説明

半導体発光素子、半導体発光素子の製造方法、バックライト、表示装置、電子機器および発光装置

【課題】半導体発光素子に窒化物系III−V族化合物半導体を用いる場合に、従来と異なる手法により、発光波長が長波長化しても発光効率の低下を容易に防止することができる半導体発光素子およびこのような半導体発光素子を容易に製造することができる半導体発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、活性層の少なくとも一つの井戸層の組成をこの井戸層に垂直な方向に変調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体発光素子、半導体発光素子の製造方法、バックライト、表示装置、電子機器および発光装置に関し、例えば、窒化ガリウム系化合物半導体を用いた半導体発光素子およびこの半導体発光素子を用いた各種の機器または装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム系化合物半導体を用いた半導体発光素子は、混晶組成や厚さで活性層(発光層)のバンドギャップエネルギーを制御することにより紫外〜赤外の発光波長を実現することができる。すでに紫外〜青色〜緑色の発光波長の発光ダイオードは市販され、ディスプレイ、照明装置、検査装置、消毒など幅広い用途に使われている。また、青紫色の発光波長のレーザダイオード(半導体レーザ)も開発され、大容量光ディスクの書き込みや読み取り用のピックアップの光源として使用されている。
【0003】
この窒化ガリウム系化合物半導体を用いた半導体発光素子においては、井戸層と障壁層とを交互に積層した多重量子井戸構造を有する活性層を用いることが一般的であるが、この多重量子井戸構造を有する活性層に関しては、発光効率の向上のために様々な技術が提案されている。例えば、井戸層の数を規定する技術(特許文献1、2参照。)、井戸層および障壁層の混晶組成を規定する技術(特許文献3、4参照。)、相異なる発光波長を有する井戸層間の障壁層に多重量子障壁構造を導入して複数の発光ピークの発光強度比を制御する技術(特許文献5参照。)などがある。これらの半導体発光素子の多重量子井戸構造の活性層においては、すべて同じ組成、厚さおよび構造を有する障壁層が用いられている。
【0004】
多重量子井戸構造の活性層において障壁層の組成を層ごとに変化させる技術も提案されており(例えば、特許文献6参照。特に、請求項3、図4、図5参照。)、意図的にp型クラッド層に近い井戸層に正孔と電子とを集中させることができるとされている。
また、窒化ガリウム系化合物半導体を用いた半導体発光素子に限定されないが、電子移動度と正孔移動度とが互いに異なることによる多層井戸活性層における再結合の不均一を解消するため、活性層に非対称構造を用いることが提案されている(例えば、特許文献7参照。)。特許文献7には、井戸層の組成および厚さ、障壁層の組成および厚さを活性層内で変える様々な実施例が開示されており、「バリア層は、n型の下部封層34により近いところにあるバリア層がn型の下部封層からずっと離れたところにあるバリア層よりも厚くなるように」(特許文献7の段落0032)との記載がある。しかしながら、特許文献7においては、窒化ガリウム系化合物半導体を用いた半導体発光素子に関しては障壁層の組成を段階的に変えた計算例が示されているのみで、実際に発光効率が向上しうる障壁層の厚さに関する非対称性は具体的には規定されていないだけではなく、井戸層の組成を層内で変調することについては何ら開示も示唆もされていない。
【0005】
【特許文献1】特開平10−261838号公報
【特許文献2】特開平10−256657号公報
【特許文献3】特開2000−261106号公報
【特許文献4】特開2000−91629号公報
【特許文献5】特開2002−368268号公報
【特許文献6】特開2004−179428号公報
【特許文献7】特表2003−520453号公報
【特許文献8】特開2002−319702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
窒化ガリウム系化合物半導体を用いた半導体発光素子においては、窒化ガリウム系化合物半導体からなる多重量子井戸構造を作製する際に、井戸層のIn組成を増やしていくと原理的には発光ピークが長波長側にシフトしていくと同時に発光効率が低下していくことが知られており、互いに発光波長が異なる複数の半導体発光素子を組み合わせて用いる場合などに不都合が生じていた。
そこで、この発明が解決しようとする課題は、半導体発光素子に窒化ガリウム系化合物半導体、より一般的には窒化物系III−V族化合物半導体を用いる場合に、従来と異なる手法により、発光波長が長波長化しても発光効率の低下を容易に防止することができる半導体発光素子およびこのような半導体発光素子を容易に製造することができる半導体発光素子の製造方法を提供することである。
この発明が解決しようとする課題は、より一般的には、発光効率を容易に制御することができる半導体発光素子およびこのような半導体発光素子を容易に製造することができる半導体発光素子の製造方法を提供することである。
この発明が解決しようとする他の課題は、上記のような半導体発光素子を用いたバックライト、ディスプレイ、電子機器および発光装置を提供することである。
上記課題および他の課題は、添付図面を参照した本明細書の記述により明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、多重量子井戸構造の活性層の井戸層の組成を変化させていった時に発光効率が低下していくことを実験的に検証し、その現象に対して発光効率の低下を防止するための具体的な手法を見出した。その概要について説明すると次の通りである。
図1に示すようなGaN系発光ダイオードを作製した。すなわち、有機金属化学気相成長法により、C面を主面とするサファイア基板11を用いて水素からなるキャリアガス中1050℃で10分クリーニングを行った後、温度を500℃に下げて窒素原料であるアンモニアを供給し、加えてガリウム原料であるトリメチルガリウム(Trimethylgallium,TMG)をバルブの切り替えにより供給して低温GaNバッファ層12を厚さ30nm成長させた。一旦、TMGの供給を停止した状態で温度を1020℃まで上昇させた後、再びTMGの供給を開始することでアンドープGaN層13を厚さ1μm成長させ、引き続きシリコン原料であるシラン(SiH4 )の供給を開始することでSiドープのn型GaN層14を厚さ3μm成長させた。このn型GaN層14のSiのドーピング濃度は5×1018/cm3 である。次に、SiH4 の供給を停止し、アンモニアおよびTMGを供給してアンドープGaN層15を厚さ5nm成長させた。次に、TMGおよびSiH4 の供給を停止し、キャリアガスを水素から窒素に切り替えるとともに、温度を750℃まで下降させた。ここでGa原料としてトリエチルガリウム(Trimethylgallium,TEG)を供給しながら、In原料としてトリメチルインジウム(Trimethylindium,TMI)の供給をバルブの切り替えにより行うことにより、図1および図2に示すように、厚さ3nmのInGaN層16aからなる井戸層と厚さ15nmのGaN層16bからなる障壁層とを交互に成長させてInGaN/GaN多重量子井戸構造の活性層16を成長させた。この活性層16は9層の井戸層を8層の障壁層が隔てた9井戸の多重量子井戸構造を有する。井戸層のInGaN層16aのIn組成は0.23で、これは発光波長515nmに相当する。次に、活性層16上に厚さ10nmのアンドープGaN層17を成長させながら温度を800℃まで上昇させ、Al原料としてトリメチルアルミニウム(Trimethylaluminium,TMA)、Mg原料としてビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Biscyclopentadienyl magnesium,Cp2 Mg)の供給を開始することによりMgドープでAl組成0.15のp型AlGaN層18を厚さ20nm成長させた。このp型AlGaN層18のMgのドーピング濃度は5×1019/cm3 である。次に、TEG、TMAおよびCp2 Mgの供給を停止するとともに、キャリアガスを窒素から水素に切り替えて850℃まで温度を上げ、TMGおよびCp2 Mgの供給を開始することでMgドープのp型GaN層19を厚さ100nm成長させた。このp型GaN層19のMgのドーピング濃度は5×1019/cm3 である。この後、TMGおよびCp2 Mgの供給を停止するとともに温度を下げ、600℃でアンモニアの供給を停止し、室温まで温度を下げて結晶の成長を終えた。ここで、活性層16の成長後に行う成長の成長温度に関しては発光波長をλ(nm)としたとき、1350−0.75λ(℃)、望ましくは1250−0.75λ(℃)よりも低い温度としている。これに関しては、特に、発光波長の長いGaN系半導体発光素子において有効な技術である(例えば、特許文献8参照。)。
【0008】
上述のようにして結晶成長を終えたサファイア基板11を窒素雰囲気中で800℃、10分のアニールを行ってp型AlGaN層18およびp型GaN層19中にドーピングされたMgの活性化を行った。
この後、通常の発光ダイオードのウェハプロセス〜チップ化工程と同様に、フォトリソグラフィー、エッチング、金属蒸着などの工程を経て、ダイシングにより分離してチップ化、樹脂モールドとパッケージ化とを行うことで砲弾型や面実装型などの種々のGaN系発光ダイオードを作製することができる。ここでは、評価と簡略化の目的で、図3に示すように、リソグラフィーおよびエッチングによりn型GaN層14を露出させ、p型GaN層19上にAg/Niからなるp側電極20、n型GaN層14上にTi/Alからなるn側電極21を形成し、プローバでプローブ22、23をそれぞれp側電極20およびn側電極21上に立てて通電を行い、サファイア基板11の裏面に放射される光24を光検出器25により検出した。なお、図3においては、低温GaNバッファ層12、アンドープGaN層13、アンドープGaN層15およびアンドープGaN層17の図示を省略した。
【0009】
このGaN系発光ダイオードについて測定を行った結果、60A/cm2 の駆動電流密度において発光ピーク波長は515nm、発光効率は180mW/Aであった。なお、市販の発光ダイオードのように発光ダイオードを高反射率マウント上に実装して高屈折率の樹脂モールドを行えば全光束測定で約2倍以上の発光効率を得ることができる。
井戸層のInGaN層16aのIn組成を種々変えて上記と同様なGaN系発光ダイオードを作製し、エレクトロルミネッセンス測定を行った。この測定においては、Krレーザによる波長407nmで出力3mWの連続発振(CW)レーザ光を倍率5倍のレンズを通して照射することにより励起を行った。励起強度は同一とした。発光波長に対する発光強度の変化をプロットしたものを図4に示す。図4において、横軸は発光波長、縦軸は対応する発光波長の光の発光強度を任意単位(A.U.)で示している。図4から分かるように、In組成が0.23(発光波長515nm)より大きくなっていくあたりから発光効率の低下の割合が大きくなっていく様子が見られる。
【0010】
井戸層のInGaN層16aのIn組成を増やしていくと発光効率の低下が起きる原因に関しては、次のようなモデルが考えられる。すなわち、InGaN層16aのIn組成を増やしていくと、GaNとInNとの格子定数の差から生じるピエゾ電界が大きくなっていき、その結果、活性層16内において厚さ方向に電位差が生じ、InGaN層16aのIn組成が大きくなるに従ってこの電位差も大きくなる。
図5A〜Cに、それぞれ紫外、青色および緑色の発光波長の場合のInGaN層16aおよびその近傍の価電子帯および伝導帯を模式的に示す。図5A〜Cにおいて、EV は価電子帯の上端のエネルギー、EC は伝導帯の下端のエネルギーを示す。図5Aに示す場合においては、活性層16内に生じる電位差が小さく、ピエゾ電界Epiezo はEpiezo ≦1MV/cm以下であるため、InGaN層16aの価電子帯および伝導帯はほぼフラットであり、電子の波動関数分布と正孔の波動関数分布との位置は互いにほぼ一致しており、理想的な波動関数分布になっている。これに対し、InGaN層16aのIn組成がより大きい図5Bに示す場合においては、活性層16内に生じる電位差が大きく、Epiezo ≒2.2〜2.4MV/cmとなるため、電子の波動関数分布と正孔の波動関数分布との位置が互いにかなりずれ、これが発光効率の低下をもたらす。InGaN層16aのIn組成がさらに大きい図5Cに示す場合においては、活性層16内に生じる電位差がさらに大きく、Epiezo ≒3.1〜3.4MV/cmとなるため、電子の波動関数分布と正孔の波動関数分布との位置が互いにさらに大きくずれ、発光効率はさらに低下する。すなわち、発光波長を長波長にしようとInGaN層16aのIn組成を増やしていくと、電子の波動関数分布と正孔の波動関数分布との位置が互いに離れてしまうため、図3に示したような発光波長の長波長化に伴う発光効率の低下が起きていると考えられる。
【0011】
この現象に対して、電子の波動関数分布と正孔の波動関数分布との位置を互いに近づけるために、電子と正孔との有効質量の差を利用することが考えられる。ここで、GaN系化合物半導体における電子および正孔の有効質量はそれぞれ0.19m0 および1.66m0 (m0 は電子の静止質量)であり、電子の有効質量は正孔の有効質量の1/8程度である。具体的には、井戸層のInGaN層16aのバンドラインアップを、In組成を変化させることで制御し、このInGaN層16aにおいてn層側よりp層側の方のバンドギャップエネルギーを大きくしたり小さくしたりすることが考えられる。その模式図を図6Aおよび図7Aに示す。図6Bおよび図7Bはそれぞれ図6Aおよび図7Aに示すInGaN層16aのIn組成の分布を示す。図6Aに示す例(以下「タイプA」という。)は、InGaN層16aの成長中にIn組成を徐々に多くすることでn層側よりp層側の方が価電子帯と伝導帯との電位差が小さくなるようにしたもの、図7Aに示す例(以下「タイプB」という。)は、InGaN層16aの成長中にIn組成を徐々に小さくすることでn層側よりp層側の方が価電子帯より伝導帯の電位差が大きくなるようにしたものである。図6Aおよび図7Aにおいて、破線はIn組成が一定の場合を示す。
【0012】
上述のタイプAおよびタイプBの活性層16のInGaN層16aを比較した時、活性層16内の価電子帯と伝導帯との電位差から考えて、波動関数分布はタイプAの場合、電子、正孔ともにp層側に寄り、タイプBの場合はともにn層側に寄ると考えられる。この場合、電子および正孔の有効質量を考慮すると、電子は正孔に比べて有効質量がかなり小さいため、波動関数分布が移動しやすいと考えられる。GaN系化合物半導体の場合、上述のように、電子の有効質量は正孔の有効質量の1/8程度であるため、図6Aおよび図7Aにおいては、正孔の波動関数分布の移動を無視した場合の波動関数分布の様子を示した。
以上のことより、タイプBのように、InGaN層16a内でIn組成を徐々に減少させた方が、このInGaN層16a内における電子と正孔との波動関数分布のずれは小さくなり、これに伴って発光効率は上昇すると考えられる。
あるいは、逆に、InGaN層16a内でIn組成を徐々に増加させることにより、このInGaN層16a内における電子と正孔との波動関数分布のずれを大きくし、発光効率を低下させることができる。
これらのことから、InGaN層16a内でこのInGaN層16aに垂直な方向にIn組成を変調させることにより、発光効率を制御することができることが分かる。
言い換えると、ピエゾ電界Epiezo の向きに対してInGaN層16aのIn組成を減少または増加させることにより、発光効率を制御することができる。
以上は多重量子井戸構造の活性層の井戸層がInGaN層である場合であるが、同様なことは、井戸層がInGaN層と異なる組成を有する場合においても成立する。
【0013】
この発明は、本発明者らによる上記の検討に基づいてさらに検討を行った結果、案出されたものである。
すなわち、上記課題を解決するために、第1の発明は、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されている
ことを特徴とするものである。
【0014】
第2の発明は、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子の製造方法において、
上記活性層を成長させる際に、少なくとも一つの上記井戸層の組成を当該井戸層に垂直な方向に変調するようにした
ことを特徴とするものである。
【0015】
第1および第2の発明において、井戸層の組成は、半導体発光素子の発光効率を増加または減少させる場合に応じて、n側クラッド層からp側クラッド層に向かってバンドギャップエネルギーが増加または減少するように変調される。一般的には、井戸層を成長させる際に成長条件(成長温度、成長原料の蒸気圧、成長原料の輸送に用いるキャリガスの流量など)を変調することにより井戸層の組成を変調する。典型的には、井戸層を成長させる際に成長温度を変調することにより井戸層の組成を変調する。
活性層は典型的には多重量子井戸構造であるが、単一量子井戸構造であってもよい。
n側クラッド層は、典型的にはn型であるが、n型層とアンドープ層との複合層であってもよい。同様に、p側クラッド層は、典型的にはp型であるが、p型層とアンドープ層との複合層であってもよい。
半導体発光素子の発光波長をλ(nm)とすると、活性層を成長させた後の最高成長温度T(℃)をT<1350−0.75λ、好ましくはT<1250−0.75λを満たすようにすることにより、活性層の成長後に成長させる層の成長温度に起因する活性層の劣化を防止することができる。
半導体発光素子の発光波長は、一般的には紫外〜赤外の発光波長に対応する370nm以上650nm以下、例えば青色〜緑色の発光波長に対応する430nm以上550nm以下、例えば青色の発光波長に対応する430nm以上480nm以下、例えば緑色の発光波長に対応する500nm以上550nm以下に選ばれる。
半導体発光素子の駆動電流密度は必要に応じて選ばれるが、例えば、10A/cm2 以上あるいは50A/cm2 以上あるいは100A/cm2 以上である。半導体発光素子の駆動時には、発光量の一部または全ての変調を駆動電流振幅変調で行ってもよいし、電流パルス幅変調と電流振幅変調とを組み合わせて行ってもよいし、電流密度変調と電流振幅変調とを組み合わせて行ってもよい。
【0016】
半導体発光素子を構成する窒化物系III−V族化合物半導体は、III族元素としてAl、B、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素を含み、一般的には、AlX y Ga1-x-y-z Inz Asu 1-u-v v (ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦u≦1、0≦v≦1、0≦x+y+z<1、0≦u+v<1)であり、より具体的には、AlX y Ga1-x-y-z Inz N(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦x+y+z<1)であり、典型的にはAlX Ga1-x-z Inz N(ただし、0≦x≦1、0≦z≦1)である。窒化物系III−V族化合物半導体の具体例を挙げると、GaN、InN、AlN、AlGaN、InGaN、AlGaInNなどである。井戸層は、典型的には、Inを含む窒化物系III−V族化合物半導体からなり、より典型的には、InおよびGaを含む窒化物系III−V族化合物半導体からなる。このInおよびGaを含む窒化物系III−V族化合物半導体は、具体的には、AlX y Ga1-x-y-z Inz Asu 1-u-v v (ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0<z≦1、0≦u≦1、0≦v≦1、0≦x+y+z<1、0≦u+v<1)であり、より具体的には、AlX y Ga1-x-y-z Inz N(ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0<z≦1、0≦x+y+z<1)であり、典型的には、AlX Ga1-x-z Inz N(ただし、0≦x≦1、0<z≦1)であり、具体例を挙げると、InGaN、AlGaInNなどであるが、これに限定されるものではない。
【0017】
窒化物系III−V族化合物半導体は、典型的には、有機金属化学気相成長(MOCVD)、ハイドライド気相エピタキシャル成長あるいはハライド気相エピタキシャル成長(HVPE)、分子線エピタキシー(MBE)などの各種のエピタキシャル成長法により成長させることができるが、これに限定されるものではない。この窒化物系III−V族化合物半導体を成長させる基板としては種々のものを用いることができるが、具体的には、例えば、サファイア(C面、A面、R面などを含み、これらの面からオフした面のものも含む)、SiC(6H、4H、3Cを含む)、Si、ZnS、ZnO、LiMgO、GaAs、スピネル(MgAl2 4 、ScAlMgO4 )、ガーネット、窒化物系III−V族化合物半導体(例えば、GaN)などからなる基板を用いることができる。
窒化物系III−V族化合物半導体の成長は基板上にC面配向で成長されることが一般的であるが、特にGa面成長(C+面とも呼ばれる)が望ましく、さらには活性層の主面がC面から0.25度以上2度以下傾斜していることが望ましく、0.3度以上1度以下傾斜していることがより望ましい。
半導体発光素子は、発光ダイオードやレーザダイオードなどである。
半導体発光素子が発光ダイオードである場合、この発光ダイオードには、活性層からの光を光取り出し面側に反射して光取り出し効率の向上を図るために、好適には、反射層が設けられ、この反射層と活性層との間の距離は、この半導体発光素子を構成する窒化物系III−V族化合物半導体の屈折率をn、発光波長をλ(nm)としたとき、0.5×λ/nより大きく、λ/nより小さく選ばれる。この反射層としては、この発光ダイオードの電極(例えば、p側電極)を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
活性層が、井戸層と障壁層とが交互に積層された多重量子井戸構造を有する場合、この多重量子井戸構造を有する活性層における井戸層密度はその厚さ方向に一定であってもよいが、半導体発光素子の動作電流密度の増加に伴う発光波長の大きなシフトを抑制し、しかも一層広範囲の輝度制御を行うことができるようにする観点からは、この活性層のn側クラッド層側の井戸層密度をd1 、p側クラッド層側の井戸層密度をd2 としたとき、d1 <d2 を満足するように活性層における井戸層を配置する。このように活性層における井戸層密度を異ならせるためには、例えば、井戸層の厚さを一定とし、障壁層の厚さを異ならせる(具体的には、活性層におけるp側クラッド層側の障壁層の厚さを、n側クラッド層側の障壁層の厚さよりも小さくする)のが好ましいが、これに限定されるものではなく、障壁層の厚さを一定とし、井戸層の厚さを異ならせる(具体的には、活性層におけるp側クラッド層側の井戸層の厚さを、n側クラッド層側の井戸層の厚さよりも大きくする)ようにしてよいし、井戸層の厚さおよび障壁層の厚さの両方を異ならせてもよい。
【0019】
ここで、井戸層密度d1 および井戸層密度d2 は以下のように定義する。すなわち、総厚t0 の活性層を厚さ方向に2つに分割したとき、n側クラッド層側の活性層の領域である第1領域の厚さをt1 、p側クラッド層側の活性層の領域である第2領域の厚さをt2 とする。ただし、t0 =t1 +t2 である。また、第1領域に含まれる井戸層の数をWL1 (正数であり、整数には限定されない)、第2領域に含まれる井戸層の数をWL2 (正数であり、整数には限定されず、井戸層の総数WL=WL1 +WL2 )とする。なお、第1領域と第2領域とに跨がって1つの井戸層(厚さtIF)が存在する場合には、第1領域内のみに含まれる井戸層の数をWL’1 、第2領域内のみに含まれる井戸層の数をWL’2 とし、第1領域と第2領域とに跨がった井戸層における第1領域に含まれる厚さを厚さtIF-1、第2領域に含まれる厚さを厚さtIF-2(tIF=tIF-1+tIF-2)としたとき、
WL1 =WL’1 +ΔWL1
WL2 =WL’2 +ΔWL2
である。ただし、
ΔWL1 +ΔWL2 =1
であり、
WL=WL1 +WL2
=WL’1 +WL’2 +1
ΔWL1 =tIF-1/tIF
ΔWL2 =tIF-2/tIF
である。
【0020】
そして、井戸層密度d1 および井戸層密度d2 は以下の式から求めることができる。ただし、k≡(t0 /WL)である。
1 =(WL1 /WL)/(t1 /t0
=k(WL1 /t1 ) (1)
2 =(WL2 /WL)/(t2 /t0
=k(WL2 /t2 ) (2)
【0021】
ここで、活性層におけるn側クラッド層側の界面から厚さ(2t0 /3)までの第1領域内の井戸層密度をd1 、p側クラッド層側の界面から厚さ(t0 /3)までの第2領域内の井戸層密度をd2 としたとき、d1 <d2 を満足するように活性層における井戸層が配置されている構成とすることができ、あるいは、活性層におけるn側クラッド層側の界面から厚さ(t0 /2)までの第1領域内の井戸層密度をd1 、p側クラッド層側の界面から厚さ(t0 /2)までの第2領域内の井戸層密度をd2 としたとき、d1 <d2 を満足するように活性層における井戸層が配置されている構成とすることができ、あるいは、活性層におけるn側クラッド層側の界面から厚さ(t0 /3)までの第1領域内の井戸層密度をd1 、p側クラッド層側の界面から厚さ(2t0 /3)までの第2領域内の井戸層密度をd2 としたとき、d1 <d2 を満足するように活性層における井戸層が配置されている構成とすることができる。ここで、1<d2 /d1 ≦20、好ましくは1.2≦d2 /d1 ≦10、より好ましくは1.5≦d2 /d1 ≦5を満足するように、活性層における井戸層が配置されていることが望ましい。活性層における井戸層の数(WL)は、2以上、好ましくは4以上である。
【0022】
上述のような活性層を有する半導体発光素子においては、動作電流密度を30A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ2 (nm)、動作電流密度を300A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ3 (nm)としたとき、
500(nm)≦λ2 ≦550(nm)
0≦|λ2 −λ3 |≦5(nm)
を満足することが望ましく、あるいは、動作電流密度を1A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ1 (nm)、動作電流密度を30A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ2 (nm)、動作電流密度を300A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ3 (nm)としたとき、
500(nm)≦λ2 ≦550(nm)
0≦|λ1 −λ2 |≦10(nm)
0≦|λ2 −λ3 |≦5(nm)
を満足することが望ましい。なお、この半導体発光素子の動作電流密度とは、動作電流値を活性層面積(接合領域の面積)で除した値である。
【0023】
あるいは、上述のような活性層を有する半導体発光素子において、動作電流密度を30A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ2 (nm)、動作電流密度を300A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ3 (nm)としたとき、
430(nm)≦λ2 ≦480(nm)
0≦|λ2 −λ3 |≦2(nm)
を満足することが望ましく、あるいは、動作電流密度を1A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ1 (nm)、動作電流密度を30A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ2 (nm)、動作電流密度を300A/cm2 としたときの活性層の発光波長をλ3 (nm)としたとき、
430(nm)≦λ2 ≦480(nm)
0≦|λ1 −λ2 |≦5(nm)
0≦|λ2 −λ3 |≦2(nm)
を満足することが望ましい。
この半導体発光素子は、各種の装置または機器(バックライト、ディスプレイ、照明装置、電子機器など)に用いることができる。
【0024】
第3の発明は、
赤色発光の半導体発光素子、緑色発光の半導体発光素子および青色発光の半導体発光素子をそれぞれ複数個配列したバックライトにおいて、
上記赤色発光の半導体発光素子、上記緑色発光の半導体発光素子および上記青色発光の半導体発光素子のうちの少なくとも一つの半導体発光素子が、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されているものである
ことを特徴とするものである。
【0025】
このバックライトは、典型的には、発光ダイオードバックライトである。この発光ダイオードバックライトは、具体的には、半導体発光素子を発光ダイオードとして構成し、例えば、赤色発光の発光ダイオード、緑色発光の発光ダイオードおよび青色発光の発光ダイオードをそれぞれ複数個配列したものであり、赤色発光の発光ダイオード、緑色発光の発光ダイオードおよび青色発光の発光ダイオードが1単位(1画素)を構成する。赤色発光の発光ダイオードとしては、例えばAlGaInP系半導体を用いたものを用いることができ、緑色発光の発光ダイオードおよび青色発光の発光ダイオードとしては例えば、窒化物系III−V族化合物半導体を用いたものを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
第4の発明は、
赤色発光の半導体発光素子、緑色発光の半導体発光素子および青色発光の半導体発光素子をそれぞれ複数個配列した表示装置において、
上記赤色発光の半導体発光素子、上記緑色発光の半導体発光素子および上記青色発光の半導体発光素子のうちの少なくとも一つの半導体発光素子が、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されているものである
ことを特徴とするものである。
【0027】
この表示装置には各種のものが含まれる。この表示装置は、具体的には、例えば、上記の半導体発光素子を発光ダイオードとして構成し、この発光ダイオードを含む画素をマトリックス状に複数配列した発光ダイオードディスプレイ(アクティブマトリックス方式またはパッシブマトリックス方式)、上記の発光ダイオードを少なくとも一つ用いたバックライト(発光ダイオードバックライト)と液晶パネルとを有する透過型または半透過型の液晶ディスプレイ、上記の発光ダイオードを少なくとも一つ用いた光源(発光ダイオード光源)とライトバルブ素子とを有するプロジェクションディスプレイなどである。ライトバルブ素子としては、例えば、透過型または反射型の液晶パネルや、MEMS(micro electro mechanical systems)、例えばDMD(digital micro-mirror device)を用いることができる。
【0028】
第5の発明は、
一つまたは複数の半導体発光素子を有する電子機器において、
少なくとも一つの上記半導体発光素子が、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されているものである
ことを特徴とするものである。
【0029】
この電子機器は、液晶ディスプレイのバックライト、表示、照明その他の目的で少なくとも一つの半導体発光素子を有するものであれば、基本的にはどのようなものであってもよく、携帯型のものと据え置き型のものとの双方を含み、具体例を挙げると、上記の各種の表示装置に加えて、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピュータ、車載機器、各種家庭電気製品などである。
【0030】
第6の発明は、
一つまたは複数の半導体発光素子と当該半導体発光素子から放出される光が入射する色変換材料とを有する発光装置において、
少なくとも一つの上記半導体発光素子が、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されているものである
ことを特徴とするものである。
この発光装置においては、半導体発光素子から放出される光が色変換材料に入射することにより色変換を行うことができる。例えば、青色発光の半導体発光素子と緑色の色変換材料、黄色の色変換材料および赤色の色変換材料のうちの少なくとも一つの色変換材料とを用いる場合には、青色発光の半導体発光素子から放出される青色の発光波長の光によりこの色変換材料を励起して緑色、黄色および赤色のうちの少なくとも一つの色の光を発光させることができる。これらの色変換材料としては、例えば、蛍光体含有材料が用いられる。
第3〜第5の発明においては、上記以外のことについては、第1および第2の発明に関連して説明したことが成立する。
【0031】
上述のように構成された第1〜第6の発明においては、半導体発光素子の活性層の少なくとも一つの井戸層の組成がこの井戸層に垂直な方向に変調されていることにより、半導体発光素子の動作時におけるこの井戸層内の電子の波動関数分布と正孔の波動関数分布との相対的な位置を制御することができ、それによって半導体発光素子の発光効率を制御することができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、活性層の井戸層の組成の変調により発光効率を容易に制御することができ、特に、発光波長が長波長化しても発光効率の低下を容易に防止することができる半導体発光素子およびこのような半導体発光素子を容易に製造することができる半導体発光素子の製造方法を提供することである。そして、この半導体発光素子を用いて高性能のバックライト、ディスプレイ、電子機器などを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の全図において、同一または対応する部分には同一の符号を付す。
まず、この発明の第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードについて説明する。
図8はこのGaN系発光ダイオード、図9はこのGaN系発光ダイオードの活性層の詳細を示す。
図8に示すように、このGaN系発光ダイオードにおいては、例えばC面を主面とするサファイア基板31上に、低温GaNバッファ層32、アンドープGaN層33、例えばSiドープのn型GaN層34、アンドープGaN層35、InGaN/GaN多重量子井戸構造の活性層36、アンドープGaN層37、例えばMgドープのp型AlGaN層38および例えばMgドープのp型GaN層39が順次積層されている。n型GaN層34が主としてn側クラッド層を構成し、p型AlGaN層38が主としてp側クラッド層を構成している。
【0034】
図9に示すように、活性層36は、InGaN層36aからなる井戸層とGaN層36bからなる障壁層とを交互に積層したものである。この活性層36においては、InGaN層36aからなる井戸層のIn組成が、図7Bに示すと同様に、n型GaN層34からp型AlGaN層38に向かう方向に徐々に減少し、あるいは、図6Bに示すと同様に、n型GaN層34からp型AlGaN層38に向かう方向に徐々に増加していることが特徴である。これに伴い、このInGaN層36aからなる井戸層のバンドギャップエネルギーは、図7Aに示すと同様に、n型GaN層34からp型AlGaN層38に向かう方向に徐々に増加し、あるいは、図7Bに示すと同様に、n型GaN層34からp型AlGaN層38に向かう方向に徐々に減少している。ここで、InGaN層36a内のIn組成の変化幅は1%以上が望ましく、2%以上がより望ましい。あるいは、InGaN層36aのバンドギャップEg の変化幅は20meV以上が望ましく、40meV以上がより望ましい。
【0035】
このGaN系発光ダイオードを構成する各層の厚さなどの具体例を挙げると、低温GaNバッファ層32の厚さは30nm、アンドープGaN層33の厚さは1μm、n型GaN層34は厚さが3μmでSiのドーピング濃度が5×1018/cm3 、アンドープGaN層35の厚さは5nmである。活性層36は、厚さ3nmのInGaN層36aからなる井戸層と厚さ15nmのGaN層36bからなる障壁層とが交互に積層されたものであり、9層の井戸層を8層の障壁層が隔てた9井戸の多重量子井戸構造を有する(図9参照)。井戸層のInGaN層36aの平均のIn組成は発光波長に応じて決められ、例えば平均In組成0.23は発光波長515nmに相当する。アンドープGaN層37の厚さは10nm、p型AlGaN層38は厚さが20nm、Mgのドーピング濃度が5×1019/cm3 でAl組成が0.15、p型GaN層39は厚さが100nm、Mgのドーピング濃度が5×1019/cm3 である。
【0036】
図示および説明は省略するが、このGaN系発光ダイオードにおいては、例えば、n型GaN層34の上層部、アンドープGaN層35、活性層36、アンドープGaN層37、p型AlGaN層38およびp型GaN層39が所定のメサ形状にパターニングされ、p型GaN層39上にp側電極が形成され、メサ部に隣接する部分のn型GaN層34上にn側電極が形成される。p側電極としては例えばAg/Niが、n側電極としては例えばTi/Alが用いられるが、これに限定されるものではない。
【0037】
次に、このGaN系発光ダイオードの製造方法について説明する。
図8に示すように、例えばMOCVD法により、C面を主面とするサファイア基板31を用いて水素からなるキャリアガス中1050℃で10分クリーニングを行った後、温度を500℃に下げて窒素原料であるアンモニアを供給し、加えてガリウム原料であるTMGをバルブの切り替えにより供給して低温GaNバッファ層32を成長させる。一旦、TMGの供給を停止した状態で温度を1020℃まで上昇させた後、再びTMGの供給を開始することでアンドープGaN層33を成長させ、引き続きSiH4 の供給を開始することでSiドープのn型GaN層34を成長させる。次に、SiH4 の供給を停止し、アンモニアおよびTMGを供給してアンドープGaN層35を成長させる。次に、TMGおよびSiH4 の供給を停止し、キャリアガスを水素から窒素に切り替えるとともに、温度を750℃まで下降させる。
【0038】
次に、Ga原料としてTEGを供給しながら、In原料としてTMIの供給をバルブの切り替えにより行うことにより、図9に示すように、InGaN層36aからなる井戸層とGaN層36bからなる障壁層とを交互に成長させてInGaN/GaN多重量子井戸構造の活性層36を成長させる。この活性層36の成長の際には、InGaN層36aからなる井戸層の成長条件を選択することにより、このInGaN層36aのIn組成がn型GaN層34からp型AlGaN層38に向かう方向に徐々に減少し、あるいは、徐々に増加するようにする。このために、例えば、このInGaN層36aの成長温度を徐々に高くしたり、In原料の蒸気圧を低くしたり、In原料の輸送に用いているキャリアガスの流量を減らしたり、これらの方法を組み合わせたりしてInの取り込み量を少なくし、あるいは、このInGaN層36aの成長温度を徐々に低くしたり、In原料の蒸気圧を高くしたり、In原料の輸送に用いているキャリアガスの流量を増やしたり、これらの方法を組み合わせたりしてInの取り込み量を多くする。InGaN層36aの成長温度を変化させる例を図10AおよびBに示す。図10AはInGaN層36aのIn組成がn型GaN層34からp型AlGaN層38に向かう方向に徐々に増加する場合(タイプA)、図10BはInGaN層36aのIn組成がn型GaN層34からp型AlGaN層38に向かう方向に徐々に減少する場合(タイプB)を示す。図10AおよびBにはそれぞれ、成長温度シーケンスにおける設定温度および基板表面実温度(実際に測定された温度)が示されている。図10Aでは、成長温度の下降幅は例えば約3℃である。図10Bでは、成長温度の上昇幅は5℃以上が望ましく、7℃以上がより望ましく、10℃以上がさらに望ましいが、これに限定されるものではない。この成長温度の上昇幅は、活性層36を600〜850℃、望ましくは650〜800℃の成長温度で成長させる場合に適用して好ましいものである。
【0039】
次に、活性層36上にアンドープGaN層37を成長させながら温度を800℃まで上昇させ、Al原料としてTMA、Mg原料としてCp2 Mgの供給を開始することによりMgドープのp型AlGaN層38を厚さ20nm成長させる。次に、TEG、TMAおよびCp2 Mgの供給を停止するとともに、キャリアガスを窒素から水素に切り替えて850℃まで温度を上げ、TMGおよびCp2 Mgの供給を開始することでMgドープのp型GaN層39を成長させる。この後、TMGおよびCp2 Mgの供給を停止するとともに温度を下げ、600℃でアンモニアの供給を停止し、室温まで温度を下げて結晶の成長を終える。この場合、活性層36の成長後の最高成長温度T(℃)はp型GaN層39の成長温度である850℃であるが、λ<666nmであれば、T<1350−0.75λを満たしており、従って活性層36の劣化を防止することができる。
【0040】
上述のようにして結晶成長を終えたサファイア基板31を窒素雰囲気中で800℃、10分のアニールを行ってp型AlGaN層38およびp型GaN層39中にドーピングされたMgの活性化を行う。
この後、通常の発光ダイオードのウェハプロセス〜チップ化工程と同様に、フォトリソグラフィー、エッチング、金属蒸着などの工程を経て、ダイシングにより分離してチップ化、樹脂モールドとパッケージ化とを行うことで砲弾型や面実装型などの種々のGaN系発光ダイオードを作製することができる。
【0041】
タイプAおよびタイプBのGaN系発光ダイオードを同一励起条件下で励起したときの発光波長に対する発光強度の変化の様子を図11に示す。ここで、図11の横軸は発光波長、縦軸はその時の発光強度を任意単位で示している。タイプAとタイプBとを比較すると、発光波長525nm付近からタイプBの方がタイプAよりも発光強度が高くなり、発光波長530nmでは1割程度、発光波長540nmでは5割程度タイプBの方がタイプAよりも発光強度が高いことが確認された。このことより、タイプAと比較してタイプBは特に発光波長が530nm以上の領域で発光強度が高く、従って低電力、高出力のGaN系発光ダイオードの実現が可能であるといえる。
【0042】
以上のように、この第1の実施形態によれば、活性層36のInGaN層36aからなる井戸層のIn組成が、図7Bまたは図6Bに示すと同様に、n型GaN層34からp型AlGaN層38に向かう方向に徐々に減少し、あるいは、徐々に増加しており、このInGaN層36aからなる井戸層のバンドギャップエネルギーが、図7Aまたは図6Aに示すと同様に、n型GaN層34からp型AlGaN層38に向かう方向に徐々に増加し、あるいは、徐々に減少しているので、InGaN層36aからなる井戸層における電子の波動関数分布と正孔の波動関数分布との位置が互いに近づくようにすることができ、あるいは、逆に互いに離れるようにすることができる。前者の場合には、GaN系発光ダイオードの発光効率を高くすることができ、後者の場合には発光効率を低くすることができる。特に前者の場合には、従来のGaN系発光ダイオードにおける発光波長が長波長化した時の発光効率の低下の問題点を解決することができ、GaN系発光ダイオードでは発光効率の低下のため従来不可能であると考えられていた黄色〜赤色の発光波長のGaN系発光ダイオードを実現することができる。また、上述の発光効率が高いGaN系発光ダイオードをディスプレイなどに応用することにより、低消費電力化を図ることができるだけでなく、GaN系発光ダイオードをパルス駆動させる場合のパルス幅も同一輝度で比較した場合、短くすることができるため、長寿命化を図ることができる。一方、後者の場合には、例えば、互いに発光波長が異なる二種類以上のGaN系発光ダイオード同士の発光効率を揃えることができる。
【0043】
次に、この発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態においては、活性層36の構成が第1の実施形態と異なる。具体的には、活性層36のn型GaN層34側の井戸層密度をd1 、p型AlGaN層38側の井戸層密度をd2 としたとき、d1 <d2 を満足するように活性層36における井戸層が配置されている。このように活性層36における井戸層密度を異ならせるためには、例えば、井戸層の厚さを一定とし、障壁層の厚さを異ならせる(具体的には、活性層36におけるp型AlGaN層38側の障壁層の厚さを、n型GaN層34側の障壁層の厚さよりも小さくする)のが好ましいが、これに限定されるものではなく、障壁層の厚さを一定とし、井戸層の厚さを異ならせる(具体的には、活性層36におけるp型AlGaN層38側の井戸層の厚さを、n型GaN層34側の井戸層の厚さよりも大きくする)ようにしてよいし、井戸層の厚さおよび障壁層の厚さの両方を異ならせてもよい。ここで、1<d2 /d1 ≦20、好ましくは1.2≦d2 /d1 ≦10、より好ましくは1.5≦d2 /d1 ≦5を満足するように、活性層36における井戸層が配置される。
【0044】
活性層36が9層の井戸層および8層の障壁層からなる多重量子井戸構造を有する緑色発光のGaN系発光ダイオードを作製し、このGaN系発光ダイオードを発光させた場合に活性層36の各井戸層からの発光割合がどのようになっているかを視覚化する実験を行った。ただし、このGaN系発光ダイオードにおいては、n型GaN層34の厚さは3μmであり、p型AlGaN層38およびp型GaN層39の代わりに厚さ120nmのp型GaN層を用い、アンドープGaN層33、38の厚さはそれぞれ5nmとした。活性層36における井戸層のInGaN層36aの組成は実際には第1の実施形態と同様に変調されるが、ここでは0.23に設定した。このInGaN層36aの厚さは3nm、障壁層のGaN層36bの厚さは15nmである。このGaN系発光ダイオード(試料1)においては動作電流密度60A/cm2 での発光ピーク波長が515nmであり、発光効率は180mW/Aであった。
【0045】
次に、試料1のGaN系発光ダイオードと同様の層構造を有するが、活性層36における9層の井戸層のうちの特定の1層のみ厚さ3nmのIn0.15Ga0.85N層としたGaN系発光ダイオードを作製した。n型GaN層34側から第1番目の井戸層がIn0.15Ga0.85N層であるGaN系発光ダイオードを試料2、第3番目の井戸層がIn0.15Ga0.85N層であるGaN系発光ダイオードを試料3、第5番目の井戸層がIn0.15Ga0.85N層であるGaN系発光ダイオードを試料4、第7番目の井戸層がIn0.15Ga0.85N層であるGaN系発光ダイオードを試料5、第9番目の井戸層がIn0.15Ga0.85N層であるGaN系発光ダイオードを試料6と呼ぶ。これらの試料2〜6のGaN系発光ダイオードにおいては、他の井戸層は上述のように厚さ3nmのIn0.23Ga0.77N層からなる。これらの試料2〜6のGaN系発光ダイオードにおいても、動作電流密度60A/cm2 での発光ピーク波長が515nmであり、発光効率は180mW/Aであった。しかしながら、いくつかの試料では、緑色の発光(発光波長約515nm)以外に、In0.15Ga0.85N層からなる井戸層の存在に起因して、青色の発光領域(発光波長約450nm)にも小さな発光ピークが見られた。この青色の発光ピーク成分の全体に占める割合を図12にプロットした。図12の横軸の第1層目、第3層目、…はIn0.15Ga0.85N層からなる井戸層のn型GaN層34側からの位置を示す。図12の横軸の第N層目(N=1、3、5、7、9)に該当する青色の発光ピーク成分の全体に占める割合のデータは、活性層36における第N層目の井戸層がIn0.15Ga0.85N層からなるGaN系発光ダイオードにおける青色の発光ピーク成分の全体に占める割合の動作電流密度毎のデータを示す。
【0046】
図12から明らかなように、発光はどの動作電流密度においても、多重量子井戸構造を有する活性層36におけるp型GaN層34側、活性層36の厚さ方向約2/3の領域に偏っている。また、発光の80%は、p型GaN層34側の活性層36の厚さ方向1/2までの領域からの発光で占められている。このように発光が著しく偏る理由として、電子および正孔の移動度の違いが挙げられる。GaN系化合物半導体においては正孔の移動度が小さいため、正孔はp型GaN層34の近傍の活性層36の井戸層までしか到達せず、正孔と電子との再結合による発光がp型GaN層34側に偏ると考えられる。また、井戸層と障壁層とからなるヘテロ障壁のキャリアに対する透過率という点でも、有効質量の大きな正孔は複数の障壁層を越えてn型GaN層34側の活性層36の井戸層まで到達することが困難であるという要因も考えられる。
このことから、p型GaN層34側に偏った発光を有効に利用するためには、井戸層の分布をp型GaN層34側に偏らせた非対称分布の井戸層を有する多重量子井戸構造を採用することが有効である。さらに、発光分布のピークは、p型GaN層34側の活性層36の厚さ方向1/3〜1/4の領域に位置していることが分かる。
【0047】
実施例について説明する。
実施例1のGaN系発光ダイオードは、活性層36の構成および構造を除いて試料1のGaN系発光ダイオードと同様の構成を有する。
活性層36を構成する多重量子井戸構造の詳細を表1に示す。なお、表1あるいは後述する表2中、井戸層の厚さおよび障壁層の厚さの値の右側の括弧内の数字は、活性層36におけるn型GaN層34側の界面(より具体的には、実施例1においてはアンドープGaN層と活性層36との界面)からの積算厚さを示す。
【0048】
【表1】

【0049】
実施例1においては、活性層36の総厚をt0 とし、活性層36におけるn型GaN層34側の界面(より具体的には、実施例1においてはアンドープGaN層と活性層36との界面)から厚さ(2t0 /3)までの活性層36の第1領域内の井戸層密度をd1 、p型AlGaN層38側の界面(より具体的には、実施例1においてはアンドープGaN層と活性層36との界面)から厚さ(t0 /3)までの活性層36の第2領域内の井戸層密度をd2 としたとき、d1 <d2 を満足するように活性層36における井戸層が配置されている。
【0050】
具体的には、井戸層密度d1 および井戸層密度d2 を式(1)、(2)から求めると、以下のとおりとなる。
〈実施例1〉
2 =(WL2 /WL)/(t2 /t0
=(4/10)/(50/150)
=1.20
1 =(WL1 /WL)/(t1 /t0
=(6/10)/(100/150)
=0.90
【0051】
比較のために、表1に比較例1として示す活性層36を有するGaN系発光ダイオードを作製した。
実施例1および比較例1のGaN系発光ダイオードにおいては、活性層36の面積(接合領域の面積)を6×10-4cm2 とした。したがって、GaN系発光ダイオードの動作電流密度は、動作電流値を6×10-4cm2 で除した値となる。例えば、20mAの駆動電流を流した場合の動作電流密度は33A/cm2 となる。
比較例1における井戸層密度d1 および井戸層密度d2 を式(1)、(2)から求めると、以下のとおりとなる。
〈比較例1〉
2 =(WL2 /WL)/(t2 /t0
={(3+1/3)/10}/(49/147)
=1.00
1 =(WL1 /WL)/(t1 /t0
={(6+2/3)}/10}/(98/147)
=1.00
【0052】
GaN系発光ダイオードの動作電流密度と光出力との関係を測定した結果を図13に示すが、実施例1のGaN系発光ダイオードの光出力は比較例1よりも増加している。そして、実施例1のGaN系発光ダイオードと比較例1のGaN系発光ダイオードとの光出力の差は、動作電流密度が50A/cm2 以上で顕著となり、動作電流密度が100A/cm2 以上では1割以上の差となる。すなわち、実施例1のGaN系発光ダイオードは、動作電流密度が50A/cm2 以上、好ましくは動作電流密度が100A/cm2 以上で、比較例1のGaN系発光ダイオードよりも光出力が大きく増加するので、動作電流密度が50A/cm2 以上、好ましくは動作電流密度が100A/cm2 以上での使用が望ましいといえる。
【0053】
さらには、GaN系発光ダイオードの動作電流密度と発光ピーク波長との関係を図14に示す。動作電流密度を0.1A/cm2 から300A/cm2 へと増加させると、比較例1ではΔλ=−19nmであるのに対して、実施例1ではΔλ=−8nmと、小さな発光波長シフトが実現されている。特に、動作電流密度が30A/cm2 以上では、ほとんど波長シフトが観測されない。言い換えれば、動作電流密度を30A/cm2 以上とする場合、発光波長の変化がわずかしか生じないので、発光波長や発光色の管理の面で好ましい。特に、動作電流密度が50A/cm2 以上、あるいは100A/cm2 以上においては、実施例1のGaN系発光ダイオードは、比較例1のGaN系発光ダイオードよりも顕著に波長シフトが小さく、優位性が明らかである。
【0054】
なお、このようなGaN系発光ダイオードの発光量(輝度)の制御は駆動電流のピーク電流値で行う方法に加えて、駆動電流のパルス幅制御で行ってもよいし、駆動電流のパルス密度制御で行ってもよいし、これらの組合せで行ってもよい。
なお、活性層36の総厚をt0 とし、活性層36におけるn型GaN層34側の界面(より具体的には、アンドープGaN層と活性層36との界面)から厚さ(t0 /2)までの活性層36の第1領域内の井戸層密度をd1 、p型AlGaN層38側の界面(より具体的には、アンドープGaN層と活性層36との界面)から厚さ(t0 /2)までの活性層36の第2領域内の井戸層密度をd2 としたとき、d1 <d2 を満足するように活性層36における井戸層が配置されているとした場合の、井戸層密度d1 および井戸層密度d2 を式(1)、(2)から求めると、以下のとおりとなる。
【0055】
〈実施例1相当〉
2 =(WL2 /WL)/(t2 /t0
=(6/10)/(75/150)
=1.20
1 =(WL1 /WL)/(t1 /t0
=(4/10)/(75/150)
=0.80
【0056】
〈比較例1相当〉
2 =(WL2 /WL)/(t2 /t0
=(5/10)/{(73+1/2)/147}
=1.00
1 =(WL1 /WL)/(t1 /t0
=(5/10)/{(73+1/2)/147}
=1.00
【0057】
また、活性層36の総厚をt0 とし、活性層36におけるn型GaN層34側の界面(より具体的には、アンドープGaN層と活性層36との界面)から厚さ(t0 /3)までの活性層36の第1領域内の井戸層密度をd1 、p型AlGaN層38側の界面(より具体的には、アンドープGaN層と活性層36との界面)から厚さ(2t0 /3)までの活性層36の第2領域内の井戸層密度をd2 としたとき、d1 <d2 を満足するように活性層36における井戸層が配置されているとした場合の、井戸層密度d1 および井戸層密度d2 を式(1)、(2)から求めると、以下のとおりとなる。
【0058】
〈実施例1相当〉
2 =(WL2 /WL)/(t2 /t0
=(8/10)/(50/150)
=2.40
1 =(WL1 /WL)/(t1 /t0
=(2/10)/(100/150)
=0.30
【0059】
〈比較例1相当〉
2 =(WL2 /WL)/(t2 /t0
={(6+2/3)/10}/(98/147)
=1.00
1 =(WL1 /WL)/(t1 /t0
={(3+1/3)/10}/(49/147)
=1.00
以上のように、いずれの場合においても、実施例1に相当する場合、d1 <d2 を満足するように活性層36における井戸層が配置されている。
【0060】
次に、実施例2について説明する。この実施例2は実施例1の変形である。実施例2のGaN系発光ダイオードにおいては、活性層36の井戸層のIn組成比を調整して発光波長を約445nmとした。この実施例2のGaN系発光ダイオードにおける活性層36を構成する多重量子井戸構造の詳細を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
井戸層密度d1 および井戸層密度d2 を式(1)、(2)から求めると、以下のとおりとなる。
〈実施例2〉
2 =(WL2 /WL)/(t2 /t0
={(5+2/9)/10}/{(40+2/3)/122}
=1.57
1 =(WL1 /WL)/(t1 /t0
={(4+7/9)/10}/{(81+1/3)/122}
=0.72
【0063】
比較のために、表2に比較例2として示す活性層36を有するGaN系発光ダイオードを作製した。比較例2における井戸層密度d1 および井戸層密度d2 を式(1)、(2)から求めると、以下のとおりとなる。
〈比較例2〉
2 =(WL2 /WL)/(t2 /t0
={(3+1/3)/10}/{(41+1/2)/(124+1/2)}
=1.00
1 =(WL1 /WL)/(t1 /t0
={(6+2/3)}/10}/{83/(124+1/2)}
=1.00
そして、実施例2および比較例2のGaN系発光ダイオードを、実施例1と同様の方法により評価した。
【0064】
GaN系発光ダイオードの動作電流密度と発光ピーク波長との関係を図15に示す。動作電流密度を0.1A/cm2 から300A/cm2 へと増加させると、比較例1ではΔλ=−9nmであるのに対して、実施例2ではΔλ=−1nmと、極めて小さな発光波長シフトが実現されている。このように、青色を発光する実施例2のGaN系発光ダイオードは、比較例2のGaN系発光ダイオードよりも顕著に波長シフトが小さく、優位性が明らかである。
この第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様な利点に加えて、動作電流密度の増加に伴う発光波長の大きなシフトを抑制することができ、しかも一層広範囲の輝度制御を行うことができるという利点を得ることができる。
【0065】
次に、この発明の第3の実施形態について説明する。この第3の実施形態においては、第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードを用いた発光ダイオードバックライトを白色光源として用いた透過型液晶ディスプレイについて説明する。
図16はこの第3の実施形態による透過型液晶ディスプレイを示す。
図17に示すように、この透過型液晶ディスプレイにおいては、液晶パネル51の背面にプリズム板52および拡散板53を介して発光ダイオードバックライト54が設けられている。
【0066】
発光ダイオードバックライト54においては、赤色発光の発光ダイオード55、二つの緑色発光の発光ダイオード56、57および青色発光の発光ダイオード58からなるセルがマトリックス状に配列されている。縦方向および横方向のセル数は必要に応じて選ばれる。符号55a、56a、57a、58aは凸レンズを示す。ただし、凸レンズ55a、56a、57a、58aの代わりに、用途や光学設計などに応じて、凹レンズやその他の複雑な形状のレンズを用いてもよい。赤色発光の発光ダイオード55、緑色発光の発光ダイオード56、57および青色発光の発光ダイオード58のうちの少なくとも一種類、好適には緑色発光の発光ダイオード56、57および青色発光の発光ダイオード58として第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードが用いられる。赤色発光の発光ダイオード55として例えばAlGaInP系発光ダイオードを用い、緑色発光の発光ダイオード56、57および青色発光の発光ダイオード58のうちの少なくとも一種類として第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードを用いてもよい。赤色発光の発光ダイオード55は駆動回路59により駆動され、緑色発光の発光ダイオード56、57は駆動回路60により駆動され、青色発光の発光ダイオード58は駆動回路61により駆動されるようになっている。各セルの駆動回路59、60、61はバックライトコントローラ62により制御されるようになっており、さらにこのバックライトコントローラ62はディスプレイコントローラ63により制御されるようになっている。各セルには光センサ64が設けられている。この光センサ64により赤色発光の発光ダイオード55、緑色発光の発光ダイオード56、57および青色発光の発光ダイオード58の発光強度が検出され、この光センサ64の出力がバックライトコントローラ62に入力されるようになっている。
一方、液晶パネル51は駆動回路65により駆動されるようになっており、さらにこの駆動回路65はディスプレイコントローラ63により制御されるようになっている。
この場合、赤色発光の発光ダイオード55、緑色発光の発光ダイオード56、57および青色発光の発光ダイオード58の輝度変調は、発光量の一部または全ての変調を駆動電流振幅変調で行っても、電流パルス幅変調と電流振幅変調とを組み合わせて行っても、電流密度変調と電流振幅変調とを組み合わせて行ってもよい。
【0067】
この第3の実施形態によれば、発光ダイオードバックライト54の各セルを構成する赤色発光の発光ダイオード55、緑色発光の発光ダイオード56、57および青色発光の発光ダイオード58としてGaN系発光ダイオードを用いる場合に、このGaN系発光ダイオードの発光効率を高くすることができるため、発光ダイオードバックライト54を高輝度化することができ、高輝度の透過型液晶ディスプレイを得ることができる。
【0068】
次に、この発明の第4の実施形態について説明する。この第4の実施形態においては、赤色発光の発光ダイオード光源、緑色発光の発光ダイオード光源および青色発光の発光ダイオード光源と透過型液晶パネルからなるライトバルブ素子とを組み合わせたプロジェクションディスプレイについて説明する。
図17はこの第4の実施形態によるプロジェクションディスプレイを示す。
図17に示すように、このプロジェクションディスプレイにおいては、ダイクロイックプリズム71の互いに直交する三面に近接して高温多結晶シリコン薄膜トランジスタ(TFT)液晶パネル72、73、74が設けられている。高温多結晶シリコンTFT液晶パネル72の背面側には赤色発光の発光ダイオードパネル75が設けられ、高温多結晶シリコンTFT液晶パネル73の背面側には緑色発光の発光ダイオードパネル76が設けられ、高温多結晶シリコンTFT液晶パネル74の背面側には青色発光の発光ダイオードパネル77が設けられている。ダイクロイックプリズム71の残りの一面に対向してプロジェクションレンズ78が設けられている。
【0069】
赤色発光の発光ダイオードパネル75においては、基板75a上に赤色発光の発光ダイオード75bがマトリックス状に配列されている。縦方向および横方向の発光ダイオード75bの数は必要に応じて選ばれる。これらの発光ダイオード75bとしては例えばAlGaInP系発光ダイオードが用いられる。これらの発光ダイオード75bのp型層側は配線電極75cと接続されており、n型層側は透明電極75dと接続されている。透明電極75d上には各発光ダイオード75bに対応した位置に凸レンズ75eが設けられている。また、緑色発光の発光ダイオードパネル76においては、基板76a上に緑色発光の発光ダイオード76bがマトリックス状に配列されている。縦方向および横方向の発光ダイオード76bの数は必要に応じて選ばれる。この発光ダイオード76bとしては、第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードが用いられる。これらの発光ダイオード76bのp型層側は配線電極76cと接続されており、n型層側は透明電極76dと接続されている。透明電極76d上には各発光ダイオード76bに対応した位置に凸レンズ76eが設けられている。また、青色発光の発光ダイオードパネル77においては、基板77a上に青色発光の発光ダイオード77bがマトリックス状に配列されている。縦方向および横方向の発光ダイオード77bの数は必要に応じて選ばれる。この発光ダイオード77bとしては、第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードが用いられる。これらの発光ダイオード77bのp型層側は配線電極77cと接続されており、n型層側は透明電極77dと接続されている。透明電極77d上には各発光ダイオード77bに対応した位置に凸レンズ77eが設けられている。
【0070】
このプロジェクションディスプレイにおいては、赤色発光の発光ダイオードパネル75からの赤色の光、緑色発光の発光ダイオードパネル76からの緑色の光および青色発光の発光ダイオードパネル77からの青色の光はそれぞれ高温多結晶シリコンTFT液晶パネル72、73、74により透過が制御され、これらの赤色の光、緑色の光および青色の光がダイクロイックプリズム71で合成されて画像が形成され、この画像がプロジェクションレンズ78を介してスクリーン79に投影される。
この場合、赤色発光の発光ダイオード75b、緑色発光の発光ダイオード76bおよび青色発光の発光ダイオード77bの輝度変調については第4の実施形態と同様である。
この第4の実施形態によれば、高輝度のプロジェクションディスプレイを得ることができる。
【0071】
次に、この発明の第5の実施形態について説明する。この第5の実施形態においては、赤色発光の発光ダイオード光源、緑色発光の発光ダイオード光源および青色発光の発光ダイオード光源とDMDからなるライトバルブ素子とを組み合わせたプロジェクションディスプレイについて説明する。
図18はこの第5の実施形態によるプロジェクションディスプレイを示す。
図18に示すように、このプロジェクションディスプレイにおいては、ダイクロイックプリズム81の互いに直交する三面に対向して赤色発光のパワー発光ダイオード82、緑色発光のパワー発光ダイオード83および青色発光のパワー発光ダイオード84が設けられている。赤色発光のパワー発光ダイオード82としては例えばAlGaInP系発光ダイオードが用いられる。緑色発光のパワー発光ダイオード83および青色発光のパワー発光ダイオード84の少なくとも一つとして、第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードが用いられる。赤色発光のパワー発光ダイオード82は発光面上に凸レンズ82aを有し、裏面に放熱フィン82bを有する。このパワー発光ダイオード82からの光は凸レンズ82aを通った後、導光部材85によりダイクロイックプリズム81の面上に投射される。緑色発光のパワー発光ダイオード83は発光面上に凸レンズ83aを有し、裏面に放熱フィン83bを有する。このパワー発光ダイオード83からの光は凸レンズ83aを通った後、導光部材86によりダイクロイックプリズム81の面上に投射される。青色発光のパワー発光ダイオード84は発光面上に凸レンズ84aを有し、裏面に放熱フィン84bを有する。このパワー発光ダイオード84からの光は凸レンズ84aを通った後、導光部材87によりダイクロイックプリズム81の面上に投射される。
【0072】
ダイクロイックプリズム81の残りの一面に対向してDMD88が設けられている。赤色発光のパワー発光ダイオード82からの赤色の光、緑色発光のパワー発光ダイオード83からの緑色の光および青色発光のパワー発光ダイオード84からの青色の光はダイクロイックプリズム81で混合されて白色光とされ、この白色光がDMD88に入射して画像が形成され、この画像がプロジェクションレンズ89を介してスクリーン90に投影される。
【0073】
この場合、赤色発光のパワー発光ダイオード82、緑色発光のパワー発光ダイオード83および青色発光のパワー発光ダイオード84の輝度変調については第3の実施形態と同様である。
この第5の実施形態によれば、高輝度のプロジェクションディスプレイを得ることができる。
【0074】
次に、この発明の第6の実施形態について説明する。
図19はこの第6の実施形態によるパッシブマトリックス方式の発光ダイオードディスプレイを示す。
図19に示すように、この発光ダイオードディスプレイにおいては、赤色発光の発光ダイオード101と緑色発光の発光ダイオード102と青色発光の発光ダイオード103とからなる画素がマトリックス状に配列されている。赤色発光の発光ダイオード101としては例えばAlGaInP系発光ダイオードが用いられる。緑色発光の発光ダイオード102および青色発光の発光ダイオード103のうちの少なくとも一つとして、第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードが用いられる。縦方向および横方向の画素数は必要に応じて選ばれる。符号C1 、C2 、…、C10、…は行選択線(アドレス線)を示し、行駆動回路104に接続されている。符号R1 、R2 、…、R9 、…は列選択線(信号線)を示し、列駆動回路105に接続されている。PLL(位相同期ループ)/タイミング回路106により行駆動回路104および列駆動回路105が制御されて画素が選択されるとともに、画像データ回路107から行駆動回路104にRGB信号が供給される。このRGB信号に応じて、選択された画素の赤色発光の発光ダイオード101、緑色発光の発光ダイオード102および青色発光の発光ダイオード103に電流が流されて駆動される。駆動走査方式としては、点順次駆動走査方式や線順次駆動走査方式などが用いられる。
この場合、赤色発光の発光ダイオード101、緑色発光の発光ダイオード102および青色発光の発光ダイオード103の輝度変調については第4の実施形態と同様である。
この第6の実施形態によれば、高輝度の発光ダイオードディスプレイを得ることができる。
【0075】
次に、この発明の第7の実施形態について説明する。
図20はこの第7の実施形態によるアクティブマトリックス方式の発光ダイオードディスプレイを示す。
図20に示すように、この発光ダイオードディスプレイにおいては、赤色発光の発光ダイオード111と緑色発光の発光ダイオード112と青色発光の発光ダイオード113とアクティブ素子114とからなる画素がマトリックス状に配列されている。赤色発光の発光ダイオード111としては例えばAlGaInP系発光ダイオードが用いられる。緑色発光の発光ダイオード112および青色発光の発光ダイオード113のうちの少なくとも一つとして、第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードが用いられる。縦方向および横方向の画素数は必要に応じて選ばれる。これらの赤色発光の発光ダイオード111、緑色発光の発光ダイオード112および青色発光の発光ダイオード113のn型層側は接地線115と接続され、p型層側はアクティブ素子114と接続されている。アクティブ素子114は赤色発光の発光ダイオード111、緑色発光の発光ダイオード112および青色発光の発光ダイオード113を駆動する能力を有する素子であり、例えばシリコン集積回路などからなる。符号C1 、C2 、…、C6 、…は行選択線(アドレス線)を示し、行駆動回路116に接続されている。符号R1 、R2 、…、R6 、…は列選択線(信号線)を示し、列駆動回路117に接続されている。行駆動回路116および列駆動回路117により選択された画素のアクティブ素子114が駆動され、これによってこの画素の赤色発光の発光ダイオード111、緑色発光の発光ダイオード112および青色発光の発光ダイオード113に電流が流されて駆動される。
この場合、赤色発光の発光ダイオード111、緑色発光の発光ダイオード112および青色発光の発光ダイオード113の輝度変調については第4の実施形態と同様である。
この第7の実施形態によれば、高輝度の発光ダイオードディスプレイを得ることができる。
【0076】
以上、この発明の実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の第1〜第7の実施形態において挙げた数値、材料、構造、形状、基板、原料、プロセス、回路構成などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じて、これらと異なる数値、材料、構造、形状、基板、原料、プロセス、回路構成などを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明者らが行った実験に用いたGaN系発光ダイオードを示す断面図である。
【図2】図1に示すGaN系発光ダイオードの活性層の詳細を示す断面図である。
【図3】本発明者らが行ったエレクトロルミネッセンス測定に用いたGaN系発光ダイオードを示す断面図である。
【図4】本発明者らが行ったエレクトロルミネッセンス測定の結果を示す略線図である。
【図5】本発明の原理を説明するための略線図である。
【図6】本発明の原理を説明するための略線図である。
【図7】本発明の原理を説明するための略線図である。
【図8】この発明の第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードを示す断面図である。
【図9】図8に示すGaN系発光ダイオードの活性層の詳細を示す断面図である。
【図10】この発明の第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードの製造方法を説明するための略線図である。
【図11】この発明の第1の実施形態によるGaN系発光ダイオードについて行ったエレクトロルミネッセンス測定の結果を示す略線図である。
【図12】この発明の第2の実施形態によるGaN系発光ダイオードを説明するための略線図である。
【図13】この発明の第2の実施形態によるGaN系発光ダイオードを説明するための略線図である。
【図14】この発明の第2の実施形態によるGaN系発光ダイオードを説明するための略線図である。
【図15】この発明の第2の実施形態によるGaN系発光ダイオードを説明するための略線図である。
【図16】この発明の第3の実施形態による透過型液晶ディスプレイを示す略線図である。
【図17】この発明の第4の実施形態によるプロジェクションディスプレイを示す略線図である。
【図18】この発明の第5の実施形態によるプロジェクションディスプレイを示す略線図である。
【図19】この発明の第6の実施形態によるパッシブマトリックス方式の発光ダイオードディスプレイを示す略線図である。
【図20】この発明の第7の実施形態によるアクティブマトリックス方式の発光ダイオードディスプレイを示す略線図である。
【符号の説明】
【0078】
34…n型GaN層、36…活性層、36a…InGaN層、36b…GaN層、38…p型AlGaN層、54…発光ダイオードバックライト、55、75b、101、111…赤色発光の発光ダイオード、56、57、76b、102、112…緑色発光の発光ダイオード、58、77b、103、113…青色発光の発光ダイオード、78、89…プロジェクションレンズ、79、90…スクリーン、82…赤色発光のパワー発光ダイオード、83…緑色発光のパワー発光ダイオード、84…青色発光のパワー発光ダイオード、104、116…行駆動回路、105、117…列駆動回路、114…アクティブ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されている
ことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
上記井戸層の組成が、上記n側クラッド層から上記p側クラッド層に向かってバンドギャップエネルギーが増加または減少するように変調されていることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
上記井戸層はInを含む窒化物系III−V族化合物半導体からなることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項4】
上記半導体発光素子は発光ダイオードまたはレーザダイオードであることを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項5】
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子の製造方法において、
上記活性層を成長させる際に、少なくとも一つの上記井戸層の組成を当該井戸層に垂直な方向に変調するようにした
ことを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
上記井戸層を成長させる際に成長条件を変調することにより上記井戸層の組成を変調するようにしたことを特徴とする請求項5記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
上記井戸層を成長させる際に成長温度を変調することにより上記井戸層の組成を変調するようにしたことを特徴とする請求項5記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
上記活性層を成長させた後の最高成長温度T(℃)は発光波長をλ(nm)とするとT<1350−0.75λを満たすことを特徴とする請求項5記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
上記活性層を成長させた後の最高成長温度T(℃)は発光波長をλ(nm)とするとT<1250−0.75λを満たすことを特徴とする請求項5記載の半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
赤色発光の半導体発光素子、緑色発光の半導体発光素子および青色発光の半導体発光素子をそれぞれ複数個配列したバックライトにおいて、
上記赤色発光の半導体発光素子、上記緑色発光の半導体発光素子および上記青色発光の半導体発光素子のうちの少なくとも一つの半導体発光素子が、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されているものである
ことを特徴とするバックライト。
【請求項11】
赤色発光の半導体発光素子、緑色発光の半導体発光素子および青色発光の半導体発光素子をそれぞれ複数個配列した表示装置において、
上記赤色発光の半導体発光素子、上記緑色発光の半導体発光素子および上記青色発光の半導体発光素子のうちの少なくとも一つの半導体発光素子が、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されているものである
ことを特徴とする表示装置。
【請求項12】
一つまたは複数の半導体発光素子を有する電子機器において、
少なくとも一つの上記半導体発光素子が、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されているものである
ことを特徴とする電子機器。
【請求項13】
一つまたは複数の半導体発光素子と当該半導体発光素子から放出される光が入射する色変換材料とを有する発光装置において、
少なくとも一つの上記半導体発光素子が、
p側クラッド層とn側クラッド層との間に一つまたは複数の井戸層を有する活性層が挟まれた構造を有する、窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体発光素子において、
上記活性層の少なくとも一つの上記井戸層の組成が当該井戸層に垂直な方向に変調されているものである
ことを特徴とする発光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2008−235606(P2008−235606A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73636(P2007−73636)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】