説明

半導体装置の製造方法

【課題】マスクとして用いた絶縁膜上にIII―V族化合物半導体膜を成長させることなく良好な埋込成長や選択成長を行うことができる半導体装置の製造方法を得る。
【解決手段】GaAs基板10(半導体基板)上に半導体膜11を形成する。半導体膜11上にSiO膜15(絶縁膜)を形成し、このSiO膜15をパターニングする。SiO膜15をマスクとして半導体膜11をエッチングしてメサ構造16を形成する。SiO膜15の表面をSFガス(フッ素系ガス)でアッシング処理して、SiO膜15の表面をフッ素で終端させる。表面をフッ素で終端したSiO膜15をマスクとして、メサ構造16をIII―V族化合物半導体膜17で選択的に埋め込む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクとして用いた絶縁膜上にIII―V族化合物半導体膜を成長させることなく良好な埋込成長や選択成長を行うことができる半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ素子や変調器などの半導体装置において、活性層へ光や電流を効率良く閉じ込めるために、メサ構造を形成して電流注入領域を限定することが多い。この場合、放熱性の向上、電気容量の低減、メサ形状の保護などの観点から、メサ構造を半導体膜で選択的に埋め込む埋込型構造を採用する場合がある。
【0003】
このような埋込型の半導体装置の製造工程において、パターニングした絶縁膜をマスクとして半導体膜をエッチングしてメサ構造を形成し、この絶縁膜を埋め込み時のマスクとして用いてメサ構造を半導体膜で埋め込む。
【0004】
しかし、メサ構造をIII―V族化合物半導体膜で埋め込むと、成長条件によっては絶縁膜上に結晶成長し、その後の絶縁膜除去の阻害要因となる。特に、III―V族化合物半導体膜としてAlInAsやAlInPなどのAlを含む半導体材料を用いた場合、絶縁膜上での結晶成長が顕著である。また、パターニングした絶縁膜をマスクとして、半導体基板上にIII―V族化合物半導体膜を選択的に形成する場合にも、同様の問題が生じる。
【0005】
従来は、成長温度の調整(例えば、特許文献1参照))や、HClなどエッチング効果のあるガスを半導体材料ガスと同時に結晶成長中の反応炉へ導入すること(例えば、特許文献2参照)により、絶縁膜上にIII―V族化合物半導体膜が成長されるのを防いでいた。
【0006】
【特許文献1】“Selective growth of InAlAs by low pressure metalorganic vapor phase epitaxy”, M. Tsuji, K. Makita, T. Takeuchi, K.Taguchi, Jornal of Crystal Growth 162 (1996) p.25.
【特許文献2】“Novel Selective area growth of AlGaAs and AlAs with HCl gas by MOVPE”,K. Shimoyama, Y. Inoue, K. Fujii, H. Gotoh, Journal of Crystal Growth 124 (1992) p.235.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の方法では成長条件が限定されるため、埋込成長や選択成長を行うIII―V族化合物半導体膜の成長条件として適切でない場合や、成長条件が複雑になる場合があった。従って、良好な埋込成長や選択成長を行うことができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的はマスクとして用いた絶縁膜上にIII―V族化合物半導体膜を成長させることなく良好な埋込成長や選択成長を行うことができる半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、半導体基板上に半導体膜を形成する工程と、半導体膜上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜をパターニングする工程と、絶縁膜をマスクとして半導体膜をエッチングしてメサ構造を形成する工程と、絶縁膜の表面をフッ素で終端させる工程と、表面をフッ素で終端した絶縁膜をマスクとして、メサ構造をIII―V族化合物半導体膜で選択的に埋め込む工程とを有する。本発明のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、マスクとして用いた絶縁膜上にIII―V族化合物半導体膜を成長させることなく良好な埋込成長や選択成長を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、本発明の実施の形態1に係る埋込型半導体レーザ素子(半導体装置)の製造方法について、図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0012】
まず、図2に示すように、p型のGaAs基板10(半導体基板)上に、半導体膜11として、p型の下クラッド層12、アンドープのMQW(Multiple Quantum Well)活性層13、n型の上クラッド層14をMOPVE(Metalorganic Vapor Phase Epitaxy)法により形成する(ステップS1)。
【0013】
次に、図3に示すように、半導体膜11上にSiO膜15(絶縁膜)を形成し、写真製版技術によりSiO膜15をパターニングする(ステップS2)。
【0014】
次に、図4に示すように、パターニングされたSiO膜15をマスクとして半導体膜11をウェットエッチングしてメサ構造16を形成する(ステップS3)。
【0015】
次に、図5に示すように、SiO膜15の表面をSFガス(フッ素系ガス)でアッシング処理して、SiO膜15の表面をフッ素で終端させる(ステップS4)。図6は、SFガスでアッシング処理したか否かによるSiO膜の表面のXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)分析結果である。アッシング処理したSiO膜の表面ではSi−F結合に起因するピークが見られるため、フッ素で終端されていることがわかる。
【0016】
次に、図7に示すように、表面をフッ素で終端したSiO膜15をマスクとして、メサ構造16をIII―V族化合物半導体膜17でMOVPE法により選択的に埋め込む(ステップS5)。その他の一般的な工程を経て、半導体レーザ素子が製造される。
【0017】
図8は、SFガスを用いたアッシング処理を行った場合のメサ埋込成長後の断面SEM(scanning electron microscope)像であり、図9は、SFガスを用いたアッシング処理を行わなかった場合のメサ埋込成長後の断面SEM像である。III―V族化合物半導体膜17は、表面をフッ素で終端したSiO膜15上には成長しないことがわかる。
【0018】
本実施の形態では、表面をフッ素で終端したSiO膜15をマスクとして、メサ構造16をIII―V族化合物半導体膜17で選択的に埋め込むことにより、マスクとして用いたSiO膜15上にIII―V族化合物半導体膜17を成長させることなく良好な埋込成長を行うことができる。
【0019】
なお、本実施の形態ではメサ構造16を形成する際に半導体膜11をウェットエッチングしたが、メサ構造16を形成する際に半導体膜11をドライエッチングしてもよい。また、本実施の形態ではメサ構造16を形成した後にSiO膜15の表面をフッ素で終端させる処理を実施したが、メサ構造16を形成する前に当該処理を実施しても良い。また、本実施の形態ではIII―V族化合物半導体膜17の結晶成長において、MOVPE法を用いたが、他のエピタキシャル成長法を用いてもよい。
【0020】
SiO膜15の表面をフッ素で終端させる工程において、本実施の形態ではSiO膜15の表面をSFガス(六フッ化硫黄)でアッシング処理したが、CF(四フッ化炭素)、CHF(トリフルオロメタン)などの他のフッ素系ガスを用いてもよい。また、SiO膜15の表面をバッファードフッ酸又はフッ化水素酸の希釈溶液などのフッ素系溶液で処理してもよい。
【0021】
III―V族化合物半導体膜17として、AlGaIn1−x−yAs(0<x<1,0=<y<1,0<x+y<1)、AlGaIn1−x−yP(0<x<1,0=<y<1,0<x+y<1)、AlGa1−xAs(0<x<=1)、AlGa1−xN(0<x<=1)などのAlを含む半導体材料を一部又は全てに含む積層構造を形成する。また、本実施の形態では絶縁膜としてSiO膜15を用いたが、絶縁膜としてSiNなど他の絶縁膜を用いてもよい。
【0022】
本実施の形態では半導体レーザ素子の製造について示したが、本発明は、変調器、ダイオード、トランジスタ、受光素子などのあらゆる半導体素子の製造に適用することができる。
【0023】
本実施の形態では半導体基板としてGaAs基板を用いたが、InP基板やGaN基板を用いてもよい。ただし、III―V族化合物半導体膜17のAlを含む半導体材料は、半導体基板と格子定数が合うものを選ぶ必要がある。従って、III―V族化合物半導体膜17のAlを含む半導体材料として、GaAs基板の場合はAlGaInPやAlGaAs、InP基板の場合はAlGaInAsやAlInAs、GaN基板の場合はAlGaNを用いる。
【0024】
実施の形態2.
以下、本発明の実施の形態2に係る選択成長半導体レーザ素子(半導体装置)の製造方法について、図10に示すフローチャートに従って説明する。
【0025】
まず、図11に示すように、p型のGaAs基板10上にSiO膜15(絶縁膜)を形成し、写真製版技術によりSiO膜15をパターニングする(ステップS11)。
【0026】
次に、図12に示すように、SiO膜15の表面をSFガス(フッ素系ガス)でアッシング処理して、SiO膜15の表面をフッ素で終端させる(ステップS12)。
【0027】
次に、図13に示すように、表面をフッ素で終端したSiO膜15をマスクとして、GaAs基板10上に、III―V族化合物半導体膜20として、p型の下クラッド層21、アンドープのMQW活性層22、n型の上クラッド層23をMOVPE法により選択的に形成する(ステップS13)。その他の一般的な工程を経て、半導体レーザ素子が製造される。
【0028】
本実施の形態では、表面をフッ素で終端したSiO膜15をマスクとして、GaAs基板10上にIII―V族化合物半導体膜20を選択的に形成することにより、マスクとして用いたSiO膜15上にIII―V族化合物半導体膜20を成長させることなく良好な選択成長を行うことができる。
【0029】
なお、本実施の形態ではIII―V族化合物半導体膜20の結晶成長において、MOVPE法を用いたが、他のエピタキシャル成長法を用いてもよい。
【0030】
SiO膜15の表面をフッ素で終端させる工程において、本実施の形態ではSiO膜15の表面をSFガス(六フッ化硫黄)でアッシング処理したが、CF(四フッ化炭素)、CHF(トリフルオロメタン)などの他のフッ素系ガスを用いてもよい。また、SiO膜15の表面をバッファードフッ酸やフッ化水素酸の希釈溶液などのフッ素系溶液で処理してもよい。
【0031】
III―V族化合物半導体膜20として、AlGaIn1−x−yAs(0<x<1,0=<y<1,0<x+y<1)、AlGaIn1−x−yP(0<x<1,0=<y<1,0<x+y<1)、AlGa1−xAs(0<x<=1)、AlGa1−xN(0<x<=1)などのAlを含む半導体材料を一部又は全てに含む積層構造を形成する。また、本実施の形態では絶縁膜としてSiO膜15を用いたが、絶縁膜としてSiNなど他の絶縁膜を用いてもよい。
【0032】
本実施の形態では半導体レーザ素子の製造について示したが、本発明は、変調器、ダイオード、トランジスタ、受光素子などのあらゆる半導体素子の製造に適用することができる。
【0033】
本実施の形態では半導体基板としてGaAs基板を用いたが、InP基板やGaN基板を用いてもよい。ただし、III―V族化合物半導体膜20のAlを含む半導体材料は、半導体基板と格子定数が合うものを選ぶ必要がある。従って、III―V族化合物半導体膜20のAlを含む半導体材料として、GaAs基板の場合はAlGaInPやAlGaAs、InP基板の場合はAlGaInAsやAlInAs、GaN基板の場合はAlGaNを用いる。
【0034】
実施の形態3.
以下、本発明の実施の形態3に係る選択成長半導体レーザ素子(半導体装置)の製造方法について説明する。
【0035】
まず、図14に示すように、p型のGaAs基板10上に半導体膜24を形成する。そして、半導体膜24上にSiO膜15(絶縁膜)を形成し、写真製版技術によりSiO膜15をパターニングする。
【0036】
次に、図15に示すように、SiO膜15の表面をSFガス(フッ素系ガス)でアッシング処理して、SiO膜15の表面をフッ素で終端させる(ステップS12)。
【0037】
次に、図16に示すように、表面をフッ素で終端したSiO膜15をマスクとして、半導体膜24上に、III―V族化合物半導体膜20として、p型の下クラッド層21、アンドープのMQW活性層22、n型の上クラッド層23をMOVPE法により選択的に形成する。その他の一般的な工程を経て、半導体レーザ素子が製造される。
【0038】
本実施の形態3は、GaAs基板10とIII―V族化合物半導体膜20との間に半導体膜24を形成する点以外は、実施の形態2と同様である。これにより、実施の形態2と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図6】SFガスでアッシング処理したか否かによるSiO膜の表面のXPS分析結果である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図8】SFガスを用いたアッシング処理を行った場合のメサ埋込成長後の断面SEM像である。
【図9】SFガスを用いたアッシング処理を行わなかった場合のメサ埋込成長後の断面SEM像である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図15】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【図16】本発明の実施の形態3に係る半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 GaAs基板(半導体基板)
11 半導体膜
15 SiO膜(絶縁膜)
16 メサ構造
17,20 III―V族化合物半導体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に半導体膜を形成する工程と、
前記半導体膜上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜をパターニングする工程と、
前記絶縁膜をマスクとして前記半導体膜をエッチングしてメサ構造を形成する工程と、
前記絶縁膜の表面をフッ素で終端させる工程と、
表面をフッ素で終端した前記絶縁膜をマスクとして、前記メサ構造をIII―V族化合物半導体膜で選択的に埋め込む工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記メサ構造を形成する工程において、前記半導体膜をウェットエッチング又はドライエッチングすることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
半導体基板上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜をパターニングする工程と、
前記絶縁膜の表面をフッ素で終端させる工程と、
表面をフッ素で終端した前記絶縁膜をマスクとして、前記半導体基板上にIII―V族化合物半導体膜を選択的に形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
半導体基板上に半導体膜を形成する工程と、
前記半導体膜上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜をパターニングする工程と、
前記絶縁膜の表面をフッ素で終端させる工程と、
表面をフッ素で終端した前記絶縁膜をマスクとして、前記半導体膜上にIII―V族化合物半導体膜を選択的に形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁膜の表面をフッ素で終端させる工程において、前記絶縁膜の表面をフッ素系ガスで処理することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記フッ素系ガスとして、六フッ化硫黄、四フッ化炭素、トリフルオロメタンの何れかを用いることを特徴とす請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記絶縁膜の表面をフッ素で終端させる工程において、前記絶縁膜の表面をフッ素系溶液で処理することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記フッ素系溶液として、バッファードフッ酸又はフッ化水素酸を用いることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記III―V族化合物半導体膜として、Alを含む半導体材料を用いることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記III―V族化合物半導体膜として、AlGaIn1−x−yAs(0<x<1,0=<y<1,0<x+y<1)、AlGaIn1−x−yP(0<x<1,0=<y<1,0<x+y<1)、AlGa1−xAs(0<x<=1)、AlGa1−xN(0<x<=1)の何れかを用いることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記絶縁膜として、SiO又はSiNを用いることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−88074(P2009−88074A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253303(P2007−253303)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】