説明

半導体素子

【課題】銅を回路層に用いても、信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体素子は、GaN系の半導体材料でできている本体21および少なくとも1つの電極構造物23を含む。電極構造物23は、本体21に形成されるオーミック接触層231、本体21の反対側のオーミック接触層231上に形成されるバッファ層232、および、銅系の材料でできており、オーミック接触層231の反対側のバッファ層232に形成される回路層233を含む。オーミック接触層231は、チタン、アルミニウム、ニッケルおよびそれらの合金から選択される材料でできている。バッファ層232は、オーミック接触層231の材料とは異なっており、かつ、チタン、タングステン、窒化チタン、タングステン窒化およびそれらの組み合わせから選択される材料でできている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
この出願は、2011年6月10日に出願された台湾出願番号第100120365号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、本体に銅原子の拡散を防止するために使用されるバッファ層を有する半導体素子に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、高電子移動度トランジスタなどの電気部品を有する集積回路を製造する分野において、双方良好な電気伝導率を有している金(Au)およびアルミニウム(Al)は、集積回路の各電気部品を電気的に接続する電極構造物のための主な原材料として使用される。金は優れた電気伝導率および熱伝導率を有するが、アルミニウムなどの他の金属と比較して比較的希少であり、それ故、比較的高価である。従って、集積回路の製造原価を最小化するために、集積回路を生産するために使用される金の量は、減らす必要がある。一方、アルミニウムは、比較的廉価であるが、その電気伝導率および熱伝導率は金と比較して比較的劣っている。それ故、アルミニウムが最小化されたサイズで集積回路に使用される場合、オーバーヒートや高電力消費が起こり、それにより、集積回路の早すぎる劣化や不十分な電池持続期間に帰着する。
【0004】
銅が高い電気伝導率および良好な熱伝導性を有しており、比較的廉価であることが知られている。したがって、それは、電極のための主材料としての使用に適している。それ故、主電気部品として高電子移動度トランジスタを使用する集積回路の分野において、銅めっきプロセスの導入は、更なる発展のために必要である。
【0005】
図1を参照すると、従来の半導体素子、例えば高電子移動度トランジスタは、基板111、本体11、ゲート構造物12および2つの電極構造物13を含む。
【0006】
本体11は、基板111に形成されて、主に窒化ガリウムでできている第1のフィルム層112、および主にアルミニウム窒化ガリウムでできている第2のフィルム層113を含む。
【0007】
ゲート構造物12は、第1のフィルム層112の反対側にある本体11の第2のフィルム層113の上表面に形成されて、導体、例えば金属でできている。
【0008】
電極構造物13は、第2のフィルム層113の上表面に形成されて、ゲート構造物12とは間隔をあけて置かれて、オーミック接触層131および回路層132を含む。オーミック接触層131は、基本的にチタン、アルミニウムおよびニッケルから成っている合金でできている。回路層132は、主に銅でできていて、電気的に外部回路に接続するために導線で溶接されるように構成される。
【0009】
チャネルは、本体11の第2のフィルム層113の上側に形成されている。電極構造物13のうちの1つは、ドレインとして機能し、そして、電極構造物13の他の1つはソースとして機能する。更に、ゲート構造物12は、ゲートとして機能する。
【0010】
理想的な状態の下で、電圧が導線による外部回路からゲートおよびドレインに印加されるときに、電圧差は、ゲートおよび本体11との間に、そして、ドレインおよびソースとの間に形成される。この時に、半導体素子が動作することができるように、電流はドレインからチャネルを介してソースへと流れることができる。
【0011】
しかし、銅は、大きな活動度を有するので、半導体素子の電極構造物13が製造される、および/または、動作するときに、回路層132の銅原子は、オーミック接触層131を通過して、本体11の第2のフィルム層113および第1のフィルム層112にさえ拡散しやすい。それによって、結果として半導体素子の劣った電気的性質および劣った信頼性を引き起こす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、高い信頼性を有する半導体素子を供給することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の半導体素子は、GaN系の半導体材料でできている本体、および、外部回路に接続されるように構成された少なくとも1つの電極構造物を含む。電極構造物は、本体に形成されるオーミック接触層、本体の反対側のオーミック接触層に形成されるバッファ層、および銅系材料でできており、オーミック接触層の反対側のバッファ層上に形成される回路層を含む。オーミック接触層は、チタン、アルミニウム、ニッケルおよびそれらの合金からなるグループから選択される材料でできている。バッファ層は、オーミック接触層の材料とは異なっており、チタン、タングステン、窒化チタン、タングステン窒化およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される材料でできている。
【0014】
他の本発明の特徴および効果は、添付図面を参照として、以下の好ましい実施形態の詳細な説明において明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、従来の半導体素子の部分略図である。
【図2】図2は、本発明による半導体素子の好ましい実施形態の部分略図である。
【図3】図3は、本発明の一実施例の半導体素子のための伝送路測定結果を示しているプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図2を参照すると、この発明の半導体素子の好ましい実施形態は、基板211、本体21、ゲート構造物22および2つの電極構造物23を含む。
【0017】
本体21は、基板211に形成されて、主に窒化ガリウム(GaN)でできている第1のフィルム層212および基板211の反対側の第1のフィルム層212に形成され、そして、主にアルミニウム窒化ガリウム(AlGaN)でできている第2のフィルム層213を含む。本体21を構成している窒化ガリウムおよびアルミニウム窒化ガリウムは、すべて半導体材料であるので、本体21は、半導体特性を示す。
【0018】
ゲート構造物22は、第1のフィルム層212の反対側である本体21の第2のフィルム層213の上面に形成される。本実施形態において、半導体素子が高電子移動度トランジスタであるので、ゲート構造物22は、導体でできており、第2のフィルム層213の上面に形成され、接触するゲート電極層221を含む。ゲート構造物22が、トランジスタの種類によって、わずかに修正されうることに留意されたい。例えば、ゲート構造物22は、絶縁材料でできている誘電体部材(図示されていない)を更に含むことができ、そして、ゲート電極層221は、誘電体部材によって本体21とは間隔を隔てる。
【0019】
電極構造物23はまた、本体21の第2のフィルム層213の上面に別々に形成され、そして、それぞれゲート構造物22から分離される。図2において、電極構造物23およびゲート構造物22は、以下の順序、電極構造物23のうちの1つ、ゲート構造物22、そして、および他方の電極構造物23で配置される。電極構造物23の各々は、本体21の第2のフィルム層213の上面に形成されるオーミック接触層231、本体21の反対側のオーミック接触層231上に形成されるバッファ層232、および、オーミック接触層231の反対側のバッファ層232上に形成される回路層233を含む。
【0020】
オーミック接触層231は、チタン、アルミニウム、ニッケルおよびそれらの合金からなるグループから選択される材料でできている。この発明の一実施例において、オーミック接触層231は、第2のフィルム層213の上面に、チタン、アルミニウムおよびニッケルをスパッタリング、または、蒸気溶着し、その後、高温で焼なますことによって形成される。このようにして、第2のフィルム層213は、オーミック接触層231とのオーミック接触している。好ましくは、オーミック接触層231は、合金でできている。オーミック接触層231の厚みがあまりにも小さい場合、電流はオーミック接触層231においてスムーズに流れない可能性があり、抵抗は高いだろう。一方、オーミック接触層231の厚みがあまりにも大きい場合、オーミック接触層231は、高温炉配管におけるアニーリングの間、好ましい合金比率を有することができない可能性があり、低抵抗はやはり達成できない。従って、オーミック接触層231は、好ましくは、165nmから330nmの厚みを有する。オーミック接触層231は、低抵抗を有する電流伝送路を形成するために使用される。
【0021】
バッファ層232は、オーミック接触層231の材料とは異なっており、チタン、タングステン、窒化チタン、タングステン窒化およびそれらの組み合わせからなるグループから選択される材料でできている。この発明の一実施例において、バッファ層232は、チタンでできていて、スパッター法、蒸着処理または化学蒸着処理によってオーミック接触層231に形成される。好ましくは、バッファ層232は、10nmから30nmの厚みを有する。
【0022】
回路層233は、バッファ層232の表面と結びついて、外部回路から電力を受けるために外部回路に電気的に接続されるように構成される。回路層233は、主に良好な電気伝導率を得て、外部回路との電気接続を確実にするために、銅でできている。好ましくは、回路層233は、本体21、オーミック接触層231およびバッファ層232と相まって、良好な電通効率を得るために50nmから150nmの厚みを有する。
【0023】
本体21、ゲート構造物22および2つの電極構造物23は、半導体素子の高電子移動度を有するトランジスタを形成することができる。チャネルは、第2のフィルム層213の上側に形成されている。電極構造物23のうちの1つは、ドレインとして機能し、電極構造物23の他の1つは、ソースとして機能する。更に、ゲート構造物22は、ゲートとして機能する。
【0024】
所定の電圧が、ゲート構造物22および電極構造物23の1つに印加されるときに、所定の電圧差が、ゲートおよび本体21との間に、そして、ドレインおよびソースとの間に形成される。この時に、半導体素子が、オン状態において正常に動作できるように、電流は、ドレインから本体21の第2のフィルム層213のチャネルを介してソースへと流れることができる。ゲートおよび本体21の間の、または、ドレインおよびソースの間の電圧差がない場合、半導体素子はオフ状態にある。
【0025】
バッファ層232によって、半導体素子がオンまたはオフ状態にある場合、回路層233の銅原子が本体21に拡散するのを防止される。従って、本体21の半導体特性は、維持され、そして、半導体素子がオン状態にある場合、データ、例えば電流値、必要な電力、等価抵抗および半導体素子の電気部品の電気伝導率は、正確に算出されることができる。したがって、この発明の半導体素子は、高い信頼性を示す。
【0026】
<実施例>
最初に、窒化ガリウムでできている第1のフィルム層212が、基板211に形成され、そして、アルミニウム窒化ガリウムでできている第2のフィルム層213が、第1のフィルム層212の上面に形成された。そして、その後に第2のフィルム層213の上面にゲート構造物22を形成することが続いた。次に、フォトレジスト層(図示されていない)は、第2のフィルム層213およびゲート構造物の上面をカバーするために形成されて、第2のフィルム層214の上面の2つの部分を露出している2つの通り穴を有するようにパターンを形成された。それから、20nmのチタン、25nmのアルミニウムおよび120nmのニッケルが、スパッター法によって第2のフィルム層213の上面の2つの露出部上に順々に蒸着させられた。チタン、アルミニウムおよびニッケルは、それから、165nmの厚み幅を有するオーミック接触層231を構成する合金を形成するために、800℃の温度で、高温炉配管において焼なましされた。その後で、主にチタンでできているバッファ層232は、スパッター法を使用して、オーミック接触層231の上面に形成された。銅でできている回路層233は、スパッター法を使用して、バッファ層232の上面に形成された。それによって、トランジスタのドレインおよびソースとして機能する2つの間隔を置かれた電極構造物23を形成した。最後に、その上に形成されるフォトレジスト層および金属層は、はく離法を使用して除去された。こうして、本発明の半導体素子は、得られた。
【0027】
<比較例>
最初に、窒化ガリウムでできている第1のフィルム層が、基板上に形成され、そして、アルミニウム窒化ガリウムでできている第2のフィルム層が、第1のフィルム層の上面に形成された。そして、その後に、第2のフィルム層の上面にゲート構造物を形成することが続いた。次に、上述した実施例のそれらと同じ材料でできているオーミック接触層および回路層は、上述した実施例と同様の方法で第2のフィルム層の上面に形成された。このように、比較例のための半導体素子は、得られる。
【0028】
<信頼性試験>
実施例および比較例のための半導体素子の信頼性を測定するために、半導体デバイスは、一般の半導体素子のための動作温度(500℃)より高い800℃でのベーキング法を行うために、10分間、高温炉配管に置かれた。
【0029】
次に、実施例および比較例の両方に関する半導体素子のオーミック接触特性は、半導体素子の信頼性を測定するための伝送線路測定(transmission line measurement:TLM)方法によって測定された。
【0030】
より詳しくは、実施例および比較例に関する半導体素子の各々において、直流電源の陽極が電極構造物のうちの1つに電気的に接続され、そして、電源装置の陰極が電極構造物の他方の1つに電気的に接続された。所定の電圧が電源から半導体素子に印加されるときに、2つの電極構造物は2つの抵抗器として機能し、そして、2つの電極構造物との間に位置付けされる第2のフィルム層はもう1つの抵抗器として機能する。このように、3つの抵抗器、すなわち、電極構造物のうちの1つによって形成された等価抵抗器、電極構造物との間に位置付けされる第2のフィルム層によって形成された等価抵抗器および電極構造物の他方の1つによって形成された等価抵抗器は、等価回路を形成するために、直列に接続された。2つの電極構造物が同じものであるので、第2のフィルム層の抵抗が入手可能である場合、電極構造物の等価抵抗は算出できる。
【0031】
電源への接続が完了したあと、電極構造物との間に位置付けされた第2のフィルム層の長さは変えられ、そして、3つの抵抗器の全抵抗のバリエーションは測定された。このように、第2のフィルム層の断面積に対する抵抗性の比率を得ることができる。次に、抵抗の定義によって、すなわち、抵抗が、オブジェクトの断面積に対する抵抗性の比率が固定されるとき、オブジェクトの長さと比例している(R=ρ(1/A))ことによって、電極構造物の等価抵抗の総計は、3つの抵抗器の全抵抗から第2のフィルム層の等価抵抗を減算して算出できる。第2のフィルム層が銅原子をドーピングされない場合、第2のフィルム層の等価抵抗は一般のインピーダンスとみなされることができ、そして、断面積に対する抵抗性の比率は固定される。銅原子が第2のフィルム層に拡散する場合、断面積に対する抵抗性の比率は不安定であり、第2のフィルム層の長さが増加するにつれて、抵抗性は急速に増加する。
【0032】
図3を参照すると、この発明の実施例の第2のフィルム層213の長さが変わるとき、測定された抵抗の分布は、一般的には傾斜線である、つまり、抵抗性は、急速な変化なく本発明の半導体素子の実施例の長さに比例している。電極構造物23の接触抵抗は、7×10-5Ωcm2に維持される。そして、そのことは、上述した実施例がより良い信頼性を有することを意味する。
【0033】
本発明の半導体素子の好ましい実施例が、1つのトランジスタを有するにもかかわらず、本発明の半導体素子は、他の実施形態における複数のトランジスタを形成するために、複数の電極構造物および/またはゲート構造物を含むことができることに留意されたい。本発明の半導体素子が複数の電極構造物を含む場合、それは様々なタイプのトランジスタ、またはキャパシタ、抵抗器などとして形成されうる。
【0034】
要約すれば、バッファ層232によって、本体21への回路層233の銅原子の拡散を、緩和する又は排除することができ、そして、このように、この発明の半導体素子は優れた信頼性を有することができる。
【0035】
本発明は、最も実際的で好ましい実施形態と考えられるものと関連して説明されたが、本発明は開示された実施形態に限られず、すべてのこの種の修正および同等の装置を含むように、幅広い解釈の範囲に含まれるさまざまな装置をカバーすることを目的とするものと理解される。
【符号の説明】
【0036】
21 本体
212 第1のフィルム層
213 第2のフィルム層
221 ゲート電極層
23 電極構造物
231 オーミック接触層
232 バッファ層
233 回路層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN系の半導体材料でできている本体(21)、および、
外部回路に接続されるように構成された少なくとも1つの電極構造物(23)であって、前記本体(21)上に形成されるオーミック接触層(231)、前記本体(21)の反対側の前記オーミック接触層(231)上に形成されるバッファ層(232)、および、銅系の材料でできており、前記オーミック接触層(231)の反対側の前記バッファ層(232)上に形成される回路層(233)を含み、前記オーミック接触層(231)は、チタン、アルミニウム、ニッケルおよびそれらの合金からなるグループから選択される材料でできており、前記バッファ層(232)は、前記オーミック接触層(231)の前記材料とは異なっており、かつ、チタン、タングステン、窒化チタン、窒化タングステンおよびそれらの組み合わせからなるグループから選択される材料でできている、電極構造物を含むこと、を特徴とする、半導体素子。
【請求項2】
前記電極構造物(23)のうちの2つを含み、そして、導体材料でできており、かつ、前記本体(21)上に形成されて、前記電極構造物(23)から分離されているゲート電極層(221)を更に含むこと、を特徴とする、請求項1に記載の半導体素子。
【請求項3】
前記オーミック接触層(231)は、165nmから330nmの厚みを有し、前記バッファ層(232)は、10nmから30nmの厚みを有し、そして、前記回路層(233)は、銅でできており、かつ、50nmから150nmの厚みを有すること、を特徴とする、請求項2に記載の半導体素子。
【請求項4】
前記本体(21)は、主に窒化ガリウムでできている第1のフィルム層(212)と、前記オーミック接触層(231)によるオーミック接触を作るために前記第1のフィルム層(212)上に形成され、かつ、主にアルミニウム窒化ガリウムでできている第2フィルム層(213)とを含むこと、を特徴とする、請求項3に記載の半導体素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−4961(P2013−4961A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−47018(P2012−47018)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【出願人】(598139748)國立交通大學 (92)
【Fターム(参考)】