説明

半導体級シリコンを生産するための装置および方法

本発明は太陽電池級シリコンを含む、半導体級シリコンの鋳塊を生産するための装置および方法に関し、溶解および結晶化工程の加熱ゾーン内において酸素欠如材料を採用することによって、加熱ゾーン内の酸素の存在がほとんど減少されまたは排除されている。方法は、単結晶のシリコン結晶を成長させるためのブリッジマン法、ブロックキャスティング法、およびCZ工程のような、太陽電池級シリコン鋳塊を含んだ半導体級シリコン鋳塊の結晶化を含んだ任意の公知の工程に採用されてもよい。本発明は溶解工程および結晶化工程を実施するための装置にも関し、加熱ゾーンの材料は酸素欠如材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池級シリコンを含む、半導体級シリコンの鋳塊を生産するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料の世界的な供給は、この先10年で徐々に枯渇していく。このことは、ここ一世紀の我々の主エネルギ源が数十年以内に置き換えられ、現在のエネルギ消費と世界のエネルギ需要の増加との双方をカバーしなければならないことを意味している。
【0003】
さらに、化石エネルギの使用が地球の温室効果を増大し、危険が広がる可能性との多くの関係が挙げられている。したがって、現在の化石燃料の消費は、我々の機構と環境とのために、再生可能且つ維持可能なエネルギ源/担体に好適に置換されるべきである。
【0004】
そのようなエネルギの1つが太陽光であり、そのエネルギは、人類のエネルギ消費においてあらゆる見通しの立った増加を含んだ今日のエネルギ消費よりも、はるかにより多くのエネルギを地球に照射している。しかしながら、太陽電池の電力は最新式では非常に高価であり、原子力、火力等と競合できない。このことは、太陽電池の電力の莫大な潜在量が実現される場合、変化する必要がある。
【0005】
太陽電池パネルからの電力のコストは、エネルギ変換効率と太陽電池パネルの生産コストとの関数である。したがって、太陽電池の電力のコストを減少するための1つの方策は、エネルギ変換効率を増大することである。
【0006】
今日の光発電(PV)産業において、PV装置のための多結晶ウェハは鋳塊から切り出され、その鋳塊はブリッジマン法を基礎とした方向性凝固(DS)によって炉内で鋳造される。これらの工程の主たる課題はシリコン原料の純度を維持することである。汚染問題の2つの要素は、酸素と炭素とである。
【0007】
非特許文献1によれば、溶融した材料と接触する(剥離コーティングを通した移動を含む)酸化物または酸素含有材料は、溶融材料内に酸素を誘導する。酸素は溶融材料から蒸発するSiOガスの形成を導き、SiOガスは連続的に黒鉛と反応して、加熱ゾーン内でCOガスを形成する。COガスは溶融シリコン内に侵入し、これによって固体シリコン内に黒鉛を誘導する。すなわち、加熱ゾーンでの酸化物または酸素含有材料の使用は、固体シリコン内に炭素と酸素との双方を導入することを導く一連の反応を起こさせる。ブリッジマン法に関する典型的な数値は、格子間酸素が2〜6×1017/cmのレベル、および置換炭素が2〜6×1017/cmである。
【0008】
シリコン金属内の炭素の蓄積は、特に鋳塊の最上部領域において針形状のSiC結晶の形成を誘導する。これら針形状のSiC結晶は半導体セルのpn接合部を短絡させることが公知であり、セルの効率を大幅に減少させる。格子間酸素の蓄積は、酸素沈殿および/または形成されたシリコン金属の焼鈍後の活性酸素錯体の再結合を誘導する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2006/082085号パンフレット
【特許文献2】ノルウェー国特許第317080号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】John Wiley & Sons著 "Handbook of Photo voltaic Science and Engineering",2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の主目的は、半導体級シリコンの高純度の鋳塊を製造する方法を提供することであり、そのシリコン鋳塊はシリコン金属内の炭素および酸素の汚染の問題をほとんど減少/排除している。
【0012】
本発明の更なる目的は、本発明の方法を実施するための装置を提供することである。本発明の目的は、以下の本発明の記載および/または添付の特許請求の範囲内で説明された特徴によって実現されてもよい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、シリコンの炭素および/または酸素の汚染の問題が、炉の加熱還元雰囲気において酸化物または酸化物含有材料の存在に関係しており、絶縁体、るつぼ、負荷担体構造要素および断熱材のような、加熱ゾーン内で現在使用される材料が酸化物欠如材料によって置換されてもよいという認識に基づいている。
【0014】
したがって、本発明の第1の態様において、半導体級シリコンを生産するための方法が提供されており、加熱ゾーンにおける酸素の存在が以下のステップによってほほ減少または排除されている。
−窒化シリコン、炭化シリコンまたはそれらの結合体で形成され、付加的に無酸素剥離コーティングでコートされたるつぼ内で、供給されたシリコン材料の溶解を付加的に含んで、半導体級のシリコン鋳塊を結晶化するステップ、
−少なくとも、炭素および/または黒鉛材料で形成された加熱ゾーン内で、断熱材を含んだ負荷担体構造要素を採用するステップ、および
−少なくとも、Siの窒化シリコンで形成された加熱ゾーン内に絶縁性材料を採用するステップ。
【0015】
本発明の第1の態様による方法は、ブリッジマン法または関連した方向性凝固法、ブロックキャスティング工程もしくはCZ工程に関する方法のような、太陽電池級シリコン鋳塊を含んだ半導体級シリコン鋳塊の結晶化を含んだ任意の公知の工程に採用されてもよい。
【0016】
本発明の第2の態様において、多結晶または単結晶半導体級シリコン鋳塊を製造するための装置が提供されており、その装置は不活性雰囲気の密封された加熱ゾーンを具備している。その装置は、
−少なくとも、炭素および/または黒鉛材料で形成された加熱ゾーン内で、断熱材を含んだ装置の全ての負荷担体構造要素、
−少なくとも、Siの窒化シリコンで形成された前記加熱ゾーン内の絶縁体、および
−窒化シリコン(Si)、炭化シリコン(SiC)、またはそれらの結合体のいずれかで形成され、付加的に無酸素剥離コーティングでコートされたたるつぼと、を備えている
【0017】
ここで使用されている“不活性雰囲気”との語は、加熱ゾーン内の装置の材料およびシリコン金属が接触する雰囲気を意味しており、基本的に、装置の材料ならびに固相および液相の双方のシリコン金属相に対して化学的に不活性である。ここで使用されている語は、真空を含んだ任意の不活性雰囲気の気圧を含んでいる。
【0018】
装置は、太陽電池級シリコン鋳塊を含んだ半導体級シリコン鋳塊を結晶化するためのあらゆる公知の装置であってよく、ブリッジマン法を実施するための炉、ブロックキャスティング工程を行うための結晶化るつぼまたは単結晶のシリコン結晶のCZ成長を行うためのCZプラーのような炉であってもよい。
【0019】
太陽電池級シリコンの溶解および結晶化の間、加熱ゾーン内に無酸素材料を使用することによって、シリコン金属相の炭素および酸素の双方の汚染に関する問題は、排除され/ほとんど減少される。このことは、金属相内の炭化シリコン結晶の形成をほとんど減少させ、ウェハから形成されるPVセルの変換効率を高いものへと促進させる。高変換効率へと誘導する別の因子は、活性酸素錯体の格子間再結合を減少させ/回避している。減少された汚染レベルは有利な点も与えており、それは、炭化物および酸化物のような硬くて脆い含有物がないために、シリコン金属を太陽電池ウェハへと連続的に加工することが簡略化されるということである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】半導体級シリコンを直接溶解するための従来技術による炉を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、多結晶構造シリコン鋳塊を生産するための装置の実施形態の例を利用して、より詳細に説明される。この実施例は、加熱ゾーン内で酸素含有材料の使用を回避することによって、炭素および酸素の汚染を回避することを全体的な発明の概念の限定として、解釈されるべきものではない。本発明の思想は任意の公知の加熱ゾーンに採用されてもよく、そこでは半導体級シリコンが形成される。
【0022】
選択された例は、図1に示されたような多結晶構造シリコンの方向性凝固を実施するための典型的な炉であり、その図は本願出願人によって国際出願された特許文献1の図1の複写である。その炉は機密性結晶化チャンバを具備し、図ではそのチャンバは参照符号2で示された断熱壁で画定されている。内部チャンバはフレーム11、壁10およびふた5とともに床9によって形成されている。吸引流出口24とインジェクションランス12とが、内部チャンバの不活性雰囲気を維持するために設けられている。メタル13はるつぼ1を含み、メタル13は最初に溶解されて、その後加熱要素8、21および冷却回路4、15、16、17、19、20、22、23の作動を規制することによって方向性凝固を支配する。
【0023】
この炉に適用された場合の本発明の目的は、窒化シリコン、炭化シリコンのるつぼ1を採用することによって得られてもよく、または追加的に無酸素剥離コーティングでコートされていてもよい。窒化シリコンるつぼの一例は特許文献2に開示されており、その文献は40〜60体積%の総開放気孔率を有し且つ表面気孔の少なくとも50%がSi粒子の平均直径よりも大きい窒化シリコンが濡れた液体シリコンではなく、るつぼが溶融金属から容易に外れることが教示されている。しかしながら、窒化シリコンのみで形成され且つ濡れた液体シリコンでない任意のるつぼが採用されてもよい。純粋な窒化シリコンるつぼは、酸素/酸化物をまったく含んでいないか、または無視できる程度の量を含んでいる。したがって、るつぼから溶融金属への酸素の移動は排除され、液体金属内およびSiOの構造の格子間の酸素レベルはほぼ減少されまたは排除されている。加熱ゾーン内の全ての酸素源を排除するために、本発明によるDS炉の例は、炭素で形成されたフレーム11、ふた5、およびランス24、12を備えた壁10、床9を採用している。したがって、結晶化チャンバの内部気密ゾーンを形成している要素は酸素を含んでおらず、溶融金属および溶融金属に接触するCOガス構造の双方に移動する酸素は、実質的に排除されている。
【符号の説明】
【0024】
1 るつぼ
2 断熱壁
5 ふた
9 床
10 壁
11 フレーム
12 インジェクションランス
24 吸引流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体級のシリコン鋳塊を製造するための方法であって、該方法は、
−窒化シリコン、炭化シリコンまたはそれらの結合体で形成されたるつぼ内で、供給されたシリコン材料の溶解を付加的に含んで、前記半導体級のシリコン鋳塊を結晶化するステップと、
−供給されたシリコン材料の溶解を付加的に含んで、前記鋳塊の結晶化の間に不活性雰囲気で密封された加熱ゾーン内に前記るつぼを収容するステップと、
−炭素および/または黒鉛材料で形成された前記加熱ゾーン内で、断熱材を含んだ負荷担体構造要素を採用するステップと、
−Siの窒化シリコンで形成された前記加熱ゾーン内に絶縁性材料を採用するステップと、
によって前記加熱ゾーン内の酸素の存在が減少しているまたはほぼ排除されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記るつぼは無酸素剥離コーティングでコートされていることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半導体級シリコン結晶化工程はシリコン単結晶を成長させるためのブリッジマン法、または方向性凝固法、ブロックキャスティング工程もしくはCZ工程に関する方法であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
形成されたシリコン鋳塊は太陽電池級シリコンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
不活性雰囲気の加熱ゾーンを具備した、半導体級シリコンの鋳塊を製造するための装置であって、該装置は、
−炭素および/または黒鉛材料で形成された前記加熱ゾーン内で、断熱材を含んだ装置の全ての負荷担体構造要素と、
−Siの窒化シリコンで形成された前記加熱ゾーン内の絶縁体と、
−Siの窒化シリコン、SiCの炭化シリコン、またはそれらの結合体のいずれかで形成されたるつぼと、
を備えていることを特徴とする装置。
【請求項6】
前記るつぼは無酸素剥離コーティングでコートされていることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
光発電用の多結晶ウェハ製品の鋳塊の鋳造をするための結晶化炉であって、加熱ゾーン内の全ての負荷担体部品および機能性部品は無酸素材料で形成されていることを特徴とする結晶化炉
【請求項8】
前記鋳造用るつぼはSiの窒化シリコン、SiCの炭化シリコン、またはそれらの結合体のいずれかで形成されていることを特徴とする、請求項5または7に記載の結晶化炉。
【請求項9】
前記絶縁体はSiで形成されていることを特徴とする、請求項5または7に記載の結晶化炉。

【図1】
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【公表番号】特表2009−541193(P2009−541193A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−516423(P2009−516423)
【出願日】平成19年6月20日(2007.6.20)
【国際出願番号】PCT/NO2007/000219
【国際公開番号】WO2007/148985
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(506385128)
【Fターム(参考)】