半導体発光素子
【課題】放熱性を高めて光取り出し効率を改善することができる半導体発光素子を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体発光素子は、積層構造体と、第1電極と、第2電極と、誘電体部と、を備える。積層構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第1半導体層の一部に対向する第2導電形の第2半導体層と、第1半導体層の前記一部と第2半導体層とのあいだに設けられた発光層と、を含む。積層構造体は、第1半導体層側の第1主面と、第2半導体層側の第2主面と、を有する。第1電極は、第2主面の側で第1半導体層と接する接触部を有する。第2電極は、第2主面で第2半導体層と接する第1部分と、第1部分と電気的に接続され、第1半導体層から第2半導体層へ向かう積層方向にみたときに、接触部と重なる部分を有する第2部分と、を有する。誘電体部は、接触部と、第2部分と、のあいだに設けられる。
【解決手段】実施形態に係る半導体発光素子は、積層構造体と、第1電極と、第2電極と、誘電体部と、を備える。積層構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第1半導体層の一部に対向する第2導電形の第2半導体層と、第1半導体層の前記一部と第2半導体層とのあいだに設けられた発光層と、を含む。積層構造体は、第1半導体層側の第1主面と、第2半導体層側の第2主面と、を有する。第1電極は、第2主面の側で第1半導体層と接する接触部を有する。第2電極は、第2主面で第2半導体層と接する第1部分と、第1部分と電気的に接続され、第1半導体層から第2半導体層へ向かう積層方向にみたときに、接触部と重なる部分を有する第2部分と、を有する。誘電体部は、接触部と、第2部分と、のあいだに設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子として、例えばサファイア基板上に形成した結晶層を導電性基板に接合し、サファイア基板を除去する構造がある。この構造では、光取り出し効率を高めるため、サファイア基板を除去することで露出した結晶層の表面に、凹凸加工を施している。また、光取り出し面となる結晶層の表面には電極を形成せず、サファイア基板を除去した面とは逆側の結晶面にp側電極及びn側電極を形成する構造もある。このような半導体発光素子においては、放熱性を高め、さらなる光取り出し効率の改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】A. Laubsch, M. Sabathil, J. Baur, M. Peter, and B. Hahn, IEEE Transactions on electron devices, vol. 57, no. 1, p79-87 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、放熱性を高めて光取り出し効率を改善することができる半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体発光素子は、積層構造体と、第1電極と、第2電極と、誘電体部と、を備える。
積層構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第1半導体層の一部に対向する第2導電形の第2半導体層と、第1半導体層の前記一部と第2半導体層とのあいだに設けられた発光層と、を含む。積層構造体は、第1半導体層側の第1主面と、第2半導体層側の第2主面と、を有する。
第1電極は、第2主面の側で第1半導体層と接する接触部を有する。
第2電極は、第2主面で第2半導体層と接する第1部分と、第1部分と電気的に接続され、第1半導体層から第2半導体層へ向かう積層方向にみたときに、接触部と重なる部分を有する第2部分と、を有する。
誘電体部は、接触部と、第2部分と、のあいだに設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図2】半導体発光素子を示す模式的平面図である。
【図3】凹凸部を示す部分拡大図である。
【図4】参考例の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図5】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図6】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図7】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図8】半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図9】半導体発光素子を示す模式的平面図である。
【図10】半導体発光素子を示す模式的平面図である。
【図11】半導体発光装置を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図2は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的平面図である。
ここで、図1は、図2のA−A’線における模式的断面図を示している。
【0009】
図1に表したように、第1の実施形態に係る半導体発光素子110は、積層構造体100と、第1電極50と、第2電極60と、第1誘電体部40と、を備える。
【0010】
積層構造体100は、第1導電形の第1半導体層10と、第1半導体層10の一部と対向する第2導電形の第2半導体層20と、第1半導体層10の一部と第2半導体層20とのあいだに設けられた発光層30と、を有する。
【0011】
第1導電形は、例えばn形である。第2導電形は、例えばp形である。なお、第1導電形はp形、第2導電形はn形であってもよい。本実施形態では、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例として説明する。
【0012】
積層構造体100は、第1半導体層10側の第1主面100aと、第2半導体層20側の第2主面100bと、有する。また、第1半導体層10の一部は、第2主面100b側に露出している。この一部は第1半導体層10の露出部分10eである。
【0013】
第1電極50は、露出部分10eで第1半導体層10と接する接触部51を有する。第2電極60は、第2主面100bで第2半導体層20と接する。
【0014】
第2電極60は、第2主面100bで第2半導体層20と接する第1部分61と、第1部分と電気的に接続され、第1半導体層10から第2半導体層20へ向かう積層方向にみたときに、接触部51と重なる部分を有する第2部分62と、を有する。
ここで、本実施形態では、第1半導体層10と第2半導体層20とをむすぶ方向をZ軸方向、Z軸方向と直交する方向のうち1つをX軸方向、Z軸方向及びX軸方向と直交する方向をY軸方向ということにする。積層方向は、Z軸方向である。
【0015】
第1誘電体部40は、接触部51と、第2部分62と、のあいだに設けられる。
すなわち、第2電極60は、第1電極50と第1誘電体部40を介して電気的に絶縁されている。実施形態において、第1誘電体部40は、第1電極50の接触部51の周囲のみに設けられている。このため、積層構造体100の第2主面100b側において、第2電極60の第1部分61は、第1誘電体部40が設けられていない比較的大きな面積で第2半導体層20と接触することになる。したがって、積層構造体100で発生した熱は、第2電極60から外部へ効率良く放出されることになる。
【0016】
次に、本実施形態に係る半導体発光素子110の具体例について説明する。
【0017】
本実施形態に係る半導体発光素子110において、積層構造体100に含まれる第1半導体層10、第2半導体層20及び発光層30は、例えば窒化物半導体である。第1半導体層10、第2半導体層20及び発光層30は、サファイア等の成長用基板の上に、例えば有機金属気相成長法を用いて積層される。
【0018】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BxInyAlzGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電形などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0019】
積層構造体100には、第2主面100bから第1半導体層10に達する凹部100tが設けられている。この凹部100tの底面には、第1半導体層10の露出部分10eが含まれる。第1電極50の接触部51は、露出部分10eにおいて第1半導体層10と接触して、第1半導体層10との導通を得ている。
【0020】
接触部51には、第1半導体層10との良好なコンタクトを得ることができる材料が用いられる。接触部51としては、例えばAl/Ni/Auの積層膜が用いられる。積層膜は、接触面50c側からAl/Ni/Auの順に積層され、例えば300ナノメートル(nm)の厚さで形成される。
【0021】
また、第1電極50は、積層構造体100の外側に引き出された引き出し部53を含む。引き出し部53は接触部51と導通しており、接触部51からX−Y平面に沿って積層構造体100の外側まで延出するように設けられる。引き出し部53は、接触部51と一体で形成されていてもよい。
【0022】
積層構造体100の側面は、第2誘電体部45で覆われている。積層構造体100の外側において、第2誘電体部45の開口部から引き出し部53の一部が露出している。この露出している部分にパッド電極55が設けられている。
【0023】
パッド電極55には、図示しないボンディングワイヤ等の配線部材が接続され、外部と第1半導体層10と、を電気的に導通させることができる。
【0024】
第2電極60の第1部分61は、第2主面100bに沿って第2半導体層20と接するように設けられている。第1部分61には、発光層30から放射された発光光を効率良く反射することができる材料が用いられる。第1部分61としては、例えばAg/Ptの積層膜が用いられる。積層膜は、第2主面100b側からAg/Ptの順に積層され、例えば200nmの厚さで形成される。
【0025】
実施形態に係る半導体発光素子110において、第2電極60の第2部分61と導通する支持基板70を備えている。第2電極60の第2部分61は、例えば接合用金属部を含む。なお、第2部分61の全体が接合用金属部であってもよい。
【0026】
接合用金属部には、後述する支持基板70と良好な接続を得ることができる材料が用いられる。接合用金属部としては、例えばTi/Auの積層膜が用いられる。積層膜は、第2主面100b側からTi/Auの順に積層され、例えば800nmの厚さで形成される。
【0027】
支持基板70は、この接合用金属部と接合されている。支持基板70は、少なくとも導電性のある材料からなる。支持基板70の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、Si、Geなどの半導体基板、CuW、Cuなどの金属板や厚膜メッキ層が用いられる。また、基板全体で導電性を有する必要はなく、金属配線がなされている樹脂などでもよい。
【0028】
実施形態では、支持基板70の一例としてGeを用いる。支持基板70は、例えばAuSu合金によるはんだ(図示せず)を介して接合用金属部と接合される。
支持基板70には裏面電極85が設けられている。つまり、第2半導体層20は、第2電極60、支持基板70及び裏面電極85と導通する。これにより、半導体発光素子110を図示しない実装用基板等に実装することで、実装用基板等に設けられた導通部分と、第2半導体層20と、の導通を得ることができる。
【0029】
支持基板70は、Z軸方向にみて積層構造体100の外側の縁部70aを有する。第1電極50の引き出し部53は、接触部51から縁部70aまで引き出されている。
【0030】
半導体発光素子110において、第2電極60は、p側電極である。したがって、第2電極60と導通する支持基板70及び裏面電極85によって、p側電極(第2電極60)と外部との電気的な導通を得る。
【0031】
また、半導体発光素子110において、第1電極50は、n側電極である。したがって、パッド電極55にボンディングワイヤ等の配線部材を接続することにより、n側電極(第1電極50)と外部との電気的な導通を得る。
【0032】
半導体発光素子110において、積層構造体100の第1主面100a(第1半導体層10の表面)には、凹凸部12pが設けられていても良い。凹凸部12pは、第1主面100aの面内に設けられた複数の突起によって構成される。
【0033】
図3は、凹凸部を示す部分拡大図である。
図3(a)は、凹凸部の模式的断面図である。図3(b)は、1つの凸部の模式的平面図である。
図3(a)に表したように、凹凸部12pには、複数の突起が設けられている。突起のX軸方向に沿った最大幅ΔWは、発光層30から放射される発光光の第1半導体層10中のピーク波長よりも長い。
【0034】
これにより、第1半導体層10と外界との界面における発光光の反射はランバート反射と見なすことができ、光取り出し効率の向上効果がより高くなる。ここで、ピーク波長とは、発光層30から放射される発光光のうち、最も強度の高い光の波長である。ピーク波長は、発光光のスペクトル分布のピーク値に対応する波長である。ノイズレベルではない極大値が2つ以上あるスペクトルの場合、そのどちらのピーク値の波長を選んでも良い。
【0035】
図3(b)に表したように、例えば、第1半導体層10として窒化物半導体を用いた場合、Z軸方向にみたときの突起の平面形状が略六角形となるときは、最大幅ΔWは、六角形の対角する頂点間の幅となる。
【0036】
一例として、第1半導体層10が窒化ガリウム、発光層30の発光光のピーク波長が390nmの場合、第1半導体層10内での発光光のピーク波長は155nmとなる。この場合、凹凸部12pの最大幅ΔWが155nmを超えて、3マイクロメートル(μm)程度に達するまで光取り出し効率の向上効果を得ることができる。このことから、凹凸部12pの最大幅ΔWは、好ましくは発光光のピーク波長の2倍以上、さらに好ましくは10倍以上であるとよい。
【0037】
このような半導体発光素子110において、発光層30から放出された光は、積層構造体100の第2主面100bの側よりも第1主面100aの側から多く外部へ放出される。つまり、第1主面100aが光取り出し面になる。
【0038】
半導体発光素子110では、積層構造体100の第1主面100a側にn側電極(第1電極50)及びp側電極(第2電極60)のいずれも配置されない。したがって、第1主面100a側に電極が配置された場合に比べて、第1主面100a側での光取り出し効率が向上する。さらに、主な発熱源である発光層30の直下のp側電極(第2電極60)が、熱伝導率の高い金属層や支持基板70に接続される。支持基板70に例えばヒートシンクを接続すると、熱抵抗を低くすることができ、良好な放熱性を得られる。これに加えて、半導体発光素子110のp側電極(第2電極60)の第2部分62は、積層構造体100の第2主面100bの側に延在して設けられている。これにより、熱の広がりが良好になって、半導体発光素子110全体の熱抵抗をより低くすることができる。
【0039】
図4は、参考例に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図4に表したように、参考例に係る半導体発光素子190において、第1電極50は、接触部51と、第3部分54と、を含んでいる。第3部分54は、接触部51と導通しており、第2主面100bに沿って設けられている。また、Z軸方向に沿って、第3部分と、第2電極60の第1部分61と、のあいだには、第3誘電体部41が設けられている。
【0040】
第2電極60は、第1部分61と、引き出し部63と、を含む。引き出し部63は、第1部分61と導通し、第1部分61から積層構造体100の外側まで引き出されている。積層構造体100の外側において、第2誘電体部45の開口部から引き出し部63の一部が露出している。この露出している部分にパッド電極65が設けられている。
【0041】
このような半導体発光素子190において、第3誘電体部41は、第2電極60の第1部分61と、第1電極50の第3部分54と、のあいだに設けられている。すなわち、第3誘電体部41は、積層構造体100の第2主面100bの側において、第1電極50の接触部51以外の全体を覆うように形成されている。したがって、主な発熱源である発光層30の直下が第3誘電体部41で覆われていることになる。半導体発光素子190は、金属に比べて熱伝導率の低い第3誘電体部41を介してヒートシンク等へ接続されることから、熱抵抗が高くなり、十分な放熱性を得られない。さらに、第3誘電体部41は絶縁性を高めるため、厚く形成する必要があり、絶縁性と放熱性とがトレードオフの関係になっている。
【0042】
一方、本実施形態に係る半導体発光素子110では、発光層30の直下には誘電体が設けられていない。発光層30の直下は、第2電極60であり、発光層30で発生した熱は、第2電極60から支持基板70側へ拡がって容易に外部へ放出されることになる。したがって、絶縁性を高めるために第1誘電体部40を厚く形成しても、放熱性を損なうことはない。半導体発光素子110では、絶縁性と放熱性との両立を図ることができる。
【0043】
次に、半導体発光素子110の製造方法の一例について説明する。
図5〜図7は、半導体発光素子の製造方法の一例を順に説明する模式的断面図である。
先ず、図5(a)に表したように、サファイア等の成長用基板80の上に、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20を順に結晶成長させる。これにより、成長用基板80の上に、積層構造体100を形成する。
【0044】
積層構造体100は、例えば有機金属気相成長法を用いて形成される。なお、積層構造体100の形成方法は、有機金属気相成長法のほか、分子線エピタキシャル成長法等の公知の技術を用いることができる。
【0045】
一例として、積層構造体100は、次のように形成される。
先ず、表面がサファイアc面からなる成長用基板80の上に、バッファ層として、高炭素濃度の第1AlNバッファ層(例えば、炭素濃度が3×1018cm−3以上、5×1020cm−3以下で、例えば、厚さが3nm以上、20nm以下)、高純度の第2AlNバッファ層(例えば、炭素濃度が1×1016cm−3以上3×1018cm−3以下で、厚さが2μm)、及びノンドープGaNバッファ層(例えば、厚さが2μm)が、この順に形成される。上記の第1AlNバッファ層、及び、第2AlNバッファ層は、単結晶の窒化アルミニウム層である。第1及び第2AlNバッファ層として単結晶の窒化アルミニウム層を用いることで、後述する結晶成長において高品質な半導体層を形成することができ、結晶に対するダメージが大幅に軽減される。
【0046】
次に、その上に、Siドープn形GaNコンタクト層(例えば、Si濃度が1×1018cm−3以上5×1019cm−3以下で、厚さが6μm)、及びSiドープn形Al0.10Ga0.90Nクラッド層(例えば、Si濃度が1×1018cm−3で、厚さが0.02μm)が、この順番で順次形成される。Siドープn形GaNコンタクト層、及びSiドープn形Al0.10Ga0.90Nクラッド層は、第1半導体層10である。なお、便宜上、上記GaNバッファ層の全部または一部を第1半導体層10に含めてもよい。
【0047】
ここで、成長用基板80上に形成されるバッファ層としては、上記AlNに限定されない。例えば、バッファ層に低温成長のAlxGa1−xN(0≦x≦1)薄膜を用いても良い。
【0048】
次に、その上に、発光層30として、Siドープn形Al0.11Ga0.89Nバリア層と、GaInN井戸層と、が交互に3周期積層され、さらに、多重量子井戸の最終Al0.11Ga0.89Nバリア層がさらに積層される。Siドープn形Al0.11Ga0.89Nバリア層においては、例えばSi濃度が1.1×1019cm−3以上1.5×1019cm−3以下とされる。最終Al0.11Ga0.89Nバリア層においては、例えばSi濃度が1.1×1019cm−3以上1.5×1019cm−3以下で、例えば厚さが0.01μmとされる。このような多重量子井戸構造の厚さは、例えば0.075μmとされる。この後、Siドープn形Al0.11Ga0.89N層(例えば、Si濃度が0.8×1019cm−3以上1.0×1019cm−3以下で、例えば、厚さがを0.01μm)を形成する。なお、発光層30における発光光の波長は、例えば370nm以上、480nm以下、または370nm以上、400nm以下である。
【0049】
さらに、第2半導体層20として、ノンドープAl0.11Ga0.89Nスペーサ層(例えば厚さが0.02μm)、Mgドープp形Al0.28Ga0.72Nクラッド層(例えば、Mg濃度が1×1019cm−3で、例えば、厚さが0.02μm)、Mgドープp形GaNコンタクト層(例えば、Mg濃度が1×1019cm−3で、厚さが0.4μm)、及び、高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層(例えば、Mg濃度が5×1019cm−3で、例えば、厚さが0.02μm)が、この順で順次形成される。
なお、上記の組成、組成比、不純物の種類、不純物濃度及び厚さは一例であり、種々の変形が可能である。
【0050】
なお、高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層のMg濃度を約1×1020cm−3と高めに設定することで、第2電極60とのオーミック特性を向上させることができる。ただし、半導体発光ダイオードの場合、半導体レーザダイオードとは異なり、高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層と発光層30との距離が近いため、Mg拡散による特性の劣化が懸念される。そこで、第2電極60と高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層との接触面積が広く、動作時の電流密度が低いことを利用して、電気特性を大きく損ねることなく高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層のMg濃度を約1×1019cm−3に抑えることで、Mgの拡散を防ぐことができ、発光特性を改善させることができる。
【0051】
また、高炭素濃度の第1AlNバッファ層は成長用基板80との結晶型の差異を緩和する働きをし、特に螺旋転位を低減する。また、高純度第2AlNバッファ層の表面は、原子レベルで平坦化される。そのため、この上に成長するノンドープGaNバッファ層の結晶欠陥が低減される。なお、結晶欠陥を十分に低減するには、第2AlNバッファ層の膜厚を、1μmよりも厚くすることが好ましい。また、歪みによる反りを防止のためには、膜厚を、4μm以下にすることが望ましい。高純度第2AlNバッファ層は、AlNに限定されず、AlxGa1−xN(0.8≦x≦1)でもよく、成長用基板80の反りを補償することができる。
【0052】
また、ノンドープGaNバッファ層は、高純度第2AlNバッファ層の上で、3次元島状に成長する。これにより、ノンドープGaNバッファ層は、結晶欠陥低減の役割を果たす。成長表面の平坦化のためには、ノンドープGaNバッファ層の平均膜厚を2μm以上にすることが望ましい。再現性とそり低減の観点からノンドープGaNバッファ層の総膜厚は、2μm以上、10μm以下が好ましい。
これらのバッファ層を採用することで、低温成長AlNバッファ層を採用する場合と比較して、結晶欠陥を約1/10に低減することができる。この技術によって、n形GaNコンタクト層への高濃度Siドーピングや、紫外帯域発光でありながらも高効率な半導体発光素子が製造される。また、ノンドープGaNバッファ層における結晶欠陥を低減することにより、ノンドープGaNバッファ層での光の吸収も抑制される。
【0053】
なお、量子井戸層の発光波長は、特に限定されるものではないが、例えば、GaInNの窒化ガリウム系化合物半導体を用いる場合は375nmから700nmの発光が得られる。
また、サファイア基板上のバッファ層は、特に限定されるものではなく、低温成長のAlxGa1−xN(0≦x≦1)薄膜を用いても良い。
【0054】
次に、図5(b)に表したように、積層構造体100の一部に凹部100tを形成する。凹部100tは、積層構造体100の第2主面100bから第1半導体層10にまで達する。これにより、凹部100tの底部に第1半導体層10が露出する(露出部分10e)。
【0055】
凹部100tを形成するには、積層構造体100の第2主面100b上に図示しないマスクを形成し、例えばドライエッチングを行う。すなわち、マスクには、凹部100tを形成する部分に開口が設けられていて、エッチングによって積層構造体100が第2主面100bから第1半導体層10まで除去される。これにより、凹部100tが形成される。凹部100tの内側面の角度は、特に限定されるものではないが、発光層30からの発光光が最大強度を持つ30度の光を進行方向とは逆方向に反射させる角度として、60度以上が好ましい。凹部100tの深さは、特に限定されるものではないが、深いほど、積層構造体100内を横方向に伝播する発光光の進行方向を変えることで光取り出し効率を高めやすい。一方、深すぎると、後の工程で支持基板70を接合する際に、凹部100tをはんだで埋めにくくなる。また、凹部100tをノンドープGaNバッファ層に到達するまで深くすると、Siドープn形GaNコンタクト層に第1電極50を形成することができなくなる。したがって、凹部100tの深さは、例えば0.6μm以上、6.6μm以下、好ましくは1.0μm以上、3.0μm以下である。
【0056】
次に、図5(b)に表したように、第1半導体層10と接する第1電極50を形成する。第1電極50としては、先ず、凹部100tから露出した第1半導体層10の露出面100eに、オーミック電極となるTi/Al/Ni/Auの積層膜を、例えば300nmの膜厚で形成し、窒素雰囲気中で600℃、5分でシンター処理を行う。
【0057】
次に、オーミック電極の上に、電流拡散用及びパッド電極55までの引き出し部53のための接合金属用、並びに絶縁層への接着金属として、例えば、Ti/Au/Tiの積層膜を、例えば1200nmの膜厚で形成する。
【0058】
なお、第1電極50の材料は上記に限定されない。例えば、Alを第1層とすることで、n形コンタクト層と良好なオーミック特性および低コンタクト特性を得られつつ、反射電極にもなるため、光取り出し効率や第1電極50の設計自由度が向上する。Alは耐環境性が低いため、例えばSiをわずかに入れたAl合金を採用することで、信頼性や密着性を向上させることができる。
【0059】
次に、第1電極50及び凹部100tを覆うように、第1誘電体部40を形成する。第1誘電体部40として、例えばSiO2を800nmの膜厚で形成する。
ここで、第1誘電体部40を成膜する際、高温成長による成膜を適用することができる。すなわち、先に形成した第1電極50は600℃程度でシンター処理を行っているため、同程度の熱処理条件まで耐熱性を備えている。したがって、第1誘電体部40の成膜は十分に高温で行うことができる。このため、第1誘電体部40は、絶縁性、カバレッジ、信頼性等に優れた高品質な膜になる。
【0060】
次に、図5(c)に表したように、オーミック特性を有する第2電極60を形成するため、第2半導体層20の上にある第1誘電体部40を除去する。そして、第1誘電体部40を除去して露出した第2半導体層20の表面に、オーミック電極となるAg/Ptの積層膜を、例えば200nmの膜厚で形成する。そして、酸素雰囲気中で約400℃、1分でシンター処理を行い、第2電極60の第1部分61を形成する。
【0061】
なお、第2電極60は、少なくとも銀またはその合金を含む。通常の金属単層膜の可視光帯域に対する反射効率は、400nm以下の紫外域では波長が短くなるほど低下する傾向にあるが、銀は370nm以上400nm以下の紫外帯域の光に対しても高い反射効率特性を有する。そのため、紫外発光の半導体発光素子で、かつ第2電極60が銀合金の場合、半導体界面側の第2電極60は銀の成分比が大きいほうが望ましい。第2電極60の膜厚は、光に対する反射効率を確保するため、100nm以上であることが好ましい。
【0062】
次に、図6(a)に表したように、第1部分61及び第1誘電体部40が露出した面全体に、接合用金属となる第2部分62として、例えばTi/Pt/Auの積層膜を、例えば800nmの膜厚で形成する。
【0063】
次に、例えばGeからなる支持基板70を用意する。支持基板70の主面には、例えば膜厚3μmのAuSn合金によるはんだ(図示せず)が設けられている。そして、第2部分62と、はんだと、を対向させて、はんだの共晶点以上の温度、例えば300℃に加熱する。これにより、支持基板70を積層構造体100の第2主面100bの側に接合する。
【0064】
そして、図6(b)に表したように、積層構造体100に対して成長用基板80の側から、例えばYVO4の固体レーザの三倍高調波(355nm)または四倍高調波(266nm)のレーザ光LSRを照射する。レーザ光LSRは、GaNバッファ層(例えば、上記のノンドープGaNバッファ層)のGaNの禁制帯幅に基づく禁制帯幅波長よりも短い波長を有する。すなわち、レーザ光LSRは、GaNの禁制帯幅よりも高いエネルギーを有する。
【0065】
このレーザ光LSRは、GaNバッファ層(ノンドープGaNバッファ層)のうち、単結晶AlNバッファ層(この例では第2AlNバッファ層)の側の領域において効率的に吸収される。これにより、GaNバッファ層のうち単結晶AlNバッファ層の側のGaNは、発熱により分解する。
【0066】
ここで、成長用基板80であるサファイア基板上の結晶層と支持基板70とを接着させる時や、レーザ光LSRでGaNを分解して成長用基板80であるサファイア基板を剥離する時は、支持基板70とサファイアまたはGaNとの熱膨張係数差、局所的に加熱されることによる熱、GaNが分解することにより発生する生成物、などにより、結晶に結晶欠陥やダメージが入り易い。結晶欠陥やダメージが入ると、そこから第2電極60のAgが拡散し、結晶内部でのリークや結晶欠陥の加速度的な増加を招く。
本実施形態によれば、単結晶AlNバッファ層を用いることで高品質な半導体層を形成することができるため、結晶に対するダメージが大幅に軽減される。また、GaNをレーザ光LSRで分解する際、GaNのすぐそばにある高熱伝導特性を示すAlNバッファ層に熱が拡散するため、局所的な加熱による熱ダメージを受けにくい。
【0067】
そして、塩酸処理などによって、分解されたGaNを除去し、成長用基板80を積層構造体100から剥離する。これにより、成長用基板80と、積層構造体100と、が分離する。
【0068】
次に、露出した積層構造体100の第1主面100aへの凹凸の形成およびパッド電極55の形成を行う。
先ず、図7(a)に表したように、積層構造体100の一部をドライエッチングで除去し、第1電極50の一部(引き出し部53)を露出させる。次に、積層構造体100の第1主面100aの全面に第2誘電体部45を形成し、一部に開口を設ける。第2誘電体部45としては、例えばSiO2が用いられる。第2誘電体部45の膜厚は、例えば800nmである。第2誘電体部45の開口からは、例えばノンドープGaNバッファ層の表面が露出する。
【0069】
次に、図7(b)に表したように、開口が設けられた第2誘電体部45をマスクとして、ノンドープGaNバッファ層の表面を、例えばKOH溶液によるアルカリエッチングにより加工して、凹凸部12pを形成する。エッチング条件としては、例えば1モル(mol)/リットル(L)のKOH溶液を80℃に加熱して、20分間のエッチングを行う。
【0070】
なお、凹凸部12pはn形コンタクト層に形成しても構わない。ただし、n形コンタクト層は、n側電極(第1電極50)との低抵抗のオーミックコンタクトを形成するために、キャリア濃度(例えば不純物濃度)は高く設定される。このn形コンタクト層に凹凸や平坦部を形成する場合、表面荒れや不純物析出が生じ、その結果として、光取り出し効率を低下させる要因となる場合がある。一方、GaNバッファ層の不純物濃度はn形コンタクト層に比べて低いため、表面荒れや不純物析出が生じることが少ない点において有利である。
【0071】
ここで、凹凸部12pの形成方法は、上記のようなウェットエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよい。KOH溶液などによるアルカリエッチングでは、GaN結晶の面方位(主に{10−1−1})に沿って異方性エッチングされ、その結果として六角錐の構造が形成される。また、エッチング温度、エッチング時間、別の物質を添加することで調整される水素イオン指数(pH)、濃度、紫外線(UV)光及びUVレーザ照射の有無などで、エッチングレート、六角錐の大きさ及び密度が大きく変化する。
【0072】
一般的に、エッチング量(エッチング前の表面から、エッチング後にできた凹凸部12pの最も深い所までの深さ)が大きいほど、凹凸部12pは大きく、かつ、密に形成される。GaNをドライエッチングで加工する場合、N面は、Ga面とは異なり、結晶方位や転移の影響を受けやすく、異方性エッチングされやすい。c面サファイア基板上に成長させたGaNの表面は、通常Ga面であり、本実施形態のようにサファイア基板を除去することで露出したGaNの表面はN面となっている。したがって、ドライエッチングによる異方性エッチングによって凹凸部12pを形成することは容易である。また、マスクを用いたドライエッチングにより凹凸部12pを形成してもよい。これにより、設計どおりの凹凸部12pを形成できるため、光取り出し効率を高めやすい。
【0073】
凹凸部12pは、例えば入射した発光光を有効に取り出すため、または入射角度を変えるために設けられる。このため、その大きさは結晶層内における発光光の波長以上であることが好ましい。凹凸部12pが発光光の波長よりも小さいと、凹凸部12pに入射した発光光は凹凸部12pの界面で散乱や回折等の波動光学で説明される挙動を示す。これにより、本来透過していた発光光も一部取り出されなくなる。また、凹凸部12pが発光光の波長よりも十分小さいと、凹凸部12pは連続的に屈折率が変化する層として見なされる。このため、凹凸のない平坦な面と同様になり、光取り出し効率は改善されない。
【0074】
本実施形態で作製した発光光の波長390nmの半導体発光素子(結晶層内の発光波長は約155nm)を用いた実験結果では、凹凸部12pの大きさが大きくなるほど光出力が増加する傾向を示した。この増加傾向は、凹凸部12pの大きさが3μm程度になるまで緩やかに続いた。このことから、凹凸部12pの大きさは、好ましくは結晶層内の発光波長の2倍以上、さらに好ましくは10倍以上であるほうがよいことが分かった。
【0075】
次に、引き出し部53を被覆している第2誘電体部45の一部を除去し、その露出した引き出し部53の一部にパッド電極55を形成する。パッド電極55としては、例えばTi/Pt/Auの積層膜が用いられる。パッド電極55の膜厚は、例えば800nmである。このパッド電極55にはボンディングワイヤが接続される。
【0076】
そして、支持基板70を研削などによって100μm程度の厚さまで削り、削った面に裏面電極85として、例えばTi/Pt/Auの積層膜を例えば800nmの膜厚で形成する。この裏面電極85は、ヒートシンクやパッケージに接続される。
その後、必要に応じて劈開またはダイヤモンドブレード等により、支持基板70を切断する。これにより、半導体発光素子110が完成する。
【0077】
なお、上記の製造方法では、成長用基板80としてサファイア基板を用いる例を示したが、Si基板を成長用基板80として用いてもよい。また、Si基板を成長用基板80として用いた場合、成長用基板80を除去する処理は、レーザ光LSRの照射ではなく、ある程度の厚さまで研削したのち、残りのSi基板をエッチングによって除去すればよい。
【0078】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図9は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する表面側の模式的平面図である。
図10は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する裏面側の模式的平面図である。
ここで、図8は、図9のB−B’線における模式的断面図を示している。
【0079】
図8に表したように、第2の実施形態に係る半導体発光素子120は、積層構造体100と、第1電極50と、第2電極60と、第1誘電体部40と、を備える。また、半導体発光素子120は、第1電極50と導通するパッド電極57を有する。パッド電極57は、第2電極60の第2部分62と並置される。
【0080】
パッド電極57と、第1電極50の接触部51と、のあいだには、ビア部56が設けられている。ビア部56は、Z軸方向に沿って延在する。例えば、ビア部56は、第2電極60の第2部分62をZ軸方向に貫通するホールHの内側に設けられる。ホールH内において、ビア部56は、埋め込み絶縁体部43を介して設けられている。埋め込み絶縁体部43には、例えば誘電体(SiO2等)が用いられる。埋め込み絶縁体部43には、樹脂を用いてもよい。このビア部56によって、パッド電極57は、接触部51と電気的に接続される。ビア部56は、第1電極50に含まれていてもよい。
【0081】
半導体発光素子120において、第2電極60の第2部分62は、例えばめっき金属によって形成される。すなわち、第2部分62をめっきによって形成する。めっき金属には、例えばCuが用いられる。めっきによって第2部分62を例えば200μm程度の厚さに形成する。これにより、第2部分62に十分な強度を持たせて、支持基板70(図1参照)として利用することができるようになる。
なお、第2電極60は、第1部分61及び第2部分62をめっきによって形成してもよい。
【0082】
このように、半導体発光素子120では、パッド電極57が、第2電極60の第2部分62と並置されている。すなわち、半導体発光素子120では、第1電極50及び第2電極60の両方が、積層構造体100の光取り出し面(第1主面100a)とは反対側(第2主面100b側)に配置されている。光取り出し面には第1電極50及び第2電極60は配置されていない(図8及び図9参照)。したがって、光取り出し面の側に電極が配置される発光素子に比べて、光取り出し面の面積を拡げることができる。これにより、実効的な電流密度が下がり、発光効率が向上する。
【0083】
また、パッド電極57は、ビア部56を介して接触部51と導通しているため、半導体発光素子120の裏面側(第2主面100b側)において、パッド電極57を自由にレイアウトすることができる。図10に表したように、パッド電極57は、裏面側の面内における複数箇所に設けてもよい。また、パッド電極57を裏面側の隅部(少なくとも1つの隅部)に設けてもよい。また、パッド電極57を裏面側の中央部に設けてもよい。半導体発光素子120では、第1電極50及び第2電極60のあいだの電流の流れ方を考慮して、パッド電極57のレイアウトを容易に設定することができる。
【0084】
図11は、実施形態に係る半導体発光素子を用いた半導体発光装置の構成を例示する模式的断面図である。
本具体例では、第1の実施形態に係る半導体発光素子110が用いられているが、半導体発光装置には他の実施形態に係る半導体発光素子120を用いることもできる。
半導体発光装置500は、半導体発光素子110と、蛍光体と、を組み合わせた白色LEDである。すなわち、本実施形態に係る半導体発光装置500は、半導体発光素子110と、半導体発光素子110から放出された光を吸収し、前記光とは異なる波長の光を放出する蛍光体と、を備える。
【0085】
図11に表したように、本実施形態に係る半導体発光装置500では、セラミック等からなる容器72の内面に反射膜73が設けられている。反射膜73は、容器72の内側面と底面に分離して設けられている。反射膜73は、例えばアルミニウムからなるものである。このうち容器72の底部に設けられた反射膜73の上に、半導体発光素子110がサブマウント74を介して設置されている。
【0086】
半導体発光素子110は、第1主面100a側を上に向け、例えば、低温はんだを用いて、サブマウント74に支持基板70の裏面が固定されている。これら半導体発光素子110、サブマウント74及び反射膜73の固定には、接着剤による接着を用いることも可能である。
【0087】
サブマウント74の半導体発光素子110側の表面には電極75が設けられている。半導体発光素子110の支持基板70は、裏面電極85を介して電極75の上にマウントされる。これにより、電極75は、裏面電極85及び支持基板70を介して第2電極60と導通する。パッド電極55は、容器72側に設けられた図示しない電極に対してボンディングワイヤ76により接続されている。これらの接続は、内側面の反射膜73と、底面の反射膜73と、の間の部分において行われている。
【0088】
また、半導体発光素子110及びボンディングワイヤ76を覆うように赤色蛍光体を含む第1蛍光体層81が設けられている。また、この第1蛍光体層81の上には青色、緑色または黄色の蛍光体を含む第2蛍光体層82が形成されている。この蛍光体層の上にはシリコーン樹脂等の蓋部77が設けられている。
【0089】
第1蛍光体層81は、樹脂及びこの樹脂中に分散された赤色蛍光体を含む。
赤色蛍光体としては、例えばY2O3、YVO4、Y2(P,V)O4を母材として用いることができ、これに3価のEu(Eu3+)を付活物質として含ませる。すなわち、Y2O3:Eu3+、YVO4:Eu3+等を赤色蛍光体として用いることができる。Eu3+の濃度は、モル濃度で1%〜10%とすることができる。
【0090】
赤色蛍光体の母材としては、Y2O3、YVO4の他に、LaOSやY2(P, V)O4等を用いることができる。また、Eu3+の他にMn4+等を利用することもできる。特に、YVO4母体に、3価のEuと共に少量のBiを添加することにより、390nmの吸収が増大するので、さらに発光効率を高くすることができる。また、樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂を用いることができる。
【0091】
また、第2蛍光体層82は、樹脂、並びに、この樹脂中に分散された青色、緑色及び黄色の少なくともいずれかの蛍光体、を含む。例えば、青色蛍光体と緑色蛍光体を組み合わせた蛍光体を用いても良く、また、青色蛍光体と黄色蛍光体とを組み合わせた蛍光体を用いても良く、青色蛍光体、緑色蛍光体及び黄色蛍光体を組み合わせた蛍光体を用いても良い。
【0092】
青色蛍光体としては、例えば(Sr,Ca)10(PO4)6Cl2:Eu2+やBaMg2Al16O27:Eu2+を用いることができる。
緑色蛍光体としては、例えば3価のTbを発光中心とするY2SiO5:Ce3+,Tb3+を用いることができる。この場合、CeイオンからTbイオンへエネルギーが伝達されることにより励起効率が向上する。緑色蛍光体としては、例えば、Sr4Al14O25:Eu2+を用いることができる。
【0093】
黄色蛍光体としては、例えばY3Al5:Ce3+を用いることができる。
また、樹脂として、例えば、シリコーン樹脂を用いることができる。特に、3価のTbは、視感度が最大となる550nm付近に鋭い発光を示すので、3価のEuの鋭い赤色発光と組み合わせると発光効率が著しく向上する。
【0094】
本実施形態に係る半導体発光装置500によれば、半導体発光素子110から発生した例えば波長390nmの紫外光は、半導体発光素子110の上方および側方に放出される。さらに、反射膜73で反射した紫外光によって、各蛍光体層に含まれる上記蛍光体は効率良く励起される。例えば、第1蛍光体層81に含まれる3価のEuを発光中心とする上記蛍光体は、620nm付近の波長分布の狭い光に変換される。これにより、赤色可視光を効率良く得ることが可能である。
【0095】
また、第2蛍光体層82に含まれる青色、緑色、黄色の蛍光体が励起されることによって、青色、緑色、黄色の可視光を効率良く得ることができる。さらに、これらの混色として、白色光やその他様々な色の光を、高効率でかつ演色性良く得ることが可能である。
半導体発光装置500によれば、高効率で所望を色の光を得ることができる。
【0096】
以上説明したように、実施形態に係る半導体発光素子によれば、放熱性を高めて光取り出し効率を改善することができる。
【0097】
なお、上記に本実施の形態およびその変形例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施の形態またはその変形例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものもや、各実施の形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
10…第1半導体層、12p…凹凸部、20…第2半導体層、30…発光層、40…第1誘電体部、43…埋め込み絶縁体部、45…第2誘電体部、50…第1電極、51…接触部、53…引き出し部、55…パッド電極、60…第2電極、61…第1部分、62…第2部分、63…引き出し部、65…パッド電極、70…支持基板、70a…縁部、80…成長用基板、85…裏面電極、100…積層構造体、100a…第1主面、100b…第2主面、100t…凹部、110,120,190…半導体発光素子
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)などの半導体発光素子として、例えばサファイア基板上に形成した結晶層を導電性基板に接合し、サファイア基板を除去する構造がある。この構造では、光取り出し効率を高めるため、サファイア基板を除去することで露出した結晶層の表面に、凹凸加工を施している。また、光取り出し面となる結晶層の表面には電極を形成せず、サファイア基板を除去した面とは逆側の結晶面にp側電極及びn側電極を形成する構造もある。このような半導体発光素子においては、放熱性を高め、さらなる光取り出し効率の改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】A. Laubsch, M. Sabathil, J. Baur, M. Peter, and B. Hahn, IEEE Transactions on electron devices, vol. 57, no. 1, p79-87 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、放熱性を高めて光取り出し効率を改善することができる半導体発光素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体発光素子は、積層構造体と、第1電極と、第2電極と、誘電体部と、を備える。
積層構造体は、第1導電形の第1半導体層と、第1半導体層の一部に対向する第2導電形の第2半導体層と、第1半導体層の前記一部と第2半導体層とのあいだに設けられた発光層と、を含む。積層構造体は、第1半導体層側の第1主面と、第2半導体層側の第2主面と、を有する。
第1電極は、第2主面の側で第1半導体層と接する接触部を有する。
第2電極は、第2主面で第2半導体層と接する第1部分と、第1部分と電気的に接続され、第1半導体層から第2半導体層へ向かう積層方向にみたときに、接触部と重なる部分を有する第2部分と、を有する。
誘電体部は、接触部と、第2部分と、のあいだに設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図2】半導体発光素子を示す模式的平面図である。
【図3】凹凸部を示す部分拡大図である。
【図4】参考例の半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図5】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図6】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図7】半導体発光素子の製造方法を示す模式的断面図である。
【図8】半導体発光素子を示す模式的断面図である。
【図9】半導体発光素子を示す模式的平面図である。
【図10】半導体発光素子を示す模式的平面図である。
【図11】半導体発光装置を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図に基づき説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比係数などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比係数が異なって表される場合もある。
また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図2は、第1の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的平面図である。
ここで、図1は、図2のA−A’線における模式的断面図を示している。
【0009】
図1に表したように、第1の実施形態に係る半導体発光素子110は、積層構造体100と、第1電極50と、第2電極60と、第1誘電体部40と、を備える。
【0010】
積層構造体100は、第1導電形の第1半導体層10と、第1半導体層10の一部と対向する第2導電形の第2半導体層20と、第1半導体層10の一部と第2半導体層20とのあいだに設けられた発光層30と、を有する。
【0011】
第1導電形は、例えばn形である。第2導電形は、例えばp形である。なお、第1導電形はp形、第2導電形はn形であってもよい。本実施形態では、第1導電形がn形、第2導電形がp形である場合を例として説明する。
【0012】
積層構造体100は、第1半導体層10側の第1主面100aと、第2半導体層20側の第2主面100bと、有する。また、第1半導体層10の一部は、第2主面100b側に露出している。この一部は第1半導体層10の露出部分10eである。
【0013】
第1電極50は、露出部分10eで第1半導体層10と接する接触部51を有する。第2電極60は、第2主面100bで第2半導体層20と接する。
【0014】
第2電極60は、第2主面100bで第2半導体層20と接する第1部分61と、第1部分と電気的に接続され、第1半導体層10から第2半導体層20へ向かう積層方向にみたときに、接触部51と重なる部分を有する第2部分62と、を有する。
ここで、本実施形態では、第1半導体層10と第2半導体層20とをむすぶ方向をZ軸方向、Z軸方向と直交する方向のうち1つをX軸方向、Z軸方向及びX軸方向と直交する方向をY軸方向ということにする。積層方向は、Z軸方向である。
【0015】
第1誘電体部40は、接触部51と、第2部分62と、のあいだに設けられる。
すなわち、第2電極60は、第1電極50と第1誘電体部40を介して電気的に絶縁されている。実施形態において、第1誘電体部40は、第1電極50の接触部51の周囲のみに設けられている。このため、積層構造体100の第2主面100b側において、第2電極60の第1部分61は、第1誘電体部40が設けられていない比較的大きな面積で第2半導体層20と接触することになる。したがって、積層構造体100で発生した熱は、第2電極60から外部へ効率良く放出されることになる。
【0016】
次に、本実施形態に係る半導体発光素子110の具体例について説明する。
【0017】
本実施形態に係る半導体発光素子110において、積層構造体100に含まれる第1半導体層10、第2半導体層20及び発光層30は、例えば窒化物半導体である。第1半導体層10、第2半導体層20及び発光層30は、サファイア等の成長用基板の上に、例えば有機金属気相成長法を用いて積層される。
【0018】
なお、本明細書において「窒化物半導体」とは、BxInyAlzGa1−x−y−zN(0≦x≦1,0≦y≦1,0≦z≦1,x+y+z≦1)なる化学式において組成比x、y及びzをそれぞれの範囲内で変化させた全ての組成の半導体を含むものとする。またさらに、上記化学式において、N(窒素)以外のV族元素もさらに含むもの、導電形などの各種の物性を制御するために添加される各種の元素をさらに含むもの、及び、意図せずに含まれる各種の元素をさらに含むものも、「窒化物半導体」に含まれるものとする。
【0019】
積層構造体100には、第2主面100bから第1半導体層10に達する凹部100tが設けられている。この凹部100tの底面には、第1半導体層10の露出部分10eが含まれる。第1電極50の接触部51は、露出部分10eにおいて第1半導体層10と接触して、第1半導体層10との導通を得ている。
【0020】
接触部51には、第1半導体層10との良好なコンタクトを得ることができる材料が用いられる。接触部51としては、例えばAl/Ni/Auの積層膜が用いられる。積層膜は、接触面50c側からAl/Ni/Auの順に積層され、例えば300ナノメートル(nm)の厚さで形成される。
【0021】
また、第1電極50は、積層構造体100の外側に引き出された引き出し部53を含む。引き出し部53は接触部51と導通しており、接触部51からX−Y平面に沿って積層構造体100の外側まで延出するように設けられる。引き出し部53は、接触部51と一体で形成されていてもよい。
【0022】
積層構造体100の側面は、第2誘電体部45で覆われている。積層構造体100の外側において、第2誘電体部45の開口部から引き出し部53の一部が露出している。この露出している部分にパッド電極55が設けられている。
【0023】
パッド電極55には、図示しないボンディングワイヤ等の配線部材が接続され、外部と第1半導体層10と、を電気的に導通させることができる。
【0024】
第2電極60の第1部分61は、第2主面100bに沿って第2半導体層20と接するように設けられている。第1部分61には、発光層30から放射された発光光を効率良く反射することができる材料が用いられる。第1部分61としては、例えばAg/Ptの積層膜が用いられる。積層膜は、第2主面100b側からAg/Ptの順に積層され、例えば200nmの厚さで形成される。
【0025】
実施形態に係る半導体発光素子110において、第2電極60の第2部分61と導通する支持基板70を備えている。第2電極60の第2部分61は、例えば接合用金属部を含む。なお、第2部分61の全体が接合用金属部であってもよい。
【0026】
接合用金属部には、後述する支持基板70と良好な接続を得ることができる材料が用いられる。接合用金属部としては、例えばTi/Auの積層膜が用いられる。積層膜は、第2主面100b側からTi/Auの順に積層され、例えば800nmの厚さで形成される。
【0027】
支持基板70は、この接合用金属部と接合されている。支持基板70は、少なくとも導電性のある材料からなる。支持基板70の材料は、特に限定されるものではないが、例えば、Si、Geなどの半導体基板、CuW、Cuなどの金属板や厚膜メッキ層が用いられる。また、基板全体で導電性を有する必要はなく、金属配線がなされている樹脂などでもよい。
【0028】
実施形態では、支持基板70の一例としてGeを用いる。支持基板70は、例えばAuSu合金によるはんだ(図示せず)を介して接合用金属部と接合される。
支持基板70には裏面電極85が設けられている。つまり、第2半導体層20は、第2電極60、支持基板70及び裏面電極85と導通する。これにより、半導体発光素子110を図示しない実装用基板等に実装することで、実装用基板等に設けられた導通部分と、第2半導体層20と、の導通を得ることができる。
【0029】
支持基板70は、Z軸方向にみて積層構造体100の外側の縁部70aを有する。第1電極50の引き出し部53は、接触部51から縁部70aまで引き出されている。
【0030】
半導体発光素子110において、第2電極60は、p側電極である。したがって、第2電極60と導通する支持基板70及び裏面電極85によって、p側電極(第2電極60)と外部との電気的な導通を得る。
【0031】
また、半導体発光素子110において、第1電極50は、n側電極である。したがって、パッド電極55にボンディングワイヤ等の配線部材を接続することにより、n側電極(第1電極50)と外部との電気的な導通を得る。
【0032】
半導体発光素子110において、積層構造体100の第1主面100a(第1半導体層10の表面)には、凹凸部12pが設けられていても良い。凹凸部12pは、第1主面100aの面内に設けられた複数の突起によって構成される。
【0033】
図3は、凹凸部を示す部分拡大図である。
図3(a)は、凹凸部の模式的断面図である。図3(b)は、1つの凸部の模式的平面図である。
図3(a)に表したように、凹凸部12pには、複数の突起が設けられている。突起のX軸方向に沿った最大幅ΔWは、発光層30から放射される発光光の第1半導体層10中のピーク波長よりも長い。
【0034】
これにより、第1半導体層10と外界との界面における発光光の反射はランバート反射と見なすことができ、光取り出し効率の向上効果がより高くなる。ここで、ピーク波長とは、発光層30から放射される発光光のうち、最も強度の高い光の波長である。ピーク波長は、発光光のスペクトル分布のピーク値に対応する波長である。ノイズレベルではない極大値が2つ以上あるスペクトルの場合、そのどちらのピーク値の波長を選んでも良い。
【0035】
図3(b)に表したように、例えば、第1半導体層10として窒化物半導体を用いた場合、Z軸方向にみたときの突起の平面形状が略六角形となるときは、最大幅ΔWは、六角形の対角する頂点間の幅となる。
【0036】
一例として、第1半導体層10が窒化ガリウム、発光層30の発光光のピーク波長が390nmの場合、第1半導体層10内での発光光のピーク波長は155nmとなる。この場合、凹凸部12pの最大幅ΔWが155nmを超えて、3マイクロメートル(μm)程度に達するまで光取り出し効率の向上効果を得ることができる。このことから、凹凸部12pの最大幅ΔWは、好ましくは発光光のピーク波長の2倍以上、さらに好ましくは10倍以上であるとよい。
【0037】
このような半導体発光素子110において、発光層30から放出された光は、積層構造体100の第2主面100bの側よりも第1主面100aの側から多く外部へ放出される。つまり、第1主面100aが光取り出し面になる。
【0038】
半導体発光素子110では、積層構造体100の第1主面100a側にn側電極(第1電極50)及びp側電極(第2電極60)のいずれも配置されない。したがって、第1主面100a側に電極が配置された場合に比べて、第1主面100a側での光取り出し効率が向上する。さらに、主な発熱源である発光層30の直下のp側電極(第2電極60)が、熱伝導率の高い金属層や支持基板70に接続される。支持基板70に例えばヒートシンクを接続すると、熱抵抗を低くすることができ、良好な放熱性を得られる。これに加えて、半導体発光素子110のp側電極(第2電極60)の第2部分62は、積層構造体100の第2主面100bの側に延在して設けられている。これにより、熱の広がりが良好になって、半導体発光素子110全体の熱抵抗をより低くすることができる。
【0039】
図4は、参考例に係る半導体発光素子の構造を例示する模式的断面図である。
図4に表したように、参考例に係る半導体発光素子190において、第1電極50は、接触部51と、第3部分54と、を含んでいる。第3部分54は、接触部51と導通しており、第2主面100bに沿って設けられている。また、Z軸方向に沿って、第3部分と、第2電極60の第1部分61と、のあいだには、第3誘電体部41が設けられている。
【0040】
第2電極60は、第1部分61と、引き出し部63と、を含む。引き出し部63は、第1部分61と導通し、第1部分61から積層構造体100の外側まで引き出されている。積層構造体100の外側において、第2誘電体部45の開口部から引き出し部63の一部が露出している。この露出している部分にパッド電極65が設けられている。
【0041】
このような半導体発光素子190において、第3誘電体部41は、第2電極60の第1部分61と、第1電極50の第3部分54と、のあいだに設けられている。すなわち、第3誘電体部41は、積層構造体100の第2主面100bの側において、第1電極50の接触部51以外の全体を覆うように形成されている。したがって、主な発熱源である発光層30の直下が第3誘電体部41で覆われていることになる。半導体発光素子190は、金属に比べて熱伝導率の低い第3誘電体部41を介してヒートシンク等へ接続されることから、熱抵抗が高くなり、十分な放熱性を得られない。さらに、第3誘電体部41は絶縁性を高めるため、厚く形成する必要があり、絶縁性と放熱性とがトレードオフの関係になっている。
【0042】
一方、本実施形態に係る半導体発光素子110では、発光層30の直下には誘電体が設けられていない。発光層30の直下は、第2電極60であり、発光層30で発生した熱は、第2電極60から支持基板70側へ拡がって容易に外部へ放出されることになる。したがって、絶縁性を高めるために第1誘電体部40を厚く形成しても、放熱性を損なうことはない。半導体発光素子110では、絶縁性と放熱性との両立を図ることができる。
【0043】
次に、半導体発光素子110の製造方法の一例について説明する。
図5〜図7は、半導体発光素子の製造方法の一例を順に説明する模式的断面図である。
先ず、図5(a)に表したように、サファイア等の成長用基板80の上に、第1半導体層10、発光層30及び第2半導体層20を順に結晶成長させる。これにより、成長用基板80の上に、積層構造体100を形成する。
【0044】
積層構造体100は、例えば有機金属気相成長法を用いて形成される。なお、積層構造体100の形成方法は、有機金属気相成長法のほか、分子線エピタキシャル成長法等の公知の技術を用いることができる。
【0045】
一例として、積層構造体100は、次のように形成される。
先ず、表面がサファイアc面からなる成長用基板80の上に、バッファ層として、高炭素濃度の第1AlNバッファ層(例えば、炭素濃度が3×1018cm−3以上、5×1020cm−3以下で、例えば、厚さが3nm以上、20nm以下)、高純度の第2AlNバッファ層(例えば、炭素濃度が1×1016cm−3以上3×1018cm−3以下で、厚さが2μm)、及びノンドープGaNバッファ層(例えば、厚さが2μm)が、この順に形成される。上記の第1AlNバッファ層、及び、第2AlNバッファ層は、単結晶の窒化アルミニウム層である。第1及び第2AlNバッファ層として単結晶の窒化アルミニウム層を用いることで、後述する結晶成長において高品質な半導体層を形成することができ、結晶に対するダメージが大幅に軽減される。
【0046】
次に、その上に、Siドープn形GaNコンタクト層(例えば、Si濃度が1×1018cm−3以上5×1019cm−3以下で、厚さが6μm)、及びSiドープn形Al0.10Ga0.90Nクラッド層(例えば、Si濃度が1×1018cm−3で、厚さが0.02μm)が、この順番で順次形成される。Siドープn形GaNコンタクト層、及びSiドープn形Al0.10Ga0.90Nクラッド層は、第1半導体層10である。なお、便宜上、上記GaNバッファ層の全部または一部を第1半導体層10に含めてもよい。
【0047】
ここで、成長用基板80上に形成されるバッファ層としては、上記AlNに限定されない。例えば、バッファ層に低温成長のAlxGa1−xN(0≦x≦1)薄膜を用いても良い。
【0048】
次に、その上に、発光層30として、Siドープn形Al0.11Ga0.89Nバリア層と、GaInN井戸層と、が交互に3周期積層され、さらに、多重量子井戸の最終Al0.11Ga0.89Nバリア層がさらに積層される。Siドープn形Al0.11Ga0.89Nバリア層においては、例えばSi濃度が1.1×1019cm−3以上1.5×1019cm−3以下とされる。最終Al0.11Ga0.89Nバリア層においては、例えばSi濃度が1.1×1019cm−3以上1.5×1019cm−3以下で、例えば厚さが0.01μmとされる。このような多重量子井戸構造の厚さは、例えば0.075μmとされる。この後、Siドープn形Al0.11Ga0.89N層(例えば、Si濃度が0.8×1019cm−3以上1.0×1019cm−3以下で、例えば、厚さがを0.01μm)を形成する。なお、発光層30における発光光の波長は、例えば370nm以上、480nm以下、または370nm以上、400nm以下である。
【0049】
さらに、第2半導体層20として、ノンドープAl0.11Ga0.89Nスペーサ層(例えば厚さが0.02μm)、Mgドープp形Al0.28Ga0.72Nクラッド層(例えば、Mg濃度が1×1019cm−3で、例えば、厚さが0.02μm)、Mgドープp形GaNコンタクト層(例えば、Mg濃度が1×1019cm−3で、厚さが0.4μm)、及び、高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層(例えば、Mg濃度が5×1019cm−3で、例えば、厚さが0.02μm)が、この順で順次形成される。
なお、上記の組成、組成比、不純物の種類、不純物濃度及び厚さは一例であり、種々の変形が可能である。
【0050】
なお、高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層のMg濃度を約1×1020cm−3と高めに設定することで、第2電極60とのオーミック特性を向上させることができる。ただし、半導体発光ダイオードの場合、半導体レーザダイオードとは異なり、高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層と発光層30との距離が近いため、Mg拡散による特性の劣化が懸念される。そこで、第2電極60と高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層との接触面積が広く、動作時の電流密度が低いことを利用して、電気特性を大きく損ねることなく高濃度Mgドープp形GaNコンタクト層のMg濃度を約1×1019cm−3に抑えることで、Mgの拡散を防ぐことができ、発光特性を改善させることができる。
【0051】
また、高炭素濃度の第1AlNバッファ層は成長用基板80との結晶型の差異を緩和する働きをし、特に螺旋転位を低減する。また、高純度第2AlNバッファ層の表面は、原子レベルで平坦化される。そのため、この上に成長するノンドープGaNバッファ層の結晶欠陥が低減される。なお、結晶欠陥を十分に低減するには、第2AlNバッファ層の膜厚を、1μmよりも厚くすることが好ましい。また、歪みによる反りを防止のためには、膜厚を、4μm以下にすることが望ましい。高純度第2AlNバッファ層は、AlNに限定されず、AlxGa1−xN(0.8≦x≦1)でもよく、成長用基板80の反りを補償することができる。
【0052】
また、ノンドープGaNバッファ層は、高純度第2AlNバッファ層の上で、3次元島状に成長する。これにより、ノンドープGaNバッファ層は、結晶欠陥低減の役割を果たす。成長表面の平坦化のためには、ノンドープGaNバッファ層の平均膜厚を2μm以上にすることが望ましい。再現性とそり低減の観点からノンドープGaNバッファ層の総膜厚は、2μm以上、10μm以下が好ましい。
これらのバッファ層を採用することで、低温成長AlNバッファ層を採用する場合と比較して、結晶欠陥を約1/10に低減することができる。この技術によって、n形GaNコンタクト層への高濃度Siドーピングや、紫外帯域発光でありながらも高効率な半導体発光素子が製造される。また、ノンドープGaNバッファ層における結晶欠陥を低減することにより、ノンドープGaNバッファ層での光の吸収も抑制される。
【0053】
なお、量子井戸層の発光波長は、特に限定されるものではないが、例えば、GaInNの窒化ガリウム系化合物半導体を用いる場合は375nmから700nmの発光が得られる。
また、サファイア基板上のバッファ層は、特に限定されるものではなく、低温成長のAlxGa1−xN(0≦x≦1)薄膜を用いても良い。
【0054】
次に、図5(b)に表したように、積層構造体100の一部に凹部100tを形成する。凹部100tは、積層構造体100の第2主面100bから第1半導体層10にまで達する。これにより、凹部100tの底部に第1半導体層10が露出する(露出部分10e)。
【0055】
凹部100tを形成するには、積層構造体100の第2主面100b上に図示しないマスクを形成し、例えばドライエッチングを行う。すなわち、マスクには、凹部100tを形成する部分に開口が設けられていて、エッチングによって積層構造体100が第2主面100bから第1半導体層10まで除去される。これにより、凹部100tが形成される。凹部100tの内側面の角度は、特に限定されるものではないが、発光層30からの発光光が最大強度を持つ30度の光を進行方向とは逆方向に反射させる角度として、60度以上が好ましい。凹部100tの深さは、特に限定されるものではないが、深いほど、積層構造体100内を横方向に伝播する発光光の進行方向を変えることで光取り出し効率を高めやすい。一方、深すぎると、後の工程で支持基板70を接合する際に、凹部100tをはんだで埋めにくくなる。また、凹部100tをノンドープGaNバッファ層に到達するまで深くすると、Siドープn形GaNコンタクト層に第1電極50を形成することができなくなる。したがって、凹部100tの深さは、例えば0.6μm以上、6.6μm以下、好ましくは1.0μm以上、3.0μm以下である。
【0056】
次に、図5(b)に表したように、第1半導体層10と接する第1電極50を形成する。第1電極50としては、先ず、凹部100tから露出した第1半導体層10の露出面100eに、オーミック電極となるTi/Al/Ni/Auの積層膜を、例えば300nmの膜厚で形成し、窒素雰囲気中で600℃、5分でシンター処理を行う。
【0057】
次に、オーミック電極の上に、電流拡散用及びパッド電極55までの引き出し部53のための接合金属用、並びに絶縁層への接着金属として、例えば、Ti/Au/Tiの積層膜を、例えば1200nmの膜厚で形成する。
【0058】
なお、第1電極50の材料は上記に限定されない。例えば、Alを第1層とすることで、n形コンタクト層と良好なオーミック特性および低コンタクト特性を得られつつ、反射電極にもなるため、光取り出し効率や第1電極50の設計自由度が向上する。Alは耐環境性が低いため、例えばSiをわずかに入れたAl合金を採用することで、信頼性や密着性を向上させることができる。
【0059】
次に、第1電極50及び凹部100tを覆うように、第1誘電体部40を形成する。第1誘電体部40として、例えばSiO2を800nmの膜厚で形成する。
ここで、第1誘電体部40を成膜する際、高温成長による成膜を適用することができる。すなわち、先に形成した第1電極50は600℃程度でシンター処理を行っているため、同程度の熱処理条件まで耐熱性を備えている。したがって、第1誘電体部40の成膜は十分に高温で行うことができる。このため、第1誘電体部40は、絶縁性、カバレッジ、信頼性等に優れた高品質な膜になる。
【0060】
次に、図5(c)に表したように、オーミック特性を有する第2電極60を形成するため、第2半導体層20の上にある第1誘電体部40を除去する。そして、第1誘電体部40を除去して露出した第2半導体層20の表面に、オーミック電極となるAg/Ptの積層膜を、例えば200nmの膜厚で形成する。そして、酸素雰囲気中で約400℃、1分でシンター処理を行い、第2電極60の第1部分61を形成する。
【0061】
なお、第2電極60は、少なくとも銀またはその合金を含む。通常の金属単層膜の可視光帯域に対する反射効率は、400nm以下の紫外域では波長が短くなるほど低下する傾向にあるが、銀は370nm以上400nm以下の紫外帯域の光に対しても高い反射効率特性を有する。そのため、紫外発光の半導体発光素子で、かつ第2電極60が銀合金の場合、半導体界面側の第2電極60は銀の成分比が大きいほうが望ましい。第2電極60の膜厚は、光に対する反射効率を確保するため、100nm以上であることが好ましい。
【0062】
次に、図6(a)に表したように、第1部分61及び第1誘電体部40が露出した面全体に、接合用金属となる第2部分62として、例えばTi/Pt/Auの積層膜を、例えば800nmの膜厚で形成する。
【0063】
次に、例えばGeからなる支持基板70を用意する。支持基板70の主面には、例えば膜厚3μmのAuSn合金によるはんだ(図示せず)が設けられている。そして、第2部分62と、はんだと、を対向させて、はんだの共晶点以上の温度、例えば300℃に加熱する。これにより、支持基板70を積層構造体100の第2主面100bの側に接合する。
【0064】
そして、図6(b)に表したように、積層構造体100に対して成長用基板80の側から、例えばYVO4の固体レーザの三倍高調波(355nm)または四倍高調波(266nm)のレーザ光LSRを照射する。レーザ光LSRは、GaNバッファ層(例えば、上記のノンドープGaNバッファ層)のGaNの禁制帯幅に基づく禁制帯幅波長よりも短い波長を有する。すなわち、レーザ光LSRは、GaNの禁制帯幅よりも高いエネルギーを有する。
【0065】
このレーザ光LSRは、GaNバッファ層(ノンドープGaNバッファ層)のうち、単結晶AlNバッファ層(この例では第2AlNバッファ層)の側の領域において効率的に吸収される。これにより、GaNバッファ層のうち単結晶AlNバッファ層の側のGaNは、発熱により分解する。
【0066】
ここで、成長用基板80であるサファイア基板上の結晶層と支持基板70とを接着させる時や、レーザ光LSRでGaNを分解して成長用基板80であるサファイア基板を剥離する時は、支持基板70とサファイアまたはGaNとの熱膨張係数差、局所的に加熱されることによる熱、GaNが分解することにより発生する生成物、などにより、結晶に結晶欠陥やダメージが入り易い。結晶欠陥やダメージが入ると、そこから第2電極60のAgが拡散し、結晶内部でのリークや結晶欠陥の加速度的な増加を招く。
本実施形態によれば、単結晶AlNバッファ層を用いることで高品質な半導体層を形成することができるため、結晶に対するダメージが大幅に軽減される。また、GaNをレーザ光LSRで分解する際、GaNのすぐそばにある高熱伝導特性を示すAlNバッファ層に熱が拡散するため、局所的な加熱による熱ダメージを受けにくい。
【0067】
そして、塩酸処理などによって、分解されたGaNを除去し、成長用基板80を積層構造体100から剥離する。これにより、成長用基板80と、積層構造体100と、が分離する。
【0068】
次に、露出した積層構造体100の第1主面100aへの凹凸の形成およびパッド電極55の形成を行う。
先ず、図7(a)に表したように、積層構造体100の一部をドライエッチングで除去し、第1電極50の一部(引き出し部53)を露出させる。次に、積層構造体100の第1主面100aの全面に第2誘電体部45を形成し、一部に開口を設ける。第2誘電体部45としては、例えばSiO2が用いられる。第2誘電体部45の膜厚は、例えば800nmである。第2誘電体部45の開口からは、例えばノンドープGaNバッファ層の表面が露出する。
【0069】
次に、図7(b)に表したように、開口が設けられた第2誘電体部45をマスクとして、ノンドープGaNバッファ層の表面を、例えばKOH溶液によるアルカリエッチングにより加工して、凹凸部12pを形成する。エッチング条件としては、例えば1モル(mol)/リットル(L)のKOH溶液を80℃に加熱して、20分間のエッチングを行う。
【0070】
なお、凹凸部12pはn形コンタクト層に形成しても構わない。ただし、n形コンタクト層は、n側電極(第1電極50)との低抵抗のオーミックコンタクトを形成するために、キャリア濃度(例えば不純物濃度)は高く設定される。このn形コンタクト層に凹凸や平坦部を形成する場合、表面荒れや不純物析出が生じ、その結果として、光取り出し効率を低下させる要因となる場合がある。一方、GaNバッファ層の不純物濃度はn形コンタクト層に比べて低いため、表面荒れや不純物析出が生じることが少ない点において有利である。
【0071】
ここで、凹凸部12pの形成方法は、上記のようなウェットエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよい。KOH溶液などによるアルカリエッチングでは、GaN結晶の面方位(主に{10−1−1})に沿って異方性エッチングされ、その結果として六角錐の構造が形成される。また、エッチング温度、エッチング時間、別の物質を添加することで調整される水素イオン指数(pH)、濃度、紫外線(UV)光及びUVレーザ照射の有無などで、エッチングレート、六角錐の大きさ及び密度が大きく変化する。
【0072】
一般的に、エッチング量(エッチング前の表面から、エッチング後にできた凹凸部12pの最も深い所までの深さ)が大きいほど、凹凸部12pは大きく、かつ、密に形成される。GaNをドライエッチングで加工する場合、N面は、Ga面とは異なり、結晶方位や転移の影響を受けやすく、異方性エッチングされやすい。c面サファイア基板上に成長させたGaNの表面は、通常Ga面であり、本実施形態のようにサファイア基板を除去することで露出したGaNの表面はN面となっている。したがって、ドライエッチングによる異方性エッチングによって凹凸部12pを形成することは容易である。また、マスクを用いたドライエッチングにより凹凸部12pを形成してもよい。これにより、設計どおりの凹凸部12pを形成できるため、光取り出し効率を高めやすい。
【0073】
凹凸部12pは、例えば入射した発光光を有効に取り出すため、または入射角度を変えるために設けられる。このため、その大きさは結晶層内における発光光の波長以上であることが好ましい。凹凸部12pが発光光の波長よりも小さいと、凹凸部12pに入射した発光光は凹凸部12pの界面で散乱や回折等の波動光学で説明される挙動を示す。これにより、本来透過していた発光光も一部取り出されなくなる。また、凹凸部12pが発光光の波長よりも十分小さいと、凹凸部12pは連続的に屈折率が変化する層として見なされる。このため、凹凸のない平坦な面と同様になり、光取り出し効率は改善されない。
【0074】
本実施形態で作製した発光光の波長390nmの半導体発光素子(結晶層内の発光波長は約155nm)を用いた実験結果では、凹凸部12pの大きさが大きくなるほど光出力が増加する傾向を示した。この増加傾向は、凹凸部12pの大きさが3μm程度になるまで緩やかに続いた。このことから、凹凸部12pの大きさは、好ましくは結晶層内の発光波長の2倍以上、さらに好ましくは10倍以上であるほうがよいことが分かった。
【0075】
次に、引き出し部53を被覆している第2誘電体部45の一部を除去し、その露出した引き出し部53の一部にパッド電極55を形成する。パッド電極55としては、例えばTi/Pt/Auの積層膜が用いられる。パッド電極55の膜厚は、例えば800nmである。このパッド電極55にはボンディングワイヤが接続される。
【0076】
そして、支持基板70を研削などによって100μm程度の厚さまで削り、削った面に裏面電極85として、例えばTi/Pt/Auの積層膜を例えば800nmの膜厚で形成する。この裏面電極85は、ヒートシンクやパッケージに接続される。
その後、必要に応じて劈開またはダイヤモンドブレード等により、支持基板70を切断する。これにより、半導体発光素子110が完成する。
【0077】
なお、上記の製造方法では、成長用基板80としてサファイア基板を用いる例を示したが、Si基板を成長用基板80として用いてもよい。また、Si基板を成長用基板80として用いた場合、成長用基板80を除去する処理は、レーザ光LSRの照射ではなく、ある程度の厚さまで研削したのち、残りのSi基板をエッチングによって除去すればよい。
【0078】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する模式的断面図である。
図9は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する表面側の模式的平面図である。
図10は、第2の実施形態に係る半導体発光素子の構成を例示する裏面側の模式的平面図である。
ここで、図8は、図9のB−B’線における模式的断面図を示している。
【0079】
図8に表したように、第2の実施形態に係る半導体発光素子120は、積層構造体100と、第1電極50と、第2電極60と、第1誘電体部40と、を備える。また、半導体発光素子120は、第1電極50と導通するパッド電極57を有する。パッド電極57は、第2電極60の第2部分62と並置される。
【0080】
パッド電極57と、第1電極50の接触部51と、のあいだには、ビア部56が設けられている。ビア部56は、Z軸方向に沿って延在する。例えば、ビア部56は、第2電極60の第2部分62をZ軸方向に貫通するホールHの内側に設けられる。ホールH内において、ビア部56は、埋め込み絶縁体部43を介して設けられている。埋め込み絶縁体部43には、例えば誘電体(SiO2等)が用いられる。埋め込み絶縁体部43には、樹脂を用いてもよい。このビア部56によって、パッド電極57は、接触部51と電気的に接続される。ビア部56は、第1電極50に含まれていてもよい。
【0081】
半導体発光素子120において、第2電極60の第2部分62は、例えばめっき金属によって形成される。すなわち、第2部分62をめっきによって形成する。めっき金属には、例えばCuが用いられる。めっきによって第2部分62を例えば200μm程度の厚さに形成する。これにより、第2部分62に十分な強度を持たせて、支持基板70(図1参照)として利用することができるようになる。
なお、第2電極60は、第1部分61及び第2部分62をめっきによって形成してもよい。
【0082】
このように、半導体発光素子120では、パッド電極57が、第2電極60の第2部分62と並置されている。すなわち、半導体発光素子120では、第1電極50及び第2電極60の両方が、積層構造体100の光取り出し面(第1主面100a)とは反対側(第2主面100b側)に配置されている。光取り出し面には第1電極50及び第2電極60は配置されていない(図8及び図9参照)。したがって、光取り出し面の側に電極が配置される発光素子に比べて、光取り出し面の面積を拡げることができる。これにより、実効的な電流密度が下がり、発光効率が向上する。
【0083】
また、パッド電極57は、ビア部56を介して接触部51と導通しているため、半導体発光素子120の裏面側(第2主面100b側)において、パッド電極57を自由にレイアウトすることができる。図10に表したように、パッド電極57は、裏面側の面内における複数箇所に設けてもよい。また、パッド電極57を裏面側の隅部(少なくとも1つの隅部)に設けてもよい。また、パッド電極57を裏面側の中央部に設けてもよい。半導体発光素子120では、第1電極50及び第2電極60のあいだの電流の流れ方を考慮して、パッド電極57のレイアウトを容易に設定することができる。
【0084】
図11は、実施形態に係る半導体発光素子を用いた半導体発光装置の構成を例示する模式的断面図である。
本具体例では、第1の実施形態に係る半導体発光素子110が用いられているが、半導体発光装置には他の実施形態に係る半導体発光素子120を用いることもできる。
半導体発光装置500は、半導体発光素子110と、蛍光体と、を組み合わせた白色LEDである。すなわち、本実施形態に係る半導体発光装置500は、半導体発光素子110と、半導体発光素子110から放出された光を吸収し、前記光とは異なる波長の光を放出する蛍光体と、を備える。
【0085】
図11に表したように、本実施形態に係る半導体発光装置500では、セラミック等からなる容器72の内面に反射膜73が設けられている。反射膜73は、容器72の内側面と底面に分離して設けられている。反射膜73は、例えばアルミニウムからなるものである。このうち容器72の底部に設けられた反射膜73の上に、半導体発光素子110がサブマウント74を介して設置されている。
【0086】
半導体発光素子110は、第1主面100a側を上に向け、例えば、低温はんだを用いて、サブマウント74に支持基板70の裏面が固定されている。これら半導体発光素子110、サブマウント74及び反射膜73の固定には、接着剤による接着を用いることも可能である。
【0087】
サブマウント74の半導体発光素子110側の表面には電極75が設けられている。半導体発光素子110の支持基板70は、裏面電極85を介して電極75の上にマウントされる。これにより、電極75は、裏面電極85及び支持基板70を介して第2電極60と導通する。パッド電極55は、容器72側に設けられた図示しない電極に対してボンディングワイヤ76により接続されている。これらの接続は、内側面の反射膜73と、底面の反射膜73と、の間の部分において行われている。
【0088】
また、半導体発光素子110及びボンディングワイヤ76を覆うように赤色蛍光体を含む第1蛍光体層81が設けられている。また、この第1蛍光体層81の上には青色、緑色または黄色の蛍光体を含む第2蛍光体層82が形成されている。この蛍光体層の上にはシリコーン樹脂等の蓋部77が設けられている。
【0089】
第1蛍光体層81は、樹脂及びこの樹脂中に分散された赤色蛍光体を含む。
赤色蛍光体としては、例えばY2O3、YVO4、Y2(P,V)O4を母材として用いることができ、これに3価のEu(Eu3+)を付活物質として含ませる。すなわち、Y2O3:Eu3+、YVO4:Eu3+等を赤色蛍光体として用いることができる。Eu3+の濃度は、モル濃度で1%〜10%とすることができる。
【0090】
赤色蛍光体の母材としては、Y2O3、YVO4の他に、LaOSやY2(P, V)O4等を用いることができる。また、Eu3+の他にMn4+等を利用することもできる。特に、YVO4母体に、3価のEuと共に少量のBiを添加することにより、390nmの吸収が増大するので、さらに発光効率を高くすることができる。また、樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂を用いることができる。
【0091】
また、第2蛍光体層82は、樹脂、並びに、この樹脂中に分散された青色、緑色及び黄色の少なくともいずれかの蛍光体、を含む。例えば、青色蛍光体と緑色蛍光体を組み合わせた蛍光体を用いても良く、また、青色蛍光体と黄色蛍光体とを組み合わせた蛍光体を用いても良く、青色蛍光体、緑色蛍光体及び黄色蛍光体を組み合わせた蛍光体を用いても良い。
【0092】
青色蛍光体としては、例えば(Sr,Ca)10(PO4)6Cl2:Eu2+やBaMg2Al16O27:Eu2+を用いることができる。
緑色蛍光体としては、例えば3価のTbを発光中心とするY2SiO5:Ce3+,Tb3+を用いることができる。この場合、CeイオンからTbイオンへエネルギーが伝達されることにより励起効率が向上する。緑色蛍光体としては、例えば、Sr4Al14O25:Eu2+を用いることができる。
【0093】
黄色蛍光体としては、例えばY3Al5:Ce3+を用いることができる。
また、樹脂として、例えば、シリコーン樹脂を用いることができる。特に、3価のTbは、視感度が最大となる550nm付近に鋭い発光を示すので、3価のEuの鋭い赤色発光と組み合わせると発光効率が著しく向上する。
【0094】
本実施形態に係る半導体発光装置500によれば、半導体発光素子110から発生した例えば波長390nmの紫外光は、半導体発光素子110の上方および側方に放出される。さらに、反射膜73で反射した紫外光によって、各蛍光体層に含まれる上記蛍光体は効率良く励起される。例えば、第1蛍光体層81に含まれる3価のEuを発光中心とする上記蛍光体は、620nm付近の波長分布の狭い光に変換される。これにより、赤色可視光を効率良く得ることが可能である。
【0095】
また、第2蛍光体層82に含まれる青色、緑色、黄色の蛍光体が励起されることによって、青色、緑色、黄色の可視光を効率良く得ることができる。さらに、これらの混色として、白色光やその他様々な色の光を、高効率でかつ演色性良く得ることが可能である。
半導体発光装置500によれば、高効率で所望を色の光を得ることができる。
【0096】
以上説明したように、実施形態に係る半導体発光素子によれば、放熱性を高めて光取り出し効率を改善することができる。
【0097】
なお、上記に本実施の形態およびその変形例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施の形態またはその変形例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものもや、各実施の形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含有される。
【0098】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0099】
10…第1半導体層、12p…凹凸部、20…第2半導体層、30…発光層、40…第1誘電体部、43…埋め込み絶縁体部、45…第2誘電体部、50…第1電極、51…接触部、53…引き出し部、55…パッド電極、60…第2電極、61…第1部分、62…第2部分、63…引き出し部、65…パッド電極、70…支持基板、70a…縁部、80…成長用基板、85…裏面電極、100…積層構造体、100a…第1主面、100b…第2主面、100t…凹部、110,120,190…半導体発光素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、前記第1半導体層の一部に対向する第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層の前記一部と前記第2半導体層とのあいだに設けられた発光層と、を含み、前記第1半導体層側の第1主面と、前記第2半導体層側の第2主面と、を有する積層構造体と、
前記第2主面の側で前記第1半導体層と接する接触部を有する第1電極と、
前記第2主面で前記第2半導体層と接する第1部分と、前記第1部分と電気的に接続され、前記第1半導体層から前記第2半導体層へ向かう積層方向にみたときに、前記接触部と重なる部分を有する第2部分と、を有する第2電極と、
前記接触部と、前記第2部分と、のあいだに設けられた誘電体部と、
を備えたことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第2部分と導通し、前記積層構造体の前記第2主面の側に設けられた支持基板をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記支持基板は、前記積層方向にみて前記積層構造体の外側の縁部を有し、
前記第1電極は、前記接触部から前記縁部まで引き出された引き出し部を含み、
前記引き出し部に設けられたパッド電極をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2電極は、接合用金属部を含み、
前記支持基板は、前記接合用金属部と接合されたことを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1電極と導通し、前記第2部分と並置された部分を含むパッド電極をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第2電極は、めっき金属を含むことを特徴とする請求項1、2、5のうちいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記発光層から放出された光は、前記積層構造体の前記第2主面の側よりも前記第1主面の側から多く外部へ放出されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1半導体層、前記発光層及び前記第2半導体層は、窒化物半導体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記第1半導体層は、前記第1主面に設けられた凹凸部を含み、
前記凹凸部は、前記発光層から放射される発光光のピーク波長よりも長いピッチの凹凸を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記発光光のピーク波長は、370ナノメートル以上、400ナノメートル以下であることを特徴とする請求項9記載の半導体発光素子。
【請求項1】
第1導電形の第1半導体層と、前記第1半導体層の一部に対向する第2導電形の第2半導体層と、前記第1半導体層の前記一部と前記第2半導体層とのあいだに設けられた発光層と、を含み、前記第1半導体層側の第1主面と、前記第2半導体層側の第2主面と、を有する積層構造体と、
前記第2主面の側で前記第1半導体層と接する接触部を有する第1電極と、
前記第2主面で前記第2半導体層と接する第1部分と、前記第1部分と電気的に接続され、前記第1半導体層から前記第2半導体層へ向かう積層方向にみたときに、前記接触部と重なる部分を有する第2部分と、を有する第2電極と、
前記接触部と、前記第2部分と、のあいだに設けられた誘電体部と、
を備えたことを特徴とする半導体発光素子。
【請求項2】
前記第2部分と導通し、前記積層構造体の前記第2主面の側に設けられた支持基板をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項3】
前記支持基板は、前記積層方向にみて前記積層構造体の外側の縁部を有し、
前記第1電極は、前記接触部から前記縁部まで引き出された引き出し部を含み、
前記引き出し部に設けられたパッド電極をさらに備えたことを特徴とする請求項2記載の半導体発光素子。
【請求項4】
前記第2電極は、接合用金属部を含み、
前記支持基板は、前記接合用金属部と接合されたことを特徴とする請求項3記載の半導体発光素子。
【請求項5】
前記第1電極と導通し、前記第2部分と並置された部分を含むパッド電極をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の半導体発光素子。
【請求項6】
前記第2電極は、めっき金属を含むことを特徴とする請求項1、2、5のうちいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項7】
前記発光層から放出された光は、前記積層構造体の前記第2主面の側よりも前記第1主面の側から多く外部へ放出されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項8】
前記第1半導体層、前記発光層及び前記第2半導体層は、窒化物半導体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項9】
前記第1半導体層は、前記第1主面に設けられた凹凸部を含み、
前記凹凸部は、前記発光層から放射される発光光のピーク波長よりも長いピッチの凹凸を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の半導体発光素子。
【請求項10】
前記発光光のピーク波長は、370ナノメートル以上、400ナノメートル以下であることを特徴とする請求項9記載の半導体発光素子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−243825(P2012−243825A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109921(P2011−109921)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【特許番号】特許第4989773号(P4989773)
【特許公報発行日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【特許番号】特許第4989773号(P4989773)
【特許公報発行日】平成24年8月1日(2012.8.1)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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