVD装置内の圧力Pが低い場合のTMGの気相中の濃度とGaN層の成長状態を模式的に示す断面図である。
【0135】
まず、図28(A)及び(B)について説明する。図28(A)及び(B)において、第1のGaN層402の厚さが4μmであるとすると、図28(A)の第1のGaN層の間隔dは4μmより小さく(d<4μm)、図28(B)の第1のGaN層の間隔dは10μmより大きい(d>10μm)。これら第1のGaN層402の間隔dは、Ta層403の形成工程において形成するTa層403の幅に依存する。例えば、Ta層403の形成工程においてTa層403の幅が4μmに設定されたとすると、上記超音波洗浄によりTa層403が除去された後に第1のGaN層402に空く穴404aにより図28(A)に示すように第1のGaN層402の間隔dは4μmより小さくなる。また、例えば、Ta層403の形成工程においてTa層403の幅が10μmに設定されたとすると、上記超音波洗浄によりTa層403が除去された後に第1のGaN層402に空く穴404aにより図28(B)に示すように第1のGaN層402の間隔dは10μmより大きくなる。
【0136】
そして、図24A(E)(又は、図24B(E))の第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の形成工程において、MOCVD装置内の圧力設定と第1のGaN層402の間隔dにより図28(A)及び(B)に示す再成長GaN層の成長過程は異なる。図28(A)及び(B)に示す再成長GaN層の成長過程において、例えば、MOCVD装置内の圧力を共に500Torrに設定した場合、図28(A)のサファイア基板上にGaNは付かないが、図28(B)のサファイア基板上にGaNは付いた。また、図28(A)及び(B)に示す再成長GaN層の成長において、MOCVD装置内の圧力を共に500Torrより低い圧力(例えば、10Torr〜100Torr)に設定した場合、図28(A)及び(B)のサファイア基板上にGaN層は付かなかった。すなわち、MOCVD装置内の圧力を低く設定することにより、第1のGaN層の間隔dが広い場合でもサファイア基板上にGaN層は付かなかった。また、MOCVD装置内の圧力を高く設定することにより、第1のGaN層の間隔dが狭い場合でもサファイア基板上にGaN層は付いた。
【0137】
次に、第1のGaN層の間隔dと、MOCVD装置内の圧力と、再成長GaN層の成長状態との関係について図29を参照して以下に説明する。図29(A)〜(D)に示す「TMGの気相中濃度」は、再成長GaN層を成長させるTMGの気相中の濃度(m−3)を模式的に示したものである。この「TMGの気相中濃度」は、MOCVD装置内の圧力設定により変化する。MOCVD装置内の圧力設定が低い(例えば、10Torr〜100Torr)と、TMGの気相中の濃度(m−3)が低くなり、TMGの平均自由工程が長くなると共に、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が長くなる。また、MOCVD装置内の圧力設定が高い(例えば、200Torr〜760Torr)と、TMGの気相中の濃度(m−3)が高くなり、TMGの平均自由工程が短くなると共に、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が短くなる。従って、MOCVD装置内の成長圧力が低い場合は、拡散長が長くなる。ここで、拡散長とは、個体となって基板中を移動する距離であって、その距離内に安定できる点を求めている。サファイアとGaNがあった場合、安定できる点はGaNである。広い基板面積中では、成長圧力が高い場合と比べると、成長速度は同等である。第1のGaN層の間隔dが同じ場合は、MOCVD装置内の圧力を低く設定した方がサファイア基板上に付くGaNの量が減る。また、図29(A)及び図29(B)に示す矢印はGaNの成長方向を模式的に示しており、第1のGaN層402の表面(平面及び斜面)に対して再成長GaN層が垂直方向に成長することを示している。
【0138】
図29(A)では、第1のGaN層402の間隔dを狭く(d<4μm)し、MOCVD装置内の圧力Pを低く設定(例えば、10Torr〜100Torr)した場合を示している。この場合、TMGの気相中の濃度(m−3)が低くなり、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が長くなり、GaN層の成長速度は遅くなる。このため、図29(A)に示すサファイア基板上にはGaNが付いていない。図29(B)では、第1のGaN層402の間隔dを広く(d>10μm)し、MOCVD装置内の圧力Pを高く設定(例えば、200Torr〜600Torr)した場合を示している。この場合、TMGの気相中の濃度(m−3)が高くなり、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が短くなる。このため、図29(B)に示すサファイア基板上にはGaNが付いている。
【0139】
図29(A)の条件(第1のGaN層の間隔dが狭く、MOCVD装置内の圧力Pが低い場合)では、サファイア基板上にGaNが付き難いため、再成長GaN層の成長に伴ってTa層402を除去した後の穴404aは埋められず、第1のGaN層402に形成された空洞402aは残る。また、図29(B)の条件(第1のGaN層の間隔dが広く、MOCVD装置内の圧力が高い場合)では、サファイア基板上にGaNが付き易いため、再成長GaN層の成長に伴ってTa層402を除去した後の穴404aは埋められて、第1のGaN層402に形成された空洞402aは残らない。
【0140】
図29(C)では、第1のGaN層402の間隔dを狭く(d<4μm)し、MOCVD装置内の圧力Pを高く設定(例えば、200Torr〜600Torr)した場合を示している。この場合、TMGの気相中の濃度(m−3)が高くなり、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が短くなり、GaN層の成長速度は早くなる。このため、図29(B)に示すサファイア基板上にはGaNが付いている。すなわち、MOCVD装置内の圧力Pを高く設定した場合は、第1のGaN層402の間隔dが狭い方がサファイア基板上にGaNは付き難いことを確認した。図29(D)では、第1のGaN層402の間隔dを広く(d>10μm)し、MOCVD装置内の圧力Pを低く設定(例えば、10Torr〜100Torr)した場合を示している。この場合、TMGの気相中の濃度(m−3)が低くなり、GaN層中でのTMGのマイグレーション長(拡散長)が長くなり、GaN層の成長速度は遅くなる。このため、図29(A)に示すサファイア基板上にはGaNが付いていない。
【0141】
図29(C)の条件(第1のGaN層の間隔dが狭く、MOCVD装置内の圧力Pが高い場合)では、サファイア基板上にGaNが付き易いため、再成長GaN層の成長に伴ってTa層402を除去した後の穴404aは埋められるが、第1のGaN層の間隔dが広い場合よりもサファイア基板上に付くGaNの量は少ないため、第1のGaN層402に形成された空洞402aは完全には埋まらない。また、図29(D)の条件(第1のGaN層の間隔dが広く、MOCVD装置内の圧力が低い場合)では、サファイア基板上にGaNが付き難いため、再成長GaN層の成長に伴ってTa層402を除去した後の穴404aは埋められず、第1のGaN層402に形成された空洞402aは残る。
【0142】
以上、図29(A)〜(D)に示したようにGaNの成長条件であるMOCVD装置内の圧力設定と第1のGaN層402の間隔dとの違いにより、第1のGaN層402に空洞402aが残る場合と、第1のGaN層402に空洞402aが残らない場合があることが判明した。従って、第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)を成長させる際に、第1のGaN層402の間隔dとMOCVD装置内の圧力を適宜設定して第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の成長条件を調整することにより、第1のGaN層402に空洞402aを残すことができる。
【0143】
次に、図25A(A)において、サファイア基板401を剥離する。続いて、図25A(B)において、剥離した第1のGaN層402を研磨することにより、GaN基板400を得ることができる。また、図25A(C)及び(D)に示すように、このGaN基板400の図中の上面側にSiやSiC等のシリコン系基板500を貼り付けて下面側を平坦加工し、デバイス製造用の半導体基板としてもよい。なお、サファイア基板401を剥離する場合、第1のGaN層402に形成された空洞402aを利用することが可能である。サファイア基板401を剥離する場合、例えば、エピ成長側をSi等に貼り付け、それとサファイア基板401側を持って2つに分離する方法、あるいはレーザ・リフトオフ法を用いてもよいし、研磨法を用いてもよい。本実施形態3は、サファイア基板401を剥離する方法を特に限定するものではない。なお、図24B(E)に示した半導体基板400からサファイア基板401を剥離する工程を図25B(A)に示し、剥離した第1のGaN層402を研磨する工程を図25B(B)に示す。この図25B(A),(B)では、第2のGaN層404と第3のGaN層405の境界を点線で示す。また、図25B(C)及び(D)に示すように、このGaN基板400の図中の上面側にSiやSiC等のシリコン系基板500を貼り付けて下面側を平坦加工し、デバイス製造用の半導体基板としてもよい。
【0144】
以上のように、本実施形態3に係る半導体基板400では、第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)を形成する際に、MOCVD装置内にNH3ガスを流して圧力を一定に調整しながらアニールして第2のGaN層404の一部(又は、第2のGaN層404)を形成し、MOCVD装置から一旦半導体基板400を取り出して超音波洗浄してTa層403を除去した後、MOCVD装置内に戻してTMGを流して圧力を一定に調整しながら残りの第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)を形成して、Ta層403を除去した穴を利用して第1のGaN層402内に空洞402aを形成することを可能にした。したがって、本実施形態3で示した第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)を形成する際に、超音波洗浄によりTa層を除去した後の穴を利用して第1のGaN層402内に空洞402aを形成することが可能になった。すなわち、第1のGaN層402上の一部に上述のような穴を形成させる金属性材料層を形成することにより、第1のGaN層402内に空洞402aを形成することが可能になることが判明した。また、本実施形態3に係る半導体基板400では、第2のGaN層404を形成する前に、超音波洗浄によりTa層403を除去したため、第2のGaN層404の表面に粒状物質が析出することがなく、表面が平坦な第2のGaN層404を形成することができる。
【0145】
なお、本実施形態3に示したMOCVD装置の設定条件は、一例であり、上述の第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の成長と空洞402aの形成を同時に進めることが可能な条件であればよい。但し、第2のGaN層404(又は、第3のGaN層405)の成長過程において、第1のGaN層402内に空洞が形成されるか否かは、Ta層403の幅とMOCVD装置内の圧力設定に依存するため、本実施形態3では、Ta層403の幅の設定とMOCVD装置内の圧力設定を調整した。
【0146】
また、本実施形態3では、Ta層403の形状は、上述のストライプ状に限定するものではなく、その形状は半導体基板400上に形成するデバイスの構造等に合わせて変更してもよい。半導体基板400を利用したデバイスの例については、後述する。
【0147】
また、本実施形態3に示した半導体基板400は、GaN基板を剥離した後、サファイア基板401のGaNを形成した面をRIE等により平坦にすれば、上述の空洞を有するGaN層を形成する基板401として再利用可能である。したがって、GaN基板の製造コストを更に低減することが可能である。
【0148】
次に、上記図27では純水を用いた超音波洗浄により半導体基板のTa層を除去する例を説明したが、第1のGaN層及び第2のGaN層が溶けない溶液として、NaOH、KOH、HFを用いて半導体基板のTa層の除去に関する実験を行った。
【0149】
(実施例1)
本実施例1では、KOHを用いてTa層の除去に関する実験を行った。KOHを入れたNi坩堝をMOCVD装置(図示せず)内に入れて300℃で加熱した後、図24A(B)の第1のGaN層402上にTa層403を形成した半導体基板400をMOCVD装置内に挿入して3分間放置してエッチングを行った。このエッチング処理前後の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真を図30に示す。図30において、(A)はエッチング処理前の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真であり、(B)はエッチング処理後の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真である。図30(A)では半導体基板400表面にTa粒が残っていた。このエッチング処理後の図30(B)では図30(A)のTa粒は半導体基板400表面からなくなり、その表面は凹凸になった。したがって、このKOHを用いたエッチング処理では、半導体基板400表面からTa粒を除去できることを確認できた。
【0150】
(実施例2)
本実施例2では、KOHを用いてTaマスクの除去に関する実験を行った。KOHを入れたNi坩堝をMOCVD装置(図示せず)内に入れて200℃で加熱した後、図24A(B)の第1のGaN層402上にTaマスク403を形成した半導体基板400をMOCVD装置内に挿入して5分間放置してエッチングを行った。このエッチング処理前後の半導体基板400表面のSEM写真を図31に示す。図31において、(A)はエッチング処理前の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(B)は(A)のA−A´線から見た断面を模式的に示す図、(C)はエッチング処理後の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(D)はエッチング処理後の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真である。図31(A)及び(B)ではTaマスク403の下の第1のGaN層402に空洞402aが形成されている。このエッチング処理後の図31(C)及び(D)では図31(A)の第1のGaN層402の一部とTaマスク403がエッチングにより除去され、残った第1のGaN層402と空洞402aにより半導体基板400表面は凹凸になった。なお、空洞402a部分の底部にはサファイア基板401が露出している。したがって、このKOHを用いたエッチング処理では、Taマスク403を除去できることを確認できた。この場合、Taマスク403の間隔は2μm以下である場合に空洞402aが形成されて、Taマスク403の除去により半導体基板400表面は凹凸になることを確認した。
【0151】
(実施例3)
本実施例3では、HF水溶液を用いてTaマスクの除去に関する実験を行った。50%濃度のHF水溶液内に図24A(B)の第1のGaN層402上にTaマスク403を形成した半導体基板400を浸漬して24時間放置した後、半導体基板400を水で洗浄した。この処理前後の半導体基板400表面のSEM写真を図32に示す。図32において、(A)は処理前の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(B)は処理前の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真であり、(C)は処理前の半導体基板400表面のSEM写真であり、(D)は処理後の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(E)は処理後の半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真であり、(F)は処理後の半導体基板400表面のSEM写真である。図32(B)ではTaマスク403の下の第1のGaN層402に空洞402aが形成されている。この処理後の図32(D)〜(F)では図32(A)〜(C)の第1のGaN層402の一部とTaマスク403が除去され、残った第1のGaN層402と空洞402aにより半導体基板400表面は凹凸になった。なお、空洞402a部分の底部にはサファイア基板401が露出している。したがって、このHF水溶液を用いた処理では、Taマスク403を除去できることを確認できた。
【0152】
続いて、HF水溶液を用いてTaマスク403を除去した後、第2のGaN層404を成膜した。この場合、第2のGaN層404は、MOCVD装置内に原料ガスとしてTMGを40μmol/minで流し、NH3ガスを5SLMで流しながら、1010℃で90分間加熱して成長させた。この第2のGaN層404を成膜した結果を図33に示す。図33において、(A)は半導体基板400表面のSEM写真であり、(B)は(A)のSEM鳥瞰写真である。図33(A)及び(B)に示すように、第2のGaN層404の成膜後にTaマスク403が除去された凹部には空洞が形成されることを確認した。
【0153】
(実施例4)
本実施例4では、NaOHを用いてTaマスクの除去に関する実験を行った。NaOHを入れたNi坩堝をMOCVD装置(図示せず)内に入れて300℃に加熱して、図24A(B)の第1のGaN層402上にTaマスク403を形成した半導体基板400に対して10分間エッチングを行った。このエッチング処理の後、半導体基板400を水で洗浄した。このエッチング処理前後の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真を図34に示す。図34において、(A)はエッチング処理前の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(B)は(A)を拡大した光学顕微鏡写真であり、(C)はエッチング処理後の半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(D)は(C)を拡大した光学顕微鏡写真である。このエッチング処理後の図35(C)では図34(A)及び(B)の第1のGaN層402の一部とTaマスク403が除去され、残った第1のGaN層402と空洞402aにより半導体基板400表面は凹凸になった。なお、凹部の底部にはサファイア基板401が露出している。したがって、このNaOHを用いたエッチング処理では、Taマスク403を除去できることを確認できた。
【0154】
続いて、NaOHを用いてTaマスクを除去した後、第2のGaN層404を成膜した。この場合、第2のGaN層404は、MOCVD装置内に原料ガスとしてTMGを40μmol/minで流し、NH3ガスを5SLMで流しながら、1010℃で90分間加熱して成長させた。この第2のGaN層404を成膜した結果を図35に示す。図35において、(A)は半導体基板400表面の光学顕微鏡写真であり、(B)は(A)の半導体基板400断面のSEM写真であり、(C)は半導体基板400表面のSEM鳥瞰写真である。図35(B)に示すように、第2のGaN層404の成膜後にTaマスク403が除去された凹部には小さな空洞が形成されることを確認した。また、第2のGaN層404の成膜後の表面は、図35(C)に示すように平坦になった。
【0155】
以上のように、実施例2のKOHを用いたエッチング処理では半導体基板400表面のTa粒を除去することを確認した。また、実施例3KOHを用いたエッチング処理、実施例4のHF水溶液を用いた浸漬処理、及び実施例5のNaOHを用いたエッチング処理ではTaマスクを除去して半導体基板400表面が凹凸になることを確認し、第2のGaN層を成膜後に、Taマスクが除去された凹部には空洞が形成されることを確認した。
【0156】
(実施形態4)
次に、上記実施形態1に示した半導体基板100上、又は、上記実施形態2に示した半導体基板300上、又は、上記実施形態3に示した半導体基板400上に形成した半導体デバイスの例として、LEDを形成した場合について図11を参照して説明する。
【0157】
図11は、本実施形態4に係るLEDを説明するための部分断面図である。この図11では、半導体基板100を適用した場合を示す。
【0158】
図11において、半導体基板100上には複数のLED200が互いに離隔して形成される。各LED200は、第1の導電型化合物半導体層からなる下部半導体層201と、活性層202と、第2の導電型化合物半導体層からなる上部半導体層203と、を有する。活性層202は、バリア層を有する単一又は多重量子井戸構造を有しもよく、要求される発光長により、その物質及び組成が選択される。例えば、活性層202は、窒化ガリウム系の化合物半導体で形成されてもよい。下部及び上部半導体層201,203は、活性層202に比べてバンドギャップが大きい物質で形成され、窒化ガリウム系の化合物半導体で形成されてもよい。
【0159】
この場合、半導体基板100上に形成される下部半導体層201は、第2のGaN層104上に形成される。したがって、半導体基板100を用いてLED200を製造することにより、製造コストを低減することが可能になる。
【0160】
上部半導体層203は、下部半導体層201の一部領域の上部に位置し、活性層202は、上部半導体層203と下部半導体層201の間に介在される。また、上部半導体層203上に上部電極層204を形成してもよい。上部電極層204は、透明電極層、例えば、インジウムスズ酸化物膜(ITO)、又は、Ni/Au等の物質で形成されてもよい。
【0161】
また、上部電極層204上には、上部電極パッド205が形成され、下部半導体層201の露出した領域には、下部電極207が形成される。
【0162】
このように、単一の半導体基板100上で複数のLED200を形成した後、LED200間を切断することにより、個々のLED200に分離することが可能である。このLED200のように、上部電極205と下部電極パッド207を横型に配置するものだけではなく、各電極を縦型に配置したLEDも製造可能である。すなわち、半導体基板100の空洞102aを利用してサファイア基板101を剥離し、第1のGaN層102の剥離面をRIE等により平坦化した後、下部電極を形成することにより、縦型構造のLEDを製造することが可能である。
【0163】
以上のように、半導体基板100上、又は、半導体基板300上を利用して複数のLED200を製造することにより、LEDの製造コストを低減することが可能になる。また、第2のGaN層104上にLED200を形成する際に、第2のGaN層104と下部半導体層201の屈折率を互いに異ならせた化合物半導体を形成することにより、発光効率の向上を図ることができ、高輝度のLEDアレイを構成することも可能である。また、サファイア基板101を剥離したGaN基板100、又は、GaN基板300を利用してレーザダイオードを形成すれば、サファイア基板101よりも熱伝導率が良いGaN層104上に形成されるため、放熱特性を向上でき、レーザダイオードの長寿命化を図ることも可能である。
【0164】
なお、上記実施形態4では、半導体基板100、又は、半導体基板300の第2のGaN層上にLED200を形成する場合を示したが、サファイア基板101から剥離したGaN基板を利用して同様にLED200を形成してもよい。また、サファイア基板101から剥離したGaN基板の被剥離面にSiやSiC等のシリコン系基板を指示材として貼り付け、剥離面をRIE等により研磨して、FET等の半導体デバイスを形成するようにしてもよい。この場合、大電流デバイスを製造することが可能になる。
【0165】
したがって、半導体基板100、又は、半導体基板300を利用してLEDやレーザダイオード等の半導体デバイスを形成することにより、高価なGaN基板を用いることなく、低コストで高性能の半導体デバイスを容易に製造することが可能になる。
【0166】
なお、上記実施形態1〜3では、金属性材料層としてTa層、Ti層、Cr層を形成した場合を示したが、複数の金属の合金や金属と半導体等の合金等を用いてもよく、上述の第1のGaN層に対してエッチング作用を発揮する金属性材料であればよい。
【符号の説明】
【0167】
100,300,400:半導体基板、101,401:サファイア基板、102,402:第1のGaN層、102a,402a:空洞、103,403:Ta層、103a,301a:孔、104,404:第2のGaN層、200:LED、201:下部半導体層、202:活性層、203:上部半導体層、301:Ti層、404a:穴、405:第3のGaN層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で形成された金属性材料層と、
前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に形成された第2の半導体層と、
前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層は、同一又は異なる化合物半導体であり、
前記金属性材料層は、前記第2の半導体層を形成する際の加熱温度より高融点の金属性材料であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記金属性材料層は、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記金属性材料層は、タンタルであり、その膜厚が5nmより厚く、前記第1の半導体層上に形成後、前記タンタルの表面が酸化タンタルで被われており、前記第1の半導体層と前記タンタルとの界面がタンタルと酸化タンタルで被われていることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記金属性材料層は、チタンであり、その膜厚が50nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項7】
前記金属性材料層は、クロムであり、その膜厚が23nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に形成された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、
前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に形成された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、
前記第2の半導体層上に形成された第3の半導体層と、
前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項10】
前記基板は、サファイア基板又はシリコン基板等であることを特徴とする請求項1、8又は9に記載の半導体基板。
【請求項11】
前記第1の半導体層は、GaN又はInGaAlN等のNを含む化合物半導体であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項12】
基板上に第1の半導体層を形成し、
前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、
前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項13】
前記金属性材料層は、前記第1の半導体層上に一定の間隔及び幅でストライプ状に形成し、
前記第2の半導体層は、前記金属性材料層の幅の1/2倍以上の層厚に形成することを特徴とする請求項12に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項14】
前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成することを特徴とする請求項12又は13に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項15】
前記金属性材料層は、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔が形成される厚さに形成されることを特徴とする請求項12乃至14の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項16】
前記第2の半導体層は、有機金属気相成長法を用いて形成し、前記第2の半導体層を成長させるとともに、前記金属性材料層が形成されていない部分の前記第1の半導体層を上層に向かって成長させることを特徴とする請求項12に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項17】
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層は、同一又は異なる化合物半導体材料を用いて形成し、
前記金属性材料層は、前記第2の半導体層を形成する際の加熱温度より高融点の金属性材料を用いて形成することを特徴とする請求項12乃至16の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項18】
前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成するとともに、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔を形成し、
前記第2の半導体層を前記有機金属気相成長法を用いて形成する際に、前記金属性材料層が形成された部分の下層の前記第1の半導体層を前記金属性材料層及び酸素と反応させて前記複数の孔から蒸発させて、前記空洞を形成することを特徴とする請求項12乃至17の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項19】
前記金属性材料層は、タンタルであり、その膜厚が5nmより厚く、前記第1の半導体層上に形成後、前記タンタルの表面が酸化タンタルで被われており、前記第1の半導体層と前記タンタルとの界面がタンタルと酸化タンタルで被われていることを特徴とする請求項12乃至18の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項20】
前記金属性材料層は、チタンであり、その膜厚が50nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成することを特徴とする請求項12乃至18の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項21】
前記金属性材料層は、クロムであり、その膜厚が23nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成することを特徴とする請求項12乃至18の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項22】
基板上に第1の半導体層を形成し、
前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、
前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層の一部を形成し、
前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を溶液中に浸して前記金属性材料層を除去し、
前記第2の半導体層の一部上に更に当該第2の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層を除去した下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項23】
基板上に第1の半導体層を形成し、
前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、
前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層を形成し、
前記第2の半導体層を形成した前記基板を溶液中に浸して前記金属性材料層を除去し、
前記第2の半導体層上に第3の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層を除去した下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項24】
前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を前記溶液を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去することを特徴とする請求項22に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項25】
前記第2の半導体層を形成した前記基板を前記溶液を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去することを特徴とする請求項23に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項26】
前記溶液は、前記金属性材料層が溶けあるいは破壊され、且つ前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層が溶けない溶液であることを特徴とする請求項22乃至25の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項27】
前記溶液は水、塩酸、水および塩酸、硫酸、水および硫酸、硝酸、水および硝酸、フッ化水素、水およびフッ化水素酸、水および水酸化ナトリウム、水および水酸化カリウムであることを特徴とする請求項22乃至26の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項28】
前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を水を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去することを特徴とする請求項22に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項29】
前記第2の半導体層を形成した前記基板を水を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去することを特徴とする請求項23に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項30】
前記第1の半導体層は、GaN又はInGaAlN等のNを含む化合物半導体であることを特徴とする請求項12乃至23の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項31】
前記基板は、サファイア基板又はシリコン系基板であることを特徴とする請求項12、22又は23に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項32】
前記第1の半導体層に形成された前記空洞を利用して前記基板を剥離して、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層から形成された半導体基板を製造することを特徴とする請求項12、22又は23に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項33】
前記基板を剥離する際に、レーザ・リフトオフ法を用いることを特徴とする請求項32に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項34】
前記基板を剥離する際に、研磨法を用いることを特徴とする請求項32に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項35】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の半導体基板上に形成される半導体デバイスであって、
前記第2の半導体層上に形成された第1の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層上に形成された活性層と、
前記第活性層上に形成された第2の化合物半導体層と、を少なくとも有することを特徴とする半導体デバイス。
【請求項36】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の半導体基板上に形成される半導体デバイスの製造方法であって、
前記第2の半導体層上に第1の化合物半導体層を形成し、
前記第1の化合物半導体層上に活性層を形成し、
前記第活性層上に第2の化合物半導体層を形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項37】
前記基板を剥離する際に、前記サファイア基板およびSiやSiCといったデバイス用基板の2つに剥離することを特徴とする請求項32に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で形成された金属性材料層と、
前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に形成された第2の半導体層と、
前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層は、同一又は異なる化合物半導体であり、
前記金属性材料層は、前記第2の半導体層を形成する際の加熱温度より高融点の金属性材料であることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体基板。
【請求項4】
前記金属性材料層は、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項5】
前記金属性材料層は、タンタルであり、その膜厚が5nmより厚く、前記第1の半導体層上に形成後、前記タンタルの表面が酸化タンタルで被われており、前記第1の半導体層と前記タンタルとの界面がタンタルと酸化タンタルで被われていることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項6】
前記金属性材料層は、チタンであり、その膜厚が50nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項7】
前記金属性材料層は、クロムであり、その膜厚が23nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に形成された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、
前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項9】
基板と、
前記基板上に形成された第1の半導体層と、
前記第1の半導体層上に形成された第2の半導体層と、
前記第2の半導体層上に形成された第3の半導体層と、
前記第1の半導体層に形成された空洞と、を有することを特徴とする半導体基板。
【請求項10】
前記基板は、サファイア基板又はシリコン基板等であることを特徴とする請求項1、8又は9に記載の半導体基板。
【請求項11】
前記第1の半導体層は、GaN又はInGaAlN等のNを含む化合物半導体であることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の半導体基板。
【請求項12】
基板上に第1の半導体層を形成し、
前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、
前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層より下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項13】
前記金属性材料層は、前記第1の半導体層上に一定の間隔及び幅でストライプ状に形成し、
前記第2の半導体層は、前記金属性材料層の幅の1/2倍以上の層厚に形成することを特徴とする請求項12に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項14】
前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成することを特徴とする請求項12又は13に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項15】
前記金属性材料層は、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔が形成される厚さに形成されることを特徴とする請求項12乃至14の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項16】
前記第2の半導体層は、有機金属気相成長法を用いて形成し、前記第2の半導体層を成長させるとともに、前記金属性材料層が形成されていない部分の前記第1の半導体層を上層に向かって成長させることを特徴とする請求項12に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項17】
前記第1の半導体層と前記第2の半導体層は、同一又は異なる化合物半導体材料を用いて形成し、
前記金属性材料層は、前記第2の半導体層を形成する際の加熱温度より高融点の金属性材料を用いて形成することを特徴とする請求項12乃至16の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項18】
前記金属性材料層は、酸化膜を有し、前記酸化膜は前記第1の半導体層に対するマスクを形成するとともに、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層に通じる複数の孔を形成し、
前記第2の半導体層を前記有機金属気相成長法を用いて形成する際に、前記金属性材料層が形成された部分の下層の前記第1の半導体層を前記金属性材料層及び酸素と反応させて前記複数の孔から蒸発させて、前記空洞を形成することを特徴とする請求項12乃至17の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項19】
前記金属性材料層は、タンタルであり、その膜厚が5nmより厚く、前記第1の半導体層上に形成後、前記タンタルの表面が酸化タンタルで被われており、前記第1の半導体層と前記タンタルとの界面がタンタルと酸化タンタルで被われていることを特徴とする請求項12乃至18の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項20】
前記金属性材料層は、チタンであり、その膜厚が50nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成することを特徴とする請求項12乃至18の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項21】
前記金属性材料層は、クロムであり、その膜厚が23nm以上であり、前記第1の半導体層に対するエッチングマスクを形成することを特徴とする請求項12乃至18の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項22】
基板上に第1の半導体層を形成し、
前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、
前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層の一部を形成し、
前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を溶液中に浸して前記金属性材料層を除去し、
前記第2の半導体層の一部上に更に当該第2の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層を除去した下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項23】
基板上に第1の半導体層を形成し、
前記第1の半導体層上に所定のパターン形状で金属性材料層を形成し、
前記第1の半導体層上及び前記金属性材料層上に第2の半導体層を形成し、
前記第2の半導体層を形成した前記基板を溶液中に浸して前記金属性材料層を除去し、
前記第2の半導体層上に第3の半導体層を形成するとともに、前記金属性材料層を除去した下層部分の前記第1の半導体層に空洞を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項24】
前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を前記溶液を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去することを特徴とする請求項22に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項25】
前記第2の半導体層を形成した前記基板を前記溶液を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去することを特徴とする請求項23に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項26】
前記溶液は、前記金属性材料層が溶けあるいは破壊され、且つ前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層が溶けない溶液であることを特徴とする請求項22乃至25の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項27】
前記溶液は水、塩酸、水および塩酸、硫酸、水および硫酸、硝酸、水および硝酸、フッ化水素、水およびフッ化水素酸、水および水酸化ナトリウム、水および水酸化カリウムであることを特徴とする請求項22乃至26の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項28】
前記第2の半導体層の一部を形成した前記基板を水を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去することを特徴とする請求項22に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項29】
前記第2の半導体層を形成した前記基板を水を用いて超音波洗浄して前記金属性材料層を除去することを特徴とする請求項23に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項30】
前記第1の半導体層は、GaN又はInGaAlN等のNを含む化合物半導体であることを特徴とする請求項12乃至23の何れか一項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項31】
前記基板は、サファイア基板又はシリコン系基板であることを特徴とする請求項12、22又は23に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項32】
前記第1の半導体層に形成された前記空洞を利用して前記基板を剥離して、前記第1の半導体層及び前記第2の半導体層から形成された半導体基板を製造することを特徴とする請求項12、22又は23に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項33】
前記基板を剥離する際に、レーザ・リフトオフ法を用いることを特徴とする請求項32に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項34】
前記基板を剥離する際に、研磨法を用いることを特徴とする請求項32に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項35】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の半導体基板上に形成される半導体デバイスであって、
前記第2の半導体層上に形成された第1の化合物半導体層と、
前記第1の化合物半導体層上に形成された活性層と、
前記第活性層上に形成された第2の化合物半導体層と、を少なくとも有することを特徴とする半導体デバイス。
【請求項36】
請求項1乃至11の何れか一項に記載の半導体基板上に形成される半導体デバイスの製造方法であって、
前記第2の半導体層上に第1の化合物半導体層を形成し、
前記第1の化合物半導体層上に活性層を形成し、
前記第活性層上に第2の化合物半導体層を形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項37】
前記基板を剥離する際に、前記サファイア基板およびSiやSiCといったデバイス用基板の2つに剥離することを特徴とする請求項32に記載の半導体基板の製造方法。
【図1】
【図11】
【図15】
【図17】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図11】
【図15】
【図17】
【図24A】
【図24B】
【図25A】
【図25B】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図26】
【図27】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公開番号】特開2011−187926(P2011−187926A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263008(P2010−263008)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(506029004)ソウル オプト デバイス カンパニー リミテッド (101)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(506029004)ソウル オプト デバイス カンパニー リミテッド (101)
【Fターム(参考)】
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