説明

半導体装置の製造方法および半導体装置ならびに露光装置

【課題】ハンプのない半導体装置の製造方法と、半導体装置と、露光装置とを提供する。
【解決手段】被加工膜2の上に下層レジスト膜となる感光性のネガ型のレジスト材料が塗布される。下層レジスト材料膜に露光光を照射することにより酸を発生させる。ベーク処理を施すことによって下層レジスト膜3bが形成される。現像処理を施すことにより、架橋した下層レジスト膜3bを残して、未架橋の下層レジスト材料膜の部分が除去される。中間層レジスト膜となる感光性のネガ型のレジスト材料を塗布し、同様の露光処理と現像処理を施すことにより、架橋した中間層レジスト膜4bを残して、未架橋の中間層レジスト材料膜の部分が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法および半導体装置ならびに露光装置に関し、特に、多層レジストプロセスを適用した半導体装置の製造方法と、その製造方法によって製造される半導体装置と、その製造方法に適用される露光装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路を備えた半導体装置の製造を行う場合には、半導体基板等における所定の領域へのイオン注入処理や、半導体基板の表面に形成された被加工膜へのエッチング処理等のように、選択的な処理(加工)が施される。このような処理では、被加工膜等を選択的に保護する目的で、紫外線、X線、電子線等の活性光線に感光する組成物、いわゆる感光性フォトレジスト被膜(フォトレジスト膜)のパターンを被加工膜上に形成するリソグラフィが行われる。このリソグラフィでは、とりわけ、紫外線を利用したフォトレジスト膜によるパターン形成が最も広く用いられている。
【0003】
半導体集積回路の高集積化および高性能化が進むにしたがい、回路パターンの微細化と高度な寸法制御が求められるようになっている。露光装置では、水銀ランプのg線(波長=436nm)から、i線(波長=365nm)、KrFエキシマレーザー(波長=248nm)、ArFエキシマレーザー(波長=193nm)へと、露光光源の短波長化が進められてきている。また、最近では、露光装置の縮小投影レンズと半導体基板上に塗布されたフォトレジスト膜との間に水(純水)を満たすことにより、解像力を向上させることができる液浸露光技術も登場し、光リソグラフィの延命化が図られている。
【0004】
一方、フォトレジスト膜では、パターンの解像性を確保するために、フォトレジスト膜の膜厚の薄膜化が進み、最近では100nm前後の膜厚のフォトレジスト膜が適用されるようになっている。しかしながら、パターンの微細化とフォトレジスト膜の薄膜化とにより、有機BARC(Bottom Anti Reflection Coating)膜のような反射防止膜とフォトレジスト膜を適用したリソグラフィでは、被加工膜に対するエッチング耐性を確保することが難しくなってきている。なお、被加工膜には、たとえば、シリコン酸化膜あるいはポリシリコン膜等の様々な膜種がある。
【0005】
このようなエッチング耐性を確保するために、最近では多層レジストプロセスの導入が進められている。多層レジストプロセスの代表的なものとしては、三層レジストプロセスがある。三層レジストプロセスでは、上層レジスト膜、中間層レジスト膜および下層レジスト膜が形成される。上層レジスト膜は、露光と現像によってパターンが形成されるレジスト膜であり、感光性のレジスト膜である。下層レジスト膜は、被加工膜に対してドライエッチングのマスクとなるレジスト膜である。中間層レジスト膜は、上層レジスト膜のパターンを下層レジスト膜に転写する役割をもつレジスト膜である。
【0006】
下層レジスト膜をドライエッチングのマスクとするため、下層レジスト膜の材料として、高いエッチング耐性を有するとともに、下地の段差を平坦化させたり反射防止の機能を有する材料が用いられる。また、中間層レジスト膜を、上層レジストおよび下層レジストに対してエッチング選択性をもたせるために、中間層レジスト膜の材料として、高濃度のシリコン(Si)原子を含有する材料が用いられる。このような多層レジストプロセスを採用することによって、高いエッチング耐性(エッチング選択比)が確保されて、微細なパターンを精度よく形成することが可能になる。なお、多層レジストプロセスを開示した文献の一例として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平04−30740号公報
【特許文献2】特開2010−93049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、多層レジストプロセスでは、下層レジスト膜あるいは中間層レジスト膜に、次のような問題点があった。下層レジスト膜あるいは中間層レジスト膜を形成する工程では、まず、それぞれ所定の下層(中間層)レジスト材料がウェハ(半導体基板)の表面上に塗布される。次に、ウェハを所定の回転数にて回転させることにより、ウェハ上に均一な膜厚の下層(中間層)レジスト材料膜が形成される。次に、ウェハを回転させながら、ウェハのエッジに位置する下層(中間層)レジスト材料膜の部分に、下層(中間層)レジスト材料を溶解する所定の有機溶剤を噴きつけることによって、エッジリンスが行われる。その後、所定の温度にてベーク処理を行ない下層(中間層)レジスト材料を架橋させることによって、下層(中間層)レジスト膜が形成される。
【0009】
この一連の下層(中間層)レジスト膜を形成する工程のうち、エッジリンスを行う工程では、ウェハの外周部に位置する下層(中間層)レジスト材料が溶解する。溶解した下層(中間層)レジスト材料は、回転するウェハから外方へ飛ばされることになる。一方、飛ばされずにウェハに残る溶解した下層(中間層)レジスト材料の分は、下層(中間層)レジスト材料を乾燥させる際に膨れて盛り上がることがある。このため、最外周に位置する下層(中間層)レジスト材料膜の部分の膜厚が、その内側に位置する下層(中間層)レジスト材料膜の部分の膜厚よりも厚くなってしまう。この下層(中間層)レジスト材料膜が膨れて盛り上がった部分は、「ハンプ」と称されている。
【0010】
下層(中間層)レジスト膜にハンプが生じた状態で、被加工膜にエッチング等の加工を施すと、下層レジスト膜あるいは中間層レジスト膜のレジスト残渣が発生することがある。また、被加工膜の残渣(被加工膜残渣)が発生することがある。これらの残渣は異物の発生の要因となる。なお、ハンプが発生する現象や、ハンプの発生に伴って生じる課題を開示した文献の一例として、特許文献2がある。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、一つの目的は、ハンプのない半導体装置の製造方法を提供することであり、他の目的は、そのような半導体装置の製造方法によって製造される、ハンプのない半導体装置を提供することであり、さらに他の目的は、そのような半導体装置の製造方法に使用される露光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施例に係る半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えている。半導体基板の主表面上に、被加工膜を形成する。被加工膜を覆うように、第1レジスト材料を塗布する。被加工膜上に塗布された第1レジスト材料によって第1の膜を形成する。被加工膜を覆う第1の膜のうち、半導体基板の外縁から内側へ所定の距離までの、外縁に沿って延在する外周領域に位置する第1の膜の部分を除いて、外周領域の内側に位置する第1の膜の部分の全面に露光光を照射する。第1温度にて熱処理を施す。所定の現像液にて現像処理を行なうことにより、露光光が照射されていない外周領域に位置する第1の膜の部分を除去する。第1の膜を覆うように、少なくとも第2レジスト材料を塗布することにより、第1の膜上に、第2レジスト材料による第2の膜を形成する。第2の膜に、所定の写真製版処理を施すことにより、所定のパターンを形成する。第2の膜の所定のパターンから露出する第1の膜の部分を除去することにより、第1の膜に、所定のパターンに対応した第1の膜のパターンを形成する。第1の膜のパターンから露出する被加工膜の部分を除去する。
【0013】
本発明の他の実施例に係る半導体装置は、上記半導体装置の製造方法によって製造される半導体装置である。
【0014】
本発明のさらに他の実施例に係る露光装置は、半導体基板を保持するステージと、光源部と、ブラインドとを備えている。光源部は、ステージに保持された半導体基板と対向するように、ステージから距離を隔てられた所定の位置に配置されている。ブラインドは、光源部とステージとの間に配置され、光源部から発せられる露光光が、ステージに保持された半導体基板の外縁に沿って延在する所定の外周領域に照射されるのを遮る。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施例に係る半導体装置の製造方法によれば、第1の膜にハンプが生じることがなく、これにより、レジスト残渣あるいは被加工膜残渣が低減される。その結果、異物の発生による半導体装置の歩留まりの低下を抑制することができる。また、膜剥がれによる半導体装置の信頼性劣化も抑制することができる。
【0016】
本発明の他の実施例に係る半導体装置によれば、歩留まりの低下、あるいは、信頼性の劣化が抑制される。
【0017】
本発明のさらに他の実施例に係る露光装置によれば、被加工膜をパターニングするレジスト膜としてハンプのないレジスト膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図2】同実施の形態において、図1に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図3】同実施の形態において、図2に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図4】同実施の形態において、下層レジスト材料におけるベースポリマーの架橋反応のイメージを示す図である。
【図5】同実施の形態において、図3に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図6】同実施の形態において、図5に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図7】同実施の形態において、図6に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図8】同実施の形態において、図7に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図9】同実施の形態において、図8に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図10】同実施の形態において、中間層レジスト材料におけるベースポリマーの架橋反応のイメージを示す図である。
【図11】同実施の形態において、図9に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図12】同実施の形態において、図11に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図13】同実施の形態において、図12に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図14】同実施の形態において、図13に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図15】同実施の形態において、図14に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図16】同実施の形態において、図15に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図17】同実施の形態において、図16に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図18】同実施の形態において、図17に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図19】同実施の形態において、図18に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図20】同実施の形態において、図19に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図21】比較例に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図22】図21に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図23】図22に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図24】図23に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図25】図24に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図26】図25に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図27】図26に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図28】図27に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図29】図28に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図30】図29に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図31】同実施の形態において、三層レジストプロセスにおける下層レジスト膜、中間層レジスト膜および上層レジスト膜のそれぞれの外縁を示す部分断面図である。
【図32】比較例に係る三層レジストプロセスにおける下層レジスト膜、中間層レジスト膜および上層レジスト膜のそれぞれの外縁を示す部分断面図である。
【図33】本発明の実施の形態2に係る露光装置の概念を示す斜視図である。
【図34】同実施の形態において、図33に示す断面線XXXIV−XXXIVにおける断面図である。
【図35】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図36】同実施の形態において、図35に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図37】同実施の形態において、図36に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図38】同実施の形態において、図37に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図39】同実施の形態において、図38に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図40】同実施の形態において、図39に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図41】同実施の形態において、図40に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図42】同実施の形態において、図41に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図43】同実施の形態において、図42に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【図44】同実施の形態において、図43に示す工程の後に行われる工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態1
ここでは、多層レジストプロセスを適用した半導体装置の製造方法の主要部分について説明する。多層レジストプロセスとして、下層レジスト膜、中間層レジスト膜および上層レジスト膜の三層レジストプロセスを例に挙げる。
【0020】
まず、半導体基板の表面に、所定の加工が施される被加工膜が形成される。次に、被加工膜に接するように下層レジスト膜が形成される。下層レジスト膜となるレジスト材料は、たとえば、感光性のネガ型のレジスト材料が用いられる。このレジスト材料は、ベースポリマー、光酸発生剤、架橋剤および溶媒から構成される。ベースポリマーの一例として、たとえば(化1)に示すように、ポリヒドロキシスチレンが挙げられる。
【0021】
【化1】

【0022】
光酸発生剤は、露光光の照射によって酸を発生させる機能を有し、たとえば、(化2)に示すように、トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウムが挙げられる。
【0023】
【化2】

【0024】
架橋剤は、発生した酸のもとで架橋反応を可能にする機能を有し、たとえば(化3)に示すように、ヘキサメトキシメチルメラミンが挙げられる。
【0025】
【化3】

【0026】
まず、その下層レジスト材料がレジスト塗布装置によって被加工膜の上に塗布され、所定の回転数をもって半導体基板を回転させることにより、図1に示すように、半導体基板1の表面(被加工膜2の表面)に均一な膜厚の下層レジスト材料膜3が形成される。
【0027】
次に、下層レジスト材料膜3に露光光を照射することにより酸を発生させる。このとき、図2に示すように、まず、半導体基板1の外縁に沿って延在する外周領域を覆うように、環状のブラインド53が配置される。次に、その状態で露光光54を照射することによって、外周領域の内側に位置する下層レジスト材料膜3の部分に露光光が照射されて、以下の(化4)に示すように、下層レジスト材料膜3に含まれる光酸発生剤が分解して酸(プロトン)が発生する。一方、外周領域に位置する下層レジスト材料膜3の部分には、ブラインド53によって露光光は遮られて照射されない。このため、光酸発生剤は分解せず酸は発生しない。
【0028】
【化4】

【0029】
次に、図3に示すように、たとえば、約150℃〜200℃程度の温度条件のもとでベーク処理(熱61)を施すことによって下層レジスト膜3bが形成される。このとき、図4に示すように、ベーク処理によって、下層レジスト材料膜3中に発生した酸による架橋反応が促進され、ベースポリマー41は架橋剤42を介して架橋されて、架橋ポリマー43(下層レジスト膜3b)が形成されることになる。
【0030】
一方、外周領域に位置して酸が発生していない下層レジスト材料膜の部分は、未架橋の下層レジスト材料膜3として残される。次に、図5に示すように、現像液として、所定の有機溶媒62によって現像処理を施すことにより、図6に示すように、未架橋の下層レジスト材料膜3の部分が除去されて、架橋した下層レジスト膜3bが残される。半導体基板における所定の外周領域に位置する下層レジスト材料膜3の部分を除去することで、従来の三層レジストプロセスに見られたハンプが生じることはない。なお、半導体基板における外周領域とは一義的に定まる外周領域ではなく、下層レジスト(材料)膜、中間層レジスト(材料)膜および上層レジスト(材料)膜のそれぞれに対応して定まる領域である。
【0031】
ここで、下層レジスト材料によっては、有機溶媒の代わりに、たとえば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液のようなアルカリ性水溶液を、現像液として適用してもよい。また、下層レジスト膜3bにおける架橋反応をさらに促進させるために、前述したベーク処理の温度条件(約150℃〜200℃程度)よりも高い温度条件のもとで、ベーク処理を追加するようにしてもよい。
【0032】
次に、下層レジスト膜に接するように中間層レジスト膜が形成される。中間層レジスト膜となるレジスト材料は、下層レジスト膜となるレジスト材料と同様に、感光性のネガ型のレジスト材料が用いられ、このレジスト材料は、少なくともベースポリマー、光酸発生剤および溶媒から構成されている。また、これらの他に架橋剤を含有していてもよい。ベースポリマーの一例として、たとえば(化5)に示すように、有機ポリシロキサンが挙げられる。また、光酸発生剤、架橋剤および溶媒は、下層レジスト膜となるレジスト材料の光酸発生剤、架橋剤および溶媒と同じものが挙げられる。
【0033】
【化5】

【0034】
まず、レジスト塗布装置によって下層レジスト膜の上に所定の中間層レジスト材料が塗布され、所定の回転数をもって半導体基板を回転させることにより、図7に示すように、下層レジスト膜3bを覆うように中間層レジスト材料膜4が形成される。次に、中間層レジスト材料膜4に露光光を照射することにより酸を発生させる。このとき、図8に示すように、半導体基板の外縁から下層レジスト膜3bの外縁よりも内側の所定の位置までの外周領域を覆うように、環状のブラインド53が配置される。
【0035】
次に、その状態で露光光54を照射することによって、その外周領域の内側に位置する中間層レジスト材料膜4の部分に露光光が照射されて、中間層レジスト材料膜4に含まれる光酸発生剤が分解して酸(プロトン)が発生する。一方、外周領域に位置する中間層レジスト材料膜4の部分には、ブラインド53によって露光光は遮られて照射されない。このため、光酸発生剤は分解せず酸は発生しない。
【0036】
次に、図9に示すように、たとえば、約150℃〜200℃程度の温度条件のもとでベーク処理(熱61)を施すことによって中間層レジスト膜4bが形成される。このとき、図10に示すように、ベーク処理によって、中間層レジスト材料膜4中に発生した酸による架橋反応が促進され、ベースポリマー41は架橋されて架橋ポリマー43(中間層レジスト膜4b)が形成されることになる。
【0037】
なお、中間層レジスト膜4bの場合のベースポリマーの参照符号および架橋ポリマーの参照符号は、下層レジスト膜3bの場合のベースポリマーの参照符号および架橋ポリマーの参照符号とそれぞれ同じであるが、同じ物質を意図するものではない。
【0038】
一方、外周領域に位置して酸が発生していない中間層レジスト材料膜の部分は、未架橋の中間層レジスト材料膜4として残される。次に、図11に示すように、現像液として、所定の有機溶媒62によって現像処理を施すことにより、図12に示すように、未架橋の中間層レジスト材料膜4の部分が除去されて、架橋した中間層レジスト膜4bが残される。なお、中間層レジスト材料膜4を現像する有機溶媒62としては、下層レジスト材料膜3を現像する有機溶媒とは種類が異なっていてもよい。半導体基板1における所定の外周領域に位置する中間層レジスト材料膜4の部分を除去することで、従来の三層レジストプロセスに見られたハンプが生じることはない。
【0039】
次に、中間層レジスト膜に接するように上層レジスト膜が形成される。まず、レジスト塗布装置によって所定の上層レジスト材料が塗布され、所定の回転数をもって半導体基板を回転させることにより、図13に示すように、中間層レジスト膜4bを覆うように上層レジスト材料膜5が形成される。
【0040】
次に、上層レジスト材料膜5に所定の写真製版処理を施すことにより、チップが形成される領域に位置する上層レジスト材料膜には、所定のパターン(図示せず)が写真製版される。次に、図14に示すように、半導体基板1における所定の外周領域に位置する上層レジスト材料膜5の部分に露光光54を照射することによって周辺露光処理が施される。次に、写真製版処理等が施された上層レジスト材料膜5に、所定の温度条件のもとでベーク処理を施すことによって上層レジスト膜5b(図15参照)が形成される。
【0041】
次に、所定の現像液によって現像処理を施すことにより、図15に示すように、チップ形成領域CRでは、上層レジスト膜5bに所定のパターンが形成される。一方、半導体基板の外周部PRでは、上層レジスト膜5bの部分が除去されて、それぞれハンプのない下層レジスト膜3bの表面と中間層レジスト膜4bの表面とが露出する。こうして、図16に示すように、被加工膜2をパターニングするための、下層レジスト膜3b、中間層レジスト膜4bおよび上層レジスト膜5bが形成される。なお、半導体基板における外周部PRとは、下層レジスト膜3bの外縁、中間層レジスト膜4bおよび上層レジスト膜5bの外縁を含む領域をいう。
【0042】
次に、下層レジスト膜3b、中間層レジスト膜4bおよび上層レジスト膜5bによって被加工膜2がパターニングされる。まず、図17に示すように、上層レジスト膜5bをマスクとして中間層レジスト膜4bにエッチング処理を施すことにより、上層レジスト膜5bのパターンが中間層レジスト膜4bに転写される。この場合、中間層レジスト材料としてシリコン(Si)元素を含む材料を適用し、たとえば、CF4のようなフッ素系ガスを用いてエッチングを施すことで、上層レジスト膜5bに対して高いエッチング選択比を得ることができる。
【0043】
次に、図18に示すように、中間層レジスト膜4bをマスクとして、下層レジスト膜3bにエッチングを施すことにより、中間層レジスト膜4bを介して上層レジスト膜5bのパターンが下層レジスト膜3bに転写される。この場合、たとえば、酸素(O2)あるいは窒素(N2)/水素(H2)のようなガスを用いてエッチングを施すことで、中間層レジスト膜4bに対して高いエッチング選択比を得ることができる。
【0044】
次に、図19に示すように、下層レジスト膜3bをマスクとして、被加工膜2にエッチングを施すことにより、被加工膜2がパターニングされる。その後、図20に示すように、酸素プラズマアッシング処理を施すことにより、半導体基板1に残る下層レジスト膜3b等が除去されて、被加工膜2のパターニングが完了する。
【0045】
上述した半導体装置の製造方法では、半導体基板におけるそれぞれ所定の外周領域に位置する下層レジスト材料膜3の部分と中間層レジスト材料膜4の部分とが除去されて、半導体基板1における外周部PRでは、下層レジスト材料膜3あるいは中間層レジスト材料膜4にハンプは形成されない。これにより、レジスト残渣あるいは被加工膜残渣を低減することができる。このことについて、比較例を交えて説明する。
【0046】
比較例に係る半導体装置の製造方法では、まず、半導体基板の表面に形成された被加工膜の上に、レジスト塗布装置によって下層レジスト材料が塗布され、所定の回転数をもって半導体基板を回転させることにより、図21に示すように、半導体基板101の表面に均一な膜厚の下層レジスト材料膜103が形成される。
【0047】
次に、図22に示すように、溶剤吐出ノズル154から、溶剤165を吐出させて下層レジスト材料膜103に噴き付けることによりエッジリンスが行われる。次に、下層レジスト材料膜103を乾燥させる。このとき、図23に示すように、溶解して半導体基板101に残された下層レジスト材料膜の成分が膨れて盛り上がり、ハンプ103aが発生することがある。次に、図24に示すように、所定の温度のもとで半導体基板101にベーク処理166を施すことにより、下層レジスト材料膜103が架橋し、図25に示すように、下層レジスト膜103bが形成される。
【0048】
次に、半導体基板101の表面に中間層レジスト材料を塗布し、下層レジスト膜を形成する工程と同様の工程を経て、中間層レジスト膜104bが形成される。中間層レジスト膜104bには、中間層レジスト材料層を乾燥させる際に、ハンプ104aが発生することがある(図26参照)。次に、半導体基板101の表面に上層レジスト材料を塗布し、上述した実施の形態における上層レジスト膜を形成する工程と同様の工程を経て、上層レジスト膜105bが形成される。こうして、図26に示すように、被加工膜102をパターニングするための、下層レジスト膜103b、中間層レジスト膜104bおよび上層レジスト膜105bが形成される。半導体基板101の外周部に露出する下層レジスト膜103bあるいは中間層レジスト膜104bには、ハンプ103a,104aが認められる。
【0049】
次に、下層レジスト膜103b、中間層レジスト膜104bおよび上層レジスト膜105bによって被加工膜102がパターニングされる。まず、図27に示すように、上層レジスト膜105bをマスクとして中間層レジスト膜104bにエッチング処理を施すことにより、上層レジスト膜105bのパターンが中間層レジスト膜104bに転写される。このとき、中間層レジスト膜104bは、上層レジスト膜5bに対して高いエッチング選択比を有するため、ハンプ104aが発生している箇所の中間層レジスト膜104bの部分は、レジスト残渣104cとなることが多い。また、下層レジスト膜103bのハンプ103aもエッチングされずに残ることが多い。
【0050】
次に、図28に示すように、中間層レジスト膜104bをマスクとして、下層レジスト膜103bにエッチングを施すことにより、中間層レジスト膜104bを介して上層レジスト膜105bのパターンが下層レジスト膜103bに転写される。このとき、下層レジスト膜103bは中間層レジスト膜104bに対して高いエッチング選択比を有するため、本来であれば、下層レジスト膜103bまで除去されるべき半導体基板101の外周部では、ハンプ103aが発生している箇所の下層レジスト膜103bの部分は、レジスト残渣103cとなることが多い。また、レジスト残渣104cが位置している箇所では、レジスト残渣104cがマスクとなって、その直下に位置する下層レジスト膜103bの部分がレジスト残渣103dとなることがある。
【0051】
このように、比較例に係る半導体装置の製造方法では、被加工膜102をパターニングするためのレジストマスク(下層レジスト膜103b等)が形成された時点で、半導体基板101における外周部では、レジスト残渣103c、103d、104cが存在することが多い。
【0052】
次に、図29に示すように、下層レジスト膜103b等をマスクとして、被加工膜102にエッチングを施すことにより、被加工膜102がパターニングされる。このとき、レジスト残渣104c、103dが位置している箇所では、レジスト残渣がマスクとなって、被加工膜102の部分は被加工膜残渣102bとなる。また、レジスト残渣103cが位置していた箇所でも、被加工膜102の部分が被加工膜残渣102aとなる。
【0053】
その後、図30に示すように、酸素プラズマアッシング処理を施すことにより、下層レジスト膜103b等が除去される。このとき、レジスト残渣103dが完全に除去されないことがある。また、被加工膜残渣102a,102bも除去されずに、半導体基板101の外周部に残されることになる。
【0054】
比較例に係る半導体装置の製造方法では、半導体基板の外周部に被加工膜残渣102a,102b等が存在する状態で製造工程を進めると、被加工膜残渣102a,102b等が異物となって、半導体装置の歩留まりを低下させてしまうおそれがある。また、膜剥がれの要因となって、半導体装置の信頼性を下げてしまうおそれがある。
【0055】
また、上層レジスト膜をパターニングした後に、寸法や重ね合わせ精度等の不具合によって再生処理(リワーク処理)を行う必要が生じた場合には、中間層レジスト膜はフッ素系ガスを用いてエッチバックされ、下層レジスト膜は酸素ガスを用いてアッシングされることになる。このため、ハンプが発生している箇所では、中間層レジスト膜あるいは下層レジスト膜の部分を除去しきれない場合が多く、異物の発生要因となる。
【0056】
一方、半導体基板101の外周部に残された被加工膜残渣102a,102b等を除去する手法があり、一般に、ベベルエッチングあるいはベベルCMP(Chemical Mechanical Polishing)が知られている。所定のエッチング処理や再生処理を行った後に、このベベルエッチング等を行うことで、被加工膜残渣102a,102b等が除去される。ところが、これらの処理を行なう場合には、下地の半導体基板101にダメージを与えることになり、半導体装置の歩留まりや信頼性に影響を与えるおそれがあり、また、その再生処理を行なう回数を制限する必要もある。
【0057】
これに対して、上述した半導体装置の製造方法では、下層レジスト膜および中間層レジスト膜として、それぞれ感光性を有するレジスト材料を適用し、半導体基板におけるそれぞれ所定の外周領域に位置する下層レジスト(材料)膜の部分と中間層レジスト(材料)膜の部分とが除去される。これにより、従来の三層レジストプロセスのように、半導体基板における外周部においてハンプが生じることはなく、異物の発生による半導体装置の歩留まりの低下を抑制することができる。また、膜剥がれによる半導体装置の信頼性劣化も抑制することができる。
【0058】
また、上層レジスト膜をパターニングした後に、寸法や重ね合わせ精度等の不具合によって再生処理を行う必要が生じた場合であっても、下地(膜、半導体基板等)にダメージを与えることなくすべてのレジスト膜を完全に除去することができ、その後、再度レジストパターンを形成することが可能となる。また、再生処理による下地の半導体基板へのダメージがないため、再生処理を行う回数に制限をかける必要もない。
【0059】
さらに、上述した半導体装置の製造方法では、半導体基板におけるそれぞれ外周領域に位置するレジスト(材料)膜の部分に露光処理を施して除去することで、エッジリンスを行う場合に比べて、各レジスト膜の外縁の位置精度(寸法の制御性)を向上させることができる。このことについて説明する。
【0060】
半導体基板におけるそれぞれ外周領域に位置するレジスト(材料)膜の部分に露光処理を施す場合、図31に示すように、下層レジスト膜3bの外縁の位置のばらつき幅L1、中間層レジスト膜4bの外縁の位置のばらつきの幅L2、上層レジスト膜5bの外縁の位置のばらつき幅L3は、いずれも約0.1mm(±0.05mm)とされる。このため、下層レジスト膜3bの外縁よりも内側に中間層レジスト膜4bの外縁を配置させ、さらに、その中間層レジスト膜4bの外縁よりも内側に上層レジスト膜5bの外縁を配置させようとすれば、下層レジスト膜3bの外縁と上層レジスト膜5bの外縁との距離P(外縁の位置のばらつき幅の合計)は約0.3mm必要になる。
【0061】
これに対して、エッジリンスを行う比較例では、図32に示すように、下層レジスト膜103bの外縁の位置のばらつき幅PL1、中間層レジスト膜104bの外縁の位置のばらつきの幅PL2は、いずれも約0.6mm(±0.3mm)とされ、上層レジスト膜105bの外縁の位置のばらつき幅PL3は、約0.1mm(±0.05mm)とされる。このため、下層レジスト膜103bの外縁よりも内側に中間層レジスト膜104bの外縁を配置させ、さらに、その中間層レジスト膜104bの外縁よりも内側に上層レジスト膜105bの外縁を配置させようとすると、下層レジスト膜103bの外縁と上層レジスト膜105bの外縁との距離PL(外縁の位置のばらつき幅の合計)は約1.3mm必要になる。
【0062】
なお、図32では、ハンプは誇張して示されているため、そのサイズを正しく反映したものではない。ハンプの高さは、塗布されるレジスト材料膜の膜厚の数倍程度(数百nm〜1μm程度)であり、また、ハンプが発生する領域の幅(半導体基板の径方向の長さ)は、約5μm〜10μm程度である。
【0063】
したがって、露光処理を施す上述した半導体装置の製造方法では、エッジリンスを行う比較例に係る半導体装置の製造方法よりも、半導体装置(チップ)が形成される有効面積を増やすことができる。
【0064】
(レジスト材料について)
上述した半導体装置の製造方法では、下層レジスト材料のベースポリマー、光酸発生剤および架橋剤として、(化1)〜(化3)にそれぞれ示されるベースポリマー、光酸発生剤および架橋剤を一例に挙げ、また、中間層レジスト材料のベースポリマーとして、(化5)に示されるベースポリマーを一例に挙げて説明した。ここで、上述した半導体装置の製造方法において、下層レジスト膜あるいは中間層レジスト膜として適用されるレジスト材料について説明する。
【0065】
まず、三層レジストプロセスにおける従来の一般的な下層レジスト膜あるいは中間層レジスト膜として適用されているレジスト材料は、ベースポリマー、架橋剤、熱酸発生剤、溶媒から構成されている。このレジスト材料では、回転塗布後のベークによって熱酸発生剤の分解が起こり、レジスト材料膜中に酸が発生する。発生した酸により、ベースポリマーと架橋剤との架橋反応が起こる。
【0066】
これに対して、上述した半導体装置の製造方法に用いる下層レジスト膜あるいは中間層レジスト膜として適用されるレジスト材料は、従来の下層レジスト膜あるいは中間層レジスト膜として適用されるレジスト材料における熱酸発生剤を光酸発生剤に置き換えた材料である。以下、そのレジスト材料について詳しく説明する。
【0067】
(下層レジスト材料について)
下層レジスト膜には高いエッチング耐性とともに、下地段差の平坦化と反射防止の効果が求められるため、ベースポリマーとして、一般的にフェノール樹脂のような芳香環を高濃度で含むものが用いられる。また、この下層レジスト膜と、その上に塗布する中間層レジスト(材料)膜とが混ざり合わないように、ポリマーを架橋させて中間層レジスト材料の溶媒に下層レジスト膜が溶けないようにする必要がある。
【0068】
そこで、ここで用いる下層レジスト材料は、少なくともベースポリマー、架橋剤、光酸発生剤、溶媒から構成される。ベースポリマーの例としては、ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、ピレン骨格などを含むポリマーが挙げられる。架橋剤の例としては、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、グリコールウリルのアミノ基の少なくとも2つがメチロール基またはアルコキシメチル基で置換され、2個以上の反応性基をもつ化合物が挙げられる。光酸発生剤(PAG:Photo Acid Generator)は、通常、化学増幅型レジストに用いられるものと同じものでよく、最も効果的な光酸発生剤としては、ヨードニウム塩およびスルホニウム塩が挙げられる。他に、イミドスルホネート類、ジアゾメタン類、有機ハロゲン化物などの光酸発生剤でもよい。
【0069】
溶媒は、上述したベースポリマー、架橋剤、光酸発生剤、その他の添加剤が溶解する有機溶剤であれば特に制限はないが、たとえば、シクロヘキサノン、ケトン類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ラクトン類等が挙げられる。ケトン類にはメチル−2−アミルケトン等が挙げられる。アルコール類には3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等が挙げられる。エーテル類にはプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。エステル類にはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル, プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等が挙げられる。ラクトン類にはγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0070】
これらの溶剤のうち、一つの溶剤あるいは2種以上の溶剤を混合した混合物を用いてもよい。また、中でも、ジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルおよびそれらの混合溶媒が好ましい。
【0071】
(中間層レジスト材料について)
中間層レジスト膜には、上層レジスト膜および下層レジスト膜に対してエッチング選択性をもたせるために、高濃度のシリコン(Si)原子を含有するポリマーが用いられる。また、この中間層レジスト膜と、その上に塗布する上層レジスト(材料)膜とが混ざり合わないように、ポリマーを架橋させて上層レジスト材料の溶媒に中間層レジスト膜が溶けないようにする必要がある。
【0072】
そこで、ここで用いる中間層レジスト材料は、少なくともベースポリマー、光酸発生剤、溶媒から構成される。また、ベースポリマーの架橋反応をより促進させるために、さらに架橋剤を含有していてもよい。ベースポリマーの例としては、カルボニル基、エステル基、ラクトン基、あるいは、エーテル基をペンダントさせたシロキサンポリマー、シラザン系ポリマー、シルセスキオキサンポリマーなどが挙げられる。また、架橋剤、光酸発生剤および溶媒としては、下層レジスト材料の場合と同様の、架橋剤、光酸発生剤および溶媒を用いることができる。
【0073】
なお、上述した半導体装置の製造方法では、上層レジスト膜として、ポジ型レジスト材料を例に挙げて、周辺露光処理を施す場合について説明したが、上層レジスト膜としては、ネガ型レジスト材料を適用してもよい。この場合には、周辺領域に位置する上層レジスト材料膜の部分に露光光を照射させないようにし、現像処理によって当該部分を除去すればよい。
【0074】
実施の形態2
ここでは、多層レジストプロセスに適用される露光装置の一例について説明する。図33および図34に示すように、本露光装置50は、半導体基板1が載置されるステージ51、露光光の光源ユニット52、露光光を遮るブラインド53を備えている。光源ユニット52は、ステージ51に載置された半導体基板と対向するように距離を隔てて配置されている。その光源ユニット52として、高圧水銀灯(i線:波長=365nm)、KrFエキシマレーザー(波長=248nm)等が好ましく、また、単一の波長の光でなくても、紫外線の領域を含むブロードな波長の光を発光する光源でもよい。
【0075】
ブラインド53は、ステージ51に載置された半導体基板の外縁に沿って延在する所定の外周領域を覆い、露光光が外周領域に照射されるのを遮断させることができるものであれば、特に、材質等は制限されない。また、ステージ51には、載置された半導体基板を加熱する加熱機構(図示せず)を設けてもよい。
【0076】
上述した露光装置では、ブラインド53によって露光光を遮断することによって、半導体基板におけるそれぞれ所定の外周領域に位置する下層レジスト材料膜の部分と中間層レジスト材料膜の部分とを架橋させないようにする。これにより、それぞれ所定の外周領域に位置する下層レジスト材料膜の部分と中間層レジスト膜の部分とを現像液に溶解させてこれを除去することができる。その結果、ハンプのない下層レジスト膜あるいは中間層レジスト膜を形成することができる。また、下層レジスト材料膜と中間層レジスト材料膜とに、エッジリンスを行ったとしても、ハンプが生じている部分を含むようにレジスト材料を架橋させないよう露光光を遮断することで、当該部分を現像液に溶解させて除去することができる。
【0077】
なお、上述した露光装置としては、回路パターン等を写真製版する本来の露光装置内に、ブラインドに対応する機能をもたせた態様の露光装置としてもよい。また、上述した露光装置(機能)を現像装置に組み込むようにしてもよい。
【0078】
実施の形態3
ここでは、多層レジストプロセスを適用したより具体的な半導体装置の製造方法の一例について説明する。まず、図35に示すように、半導体基板1の表面に熱酸化処理を施すことにより、絶縁膜19が形成される。その絶縁膜19上に、たとえば、ポリシリコン膜およびその金属シリサイド膜等を含む導電膜20が形成される。
【0079】
次に、ゲート電極をパターニングするための写真製版処理として、三層レジストプロセスが適用される。すなわち、図1〜図16に示す一連の三層レジストプロセスと同様のプロセスが適用されて、図36に示すように、下層レジスト膜21、中間層レジスト膜22および上層レジスト膜23が形成される。半導体基板1におけるチップ形成領域CRでは、ゲート電極をパターニングするための上層レジスト膜23のレジストパターン23aが形成される。一方、半導体基板1における外周部PRでは、ハンプのない中間層レジスト膜22と下層レジスト膜21が露出している。
【0080】
次に、上層レジスト膜23のレジストパターン23aをマスクとして、中間層レジスト膜22にエッチングを施すことにより、レジストパターン23aが中間層レジスト膜22にレジストパターン22aとして転写され、さらに、中間層レジスト膜22のレジストパターン22aをマスクとして下層レジスト膜21にエッチングを施すことにより、レジストパターン23aが下層レジスト膜21にレジストパターン21aとして転写される。
【0081】
こうして、図37に示すように、ゲート電極をパターニングするための下層レジスト膜、中間層レジスト膜および上層レジスト膜によるレジストパターン23a,22a,21aが形成される。なお、図37では、上層レジスト膜23のレジストパターン23aまで残された状態が示されているが、少なくとも、下層レジスト膜21のレジストパターン21aが残されていればよい。
【0082】
次に、レジストパターン23a,22a,21aをマスクとして、導電膜20にエッチングを施すことにより、図38に示すように、ゲート電極20aが形成される。次に、そのゲート電極20aをマスクとして、半導体基板1に、たとえばn型の不純物を低いドーズ量にて注入することにより、n型低濃度不純物領域24aが形成される(図39参照)。次に、ゲート電極20aを覆うように、絶縁膜(図示せず)が形成される。その絶縁膜に異方性エッチングを施すことにより、ゲート電極20aの側壁にサイドウォール絶縁膜25が形成される(図39参照)。
【0083】
次に、ゲート電極20aおよびサイドウォール絶縁膜25をマスクとして、n型の不純物を高いドーズ量にて注入することにより、n型高濃度不純物領域24bが形成される。こうして、図39に示すように、半導体基板1の表面上にゲート絶縁膜19aを介在させて形成されたゲート電極20a、n型低濃度不純物領域24aおよびn型高濃度不純物領域24bを含むMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタが形成される。次に、ゲート電極20a等を覆うように半導体基板1上に、たとえば、シリコン酸化膜等の層間絶縁膜26が形成される(図40参照)。
【0084】
次に、その層間絶縁膜26にコンタクトホールを形成するための写真製版処理として、三層レジストプロセスが適用される。すなわち、図1〜図16に示す一連の三層レジストプロセスと同様のプロセスが適用されて、図40に示すように、下層レジスト膜27、中間層レジスト膜28および上層レジスト膜29が形成される。半導体基板1におけるチップ形成領域CRでは、コンタクトホールを形成するための上層レジスト膜29のレジストパターン29aが形成される。一方、半導体基板1における外周部PRでは、ハンプのない中間層レジスト膜28と下層レジスト膜27が露出している。
【0085】
次に、上層レジスト膜29のレジストパターン29aを、中間層レジスト膜28および下層レジスト膜27に転写し、コンタクトホールを形成するためのレジストパターン(図示せず)が形成される。そのレジストパターンをマスクとして、層間絶縁膜26に異方性エッチングを施すことにより、図41に示すように、n型高濃度不純物領域24bの表面を露出するコンタクトホール30が形成される。その後、レジストパターンが除去される。次に、図42に示すように、コンタクトホール内を充填するように、層間絶縁膜26上にバリアメタル等を含む所定の導電膜31が形成される。
【0086】
次に、その導電膜31をパターニングするための写真製版処理として、三層レジストプロセスが適用される。すなわち、図1〜図16に示す一連の三層レジストプロセスと同様のプロセスが適用されて、図43に示すように、下層レジスト膜32、中間層レジスト膜33および上層レジスト膜34が形成される。半導体基板1におけるチップ形成領域CRでは、導電膜31をパターニングするための上層レジスト膜34のレジストパターン34aが形成される。一方、半導体基板1における外周部PRでは、ハンプのない中間層レジスト膜33と下層レジスト膜32が露出している。
【0087】
上層レジスト膜34のレジストパターン34aを、中間層レジスト膜33および下層レジスト膜32に転写し、導電膜をパターニングするためのレジストパターン(図示せず)が形成される。そのレジストパターンをマスクとして、導電膜31に異方性エッチングを施すことにより、図44に示すように、n型高濃度不純物領域24bに電気的に接続される配線31aが形成される。その後、下層レジスト膜32等が除去される。こうして、トランジスタを備えた半導体装置の主要部分が形成される。
【0088】
上述した、写真製版処理として三層レジストプロセスを適用した半導体装置の製造方法では、露光光を照射させないようにして半導体基板におけるそれぞれ所定の外周領域に位置する下層レジスト(材料)膜の部分と中間層レジスト(材料)膜の部分とを現像液に溶解させてこれを除去することで、ハンプのない下層レジスト膜と中間層レジスト膜とを形成することができる。これにより、導電膜20、層間絶縁膜26、導電膜31等の被加工膜をパターニングした後の半導体基板1の外周部では、レジスト残渣あるいは被加工膜残渣が低減される。その結果、異物の発生による半導体装置の歩留まりの低下を抑制することができるとともに、膜剥がれによる半導体装置の信頼性劣化も抑制することができる。
【0089】
なお、上述した三層レジストプロセスは、実施の形態1あるいは実施の形態3において説明した工程に限られず、写真製版処理が行われる工程に広く適用することが可能である。また、写真製版処理としては、三層レジストプロセスに限られず、感光性レジストに転写されたレジストパターンを、被加工膜のエッチングとの関係でエッチング耐性を有し、そして、感光性を有するレジスト膜に転写するプロセスであれば、二層レジストプロセスあるいは四層以上のレジストプロセスにも適用が可能である。
【0090】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、多層レジストプロセスを適用した半導体装置の製造方法等に有効に利用される。
【符号の説明】
【0092】
1 半導体基板、2 被加工膜、3 下層レジスト材料膜、3b 下層レジスト膜、4 中間層レジスト材料膜、4b 中間層レジスト膜、5 上層レジスト材料膜、5b 上層レジスト膜、19 絶縁膜、19a ゲート絶縁膜、20 導電膜、20a ゲート電極、21 下層レジスト膜、21a レジストパターン、22 中間層レジスト膜、22a レジストパターン、23 上層レジスト膜、23a レジストパターン、24a n型低濃度不純物領域、24b n型高濃度不純物領域、25 サイドウォール絶縁膜、26 層間絶縁膜、27 下層レジスト膜、28 中間層レジスト膜、29 上層レジスト膜、29a レジストパターン、30 コンタクトホール、31 導電膜、31a 導電膜、32 下層レジスト膜、33 中間層レジスト膜、34 上層レジスト膜、34a レジストパターン、41 ベースポリマー、42 架橋剤、43 架橋ポリマー、50 ウェハ露光装置、51 ステージ、52 光源ユニット、53 ブラインド、54 露光光、61 熱、62 現像液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の主表面上に、被加工膜を形成する工程と、
前記被加工膜を覆うように、第1レジスト材料を塗布する工程と、
前記被加工膜上に塗布された第1レジスト材料によって第1の膜を形成する工程と、
前記被加工膜を覆う前記第1の膜のうち、前記半導体基板の外縁から内側へ所定の距離までの、前記外縁に沿って延在する外周領域に位置する前記第1の膜の部分を除いて、前記外周領域の内側に位置する前記第1の膜の部分の全面に露光光を照射する工程と、
第1温度にて熱処理を施す工程と、
所定の現像液にて現像処理を行なうことにより、前記露光光が照射されていない前記外周領域に位置する前記第1の膜の部分を除去する工程と、
前記第1の膜を覆うように、少なくとも第2レジスト材料を塗布することにより、前記第1の膜上に、前記第2レジスト材料による第2の膜を形成する工程と、
前記第2の膜に、所定の写真製版処理を施すことにより、所定のパターンを形成する工程と、
前記第2の膜の前記所定のパターンから露出する前記第1の膜の部分を除去することにより、前記第1の膜に、前記所定のパターンに対応した前記第1の膜のパターンを形成する工程と、
前記第1の膜の前記パターンから露出する前記被加工膜の部分を除去する工程と
を備えた、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1の膜を形成する工程の後、前記第2の膜を形成する工程の前に、前記第1温度よりも高い第2温度にて、前記第1の膜に熱処理を施す工程を備えた、請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の膜に前記所定のパターンを形成する工程は、
前記第2の膜に周辺露光を行う工程と、
前記現像処理を行なうことにより、前記周辺露光が行われた領域に位置する前記第2の膜の部分を除去する工程と
を含む、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2の膜に前記所定のパターンを形成する工程は、
前記第2の膜のうち、前記半導体基板の外縁から内側へ所定の距離までの、前記外縁に沿って延在する外周領域に位置する前記第2の膜の部分を除いて、前記外周領域の内側に位置する前記第2の膜の部分に露光光を照射する工程と、
前記現像処理を行なうことにより、前記露光光が照射されていない前記外周領域に位置する前記第2の膜の部分を除去する工程と
を含む、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第2の膜を形成する工程は、前記第2レジスト材料を塗布する前に、
前記第1の膜を覆うように、第3レジスト材料を塗布する工程と、
前記第1の膜を覆う前記第3レジスト材料のうち、前記外周領域に位置する前記第3レジスト材料の部分を除いて、前記外周領域の内側に位置する前記第3レジスト材料の部分の全面に露光光を照射する工程と、
所定の温度にて熱処理を施すことにより、前記露光光が照射された前記第3レジスト材料の部分の架橋反応を促進させる工程と、
所定の現像液にて現像処理を行なうことにより、前記架橋反応が促進された前記第3レジスト材料の部分を残して、前記露光光が照射されず架橋反応が起こっていない前記外周領域に位置する前記第3レジスト材料の部分を除去する工程と
を含み、
前記第2の膜に前記所定のパターンを形成する工程は、
前記第2レジスト材料によって形成される第2レジスト膜に、前記所定のパターンを形成する工程と、
前記第2レジスト膜に形成された前記所定のパターンから露出する前記第3レジスト材料によって形成される第3レジスト膜の部分を除去することにより、前記所定のパターンに対応した前記第3レジスト膜のパターンを形成する工程と
を含み、
前記第1の膜の前記パターンを形成する工程は、少なくとも前記第3レジスト膜の前記パターンから露出する前記第1の膜の部分を除去する工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法によって製造された、半導体装置。
【請求項7】
半導体基板を保持するステージと、
前記ステージに保持された前記半導体基板と対向するように、前記ステージから距離を隔てられた所定の位置に配置された光源部と、
前記光源部と前記ステージとの間に配置され、前記光源部から発せられる露光光が、前記ステージに保持された前記半導体基板の外縁に沿って延在する所定の外周領域に照射されるのを遮るブラインドと
を備えた、露光装置。
【請求項8】
前記ステージは、前記半導体基板を所定の温度に加熱する加熱部を含む、請求項7記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2012−178394(P2012−178394A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39364(P2011−39364)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】