説明

半導体装置とその製造方法

【課題】
熱処理により、強誘電体膜の構成元素が蒸発する問題に対処する。
【解決手段】
半導体装置は、半導体基板と、半導体基板に形成されたMOSトランジスタと、MOSトランジスタを覆う下部層間絶縁膜と、下部層間絶縁膜上方に形成され、キャパシタ下部電極と、キャパシタ下部電極上に形成された酸化物強誘電体膜と、酸化物強誘電体膜上に形成されたキャパシタ上部電極と、を含む強誘電体キャパシタと、少なくとも、上部電極と酸化物強誘電体膜の露出した表面を覆う、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第1絶縁性キャパシタ保護膜と、第1絶縁性キャパシタ保護膜を覆い、酸化物強誘電体の酸素以外の構成元素の内、少なくとも1つの元素を含む、蒸発補償膜と、蒸発補償膜を覆う、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第2絶縁性キャパシタ保護膜と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体装置とその製造方法に関し、特に強誘電体キャパシタを有する半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,デジタル技術の進展に伴い、大容量のデータを高速に処理、または保存する要望が高い。このため、電子機器に使用される半導体装置の高集積化、高性能化が要求されている。例えば、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)の高集積化を実現するために、酸化シリコン膜または窒化シリコン膜に代え、強誘電体材料膜または高誘電率材料膜をキャパシタ誘電体膜として用いる技術が広く研究、開発されている。
【0003】
より低電圧でかつ高速での書き込み、読み出しが可能な不揮発性メモリを実現するため、自発分極特性を有する強誘電体材料膜をキャパシタ誘電体膜として用いる強誘電体メモリ(FeRAM)が盛んに研究開発されている。
【0004】
強誘電体メモリは、一対の電極間に強誘電体膜が挟まれた強誘電体キャパシタのヒステリシス特性を利用して情報を記憶する。強誘電体膜は、電極間の印加電圧に応じて分極を生じ、印加電圧が取り去られても自発分極を保持する。印加電圧の極性を反転すれば、自発分極の極性も反転する。自発分極を検出すれば、情報を読み出すことができる。強誘電体メモリはフラッシュメモリに比べて低電圧で動作し、省電力で、高速の書き込みが可能である。
【0005】
FeRAMは、その構造によりプレーナ型とスタック型とに大別される。プレーナ型では、半導体基板に形成されたMOSトランジスタとキャパシタ下部電極とがキャパシタの上方の金属配線を介して電気的に接続され、キャパシタの占有面積が大きくなりやすい傾向がある。
【0006】
スタック型のFeRAMでは、MOSトランジスタのソースドレイン領域につながる導電性プラグの上にキャパシタ下部電極が形成され、その導電性プラグを介して下部電極とMOSトランジスタとが電気的に接続される。このような構造によれば、プレーナ型と比較してキャパシタの占有面積を小さくすることができ、FeRAMの微細化に有利となる。スタック型のFeRAMは、微細化されても優れた強誘電体キャパシタ特性を呈することが求められる。
【0007】
強誘電体キャパシタの上部電極を成膜するとき、あるいはキャパシタをパターニングするときには、強誘電体膜が高エネルギのスパッタリング粒子、エッチングガス等による物理的ダメージを受ける。強誘電体膜がダメージを受けると、強誘電体膜の結晶構造の一部が破壊され、容量素子の特性が劣化してしまう。キャパシタのダメージを抑制し、特性劣化を回復させるため、種々の対策が提案されている。
【0008】
特開2003−332536は、下部電極膜、強誘電体膜、上部電極膜を積層し、上部電極膜をパターニングし、酸素雰囲気中で熱処理し、強誘電体膜をパターニングし、酸素雰囲気中で熱処理し、下部電極膜をパターニングし、酸素雰囲気中で熱処理を行い、その後水素の侵入をブロックするため、酸化アルミニウム、又は酸化チタン、PLZT、PZTで形成される水素拡散防止膜を堆積することを開示する。
【0009】
酸素雰囲気中での熱処理により、強誘電体膜に酸素が供給され、結晶性を回復させる。強誘電体膜を水素劣化から保護するためには、水素拡散防止膜として酸化アルミニウム膜等がキャパシタを覆うように形成される。
【0010】
特開2001−111007は、強誘電体キャパシタの表面をキャパシタ誘電体膜からの酸素揮発防止機能を有する酸化チタン等の揮発防止膜で覆い、その上に外部から侵入する水素の拡散を防止する酸化アルミニウム等の水素侵入防止膜で覆うカプセル構造を提案する。
【0011】
特開2005-183843は、PZT強誘電体膜の劣化を回復するために、強誘電体キャパシタ形成後、酸化アルミニウム保護膜を形成し、酸素雰囲気中で回復アニールを行ってPZTに酸素を供給すると共に、PZTからのPbの蒸発を抑制し、さらにその上に第2酸化アルミニウム保護膜を形成する方法を提案する。
【0012】
特開2003−273332は、PZT強誘電体キャパシタを炭素含有量が異なる2種類の酸化アルミニウム膜で覆う方法を提案する。
【0013】
【特許文献1】特開2003−332536号広報
【特許文献2】特開2001−111007号広報
【特許文献3】特開2005−183843号広報
【特許文献4】特開2003−273332号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
強誘電体膜をパターニングした後、熱処理を行うと、強誘電体膜の構成元素が蒸発し、強誘電体膜に空位が形成される可能性がある。PZT、PLZT等の強誘電体膜を用いる場合、熱処理によりPb欠損が生じる可能性がある。このような欠損は、強誘電体キャパシタのスイッチング特性を低下させ、初期特性及びリテンション特性を低下させる。半導体集積回路の微細化に伴い、強誘電体キャパシタの強誘電体膜側面の面積比は増加している。従って、半導体集積回路の微細化に伴い、強誘電体膜の構成元素蒸発の問題が増大する。
【0015】
本発明の目的は、熱処理により、強誘電体膜の構成元素が蒸発する問題に対処することのできる半導体装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1観点によれば、
半導体基板と、
前記半導体基板に形成されたMOSトランジスタと、
前記MOSトランジスタを覆う下部層間絶縁膜と、
前記下部層間絶縁膜上方に形成され、キャパシタ下部電極と、前記キャパシタ下部電極上に形成された酸化物強誘電体膜と、前記酸化物強誘電体膜上に形成されたキャパシタ上部電極と、を含む強誘電体キャパシタと、
少なくとも、前記上部電極と前記酸化物強誘電体膜の露出した表面を覆う、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第1絶縁性キャパシタ保護膜と、
前記第1絶縁性キャパシタ保護膜を覆い、前記酸化物強誘電体の酸素以外の構成元素の内、最も蒸発しやすい元素を含む、蒸発補償膜と、
前記蒸発補償膜を覆う、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第2絶縁性キャパシタ保護膜と、
を有する半導体装置
が提供される。
【0017】
本発明の他の観点によれば、
(a)半導体基板にMOSトランジスタを形成する工程と、
(b)前記MOSトランジスタを覆って、前記半導体基板上に下部層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記下部層間絶縁膜上方にキャパシタ下部電極膜と、前記キャパシタ下部電極上に酸化物強誘電体のキャパシタ誘電体膜と、前記キャパシタ誘電体膜上に、キャパシタ上部電極膜とを積層する工程と、
(d)少なくとも前記キャパシタ上部電極膜をパターニングする工程と、
(e)前記キャパシタ上部電極膜、前記キャパシタ誘電体膜の露出された表面を覆って、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第1絶縁性キャパシタ保護膜を形成する工程と、
(f)前記第1絶縁性キャパシタ保護膜を覆って、前記酸化物強誘電体の酸素以外の構成元素の内、最も蒸発しやすい元素を含む、蒸発補償膜を形成する工程と、
(g)前記工程(f)の後、酸化性雰囲気中で熱処理する工程と、
(h)前記工程(g)の後、前記蒸発補償膜を覆って、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第2絶縁性キャパシタ保護膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法
が提供される。
【発明の効果】
【0018】
強誘電体膜の露出した表面を水素拡散防止機能を有するキャパシタ保護膜で覆い、さらに強誘電体膜の酸素以外の構成元素のうち最も蒸発しやすい元素を含む蒸発保障膜を形成することにより、蒸発保障膜から導入される構成元素が、強誘電体膜から蒸発する構成元素を補償する。蒸発補償膜をさらに水素拡散防止機能を有する保護膜で覆うことにより、蒸発補償膜から蒸発した構成元素が外部に逃散することを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。スイッチングトランジスタ1つとキャパシタ1つでメモリセル1つを構成する場合、2つのメモリセルのトランジスタの電流端子領域を共用することができる。例えば、2つのMOSトランジスタのソース領域を共通としてビット線に接続し、各ドレイン領域にキャパシタを接続して2つのメモリセルを形成することができる。基板面積利用率を向上することができる。DRAMにおいて、広く用いられている接続形式である。以下に説明する本発明の実施例においても、この接続形式を採用する。
【0020】
図1A−1Tを参照して、本発明の第1の実施例によるスタック型FeRAMの製造方法を説明する。この製造方法によって製造される半導体装置の構成も、本発明の第1の実施例である。
【0021】
図1Aに示すように、n型またはp型シリコンからなる基板1の表層部に素子分離溝を形成し、溝表面を酸化してライナを形成した後、例えば高密度プラズマ(HDP)CVDにより酸化シリコン膜を埋め込み、不要部をCMPで除去し、マスク/ストッパを除去してシャロートレンチアイソレーション(STI)による素子分離領域2を形成し、活性領域を画定する。素子分離領域を、STIに代え、LOCOSにより形成してもよい。活性領域の表層部にp型不純物を注入することにより、p型ウェル3を形成する。
【0022】
p型ウェルで構成される各活性領域内に2つのMOSトランジスタ5を形成し、各MOSトランジスタに1つの強誘電体キャパシタを接続する。以下、MOSトランジスタ5の形成方法について簡単に説明する。
【0023】
活性領域の表層部を熱酸化することによりゲート絶縁膜となるSiO膜を形成する。基板上に、非晶質または多結晶シリコンからなるシリコン膜を形成し、パターニングすることにより、ゲート電極5Gを形成する。平面視において、1つの活性領域を、2本のゲート電極がほぼ平行に横切る。ゲート電極は、ワード線を兼ねる。
【0024】
ゲート電極5Gをマスクとしてn型不純物をイオン注入することにより、ソース領域5S及びドレイン領域5Dのエクステンション部を形成する。ゲート電極5Gの側面に酸化シリコン等によりサイドウォールスペーサを形成する。ゲート電極5Gとサイドウォールスペーサとをマスクとして、n型不純物をイオン注入することにより、ソース領域5S及びドレイン領域5Dの深い高濃度領域を形成する。ここまでの工程で、MOSトランジスタ5が形成される。
【0025】
次に、基板上に、コバルト(Co)等の高融点金属からなる膜をスパッタリングにより形成する。熱処理を行うことにより、高融点金属膜とシリコンとを反応させ、ゲート電極5G、ソース領域5S、及びドレイン領域5Dの上面に、高融点金属シリサイド膜を形成する。その後、未反応の高融点金属膜を除去し、必要に応じてさらに熱処理してシリサイド膜6を形成する。ソース/ドレイン領域5S,5Dが低抵抗化されると共に、ゲート電極も低抵抗化される。
【0026】
MOSトランジスタ5を覆うように、基板上に、厚さ200nmのSiONのカバー絶縁膜11を、プラズマCVDにより形成する。さらに、カバー絶縁膜11の上に、例えば厚さ1000nmのSiOの層間絶縁膜12を形成する。層間絶縁膜12は、例えば酸素(O)とテトラエチルオルソシリケート(TEOS)とを用いたプラズマCVDにより形成される。その後、層間絶縁膜12の表面を、化学機械研磨(CMP)により平坦化する。平坦化された後に、基板の平坦部における厚さが約700nmになるようにCMPの制御を行う。
【0027】
層間絶縁膜12及びカバー絶縁膜11を貫通して、ドレイン領域5D上のシリサイド膜6、及びソース領域5S上のシリサイド膜6まで達するコンタクト孔を形成する。コンタクト孔の直径は、例えば0.25μmとする。
【0028】
スパッタリングにより、コンタクト孔の内面、及び層間絶縁膜12の上面を、厚さ30nmのTi膜と、厚さ20nmのTiN膜の2層で覆う。さらにその上に、CVDによりコンタクト孔内が完全に埋め尽くされるまでW膜を形成する。W膜の厚さは、例えば300nmとすればよい。層間絶縁膜12上の余分なW膜、TiN膜、及びTi膜をCMPで除去することにより、コンタクト孔内に、Ti膜とTiN膜からなる密着層、及びW膜からなる導電性プラグ15、16を残す。導電性プラグ15及び16は、それぞれドレイン領域5D及びソース領域5Sに接続される。
【0029】
図1Bに示すように、層間絶縁膜12の上に、厚さ130nmのSiONからなる酸化防止膜21をプラズマCVDにより形成する。なお、SiONに代えて、SiNまたはAlOからなる酸化防止膜21を形成してもよい。さらにその上に、SiOからなる厚さ300nmの層間絶縁膜22を、OとTEOSとを用いたプラズマCVDにより形成する。
【0030】
図1Cに示すように、層間絶縁膜22及び酸化防止膜21に、その下の導電性プラグ15を露出させるコンタクト孔を形成する。このコンタクト孔の内面を密着膜で覆うと共に、コンタクト孔内にWを埋め込み、導電性プラグ25を形成する。この導電性プラグ25は、その下の導電性プラグ15と同一の方法で形成できる。なお、Wプラグに代え、ポリSiプラグを用いることもできる。
【0031】
余分なW膜及び密着膜を除去するためのCMPは、W膜及び密着膜の研磨速度が、層間絶縁膜22の研磨速度よりも速い条件で行う。例えば、スラリとして、Cabot Microelectronics Corporation製のSSW2000を使用する。また、層間絶縁膜22の上に密着膜やW膜が残らないように、ややオーバ研磨を行う。このため、導電性プラグ25の上面が、その周囲の層間絶縁膜22の上面よりも低くなり、窪み25aが発生する。この窪み25aの深さは、例えば20nm〜50nmであり、典型的には約50nmである。
【0032】
CMP後、層間絶縁膜22の上面及び導電性プラグ25の上面を、アンモニア(NH)のプラズマに晒す。このプラズマ処理は、平行平板型プラズマ処理装置を用い、例えば下記の条件で行う。
・基板表面と対向電極との間隔 約9mm(350mils);
・圧力 266Pa(2Torr);
・基板温度:400℃;
・NHガス流量:350sccm;
・基板側電極に供給する13.56MHzのRFパワー 100W;
・対向電極に供給する350kHzのRFパワー 55W;
・処理時間 60秒。
NHプラズマ処理により、酸化シリコン膜表面の酸素原子にNH基が結合する。
【0033】
図1Dに示すように、プラズマ処理した表面上に、厚さ100nmのTi膜を、DCスパッタリングにより形成する。スパッタリング条件は、例えば下記の通りである。
・ターゲット Ti;
・基板とターゲットとの間隔 60mm;
・Arガス圧 0.15Pa;
・基板温度 20℃;
・スパッタパワー 2.6kW;
・成膜時間 35秒。
酸化シリコン膜表面の酸素原子にNH基が結合しているので、表面に付着したTi原子は、酸素原子に捕獲されることなく、表面を自在にマイグレーションすることができる。その結果、層間絶縁膜表面に、六方稠密構造を有し、(002)配向に自己組織化されたTi膜が得られる。
【0034】
次に、窒素雰囲気中で、ラピッドサーマルアニール(RTA)を行う。RTAの条件は、例えば下記のとおりである。
・アニール温度 650℃;
・処理時間 60秒。
このアニールにより、Ti膜が窒化されて、面心立方構造を有し、(111)配向したTiNからなる下地導電膜30が得られる。なお、下地導電膜30の厚さを100nm〜300nmの範囲内としてもよい。この段階では、下地導電膜30の表面には、下地表面の窪み25aを反映して、導電性プラグ25の上方に窪みが発生している。下地導電膜30のCMPを行うことにより、その表面を平坦化する。例えば、スラリとして、Cabot Microelectronics Corporation製のSSW2000を使用する。CMP後の下地導電膜30の厚さを、50nm〜100nm、典型的には約50nmとする。
【0035】
CMPを行った下地導電層は、表面付近の結晶が研磨によって歪んだ状態になっている。このまま、下地導電層上に強誘電体キャパシタの下部電極を形成すると、下地導電層の歪が下部電極に伝達され、下部電極の結晶性、さらにはその上の強誘電体膜の結晶性に影響を与える。これを回避するため、CMP後、平坦化された下地導電膜30の表面を、NHプラズマに晒す。これにより、CMP時に下地導電膜30の表層部に発生した結晶歪が修復される。
【0036】
なお、下地導電膜として、窒化チタンに代え、タングステン、シリコン、銅のいずれかを用いることもできる。但し、結晶性向上のためには、アンモニアプラズマ処理とTiN膜の組み合わせが好ましい。
【0037】
図1Eに示すように、NHプラズマにより結晶の歪が解消された下地導電膜30の上に、スパッタリングにより、例えば厚さ20nmのTi膜を形成する。このTi膜は、密着膜として機能する結晶性導電膜となる。さらに、窒素雰囲気中でRTAを行う。RTAの条件は、例えば下記のとおりである。
・アニール温度 650℃;
・処理時間 60秒。
このアニールにより、Ti膜が窒化されて、面心立方構造を有し、(111)配向したTiNからなる結晶性向上膜31が得られる。
【0038】
なお、結晶性向上膜として、TiNに代え、Ir,Ptなどを用いることもできる。厚さは20nm程度が望ましい。
【0039】
図1Fに示すように、結晶性向上膜31の上に、厚さ100nmのTiAlNからなる酸素バリア膜33を、TiAl合金ターゲットを用いた反応性スパッタリングにより、形成する。スパッタリング条件は、例えば下記のとおりである。
・Arガス流量 40sccm;
・Nガス流量 10sccm;
・圧力 253.3Pa;
・基板温度 400℃;
・スパッタパワー 1.0kW。
【0040】
酸素バリア膜33の上に、Irからなる厚さ100nmの下部電極36をスパッタリングにより形成する。スパッタリングの条件は、例えば下記のとおりである。
・Ar雰囲気圧力 0.11Pa;
・基板温度500℃;
・スパッタパワー 0.5kW。
【0041】
下部電極36の成膜後、Ar雰囲気中で、かつ下部電極36の成膜温度よりも高い温度で、RTAによる熱処理を行う。具体的には下記の条件でRTAを行う。
・温度 650℃;
・処理時間 60秒。
この熱処理により、下部電極の結晶性を向上できる。結晶性の面内分布も向上できる。この熱処理により、酸素バリア膜33の構成元素であるAlと、上部電極36の構成元素であるIrとが反応して、両者の界面に、IrAl合金からなる中間層34が形成される。中間層34は、酸素バリア膜33と上部電極36との密着性を向上させる。なお、熱処理の雰囲気は、Arに代え、他の不活性ガス、例えば窒素やHeを用いてもよい。下部電極としては、Ir、Pt等の白金族の金属、あるいはPtO,IrO,SrRuO等の導電性酸化物、またはこれらの積層を用いることができる。下部電極36をPtまたはPtOで形成した場合には、PtAl合金を含む中間層34が形成される。下部電極36をSrRuOで形成した場合には、RuAl合金を含む中間層34が形成される。
【0042】
図1Gに示すように、下部電極36の上に、PZTからなる強誘電体膜37を、有機金属化学気相成長(MOCVD)により形成する。以下、強誘電体膜37の形成方法について説明する。
【0043】
Pb原料として、Pb(C1119[Pb(DPM)2]をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させた濃度0.3モル/リットルの液体原料を用いる。Zr原料として、Zr(C15[Zr(dmhd)4]をTHFに溶解させた濃度0.3モル/リットルの液体原料を用いる。Ti原料として、Ti(CO)(C1119[Ti(O−iOr)2(DPM)2]をTHFに溶解させた濃度0.3モル/リットルの液体原料を用いる。これらの液体原料を、0.474ml/分のTHF溶媒とともに、MOCVD装置の気化器に供給する。Pb原料、Zr原料、及びTi原料の流量は、それぞれ0.326ml/分、0.200ml/分、及び0.200ml/分とする。
【0044】
強誘電体膜37を形成すべき基板を、MOCVD装置のチャンバ内に装填する。チャンバ内の圧力を665Pa(5Torr)、基板温度を620℃とする。気化した原料ガスをチャンバ内に供給し、620秒間、成膜を行う。これにより、厚さ100nmのPZT膜が形成される。
【0045】
次いで、スパッタリングにより、厚さ1nm〜30nm、典型的には20nmのアモルファス相の第2PZT膜を形成する。アモルファス相のPZT膜を配置することにより、リーク電流を低減させることができる。なお、MOCVDでアモルファス強誘電体膜を形成することもできる。
【0046】
図1Hに示すように、強誘電体膜37の上に、第1導電性酸化膜38a、第2導電性酸化膜38b、第3導電性酸化膜38cで構成される3層構成の上部電極38を形成する。
【0047】
強誘電体膜37の上に、第1上部電極38aを成膜する。例えば、厚さ20nm〜70nmのIrO膜を成膜時点で結晶化した状態でリアクティブスパッタリングにより成膜する。成膜条件は、例えば以下の通りである。
・ターゲット:Ir
・成膜時の基板温度:300℃、
・成膜ガス:Ar+O
・流量:[Ar]=140sccm、[O]=60sccm、
・流量比:[O]/[Ar]=0.43、
・スパッタリングパワー:1kW〜2kW程度。
【0048】
このリアクティブスパッタリングにより成膜される第1導電性酸化膜38aのIrOは、化学量論的組成(x=2)よりも酸素組成xが少ない組成となる。
【0049】
第1導電性酸化膜38aの成膜後、下記の条件でRTAを行う。
・処理温度 725℃;
・雰囲気 O流量20sccm+Ar流量2000sccm;
・処理時間 60秒。
【0050】
この熱処理により、強誘電体膜37を完全に結晶化し、同時に、第1導電性酸化膜38aを形成するときにPZT膜37がプラズマに晒されることによって受けたダメージが回復し、PZT膜中の酸素欠損が補償される。
【0051】
第1導電性酸化膜38aの上に、厚さ30nm−100nmの第2導電性酸化膜(IrO膜)38b、厚さ50−150nmの第3の導電性酸化膜(IrO膜)あるいは導電性貴金属膜38cを形成する。第2の導電性酸化膜の酸素組成yを化学量論的組成(2)に近い値とし、第3の導電性酸化膜の酸素組成zをyより低い値とすることにより、異常成長を抑制し、酸素空位の発生を抑制することができる。
【0052】
例えば、第1導電性酸化膜38aの上に、厚さ30nm〜100nmのIrO膜の第2導電性酸化膜38bをリアクティブスパッタリングで成膜する。成膜条件は、例えば以下の通りである。
・ターゲット:Ir
・成膜時の基板温度:20℃、
・成膜ガス:Ar+O
・流量:[Ar]=100sccm、[O]=100sccm、
・流量比:[O]/[Ar]=1.00、
・スパッタリングパワー:1kW〜2kW程度。
【0053】
第2導電性酸化膜38bのIrOは異常成長せず、きれいなアモルファス膜が得られた。第2導電性酸化膜38bのIrOは、酸素組成yが第1導電性酸化膜IrOの酸素組成xより高く、y>x、より化学量論的組成に近い値となる。
【0054】
第2導電性酸化膜38bの成膜後。下記の条件でRTAを行う。
・処理温度:700℃、
・雰囲気:O流量20sccm+Ar流量2000sccm、
・処理時間:60秒、
この熱処理により、第2導電性酸化膜38bを完全に結晶化させると同時に、第1導電性酸化膜と第2導電性酸化膜の密着性を向上する。
【0055】
IrOの第2導電性酸化膜38bの上に、さらに厚さ50nm〜150nmのIrOの第3導電性酸化膜あるいは貴金属膜38cを成膜する。導電性酸化膜の成膜条件は、例えば以下の通りである。
・ターゲット:Ir
・成膜時の基板温度:300℃、
・成膜ガス:Ar+O
・流量:[Ar]=160sccm、[O]=40sccm、
・流量比:[O]/[Ar]=0.25、
・スパッタリングパワー:1kW〜2kW程度。
【0056】
酸素流量が低減されているため、IrOの第3導電性酸化膜38cは、酸素組成zの低いものz<y、z<xとなる。このメタリック成分の高い導電性酸化膜には異常成長は生じない。非常にきれいな結晶膜が得られた。
【0057】
貴金属膜を成膜する場合の成膜条件は、例えば以下の通りである。
・ターゲット:Ir,
・成膜時の基板温度:400℃、
・成膜ガス:Ar,
・流量:[Ar]=100sccm、
・スパッタリングパワー:1kw〜2kw程度。
【0058】
酸化イリジウム膜の組成を、高分解能RBS(ラザフォード後方散乱)分析装置HRBSV500により化学量論的組成(ストイキオメトリ)を測定した。 [Ar]:[O]流量比140:60で形成した第1の酸化イリジウム膜IrOは、x=1.92であり、化学量論的組成(x=2)より酸素欠乏の状態である。[Ar]:[O]流量比100:100で形成した第2の酸化イリジウム膜IrOは、y=2.02であり、化学量論的組成(y=2)にほぼ等しく、若干酸素過剰の状態である。酸素流量比を少し減少させ、[Ar]:[O]流量比を120:80として形成した第2の酸化イリジウム膜IrOは、y=2.00となった。[Ar]:[O]流量比160:40で形成した第3の酸化イリジウム膜IrOは、z=1.84であり、化学量論的組成(z=2)より酸素欠乏程度が最も高い状態である。同一温度、同一合計流量で成膜した場合、酸素組成はほぼ流量比[O]/[Ar]によって決まるようである。
【0059】
なお、第2導電性酸化膜38b、第3導電性酸化膜38cの成膜温度は、300℃に限らず、例えば50℃〜500℃の範囲から選択できる。但し、成膜されるIrO膜は、成膜時点でIrOが結晶化していることが望ましい。成膜ガスの流量、流量比は、成膜温度の合わせ、適宜変更することができる。
【0060】
第3導電性酸化膜の代わりに、貴金属膜、例えばIr膜、Ru膜等を用いることもできる。第1上部電極38a、第2上部電極38b、第3上部電極38cを合わせて強誘電体キャパシタの上部電極38が形成される。
【0061】
図1Iに示すように、上部電極38の上に、TiNからなる第1ハードマスク45、及びSiOからなる第2ハードマスク46を形成する。第1ハードマスク45は、例えばスパッタリングにより形成する。第2ハードマスク46は、例えば、OとTEOSとを用いたCVDにより形成する。
【0062】
図1Jに示すように、第2ハードマスク46を、形成すべき強誘電体キャパシタの平面形状になるようにパターニングする。次いで、パターニングされた第2ハードマスク46をエッチングマスクとして、第1ハードマスク45をエッチングする。
【0063】
図1Kに示すように、第2ハードマスク46及び第1ハードマスク45をエッチングマスクとして、上部電極38、強誘電体膜37、下部電極36(及び中間層34)をエッチングする。このエッチングは、例えば、HBr、O、Ar、及びCの混合ガスを用いたプラズマエッチングにより行われる。エッチング対象に余ってエッチングガスの組成は選択できる。パターニングされた下部電極36、強誘電体膜37、及び上部電極38が、強誘電体キャパシタ35を構成する。このエッチング時に、第2ハードマスク46の表層部もエッチングされる。
【0064】
図1Lに示すように、ドライエッチングまたはウェットエッチングにより、第2ハードマスク46を除去する。これにより、第1ハードマスク45が露出する。TiNの第1ハードマスク45、TiAlNの酸素バリア膜33は導電性であり、この段階で強誘電体キャパシタのスイッチング電荷量を測定することができる。
【0065】
図1Mに示すように、強誘電体キャパシタ35が配置されていない領域の酸素バリア膜33、結晶性向上膜31、及び下地導電膜30を、エッチングする。例えば、流量比で、5%のCFガスと95%のOガスとの混合ガスをエッチングガスとして、ダウンフロー型プラズマエッチングチャンバ内に供給し、チャンバ内の上部電極に2.45GHzのマイクロ波を、1400Wの高周波電力で供給し、基板温度200℃でドライエッチングする。あるいは、H,NHOH,及び純水の混合溶液をエッチング液とするウェットエッチングを行ってもよい。このとき、上部電極38の上に残っていた第1ハードマスク45も除去され、上部電極38が露出する。
【0066】
図1Nに示すように、露出している表面上に、厚さ1nm−30nm、例えば厚さ20nmのAl膜で水素拡散防止機能ないし水素拡散抑制機能を有する第1保護膜50をスパッタリングにより形成する。さらに、MOCVDにより厚さ1nm−100nm、例えば厚さ10nmのPZT膜53をアルミナ膜50の上に形成する。PZT膜のMOCVDは、強誘電体キャパシタのPZT膜37のMOCVDによる成膜と同様に行える。例えば、上述の条件の下、基板温度620℃で原料ガスを62秒間作用させると、側壁上にも均一性良く、厚さ10nmのPZT膜が成長する。蒸発補償膜の厚さは、20nm−30nmが好ましい。
【0067】
なお、蒸発補償膜の成膜方法として、MOCVDの代わりにスパッタリングや原子層堆積(ALD)を用いることもできる。スパッタリングは簡便な成膜方法であり、ALDはステップカバレージのよい成膜方法である。
【0068】
PZT膜53は強誘電体キャパシタのPZT膜37と保護膜50を介して対向する。熱処理において、PZT膜37から構成元素が蒸発する場合、PZT膜53からも同様の構成元素が蒸発し、互いに補償しあうことができる。この機能から、PZT膜53は蒸発補償膜と呼ぶことができる。蒸発補償膜は、強誘電体キャパシタの強誘電体膜と同一組成でなくてもよい。例えば、Pbの蒸発が問題となる場合は、Pbを含み、加熱によりPbを蒸発する材料を用いることができる。このように、強誘電体膜の酸素以外の構成元素のうち最も蒸発しやすい元素を含む材料を用いて、蒸発補償膜を構成できる。
【0069】
キャパシタ誘電体膜のPZT膜37と蒸発補償膜のPZT膜53とを保護膜50で分離することにより、熱処理後の状態においては両PZT膜37,53は分離され、相互間のマイグレーションが阻止される。例えPZT膜53のPb組成が減少しても、PZT膜37は影響を受けない。
【0070】
図1Oに示すように、酸素雰囲気中で、550℃〜700℃の範囲内の温度で回復アニールを行う。これにより、強誘電体膜37のダメージを回復させることができる。一例として、強誘電体膜37がPZTで形成されている場合には、温度650℃で60分間の回復アニールを行うことが好ましい。PZT膜37からPbが蒸発しても、PZT膜53からPbを導入できる。この回復アニールの条件は特に限定されない。例えば650℃の酸素雰囲気中で60分間行う。
【0071】
図1Pに示すように、強誘電体キャパシタを覆うように、蒸発補償膜53の上に、Alからなる厚さ20nm以上の第2保護膜51を、スパッタリング法、MOCVD法、あるいはALD法により形成する。ここでは、ステップカバレージのよいMOCVD法あるいはALD法が望ましい。第1、第2保護膜50,51により外部からの水素の進入を防止ないし抑制する保護膜が構成される。蒸発補償膜53が第2保護膜51で覆われることにより、蒸発補償膜53からの構成元素の蒸発は抑制される。
【0072】
アルミナ膜は、水素や水分等の還元性物質が透過するのを阻止する機能に優れている。従って、キャパシタ誘電体膜が還元性物質によって還元され、その特性が劣化するのを抑制できる。
【0073】
なお、キャパシタ保護膜の剥離を防止するため、キャパシタ保護膜の成膜前に、酸素を含む炉内でアニールを行ってもよい。例えば、基板温度350℃、処理時間1時間の酸素雰囲気アニールを行う。キャパシタ保護膜は、酸化アルミニウムの他、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化タンタル、酸化窒化アルミニウムで形成することもできる。
【0074】
上述のように第1キャパシタ保護膜の厚さは、1nm−30nmが望ましい。第2キャパシタ保護膜の厚さは1nm−100nmの範囲が良く、とくに20nm−30nmが望ましい。外部からの水素や水分の浸入を防止するためには、第2キャパシタ保護膜をMOCVDで形成することが望ましい。
【0075】
図1Qに示すように、第2保護膜51の上に、SiOからなる厚さ1500nmの層間絶縁膜55を、OとTEOSとHeとを用いたプラズマCVDにより形成する。成膜後、CMPにより層間絶縁膜55の表面を平坦化する。層間絶縁膜55は、SiOに代えて、無機絶縁材料等で形成してもよい。
【0076】
平坦化後、NOガスまたはNガスのプラズマ雰囲気中で熱処理を行う。この熱処理により、層間絶縁膜55内の水分が除去されるとともに、層間絶縁膜55の膜質が変化し、層間絶縁膜55に水分が浸入しにくくなる。
【0077】
その後、層間絶縁膜55の上に、厚さ20nm〜100nmのAlOからなるバリア膜57を、スパッタリングまたはCVDにより形成する。バリア膜57の下地表面が平坦化されているため、凹凸を有する表面上に形成する場合に比べて、安定したバリア性を確保することができる。
【0078】
図1Rに示すように、バリア膜57の上に、SiOからなる厚さ800nm〜1000nmの層間絶縁膜58を、OとTEOSとHeとを用いたプラズマCVDにより形成する。なお、層間絶縁膜58を、SiOに代えて、SiONやSiNで形成してもよい。層間絶縁膜58の表面をCMPにより平坦化する。
【0079】
図1Sに示すように、層間絶縁膜58から第1保護膜50までの5層を貫通し、強誘電体キャパシタ35上の上部電極38まで達するコンタクト孔80を形成する。
【0080】
酸素雰囲気中で、550℃の熱処理を行う。これにより、コンタクト孔80の形成に伴って強誘電体膜37内に生じた酸素欠損を回復させることができる。
【0081】
コンタクト孔80の内面にTi/TiN構造の密着膜を形成し、さらにコンタクト孔80内にW等を埋め込み、導電性プラグ60を形成する。なお、密着膜を、スパッタリングにより形成したTi膜と、MOCVDにより形成したTiN膜との2層構造としてもよい。TiN膜を形成した後、TiN膜から炭素の除去を行うために、NガスとHガスとの混合ガスを用いたプラズマ処理を行う。第3上部電極をIrで形成した場合は、Ir膜が水素の侵入を防止するため、上部電極38が還元されることを防止することができる。さらに、第2上部電極38bのIrOの組成比を、化学量論的組成比に近づけているため、上部電極38が水素に対して触媒作用を生じにくい。このため、強誘電体膜37が水素ラジカルによって還元されにくくなる。
【0082】
図1Tに示すように、層間絶縁膜58から酸化防止膜21までの7層を貫通し、導電性プラグ16の上面まで達するコンタクト孔85を形成する。コンタクト孔85の内面を覆うTi/TiN構造の密着膜を形成した後、コンタクト孔85内にW等を埋め込み、導電性プラグ65を形成する。
【0083】
層間絶縁膜58の上に、導電性プラグ60,65に接続される配線71及び75を形成する。まず、スパッタリングにより厚さ60nmのTi膜、厚さ30nmのTiN膜、厚さ360nmのAlCu合金膜、厚さ5nmのTi膜、及び厚さ70nmのTiN膜を順番に形成する。これらの膜からなる積層構造をパターニングすることにより、配線71及び75が形成される。さらに、その上に、例えば第2〜第5層の上層の多層配線を形成する。
【0084】
図2を参照して、本発明の第2の実施例を説明する。第1の実施例と異なる点を主に説明する。図1A〜1Cの工程を行い、Wプラグ25を形成する。CMPによって、プラグ25の頂部にリセス25aが生じる。第1の実施例同様NHプラズマ処理を行い、その後厚さ100nmのTi膜を成膜する。ここで、N雰囲気中でRTAによる熱処理を行い、Ti膜を窒化させる。このようにしてTiN下地導電膜30を形成する。なお、下地導電膜30は、TiNに限らず、TiAlN,タングステン、シリコン、銅で形成してもよい。
【0085】
下地導電膜30の表面にはリセスを反映した凹部が形成されている。このまま上部構造を形成すると、強誘電体膜の結晶性が劣化する恐れがある。そこで、CMPにより下地導電膜30の上面を研磨し、平坦化して凹部を除去し、さらに研磨して絶縁膜22を研磨する。絶縁膜22及びプラグの上面を面一にする。その上にTi導電性密着膜を形成し、窒化してTiN膜31にする。その後、酸素バリア膜34、下部電極36を形成する。さらに不活性ガス中、600℃以上のRTAを行う。その後、第1の実施例同様の工程を続ける。
【0086】
図3を参照して、本発明の第3の実施例を説明する。第2の実施例と異なる点を主に説明する。導電性プラグ25までを形成する。但し、CMPは低圧研磨装置を用いて行う。低圧で研磨することにより、リセスを生じさせない。第2の実施例同様、NHプラズマ処理を行い、厚さ20nmのTi膜を成膜する。N2雰囲気中でRTAによる熱処理を行い、Ti膜を窒化してTiN膜30を形成する。その上に直接、TiAlN酸素バリア膜33、下部電極36を形成する。その後は、第2の実施例同様の工程を行う。
【0087】
なお、強誘電体膜の形成方法は、スパッタリング、MOCVDの他,ゾルーゲル法、有機金属分解(MOD),CSD(chemical solution deposition)、CVD、エピタキシャル成長が挙げられる。強誘電体膜としては、熱処理により結晶構造がBi系層状構造、ぺロブスカイト構造となる膜を形成することができる。このような膜として、PZT膜の他、La,Ca,Sr,Si等を微量ドープしたPZT、SBT,BLT,Bi系層状化合物などの一般式ABOで表される膜を挙げることができる。
【0088】
上部電極の最下層を形成する際。例えば、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム、レニウム、オスミウム、パラジウムの1種以上を含むターゲットを用いたリアクティブスパッタリングを、これらの貴金属元素の酸化が生じる条件下で行うことができる。
【0089】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。
【0090】
以下、本発明の特徴を付記する。
(付記1)
半導体基板と、
前記半導体基板に形成されたMOSトランジスタと、
前記MOSトランジスタを覆う下部層間絶縁膜と、
前記下部層間絶縁膜上方に形成され、キャパシタ下部電極と、前記キャパシタ下部電極上に形成された酸化物強誘電体膜と、前記酸化物強誘電体膜上に形成されたキャパシタ上部電極と、を含む強誘電体キャパシタと、
少なくとも、前記上部電極と前記酸化物強誘電体膜の露出した表面を覆う、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第1絶縁性キャパシタ保護膜と、
前記第1絶縁性キャパシタ保護膜を覆い、前記酸化物強誘電体の酸素以外の構成元素の内、少なくとも1つの元素を含む、蒸発補償膜と、
前記蒸発補償膜を覆う、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第2絶縁性キャパシタ保護膜と、
を有する半導体装置。
(付記2)
前記蒸発補償膜は、前記酸化物強誘電体膜の酸素以外の酸素以外の構成元素の内、最も蒸発しやすい元素を含む付記1記載の半導体装置。
(付記3)
前記酸化物強誘電体膜と前記蒸発補償膜とがPbを含む請求項1または2記載の半導体装置。
(付記4)
前記第1及び第2絶縁性キャパシタ保護膜がそれぞれ酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化タンタル、酸化窒化アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種で形成されている付記1〜3のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記5)
(a)半導体基板にMOSトランジスタを形成する工程と、
(b)前記MOSトランジスタを覆って、前記半導体基板上に下部層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記下部層間絶縁膜上方にキャパシタ下部電極膜と、前記キャパシタ下部電極上に酸化物強誘電体のキャパシタ誘電体膜と、前記キャパシタ誘電体膜上に、キャパシタ上部電極膜とを積層する工程と、
(d)少なくとも前記キャパシタ上部電極膜をパターニングする工程と、
(e)前記キャパシタ上部電極膜、前記キャパシタ誘電体膜の露出された表面を覆って、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第1絶縁性キャパシタ保護膜を形成する工程と、
(f)前記第1絶縁性キャパシタ保護膜を覆って、前記酸化物強誘電体の酸素以外の構成元素の内、少なくとも1つの元素を含む、蒸発補償膜を形成する工程と、
(g)前記工程(f)の後、酸化性雰囲気中で熱処理する工程と、
(h)前記工程(g)の後、前記蒸発補償膜を覆って、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第2絶縁性キャパシタ保護膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
(付記6)
前記蒸発補償膜は、前記酸化物強誘電体膜の酸素以外の構成元素の内、最も蒸発しやすい元素を含む付記5記載の半導体装置の製造方法。
(付記7)
前記工程(d)が、前記上部電極膜、前記キャパシタ誘電体膜、前記下部電極膜を一括してパターニングし、前記工程(e)、(f)、(h)がパターニングされたキャパシタ誘電体膜の側面を覆って、前記第1絶縁性キャパシタ保護膜、前記蒸発補償膜、前記第2絶縁性キャパシタ保護膜を積層する付記5または6に記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)
前記酸化物強誘電体膜と前記蒸発補償膜とがPbを含む請求項5〜7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記第1及び第2絶縁性キャパシタ保護膜がそれぞれ酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、窒化アルミニウム、窒化タンタル、酸化窒化アルミニウムからなる群から選択された少なくとも1種で形成されている付記5〜8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1−1】/
【図1−2】/
【図1−3】/
【図1−4】/
【図1−5】/
【図1−6】/
【図1−7】/
【図1−8】図1A−1Tは、本発明の第2の実施例による半導体装置の製造方法の主要工程を示す半導体基板の断面図である。
【図2】図2は、本発明の第3に実施例を説明するための半導体基板の断面図である。
【図3】図3は、本発明の第4に実施例を説明するための半導体基板の断面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 半導体基板
2 素子分離領域
11 酸化窒化シリコン膜
12 酸化シリコン膜
21 酸化防止膜
22 層間絶縁膜
25 導電性プラグ
30 下地導電膜
31 結晶性向上膜
33 酸素バリア(TiAlN)膜
34 中間層
36 下部電極(Ir膜)
37 強誘電体(PZT)膜
38 上部(IrO)電極
45,46 ハードマスク
50,51 保護(AlO)膜
53 蒸発補償膜
55 層間絶縁膜
57 バリア(AlO)膜
58 層間絶縁膜
60,65 導電性プラグ
71,75 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板に形成されたMOSトランジスタと、
前記MOSトランジスタを覆う下部層間絶縁膜と、
前記下部層間絶縁膜上方に形成され、キャパシタ下部電極と、前記キャパシタ下部電極上に形成された酸化物強誘電体膜と、前記酸化物強誘電体膜上に形成されたキャパシタ上部電極と、を含む強誘電体キャパシタと、
少なくとも、前記上部電極と前記酸化物強誘電体膜の露出した表面を覆う、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第1絶縁性キャパシタ保護膜と、
前記第1絶縁性キャパシタ保護膜を覆い、前記酸化物強誘電体の酸素以外の構成元素の内、少なくとも1つの元素を含む、蒸発補償膜と、
前記蒸発補償膜を覆う、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第2絶縁性キャパシタ保護膜と、
を有する半導体装置。
【請求項2】
前記酸化物強誘電体膜と前記蒸発補償膜とがPbを含む請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
(a)半導体基板にMOSトランジスタを形成する工程と、
(b)前記MOSトランジスタを覆って、前記半導体基板上に下部層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記下部層間絶縁膜上方にキャパシタ下部電極膜と、前記キャパシタ下部電極上に酸化物強誘電体のキャパシタ誘電体膜と、前記キャパシタ誘電体膜上に、キャパシタ上部電極膜とを積層する工程と、
(d)少なくとも前記キャパシタ上部電極膜をパターニングする工程と、
(e)前記キャパシタ上部電極膜、前記キャパシタ誘電体膜の露出された表面を覆って、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第1絶縁性キャパシタ保護膜を形成する工程と、
(f)前記第1絶縁性キャパシタ保護膜を覆って、前記酸化物強誘電体の酸素以外の構成元素の内、少なくとも1つの元素を含む、蒸発補償膜を形成する工程と、
(g)前記工程(f)の後、酸化性雰囲気中で熱処理する工程と、
(h)前記工程(g)の後、前記蒸発補償膜を覆って、還元性物質の透過を抑制する機能を有する第2絶縁性キャパシタ保護膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記工程(d)が、前記上部電極膜、前記キャパシタ誘電体膜、前記下部電極膜を一括してパターニングし、前記工程(e)、(f)、(h)がパターニングされたキャパシタ誘電体膜の側面を覆って、前記第1絶縁性キャパシタ保護膜、前記蒸発補償膜、前記第2絶縁性キャパシタ保護膜を積層する請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記酸化物強誘電体膜と前記蒸発補償膜とがPbを含む請求項3または4に記載の半導体装置の製造方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図1−3】
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【図1−4】
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【図1−5】
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【図1−6】
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【図1−7】
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【図1−8】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−34539(P2008−34539A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−205010(P2006−205010)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】