説明

半導体基板およびその製造方法、並びに半導体装置

【課題】段差部において膜厚の急激な変動が抑制された半導体膜を含む半導体基板、およびその製造方法、並びに、その半導体基板を備える半導体装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る半導体基板1は、下地基板10と、下地基板10上の一部に形成されている金属膜20と、金属膜20を覆うようにして下地基板10上に形成されている絶縁膜30と、絶縁膜30上に形成され、かつ結晶化された半導体膜40とを備えている。絶縁膜30は、金属膜20の端部において段差部を有し、当該段差部の下地基板10に対して垂直な断面形状が、外に膨らむ「R」形状を呈している。上記段差面は、その上端部から下端部に向かって、テーパー角度ψが略0°から徐々に大きくなって、略40°〜90°であるテーパー角度θになるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板およびその製造方法、並びに半導体装置に関し、特に、段差部において急激な角度の変動が抑えられた半導体膜を備える半導体基板およびその製造方法、並びに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、TFTと称する)を用いたアクティブマトリクス型の液晶表示装置が高画質な表示装置として広く用いられている。アクティブマトリクス型の液晶表示装置において、基板上に複数の画素電極、各画素電極をスイッチング制御するための薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下、TFTと称する)、各TFTに接続されたデータ線および走査線、画素電極に接続された蓄積容量等を構成する各種の導電膜等は、絶縁膜を介して積層形成する。そして、相異なる導電膜から構成された配線や回路素子間の接続は、各絶縁膜にコンタクトホールを開口して行なうのが一般的である。さらに、基板上で画素電極が配置されており、画素表示が行われる画素表示領域の周辺に位置する領域に、データ線、走査線からなる配線、蓄積容量の容量線など各種配線と接続されたデータ線駆動回路、走査線駆動回路等の周辺回路を作りこみ、周辺回路内蔵型の表示装置を製造する技術も一般的である。また、画素表示領域や周辺の領域に、TFTや容量だけでなく、フォトダイオードからなる光センサーを形成する技術も知られている。
【0003】
TFTあるいはフォトダイオードを使用した光センサーなどの半導体装置において、半導体膜としては非晶質シリコン(a−Si)や多結晶シリコン(Poly−Si)が広く用いられている。その中でも多結晶シリコンは、非晶質シリコンと比較して電子移動度が大きい。このため、TFTの高速動作が可能であり、従来は外付けの集積回路を使用していた各種の周辺駆動回路もガラス基板上に集積する、いわゆるモノリシック化が可能となるため、広く用いられるようになっている。
【0004】
多結晶シリコンなどの多結晶半導体膜を形成する方法としては、高温の熱処理に耐えられる高価な石英基板を用いて、高温熱処理により、非晶質シリコンを結晶化する方法がある。しかしながら、石英基板は高価であるため、大型化が大変困難である。
【0005】
それゆえ、近年、比較的安価なガラス基板を用いて、非晶質シリコン膜を結晶化する方法が注目されるようになっている。非晶質シリコンを結晶化する方法として、非晶質シリコン膜の表面にレーザビームを照射することにより、非晶質シリコン膜を加熱して結晶化する方法がよく用いられるようになっている。
【0006】
なお、液晶表示装置などの表示画素部に光センサーなどを形成する場合には、バックライトが光センサーに照射されるのを防ぐために、遮光膜(あるいは下部電極)が必要となる。また、TFTにおいてもバックライトの光による光リーク電流、および光劣化を防ぐために、遮光膜は有効である。さらに、オン電流を増やすためにダブルゲートTFT、a−Siプロセスとの整合性からボトムゲートTFTも有効である。
【0007】
図8は、特許文献1における半導体基板の構造を示す断面図である。当該半導体基板は、金属膜(遮光膜あるいは下部電極)102を覆って下地基板101上に、シリコン窒化膜131およびその上に形成されるシリコン酸化膜132から構成される絶縁膜130を形成し、絶縁膜130を下地層としてその全面にアモルファスシリコン膜105a(非晶質シリコン)を堆積することによって形成されている。それゆえ、アモルファスシリコン膜105aは、絶縁膜130の段差面139を覆う構造を有している。その後、エキシマレーザ光Lをアモルファスシリコン膜105aから金属膜102へ向かう方向に照射することで、アモルファスシリコン膜105aの結晶化を行い、半導体膜を形成する。このように形成された半導体膜を備えた半導体基板において、段差面139の上端のテーパー角度ψと下端のテーパー角度θとはほぼ同じであり、40°以下である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−220993号公報(2007年8月30日公開)
【特許文献2】特開平10−223903号公報 (1998年8月21日公開)
【特許文献3】特開平10−229197号公報 (1998年8月25日公開)
【特許文献4】特開2003−298069号公報(2003年10月17日公開)
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Japanese Journal of Applied Physics 43 (2004) pp. L790-L793
【非特許文献2】Society for Information Display (SID) 08 DIGEST pp. 1066-1069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、非晶質半導体膜の結晶化において、エキシマレーザビームなどのパルス発振レーザビームよりもCW(Continuous Wave) 固体レーザビームなどの連続発振レーザビームを用いる方が、半導体膜内に形成される結晶の粒径が大きくなることが見出された。半導体膜内の結晶の粒径が大きくなると電子移動度が高くなり、該半導体膜を用いて形成するTFTを高速駆動することができるため、上記連続発振レーザビームは俄に脚光を浴び始めている。また、非特許文献1には、ラテラル結晶とダブルゲート構造とを組み合わせて、高いオン電流を得る方法が開示されており、非特許文献2には、ラテラル結晶とボトムゲート構造とを組み合わせて、従来の非晶質シリコンの製造ラインにレーザ装置を追加するだけで、ポリシリコンTFTを製造することができる方法が開示されている。
【0011】
しかしながら、基板上に部分的に遮光膜や下部電極を形成し、さらに、絶縁膜、非晶質シリコン膜(アモルファスシリコン膜など)を形成し、そこにCW固体レーザビームを走査してラテラル結晶を形成すると、ラテラル結晶が形成される条件において、レーザ照射部は完全溶融の状態であるため、段差の部分で半導体膜の膜厚が大きく変動し、膜厚の厚い部分や薄い部分が生じる。したがって、これら膜厚の変動に起因して、結晶化後の断線やエッチング後の膜残りが発生し、半導体基板の歩留まりを低下させるという問題点が存在する。
【0012】
これは、絶縁膜における段差のある部分において、テーパー台面(上段)から下がる部分(傾斜部)の境界で角度が急激に変わると、レーザビームを照射して半導体膜が溶融するときに、その上に形成されるべき半導体膜となる半導体材料が重力によって低いところ(下段)に流れてしまうためである。
【0013】
このため、上記特許文献1における半導体基板の構成では、主に部分溶融の状態で結晶化されるエキシマレーザビームによる結晶化では問題がないものの、主に完全溶融の状態で結晶化される、CW固体レーザビームなどの連続発振のレーザビームL’による結晶化においては、段差部における半導体膜(特に、図9に示す、絶縁膜130におけるテーパー台面に上がる部分であるA部、およびテーパー台面から下がり始める部分であるB部)の膜厚変動が大きく、場合によっては断線が生じたり、エッチング時に膜残りが生じ易くなったりすることが実験により明らかになっている。例えば、図9に示すように、結晶化後の半導体基板は、ラテラル結晶シリコン膜105におけるA部,B部はその周囲の部分と比べ、膜厚に大きい変動が発生する。
【0014】
本発明は、レーザビーム結晶化における半導体材料の移動を抑制し、つまり、段差部(傾斜部)の台面と下がる部分との境界での急激な角度の変動を抑え、半導体膜の全体において膜厚の変動を大幅に低減することができ、歩留まりを向上させることができる半導体基板およびその製造方法、並びに半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本願発明に係る半導体基板は、下地基板と、上記下地基板上の一部に形成されている金属膜と、上記金属膜を覆うようにして上記下地基板上に形成されている絶縁膜と、上記絶縁膜上に形成され、結晶化された半導体膜とを備える半導体基板であって、上記絶縁膜は、遮光部の端部において段差部を有し、当該段差部の下地基板に対して垂直な断面形状が、外に膨らむ「R」形状を呈していることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、絶縁膜の段差部を、それの下地基板に対して垂直な断面形状が外に膨らむ「R」形状を呈するように形成することで、下地基板から遠い側の位置での段差部の急激な角度の変動を抑制し、これにより、絶縁膜上にその形状とほぼ同じ断面形状を有する半導体膜を結晶化して形成することができる。したがって、半導体膜の膜厚変動を大幅に低減することができ、半導体基板の歩留まりを向上させることができる。
【0017】
上記半導体基板において、段差部の上記断面形状は、下地基板に近づくに従い下地基板に対する角度が大きくなるようになっていることが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、絶縁膜の段差部を、下地基板から遠い側の位置での下地基板に対する角度が、緩やかな角度変化となるように形成することができるので、段差部に対応する位置の非晶質の半導体膜を結晶化するときに、半導体膜の材料の重力による移動を抑制することができる。したがって、膜厚の変動が小さい半導体膜を形成することができる。また、膜厚の急激な変動による断線などが発生することを抑えることができる。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本願発明に係る半導体基板の製造方法は、下地基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、上記金属膜を覆うようにして上記下地基板上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、上記絶縁膜上に非晶質の半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、上記半導体膜を結晶化する結晶化工程とを備える半導体基板の製造方法であって、上記絶縁膜形成工程では、金属膜の端部において段差部を有し、当該段差部の下地基板に対して垂直な断面形状が、外に膨らむ「R」形状を呈するように絶縁膜を形成することを特徴としている。
【0020】
上記構成によれば、絶縁膜の段差部を、それの下地基板に対して垂直な断面形状が外に膨らむ「R」形状を呈するように形成するので、下地基板から遠い側の位置での段差部の急激な角度の変動を抑制し、これにより、絶縁膜上にその形状とほぼ同じ断面形状を有する半導体膜を結晶化して形成することができる。したがって、半導体膜の膜厚変動を大幅に低減することができ、半導体基板の歩留まりを向上させることができる。
【0021】
上記半導体基板の製造方法において、上記金属膜形成工程では、金属膜のエッチング速度よりも速いエッチング速度を有するレジスト材を用いて金属膜をマスクした後、エッチングを行なうことによってパターニングされた金属膜を形成することが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、絶縁膜の段差部を、それの下地基板に対して垂直な断面が外に膨らむ「R」形状を呈するように、容易に形成することができる。
【0023】
上記半導体基板の製造方法において、上記結晶化工程では、レーザビームを走査して上記半導体膜をレーザアニーリングすることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、半導体膜をレーザアニーリングするので、半導体膜内に形成される結晶の粒径を大きくすることができ、それによって電子移動度を高くすることができる。また、絶縁膜の段差部を、下地基板から遠い側の位置での下地基板に対する角度が、緩やかな角度変化となるように形成するので、段差部に対応する位置の非晶質の半導体膜を結晶化するときに、半導体膜の材料の重力による移動およびレーザビームの走査による移動を抑制することができる。したがって、膜厚の変動が小さい半導体膜を形成することができる。また、膜厚の急激な変動による断線やエッチング時の膜残りなどが発生することを抑えることができる。
【0025】
上記半導体基板の製造方法において、上記レーザビームが、連続発振レーザ、あるいは擬似連続発振レーザビームであることが好ましい。
【0026】
また、上記課題を解決するために、本願発明に係る半導体装置は、上記半導体基板を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、絶縁膜の段差部を、それの下地基板に対して垂直な断面形状が外に膨らむ「R」形状を呈するように形成することで、下地基板から遠い側の位置での段差部の急激な角度の変動を抑制し、これにより、絶縁膜上にその形状とほぼ同じ断面形状を有する半導体膜を結晶化して形成することができる。つまり、半導体膜の材料の重力による移動およびレーザ走査による移動を抑制することができる。したがって、半導体膜の膜厚変動を大幅に低減することができ、半導体基板の歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明に係る半導体基板の構成を概略的に示す断面図である。
【図2】図2は、図1における半導体基板の製造方法の工程を説明するための断面図である。
【図3】図3は、条件によって半導体膜の形状が異なって形成されることを説明するための断面図である。
【図4】図4は、本発明に適用される半導体膜の他の形状を示す断面図である。
【図5】図5は、従来技術における半導体基板および本発明に係る半導体基板の膜厚の変動を比較するための断面図である。
【図6】図6は、本発明に係る半導体基板を備えたTFTの構成を概略的に示す断面図である。
【図7】図7は、本発明に係る半導体基板を備えたPIN型フォトダイオードの構成を概略的に示す断面図である。
【図8】図8は、従来技術における半導体基板の構成を概略的に示す断面図である。
【図9】図9は、従来技術における半導体基板において、半導体膜に存在する問題点を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳しく説明する。
【0030】
図1は、本発明に係る半導体基板の構成を概略的に示す断面図であり、図2は、図1における半導体基板の製造方法の工程を説明するための断面図である。
【0031】
図1に示すように、半導体基板1は、下地基板10上の一部に形成された金属膜20と、金属膜20を覆うようにして下地基板10上に形成された絶縁膜30と、絶縁膜30上に形成された半導体膜40とを備えている。ここで、上記金属膜20は、下部電極あるいは遮光膜を形成する金属膜である。
【0032】
上記半導体基板1の製造方法を以下に説明する。本願発明に係る半導体基板の製造方法は、図2に示すように、下地基板10上に金属膜20を形成する金属膜形成工程と、上記金属膜20を覆うようにして上記下地基板10上に絶縁膜30を形成する絶縁膜形成工程と、上記絶縁膜30上にアモルファスシリコン膜40’を形成する半導体膜形成工程と、上記アモルファスシリコン膜40’を結晶化する結晶化工程とを備えており、上記絶縁膜形成工程では、金属膜20の端部において段差部を有し、当該段差部の下地基板10に対して垂直な断面形状が、外に膨らむ「R」形状を呈するように絶縁膜30を形成する方法である。
【0033】
より具体的には、まず、図2(a)に示すように、下地基板10を準備した後、下地基板10の所定領域に、CVD法、スパッタ法、塗布法、蒸着法などにより、30〜300nmの厚さを有し、下地基板10に対して垂直な断面形状が外に膨らむ「R」形状となる(上に「凸」の形状を呈する)下部電極あるいは遮光膜などの金属膜20を形成する(金属膜形成工程)。金属膜20が遮光膜として使用される場合は、遮光が必要な波長に対して十分な遮光性が確保できる膜厚、例えば、100〜200nmの膜厚を有する膜を形成する。
【0034】
上記下地基板10としては、ガラス基板やガラス基板にコーティング膜を施した基板などの光透過性基板が好ましい。もちろん、これに限定されず、例えば、上記下地基板10としては、上記ガラス基板以外にも、石英、プラスチック、シリコンウェハー、金属、セラミックなどからなる基板を用いることができるし、ガラス、金属などからなる膜上に、ポリイミドなどの樹脂膜を積層した構造としてもよい。また、金属膜20と下地基板10との間に、SiO膜、SiNx膜、SiNO膜あるいはそれらの積層膜を形成してもよい。
【0035】
上記金属膜20は、下地基板10上に配置されており、遮光膜として使用する場合は、下地基板10側からの入射光を遮光し、半導体膜40の光劣化、光リーク電流の発生を抑制する。この金属膜20の材質としては、導電性を付与する場合であれば、例えば、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)などの高融点金属、これら高融点金属を主成分とする合金材料あるいは化合物材料を用いることができる。金属膜20は、例えば上記高融点金属や合金材料、化合物材料からなる被エッチング材料をエッチングしてなり、図1に示すように、下地基板10に対して垂直な断面形状が外に膨らむ「R」形状となる(上に「凸」の形状を呈する)順テーパー状のパターンエッチを有している。
【0036】
続いて、図2(b)に示すように、金属膜20を覆うようにして、30〜500nm、例えば100nmの膜厚を有する絶縁膜30を下地基板10上に形成する(絶縁膜形成工程)。絶縁膜30は、金属膜20の端部において段差部を有し、段差部を、下地基板10に対して垂直な断面が外に膨らむ「R」形状を呈する(上に「凸」の形状を呈する)ように形成する。つまり、同図に示すように、絶縁膜30の段差部において、段差面30aは、その上端部から下端部に向かって、テーパー角度ψ(図1を参照)が略0°から徐々に大きくなり、好ましくは略40°〜90°であるテーパー角度θ(図1を参照)になるように形成されており、その曲率半径は段差と同程度からその5倍程度である。例えば、段差が100nmの場合の曲率半径は100〜500nm程度である。
【0037】
ここで、段差面30aは、後述の半導体膜の結晶化工程で用いる例えばCW固体レーザビーム(以下、CWレーザビームと称する)の光路方向、換言すればレーザビームの進行方向に垂直な平面を基準面とし、この基準面に対して傾斜した面である。ここでは、CWレーザビームの光路方向は下地基板10の主面に垂直な方向とし、絶縁膜30の下地基板10に対して垂直な断面において下地基板10から遠い側の表面(CWレーザビームの走査方向に対して平行な面)は、段差面30aを除いて、基準面30bを構成するものとする。したがって、段差面30aのテーパー角度は、基準面30bに対する段差面30aの傾斜角度である。なお、本実施形態においては、説明の便宜上、半導体膜の結晶化工程で用いる例えばCW固体レーザビームなどのレーザビームをL’と表記し、レーザビームL’の光路方向(つまり、レーザビームL’の走査方向)をSと表記する。
【0038】
また、この絶縁膜30としては、例えば、公知のプラズマCVD法、スパッタ法により形成される、シリコン(Si)を含む無機絶縁膜、例えば、SiO膜、SiNx膜、SiNO膜を用いることができる。特に、下地基板10側からの不純物イオンの拡散を効果的に抑制するという観点からは、SiN膜、SiNO膜などの窒素を含む無機絶縁膜であることが好ましい。また、絶縁膜30は、上記SiO膜、SiNx膜、SiNO膜などの複数の膜が積層された積層構造であってもよい。
【0039】
次に、図2(c)に示すように、絶縁膜30上に、公知のスパッタ法、LPCVD法、プラズマCVD法によって上記絶縁膜30上に半導体膜40を形成する。前記半導体層40は、例えばLPCVD法、プラズマCVD法、またはスパッタ法等によって形成され、30nm〜250nm程度、例えば50nmの厚さの非単結晶半導体薄膜により形成されている。上記非単結晶半導体薄膜としては、非晶質シリコン、多結晶シリコン、非晶質ゲルマニウム、多結晶ゲルマニウム、非晶質シリコン・ゲルマニウム、多結晶シリコン・ゲルマニウム、非晶質シリコン・カーバイド、および多結晶シリコン・カーバイド等が挙げられる。上記半導体膜40として、上記非単結晶半導体薄膜をプラズマCVD法等により形成した場合には、その後に400℃〜600℃程度の脱水素処理を行なうようにしてもよい。また、非単結晶半導体薄膜の上に1nm〜100nm程度のシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、またはシリコン窒化酸化膜等の絶縁膜、あるいはそれらの積層膜を形成するようにしてもよい。
【0040】
次に、図2(d)に示すように、上記半導体膜40にレーザ光L’を方向Sに沿って走査して、半導体膜40をレーザアニールして多結晶化する。このとき、レーザ光にはCWレーザ光を用いて、半導体膜40をラテラル結晶化することが好ましい。
【0041】
ここで、非単結晶半導体薄膜の結晶化を行なうレーザビーム(レーザ光)について説明する。
【0042】
非単結晶半導体薄膜を結晶化する際には、各種のレーザビームを使用することが可能である。本実施形態では、一例として、レーザ発振機から出射された、連続発振レーザビームを使用している。
【0043】
レーザは、固体レーザ、半導体レーザ、および気体レーザに分類することができる。
【0044】
上記固体レーザとしては、例えば、YAGレーザ、YVOレーザ、YLFレーザ、YAlOレーザ、ガラスレーザ、ルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、およびチタンサファイアレーザ等がある。
【0045】
また、上記気体レーザとしては、例えば、エキシマレーザ、Arレーザ、およびKrレーザ等が挙げられる。また、レーザ作用をする活性種としては、例えば、3価のイオン(Cr3+、Nd3+、Yb3+、Tm3+、Ho3+、Er3+、およびTi3+)を使用することができる。
【0046】
その他に、半導体レーザ、ディスクレーザ、またはファイバーレーザを使用することも可能である。
【0047】
上記レーザアニールに用いるレーザビームとしては、基本波の波長が700nmよりも長い場合は、非線形光学素子により高調波に変換されていることが望ましい。例えば、YAGレーザは、基本波として、波長1064nmのレーザビームを出射することが知られている。このレーザビームのシリコン膜に対する吸収係数は非常に低く、このままでは半導体膜の1つである非晶質シリコン膜の結晶化を行なうことは困難である。
【0048】
ところが、このレーザビームはLBO、CLBO、BBO、またはCBO等の非線形光学素子を用いることにより、より短波長に変換することができる。高調波としては、第2高調波(532nm)、第3高調波(355nm)、第4高調波(266nm)、第5高調波(213nm)が挙げられる。これらの高調波は、非晶質シリコン膜に対して吸収係数が高いので、非晶質シリコン膜の結晶化に用いることができる。
【0049】
なお、レーザの発振方式は、連続発振型でもよいし、パルス発振型でもよいが、パルス発振型の場合には、レーザビーム(あるいはステージ)の走査方向に結晶が連続的に成長するように、周波数が数10MHz以上の高周波パルスである、いわゆる擬似連続発振レーザビームを用いることが好ましい。レーザビームの照射条件(例えば、周波数、パワー密度、エネルギー密度、およびビームプロファイル等)は、材料の性質や厚さ、レーザビーム走査速度などを考慮して適宜調整する。
【0050】
なお、多結晶化された半導体膜40は、異方性を有するラテラル結晶以外に、異方性を有しない粒状結晶からなる半導体膜であってもよい。
【0051】
以下では、本実施形態の一例として、レーザビームとして用いる連続発振(CW)のNd:YVOレーザの第2高調波(波長532nm)についてさらに詳しく説明する。
【0052】
結晶化用レーザビームは、レーザパワーや、必要とするサイズに応じてビーム整形光学系および集光レンズにより整形する。ビーム整形光学系は、ビームエキスパンダー、ホモジナイザ、回折光学素子、パウエルレンズ、およびfθレンズ等の組み合わせにより、ビームを整形する。
【0053】
集光レンズは、ビーム整形光学系を通過した結晶化用ビームを、被処理基板の面上に集光する。集光レンズとしては、シリンドリカルレンズ等が挙げられるが、シリンドリカルレンズを2枚組み合わせることによってビームを整形し、ビーム整形光学系を省略することも可能である。ビーム整形光学系および集光レンズは、結晶化を行なうための光学系である改質光学系を構成している。これらの組み合わせにより、結晶化用ビームの形状を、線状、楕円状、または矩形状等の所望の形状に整形して、結晶化を行なう。
【0054】
ビーム幅は、数10μmから数10mm×数μm〜100μm程度、例えば500μm×20μmの線状に整形し、ビーム短軸方向を走査方向とする。
【0055】
線走査速度は、毎秒10cm〜20m程度が可能であるが、ここでは一定で50cm/sとする。また、レーザパワーは10Wとし、基板サイズは730×920mmとする。走査方法としては、基板位置を固定としてレーザビームを走査しても、基板を乗せたステージを移動させて走査するようにしてもよい。
【0056】
なお、被処理基板が透明である場合には、当該基板の裏側から非単結晶半導体薄膜にレーザビームを照射してもよい。また、レーザビームは、一方向のみに走査してもよく、往復して走査するようにしてもよいが、本実施形態の一例としては、結晶化用レーザビームを少しずつ重ねながら走査して半導体層40の全面について結晶改質を行い、例えば1回の走査で帯状のラテラル結晶ができる幅が500μmとすると、例えば450μmピッチで、往復走査で結晶化する。これにより、50μm幅のレーザビームの重なり部が生じることとなる。
【0057】
この連続発振(CW)レーザビームの照射により、非単結晶半導体薄膜は、多結晶化され、多結晶半導体薄膜が得られる。この多結晶半導体薄膜中の結晶は、従来のエキシマレーザによるパルス状の照射により得られる粒状結晶の10〜100倍の大きさであり、レーザ走査方向に細長い帯状の結晶となるとともに、さらには、結晶粒の長さを5μm以上とすること可能であり、結晶の長手方向に電流を流すことにより、高い移動度を得ることができる。
【0058】
上述したように、非単結晶半導体膜の結晶化において、パルス発振のレーザよりも連続発振のレーザや擬似連続発振レーザを用いる方が、半導体膜内に形成される結晶の粒径が大きくなる。半導体膜40内の結晶粒径が大きくなると、該半導体膜40を用いて形成されるTFT12の電子移動度が高くなるため、高速駆動特性が要求されるTFTの製作に好適である。
【0059】
非単結晶の半導体膜40をレーザアニーリング結晶化させた後、フォトリソ工程において所望の形状にパターニングすることにより、30〜250nm、例えば50nmの膜厚を有する多結晶薄膜である多結晶シリコン(Poly−Si)膜である半導体膜40を形成する。
【0060】
以上の工程により、絶縁膜30の段差部を、それの下地基板10に対して垂直な断面形状が外に膨らむ「R」形状を呈するように形成すること、つまり、下地基板10から遠い側の位置での段差面30aのテーパー角度が、緩やかな角度変化となるように形成することができる。これにより、絶縁膜30上にその形状とほぼ同じ断面形状を有する半導体膜40を形成することができる。また、段差部に対応する位置のアモルファスシリコン膜40’を結晶化するときに、半導体材料の重力による移動およびレーザビームの走査による移動を抑制することができる。したがって、膜厚の変動が小さい半導体膜40を形成することができる。また、膜厚の急激な変動による断線やエッチング時の膜残りなどが発生することを抑えることができる。それゆえ、膜厚の変動が小さい半導体膜40およびその半導体膜40を備える、図1に示すような半導体基板1を製造することができる。
【0061】
ここで、図3に基づいて、上記断面形状が外に膨らむ「R」形状を呈する金属膜20の形成方法について、より詳しく説明する。本実施形態においては、エッチング方法により所定形状の金属膜20を形成するプロセスについて説明する。下地基板10に対して垂直な断面が「R」形状(上に「凸」のテーパー形状を呈する)となる金属膜20を形成するには、レジストパターンの形状、エッチング条件、下地基板10とのエッチングの選択比などの条件を選択する必要がある。
【0062】
まず、スパッタ法などにより、図3(a)に示すように、下地基板10上に全面的に上記被エッチング材料からなる金属膜20’を形成する。次に、金属膜20’上に、例えば感光性レジスト(レジスト材)を塗布し、そのレジストパターン50をマスクとして、上記金属膜20’をエッチングしてパターニングする。
【0063】
レジストパターン50の形状と、金属膜20’およびレジストパターン50のエッチングの速度関係とを制御することで、所定形状(図3(f)に示す形状)の金属膜20を形成し、次いで絶縁膜30を形成することにより、半導体材料の重力による移動およびCWレーザビームの走査による移動を抑制することができ、膜厚の変動を抑えることができる。
【0064】
より具体的には、例えば、図3(a)に示すように、レジストパターン50を下地基板10に対して垂直(断面形状では四角形状)に形成し、金属膜20’のエッチング速度に比較してレジストパターン50のエッチング速度が極めて遅い場合、即ち、金属膜20’のエッチング速度よりも極めて遅いエッチング速度を有するレジスト材を用いて金属膜20’をマスクした後、エッチングを行なった場合には、図3(b)に示すように、金属膜20aはレジストパターン50と同じ形状となる。
【0065】
また、図3(c)に示すように、レジストパターン50を下地基板10に対して傾斜部が直線状の順テーパー形状(断面形状では台形状)に形成し、金属膜20’のエッチング速度とレジストパターン50のエッチング速度とが実質的に同じ場合、即ち、金属膜20’のエッチング速度と実質的に同じエッチング速度を有するレジスト材を用いて金属膜20’をマスクした後、エッチングを行なった場合には、図3(d)に示すように、金属膜20bはレジストパターン50と同じ形状、つまり、下地基板10に対して順テーパー形状となる。ここで、金属膜20’のエッチング速度に比較してレジストパターン50のエッチング速度が速い場合には、図3(d)に示すテーパー角度ψは、より小さくなり、逆に、金属膜20’のエッチング速度に比較してレジストパターン50のエッチング速度が遅い場合には、上記テーパー角度ψは、より大きくなり90°に近くなる。
【0066】
これに対して、図3(e)に示すように、レジストパターン50を下地基板10に対して傾斜部が曲線状のテーパー形状(上に「凸」の形状)に形成し、金属膜20’のエッチング速度に比較してレジストパターン50のエッチング速度が速い場合、即ち、金属膜20’のエッチング速度よりも速いエッチング速度を有するレジスト材を用いて金属膜20’をマスクした後、エッチングを行なった場合には、図3(f)に示すように、金属膜20は、下地基板10に対して傾斜部が曲線状のテーパー形状(上に「凸」の形状)となる。特に、レジストパターン50のエッチング速度が金属膜20’のエッチング速度の2倍程度である場合には、金属膜20は、傾斜部の形状が上に「凸」の形状であり、かつ、上記テーパー角度ψが連続的に変化するように形成される。つまり、テーパー角ψは、緩やかな角度変化で、略0°から徐々に大きくなって、略40°〜90°になるように形成される。
【0067】
本願発明に係る製造方法においては、上記金属膜形成工程では、金属膜20’のエッチング速度よりも速いエッチング速度を有するレジストパターン(レジスト材)50を用いて金属膜20’をマスクした後、エッチングを行なうことによってパターニングされた金属膜20を形成することができる。
【0068】
したがって、図3(f)に示す曲線状のテーパー形状に形成された金属膜20を覆うようにして下地基板10上に絶縁膜30を形成することにより、当該絶縁膜30は、傾斜部の形状が上に「凸」の形状であり、かつ、上記テーパー角度ψが連続的に変化するように形成される。つまり、テーパー角ψは、緩やかな角度変化で、略0°から徐々に大きくなって、略90°になるように形成される。
【0069】
つまり、金属膜20および絶縁膜30の段差部(傾斜部)の形状を制御することが可能であれば、半導体膜40の膜厚の変動についても制御することができる。このため、金属膜20のテーパー形状は必ずしも上に「凸」の形状である必要はない。最も本質的なことは、絶縁膜30の段差部の形状を制御することであり、その部分を制御することができれば、半導体膜40の膜厚の変動についても制御することができる。
【0070】
例えば、図4(a)に示すように、金属膜20を下地基板10に対して垂直(断面形状では四角形状)に形成したり、あるいは、図4(b)に示すように、傾斜部が直線状の逆テーパー形状(断面形状では逆台形状)に形成したりしても、絶縁膜30の段差部の形状を制御することができればよい。ここで、金属膜20が逆テーパー形状の場合は、その後にCVD法等で絶縁膜30を形成すると、逆テーパー部分まで膜が回りこんで形成されることによって、上に「凸」の膜を形成することが可能である。ただし、回り込んだ部分に空隙が形成されると、その部分で絶縁耐圧などが低下するおそれが生じることを考慮すれば、金属膜20の段差部の形状は、下地基板10に対して傾斜部が上に「凸」のテーパー形状であることが望ましい。
【0071】
図5は、本発明に係るレーザ照射後の半導体基板の状態と従来における半導体基板の状態とを示す図である。図5(a),(b)は従来における半導体基板の状態を示し、図5(c)は本発明に係る半導体基板の状態を示している。図5(a)は金属膜の膜厚が、半導体膜の倍程度の場合であり、図5(b)は金属膜の膜厚が、半導体膜と同程度の場合である。
【0072】
半導体膜40の膜厚が例えば50nmの場合、金属膜20を遮光膜として使用する場合、あるいは配線抵抗を低減させる必要がある場合には、材料にも依存するが、金属膜20の膜厚が100nm程度必要な場合があり、図5(a)は例えばそのようなケースにあたる。一方、遮光性が必要なく、単なる下部電極として使用する場合で、かつ配線抵抗を低減させる必要が少ない場合には、金属膜20の膜厚が50nm程度でも十分な場合があり、図5(b)は例えばそのようなケースにあたる。
【0073】
図5(a)に示すように、従来例においては、絶縁膜30をテーパー形状に形成しているものの、段差部(傾斜部)Bが直線状であるので、当該段差部と絶縁膜30の基準面(テーパー台面(上段))との境界部分である段差部の上端部において、急激な角度変化がある。したがって、この状態で半導体膜40を形成した後に連続発振レーザ等のレーザを走査しながら照射すると、レーザが照射され完全溶融状態となっている部分の半導体材料が、重力による移動およびレーザビームの走査による移動が原因となって膜厚の変化が大きくなり、一部断線したり、膜厚が厚くなったりする。
【0074】
または、従来例において、図5(b)に示すように、段差部が直線で、急激な角度変化がある場合でも、段差が半導体膜と同程度以下の場合は、断線は生じ難いが、膜厚変動は依然としてあるため、エッチング時の膜残り等が生じるおそれが増える。
【0075】
しかしながら、本発明においては、図5(c)に示すように、絶縁膜30をテーパー形状に形成しているものの、段差部Cのテーパー角度の変化が緩やかであり、図1に示すように、略0°から徐々に大きくなって、略40°〜90°になるように形成されており、曲率半径は段差と同程度から5倍程度である。したがって、この形状を有する絶縁膜30上に半導体膜40を形成すると、段差部の上端部におけるテーパー角度を小さくすることができるため、半導体材料溶融時の重力による移動およびレーザビームの走査による移動を抑制することができる。つまり、半導体膜40の膜厚変動を大幅に低減することができる。これにより、断線やエッチング時の膜残り等を大幅に低減することができ、歩留りを向上させることができる。この効果は、連続発振レーザ光、あるいは擬似連続発振レーザを用いた半導体層のラテラル結晶化を行なう場合に顕著である。
【0076】
図6および図7は、上記半導体基板1を備えた半導体装置の構成を概略的に示す断面図である。図6はTFTの構成を概略的に示す断面図であり、図7はPIN型フォトダイオードの構成を概略的に示す断面図である。
【0077】
本願発明に係る半導体装置を備えたTFTの製造方法について説明する。
【0078】
図6に示すように、多結晶化された半導体(Poly−Si)膜を備えた半導体基板1において、ドーピングなどにより、必要部分であるソースドレイン領域41およびチャネル領域42などを残すように、半導体膜に対して所定のパターニングを行なう。そして、当該半導体膜を覆うようにして、10〜300nm、例えば80nmの膜厚を有するゲート絶縁膜60を絶縁膜30上に形成する。
【0079】
このゲート絶縁膜60としては、半導体膜との界面における界面凖位を低減するという観点から、SiO膜を用いることが好ましいが、SiO、SiNO、SiNxなどの複数の膜が積層された積層構造であってもよい。
【0080】
次に、しきい値電圧を調節するために、ゲート絶縁膜60を通して半導体膜の全面に、不純物を公知のイオン注入法やイオンドーピング法によりドーピング(チャネルドーピング)する。この工程は半導体膜のパターニング前に行なうことも可能である。
【0081】
このチャネルドーピングに使用される不純物としては、例えば、n型TFTを実現する場合であれば、ホウ素(B)などの第3族元素を用いればよい。一方、p型TFTを実現する場合であれば、リン(P)などの第5族元素を用いればよい。
【0082】
次に、ゲート絶縁膜60上に公知のスパッタ法により導電膜を形成した後、フォトリソ工程において当該導電膜を所望の形状にパターニングすることにより、100〜500nm、より好ましくは150〜300nmの膜厚を有するゲート電極61を形成する。ゲート電極61として、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cu、Cr、Pd、およびNd等から選ばれた元素、あるいは前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料によって上記各導電膜を形成してもよい。また、多結晶シリコン等に代表される半導体膜に、リンまたはボロン等の不純物をドーピングしたものでもよい。
【0083】
次いで、ゲート電極61を覆うようにして、200nm以下、例えばより好ましくは30〜100nmの膜厚のキャップ膜(図示省略)を形成した後、ゲート電極61をマスクとして半導体膜に自己整合的にボロン(B)、リン(P)などの不純物を公知のイオン注入法、イオンドーピング法によりドーピング(ソースドレイン用高濃度ドーピング)する。なお、ソースドレイン領域41の各ゲート電極61側の端部にLDD領域を設けることにより、低リーク電流の効果をより高めることができる。
【0084】
上記キャップ膜としては、例えば、公知のプラズマCVD法、スパッタ法を用いて形成される、シリコン(Si)を含む無機絶縁膜、例えば、SiO膜、SiN膜、SiNO膜を用いることができる。
【0085】
次に、半導体膜の活性化処理を経て、半導体膜のチャネル領域42を除く領域に、ソースドレイン領域41として機能する高濃度不純物領域を形成する。この半導体膜の活性化処理としては、例えば、アニールオーブンなどを用いた熱処理を行なってもよいし、エキシマレーザビーム、CWレーザビームなどを照射することを行なってもよい。
【0086】
最後に、層間絶縁膜70、コンタクトホール、ソースドレイン電極43、金属配線および第二層間絶縁膜の形成工程をこの順に行なうことにより、図6に示す画素TFT2を製造することができる。
【0087】
なお、層間絶縁膜70としては、例えば、公知のプラズマCVD法、スパッタ法により形成される、シリコン(Si)を含む無機絶縁膜、例えば、SiO膜、SiN膜、SiNO膜を用いることができる。
【0088】
また、金属配線の材質としては、例えば、厚さが100nmであるTi、厚さが300nmであるAl、および厚さが100nmであるTiの積層膜を形成し、フォトリソグラフィによって上記金属膜を所望のソースおよびドレイン電極用のパターンに形成する。本実施形態の一例としては、金属膜をTi/Al/Tiの積層膜としているが、特に限定はされず、Ta、W、Ti、Mo、Al、Cu、Cr、Pd、Au、Ag、およびNd等から選ばれた元素、あるいは前記元素を主成分とする合金材料もしくは化合物材料により、必要に応じて積層構造として形成してもよい。
【0089】
さらに、第二層間絶縁膜としては、層間絶縁膜70と同様のシリコン(Si)を含む無機絶縁膜、例えば、SiO膜、SiN膜、SiNO膜や、有機膜を用いることができる。有機膜としては、例えば、スピンコート法によって形成される、感光性アクリル樹脂を用いることができる。
【0090】
次に、本願発明に係る半導体装置を備えたPIN型フォトダイオードの製造方法について説明する。
【0091】
図7に示すように、例えば、多結晶化された半導体膜の所定の領域に、n型領域41’、i型領域42’およびp型領域41”を並列に形成する。同図に示すように、PIN型フォトダイオード3は、i型領域42’をn型領域41’とp型領域41”との間に形成した構造を有している。本発明に係る半導体基板1を用いた以外は、上記TFT2を製造する方法と同様に、公知である製造方法を採用することにより、PIN型フォトダイオード3を製造することができる。したがって、詳細な製造方法の説明は省略する。
【0092】
本願発明に係る半導体基板の説明においては、半導体膜として、多結晶薄膜である多結晶化されたポリシリコン膜(多結晶シリコン膜)を例に挙げて説明した。しかしながら、半導体膜として、多結晶薄膜である多結晶シリコン・ゲルマニウム膜、または、多結晶ゲルマニウム膜を用いることもできる。また、半導体膜として、多結晶薄膜である異方性のラテラル結晶薄膜、または、異方性のない粒状結晶薄膜を用いることもできるが、本発明の上に「凸」の構造は、ラテラル結晶薄膜を形成する際に、特に顕著な効果が見られる。
【0093】
また、上記結晶化工程において使用されるレーザビームとしては、CW固体レーザビームの他に、擬似CW固体レーザビーム(周波数が数十MHz以上の高周波パルスレーザビーム)、または、パルス発振レーザビームであるエキシマレーザビームが挙げられる。CW固体レーザビームまたは擬似CW固体レーザビームによって多結晶化された半導体膜において、ラテラル結晶は成長方向と、それに垂直な方向とで特性が異なるが、より高速な動作が必要で、多くの電流を必要とする場合には、結晶の成長方向、すなわち長手方向と同方向に電流を流し、必ずしも電流を必要としない場合、あるいはオフ電流の少なさを重視する場合には、結晶の成長方向と垂直な方向に電流を流すとよい。また、結晶の成長方向に平行な方向および垂直な方向でともに同程度の電流を必要とする場合には、平行な方向と垂直な方向との電流の比に応じて、垂直な方向に電流を流す素子の幅を広くすることにより、同程度の電流を流すことが可能である。
【0094】
なお、上記結晶化工程では、レーザビームを走査して半導体膜をレーザアニーリングする方法を例に挙げて説明したが、これに限定することなく、半導体膜を結晶化する他の公知の方法などを使用しても、同じ効果を得ることができる。
【0095】
また、上記結晶化工程は、半導体膜の下部に電極や遮光膜がある場合に効果が得られるため、逆スタガ型のボトムゲート構造や、ボトムゲート(下部電極)とトップゲート(上部電極)との両方を兼ね備えたダブルゲート構造に対しても適用可能である。
【0096】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる形態例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、半導体基板を備える半導体装置並びに半導体装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
1 半導体基板
2 TFT
3 PIN型フォトダイオード
10 下地基板
20 金属膜(下部電極あるいは遮光膜)
30 絶縁膜
30a 段差面
30b 基準面
40 半導体膜
41 ソースドレイン領域
41’ n型領域
41” P型領域
42 チャネル領域
42’ i型領域
43 ソースドレイン電極
50 レジストパターン(レジスト材)
60 ゲート絶縁膜
61 ゲート電極
70 層間絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地基板と、
上記下地基板上の一部に形成されている金属膜と、
上記金属膜を覆うようにして上記下地基板上に形成されている絶縁膜と、
上記絶縁膜上に形成され、結晶化された半導体膜とを備える半導体基板であって、
上記絶縁膜は、金属膜の端部において段差部を有し、当該段差部の下地基板に対して垂直な断面形状が、外に膨らむ「R」形状を呈していることを特徴とする半導体基板。
【請求項2】
段差部の上記断面形状は、下地基板に近づくに従い下地基板に対する角度が大きくなるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の半導体基板。
【請求項3】
上記半導体膜が多結晶薄膜であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体基板。
【請求項4】
上記多結晶薄膜が、多結晶シリコン膜、多結晶シリコン・ゲルマニウム膜、または、多結晶ゲルマニウム膜であることを特徴とする請求項3に記載の半導体基板。
【請求項5】
上記多結晶薄膜が、異方性のラテラル結晶薄膜であることを特徴とする請求項3に記載の半導体基板。
【請求項6】
下地基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
上記金属膜を覆うようにして上記下地基板上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
上記絶縁膜上に非晶質の半導体膜を形成する半導体膜形成工程と、
上記半導体膜を結晶化する結晶化工程とを備える半導体基板の製造方法であって、
上記絶縁膜形成工程では、金属膜の端部において段差部を有し、当該段差部の下地基板に対して垂直な断面形状が、外に膨らむ「R」形状を呈するように絶縁膜を形成することを特徴とする半導体基板の製造方法。
【請求項7】
上記金属膜形成工程では、金属膜のエッチング速度よりも速いエッチング速度を有するレジスト材を用いて金属膜をマスクした後、エッチングを行なうことによってパターニングされた金属膜を形成することを特徴とする請求項6に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項8】
上記結晶化工程では、レーザビームを走査して上記半導体膜をレーザアニーリングすることを特徴とする請求項6または7に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項9】
上記レーザビームが、連続発振レーザビーム、あるいは擬似連続発振レーザビームであることを特徴とする請求項8に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の半導体基板を備えていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−9294(P2011−9294A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148944(P2009−148944)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】