説明

半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置

【課題】
先供給方式のための半導体封止充てん用樹脂組成物として用いた場合に、優れた接続信頼性が奏され、かつ接続の際の樹脂中のボイドの発生を充分に抑制することが可能な半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供すること。
【解決手段】
複数のバンプが形成された半導体チップと、複数の電極を有する基板と(ただし、前記バンプ及び前記電極の少なくとも一方の表面にすず又ははんだが存在する)、を電気的に接続するために用いられる、半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、フラックス剤を必須成分とし、上記接続は、所定の方法により実施される半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物及びそれを用いて製造された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高機能化の進展に伴って、半導体装置に対して小型化、薄型化及び電気特性の向上(高周波伝送への対応など)が求められている。これに伴い、従来のワイヤーボンディングで半導体チップを基板に実装する方式から、半導体チップにバンプと呼ばれる導電性の突起電極を形成して基板電極と直接接続するフリップチップ接続方式への移行が始まっている。
半導体チップに形成されるバンプとしては、はんだや金で構成されたバンプが用いられているが、近年の微細接続化に対応するために、銅バンプや銅ピラーの先端にはんだ層又はスズ層が形成された構造のバンプが用いられるようになってきている。
また、高信頼性化のために、金属接合による接続が求められており、はんだバンプを用いたはんだ接合や銅ピラーの先端にはんだ層やスズ層が形成された構造のバンプによる金属接合だけでなく、銅バンプや金バンプを用いた場合でも、基板電極側にはんだ層やスズ層を形成して、金属接合させる接続方法が採用されている。
【0003】
さらに、フリップチップ接続方式では半導体チップと基板の熱膨張係数差に由来する熱応力が接続部に集中して接続部を破壊するおそれがあることから、この熱応力を分散して接続信頼性を高めるために、半導体チップと基板の間の空隙を樹脂で封止充てんする必要がある。一般に、樹脂による封止充てんは、半導体チップと基板をはんだなどを用いて接続した後、空隙に液状封止樹脂を毛細管現象を利用して注入する方式が採用されている。
【0004】
チップと基板を接続する際には、はんだ表面の酸化膜を還元除去して金属接合を容易にするために、ロジンや有機酸などからなるフラックスを用いている。ここで、フラックスの残渣が残ると、液状樹脂を注入した場合にボイドと呼ばれる気泡発生の原因になったり、酸成分によって配線の腐食が発生し、接続信頼性が低下することから、残渣を洗浄する工程が必須であった。しかし、接続ピッチの狭ピッチ化に伴って、半導体チップと基板の間の空隙が狭くなっているため、フラックス残渣の洗浄が困難になる場合があった。さらに、半導体チップと基板の間の狭い空隙に液状樹脂を注入するのに長時間を要して生産性が低下するという課題があった。
【0005】
このような液状封止樹脂の課題を解決するために、はんだ表面の酸化膜を還元除去する性質(フラックス活性)を備えた封止樹脂を用いて、封止樹脂を基板に供給した後、半導体チップと基板を接続すると同時に、半導体チップと基板の間の空隙を樹脂で封止充てんし、フラックス残渣の洗浄を省略することが可能となる先供給方式と呼ばれる接続方法が提案されており、この接続方法に対応した封止樹脂の開発が行われている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−138100号公報
【特許文献2】特開2005−320368号公報
【特許文献3】特開2009−24099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の先供給方式では、金属接合を行う際に、はんだ又はスズの融点以上の温度に樹脂がさらされるために、低分子量成分の揮発に起因するボイドと呼ばれる気泡が樹脂中に発生し、接続信頼性が低下することが問題となる。さらに、従来の先供給方式では、溶融したはんだ又はスズが基板電極に充分に濡れる前に樹脂が硬化してしまい、樹脂や低熱膨張化のために配合する無機フィラが接続部に挟まれる(トラッピング)ことによって、導通不良が起きたり、接続部にクラックが発生して接続信頼性が低下するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、先供給方式のための半導体封止充てん用樹脂組成物として用いた場合に、優れた接続信頼性が奏され、かつ接続の際の樹脂中のボイドの発生を充分に抑制することが可能な半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、複数のバンプが形成された半導体チップと、複数の電極を有する基板と(ただし、前記バンプ及び前記電極の少なくとも一方の表面にすず又ははんだが存在する)、を電気的に接続するために用いられる、半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物であって、エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、フラックス剤を必須成分とし、上記接続は、エポキシ樹脂組成物を半導体チップのバンプ形成面又は基板の電極面に供給した後、フラックス剤の融点又は軟化点より高い温度かつはんだ又はスズの融点より低い温度で半導体チップを基板に押圧する第一工程と、はんだ又はスズの融点以上となるように加熱し、バンプと電極とを金属接合によって接続する第二工程を備える接続方法により実施され、第一工程の加熱温度におけるエポキシ樹脂組成物のゲル化時間が、第一工程の加熱時間より長く、かつ第二工程の加熱温度におけるエポキシ樹脂組成物のゲル化時間が、第二工程の加熱時間以下である半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物を提供する。
【0010】
かかる半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物によれば、先供給方式のための半導体封止充てん用樹脂組成物として用いた場合に、優れた接続信頼性が奏され、かつ接続の際の樹脂中のボイドの発生を充分に抑制することが可能である。
【0011】
なお、フラックス剤の融点又は軟化点は、後述する参考例からも明らかであるように、フラックス剤の活性温度とほぼ同等の温度である。また、「エポキシ樹脂組成物のゲル化時間」は、例えば所定の温度の熱板上にフィルム状エポキシ樹脂組成物を配置し、スパチュラで攪拌不能になるまでの時間を測定することにより求めることができる。
【0012】
上記フラックス剤は室温で固形であり、かつフラックス剤の融点ははんだ又はスズの融点より低いことが好ましい。これにより、保存安定性が向上する。
【0013】
上記半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物は、取り扱い性を向上させることができる点から、フィルム状に形成されていることが好ましい。
【0014】
さらに本発明は、複数のバンプが形成された半導体チップと、該バンプと電気的に接続された複数の電極を有する基板と(ただし、バンプ及び電極の少なくとも一方の表面にすず又ははんだが存在する)、上記本発明の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物の硬化物からなり半導体チップと基板との間の空隙を封止する封止樹脂とを備える半導体装置を提供する。
【0015】
かかる半導体装置は、本発明の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物を用いているので、接続信頼性に優れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、先供給方式のための半導体封止充てん用樹脂組成物として用いた場合に、優れた接続信頼性が奏され、かつ接続の際の樹脂中のボイドの発生を充分に抑制することが可能な半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物、及びこれを用いた半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】参考例3において、処理温度を160℃とした場合の接続部の外観観察写真である。
【図3】参考例3において、処理温度を170℃とした場合の接続部の外観観察写真である。
【図4】実施例1における仮固定工程の温度プロファイルである。
【図5】実施例1における第一工程の温度プロファイルである。
【図6】実施例1における第二工程の温度プロファイルである。
【図7】実施例1の半導体装置のボイド状況を超音波探傷装置で観察した観察像である。
【図8】実施例1の接続部の断面観察写真である。
【図9】実施例5の第一工程及び第二工程の温度プロファイルである。
【図10】比較例5の半導体装置のボイド状況を超音波探傷装置で観察した観察像である。
【図11】比較例5の半導体装置の接続部の断面観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物(以下、単に「エポキシ樹脂組成物」ともいう。)は、エポキシ樹脂、硬化剤、フラックス剤を必須成分とする。
【0019】
エポキシ樹脂としては、2官能以上であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド骨格含有エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型多官能エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有多官能エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格含有多官能エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、その他各種多官能エポキシ樹脂を用いることができる。これらの中でも、低粘度化、低吸水率、高耐熱性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有多官能エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格含有多官能エポキシ樹脂を用いることが望ましい。また、これらのエポキシ樹脂の性状としては25℃で液状でも固形でも構わない。また、これらのエポキシ樹脂は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
硬化剤としては、例えばイミダゾール類、酸無水物類、アミン類、フェノール類、ヒドラジド類、ポリメルカプタン類、ルイス酸−アミン錯体を用いることができる。その中でも、低粘度化、保存安定性、硬化物の耐熱性などの観点から、イミダゾール類、酸無水物類、アミン類、フェノール類を用いることが望ましく、耐湿信頼性の観点からイミダゾール類、アミン類、フェノール類を用いることがさらに望ましい。
【0021】
イミダゾール類としては、例えば、2MZ、C11Z、2PZ、2E4MZ、2P4MZ、1B2MZ、1B2PZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN、2PZ−CN、C11Z−CN、2PZ−CNS、C11Z−CNS、2MZ−A、C11Z−A、2E4MZ−A、2P4MHZ、2PHZ、2MA−OK、2PZ−OK(四国化成工業株式会社製、製品名)や、これらのイミダゾール類をエポキシ樹脂と付加させた化合物が挙げられる。また、これら硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質などで被覆してマイクロカプセル化したものは可使時間が延長されるために好ましい。これらは単独又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0022】
イミダゾール類の配合量は、エポキシ樹脂に対して0.1〜10重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%、さらに好ましくは1〜10重量%である。0.1重量%より少ないと、充分に硬化しないおそれがあり、10重量%を超えると保存安定性が低下したり、ゲル化時間が速くなり過ぎるおそれがある。
【0023】
酸無水物類としては、例えば、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ポリアゼライン酸無水物、アルキルスチレン−マレイン酸無水物共重合体、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを用いることができる。これらの中でも、特に、耐熱性や耐湿性の観点から、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、3,4−ジメチル−6−(2−メチル−1−プロペニル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリスアンヒドロトリメリテートを用いることが望ましい。これらは単独又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0024】
酸無水物類は、エポキシ基の数と酸無水物基から発生するカルボン酸の数の比(エポキシ基の数/カルボン酸の数)が0.5〜1.5となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.7〜1.2である。0.5より小さい場合、カルボン酸基が過剰に残存し、上記範囲にある場合と比べて絶縁信頼性が低下するおそれがあり、1.5より大きい場合、硬化が充分進行しないおそれがある。
【0025】
アミン類としては、1級又は2級アミノ基を分子内に少なくとも一つ以上有している化合物であれば特に限定されないが、保存安定性及び硬化物の耐熱性の観点から芳香族アミン類が望ましい。芳香族アミン類としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルスルフィド、メタキシレンジアミン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−ヘキサフルオロプロパン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノベンゼン、1,3−ジアミノベンゼン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルトルエンジアミン、アニリン類、アルキル化アニリン類、N−アルキル化アニリン類を用いることができる。これらは単独又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0026】
アミン類は、エポキシ基の数と活性水素の数の比(エポキシ基の数/活性水素の数)が0.5〜1.5になるように配合することが望ましく、より好ましくは0.7〜1.2である。0.5より小さい場合にはアミン類が過剰に残存し、耐湿信頼性が低下するおそれがあり、1.5より大きい場合には、硬化が充分に進行しないおそれがある。
【0027】
フェノール類としては、ビスフェノール樹脂、フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アリル化フェノールノボラック樹脂、ビフェノール樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールナフトールホルムアルデヒド重縮合物、トリフェニルメタン型多官能フェノール樹脂、キシリレン変性フェノールノボラック樹脂、キシリレン変性ナフトールノボラック樹脂、各種多官能フェノール樹脂を使用することができる。これらは1種を単独で又は2種以上の混合体として使用することができる。
【0028】
フェノール類の配合量としては、エポキシ基の数とフェノール性水酸基の数の比(エポキシ基の数/フェノール性水酸基の数)が0.5〜1.5になるように配合することが望ましく、より好ましくは0.7〜1.2である。0.5より小さい場合にはフェノール類が過剰に残存し、耐湿信頼性が低下するおそれがあり、1.5より大きい場合には硬化が充分進行しないおそれがある。
【0029】
酸無水物類、アミン類、フェノール類を硬化剤として用いる場合、硬化促進剤を併用してもよい。硬化促進剤としては上記イミダゾール類の他に、例えば3級アミン類、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7や1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5などの環状アミン類及びそれらのテトラフェニルボレート塩、トリブチルホスフィンなどのトリアルキルホスフィン類、トリフェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン類、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートやテトラ(n−ブチル)ホスホニウムテトラフェニルボレートなどの4級ホスホニウム塩を用いることができる。配合量はゲル化時間や保存安定性を考慮して適宜設定される。
【0030】
エポキシ樹脂組成物中の硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば1〜70質量部とすることができる。
【0031】
フラックス剤としてはアルコール類、フェノール類、カルボン酸類の中から選ばれる少なくとも1種類の化合物を用いることが望ましい。
【0032】
アルコール類としては、分子内に少なくとも2個以上のアルコール性水酸基を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール、1,5−ペンタンジオール、2,5−フランジメタノール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、リビトール、ソルビトール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、N−ブチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソプロパノールアミン、ビス(2−ヒドロキシメチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,1’,1’’,1’’’−(エチレンジニトリロ)テトラキス(2−プロパノール)を用いることができる。中でも、3級窒素原子を有する化合物、例えば、N−ブチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソプロパノールアミン、ビス(2−ヒドロキシメチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,1’,1’’,1’’’−(エチレンジニトリロ)テトラキス(2−プロパノール)は、その他の化合物に比較して、良好なフラックス活性を示すことから望ましい。良好なフラックス活性を示す詳細な理由は明らかではないが、アルコール性水酸基による酸化膜還元能と、3級窒素原子上の不対電子に由来する電子供与性による還元能が併せて作用することに起因していると推測される。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
フェノール類としては、少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシハイドロキノン、ピロガロール、メチリデンビフェノール(ビスフェノールF)、イソプロピリデンビフェノール(ビスフェノールA)、エチリデンビフェノール(ビスフェノールAD)、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシアセトフェノン、ポリp−ビニルフェノールが挙げられる。
さらに、少なくとも2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物として、フェノール性水酸基を分子内に少なくとも1個以上有する化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物とハロメチル基、アルコキシメチル基又はヒドロキシルメチル基を分子内に2個有する芳香族化合物、ジビニルベンゼン及びアルデヒド類から選ばれる少なくとも1種類以上の化合物との重縮合物も用いることができる。フェノール性水酸基を分子内に少なくとも1個以上有する化合物としては、例えば、フェノール、アルキルフェノール、ナフトール、クレゾール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキシハイドロキノン、ピロガロール、メチリデンビフェノール(ビスフェノールF)、イソプロピリデンビフェノール(ビスフェノールA)、エチリデンビフェノール(ビスフェノールAD)、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシアセトフェノン、ポリp−ビニルフェノールが挙げられる。また、はロメチル基、アルコキシメチル基又はヒドロキシルメチル基を分子内に2個有する芳香族化合物としては、例えば、1,2−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4−ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,2−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,2−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン、ビス(クロロメチル)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニルが挙げられる。アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド(その水溶液としてホルマリン)、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミンが挙げられる。
重縮合物としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドの重縮合物であるフェノールノボラック樹脂、クレゾールとホルムアルデヒドとの重縮合物であるクレゾールノボラック樹脂、ナフトール類とホルムアルデヒドとの重縮合物であるナフトールノボラック樹脂、フェノールと1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼンとの重縮合物であるフェノールアラルキル樹脂、ビスフェノールAとホルムアルデヒドの重縮合物、フェノールとジビニルベンゼンとの重縮合物、クレゾールとナフトールとホルムアルデヒドの重縮合物が挙げられ、これらの重縮合物をゴム変性したものや分子骨格内にアミノトリアジン骨格やジシクロペンタジエン骨格を導入したものでもよい。さらに、これらのフェノール性水酸基を有する化合物をアリル化することによって液状したものとして、アリル化フェノールノボラック樹脂、ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールF、ジアリルビフェノールなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
カルボン酸類は、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸のいずれであってもよい。脂肪族カルボン酸としては、例えば、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、アリルマロン酸、2,2’−チオジ酢酸、3.3’−チオジプロピオン酸、2,2’−(エチレンジチオ)ジ酢酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、2-エチル−2−ヒドロキシ酪酸、ジチオジグリコール酸、ジグリコール酸、アセチレンジカルボン酸、マレイン酸、リンゴ酸、2-イソプロピルリンゴ酸、酒石酸、イタコン酸、1,3−アセトンジカルボン酸、トリカルバリン酸、ムコン酸、β−ヒドロムコン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルコハク酸、グルタル酸、α−ケトグルタル酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、3,3-ジメチルグルタル酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、クエン酸、アジピン酸、3−tert−ブチルアジピン酸、ピメリン酸、フェニルシュウ酸、フェニル酢酸、ニトロフェニル酢酸、フェノキシ酢酸、ニトロフェノキシ酢酸、フェニルチオ酢酸、ヒドロキシフェニル酢酸、ジヒドロキシフェニル酢酸、マンデル酸、ヒドロキシマンデル酸、ジヒドロキシマンデル酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、スベリン酸、4,4’−ジチオジ酪酸、けい皮酸、ニトロけい皮酸、ヒドロキシけい皮酸、ジヒドロキシけい皮酸、クマリン酸、フェニルピルビン酸、ヒドロキシフェニルピルビン酸、カフェ酸、ホモフタル酸、トリル酢酸、フェノキシプロピオン酸、ヒドロキシフェニルプロピオン酸、ベンジルオキシ酢酸、フェニル乳酸、トロパ酸、3−(フェニルスルホニル)プロピオン酸、3,3−テトラメチレングルタル酸、5-オキソアゼライン酸、アゼライン酸、フェニルコハク酸、1,2−フェニレンジ酢酸、1,3−フェニレンジ酢酸、1,4−フェニレンジ酢酸、ベンジルマロン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ウンデカン二酸、ジフェニル酢酸、ベンジル酸、ジシクロヘキシル酢酸、テトラデカン二酸、2,2−ジフェニルプロピオン酸、3,3−ジフェニルプロピオン酸、4,4-ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、ピマール酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、アガト酸が挙げられる。芳香族カルボン酸としては、例えば、安息香酸、2−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ安息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,5−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3,7−ジヒドロキシ−2-ナフトエ酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2−フェノキシ安息香酸、ビフェニル−4−カルボン酸、ビフェニル−2−カルボン酸、2−ベンゾイル安息香酸が挙げられる。これらの中でも、保存安定性や入手容易さの観点から、コハク酸、リンゴ酸、イタコン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、アジピン酸、3,3’−チオジプロピオン酸、3,3’−ジチオジプロピオン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、スベリン酸、セバシン酸、フェニルコハク酸、ドデカン二酸、ジフェニル酢酸、ベンジル酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸、アビエチン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、2−[ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル]安息香酸を用いることが望ましい。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
さらにフラックス剤は、室温で液状であっても固形であっても構わないが、保存安定性の観点から室温で固形の化合物を用いることが望ましい。
【0036】
エポキシ樹脂組成物中のフラックス剤の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば1〜10質量部とすることができる。
【0037】
また、上記エポキシ樹脂組成物は熱膨張係数を低減して、接続信頼性を向上させるために、無機フィラを含んでいてもよい。無機フィラとしては、例えば、ガラス、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、カーボンブラック、マイカ、硫酸バリウムが挙げられる。これらは単独又は2種以上を混合して使用してもよい。また、2種類以上の金属酸化物を含む複合酸化物(2種類以上の金属酸化物が単に混合されてなるものではなく、金属酸化物同士が化学的に結合して分離不能な状態となっているもの)であってもよく、例えば、二酸化ケイ素と酸化チタン、二酸化ケイ素と酸化アルミニウム、酸化ホウ素と酸化アルミニウム、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムと酸化マグネシウムからなる複合酸化物が挙げられる。
【0038】
無機フィラの形状は破砕状、針状、リン片状、球状と特に限定されないが、分散性や粘度制御の観点から、球状のものを用いることが好ましい。また、フィラのサイズは、フリップチップ接続した際の半導体チップと基板の間の空隙よりも平均粒径が小さいものであればよいが、充てん密度や粘度制御の観点から、平均粒径10μm以下のものが好ましく、5μm以下のものがより好ましく、3μm以下のものが特に好ましい。さらに、粘度や硬化物の物性を調整するために、粒径の異なるものを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
エポキシ樹脂組成物中の無機フィラの含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば0〜200質量部とすることができる。
【0040】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、室温でペースト状であっても、フィルム状であっても構わないが、取り扱い性の観点からフィルム状であることが望ましい。
【0041】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、フィルム状に形成するために熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えばフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、アクリルゴムが挙げられ、その中でも耐熱性及びフィルム形成性に優れるフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、アクリルゴムが望ましく、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は5000より大きいことが望ましいが、より望ましくは10000以上であり、さらに望ましくは20000以上であり、5000以下の場合にはフィルム形成能が低下する場合がある。なお、重量平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて、ポリスチレン換算で測定した値である。また、これらの熱可塑性樹脂は単独又は2種以上の混合体や共重合体として使用することもできる。
【0042】
エポキシ樹脂組成物中の熱可塑性樹脂の含有量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、例えば0〜100質量部とすることができる。
【0043】
本実施形態のエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂組成物を半導体チップのバンプ形成面又は基板の電極面に供給した後、フラックス剤の活性温度以上かつはんだ又はスズの融点又は軟化点より低い温度で半導体チップを基板に押圧する第一工程と、はんだ又はスズの融点以上となるように加熱し、半導体チップのバンプと電極とを金属接合によって接続する第二工程を備える接続方法により、複数のバンプが形成された半導体チップと、複数の電極を有する基板と(ただし、前記バンプ及び前記電極の少なくとも一方の表面にすず又ははんだが存在する)を電気的に接続するために用いられるものである。
【0044】
第一工程は、バンプと電極との間からの樹脂を排除するともに、はんだやスズ表面の酸化膜をフラックス剤によって還元除去することを目的とする。第一工程における加熱温度はフラックス剤の融点又は軟化点より高い温度、かつはんだ又はスズの融点より低い温度に設定される。このように温度を設定することによって、加熱によって低粘度化した樹脂をバンプと電極との間から排除するとともに、バンプ又は電極におけるはんだ又はスズ表面の酸化膜が除去される。さらに、バンプ又は電極は、エポキシ樹脂組成物に覆われることになるので、再酸化を防止することができる。また、はんだ又はスズの融点以上の温度には達していないので金属接合による接続部の形成には至らない。
【0045】
また、室温で固形のフラックス剤を用いた場合、フラックス活性を示すためにはその融点や軟化点以上の温度で液状又は低粘度状態になって、はんだやスズの表面に均一に濡れる必要があることから、第一工程における加熱温度の下限は、固形のフラックス剤の融点又は軟化点となる。さらに、固形のフラックス剤の融点や軟化点がはんだやスズの融点以上では、はんだやスズ表面の酸化膜が除去されるとともにはんだやスズが溶融してしまい、溶融したはんだやスズ内部にエポキシ樹脂組成物やフィラが取り込まれるトラッピングが発生する可能性があることから、固形のフラックス剤の融点や軟化点は、はんだ又はスズの融点より低い温度であることが望ましい。また、第一工程を行うことによって、エポキシ樹脂と硬化剤の反応が一部開始して低分子量成分が高分子量化しており、第二工程における高温接続条件下での低分子量成分の揮発により発生するボイドの抑制効果が期待される。
【0046】
第一工程において半導体チップを基板に押圧する際の荷重としては、バンプと電極との間からの樹脂を排除するのに必要な荷重を半導体チップの面積やバンプ数によって適宜設定するが、半導体チップにクラックなどのダメージが発生しないように、半導体チップの面積に対して、2MPa以下の圧力となることが望ましく、1.5MPa以下の圧力であることがより望ましく、1MPa以下の圧力であることがさらに望ましい。また、1バンプ当たり0.5N以下であることが望ましく、0.2N以下であることがより望ましく、0.1N以下であることがさらに望ましい。
【0047】
第一工程の加熱温度におけるエポキシ樹脂組成物のゲル化時間は、第一工程の加熱時間よりも長い。エポキシ樹脂組成物のゲル化時間が第一工程の加熱時間以下であると、バンプが電極に到達する前に樹脂が硬化してしまい、接続不良が発生したり、第二工程において、樹脂の粘度が高くなってしまい、溶融したはんだやスズがバンプや電極に充分に濡れず、接続不良が発生する場合がある。なお、生産性の観点から、第一工程の加熱時間は20秒以下であることが望ましく、15秒以下であることがより望ましく、10秒以下であることがさらに望ましい。
【0048】
第二工程では、はんだやスズを溶融させてバンプと電極とを金属接合させることを目的とする。第二工程における加熱温度は、はんだ又はスズの融点以上の温度に設定される。第二工程における加熱温度の上限は、特に限定されないが、半導体チップや基板へのダメージを最小限に留めることを考慮すると、例えば300℃とすることができる。第一工程においてはんだ又はスズ表面の酸化膜の除去とバンプと電極との間の樹脂排除が完了しているため、はんだやスズが速やかに溶融して電極やバンプ表面に良好な濡れ性を発現し、トラッピングを抑制可能である。
【0049】
第二工程は、半導体チップと基板を押圧せずに行ってもよいが、封止樹脂の熱膨張によって半導体チップが持ち上げられて接続不良が発生しないように、半導体チップと基板を押圧することが望ましい。第二工程において半導体チップを基板に押圧する際の荷重としては、第一工程と同様に半導体チップにダメージが発生しないように、半導体チップの面積に対して、2MPa以下の圧力となることが望ましく、1.5MPa以下の圧力であることがより望ましく、1MPa以下の圧力であることがさらに望ましい。また、1バンプ当たり0.5N以下であることが望ましく、0.2N以下であることがより望ましく、0.1N以下であることがさらに望ましい。
【0050】
第二工程の加熱温度におけるエポキシ樹脂組成物のゲル化時間は、第二工程の加熱時間以下である。これによって、ゲル化したエポキシ樹脂組成物が金属接合による接続部を補強し、接続終了後の冷却過程において、半導体チップと基板の熱膨張係数差に起因する熱応力が金属接合による接続部に集中して発生するクラックなどの接続不良を抑制する効果が期待される。エポキシ樹脂組成物のゲル化時間が第二工程の加熱時間より長いと、硬化反応が充分進行せずに、低分子量成分が揮発してボイドが発生する場合がある。なお、生産性の観点から、第二工程における加熱時間は、20秒以下であることが望ましく、15秒以下であることがより望ましく、10秒以下であることがさらに望ましい。
【0051】
第一工程及び第二工程を単一の接続装置で連続して行ってもよいが、接続装置を昇温したり冷却したりする必要があることから作業時間が長くなり、生産性が低下する場合がある。一方、第一工程と第二工程を分離して、別の接続装置でそれぞれ行うことによって、接続装置の設定温度を一定に保ったままで作業可能となり、高い生産性を実現できる。また、昇温や冷却機構(パルスヒート機構)を備えた接続装置ではなく、一定温度に加熱可能な機構 (コンスタントヒート機構)を備えた接続装置で行うことができるため、設備の簡略化が可能となる。
【0052】
さらに、第一工程を行う際に、半導体チップと基板の位置合わせを行ってもよいが、第一工程を行う前に、半導体チップと基板を位置合わせした後、フラックス剤の活性温度よりも低い温度かつエポキシ樹脂組成物が粘着性を示す温度において、半導体チップを基板に仮固定する工程を行ってもよい。このような仮固定工程を設けることによって、複数の半導体チップと基板について、第一工程及び第二工程を一括で行うことが可能となり、高い生産性を実現することができる。
【0053】
第二工程を行った後、エポキシ樹脂組成物の硬化を進めるために、必要に応じて加熱オーブンなどを用いて加熱処理を行っても構わない。
【0054】
室温でペースト状のエポキシ樹脂組成物は、ディスペンスや印刷によって半導体チップや基板に供給することが可能であり、室温でフィルム状のエポキシ樹脂組成物では、所定の大きさに切り出したものを半導体チップや基板に半導体チップ又は基板に貼り付けることによって供給することができる。
【0055】
さらに、半導体ウエハのバンプ形成面に、エポキシ樹脂組成物層を形成した後、半導体チップに個片化することによって、該エポキシ樹脂組成物を半導体チップのバンプ形成面に供給することが可能である。この方法によって該エポキシ樹脂組成物が供給された複数の半導体チップを一括で作製することが可能になるため、生産性の向上が期待される。
【0056】
半導体ウエハのバンプ形成面にエポキシ樹脂組成物層を形成する方法としては、ペースト状のものをスピンコートや印刷によって塗布する方法、フィルム状のものをラミネートする方法を用いることができるが、取り扱い性や作業性の観点からフィルム状のものをラミネートする方法が望ましい。フィルム状のエポキシ樹脂組成物を半導体ウエハのバンプ形成面にラミネートするには、ホットロールラミネーターや真空ラミネーターを用いることができる。
【0057】
半導体ウエハのバンプ形成面にエポキシ樹脂組成物層を形成した場合、ダイシングラインや接続時の位置合わせを行うための基準マークをエポキシ樹脂組成物層を通して認識するために、エポキシ樹脂組成物には透明性が必要であり、555nmの可視光に対して10%以上の透過率を示すことが望ましい。
【0058】
さらに、バンプと電極間にエポキシ樹脂組成物が取り込まれた状態となるトラッピングを防止するために、バンプ先端をエポキシ樹脂組成物層から露出させるようにエポキシ樹脂組成物層を形成する方法が提案されているが(特許文献4:特開2005−28734)、本発明では、第一工程においてはんだやスズの表面酸化膜除去とバンプと電極との間からの樹脂排除を完了させ、第二工程においてはんだやスズを溶融させて金属接合させることから、はんだやスズの溶融に伴って発生するトラッピングが起こりにくいため、バンプ先端をエポキシ樹脂組成物層から露出させる必要はない。
【0059】
バンプ形成面にエポキシ樹脂組成物層が形成された半導体ウエハを半導体チップに個片化する方法としては、例えばブレードダイシング、レーザーダイシング、ステルスダイシングが挙げられる。また、バンプ形成面にエポキシ樹脂組成物層が形成された半導体ウエハを、半導体ウエハのバンプ形成面と反対側の面をダイシングテープに貼りあわせてダイシング装置に固定してもよいし、エポキシ樹脂組成物層がダイシングテープに接するように貼りあわせ、ダイシング装置に固定してもよい。
【0060】
また、半導体ウエハとしては、バックグラインド加工によってあらかじめ所定の厚さに薄化加工したものを用いてもよいし、バックグラインド加工する前の半導体ウエハのバンプ形成面にエポキシ樹脂組成物層を形成し、バックグラインドテープをエポキシ樹脂組成物層と接するように貼りあわせてバンプ形成面と反対側の面からバックグラインドによって半導体ウエハを所定の厚さに薄化加工してもよい。さらに、バックグラインド加工する前の半導体ウエハのダイシングラインに沿って、ダイシング装置によってハーフカット加工によって溝を形成した後、バンプ形成面にエポキシ樹脂組成物層を形成し、バックグラインドテープをエポキシ樹脂組成物層と接するように貼りあわせてバンプ形成面と反対側の面からバックグラインドによって上記溝を露出させて、半導体ウエハを薄化するとともに、半導体チップに個片化してもよい。
【0061】
半導体チップと基板を接続する装置としては、通常のフリップチップボンダーを用いることができる。また、半導体チップと基板の位置合わせ及び半導体チップを基板に仮固定する工程を行うのにフリップチップボンダーを用い、第一工程と第二工程を加圧、加熱機構を備えた熱圧着装置で行ってもよい。
【0062】
本発明で用いられる半導体チップとしては、特に限定はなく、シリコン、ゲルマニウムなどの元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体等、各種半導体を用いることができる。
【0063】
半導体チップに形成されているバンプとしては、例えば、はんだバンプ、銅バンプ、銅ピラー先端にはんだ又はスズ層が形成された構造のバンプ、金バンプを用いることができる。はんだとしてはSn−37Pb(融点183℃)を用いてもよいが、環境への影響を考慮して、Sn−3.5Ag(融点221℃)、Sn−2.5Ag−0.5Cu−1Bi(融点214℃)、Sn−0.7Cu(融点227℃)、Sn−3Ag−0.5Cu(融点217℃)、Sn−92Zn(融点198℃)などの鉛フリーはんだを用いることが望ましい。また、微細接続化への対応から、銅バンプや銅ピラー先端にはんだ又はスズ層が形成された構造のバンプが好適である。
【0064】
基板としては、通常の回路基板でもよく、また、半導体チップでもよい。回路基板の場合、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミックなどの絶縁基板表面に形成された銅などの金属層の不要な個所をエッチング除去して配線パターン(電極)が形成されたもの、絶縁基板表面に銅めっきなどによって配線パターンを形成したもの、絶縁基板表面に導電性物質を印刷して配線パターンを形成したものなどを用いることができる。
【0065】
配線パターンの表面には、金層、はんだ層、スズ層、防錆皮膜層の中から選ばれる1種類の表面処理層が形成されていることが望ましい。金層及びスズ層は無電解又は電解めっきによって形成することが可能である。はんだ層はめっきによって形成してもよいし、はんだペーストを印刷によって塗布した後、加熱溶融する方法や、微細なはんだ粒子を配線パターン上に配置して加熱溶融する方法で形成可能である。防錆皮膜層は、プリフラックスとも呼ばれ、専用の薬液中に基板を浸漬することによって、銅などで形成された配線パターン表面の酸化膜を除去するとともに、表面に有機成分からなる防錆皮膜を形成することができ、はんだやスズに対する良好な濡れ性を確保可能であることと微細接続化への対応から好適である。なお、半導体チップに形成されているバンプが金バンプの場合、金属接合部を形成するために、はんだ層又はスズ層が形成されていることが必須となる。
【0066】
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて製造される半導体装置について説明する。
【0067】
図1は、本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される半導体装置10は、回路基板7と、半導体チップ5と、回路基板7と半導体チップ5との間に配置された封止樹脂6とを備える。封止樹脂6は、本発明の半導体封止充てん用樹脂組成物の硬化物からなり回路基板7と半導体チップ5との間の空隙を封止している。回路基板7は、インターポーザー等の基板と、この基板の一方の面上に設けられた配線4とを備える。回路基板7の配線(電極)4と半導体チップ5とは、半導体チップ5上に設けられた複数のバンプ3によって電気的に接続されている。また、回路基板7は、配線4が設けられた面と反対側の面に電極パッド2と、電極パッド2上に設けられたはんだボール1とを有しており、他の回路部材との接続が可能となっている。
【0068】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて製造される半導体装置としては、インターポーザーと呼ばれる基板上に半導体チップが搭載された構造のCSP(チップサイズパッケージ)やBGA(ボールグリッドアレイ)、半導体チップの上に別の半導体チップが搭載された構造のCoC(チップオンチップ)、貫通電極によって複数の半導体チップが3次元的に積層された構造の3Dパッケージなどが挙げられる。
【実施例】
【0069】
(参考例)
(フラックス剤の活性温度評価)
フラックス剤の活性温度を以下の手順で評価した。なお、全ての操作は窒素で置換したグローブボックス内で行った。
フラックス剤とはんだボール(Sn−3Ag−0.5Cu、直径0.4mm、融点217℃)をるつぼ内で混合し、所定の処理温度で30秒間加熱した後、メタノールで3回超音波洗浄を行った。残ったはんだボールを銅はく上に配置して、250℃の熱板上に30秒間置いて、はんだの外観を観察した。銅はくへの濡れや、はんだボール同士の融着が見られた処理温度を、フラックス活性を示す温度とした。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
図2は、参考例3において、処理温度を160℃とした場合の接続部の外観観察写真であり、図3は、参考例3において、処理温度を170℃とした場合の接続部の外観観察写真である。これらの図から明らかであるように、処理温度をフラックス剤の融点未満の温度(160℃)とした場合には、銅箔への濡れやはんだボール同士の融着が観察されないのに対して、処理温度をフラックス剤の融点以上の温度(170℃)とした場合には、はんだボール同士が融着したはんだ融着部が観察される。
【0072】
[実施例1〜4、比較例1〜3]
表2に示す成分をトルエン−酢酸エチル溶媒中に溶解混合してワニスを調製し、このワニスをセパレータフィルム(PETフィルム)上にナイフコーターを用いて塗布した。これを、70℃又は110℃のオーブンで10分間乾燥させることによって、厚さ25μmのフィルム状エポキシ樹脂組成物を作製した。
【0073】
【表2】

【0074】
(原材料)
フェノキシ樹脂1:ε−カプロラクトン変性フェノキシ樹脂PKCP80(Inchem Corporation製、製品名)
フェノキシ樹脂2:ビスフェノールA型フェノキシ樹脂YP50S(東都化成株式会社製、製品名)
エポキシ樹脂1:トリスフェノールメタン型多官能エポキシEP1032H60(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)
エポキシ樹脂2:ビスF型液状エポキシYL983U(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)
エポキシ樹脂3:可とう性液状エポキシYL7175−1000(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)
硬化剤1:液状酸無水物YH307(ジャパンエポキシレジン株式会社製、製品名)
硬化剤2:2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物2MAOK−PW(四国化成工業株式会社製、製品名)
硬化剤3:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール2PHZ−PW(四国化成工業株式会社製、製品名)
硬化促進剤:テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートTPP−K(北興化学工業株式会社製、製品名)
フラックス剤1:アジピン酸(シグマアルドリッチ製、製品名)
フラックス剤2:4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)吉草酸(シグマアルドリッチ製、製品名)
フィラ:シリカフィラSE2050(アドマテックス株式会社製、製品名)
【0075】
(ゲル化時間測定)
180℃及び250℃の熱板上にセパレーターをはく離したフィルム状エポキシ樹脂組成物を配置し、スパチュラで攪拌不能になるまでの時間をゲル化時間とした。
【0076】
(半導体チップと基板の接続)
銅ピラー先端に鉛フリーはんだ層(Sn−3.5Ag:融点221℃)を有する構造のバンプが形成された半導体チップとして、日立超LSIシステムズ製JTEG PHASE11_80(サイズ7.3mm×7.3mm、バンプピッチ80μm、バンプ数328、厚み0.55mm、商品名)、基板としてプリフラックス処理によって防錆皮膜を形成した銅配線パターンを表面に有するガラスエポキシ基板を準備した。続いて、フィルム状エポキシ樹脂組成物を9mm×9mmに切り出し、基板上の半導体チップが搭載される領域に80℃/0.5MPa/5秒の条件で貼り付けた後、セパレータフィルムをはく離した。フィルム状エポキシ樹脂組成物が貼り付けられた基板を、フリップチップボンダーFCB3(パナソニックファクトリーソリューションズ製、製品名)の40℃に設定したステージ上に吸着固定し、半導体チップと位置合わせした後、仮固定工程として、荷重25N、ヘッド温度100℃で5秒間圧着を行い(到達90℃)、半導体チップを基板上に仮固定した。次いで、第一工程として、接続部の温度が固形フラックス剤の融点以上でかつ鉛フリーはんだの融点より低い180℃となるようにフリップチップボンダーのヘッド温度をあらかじめ210℃に設定し、荷重25N、10秒間圧着を行った。次に、第二工程として、接続部の温度が鉛フリーはんだの融点より高い250℃となるようにフリップチップボンダーのヘッド温度をあらかじめ290℃に設定し、荷重25N、10秒間圧着を行った。なお、接続部の温度は、K型熱電対を半導体チップと基板の間に挟んだものを別途作製して測定した。
【0077】
なお、実施例1における仮固定工程の温度プロファイルを図4に、実施例1における第一工程の温度プロファイルを図5に、実施例1における第二工程の温度プロファイルを図6に、それぞれ示す。
【0078】
(導通検査)
半導体チップと基板を接続した半導体装置について、328バンプのデイジーチェーン接続が確認できたものを合格(○)として、デイジーチェーン接続が確認できなかったものを不合格(×)として評価した。その結果を表3に示す。
【0079】
(ボイド評価)
半導体チップと基板を接続した半導体装置を超音波探傷装置(日立建機製FineSAT)で観察し、チップ面積に対してボイドが占める面積が1%以下となるものを合格(○)として、チップ面積に対してボイドが占める面積が1%を超えるものを不合格(×)とした。その結果を表3に示す。
なお、実施例1の半導体装置のボイド状況を超音波探傷装置で観察した観察像を図7に示す。この図から明らかであるように、実施例1の半導体装置においては、ボイドがほとんど観察されない。
【0080】
(接続状態評価)
半導体チップと基板を接続した半導体装置の接続部を断面研磨することによって露出させ、光学顕微鏡で観察した。接続部にトラッピングが観察されず、はんだが配線に充分濡れているものを合格(○)として、それ以外のものを不合格(×)として評価した。その結果を表3に示す。
なお、実施例1の接続部の断面観察写真を図8に示す。この図から明らかであるように、実施例1の接続部においては、トラッピングが観察されず、はんだが配線に充分濡れている。
【0081】
【表3】

【0082】
第一工程の加熱温度を固形フラックス剤の融点以上かつはんだの融点より低い180℃とし、第二工程の加熱温度をはんだの融点以上の250℃に設定した場合、180℃でのゲル化時間が第一工程の加熱時間よりも長く、250℃でのゲル化時間が第二工程の加熱時間よりも短い実施例1〜4において、ボイドが少なく、良好な接続部の形成が可能となることが分かる。一方、フラックス剤を含まない比較例1では、ボイド状況は良好であるが、良好な接続部が形成できない。250℃でのゲル化時間が第二工程の加熱時間より長い比較例2では、ボイドが多発する。180℃でのゲル化時間が第一工程の加熱時間よりも短い比較例3では、ボイドは少ないが、良好な接続部が形成できない。
【0083】
[実施例5]
実施例1のフィルム状エポキシ樹脂組成物を用いて、第一工程での加圧状態を保持したまま、フリップチップボンダーのヘッド温度を第一工程の加熱温度である180℃から第二工程の加熱温度である250℃となるように昇温して、半導体チップと基板の接続を行った。
なお、実施例5の第一工程及び第二工程の温度プロファイルを図9に示す。
【0084】
[実施例6]
実施例1のフィルム状エポキシ樹脂組成物を用いて、第一工程の加熱温度が160℃となるようにフリップチップボンダーのヘッド温度を設定して(設定181℃)、半導体チップと基板の接続を行った。
【0085】
[比較例4]
実施例1のフィルム状エポキシ樹脂組成物を用いて、第一工程の加熱温度が120℃となるようにフリップチップボンダーのヘッド温度を設定して(設定135℃)、半導体チップと基板の接続を行った。
【0086】
[比較例5]
実施例1のフィルム状エポキシ樹脂組成物を用いて、半導体チップと基板に仮固定した後、第一工程を行わずに、第二工程のみで半導体チップと基板の接続を行った。
【0087】
実施例5、6及び比較例4、5の半導体装置について、上記と同様の評価を行った結果を表4に示す。
なお、比較例5の半導体装置のボイド状況を超音波探傷装置で観察した観察像を図10に、比較例5の半導体装置の接続部の断面観察写真を図11に、それぞれ示す。これらの図から明らかであるように、比較例5の半導体装置においては、ボイドが増加するとともに、接続部にとラッピングが観察される。
【0088】
【表4】

【0089】
実施例5の結果から、第一工程と第二工程を連続して行っても良好な接続が可能であることが分かる。実施例6では、第一工程の加熱温度が固形フラックス剤のアジピン酸の融点より高いために、良好な接続が可能であるが、第一工程の加熱温度を融点より低い温度で接続した比較例4では、良好な接続部が形成できない。また、第一工程を行わずに第二工程のみで接続した比較例5では、ボイドが増加し、良好な接続部が形成できない。
【符号の説明】
【0090】
1…はんだボール、2…電極パッド、3…バンプ、4…配線、5…半導体チップ、6…封止樹脂、7…回路基板、10…半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のバンプが形成された半導体チップと、複数の電極を有する基板と(ただし、前記バンプ及び前記電極の少なくとも一方の表面にすず又ははんだが存在する)、を電気的に接続するために用いられる、半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、フラックス剤を必須成分とし、
前記接続は、前記エポキシ樹脂組成物を前記半導体チップのバンプ形成面又は前記基板の電極面に供給した後、フラックス剤の融点又は軟化点より高い温度かつはんだ又はスズの融点より低い温度で前記半導体チップを前記基板に押圧する第一工程と、はんだ又はスズの融点以上となるように加熱し、前記バンプと前記電極とを金属接合によって接続する第二工程を備える接続方法により実施され、
前記第一工程の加熱温度における前記エポキシ樹脂組成物のゲル化時間が、前記第一工程の加熱時間より長く、かつ前記第二工程の加熱温度における前記エポキシ樹脂組成物のゲル化時間が、前記第二工程の加熱時間以下である半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記フラックス剤が室温で固形であり、かつ前記フラックス剤の融点がはんだ又はスズの融点より低い、請求項1に記載の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
フィルム状に形成されている、請求項1又は2に記載の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
複数のバンプが形成された半導体チップと、該バンプと電気的に接続された複数の電極を有する基板と(ただし、前記バンプ及び前記電極の少なくとも一方の表面にすず又ははんだが存在する)、請求項1〜3のいずれか一項に記載の半導体封止充てん用エポキシ樹脂組成物の硬化物からなり前記半導体チップと前記基板との間の空隙を封止する封止樹脂と、を備える半導体装置。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図9】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−231137(P2011−231137A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99704(P2010−99704)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】