説明

半導体装置の製造方法

【課題】ワイドバンドギャップ半導体層とメタル電極のコンタクト抵抗を低減することができる半導体装置の製造方法を得る。
【解決手段】まず、シリコンに比べてバンドギャップが大きいIII−V族化合物半導体又はIV−IV族化合物半導体からなるp型窒化ガリウム層1の表面に、3−ヘリウム又は4−ヘリウムのイオンを照射してイオン照射領域2を形成する。イオン照射領域2を形成した後に、p型窒化ガリウム層1の表面にオーミックコンタクトしたメタル電極3を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイドバンドギャップIII−V族化合物半導体又はワイドバンドギャップIV−IV族化合物半導体からなる半導体層の表面にメタル電極を形成する半導体装置の製造方法に関し、特にワイドバンドギャップ半導体層とメタル電極のコンタクト抵抗を低減することができる半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイドバンドギャップIII−V族化合物半導体は、絶縁性基板上に形成された薄膜状のpn接合の発光素子材料として広く用いられてきた。発光素子に流れる電流は微小であるため、この材料とメタル電極とのコンタクト抵抗は問題とされなかった。近年、ワイドバンドギャップIII−V族化合物半導体からなるバルク材料の製造方法が用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−273048号公報
【特許文献2】特許3749454号公報
【特許文献3】特許3184717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ワイドバンドギャップIII−V族化合物半導体上にメタル電極を形成した場合、両者の間のコンタクト抵抗が大きくなる。従って、高耐圧・大電流のパワーデバイスにこの材料を適用すると、材料自体のオン抵抗は小さいものの、半導体/メタル界面で発生する高抵抗により、素子のトータルロスが大きくなるという問題があった。
【0005】
特にp型を示すワイドバンドギャップIII−V族化合物半導体材料とのオーミックコンタクトを形成することは難しい。半導体/メタル界面に多層膜を形成する方法や、半導体中のp型キャリアを様々な方法で高活性化する方法が用いられてきた。しかし、これまで、ワイドバンドギャップ半導体層とメタル電極のコンタクト抵抗を低減する有効な方法は無かった。
【0006】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的はワイドバンドギャップ半導体層とメタル電極のコンタクト抵抗を低減することができる半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る半導体装置の製造方法は、シリコンに比べてバンドギャップが大きいIII−V族化合物半導体又はIV−IV族化合物半導体からなる半導体層の表面に、3−ヘリウム又は4−ヘリウムのイオンを照射する工程と、前記イオンを照射した後に、前記半導体層の表面にオーミックコンタクトしたメタル電極を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ワイドバンドギャップ半導体層とメタル電極のコンタクト抵抗を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態により製造した高耐圧ダイオードについて耐圧とオン抵抗の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法について図面を参照して説明する。図1及び図2は本発明の実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0011】
まず、図1に示すように、ウエハ状GaNバルク結晶からなるp型窒化ガリウム層1を特許文献1〜3記載の方法により製造する。ただし、必ずしもこれらの製造方法には限定されない。
【0012】
次に、p型窒化ガリウム層1の表面に、一般的な3−ヘリウム加速器(サイクロトロン)にて約24MeVの加速エネルギーで加速した3−ヘリウムのイオンを照射して、深さ約20μmの位置までイオン照射領域2を形成する。
【0013】
ここで、イオン照射領域2の深さを制御するために、一般的に用いられているアルミ薄膜を加速エネルギーのアブゾーバーとして用いる。通常、約23MeVの3−ヘリウムはシリコン中の深さ298μmの位置にピークを持って照射される。従って、深さ約20μmの位置までイオン照射領域2を形成するには、そのピークの半値幅とGaNの物性値から約280μmのアブゾーバーを用いると良い。
【0014】
次に、p型窒化ガリウム層1の表面にアルミを蒸着してメタル電極3を形成し、窒素雰囲気で500℃で30分間の熱処理を行ってメタル電極3とp型窒化ガリウム層1のオーミックコンタクトを形成する。
【0015】
続いて、本実施の形態の効果を説明する。p型窒化ガリウム層1の表面に3−ヘリウムのイオンを照射することにより、メタル電極3とp型窒化ガリウム層1のコンタクト抵抗を低減することができる。特に、p型のワイドバンドギャップIII−V族化合物半導体材料とのオーミックコンタクトを形成することは難しいため、本実施の形態は有効である。
【0016】
また、熱処理を行うことにより、イオン照射によるp型窒化ガリウム層1の結晶性が回復する。さらに、p型ドーパントを同時に活性化することができるため、効率良くコンタクト抵抗を低減することができる。
【0017】
また、イオン照射領域2の厚みを40μm以下にすることにより、メタル電極3とp型窒化ガリウム層1のコンタクト抵抗を更に低減することができる。
【0018】
また、この構造を高耐圧・大電流のパワーデバイスに適用することにより、従来のパワーデバイスよりロスが小さく熱伝導に優れたデバイス特性を実現できる。ただし、パワーデバイス以外の用途で使用されるワイドバンドギャップ半導体装置の電極構造にも、この構造を適用できる。
【0019】
図3は、本発明の実施の形態により製造した高耐圧ダイオードについて耐圧とオン抵抗の関係を示す図である。比較のために、従来のシリコン系大電力用ダイオードのデータも示す。ワイドバンドギャップIII−V族化合物半導体の代表材料であるGaNのオン抵抗は、シリコンと比べて約1/10以下である。
【0020】
なお、本実施の形態ではp型窒化ガリウム層1を例に説明したが、これに限らず、炭化珪素など、シリコンに比べてバンドギャップが大きいIII−V族化合物半導体又はIV−IV族化合物半導体からなる半導体層を用いてもよい。また、3−ヘリウムの代わりに4−ヘリウムのイオンを照射してもよい。これらの場合でも上記の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0021】
1 p型窒化ガリウム層(半導体層)
2 イオン照射領域
3 メタル電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンに比べてバンドギャップが大きいIII−V族化合物半導体又はIV−IV族化合物半導体からなる半導体層の表面に、3−ヘリウム又は4−ヘリウムのイオンを照射してイオン照射領域を形成する工程と、
前記イオン照射領域を形成した後に、前記半導体層の表面にオーミックコンタクトしたメタル電極を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体層はp型であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記半導体層の表面にメタルを蒸着して前記メタル電極を形成し、窒素雰囲気で熱処理を行って前記メタル電極と前記半導体層のオーミックコンタクトを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記イオン照射領域の厚みを40μm以下にすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−8892(P2013−8892A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141462(P2011−141462)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】