説明

半導体装置の製造方法

【課題】基板の外観特性を改善できるようにした半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】上部電極21と、上部電極21と向かい合って配置される下部電極23とを有し、上部電極21と下部電極23との間の空間35内に反応性ガス(例えば、CF、CHF等)を供給するRIE装置50の、下部電極23上にウエーハWを配置してパシベーション膜をエッチングする際に、排気スペース33の高さhを調整する。これにより、空間35内において、反応性ガスの含有量を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば図6(a)及び(b)に示すように、ウエーハW上のパッド電極1は、その周縁部がパシベーション膜2で覆われており、周縁部以外の上方が開口されている。ここで、パシベーション膜2は、例えば、シリコン酸化膜3とシリコン窒化膜4とが積層された構造を有する。このパッド電極1上の開口工程は、通常、ドライエッチングにより行われるが、この際に、パッド電極1上のパシベーション膜2と共に、スクライブライン5上のパシベーション膜2も同時にエッチングする。これは、開口工程の後に行われるダイシング工程で、チッピングの発生を防ぐためである。スクライブライン5上に厚膜が残っているとチッピング(欠け)が発生し易い。このため、開口工程では、パッド電極1の上方だけでなく、スクライブライン5の上方もエッチングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−27600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の開口工程では、パッド電極1上での膜残りを防止するために、パシベーション膜2を過剰にエッチングする(即ち、オーバーエッチングする)。パッド電極1は例えばアルミニウム(Al)等からなり、パシベーション膜2に対してエッチングの選択性があるため、パシベーション膜2をオーバーエッチングしても、パッド電極1はほとんど削られない。
しかしながら、スクライブライン5では、パシベーション膜2の下には層間絶縁膜6が存在する。この層間絶縁膜6は通常、シリコン酸化膜からなるため、スクライブライン5においては、オーバーエッチングにより層間絶縁膜6が削られる。ここで、従来の技術では、オーバーエッチングの後で、スクライブライン5が他の表面と比較して、外観上、異常が発生したように見える場合があった。
【0005】
この原因は、図6(b)及び(c)に示すように、開口部7の底面に微細な凹凸8が多数形成されることによる。詳しく説明すると、上記の開口工程では、CF、CHF等の反応性ガスを用いてドライエッチングを行うが、この過程でポリマーを生成する。スクライブライン5上では、このポリマーが開口部7の底面に付着し、エッチングのマスクとして働くため、図6(b)及び(c)に示すように、微細な凹凸8が多数形成される。即ち、パッド電極1の表面上では、ポリマー膜が形成されても下地は(削られにくい)Alのため微細な凹凸8は形成されないが、スクライブライン5上ではポリマー膜をマスクに層間絶縁膜6がエッチングされるため、開口部7の底面に微細な凹凸8が多数形成される。
【0006】
このような、外観特性に関する課題は、製品特性に何ら影響を及ぼすものではない。その理由は、上記の微細な凹凸8は、スクライブライン5上にのみ形成されるからである。即ち、スクライブライン5にはTEG(Test Element Group)9が形成されることはあっても、製品としてのIC素子10が形成されることはない。また、スクライブライン5はダイシング工程で切削除去されるため、後々まで凹凸8が残ることもない。
【0007】
しかしながら、開口工程の後に続く、検査工程やダイシング工程では、スクライブライン5の外観を作業者等が目にする機会があり、その外観の特異性から、ウエーハWに形成されたIC素子10に何か不具合が生じているのはないか、と誤解される可能性があった。このような誤解は、作業者による処理を止め、製品処理を停滞させる可能性があり、好ましいものではない。また、類似の外観特性を有する不具合(たとえば残渣)を見逃す恐れがある。
そこで、本発明の幾つかの態様は、このような事情に鑑みてなされたものであって、基板の外観特性を改善できるようにした半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法は、上部電極と、前記上部電極と向かい合って配置される下部電極とを有し、前記上部電極と前記下部電極との間の空間内に反応性ガスを供給するドライエッチング装置の、前記下部電極上に基板を配置して前記基板上の膜をエッチングする際に、前記空間の内側から外側に至る排気スペースの高さを調整することを特徴とするものである。
このような方法によれば、上部電極と下部電極とに挟まれた空間内において、反応性ガスの含有量(こもり度合い)を調整することができ、反応性ガスを原料とするポリマー膜の形成を抑制することができる。これにより、例えば、パシベーション膜をエッチングしてパッド電極上を開口した後の、基板の外観特性を改善することができる。
【0009】
また、上記の製造方法において、前記ドライエッチング装置は、前記上部電極の周縁部であって前記下部電極と向かい合う面を覆う第1のリングと、前記下部電極の周縁部であって前記上部電極と向かい合う面を覆う第2のリングと、を有し、前記排気スペースは前記第1のリングと前記第2のリングとの隙間であり、前記排気スペースの高さの調整は、前記第1のリングと前記第2のリングとの離間距離を調整することにより行うことを特徴としても良い。このような方法によれば、第1のリングと第2のリングとの離間距離を調整することにより、上記空間内での反応性ガスの含有量を容易に調整することができる。
【0010】
また、上記の製造方法において、前記ドライエッチング装置を用いて直前に処理した前記基板のアンロード後の外観特性に基づいて、前記排気スペースの高さを調整することを特徴としても良い。このような方法によれば、製品処理を続けながら基板の外観特性を改善することができる。
また、上記の製造方法において、前記膜はパシベーション膜であり、前記パシベーション膜をエッチングする際は、パッド電極の上方及びスクライブラインの上方を同時にエッチングすることを特徴としても良い。このような方法によれば、パシベーション膜をエッチングしてパッド電極上を開口した後の、基板の外観特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るRIE装置50の構成例を示す図。
【図2】排気スペース33の高さhと、反応性ガスの含有量との関係を示図。
【図3】パラメータの変更例を具体的に示す図。
【図4】外観特性の改善効果を模式的に示す図。
【図5】上部電極21の下部電極23に対する相対的な動作を示す図。
【図6】従来技術の課題を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する各図において、同一の構成を有する部分には同一の符号を付し、その重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るRIE装置50の構成例を示す概念図である。図1に示すRIE装置50は、例えばナローギャップ型の装置であり、上部電極21と、上部電極21と向かい合って配置された下部電極23と、上部電極21の周縁部であって下部電極23と向かい合う面を覆うように配置されたシールドリング25と、下部電極23の周縁部であって上部電極21と向かい合う面を覆うように配置されたフォーカスリング27と、RF電源29と、ターボポンプ31と、ドライポンプ32と、を有する。上部電極21は例えばアノード(陽極)であり、下部電極23は例えばカソード(陰極)である。また、シールドリング25はプラズマをウエーハW上に集中させると共に、例えば、上部電極21を固定しているネジ(図示せず)をプラズマに晒さないように保護するものである。フォーカスリング27は、プラズマをウエーハW上に集中させるものである。シールドリング25とフォーカスリング27との隙間33を狭くして、上部電極21と下部電極23との間の空間35にプラズマを閉じ込める。
【0013】
このRIE装置50では、下部電極23上にウエーハWが配置される。また、この状態で、RF電源29が上部電極21と下部電極23とに(+と−とが逆位相になるように)高周波電圧を印加すると共に、ターボポンプ31とドライポンプ32が上部電極21と下部電極23とに挟まれた空間35内を排気する。さらに、上部電極21表面のガス・デフュージョン板(図示せず)からウエーハWに向かって、CF、CHF等の反応性ガスがシャワー状に供給される。これにより、空間35内にはプラズマが発生し、このプラズマ中で+に帯電した反応性ガスはウエーハWの表面に引き寄せられて、ウエーハW上の膜(例えば、パシベーション膜)をエッチングする。
【0014】
ところで、このRIE装置50では、上部電極21と下部電極23とに挟まれた空間35内における、反応性ガスの含有量が、ウエーハW上の膜のエッチングレートや、ポリマーの生成および付着度合いに影響を与える。そこで、この実施形態では、ウエーハW上の膜をエッチングする際に、シールドリング25とフォーカスリング27との隙間(即ち、排気スペース)33の高さを調整する。空間35内の排気は排気スペース33の高さhに律速しており、この高hさが高いほど、排気は効率良く行われる。
【0015】
図2は、排気スペース33の高さhと、反応性ガスの含有量との関係を示す概念図である。図2に示すように、排気スペース33の高さが高くなるほど、空間35内からの排気は効率良く行われ、反応性ガスの含有量は小さくなる傾向にある。但し、含有量が小さくなるほど、膜のエッチングレートも下がる。また、排気スペース33が完全に閉じられてしまうと、排気が行われなくなる。このため、排気スペースhの高さについては、その調整可能な範囲に上限と下限とがある。
【0016】
図3は、パラメータの変更例を具体的に示す図である。
図3に示す各パラメータの数値は、ナローギャップ型RIE装置を用いて、ウエーハW上に形成されたパシベーション膜をエッチングする場合の数値である。設定Aは変更前であり、設定Bは変更後である。
この例では、排気スペース33の高さhを2.0mm広げる(即ち、1.7mmから3.7mmに変更する)ことで、図1に示した空間35内において、反応性ガス(CF、CHF等)の含有量の低減している。本発明者が行った実験では、排気スペース33の高さhを2.7mmとした場合でも、外観特性の改善効果が認められたが、上部電極21と下部電極23との離間距離のばらつきや、シールドリング25の厚みの公差、フォーカスリング27の厚みの公差を考慮すると、高さhを3.0mm以上とすることが好ましい。この例では、排気スペース33の高さhを3.7mmとした。
【0017】
また、エッチングの開口面積が大きい場合は、外観特性を排気スペース33のみで改善しきれない場合がある。そのため、この例では、排気スペース33以外の、他のパラメータについても、ポリマーの付着を抑制できるように(即ち、排気能力を上昇させ、ポリマーの生成量を減らすように)その数値を変更した。
設定Aでは、図6(a)〜(c)に示すような外観上の課題が生じていたが、設定Bでは、例えば図4(a)及び(b)に示すように、スクライブライン5上に微細な凹凸はほとんど形成されず、外観特性を十分に改善することができた。
このように、本発明の実施形態によれば、上部電極21と下部電極23とに挟まれた空間35内において、反応性ガスの含有量を調整することができ、反応性ガスを原料とするポリマー膜の形成を抑制することができる。これにより、例えば、パシベーション膜をエッチングしてパッド電極1上を開口した後の、ウエーハWの外観特性を改善することができる。
【0018】
従来の技術では、反応性ガスの種類、ガスの混合比、ガスの流量、ポンプ側の引き圧などを調整することは行われていたが、これら各パラメータの調整のみではポリマー膜の形成を抑制することができず、ウエーハWの外観特性が損なわれる場合があった(例えば、図6(a)〜(c)を参照。)。これに対して、本発明によれば、調整可能なパラメータに「排気スペース」を加えている。排気スペースを調整することにより、上記空間35内での反応性ガスの含有量を容易に調整することができ、ポリマーの膜の形成を抑制することができる。
この実施形態では、RIE装置50が本発明の「ドライエッチング装置」に対応し、シールドリング25が本発明の「第1のリング」に対応し、フォーカスリング27が本発明の「第2のリング」に対応している。また、ウエーハWが本発明の「基板」に対応している。
【0019】
なお、上記の実施形態では、RIE装置50を用いて直前に処理したウエーハWの、アンロード(即ち、RIE装置50からの搬出)後の外観特性に基づいて、排気スペース33の高さhを毎回調整するようにしてもよい。即ち、排気スペースの高さhを、ウエーハWを1枚ずつ処理するたびに変えるようにしても良い。このような方法によれば、製品処理を続けながら、ウエーハの外観特性を改善することができる。
また、排気スペース33の高さhは、例えば図5に示すようにウエーハWをロード、アンロードするたびに動く値であり、ロード、アンロードの際は下部電極23が上部電極21に対して相対的に昇降するため、このタイミングで高さhを変えることができる。排気スペース33の高さhを変えるために、RIE装置50による製品処理をわざわざ停止する必要はないので、高さhを毎回調整するようにした場合でも、製品処理のスループットを高く維持することができる。
【0020】
また、その他の形態として、本発明では、図1において、空間35内の高さ(即ち、上部電極21と下部電極23との離間距離)Hを広げずに、シールドリング25、フォーカスリング27をそれぞれ薄くすることで、排気スペースhを広げるようにしても良い。このような方法であっても、上記の実施形態と同様、反応性ガスの含有量を調整することができ、ポリマー膜の形成を抑制することができる。
また、上記の実施形態では、本発明のドライエッチング装置として、ナローギャップ型の装置を例示したが、本発明はこれに限られることはない。本発明で用いるドライエッチング装置は、例えば、ナローギャップ型よりも上部電極と下部電極との間の距離(即ち、電極間距離)が大きな、平行平板型の装置であっても良い。このような装置を用いた場合でも、その排気スペースの高さを調整することにより、電極間における反応性ガスの含有量を調整することができ、ポリマーの膜の形成を抑制することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 パッド電極、2 パシベーション膜、3 シリコン酸化膜、4 シリコン窒化膜、5 スクライブライン、6 層間絶縁膜、7、開口部、9 TEG、10 IC素子、21 上部電極、23 下部電極、25 シールドリング、27 フォーカスリング、29 RF電源、31 ターボポンプ、32 ドライポンプ、33 排気スペース、35 空間、50 RIE装置、H (空間35の)高さ、h (排気スペース33の)高さ、W ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部電極と、前記上部電極と向かい合って配置される下部電極とを有し、前記上部電極と前記下部電極との間の空間内に反応性ガスを供給するドライエッチング装置の、前記下部電極上に基板を配置して前記基板上の膜をエッチングする際に、
前記空間の内側から外側に至る排気スペースの高さを調整することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記ドライエッチング装置は、
前記上部電極の周縁部であって前記下部電極と向かい合う面を覆う第1のリングと、
前記下部電極の周縁部であって前記上部電極と向かい合う面を覆う第2のリングと、を有し、
前記排気スペースは前記第1のリングと前記第2のリングとの隙間であり、
前記排気スペースの高さの調整は、前記第1のリングと前記第2のリングとの離間距離を調整することにより行うことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ドライエッチング装置を用いて直前に処理した前記基板のアンロード後の外観特性に基づいて、前記排気スペースの高さを調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記膜はパシベーション膜であり、前記パシベーション膜をエッチングする際は、
パッド電極の上方及びスクライブラインの上方を同時にエッチングすることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−165967(P2010−165967A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8521(P2009−8521)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】