説明

半導体装置の製造方法

【課題】トランジスタのチャネル不純物の拡散を抑制し、高性能・高信頼性を実現しうる半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】半導体基板第1及び第2の領域に非晶質化のためのイオン注入を行い、第1の領域及び第2の領域に第1の不純物及び第2の不純物をそれぞれイオン注入し、注入した不純物を活性化して第1の不純物層及び第2の不純物層を形成し、不純物層を形成した半導体基板上に半導体層をエピタキシャル成長し、第1及び第2の領域上にゲート絶縁膜を成長し、第1及び第2のゲート絶縁膜上に第1及び第2のゲート電極をそれぞれ形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の微細化・高集積化に伴い、チャネル不純物の統計的揺らぎによるトランジスタの閾値電圧ばらつきが顕在化している。閾値電圧はトランジスタの性能を決定づける重要なパラメータの一つであり、高性能且つ高信頼性の半導体装置を製造するために、不純物の統計的揺らぎによる閾値電圧ばらつきを低減することは重要である。
【0003】
不純物の統計的揺らぎによる閾値電圧のばらつきを低減する技術の一つとして、急峻な不純物濃度分布を有する高濃度のチャネル不純物層上にノンドープのエピタキシャルシリコン層を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6426279号明細書
【特許文献2】米国特許第6482714号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2009/0108350号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A. Asenov, "Suppression of Random Dopant-Induced Threshold Voltage Fluctuations in Sub-0.1-μm MOSFET's with Epitaxial and δ-Doped Channels", IEEE Transactions on Electrond Devices, Vol. 46, NO. 8, p. 1718, 1999
【非特許文献2】Woo-Hyeong Lee, "MOS Device Structure Development for ULSI: Low Power/High Speed Operation", Microelectron. Reliab., Vol. 37, No. 9, pp. 1309-1314, 1997
【非特許文献3】A. Hokazono et al., "Steep Channel Profiles in n/pMOS Controlled by Boron-Doped Si:C Layers for Continual Bulk-CMOS Scaling", IEDM09-673
【非特許文献4】L. Shao et al., "Boron diffusion in silicon: the anomalies andcontrol by point defect engineering", Materials Science and Engineering R 42, pp. 65-114, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
不純物の統計的揺らぎによる閾値電圧のばらつきを低減するためには、急峻な不純物濃度分布を有するチャネル不純物層を形成し、如何にしてエピタキシャル層方向への不純物の拡散を抑制するかが重要である。
【0007】
本発明の目的は、チャネル不純物の拡散を抑制し、高性能・高信頼性を実現しうる半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態の一観点によれば、半導体基板にイオン注入を行い、前記半導体基板の第1の領域及び第2の領域を非晶質化する工程と、前記半導体基板の前記第1の領域に、第1導電型の第1の不純物をイオン注入する工程と、前記半導体基板の前記第2の領域に、第2導電型の第2の不純物をイオン注入する工程と、前記第1の不純物及び前記第2の不純物を活性化し、前記第1の領域に第1の不純物層を、前記第2の領域に第2の不純物層を、それぞれ形成する工程と、前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層が形成された前記半導体基板上に、半導体層をエピタキシャル成長する工程と、前記半導体層の前記第1の領域上及び前記第2の領域上に、ゲート絶縁膜を成長する工程と、前記第1の領域の前記ゲート絶縁膜上に第1のゲート電極を、前記第2の領域の前記第ゲート絶縁膜上に第2のゲート電極を、それぞれ形成する工程とを有する半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
開示の半導体装置の製造方法によれば、第1の領域及び第2の領域を予め非晶質化しておくため、第1の領域又は第2の領域に不純物層を形成する工程の際に半導体基板を非晶質化することを要しない。これにより、第1の領域又は第2の領域に不純物層を形成する工程ではマスク材を変質するような高濃度のイオン注入が不要となり、半導体基板にダメージを与えることなくマスクを容易に除去することができる。また、非晶質化により、導電型不純物拡散抑制のための不純物をより効率よく格子位置に配置することができ、結果として、導電型不純物拡散を抑制できると同時に、注入イオンのチャネリングを防止することができ、急峻な不純物分布を得ることができる。
【0010】
また、第1導電型のトランジスタ領域と第2導電型のトランジスタ領域の双方に非晶質化のイオン注入を行うため、非晶質化の工程において特定の領域を露出するマスクを形成しなくてもよい。これにより、半導体基板にダメージを与えるようなマスクの除去工程を排除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、一実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図(その1)である。
【図2】図2は、一実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図(その2)である。
【図3】図3は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図4】図4は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図5】図5は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図6】図6は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【図7】図7は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その5)である。
【図8】図8は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その6)である。
【図9】図9は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その7)である。
【図10】図10は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その8)である。
【図11】図11は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その9)である。
【図12】図12は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その10)である。
【図13】図13は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その11)である。
【図14】図14は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その12)である。
【図15】図15は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その13)である。
【図16】図16は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その14)である。
【図17】図17は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その15)である。
【図18】図18は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その16)である。
【図19】図19は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その17)である。
【図20】図20は、一実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その18)である。
【図21】図21は、参考例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その1)である。
【図22】図22は、参考例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その2)である。
【図23】図23は、参考例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その3)である。
【図24】図24は、参考例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その4)である。
【図25】図25は、参考例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その5)である。
【図26】図26は、参考例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図(その6)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
一実施形態による半導体装置及びその製造方法について図1乃至図20を用いて説明する。
【0013】
図1及び図2は、本実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図である。図3乃至図20は、本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0014】
はじめに、本実施形態による半導体装置の構造について図1及び図2を用いて説明する。
【0015】
シリコン基板10上には、低電圧NMOSトランジスタ(LV NMOS)と、低電圧PMOSトランジスタ(LV PMOS)と、高電圧NMOSトランジスタ(HV NMOS)と、高電圧PMOSトランジスタ(HV PMOS)とが形成されている。低電圧トランジスタは、主に、高速動作が必要とされる回路部分に用いられるものである。高電圧トランジスタは、3.3V I/O等、高電圧の印加される回路部分に用いられるものである。
【0016】
低電圧NMOSトランジスタ(LV NMOS)は、シリコン基板10の低電圧NMOSトランジスタ形成領域16に形成されている。
【0017】
低電圧NMOSトランジスタ形成領域16のシリコン基板10内には、Pウェル20と、P型高濃度不純物層22とが形成されている。P型高濃度不純物層22上には、シリコン基板10上にエピタキシャル成長されたシリコン層48が形成されている。シリコン層48上には、ゲート絶縁膜64aが形成されている。ゲート絶縁膜64a上には、ゲート電極66が形成されている。ゲート電極66の両側のシリコン層48及びシリコン基板10内には、ソース/ドレイン領域78が形成されている。これらにより、低電圧NMOSトランジスタ(LV NMOS)が形成されている。
【0018】
低電圧PMOSトランジスタは、シリコン基板10の低電圧PMOSトランジスタ形成領域24に形成されている。
【0019】
低電圧PMOSトランジスタ形成領域24のシリコン基板10内には、Nウェル28と、N型高濃度不純物層30とが形成されている。N型高濃度不純物層30上には、シリコン基板10上にエピタキシャル成長されたシリコン層48が形成されている。シリコン層48上には、ゲート絶縁膜64aが形成されている。ゲート絶縁膜64a上には、ゲート電極66が形成されている。ゲート電極66の両側のシリコン層48及びシリコン基板10内には、ソース/ドレイン領域80が形成されている。これらにより、低電圧PMOSトランジスタ(LV PMOS)が形成されている。
【0020】
高電圧NMOSトランジスタ(HV NMOS)は、シリコン基板10の高電圧NMOSトランジスタ形成領域32に形成されている。
【0021】
高電圧NMOSトランジスタ形成領域32のシリコン基板10内には、Pウェル36と、P型不純物層38とが形成されている。P型不純物層38は、接合耐圧やホットキャリア耐性を向上するために、低電圧NMOSトランジスタのP型高濃度不純物層22よりも低濃度且つなだらかな不純物分布になっている。P型不純物層38上には、シリコン基板10上にエピタキシャル成長されたシリコン層48が形成されている。シリコン層48上には、低電圧トランジスタのゲート絶縁膜64aよりも厚いゲート絶縁膜60aが形成されている。ゲート絶縁膜60a上には、ゲート電極66が形成されている。ゲート電極66の両側のシリコン層48及びシリコン基板10内には、ソース/ドレイン領域78が形成されている。これらにより、高電圧NMOSトランジスタ(HV NMOS)が形成されている。
【0022】
高電圧PMOSトランジスタ(HV PMOS)は、シリコン基板10の高電圧PMOSトランジスタ形成領域40に形成されている。
【0023】
高電圧PMOSトランジスタ形成領域40のシリコン基板10内には、Nウェル44と、N型不純物層46とが形成されている。N型不純物層46は、接合耐圧やホットキャリア耐性を向上するために、低電圧PMOSトランジスタのN型高濃度不純物層30よりも低濃度且つなだらかな不純物分布になっている。N型不純物層46上には、シリコン基板10上にエピタキシャル成長されたシリコン層48が形成されている。シリコン層48上には、低電圧トランジスタのゲート絶縁膜64aよりも厚いゲート絶縁膜60aが形成されている。ゲート絶縁膜60a上には、ゲート電極66が形成されている。ゲート電極66の両側のシリコン層48及びシリコン基板10内には、ソース/ドレイン領域80が形成されている。これらにより、高電圧PMOSトランジスタ(HV PMOS)が形成されている。
【0024】
各トランジスタのゲート電極66上及びソース/ドレイン領域78,80上には、金属シリサイド膜84が形成されている。
【0025】
4種類のトランジスタが形成されたシリコン基板10上には、層間絶縁膜86が形成されている。層間絶縁膜86には、トランジスタに接続されたコンタクトプラグ88が埋め込まれている。コンタクトプラグ88には、配線90が接続されている。
【0026】
このように、本実施形態による半導体装置は、2種類の低電圧トランジスタと、2種類の高電圧トランジスタとを有している。
【0027】
低電圧トランジスタは、いずれも、例えば図2に示すように、チャネル領域106に、急峻な不純物濃度分布を有する高濃度不純物層108と、高濃度不純物層108上にエピタキシャル成長されたノンドープのシリコン層110とを有するものである。このようなトランジスタの構造は、不純物の統計的揺らぎによるトランジスタの閾値電圧ばらつきを抑制するために有効である。閾値電圧ばらつきを抑制するためには、高濃度不純物層108の不純物濃度分布が急峻であることが重要である。
【0028】
急峻な不純物濃度分布を実現するために、低電圧NMOSトランジスタの高濃度不純物層22には、アクセプタ不純物としてのボロンのほかに、ボロンの拡散を防止するための炭素が導入されている。また、低電圧PMOSトランジスタの高濃度不純物層30には、ドナー不純物として拡散定数の小さい砒素が導入されている。
【0029】
一方、高電圧NMOSトランジスタの不純物層38及び高電圧PMOSトランジスタの不純物層46を高濃度で急峻な不純物濃度分布とすると、接合耐圧やホットキャリア耐性が低下する。このため、高電圧NMOSトランジスタの不純物層38には、アクセプタ不純物としてボロンは導入されているが、拡散防止作用のある炭素は導入されていない。また、高電圧PMOSトランジスタの不純物層46には、砒素よりも拡散定数の大きいリンが導入されている。これにより、不純物層38及び不純物層46は、高濃度不純物層22及び高濃度不純物層30と比較して、低濃度且つなだらかな分布とされている。
【0030】
なお、シリコン基板10内の、各トランジスタ形成領域のソース/ドレイン領域78,80よりも深い位置には、全面に渡って結晶欠陥94が形成されていることがある(図1参照)。この結晶欠陥94は、アモルファス化したシリコン基板10を再結晶化する際に形成されたものである。再結晶化の際に形成される結晶欠陥94は、不純物のゲッタリングによって活性領域内の不純物を低減する効果を奏する一方、PN接合近傍に位置するとリーク電流を増加する原因ともなる。このような観点から、結晶欠陥94がソース/ドレイン領域78,80よりも深い場所に位置するように、プロセス条件が設定されている。
【0031】
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について図3乃至図20を用いて説明する。
【0032】
まず、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、シリコン基板10の製品形成領域外(例えば、スクライブ領域)に、マスクアライメント用のマークとして用いる溝12を形成する。
【0033】
本実施形態による半導体装置の製造方法では、素子分離絶縁膜58の形成前に、ウェルやチャネル不純物層を形成する。溝12は、素子分離絶縁膜58の形成前に行われるリソグラフィー工程(ウェルやチャネル不純物層の形成等)において、マスクアライメント用のマークとして用いられるものである。
【0034】
なお、素子分離絶縁膜58の形成前にウェルやチャネル不純物層を形成するのは、シリコン酸化膜14,52,60を除去する際の素子分離絶縁膜58の膜減りを抑制するためである。
【0035】
次いで、シリコン基板10の全面に、例えば熱酸化法により、シリコン基板10の表面の保護膜としてのシリコン酸化膜14を形成する(図3)。なお、シリコン酸化膜14は、薬液洗浄により形成された化学酸化膜でもよい。
【0036】
次いで、フォトレジスト膜を用いずにシリコン基板10の全面にイオン注入を行い、シリコン基板10の表面にアモルファス層92を形成する(図4)。例えば、ゲルマニウムイオン(Ge)を、加速エネルギーを50keV、ドーズ量を5×1014cm−2の条件でイオン注入し、アモルファス層92を形成する。
【0037】
アモルファス層92は、アモルファス層92と単結晶シリコンとの界面(アモルファス層92の底部)が、後に形成するソース/ドレイン領域78,80よりも深い場所に位置するように、形成する。アモルファス層92の深さは、注入イオンの加速エネルギーにより設定することができる。また、ドーズ量は、シリコン基板10をアモルファス化するために必要な量とする。ゲルマニウムの場合、ドーズ量は、1×1014cm−2程度以上となる。
【0038】
なお、アモルファス層92を形成するためのイオン種は、ゲルマニウムに限定されるものではない。例えば、シリコン、アルゴン、キセノン等のイオンを用いることができる。これらイオン種を用いる場合にも、加速エネルギーやドーズ量の設定方法は同じである。
【0039】
例えば、シリコンイオン注入によって上述のゲルマニウムイオン注入の場合と同等のアモルファス層92を形成するためには、加速エネルギーを27keV、ドーズ量を1.1×1015cm−2に設定することができる。
【0040】
次いで、フォトリソグラフィにより、高電圧PMOSトランジスタ形成領域40を露出し、他の領域を覆うフォトレジスト膜42を形成する。フォトリソグラフィの位置合わせには、溝12のマークを用いる。
【0041】
次いで、フォトレジスト膜42をマスクとしてイオン注入を行い、シリコン基板10の高電圧PMOSトランジスタ形成領域40に、Nウェル44と、N型不純物層46とを形成する(図5)。
【0042】
Nウェル44は、例えば、リンイオン(P)を、加速エネルギー360keV、ドーズ量7.5×1012cm−2の条件で、基板法線方向に対して傾斜した4方向から、それぞれイオン注入することにより形成する。N型不純物層46は、リンイオンを、例えば、加速エネルギー30keV、ドーズ量3×1012cm−2の条件でイオン注入することにより形成する。なお、高電圧PMOSトランジスタでは、チャネル領域の不純物濃度分布をなだらかにして接合耐圧、ホットキャリア耐性を改善する観点から、砒素よりも拡散定数の大きいリンを用いている。
【0043】
なお、ゲルマニウムイオン注入により形成されたアモルファス層92には、注入イオンのチャネリングを防止する効果がある。
【0044】
次いで、例えば硫酸(HSO)と過酸化水素水(H)との混合液を用いたウェットエッチングにより、フォトレジスト膜42を除去する。
【0045】
次いで、フォトリソグラフィにより、高電圧NMOSトランジスタ形成領域32を露出し、他の領域を覆うフォトレジスト膜34を形成する。フォトリソグラフィの位置合わせには、溝12のマークを用いる。
【0046】
次いで、フォトレジスト膜34をマスクとしてイオン注入を行い、シリコン基板10の高電圧NMOSトランジスタ形成領域32に、Pウェル36と、P型不純物層38とを形成する(図6)。
【0047】
Pウェル36は、例えば、ボロンイオン(B)を、加速エネルギー150keV、ドーズ量7.5×1012cm−2の条件で、基板法線方向に対して傾斜した4方向から、それぞれイオン注入することにより形成する。P型不純物層38は、ボロンイオンを、例えば、加速エネルギー15keV、ドーズ量3×1012cm−2の条件でイオン注入することにより形成する。なお、高電圧NMOSトランジスタでは、チャネル領域の不純物濃度分布をなだらかにして接合耐圧、ホットキャリア耐性を改善する観点から、炭素及びゲルマニウムのイオン注入を行わない。
【0048】
なお、ゲルマニウムイオン注入により形成されたアモルファス層92には、注入イオンのチャネリングを防止する効果がある。
【0049】
次いで、例えば硫酸と過酸化水素水との混合液を用いたウェットエッチングにより、フォトレジスト膜34を除去する。
【0050】
次いで、フォトリソグラフィにより、低電圧PMOSトランジスタ形成領域24を露出し、他の領域を覆うフォトレジスト膜26を形成する。フォトリソグラフィの位置合わせには、溝12のマークを用いる。
【0051】
次いで、フォトレジスト膜26をマスクとしてイオン注入を行い、シリコン基板10の低電圧PMOSトランジスタ形成領域24に、Nウェル28と、N型高濃度不純物層30とを形成する(図7)。
【0052】
Nウェル28は、例えば、リンイオンを、加速エネルギー360keV、ドーズ量7.5×1012cm−2の条件で、基板法線方向に対して傾斜した4方向から、それぞれイオン注入することにより形成する。N型高濃度不純物層30は、砒素イオン(As)を、例えば、加速エネルギー6keV、ドーズ量3×1013cm−2の条件でイオン注入することにより形成する。
【0053】
なお、ゲルマニウムイオン注入により形成されたアモルファス層92には、注入イオンのチャネリングを防止する効果がある。
【0054】
次いで、例えば硫酸と過酸化水素水との混合液を用いたウェットエッチングにより、フォトレジスト膜26を除去する。
【0055】
次いで、フォトリソグラフィにより、低電圧NMOSトランジスタ形成領域16を露出し、他の領域を覆うフォトレジスト膜18を形成する。フォトリソグラフィの位置合わせには、溝12のマークを用いる。
【0056】
次いで、フォトレジスト膜18をマスクとしてイオン注入を行い、シリコン基板10の低電圧NMOSトランジスタ形成領域16に、Pウェル20と、P型高濃度不純物層22とを形成する(図8)。
【0057】
Pウェル20は、例えば、ボロンイオンを、加速エネルギー150keV、ドーズ量7.5×1012cm−2の条件で、基板法線方向に対して傾斜した4方向から、それぞれイオン注入することにより形成する。P型高濃度不純物層22は、炭素イオン(C)を、例えば、加速エネルギー3keV、ドーズ量3×1014cm−2の条件で、ボロンイオンを、例えば、加速エネルギー2keV、ドーズ量3×1013cm−2の条件で、それぞれイオン注入することにより形成する。
【0058】
図4の工程のゲルマニウムイオン注入により、シリコン基板10の表面にはアモルファス層92が形成されている。このアモルファス層92は、ボロンイオンのチャネリングを防止するとともに、炭素が格子点に配される確率を高めるように作用する。格子点に配された炭素は、ボロンの拡散を抑制するように作用する。
【0059】
次いで、例えば硫酸と過酸化水素水との混合液を用いたウェットエッチングにより、フォトレジスト膜18を除去する。
【0060】
本実施形態において、アモルファス層92を形成するためのイオン注入は、マスクレスでシリコン基板10の全面に行っており、フォトレジスト膜18をマスクとしては行われない。したがって、アモルファス化するためのイオン注入によってフォトレジスト膜18が変質して除去が困難になるなどの不具合が生じることはない。
【0061】
次いで、不活性雰囲気中で熱処理を行い、シリコン基板10を再結晶化するとともに、注入した不純物を格子位置に配置する。例えば、窒素雰囲気中で、600℃150秒間の熱処理を行い、次いで1000度0秒間の熱処理を行う。
【0062】
なお、アモルファス層92を再結晶化する際、アモルファス層92と単結晶シリコンとの界面近傍には、結晶欠陥94が生じることがある。非晶質化のイオン注入を上記条件で行った例では、シリコン基板10とシリコン層48との界面からおよそ100nm程度の深さに、結晶欠陥94が形成される。
【0063】
次いで、例えばCVD法により、シリコン基板10の表面に、例えば膜厚30nmのノンドープのシリコン層48をエピタキシャル成長する(図9)。
【0064】
次いで、例えばISSG(in-situ steam generation)法により、減圧下でシリコン層48の表面をウェット酸化し、例えば膜厚3nmのシリコン酸化膜52を形成する。処理条件は、例えば、温度を810℃、時間を20秒間とする。
【0065】
次いで、シリコン酸化膜52上に、例えばLPCVD法により、例えば膜厚70nmのシリコン窒化膜54を堆積する。処理条件は、例えば、温度を700℃、時間を60分間とする。
【0066】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、シリコン窒化膜54、シリコン酸化膜52、シリコン層48、及びシリコン基板10を異方性エッチングし、各トランジスタ形成領域の間の領域を含む素子分離領域に、素子分離溝56を形成する(図10)。なお、フォトリソグラフィの位置合わせには、溝12のマークを用いる。
【0067】
次いで、例えばISSG法により、減圧下でシリコン層48及びシリコン基板10の表面をウェット酸化し、素子分離溝56の内壁に、ライナー膜として、例えば膜厚2nmのシリコン酸化膜を形成する。処理条件は、例えば、温度を810℃、時間を12秒間とする。
【0068】
次いで、例えば高密度プラズマCVD法により、例えば膜厚500nmのシリコン酸化膜を堆積し、素子分離溝56をシリコン酸化膜によって埋め込む。
【0069】
次いで、例えばCMP法により、シリコン窒化膜54上のシリコン酸化膜を除去する。こうして、いわゆるSTI(Shallow Trench Isolation)法により、素子分離溝56に埋め込まれたシリコン酸化膜により、素子分離絶縁膜58を形成する(図11)。
【0070】
次いで、シリコン窒化膜54をマスクとして、例えば弗酸水溶液を用いたウェットエッチングにより、素子分離絶縁膜58を、例えば30nm程度エッチングする。このエッチングは、完成したトランジスタにおいて、シリコン層48の表面の高さと素子分離絶縁膜58の表面の高さとが同程度になるように調整するためのものである。
【0071】
次いで、例えばホットリン酸を用いたウェットエッチングにより、シリコン窒化膜54を除去する(図12)。
【0072】
次いで、例えば弗酸水溶液を用いたウェットエッチングにより、シリコン酸化膜52を除去する。この際、シリコン酸化膜52を完全に除去するために、膜厚3nmのシリコン酸化膜52に対して、熱酸化膜で5nm相当のエッチングを行う。
【0073】
素子分離絶縁膜58のシリコン酸化膜は、高密度プラズマCVD法により堆積した膜であり、弗酸水溶液に対するエッチングレートは、熱酸化膜の2倍程度である。また、もしシリコン酸化膜中にイオン注入されると、イオン種にも依存するが、エッチングレートは更に増大する。高温の熱処理を施せばエッチングレートを小さくできるが、急峻なチャネル不純物分布を実現されるためには好ましくない。
【0074】
本実施形態では、素子分離絶縁膜58を形成するシリコン酸化膜に不純物がイオン注入されていないため、シリコン酸化膜52のエッチングに伴う素子分離絶縁膜58の沈み込み量は、10nmと小さく抑えることができる。
【0075】
次いで、熱酸化法により、例えば膜厚7nmのシリコン酸化膜60を形成する(図13)。処理条件は、例えば、温度を750℃、時間を52分間とする。
【0076】
次いで、フォトリソグラフィにより、高電圧NMOSトランジスタ形成領域32及び高電圧PMOSトランジスタ形成領域40を覆い、他の領域を露出するフォトレジスト膜62を形成する。
【0077】
次いで、例えば弗酸水溶液を用いたウェットエッチングにより、フォトレジスト膜62をマスクとしてシリコン酸化膜60をエッチングする。これにより、低電圧NOSトランジスタ形成領域16及び低電圧PMOSトランジスタ形成領域24のシリコン酸化膜60を除去する(図14)。この際、シリコン酸化膜60を完全に除去するために、膜厚7nmのシリコン酸化膜60に対して、熱酸化膜で10nm相当のエッチングを行う。
【0078】
素子分離絶縁膜58のシリコン酸化膜は、高密度プラズマCVD法により堆積した膜であり、弗酸水溶液に対するエッチングレートは、熱酸化膜の2倍程度である。また、もしシリコン酸化膜中にイオン注入されると、イオン種にも依存するが、エッチングレートは更に増大する。高温の熱処理を施せばエッチングレートを小さくできるが、急峻なチャネル不純物分布を実現されるためには好ましくない。
【0079】
本実施形態では、素子分離絶縁膜58を形成するシリコン酸化膜に不純物がイオン注入されていないため、シリコン酸化膜60のエッチングに伴う素子分離絶縁膜58の沈み込み量は、20nmと小さく抑えることができる。
【0080】
これにより、シリコン酸化膜52,60を除去する際の素子分離絶縁膜58の沈み込み量の総和は、高電圧トランジスタ形成領域32,40で10nm程度、低電圧トランジスタ形成領域16,24で30nm程度と、小さく抑えることができる。
【0081】
次いで、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜62を除去する。
【0082】
次いで、熱酸化法により、例えば膜厚2nmのシリコン酸化膜64を形成する。処理条件は、例えば、温度を810℃、時間を8秒間とする。
【0083】
次いで、NO雰囲気中で、例えば870℃、13秒間の熱処理を行い、シリコン酸化膜60,64内に窒素を導入する。
【0084】
こうして、高電圧NMOSトランジスタ形成領域32及び高電圧PMOSトランジスタ形成領域32に、シリコン酸化膜60のゲート絶縁膜60aを形成する。また、低電圧NMOSトランジスタ形成領域16及び低電圧PMOSトランジスタ形成領域24に、シリコン酸化膜60よりも薄いシリコン酸化膜64のゲート絶縁膜64aを形成する(図15)。
【0085】
次いで、全面に、例えばLPCVD法により、例えば膜厚100nmのノンドープのポリシリコン膜を堆積する。処理条件は、例えば、温度を605℃とする。
【0086】
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、ポリシリコン膜をパターニングし、各トランジスタ形成領域にゲート電極66を形成する(図16)。
【0087】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、高電圧NMOSトランジスタ形成領域32に、ゲート電極66をマスクとしてN型不純物を選択的にイオン注入し、LDD領域となるN型不純物層68を形成する。例えば、リンイオンを、加速エネルギー35keV、ドーズ量2×1013cm−2の条件でイオン注入し、N型不純物層68を形成する。
【0088】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、高電圧PMOSトランジスタ形成領域40に、ゲート電極66をマスクとしてP型不純物を選択的にイオン注入し、LDD領域となるP型不純物層70を形成する。例えば、ボロンイオンを、加速エネルギー10keV、ドーズ量2×1013cm−2の条件でイオン注入し、P型不純物層70を形成する。
【0089】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、低電圧NMOSトランジスタ形成領域16に、ゲート電極66をマスクとしてN型不純物を選択的にイオン注入し、エクステンション領域となるN型不純物層72を形成する。例えば、砒素イオンを、加速エネルギー6keV、ドーズ量2×1014cm−2の条件でイオン注入し、N型不純物層72を形成する。
【0090】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、低電圧PMOSトランジスタ形成領域24に、ゲート電極66をマスクとして選択的にイオン注入し、エクステンション領域となるP型不純物層74を形成する(図17)。例えば、ボロンイオンを、加速エネルギー0.6keV、ドーズ量7×1014cm−2の条件でイオン注入し、P型不純物層74を形成する。
【0091】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚80nmのシリコン酸化膜を堆積する。処理条件は、例えば、温度を520℃とする。
【0092】
次いで、全面に堆積したシリコン酸化膜を異方性エッチングし、ゲート電極66の側壁部分に選択的に残存させる。これにより、シリコン酸化膜のサイドウォールスペーサ76を形成する(図18)。
【0093】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、低電圧NMOSトランジスタ形成領域16及び高電圧NMOSトランジスタ形成領域32に、ゲート電極66及びサイドウォールスペーサ76をマスクとして選択的にイオン注入する。これにより、ソース/ドレイン領域となるN型不純物層78を形成するとともに、NMOSトランジスタのゲート電極66にN型不純物を添加する。イオン注入条件は、例えば、リンイオンを、加速エネルギー8keV、ドーズ量1.2×1016cm−2とする。
【0094】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、低電圧PMOSトランジスタ形成領域24及び高電圧PMOSトランジスタ形成領域40に、ゲート電極66及びサイドウォールスペーサ76をマスクとして選択的にイオン注入する。これにより、ソース/ドレイン領域となるP型不純物層80を形成するとともに、PMOSトランジスタのゲート電極66にP型不純物を添加する。イオン注入条件は、例えば、ボロンイオンを、加速エネルギー4keV、ドーズ量6×1015cm−2とする。
【0095】
次いで、不活性ガス雰囲気中で、例えば1025℃、0秒間の短時間熱処理を行い、注入した不純物の活性化及びゲート電極66中の拡散を行う。1025℃、0秒間の短時間熱処理は、ゲート電極66とゲート絶縁膜との界面まで不純物を拡散させるのに十分である。
【0096】
また、低電圧NMOSトランジスタのチャネル部は炭素がボロンの拡散を抑制することにより、低電圧PMOSトランジスタのチャネル部は砒素の拡散が遅いことにより、急峻な不純物分布を維持することができる。一方、高電圧NMOSトランジスタのチャネル部は炭素が導入されていないことにより拡散は抑制されず、高電圧PMOSトランジスタのチャネル部には砒素よりも拡散定数の大きいリンが導入されているため、なだらかな不純物分布を形成することができる。
【0097】
こうして、シリコン基板10上に、4種類のトランジスタを完成する。すなわち、低電圧NMOSトランジスタ形成領域16に、低電圧NMOSトランジスタ(LV NMOS)を形成する。また、低電圧PMOSトランジスタ形成領域24に、低電圧PMOSトランジスタ(LV PMOS)を形成する。また、高電圧NMOSトランジスタ形成領域に、高電圧NMOSトランジスタ(HV NMOS)を形成する。また、高電圧PMOSトランジスタ形成領域に、高電圧PMOSトランジスタ(HV PMOS)を形成する(図19)。
【0098】
次いで、サリサイドプロセスにより、ゲート電極66上、N型不純物層78上、及びP型不純物層80上に、金属シリサイド膜84、例えばコバルトシリサイド膜を形成する。
【0099】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚50nmのシリコン窒化膜を堆積し、エッチングストッパ膜としてのシリコン窒化膜を形成する。
【0100】
次いで、シリコン窒化膜上に、例えば高密度プラズマCVD法により、例えば膜厚500nmのシリコン酸化膜を堆積する。
【0101】
これにより、シリコン窒化膜とシリコン酸化膜との積層膜の層間絶縁膜86を形成する。
【0102】
次いで、例えばCMP法により、層間絶縁膜86の表面を研磨し、平坦化する。
【0103】
この後、層間絶縁膜86に埋め込まれたコンタクトプラグ88、コンタクトプラグ88に接続された配線90等を形成し、半導体装置を完成する(図20)。
【0104】
このように、本実施形態によれば、マスクを用いずにシリコン基板の全面にイオン注入を行い、シリコン基板の表面を予めアモルファス化しておくので、低電圧NMOSトランジスタのチャネル不純物層の形成の際にアモルファス化のためのイオン注入を行う必要はない。これにより、低電圧NMOSトランジスタのチャネル不純物層の形成の際にフォトレジスト膜が変質するのを防止することができ、薬液を用いたウェット処理のような、シリコン基板に与えるダメージの少ないプロセスによって容易にフォトレジスト膜を除去することができる。
【0105】
[参考例]
参考例による半導体装置の製造方法について図21乃至図26を用いて説明する。図1乃至図20に示す一実施形態による半導体装置及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
【0106】
図21乃至図26は、本参考例による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
【0107】
まず、フォトリソグラフィ及びエッチングにより、シリコン基板10の製品形成領域外に、マスクアライメント用のマークとして用いる溝12を形成する。
【0108】
次いで、シリコン基板10の全面に、シリコン基板10の表面の保護膜としてのシリコン酸化膜14を形成する(図21(a))。
【0109】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、低電圧NMOSトランジスタ形成領域16及び高電圧NMOSトランジスタ形成領域32に、Pウェル20及びP型高濃度不純物層22を形成する。Pウェル20及びP型高濃度不純物層22は、例えば、ボロン又は弗化ボロン(BF)を2重にイオン注入することにより形成する。
【0110】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、低電圧PMOSトランジスタ形成領域24及び高電圧PMOSトランジスタ形成領域40に、Nウェル28及びN型高濃度不純物層30を形成する(図21(b))。Nウェル28及びN型高濃度不純物層30は、例えば、リン又は砒素若しくはアンチモン(Sb)を2重にイオン注入することにより形成する。
【0111】
次いで、熱処理を行い、イオン注入ダメージを回復するとともに、注入した不純物を活性化する。
【0112】
次いで、弗酸水溶液を用いたウェットエッチングにより、シリコン酸化膜14を除去する。
【0113】
次いで、シリコン基板10上に、ノンドープのシリコン層48をエピタキシャル成長する(図22(a))。
【0114】
次いで、STI法により、シリコン基板10及びシリコン層48に、素子分離絶縁膜58を形成する(図22(b))。
【0115】
次いで、活性領域上に、高電圧NMOSトランジスタ及び高電圧PMOSトランジスタ用のゲート絶縁膜60aとなるシリコン酸化膜60を形成する(図23(a))。
【0116】
次いで、フォトリソグラフィ及びウェットエッチングにより、低電圧NMOSトランジスタ形成領域16及び低電圧PMOSトランジスタ形成領域24のシリコン酸化膜60を選択的に除去する(図23(b))。
【0117】
次いで、低電圧NMOSトランジスタ領域16及び低電圧PMOSトランジスタ領域24の活性領域上に、ゲート絶縁膜64aとなるシリコン酸化膜64を形成する(図24(a))。
【0118】
次いで、全面に、ポリシリコン膜66aを形成する。
【0119】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、低電圧NMOSトランジスタ領域16及び高電圧NMOSトランジスタ形成領域32のポリシリコン膜66aに、N型不純物を添加する。また、低電圧PMOSトランジスタ領域24及び高電圧PMOSトランジスタ形成領域40のポリシリコン膜66aに、P型不純物を添加する(図24(b))。
【0120】
次いで、ポリシリコン膜66aをパターニングし、各トランジスタ形成領域に、ゲート電極66を形成する。
【0121】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、低電圧NMOSトランジスタ領域16に、エクステンション領域となるN型不純物層72を形成する。また、低電圧PMOSトランジスタ領域24に、エクステンション領域となるP型不純物層74を形成する。また、高電圧NMOSトランジスタ形成領域32に、LDD領域となるN型不純物層68を形成する。また、高電圧PMOSトランジスタ形成領域40に、LDD領域となるP型不純物層70を形成する(図25(a))。
【0122】
次いで、シリコン酸化膜を堆積して異方性エッチングし、ゲート電極66の側壁部分に、サイドウォールスペーサ68を形成する(図25(b))。
【0123】
次いで、フォトリソグラフィ及びイオン注入により、低電圧NMOSトランジスタ領域16及び高電圧NMOSトランジスタ形成領域32に、ソース/ドレイン領域となるN型不純物層78を形成する。また、低電圧PMOSトランジスタ領域24及び高電圧PMOSトランジスタ形成領域40に、ソース/ドレイン領域となるP型不純物層80を形成する(図26)。
【0124】
次いで、熱処理を行い、注入した不純物を活性化する。
【0125】
こうして、シリコン基板10上に、低電圧NMOSトランジスタと、低電圧PMOSトランジスタと、高電圧NMOSトランジスタと、高電圧PMOSトランジスタを形成する。
【0126】
本参考例では、低電圧NMOSトランジスタの高濃度不純物層22をボロンにより形成しているが、ボロンは拡散定数が大きいため、その後の熱プロセスにおいてエピタキシャル層方向に拡散し、不純物の統計的揺らぎによる閾値電圧のばらつきの原因となる。不純物の統計的揺らぎによる閾値電圧のばらつきを抑制するためには、高濃度不純物層22中のボロンがエピタキシャル層内に拡散するのを防止することが重要である。
【0127】
ボロンの拡散を防止する手法として、シリコン基板の表面を非晶質化した後に炭素及びボロンをイオン注入する方法がある。この方法によれば、ボロンの拡散を抑制することができ、許される熱処理の最大量を大きくできる。
【0128】
しかしながら、シリコン基板の非晶質化は、一般に、ゲルマニウムやシリコンのような重い元素を高濃度にイオン注入することにより行われる。NMOSトランジスタ形成領域を露出するフォトレジスト膜を形成し、これをマスクとして非晶質化のためのイオン注入並びに炭素及びボロンのイオン注入を行うと、非晶質化のために高濃度のイオン注入が必要なことに原因して、フォトレジスト膜が変質する。変質したフォトレジスト膜は、硫酸と過酸化水素水との混合液のような薬液を用いたウェットエッチングでは除去が困難になる。
【0129】
また、変質したフォトレジスト膜は、単純な酸素プラズマ処理によっても除去は難しく、例えば、CF/Oプラズマ処理といった手段が必要となる。しかしながら、CF/Oプラズマ処理を用いると、シリコン基板もエッチングされ、また、高エネルギーの酸素や炭素がシリコン基板内に打ち込まれてしまうという不具合もある。
【0130】
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0131】
例えば、上記実施形態では、P型高濃度不純物層22を形成する際に、非晶質化のためにゲルマニウムをイオン注入しているが、非晶質化に用いるイオン種は、これに限定されるものではない。例えば、シリコン、アルゴン、キセノン等を用いるようにしてもよい。
【0132】
また、上記実施形態では、下地の半導体基板としてシリコン基板を用いたが、下地の半導体基板は、必ずしもバルクのシリコン基板である必要はない。SOI基板など、他の半導体基板を適用してもよい。
【0133】
また、上記実施形態では、エピタキシャル半導体層としてシリコン層を用いたが、必ずしもシリコン層である必要はない。シリコン層の代わりに、SiGe層やSiC層等の他の半導体層を適用してもよい。
【0134】
また、上記実施形態に記載した半導体装置の構造、構成材料、製造条件等は、一例を示したものにすぎず、当業者の技術常識等に応じて適宜修正や変更が可能である。
【符号の説明】
【0135】
10…シリコン基板
12…溝
14,52,60,64…シリコン酸化膜
16…低電圧NMOSトランジスタ形成領域
18,26,34,42,50,62…フォトレジスト膜
20,36…Pウェル
22…P型高濃度不純物層
24…低電圧PMOSトランジスタ形成領域
28,44…Nウェル
30…N型高濃度不純物層
32…高電圧NMOSトランジスタ形成領域
38,70,74…P型不純物層
40…高電圧PMOSトランジスタ形成領域
46,68,72…N型不純物層
48…シリコン層
54…シリコン窒化膜
56…素子分離溝
58…素子分離絶縁膜
60a,64a…ゲート絶縁膜
66a…ポリシリコン膜
66…ゲート電極
76…サイドウォールスペーサ
78…N型不純物層(ソース/ドレイン領域)
80…P型不純物層(ソース/ドレイン領域)
84…金属シリサイド膜
86…層間絶縁膜
88…コンタクトプラグ
90…配線
92…アモルファス層
94…結晶欠陥
100…シリコン基板
102…ソース領域
104…ドレイン領域
106…チャネル領域
108…高濃度不純物層
110…シリコン層
112…ゲート絶縁膜
114…ゲート電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板にイオン注入を行い、前記半導体基板の第1の領域及び第2の領域を非晶質化する工程と、
前記半導体基板の前記第1の領域に、第1導電型の第1の不純物をイオン注入する工程と、
前記半導体基板の前記第2の領域に、第2導電型の第2の不純物をイオン注入する工程と、
前記第1の不純物及び前記第2の不純物を活性化し、前記第1の領域に第1の不純物層を、前記第2の領域に第2の不純物層を、それぞれ形成する工程と、
前記第1の不純物層及び前記第2の不純物層が形成された前記半導体基板上に、半導体層をエピタキシャル成長する工程と、
前記半導体層の前記第1の領域上及び前記第2の領域上に、ゲート絶縁膜を成長する工程と、
前記第1の領域の前記ゲート絶縁膜上に第1のゲート電極を、前記第2の領域の前記第ゲート絶縁膜上に第2のゲート電極を、それぞれ形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板にイオン注入を行い、前記半導体基板の第1の領域、第2の領域、第3の領域、及び第4の領域を非晶質化する工程と、
前記半導体基板の前記第1の領域に、第1導電型の第1の不純物をイオン注入する工程と、
前記半導体基板の前記第2の領域に、第2導電型の第2の不純物をイオン注入する工程と、
前記半導体基板の前記第3の領域に、前記第1導電型の第3の不純物をイオン注入する工程と、
前記半導体基板の前記第4の領域に、前記第2導電型の第4の不純物をイオン注入する工程と、
前記第1の不純物、前記第2の不純物、前記第3の不純物、及び前記第4の不純物を活性化し、前記第1の領域に第1の不純物層を、前記第2の領域に第2の不純物層を、前記第3の領域に第3の不純物層を、前記第4の領域に第4の不純物層を、それぞれ形成する工程と、
前記第1の不純物層、前記第2の不純物層、前記第3の不純物層、及び前記第4の不純物層が形成された前記半導体基板上に、半導体層をエピタキシャル成長する工程と、
前記半導体層の前記第1の領域、前記第2の領域、前記第3の領域、及び前記第4の領域上に、第1のゲート絶縁膜を成長する工程と、
前記第1の領域及び前記第2の領域の前記第1のゲート絶縁膜を除去する工程と、
前記半導体層の前記第1の領域及び前記第2の領域上に、前記第1のゲート絶縁膜よりも薄い第2のゲート絶縁膜を成長する工程と、
前記第1の領域の前記第2のゲート絶縁膜上に第1のゲート電極を、前記第2の領域の前記第2のゲート絶縁膜上に第2のゲート電極を、前記第3の領域の前記第1のゲート絶縁膜上に第3のゲート電極を、前記第4の領域の前記第1のゲート絶縁膜上に第4のゲート電極を、それぞれ形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板を非晶質化する工程では、マスクを用いずに、前記半導体基板にイオン注入を行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体基板を非晶質化する工程では、前記半導体基板にゲルマニウム又はシリコンをイオン注入する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極を形成する工程の後、前記第1の領域の前記半導体層及び前記半導体基板に前記第2導電型の第1のソース/ドレイン領域を形成する工程と、前記第2の領域の前記半導体層及び前記半導体基板に前記第1導電型の第2のソース/ドレイン領域を形成する工程とを更に有し、
前記半導体基板を非晶質化する工程では、前記半導体基板に形成される非晶質層の深さが前記第1のソース/ドレイン領域及び前記第2のソース/ドレイン領域よりも深くなるように、前記半導体基板を非晶質化する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第1の不純物は、ボロン及び炭素を含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記第2の不純物は、砒素を含む
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記半導体層を形成する工程の後、前記半導体層を形成した前記半導体基板に素子分離絶縁膜を形成する工程を更に有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2012−79744(P2012−79744A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220775(P2010−220775)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】