説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】銅配線を用いて配線を行う半導体装置において、接続孔のバリアメタル層の除去の際に、上層配線溝におけるバリアメタル層の除去による層間絶縁膜への銅の拡散を抑えることができる半導体装置を得ること。
【解決手段】所定の形状にパターン形成された銅配線36を有する第1の配線層30と、所定の形状にパターン形成され、銅配線36と電気的に接続される銅配線57を有する第2の配線層50と、を備える半導体装置において、第2の配線層50は、所定の形状の配線溝62に銅配線57が埋め込まれた上部層間絶縁膜54と、銅配線57と銅配線36とを接続する接続孔61に銅配線57が埋め込まれた下部層間絶縁膜51と、上部層間絶縁膜54の配線溝62の下部と下部層間絶縁膜51との間に、銅の拡散を防止する所定の厚さの銅拡散防止用絶縁膜52と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、銅配線構造を有する半導体装置とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置では、要求される動作速度を満たすために、銅(Cu)を配線材料として用いた銅ダマシン配線構造が用いられるようになってきている。図5−1〜図5−4は、銅ダマシン配線を有する半導体装置の配線層の製造方法の手順の一例を示す断面図である。ここでは、下層配線334を有する下層配線層上に、下部層間絶縁膜351と、上層配線溝362のエッチング時におけるエッチングストッパとして機能する配線溝エッチングストッパ用絶縁膜353と、上層配線が形成される上部層間絶縁膜354と、が順に積層される構成を有する配線の製造方法について示す。
【0003】
図5−1に示されるように、下層配線層の絶縁膜333の内の所定の位置に形成された溝内には、Ta(タンタル)/TaN(窒化タンタル)などのバリアメタル層335と銅配線336が形成され、下層配線334を構成している。この下層配線層上には、下部層間絶縁膜351、配線溝エッチングストッパ用絶縁膜353、上部層間絶縁膜354が順に積層される。そして、上部層間絶縁膜354には、上層配線を形成するために所定の形状の上層配線溝362がエッチングにより形成され、上層配線と下層配線334を結ぶ下部層間絶縁膜351と配線溝エッチングストッパ用絶縁膜353上の位置には、銅配線336と電気的接続を取るための接続孔361がエッチングにより形成される。
【0004】
ついで、図5−2に示されるように、上層配線を形成するために、接続孔361と上層配線溝362の内周面にはTa/TaNなどのバリアメタル層356が形成される。その直後に、図5−3に示されるように、in-stiuにて物理的エッチング法(スパッタエッチング)を用いて接続孔361の底部のバリアメタル層356を除去する。なお、この際、エッチング条件を調整することで、相対的に接続孔361の底部のエッチング速度を他の部分よりも早くして、上層配線溝362の底部などのバリアメタル層356は完全に除去されないようにしている。
【0005】
その後、接続孔361と上層配線溝362内に銅のシード層を形成し、図5−4に示されるように、めっき法によって接続孔361と上層配線溝362内に配線材料となる銅を埋め込み、CMP(Chemical Mechanical Polishing)などによって上部層間絶縁膜354上の不必要な材料を除去して、上層配線355を形成する。以上のようにして、配線層の形成処理が行われる。
【0006】
半導体装置の微細化が進むにつれて、ストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションなどに対する信頼性の確保が重要な課題の1つとなっている。そこで、従来では、図5−3に示されるように、バリアメタル層356の成膜直後に、in-situにて物理エッチング法を用いて接続孔361の底部のバリアメタル層356を完全に除去することで、上記信頼性を向上する技術が提案されている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0007】
【非特許文献1】G. B. Alers, et al., "Barrier-First Integration for Improved Reliability in Copper Dual Damascene Interconnects", IITC, 2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、接続孔361の底部のバリアメタル層356を物理エッチングする際のエッチング速度は、上層配線溝362または接続孔361の様々な構造や位置関係によって異なるために、ウェハ内のすべての接続孔361の底部のバリアメタル層356を完全に除去することと、上層配線溝362などにバリアメタル層356を確実に残すことを両立させることは困難である。したがって、実際には接続孔361の底部のバリアメタル層356を完全に除去した場合に、上層配線溝362などのバリアメタル層356が必要な部分も、図5−3に示されるように局所的にバリアメタル層356が除去される抜け部365が生じてしまい、下地の下部層間絶縁膜351が露出されることとなる。
【0009】
そこで、このようなバリアメタル層356上の抜け部365を覆うために物理エッチング処理後にバリアメタル層356を成膜し直す方法も試みられている。通常、バリアメタル層356の成膜と物理エッチング処理はin-situで同一のPVD(Physical Vapor Deposition)装置用チャンバ内で行われるため、物理エッチング処理後にバリアメタル層356を再成膜する場合もPVD法によるものが主流となっている。
【0010】
図6は、物理エッチング処理後にPVD法によってバリアメタル層を再成膜した状態を模式的に示す断面図である。図5−3に示されるように、上層配線溝362の底面に局所的に形成される抜け部365は、下部層間絶縁膜351にまで達する位にバリアメタル層356と配線溝エッチングストッパ用絶縁膜353がエッチングされ、その他の部位との間で凹凸を形成している。そのため、図6に示されるように、上層配線溝362のバリアメタル層356の抜け部365などはPVD法によるバリアメタル層356の再成膜を行っても、段差被覆性不足により十分に被覆することができない。その結果、図5−4に示されるように、その後に形成する銅配線357と下部層間絶縁膜351が直接触れる箇所365aが発生し、銅の拡散による絶縁不良を引き起こして、デバイス特性の劣化を引き起こしてしまうという問題点があった。
【0011】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、銅配線を用いて配線を行う半導体装置において、接続孔のバリアメタル層の除去の際に、上層配線溝におけるバリアメタル層の除去による層間絶縁膜への銅の拡散を抑えることができる半導体装置とその製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、この発明にかかる半導体装置は、所定の形状にパターン形成された銅を含む材料によって構成される下層銅配線を有する下層配線層と、所定の形状にパターン形成され、前記下層銅配線と電気的に接続され、銅を含む材料によって構成される上層銅配線を有する上層配線層と、を備える半導体装置において、前記上層配線層は、所定の形状の配線溝に上層銅配線が埋め込まれた上部層間絶縁膜と、前記上層銅配線と前記下層配線層の前記下層銅配線とを接続する接続孔に前記上層銅配線が埋め込まれた下部層間絶縁膜と、前記上部層間絶縁膜の前記配線溝の下部と前記下部層間絶縁膜との間に、銅の拡散を防止する所定の厚さの銅拡散防止用絶縁膜と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、配線溝底部に銅拡散防止用絶縁膜を形成したので、接続孔底部のバリアメタル層を完全にエッチングした際に、配線溝底部のバリアメタル層下部が露出しても、その位置は銅拡散防止用絶縁膜中となり、配線溝内に埋め込まれる銅配線の銅の下部層間絶縁膜中への拡散が防止され、ストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションに対する信頼性を向上させることができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる半導体装置とその製造方法の好適な実施の形態を詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態で用いられる半導体装置の断面図は模式的なものであり、層の厚みと幅との関係や各層の厚みの比率などは現実のものとは異なる。
【0015】
実施の形態1.
図1は、この発明にかかる半導体装置の構造の一例を示す一部断面図である。シリコンなどの基板10の上面内には、シリコン酸化膜などからなる素子分離絶縁膜11が形成されている。素子分離絶縁膜11によって規定される素子形成領域内には、MOS(Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタ20が形成されている。MOSトランジスタ20は、ゲート酸化膜22、ゲート電極23およびサイドウォール24からなるゲート構造21と、ゲート構造21の下方のチャネル領域を挟んで対を成すソース/ドレイン領域25とを有している。
【0016】
MOSトランジスタ20が形成される基板10上には、複数の配線層が形成されており、図1の例では、基板10上に第1と第2の配線層30,50の2層の配線層が形成される場合が示されている。第1の配線層30は、MOSトランジスタ20を有する基板10上に形成される下部層間絶縁膜31と、第1層配線34が形成される上部層間絶縁膜33と、を含む。下部層間絶縁膜31内には、MOSトランジスタ20のソース/ドレイン領域25に接続された複数のプラグ32が形成されている。また、第1層配線34は、上部層間絶縁膜33内の所定の位置に、バリアメタル層35と銅配線36とが積層されて構成される。そして、この第1層配線34は、下部層間絶縁膜31に形成されたプラグ32に接続され、下層のソース/ドレイン領域25と電気的に接続される。
【0017】
第2の配線層50は、第1の配線層30上に形成され、下部層間絶縁膜51と、銅拡散防止用絶縁膜52と、配線溝エッチングストッパ用絶縁膜53と、上部層間絶縁膜54と、これらの各絶縁膜51〜54内に所定の形状にパターン形成され、第1の配線層30の第1層配線34と電気的に接続される第2層配線55と、を含む。第2層配線55は、上部層間絶縁膜54内の所定の形状に形成された上層配線溝62内と、銅拡散防止用絶縁膜52、配線溝エッチングストッパ用絶縁膜53および下部層間絶縁膜51中に上層配線溝62と下層の第1層配線34とを結ぶように形成された接続孔61内に、バリアメタル層56と銅配線57とが積層されて構成される。
【0018】
下部層間絶縁膜51と上部層間絶縁膜54は、従来から使用されている酸化膜などの層間絶縁膜を用いることができる。また、配線溝エッチングストッパ用絶縁膜53は、上部層間絶縁膜54に形成される上層配線溝62の底部に相当する部分に形成され、上部層間絶縁膜54に配線溝形成時のエッチングストッパとして機能する絶縁膜である。
【0019】
銅拡散防止用絶縁膜52は、上層配線溝62に作製される銅配線57の銅が下部層間絶縁膜51中に拡散することを防止する機能を有する膜であり、たとえば、SiN,SiCO、その他テフロン(登録商標)などの電気的に絶縁性能を有する材料を用いることができる。この銅拡散防止用絶縁膜52は、接続孔61底部のバリアメタル層56のエッチングの際に発生する上層配線溝62底部の局所的なエッチング深さの最大値が、この銅拡散防止用絶縁膜52の厚さ内に収まるように形成される。この厚さは、予め実験にて求めておく必要がある。
【0020】
このように、配線溝エッチングストッパ用絶縁膜53で、接続孔61の底部のバリアメタル層56の完全な除去の際における上層配線溝62底部のバリアメタル層56の一部が下部層間絶縁膜51まで除去されることを防止し、配線溝エッチングストッパ用絶縁膜53を貫通するようにその一部が除去されたとしても、さらに下部の銅拡散防止用絶縁膜52によって、その後に形成される銅配線57の銅の下部層間絶縁膜51への拡散を防止する。
【0021】
つぎに、この発明にかかる半導体装置の製造方法について説明する。図2−1〜図2−7は、この発明による半導体装置の製造方法の手順を模式的に示す断面図である。ただし、以下の説明では、この実施の形態1の特徴となる配線層を形成する手順のみを示す。また、配線層は複数層形成されることもあるので、基板を含む下層に形成される配線(以下、下層配線層という。図1の第1の配線層30に対応する。)130上に、上層の配線(以下、上層配線層という。図1の第2の配線層50に対応する。)150を形成する場合を例に挙げて説明する。
【0022】
まず、図2−1に示されるように、下層配線層130が形成された基板を用意する。ここでは、たとえば図示しない半導体基板上の層間絶縁膜133の所定の位置に形成された下層配線溝142の側壁部と底部を覆うようにTa/TaNなどの銅の拡散を防止するバリアメタル層135が形成され、さらにその内部を下層銅配線136で埋めた下層配線134が用意される。
【0023】
ついで、図2−2に示されるように、この下層配線層130上に、4層積層構造の層間絶縁膜151〜154を形成する。つまり、下層配線層130上に、下部層間絶縁膜151、銅拡散防止用絶縁膜152、配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153、および上部層間絶縁膜154を順に積層させる。配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153は、後の工程で上部層間絶縁膜154における上層配線溝162形成時のエッチングストッパとして機能させるために、上層配線溝162の底部に相当する部分に形成される。なお、配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153と銅拡散防止用絶縁膜152の厚さと、後の工程で形成されるバリアメタル層156の厚さの合計は、バリアメタル層156のエッチングの際に発生する局所的なエッチング深さの最大値よりも大きくなるように設計される。
【0024】
ついで、図2−3に示されるように、リソグラフィ技術とエッチング技術によって、上部層間絶縁膜154上にフォトレジストを塗布した後、上層配線溝162を形成する部分のフォトレジストを除去し、上記フォトレジストをマスクとして上部層間絶縁膜154をエッチングする。このとき、配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153が、上部層間絶縁膜154のエッチング時のストッパとして働く。これにより、上層配線溝162が形成される。その後、上部層間絶縁膜154と配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153上にフォトレジストを塗布した後、下層銅配線136と上層配線溝162とを接続する接続孔161を形成する部分のフォトレジストを除去し、上記フォトレジストをマスクとして配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153、銅拡散防止用絶縁膜152および下部層間絶縁膜151をエッチングする。このときの、上層配線溝162の底部が下層銅配線136に到達する位置まで下部層間絶縁膜151をエッチングする。これにより、接続孔161が形成される。
【0025】
接続孔161のエッチングに使用したフォトレジストを除去した後、図2−4に示されるように、銅の拡散防止の役目を果たすバリアメタル層156を形成する。ここでは、バリアメタル層156として、たとえばTa/TaNの積層膜をPVD法にて成膜したものとする。このバリアメタル層156は、上部層間絶縁膜154の上面、上層配線溝162の側面と底面、および接続孔161の側面と底面に形成される。
【0026】
続いて、図2−5に示されるように、バリアメタル層156を成膜した装置と同一装置内にて、リスパッタなどのエッチング処理を行い、接続孔161の底部のバリアメタル層156を完全に除去し、接続孔161の底部に存在する不純物などを除去する。このとき、発明が解決しようとする課題でも述べたように、上層配線溝162底部のバリアメタル層156も除去され、下地の絶縁膜が露出してしまう抜け部165が局所的に発生する。しかし、この実施の形態1では、バリアメタル層156と配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153と銅拡散防止用絶縁膜152を合わせた膜厚は、この接続孔161の底部のバリアメタル層156のエッチング時に除去される最大厚さよりも厚くしているため、上層配線溝162上で局所的にバリアメタル層156が除去される部分でも、下部層間絶縁膜151まで除去(露出)されることはない。つまり、上層配線溝162底部で最も除去された部分でも、銅拡散防止用絶縁膜152が露出される状態となる。
【0027】
ついで、図2−6に示されるように、上層銅配線157の銅と下部層間絶縁膜151との直接の接触や、接続孔161底部での上層銅配線157の銅と下層銅配線136の銅同士の直接の接触を防ぐために、バリアメタル層156のエッチング処理を行った装置と同一装置内において再度PVD法でTa/TaNの積層膜などからなるバリアメタル層156を成膜する。これにより、上層配線溝162底部のバリアメタル層156の下地が露出した部分がバリアメタル層156で被覆される。
【0028】
引き続いて、接続孔161および上層配線溝162に上層銅配線157を形成するための図示しない銅シード層を成膜し、めっき法によって上層配線溝162内と接続孔161内の銅シード層上に銅膜を埋め込んで上層銅配線157を形成し、CMPなどによる研磨処理などを行って、図2−7に示されるように、上層配線155が形成される。以上により、半導体装置の下層配線層130上に上層配線層150が作製される。
【0029】
この実施の形態1によれば、上層配線溝162底部に銅拡散防止用絶縁膜152を形成したので、接続孔161底部のバリアメタル層156を完全にエッチングした際に生じる上層配線溝162の下部の絶縁膜の露出(エッチング)が最大深さまで行われたとしても、その位置は銅拡散防止用絶縁膜152中となる。そのため、接続孔161のエッチング処理後のPVD法によるバリアメタル層156の再成膜で、上層配線溝162底部の抜け部165について、十分な段差被覆が得られなかった場合、つまり下地が露出した部分を完全に埋めることができなかった場合でも、上層配線溝162内に埋め込まれる上層銅配線157の銅の下部層間絶縁膜151中への拡散が防止され、ストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションに対する信頼性を向上させることができるという効果を有する。
【0030】
実施の形態2.
実施の形態1の配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153の下(下部層間絶縁膜151の上)の銅拡散防止用絶縁膜152として、実施の形態1の銅拡散防止用絶縁膜152に電子線キュアなどの改質処理を行って、銅の拡散を防止するとともにプラズマダメージ耐性をもたせた材料を用いることもできる。
【0031】
この実施の形態2によれば、銅拡散防止機能とプラズマダメージ耐性のある材料を銅拡散防止用絶縁膜152として使用するようにしたので、バリアメタル層156のカバレッジが不足している部分から銅の下部層間絶縁膜151中への拡散が防止されるとともに、エッチング処理時のプラズマによる絶縁膜の誘電率上昇を防ぎ、配線間容量の増加による配線の遅延時間の増加を抑制することができるという効果を有する。
【0032】
実施の形態3.
図3は、この発明にかかる半導体装置の配線層の実施の形態3の構造を模式的に示す断面図である。この実施の形態3では、実施の形態1の配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153の下(下部層間絶縁膜151の上)の銅拡散防止用絶縁膜152に代えて、接続孔161の底部のバリアメタル層156のin-situエッチングに対してエッチング耐性のあるin-situエッチングストッパ用絶縁膜158を用いた構造を有している。このin-situエッチングストッパ用絶縁膜158として、SiN,SiCNやテフロン(登録商標)などのin-situエッチングに対する耐性を有し、電気的に絶縁性能を有する材料を用いることができる。
【0033】
このような構造の半導体装置の配線層は、銅拡散防止用絶縁膜152の代わりにin-situエッチングストッパ用絶縁膜158を形成する点を除いて、実施の形態1で説明した製造方法と同様の手順で作成されるので、その詳細な説明を省略する。
【0034】
図4−1は、接続孔底部のバリアメタル層をin-situエッチングで除去した状態を模式的に示す断面図であり、図4−2は、in-situエッチングで除去後にバリアメタル層を再成膜した状態を模式的に示す断面図である。図4−1に示されるように、このin-situエッチングストッパ用絶縁膜158を用いることで、接続孔161底部のバリアメタル層156を除去する工程では、上層配線溝162の底部の一部ではバリアメタル層156と配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153がエッチングされ、局所的に抜け部165が発生してしまうが、in-situエッチングに耐性を有するin-situエッチングストッパ用絶縁膜158ではその削れ(エッチング)が抑制される。そのため、銅拡散防止用絶縁膜152まで削れていた(エッチングされていた)実施の形態1,2の場合と比較して、上層配線溝162底部の一部でエッチングの際に発生する段差が低減される。これにより、図4−2に示されるように、in-situエッチング後にPVD法によって再成膜するバリアメタル層156の段差被覆性が改善され、バリアメタル層156の抜け部165がなくなる。この結果、バリアメタル層156の抜け部165からの銅の下部層間絶縁膜151中への拡散が防止され、ストレスマイグレーションやエレクトロマイグレーションに対する信頼性が向上する。
【0035】
この実施の形態3によれば、上層配線溝162の底部にin-situエッチングストッパ用絶縁膜158を形成したので、接続孔161底部のバリアメタル層156を完全に除去するin-situエッチング時に生じる上層配線溝162の底部の局所的なエッチングが、このin-situエッチングストッパ用絶縁膜158で止められる。そのため、エッチングされるのはバリアメタル層156と配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153のみとなり、その段差(エッチング量)を実施の形態1,2の場合と比して小さくすることができる。その結果、in-situエッチング後に成膜するバリアメタル層156の再成膜において段差被覆性が改善されるという効果を有する。
【0036】
実施の形態4.
実施の形態3の配線溝エッチングストッパ用絶縁膜153の下(下部層間絶縁膜151の上)のin-situエッチングストッパ用絶縁膜158として、実施の形態3の銅拡散防止用絶縁膜158に電子線キュアなどの改質処理を行って、in-situエッチングに対するエッチング耐性を有するとともにプラズマダメージ耐性をもたせた材料を用いることもできる。
【0037】
この実施の形態4によれば、in-situエッチング耐性とプラズマダメージ耐性のある材料をin-situエッチングストッパ用絶縁膜158として使用することで、バリアメタル層156のin-situエッチング時に発生する絶縁膜の削れ(エッチング)を抑制するとともに、in-situエッチング処理時のプラズマによる絶縁膜の誘電率上昇を防ぎ、配線間容量の増加による配線の遅延時間の増加を抑制することができるという効果を有する。
【0038】
なお、上述した実施の形態1〜4の説明では、バリアメタル層156として、PVD法で作製したTa/TaNの積層膜を用いたが、いずれかの単層でバリアメタル層156を構成してもよい。また、他の材料として、Ti(チタン)、W(タングステン)などの高融点金属、もしくはそれらの窒化物、窒化珪化物、またはこれらの積層膜を用いてもよい。
【0039】
さらに、上述した実施の形態1〜4の説明では、接続孔161の底部のバリアメタル層156のエッチング後に、PVD法によるTa/TaNの積層膜を用いてバリアメタル層156を再形成していたが、この場合にも、いずれかの単層膜をバリアメタル層156として再形成してもよいし、Ti,Wなどの高融点金属、もしくはそれらの窒化物、窒化珪化物、炭化窒化物などの他の材料でバリアメタル層156を再形成してもよい。また、上述した説明では、銅配線の配線層の場合を説明したが、銅を含む材料によって構成される配線の場合にも同様に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、この発明にかかる半導体装置は、銅配線を有する半導体装置に有用であり、特に、ダマシンプロセスによって銅配線を用いた多層配線を有する半導体装置に適している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明による半導体装置の構造の一例を示す一部断面図である。
【図2−1】この発明による半導体装置の配線層の製造方法の手順を模式的に示す断面図である(その1)。
【図2−2】この発明による半導体装置の配線層の製造方法の手順を模式的に示す断面図である(その2)。
【図2−3】この発明による半導体装置の配線層の製造方法の手順を模式的に示す断面図である(その3)。
【図2−4】この発明による半導体装置の配線層の製造方法の手順を模式的に示す断面図である(その4)。
【図2−5】この発明による半導体装置の配線層の製造方法の手順を模式的に示す断面図である(その5)。
【図2−6】この発明による半導体装置の配線層の製造方法の手順を模式的に示す断面図である(その6)。
【図2−7】この発明による半導体装置の配線層の製造方法の手順を模式的に示す断面図である(その7)。
【図3】この発明による半導体装置の配線層の実施の形態3の構造を模式的に示す断面図である。
【図4−1】接続孔の底部のバリアメタル層をin-situエッチングで除去した状態を模式的に示す断面図である。
【図4−2】in-situエッチングで除去後にバリアメタル層を再成膜した状態を模式的に示す断面図である。
【図5−1】銅ダマシン配線を有する半導体装置の配線層の製造方法の手順の一例を示す断面図である(その1)。
【図5−2】銅ダマシン配線を有する半導体装置の配線層の製造方法の手順の一例を示す断面図である(その2)。
【図5−3】銅ダマシン配線を有する半導体装置の配線層の製造方法の手順の一例を示す断面図である(その3)。
【図5−4】銅ダマシン配線を有する半導体装置の配線層の製造方法の手順の一例を示す断面図である(その4)。
【図6】物理エッチング処理後にPVD法によってバリアメタル層を再成膜した状態を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
10 基板
11 素子分離絶縁膜
20 MOSトランジスタ
21 ゲート構造
22 ゲート絶縁膜
23 ゲート電極
24 サイドウォール
25 ソース/ドレイン領域
30 第1の配線層
31,51,151 下部層間絶縁膜
32 プラグ
33,54,133,154 上部層間絶縁膜
34 第1層配線
35,56,135,156 バリアメタル層
36,57,136,157 銅配線
50 第2の配線層
52,152 銅拡散防止用絶縁膜
53,153 配線溝エッチングストッパ用絶縁膜
55 第2層配線
130 下部配線層
133 層間絶縁膜
134 下層配線層
142 配線溝
150 上部配線層
155 上層配線層
158 in-situエッチングストッパ用絶縁膜
161 接続孔
162 上層配線溝
165 抜け部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の形状にパターン形成された銅を含む材料によって構成される下層銅配線を有する下層配線層と、
所定の形状にパターン形成され、前記下層銅配線と電気的に接続され、銅を含む材料によって構成される上層銅配線を有する上層配線層と、
を備える半導体装置において、
前記上層配線層は、
所定の形状の配線溝に上層銅配線が埋め込まれた上部層間絶縁膜と、
前記上層銅配線と前記下層配線層の前記下層銅配線とを接続する接続孔に前記上層銅配線が埋め込まれた下部層間絶縁膜と、
前記上部層間絶縁膜の前記配線溝の下部と前記下部層間絶縁膜との間に、銅の拡散を防止する所定の厚さの銅拡散防止用絶縁膜と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記銅拡散防止用絶縁膜は、プラズマダメージ耐性をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
所定の形状にパターン形成された銅を含む材料によって構成される下層銅配線を有する下層配線層と、
所定の形状にパターン形成され、前記下層銅配線と電気的に接続され、銅を含む材料によって構成される上層銅配線を有する上層配線層と、
を備える半導体装置において、
前記上層配線層は、
所定の形状の配線溝に上層銅配線がバリアメタル層を介して埋め込まれた上部層間絶縁膜と、
前記上層銅配線と前記下層配線層の前記下層銅配線とを接続する接続孔に前記上層銅配線がバリアメタル層を介して埋め込まれた下部層間絶縁膜と、
前記上部層間絶縁膜の前記配線溝の下部と前記下部層間絶縁膜との間に、前記バリアメタル層のエッチングに対するエッチング耐性を有するin-situエッチングストッパ用絶縁膜と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記in-situエッチングストッパ用絶縁膜は、プラズマダメージ耐性をさらに有することを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
配線層を有する半導体装置の製造方法であって、
絶縁膜内に所定の形状にパターン形成された下層銅配線を有する下層配線層上に下部層間絶縁膜、銅の前記下部層間絶縁膜への拡散を防止する銅拡散防止用絶縁膜、および上部層間絶縁膜を含む絶縁膜を順に積層させる絶縁膜形成工程と、
前記上部層間絶縁膜に上層銅配線を形成するための配線溝を、その底部が前記上部層間絶縁膜の下面とほぼ同じ深さとなるように形成する配線溝形成工程と、
前記配線溝の底部の所定の位置に、前記下層銅配線に達する接続孔を形成する接続孔形成工程と、
前記配線溝と前記接続孔にバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程と、
前記接続孔の底部の前記バリアメタル層を完全に除去するバリアメタル層除去工程と、
前記配線溝と前記接続孔にバリアメタル層を再形成するバリアメタル層再形成工程と、
前記バリアメタル層が形成された前記配線溝と前記接続孔内に、上層銅配線を形成する銅配線形成工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁膜形成工程で、前記銅拡散防止用絶縁膜は、銅の前記下部層間絶縁膜への拡散を防止する機能に加えて、プラズマダメージ耐性を有する材料によって形成されることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
配線層を有する半導体装置の製造方法であって、
絶縁膜内に所定の形状にパターン形成された下層銅配線を有する下層配線層上に下部層間絶縁膜、接続孔の底部のバリアメタル層の除去時におけるエッチング耐性を有するin-situエッチングストッパ用絶縁膜、および上部層間絶縁膜を含む絶縁膜を順に積層させる絶縁膜形成工程と、
前記上部層間絶縁膜に上層銅配線を形成するための配線溝を、その底部が前記上部層間絶縁膜の下面とほぼ同じ深さとなるように形成する配線溝形成工程と、
前記配線溝の底部の所定の位置に、前記下層銅配線に達する接続孔を形成する接続孔形成工程と、
前記配線溝と前記接続孔にバリアメタル層を形成するバリアメタル層形成工程と、
前記接続孔の底部の前記バリアメタル層を完全に除去するバリアメタル層除去工程と、
前記配線溝と前記接続孔にバリアメタル層を再形成するバリアメタル層再形成工程と、
前記バリアメタル層が形成された前記配線溝と前記接続孔内に、上層銅配線を形成する銅配線形成工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記絶縁膜形成工程で、前記in-situエッチングストッパ用絶縁膜は、プラズマダメージ耐性をさらに有する材料によって形成されることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図5−4】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−81284(P2007−81284A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269936(P2005−269936)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】